JP2012036076A - 複層ガラス及びこれを用いた窓サッシ - Google Patents

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Abstract

【課題】 複層ガラスを、可視光線と近赤外線を透過し、中乃至遠赤外線を反射する選択透過反射膜を用いたものとする。
【解決手段】 透明フィルムに酸化亜鉛系のZnO:Al又はZnO:Ga透明金属薄膜を成膜した成膜フィルム1を複層ガラス2の透明ガラス21間に配置する。薄膜は、好ましくは300乃至700、特に好ましくは300乃至500とすることによって、選択的に近赤外線領域の波長(波長0.7乃至2.5μm)を透過し、中乃至遠赤外線領域の波長(波長2.5乃至4μm)、遠赤外線(波長4乃至1,000μm)を反射する選択透過反射機能を発揮して、建物等の開口部に用いて従来のサッシに比して10乃至20%以上の暖冷房負荷を減少して省エネルギーを実現できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、近赤外線を透過する一方、中乃至遠赤外線を反射するように開口部に用いる複層ガラス及びこれを用いた窓サッシに関する。
例えば、建造物の高気密化に伴って、その開口部に断熱性能、防音性能を備えた複層ガラスを用いた窓サッシを使用することが一般化しているが、このとき複層ガラスは、太陽光の可視光線を透過するとともに赤外線(熱線)を反射乃至吸収するようにしたものとすることが求められ、例えば、下記特許文献1は、熱線反射ガラスとして、ガラス表面に酸化インジウムと酸化錫の混合酸化物(以下ITOという)又は窒化アルミニウム、銀又は銅並びに金属亜鉛の各薄膜層を順次交互に繰返し積層し、4層以上の多層膜を形成したものを提案し、特許文献2は、近赤外線反射ガラスとして、電波の通過を可能とするように、板ガラスにTiO2、Nb2O5,Ta2O2、SiO2、Al2O2、ZrO2、MgF2等の透明誘電体を積層した近赤外線反射膜を形成し、可視光透過率を70%以上、波長900nmから1400nmの波長領域で反射の極大値を50%を超えるようにしたものを提案し、特許文献3は、熱線、遠赤外線反射ガラスとして、酸化インジウムを含有したガラスに、遠赤外線反射材をコーティングするか、透明電導膜のフィルムを積層して、近赤外線を吸収し、中遠赤外線を反射するようにしたものを提案している。
特開平2−160641号公報 特開2007−145689号公報 特開2008−308402号公報
これらは、日射の可視光線を透過しつつ、日射の赤外線を反射乃至吸収することによって、室内居住性を確保しながら、夏場の室内冷房負荷を減少することを可能として省エネルギーに大きく寄与するものということができる。
しかし乍ら、この場合、日射に含まれる赤外線を幅広く反射乃至吸収するものとされるから、夏場の省エネルギーには極めて有効である一方、日射の赤外線を取り入れることが好ましい冬場にあっても、夏場と同様に赤外線を反射乃至吸収するために、冬場の室内暖房負荷の減少には寄与することができないという問題点がある。
即ち、日射の赤外線は、その波長領域によって近赤外線(可視光線に近い波長0.7乃至2.5μm)、中赤外線(波長2.5乃至4μm)、遠赤外線(波長4乃至1,000μm)に概ね区分されるところ、赤外線のうち中乃至遠赤外線(波長4乃至1,000μm)を反射乃至吸収するとともに上記近赤外線を透過するものとすれば、夏場に上記室内冷房負荷の減少を然程なし得ないものの、太陽位置の低い冬場には、日射の近赤外線を積極的に取り入れることによってその室内暖房負荷の減少を行うことが可能となり、従って、年間冷暖房負荷の減少を行うものとすることができる。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、可視光線を含む近赤外線を透過するとともに中乃至遠赤外線を反射することによって、日射の可視光線透過による冬場の室内居住性の確保と年間冷暖房負荷の減少により更に省エネルギーを実現し得るようにした複層ガラスを提供するにあり、また、該複層ガラスを用いた窓サッシを提供するにある。
上記課題に沿って鋭意研究した結果、酸化亜鉛系の透明金属薄膜を透明フィルムに成膜することによって、該透明金属薄膜を、日射透過率を可及的に高く、修正放射率を可及的に低くするようにして、日射の可視光線を含めて近赤外線を透過し且つ中乃至遠赤外線を反射する選択的な透過反射機能を発揮する選択透過反射膜として、該透明金属薄膜を成膜した成膜フィルムを複層ガラスに用いることによって、日射の近赤外線透過による冬場の室内居住性の確保と年間冷暖房負荷の減少による高度な省エネルギー性を実現することが可能になるとの知見を得て本発明をなすに至ったものであって、即ち、請求項1に記載の発明を、透明フィルムに酸化亜鉛系の透明金属薄膜を成膜することによって近赤外線を透過し且つ中乃至遠赤外線を反射する選択透過反射膜を有する成膜フィルムを用いてなることを特徴とする複層ガラスとしたものである。
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、成膜フィルムの可及的に高い日射透過率と、可及的に低い修正透過率を有することによって、該成膜フィルムによる省エネルギー性を可及的高度に発揮し得るものとするように、これを、上記成膜フィルムを、日射透過率65%以上、修正放射率0.4以下としてなることを特徴とする請求項1に記載の複層ガラスとしたものである。
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記成膜フィルムにおける上記透明金属薄膜を透明フィルムの両面に成膜することによって、上記選択的な透過反射機能を発揮するに際して、複層ガラスとしての断熱性を向上して更に高度な省エネルギー性を確保したものとするように、これを、上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜の成膜を、透明フィルムの両面に行なってなることを特徴とする請求項1又は2に記載の複層ガラスとしたものである。
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、亜鉛にアルミニウムをドーバントしたものとすることによって、上記選択的な透過反射機能を可及的高度に発揮し得るものとするように、これを、上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、ZnO:Alの薄膜としてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の複層ガラスとしたものである。
