JP2012046643A - チオフェン重合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】光電変換素子の光電変換層を構成する電荷輸送性材料として有用な新規な重合体を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される構造単位を有する重合体。
Figure 2012046643

〔式(1)中、R1は、それぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示す。〕
【選択図】なし

Description

本発明は、新規チオフェン重合体に関する。
光電変換材料は、光が照射されると、その材料内の原子に束縛されていた電子が光エネルギーにより自由に動けるようになり、これによって自由電子と自由電子の抜け孔(正孔)が発生して、これら自由電子と正孔とが効率良く分離し、連続的に電気エネルギーを取り出すことが可能である。このように、光電変換材料は、光電効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換するという特性を有する。
このような特性を利用して、光電変換材料は種々の用途に応用されているが、その一つとして、太陽電池がある。太陽電池としては、例えば、低コストで製造すること等を目的とした、色素増感型太陽電池、導電性高分子を用いた固体型太陽電池が知られている。これら太陽電池においては、光電変換層の電荷輸送性材料として特定の複素環高分子とフラーレン誘導体を含有する光電変換素子等が用いられている(特許文献1及び2)。
特開2005−116617号公報 特開2006−278682号公報
近年、光電変換素子の光電変換層を構成する電荷輸送性材料として、更に有用な重合体の開発が望まれている。
したがって、本発明は、光電変換素子の光電変換層を構成する電荷輸送性材料として有用な新規重合体及びその製造方法、並びにその合成中間体を提供することを課題とする。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ベンゾチアジアゾル誘導体と、特定の置換基を導入したチオフェン誘導体とを結合した構造を繰り返し単位として有する新規重合体が、光電変換素子の光電変換層を構成する電荷輸送性材料として有用であることを見出した。
すなわち、本発明は、下記式(1);
Figure 2012046643
〔式(1)中、R1は、それぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示す。〕
で表される構造単位を有する重合体(以下、「重合体(1)」とも称する)を提供するものである。
本発明はまた、下記式(2);
Figure 2012046643
〔式(2)中、R2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はトリアルキルスズ基を示す。〕
で表される化合物(以下、「化合物(2)とも称する」)と、下記式(3);
Figure 2012046643
〔式(3)中、R1は、上記と同義であり、R3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はトリアルキルスズ基を示す。但し、R2がハロゲン原子である場合、R3はトリアルキルスズ基であり、R2がトリアルキルスズ基である場合、R3はハロゲン原子である。〕
で表される化合物(以下、「化合物(3)とも称する」)とを反応させる工程を含む、重合体(1)の製造方法を提供するものである。
本発明は更に、下記式(4);
Figure 2012046643
〔式(4)中、R5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はトリアルキルスズ基を示し、R4は、それぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数6〜20のアルキル基を示す。〕
で表わされる化合物(以下、「化合物(4)とも称する」)を提供するものである。
本発明は更にまた、下記式(5);
Figure 2012046643
〔式(5)中、Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。〕
で表される化合物(以下、「化合物(5)とも称する」)と、下記式(6);
1MgX (6)
〔式(6)中、R1及びXは、上記と同義である。〕
で表わされる化合物(以下、「化合物(6)とも称する」)の少なくとも1種とを反応させて、下記式(7);
Figure 2012046643
〔式(7)中、R1は、上記と同義である。〕
で表わされる化合物(以下、「化合物(7)とも称する)を得、次いで該化合物(7)とハロゲン化剤又はトリアルキルスズハライドとを反応させる工程を含む、化合物(3);
Figure 2012046643
〔式(3)中、R1及びR3は、上記と同義である。〕
で表わされる化合物の製造方法を提供するものである。
