JP2012049413A - 超電導部材冷却装置、及び断熱容器内のサブクール液体窒素の温度維持方法 - Google Patents

超電導部材冷却装置、及び断熱容器内のサブクール液体窒素の温度維持方法 Download PDF

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Abstract

【課題】振動下においても液体窒素液面付近での窒素ガスの凝縮による減圧及び減圧による液体窒素の飽和温度化を防止し、サブクール液体窒素により超電導部材を安定的に冷却する装置を提供する。
【解決手段】少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素を収容する断熱容器(V1)と、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機と、該サブクール液体窒素中に浸漬される、冷却対象の超電導部材とからなる超電導部材冷却装置において、断熱容器(V1)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該ガラス繊維紙間及び該ガラス繊維紙と断熱容器(V1)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を形成、保持するためのガラス繊維紙充填層(L1)を設けることを特徴とする、超電導部材冷却装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、超電導トランスや超電導マグネット、そのほか各種の超電導コイル、あるいは超電導ケーブルなどの超電導部材、特に高温超電導部材をサブクール液体窒素(過冷却液体窒素)によって低温に冷却・保持するための超電導部材冷却装置、及び断熱容器内のサブクール液体窒素の温度維持方法に関するものである。
超電導コイルなどの超電導部材、特に高温超電導を利用した超電導部材を冷却するにあたっては、冷却媒体として比較的安価な液体窒素(LN)の使用が知られている。
液体窒素により高温超電導部材を冷却する方法としては大気圧での飽和液体窒素(−196℃(77K))を使用したり、液体窒素容器を減圧状態にして−196℃より低いサブクール液体窒素を使用していた。上記飽和液体窒素を使用する場合、例えば大気圧での飽和液体窒素を使用する場合、真空断熱されたクライオスタットと称される大気に実質的に開放された冷却容器に超電導部材を収容しておき、その冷却容器内に約77Kの大気圧飽和液体窒素を注入してその液体窒素中に超電導部材を浸漬させ、冷却・保持するのが通常である。
ところで高温超電導部材においては、若干でも温度が下がれば、超電導特性が大幅に向上することが知られている。例えば臨界電流は、77Kから70Kに下がっただけでも数倍に大きくなることが知られている。
そこで大気圧の液体窒素を減圧して例えば65K程度に温度降下させたサブクール液体窒素中に超電導部材を浸漬させて、超電導部材を77Kよりも低い温度まで冷却することが考えられる。その場合、液体窒素中に超電導部材を浸漬させるための容器では、液体窒素の減圧状態を維持させる必要がある。一方、一般に使用されているクライオスタットでは、実質的に大気圧に近い圧力での使用を前提としているため、この種の汎用クライオスタットを減圧した液体窒素に適用しようとすれば、蓋部や電流導入端子等の箇所における封止の点で不充分となり、外部から水分を含む大気圧の空気が内部に吸い込まれて、電流導入端子のガス抜穴での水分凍結による閉塞や超電導部材表面への氷の付着が生じたりし、実用上運転が不可能となるおそれがある。そのため前述の目的のためには、新たに特殊な容器を設計、製作しなければならず、その場合コストの大幅な上昇を招く問題があり、そのため実用化はためらわれていたのが実情である。
また、大気圧の飽和液体窒素中に超電導部材を浸漬させて超電導部材を作動させた場合、超電導部材の発熱によって飽和液体窒素が直ちに気化してガス気泡が発生するため、そのガス気泡によって電気絶縁性が低下したり、冷却効率が低下したりしてしまう問題があるが、前述のように減圧によって例えば65K程度に温度降下された液体窒素中に超電導部材を浸漬させた場合も、減圧下の飽和液体窒素中では超電導部材の発熱によって前記同様に直ちに液体窒素が気化して気泡が発生するから、気泡発生に対する根本的な解決策とはならない。従って、このことも減圧された液体窒素の使用がためらわれていた一因である。
特許文献1には、冷却用容器内に収納されている超電導部材冷却用の液体窒素とは別に熱交換用液体窒素を減圧用容器内に供給し、真空ポンプによりその減圧用容器内を減圧して熱交換用液体窒素を温度降下させ、その温度降下した熱交換用液体窒素と冷却用液体窒素とを熱交換させることにより大気圧でサブクール状態の冷却用液体窒素を得るようにしている超電導部材冷却装置が開示されている。
該冷却用液体窒素の液面下には断熱部材を配設して、冷却用液体窒素の液面(気液界面であるため約77K)とその断熱部材よりも下側との間で熱勾配を与え、またその断熱部材の存在によって液面付近に底部側との間での対流撹拌を阻止できることが記載されている。
しかし、この場合減圧用容器内の熱交換用液体窒素は減圧によって徐々に蒸発気化し、かつその気化ガスがポンプにより排気されて行くので、減圧用容器内の液体窒素液面は急激に低下して行き、遂には減圧用容器内の熱交換器が露出してしまうことになる。このように熱交換器が液面から露出してしまえば、充分な熱交換能率が得られなくなって、冷却用液体窒素を充分なサブクール状態となるように冷却することが困難となるから、実際上は熱交換器が液面から露出する以前に、改めて減圧用容器内に液体窒素を補給しなければならず、またこの液体窒素補給時には運転を一旦停止させなければならないという問題点がある。
特許文献2には供給側容器について液体窒素を冷凍機によって大気圧下でのサブクール冷却状態となる温度まで冷却し、得られたサブクール状態の低温の液体窒素を、冷却容器においてそのまま直接超電導部材を冷却するための冷却媒体として用いることとし、これにより前記特許文献1におけるような減圧用容器や熱交換器を用いないようにして、減圧用容器内への熱交換用液体窒素の補給のための運転停止を回避して、長時間の連続運転を可能とする超電導部材冷却装置が開示されている。
供給側容器内には、液体窒素の液面下にFRPなどの低熱伝導率材料からなる断熱部材を配置することによって、液面付近(約77K)と冷凍機の冷却ヘッド付近(65〜70K)との間で熱勾配層を形成している。しかしながら、断熱部材を配置した領域では、その断熱部材の体積によって液体窒素が排除されていて、断熱部材の周囲のわずかな狭い空隙の部分のみを液体窒素が移動し得る状況となっているから、供給側容器の揺動などによってわずかに液体窒素の蒸発もしくは窒素ガスの凝縮が生じただけで、液面の位置が大きく変動し、そのため温度勾配層が大きく変動してしまうおそれがある。したがって従来技術のような断熱部材を設けた場合は、実際の運転時においては運転状況の安定化、信頼性の向上を図るには未だ不充分である。
特許文献3には液面上に空間を残して液体窒素を収容しかつその液面上の空間に大気圧等の窒素ガス圧力が加えられる液体窒素容器内の液体窒素を、大気圧下でのサブクール温度とし、その大気圧下でのサブクール温度の液体窒素によって超電導部材を冷却するように構成した超電導部材冷却装置において、前記液体窒素容器内の液体窒素の液面よりも下方の位置から、液面上方の位置までの間にわたって、連続孔を有する多孔質断熱材からなる対流阻止部材を配置した超電導部材冷却装置が開示されている。連続孔を有する多孔質断熱材としては、連続気泡ウレタン系発泡体のほか、例えば連続気泡ポリエチレン系発泡体、アクリロニトリルーブタジエンゴム系発泡体、エチレンプロピレンゴム系発泡体等を使用することができることが記載されている。
