JP2012047747A - バイオセンサー装置、及びそれを用いた濃度測定方法 - Google Patents

バイオセンサー装置、及びそれを用いた濃度測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被験物質を高感度に検出可能であり、高密度に前記被測定物あるいは捕捉用物質が固定化可能であり、かつ操作性のよい担体を備え、迅速に被験物質の濃度が測定可能なバイオセンサー装置、及び該バイオセンサー装置を用いた被験物質の濃度測定方法を提供する。
【解決手段】流路を有し、流路中に繊維状物質からなると共に、液体の被測定試料を通液可能な膜状担体13が固定されている測定用セルと、測定用セルを装着可能なセルホルダと、セルホルダに装着された測定用セル中の前記膜状担体13に対し、流路を通して光を照射する光照射部30と、膜状担体13からの透過光を流路を通して受光し、受光した光量を測定する受光部40と、測定用セルに着脱可能に接続され、流路に液体の被測定試料を供給して膜状担体13に均一に通液させる通液手段と、を備えるバイオセンサー装置である。
【選択図】図3

Description

本発明は、免疫反応を利用した被験物質の定量に供するバイオセンサー装置、及びそれを用いた濃度測定方法に関する。
近年、環境中の微量物質等の検出方法や定量方法として、従来の物理化学的な方法よりも極めて高い選択性を有し、簡便かつ迅速な免疫学的測定法(イムノアッセイ)が提案されている。
例えば、環境汚染物質であるPCBの分析方法としては、公定法として、高分解能ガスクロマトグラフ−高分解能質量分析(HRGC−HRMS)や、電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ法(GC−ECD法)が用いられている(非特許文献1参照)。これらの方法は分解能が高く、また定量下限も低いが、分析に要する時間が長く、分析の妨害となる夾雑成分を除去する試料の操作が煩雑であり、コスト負担が大きいという問題がある。このため、簡便かつ迅速な分析方法で、測定現場で簡易に測定可能な方法として、抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法(イムノアッセイ)が提案されている。
前記イムノアッセイのうち、最も一般的な測定方法は、酵素免疫測定法(ELISA)である。前記ELISA法としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、エンザイムイムノアッセイ(EIA、ELISA)等が知られている。
しかしながら、前記ELISA法では、被験物質の検出に特殊な機器を必要としたり、試料の前処理や測定に長時間を要したりする等の問題点がある。このため、操作が簡単なイムノクロマト法が提案されている。
しかし、前記ELISA法、及びイムノクロマト法においては、検出に根本的な問題がある。両法において、高い検出感度を得るには、被験物質を担体上で2分子の抗体で挟み込む、いわゆる一般に知られるサンドイッチ法を用いるが、被験物質が、前記PCB類のように低分子化合物である場合は、サンドイッチ法が成立しない。これは、被験物質である抗原が低分子であるため、生体高分子である抗体が被験物質に結合すると、抗体の結合部位に被験物質が埋もれてしまい、他の抗体が結合することができなくなるためである。
このため、通常ELISA法、及びイムノクロマト法を代表とするイムノアッセイの殆どの場合が、サンドイッチ法ではなく、競合法を採用している。
競合法は、前記被験物質を検出する際に、被験物質である前記低分子化合物と、前記低分子化合物又は前記低分子化合物に対する類似化合物とを、抗体に対する結合において競合させる方法である。しかし、この競合法は、抗体に対して試料中の被験物質と被験物質の類似化合物が競合的に結合する結果、本来の抗体の有する結合能力までの検出感度が得られにくいという原理的な短所がある。
また、競合法には、前記被験物質を検出する際に、担体上に前記低分子化合物又は前記低分子化合物に対する類似化合物を固定し、被験物質と抗体の結合溶液を担体と接触させる場合もある。しかし、この場合にも、抗体が液中の被験物質と担体上の低分子化合物又は前記低分子化合物に対する類似化合物とに競合的に結合するため、本来の抗体の有する結合能力までの検出感度が得られにくい。
これに対し、例えば、被験物質を含む試料中に、前記被験物質に対する抗体を反応させ、前記試料中において前記被験物質を結合していないフリーの前記抗体を検出することにより、前記試料中の被験物質の検出を行う方法(例えば、特許文献1参照)や、被分析物質に特異的に結合する捕捉試薬を固定化した担体上に、被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬と検体とを接触させて、該被分析物質を検出する方法(例えば、特許文献2参照)等のフロースルー方式の測定法が提案されている。しかしながら、前記フロースルー免疫測定法においても、前記ELISA法と同様に、試料液中の被験物質あるいは捕捉用物質の間に競合的な結合が起きるため、本来の抗体の有する結合能力までの検出感度は得られていない。
前記担体と前記試料の接触時間を極めて短くすることにより、前記担体上に固定した被験物質あるいは捕捉用物質(例えば、被測定物が抗体の場合、該抗体が特異的に認識する抗原又は擬似抗原であり、被測定物が抗原の場合、該抗原を特異的に認識する抗体)と、前記試料液中の被験物質あるいは捕捉用物質の間に競合的な結合が起きにくくなり、その結果良好な検出感度が得られると考えられる。
前記フロースルー方式の測定方法に用いる装置においては、検出の感度や定量性を確保するために、限られた時間に多くの被測定物あるいは捕捉用物質を捕捉可能な担体を備えることが必要となる。このため、高密度に前記被測定物あるいは捕捉用物質が固定化され、かつ操作性のよい担体を備えたバイオセンサー装置が求められるが、そのような装置は未だ開発されていないのが現状である。
