JP2012040051A - 放射線画像撮影装置 - Google Patents

放射線画像撮影装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2012040051A
JP2012040051A JP2010181184A JP2010181184A JP2012040051A JP 2012040051 A JP2012040051 A JP 2012040051A JP 2010181184 A JP2010181184 A JP 2010181184A JP 2010181184 A JP2010181184 A JP 2010181184A JP 2012040051 A JP2012040051 A JP 2012040051A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
imaging
radiation
image
subject
magnification
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2010181184A
Other languages
English (en)
Inventor
Shiko Kaneko
志行 金子
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Medical and Graphic Inc
Original Assignee
Konica Minolta Medical and Graphic Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Medical and Graphic Inc filed Critical Konica Minolta Medical and Graphic Inc
Priority to JP2010181184A priority Critical patent/JP2012040051A/ja
Publication of JP2012040051A publication Critical patent/JP2012040051A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus For Radiation Diagnosis (AREA)

Abstract

【課題】微細な被写体撮影専用の小焦点ではない一般的な焦点サイズの放射線管を用いて微小なサイズの被写体を撮影する際に、視認性が低下することを防止する。
【解決手段】本発明に係る放射線画像撮影装置1によれば、撮影制御部15は、入力手段13により入力された撮影部位、拡大率及び被写体サイズを含む撮影条件に基づいて、画像コントラスト値Hを算出し、当該算出された画像コントラスト値と予め定められた閾値との比較結果に基づいて入力された拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行うべきか又は密着撮影を行うべきかを判断する。
【選択図】図11

Description

本発明は、放射線画像撮影装置に関する。
従来、微小な対象物であっても視認性の高い撮影画像を得ることができるようにした放射線撮影システムが知られている。
例えば、特許文献1、2には、アスベストなどの直径Φ(μm) が0.05 ≦Φ≦ 50 と非常に微小な撮影対象を撮影する際に、X線管の焦点径D(μm)を10 ≦D≦30とし、拡大率M を10 ≦M ≦40 として位相コントラスト拡大撮影を行うX線撮影システムが記載されている。
また、例えば、特許文献3には、2種の焦点径のX線管を有し、微細なアスベスト陰影の拡大撮影時には通常撮影に用いられる焦点径よりもさらに小焦点径のX線源を用いて位相コントラスト拡大撮影を行う撮影装置が記載されている。
特開2007−111426号公報 特開2007−111427号公報 特開2007−244738号公報
しかし、特許文献1〜3の何れも微細な被写体撮影に専用の小焦点を使用するもので、通常の一般撮影用と微細な被写体撮影用の複数の焦点径のX線管が必要となる。そのため、施設への導入コストがかかり好ましくない。
また、特許文献1、2においては、焦点径D(μm)が10≦D≦30と余りにも小さく放射線強度が小さい為、撮影距離や拡大率に応じて多くの撮影時間が必要となることから、被写体の体動に起因するモーションアーチファクトが生じやすく、正確にアスベストを描画するのが困難になることが考えられる。
また、位相コントラスト拡大撮影で手指等の軟部組織を撮影するリュウマチ撮影装置の場合、焦点サイズは一般的な100〜200μm、拡大率は1.5〜2.5倍となるが、この撮影装置を使用して撮影を行った場合、当該撮影に於ける関心部位が、例えば10μm以下の微小骨折を含むような場合、視認性に優れると思われていた位相コントラスト拡大撮影画像の方が逆に視認性が低下することが、本発明者の微小骨折を被写体とした実験/シミュレーションより判明した。
本発明の課題は、微細な被写体撮影専用の小焦点ではない一般的な焦点サイズの放射線管を用いて微小なサイズの被写体を撮影する際に、視認性が低下することを防止することである。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の放射線画像撮影装置は、
50〜300μmの焦点サイズを有する放射線管球と、
被写体を載置する被写体台と、
前記被写体を透過した前記放射線管球からの放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線管球と前記被写体台との間の距離及び前記被写体台と前記放射線検出器との間の距離を調整するための駆動手段と、
前記駆動手段を制御して位相コントラスト拡大撮影又は密着撮影を行う撮影制御手段と、
を備える放射線画像撮影装置であって、
少なくとも撮影部位、拡大率及び被写体サイズを含む撮影条件を入力するための入力手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記入力手段により入力された撮影条件に基づいて、下記の式で表される画像コントラスト値を算出し、当該算出された画像コントラスト値と予め定められた閾値との比較結果に基づいて、前記入力された拡大率での位相コントラスト拡大撮影を行うべきか又は位相コントラスト撮影に替えて密着撮影を行うべきかを判断する。
画像コントラスト値=(被写体領域の信号値÷素抜け領域の信号値)−1 (式)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記撮影制御手段は、密着撮影を行うべきであると判断した場合にユーザの注意を喚起するための警告を出力手段に出力させる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記撮影制御手段は、密着撮影を行うべきであると判断した場合に、前記駆動手段を制御して密着撮影を行う。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記撮影制御手段は、前記入力された拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行うべきであると判断した場合に、位相コントラスト拡大撮影を許可又は推奨する通知を出力手段に出力させる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明において、
前記撮影制御手段は、位相コントラスト拡大撮影を行うべきであると判断した場合に、前記駆動手段を制御して前記入力された拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行う。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、
位相コントラスト拡大撮影又は密着撮影により取得された画像に画像処理を施す画像処理手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記画像処理手段に位相コントラスト拡大撮影により取得された画像と密着撮影により取得された画像とで異なる画像処理を行わせる。
請求項7に記載の放射線画像撮影装置は、
50〜300μmの焦点サイズを有する放射線管球と、
被写体を載置する被写体台と、
前記被写体を透過した前記放射線管球からの放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線管球と前記被写体台との間の距離及び前記被写体台と前記放射線検出器との間の距離を調整するための駆動手段と、
前記駆動手段を制御して位相コントラスト拡大撮影を行う撮影制御手段と、
を備える放射線画像撮影装置であって、
少なくとも撮影部位、拡大率及び被写体サイズを含む撮影条件を入力するための入力手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記入力手段により入力された撮影条件に基づいて、下記の式で表される画像コントラスト値を算出し、前記駆動手段を制御して、前記入力手段により入力された拡大率に代えて前記算出された画像コントラスト値が最大となる拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行う。
画像コントラスト値=(被写体領域の信号値÷素抜け領域の信号値)−1 (式)
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、
