以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図1〜図7を参照して、本発明の一実施の形態における刃先交換型チップの構成を説明する。本実施の形態における刃先交換型チップ1aは、すくい面10と、逃げ面20と、他の逃げ面30とを備えている。すくい面10は、外周に位置し、かつ隣り合う1組のコーナー11a、11bとを含む。逃げ面20は、すくい面10の外周における1組のコーナー11a、11bに挟まれた辺13と連なり、すくい面10と交差する方向(本実施の形態では直交する方向)に延びる。他の逃げ面30は、逃げ面20と異なる位置(本実施の形態では対向する位置)に形成されている。逃げ面20と他の逃げ面30とは、すくい面10に対して垂直に延びるとともにすくい面10の中心を通る回転軸を中心とした回転対称となる形状を有する。
すくい面10の外周は、矩形状である。ここで、矩形状は、JIS B4120(1998)の5.1で規定されている正多角形、ひし形、等辺不多角形、長方形および平行四辺形を含む。本実施の形態における矩形状は、略四角形であり、たとえば角度θa、θbが30°から150°の範囲内の角を4つ有する形状である。
1組のコーナー11a、11bは、図1に示すように丸コーナーであってもよく、図2に示すように直線の辺13と、辺13a、13bとが交差することで形成されるコーナーであってもよく、図3に示すように角コーナーであってもよい。丸コーナーとは、コーナー11a、11bを形成する辺13a、13bと、辺13との間に曲線が形成されていることを意味する。丸コーナーはたとえばR面加工されることで形成される。角コーナーとは、コーナー11a、11bを形成する辺13a、13bと、辺13との間に直線が形成されていることを意味する。
なお、コーナー11a、11bの角度θa、θbとは、辺13と、辺13a、13bとをそれぞれ延長して交わるそれぞれの角度を意味する。1組のコーナー11a、11bのうちの少なくともいずれか一方の角度θa、θbが80°以下であってもよい。
コーナー11a、11bが丸コーナーである場合には、コーナーの曲率半径が2.4mm以下以下であることが好ましく、1.6mm以下であることがより好ましい。
なお、すくい面10において他の逃げ面30側のコーナーについても逃げ面20側の1組のコーナー11a、11bと同様である。
また、他の逃げ面30は、逃げ面20と対向する面であってもよく、辺13aを含む面であってもよく、辺13bを含む面であってもよい。また、他の逃げ面30は複数あってもよい。
このすくい面10の中央には、開口部14が設けられている。ここで、中央とは、すくい面10の外周の多角形状の重心である。つまり、開口部14は、すくい面の重心を含む。本実施の形態では、開口部14は、すくい面10と対向する面まで(厚さ方向において)貫通している。開口部14は、レバーロック式の保持具に刃先交換型チップ1aを取り付けるために設けられている。
すくい面10と逃げ面20との交線である辺13は、切れ刃である。辺13のすべてが切れ刃であってもよく、コーナー11a、11bの少なくとも一方は切れ刃でなくてもよい。
逃げ面20は凸面状であって、逃げ面20の中央部に位置する第1の領域21と、第1の領域21と連なり、かつ1組のコーナー11a、11bのうちの一方側(本実施の形態ではコーナー11a側)に位置する第2の領域22と、第1の領域21と連なり、かつ1組のコーナー11a、11bのうちの他方側(本実施の形態ではコーナー11b側)に位置する第3の領域23とを含む。
第1の領域21は、辺13においてすくい面10の開口部(開口部の中心、つまり重心)から最も短い距離に位置する点を含む直線部分を含む領域である。第2の領域22は、辺13においてすくい面10の開口部から最も短い距離に位置する点からコーナー11a側に直線状に延びる部分から変曲する最初の点(第1の変曲点15a)から、コーナー11a側まで延びる部分に位置する領域である。第3の領域23は、辺13においてすくい面10の開口部から最も短い距離に位置する点からコーナー11b側に直線状に延びる部分から変曲する最初の点(第1の変曲点15b)から、コーナー11b側まで延びる部分に位置する領域である。
第2および第3の領域22、23は、図4に示すように平面状であってもよく、図5に示すように曲面状であってもよい。また、図6に示すように、第3の領域23の途中に第2の変曲点15cが設けられていてもよい。つまり、図6の第3の領域23には、第1の領域21と第3の領域23との境界である第1の変曲点15bと、コーナー11bとの間に第2の変曲点15cが設けられている。辺13において第1の変曲点15bから第2の変曲点15cまで延びる傾斜と、第2の変曲点15cからコーナー11bまで延びる傾斜とが異なっている。図6では、第3の領域23は、第1の変曲点15bから第2の変曲点15cまで延びる平面と、第2の変曲点15cからコーナー11bまで延びる平面とを含んでおり、2つ以上の平面を含んでいてもよい。また、図7に示すように、第1の変曲点15bから第2の変曲点15cまで延びる第1の曲面と、第2の変曲点15cからコーナー11bまで延びる第2の曲面とを含み、第1および第2の曲面の曲率半径が異なっていてもよい。第2の領域22についても同様である。
また、第1〜第3の領域21〜23を有する逃げ面20は、非研磨面であってもよく、研削加工されていない面であってもよい。
ここで、図4を参照して、本発明の一実施の形態における刃先交換型チップ1aの切れ刃のパラメータについて説明する。本実施の形態では、切れ刃は、辺13においてコーナー11a、11bの丸コーナー(円弧状部)を除く領域である。
切れ刃のうち第1の領域21(図1参照)と連なる部分の延長線41と、切れ刃の1組のコーナー11a、11bのうちの一方側(本実施の形態ではコーナー11a側)の端点16aから延長線41に垂直な方向に延びる線分42との第1の交点43から、延長線41と切れ刃の1組のコーナー11a、11bのうちの他方側(本実施の形態ではコーナー11b側)の端点16bから延長線41に垂直な方向に延びる線分44との第2の交点45までの長さをaとする。切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分における第1の交点43側の端点(本実施の形態では第1の変曲点15a)から第1の交点43までの長さをb1とする。言い換えると、第1の領域21におけるコーナー11a側の端点(第1の変曲点15)から第1の交点43までの距離をb1とする。切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分における第2の交点45側の端点(本実施の形態では第1の変曲点15b)から第2の交点45までの長さをb2とする。言い換えると、第1の領域21におけるコーナー11b側の端点(第1の変曲点15b)から第2の交点45までの距離をbとする。かかる場合において、刃先交換型チップは0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たす。また刃先交換型チップは、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たすことがより好ましい。
延長線41と、切れ刃の端点16a、16bとの間の距離をdとした場合、5μm≦d≦100μmという条件を満たすことが好ましく、40μm≦d≦80μmという条件を満たすことがより好ましい。なお、延長線41と端点16aとの距離と、延長線41と端点16bとの距離が異なる場合には、長い方の距離が上記範囲内であることが好ましく、両方が上記範囲内であることがより好ましい。
刃先交換型チップ1aを構成する基材は特に限定されないが、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化珪素焼結体、酸化アルミニウムおよび炭化チタンからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。また、基材の表面に表面被覆層が形成されていてもよい。
