JP2012040521A - 中空糸膜および中空糸膜の製造方法 - Google Patents

中空糸膜および中空糸膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐薬品性の高いポリフッ化ビニリデン系樹脂を用い、高い強伸度性能をもち、かつ高い純水透過性能を有する中空糸膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、繊維径が1〜30000nmである有機系繊維状物とを含む中空糸膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる中空糸膜およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、耐薬品性の高いポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いた、高い強伸度性能をもち、かつ高い純水透過性能を有する中空糸膜およびその製造方法に関する。
多孔質膜は、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜用支持基材、逆浸透膜用支持基材、イオン交換膜用担体等の各種フィルター用途に用いられている。なかでも精密濾過膜および限外濾過膜、ナノ濾過膜は浄水処理、海水淡水化前処理、廃水処理、医療用途、食品工業分野、用水製造をはじめさまざまな方面で利用されており、逆浸透膜は海水淡水化、半導体産業、医薬品産業などの超純水プロセスや自動車産業などの電着塗料再利用プロセスなどにおいて広く用いられている。浄水処理などの水処理用途で用いられる場合、処理しなければならない水量が大きいため、単位体積あたり有効膜面積が大きい中空糸膜が一般的に用いられている。中空糸膜において透過性能が優れていれば、膜面積や運転圧力を減らすことが可能となるため、同じ処理水量で膜モジュール、原水供給ポンプを小型化でき、膜濾過装置が小型化できるため設備費用が節約でき、膜交換費や装置設置面積の点からも有利になる。
また、透過水の殺菌や膜のバイオファウリング防止の目的で次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を膜モジュール部分に添加したり、膜の薬液洗浄として、酸、アルカリ、塩素、界面活性剤などで膜を洗浄することがあるため、近年では耐薬品性が高く機械的強度を備え持つポリフッ化ビニリデンを用いた分離膜が開発され、利用されている。また、浄水処理分野では、クリプトスポリジウムなどの耐塩素性を有する病原性微生物が飲料水に混入する問題が20世紀終盤から顕在化してきており、中空糸膜には膜が切れて原水が混入しないような高い強伸度特性が要求されている。
これまでに高透水性かつ高強伸度の耐薬品性の高い中空糸膜を得るために、種々の方法が検討されている。例えば、特許文献1にはポリフッ化ビニリデン系樹脂を良溶媒に溶解したポリマー溶液を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点よりかなり低い温度で、口金から押し出して、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の非溶媒を含む液体に接触させて非溶媒誘起相分離により非対称多孔構造を形成させる方法が開示されている。しかしながらこの方法では、膜厚方向に均一に相分離を起こすことが困難であり、マクロボイドを含む非対称三次元網目構造の膜となるため機械的な破断強度が十分でないという問題がある。また膜構造や膜性能に与える製膜条件因子が多いので、製膜工程の制御が難しく、再現性も乏しいといった欠点がある。
また特許文献2では、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に無機微粒子と有機液状体を溶融混練しポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点以上の温度で口金から押し出して冷却固化し、その後有機液状体と無機微粒子を抽出することにより多孔構造を形成する溶融抽出法が開示されている。溶融抽出法の場合、空孔性の制御が容易で、マクロボイドは形成されず比較的均質な三次元網目構造の膜が得られるため破断伸度は高いが、破断強度は十分なものではなかった。また無機微粒子の分散性が悪いとピンホールのような欠陥を生じる可能性がある。さらに、溶融抽出法は、抽出工程に時間がかかり生産性が低いという欠点を有している。
また特許文献3ではポリフッ化ビニリデン系樹脂および該樹脂の貧溶媒を含有し、相分離温度以上の温度に加温したポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を相分離温度以下の冷却浴に吐出し凝固させて中空糸膜を得る方法が開示されている。この方法により得られる中空糸膜は0.3〜30μmの球晶構造を有しており強伸度性能は比較的高いが、必ずしも十分でない。
さらに高い破断強度を有する中空糸膜として、中空糸膜の長軸方向に配向した有機ポリマーの繊維状組織で構成された膜が報告されている。例えば特許文献4ではポリエチレンを溶融賦形し、アニール処理を施し延伸する、いわゆる延伸開孔法により中空糸膜の長軸方向に配向したミクロフィブリルと中空糸膜の厚さ方向に配向したスタックドラメラとの結節部とから形成されるスリット状微細孔を有する中空繊維膜が開示されている。この膜は破断強度に優れ、製造過程で溶剤を使用しないことから安全性に優れるという特性を有している。しかしながら、溶融紡糸では微細孔を形成するために非常に高倍率で延伸するので、破断伸度が低く、また十分な純水透過性能を得るには孔径が大きくなってしまう。
また特許文献5では有機ポリマーの溶液をノズルから押し出し、空中部を通過させ凝固浴で凝固させる紡糸工程において、空中部の水分量を高くし、かつ紡糸ドラフト(引取り速度/吐出線速度)を高くすることで、外表面およびその近傍が中空糸の長さ方向に高度に配向した繊維状組織で構成された中空糸膜が開示されている。しかしこの方法では破断強度を担う繊維状組織の層が非常に薄く、またその層が均一に形成されなければ、もっとも薄い部分に応力が集中し糸切れの原因になるという欠点がある。
