JP2012041529A - ポリイミド前駆体、その製造方法、及びポリイミド - Google Patents

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Abstract

【課題】 実際の工業的製造に適した製造方法で製造することができ、ハンドリング性や保存安定性が良好な、脂環式ジアミンを用いたポリイミド前駆体を提案することを目的とする。
【解決手段】 下記一般式(1)の単位構造式を含むことを特徴とするポリイミド前駆体。
【化1】
Figure 2012041529

〔一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、Rは水素原子又は炭素数3〜9のアルキルシリル基であって、R及びRのうちの少なくとも一つは炭素数3〜9のアルキルシリル基である。〕
【選択図】 なし

Description

本発明は、実際の工業的製造に適したポリイミド前駆体とその製造方法、高透明性、高ガラス転移温度、低線熱膨張係数、及び十分な強靱さを併せ持つポリイミドに関する。
近年、高度情報化社会の到来に伴い、光通信分野の光ファイバーや光導波路等、表示装置分野の液晶配向膜やカラーフィルター用保護膜等の光学材料の開発が進んでいるが、特に表示装置分野では、軽量で割れにくいガラス代替基板としての透明樹脂基板の開発や、フレキシブルなディスプレイ用途のため、柔軟性に優れた透明樹脂基板の開発が盛んに行われている。しかしながら、現在開発されている透明樹脂基板は、耐熱性に劣るという欠点があり、前術の用途に好適に用いることができる、高耐熱な光学材料が求められている。
ポリイミドは優れた耐熱性を有する樹脂であるが、一般に分子内共役や電荷移動錯体の形成により、本質的に黄褐色に着色する。その解決策として、例えばフッ素を導入したり、主鎖に屈曲性を与えたり、嵩高い側鎖を導入するなどして電荷移動錯体の形成阻害し透明性を発現させる方法が提案されている(非特許文献1)。また、原理的に電荷移動錯体を形成しない半脂環式または全脂環式ポリイミド樹脂を用いることにより透明性を発現させる方法も提案されている(特許文献1〜3、非特許文献2)。
特に、脂環式ジアミンとしてトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、芳香族酸二無水部物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いた半脂環式ポリイミドは、優れた透明性、高耐熱性、低熱線膨張係数を兼ね備えることが知られている(特許文献3)。
この様に、脂環式ジアミンをモノマー成分として使用することは透明ポリイミドを得るための有効な方法である。
しかしながら、この半脂環式ポリイミドから得られる膜は、破断伸度が5〜7%とフレキシブルディスプレイなどの基材としては用いるためには、不十分であった(非特許文献2)。また、脂肪族ジアミンは、重合初期に生成した低分子量アミド酸中のカルボキシル基と反応して溶媒不溶性の塩を形成し、しばしば重合の進行を妨げるといった重大な問題を引き起こす。これを避ける方法として、重合初期での塩形成後、重合反応混合物を高温例えば120℃で短時間加熱することにより、可溶化する方法が知られている(特許文献3)。ところが、この方法では、ポリイミド前駆体の分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造することができない。さらに、得られるポリイミド前駆体溶液は、調製工程で塩を高温で溶解する必要があるため、ポリイミド前駆体の濃度を高くすることができず、ポリイミド膜の膜厚制御が難しいなどハンドリング性が劣り、また保存安定性も良好ではなかった。
以上のように、脂環式ジアミンを用いたポリイミド前駆体において、安定した製造が行えると同時に、得られるポリイミド前駆体溶液のハンドリング性や保存安定性の改良、さらに該ポリイミド前駆体から得られるポリイミドの破断伸度などの特性の改良が求められていた。
特開2002−348374号公報 特開2005−15629号公報 特開2002−161136号公報
Polymer,47,2337(2006) High Perform.Polym,13,S93(2001)
本発明の目的は、実際の工業的製造に適した製造方法で製造することができ、ハンドリング性や保存安定性が良好な、脂環式ジアミンを用いたポリイミド前駆体を提案することである。このポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、高透明性、高ガラス転移温度、低線熱膨張係数、及び十分な強靱さを併せ持つので、特に液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパーなどの表示装置用のガラス基板代替用のプラスチック基板として好適に利用できる。
本発明は、以下の各項に関する。
1. 下記一般式(1)の単位構造式を含むことを特徴とするポリイミド前駆体。
Figure 2012041529
〔一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、Rは水素原子又は炭素数3〜9のアルキルシリル基であって、R及びRのうちの少なくとも一つは炭素数3〜9のアルキルシリル基である。〕
2. 一般式(1)が、下記一般式(2)であることを特徴とする前記項1に記載のポリイミド前駆体。
Figure 2012041529
〔一般式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、Rは水素原子又は炭素数3〜9のアルキルシリル基であって、R及びRのうちの少なくとも一つは炭素数3〜9のアルキルシリル基である。〕
3. 一般式(1)の1,4−シクロへキサン構造が、トランス異性体からなることを特徴とする前記項1または2に記載のポリイミド前駆体。