特許文献3において、サブクール液体窒素は、飽和温度の液体ではないため超電導部材による極度の発熱がない限り沸騰することはない。また気相部が大気圧であるため取扱いが容易でかつ外気の混入(特に水分)の心配がないというメリットがある。以上のことよりサブクール液体窒素はより低い温度の液体窒素を供給することで、より低い温度で超電導部材の冷却が可能となり、超電導電力機器の性能をアップさせることができる。
非特許文献1には、クライオスタット内に大気圧での飽和温度(77K)の液体窒素を収納して、その後該クライオスタット内の液体窒素の液面上の圧力を大気圧より僅かに高い7kPaGに制御して、クライオスタットを静置させた状態で、底部に66Kの液体窒素を静かに導入し、上部から77Kの液体窒素を排出して液面を一定に維持した場合に、液面では7kPaGの飽和温度(約77K)の液体窒素が存在し、そして液面から約30mm以上の深さでは66Kのサブクール液体窒素が存在する実験結果が示されている。すなわち、この場合には液面から約30mmの深さの間に温度勾配層が形成されていることが分かる。また、底部に導入する66Kの液体窒素をヒータで温度制御して実質的に70Kの液体窒素を導入したようにすると液面から約15〜20mmの深さまでに温度勾配層が形成されることが示されている。
すなわち非特許文献1には、条件に応じて、液体窒素の液面と、液面から15〜30mmの深さまでの間で温度勾配層が形成されていることが示されている。
ところで、サブクール液体窒素を用いる場合に重要なのは、液体窒素表面に形成される温度勾配層を如何に安定させるかである。もし安定できない場合には、液全体が撹拌されるために液面付近の液温が窒素ガス圧力に対する飽和温度以下の温度となり気相部のガスを凝縮し減圧してしまう。すなわち液体窒素全体の飽和化により、沸騰が起こり易い状況と成る。また容器内部へ外気(特に水分)の混入を招くおそれがある。
実際の運転時で液体窒素容器自体が揺動、振動を伴うような状況下では容器内部の液体窒素が大きく攪拌されるため温度勾配層が乱されて、たとえ前述のような断熱部材や多孔質断熱材を設けていても、運転状況が不安定化し、また液面での液体窒素の気化や逆に窒素ガスの凝縮が生じたりして、液面位置が変動してしまい、それに伴って温度勾配層が不安定となり、運転状況が不安定化し、冷却効率の低下、システムの信頼性の低下を招いてしまうおそれがある。
特開平10−054637号公報 特開平10−325661号公報 特開2001−345208号公報
S.Yoshida, etc.,"1 ATM SUBCOOLED LIQUID NITROGEN CRYOGENIC SYSTEM FOR OXIDE SUPERCONDUCTING POWER TRANSFORMER", Advances in Cryogenic Engineering Vol.43, 1998、p.1191-1198
温度勾配層形成部にFRPなどの低熱伝導率材料を配設すると、その断熱部材の体積によって液体窒素が排除されるので、断熱部材の周囲のわずかな狭い空隙の部分のみを液体窒素が移動し得る状況となっている場合に、わずかに液体窒素の蒸発もしくは窒素ガスの凝縮が生じただけで、液面の位置が大きく変動し、そのため温度勾配層が大きく変動してしまうおそれがあった。
また、スポンジ形状の多孔質断熱材等の連続気泡樹脂系発泡体は、容器静置下においては容器内部で発生する小さな動乱に対する液体窒素温度勾配層保持の役目は果たすものの、容器自体が常に揺動、振動を伴うような状況下では、多孔質断熱材の内部の液体窒素が大きく揺れるため温度勾配層を保持することは不十分であった。
そこで、本発明は、振動、揺動下においても断熱容器内のサブクール液体窒素の温度勾配層を保持し、液面付近における窒素ガスの凝縮による減圧及び減圧による液体窒素の飽和温度化を防止し、安定的にサブクール液体窒素を供給等することが可能な超電導部材冷却装置、及び断熱容器内のサブクール液体窒素の温度維持方法を提供することを目的とする。
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、サブクール液体窒素を収容する断熱容器の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を充填してガラス繊維紙充填層を配設し、該ガラス繊維紙充填層に温度勾配層を形成して保持(以下、「形成して保持」を「保持」ということがある。)することより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の〈1〉ないし〈5〉に記載する発明を要旨とする。〈1〉少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素を収容する断熱容器(V1)と、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機と、該サブクール液体窒素中に浸漬される、冷却対象の超電導部材とからなる超電導部材冷却装置において、
断熱容器(V1)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該ガラス繊維紙間及び該ガラス繊維紙と断熱容器(V1)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L1)を設けることを特徴とする、超電導部材冷却装置(以下、第1の態様ということがある)。
〈2〉少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素が収容されると共に、断熱容器(V3)に該サブクール液体窒素を供給するための送液ポンプが該サブクール液体窒素中に挿入されていて、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機を備えた、断熱容器(V2)と、
液面上に窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素が断熱容器(V2)から循環されて収容されると共に、冷却対象の超電導部材を該サブクール液体窒素中に浸漬するための断熱容器(V3)とからなる超電導部材冷却装置において、
前記断熱容器(V2)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V2)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L2)、
及び前記断熱容器(V3)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、前記超電導部材の上面部又は上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V3)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L3)、を設けることを特徴とする、超電導部材冷却装置(以下、第2の態様ということがある)。
〈3〉少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素が収容されると共に、断熱容器(V4)に該サブクール液体窒素を供給するための送液ポンプが該サブクール液体窒素中に挿入されていて、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機を備えた、断熱容器(V2)と、