その他にも、中空糸膜の膜中に補強剤を包含させて高強度化する検討も行われている。特許文献6では、ポリフッ化ビリニデン系樹脂に補強剤としてフッ素系ゴムなどの合成ゴムを添加する方法が開示されている。しかしこの方法では、フッ素系ゴムの分散性が十分でないとマクロボイドが形成されて破断強度が低下してしまう。また微細孔を安定して形成することが難しいため十分な透過性能が得られない場合がある。また特許文献7では、ポリエステル系樹脂などの合成繊維からなるフィラメントを補強用繊維として中空糸膜の膜部分に導入することが開示されている。この方法では、補強用繊維の導入により破断強度は一定程度向上させることは可能だが、中空糸膜の膜厚が厚くなるために、膜透過抵抗および流動抵抗が増大して、透過性能が低下してしまう。また中空糸膜の糸形状が、偏平形状、閉塞形状となることがあり、透過性能を低下させたり膜切れの原因となってしまう。以上のように、従来の方法では、透過性能と機械強度を両立した中空糸膜を得ることは出来ていない。
特公平1−22003号公報 特許第2899903号公報 国際公開第03/031038号公報 特開昭57−66114号公報 特許第2954327号公報 特開2003−236351号公報 特開2002−166141号公報
本発明では上記のような問題点に鑑み、耐薬品性の高いポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いた、高い強伸度性能をもち、かつ高い純水透過性能を有する中空糸膜を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(7)に述べる構成からなる。
(1)ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、繊維径が1〜30000nmである有機系繊維状物とを含む中空糸膜。
(2)有機系繊維状物の含有量が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂対比0.01〜30重量%の範囲であることを特徴とする上記(1)に記載の中空糸膜。
(3)有機系繊維状物が、セルロース繊維であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の中空糸膜。
(4)セルロース繊維が、セルロースナノファイバーであることを特徴とする(3)に記載の中空糸膜。
(5)ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶媒に有機系繊維状物を超音波分散させた後、有機系繊維状物を含む溶媒にポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解させて得られるポリマー溶液を吐出口から吐出し、冷却して凝固させることを特徴とする中空糸膜の製造方法。
(6)ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶媒に有機系繊維状物を物理的撹拌によって分散させた後、有機系繊維状物を含む溶媒にポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解させて得られるポリマー溶液を吐出口から吐出し、冷却して凝固させることを特徴とする中空糸膜の製造方法。
(7)ポリフッ化ビニリデン系樹脂と有機系繊維状物を混練させた後、有機系繊維状物を含むポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶媒に溶解させて得られるポリマー溶液を吐出口から吐出し、冷却して凝固させることを特徴とする中空糸膜の製造方法。
本発明によれば、耐薬品性が良好で、高い強伸度性能をもち、かつ高い純水透過性能を有する中空糸膜が提供される。
本発明におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーまたはフッ化ビニリデン共重合体を含有する樹脂のことである。複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有していてもかまわない。フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン残基構造を有するポリマーであり、典型的にはフッ化ビニリデンモノマーとそれ以外のフッ素系モノマーなどとの共重合体である。かかる共重合体としては、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれた1種類以上とフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない程度に、前記フッ素系モノマー以外の例えばエチレンなどのモノマーが共重合されていても良い。
本発明の中空糸膜に用いられるポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、分離膜の加工性を考慮すると、1×10以上であることが好ましい。分子量が1×10未満では溶液粘度が低くなり、製膜安定性が悪く、得られる膜強度も弱くなる傾向がある。またポリマーが高分子量の場合は、ポリマー溶液の溶液粘度が高くなるので高分子鎖の運動が抑制され結晶成長速度が遅くなり、多数の球晶核が生成するので強度の高い膜が得られ易いが、溶液粘度が高くなりすぎると中空糸膜の形成が困難となる場合がある。ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、1×10〜5×10の範囲内であることが好ましく、3×10〜3×10の範囲であることがより好ましい。