特開2004−138550号公報 特開2005−214670号公報
「絶縁油中のポリ塩素化ビフェニル(PCB)の分析方法規定」(電気技術基準調査委員会編集、社団法人日本電気協会発行、平成3年9月30日発行)
本発明は従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、被験物質を高感度に検出可能であり、高密度に前記被測定物あるいは捕捉用物質が固定化可能であり、かつ操作性に優れた担体を備え、迅速に被験物質の濃度が測定可能なバイオセンサー装置、及び該バイオセンサー装置を用いた被験物質の濃度測定方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 液体の被測定試料を通液可能な膜状担体を備える測定用セルと、
前記測定用セルを装着可能なセルホルダと、
前記セルホルダに装着された前記測定用セル中の前記膜状担体に対し、光を照射する光照射部と、
前記膜状担体からの反射光及び透過光の少なくともいずれかを受光し、受光した光量を測定する受光部と、
を備えることを特徴とするバイオセンサー装置である。
<2> 測定用セルが、流路を有し、該流路中に膜状担体が固定されてなる前記<1>に記載のバイオセンサー装置である。
<3> 膜状担体が、繊維状物質からなる前記<1>から<2>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<4> 膜状担体が、被験物質、及びそのアナログ、並びに被験物質に対する抗体の少なくともいずれかが固定されてなる前記<1>から<3>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<5> 受光部により受光した光量を、電気信号の信号強度として計測可能な測定手段を備える前記<1>から<4>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<6> 光照射部が、膜状担体に単色光を照射する前記<1>から<5>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<7> 光照射部が、複数の単色光からなる光を発光させる光源と、複数の単色光からなる光から、一の単色光のみを選択可能な単色光選択部とを備え、
前記単色光選択部によって選択された一の単色光を膜状担体に照射する前記<1>から<5>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<8> 光照射部が、膜状担体に複数の単色光からなる光を照射し、
受光部が、複数の単色光からなる光から、一の単色光のみを選択可能な単色光選択部を備え、前記膜状担体からの反射光及び透過光の少なくともいずれかのうち、前記単色光選択部によって選択された一の単色光を受光する前記<1>から<5>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<9> 光照射部が、互いに異なる単色光を発光する二以上の光源と、一の単色光のみを選択可能な単色光選択部とを備え、
前記二以上の光源から発光された二以上の単色光のうち、前記単色光選択部により選択された一の単色光を膜状担体に照射する前記<1>から<5>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<10> 光照射部と受光部との間に反射筒を備え、
前記反射筒が、膜状担体を内包するように光照射部から照射される光の照射方向に貫通し、その内面が前記膜状担体からの反射光を反射する前記<1>から<9>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<11> 被測定試料の測定により得られた光量と、基準試料の測定により得られた光量とから相対吸光度を計算する相対吸光度計算手段を備える前記<1>から<10>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<12> 測定用セルに着脱可能に接続され、膜状担体に液体の被測定試料を供給して通液させる通液手段を備える前記<1>から<11>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<13> 通液手段が、液体の被測定試料を加圧して膜状担体へ通液する手段である前記<12>に記載のバイオセンサー装置である。
<14> 繊維状物質が、綿、絹、麻、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ナイロン、及びポリオレフィンのいずれかである<3>から<13>のいずれかに記載のバイオセンサー装置である。
<15> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のバイオセンサー装置を用い、被測定試料中の被験物質を定量することを特徴とする濃度測定方法である。
<16> 被測定試料を通液した後の測定用セルをセルホルダに装着し、前記セルホルダに装着された前記測定用セル中の膜状担体に対し、光照射部から光を照射し、受光部で前記膜状担体からの反射光及び透過光の少なくともいずれかを受光し、受光した光量を測定する前記<15>に記載の濃度測定方法である。
<17> 被験物質Xに対する抗体Yを固定化した膜状担体に、
前記被験物質Xを標識物質で標識されてなる標識被験物質X’を添加した被測定試料を通液し、
前記膜状担体上の前記抗体Yに対し、前記被測定試料中の被験物質Xと、前記標識被験物質X’とを反応させ、