なお、上記超硬合金は、たとえば、炭化タングステンと、鉄系金属の1種以上からなる結合相とを含み、残部が不可避的不純物のものや、炭化タングステンと、鉄系金属の1種以上からなる結合相と、B−1型結晶構造を有する周期律表IVa、Va、IVa族遷移金属および炭素、窒素、酸素あるいは硼素からなる固溶体相とを含み、残部が不可避的不純物のものなどが挙げられる。これらの場合、結合相はたとえば0.1〜30重量%であり、固溶体相はたとえば0.01〜50重量%である。超硬合金の表面部分には、η相や遊離炭素があってもよく、鉄系金属を主体とする層や脱β層があってもなくてもよい。
上記サーメットは、たとえば鉄系金属の1種以上からなる結合相と、B−1型結晶構造を有する周期律表IVa、Va、IVa族遷移金属(チタンが主体)、および炭素、窒素、酸素あるいは硼素からなる固溶体相とを含み、残部が不可避的不純物のものなどが挙げられる。この場合、結合相はたとえば0.1〜40重量%であり、固溶体相はたとえば0.1〜95重量%である。サーメットの表面部分に、表面硬化層や軟化層や鉄系金属を主体とする層があってもよい。
また、刃先交換型チップ1aが保持具に取り付けられた状態で、すくい面10が、刃先交換型チップ1aにより研削される被削物の非研削面に対して垂直であり、かつ保持具の進行方向に対して垂直な垂直面よりも進行方向側に傾くように形成されたネガティブ型の形状であってもよい。
続いて、本実施の形態における刃先交換型チップ1aの製造方法について説明する。まず、原材料を準備する。原材料は特に限定されないが、たとえばWC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化珪素焼結体、酸化アルミニウムおよび炭化チタンからなる群から選択される少なくとも1つの粉末である。
次に、原材料を金型に充填して、原材料を圧縮成形することにより圧粉体を形成する。本実施の形態では、原材料粉末を混合粉砕した後、図1に示す凸面状の逃げ面20が形成される金型に原材料粉末を給粉し、その状態で圧縮成形する。
なお、圧縮成形後の圧粉体に開口部14が形成されていない場合には、圧縮成形後の圧粉体に開口部14を形成する。
次に、圧粉体を加熱して焼結体を得る。焼結体を得る方法は特に限定されないが、たとえば液相焼結を採用する。
次に、ブラシ、バレル、ブラスト、ダイヤモンド砥石、レーザ加工等を用いて、刃先処理を行なう。また、すくい面10などに研磨加工を行なってもよい。なお、これらの工程は省略されてもよい。
また、これら基材に、公知のCVD法、PVD法、スパッタ法およびこれらの組み合わせによる表面被覆層を形成しても本発明の効果は失われず、また被覆層を形成後、ブラシ、バレル、ブラスト、ダイヤモンド砥石、レーザ加工等による被覆層の部分除去や表面平滑化加工等の被覆層表面処理を施しても、本発明の効果は失われない。
以上の工程により、図1〜図7に示すように、外周の形状が多角形状であるすくい面10と、すくい面10の外周における互いに隣り合う1組のコーナー11a、11bに挟まれた辺13と連なり、すくい面10と交差する方向に延びる逃げ面20とを備え、すくい面10と逃げ面20との交線である辺13が切れ刃であり、逃げ面20は凸面状であって、逃げ面20の中央部に位置する第1の領域21と、第1の領域21と連なり、かつ1組のコーナー11a、11bのうちの一方側に位置する第2の領域22と、第1の領域21と連なり、かつ1組のコーナー11a、11bのうちの他方側に位置する第3の領域23とを含み、すくい面10の中央には開口部14が設けられ、切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分の延長線41と、切れ刃の1組のコーナー11a、11bのうちの一方側の端点16aから延長線41に垂直な方向に延びる線分42との第1の交点43から、延長線41と切れ刃の1組のコーナー11a、11bのうちの他方側の端点16bから延長線41に垂直な方向に延びる線分44との第2の交点45までの長さをaとし、切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分における第1の交点43側の端点である第1の変曲点15aから第1の交点43までの長さをb1とし、切れ刃のうち、第1の領域21と連なる部分における第2の交点45側の端点である第1の変曲点15bから第2の交点45までの長さをb2とした場合、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たす焼結体を得ることができる。
続いて、図8を参照して、本発明の一実施の形態における刃先交換型チップ1aの使用方法について説明する。本実施の形態では、刃先交換型チップ1aをバイトなどの保持具50に取り付ける。
まず、切削に用いる特定のコーナー11aを保持具50の開放側に対向するように刃先交換型チップ1aを保持具50に取り付け、刃先先端位置を指定位置にするために微調整する。このとき、チップごとに大きさや変形量が異なり、また、同一チップの各コーナーによってもμm単位で刃先先端位置が異なるため、前回切削に用いられたコーナーと同一の指定位置になるように刃先先端位置を調整する。なお、この刃先位置調整量は寸法公差が大きいチップ(一般的には側面逃げ面非研磨チップ)や変形量の大きいチップでより大きくなる。このようにして取り付けた刃先交換型チップ1aにより切削加工が実施される。
チップ1aのコーナー11aの寿命まで、チップ1aを切削加工に使用した後、チップ1aを保持具50から外す。そして、同一チップの別コーナー、または別チップの別コーナーを取り付け、再度、刃先先端位置を指定位置にするために微調整してから切削加工が実施される。
本発明者は、刃先交換型チップ1aにおいて、すくい面10の中央に設けられた開口部14から相対的に距離が短い第1の領域21は、開口部14から相対的に距離が長い第2および第3の領域22、23と比べ、プレス体の焼結による収縮が小さいので、歪みが小さくなることを見出した。具体的には、圧粉体を液相焼結した場合、約50%の体積収縮が生じる。この際、金型への給粉が不均一であることや、焼結炉内の温度分布、重力等の影響により、焼結体は圧粉体の完全な相似形には収縮せず、僅かな変形が生じる。たとえば、金型への給粉が多かった部位、つまり圧粉体密度が高い部位は焼結時の収縮量が小さく、金型への給粉が少なかった部位、つまり圧粉体密度が低い部位は焼結時の収縮量が大きい。このようにプレス体密度が不均一であることにより、焼結時の収縮量の不均一が生じる。結果として、焼結体はプレス体の完全な相似形ではなく、歪みを持った形となる。たとえば、完全な立方体をプレス成形後、焼結すると、僅かに歪みを持った立方体となる。このため、本実施の形態のような形状の焼結体を得るためには、開口部14から相対的に距離が長い第2および第3の領域22、23は開口部14から相対的に距離が短い第1の領域21よりも中心からの距離が大きいため収縮量が大きいことに起因して、歪みが大きいことを見出した。
そこで、図8に示すように、保持具50にチップ1aを取り付ける際、歪みが小さい第1の領域21を保持具50の保持部51で支持することにより、プレス体の変形に起因する歪みの影響を低減できる。本実施の形態のチップ1aによれば、a、b1およびb2との関係が0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たしている。0.32>(b1+b2)/aであると、開口部14から距離が相対的に長い第2および第3の領域22、23で保持する面積が大きくなりすぎる。このため、この第2および第3の領域22、23の歪みに起因して、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができない。同様に刃先交換型チップ1aを保持具50に取り付ける際に、(b1+b2)/a>0.70であると、第1の領域21の面積、つまり保持具50に取り付けることが可能な面積が小さくなりすぎる。このため、安定性が悪化することに起因して、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができない。0.80>b1/b2および1.20<b1/b2の場合、第2および第3の領域22、23の面積の差が大きくなりすぎるので、開口部14から相対的に距離が長い位置に第1の領域21が位置する。このため、第1の領域21が歪みの大きい領域も含むため、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができない。つまり、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たすことによって、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができる。したがって、刃先位置補正量を小さくすることができるので、ユーザにおけるチップ交換の際の刃先位置補正に要する時間を低減することができる。