4. 30℃、0.5g/dL N,N−ジメチルアセトアミド溶液における対数粘度が0.2dL/g以上であることを特徴とする前記項1〜3のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
5. 前記項1〜4のいずれかのポリイミド前駆体が溶媒中に均一に溶解されていることを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
6. 前記項1〜4のいずれかのポリイミド前駆体をイミド化して得られることを特徴とするポリイミド。
7. 厚さ10μmのフィルムにしたときの400nmにおける光透過率が50%以上、破断伸度が8%以上であることを特徴とする前記項6に記載のポリイミド。
8. 厚さ10μmのフィルムにしたときの50℃〜200℃における平均の線熱膨張係数が、19ppm/K以下であることを特徴とする前記項6に記載のポリイミド。
9. 重合温度条件が0℃〜100℃であることを特徴とする前記一般式(1)の単位構造を含むポリイミド前駆体を得ることを特徴とするポリイミド前駆体の製造方法。
10. 少なくとも、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(3)のジアミンとを反応させて前記一般式(1)の単位構造を含むポリイミド前駆体を得ることを特徴とするポリイミド前駆体の製造方法。
Figure 2012041529
〔一般式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、Rは水素原子又は炭素数3〜9のアルキルシリル基であって、R及びRのうちの少なくとも一つは炭素数3〜9のアルキルシリル基である。〕
11. 塩素原子、臭素原子を含まないシリル化剤を用い前記一般式(1)の単位構造を含むポリイミド前駆体を得ることを特徴とするポリイミド前駆体の製造方法。
本発明によって、実際の工業的製造に適した製造方法で製造することができ、ハンドリング性や保存安定性が良好な、脂環式ジアミンを用いたポリイミド前駆体を得ることができる。このポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、高透明性、高ガラス転移温度、低線熱膨張係数、及び十分な強靱さを併せ持つので、特に液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパーなどの表示装置用のガラス基板代替用のプラスチック基板として好適に利用できる。
本発明の前記一般式(1)の単位構造式を含むことを特徴とするポリイミド前駆体は、特に限定されないが、あらかじめシリル化した前記一般式(3)のジアミンと、テトラカルボン酸二無水物を反応させる方法や、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物及びシリル化剤を同時に加え反応させる方法によって得ることができる。前者の方法が重合反応初期での塩形成が抑制されるため、好ましい。
前記一般式(3)のジアミンは、特に限定されないが、下記化学式(4)で表されるジアミンをシリル化剤などによってシリル化することで得られる。
Figure 2012041529
〔一般式(4)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。〕
一般式(4)で表されるジアミンとしては、Rが水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基を有するジアミンが挙げられ、これらのうち、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−メチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−エチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−n−プロピルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−イソプロピルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−n−ブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−イソブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2―sec―ブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2―tert―ブチルシクロヘキサンが好ましく、特に得られるポリイミド膜の熱線膨張係数が低いことから、1,4−ジアミノシクロヘキサンがより好ましい。
一般式(4)で表されるジアミンをシリル化して一般式(3)で表されるジアミンを得る方法としては、特に限定されないが、1)ジアミンと、塩素原子、臭素原子を含まないシリル化剤を反応させ、シリル化されたジアミンとシリル化剤残渣化合物の混合物として得る方法と、2)ジアミンとトリアルキルシリルクロライドを反応させた後、蒸留などによる精製をおこない、シリル化されたジアミンを得る方法が挙げられる。前記1)の方法は、精製をおこなう必要がなく工程が短縮できるため好適である。
前記1)の方法では、ジアミンと、塩素原子、臭素原子を含まないシリル化剤を不活性ガス雰囲気中で20〜100℃、10分〜10時間反応することで容易にシリル化されたジアミンが得られる。
本発明に用いるシリル化剤としては、特に限定されないが、塩素原子、臭素原子を含まないシリル化剤が好ましく、例えば、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。塩素原子、臭素原子を含まないシリル化剤を用いた場合、精製等を行わなくても、環境への付加が懸念される塩素、臭素化合物が残渣として残らないため、好適である。さらにフッ素原子を含まず低コストであることから、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。また、シリル化反応を促進するために、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミンなどの触媒を用いることができる。この触媒はポリイミド前駆体の重合触媒として、そのまま使用することができる。