前記膜状担体上の前記抗体Yに結合した前記標識被験物質X’の量を、前記膜状担体の反射光量及び透過光量のいずれかとして検出し、該反射光量及び透過光量のいずれかから、前記被験物質Xと前記標識被験物質X’との反応の度合いを求め、
該反応の度合いから、前記被測定試料中の被験物質Xの濃度を算出する前記<15>から<16>の濃度測定方法である。
<18> 被験物質X及び該被験物質のアナログZのいずれかを固定化した膜状担体に、
前記被験物質Xに対する抗体であって標識物質で標識されてなる標識抗体Yを添加した被測定試料を通液し、
前記膜状担体上の前記被験物質X及び前記被験物質のアナログZのいずれかに対し、前記被測定試料中の前記被験物質Xと結合していない前記標識抗体Yを結合させ、
前記標識抗体Yの量を、前記膜状担体の反射光量及び透過光量のいずれかとして検出し、該反射光量及び透過光量のいずれかから、前記被測定試料中の前記被験物質Xの濃度を算出する前記<15>から<16>のいずれかに記載の濃度測定方法である。
<19> 被験物質X及び該被験物質のアナログZのいずれかを固定化した膜状担体に、
前記被験物質に対する抗体Yを添加した被測定試料を通液し、
前記膜状担体上の前記被験物質X及び前記被験物質のアナログZのいずれかに対し、前記被測定試料中の前記被験物質Xと結合していない前記抗体Yを結合させ、
前記抗体Yに、該抗体Yに対する二次抗体であって標識物質で標識されてなる標識抗体Y’を結合させ、
前記標識抗体Y’の量を、前記膜状担体の反射光量及び透過光量のいずれかとして検出し、該反射光量及び透過光量のいずれかから、前記被測定試料中の前記被験物質Xの濃度を算出する前記<15>から<16>のいずれかに記載の濃度測定方法である。
<20> 標識物質が酵素、放射性同位元素、蛍光物質、及び着色微粒子、並びにこれらにより標識された抗体のいずれかである前記<15>から<19>のいずれかに記載の免疫反応測定方法である。
<21> 被験物質が、PCB、ダイオキシン、ホルモン、ビタミン類、農薬、及び重金属のいずれかである前記<15>から<20>のいずれかに記載の免疫反応測定方法である。
<22> 被験物質がPCBであり、下記構造式(1)で表される擬似抗原を固定化した膜状担体に、抗PCB抗体を添加した被測定試料を通液し、
前記膜状担体上の前記擬似抗原に対し、前記被測定試料中のPCBと結合していない前記抗PCB抗体を結合させた後、
前記抗PCB抗体に対する二次抗体であって、標識物質で標識されてなる二次抗体を結合させ、
前記二次抗体の標識物質の量を、前記膜状担体の反射光量及び透過光量のいずれかとして検出し、該反射光量及び透過光量のいずれかから、前記被測定試料中のPCBの濃度を算出する前記<15>から<21>のいずれかに記載の濃度測定方法である。
ただし、構造式(1)中、Xはタンパク質を表す。
本発明によると、被験物質を高感度に検出可能であり、高密度に前記被測定物あるいは捕捉用物質が固定化可能であり、かつ操作性に優れた担体を備え、迅速に被験物質の濃度が測定可能なバイオセンサー装置、及び該バイオセンサー装置を用いた被験物質の濃度測定方法を提供することができる。
図1は、本発明のバイオセンサー装置の概念図の一例を示す模式図である。 図2は、測定用セルの平面図、及び断面図の一例を示す模式図である。 図3は、図1の断面図の一例である。 図4は、実施例1の結果を示すグラフ、及び膜状担体の写真である。 図5は、実施例2の結果を示すグラフ、及び膜状担体の写真である。
(バイオセンサー装置)
本発明のバイオセンサー装置は、液体の被測定試料を通液可能な膜状担体を備える測定用セルと、前記測定用セルを装着可能なセルホルダと、前記セルホルダに装着された前記測定用セル中の前記膜状担体に対し、光を照射する光照射部と、前記膜状担体からの反射光及び透過光の少なくともいずれかを受光し、受光した光量を測定する受光部と、を備え、必要に応じて適宜選択した測定手段、通液手段、相対吸光度測定手段等のその他の手段を備える。
前記バイオセンサー装置の概念図の一例を図1に、測定用セルの概念図を図2に示す。
前記バイオセンサー装置は、例えば、図2に平面図及び断面図を示すような、液体の被測定試料の流路12及び前記被測定試料を通液可能な膜状担体13を備える測定用セル10と、前記測定用セル10を装着可能なセルホルダ21と、前記セルホルダ21に装着された前記測定用セル10中の前記膜状担体13に対し、光を照射する光照射部30と、前記膜状担体からの反射光及び透過光の少なくともいずれかを受光し、受光した光量を測定する受光部14とを備え、光照射部12及び受光部14を遮光状態で収容するハウジング20を備えているものが挙げられる。
<測定用セル>
前記測定用セルとしては、液体の被測定試料を通液可能な膜状担体を備える限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記測定用セルの形状としては、例えば、流路を有し、該流路中に膜状担体が配置されてなる形状が好ましく、例えば、図2に示すように、流路12中に、前記膜状担体13が、支持体11に挟持されてなるものが挙げられる。
前記流路としては、少なくとも前記液体の被測定試料が通過可能である限り特に制限はなく、いわゆる開口部であってもよい。
前記測定用セルの前記支持体の素材としては、液体の被測定試料を通液させるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ナイロン、ポリオレフィン等の合成樹脂、ステンレス等の金属、ガラスなどが挙げられる。
<膜状担体>
前記膜状担体としては、前記測定用セル中に備えられ、前記液体の被測定試料を通液可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、繊維状物質からなることが好ましく、前記被験物質及び前記補足用物質のいずれかが固定化されてなることが好ましい。