本発明における有機系繊維状物とは、植物、動物、微生物から得られる繊維状物を意味する。植物から得られる有機系繊維状物としては、例えば、綿、カポックなどの種子毛繊維、麻、亜麻、芋麻、大麻、黄麻などの靭皮繊維、マニラ麻、サイザル麻などの葉脈繊維、木材、草、藁、竹などを原料するパルプ繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジックなどの再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維などが挙げられる。動物から得られる有機系繊維状物としては、例えば、絹、羊毛、カシミヤ、モヘヤ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、キャメル、ラマ、牛毛、豚毛、グース、ダックなどの獣毛繊維、プロミックスなどの半合成繊維などが挙げられる。微生物から得られる有機系繊維としては、例えば、バクテリアセルロースなどが挙げられる。これらの有機系繊維状物はそのまま用いても良く、解繊、叩解、磨砕、分散などの物理的処理や、溶解、抽出、発酵、酸化、還元、官能基の導入などの化学的処理を施しても良い。本発明における中空糸膜は、有機系繊維状物を含有することにより、破断強度、破断伸度および透過性能を向上させることができる。
本発明の中空糸膜に含有される有機系繊維状物は、上記の中でもセルロース繊維であることが好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂は疎水性樹脂であるため、水中の汚れ成分が付着しやすいため透過性能が低下しやすく、また洗浄によってもその汚れ成分が除去しにくいという欠点がある。親水性材料であるセルロース繊維を含有することにより、透過性能を向上させるだけでなく、汚れが付着しにくく、洗浄による汚れの除去が簡便となり、中空糸膜としての寿命を延ばすことが可能となる。セルロース繊維は、植物(例えば木材、綿、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))などを由来とするものが知られているが、本発明ではそのいずれも使用できる。植物、微生物から得られるセルロース繊維が好ましく、植物由来のセルロース繊維であることがより好ましい。
本発明の中空糸膜に含有される有機系繊維状物は、セルロースナノファイバーであることが好ましい。本発明におけるセルロースナノファイバーとは、セルロースを構成単位とした繊維径1〜1000nmの範囲のナノファイバーのことを表す。セルロースナノファイバーは公知の製造方法で得ることが可能であり、例えばセルロース繊維をリファイナー、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー等により磨砕ないし叩解することによって解繊又は微細化する方法、あるいはそれらを酸加水分解などの化学処理により精製する方法、微生物によって産生する方法、あるいは特開2007−262594号公報に記載されたセルロース繊維と機能性粒子とを混合し、加圧条件化で混練することによってセルロースナノファイバーを作製する方法、特開2008−75214号公報に記載されたセルロース繊維を湿式で離解した後、酵素を作用させつつ、蒸煮処理、物理的処理による微細繊維化を経てセルロースナノファイバーを作製する方法、特開2008−169497号公報に記載されたセルロース繊維を湿式で離解した後、酵素を作用させつつ、蒸煮処理、超音波処理による微細繊維化を経てセルロースナノファイバーを作製する方法などの公知の方法で製造したものを用いることができる。また、市販品を利用することも可能である。市販品としては、ダイセル化学社製のセリッシュ(登録商標)のKY−100S、KY−100G、PC−110T、PC−110A、PC−110B、PC−110S、FD−100F、FD−100G、FD−200L、Kelco社製のCellulonなどが挙げられる。
本発明の中空糸膜に含まれる有機系繊維状物は、繊維径が1〜30000nmであることが必須である。有機系繊維状物の繊維径が1〜30000nmの範囲にないと本発明の目的である高い強伸度性能をもち、かつ高い純水透過性能を有する中空糸膜は得られない。本発明における繊維径とは、無作為に選んだ有機系繊維状物20本の繊維径について、後述する測定方法により計測された平均値のことを表す。有機系繊維状物の繊維径が1nm未満であると、有機系繊維状物が凝集するため、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に均一に分散することが困難となり、中空糸膜の機械的強度が低下する。また、繊維径が30000nmより大きいと、中空糸膜の紡糸製膜安定性が悪化したり、膜厚ムラが生じたりして機械的強度が低下してしまう。上記範囲の繊維径を有する有機系繊維状物としては、例えば綿(繊維径19000〜28000nm)、亜麻(繊維径15000〜25000nm)、芋麻(繊維径20000〜38000nm)、絹(繊維径10000〜30000nm)、羊毛(繊維径10000〜40000nm)などが挙げられる。(芋麻、羊毛については、繊維径が30000nm以下となる有機系繊維状物を適宜選択する。)中でも、本発明では有機系繊維状物の繊維径が1〜5000nmであることがより好ましい。上記範囲の繊維径を有する有機系繊維状物としては、例えば旭化成社製のアビセル(商品名)のPH101(繊維径1000〜5000nm)、ワットマン社製のCF−1(繊維径1000〜5000nm)などが挙げられる。特に有機系繊維状物の繊維径が1〜1000nmであると、中空糸膜の破断強度、破断伸度を向上させるだけでなく、中空糸膜の座屈強度を向上させ、中空糸膜の中空部分が変形形状になる割合を低下させることが可能になる。上記範囲の繊維径を有する有機系繊維状物としては、ダイセル化学社製のセリッシュ(登録商標)のKY−100S(繊維径10〜300nm)、KY−100G(繊維径100〜1000nm)、Kelco社製のCellulon(繊維径10〜300nm)などが挙げられる。中でも、繊維径が2〜300nmの範囲にあると、中空糸膜の座屈強度の向上が極めて高く、中空糸膜の中空部分が変形形状になる割合を大きく低下させることが可能になる。