サブクール液体窒素が断熱容器(V2)から循環されて、液面上に空間が形成されないように充填されていると共に、冷却対象の超電導部材が該サブクール液体窒素中に浸漬されている断熱容器(V4)とからなる、超電導部材冷却装置であって、
断熱容器(V2)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V2)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L2)を設けることを特徴とする、超電導部材冷却装置(以下、第3の態様ということがある)。
〈4〉前記ガラス繊維紙充填層層(L1、L2とL3、又はL2)の垂直方向の厚みが20mm以上であることを特徴とする、前記〈1〉から〈3〉のいずれかに記載の超電導部材冷却装置。
〈5〉少なくとも、窒素ガス空間を残して収容されている断熱容器(V0)内のサブクール液体窒素の温度維持方法において、
該サブクール液体窒素を冷却するための冷凍機の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬し、
断熱容器(V0)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V0)の壁面間に空隙が形成されないように充填したガラス繊維紙充填層(L0)を設けて、該ガラス繊維紙充填層(L0)内にサブクール液体窒素の温度勾配層を保持することを特徴とする、断熱容器内のサブクール液体窒素の温度維持方法(以下、第4の態様ということがある)。
(イ)上記〈1〉ないし〈4〉に記載の超電導部材冷却装置において、液体窒素冷却用の冷却ヘッドが液体窒素中に浸漬されている断熱容器(V1等)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、ガラス繊維紙充填層(L1等)を設けることにより、
該容器中の液体窒素がガラス繊維紙充填層(L1等)中のガラス繊維紙に吸収されることでそのガラス繊維紙充填層(L1等)で液面から下方へ向かって温度勾配層が形成、保持され、ガラス繊維紙充填層(L1等)を形成するガラス繊維紙の微細ガラス繊維構造に起因して、振動、揺動等を伴うような場合であっても該温度勾配層が従来の連続孔を有する多孔質断熱部材と比較して安定的に維持される。またガラス繊維紙充填層(L1等)は容器壁面との間に大きな隙間が形成されることのないように充填されるので、上下方向の液体窒素の対流をも抑制することができる。
その結果、該容器中の気相部が急激に減圧されることもなく、ガラス繊維紙充填層(L1等)下部の液体窒素の温度の飽和化が抑制されるので安定的にサブクール液体窒素の温度を維持することが可能になる。
(ロ)上記〈5〉に記載のサブクール液体窒素の温度維持方法において、断熱容器(V0)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上部又は上部より上の位置までの範囲に渡って、ガラス繊維紙充填層(L0)を設けて、該ガラス繊維紙充填層(L0)内にサブクール液体窒素の温度勾配層を保持することにより、ガラス繊維紙充填層(L0)を形成するガラス繊維紙の微細ガラス繊維構造に起因して、断熱容器(V0)の下部で何らかの原因による揺動等によって液体窒素の対流や撹拌が生じても、液面近傍の液体窒素にまで対流や撹拌が生ずるおそれが少なく、温度勾配層を安定して保持できるとともに、液面位置を安定化することができる。
冷却ヘッドが浸漬されている断熱容器(V1)内でサブクール液体窒素により超電導部材を冷却する、本発明の超電導部材冷却装置の一例を示す略解図である。 断熱容器(V2)内で冷却ヘッドにより冷却されたサブクール液体窒素が循環される断熱容器(V3)内で、超電導部材を冷却する、本発明の超電導部材冷却装置の一例を示す略解図である。 断熱容器(V2)内で冷却ヘッドにより冷却されたサブクール液体窒素が循環される断熱容器(V4)内で、超電導部材を冷却する、本発明の超電導部材冷却装置の一例を示す略解図である。
以下、本発明の〔1〕第1の態様の「超電導部材冷却装置」、〔2〕第2の態様の「超電導部材冷却装置」、〔3〕第3の態様の「超電導部材冷却装置」、及び〔4〕第4の態様の「断熱容器内のサブクール液体窒素の温度制御方法」について説明する。
〔1〕第1の態様の「超電導部材冷却装置」
本発明の第1の態様の「超電導部材冷却装置」は、少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素を収容する断熱容器(V1)と、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機と、該サブクール液体窒素中に浸漬される、冷却対象の超電導部材とからなる超電導部材冷却装置において、断熱容器(V1)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該ガラス繊維紙間及び該ガラス繊維紙と断熱容器(V1)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L1)を設けることを特徴とする。
以下に図面を用いて本発明の第1の態様を説明するが、本発明の第1の態様は以下の図1の例示に限定されるものではない。
図1は、第1の態様の超電導部材冷却装置を説明するための略解図であり、該超電導部材冷却装置には、断熱容器(V1)11、並びに該容器内に収納されたサブクール液体窒素14、冷凍機21、ガラス繊維紙充填層(L1)16、及び冷却対象の超電導部材27が含まれ、更に付帯設備として液体窒素供給手段51と窒素ガス供給手段55を設けることができる。
断熱容器(V1)11内において、ガラス繊維紙充填層(L1)を液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッド25の上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って設けることができ、超電導部材27はガラス繊維紙充填層(L1)よりも下部方向に配設される。
以下に第1の態様の超電導部材冷却装置を具体的に説明する。
(イ)断熱容器(V1)
断熱容器(V1)11は、一般的な汎用のクライオスタットからなるものであって、その外周壁部および底壁部が内槽19Aと外槽19Bからなる真空断熱構造13とされ、また上端には開閉可能な蓋部12が設けられている。この蓋部は、断熱容器(V1)本体に対してOリング等のガスケットを挟んでボルト・ナット等によって真空封止可能な状態で装着することが好ましい。またこの蓋部には汎用のクライオスタットと同様な電流導入端子等用の貫通継手が密封構造で配設されている。この断熱容器(V1)には、例えば液体窒素供給手段51により、液体窒素(LN)が貯蔵されている液体窒素タンク52から、制御弁53および供給管54を介して液体窒素14を供給できるようにすることができ、また、窒素ガス供給手段55により、窒素ガス(GN)が貯蔵されている窒素ガスタンク56から、制御弁57および供給管58を介して窒素ガスを供給できるようにすることができる。
なお蓋部には負圧にも耐用可能な安全弁26を設けることができるが、この安全弁は、内部圧力が外部の大気圧に対して例えば+10kPaを越えた場合に開放されて、内部圧力を負圧〜大気圧+10kPaの範囲内、すなわち負圧から大気圧より若干高い圧力の間に保持するように機能させることができる。そして該容器内に収納され、冷凍機により冷却されるサブクール液体窒素中に超電導部材を浸漬させ、冷却・保持することができる。