また、本発明者は、圧縮成形することで得られる圧粉体の歪みに着目するとともに、この歪みを活かして使用する方法に着目した。このため、ダイヤモンド砥石で研磨加工する等により高い寸法精度を得なくても、刃先交換型チップ1aを保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができる。このため、製造コストを低減できる。さらに、複雑な3次元形状を有していなくても、刃先交換型チップ1aを保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができる。このため、研磨加工が不可能な場合などを低減できるので、容易に製造することができる。
それに加えて、刃先交換型チップ1aの保持具50へのクランプ強度を高くするためには、チップと保持部51とのある程度の接触面積が必要となる。ところが側面無研磨チップにおいては、歪みの影響をできるだけ小さくするため、直線性がよい部分のみで保持具50と接触することが、高い刃先位置精度実現の観点からは好ましい。これらのトレードオフとなる2つの特性値(クランプ強度/刃先位置精度)のバランスを調査した結果、上記数値範囲は0.90<b1/b2<1.10、かつ、0.45≦(b1+b2)/a≦0.60が特に好ましいことを見出した。また側面研磨チップにおいても、保持具側の加工精度やチップとの接触部分の平坦性の関係で、同様に0.90<b1/b2<1.10、かつ、0.45≦(b1+b2)/a≦0.60という条件を満たしていることが特に好ましいことを見出した。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aにおいて好ましくは、延長線41と切れ刃の端点16a、16b(図4参照)との間の距離をdとした場合、5μm≦d≦100μmという条件を満たす。これにより、コーナー11a、11bと保持具50とが接触する可能性が抑制され、かかる接触による刃先位置精度の悪化を抑制することができる。また、切り屑処理性が良好に保持されるため、加工面の面粗度の悪化を抑制することができる。
また、一般的に刃先角が大きいほど切削抵抗が高くなったり、切り屑処理性が悪化する傾向にある。d値が大きくなると、刃先位置精度は改善される傾向になる反面、擬似的に刃先角が大きくなるため、切削抵抗増加や切り屑処理悪化といった現象が生じる場合がある。これらトレードオフとなる2つの特性値のバランスを調査した結果、d値は40μm以上80μm以下とするのがより好ましいことを見出した。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aにおいて、第2の領域22および第3の領域23の少なくともいずれか一方は曲面状であってもよい。このような形状であっても、本実施の形態の刃先交換型チップ1aは、保持具に取り付ける際の位置精度を向上できる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aにおいて、第2の領域22および第3の領域23の少なくともいずれか一方は平面状であってもよい。第2および第3の領域22、23が曲面状である場合より、加工が容易である。
上記刃先交換型チップ1aにおいては、1組のコーナー11a、11bの刃先角が80°以下であってもよい。このような形状であっても、本実施の形態の刃先交換型チップ1aは、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上できる。
上記刃先交換型チップ1aにおいては、逃げ面20と異なる位置に形成された他の逃げ面30を備え、逃げ面20と他の逃げ面30とは、すくい面10に対して垂直に伸びるとともにすくい面10の中心を通る回転軸を中心とした回転対称となる形状を有していてもよい。これにより、他の逃げ面30の端部に形成される1組のコーナーについても、上記逃げ面20の端部に位置する1組のコーナー11a、11bと同様に刃先位置精度の悪化を抑制できる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aにおいて、1組のコーナー11a、11bの少なくとも一方が丸コーナーであり、丸コーナーの曲率半径が2.4mm以下であってもよい。1組のコーナー11a、11bがこのような条件であっても、本実施の形態では丸コーナー近傍の歪みによる影響を低減できるので、保持具に取り付ける位置精度を向上できる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aにおいて好ましくは、基材がWC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化珪素焼結体、酸化アルミニウムと炭化チタンからなる群から選択される少なくとも1つである。これらの材料から焼結法により作製するチップにおいて、本実施の形態は特に有効である。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aにおいて、逃げ面20が非研磨面であってもよい。これにより、チップ1aの製造において研磨工程をなくすことができるため、チップ1aの生産性や経済性の向上を図ることができる。また、チップ形状の設計の自由度を高くすることができる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aにおいて、刃先交換型チップ1aが保持具50に取り付けられた状態で、すくい面10が、刃先交換型チップ1aにより研削される被削物の非研削面に対して垂直であり、かつ保持具50の進行方向に対して垂直な垂直面よりも進行方向側に傾くように形成されたネガティブ型の形状であってもよい。このような形状であっても、本実施の形態の刃先交換型チップ1aは、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上できる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aにおいて、逃げ面20が研削加工されていない面であってもよい。これにより、チップ1aの製造において研削工程をなくすことができるため、チップ1aの生産性や経済性の向上を図ることができる。また、チップ形状の設計の自由度を高くすることができる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aの製造方法は、原材料を準備する工程と、原材料を金型に充填して、原材料を圧縮成形することにより圧粉体を形成する工程と、圧粉体を加熱して焼結体を得る工程とを備え、焼結体が、外周の形状が多角形状であるすくい面10と、すくい面10の外周における互いに隣り合う1組のコーナー11a、11bに挟まれた辺13と連なり、すくい面10と交差する方向に延びる逃げ面20とを備え、すくい面10と逃げ面20との交線である辺13が切れ刃であり、逃げ面20は凸面状であって、逃げ面20の中央部に位置する第1の領域21と、第1の領域21と連なり、かつ1組のコーナー11a、11bのうちの一方側に位置する第2の領域22と、第1の領域21と連なり、かつ1組のコーナー11a、11bのうちの他方側に位置する第3の領域23とを含み、すくい面10の中央には開口部14が設けられ、切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分の延長線41と、切れ刃の1組のコーナー11a、11bのうちの一方側の端点16aから線分44に垂直な方向に延びる線分42との第1の交点43から、延長線41と切れ刃の1組のコーナー11a、11bのうちの他方側の端点16bから延長線41に垂直な方向に延びる線分44との第2の交点45までの長さをaとし、切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分における第1の交点43側の端点(第1の変曲点15a)から第1の交点43までの長さをb1とし、切れ刃のうち、第1の領域21と連なる部分における第2の交点45側の端点(第1の変曲点15b)から第2の交点45までの長さをb2とした場合、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たす。