前記繊維状物質としては、綿、絹、麻等の天然繊維、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ナイロン、ポリオレフィン等の合成繊維、及びこれらの混合体などが挙げられる。
前記繊維状物質からなる前記膜状担体としては、例えば、織物、編物、不織布、並びにファイバやフィラメントを一定容積内に充填して膜状としたもの、及び単に絡合させて膜状としたものなどが挙げられる。
前記繊維状物質からなる前記膜状担体としては、天然繊維からなる不織布が好ましい。前記天然繊維の中でも、繊維が数μm程度に細く、大きな比表面積を有し、高い固定化効率を示すとともに、親水性が高く、通液性等にも優れるため、綿がより好ましい。
前記繊維状物質の繊維径としては、例えば、0.5〜10μmが好ましい。
前記膜状担体における前記繊維状物質の厚み、及び密度としては、対象となる被測定試料の粘度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、均一な流速および高い固定化効率を得るためには例えば50〜200cm/cm/sec程度の通気性を得られる密度に調整することが好ましい。
前記膜状担体は、前記繊維状物質を所望の形状に成形して調製してもよく、シート状に成形された前記繊維状物質からなる材料を、所望のサイズ及び形状に公知の方法で裁断や打抜することにより調製してもよい。
また、前記膜状担体の形状としては、前記測定セル内に配置可能である限り、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。前記測定セル内においては、前記光照射部からの光が照射される位置に配置される。
前記繊維状物質からなる前記膜状担体を用いることにより、従来の固相担体として用いられる試験管壁やビーズ等に比べて、単位容積あたりの前記被測定溶液の接触面積を大きくすることができ、高密度かつ多量に擬似抗原を固定することができる。
また、前記被測定試料を前記繊維状物質からなる前記膜状担体に通液させることにより、前記膜状担体に固定化された擬似抗原に対し、抗体を累積的に結合させることができ、測定感度を高めることができる。
前記膜状担体には、前記被験物質及び前記補足用物質の少なくともいずれかが固定化されてなることが好ましく、前記補足用物質としては、検出対象(捕捉対象)である物質に結合親和性を有する物質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記被験物質のアナログ(以下、「擬似抗原」ということがある)、前記被験物質に対する抗体、2次抗体、抗体結合性蛋白質などが挙げられる。
前記膜状担体に対し、前記被験物質及び前記補足用物質を固定化する方法としては、前記被験物質及び前記補足用物質を変性乃至失活化させない方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被験物質及び前記補足用物質を、前記膜状担体に直接自然吸着させる方法、イオン結合や共有結合などにより結合させる方法、適当なスペーサ物質を介して間接的に結合固定する方法等が挙げられる。前記自然吸着させる方法としては、例えば、前記被験物質及び前記補足用物質を、適宜タンパク質等と混合した溶液を調製し、該溶液中に前記膜状担体を投入して吸着させる方法が挙げられる。
前記膜状担体を備えた前記測定用セルは、一体型のディスポーザブルセルの態様としてもよく、前記膜状担体のみを交換可能な構造として支持体を繰り返し使用可能な態様としてもよい。
図3に、図1に示す前記バイオセンサー装置概念図の断面図の一例を示す。図3に示すように、光照射部30は、光源31及びスリット32を備え、受光部40は、フォトダイオード41を備える。
<光照射部>
前記光照射部としては、少なくとも光源を備え、前記測定セル中の前記膜状担体に光を照射可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、必要に応じて選択する単色光を変更可能な前記単色光選択部を備える。
前記光源としては、例えば、レーザ、発光ダイオード、ハロゲンランプ、タングステンランプ、等が挙げられ、これらの中でも、発光ダイオードが好ましい。
前記光源から発光する光が二以上の単色光である場合、及び二以上の前記光源から二以上の単色光が発光する場合には、前記膜状担体に照射される光を、前記単色光選択部によって適宜選択した単色光とすることが好ましい。
このようにして、前記膜状担体に照射する光を単色光とし、さらにその単色光を他の単色光に変更することにより、前記被測定試料中の二以上の発色物質の反射光量又は透過光量を測定することができる。
<受光部>
前記受光部としては、前記光照射部から前記膜状担体に照射された光のうち、前記膜状担体からの反射光及び透過光のいずれかを受光し、受光した光量を測定可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、必要に応じて選択する単色光を変更可能な前記単色光選択部を備える。
前記光照射部から照射される光が二以上の単色光であり、前記膜状担体からの反射光又は透過光が二以上の単色光である場合には、前記単色光選択部によって適宜選択した単色光を受光することが好ましい。
このようにして、受光する光を単色光とし、さらにその単色光を他の単色光に変更することにより、前記被測定試料中の二以上の発色物質の反射光量又は透過光量を測定することができる。
前記バイオセンサー装置は、前記受光部により受光した光量を、電気信号の信号強度として計測可能な測定手段を備えることが好ましい。
前記測定手段は、前記受光部と接続され、前記受光部により受光した光量を、電気信号の信号強度として変換し、出力する。