(ロ)冷凍機、サブクール液体窒素
断熱容器(V1)内には、該容器内の液体窒素14を、大気圧下での飽和液体窒素の温度(約77K)よりも低い温度(例えば65〜70K)に冷却するための冷凍機21が配設されている。この冷凍機は、特に限定されるものではないが、例えば冷凍媒体ガス(通常はヘリウムガス)を圧縮するための圧縮部(コンプレッサ)と、圧縮された高圧の冷凍媒体ガスを膨張させて低温を得るための冷却ヘッド25と、冷却ヘッドと密着させその低温を冷却対象(液体窒素)と熱交換するための熱交換器23、圧縮部からの高圧の媒体ガスと冷却ヘッドから戻る膨張された低圧の媒体ガスの流れを切替えるためのモーターバルブ等の切替部と冷却ヘッドとの間で冷凍媒体ガスを往復させる通路を内部に形成したシリンダ部22とからなる冷凍機を使用することができる。尚、冷却ヘッド25にはヒータ24を設けて、サブクール液体窒素を所定の温度に維持することができる。
図1に示すように冷凍機21の冷却ヘッド25は、断熱容器(V1)11内の液体窒素中に浸漬されている。
液体窒素をサブクール温度とするための冷凍機としては、GM冷凍機(ギフォード・マクマホン冷凍機)で代表される小型極低温冷凍機を用いることができる。この場合、該冷凍機は、圧縮機、膨張機、循環冷媒管、電源等からなり、圧縮機で圧縮したガス冷媒(主にヘリウムガス)を循環させて、膨張機で発生させた寒冷を冷却ヘッド部で熱交換させ、温められたガスを圧縮機に戻して循環している。冷凍機の圧縮機は、断熱容器の蓋部に載せて容器のシールを確保して固定される。冷却ヘッド25は、鉛直下側に向いて液体窒素に浸漬する状態で配置され、液体窒素との熱交換をよくするための熱交換器23が取り付けられている。冷凍能力としては、例えば、冷却ヘッド60K、周波数50Hzで冷凍出力200Wのものや、更に冷凍出力が1kW級のものもある。
(ハ)ガラス繊維紙充填層(L1)
ガラス繊維紙充填層(L1)は、断熱容器(V1)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該ガラス繊維紙間及び該ガラス繊維紙と断熱容器(V1)の壁面間に空隙が形成されないように充填された、液体窒素の温度勾配層を形成、保持するための層である。
(i)ガラス繊維紙
ガラス繊維紙は、ガラス繊維を結合剤を用いて熱融着性、接着等させて得られるシート状のもので、その製造方法は例えば、特公昭36−9601号公報、特開平5−86567号公報等に記載されている。ガラス繊維紙は、ロール状に巻かれたもの、ペーパー状のものが知られており、市販品としてライダルサーマル社(Lydallthermal com.)製の商品名:CryoTherm 233(登録商標)、CryoTherm 234(登録商標)、日本板硝子(株)製の商品名:AGMセパレーター、MCペーパー等が知られている。このようなガラス繊維紙は一般に高い空間率(例えば85%以上)を有していて多量の液体を保持でき、液体窒素等に高い親和性を有していて、数十μm以下の微細ガラス繊維構造のため微毛細管からなり、多量の液体窒素を均一に保持でき、サブクール液体窒素で冷却されても収縮が極め少ないのが特徴である。
(ii)ガラス繊維紙充填層(L1)
ガラス繊維紙充填層(L1)は、液体窒素に対し吸収性を有し、該ガラス繊維紙間及び該ガラス繊維紙と断熱容器(V1)の壁面間に空隙が形成されないように充填された層であれば特に制限されるものではなく、例えば上記ガラス繊維紙がロール状に巻かれたものを平らに伸ばして水平方向にガラス繊維紙間及び該ガラス繊維紙と断熱容器(V1)の壁面間に空隙が形成されないように充填して形成することができる。尚、ガラス繊維紙の長時間の使用により繊維の剥離が発生するのを防止するために、ガラス繊維紙充填層(L1)の上面と下面をステンレス製等の開口部を有する平板、金網、又は樹脂性のネットで挟み込むようにして保持することが望ましい。ガラス繊維紙は液体窒素をよく吸収し、空間率が高いので多量の液体窒素を均一に保持でき、微細ガラス繊維構造に起因して液体窒素の対流を抑制し、かつサブクール液体窒素温度まで冷却されてもその外形形状としての熱収縮率が低いので温度勾配層を保持するガラス繊維紙充填層(L1)形成用の材料として好適であり、わずかな液量の変動で液面位置の変動に及ぼす影響は小さいので液面位置を安定化することができる。また、ガラス繊維紙充填層(L1)は振動、揺動等に対しても該層内の温度勾配層を従来の連続孔を有する多孔質断熱部材と比較的して安定に維持することができる。
従って、ガラス繊維紙充填層(L1)は、温度勾配層を形成する液体窒素自身の揺動を抑制するので、従来知られている連続気泡ウレタン系発泡体、連続気泡ポリエチレン系発泡体、アクリロニトリルーブタジエンゴム系発泡体、エチレンプロピレンゴム系発泡体等よりも温度勾配層の安定性に優れるものである。
ガラス繊維紙充填層(L1)は、該層内で液体窒素の温度勾配層を保持させることにより、液面近傍の液体窒素の温度を大気圧での飽和温度(約77K)とし、冷却対象の超電導部材が浸漬されているガラス繊維紙充填層(L1)より下層部の温度を例えば65〜70K程度の温度までサブクールすると共に、液体窒素の対流や撹拌を抑制して液体窒素の温度勾配層を安定化させる。
ガラス繊維紙充填層(L1)は、蓋部からスタッドボルト等の支持部材(図示せず)によって吊下げられた状態で、或いは蓋部より籠状に吊り下げられた金網内にガラス繊維紙を設置することによって配設することができる。
ガラス繊維紙充填層(L1)は、以下に記載するように、該層内に仕切板を設けなくとも温度勾配層を安定的に保持することができるが、1又は2以上の仕切板を設けることもできる。なお、窒素ガス空間部からの侵入熱を防止する観点から液面上の窒素ガス空間に少なくとも5mmのガラス繊維紙充填層(L1)を設けることが好ましい。
さらに、侵入熱の1つの要因である窒素ガス空間部からの対流熱を防止するために、ガラス繊維紙充填層(L1)の上部に、更に10〜50mm程度の厚みのガラス繊維紙充填層、又は他の発泡ポリエチレン等の断熱材を設けることもできる。
前記非特許文献1に記載されているように、温度勾配層がサブクール液体窒素の温度条件等によって、液体窒素の液面と、液面から15〜30mmの深さまでの間で温度勾配層が形成されるという事実からも、液体窒素の液面より下部のガラス繊維紙充填層(L1)の垂直方向の厚みは15mm以上が好ましい。従って、窒素ガス空間部における厚みも考慮すると、ガラス繊維紙充填層(L1)の厚みは20mm以上が好ましい。このような厚みのガラス繊維紙充填層(L1)を設けることにより、液体窒素の対流や撹拌を抑制して液体窒素の温度勾配層を安定化させることができる。一方、該厚みの上限は特に限定されるものではなく、厚みが50mmを超えてもガラス繊維紙充填層(L1)の効果を発揮させる上で特に問題は生じないが、上記機能の更なる向上は期待できない。
ガラス繊維紙充填層(L1)内に仕切板を設けない場合のガラス繊維紙充填層(L1)の垂直方向の厚みは上記の通りである。
一方、ガラス繊維紙充填層(L1)内に仕切板を設ける場合には、ガラス繊維紙充填層(L1)の1つのブロックの垂直方向の厚みを5〜10mm程度として、仕切板を設けて積み重ねる構造とすることにより、ガラス繊維紙が液体窒素を吸収して上昇していき、液面で液体窒素が蒸発されるのを抑制することができる。この場合の仕切板は2〜6枚が好ましく、3〜4枚がより好ましく、全体の厚みは20〜50mm(仕切板の厚みを除く)が好ましい。
