JP2013224878A - X線撮像装置およびx線撮像方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】検出手段によって得られた強度分布から、被検知物の位相コントラスト像を取得する演算手段を備えたX線撮像装置であって、
演算手段は、
被検知物の各位置を透過するX線の強度分布の値から、被検知物がない場合のX線の強度分布である参照強度の値を減算または除算することによって屈折X線の強度分布の値を演算する減除部と、
減除部での減算または除算により演算された屈折X線の強度分布の値を、屈折X線、吸収X線、および無応答X線が足し合わされた合成X線の強度分布の値から抽出する抽出部と、を有する。
【選択図】 図5
Description
X線透過像に現れるコントラストの生成は、被検知物の構成元素や密度、形状、用いるX線のエネルギーに依存するX線の透過率の差に起因する。
ところが、ソフトマテリアルや生体など軽元素により構成される被検知物や非常に薄いものでは透過率が高く、また密度差が小さい場合などには視認性のある十分なコントラストを得られない。
このような被検知物のX線撮像では、高コントラストを得る方法として、X線の透過率の差だけでなく物質を透過した際に生じるX線の位相差を検出する位相コントラスト法が利用される。
X線の位相変化は、例えば物質の界面など密度差のある部位において屈折として現れる。
よって、通常のX線透過像のように、X線を被検知物の広範囲に照射しその透過像を取得するのではなく、まず、X線を小さく絞り被検知物の局所的な部位に照射する。
X線は被検知物により屈折を受けるため、被検知物と検出器の距離を大きく取ると、X線が検出器に照射する位置は、被検知物が無い場合の位置から変化することになる。
X線源1401から発生したX線は分割素子1402により空間的に分割される。分割されたX線は被検知物1403を透過した後に検出器1404に入射する。
検出器1404は2次元検出器であり、複数の画素により構成される。
ここで、被検知物1403と検知器1404の間にある実線と破線は、被検知物1403がある場合とない場合についてのX線の光路1405を示す。
図14(b)に検出器1404で検出されるX線の投影像について、その概略を示す。
図14(b)の各格子は検出器1404の画素を示し、破線で囲う円は試料が無い場合のX線の投影像1406を、実線で囲う円は被検知物により屈折したX線の投影像1407を示している。
それぞれのX線の位置は、その投影像の重心として各画素の強度と位置から求まる。
よって、屈折によるX線の位置変化量Δrは、それぞれの重心位置の差より得ることができる。ここで屈折量Δθは、被検知物1403と検出が器1404との距離をLとすると、次の式1のように表すことができる。
Δθ=arctan(Δr/L) 式1
ここで、arctanは逆正接関数を示す。
また位相変化量Δφは、用いたX線の波長をλとすると、次の式2により計算することができる。
Δφ=2πΔθ/λ 式2
以上の操作を分割されたX線のそれぞれに行えば、被検知物1403によるX線の位相変化に相当する画像を出力することができる。
このような方法によれば、通常のX線透過像ではコントラストが得られない被検知物であっても、コントラストが得られる利点がある。
X線は界面などの局所的な部位において大きく屈折する。このため、被検知物によるX線の位相変化を詳細に捉えるためには、分割されたX線の断面長を非常に小さくすることが要求される。
しかし、非常に小さな断面長を持つX線を検出することは、X線の光子数が非常に少なくなるため困難である。
実際には、数十μm以上の断面長を持つX線により撮像を実施することが多い。このような有限の断面長を持つX線が被検知物に入射した場合、被検知物により吸収を受けまた屈折するが、入射X線の一部は被検知物の局所的な部位による屈折の効果を強く受けたX線(屈折X線)となり、他は吸収の影響を強く受けたX線(吸収X線)となる。
さらに、入射位置が被検知物の端である場合には、入射X線の一部は被検知物を透過することなく通過し、被検知物の影響を受けないX線(無応答X線)となる。
そのため、検出器で測定される強度分布は、屈折X線、吸収X線、および無応答X線が足し合わされたX線(合成X線)の強度分布である。
したがって、屈折X線の強度分布は、他の吸収X線と無応答X線の強度分布により平滑化される。
合成X線の強度分布には、位置の変化しない成分が多く含まれるため、従来法においてはX線の位置変化の検出量が低下する。