本発明において、一般式(3)で表されるシリル化されたジアミンのシリル化率は、ポリイミド前駆体を製造する際、析出などの不具合が生じない最小限のシリル化率以上であれば特に限定されないが、シリル化率は、ジアミンのシリル化前のアミノ基総モル量に対し、シリル化されたアミンのモルが25%〜100%であり、好ましくは50%〜100%である。シリル化率が低い場合、ポリイミド前駆体を得る反応中の溶解性が低下し、析出が生じやすくなる。
本発明において、一般式(3)で表されるシリル化されたジアミンは、一般式(3)中、Rが水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基を有するジアミンが挙げられ、これらのうち、Rが、水素原子、メチル基であることが好ましく、特に得られるポリイミド膜の熱線膨張係数が低いことから、Rが水素であることがより好ましい。また、R、Rは、いずれか一方が炭素数3〜9のアルキルシリル基であればよく、特に限定されないが、トリメチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基が挙げられる。経済性からトリメチルシリル基が好ましい。
また、特に限定されないが、一般式(3)中の1,4−シクロヘキサン環構造は、好ましくはトランス配置の異性体が、全構造中の50モル%〜100モル%、好ましくは60モル%〜100モル%、より好ましくは80モル%〜100モル%である。トランス配置の異性体の含有率が低下すると、ポリイミド前駆体の分子量が上がりにくく、また熱線膨張係数が高くなることがある。
本発明のポリイミド前駆体を製造するために用いるビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のいずれの構造異性体も用いることができる。またこれらの構造異性体を組み合わせて使用することができる。この際、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有率は、要求特性を損なわなければ特に限定されないが、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の全モル量のうち、50〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%の範囲であり、特に好ましくは100モル%である。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有率が高い場合、得られるポリイミド膜の熱線膨張係数が小さくなる。また、本発明のポリイミド前駆体を製造するために用いるビフェニルテトラカルボン酸二無水物として、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、ポリイミド前駆体の溶解性が改善するため製造しやすくなり、更にポリイミドにした場合の破断伸度が増大したり、光透過性が増大する。
本発明のポリイミド前駆体を製造するために用いるテトラカルボン酸二無水物としては、前記のビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を、テトラカルボン酸二無水物の総モル量に対し、50%以下、好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下で用いることができる。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を用いることで、ポリイミド前駆体の溶解性が改善し、製造しやすくなる。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物成分としては、特に限定はなく、通常のポリイミドに採用されるテトラカルボン酸二無水物であればいずれでも構わないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。その様なテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピレン)ジフタル酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン類、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、(1,1’:3’,1”−ターフェニル)−3,3”,4,4”−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ジメチルシラジイル)ジフタル酸二無水物、4,4’−(1,4−フェニレンビス(オキシ))ジフタル酸二無水物、など、より好ましくは2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を好適に挙げることができる。
本発明のポリイミド前駆体の製造方法は、特に限定されないが、窒素などの不活性ガス雰囲気下で、脱水された溶剤にシリル化されたジアミンを溶解させておき、攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物を加えていく方法が好ましい。このときの反応温度は0〜100℃、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは40〜80℃である。反応温度が100℃以下では、イミド化反応が生じないため、安定してポリイミド前駆体を得ることができ、また製造コストが低減できるため好ましい。反応時間は、ポリイミド前駆体の粘度が一定になった時点を反応の終点とするが、テトラカルボン酸無水物とジアミンの種類や温度によるが、通常3〜12時間である。