これにより、図1〜図7に示すように、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができる刃先交換型チップ1aを製造することができる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1aの製造方法において好ましくは、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たす形状の圧粉体を形成する。これにより、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができる刃先交換型チップ1aを、製造工程を簡略化して製造することができる。
(実施の形態2)
図9を参照して、本発明の実施の形態2における刃先交換型チップ1bおよびその製造方法を説明する。本実施の形態における刃先交換型チップ1bおよびその製造方法は、基本的には実施の形態1の刃先交換型チップ1aおよびその製造方法と同様の構成を備えているが、すくい面10の外周の形状が略三角形である点において異なる。略三角形状は、たとえば角度θa、θbが20°から80°の範囲内の角を3つ有する形状を意味する。なお、本実施の形態における他の逃げ面30は、逃げ面20と連なる面である。
また、図10に示すように、本実施の形態の刃先交換型チップ1bの使用方法は、基本的には図8に示す実施の形態1の刃先交換型チップ1aの使用方法と同様であるが、本実施の形態の刃先交換型チップ1bの形状に合う保持具50を用いる点において異なる。
以上説明したように、本実施の形態における刃先交換型チップ1bおよびその製造方法は、すくい面10の外周の形状が略三角形である。このような形状であっても、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができる。
(実施の形態3)
図11〜図17を参照して、本発明の実施の形態3における刃先交換型チップ1cを説明する。本実施の形態における刃先交換型チップ1cは、すくい面10と、逃げ面20と、他の逃げ面30とを備えている。すくい面10は、外周に鋭角のコーナー11と鈍角の頂点12とを交互に含む。逃げ面20は、すくい面10の外周における鋭角のコーナー11と鈍角の頂点12とに挟まれた辺13と連なり、すくい面10と交差する方向(本実施の形態では直交する方向)に延びる。他の逃げ面30は、逃げ面20と対向する位置に形成されている。逃げ面20と他の逃げ面30とは、すくい面10に対して垂直に延びるとともにすくい面10の中心を通る回転軸を中心とした120°の回転対称となる形状を有する。
すくい面10の外周は、六角形状である。ここで六角状とは、JIS B4120(1998)の5.1で規定されていると右辺の六角形を意味し、たとえば角度が30°から150°の範囲内の角を6つ有する形状を意味する。つまり、コーナー11の角度θ1はたとえば30°以上90°未満であり、頂点12の角度θ2はたとえば90°を超えて150°未満である。コーナー11の角度θ1は、80°以下であることが好ましい。
コーナー11および頂点12は、図11に示すように丸コーナーであってもよく、図12に示すように直線の辺13と辺13aとが交差することで形成されるコーナーであってもよく、図13に示すように角コーナーであってもよい。丸コーナーとは、コーナー11を形成する辺13aと、辺13との間に曲線が形成されていることを意味する。丸コーナーはたとえばR面加工されることで形成される。角コーナーとは、コーナー11を形成する辺13aと、辺13との間に直線が形成されていることを意味する。
なお、コーナー11の角度θ1とは、辺13と、辺13aとをそれぞれ延長して交わる角度を意味する。同様に、頂点12の角度θ2は、すくい面10の外周を構成する辺13b(図11参照)と、辺13とをそれぞれ延長して交わる角度を意味する。
コーナー11が丸コーナーである場合には、コーナーの曲率半径が2.4mm以下であることが好ましい。
なお、すくい面10においてコーナー11および頂点12と対向する(他の逃げ面30側の)コーナーおよび頂点についても同様である。
このすくい面10には、開口部14が設けられている。本実施の形態では、開口部14は、すくい面10の中央に形成され、すくい面10と対向する面まで(厚さ方向において)貫通している。開口部14は、レバーロック式の保持具に刃先交換型チップ1cを取り付けるために設けられている。
すくい面10と逃げ面20との交線である辺13は、切れ刃である。辺13のすべてが切れ刃であってもよく、コーナー11および頂点12の少なくとも一方は切れ刃でなくてもよい。
逃げ面20は凸面状であって、頂点12側に位置する第1の領域21と、第1の領域21と連なりコーナー11側に位置する第2の領域22とを含む。第1の領域21は、辺13において頂点12側から直線状に延びる部分に位置する領域である。第2の領域22は、辺13において頂点12側から直線状に延びる部分から変曲する最初の点(第1の変曲点15)から、コーナー11側まで延びる部分に位置する領域である。つまり、第1の領域21と第2の領域22との境界は、辺13において頂点12側からコーナー11側に向けて直線状に延びる部分が最初に変曲する位置(第1の変曲点15)である。
第2の領域22は、図14に示すように平面状であってもよく、図15に示すように曲面状であってもよい。また、図16に示すように、第2の領域22の途中に第2の変曲点18が設けられていてもよい。つまり、図16に示す第2の領域22には、第1の領域21と第2の領域22との境界である第1の変曲点15と、コーナー11との間に第2の変曲点18とが設けられている。辺13において第1の変曲点15から第2の変曲点18まで延びる傾斜と、第2の変曲点18からコーナー11まで延びる傾斜とが異なっている。図16では、第2の領域22は、第1の変曲点15から第2の変曲点18まで延びる平面と、第2の変曲点18からコーナー11まで延びる平面とを含んでおり、2つ以上の平面を含んでいてもよい。また、図17に示すように、第1の変曲点15から第2の変曲点18まで延びる第1の曲面と、第2の変曲点18からコーナー11まで延びる第2の曲面とを含み、第1および第2の曲面の曲率半径が異なっていてもよい。
また、第1および第2の領域21、22を有する逃げ面20は、非研磨面であってもよく、研削加工されていない面であってもよい。
ここで、図14を参照して、本発明の一実施の形態における刃先交換型チップ1cの切れ刃のパラメータについて説明する。本実施の形態では、切れ刃は、辺13においてコーナー11の丸コーナー(円弧状部)および頂点12の丸頂点(円弧状部)を除く領域である。
切れ刃のうち第1の領域21(図11参照)と連なる部分の延長線41と、切れ刃のコーナー側端点16から延長線41に垂直な方向に延びる線分42との交点46から、切れ刃の頂点側端点17までの距離をaとする。また、切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分における交点46側の端点(第1の変曲点15)から交点46までの距離をbとする。言い換えると、第2の領域22における頂点12側の端点(第1の変曲点15)から交点46までの距離をbとする。かかる場合において、刃先交換型チップは0.20≦b/a≦0.70という条件を満たしており、0.35≦b/a≦0.58という条件を満たしていることが好ましく、0.45≦b/a≦0.55という条件を満たしていることがより好ましい。
延長線41と切れ刃のコーナー側端点16との間の距離をdとした場合、5μm≦d≦100μmという条件を満たすことが好ましく、40μm≦d≦80μmという条件を満たすことがより好ましい。