X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子と、
前記分割素子により分割され、被検知物を透過したX線の強度を検出する検出手段と、
前記検出手段によって得られた強度分布から、前記被検知物の位相コントラスト像を取得する演算手段と、
を備えたX線撮像装置であって、
前記演算手段は、
前記検出手段により取得された前記被検知物の各位置を透過するX線の強度分布の値を被検知強度とし、前記被検知物がない場合のX線の強度分布の値を参照強度とすることにより、
前記被検知物の各位置を透過するX線の強度分布の値から、前記参照強度の値を減算または除算することによって屈折X線の強度分布の値を演算する減除部と、
前記減除部での減算または除算により演算された前記屈折X線の強度分布の値を、前記屈折X線、吸収X線、および無応答X線が足し合わされた合成X線の強度分布の値から抽出する抽出部と、
を有することを特徴とする。
また、本発明によるX線撮像方法は、
X線発生手段から発生したX線を空間的に分割し、該分割されて被検知物を透過したX線の強度を検出手段によって検出し、該検出によって得られた強度分布から、前記被検知物の位相コントラスト像を取得するX線撮像方法であって、
前記検出手段により取得された前記被検知物の各位置を透過するX線の強度分布の値を被検知強度とし、前記被検知物がない場合のX線の強度分布の値を参照強度とすることにより、
前記被検知物の各位置を透過するX線の強度分布の値から、前記参照強度の値を減算または除算することによって屈折X線の強度分布の値を演算し、
前記減算または除算により演算された前記屈折X線の強度分布の値を、前記屈折X線、吸収X線、および無応答X線が足し合わされた合成X線の強度分布の値から抽出することを特徴とする。
検出器で得られる合成X線の強度分布から屈折X線の強度分布を抽出することで、コントラストの高い視認性の向上された位相コントラスト像を得ることが可能となるX線撮像装置およびX線撮像方法を提供することができる。
これにより、被検知物によるX線の位相変化に関する物理量を取得する演算手段を有している。
以下に具体的な実施形態について説明する。
(実施形態)
本発明の実施形態においては、位相コントラスト像を得るX線撮像装置の構成例について説明する。
本発明では被検知物によるX線の位相変化量、屈折量、位置変化量など、位相変化に起因する量によって得られる像を位相コントラスト像と呼ぶ。
図1に本実施形態におけるX線撮像装置の概略図を示す。X線発生手段101としてのX線源から発生されたX線は、分割手段102としての分割素子により空間的に分割される。
分割素子は、例えばラインアンドスペースを有したスリットアレイである。
なお、分割素子は、スリットの周期方向に対して垂直な方向に分割されている2次元スリットやピンホールアレイであっても構わない。
分割素子に設けられたスリットやピンホールはX線を透過する形態であれば、分割素子の基板を貫通しなくとも良い。
貫通しない場合、分割素子の基板にX線用のフィルタ材料を用いてもかまわない。分割素子を構成する材料としては、X線の吸収率が高いPt、Au、Pb、Ta、Wなどから選択される。あるいは、これらの材料を含む化合物であってもよい。
また、X線は被検知物103によって吸収される。被検知物103を透過したX線は、検出手段104により検出される。
検出手段104により得たX線の強度分布の値は演算手段105としての演算装置により数的処理がなされ、モニタなどの表示手段106に出力される。
被検知物103としては、人体、人体以外としては無機材料、有機材料、無機有機複合材料等が挙げられる。
なお、分割手段102および検出手段104には自動ステージなどの分割素子および検出器の位置調整機構が含まれる。
単色X線を用いる場合には、X線発生手段101と分割手段102の間にX線調整手段108を配置してもよい。
X線調整手段108としては、金属フィルタやスリットと組み合わせたモノクロメータ、チャンネルカットモノクロメータ、X線多層膜ミラーなどを用いることができる。
例えば、位置調整手段109を設ければ、被検知物103を適宜移動することができるため、被検知物103の特定個所についての像を得ることができる。
また、分割手段102は分割されたX線を被検知物103に対し離散的に照射するため、被検知物103のX線が照射されていない位置の情報を得ることができない。