この製造方法では、ポリイミド前駆体が従来のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)とは異なり溶解性に優れるため、ポリイミド前駆体とジアミンの塩が析出しにくく、実際の工業生産に適している。粘度やGPC測定によりその分子量を確認しながら、テトラカルボン酸二無水物とジアミンのモル比を調整し重合反応をおこなうことで、ポリイミド前駆体の分子量を制御することが可能であり、安定した製造が可能である。また、本発明のポリイミド前駆体は、溶解性に優れるため、比較的高濃度のポリイミド前駆体溶液(組成物)を製造することができる。
本発明のポリイミド前駆体の製造方法では、有機溶媒を使用するのが好ましい。具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド等の非プロトン性溶媒が好ましいが、原料モノマーと生成するポリイミド前駆体が溶解すれば問題はなく、特にその構造には限定されない。N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、0−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、プチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用できる。
本発明において、最終的に得られるポリイミド前駆体溶液(組成物)は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンからなるモノマー成分の濃度は、特に限定されないが、前記モノマー成分と溶媒との合計量に対して、5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15〜50重量%である。モノマー成分の濃度が高いと、厚いポリイミド膜が得ることが可能である。
使用するテトラカルボン酸二無水物とジアミンのモル比[テトラカルボン酸二無水物/ジアミン]は、必要とするポリイミド前駆体の粘度により任意に設定できるが、好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05である。
本発明のポリイミド前駆体の製造方法では、テトラカルボン酸二無水物の総モル量に対しジアミンの総モル量が過剰モルである場合、ポリイミド前駆体溶液に、さらにテトラ酸誘導体もしくは酸無水物誘導体を加えることができる。テトラ酸誘導体としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、酸無水物としては、無水フタル酸、テトラハイドロ無水フタル酸、シス−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸等を挙げることができる。テトラ酸誘導体や酸無水物を用いることで、加熱時の熱着色、熱劣化をより防止することができる。
本発明のポリイミド前駆体の対数粘度は、特に限定されないが、0.5g/dL N,N−ジメチルアセトアミド溶液における30℃における対数粘度が0.2dL/g以上が好ましく、0.5dL/g以上がより好ましい。0.2dL/g以下では、ポリイミド前駆体の分子量が低いため、得られるポリイミド膜の機械強度が低下する。また、対数粘度は、2.5dL/g以下が好ましく、2.0dL/g以下がより好ましい。2.0dL/g以下では、ポリイミド前駆体溶液組成物の粘度が低いため、ポリイミド膜製造時のハンドリング性が良好である。
本発明のポリイミド前駆体溶液組成物(ワニス)は、主としてポリイミド前駆体と溶媒からなるポリイミド前駆体溶液組成物であり、テトラカルボン酸二無水物とジアミンからなるモノマー成分の濃度は、前記モノマー成分と溶媒との合計量に対して10重量%以上であり、より好ましくは15重量%〜50重量%である。モノマー濃度が10重量%以下の場合、得られるポリイミド膜の膜厚の制御が難しい。本発明のポリイミド前駆体は、溶解性が高いため、比較的高濃度のポリイミド前駆体溶液組成物を得ることができる。
本発明のポリイミド前駆体組成物に用いる溶媒としては、ポリイミド前駆体が溶解すれば問題はなく、特にその構造には限定されない。N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、0−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、プチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用できる。また、これらを複数組み合わせて使用することもできる。
本発明のポリイミド前駆体溶液組成物は、必要に応じて、通常使用される化学イミド化剤(無水酢酸などの酸無水物や、ピリジン、イソキノリンなどのアミン化合物)、酸化防止剤、フィラー、染料、無機顔料、シランカップリング剤、難燃材、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤(流動補助剤)、剥離剤などが添加することができる。
本発明のポリイミドは、本発明のポリイミド前駆体を閉環反応(イミド化反応)することで製造することができる。イミド化の方法は特に限定されず、公知の熱イミド化、化学イミド化方法を適用することができる。ポリイミドの使用可能な形態は、フィルム、金属/ポリイミドフィルム積層体、セラミック/ポリイミドフィルム積層体、プラスチックフィルム/ポリイミド積層体、粉末、成型体およびワニスが挙げられる。
本発明のポリイミドは、膜厚10μmのフィルムにしたとき、400nmにおける光透過率が、好ましくは50%以上であり、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上であり、優れた透明性を有する。