該仕切板の材料は特に制限されるものではないが液体窒素がサブクールされた際の温度での膨張率が少ない材料が望ましく、例えば厚み1mm程度のステンレス製の仕切板で作製することが好ましい。仕切板は、蓋部からスタッドボルト等の支持部材(図示せず)よって吊下げられた状態で配設することができる。
仕切板と断熱容器(V1)壁との間も空隙があると、その狭い空隙の部分を液体窒素がガラス繊維紙内を移動して蒸発され易くなるので、断熱容器(V1)壁との空隙が極力小さくなるように仕切板を設置することが好ましい。この場合の空隙は0.5〜5mmが好ましく、1〜2mmがより好ましい。
(ニ)超電導部材
本発明における冷却対象の超電導部材は特に制限されるものではなく、超電導トランスや超電導マグネット、そのほか各種の超電導コイル、あるいは超電導ケーブルなどの超電導部材、特に高温超電導部材の冷却に有効である。超電導部材27は図1に示すように蓋部から支持部材20A,20Bによって吊下げた状態とすることができる。
〔2〕第2の態様の「超電導部材冷却装置」
本発明の第2の態様の「超電導部材冷却装置」は、少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素が収容されると共に、断熱容器(V3)に該サブクール液体窒素を供給するための送液ポンプがサブクール液体窒素中に挿入されていて、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機を備えた、断熱容器(V2)と、
液面上に窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素が断熱容器(V2)から循環されて収容されると共に、冷却対象の超電導部材を該サブクール液体窒素中に浸漬するための断熱容器(V3)とからなる超電導部材冷却装置において、
前記断熱容器(V2)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V2)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L2)、
及び前記断熱容器(V3)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、前記超電導部材の上面部又は上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V3)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L3)、を設けることを特徴とする。
以下に図2を用いて本発明の第2の態様を説明するが、該第2の態様は以下の図2の例示に限定されるものではない。
図2は、第2の態様の超電導部材冷却装置を説明するための略解図であり、該超電導部材冷却装置には上記したように、超電導部材を冷却するための液体窒素の供給側断熱容器として、断熱容器(V2)31、並びに該容器内に収納されたサブクール液体窒素14、冷凍機21、ガラス繊維紙充填層(L2)16、及び送液ポンプ32が含まれ、更に付帯設備として液体窒素供給手段51と窒素ガス供給手段55とを設けることができる。また、供給側断熱容器から移送されてきた液体窒素で超電導部材を冷却する冷却側断熱容器として、断熱容器(V3)41、並びに該容器内にガラス繊維紙充填層(L3)46、及び冷却対象の超電導部材27が含まれる。
第1の態様では超電導部材の冷却が自然対流熱伝達であるのに対し、第2の態様ではポンプにより強制的に冷却された液体窒素が冷却側断熱容器に送り込まれるため強制対流熱伝達に近い状態であるため、第2の様態の方がより超電導部材を冷却することが可能である。また、供給側断熱容器と冷却側断熱容器が分離していることから、メンテナンスが容易となる。以下に第2の態様の超電導部材冷却装置を、供給側断熱容器と冷却側断熱容器に分けて具体的に説明する。
(1)供給側断熱容器
(イ)断熱容器(V2)
断熱容器(V2)は、前記断熱容器(V1)と同様に、一般的な汎用のクライオスタットからなるものであり、その外周壁部および底壁部が内槽19Aと外槽19Bからなる真空断熱構造13とされ、また上端には開閉可能な蓋部12を設けることができる。この蓋部は断熱容器(V1)と同様に容器本体に対して真空封止可能な状態で装着されることが好ましい。なお、蓋部には負圧にも耐用可能な安全弁26や液体窒素供給手段51と窒素ガス供給手段55を設けることができるがこれらは前記断熱容器(V1)に記載した内容と同様であり、更に送液管33と還流管34を設けることができる。
(ロ)冷凍機、サブクール液体窒素
断熱容器(V2)内の液体窒素は、前記断熱容器(V1)に記載したと同様に冷凍機21の冷却ヘッド25と熱交換器23により冷却されて、大気圧下での飽和液体窒素温度(例えば、77K程度)よりも低い温度(例えば65〜70K)にまで温度降下され、サブクールされた液体窒素14は送液ポンプ32によって断熱容器(V2)の底部付近から汲み上げられ、送液管33を介して、断熱容器(V3)内に導かれ、超電導部材27をサブクール温度(例えば67〜72K程度)に冷却・保持する。また断熱容器(V3)内において超電導部材27からの熱などによって温度上昇した液体窒素(例えば、70K程度以上)は、還流管34を介して断熱容器(V2)へ還流される。このようにして断熱容器(V2)へ還流された液体窒素は、冷凍機の冷却ヘッドにより再び負圧から大気圧以上の間の圧力のもとでサブクール温度(例えば65〜70K程度)に冷却され、前述のように送液ポンプによって断熱容器(V3)に送られる。冷凍機は、断熱容器(V1)内に設けられる冷凍機と同様である。
(ハ)ガラス繊維紙充填層(L2)
断熱容器(V2)内に設けられるガラス繊維紙充填層(L2)は、前記第1の態様で記載した断熱容器(V1)内のガラス繊維紙充填層(L1)と同様である。
(ニ)送液ポンプ
断熱容器(V2)内に配設する送液ポンプ32は、例えば蓋部12から吊下げられた状態で固定することができる。この送液ポンプは、その取入口(汲出口)が断熱容器(V2)におけるガラス繊維紙充填層(L2)16よりも下方に位置するように配設されている。そしてこの送液ポンプの出口側は送液管33に接続されており、この送液管33は前述のように断熱容器(V3)内に導かれている。さらに前記断熱容器(V3)からの還流管34が断熱容器(V2)内へ導かれており、その還流管34の先端側開口端が断熱容器(V2)の上部(前記冷凍機の熱交換器23と同じほぼ高さ)において開口していて、還流管34から導かれた液体窒素は熱交換器23によって冷却される。なお、断熱容器(V3)内の圧力を断熱容器(V2)内の圧力より僅かに高く設定することにより、液体窒素は還流管34を経由して還流される。
(2)冷却側断熱容器
(イ)断熱容器(V3)
冷却側断熱容器に超電導部材を液体窒素中に浸漬してその超電導部材を冷却するための断熱容器(V3)41が設けられている。
該断熱容器(V3)は、断熱容器(V1)及び断熱容器(V2)と同様にその外周壁部および底壁部が内槽49Aと外槽49Bからなる真空断熱構造43とされ、また上端には開閉可能な蓋部42が設けられている。この蓋部は、断熱容器(V1)及び断熱容器(V2)と同様に容器本体に対して真空封止可能な状態で接続されていることが好ましい。この断熱容器(V3)の蓋部には安全弁66や窒素ガス供給手段61、送液管33及び還流管34を設けることができるが、この安全弁66は、内部圧力が外部の大気圧に対して例えば+30kPaを越えた場合に開放されて、内部圧力を大気圧〜大気圧+30kPaの範囲内、すなわち断熱容器(V2)より若干高い圧力に保持するように機能させることができる。超電導部材は、断熱容器(V3)内で断熱容器(V2)から送られてくるサブクール液体窒素中に浸漬させ、冷却される。