そこで、被検知物103をX線に対して走査しながら測定することにより、被検知物103の全ての位置における情報を得ることができる。
検出手段104は、間接変換型、直接変換型を問わず種々の2次元X線検出器を用いることができる。
例えば、X線CCDカメラ、間接変換型フラットパネル検出器、直接変換型フラットパネル検出器などから選択される。
以下では、被検知物103に関する位置について次のように表現する。配置位置、走査位置はそれぞれ、装置配置での被検知物103の位置、位置調整手段109によって移動する被検知物103の位置を示す。
原理の説明のため、被検知物103が直径1.0mmの円柱状のポリスチレンであり、その柱軸方向を図1のy軸に平行に配置されるとき、
図2のようなx軸方向の断面強度分布を持つX線が被検知物103の端に入射する場合の、x軸方向の合成X線の強度分布について考える。
図3を求めた計算では被検知物103によるX線の屈折の効果を明瞭にするため、被検知物103へ入射するX線は平行光であるとした。
X線のエネルギーは17.4keVである。
図3(a)、(c)は被検知物103と検出器104との距離Lがそれぞれ0.5mm、50cmである場合の計算結果であり、図3(b)は図3(a)の一部拡大図である。
図1と図4のx、y、z軸の方位は一致している。合成X線の計算例である図3を得るためには、まず図2の強度分布を持つX線をx軸に垂直に線状に分け、z軸に平行に被検知物402に入射させる配置(図4(a))を考える。
それぞれの線状X線404の被検知物402によるX線の屈折量と透過率を計算することで、検出器面403への照射位置とX線強度を計算する。
計算例では検出器の画素サイズを6μmとし、検出器面403での照射位置から画素サイズごとに、それぞれの線状X線404の強度を積分した結果を合成X線の強度分布として示している。
各線状X線404の屈折量は、X線の被検知物402に対する入射点405(点a)、出射点406(点b)においてスネルの公式を用いることで、入射X線に対する出射X線の方位差408(∠R)として解いた。
被検知物は空気中にあるものとし、スネルの式に用いる空気の屈折率は1、ポリスチレンの屈折率nは、次の式3で示される。
n=1−δ 式3
δはポリスチレンの化学組成および密度に基づきX線のエネルギーが17.4keVである場合の値を用いた。
ポリスチレンの屈折率が1よりわずかに小さいために、X線の被検知物402の表面に対する入射角409(∠in)が臨界角より小さい場合、入射点405でのようにX線は被検知物402の内部に透過せず、反射点407(点a’)でのように反射する。
このような場合には、入射角409と反射角が等しいことから屈折量は入射角の2倍であるとした。ここで臨界角∠cは、次の式4で示される。
∠c=√(2δ) 式4
以上により入射角409が臨界角と一致した場合に屈折量は最大となるため、屈折量の最大値∠R_maxは、次の式5で表される。
∠R_max=2∠c=2√(2δ) 式5
ここで厳密には入射角が臨界角近傍にある場合、一つの入射X線によって被検知物に透過するX線とその表面で反射するX線の2つに分かれることを考慮すべきである。
しかし実際の被検知物の表面は理想的に平坦ではなく、ラフネスがあることを踏まえると、このような場合を想定すべき入射角度範囲が限定される。
よって、このような条件は計算において無視する。
X線が被検知物402を透過する場合には、入射点405から出射点406までの距離Labを用いて、次の式6とした。
T=exp(−Lab/Lex) 式6
ここで、LexはX線のポリスチレンに対する消衰距離であり、δと同様にして求めた。なお無応答X線の屈折量は零でありTは1としている。
また、空気によるX線の散乱および吸収は考慮していない。
また、計算では入射X線を平行光として扱っているために、被検知物402が無い場合に、被検知物402の設置位置で測定した入射X線の強度分布(図2)は、検出器位置での強度分布と一致する。
図3(a)ではLが小さいために屈折の効果が表れにくく、またX線の透過率が高いために、合成X線と入射X線の強度分布がほぼ一致しているように見える。しかしその一部拡大図である図3(b)を見ると、x軸の負の側に被検知物402があるために、それによる吸収を受けた結果、入射X線の強度分布よりもわずかに合成X線の強度が減少している。
図3(c)ではLが大きいために、屈折によるX線の位置変化が明瞭に生じ、図3(a)とは異なった強度分布を示している。