さらに、本発明のポリイミドは、フィルムにしたときの50℃〜200℃における平均の熱線膨張係数が、好ましくは50ppm/K以下、より好ましくは−5〜19ppm/Kさらに好ましくは0〜15ppm/K、極めて低い熱線膨張係数を有する。
なお、本発明のポリイミドからなるフィルムは、用途にもよるが、フィルムの厚みとしては、好ましくは1μm〜250μm程度、さらに好ましくは1μm〜150μm程度である。
本発明のポリイミドは、透明性、折り曲げ耐性、高耐熱性などの優れた特性を有し、さらに極めて低い熱線膨張係数や耐溶剤性を併せ有することから、ディスプレイ用透明基板、タッチパネル用透明基板、或いは太陽電池用基板の用途において、好適に用いることができる。
以下では、本発明のポリイミド前駆体を用いた、ポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムの製造方法の一例について述べる。ただし、以下の方法に限定されるものではない。
例えばセラミック(ガラス、シリコン、アルミナ)、金属(銅、アルミニウム、ステンレス)、耐熱プラスチックフィルム(ポリイミド)などの基材に、本発明のポリイミド前駆体溶液組成物を流延し、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で、熱風もしくは赤外線を用いて、20〜180℃、好ましくは20〜150℃の温度範囲で乾燥する。次いで得られたポリイミド前駆体フィルムを基材上で、もしくはポリイミド前駆体フィルムを基材上から剥離し、そのフィルムの端部を固定した状態で、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で、熱風もしくは赤外線を用い、200〜500℃、より好ましくは250〜450℃程度の温度で加熱イミド化することでポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムを製造することができる。なお、得られるポリイミドフィルムが酸化劣化するのを防ぐため、加熱イミド化は、真空中、或いは不活性ガス中で行うことが望ましい。加熱イミド化の温度が高すぎなければ空気中で行なっても差し支えない。ここでのポリイミドフィルム(ポリイミドフィルム/基材積層体の場合は、ポリイミドフィルム層)の厚さは、以後の工程の搬送性のため、好ましくは1〜250μm、より好ましくは1〜150μmである。
またポリイミド前駆体のイミド化反応は、前記のような加熱処理による加熱イミド化に代えて、ポリイミド前駆体をピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬するなどの化学的処理によって行うことも可能である。また、これらの脱水環化試薬をあらかじめ、ポリイミド前駆体溶液組成物中に投入・攪拌し、それを基材上に流延・乾燥することで、部分的にイミド化したポリイミド前駆体を作製することもでき、これを更に前記のような加熱処理することで、ポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムを得ることができる。
この様にして得られたポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムは、その片面もしくは両面に導電性層を形成することによって、フレキシブルな導電性基板を得ることができる。
フレキシブルな導電性基板は、例えば次の方法によって得ることができる。すなわち、第一の方法としては、ポリイミドフィルム/基材積層体を基材からポリイミドフィルムを剥離せずに、そのポリイミドフィルム表面に、スパッタ蒸着、印刷などによって、導電性物質(金属もしくは金属酸化物、導電性有機物、導電性炭素など)の導電層を形成させ、導電性層/ポリイミドフィルム/基材の導電性積層体を製造する。その後必要に応じて、基材より電気導電層/ポリイミドフィルム積層体を剥離することによって、導電性層/ポリイミドフィルム積層体からなる透明でフレキシブルな導電性基板を得ることができる。
第二の方法としては、ポリイミドフィルム/基材積層体の基材からポリイミドフィルムを剥離して、ポリイミドフィルムを得、そのポリイミドフィルム表面に、導電性物質(金属もしくは金属酸化物、導電性有機物、導電性炭素など)の導電層を、第一の方法と同様にして形成させ、導電性層/ポリイミドフィルム積層体からなる透明でフレキシブルな導電性基板を得ることができる。
なお、第一、第二の方法において、必要に応じて、ポリイミドフィルムの表面に導電層を形成する前に、スパッタ蒸着やゲル−ゾル法などによって、水蒸気、酸素などのガスバリヤ層、光調整層などの無機層を形成しても構わない。
また、導電層は、フォトリソグラフィ法や各種印刷法、インクジェット法などの方法によって、回路が好適に形成される。
本発明の基板は、本発明のポリイミドによって構成されたポリイミドフィルムの表面に、必要に応じてガスバリヤ層や無機層を介し、導電層の回路を有するものである。この基板は、フレキシブルであり、透明性、折り曲げ性、耐熱性が優れ、さらに極めて低い熱線膨張係数や耐溶剤性を併せ有するので微細な回路の形成が容易である。したがって、この基板は、ディスプレイ用、タッチパネル用、または太陽電池用の基板として好適に用いることができる。
すなわち、この基板に、蒸着、各種印刷法、或いはインクジェット法などによって、さらにトランジスタ(無機トランジスタ、有機トランジスタ)が形成されてフレキシブル薄膜トランジスタが製造され、そして、表示デバイス用の液晶素子、EL素子、光電素子として好適に用いられる。
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の各例において評価は次の方法で行った。
[対数粘度]
0.5g/dL ポリイミド前駆体のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、ウベローデ粘度計を用いて、30℃で測定した。
[光透過率]
大塚電子製MCPD−300を用いて、膜厚約10μmのポリイミド膜の400nmにおける光透過率を測定した。