また、前記バイオセンサー装置は、前記光照射部と前記受光部との間に反射筒を備えることが好ましい。
前記反射筒は、前記膜状担体を内包するように光照射部から照射される光の照射方向に貫通し、その内面が前記膜状担体からの反射光を反射するように構成されており、前記膜状担体により反射された光を収束することができるため、該反射筒を備えることにより、測定感度が向上する。
さらに、前記バイオセンサー装置は、前記被測定試料の測定により得られた光量と、基準となる試料の測定により得られた光量とから相対吸光度を計算する相対吸光度計算手段を備えることが好ましい。
<通液手段>
前記測定用セルは、該測定用セルに着脱可能に接続された通液手段により、被測定試料が前記膜状担体に通液されることが好ましい。
前記通液手段により被測定試料が通液された後、前記測定用セルは前記バイオセンサー装置中のセルホルダに設置される。
前記通液手段は、前記バイオセンサーに備えられていることが好ましい。
前記通液手段は、前記膜状担体に対し、前記液体の被測定試料が均一に流通するよう、前記液体の被測定試料を加圧して膜状担体へ通液する手段であることが好ましく、例えば、前記測定用セルの流路にシリンジ、ポンプ、遠心分離装置等を接続し、前記液体の被測定試料を加圧して送液する手段などが挙げられる。これらは、さらに流量を制御する制御部により、加圧の動作が制御されることが好ましい。
(濃度測定方法)
本発明の濃度測定方法は、本発明のバイオセンサー装置を用い、前記被測定試料中の前記被験物質を定量する方法である。
前記被測定試料は液体であり、被測定試料を通液した後の測定用セルをセルホルダに装着し、前記セルホルダに装着された前記測定用セル中の膜状担体に対し、光照射部から光を照射し、受光部で前記膜状担体からの反射光及び透過光の少なくともいずれかを受光し、受光した光量を測定することにより、前記被測定試料中の前記被験物質を定量することが好ましい。
前記被測定試料としては、液体の試料である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種排水、下水、河川水、海水、地下水等の環境試料、飲料水、清涼飲料水、酒類、牛乳等が挙げられる。
前記膜状担体は、擬似抗原等を高密度に固定することができ、さらに前記被測定試料中の前記被験物質を累積して結合させる効果が得られるため、前記被検試料が低濃度であっても、濃縮等の処理を行うことなく測定することができる。
前記被測定試料の流速としては、例えば、0.1mL/min以上であることが好ましく、0.1〜20.0mL/minがより好ましい。
前記の濃度測定方法としては、前記膜状担体に被験物質Xに対する抗体Yを固定化する第一の態様と、前記膜状担体に被験物質X及び該被験物質のアナログZのいずれかを固定化する第二の態様及び第三の態様とが挙げられる。
<第一の態様>
前記濃度測定方法の第一の態様は、被験物質Xに対する抗体Yを固定化した膜状担体に、前記被験物質Xを標識物質で標識されてなる標識被験物質X’を添加した被測定試料を通液し、前記膜状担体上の前記抗体Yに対し、前記被測定試料中の被験物質Xと、前記標識被験物質X’とを反応させ、前記膜状担体上の前記抗体Yに結合した前記標識被験物質X’の量を、前記膜状担体の反射光量及び透過光量のいずれかとして検出し、該反射光量及び透過光量のいずれかから、前記被験物質Xと前記標識被験物質X’との反応の度合いを求め、該反応の度合いから、前記被測定試料中の被験物質Xの濃度を算出する方法である。
前記被験物質Xに対する前記抗体Yとしては、前記被験物質及びそのアナログのいずれかと結合可能である限り、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法により適宜調製してもよい。
<第二の態様>
前記濃度測定方法の第二の態様は、被験物質X及び該被験物質のアナログZのいずれかを固定化した膜状担体に、前記被験物質Xに対する抗体であって標識物質で標識されてなる標識抗体Yを添加した被測定試料を通液し、前記膜状担体上の前記被験物質X及び前記被験物質のアナログZのいずれかに対し、前記被測定試料中の前記被験物質Xと結合していない前記標識抗体Yを結合させ、前記標識抗体Yの量を、前記膜状担体の反射光量及び透過光量のいずれかとして検出し、該反射光量及び透過光量のいずれかから、前記被測定試料中の前記被験物質Xの濃度を算出する方法である。
<第三の態様>
前記濃度測定方法の第三の態様は、被験物質X及び該被験物質のアナログZのいずれかを固定化した膜状担体に、前記被験物質に対する抗体Yを添加した被測定試料を通液し、前記膜状担体上の前記被験物質X及び前記被験物質のアナログZのいずれかに対し、前記被測定試料中の前記被験物質Xと結合していない前記抗体Yを結合させ、前記抗体Yに、該抗体Yに対する二次抗体であって標識物質で標識されてなる標識抗体Y’を結合させ、前記標識抗体Y’の量を、前記膜状担体の反射光量及び透過光量のいずれかとして検出し、該反射光量及び透過光量のいずれかから、前記被測定試料中の前記被験物質Xの濃度を算出する方法である。
前記膜状担体の反射光量及び透過光量のいずれかを結合した標識物質の量として測定する方法としては、特に制限はなく、前記標識物質の種類に応じて適宜選択することができる。
前記標識物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ペルオキシターゼ、アルカリフォスファターゼ、チロシナーゼ、ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、I125、I131、H等の放射性同位体、テトラメチルローダミン、ユーロピウムキレート、フルオレセインなどのイソシアネ―ト誘導物質等の蛍光物質、アクリジニウムエステル、アクリジニウムスルホン酸、ルシフェリン、NADオキシドレダクターゼ、ルシゲニン、ロシフィン、金コロイド、セレンコロイド、着色ラテックス、磁性微粒子等の着色微粒子、ピペリジン−N−オキシド誘導体、ピロリヂン−N−オキシド誘導体、オキサゾリジン−N−オキシド誘導体のようなフリーラジカルを示す物質などが挙げられ、これらの中でも酵素、放射性同位元素、蛍光物質、及び着色微粒子、並びにこれらにより標識された抗体が好ましく、着色微粒子、及び着色微粒子により標識された抗体がより好ましい。