前記撮影制御手段は、当該算出された画像コントラスト値が予め定められた閾値を越えない場合に、前記駆動手段を制御して、前記入力手段により入力された拡大率に替えて前記算出された画像コントラスト値が最大となる拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行う。
本発明によれば、微細な被写体撮影専用の小焦点ではない一般的な焦点サイズの放射線管を用いて微小なサイズの被写体を撮影する際に、視認性が低下することを防止することができる。
位相コントラスト撮影を説明するための図である。 本実施形態における被写体を模式的に示す図である。 被写体が10000μm程度のある程度大きな構造をとる場合の検出器面の放射線強度のプロファイルを示す図である。 被写体が100μm程度の適度に小さい場合の検出器面の放射線強度のプロファイルの一例を示す図である。 被写体が1μm程度の非常に小さい場合の検出器面の放射線強度のプロファイルの一例を示す図である。 被写体が1μm程度の非常に小さい場合であって、図5Aの吸収コントラストのピーク値がaであるのに対し、吸収コントラストのピーク値がa/2と小さい場合の検出器面の放射線強度のプロファイルの一例を示す図である。(aはコントラスト(放射線強度)を表す定数。) 被写体が1μm程度の非常に小さい場合であって、拡大率が非常に大きい場合の検出器面の放射線強度のプロファイルの一例を示す図である。 画像コントラスト値Hを説明するための図である。 本実施形態に係る放射線画像撮影装置の正面図である。 本実施形態に係る放射線画像撮影装置の側面図である。 放射線検出器の構成例を示す図である。 本実施形態に係る放射線画像撮影装置の制御系の構成例を示す図である。 図10の撮影制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。 Φ1〜1000μmの微小骨折におけるH2/H1=Cの拡大率依存性を求めた結果を示すグラフである。
以下の実施形態では、位相コントラスト拡大撮影によって画質がどの程度向上するのかを把握する手段として、画像コントラスト値Hを指標として定義する。
[位相コントラスト拡大撮影]
まずは位相コントラスト拡大撮影について説明する。
疾患の微細な症状を識別できる鮮鋭性(視認性)の高い放射線画像を撮影する方法として、位相コントラスト拡大撮影がある。この位相コントラスト拡大撮影は、放射線管と放射線検出器(検出器)との間に被写体を配置し、放射線管と被写体との距離、被写体と放射線検出器との距離を変化させて撮影することで、鮮鋭性(視認性)の高い位相コントラスト画像が得られるものである(例えば特開2001−91479号公報を参照)。
図1に、位相コントラスト拡大撮影を説明する図を示す。
図1に示すように、位相コントラスト拡大撮影は、被写体Pと放射線検出器5との間に距離R2を設けて撮影を行うものである。位相コントラスト拡大撮影では、図1に示すように、被写体Pの辺縁を通過することにより屈折した放射線が被写体Pを介さずに通過した放射線と放射線検出器5上で重なり合い、重なった部分の放射線強度が強くなる。一方で、屈折した放射線の分だけ被写体Pの辺縁内側の部分において放射線強度が弱くなる現象が生じる。そのため、被写体Pの辺縁を境にして放射線強度差が広がるエッジ強調作用(エッジ効果ともいう)が働き、被写体Pの辺縁部分が先鋭に描写された視認性の高い放射線画像を得ることができる。
位相コントラスト拡大撮影によってどれだけ画質が向上するかは、被写体P(関心部位)が周囲の環境に対してどれだけの放射線の吸収率差と放射線の屈折率差を有しているかで決まる。被写体Pがある程度の大きさを有していれば位相コントラストは被写体辺縁部のコントラストを向上させる形で表現される。ここでは微小骨折を例に挙げ、位相コントラスト拡大撮影による画質向上度について被写体Pの大きさがどう影響するかについて述べる。微小骨折を微細な骨の隙間の中に体液が入り込んだものとし、以下では被写体Pを図2に示すような「骨中に存在する水円柱」として説明する。この「骨中に存在する水円柱」は、周辺より屈折率及び放射線吸収率が小さい物体である。
図3に、被写体Pが10000μm程度のある程度大きな構造をとる場合の検出器面の行方向(又は列方向)の放射線強度のプロファイルを示す。図3の(a)は、位相コントラストによる放射線強度のプロファイル、(b)は、吸収コントラストによる放射線強度のプロファイル、(c)は、描画される像((a)位相コントラスト+(b)吸収コントラスト)の放射線強度のプロファイルを示す。図3に示すように、被写体Pが例えば10000μm程度のある程度大きな構造をとる場合は、位相コントラストは被写体辺縁部のコントラストを向上させるように働く。つまり放射線検出器5や放射線管8の焦点が有限の大きさを持っていることによって鮮鋭性が低下した吸収コントラストに、位相コントラストが加わることで辺縁部の鮮鋭性が向上するのである。
図4に、被写体Pが100μm程度の適度に小さい場合の検出器面の行方向(又は列方向)の放射線強度のプロファイルを示す。図4の(a)は、位相コントラストによる放射線強度のプロファイル、(b)は、吸収コントラストによる放射線強度のプロファイル、(c)は、描画される像((a)位相コントラスト+(b)吸収コントラスト)の放射線強度のプロファイルを示す。図4に示すように、被写体Pが例えば100μm程度と小さい場合、位相コントラストによる被写体の一方の側の辺縁部と他方の側の辺縁部のコントラストとが被写体Pの中央部で重なり合い、更に位相コントラストが吸収コントラストと重なり合うことで、被写体自身のコントラストを向上する。つまり被写体辺縁部でなく、被写体の中央部の信号そのものを向上させることで、鮮鋭性が向上するのである。
しかし、被写体Pが例えば1μm程度と非常に小さい場合は、位相コントラストが吸収コントラストを相殺してしまい、被写体のコントラストを低下させる、或いは、本来とは逆のコントラストを形成するといった偽画像(アーチファクト)を生成させる恐れが生じる。
図5A〜図5Cに、被写体Pが1μmと非常に小さい場合の検出器面の行方向(又は列方向)の放射線強度のプロファイルを示す。図5の(a)は、位相コントラストによる放射線強度のプロファイル、(b)は、吸収コントラストによる放射線強度のプロファイル、(c)は、描画される像((a)位相コントラスト+(b)吸収コントラスト)の放射線強度のプロファイルを示す。図5Bは、図5Aの吸収コントラストのピーク値がaであるのに対して、吸収コントラストのピーク値がa/2と小さい場合(図5Aと比較し、周囲環境と被写体Pの線吸収係数差μが小さい場合)を示している。図5Cは、拡大率が極めて大きい場合を示している。
図5A、図5Bに示すように、被写体Pが例えば1μm程度と非常に小さい場合は、位相コントラストによる被写体の両側の辺縁部の負の信号部分が重なり合い、吸収コントラストを相殺してしまい、被写体Pのコントラストを低下させてしまうか(図5A)、或いは、本来とは逆のコントラストを形成し、偽画像が発生する(図5B)。
また、図5Cに示すように、位相コントラストの拡大率が非常に大きい場合は、位相コントラストが吸収コントラストを相殺することはなくなるが、位相コントラストは偽画像となって現れる(点線Aで囲んだ部分)。
なお、上記の傾向は撮影距離、拡大率、管電圧、焦点径の大きさ(焦点サイズ)、放射線検出器の鮮鋭性といった撮影条件等に応じて変化する。
以上より、非常に小さい構造を持つ被写体については、位相コントラストは画質に悪影響を及ぼす恐れがあり、位相コントラスト拡大撮影による画質の低下をあらかじめ見積もり、不用意な画質低下を防ぐ必要がある。あるいは、被写体Pの大きさに応じて、位相コントラスト拡大撮影によって画質が最も向上するように撮影条件を最適化できることも望まれる。
[画像コントラスト値:H]
以上のような背景を元に、本願の発明者は、位相コントラストを含めた画質(視認性)向上度、あるいは画質低下度を見積もることができる指標として画像コントラスト値:Hを見出した。以下ではその導出方法について説明する。ここでは図2に示すような簡易的な2層系を被写体Pとした場合について説明する。ここでは被写体Pは周囲環境よりも放射線吸収率が小さく、屈折率も小さいとしている。このような系で密着撮影、或いは位相コントラスト拡大撮影を行った場合、図6(a)に見られるような、被写体Pが描画されている被写体領域が相対的に放射線強度が高くなるプロファイルが得られる。そして、被写体領域の放射線強度を被写体Pを透過していない素抜け領域(放射線の直接照射領域)の放射線強度で規格化し、被写体Pを透過していない素抜け領域を相対強度1とする。そしてその後、全体から1を差し引くことで図6(b)のグラフに見られるように被写体領域の放射線強度(信号値)がその周辺部、即ち素抜け領域に対しどれだけのコントラストを有するのかを示すグラフを得ることができる。そして相対放射線強度0の部分と、被写体Pの領域の中央部に相当する相対放射線強度の差分を画像コントラスト値:Hと定義し、このHの値を比較することで各撮影条件における画質(コントラスト)向上度、あるいは低下度を見積もることができる。被写体Pの領域の中央部に相当する放射線強度は、被写体Pが左右対称な形状をしていると仮定した場合、被写体Pの中央部が投影された部分に対応する検出器の各画素の出力値のうち、最大値、又は、極大値、(信号処理方式によっては最小値、または、極小値)の何れかに相当する。
例えば、ある密着撮影で得られた画像コントラスト値をH1、ある位相コントラスト拡大撮影での画像コントラスト値をH2とした時、それらの比であるH2/H1=Cを、ある閾値Dと比較し、C>Dであれば、十分に位相コントラスト拡大撮影による視認度向上が十分見込める等、画像コントラスト値Hを用いることで、密着撮影に対し位相コントラスト拡大撮影でどれだけ画質(コントラスト)が向上するのかを定量的に見積もることができる。