[弾性率、破断伸度]
膜厚約10μmのポリイミド膜をIEC450規格のダンベル形状に打ち抜いて試験片とし、ORIENTEC社製TENSILONを用いて、チャック間 30mm、引張速度 2mm/minで、初期の弾性率、破断伸度を測定した。
[熱膨張係数(CTE)]
膜厚約10μmのポリイミド膜を幅4mmの短冊状に切り取って試験片とし、島津製作所製TMA−50を用い、チャック間長15mm、荷重2g、昇温速度20℃/minで300℃まで昇温した。得られたTMA曲線から、50℃から200℃までの平均熱膨張係数を求めた。
〔実施例1〕
反応容器中にトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン(以下、t−DACHと略記することもある) 3.220g(0.0282モル)を入れ、モレキュラーシーブを用い脱水したN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略記することもある)103.7gに溶解した後、シリンジにてN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド 6.281g(0.0296モル)を加え、80℃で2時間攪拌してシリル化を行った。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することもある)8.272g(0.0281モル)を徐々に加え、室温で8時間撹拌することで、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、そのまま基板上で120℃ 1時間、150℃ 30分、200℃ 30分、次いで400℃まで昇温して熱的にイミド化を行い、ポリイミド/ガラス積層体を得た。さらにポリイミド/ガラス積層体を、水に浸漬した後剥離し、膜厚が約10μmのポリイミド膜を得、ポリイミド膜の特性を測定した。
結果を表1に示す。
〔実施例2〕
反応容器中にトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン3.00g(0.026モル)を窒素雰囲気下にてN,N−ジメチルアセトアミド60.35gに溶解した。その後、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド 5.55g(0.0273モル)を加え、80℃で2時間攪拌してシリル化を行った。この溶液を40℃に冷却した後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物6.77g(0.023モル)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.88g(0.003モル)を添加した。40℃で攪拌し、1時間以内にすべての固体が溶解した。更に40℃で8時間撹拌し、均一で粘稠な共重合ポリイミド前駆体溶液組成物を得た。
得られたポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)そのまま基板上で、120℃で1時間、150℃で30分、200℃で30分、次いで350℃で3分、熱処理して熱的にイミド化を行なって、無色透明な共重合ポリイミド/ガラス積層体を得た。次いで、得られた共重合ポリイミド/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、膜厚が約10μmの共重合ポリイミドフィルムを得た。このフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
〔比較例1〕
反応容器中にトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン 2.284g(0.02モル)を入れ、モレキュラーシーブを用い脱水したN,N−ジメチルアセトアミド 73.51gに溶解した後、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 5.884g(0.02モル)を徐々に加え、室温で8時間撹拌した。
しかしながら、この反応溶液は白濁したままであり、均一なポリイミド前駆体溶液は得られなかった。
結果を表1に示す。
〔比較例2〕
反応容器中にトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン 6.85g(0.06モル)を入れ、モレキュラーシーブを用い脱水したN,N−ジメチルアセトアミド 98.02gに溶解した後、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 17.65g(0.06モル)を徐々に加え、120℃まで加熱し、5分程度で塩が溶解し始めたのを確認した後、室温まで急冷し、そのまま室温で8時間撹拌した。
しかしながら、この反応溶液には白色の沈殿物が残り、均一なポリイミド前駆体溶液は得られなかった。
結果を表1に示す。
〔比較例3〕
反応容器中にトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン 2.284g(0.02モル)を入れ、モレキュラーシーブを用い脱水したN,N−ジメチルアセトアミド 73.51gに溶解した後、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 5.884g(0.02モル)を徐々に加え、120℃まで加熱し、5分程度で塩が溶解し始めたのを確認した後、室温まで急冷し、そのまま室温で8時間撹拌した。
この反応溶液には、反応容器の壁面に白い析出物が確認されたが、加圧ろ過を行うことで均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