特に、合成X線の一部が入射X線の強度分布以上の値を示していることは、屈折X線が検出器面403上で無応答X線や吸収X線に足し合わされたことに起因する。吸収の効果のみを考えれば、被検知物402を通過した後の合成X線に、入射X線を超える強度分布は現れない。
したがって、図5に示す演算手段105により、屈折X線による強度分布を合成X線の強度分布から抽出することで、従来法よりもX線の位置変化量を敏感に捉えた被検知物103の位相コントラスト像を得ることができる。
本発明における演算手段105は、減除部501と抽出部502、および画像化部503を有している。
減除部501と抽出部502において、屈折X線による強度分布を合成X線の強度分布より抽出する演算を行い、この演算結果より画像化部503において、屈折X線の位置を求める演算を通した位相コントラスト像を出力する。
第一の実施形態では、まず減算過程504において、検出手段104で取得する被検知物103の各位置を透過したX線の強度分布の値を被検知強度とし、
また、被検知物103がない場合の強度分布(初期強度)の値を参照強度とすることで、被検知強度より参照強度を減算する(図6(a))。
これは、次の式7で表される。
ここで、添え字のiは分割手段102によってi個に分割されたそれぞれX線を示す。
r_iはi番目のX線を検出する検出手段104の画素の位置であり、Fsub_i(r_i)、O_i(r_i)、R_i(r_i)はそれぞれi番目のX線に対する減算過程504による演算結果、被検知強度、参照強度である。
初期強度をI_i(r_i)とすると、ここではR_i(r_i)=I_i(r_i)である。
さらに、被検知物103をX線に対し走査する場合には、次の式8で表される。
Fsub_i,k(r_i)=O_i,k(r_i)−R_i,k(r_i) 式8
ここで添え字のkはそれぞれの走査位置を示す。
但し、以降の原理説明では被検知物103を走査する場合についての記載を省くが、走査位置の取り扱いは式8と同様に行うとよい。
この減算過程504によって合成X線より無応答X線の強度分布を除く。先の計算例が示すように、屈折による効果は合成X線に参照強度を超える強度分布を与えるため、図6(a)の強度分布のうち、正の値が屈折X線の強度分布を有する。
よって、抽出部502の減算抽出過程506において、減算過程504の演算結果の正の領域を抽出し(図6(b))、減算抽出強度分布とする。
ここで抽出を行う演算は、比較演算子などを用いてFsub_i(r_i)の零未満の値を零とすることで抽出しても良いが、例えば、次の式9によっても良い。
Fsub+_i(r_i)=
(|Fsub_i(r_i)|+Fsub_i(r_i))/2 式9
ここで、Fsub+_i(r_i)は減算抽出強度分布である。
次に、画像化部503において減算抽出強度分布からX線の位置を求め、初期強度でのX線の位置との差から、被検知物103によるX線の位置変化量を算出する。以上の演算手段105を、すべてのi、kについて、すなわち分割されたX線のそれぞれに対して取得した強度分布、もしくはそれぞれの走査位置において取得した強度分布に対し行う。
このようにして得られたX線の位置変化量の、被検知物103の位置に対する分布を求めれば、被検知物103の位相コントラスト像を表示手段106へ出力することができる。
第二の実施形態では、まず除算過程505において、被検知強度より参照強度を除算する(図7(a))。ここでは被検知強度を零で除算することを避けるため、被検知強度および参照強度それぞれに一定の値mを加算することで、つぎの式10とする。
Fdiv_i(r_i)=
(O_i(r_i)+m)/(R_i(r_i)+m) 式10
ここで、Fdiv_i(r_i)は除算過程505の演算結果を示す。
また図7(a)では、m=10とした。この演算により無応答X線の強度は1となる。
ここで、屈折による効果は合成X線に参照強度を超える強度分布を与えるため、図7(a)の強度分布のうち1以上の値が屈折X線の強度分布を有している。
したがって、抽出部502の除算抽出過程507において、1以上の値の領域を抽出し(図7(b))、除算抽出強度分布とする。
ここで、抽出を行う演算は、比較演算子などを用いてFdiv_i(r_i)より1未満の値を零とすることで抽出しても良いが、例えば、つぎの式11によっても良い。
Fdiv+_i(r_i)=
(|Fdiv_i(r_i)−1|+Fdiv_i(r_i)−1)/2 式11
ここでFdiv+_i(r_i)は、除算抽出強度分布である。
この除算抽出強度分布の画像化部503における取り扱いは、減算抽出強度分布の場合と同じでよい。