刃先交換型チップ1cを構成する基材は特に限定されないが、実施の形態1の刃先交換型チップ1aと同様の基材を用いることができる。
また、刃先交換型チップ1cが保持具に取り付けられた状態で、すくい面10が、刃先交換型チップ1cにより研削される被削物の非研削面に対して垂直であり、かつ保持具の進行方向に対して垂直な垂直面よりも進行方向側に傾くように形成されたネガティブ型の形状であってもよい。
続いて、本実施の形態における刃先交換型チップ1cの製造方法について説明する。まず、原材料を準備する。原材料は特に限定されないが、たとえば実施の形態1と同様の原材料を準備する。
次に、原材料を金型に充填して、原材料を圧縮成形することにより圧粉体を形成する。本実施の形態では、原材料粉末を混合粉砕した後、図11に示す凸面状の逃げ面20が形成される金型に原材料粉末を給粉し、その状態で圧縮成形する。
次に、圧粉体を加熱して焼結体を得る。次に、刃先処理を行なう。また、すくい面10などに研磨加工を行なってもよい。なお、これらの工程は実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。
以上の工程により、図11〜図17に示すように、外周の形状が六角形状であり、外周に位置する鋭角のコーナー11と鈍角の頂点12とを交互に含むすくい面10と、すくい面10の外周における鋭角のコーナー11と鈍角の頂点12とに挟まれた辺13と連なり、すくい面10と交差する方向に延びる逃げ面20とを備え、すくい面10と逃げ面20との交線である辺13が切れ刃であり、逃げ面20は凸面状であって、頂点12側に位置する第1の領域21と、第1の領域21と連なり、コーナー11側に位置する第2の領域22とを含み、すくい面の中央には開口部14が設けられ、切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分の延長線41と、切れ刃のコーナー側端点16から延長線41に垂直な方向に延びる線分42との交点46から切れ刃の頂点側端点17までの距離をaとし、切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分における交点側の端点である第1の変曲点15から交点46までの距離をbとした場合、0.20≦b/a≦0.70という条件を満たす焼結体を得ることができる。
続いて、図18を参照して、本発明の一実施の形態における刃先交換型チップ1cの使用方法について説明する。本実施の形態の刃先交換型チップ1cの使用方法は、基本的には図8に示す実施の形態1の刃先交換型チップ1aの使用方法と同様であるが、図18に示すように、本実施の形態の刃先交換型チップ1cの形状に合う保持具50を用いる点、および刃先交換型チップ1cのコーナー11を保持具50の開放側に対向するように取り付けることが可能である点において異なる。
続いて、図11〜図17を参照して、本実施の形態の効果について説明する。本発明者は、刃先交換型チップ1cにおいて、鈍角の頂点12近傍はコーナー11近傍よりも開口部14からの距離が小さいため、収縮量が大きくなることを見出した。さらに本発明者は、鈍角の頂点12近傍は鋭角のコーナー11近傍と比べ、原材料粉末の金型への給粉の密度が高く、圧粉成形時の安定性が高く、圧粉体の焼結による収縮が小さいので、歪みが小さくなることを見出した。
具体的には、圧粉体を液相焼結した場合、約50%の体積収縮が生じる。この際、金型への給粉が不均一であることや、焼結炉内の温度分布、重力等の影響により、焼結体は圧粉体の完全な相似形には収縮せず、僅かな変形が生じる。たとえば、金型への給粉が多かった部位、つまり圧粉体密度が高い部位は焼結時の収縮量が小さく、金型への給粉が少なかった部位、つまり圧粉体密度が低い部位は焼結時の収縮量が大きい。このようにプレス体密度が不均一であることにより、焼結時の収縮量の不均一が生じる。結果として、焼結体はプレス体の完全な相似形ではなく、歪みを持った形となる。たとえば、完全な立方体をプレス成形後、焼結すると、僅かに歪みを持った立方体となる。このため、本実施の形態のような形状の焼結体を得るためには、鋭角のコーナー11近傍は鈍角の頂点12近傍よりも開口部14からの距離が大きいため収縮量が大きくなることに起因して、鋭角のコーナー11近傍では歪みが大きいことを見出した。また、鋭角のコーナー11近傍は鈍角の頂点12近傍よりも原材料粉末の金型への充填密度が低いことに起因して、鋭角のコーナー11近傍では歪みが大きいことを見出した。
そこで、図18に示すように、保持具50にチップ1cを取り付ける際、歪みが小さい鈍角の頂点12近傍の第1の領域21を保持具50の保持部51で支持することにより、プレス体の変形に起因する歪みの影響を低減できる。本実施の形態のチップ1cによれば、上記aと上記bとの関係が0.20≦b/a≦0.70という条件を満たしている。b/aの値が0.70を超える場合は、チップ1cの保持具50への保持面積が狭くなるため、位置精度が悪くなる。また、b/aの値が0.20未満の場合は、歪みの多い部位での保持面積が広くなりすぎるため、位置精度が悪くなる。つまり、0.20≦b/a≦0.70という条件を満たすことによって、刃先交換型チップ1cを保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができる。したがって、刃先位置補正量を小さくすることができるので、ユーザにおけるチップ交換の際の刃先位置補正に要する時間を低減することができる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cにおいて好ましくは、延長線41と切れ刃のコーナー側端点16(図14参照)との間の距離をdとした場合、5μm≦d≦100μmという条件を満たす。これにより、コーナー11と保持具50とが接触する可能性が抑制され、かかる接触による刃先位置精度の悪化を抑制することができる。また、切り屑処理性が良好に保持されるため、加工面の面粗度の悪化を抑制することができる。
また、一般的に刃先角が大きいほど切削抵抗が高くなったり、切り屑処理性が悪化する傾向にある。d値が大きくなると、刃先位置精度は改善される傾向になる反面、擬似的に刃先角が大きくなるため、切削抵抗増加や切り屑処理悪化といった現象が生じる場合がある。これらトレードオフとなる2つの特性値のバランスを調査した結果、d値は40μm以上80μm以下とするのがより好ましいことを見出した。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cにおいて、第2の領域22は曲面状であってもよい。このような形状であっても、本実施の形態の刃先交換型チップ1cは、保持具に取り付ける際の位置精度を向上できる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cにおいて、第2の領域22は平面状であってもよい。第2の領域22が曲面状である場合より、第2の領域22の加工が容易である。
上記刃先交換型チップ1cにおいては、コーナー11の刃先角が80°以下であってもよい。このような形状であっても、本実施の形態の刃先交換型チップ1cは、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上できる。