本発明の重合体は、広範囲の光を吸収し、電荷輸送能及び熱安定性に優れる。したがって、本発明の重合体は、光電変換素子の光電変換層を構成する電荷輸送性材料として有用である。
また、本発明によれば、上記重合体の製造に有用な中間体、及びそれを用いた重合体の製造方法が提供される。
化合物(b)の1H−NMRスペクトルを示す図である。 化合物(c)の1H−NMRスペクトルを示す図である。 重合体P1の1H−NMRスペクトルを示す図である。 重合体P2の1H−NMRスペクトルを示す図である。 重合体P3の1H−NMRスペクトルを示す図である。 重合体P1のUV−visスペクトルを示す図である。 重合体P2のUV−visスペクトルを示す図である。 重合体P3のUV−visスペクトルを示す図である。 重合体P1のTGA曲線を示す図である。 重合体P2のTGA曲線を示す図である。 重合体P3のTGA曲線を示す図である。
まず、本明細書で使用する記号の定義について説明する。
1は、それぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示すが、電荷輸送能、熱安定性、光吸収の点から、直鎖又は分岐であることが好ましい。
当該アルキル基の炭素数は1〜20であるが、電荷輸送能、熱安定性、光吸収の点から、3〜18が好ましく、4〜16がより好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。中でも、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルへキシル基が好ましく、特に2−エチルへキシル基、n−オクチル基、tert−ブチル基が好ましい。
また、当該アルキル基に置換し得る基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;オキソ基;tert−ブチルカルボニル基等の炭素数2〜10のアルカノイル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。これら置換基の位置及び数は任意であり、置換基を2以上有する場合、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
2及びR3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はトリアルキルスズ基を示す。
重合体(1)を合成する際、スティルカップリング法を用いることに鑑みると、R2としては、下記の(i)及び(ii)のうちのいずれかであることが好ましい。
(i)2つのR2は、ともにハロゲン原子であることが好ましく、更に同一のハロゲン原子であることが好ましい。
(ii)2つのR2は、ともにトリアルキルスズ基であることが好ましく、更に同一のトリアルキルスズ基であることが好ましい。
(i)の場合、ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。中でも、反応効率の点から、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子が特に好ましい。
一方、(ii)の場合、トリアルキルスズ基としては、トリ(C1-6アルキル)スズ基が好ましく、具体的には、トリメチルスズ基、トリエチルスズ基、トリプロピルスズ基、トリブチルスズ等が挙げられる。中でも、反応効率の点から、トリメチルスズ基が特に好ましい。
また、R2がハロゲン原子である場合、R3はトリアルキルスズ基であり、R2がトリアルキルスズ基である場合、R3はハロゲン原子である。
次に、新規化合物である化合物(4)の式の説明を以下に示す。
4は、置換又は非置換の炭素数6〜20のアルキル基を示すが、電荷輸送能、熱安定性、光吸収の点から、直鎖又は分岐であることが好ましい。
当該アルキル基の炭素数は6〜20であるが、電荷輸送能、熱安定性、光吸収の点から、6〜18が好ましく、6〜16がより好ましい。
具体的には、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。中でも、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルへキシル基が好ましい。
また、当該アルキル基に置換し得る基としては、R1における置換基と同様のものが挙げられる。
5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はトリアルキルスズ基を示す。ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられ、中でも、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。また、トリアルキルスズ基としては、トリ(C1-6アルキル)スズ基が好ましく、具体的には、トリメチルスズ基、トリエチルスズ基、トリプロピルスズ基、トリブチルスズ等が挙げられる。中でも、トリメチルスズ基が特に好ましい。この場合、反応効率の点から、2つのR5はともに、同一のハロゲン原子、又は同一のトリアルキルスズ基が好ましい。
Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。具体的には、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。中でも、反応効率の点から、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子が特に好ましい。
次に、本発明の重合体について説明する。
本発明の重合体、即ち重合体(1)は、上記式(1)で表される構造単位を有する、新規な共役ポリマーである。
重合体(1)の重量平均分子量(Mw)は、1×103〜5×105が好ましく、1×103〜4.5×105がより好ましく、1×103〜4×105が更に好ましく、1×103〜5×104が特に好ましい。ここで、Mwは、後掲の実施例に記載の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶出溶媒:THF)で測定したポリスチレン換算のMwをいう。
また、重合体(1)のMw/Mnは、1〜6が好ましく、1.5〜5がより好ましい。ここで、Mnは、後掲の実施例に記載の方法により、GPC(溶出溶媒:THF)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量をいう。
重合体(1)は、後掲の実施例に示すとおり、広範囲の光を吸収し、優れた電荷輸送能及び優れた熱安定性を有することができる。したがって、重合体(1)は、光電変換素子、太陽電池、並びに光スイッチング装置及びセンサ等の光電変換装置等の電荷輸送材料として有用である。
次に、本発明の重合体及びその中間体の製造方法について説明する。
先ず、本発明の重合体を得るための中間体の製造方法について説明する。
本発明の中間体は、下記の合成経路に示すように、工程1と工程2a、又は工程1と工程2bを経て製造することができる。
Figure 2012046643
〔式中、Rは、それぞれ独立に、アルキル基を示し、R1は、それぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。〕
(工程1)
工程1は、チオフェン誘導体である化合物(5)を、C1-20アルキルマグネシウムハライド〔化合物(6)〕とグリニャール反応する工程である。これにより、チオフェン誘導体である化合物(7)を得ることができる。
化合物(6)としては、例えば、2−エチルヘキシルマグネシウムブロミド、オクチルマグネシウムブロミド等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上用いることができる。
化合物(6)の使用量は、化合物(5)に対して、2〜4モル当量程度が好ましい。
工程1は、溶媒存在下で行うことが好ましく、溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテルが好適に使用される。
溶媒の使用量は適宜選択可能であるが、通常、化合物(5)に対して1〜20(w/v)%である。
また、工程1は触媒存在下及び非存在下のいずれでも行うことが可能であるが、触媒存在下で行うことが好ましい。触媒としては、例えば、1,3−ジフェニルホスフィノプロパン塩化ニッケル(II)〔Ni(dppp)Cl2〕又は1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン塩化ニッケル(II)〔Ni(dppe)Cl2〕等のNi(II)触媒が挙げられる。
触媒の使用量は適宜選択可能であるが、通常、化合物(5)に対して1〜10モル%である。
反応時間は、30分〜48時間が好ましい。また、反応温度は、20〜80℃が好ましい。
反応終了後、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、濃縮、遠心分離、各種溶媒による抽出、クロマトグラフィー、蒸留等の通常の精製手段を適宜組み合わせて、反応系から、化合物(7)を単離することができる。また、工程1により得られた化合物(7)は、単離せずに次工程に供することもできる。
(工程2)
工程2は、工程1で得られた化合物(7)をハロゲン化剤と求核置換反応するか(工程2a)、あるいは化合物(7)をトリアルキルスズ化合物と求核置換反応する(工程2b)工程である。これらにより、化合物(3a)又は化合物(3b)を得ることができる。
工程2aで使用するハロゲン化剤としては、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−クロロスクシンイミド(NCS)、臭素等が好適に使用される。
ハロゲン化剤の使用量は、化合物(7)に対して、0.1〜1モル当量程度が好ましい。
また、工程2aは、溶媒存在下で行うことが好ましく、溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素が好適に使用される。