本発明の中空糸膜は、有機系繊維状物の含有量がポリフッ化ビニリデン系樹脂に対して0.01〜30重量%の範囲であることが好ましい。有機系繊維状物の含有量が0.01重量%未満であると、中空糸膜の機械的強度、透過性能の向上効果が十分に得られない場合がある。一方で有機系繊維状物の含有量が30重量%を超えると、有機系繊維状物が凝集しやすく、機械的強度を低下させたり中空糸膜の膜切れの原因となる場合がある。有機系繊維状物の含有量が0.05〜30重量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜5重量%の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の中空糸膜は、50kPa、25℃における透水性能が0.5〜10m/m/hr、破断強度が5MPa以上25MPa以下、破断伸度が20〜1000%の範囲であることが好ましい。透水性能が0.8m/m/hr以上5.0m/m/hr、破断強度が10MPa以上25MPa以下、破断伸度40〜800%の範囲であることがより好ましく、透水性能が1.0m/m/hr以上5.0m/m/hr、破断強度が12MPa以上25MPa以下、破断伸度が100%以上500%以下の範囲にあることがさらに好ましい。この範囲にあることにより、通常の使用条件で、十分な透水性能を発揮するとともに、中空糸膜の破断が生じない。純水透過性能の測定方法は、中空糸膜1〜10本程度からなる長さ約20cmの小型モジュールを作製し、温度25℃、ろ過差圧16kPaの条件で逆浸透膜処理水を送液し、一定時間の透過水量(m)を測定して得た値を、単位時間(hr)、単位有効膜面積(m)、50kPa当たりに換算して算出することができる。破断強度と破断伸度の測定方法は、引張試験機を用いて、逆浸透膜処理水で湿潤した状態の試験長50mmの膜をフルスケール5kgの荷重でクロスヘッドスピード50mm/分にて測定し、求めることができる。
本発明の中空糸膜の外径と膜厚は、膜の破断強度を損なわない範囲で、中空糸膜内部の長さ方向の圧力損失を考慮し、膜モジュールとして純水透過性能が目標値になるように決めればよい。すなわち、中空糸膜の外径が大きいと圧力損失の点で有利になるが、中空糸膜の充填本数が減り、膜面積の点で不利になる。一方、中空糸膜の外径が小さい場合は、中空糸膜の充填本数を増やせるので膜面積の点で有利になるが、圧力損失の点で不利になる。また、膜厚は膜の破断強度を損なわない範囲で小さい方が好ましい。従って、中空糸膜の外径は、0.2〜4mmが好ましく、0.4〜2.5mmがより好ましく、0.5〜2mmがさらに好ましい。また、中空糸膜の膜厚は、外径の0.08〜0.4倍であることが好ましく、0.1〜0.35倍であることがより好ましく、0.12〜0.3倍であることがさらに好ましい。
本発明における中空糸膜は、変形形状を持った中空糸膜の割合が中空糸膜断面総数の10%以下であることが好ましい。中空糸膜では、内部構造に空隙が多く形成されるため、座屈強度が低下して、紡糸工程での糸張力や自重で中空部の潰れが発生し、変形形状となる場合がある。中空糸膜の糸形状が変形形状になると、透過性能が低下するだけでなく、破断強度、破断伸度の低下も引き起こす。本発明における変形形状とは、中空糸膜の断面内径の形状が扁平形状あるいは閉塞形状あるいは異形形状であることを表し、扁平形状とは中空糸断面内径の長径と短径の比が2/3未満のものを表し、閉塞形状とは長径と短径の比が1/5未満の扁平の極端なもの或いは実質的に中空が潰れたものを表し、異形形状とは長径と短径の比が不明確な非円形または非長円形のものを表す。本発明における中空糸膜は、有機系繊維状物が中空糸膜に含有されるために座屈強度が高くなり、変形形状を持った中空糸膜の割合を低くすることができる。特に中空糸膜にセルロースナノファイバーが含有されると、中空糸膜の座屈強度が高くなるため、変形形状を持った中空糸膜の割合を低くすることが可能となる。変形形状を持った中空糸膜の割合は5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
本発明では、例えば以下に示す製造方法で中空糸膜を製造することにより、高い純水透
過性能、高い強伸度性能を備えた中空糸膜を得ることができる。
まずポリフッ化ビニリデン系樹脂を10〜60重量%程度の比較的高濃度で、該樹脂の貧溶媒もしくは良溶媒に結晶化温度以上の温度で溶解する。樹脂濃度は高くなれば高い強伸度特性を有する中空糸膜が得られるが、高すぎると製造した中空糸膜の空孔率が小さくなり、純水透過性能が低下する。また調整した樹脂溶液の粘度が適正範囲になければ、中空糸膜に成形することができない。
本発明において貧溶媒とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を60℃未満の低温では5重量%以上溶解させることができないが、60℃以上かつポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点以下(例えばポリフッ化ビニリデン系樹脂が、フッ化ビニリデンホモポリマー単独で構成される場合は178℃程度)の高温領域で5重量%以上溶解させることができる溶媒を表す。貧溶媒に対して、60℃未満の低温でもポリフッ化ビニリデン系樹脂を5重量%以上溶解させることが可能な溶媒を良溶媒、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点または液体の沸点まで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解も膨潤もさせない溶媒を非溶媒と定義する。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の貧溶媒としては、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、メチルイソアミルケトン、フタル酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジアセトンアルコール、グリセロールトリアセテート等の中鎖長のアルキルケトン、エステル、グリコールエステル及び有機カーボネート等が挙げられる。また良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等が挙げられる。さらに非溶媒としては、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o−ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体等が挙げられる。