図7(a)では横軸が100μmである付近に、図6(a)には見られないピーク形状をもった強度分布が見られる。
これは除算により、被検知強度に存在する屈折X線の弱い強度分布が強調されたものである。
このように除算抽出強度分布では減算抽出強度分布よりも、弱い強度分布が強調される利点がある。
しかし、その反面、強度検出におけるノイズの影響を受けやすくなる。
よって、mの値は、O_i(r_i)やR_i(r_i)それぞれのS/N比が高い場合には小さい値で良いが、ノイズが大きい場合には、除算演算による誤差の伝播を加味した値をとるとよい。
また、mを変えた位相コントラスト像を出力し、それらのうち最もS/N比が良いものを選択するようにmを決定してもよい。
このような選択は、被検知物103によるX線の吸収が大きい場合などに行うとよい。
被検知物103による吸収の効果が大きい場合に、被検知物103の端以外の部分を測定すると、合成X線に屈折X線の強度分布が存在したとしても、合成X線の強度分布が入射X線をすべて下回るようになる。
この場合には減算過程504、除算過程505での演算のように、被検知強度から初期強度である参照強度の減算または除算を行うと、正の値または1以上の値を得られない。
そこで、減算過程504、除算過程505において、被検知強度と参照強度の積分強度比に基づく重み付を行った演算を行う。
つまり、被検知強度から参照強度に積分強度比を乗算した値を、または、被検知強度に積分強度比を除算した値から参照強度を減算、除算すると良い。
ここで、積分強度比は、被検知強度の積分値から参照強度の積分値を除算したものを示す。すなわち、減算過程504における演算は、次の式12または式13となる。
O_i(r_i)−R_i(r_i)・OR_i 式12
または、
Fsub_i(r_i)=
O_i(r_i)/OR_i−R_i(r_i) 式13
除算過程505は、次の式14または式15となる。
Fdiv_i(r_i)=
(O_i(r_i)+m)/(R_i(r_i)・OR_i+m) 式14
または、
Fdiv_i(r_i)=
(O_i(r_i)/OR_i+m)/(R_i(r_i)+m) 式15
ここでOR_iは、次の式16で表される積分強度比である。
OR_i=Σ(O_i(r_i))/Σ(R_i(r_i)) 式16
積分強度比に基づく重み付けの演算を加えることで、吸収の効果が大きい被検知物の場合でも、減算過程504では正の値の、除算過程505では1以上の値の領域を得る。
なぜならば、式12または式13において、除されるO_i(r_i)と除すR_i(r_i)・OR_i、または除されるO_i(r_i)/OR_iと除すR_i(r_i)の積分値が一致している。
また式14または15において、分子に含まれるO_i(r_i)と分母に含まれるR_i(r_i)・OR_i、または分子に含まれるO_i(r_i)/OR_iと分母に含まれるR_i(r_i)の積分値が一致している。
さらに、積分値が一致しかつ分布形状が異なる2つの強度分布の減算や除算においては、正の値や1以上の値が現れるからである。
但し、被検知強度と参照強度の強度分布形状が同じになるのは、例えば被検知物103の密度や化学組成が一様の板状物体である場合であり、このような場合には被検知物103によるX線の屈折は、その端にX線が入射したときに限られる。
被検知物103の端で生じるX線の屈折については、被検知物103による吸収が大きい場合においても本発明により測定できる。
また、被検知物103の内部構造が一様であれば、そもそもX線の屈折は生じない。
この場合には、例えば、被検知物103を位置調整手段109により移動することで、被検知物103の関心のある位置にX線が入射されるようにする。
ここでの被検知物の走査位置をj、またh番目のX線が被検知物の関心位置に入射していたとする。
ここで、j、hは特定の値である。したがって、R_h,k(r_h)=O_h,j(r_h)となる。よって被検知物の走査をh番目のX線に対して行い、多数の走査位置kに関する被検知強度O_h,k(r_h)の測定を行えば、関心強度を参照強度とした位相コントラスト像の取得を行える。
強度分布の重心を求める方法や、強度分布を適当なピーク形状を持つ関数によりフィッティングする方法などを用いればよい。
本発明による減除部501、抽出部502を経た強度分布を用いれば、いかなる位置決定法によっても効果的に屈折X線の位置変化量を評価することができ、従来法に比べ高感度に被検知物によるX線の位相変化を捉えることができる。