なお、放射線焦点D0が有限の大きさを有していることから生じるボケB(幾何学的不鋭)によっても、画質が低下することが分かっており、高拡大率ほどボケBが大きくなる。こういった点からも、ボケBの大きさにより、閾値Dを切り替えることにしている。ここでボケBの大きさを測る指標としてエッジ強調幅Eを採用し、B/9E<30である場合(ボケが大きくない場合)はD=1.0、一方でB/9E≧30(ボケが大きい場合)はD=1.1を見出している。ここで、B/9Eは、ボケが大きいか否かを判断するために実験的経験的に求められた閾値である。
ボケBは以下の式(1)、エッジ強調幅Eは以下の式(2)により算出することができる (例えば特許第4010101号公報参照)。
B=D0×(R2/R1)・・・式(1)
E=2.3×(1+R2/R1)1/3×(R2×δ×√Φ)2/3 ・・・式(2)
D0は放射線焦点サイズ、δは被写体と周囲の屈折率の差、Φは被写体の直径を表す。
上記の画像コントラスト値Hを算出することで、位相コントラストが吸収コントラストを相殺し、画質を低下させる撮影条件をあらかじめ回避することができる。また、位相コントラスト拡大撮影を行うと、拡大撮影であるが故に放射線焦点が有限の大きさである場合、ある撮影距離、ある拡大率以上になると幾何学的不鋭の効果により画像の鮮鋭度が大きく低下してしまう問題があるが(特開2007-111427号公報参照)、画像コントラスト値Hには放射線焦点によるボケBの寄与も含ませて評価できるため、本手法を用いて幾何学的不鋭による画質低下をも前もって防ぐことも可能である。
以上のように画像コントラスト値Hを算出することで、位相コントラスト拡大撮影に不向きな撮影条件であることを撮影前に把握し、密着撮影に切り替える、或いは推奨する拡大率に設定しなおすことで、位相コントラスト拡大撮影による不用意な画質低下を防ぐことができる。
また、上記で述べた位相コントラストの悪影響の他、位相コントラスト拡大撮影には放射線管球と検出器間距離R3が大きくなることから、被写体の体動起因のモーションアーチファクトが生じ易くなる点や、検出器が邪魔をすることで車いすの方を撮影しにくい点といったデメリットがある。特に立位型の場合、被写体と検出器の距離(R2)を0とすることで、R1の可変幅を大きくすることもでき、位相コントラスト拡大撮影から密着撮影と切り替わることで、以下のような利点もある。
「R1固定:R2(或いはR3)可変」の場合は、R2=0とすることで、R3を小さくできることから足元に空間ができ、車いすの方の撮影も容易に行えるようになる。
「R1可変:R3固定」の場合は、位相コントラスト拡大撮影時においては、拡大撮影ゆえにスポット撮影となり、狭い領域しか撮影することができないが、R2=0とすることでR1を広くすることができ、広範囲の臨床画像を得ることができる。あるいは、R1が広くなることで技師が放射線管と患者の間に入りやすくなり、患者のポジショニングが行いやすくなる。
以上のように、位相コントラスト拡大撮影に対する密着撮影のメリットもあることからも、位相コントラスト拡大撮影による画質の変化を把握した上での撮影が望まれる。
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
[放射線画像撮影装置1の構成]
図7に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の構成例の正面図を示し、図8に、放射線画像撮影装置1の構成例の側面図を示す。
図7及び図8に示すように、放射線画像撮影装置1は、支持基部3が床面Fにボルト等で固定された支持台2に対して設けられている。本実施形態では、支持基部3は、図示しない駆動モータ等の駆動装置の駆動により支持台2に対して略鉛直方向に昇降できるようになっている。
なお、本実施形態では、支持台2が床面Fに固定される場合について説明するが、この他にも、例えば、天地を逆転させて支持台2を図示しない天井に固定することも可能である。また、例えば、車輪等が設けられ床面上を移動可能とされた図示しない台座に支持台2を固定したり、天井にレール等を配設し、そのレール等から支持台2を垂下させるなどをしたりして、支持台2が床面や天井に対して移動できるように構成することも可能である。さらに、支持台2を支柱状に構成し、その支柱に沿って支持基部3が昇降するように構成することも可能である。
支持基部3の上方側面には、支持基軸4が略水平方向に延在するように設けられている。この支持基軸4は、支持基軸4の周方向に回転しないように固定することもできるが、必要に応じて任意の角度に回転させてから固定することもできる。
支持基軸4の支持基部3とは反対側の端部には、第1アーム6及び第2アーム7がそれぞれ支持基軸4に対して略垂直方向に延在し、互いに反対方向に延出するように取り付けられている。
第1アーム6及び第2アーム7は、それぞれ支持基軸4を基点として、その長さを伸縮できるように構成されている。本実施形態では、第1アーム6、第2アーム7は、それぞれ筒状の小片をスライドさせるテレスコピック式とされており、駆動モータ等を備えた第1アーム駆動部22、第2アーム駆動部23により、それぞれの長さが伸縮自在とされている。
第1アーム6の先端部分には放射線管8、第2アーム7の先端部分には、放射線検出器5が設けられている。第1アーム6及び第2アーム7の伸縮により、放射線管8と放射線検出器5との距離R3が可変とされている。放射線管8と放射線検出器5との間に被写体台9を設ける場合には、放射線管8と被写体台9との距離R1、被写体台9と放射線検出器5との距離R2も、それぞれ第1アーム6及び第2アーム7の伸縮により変えることができるようになっている。
なお、本実施形態において、放射線管8と他の部材との距離とは、正確には放射線管8の焦点と他の部材との距離を表す。また、放射線画像撮影装置1は、距離R3、R1、R2を誤差の許容範囲内で的確に調節できるものであればよく、上記構成に限定されない。
すなわち、例えば、第1アーム6や第2アーム7はそれぞれ支持基軸4を基点とする伸縮しない棒状の構造体として構成され、放射線管8や放射線検出器5がその棒状の第1アーム6や第2アーム7に沿って移動することで、距離R3、R1、R2を調節するように構成することも可能である。
また、第1アーム6及び第2アーム7には、それぞれ第1アーム6及び第2アーム7の移動距離を測定する各種エンコーダ25等の位置測定系が内在されており、当該各種エンコーダ25からの検出値により、距離R3、R1、R2が取得できる構成となっている。
第1アーム6の支持基軸4とは反対側の先端部には、支持基軸4に略平行になるように第1支持軸10が延出されており、第1支持軸10の先端部には、放射線管8が第1支持軸10の中心軸周りに回転可能に取り付けられている。
すなわち、図7に示すように、放射線管8は、第1支持軸10周りに装置正面から見て時計回りおよび反時計回りに回転できるようになっている。放射線管8の第1支持軸10周りの回転は、図示しない駆動モータ等の駆動装置の駆動により行われる。なお、放射線管8の第1支持軸10周りの回転を、撮影者が手動で行なうように構成してもよい。
また、放射線管(放射線管球)8には、放射線管8に電力を供給する電源部24等が接続されている。
放射線管8としては、例えば、医療現場や非破壊検査施設で広く用いられているクーリッジX線管や、回転陽極X線管が挙げられる。なお、回転陽極X線管においては、陰極から放射される電子線が陽極に衝突することで放射線が発生する。これは自然光のようにインコヒーレント(非干渉性)であり、また平行光X線でもなく発散光である。電子線が陽極の固定した場所に当り続けると、熱の発生で陽極が傷むので、通常用いられる放射線管では陽極を回転して陽極の寿命の低下を防いでいる。電子線を陽極の一定の大きさの面に衝突させ、発生した放射線はその一定の大きさの陽極の平面から被写体Pに向けて放射される。この照射方向(被写体方向)から見た平面の大きさを実効焦点(フォーカス)と呼び、実効焦点のサイズを焦点サイズとする。焦点サイズ(μm)は、JIS Z 4704-1994の7.4.1焦点試験の(2.2)スリットカメラに規定されている方法で測定できる。なお、本実施形態における放射線管8の実効焦点の形状は円とし、その直径である焦点径が焦点サイズである。実効焦点の形状が正方形である場合は、その1辺の長さが焦点サイズとなる。この測定方法中の任意選択条件は、放射線管の性質に応じて測定原理から考えて精度が最も高くなる条件を選択した方が一層精度の高い測定が可能となることは言うまでもない。
放射線管8は一般的に利用されている50〜300μmの焦点径の範囲内で、それぞれその焦点径を設定できるようになっている。また、焦点径の大きさにより最大電流値が設けられていればより好ましい。
詳しく説明すれば、放射線管8の焦点径は小さいほど鮮明な位相コントラスト像が得られるが、最大出力電流値が小さくなるため、撮影時間が長くなるという問題点がある。そのため、撮影対象となる部位により、好ましい焦点径の大きさが決まってくる。手指や足先など比較的薄い部位は、もともとの照射線量を低くできるので、比較的低出力でもよく、鮮鋭性を重視した小焦点を選択することが好ましい。具体的には、50〜250μmの範囲が好ましい。肘や膝などはやや厚みを持つため、手指などと比べて高出力が必要であり、焦点径もやや大きいことが好ましい。具体的には、150〜250μmの範囲が好ましい。胸部、腹部、腰椎など厚い部位に対しては、高出力が必要であるため、焦点径も大きいものが必要になる。具体的には、200〜300μmの範囲が好ましい。厚い部位に対しては、照射線量を多くする以外に、被曝線量を増やさないために、管電圧を高くする(放射線エネルギーを高くする)、撮影距離を短くする(被曝線量を増やさずに、照射線量を減らせる)等の方法で対応することもできる。また、厚い部位に対しては、密着撮影で対応するという方法もある。