前記測定方法としては、例えば、前記標識物質が酵素の場合、該酵素と基質とを反応させた後、反応生成物の反射吸光度、蛍光吸光度、発光強度等を前記膜状担体の反射光として測定する方法が挙げられ、前記標識物質が放射性同位体の場合は、放射線量を前記膜状担体の反射光として測定する方法、前記標識物質が蛍光物質の場合、蛍光強度を前記膜状担体の反射光として測定する方法、前記標識物質が発光物質の場合、発光強度を前記膜状担体の反射光として測定する方法、前記標識物質が着色微粒子の場合、着色により変化する前記膜状担体の透過光量を測定する方法が挙げられる。
これらの中でも、着色により変化する前記膜状担体の透過光量を測定する方法が好ましい。
これらの測定された光量は、電気信号の信号強度として変換されることが好ましく、変換された信号強度は、例えば、1秒毎に測定し、コンピュータなどに記録し、最終的に得られた残存シグナル値と、ベースライン値との差を測定値としてボルト単位で表す方法が好ましい。
前記第二の態様、すなわち、被験物質X又はそのアナログZを固定した前記膜状担体上に捕捉される標識抗体Y’の量から、前記被測定試料中の前記被験物質Xの濃度を求める方法の例を示す。
まず、ある濃度の前記標識抗体Y’を前記膜状担体上に結合させた場合の信号強度(ブランク、例えば「F0」とする)を測定しておく。次に、前記ブランク測定時と同じ濃度の前記抗体Yを添加した被測定試料を、前記膜状担体に供給し、未結合の前記標識抗体Y’を前記膜状担体上に結合させた場合の信号強度(例えば、「F1」とする)を測定する。
ここで、前記被測定試料中に被験物質Xが存在するとき、前記標識抗体Y’は前記被測定試料中の被験物質Xと結合するため、前記膜状担体上に結合する未結合の前記標識抗体Y’の量は少なくなる。したがって、信号強度がF1<F0となるとき、前記被測定試料中に被験物質Xが存在すると判断することができ、F1の低下割合が、前記被測定試料中に含まれる前記被験物質Xの量と相関関係を有するため、既知の濃度の被験物質Xを用い、予め検量線を作成しておくことにより、F1の低下割合に応じて前記被験物質Xの定量を行うことができる。
(PCB濃度測定方法)
前記濃度測定方法による本発明のPCB濃度測定方法は、下記構造式(1)で表される擬似抗原を固定化した膜状担体に、抗PCB抗体を添加した被測定試料を通液し、前記膜状担体上の前記擬似抗原に対し、前記被測定試料中のPCBと結合していない前記抗PCB抗体を結合させた後、前記抗PCB抗体に対する二次抗体であって、標識物質で標識されてなる二次抗体を結合させ、前記二次抗体の標識物質の量を、前記膜状担体の反射光量及び透過光量のいずれかとして検出し、該反射光量及び透過光量のいずれかから、前記被測定試料中のPCBの濃度を算出する方法である。
ただし、構造式(1)中、Xはタンパク質を表す。
前記PCB濃度測定方法としては、例えば、被験物質X(PCB)のアナログ(ジクロロフェノール誘導体と牛血清アルブミン)を固定化した膜状担体に、前記被験物質に対する抗体Y(抗PCB抗体)を添加した被測定試料を通液し、前被験物質(PCB)のアナログ(ジクロロフェノール誘導体と牛血清アルブミン)に対し、前記被測定試料中の前記被験物質X(PCB)と結合していない前記抗体Yを結合させ、前記抗体Yに対する標識物質(金コロイド)で標識した二次抗体Y’を結合させ、前記標識抗体Y’の量を、前記膜状担体の透過光量として検出し、該透過光量から、前記被測定試料中の前記被験物質X(PCB)の濃度を算出する方法が挙げられる。
本発明の濃度測定方法によるPCB濃度測定方法によれば、前記膜状担体上に前記擬似抗原を高密度に固定化可能であるため、被検試料中のPCBを高感度に検出可能であり、また迅速に被験物質の濃度が測定可能である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−膜状担体の調製−
ポリオレフィン繊維からなる不織布(厚み3.3mm)を、直径5mmの円形に切り出し、前記膜状担体とした。
前記膜状担体10枚を、擬似抗原としてビタミン−牛血清アルブミンの複合体を100μg/mLの濃度で含む生理食塩水30mLに入れ、一昼夜(14時間)振とうした。次いで、牛血清アルブミンを10mg/mLとなるように添加し、2時間振とうした。
擬似抗原(ビタミン−牛血清アルブミン)を固定化した膜状担体フィルターは、生理食塩水で洗浄した後、前記測定用セルに設置した。
前記測定用セルには直径3mmの孔部があり、該孔部に接続した注射器等の通液手段から、前記被測定試料を供給し、通液させることができる。
−被測定試料の調製−
抗ビタミン抗体(生化学工業社製)を、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に0.8nM程度に溶解して抗体溶液を調製した。
粉末状ビタミン(和光純薬工業社製)を、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に溶解してビタミン溶液を調製した。
前記抗体溶液を1mL分取し、ここにビタミン溶液(1g/mL)を牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水で希釈して添加し、0.001μM、0.1μM、10μM、100μMの計5種の濃度の被測定試料を調製した。基準液として、ビタミンを含まない被測定試料も調製した。