画像化部503によって算出される位置変化量や、位置変化量から式1、2により変換される屈折量、位相変化量を、被検知物103の位置に対する分布を求めれば、位相コントラスト像を表示手段106へ出力できる。また抽出部502より出力される強度分布の積分値の、被検知物103の位置に対する分布を求めることで、位相コントラスト像を得ても良い。
この場合にも、抽出部502より出力される強度分布は屈折X線によるため、被検知物103によるX線の位相変化に基づいた位相コントラスト像となる。
[実施例1]
実施例1として、演算手段105の、減除部501および抽出部502において、減算過程504および減算抽出過程506を用いた構成例について示す。
X線発生手段101には、X線ターゲットがMoである回転対陰極型のX線発生装置を用いた。X線光源のサイズは100μmである。
分割手段102には開口部のx軸、y軸方向の幅が100μm、2.0mmであるW製のスリットを用いた。検出手段104は、X線蛍光体を用いた間接変換型2次元検出器であり、その画素サイズは5.9μmである。被検知物103はポリスチレン製の直径が1.0mmである球を用いた。X線発生手段101から被検知物103までの距離は1m、被検知物103から検出手段104までの距離は50cm、分割手段102と被検知物103の距離は3cmである。
また、X線調整手段108としてNb製の金属フィルタを用いることで、Moの特性X線(17.4keV)のエネルギーを持つX線が被検知物103に照射されるようにした。
図8(b)では、図8(a)に点線で囲った矩形領域について、y軸方向に3画素分の強度を平均し、x軸方向の強度分布として示した。
本実施例におけるX線は平行光でないため、検出器で得られる強度分布は、装置(X線光源、スリット、検出器)の幾何学的配置より決まる拡大率程度に拡大される。
本実施例での拡大率は1.5倍程度であるが、図8(b)に見る強度分布の半値幅は、スリットのx軸方向の開口幅に拡大率をかけた150μm程度になっている。また検出器で取得されるX線のy軸方向の強度分布の半値幅は、スリットのy軸方向の開口幅の1.5倍程度の3mmであった。
よって、この幅が被検知物103の直径よりも十分に大きいため、被検知物103をx軸方向に走査することで、y軸方向へ走査することなく、被検知物103全体の被検知強度を得ることができる。
x軸方向の被検知物103の走査位置の移動幅は10μmとした。被検知物103のy軸方向の位置変化による強度分布は、図8(a)に示すようなX線の強度分布を、点線で囲った矩形領域の位置をy軸方向に変え、X線の投影像を分割することで取得した。
このように本実施例で得られる被検知強度や参照強度はx軸方向の強度分布を持つため、演算手段105によって得るX線の位置変化の方位はx軸方向である。
このオフセット強度も誤差を含むため、減算や除算などの演算において誤差が伝播し、演算結果に乱れた強度分布を与える。
この乱れた強度分布はX線の位置決定の精度を下げる。そこで本実施例における図8(b)や以降の図9(a)で示す強度分布では、検出器におけるオフセット強度を以下のように差し引いている。
つまり、演算手段105において被検知強度や参照強度として利用する強度分布S(r)は、検出器で測定される強度分布をD(r)とし、
検出器のオフセット強度分布Ofs(r)の平均値と標準偏差をAv、Sdとすると、S(r)=Dr(r)−(Av+3Sd)とした。
これはOfs(r)について、そのノイズ成分と考えうるOfs(r)−Avの値が零を中心とした正規分布に従ったためである。
このような検出器で取得する強度分布へのノイズ処理や、各演算でのノイズ処理は、用いる検出器や演算方法などにより適宜行うとよい。
また、光源が有限のサイズを持つことなどによる、幾何学的不鋭の効果によって、強度分布形状の先鋭度を下げている
但し、これらは、非常に妥当な結果である。
図9(a)の被検知強度について、演算部105における減算過程504のうち、式12による演算を行った結果を図9(b)に示す。
この強度分布における正の値の領域が、屈折X線によるものである。他の被検知物103の位置を透過するX線についても同様に、減算過程504および減算抽出過程506を経た減算抽出強度分布を用いて、画像化部503においてX線の位置を強度分布の重心により算出し、被検知物103に対するX線の変化量の分布を求めた。
図10(a),(b)の比較により、本発明による結果の方が、位置変化量を10倍程度大きく捉えていることが分かる。