放射線管8には、14〜60keVの平均エネルギーを有する放射線を照射するものが好ましく用いられる。これは、照射する放射線の平均エネルギーが14keV未満では、照射する放射線のほとんど大部分が被写体Pで吸収されてしまうために、被写体Pの被曝線量が非常に大きくなってしまい、臨床での利用はあまり好ましくないからであり、また、照射する放射線の平均エネルギーが60keVより大きいと、人体を構成する骨や軟部の組織等のコントラストが十分に得られず、得られた放射線画像が診断等に用いることができない可能性があるためである。
放射線管8としては、例えば、医療現場で広く用いられている回転陽極X線管などのクーリッジX線管が好ましく用いられる。その際、放射線管球のターゲット(陽極)には、一般撮影で使用されるW(タングステン)、乳房撮影で使用されるMo(モリブデン)やRh(ロジウム)が好ましく用いられる。特にターゲットとしてWを用いた場合、管電圧の設定値が30,50,100,140kVpで、平均エネルギーがそれぞれ22,32,47,60keVの放射線が通常照射される。
このように、放射線管球のターゲットにW(タングステン)を用いる場合、管電圧は30〜140kVp、電流値は1〜300mA、撮影時間は1ミリ秒〜10秒の範囲内で設定することが可能となる。電流値は、焦点径が小さいほど上限値が低くなる傾向にあり、焦点径が100μmの場合、上限値は40〜50mA程度となる。
なお、放射線画像撮影装置1で、リュウマチを代表とする関節疾患の撮影の他、そのほとんどが軟部組織であり、さらに微細な石灰化の検出が必要である乳房撮影、骨のほとんどが軟骨である小児撮影等を行う場合、上記の放射線エネルギーの中でも、特に低放射線エネルギー(低管電圧に設定)の放射線照射で位相コントラスト効果により鮮明度が向上し、診断能が向上する。そのため、位相コントラスト拡大撮影を行う場合には、照射する放射線の平均エネルギーは好ましくは14〜32keVである。
詳しく説明すれば、管電圧(放射線エネルギー)が低いほどコントラストがつき識別能が向上するが、被曝線量が増えるという問題点がある。そのため、撮影対象となる部位により、好ましい管電圧が決まってくる。手指や足先など比較的薄い部位は、もともとの照射線量を低くできるので、比較的低管電圧であることが好ましい。具体的には、20〜50kVp(18〜32keV)の範囲が好ましい。肘や膝などは、やや厚みを持つため、手指などと比べて高管電圧が必要である。具体的には、30〜60kVp(22〜35keV)の範囲が好ましい。胸部、腹部、腰椎など厚い部位に対しては、高管電圧が必要である。具体的には、50〜140kVp(32〜60keV)の範囲が好ましい。
また、位相コントラスト拡大撮影を行う場合、上記のように放射線管8の焦点径を1μm以上に設定すれば、上記の平均エネルギーの範囲の放射線を照射でき、かつ実用上の出力強度が得られる。十分な放射線強度を得るために焦点径は、50μm以上であることが好ましい。
なお、放射線管8は、このような条件を満たすものであれば上記の回転陽極X線管などのクーリッジX線管に限定されず、マイクロフォーカスX線源等であってもよい。
第2アーム7の支持基軸4とは反対側の先端部には、被写体台9と略平行になるように放射線検出器5を保持する検出器保持台11が延出されている。
放射線検出器5としては、スクリーンやフィルムを用いるアナログシステムと、放射線量をデジタル情報として検出するデジタル検出器システムとのいずれのシステムを用いてもよく、フィルム等を用いる必要がなくデータを処理し易いデジタル検出器システムが好ましく用いられる。また、放射線量を画素ごとにデジタル情報として検出するFPD(Flat Panel Detector)やCR(Computed Radiography)、CCD(Charge Coupled Device)を用いた放射線検出器が好ましく用いられ、特に2次元画像センサとして優れるFPDが好ましい。画素サイズは10〜200μmが好ましく、50〜150μmであればより好ましい。
本実施形態では、放射線検出器5としてFPDを用いた放射線検出器が用いられている。図9に、放射線検出器5の構成例を示す。図9に示すように、放射線検出器5は、パネル5aや検出器制御部5b等がバスで接続されて構成されている。また、放射線検出器5は、放射線管8から放射され被写体Pを透過した放射線量を検出して放射線画像データとしてI/F27を介して放射線画像撮影装置1の後述する撮影制御部15に出力するようになっている。
なお、放射線検出器5のパネル5aの大きさは適宜選択される。また、図9では、放射線検出器5としてカセッテ型の放射線検出器を示したが、検出器保持台11と一体的に形成された、いわゆる据え付け型とすることも可能である。
本実施形態では、放射線検出器5の下側すなわち放射線検出器5の図示しない天板の反対側に、被写体Pを透過した放射線量を検出するフォトタイマ20(図10参照)が備えられている。フォトタイマ20は、被写体Pを透過した放射線量が所定の線量に到達すると、放射線画像撮影装置1の後述する撮影制御部15に対して、放射線管8からの放射線の照射を停止させる信号を送信するようになっている。なお、放射線検出器5が前述したFPDである場合には、FPD自身がフォトタイマ20の替わりに信号を検出する機能を有するように構成しても良い。
また、放射線検出器5の下側や検出器保持台11の内部等には、放射線検出器5の下方にある人体への放射線照射による被曝を防ぐために放射線を遮蔽する鉛などで構成された図示しない放射線遮蔽部材が設けられている。
なお、密着撮影を行う場合には、例えば図9に示したようなパネル5aの天板側に放射線の散乱成分を吸収、除去するグリッド5cが設けられた放射線検出器5を用いることも可能である。しかし、グリッド5cを使用すると放射線検出器5のパネル5aに入射する放射線量が低下することから、グリッド5cを使用する必要がない場合には使用しないことが好ましく、特に位相コントラスト拡大撮影の場合には、通常、グリッド5cは使用されない。そのため、放射線検出器5に対してグリッド5cを着脱可能に構成することも可能である。
支持基軸4の支持基部3とは反対側の端部には、被写体Pを位置固定するための平板状の被写体台9が支持基軸4の延長方向に延設されるように取り付けられている。被写体台9は、カーボン等の放射線透過性に優れる物質で構成され、或いは放射線の透過率をできるだけ低下させないように例えば中空に構成される。被写体台9をハニカム構造のカーボン板等で構成することも可能である。また、例えば、撮影中に被写体Pである被験者の手が動かないように固定するために、被写体台9を樹脂等で形成して被験者の手を載置する被写体台9の表面部分に手の形に凹凸を形成することも可能である。前記の樹脂などで作製した凸凹をカーボン板などの被写体台の上に載せるようにしても良い。
本実施形態では、被写体台9は、支持基軸4に対して図示しない取付治具を介して着脱自在に取り付けできるようになっており、また、被写体台9は、支持基軸4を介して支持基部3の昇降にあわせて昇降するようになっている。
なお、本実施形態のように、被写体台9を支持基軸4に対して着脱可能とする代わりに、例えば、支持基軸4との接点を中心にして、被写体台9を図7において支持基軸4の上下方向に起立させたり垂下させたりすることができるように構成し、又は被写体台9を折り畳むことができるように構成するなどして、放射線管8から放射線検出器5に向かう放射線の光路を妨げない位置に被写体台9を移動させることができるように構成することも可能である。
また、被写体台9には、被写体Pを上方から適度に圧迫して固定する図示しない圧迫板が必要に応じて設けられ、また、被写体台9の下方等には、被験者の脚などが放射線検出器5にぶつかることを防止しつつ放射線により被曝することなく撮影位置につくことができるように、図示しないプロテクタ等が適宜備えられる。
放射線画像撮影装置1には、図8に示すように、操作装置12が接続されている。操作装置12には、放射線画像撮影装置1に対する撮影条件等の指示を入力するためのキーボード、タッチパネル等を備える入力手段13と、撮影条件等を表示するためのCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等を備える表示手段14とが設けられている。管電圧や照射時間、撮影条件、被写体の大きさ等の撮影条件は、入力手段13により設定することができる。
なお、図8では、操作装置12が、装置本体と同じ室内に設置されている場合が示されているが、このほかにも、例えば操作装置12を別室に設け、操作装置12と装置本体とLAN(Local Area Network)等で接続するように構成することも可能である。
操作装置12内には、放射線画像撮影装置1に対して各種設定を行い、その動作を制御する撮影制御部15が内蔵されている。撮影制御部15は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等がバスで接続されたコンピュータで構成されている。
図10に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の制御構成を示したブロック図を示す。図10に示すように、放射線画像撮影装置1の制御系は、撮影制御部15、制御手段16、入力手段13、表示手段14、画像メモリ18、発音手段19、電源部24、通信手段26、及びI/F27を備える操作装置12と、被写体Pを透過した放射線量を検出するフォトタイマ20と、放射線管8の動作を調整する照射駆動部21と、第1アーム6を駆動する第1アーム駆動部22と、第2アーム7を駆動する第2アーム駆動部23と、各種エンコーダ25と、画像処理手段17と、から構成されており、電源部24から各部に電力が供給されている。