溶媒の使用量は適宜選択可能であるが、通常、化合物(7)に対して10〜20(w/v)%である。
また、工程2bで使用するトリアルキルスズ化合物としては、トリアルキルスズハライドが好適に使用され、特にトリアルキルスズクロライドが好ましい。なお、アルキル基の炭素数は、1〜6が好ましい。
工程2bは、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等のリチウム試薬の存在下で行うことが好ましい。具体的には、先ず化合物(7)をリチウム試薬と反応させ、次いでトリアルキルスズ化合物と反応させるという方法が好ましく採用される。
また、工程2bは、溶媒存在下で行うことが好ましく、溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテルが好適に使用される。
溶媒の使用量は適宜選択可能であるが、通常、化合物(7)に対して30〜40(w/v)%である。
反応終了後、工程1と同様の精製手段により、反応系から、化合物(3a)又は化合物(3b)を単離することができる。
次に、本発明の重合体の製造方法について説明する。
本発明の重合体は、下記の合成経路にしたがって製造することができる。
Figure 2012046643
〔式中、Rは、それぞれ独立に、アルキル基を示し、R1は、それぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。〕
すなわち、チオフェン誘導体である化合物(3a)と、ベンゾチアジアゾル誘導体である化合物(2b)、あるいはチオフェン誘導体である化合物(3b)と、ベンゾチアジアゾル誘導体である化合物(2a)を遷移金属触媒の存在下でスティルカップリングさせることにより重合体(1)を製造することができる。
チオフェン誘導体である化合物(3a)又は化合物(3b)(以下、「チオフェン誘導体」とも称する)の使用量は、ベンゾチアジアゾル誘導体である化合物(2b)又は化合物(2a)(以下、「ベンゾチアジアゾル誘導体」とも称する)に対して、1:1のモル当量が好ましい。
また、遷移金属触媒としては、パラジウム、パラジウム化合物、ニッケル、ニッケル化合物、コバルト、コバルト化合物、鉄、鉄化合物が挙げられる。中でも、パラジウム、パラジウム化合物が好ましい。
上記パラジウム化合物としては、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジウム、酸化パラジウム、硫化パラジウム、二硫化パラジウム、二塩化パラジウム、二テルル化パラジウム、水酸化パラジウム(II)、セレン化パラジウム、Pd(PPh3)4、Pd(PhCN)2Cl2、PdCl2[PPh3]2、PdCl2(CH3CN)2、[Pd(CH3CN)4][BF4]2、[Pd(C2H5CN)4][BF4]2、パラジウムアセチルアセトナート、酢酸パラジウム等が挙げられる。中でも、反応効率の点から、Pd(PPh3)4が特に好ましい。
遷移金属触媒の使用量は、ベンゾチアジアゾル誘導体に対して、0.01〜10モル%が好ましい。
また、本工程は、溶媒存在下及び非存在下のいずれでも行うことができるが、溶媒存在下で行うことが好ましい。
溶媒としては、反応効率の点から、エタノール、1−ブタノール、1ープロパノール等のアルコール;トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;アセトニトリル等のニトリル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;THF等のエーテル;これらの混合溶媒等が挙げられる。中でも、エタノール、トルエン、アセトニトリルが特に好ましい。
溶媒の使用量は適宜選択可能であるが、通常、ベンゾチアジアゾル誘導体に対して、40〜60(w/v)%程度であることが好ましい。
反応時間は、30分〜50時間が好ましい。また、反応温度は、30〜250℃が好ましく、30〜150℃がより好ましい。
本工程は、円滑なスティルカップリング促進の点から、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
反応終了後、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、濃縮、再沈殿、遠心分離、各種溶媒による抽出、クロマトグラフィー等の通常の精製手段を適宜組み合わせて、反応系から、重合体(1)を単離することができる。
このようにして、重合体(1)を簡便かつ効率よく製造することができる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
<参考例1>
ベンゾチアジアゾル誘導体の合成
下記の合成経路に従い、2,1,3-ベンゾチアジアゾル(化合物i)を原料として、1,4-ビス(5-ブロモチオフェン-2-イル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾル(化合物iv)、及び1,4-ビス(5-トリメチルスタニルチオフェン-2-イル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾル(化合物v)を合成した。