(ロ)ガラス繊維紙充填層(L3)
断熱容器(V3)内のガラス繊維紙充填層(L3)については、前述の通り、窒素ガス空間部と、前記非特許文献1に記載されている、温度勾配層が液体窒素の液面と、液面から15〜30mmの深さまでの間で温度勾配層が形成されるという事実を考慮すると、その厚みは20mm以上であることが好ましく、20〜50mmがより好ましい。その他の点については、前記第1に態様で記載した断熱容器(V1)内のガラス繊維紙充填層(L1)と同様である。
(ハ)超電導部材
断熱容器(V3)内に配設される、冷却対象である超電導部材は、前記第1に態様で記載した超電導部材と同様である。尚、図2に示すように、超電導部材27はガラス繊維紙充填層(L3)よりも下部方向に配設されることが好ましい。超電導部材27は図2に示すように蓋部から支持部材20A,20Bによって吊下げた状態とすることができる。
〔3〕第3の態様の「超電導部材冷却装置」
本発明の第3の態様の「超電導部材冷却装置」は、少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素が収容されると共に、断熱容器(V4)に該サブクール液体窒素を供給するための送液ポンプが該サブクール液体窒素中に挿入されていて、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機を備えた、断熱容器(V2)と、
サブクール液体窒素が断熱容器(V2)から循環されて、液面上に空間が形成されないように充填されていると共に、冷却対象の超電導部材が該サブクール液体窒素中に浸漬されている断熱容器(V4)とからなる、超電導部材冷却装置であって、
断熱容器(V2)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V2)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L2)を設けることを特徴とする。
以下に図3を用いて本発明の第3の態様を説明するが、該第3の態様は以下の図3の例示に限定されるものではない。
図3は、第3の態様の超電導部材冷却装置を説明するための略解図であり、該超電導部材冷却装置には上記したように、超電導部材を冷却するための液体窒素の供給側断熱容器として、断熱容器(V2)31、並びに該容器内に収納されたサブクール液体窒素14、冷凍機21、ガラス繊維紙充填層(L2)16、及び送液ポンプ32が含まれ、更に付帯設備として液体窒素供給手段51と窒素ガス供給手段55を設けることができ、
供給側断熱容器から移送されてきた液体窒素で超電導部材を冷却する冷却側断熱容器として、断熱容器(V4)71及び冷却対象の超電導部材27が設けられている。
第3の態様の超電導部材冷却装置は、第2の態様の超電導部材冷却装置と対比して断熱容器(V4)の内部に窒素気相部が形成されないように液体窒素が充填されているので、温度勾配層が存在しないという特徴を有している。以下に第3の態様の超電導部材冷却装置を、供給側断熱容器と冷却側断熱容器に分けて説明する。
(1)供給側断熱容器
超電導部材を冷却するための液体窒素の供給側断熱容器としての、(イ)断熱容器(V2)、(ロ)ガラス繊維紙充填層(L2)、(ハ)冷凍機、及び(ニ)送液ポンプは、第2の態様の供給側断熱容器に記載した内容とほぼ同じである。尚、断熱容器(V2)には第1の態様に記載したと同様に、蓋部12に負圧にも耐用可能な安全弁26、送液管33及び還流管34が設けられ、更に付帯設備として第1の態様に記載したと同様の液体窒素供給手段51と窒素ガス供給手段55を設けることができる。
(2)冷却側断熱容器
供給側断熱容器から移送されてきたサブクール液体窒素で超電導部材を冷却する冷却側断熱容器として、断熱容器(V4)71は、図3に示す通り、その外周壁部および底壁部が内槽79Aと外槽79Bからなる真空断熱構造73とされ、送液管33と還流管34部を除いて密封構造を形成している。
送液ポンプにより送液管33を通して断熱容器(V2)から断熱容器(V4)に送液されたサブクール液体窒素は断熱容器(V4)内で超電導部材によって加熱されて、温度上昇したサブクール液体窒素は断熱容器(V4)が上記密封構造となっているために還流管を経由して断熱容器(V2)に還流される。断熱容器(V4)内に配設された冷却対象である超電導部材27は、前記第1の態様及び第2の態様で記載した超電導部材と同様である。超電導部材27は図3に示すように内槽79Aから支持部材20A,20Bによって吊下げた状態とすることができる。
〔4〕サブクール液体窒素の温度維持方法
本発明の第4の態様の「断熱容器内のサブクール液体窒素の温度維持方法」は、
少なくとも、窒素ガス空間を残して収容されている断熱容器(V0)内のサブクール液体窒素の温度維持方法において、
該サブクール液体窒素を冷却するための冷凍機の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬し、
断熱容器(V0)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V0)の壁面間に空隙が形成されないように充填したガラス繊維紙充填層(L0)を設けて、該ガラス繊維紙充填層(L0)内にサブクール液体窒素の温度勾配層を保持することを特徴とする。
サブクール液体窒素の温度維持方法は、第1ないし3の態様のいずれにも適用することができ、例えば図1に示すように、断熱容器(V0(図1ではV1、以下、同じ))内に収納された液体窒素内に冷凍機の冷却ヘッドを挿入し、液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡ってガラス繊維紙充填層(L0(図1ではL1、以下、同じ))を設けて、断熱容器(V0)に付帯設備として、例ば液体窒素供給手段と、窒素ガス供給手段を設けることが可能な装置において、
ガラス繊維紙充填層(L0)に液体窒素の液面を配置し、かつ該充填層の液面から下方へ向かって温度勾配層を保持して、液面の液体窒素を負圧〜大気圧下の飽和液体窒素とし、ガラス繊維紙充填層(L0)より下層部にある液体窒素をサブクールの液体窒素まで冷却する温度維持(温度の制御も伴う)方法である。
断熱容器(V0)、冷凍機、ガラス繊維紙充填層(L0)は、それぞれ第1の態様、第2の態様、又は第3の態様に記載した、断熱容器(V1、V2、またはV3)、冷凍機、ガラス繊維紙充填層(L1、L2、またはL3)と同様である。この超電導部材冷却装置に使用可能な断熱容器(V0)には、図1に示すような窒素ガス供給手段55により、窒素ガス(GN)が貯蔵されている窒素ガスタンク56から、制御弁57および供給管58を介して窒素ガスが供給できる構造とすることができる。
尚、蓋部には図1に示すように負圧にも耐用可能な安全弁26を設けることができるが、この安全弁は、内部圧力が外部の大気圧に対して例えば+10kPaを越えた場合に開放されて、内部圧力を大負圧〜大気圧+10kPaの範囲内、すなわち負圧から大気圧より若干高い圧力の間に保持するように機能させることができる。
(イ)ガラス繊維紙充填層(L0)に液体窒素の液面を配置する方法
図示していないが、断熱容器(V0)には液面計を設けることが好ましく、液体窒素供給手段51から液体窒素を断熱容器(V0)に充填するときには、液面位置がガラス繊維紙充填層(L0)の中で温度勾配層を形成して保持できる位置とすることができる。