撮影制御部15のROM等のメモリには、放射線画像撮影装置1各部を制御するための制御プログラム及び画像コントラスト値Hを算出するような、各種処理プログラムが記憶されている。撮影制御部15は、入力手段13から入力されるオペレータの入力に基づいて、メモリから制御プログラム及び各種処理プログラムを読み出して、表示手段14に制御内容を表示させながら放射線画像撮影装置1各部の動作を統括的に制御するようになっている。
具体的には、入力手段13から撮影条件が入力されると、撮影制御部15より制御手段16に対しR1、R2や拡大率Mといった情報が転送され、その情報に基づき、制御手段16が第1アーム駆動部22、第2アーム駆動部23の動作を制御する。入力手段13から撮影が指示されると、撮影制御部15は、電源部24から放射線管8に電力を供給して被写体Pに対して放射線を照射させる。また、撮影制御部15は、被写体Pを透過した放射線量が所定の線量に達してフォトタイマ20から信号が送信されてくると、電源部24から放射線管8への電力の供給を停止して放射線の照射を停止させる。なお、放射線の照射条件は、フォトタイマ20が検出する放射線量以外の要素、すなわち例えば放射線検出器5の種類等も加味されて適宜設定される。従って、正確には、撮影制御部15は、フォトタイマ20から信号が送信されてくるなど予め設定された照射条件が満たされると、放射線の照射を停止させるようになっている(撮影制御部15が照射駆動部21に指令を出し、放射線管8の動作を制御する)。また、制御手段16は画像を出力する画像処理手段17とも接続されており、撮影制御部15は、制御手段16に指示を送信して画像処理手段17を制御し、出力サイズ、画像処理などを制御する。画像処理手段17は、CPU、ROM、RAM等がバスで接続されたコンピュータで構成され、ROMに記憶されている画像処理プログラムとの協働により撮影により得られた画像に画像処理を施す。
[放射線画像撮影装置1の動作]
図11に、本実施形態において撮影制御部15により実行される撮影制御処理のフローチャートを示す。
まず、オペレータの操作に応じて、入力手段13により被写体サイズ、撮影部位、拡大率(撮影倍率)、撮影距離、管電圧といった撮影条件が入力される(ステップS0)。なお、ここで閾値Dを入力することもできる。また必要に応じて予め入力してRAM等に保存しておいた情報を入力手段13の操作に応じて読み出すことで、撮影毎回入力する手間を省くことも可能である。
続いて、入力手段13により入力された情報を元に、画像コントラスト値:Hが算出される(ステップS1)。ここでは密着撮影により得られる画像の画像コントラスト値H1と位相コントラスト拡大撮影により得られる画像の画像コントラスト値H2が算出される。画像コントラスト値Hの算出については詳細を後述する。
次に、(位相コントラスト拡大撮影のH/密着撮影のH)=H2/H1=Cと閾値Dの大小関係が比較される(ステップS2)。
ここで、D=1、C>Dである場合、後述する視認性評価結果より、位相コントラスト拡大撮影をすることによって密着撮影よりも十分な画質向上が見込めることが判明している。よって、ここでは、Cと1とが比較される。なお、上述のように、B/9E≧30である場合(ボケの影響が大きい場合)は、D=1.1とすることが好ましい。
比較の結果、C>Dであると判断されると(ステップS3;YES)、位相コントラスト撮影を行った場合に密着撮影を行ったときに比べて画質が向上する、即ち、位相コントラスト撮影を行うべきであると判断され、位相コントラスト拡大撮影を許可、或いは推奨する通知が表示手段14に表示される(ステップS4)。なお、ステップS4においては、発音手段19により位相コントラスト拡大撮影の許可音又はメッセージ等を上記表示に代えて又は表示とともに出力することとしてもよい。
次いで、入力手段13からの撮影指示に応じて、駆動手段(第1アーム駆動部22、第2アーム駆動部23、照射駆動部21)をはじめとする各部が制御されて位相コントラスト拡大撮影が実施される。そして、放射線検出器5により画像データが取得される。取得された画像データは画像メモリ18に保存される(ステップS5)。
次いで、制御手段16を介して画像処理手段17に位相コントラスト拡大撮影画像用の画像処理の実行が指示され、撮影により得られた画像データにライフサイズ出力の為の、例えば、縮小処理等の画像処理が施される(ステップS6)。そして、処理済みの画像データが通信手段26を介してフィルム出力装置又は読影用の表示装置(モニタ)に送信され(ステップS7)、撮影制御処理は終了する。
一方、ステップS3において、C≦Dであると判断されると(ステップS3;NO)、位相コントラスト撮影を行った場合に密着撮影を行ったときより画質が低下する(位相コントラスト撮影は不向きである)、即ち、密着撮影を行うべきであると判断され、ユーザの注意を喚起するとともに密着撮影を推奨することを示す警告表示が表示手段14に表示される(ステップS8)。なお、ステップS8においては、密着撮影を推奨することを示す警告表示に代えて、又はその表示とともに、ユーザの注意を喚起するための警告音や警告メッセージを発音手段19により出力することとしてもよい。
ここで、この状況に応じて、撮影者がそれでも位相コントラスト拡大撮影を実施するかどうか判断し、入力手段13に密着撮影に切り替えるか、このまま位相コントラスト拡大撮影を行うかの指示を入力する。或いは、C≦Dであった場合は自動で密着撮影に切り替える設定に予めしておくことも可能である。或いは、C≦Dであった場合は撮影が進行しないように自動で撮影をここで停止させることもできる。
入力手段13により密着撮影に切り替える指示が入力された場合は(ステップS9;NO)、駆動手段が制御され、密着撮影への切り替えが行われる(ステップS10)。つまりR2=0に切り替えられる。なお、ここでR1は事前に設定された拡大率に対応するR1のまま固定されていてもよいし、新しい要求に応じて自由に変えることも可能である。いずれにせよ、各種エンコーダにより、R1或いはR2は正確に測定されながら決定される。
次いで、入力手段13からの指示に応じて各部が制御されて位相コントラスト拡大撮影が実施され、放射線検出器5により画像データが取得される。取得された画像データは画像メモリ18に保存される(ステップS11)。
次いで、制御手段16を介して画像処理手段17に密着撮影画像用の画像処理の実行が指示され、撮影により得られた画像データの読取画素サイズを出力画素サイズに合わせる補間処理等が施される(ステップS12)。そして、処理済みの画像が通信手段26を介してフィルム出力装置又は読影用の表示装置に送信され(ステップS13)、撮影制御処理は終了する。
ステップS9において、入力手段13により、それでも拡大撮影を実施する指示が入力された場合は、推奨される拡大率が算出される(ステップS14)。ここで、推奨される拡大率は、拡大率を変えながら、ステップS0において入力された撮影条件(拡大率以外の撮影条件)で画像コントラスト値HとCを算出し、Cの値が最も高くなったときの拡大率が推奨される拡大率として算出される。
次いで、推奨される拡大率が表示手段14に表示されるとともに、駆動手段が制御され、その拡大率となるようにR1とR2が設定される(ステップS15)。或いは、当初設定されていた拡大率、R1,R2に撮影者の判断で入力手段13により設定することもできる。いずれにせよ、各種エンコーダにより、R1或いはR2は正確に測定されながら決定される。
次いで、入力手段13から撮影指示が入力されると、各部が制御されることにより位相コントラスト拡大撮影が実施され、放射線検出器5により画像データが取得される。取得された画像データは画像メモリ18に保存される(ステップS16)。
撮影が終了すると、制御手段16を介して画像処理手段17に対し、新たに設定された拡大率等の撮影条件に応じて、ライフサイズ出力の為に実施すべき画像処理(例えば、縮小処理等)や画像処理条件が設定され(ステップS17)、画像処理手段17により、撮影された画像データに縮小処理等の画像処理が施される(ステップS18)。そして、処理済みの画像データが通信手段26を介してフィルム出力装置又は読影用の表示装置に送信され(ステップS19)、撮影制御処理は終了する。
[画像コントラスト値Hの算出]
以下、画像コントラスト値Hの算出について詳細に説明する。
H2/H1=Cを求めることで、密着撮影に対する位相コントラスト拡大撮影の画質向上度、あるいは画質低下度を把握することができる。この画像コントラスト値Hは拡大率、検出器の鮮鋭性といった撮影条件によって変化する。
以下では微小な被写体Pの例としてΦ1〜1000μm微小骨折を例に挙げ、密着撮影に対する、位相コントラスト拡大撮影の視認度の優位性をシミュレーションした結果について述べる。ここではΦ1〜1000μmの微小骨折を水中/骨円柱とモデル化し、シミュレーションを実施した。
なお以下では(位相コントラスト拡大撮影のH/密着撮影のH)=H2/H1=Cとした時、C>Dであれば、十分に位相コントラスト拡大撮影による視認度向上が十分見込めるとしている。なお、エッジ強調幅E、放射線焦点が有限の大きさを持つことにより生じる半影(幾何学的不鋭)によるボケBとした時、B/9E<30である場合(ボケが大きくない場合)はD=1.0、一方でB/9E≧30(ボケが大きい場合)はD=1.1としている。B/9Eは、ボケが大きいか否かを判断するために実験的経験的に求められた閾値である。