Figure 2012046643
1)1,4-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾル(化合物ii)の合成
2,1,3-ベンゾチアジアゾル(化合物i)と、HBr (60 mL) (48% 水溶液)の混合溶液に臭素(4.82 mL, 94.13 mmol)を1時間滴下した。その後、更にHBr水溶液(40 mL)を追加し2.5時間還流した後、反応液の温度を室温まで戻した。得られた固形物をろ過し、冷やしたエーテルで洗浄して白色固体状の化合物ii (6.29 g)を収率73%で得た。
2)1,4-ジチエニン-2-ル-2,1,3-ベンゾチアジアゾル(化合物iii)の合成
化合物(ii)と、2-(トリブチルスタニル)チオフェン (2.58 g, 6.90 mmol)と、Pd(PPh3)4 (49.1 mmg, 0. 70 mmol)と、トルエン(10mL)との混合溶液を24時間還流した後、反応液を室温まで温度を下げ、水に注いだ。塩化メチレンで抽出した後、ブリンで洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥した後、溶媒を留去した。ヘキサンを用い残存物を再結晶にて精製し赤色結晶状の化合物(iii) (7.91 g)を収率76%で得た。
3)1,4-ビス(5-ブロモチオフェン-2-イル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾル(化合物iv)の合成
化合物(iii) (1.00 g, 3.33 mmol)と、DMF (40 mL)との混合溶液にNBS (1.48 g, 8.33 mmol)を室温で加えた。室温で14時間攪拌した後、水を反応液に加え赤色沈殿物を得た。その沈殿物を水とメタノールで洗浄した後、DMFで再結晶し赤色個体状の化合物(iv) (1.00 g)を収率66%で得た。
4)1,4-ビス(5-トリメチルスタニルチオフェン-2-イル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾル(化合物v)の合成
ジシソプロピルアミン(0.509 mg, 0.363 mmol)とTHF(1 mL)の混合溶液に-78°Cでn-BuLi (0.206 mL, 0.323 mmol) (1.57 M hexane 溶液)を加えた。その混合溶液を-78°Cで1時間攪拌しLDA溶液(リチウムジイソプロピルアミン)を製造した。得られたLDA溶液を-78℃で化合物(iii) (30.3 mg, 0.101 mmol)と、THF(2mL)との混合溶液に加え、混合液を-78℃で1時間攪拌した後、クロロトリメチルスズ(90.5 mg, 0.454 mmol)を加え1時間攪拌した終了後、水に注いだ。その後、酢酸エチルで抽出した後、ブリンで洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥した後、溶媒を留去した。残存物をアルミナクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製し茶色固体状の化合物(v) (63.0 mg)を収率100%で得た。
<実施例1>
チオフェン誘導体の合成
下記の合成経路にしたがい、3,4-ジブロモチオフェン(化合物vi)を原料として、中間生成物である、3,4-ジ(2-エチルヘキシル)チオフェン(化合物vii)、及び3,4-ジオクチルチオフェン(化合物viii)を合成し、更に化合物(vii)及び化合物(viii)から、2,5-ジブロモ-3,4-ジ(2-エチルヘキシル)チオフェン(化合物ix)及び2,5-ビス(トリメチルスタニル)-3,4-ジオクチルチオフェン(化合物x)を合成した。
Figure 2012046643
5)3,4-ジ(2-エチルヘキシル)チオフェン(化合物vii)の合成
マグネシウム(1.52 g,62.5 mmol)とエーテル(31.3 mL)の混合物に2-エチルヘキシルブロミド(12.0 g、62.5 mmol)をゆっくり滴下した後、その溶液を8時間攪拌し2-エチルヘキシルマグネシウムブロミド溶液を製造した。得られた2-エチルヘキシルマグネシウムブロミド溶液を0℃でNi(dppp)Cl2 (712.5 mg, 5 mmol%)と、3,4-ジブロモチオフェン (化合物vi) (6.36 g, 26.29 mmol)と、THF (100 mL)との混合溶液に加えた後、その混合溶液を室温まで温度を上げ一晩攪拌した。その後、反応液を水に注ぎエーテルで抽出し、有機相をブリンで洗浄して、Na2SO4で乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残存物を蒸留にて精製し無色オイル状の化合物(vii) (7.58 g)を収率93%で得た。得られた化合物は、下記式(a)で表される化合物であることを1H-NMRにより確認した。