−透過光量の測定−
調製した前記被測定試料1mLを注射器にとり、0.2mL/minで前記測定用セル中に注射器からポンプによって一定流速で供給し、前記測定セル内の前記膜状担体に通液させた。
次いで、0.6mL/minで牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に1mLを通液した後、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に2nMの濃度で溶解した金コロイド標識二次抗体溶液の1mLを0.2mL/minで通液した。最後に、0.6mL/minで牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に1mLを通液して、前記膜状担体からの透過光量を測定した。
なお、前記膜状担体に対し、発光ダイオードの光を照射した。
受光した透過光量は、電気信号の信号強度として計測され、基準液による透過光量に対する信号強度を100として、各濃度の被測定試料における透過光量に対する信号強度の割合を算出し、前記被測定試料中のビタミン濃度との相関を求めた。捕捉される抗体量が多いほど、標識金コロイドに由来する膜上の赤色が濃くなり、信号値としては小さくなる。結果を図4に示す。
(実施例2)
−膜状担体の調製−
ポリオレフィン繊維からなる不織布(厚み3.3mm)を、直径5mmの円形に切り出し、前記膜状担体とした。
前記膜状担体10枚を、擬似抗原として下記構造式で表す化合物を100μg/mLの濃度で含む生理食塩水30mLに入れ、一昼夜(14時間)振とうした。次いで、牛血清アルブミンを10mg/mLとなるように添加し、2時間振とうした。
擬似抗原(ジクロロフェノール誘導体−牛血清アルブミン)を固定化した膜状担体フィルターは、生理食塩水で洗浄した後、前記測定用セルに設置した。
前記測定用セルには直径3mmの孔部があり、該孔部に接続した注射器等の通液手段から、前記被測定試料を供給し、通液させることができる。
ただし、Xは牛血清アルブミンを表す。
−被測定試料の調製−
−−抗PCB抗体の調製−−
被験物質PCBに対する抗PCBモノクローナル抗体を調製するため、3塩素化物PCB(三塩化ビフェニル)を、リンカーを介してキャリアータンパク質(スカシガイ由来のヘモシアニン(以下、「KLH」と表す))に結合した複合体を合成した。
前記複合体を抗原として、マウス(Bulb/c、メス、5週齢)に免疫した。
初回免疫は、前記抗体調製用化合物(タンパク質量として約0.3mg)を完全アジュバントに混合後、皮下注射した。該初回免疫の2週間後と4週間後に、同量の前記抗体調製用化合物を、不完全アジュバントに混合後、皮下注射した。その後、1週間以上経過した後、同量の前記抗体調製用化合物を、腹腔又は尾部静脈に注射し、その4〜5日後に脾臓を摘出した。
摘出した前記脾臓から調製した脾臓細胞を、ミエローマ細胞とともにポリエチレングリコール溶液中で2分間混合し、細胞融合を行った。
融合反応後の融合細胞を培養し、細胞融合から2週間以上経過したハイブリドーマの培養上清を用い、所望の抗PCBモノクローナル抗体の有無をスクリーニングし、抗PCBモノクローナル抗体を産生する安定なハイブリドーマを得た。該ハイブリドーマを培養し、培養上清を精製し、抗PCBモノクローナル抗体を得た。
前記抗PCB抗体を、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に0.5nM程度に溶解して抗体溶液を調製した。
PCBの異性体混合物であるカネクロール−500(GLサイエンス社製)のジメチルスルホキシド溶液を、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に溶解してPCB溶液を調製した。
前記抗体溶液を1mL分取し、ここにPCB溶液(20ppm)を、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水で希釈して添加し、2ppm、8ppm、20ppm、80ppm、200ppmの計5種の濃度の被測定試料を調製した。基準液として、PCBを含まない被測定試料も調製した。
−透過光量の測定−
調製した前記被測定試料1mLを注射器にとり、0.2mL/minで前記測定用セル中に注射器からポンプによって一定流速で供給し、前記測定セル内の前記膜状担体に通液させた。
次いで、0.2mL/minで牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に1mLを通液した後、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に2nMの濃度で溶解した金コロイド標識二次抗体溶液の1mLを0.2mL/minで通液した。最後に、0.6mL/minで牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に1mLを通液して、前記膜状担体からの透過光量を測定した。
なお、前記膜状担体に対し、発光ダイオードの光を照射した。
受光した透過光量は、電気信号の信号強度として計測され、基準液による透過光量に対する信号強度を100として、各濃度の被測定試料における透過光量に対する信号強度の割合を算出し、前記被測定試料中のビタミン濃度との相関を求めた。捕捉される抗体量が多いほど、標識金コロイドに由来する膜上の赤色が濃くなり、信号値としては小さくなる。結果を図5に示す。
図4及び図5の結果から、本発明のバイオセンサー装置を用いた本発明の濃度測定方法は、被検試料中の被験物質を効率よく高感度に定量できることが明らかになった。