本発明の中空糸膜に用いられる貧溶媒としては、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、フタル酸ジメチルが好ましく、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。なお、前記ポリマー溶液の調製において、複数の貧溶媒を用いても良い。また、ポリマーの溶解性に支障が生じない範囲内で、前記貧溶媒に良溶媒、非溶媒、造核剤、酸化防止剤、可塑剤、成型助剤、滑剤等を必要に応じて添加することができる。
本発明の中空糸膜は、中空糸膜を製造する工程のいずれかの時点で有機系繊維状物を含有せしめることにより得ることができる。中でもポリフッ化ビニリデン樹脂を貧溶媒もしくは良溶媒に溶解させてポリマー溶液を調製する時に、有機系繊維状物を含有させると有機系繊維状物の凝集を少なくすることができるため好ましい。貧溶媒もしくは良溶媒に有機系繊維状物を分散させた分散液にポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解させてもよく、また押出機などを用いてポリフッ化ビニリデン系樹脂に有機系繊維状物を均一に混練せしめた後、貧溶媒もしくは良溶媒に溶解させてもよい。
有機系繊維状物を溶媒に分散させる方法としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ホモジナイザー等などを用いて物理的撹拌をすることによって分散させる方法、超音波分散機などによる超音波振動によって分散させる方法などの公知の方法を用いることが可能である。有機系繊維状物に強い撹拌を与えると、有機系繊維状物の構造が破壊されることがあるため、超音波分散機を用いて有機系繊維状物を溶媒に分散させる方法が好ましく用いられる。超音波分散機を用いて有機系繊維状物を溶媒に分散させる時、超音波の照射方法には特に制限はなく、各種の方法が利用できる。例えば、超音波振動子の振動を伝えるホーンを有機系繊維状物を加えた溶媒に挿入して直接超音波振動を加える方法や、有機系繊維状物を加えた溶媒を入れた容器の床や壁の一部に超音波振動子を設置して超音波振動を加える方法や、超音波振動子を装着した容器に水などの液体を入れ、その中に有機系繊維状物を加えた溶媒を入れた容器を漬すことにより、水などの液体を介して間接的に超音波振動を加える方法などが挙げられる。超音波分散処理を行う温度は、1〜70℃の範囲であることが好ましい。この温度が低過ぎると分散効率が低下し、処理温度が高過ぎると、超音波振動子面に微小な蒸気が発生し、エネルギー効率が低下するため好ましくない。5〜60℃の範囲であることがより好ましい。超音波処理を行うと、与えたエネルギーが熱に変換されて温度が上昇する場合があるが、貧溶媒もしくは良溶媒に有機系繊維状物を加えた溶液を加熱または冷却することによって温度を一定にすることが好ましい。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂に有機系繊維状物を均一に混練分散させる方法は、樹脂を混練する分野で使用されている公知の方法を利用することができる。例えば、単軸、二軸又は多軸混練機、ミキシングロール、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、スクリュープレス、ディスパーザーなどを使用できる。混練温度は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点以上分解温度以下であることが好ましく、180〜280℃がより好ましい。
本発明に用いるポリマー溶液中のポリフッ化ビニリデン系樹脂濃度は中空糸膜の強度特性と透過性能のバランスの観点と中空糸状への成形性の観点から10〜60重量%の範囲であることが好ましく、25〜50重量%であることがより好ましい。ポリマー濃度は高いほうが高い強伸度特性を有する中空糸膜が得られるが、高すぎると製造した中空糸膜の空孔率が小さくなり透過性能が低下する。ポリマー濃度が10重量%に満たない場合は、破断強度の低下を伴う場合がある。また、調製したポリマー溶液の粘度が適正範囲に無ければ、中空糸状に成型することが困難である。
本発明では、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を貧溶媒もしくは良溶媒に溶解してポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液とし、該ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を中空糸膜紡糸用の二重管式口金の外側の管から吐出し、中空部形成液体を二重管式口金の内側の管から吐出しながら冷却浴中で冷却固化して中空糸膜を得ることができる。
次に本発明に用いられる冷却浴は、温度が0〜50℃であることが好ましく、5〜30℃であることがより好ましい。また冷却浴の組成は、濃度が50〜95重量%の貧溶媒あるいは良溶媒と、濃度が5〜50重量%の非溶媒からなる混合液体が好ましい。さらに貧溶媒としては樹脂溶液と同じ貧溶媒を用いることが好ましく採用される。ただし高濃度の良溶媒を用いるときは温度を十分に低くしないと凝固しなかったり、凝固が遅く中空糸膜表面が平滑にならなかったりする場合がある。また、前記の濃度範囲を外れない限りにおいて、貧溶媒、良溶媒を混合しても良い。ただし、高濃度の非溶媒を用いると中空糸膜の外表面に緻密層が形成され透水性が著しく低下する場合がある。また、中空部形成液体には、冷却浴同様、濃度が50〜95重量%の貧溶媒あるいは良溶媒と、濃度が5〜50重量%の非溶媒からなる混合液体が好ましい。さらに貧溶媒としては樹脂溶液と同じ貧溶媒を用いることが好ましく採用される。