上記刃先交換型チップ1cにおいては、逃げ面20と対向する位置に形成された他の逃げ面30を備え、逃げ面20と他の逃げ面30とは、すくい面10に対して垂直に伸びるとともにすくい面10の中心を通る回転軸を中心とした120°の回転対称となる形状を有していてもよい。これにより、他の逃げ面30の端部に形成されるコーナーについても、上記逃げ面20の端部に位置するコーナー11と同様に刃先位置精度の悪化を抑制できる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cにおいて、コーナー11が丸コーナーであり、コーナーの曲率半径が2.4mm以下であってもよい。この場合、コーナー11が丸コーナーであってもコーナー部全体としては鋭角の角部となっており、鈍角の頂点12が位置する部分に充填される原料粉末よりも鋭角のコーナー11に充填される原料粉末の密度が低くなりやすい。しかし、曲率半径が2.4mm以下であっても、本実施の形態では鋭角のコーナー11近傍の歪みによる影響を低減できる。このため、曲率半径が2.4mm以下の丸コーナーを有していても、保持具に取り付ける位置精度を向上できる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cにおいて好ましくは、基材がWC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化珪素焼結体、酸化アルミニウムと炭化チタンからなる群から選択される少なくとも1つである。これらの材料から焼結法により作製するチップにおいて、本実施の形態は特に有効である。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cにおいて、逃げ面20が非研磨面であってもよい。これにより、チップ1cの製造において研磨工程をなくすことができるため、チップ1cの生産性や経済性の向上を図ることができる。また、チップ形状の設計の自由度を高くすることができる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cにおいて、刃先交換型チップ1cが保持具50に取り付けられた状態で、すくい面10が、刃先交換型チップ1cにより研削される被削物の非研削面に対して垂直であり、かつ保持具50の進行方向に対して垂直な垂直面よりも進行方向側に傾くように形成されたネガティブ型の形状であってもよい。このような形状であっても、本実施の形態の刃先交換型チップ1cは、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上できる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cにおいて、逃げ面20が研削加工されていない面であってもよい。これにより、チップ1cの製造において研削工程をなくすことができるため、チップ1cの生産性や経済性の向上を図ることができる。また、チップ形状の設計の自由度を高くすることができる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cの製造方法は、原材料を準備する工程と、原材料を金型に充填して、原材料を圧縮成形することにより圧粉体を形成する工程と、圧粉体を加熱して焼結体を得る工程とを備え、焼結体が、外周の形状が六角形状であり、外周に位置する鋭角のコーナー11と鈍角の頂点12とを交互に含むすくい面10と、すくい面10の外周におけるコーナー11と頂点12とに挟まれた辺13と連なり、すくい面10と交差する方向に延びる逃げ面20とを備え、すくい面10と逃げ面20との交線である辺13が切れ刃であり、逃げ面20は凸面状であって、頂点12側に位置する第1の領域21と、第1の領域21と連なり、コーナー11側に位置する第2の領域22とを含み、すくい面10の中央には開口部14が設けられ、切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分の延長線41と、切れ刃のコーナー側端点16から延長線41に垂直な方向に延びる線分42との交点46から切れ刃の頂点側端点17までの距離をaとし、切れ刃のうち第1の領域21と連なる部分における交点46側の端点である第1の変曲点15から交点46までの距離をbとした場合、0.20≦b/a≦0.70という条件を満たす。
これにより、図11〜図17に示すように、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができる刃先交換型チップ1cを製造することができる。
本実施の形態の刃先交換型チップ1cの製造方法において好ましくは、0.20≦b/a≦0.70という条件を満たす形状の圧粉体を形成する。これにより、保持具50に取り付ける際の位置精度を向上することができる刃先交換型チップ1cを、製造工程を簡略化して製造することができる。
本実施例では、すくい面が外周の形状が多角形状である場合に、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たすことによる本発明の効果を確認するため、以下のような試験を行った。
(試料の準備)
以下のような方法により、本発明例1〜12の試料および比較例1〜5の試料を各10個作製した。
まず、WCを主成分とし、4.0wt%のTiCと、1.8wt%のTaCと、0.9wt%のNbCと、7.2wt%のCoとを含み、残部が不可避的不純物からなるように配合した原料粉末をボールミルで粉砕混合後、金型に給粉して圧粉成形をした。こうして得られた圧粉体を1420℃で1時間焼結した。この焼結体の上下面をダイヤモンド砥石で研削し、SiCブラシですくい面からみて0.06mmのホーニングによる刃先処理を施した。さらに公知のCVD法を用いてTiN(0.3μm)/MT−TiCN(5.3μm)/TiBN(1.0μm)/α-Al2O3(4.0μm)/TiN(0.3μm)の被覆層を焼結体に形成した。
焼結体の形状は、逃げ面以外は住友電工ハードメタル(株)SNMG120408N−GUの形状とし、逃げ面は所定の金型(臼)の形状を調整することで決定した。これらのチップはネガティブ型であり、刃先角(図1におけるθaおよびθb)は90゜とし、すくい面10は正方形形状とした。逃げ面は全周研磨無し(非研磨面)とした。
より具体的には、本発明例1、2、4〜6、9〜12については、第2および第3の領域22、23は図1に示した刃先交換型チップ1aと同様に単一の平面により構成された。また、本発明例3の第2の領域22(図1参照)は、図5に示すように、曲率半径約50mmの円弧形状とされた。また、本発明例7の第2および第3の領域22、23は、図6に示すように、2つの面で構成され、第2および第3の領域22、23の中央(第2の変曲点15c)より第1の領域21側と1組のコーナー11a、11b側とで面が異なり、この第2および第3の領域22、23の中央から延長線41と平行に延びる線分と、1組のコーナー11a、11b側の端点16a、16bとの間の距離はそれぞれ7μmとした。また、本発明例8の第2および第3の領域22、23は、図7に示すように、2つの曲率半径を持つ円弧で構成された。より具体的には、第1の領域21に近い側の円弧(第1の変曲点15a、15bから第2の変曲点15cに位置するそれぞれの領域)は曲率半径が約80mmの円弧とされ、1組のコーナー11a、11bに近い側の円弧(第2の変曲点15cから1組のコーナー11a、11bに位置する領域)は曲率半径が約40mmの円弧とされ、かつこれら2つの円弧の円弧長さは同一とされた。
また、比較例1については、図19に示すように、上述した第2および第3の領域は形成されず、逃げ面120が1つの平面によって構成された。また、比較例2〜5については、逃げ面20の構成は図1に示した刃先交換型チップ1aと同様とし、第2および第3の領域が図4に示すように単一の平面により構成された。ただし、比較例2〜5については、上述した(b1+b2)/aおよびb1/b2の値が本発明に規定する数値範囲から外れるように設定した。
なお、本発明例1〜12および比較例1〜5の(b1+b2)/a、b1/b2およびdの値は、後述する表1に記載されている。
上記のような試料(チップ)を、本発明例1〜12および比較例1〜5のそれぞれについて10個ずつ製造した。つまり、切削に用いられる切れ刃(鋭角側コーナー)は80切れ刃となった。
(試験方法)
(1)形状測定
上述のように作製した試料である焼結体(チップ)について、形状測定を行った。形状測定方法としては、図20に示すようにチップ1aを配置し、測定機として触針式輪郭形状測定機(ミツトヨ製CV−4000H触針針先端半径25μm針先端補正有)を使用してチップ1aの形状を測定した。具体的には、チップ1aの輪郭形状の測定は、上記測定器の針が検体であるチップの逃げ面上を図20の矢印の方向に走査して行った。
(2)ホルダへの取り付けおよび取り外しにおける刃先位置精度の測定
住友電工ハードメタル(株)製の旋削加工用ホルダPSSNR2525−43を用いて、上述した各試料に関して、80切れ刃の1)取り付け、2)ダイヤルゲージを用いた刃先位置測定、3)切れ刃の取り外し、を行ない、刃先位置精度の最大値と最小値との差(刃先調整幅と呼称)を測定した。さらに刃先位置(刃先調整幅)の標準偏差を算出した。