1H-NMR (CDCl3): δ (ppm) 0.87(m, -CH3, -12H), 1.32-1.56 (m,-CH2- and -CH-, 18H), 2.43 (d, J = 7.2 Hz, -CH2-, 4H), 6.85 (s, th-H, 2H)
Figure 2012046643
6)3,4-ジオクチルチオフェン(化合物viii)の合成
オクチルマグネシウムブロミドと、化合物(iv)とを反応させたこと以外は、化合物(vii)の合成と同様の操作により、定量的に化合物(viii)を得た。
7)2,5-ジブロモ-3,4-ジ(2-エチルヘキシル)チオフェン(化合物ix)の合成
化合物(vii) (7.58 g, 24. 56 mmol)と、DMF (50 mL)との混合溶液にNBS (8.74 g, 49.11 mmol)を加えた後、室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液を水に注ぎ酢酸エチルで抽出した後、水とブリンで洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥した後、有機溶媒を留去し得られた残存物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製し無色オイル状の化合物(ix) (9.65 g)を収率84%で得た。得られた化合物は、下記式(b)で表される化合物であることを1H-NMRにより確認した。その1H-NMRスペクトルを図1に示す。
1H-NMR (CDCl3): δ (ppm) 0.87 (m,-CH3, 12H), 1.24-1.54 (m, -CH- and -CH2-, 18H), 2.48 (d, -CH2-, 4H)
Figure 2012046643
8)2,5-ビス(トリメチルスタニル)-3,4-ジオクチルチオフェン(化合物x)の合成
化合物(viii) (3.22 g, 10.4 mmol)と、ヘキサン(10 mL)との混合溶液にn-BuLi (13.9 mL, 21. 9 mmol) (1.58 M ヘキサン溶液)を加え-45℃で30分間攪拌した後、-45℃でクロロトリメチルスズ(4.78 g, 24. 0 mmol)を加えた。その溶液を-45°Cで2時間攪拌した後、水を加えエーテルで抽出した。有機相をMgSO4で乾燥した後、溶媒を留去した。オイル状の残存物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-5% Et3N)にて精製し無色オイル状の化合物(x) (6.11 g)を収率92%で得た。得られた化合物は、下記式(c)で表される化合物であることを1H-NMRにより確認した。その1H-NMRスペクトルを図2に示す。
1H NMR (CDCl3):δ (ppm) 0.35 (s, -SnMe3, 18H), 0.89 (t, J = 6.6 Hz, -CH3, 6H), 1.29-1.52 (m, -CH2-, 24H), 2.51-2.60 (m, -CH2-, 4H).
Figure 2012046643
9)3,4-ジ-tert-ブチルチオフェン(化合物xii)の合成
化合物(xi) (1.22 g)と、p-トルエンスルフォン酸(0.20 g)と、ベンゼン(100 mL)との混合溶液を1時間還流した。温度を室温まで下げ、その反応液をNaHCO3水溶液で洗浄した後、有機相をNa2SO4で乾燥した。有機溶媒を留去した後、残存物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製し化合物(xii) (0.74 g)を収率74%で得た。
10)2,5-ジブロモ-3,4-ジ-tert-ブチルチオフェン(化合物xiii)の合成
化合物(xii) (0.74 g, 3.77 mmol)と、DMF (10 mL)との混合溶液にNBS (1.41 g, 7.92 mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。その後、反応液を水に注ぎ酢酸エチルで抽出した。有機相を水で洗浄した後、Na2SO4で乾燥した。溶媒を留去し後、残存物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製し白色固体の化合物(xiii) (1.89 g)を収率82%で得た。
<実施例2>
ポリマーの合成
下記の合成経路にしたがい、チオフェン誘導体(化合物ix、化合物x及び化合物xii)を原料として、重合体P1〜P3を合成した。
Figure 2012046643
1)ポリマーP1の合成