画像コントラスト値Hは、放射線焦点径(焦点サイズ)D0、撮影距離R3、拡大率M 、検出器の鮮鋭性、被写体と周囲の放射線級数係数差μと、屈折率差δと被写体の大きさΦが決まれば、光線追跡による計算を行うことにより、算出できる。この光線追跡によるシミュレーションは光学の分野において確立されたシミュレーション技術である。
なお、全てのパラメータを変数とすると余りにも煩雑になる為、ここでは撮影条件を絞り、画像コントラスト値Hの算出式を示す。
撮影条件を、検出器の鮮鋭性をコニカミノルタ製CP-1MRegiusフ゜レート(副走査)相当、放射線焦点200μm 、撮影距離1.75m、拡大率1.75倍、放射線の平均エネルギー31.6keV(平均エネルギー31.6keVの時の骨と水の放射線吸収係数差μ=189[/m] 、屈折率差δ=2.10E-07である。)とし、被写体の大きさΦ=10μmとした時、画像コントラスト値Hは以下の式(3)〜式(6)を用いて表すことができる。
ここで位相コントラスト拡大撮影での画像コントラスト値をH2とした時、H2は吸収コントラストによる寄与部Haと、位相コントラストによる寄与部Hpと、に分けて考えることができ、位相コントラスト拡大撮影の画像コントラスト値H2は以下の式(3)で表すことができる。
H2=Ha+Hp ・・・式(3)
Haは放射線吸収係数差μ(/m)で表記でき、Hpは屈折率差δで表記できる。(μ≧0、δ≧0とした時)
Ha = 0.000000665×μ - 0.000000012 (20≦μ[/m]≦2000) ・・・式(4)
Hp= -4.577×δ+ 0.0000029 (δ≦2.1E-07) ・・・式(5−1)
Hp= -2490×δ+ 0.00053 (δ>2.1E-07) ・・・式(5−2)
また、密着撮影では吸収コントラストのみで画像が形成されることから、画像コントラスト値には放射線吸収係数差μが大きく寄与し、密着撮影での画像コントラスト値H1は以下の(式6)で表わされる。
H1= 0.000000536×μ + 0.00000026 (20≦μ[/m]≦2000)・・・式(6)
上記により求められた画像コントラスト値H1、H2は、位相コントラスト拡大撮影による画質向上度を示すC=H2/H1を求める際に使用される。
式(4)〜式(6)の係数は被写体Φや、検出器、焦点径、撮影距離、拡大率に応じて変化するが、あらかじめ現実的にあり得る撮影条件において何パターンかの式(4)〜式(6)を作成しておけば、撮影前にCを算出可能であり、位相コントラスト拡大撮影の有効性を見積もることができる。
式(3)〜式(6)より、上述の撮影条件においてはμ=189[/m] 、δ=2.10E-07を各式に代入することで、
Hp= 1.94E-06
Ha= 1.26E-04
H2=Ha+Hp=1.28E-04
H1=1.0156E-04
と各画像コントラスト値Hを算出でき、C=H2/H1=1.256を算出できる。
そして図12は、拡大率1.2倍〜8.75倍、被写体大きさΦ1〜1000μmと変えた場合について光線追跡によるシミュレーションにより式(4)〜(6)を導出し、焦点径200μm、SID=1.75m、線質31.6keV、検出器MTFがコニカミノルタ製REGIUSプレートCP-1M(副走査)相当での、拡大率を1.2〜8.75倍とした場合における、Φ1〜1000μmの微小骨折における(位相コントラスト拡大撮影のH/密着撮影のH)=H2/H1=Cの拡大率依存性を求めた結果を示すグラフである。また、[表1−a]、[表1−b]、[表1−c]、[表1−d]は、Φ1〜1000μmの各場合における、エッジ強調幅E、焦点の幾何学的不鋭によるボケBの大小関係、閾値D、CとDの大小関係についての拡大率依存性を表している。
Figure 2012040051
Figure 2012040051
Figure 2012040051
Figure 2012040051
上記グラフと表に基づき、密着撮影/位相コントラスト拡大撮影のどちらを行うかを以下のように分別する。
(1)Φ>100μmの場合([表1−d]参照)
拡大率Mについて、M=1.2の場合はC≦Dである為、密着撮影を推奨表示する、或いは密着撮影に切り替える。1.2<M≦8.75であった場合、C>D であることから位相コントラスト拡大撮影の遂行を許可する。
(2)100μm≧Φ>10μmの場合([表1−c]参照)
拡大率Mについて、1.2≦M≦5であった場合、C>D であることから位相コントラスト拡大撮影の遂行を許可、5<M≦8.75であった場合、C≦D であることから密着撮影を推奨表示する、或いは密着撮影に切り替える。
(3)10μm≧Φ>1μmの場合([表1−b]参照)
拡大率Mについて、1.2≦M≦1.75であった場合、C>D であることから位相コントラスト拡大撮影の遂行を許可、1.75<M≦8.75であった場合、C≦D であることから密着撮影を推奨表示する、或いは密着撮影に切り替える。
(4)1μm≧Φの場合([表1−a]参照)
1.2≦M≦8.75であった場合、C≦D であることから密着撮影を推奨表示する、或いは密着撮影に切り替える。
例えば焦点径D0=200μm、撮影距離R3=1.75m、拡大率M=1.2、放射線平均エネルギー31.6keV、検出器MTFがコニカミノルタ製REGIUSプレートCP-1M相当の放射線検出器を用いて、Φ10μm程度の微小骨折を撮影しようとした場合は、撮影条件(焦点径D0、撮影距離R3、拡大率M、放射線の平均エネルギーE、放射線検出器の種類等)と、撮影部位及びその大きさとを入力手段13から入力することで、上記撮影制御処理において位相コントラスト拡大撮影が有効であると判断され、コンソール上に「位相コントラスト拡大撮影(PCR)有効」と表示されたり、あるいは「拡大率1.75倍が最適」といった最適撮影条件が表示されたりすることで、位相コントラスト拡大撮影による画質向上が維持される。
あるいは、焦点径D0=200μm、撮影距離R3=1.75m、拡大率M=5、放射線平均エネルギー31.6keV、検出器MTFがコニカミノルタ製REGIUSプレートCP-1M相当の検出器を用いて、Φ10μm程度の微小骨折を撮影しようとした場合は、撮影条件(焦点径D0、撮影距離R3、拡大率M、放射線の平均エネルギーE、放射線検出器の種類等)と、撮影部位及びその大きさを入力手段13から入力することで、位相コントラスト拡大撮影が不向きであると判断され、自動で密着撮影に切り替わるか、或いはコンソール上に「密着撮影を推奨」と表示されたり、或いは「拡大率1.5倍を推奨」といった最適撮影条件が表示されたりすることで、位相コントラスト拡大撮影による画質低下が防止される。
よって、本発明に係る放射線画像撮影装置1では、1≦Φ≦1000(μm)の微小な対象物を撮影する際には、C≦Dとならない撮影条件にて撮影を行うことにより、画質低下を防止、或いは高画質を維持できる。またはCの値が大きくなるように拡大率を再設定することで画質をさらに向上できる。
なお、検出器の画素サイズ50〜200μmなら上記の傾向は変わらないことを確認している。
同様にして、画像コントラスト値Hの「撮影距離R3の依存性、放射線焦点の大きさ依存性、管電圧(放射線の線質)の依存性等」も同様にして算出し、C>D或いは、C≦Dとなるかどうかで密着撮影と位相コントラスト拡大撮影の切り替えを行えばよい。
[実写による視覚評価]
上記放射線画像撮影装置1の正当性を評価すべく、下記の実験条件により位相コントラスト拡大撮影を行い、得られた拡大画像についての視覚評価をフィルム出力によって行った。
〈実験条件〉
微小骨折の屈折率とX線吸収率を見積もり、シミュレーションにより10〜100(μm)の微小骨折細線の信号プロファイルを密着撮影と位相コントラスト拡大撮影相当で算出し、実写ノイズを足し合わせた後、得られた微小骨折画像をフィルムに出力して視覚評価を行った。
ノイズの実写については放射線管球はコニカミノルタ社で試作したものを用い、放射線焦点径D0=200(μm)のものを使用した。撮影装置はコニカミノルタ社製の試作機を用いた。画像検出器(蛍光体プレート又はFPD(Flat Panel Detector)を適用可)を用いてデジタル画像データを生成する撮影装置を用いてノイズ撮影を行った。なお、画像検出器は同社製のREGIUSプレートCP−1Mを用いた。
信号プロファイルとノイズの導出について詳細に述べる。まず、上記シミュレーションにより算出した信号プロファイルを、被写体のない部分(放射線が素抜けの部分)の信号値で規格化したものを信号プロファイルとした。またノイズについては、上記ノイズ撮影において厚み20mmのアクリルを撮影することで散乱線も考慮したノイズ画像を取得し、ノイズ信号値の平均値で規格化を行い、その後1を除算したものを実写ノイズとした。このノイズは主にX線量子ノイズ、光量子ノイズ、構造ノイズといった、検出器の位置によって生じるX線の吸収率のバラつきや、光電変換率のバラつき、検出器の材質の構造の不均一さ等により生じるものである。なお、検出器がFPDの場合は電気ノイズ等も考慮する必要がでてくる。
撮影時の放射線管の管電圧は40(kVp)、放射線の平均エネルギーE=27.8(keV)、管電流は12(mA)とし、放射線管の焦点から画像検出器までの距離R3は、R3=(R1+R2)=1.75(m)で固定し、距離R1、R2をそれぞれ0.02≦R1≦1.75、0≦R2≦1.73の範囲で可変して拡大率Mが1≦M≦87.5となる範囲でノイズ撮影を行った。
上記画像検出器により検出された拡大画像の読取は、コニカミノルタ社製REGIUS model 190により、読取画素ピッチ43.75(μm)で読み取った。
信号プロファイルも同様の条件にてシミュレーションにて算出した。