(3)ホルダへの取り付けおよび取り外しにおける作業時間の測定
また、本発明例2と比較例1の各80コーナーを用い、上述したバイトに取り付けて刃先位置調整を行なう作業を80回実施し、作業に要した時間を算出した。
(結果)
上述した形状測定および刃先位置精度の測定結果を以下の表1に示す。
表1からわかるように、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たす本発明例1〜12はこの条件を満たしていない比較例1〜5と比べ、刃先調整幅および標準偏差が小さくなっていた。これらの結果から、本発明例1〜12は保持具に取り付ける際の位置精度を向上できることがわかった。そのため、ユーザが本発明例1〜12によるチップを使用する時、刃先調整に要する時間短縮を図ることができることがわかった。
また、上述した作業時間の測定では、本発明例2は比較例1と比べ、刃先位置調整に要する作業時間が約1/4となることも確認された。
また、本発明例5は、本発明例1〜4、6〜12に比べてやや加工面の光沢が劣っていた。この結果から、延長線と切れ刃の端点との距離をdとした場合、d<95μmという条件を満たすことにより、特性をより向上できることがわかった。
本実施例では、すくい面が外周の形状が多角形状である場合に、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たすことによる本発明の効果を確認するため、以下のような試験を行った。
(試料の準備)
以下のような方法により、本発明例13〜23の試料、および比較例6〜10の試料を各10個作製した。
まず、WCを主成分とし、1.5wt%のTaCと、0.5wt%のNbCと、0.3wt%のCr3C2と、9.8wt%のCoとを含み、残部が不可避的不純物からなるように配合した原料粉末をボールミルで粉砕混合後、金型に給粉してプレス成形した。こうして得られたプレス体を1375℃で1時間焼結した。この焼結体の上下面をダイヤモンド砥石で研削し、SiCブラシですくい面からみて0.04mmのホーニングによる刃先処理を施した。さらに、公知のPVD法を用いてTiAlCrNとTiSiCrNを20nmの厚みで積層した超多層膜(3.2μm)/TiArCrCN(0.2μm)の被覆層を形成した。
逃げ面以外の形状は 住友電工ハードメタル(株)TNMG160408N−SUの形状とし、逃げ面の形状は、上述した所定の金型(臼)の形状を調整することで決定した。これらのチップはネガティブ型であり、刃先角(θa、θb)は60゜とし、すくい面10は正三角形形状とした。このように製造した本発明例13〜23および比較例6〜10の(b1+b2)/a、b1/b2およびdの値は、後述する表2に記載されている。逃げ面は全周研磨無し(非研磨面)とした。
(試験方法)
(1)形状測定
上述のように作製した試料である焼結体(チップ)について、形状測定を行った。形状測定方法としては、図21に示すようにチップ1bを定盤60に配置し、測定機としてレーザ式非接触3次元形状測定機(キーエンス社KS−1100)を使用してチップの形状を測定した。具体的には、検体であるチップの逃げ面上を図21の矢印72の方向にレーザ光を照射し、矢印71の方向にレーザ光源を走査して行った。
(2)ホルダへの取り付け・取り外しにおける刃先位置精度の測定
住友電工ハードメタル(株)製の旋削加工用ホルダPTGNR2525−33を用いて、上述した各試料に関して、60切れ刃の1)取り付け、2)ダイヤルゲージを用いた刃先位置測定、3)切れ刃の取り外し、を行ない、刃先位置精度の最大値と最小値との差(刃先調整幅と呼称)とを測定した。さらに刃先位置(刃先調整幅)の標準偏差を算出した。
(3)ホルダへの取り付け・取り外しにおける作業時間の測定
また、本発明例14と比較例6の各60コーナーを用い、上述したバイトに取り付けて刃先位置調整を行なう作業を60回実施し、作業に要した時間を算出した。
(結果)
上述した形状測定および刃先位置精度の測定結果を以下の表2に示す。
表2からわかるように、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たす本発明例13〜23はこの条件を満たしていない比較例6〜10と比べ、刃先調整幅および標準偏差が小さくなっていた。これらの結果から、本発明例13〜23は保持具に取り付ける際の位置精度を向上できることがわかった。そのため、ユーザが本発明例13〜23によるチップを使用する時、刃先調整に要する時間短縮を図ることができることがわかった。
また、上述した作業時間の測定では、本発明例14は比較例6と比べ、刃先位置調整に要する作業時間が約1/3となることも確認された。
また、本発明例17は、本発明例13〜16、18〜23に比べてやや加工面の光沢が劣っていた。この結果から、延長線と切れ刃の端点との距離をdとした場合、d<95μmという条件を満たすことにより、特性をより向上できることがわかった。
本実施例では、すくい面が外周の形状が多角形状である場合に、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たすことによる本発明の効果を確認するため、以下のような試験を行った。
(試料の準備)
以下のような方法により、本発明例24、25の試料および比較例11の試料を各10個準備した。
80wt%の複合炭化物(75wt%のTiCNと、15wt%のWCと、10wt%のNbCとからなる)と、5.0wt%のWCと、5.0wt%のTiCNと、3.0wt%のNiと、7.0wt%のCoとからなるように配合した原料粉末をボールミルで粉砕混合後、金型に給粉してプレス成形した。こうして得られたプレス体を1.0kPaの窒素雰囲気で、1430℃で1時間焼結した。この焼結体の上下面および側面(全面)をダイヤモンド砥石で研削し、ダイヤモンド砥石で0.1mmx−20°のチャンファーホーニンングによる刃先処理を施した。
焼結体の形状は、逃げ面以外は住友電工ハードメタル(株)TNGG160404R−UMとし、逃げ面は所定の金型(臼)の形状を調整することで決定した。これらのチップはネガティブ型であり、刃先角は60゜であり、すくい面10の平面形状は正三角形形状であった。すくい面および逃げ面は全面研磨した。逃げ面形状は、側面研磨時にダイヤモンド砥石を用いて形成した。このように製造した本発明例24、25および比較例11の(b1+b2)/a、b1/b2およびdの値は、後述する表3に記載されている。
(試験方法)
(1)形状測定
形状測定方法は、実施例1と同一とした。
(2)ホルダへの取り付け・取り外しにおける刃先位置精度の測定
住友電工ハードメタル(株)製の旋削加工用ホルダDTGNR2525M16を用いて、上述した各試料に関して、60切れ刃の1)取り付け、2)ダイヤルゲージを用いた刃先位置測定、3)切れ刃の取り外し、を行ない、刃先位置精度の最大値と最小値との差(刃先調整幅と呼称)を測定した。さらに刃先位置(刃先調整幅)の標準偏差を算出した。
(3)ホルダへの取り付け・取り外しにおける作業時間の測定
また、本発明例25と比較例11の各60コーナーを用い、上述したバイトに取り付けて刃先位置調整を行なう作業を60回実施し、作業に要した時間を算出した。
(結果)
上述した形状測定および刃先位置精度の測定結果を以下の表3に示す。
表3からわかるように、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たす本発明例24および25は、この条件を満たしていない比較例11と比べ、刃先調整幅および標準偏差が小さくなっていた。これらの結果から、本発明例24および25は保持具に取り付ける際の位置精度を向上できることがわかった。そのため、ユーザが本発明例24および25によるチップを使用する時、刃先調整に要する時間短縮を図ることができることがわかった。
さらに、0.90<b1/b2<1.10、および、0.45≦(b1+b2)/a≦0.60という条件を満たす本発明例24は、本発明例25よりも刃先調整幅および標準偏差をさらに低減することができることがわかった。
また、上述した作業時間の測定では、本発明例25は比較例11と比べ、刃先位置調整に要する作業時間が約3/5となることも確認された。