中空糸膜の中空部形成には、通常気体もしくは液体をポリマー溶液に随伴させるが、本発明に係る中空糸膜においては、濃度が60〜100重量%の範囲で貧溶媒を含有する液体を用いることが好ましく採用できる。貧溶媒の濃度は、70〜100重量%であることがより好ましく、80〜100重量%の範囲であることがさらに好ましい。冷却浴同様、高い濃度の貧溶媒を含有させることで、非溶媒誘起相分離を抑制し、微細な球状構造を形成することが可能となる。貧溶媒は、複数のものを混合して用いても良い。また、前記の濃度範囲を外れない限りにおいて、貧溶媒に、良溶媒や非溶媒を混合しても良い。冷却浴に用いる液体と中空部形成用の液体は、同一であっても良いし、異なっていても良く、目的とする中空糸膜の特性等に応じて適宜選択すればよい。製造工程の観点からは、ポリマー溶液、冷却浴に用いる液体、および中空部形成用の液体に用いる貧溶媒が同一種である場合、製造過程における溶媒の回収等で利便性が高いが、特に限定されるものではない。なお、前記冷却浴の形態としては、冷却液体と膜状に成形されたポリマー溶液とが十分に接触して冷却等が可能であるならば、特に限定されるものではなく、冷却液体が貯留された液槽形態であっても良いし、さらに必要により前記液槽は、温度や組成が調製された液体が循環、更新されても良い。前記液槽形態が最も好ましいが、場合によっては、冷却液体が管内を流動している形態であっても良いし、空中を走行している膜に冷却液体が噴射される形態であっても良い。
本発明における中空糸膜は、これまでの工程に加えて、延伸を行っても良い。延伸を行うことによって、空孔性を向上させ、純水透過性能および破断強度を向上させることができる。延伸の方法は、50〜140℃の温度範囲で行われることが好ましく、55〜120℃の範囲であることがより好ましく、60〜100℃の温度範囲であることがさらに好ましい。また延伸倍率としては、1.1〜5倍の範囲であることが好ましく、1.1〜4倍の範囲であることがより好ましく、1.1〜3倍の範囲であることがさらに好ましい。これらの条件で延伸することで、より透水性能に優れた中空糸膜が得られる。50℃未満の低温雰囲気で延伸した場合、安定して均質に延伸することが困難である。140℃を超える温度で延伸した場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点に近くなるため、細孔が形成されずに延伸されるため、透水性能が向上しない。また、延伸は液体中で行う方が温度制御が容易であり好ましいが、スチームなどの気体中で行っても構わない。液体としては水が簡便で好ましいが、90℃程度以上で延伸する場合には、低分子量のポリエチレングリコールなどを用いることも好ましく採用できる。さらに水とポリエチレングリコールの混合液体等、複数の液体の混合液体中で延伸することも採用できる。一方、このような延伸を行なわなかった場合は、延伸を行なった場合と比べて、透水性能は低下するが、分離性能が高くなる。したがって、延伸工程の有無については、中空糸膜の用途に応じて適宜設定することができる。
本発明の中空糸膜は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の主鎖に親水性官能基が導入されていても良い。親水性官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基が挙げられるが、これらの官能基は単独、又は複数の組合せで用いられる。親水性官能基の導入量は任意であるが、多すぎると中空糸膜の物理的強度を損なうため、中空糸膜の内外表面及び多孔質構造体の表面に導入されていればよい。
以下に具体的実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定
されるものではない。
(1)有機系繊維状物の繊維径
有機系繊維状物の繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立社製S−4000型)を用いた観察により算出した。有機系繊維状物をSEM観察用試料台上にて、白金−パラジウム合金を蒸着して、SEMにより表面を観察した。無作為に選んだ20本の繊維径を計測し、その平均値を繊維径(nm)とした。
(2)中空糸膜の純水透過性能
純水透過性能の測定方法は、中空糸膜1〜10本程度からなる長さ約20cmの小型モジュールを作製し、温度25℃、ろ過差圧16kPaの条件で逆浸透膜処理水を送液し、一定時間の透過水量(m)を測定して得た値を、単位時間(hr)、単位有効膜面積(m)、50kPa当たりに換算して算出した。
(3)中空糸膜の破断強度、破断伸度
引張試験機((株)東洋ボールドウィン製TENSILON(登録商標)/RTM−100)を用いて、逆浸透膜処理水で湿潤させた中空糸膜を試験長50mm、フルスケール5kgの加重でクロスヘッドスピード50mm/分にて測定し求めた。
(4)変形形状を持った中空糸膜の割合
中空糸膜の長さ方向の断面を光学顕微鏡を用いて60倍で写真を撮影し、1000本の中空糸膜断面を観察し、中空糸断面内径の長径と短径の比が2/3以上のものを正常形状、長径と短径の比が2/3未満のものを扁平形状、長径と短径の比が1/5未満の扁平の極端なもの或いは実質的に中空が潰れたものを閉塞形状、長径と短径の比が不明確な非円形または非長円形のものを異形形状と評価し、変形形状を持った中空糸膜の割合=(扁平形状を持った中空糸膜の数+閉塞形状を持った中空糸膜の数+異形形状を持った中空糸膜の数)/1000(=中空糸膜評価断面総数)とした。
(実施例1)