化合物(iv) (233 mg, 0.50 mmol)と、化合物(x) (313 mg, 0.50 mmol)と、Pd(PPh3)4 (58 mg, 0.050 mmol)との混合物を10分間真空乾燥した後、トルエン(40 mL)とDMF (10 mL)を加えた。混合溶液を10分間アルゴンガスでバブリングした後、アルゴン雰囲気下110°Cで20時間攪拌した。その後、反応液の温度を室温まで戻しメタノール(300 mL)で再沈殿し沈殿物をろ過した。固形物をクロロホルムで溶かしカラムクロマトグラフィー(PSQ100B)にて精製した。有機溶媒を留去した後、メタノールを加え得られた固形物をメンブレンフィルタでろ過し紫色個体状のP1(71 mg)を収率24%で得た。得られた化合物は、下記式(d)で表される重合体であることを1H-NMRにより確認した。その1H-NMRスペクトルを図3に示す。
1H NMR (CD2Cl2): δ (ppm) 0.80 (br-s, -CH3, 6H), 1.20-1.59 (m, -CH2-, 24H), 2.30-2.76 (m, -CH2-, 4H), 6.82-7.89 (m, Ar-H, 6H)
Figure 2012046643
2)ポリマーP2の合成
化合物(ix) (233 mg, 0.50 mmol)と、化合物(v) (313 mg, 0.50 mmol)と、Pd(PPh3)4 (25 mg, 0.016 mmol)との混合物を10分間真空乾燥した後、トルエン(8 mL)とDMF (2 mL)を加えた。混合溶液を10分間アルゴンガスでバブリングした後、アルゴン雰囲気下120℃で2時間攪拌した。その後、反応液の温度を室温まで戻しメタノール(300 mL)で再沈殿し沈殿物をろ過した。固形物をクロロホルムで溶かしカラムクロマトグラフィー(PSQ100B)にて精製した。有機溶媒を留去した後、メタノールを加え得られた固形物をメンブレンフィルタでろ過し紫色個体状のP2(180 mg)を収率60%で得た。得られた化合物は、下記式(e)で表される重合体であることを1H-NMRにより確認した。その1H-NMRスペクトルを図4に示す。
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) 0.80-0.92 (m, -CH3,12H), 1.20-1.68 (m, -CH- and -CH2-, 18H), 2.28-2.86 (m, -CH2-, 4H), 7.17-7.56 (m, Ar-H, 2H), 7.86 -7.89 (m, Ar-H, 2H), 8.07-8.10 (m, Ar-H, 2H)
Figure 2012046643
3)ポリマーP3の合成
化合物(xiii) (177 mg, 0.50 mmol)と、化合物(v) (313 mg, 0.50 mmol)と、Pd(PPh3)4 (25 mg, 0.016 mmol)との混合物を10分間真空乾燥した後、トルエン(8 mL)とDMF (2 mL)を加えた。混合溶液を10分間アルゴンガスでバブリングした後、アルゴン雰囲気下120℃で3時間攪拌した。その後、反応液の温度を室温まで戻しメタノール(300 mL)で再沈殿し沈殿物をろ過した。固形物をクロロホルムで溶かしカラムクロマトグラフィー(PSQ100B)にて精製した。有機溶媒を留去した後、メタノールを加え得られた固形物をメンブレンフィルタでろ過し黒色個体状のP3 (130 mg)を収率53%で得た。得られた化合物は、下記式(f)で表される重合体であることを1H-NMRにより確認した。その1H-NMRスペクトルを図5に示す。
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) 1.46-1.69 (m, t-Bu,18H), 7.14-7.29 (m, Ar-H, 2H), 7.85 (br-s, Ar-H, 2H), 8.03-8.09 (m, Ar-H, 2H)
Figure 2012046643
<試験例1>
1)分子量測定
重合体P1〜P3について、重量平均分子量と分子量分布を測定した。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:溶媒THF)HLC−8320GPC(東ソー株式会社製)を用いたポリマーの分子量測定結果、P1がMw1,300(Mw/Mn:1.63)、P2がMw23,000(Mw/Mn:4.95)、P3がMw2,800(Mw/Mn:1.68)を示した。測定値は、ポリスチレン換算によるものである。
2)UV-vis測定
重合体P1〜P3の1×10-5Mクロロホルム溶液をそれぞれ調製した(P1溶液、P2溶液、P3溶液)。
また、重合体P1〜P3の10mg/mL濃度のクロロホルム溶液をそれぞれ調製し、これらをガラス基板上に垂らした後、共和理研(株)製スピンコーター(MODEL K-359S-1)(1000 rpmで10秒、3000rpmで60秒)を用いて製膜した(P1薄膜、P2薄膜、P3薄膜)。
P1溶液〜P3溶液、P1薄膜〜P3薄膜それぞれについて、JASCO V570スペクトルメーターで、UV-vis測定を行った。P1のUV-visスペクトルを図6に、P2のUV-visスペクトルを図7に、P3のUV-visスペクトルを図8に、それぞれ示す。
溶液中での最大吸収はP1が534nm、P2が565nm、P3が495nmに観測された。また、薄膜での最大吸収はP1が549nm、P2が637nm、P3が510nmに観測された。