本実施例では、すくい面が外周の形状が多角形状である場合に、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70という条件を満たすことによる本発明の効果を確認するため、以下のような試験を行った。
(試料の準備)
以下のような方法により、本発明例25、26の試料および比較例8の試料を各10個準備した。
48wt%のTiCNと、10wt%のTiCと、2wt%のTaNと、4wt%のNbCと、14wt%のWCと、7wt%のMo2Cと、5wt%のNiと、10wt%のCoとからなるように配合した原料粉末をボールミルで粉砕混合後、金型に給粉してプレス成形した。こうして得られたプレス体を0.3kPaの窒素雰囲気で、1500℃で1時間焼結した。この焼結体の上下面をダイヤモンド砥石で研削し、ダイヤモンドブラシですくい面からみて0.05mmのホーニングによる刃先処理を施した。
焼結体の形状は、逃げ面以外は住友電工ハードメタル(株)のTPMT110304N−SUとし、逃げ面は所定の金型(臼)の形状を調整することで決定した。これらのチップはポジティブ型であり、刃先角(図9におけるθa、θb)は60゜であった。このように製造した本発明例26、27および比較例12の(b1+b2)/a、b1/b2およびdの値は、後述する表5に記載されている。逃げ面は全周研磨無し(非研磨面)とした。
(試験方法)
(1)形状測定
形状測定方法は、実施例2と同一とした。
(2)ホルダへの取り付け・取り外しにおける刃先位置精度の測定
住友電工ハードメタル(株)製の旋削加工用ホルダBBPT−212Rを用いて、上述した各試料に関して、30切れ刃の1)取り付け、2)ダイヤルゲージを用いた刃先位置測定、3)切れ刃の取り外し、を行ない、刃先位置精度の最大値と最小値との差(刃先調整幅と呼称)を測定した。さらに刃先位置(刃先調整幅)の標準偏差を算出した。
(3)ホルダへの取り付け・取り外しにおける作業時間の測定
また、本発明例27と比較例12の各60コーナーを用い、上述したバイトに取り付けて刃先位置調整を行なう作業を60回実施し、作業に要した時間を算出した。
(結果)
上述した形状測定および刃先位置精度の測定結果を以下の表4に示す。
表4からわかるように、0.80≦b1/b2≦1.20、および、0.32≦(b1+b2)/a≦0.70を満たす本発明例26および27はこの条件を満たさない比較例12と比べ、刃先調整幅および標準偏差が小さくなっていた。これらの結果から、本発明例26および27は保持具に取り付ける際の位置精度を向上できることがわかった。そのため、ユーザが本発明例26および27によるチップを使用する時、刃先調整に要する時間短縮を図ることができることがわかった。
さらに、0.90<b1/b2<1.10、および、0.45≦(b1+b2)/a≦0.60という条件を満たす本発明例26は、本発明例27よりも刃先調整幅および標準偏差をさらに低減することができることがわかった。
また、上述した作業時間の測定では、本発明例27は比較例12と比べ、刃先位置調整に要する作業時間が約2/3となることも確認された。
本実施例では、すくい面の外周の形状が六角形状であり、外周に鋭角のコーナーと鈍角の頂点とを交互に含む場合には、0.20≦b/a≦0.70という条件を満たすことによる本発明の効果を確認するため、以下のような試験を行った。
(試料の準備)
以下のような方法により、本発明例28、29の試料および比較例13の試料を各10個準備した。
WCを主成分とし、2.0wt%のTaCと、10.0wt%のCoとを含み、残部が不可避的不純物からなるように配合した原料粉末をボールミルで粉砕混合後、金型に給粉してプレス成形した。こうして得られたプレス体を1400℃で1時間焼結した。この焼結体の上下面をダイヤモンド砥石で研削し、SiCブラシですくい面からみて0.04mmのホーニングによる刃先処理を施した。さらに、公知のCVD法を用いてTiN(0.3μm)/MT−TiCN(4.3μm)/TiBN(0.6μm)/α-Al2O3(2.3μm)/TiC(0.2μm)/TiN(0.2μm)の被覆層を焼結体に形成した後、ダイヤモンドブラシを用いて被覆層の表面平滑化処理を施した。
焼結体の形状は、逃げ面以外はJIS B4120−1998で規定された型番WNMA080412(住友電工ハードメタル(株)AC410K)とし、逃げ面は所定の金型(臼)の形状を調整することで決定した。すくい面は、図11に示すように、外周の形状が六角形状であり、外周に鋭角のコーナーと鈍角の頂点とを交互に含んでいた。鋭角のコーナー11の刃先角度θ1は80°であり、鈍角の頂点12の刃先角度θ2は160°であった。このように製造した本発明例28、29および比較例13のb/aおよびdの値は、後述する表3に記載されている。逃げ面は全周研磨無し(非研磨面)とした。
(試験方法)
(1)形状測定
形状測定方法は、すくい面に対して平行な面から0.5mm下がった地点での切断面を埋込、ラッピングして観察、測定した。
(2)ホルダへの取り付け・取り外しにおける刃先位置精度の測定
住友電工ハードメタル(株)製の旋削加工用ホルダDWLNR2525M08を用いて、上述した各試料に関して、60切れ刃の1)取り付け、2)ダイヤルゲージを用いた刃先位置測定、3)切れ刃の取り外し、を行ない、刃先位置精度の最大値と最小値との差(刃先調整幅と呼称)を測定した。さらに刃先位置(刃先調整幅)の標準偏差を算出した。
(3)ホルダへの取り付け・取り外しにおける作業時間の測定
また、本発明例28と比較例13の各60コーナーを用い、上述したバイトに取り付けて刃先位置調整を行なう作業を60回実施し、作業に要した時間を算出した。
(結果)
上述した形状測定および刃先位置精度の測定結果を以下の表5に示す。
表5からわかるように、0.20≦b/a≦0.70という条件を満たす本発明例28および29は、この条件を満たしていない比較例13と比べ、刃先調整幅および標準偏差が小さくなっていた。これらの結果から、本発明例28および29は保持具に取り付ける際の位置精度を向上できることがわかった。そのため、ユーザが本発明例28および29によるチップを使用する時、刃先調整に要する時間短縮を図ることができることがわかった。
さらに、0.45<b/a<0.55、および、40≦d≦80という条件を満たす本発明例28は、本発明例29よりも刃先調整幅および標準偏差をさらに低減することができることがわかった。
また、上述した作業時間の測定では、本発明例28は比較例13と比べ、刃先位置調整に要する作業時間が約1/3となることも確認された。
コーナーの曲率半径が2.4mm以下である場合、本発明の効果がより顕著となることを確認するため、以下のような試験を行なった。
本実施例では、実施例1と同じ方法で焼結体を作製し、刃先処理および被覆層を形成し、逃げ面以外は住友電工ハードメタル(株)製SNMG2507XXN−HU(XXはコーナーRの曲率半径(単位:mm)×10)の形状のチップを準備した。たとえば、SNMG2507XXN−HUにおいてコーナーの曲率半径が2.4mmの場合には、SNMG250724N−HUである。
具体的には、コーナーの曲率半径を1.6mm、2.4mm、3.2mmの3種類とし、いずれのコーナーの曲率半径についてもそれぞれ本発明例のチップを各10個、比較例のチップを各10個準備した。3種類の本発明例のチップは全て(b1+b2)/a=0.50、かつb1/b2=1.00、かつd(μm)=40とし、比較例のチップは全て(b1+b2)/a=0、かつd(μm)=0とした。
この10種類のチップ各10個について、実施例1と同様の方法で刃先調整幅および標準偏差を測定した。
その結果、コーナーの曲率半径が2.4mm以下の2種類の本発明例のチップは、同じ曲率半径の比較例のチップに対して、刃先調整幅および標準偏差が50%以上改善したことがわかった。
一方、コーナーの曲率半径が3.2mmの本発明例のチップは、同じ曲率半径の比較例のチップに対して、刃先調整幅および標準偏差が10%以下改善した。
これらの結果から、コーナーの曲率半径を2.4mm以下にすることにより、保持具に取り付ける際の位置精度を向上できるという本発明の効果をより顕著に発現できることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。