微小骨折画像のフィルムへの出力は、同社製DRYPRO model 793により、書込画素ピッチ25(μm)で出力した。このとき、位相コントラスト拡大撮影時については、読取画像の各画素と出力画像の各画素を1:1に対応させて補間処理を行わずに出力し、密着撮影時については、読み取り画素を出力画素に合わせる補間処理を行い出力した。
なお、[表2]、[表3]中のNO.1は位相コントラスト拡大撮影との比較を行うために、拡大率1の密着撮影を行ったものである。「フィルム視認性判定」の項目は、画像検出器を用いて放射線画像をデジタルデータとして得た場合の出力画像についての微小骨折細線の視認性を、密着撮影と位相コントラスト拡大撮影で比較した際の判定結果を示している。
〈評価基準〉
フィルム上に出力形成された画像について、以下の様な評価基準で微小骨折細線の視認度の判定を行った。
◎・・・密着撮影に比べ、位相コントラスト拡大撮影の視認度が大きく上回っている。
○・・・密着撮影に比べ、位相コントラスト拡大撮影の視認度が上回っている。
△・・・密着撮影に比べ、位相コントラスト拡大撮影の視認度は同等以下。
×・・・位相コントラスト拡大撮影に比べ、密着撮影の視認度が大きく上回っている。
上記の評価基準に従って、8人の画像評価者がフィルム上の画像を観察し、被写体となった微小骨折細線の画像について評価を行った。
上述のように、エッジ強調幅E、放射線焦点が有限の大きさを持つことにより生じる半影(幾何学的不鋭)によるボケBとした場合、9E≧Bを満たす場合、位相コントラストにより画質が向上することが分かっている(例えば特許第4010101号公報参照)。ここでは画像コントラスト値Hだけでなく、エッジ強調幅E、ボケBも同時に比較することでより精度高く実写との対応をとることにした。B/9E<30である場合(ボケが大きくない場合)はD=1.0、一方でB/9E≧30(ボケが大きい場合)はD=1.1としている。B/9Eは、ボケが大きいか否かを判断するために実験的経験的に求められた閾値である。
また、フィルム上に出力形成された画像について、以下の様な判定でアーチファクトの有無について判定を行った。
○・・・アーチファクト無し
△・・・アーチファクトあるが気にならない
×・・・アーチファクトにより視認性が大きく低下
〈評価結果〉
[表2]に、Φ10μmの場合の評価結果を示す。
No.1は拡大率1の評価結果を示しており、フィルム視認性判定については参照データという意味でrefと記載してある(△に相当)。
Figure 2012040051
この場合、密着撮影において微小骨折細線は視認することができた。しかし、No.3〜7の拡大率M=1.75〜5の場合は密着撮影と比べ、微小骨折細線の視認度が低下した。これは位相コントラストが逆効果となって働いたことが原因と考えられる(図5A、図5Bに相当)。なお、密着撮影時においては、フィルムにライフサイズ出力する際、読み取り画素サイズを出力画素サイズに合わせる補間処理により画質が低下するのだが、これよりも大きな画質低下が位相コントラストにより生じていると考えられる。また、No.4、No.5に見られるように、拡大率M=2〜3の場合は微小骨折細線が視認できなかったのだが、この場合は特に位相コントラストが吸収コントラストを強く相殺した為だと考察できる。いずれにせよ、上記No.3〜7の拡大率M=1.75〜5の場合において、H2/H1=C≦D=1.0であり、位相コントラスト拡大撮影によって視認性低下を確認した視覚評価と傾向が一致している。ここで、No.6〜7についてはNo.4〜5よりも視認性が向上したが、これは拡大率が大きくなり、位相コントラストの位置がずれたことで吸収コントラストが十分に相殺されなかったことに起因すると考えられる。とはいうものの、アーチファクトらしい描像も見受けられたため、No.6〜7についても位相コントラスト拡大撮影は行わない方が良い。
No.8〜13については放射線焦点による幾何学的不鋭、即ちボケBが非常に大きくなっており、密着撮影と比較し、視認性が大きく低下した。いずれにせよ、No.8〜13についてもH2/H1=C≦Dを満たしており、視覚評価と対応した。
一方で、No.2の拡大率M=1.2においては、密着撮影よりも容易に微小骨折細線を視認することができ、これらの拡大率ではH2/H1=C>D=1.0であった。これは位相コントラストによってコントラストそのものが向上したことに起因すると考えられる(図4に相当)。
以上より、H>0.000135且つB/9E<30であれば、Φ10μmの微小骨折細線が視認可能であることがわかった。
そして、いずれにせよ、CとDを比較することで位相コントラスト拡大撮影による画質向上度が見積もれることがわかった。
また、Φ=1〜50μmの微小骨折細線についても同様の実験を行ったが、上記傾向は変化なかった。
[表3]に、Φ100μmの場合の評価結果を示す。
Figure 2012040051
この場合、密着撮影においても微小骨折細線は視認することができたが、No.2〜9に示すように、拡大率M=1.2〜17.5での位相コントラスト拡大撮影の方が、微小骨折細線を容易に視認することができたので、位相コントラストによって画質が向上したことを確認できた。いずれもH2/H1=C>D=1.0となり、ボケBによって鮮鋭性が低下していく中でも、位相コントラストによって被写体中央部のコントラストが向上することで視認性が向上したものと考えられる(図4に相当)。
No.10〜13については密着撮影よりも視認性が低下した。これはボケBが(B/9E≧30)極めて大きいことから、密着撮影よりも視認性が低下したと考えられる。なお、同様に高拡大率(M≧17.5)になるにつれて画像コントラスト値Hも値が小さくなっていくことからボケBによる画質低下が画像コントラスト値Hにも反映されていることが分かる。
また、Φ=100〜100000μmの微小骨折細線についても同様の実験を行ったが、上記傾向は変化なかった。
以上より、画像コントラスト値Hの比:H2/H1=Cと閾値Dの大小関係を比較することで位相コントラスト拡大撮影による画質向上度を見積もることができ、本発明に係る放射線画像撮影装置の正当性が証明された。
なお、これらの結果はR3=0.4〜3m、空間周波数2.5(lp/mm)における検出器のMTFをGとした時G=0.25〜0.8、放射線放射線焦点径D0=50〜300μm、放射線平均エネルギーE=14〜35(keV)(30kV~60kV相当)と変化させても傾向は同様であった。
以上説明したように、放射線画像撮影装置1は、微細な被写体撮影専用の小焦点ではない一般的な焦点サイズの放射線管8を用いて撮影を行う装置であり、撮影制御部15は、入力手段13により入力された撮影部位、拡大率及び被写体サイズを含む撮影条件に基づいて、画像コントラスト値Hを算出し、当該算出された画像コントラスト値と予め定められた閾値との比較結果に基づいて入力された拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行うべきか又は密着撮影を行うべきかを判断する。従って、微細な被写体等、位相コントラスト拡大撮影に不向きな撮影条件である場合、その情報を操作者に提供したり、自動的に密着撮影に切り替える制御を行ったりすることが可能となるので、位相コントラスト拡大撮影を行って画質が低下することを防止することができる。
例えば、密着撮影を行うべきであると判断した場合に、撮影制御部15がユーザの注意を喚起するための警告や密着撮影を推奨する内容を表示手段14により表示出力させたり、発音手段19により音声出力させたりすることで、ユーザは位相コントラスト拡大撮影に不向きな撮影条件であることを撮影前に把握することが可能となる。そして、密着撮影に切り替えることで、位相コントラスト拡大撮影による画質低下を防止することが可能となる。
また、密着撮影を行うべきであると判断した場合に、撮影制御部15が駆動手段を制御して自動的に密着撮影に切り替えることで、位相コントラスト拡大撮影による画質低下を防止することが可能となる。
また、位相コントラスト撮影は密着撮影より多くの放射線を照射する必要があるが、位相コントラスト撮影が不向きな撮影条件において密着撮影を行うことで、不要な被曝量増加を防止することが可能となる。また、位相コントラスト撮影はSIDを長くする必要があることからその分放射線照射時間を長くすることが多く、モーションアーチファクトの影響を受けやすいが、位相コントラスト撮影が不向きな撮影条件において密着撮影を行うことで、モーションアーチファクトの低減にもつながる。
また、例えば、位相コントラスト撮影を行うべきであると判断した場合に、撮影制御部15が位相コントラスト撮影を許可又は推奨する通知を表示手段14により表示出力したり、発音手段19により音声出力したりすることで、ユーザは位相コントラスト撮影を行っても画質が保たれることを認識した上で撮影を行うことが可能となる。
また、位相コントラスト撮影を行うべきであると判断した場合に、自動的に位相コントラスト撮影を行うことで、撮影をスムーズに行うことが可能となる。
また、撮影制御部15が位相コントラスト撮影により取得された画像と密着撮影により取得された画像に異なる画像処理を施すように画像処理手段を制御することで、撮影画像に対し、撮影画像に応じた画像処理を施すことが可能となる。
また、入力手段13により位相コントラスト拡大撮影が指示された場合、撮影制御部15は、入力手段13により入力された撮影部位、拡大率及び被写体サイズを含む撮影条件に基づいて、画像コントラスト値Hを算出し、駆動手段を制御して、入力手段13により入力された拡大率に代えて、算出された画像コントラスト値が最大となる拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行う。従って、位相コントラスト撮影を行う場合に、画質低下を最低限に抑えることが可能となる。