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の貧溶媒であるシクロヘキサノン100重量部に、有機系繊維状物としてセルロースナノファイバーのセリッシュ(登録商標)KY−100G(ダイセル社製)をセルロースナノファイバーの重量として0.21重量部を加えた後、超音波分散機(UH−600S、エスエムテー社製)を用いて、20℃に調温して30分間超音波分散処理を行った。この分散溶液70重量部に、重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマー30重量部(フッ化ビニリデンホモポリマーに対してセリッシュ(登録商標)が0.5重量%)を160℃で溶解させた。このポリマー溶液を、口金温度100℃の二重管式口金の外側の管から吐出し、同時にシクロヘキサノン90重量%水溶液を二重管式口金の内側の管から吐出した後、シクロヘキサノン85重量%水溶液からなる温度10℃の浴中で固化させた。その後、90℃の水中で1.5倍に延伸し、中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の特性を表1に示す。得られた中空糸膜は、純水透過性能に優れており、かつ機械的特性に優れたものであり、変形形状を持った中空糸膜の割合が少なかった。
(実施例2)
有機系繊維状物をセリッシュ(登録商標)KY−100Sに変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。実施例2で得られた中空糸膜は、純水透過性能に優れており、かつ機械的特性に優れたものであり、変形形状を持った中空糸膜の割合が少なかった。
(実施例3)
実施例3では、有機系繊維状物をバクテリアセルロースであるセルロン(Kelco社製)に変更し、有機系繊維状物のPVDFへの添加方法を以下の方法に変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。シクロヘキサノン100重量部に、セルロンをセルロースナノファイバーの重量として0.21重量部を加えた後、ヘンシェルミキサー(FM−20B、三井三池製作所社製)を用いて、20℃にて2000rpmで30分間分散処理を行った。この分散溶液70重量部に、フッ化ビニリデンホモポリマー30重量部(フッ化ビニリデンホモポリマーに対してセリッシュ(登録商標)が0.5重量%)を160℃で溶解させて、製膜ポリマー原液を調製した。実施例3で得られた中空糸膜は、わずかに変形形状を持った中空糸膜の割合が高かったが、純水透過性能に優れており、かつ機械的特性に優れた中空糸膜が得られた。
(実施例4〜9)
有機系繊維状物を表1に記載のセルロース繊維に変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。実施例4〜9で得られた中空糸膜は、わずかに破断強度が低く、変形形状を持った中空糸膜の割合が高かったが、運転上差し支えないレベルであった。
(実施例10〜11)
有機系繊維状物を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。実施例10〜11で得られた中空糸膜は、純水透過性能・機械的特性がやや劣っており、また変形形状を持った中空糸膜の割合がやや高かった。
Figure 2012040521
(実施例12〜17)
有機系繊維状物の添加量を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。実施例12、13で得られた中空糸膜は、純水透過性能・機械的特性がわずかに劣っており、また変形形状を持った中空糸膜の割合がやや高かった。また実施例16、17で得られた中空糸膜は、破断強度がわずかに劣っており、また変形形状を持った中空糸膜の割合がやや高かった。それ以外の実施例においては、純水透過性能・機械的特性に優れ、変形形状を持った中空糸膜の割合が少ない中空糸膜が得られた。
(実施例18〜19)
有機系繊維状物の添加方法を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
実施例18では、30mmφ二軸押出機(日本製鋼所社製)に、フッ化ビニリデンホモポリマーとセリッシュ(登録商標)KY−100Gを連続的に供給し、240℃にて溶融混練を行った後ペレット化し、このペレット30重量部を、シクロヘキサノン70重量部に160℃にて溶解させて、ポリマー溶液を調製した。
実施例19では、シクロヘキサノン100重量部に、セリッシュ(登録商標)KY−100Gを0.21重量部を加えた後、ヘンシェルミキサー(FM−20B、三井三池製作所社製)を用いて、20℃にて2000rpmで30分間分散処理を行った。この分散溶液70重量部に、フッ化ビニリデンホモポリマー30重量部(フッ化ビニリデンホモポリマーに対してセリッシュ(登録商標)が0.5重量%)を160℃で溶解させて、ポリマー溶液を調製した。
得られた中空糸膜は、純水透過性能に優れており、かつ機械的特性に優れたものであり、変形形状を持った中空糸膜の割合が少なかった。
(実施例20〜21)
実施例20では、フッ化ビニリデンホモポリマーの分子量を28.4万に変更し、フッ化ビニリデンホモポリマーの溶解温度を70℃に、吐出口金温度を100℃に変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。また実施例21では、フッ化ビニリデンホモポリマーの分子量を120万に変更し、フッ化ビニリデンホモポリマーの溶解温度を190℃に、吐出口金温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
実施例21で得られた中空糸膜は、純水透過性能に優れており、かつ機械的特性に優れたものであり、変形形状を持った中空糸膜の割合が少なかった。実施例20では、わずかに変形形状を持った中空糸膜の割合が高かったが、純水透過性能に優れており、かつ機械的特性に優れた中空糸膜が得られた。
Figure 2012040521
(実施例22〜24)