重合体P2は、重合体P1及び重合体P3と比較して、溶液と薄膜のいずれにおいても、長波長側での最大吸収が観測された。これはP2の分子量増加による長いポリマー共役長を示唆している。また、重合体P1は、重合体P2より分子量が小さいにもかかわらず長波長での最大吸収が観測されている。これはより傘高い置換基であるt-ブチル基を有するP2のポリマー主鎖の平面性が崩れたことによるものと考えられる。
3)熱分解測定
重合体P1〜P3について、それぞれTGAにより熱分解測定を行った。熱分解測定は、セイコーインスツルメント社製TG-DTA6200により、アルミパンを用いて、150mL/minの窒素気流中10℃/minで昇温させて測定した。
TGAによる熱分解測定結果、重合体P1〜P3の全てが200℃まで熱分解せず安定であることがわかった。
5%分解温度Td5は重合体P1が396℃、重合体P2が387℃、重合体P3が255℃に観測された。また、10%分解温度Td10は重合体P1が420℃、重合体P2が421℃、重合体P3が266℃に観測された。すなわち、重合体P1が最も高い熱安定示しており、重合体P3の熱安定が若干低くかった。
重合体P1のTGA曲線を図9に、重合体P2のTGA曲線を図10に、重合体P3のTGA曲線を図11に、それぞれ示す。また、表1に重合体P1〜P3の分析結果を示す。
Figure 2012046643
本発明の重合体は、広範囲の光を吸収し、優れた電荷輸送能を有し、且つ高い熱安定性を有する。したがって、本発明によれば、優れた光電変換効率と耐久性を有する光電変換素子、並びにこれを用いた太陽電池、及び光スイッチング装置、センサ等の光電変換装置を提供できる。

Claims (5)

  1. 下記式(1):
    Figure 2012046643
    〔式(1)中、R1は、それぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示す。〕
    で表される構造単位を有する重合体。
  2. 1は、それぞれ独立に、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基及びtert−ブチル基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の重合体。
  3. 下記式(2);
    Figure 2012046643
    〔式(2)中、R2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はトリアルキルスズ基を示す。〕
    で表される化合物と、下記式(3);
    Figure 2012046643
    〔式(3)中、R1は、それぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示し、R3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はトリアルキルスズ基を示す。但し、R2がハロゲン原子である場合、R3はトリアルキルスズ基であり、R2がトリアルキルスズ基である場合、R3はハロゲン原子である。〕
    で表される化合物とを反応させる工程を含む、請求項1に記載の重合体の製造方法。
  4. 下記式(4);
    Figure 2012046643
    〔式(4)中、R4は、それぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数6〜20のアルキル基を示し、R5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はトリアルキルスズ基を示す。〕
    で表される化合物。
  5. 下記式(5);
    Figure 2012046643
    〔式(5)中、Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。〕
    で表される化合物を、下記式(6);
    1MgX (6)
    〔式(6)中、R1は、置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xは前記と同義である。〕
    で表わされる化合物と反応させて、下記式(7);
    Figure 2012046643
    〔式(7)中、R1は前記と同義である。〕
    で表わされる化合物を得、次いで該化合物をハロゲン化剤又はトリアルキルスズハライドと反応させる工程を含む、下記式(3);
    Figure 2012046643
    〔式(3)中、R1は前記と同義であり、R3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はトリアルキルスズ基を示す。〕
    で表わされる化合物の製造方法。
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