それぞれの結果について、被検知物103を透過しないX線から求めた位置変化量の標準偏差をノイズとし、図10の位置変化量の最大値と最小値の差分をシグナルとしてS/N比を比較したところ、本発明による結果の方が2倍程度の大きいS/N比を示した。
したがって、本発明における演算手段105を用いることで、従来法よりも高感度に被検知物103によるX線の位置変化量を取得できることがわかった。
Δr_max=L・tan(2√(2δ)) 式17
この式17より、Δr_maxは被検知物103の形状によらず決定できることが分かる。
したがって、分割手段102においては、分割されるX線の検出手段104における投影像が、Δr_maxの2倍程度離れるように、X線を分割するようにすればよい。
このようにX線撮像装置を構成することは、例えば被検知物が正方形のように多面の外形や内部構造をもつ場合に適している。ただし一般的な被検知物では、様々の曲率をもった外形または内部構造をもつため、このΔr_maxを満たすようにX線を屈折できる部位は非常に小さく、その屈折X線の強度は微弱であり検出できないことが多い。
よって被検知物の構造が特殊な場合を除き、X線の投影像がΔr_maxの2倍程度以上離れるようにX線を分割しなくてよい。
実施例2として、実施例1で取得された被検知強度と参照強度について、演算手段105のうち、除算過程505により演算した例について説明する。
被検知物103の端にX線が入射した場合の被検知強度(図9(a))を用いて、図11に除算過程505のうち、式14に基づいた演算結果を示す。
図11(a)と(b)についてmは1と300とした。
図11(a)では、図8(b)や図9(a)において弱い強度が測定される、横軸にして±125μm付近の画素位置に関し、除算により誤差が大きく伝播し乱れた強度分布を示している。
図11(b)では、mを大きくしたことにより、そのような強度分布の乱れが小さくなる。図11(b)の結果からは、良好な位相コントラスト像を得ることができる。
S/N比の小さい強度分布については、重心法によるX線位置の演算ではなく、適当なピーク形状を持たせる関数やスプライン関数により強度分布をフィッティングし位置を求めるか、フィッティング結果に対し重心法などによるX線位置の演算を行うとよい。
実施例3として、実施例1において取得した減算抽出強度分布について、画像化部503においてその積分値の被検知物に関する分布を演算した例について説明する。
図10と同様に、図12は被検知物103のy軸方向の中心付近を透過したX線によるx軸方向の分布である。
本実施例では、X線の位置を求めるのではなく、屈折X線の強度分布の積分を行ったために、図12では被検知物103の両端において正の値をとるピークが見られる。
一方で、従来法によって被検知情報の積分値の分布を求めると、このような正のピークは観測されず、単にX線透過像が得られる。
このため、特に吸収率の低い被検知物では、図12のように高い視認性を持った像は得られない。
実施例4として、実施例1で示したX線撮像装置のうち、分割手段102に開口部の形状が円形でその直径が100μmであるW製のピンホールを用いた例について説明する。
分割されたX線の1つについて、検出手段104であるところの二次元検出器1301で検出されるX線の投影像の概略図を、図13に示す。
破線で囲う円は被検知物103がない場合のX線の投影像1302であり、実線で囲う円は被検知物103により屈折したX線の投影像1303である。
図13の各格子は二次元検出器1301の画素を示す。被検知物103がない場合のX線を図13のように、x、y軸方法それぞれに2つ以上の画素をもって検出することで、二次元的なX線の位置変化を画素サイズ以下の精度により取得することができる。
また、X線の位置変化を2次元的に求める場合には、X線の断面形状であるところの、検出器1301において検出されるX線投影像が図13のように点対称に近い方が、x、y軸方向のX線位置の決定精度を同程度にできる。
演算手段105においては、X線の位置変化量を求めるために、参照強度によるX線の位置Xr_i0および屈折X線の位置Xr_i1を演算している。
これらは検出器面上の位置であり、Xr_i0およびXr_i1にxy座標を与え、Xr_i0=(x_i0,y_i0)、Xr_i1=(x_i1,y_i1)とすると、X線の位置変化ベクトル1304(Xv_i)は、つぎの式18で表される。
Xv_i=(x_i1−x_i0,y_i1−y_i0) 式18
したがって、このベクトルの方位がX線の位置変化方位となる。