本発明のバイオセンサー装置は、被験物質を高感度に検出可能であり、低コストで効率よく調製可能な担体を備え、迅速に被験物質の濃度が測定可能であるため、例えば、環境汚染物質等の低分子量の有害物質や、ビタミン様物質等の低分子量の測定に好適である。
さらに、本発明の濃度測定方法は、本発明のバイオセンサー装置を用いるため、例えば、環境汚染物質等の低分子量の有害物質や、ビタミン様物質等の低分子量の測定方法として好適である。
10 測定用セル
12 流路
13 膜状担体
14 受光部
21 セルホルダ
30 光照射部
31 光源
32 スリット
40 受光部
41 フォトダイオード

Claims (14)

  1. 流路を有し、該流路中に繊維状物質からなると共に、液体の被測定試料を通液可能な膜状担体が固定されている測定用セルと、
    前記測定用セルを装着可能なセルホルダと、
    前記セルホルダに装着された前記測定用セル中の前記膜状担体に対し、前記流路を通して光を照射する光照射部と、
    前記膜状担体からの透過光を前記流路を通して受光し、受光した光量を測定する受光部と、
    前記測定用セルに着脱可能に接続され、前記流路に液体の被測定試料を供給して前記膜状担体に均一に通液させる通液手段と、
    を備えることを特徴とするバイオセンサー装置。
  2. 通液手段が、液体の被測定試料を加圧して膜状担体へ一定流速で通液する手段である請求項1に記載のバイオセンサー装置。
  3. 繊維状物質が、綿、絹、麻、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ナイロン、及びポリオレフィンのいずれかである請求項1から2のいずれかに記載のバイオセンサー装置。
  4. 膜状担体が、被験物質、及びそのアナログ、並びに被験物質に対する抗体の少なくともいずれかが固定されてなる請求項1から3のいずれかに記載のバイオセンサー装置。
  5. 受光部により受光した光量を、電気信号の信号強度として計測可能な測定手段を備える請求項1から4のいずれかに記載のバイオセンサー装置。
  6. 被測定試料の測定により得られた光量と、基準試料の測定により得られた光量とから相対吸光度を計算する相対吸光度計算手段を備える請求項1から5のいずれかに記載のバイオセンサー装置。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載のバイオセンサー装置を用い、被測定試料中の被験物質を定量することを特徴とする濃度測定方法。
  8. 被測定試料を通液した後の測定用セルをセルホルダに装着し、前記セルホルダに装着された前記測定用セル中の膜状担体に対し、光照射部から光を照射し、受光部で前記膜状担体からの透過光を受光し、受光した光量を測定する請求項7に記載の濃度測定方法。
  9. 被験物質Xに対する抗体Yを固定化した膜状担体に、
    前記被験物質Xを標識物質で標識されてなる標識被験物質X’を添加した被測定試料を通液し、
    前記膜状担体上の前記抗体Yに対し、前記被測定試料中の被験物質Xと、前記標識被験物質X’とを反応させ、
    前記膜状担体上の前記抗体Yに結合した前記標識被験物質X’の量を、前記膜状担体の透過光量として検出し、該透過光量から、前記被験物質Xと前記標識被験物質X’との反応の度合いを求め、
    該反応の度合いから、前記被測定試料中の被験物質Xの濃度を算出する請求項7から8のいずれかに記載の濃度測定方法。
  10. 被験物質X及び該被験物質のアナログZのいずれかを固定化した膜状担体に、
    前記被験物質Xに対する抗体であって標識物質で標識されてなる標識抗体Yを添加した被測定試料を通液し、
    前記膜状担体上の前記被験物質X及び前記被験物質のアナログZのいずれかに対し、前記被測定試料中の前記被験物質Xと結合していない前記標識抗体Yを結合させ、
    前記標識抗体Yの量を、前記膜状担体の透過光量として検出し、該透過光量かから、前記被測定試料中の前記被験物質Xの濃度を算出する請求項7から8のいずれかに記載の濃度測定方法。
  11. 被験物質X及び該被験物質のアナログZのいずれかを固定化した膜状担体に、
    前記被験物質に対する抗体Yを添加した被測定試料を通液し、
    前記膜状担体上の前記被験物質X及び前記被験物質のアナログZのいずれかに対し、前記被測定試料中の前記被験物質Xと結合していない前記抗体Yを結合させ、
    前記抗体Yに、該抗体Yに対する二次抗体であって標識物質で標識されてなる標識抗体Y’を結合させ、
    前記標識抗体Y’の量を、前記膜状担体の透過光量として検出し、該透過光量から、前記被測定試料中の前記被験物質Xの濃度を算出する請求項7から8のいずれかに記載の濃度測定方法。
  12. 標識物質が、酵素、放射性同位元素、蛍光物質、及び着色微粒子、並びにこれらにより標識された抗体のいずれかである請求項7から11のいずれかに記載の濃度測定方法。
  13. 被験物質が、PCB、ダイオキシン、ホルモン、ビタミン類、農薬、及び重金属のいずれかである請求項7から12のいずれかに記載の濃度測定方法。
  14. 被験物質がPCBであり、下記構造式(1)で表される擬似抗原を固定化した膜状担体に、抗PCB抗体を添加した被測定試料を通液し、
    前記膜状担体上の前記擬似抗原に対し、前記被測定試料中のPCBと結合していない前記抗PCB抗体を結合させた後、
    前記抗PCB抗体に対する二次抗体であって、標識物質で標識されてなる二次抗体を結合させ、
    前記二次抗体の標識物質の量を、前記膜状担体の透過光量として検出し、該透過光量から、前記被測定試料中のPCBの濃度を算出する請求項7から13のいずれかに記載の濃度測定方法。
    ただし、構造式(1)中、Xはタンパク質を表す。
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