このポリイミド前駆体ワニスをガラス基板に塗布し、室温で1時間 真空乾燥させ、そのまま基板上で120℃ 1時間、150℃ 30分、200℃ 30分、次いで400℃まで昇温して熱的にイミド化を行い、ポリイミド/ガラス積層体を得た。さらにポリイミド/ガラス積層体を、水に浸漬した後剥離し、膜厚が約10μmのポリイミド膜を得、ポリイミド膜の特性を測定した。
結果を表1に示す。
〔比較例4〕
反応容器中にトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン6.851g(0.06モル)を入れ、モレキュラーシーブを用いて脱水したN,N−ジメチルアセトアミド220.5gに溶解した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物15.89g(0.054モル)と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物1.765g(0.006モル)とを徐々に加え、120℃まで加熱し、5分程度で塩が溶解し始めたのを確認した後、室温まで急冷し、そのまま室温で8時間撹拌し、均一で粘稠な共重合ポリイミド前駆体溶液組成物を得た。
得られたポリイミド前駆体溶液組成物をガラス基板に塗布し、そのまま基板上で、120℃で1時間、150℃で30分、200℃で30分、次いで最終的に400℃まで昇温して熱的にイミド化を行なって、無色透明な共重合ポリイミド/ガラス積層体を得た。次いで、得られた共重合ポリイミド/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、膜厚が約10μmの共重合ポリイミドフィルムを得た。このフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
Figure 2012041529
表1に示した結果から分かるとおり、本発明のポリイミド前駆体は、析出等が生じないため温和な条件で重合可能であり、実際の工業製造に適している。また、得られるポリイミド膜は、優れた光透過性、十分な破断伸度、低い線熱膨張係数を有したものである。実施例2では、複数種の酸成分を使用することで、さらに優れた光透過性、高い破断伸度と、低い線熱膨張係数を両立できることが確認された。
本発明によって、実際の工業的製造に適した製造方法で製造することができ、ハンドリング性や保存安定性が良好な、脂環式ジアミンを用いたポリイミド前駆体を得ることができる。このポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、高透明性、高ガラス転移温度、低線熱膨張係数、及び十分な強靱さを併せ持つので、特に液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパーなどの表示装置用のガラス基板代替用のプラスチック基板として好適に利用できる。

Claims (11)

  1. 下記一般式(1)の単位構造式を含むことを特徴とするポリイミド前駆体。
    Figure 2012041529
    〔一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、Rは水素原子又は炭素数3〜9のアルキルシリル基であって、R及びRのうちの少なくとも一つは炭素数3〜9のアルキルシリル基である。〕
  2. 一般式(1)が、下記一般式(2)であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体。
    Figure 2012041529
    〔一般式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、Rは水素原子又は炭素数3〜9のアルキルシリル基であって、R及びRのうちの少なくとも一つは炭素数3〜9のアルキルシリル基である。〕
  3. 一般式(1)の1,4−シクロへキサン構造が、トランス異性体からなることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド前駆体。
  4. 30℃、0.5g/dL N,N−ジメチルアセトアミド溶液における対数粘度が0.2dL/g以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  5. 請求項1〜4のいずれかのポリイミド前駆体が溶媒中に均一に溶解されていることを特徴とするポリイミド前駆体溶液組成物。
  6. 請求項1〜4のいずれかのポリイミド前駆体をイミド化して得られることを特徴とするポリイミド。
  7. 厚さ10μmのフィルムにしたときの400nmにおける光透過率が50%以上、破断伸度が8%以上であることを特徴とする請求項6に記載のポリイミド。
  8. 厚さ10μmのフィルムにしたときの50℃〜200℃における平均の線熱膨張係数が、19ppm/K以下であることを特徴とする請求項6に記載のポリイミド。
  9. 重合温度条件が0℃〜100℃であることを特徴とする前記一般式(1)の単位構造を含むポリイミド前駆体を得ることを特徴とするポリイミド前駆体の製造方法。
  10. 少なくとも、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(3)のジアミンとを反応させて前記一般式(1)の単位構造を含むポリイミド前駆体を得ることを特徴とするポリイミド前駆体の製造方法。
    Figure 2012041529
    〔一般式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、Rは水素原子又は炭素数3〜9のアルキルシリル基であって、R及びRのうちの少なくとも一つは炭素数3〜9のアルキルシリル基である。〕
  11. 塩素原子、臭素原子を含まないシリル化剤を用い前記一般式(1)の単位構造を含むポリイミド前駆体を得ることを特徴とするポリイミド前駆体の製造方法。
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