例えば、図13のように位置変化方位の基準をx軸方向にとる場合、位置変化方位角1305(ψ)は、つぎの式19のように表すことができる。
ψ=arccos[(x_i1−x_i0)/√{(x_i1−x_i0)^2+(y_i1−y_i0)^2}] 式19
ここで、arccosは逆余弦関数を示す。
また、式18で示されるベクトルの大きさがX線の位置変化量Δrである。
本実施例のようにX線の位置変化だけでなく位置変化方位を求めれば、例えば位相変化量だけでなく位相変化方向も得られ、被検知物103の描像をより詳細に得ることができる。
102:分割手段
103:被検知物
104:検出手段
105:演算手段
106:表示手段
107:分割されたX線の光路(点線は被測定物103がない場合)
108:X線調整手段
109:位置調整手段
501:減除部
502:抽出部
503:画像化部
504:減算過程
505:除算過程
506:減算抽出過程
507:除算抽出過程
Claims (6)
- X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子と、
前記分割素子により分割され、被検知物を透過したX線の強度を検出する検出手段と、
前記検出手段によって得られた強度分布から、前記被検知物の位相コントラスト像を取得する演算手段と、
を備えたX線撮像装置であって、
前記演算手段は、
前記検出手段により取得された前記被検知物の各位置を透過するX線の強度分布の値を被検知強度とし、前記被検知物がない場合のX線の強度分布の値を参照強度とすることにより、
前記被検知物の各位置を透過するX線の強度分布の値から、前記参照強度の値を減算または除算することによって屈折X線の強度分布の値を演算する減除部と、
前記減除部での減算または除算により演算された前記屈折X線の強度分布の値を、前記屈折X線、吸収X線、および無応答X線が足し合わされた合成X線の強度分布の値から抽出する抽出部と、
を有することを特徴とするX線撮像装置。 - 前記抽出部は、
前記減除部での減算により演算された正の値を有する領域の強度分布の値を抽出し、
または、前記減除部での除算により演算された1以上の値を有する領域の強度分布の値を抽出する抽出部であることを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。 - 前記演算手段は、
前記検出手段によって得られた前記被検知物の各位置を透過したX線の強度分布の値から、前記参照強度に重み付けを行った値を減算または除算することによって、前記屈折X線の強度分布の値を演算し、
または、前記被検知物の各位置を透過したX線の強度分布に重み付けを行った値から、前記参照強度を減算または除算することによって、前記屈折X線の強度分布の値を演算することを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。 - X線発生手段から発生したX線を空間的に分割し、該分割されて被検知物を透過したX線の強度を検出手段によって検出し、該検出によって得られた強度分布から、前記被検知物の位相コントラスト像を取得するX線撮像方法であって、
前記検出手段により取得された前記被検知物の各位置を透過するX線の強度分布の値を被検知強度とし、前記被検知物がない場合のX線の強度分布の値を参照強度とすることにより、
前記被検知物の各位置を透過するX線の強度分布の値から、前記参照強度の値を減算または除算することによって屈折X線の強度分布の値を演算し、
前記減算または除算により演算された前記屈折X線の強度分布の値を、前記屈折X線、吸収X線、および無応答X線が足し合わされた合成X線の強度分布の値から抽出することを特徴とするX線撮像方法。 - 前記減算により演算された正の値を有する領域の強度分布の値を抽出し、
または、前記除算により演算された1以上の値を有する領域の強度分布の値を抽出することを特徴とする請求項4に記載のX線撮像方法。 - 前記検出手段によって得られた前記被検知物の各位置を透過したX線の強度分布の値から、前記参照強度に重み付けを行った値を減算または除算することにより、前記屈折X線の強度分布の値を演算し、
または、前記被検知物の各位置を透過したX線の強度分布に重み付けを行った値から、前記参照強度を減算または除算することにより、前記屈折X線の強度分布の値を演算することを特徴とする請求項5に記載のX線撮像方法。
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