(ロ)ガラス繊維紙充填層(L0)内の温度勾配層の保持
例えば、ガラス繊維紙充填層(L0)の垂直方向の厚みが20mmの場合には、ガラス繊維紙充填層(L0)の上面から5mm程度の位置が液体窒素液面となるように液体窒素を充填して、液体窒素がサブクールされたときにガラス繊維紙充填層(L0)に温度勾配層を形成して保持する。
以下に図1を参考にして、断熱容器内のサブクール液体窒素の温度制御方法におけるスタート方法、及び継続運転方法について説明する。尚、下記説明は例示であり、本発明の第4の態様のサブクール液体窒素の温度維持方法は以下に記載する方法に限定されるものではない。
(1)スタート方法
図1に示す超電導部材冷却装置を使用した場合のスタート方法を以下に記載する。
〈1〉液体窒素供給手段51の液体窒素タンク52から制御弁53、供給管54を介して断熱容器(V0)内のガラス繊維紙充填層(L0)より下方の位置に、液体窒素(LN)を、ガラス繊維紙充填層(L0)部に液面位置が形成されるまで供給する。
この時、断熱容器(V0)内の圧力が10kPaより上昇した場合には安全弁から窒素ガスが放出されて容器内の圧力は負圧〜大気圧+10kPaの範囲内に制御される。
一方、断熱容器(V0)内が所定の圧力より低圧になる場合には窒素ガス供給手段55により、窒素ガス(GN)が貯蔵されている窒素ガスタンク56から、制御弁57と供給管58を介して窒素ガスが供給されるように準備する。
〈2〉ガラス繊維紙充填層(L0)部に液面位置が安定に形成されたら、冷凍機をスタートして液体窒素の冷却を開始する。液体窒素がサブクールされて体積が減少して液面がガラス繊維紙充填層(L0)における下方部、又は該充填層より下方に形成された場合には液体窒素タンク52から液体窒素を補充する。断熱容器(V0)内の気相部が所定の圧力より低圧になると、窒素ガス供給手段55窒素ガスが供給される。このようにして液体窒素の液面はガラス繊維紙充填層(L0)内に形成され、圧力はほぼ大気圧でバランスする。なお、液面が上昇しすぎた場合には、蓋部から液面までの距離が縮まるため侵入熱が増えるので液体窒素が蒸発し易くなり、断熱容器(V0)内の圧力が10kPaより上昇した場合には安全弁から窒素ガスが放出される。
〈3〉液面の液体窒素は大気圧での飽和温度になり、ガラス繊維紙層中にある液面のすぐ下方に温度勾配層が保持され、更にその下方にサブクール液体窒素が収容された状態になる。
尚、通常、冷凍機の冷却ヘッドは一定の能力で冷却を続けるので、サブクール液体窒素の温度調整は冷却ヘッド上部にヒータが設けられていて、ヒータのオン/オフにより所定の温度に制御される。
冷凍機の稼動を継続すれば、ガラス繊維紙層中の温度勾配層は安定してサブクール液体窒素に維持され、超電導部材を液体窒素のサブクール温度で冷却を継続することが可能になる。
(2)継続運転
本発明のサブクール液体窒素の温度維持方法で使用するガラス繊維紙層は、液体窒素の吸収性が高いので、運転を継続中に断熱容器(V0)の振動、揺動等に対して該繊維紙層内の液体窒素の流動性は微細ガラス繊維構造に起因して極めて低いので、振動、揺動等が生じてもガラス繊維紙充填層内の温度勾配層は従来の連続孔を有する多孔質断熱部材と比較して安定的に保持される。従って運転状況の安定化、超電導部材の冷却効率の向上、信頼性の向上を図ることができる。
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
上記第4の態様に記載したスタート方法に基づき、液体窒素中に冷凍機の冷却ヘッドが浸漬され、かつガラス繊維紙充填層が設けられた断熱容器内で、該ガラス繊維紙充填層内に液面が設けられると共に、液面から下方へ向かって温度勾配層が保持されている状態で、該断熱容器を振動させて、該温度勾配層の安定性を評価した。
(1)装置
〈1〉断熱容器
断熱容器(クライオスタット)は、図1に示す外周壁部および底壁部が内槽(高さ:400mm、内径:352mm)と外槽からなる真空断熱構造であり、上端には開閉可能な蓋部が設けられている。
この断熱容器には、液体窒素供給手段により、液体窒素(LN)が貯蔵されている液体窒素タンクから、液体窒素供給でき、また、窒素ガス供給手段により、窒素ガス(GN)が貯蔵されている窒素ガスタンクから、制御弁および供給管を介して窒素ガスを供給できる付帯設備が設けられている。なお蓋部には安全弁が設けられており、この安全弁は、内部圧力が外部の大気圧に対して+10kPaを越えた場合に開放されて、内部圧力を大気圧〜大気圧+10kPaの範囲内、すなわち大気圧または大気圧より若干高い圧力に保持するように設定されている。
〈2〉冷凍機
冷凍機は、鈴木商館製のGM型冷凍機(180W@80K)を使用した。冷凍機の冷却ヘッドはその上部が容器上部から160mmの位置に固定されている。
〈3〉ガラス繊維紙充填層
ガラス繊維紙充填層を構成するガラス繊維紙は、ライダルサーマル社(Lydallthermal com.)製の商品名:CryoTherm 233(登録商標)でロール状のもの(外径:12インチ(304.8mm)、内径:3インチ(76.2mm)、厚み:35インチ(889mm))をガラス繊維紙充填層の形状を形成できるように、切り取って充填した。
(2)振動、揺動方法
振幅3mm(全幅で6mm)、周波数:4Hzで振動を与えた(このときの加速度は0.193Gである)。尚、振幅:0.5〜10mm、周波数:1〜10Hzのときに、振動、揺動の影響が大きくなることが知られている。
尚、振動数と振幅と加速度の関係式は以下の通りである。
A=[(2πf)/1000×g]×d
A:加速度(G)
f:振動数(Hz)
d:振幅(mm)(*片振幅である。実際の揺れ幅は2dになる。)
g:重力加速度 9.8(m/sec
*鉄道部品の振動試験(JIS)
JIS E 4031(1989)「鉄道車両部品の振動試験方法」の(第1種試験)
断熱容器内の液体窒素の温度は白金測温抵抗体(100オーム)を用いて測定した。
[実施例1]
(1)実験方法
(1−1)装置
断熱容器(クライオスタット)の空間部の上部に垂直方向に50mmの空間部を設けて厚み40mmのガラス繊維紙充填層(仕切板なし)を充填した。該繊維紙充填層の上面と下面をステンレス板により挟み込む構造とし、該ステンレス板はスタットボルトで蓋部から吊り下げナットで固定する構造とした。尚、断熱容器内の冷却ヘッドより下部に、超電導部材の代わりにヒータ(熱量:最大200W)を設けた。
(1−2)実験方法
断熱容器内に大気圧での飽和温度(77K程度)の液体窒素をガラス繊維紙充填層の上面部から10mm下側に液面が形成されるまで供給して液面を安定させた。尚、該液面は液面計により確認した。
冷凍機の運転を開始するとガラス繊維紙充填層に速やかに、温度勾配層が形成・保持された。液面の液体窒素は大気圧での飽和温度(77K程度)が維持され、ガラス繊維紙充填層より下部の液体窒素はサブクール(64K程度)に冷却され、温度勾配層は安定化された。
温度勾配層が安定化されてから、60分後に、該断熱容器に振動を加えた、気相部の減圧状態を計測することで液体窒素の撹拌状態を観察した。
(2)実験結果
振動を開始後45分間経過まで断熱容器内に減圧が発生しなかった。このことから該45分間は温度勾配層が安定に保持されたことが確認された。
[実施例2]
実施例1で使用したと同様の断熱容器と冷凍機を使用して、4つの厚さ10mmガラス繊維紙充填層間に1mm厚みのステンレス仕切板(容器壁部とのクリアランス:1mm)を配設した。