フッ化ビニリデンポリマーの濃度を表3の通りに変更し、実施例22ではフッ化ビニリデンホモポリマーの溶解温度を100℃に、吐出口金温度を70℃に、実施例24では、フッ化ビニリデンホモポリマーの溶解温度を170℃に、吐出口金温度を120℃に変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。実施例22では、純水透過性能に優れているが、わずかに破断強度の低い中空糸膜が得られた。実施例23では、純水透過性能・機械的特性に優れており、変形形状を持った中空糸膜の割合が少ない中空糸膜が得られた。実施例24では、機械的特性に優れているが、わずかに純水透過性能が低く、変形形状を持った中空糸膜の割合がやや高い中空糸膜が得られた。
(実施例25)
貧溶媒をγ―ブチロラクトン、中空部形成注入液をγ−ブチロラクトン90重量%水溶液、冷却浴溶媒をγ−ブチロラクトン85重量%水溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。純水透過性能・機械的特性に優れており、変形形状を持った中空糸膜の割合が少ない中空糸膜が得られた。
(実施例26〜28)
実施例26、27、28は、貧溶媒をγ―ブチロラクトン、中空部形成注入液をγ−ブチロラクトン90重量%水溶液、冷却浴溶媒をγ−ブチロラクトン85重量%水溶液に変更した以外は、それぞれ実施例2、実施例18、実施例19と同様にして中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、純水透過性能・機械的特性に優れており、変形形状を持った中空糸膜の割合が少なかった。
(実施例29〜30)
実施例29では、貧溶媒をフタル酸ジメチル、中空部形成注入液をフタル酸ジメチル90重量%水溶液、冷却浴溶媒をフタル酸ジメチル85重量%水溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。実施例30では、貧溶媒をDMSO、中空部形成注入液をDMSO90重量%水溶液、冷却浴溶媒をDMSO85重量%水溶液に変更し、フッ化ビニリデンホモポリマーの溶解温度を130℃に、吐出口金温度を90℃に変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
実施例29、30で得られた中空糸膜は、破断強度がわずかに劣っており、また変形形状を持った中空糸膜の割合がやや高かった。
Figure 2012040521
(比較例1)
有機系繊維状物を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、純水透過性能が悪く、機械的特性に劣っており、変形形状を持った中空糸膜の割合が高いものであった。
(比較例2〜5)
表4に示す有機系繊維状物を用いた以外は、実施例1と同様にして検討を行った以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得ようとしたが、比較例4、5では紡糸製膜工程において糸切れが頻発し、中空糸膜を得ることが出来なかった。また、比較例2、3においても、紡糸製膜工程で糸切れなどのトラブルが発生した。比較例2、3で得られた中空糸膜は、機械的特性に劣っており、変形形状を持った中空糸膜の割合が非常に高いものであった。
(比較例6〜8)
有機系繊維状物の代わりに表4に示す無機繊維状物を添加した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、純水透過性能が悪いものであった。
(比較例9〜11)
有機系繊維状物の代わりに表4に示す合成繊維を添加した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、純水透過性能が悪いものであった。
Figure 2012040521

Claims (7)

  1. ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、繊維径が1〜30000nmである有機系繊維状物とを含む中空糸膜。
  2. 有機系繊維状物の含有量が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に対して0.01〜30重量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜。
  3. 有機系繊維状物が、セルロース繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸膜。
  4. セルロース繊維が、セルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項3に記載の中空糸膜。
  5. ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶媒に有機系繊維状物を超音波分散させた後、有機系繊維状物を含む溶媒にポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解させて得られるポリマー溶液を吐出口から吐出し、冷却して凝固させることを特徴とする中空糸膜の製造方法。
  6. ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶媒に有機系繊維状物を物理的撹拌によって分散させた後、有機系繊維状物を含む溶媒にポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解させて得られるポリマー溶液を吐出口から吐出し、冷却して凝固させることを特徴とする中空糸膜の製造方法。
  7. ポリフッ化ビニリデン系樹脂と有機系繊維状物を混練させた後、有機系繊維状物を含むポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶媒に溶解させて得られるポリマー溶液を吐出口から吐出し、冷却して凝固させることを特徴とする中空糸膜の製造方法。
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