なお、上記実施の形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態においては、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリ等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
その他、放射線画像撮影装置1を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
1 放射線画像撮影装置
2 支持台
3 支持基部
4 支持基軸
5 放射線検出器
6 第1アーム
7 第2アーム
8 放射線管
9 被写体台
10 第1支持軸
11 検出器保持台
12 操作装置
13 入力手段
14 表示手段
15 撮影制御部
16 制御手段
17 画像処理手段
18 画像メモリ
19 発音手段
20 フォトタイマ
21 照射駆動部
22 第1アーム駆動部
23 第2アーム駆動部
24 電源部
25 各種エンコーダ
26 通信手段
27 I/F

Claims (8)

  1. 50〜300μmの焦点サイズを有する放射線管球と、
    被写体を載置する被写体台と、
    前記被写体を透過した前記放射線管球からの放射線を検出する放射線検出器と、
    前記放射線管球と前記被写体台との間の距離及び前記被写体台と前記放射線検出器との間の距離を調整するための駆動手段と、
    前記駆動手段を制御して位相コントラスト拡大撮影又は密着撮影を行う撮影制御手段と、
    を備える放射線画像撮影装置であって、
    少なくとも撮影部位、拡大率及び被写体サイズを含む撮影条件を入力するための入力手段を備え、
    前記撮影制御手段は、前記入力手段により入力された撮影条件に基づいて、下記の式で表される画像コントラスト値を算出し、当該算出された画像コントラスト値と予め定められた閾値との比較結果に基づいて、前記入力された拡大率での位相コントラスト拡大撮影を行うべきか又は位相コントラスト撮影に替えて密着撮影を行うべきかを判断する放射線画像撮影装置。
    画像コントラスト値=(被写体領域の信号値÷素抜け領域の信号値)−1 (式)
  2. 前記撮影制御手段は、密着撮影を行うべきであると判断した場合にユーザの注意を喚起するための警告を出力手段に出力させる請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
  3. 前記撮影制御手段は、密着撮影を行うべきであると判断した場合に、前記駆動手段を制御して密着撮影を行う請求項1又は2に記載の放射線画像撮影装置。
  4. 前記撮影制御手段は、前記入力された拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行うべきであると判断した場合に、位相コントラスト拡大撮影を許可又は推奨する通知を出力手段に出力させる請求項1〜3の何れか一項に記載の放射線画像撮影装置。
  5. 前記撮影制御手段は、位相コントラスト拡大撮影を行うべきであると判断した場合に、前記駆動手段を制御して前記入力された拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行う請求項1〜4の何れか一項に記載の放射線画像撮影装置。
  6. 位相コントラスト拡大撮影又は密着撮影により取得された画像に画像処理を施す画像処理手段を備え、
    前記撮影制御手段は、前記画像処理手段に位相コントラスト拡大撮影により取得された画像と密着撮影により取得された画像とで異なる画像処理を行わせる請求項1〜5の何れか一項に記載の放射線画像撮影装置。
  7. 50〜300μmの焦点サイズを有する放射線管球と、
    被写体を載置する被写体台と、
    前記被写体を透過した前記放射線管球からの放射線を検出する放射線検出器と、
    前記放射線管球と前記被写体台との間の距離及び前記被写体台と前記放射線検出器との間の距離を調整するための駆動手段と、
    前記駆動手段を制御して位相コントラスト拡大撮影を行う撮影制御手段と、
    を備える放射線画像撮影装置であって、
    少なくとも撮影部位、拡大率及び被写体サイズを含む撮影条件を入力するための入力手段を備え、
    前記撮影制御手段は、前記入力手段により入力された撮影条件に基づいて、下記の式で表される画像コントラスト値を算出し、前記駆動手段を制御して、前記入力手段により入力された拡大率に代えて前記算出された画像コントラスト値が最大となる拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行う放射線画像撮影装置。
    画像コントラスト値=(被写体領域の信号値÷素抜け領域の信号値)−1 (式)
  8. 前記撮影制御手段は、当該算出された画像コントラスト値が予め定められた閾値を越えない場合に、前記駆動手段を制御して、前記入力手段により入力された拡大率に替えて前記算出された画像コントラスト値が最大となる拡大率で位相コントラスト拡大撮影を行う請求項7に記載の放射線画像撮影装置。
JP2010181184A 2010-08-13 2010-08-13 放射線画像撮影装置 Pending JP2012040051A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010181184A JP2012040051A (ja) 2010-08-13 2010-08-13 放射線画像撮影装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010181184A JP2012040051A (ja) 2010-08-13 2010-08-13 放射線画像撮影装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2012040051A true JP2012040051A (ja) 2012-03-01

Family

ID=45897048

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010181184A Pending JP2012040051A (ja) 2010-08-13 2010-08-13 放射線画像撮影装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2012040051A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013224878A (ja) * 2012-04-23 2013-10-31 Canon Inc X線撮像装置およびx線撮像方法
WO2015016205A1 (ja) * 2013-07-29 2015-02-05 株式会社ジョブ 低エネルギx線画像形成装置及びその画像の形成方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013224878A (ja) * 2012-04-23 2013-10-31 Canon Inc X線撮像装置およびx線撮像方法
WO2015016205A1 (ja) * 2013-07-29 2015-02-05 株式会社ジョブ 低エネルギx線画像形成装置及びその画像の形成方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5056842B2 (ja) 放射線画像撮影装置及び放射線画像撮影システム
JP5407774B2 (ja) 放射線撮影装置
JP2016097296A (ja) X線診断装置、医用画像処理方法および医用画像処理プログラム
JP2016022095A (ja) 断層画像生成システム
JP2015504747A (ja) デジタルラジオグラフィのための装置および方法
JP6109650B2 (ja) X線診断装置、被曝管理装置、散乱線線量分布形成方法、および散乱線線量分布形成プログラム
JP2010158257A (ja) 放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システム
JP5194420B2 (ja) 放射線画像撮影装置
JP2007105345A (ja) X線画像診断装置
JP6091769B2 (ja) X線診断装置
JP2008259693A (ja) X線画像撮影システム及びプログラム
WO2007043329A1 (ja) 放射線画像撮影装置
JP2010187812A (ja) 医用寝台装置
JP6398685B2 (ja) 断層画像生成システム及び画像処理装置
JP2010213729A (ja) 放射線画像撮影システム
WO2006129462A1 (ja) デジタル放射線画像撮影システム
JP2012040051A (ja) 放射線画像撮影装置
JP2015232453A (ja) X線検査装置
JP6540399B2 (ja) 放射線透視撮影装置
JP2007130058A (ja) 放射線画像撮影装置
JP2007105146A (ja) 放射線画像撮影装置
JP4862824B2 (ja) デジタル放射線画像撮影システム
JP2017169715A (ja) 画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理方法、及び画像処理プログラム
JP6237001B2 (ja) 医用画像処理装置及び位相画像生成方法
JP2008018059A (ja) 診断情報生成システム