実施例1と同様にして、断熱容器内に大気圧での飽和温度(77K程度)の液体窒素をガラス繊維紙充填層の上面部から10mm下側に液面が形成されるまで供給して液面を安定させた。次に、冷凍機を稼動して、液体窒素をサブクールし、液面の液体窒素は大気圧での飽和温度(77K程度)が維持され、ガラス繊維紙充填層より下部の液体窒素はサブクール(64K程度)に冷却され、温度勾配層は安定化された。
温度勾配層が安定化してから、60分後に、該断熱容器に振動を加えた、気相部の減圧状態を計測することで液体窒素の撹拌状態を観察した。
振動を開始後60分間経過まで断熱容器内に減圧が発生しなかった。このことから該60分間は温度勾配層が安定に保持されたことが確認された。
[比較例1]
実施例1で使用したと同様の断熱容器と冷凍機を使用して、前記ガラス繊維紙充填層の代わりに厚みが20mmのポリウレタンフォーム層(イノアック社製、商品名:モルトフィルター(型番:MF−20)を仕切板を挟んで2枚積層した。該ポリウレタンフォーム層上に仕切板を挟んで、更に厚み30mmの発泡ポリエチレン層(旭化成(株)製、商品名:サンテックフォーム(型番:Q−25))を配設した。
断熱容器内に大気圧での飽和温度(77K程度)の液体窒素をポリウレタンフォーム層の下面部から30mm上側に液面が形成されるまで供給して液面を安定させた。尚、該液面は液面計により確認した。
上記以外は実施例1に記載したと同様にして冷凍機を稼動して、液体窒素をサブクールし、液面の液体窒素は大気圧での飽和温度(77K程度)が維持され、ガラス繊維紙充填層より下部の液体窒素はサブクール(64K程度)に冷却され、温度勾配層は安定化された。
温度勾配層が安定化されてから、60分後に、該断熱容器に振動を加えた、気相部の減圧状態を計測することで液体窒素の撹拌状態を観察した。
振動を開始後後直ちに断熱容器内に瞬時に−80kPaまでの減圧が発生した。このことから振動開始直後にポリウレタンフォーム層中の温度勾配層は保持されなくなったことが確認された。
11 断熱容器(V1)
12 蓋部
13 真空断熱構造
14 液体窒素
15 空間部
16 ガラス繊維紙充填層(L1、L2)
17 仕切板
18 液体窒素液面
19A 内槽
19B 外槽
20A 支持部材
20B 支持部材
21 冷凍機
22 シリンダ部
23 熱交換器
24 ヒータ
25 冷却ヘッド
26 安全弁
27 超電導部材
31 断熱容器(V2)
32 送液ポンプ
33 送液管
34 還流管
41 断熱容器(V3)
42 蓋部
43 真空断熱構造
44 液体窒素
45 空間部
46 ガラス繊維紙充填層(L3)
47 仕切板
48 液体窒素液面
49A 内槽
49B 外槽
51 液体窒素供給手段
52 液体窒素タンク
53 制御弁
54 供給管
55 窒素ガス供給手段
56 窒素ガスボンベ
57 制御弁
58 供給管
61 窒素ガス供給手段
62 窒素ガスボンベ
63 制御弁
64 供給管
66 安全弁
71 断熱容器(V4)
73 真空断熱構造
74 液体窒素
79A 内槽
79B 外槽

Claims (5)

  1. 少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素を収容する断熱容器(V1)と、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機と、該サブクール液体窒素中に浸漬される、冷却対象の超電導部材とからなる超電導部材冷却装置において、
    断熱容器(V1)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該ガラス繊維紙間及び該ガラス繊維紙と断熱容器(V1)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L1)を設けることを特徴とする、超電導部材冷却装置。
  2. 少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素が収容されると共に、断熱容器(V3)に該サブクール液体窒素を供給するための送液ポンプが該サブクール液体窒素中に挿入されていて、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機を備えた、断熱容器(V2)と、
    液面上に窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素が断熱容器(V2)から循環されて収容されると共に、冷却対象の超電導部材を該サブクール液体窒素中に浸漬するための断熱容器(V3)とからなる超電導部材冷却装置において、
    前記断熱容器(V2)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V2)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L2)、
    及び前記断熱容器(V3)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、前記超電導部材の上面部又は上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V3)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L3)、を設けることを特徴とする、超電導部材冷却装置。
  3. 少なくとも、窒素ガス空間を残してサブクール液体窒素が収容されると共に、断熱容器(V4)に該サブクール液体窒素を供給するための送液ポンプが該サブクール液体窒素中に挿入されていて、冷却用の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬させる冷凍機を備えた、断熱容器(V2)と、
    サブクール液体窒素が断熱容器(V2)から循環されて、液面上に空間が形成されないように充填されていると共に、冷却対象の超電導部材が該サブクール液体窒素中に浸漬されている断熱容器(V4)とからなる、超電導部材冷却装置であって、
    断熱容器(V2)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V2)の壁面間に空隙が形成されないように充填した、サブクール液体窒素の温度勾配層を保持するためのガラス繊維紙充填層(L2)を設けることを特徴とする、超電導部材冷却装置。
  4. 前記ガラス繊維紙充填層層(L1、L2とL3、又はL2)の垂直方向の厚みが20mm以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の超電導部材冷却装置。
  5. 少なくとも、窒素ガス空間を残して収容されている断熱容器(V0)内のサブクール液体窒素の温度維持方法において、
    該サブクール液体窒素を冷却するための冷凍機の冷却ヘッドを液体窒素の液面よりも下方の位置まで浸漬し、
    断熱容器(V0)内の液体窒素の液面よりも上部の位置から、冷却ヘッドの上面部又は冷却ヘッドの上面部より上の位置までの範囲に渡って、液体窒素に対し吸収性を有するガラス繊維紙を該繊維紙間及び該繊維紙と断熱容器(V0)の壁面間に空隙が形成されないように充填したガラス繊維紙充填層(L0)を設けて、該ガラス繊維紙充填層(L0)内にサブクール液体窒素の温度勾配層を保持することを特徴とする、断熱容器内のサブクール液体窒素の温度維持方法。
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