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、亜鉛にガリウムをドーバントしたものとすることによって、上記選択的な透過反射機能を可及的高度に発揮し得るものとするように、これを、上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、ZnO:Gaの薄膜としてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の複層ガラスとしたものである。
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、酸化亜鉛系の透明金属薄膜の膜厚を、上記選択的な透過反射機能を可及的高度に発揮するに適したものとするように、これを、上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、200nm乃至1,000nmの膜厚としてなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の複層ガラスとしたものである。
請求項7に記載の発明は、同じく上記に加えて、酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、上記選択的な透過反射機能を更に高度に安定して発揮し得る膜厚のものとするように、これを、上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、300nm乃至700nmの膜厚としてなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の複層ガラス。
請求項8に記載の発明は、上記複層ガラスを用いることによって可及的高度な省エネルギー性を発揮し得る窓サッシを提供するように、これを、請求項1乃至7のいずれかの複層ガラスを用いて形成してなることを特徴とする窓サッシとしたものである。
請求項9に記載の発明は、上記に加えて、例えば高断熱Low−Eガラスとの対比において年間の冷暖房負荷を札幌市において20%程度、東京都において10%程度乃至それ以上減少して、高度な省エネルギー性を呈する窓サッシとし得るように、これを、日本建築学会住宅用標準問題[1]の住宅モデルによる暖冷房負荷算出による年間暖冷房負荷を札幌市において30,000乃至31,000MJ程度、東京都において9,000乃至9,500MJ程度の範囲としてなることを特徴とする請求項8に記載の窓サッシとしたものである。
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
本発明は以上のとおりに構成したから、酸化亜鉛系の透明金属薄膜を透明フィルムに成膜することによって、該透明金属薄膜を、日射透過率を可及的に高く、修正放射率を可及的に低くするようにして、日射の可視光線を含めて近赤外線を透過し且つ中乃至遠赤外線を反射する選択的な透過反射機能を発揮する選択透過反射膜とし、該透明金属薄膜を成膜した成膜フィルムを複層ガラスに用いることによって、日射の近赤外線透過による冬場の室内居住性の確保と年間冷暖房負荷の減少による高度な省エネルギー性を実現し得るようにした複層ガラスを提供することができる。
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、成膜フィルムの可及的に高い日射透過率と、可及的に低い修正透過率を有することによって、該成膜フィルムによる省エネルギー性を可及的高度に発揮し得るものとすることができる。
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記成膜フィルムにおける上記透明金属薄膜を透明フィルムの両面に成膜することによって、上記選択的な透過反射機能を発揮するに際して、複層ガラスとしての断熱性を向上して更に高度な省エネルギー性を確保したものとすることができる。
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、亜鉛にアルミニウムをドーバントしたものとすることによって、上記選択的な透過反射機能を可及的高度に発揮し得るものとすることができる。
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、亜鉛にガリウムをドーバントしたものとすることによって、上記選択的な透過反射機能を可及的高度に発揮し得るものとすることができる。
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、酸化亜鉛系の透明金属薄膜の膜厚を、上記選択的な透過反射機能を可及的高度に発揮するに適したものとすることができる。
請求項7に記載の発明は、同じく上記に加えて、酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、上記選択的な透過反射機能を更に高度に安定して発揮し得る膜厚のものとすることができる。
請求項8に記載の発明は、上記複層ガラスを用いることによって可及的高度な省エネルギー性を発揮し得る窓サッシを提供することができる。
請求項9に記載の発明は、上記に加えて、例えば高断熱Low−Eガラスとの対比において年間の冷暖房負荷を札幌市において20%程度、東京都において10%程度乃至それ以上減少して、高度な省エネルギー性を呈する窓サッシとすることができる。
複層ガラスのモデルを示す断面図である。 透明金属薄膜の種類による近赤外線領域の透過率分光チャートである。 透明金属薄膜の種類による近赤外線領域の反射率分光チャートである。 透明金属薄膜の種類による近赤外線領域の吸収率分光チャートである。 透明金属薄膜の種類による中乃至遠赤外線領域の反射率分光チャートである。 図5の部分拡大分光チャートである。 ZnO:Ga膜厚変化による近赤外線領域の透過率分光チャートである。 ZnO:Ga膜厚変化による近赤外線領域の反射率分光チャートである。 ZnO:Ga膜厚変化による近赤外線領域の吸収率分光チャートである。 ZnO:Ga膜厚変化による中乃至遠赤外線領域の反射率分光チャートである。 図10の部分拡大分光チャートである。 ZnO:Al膜厚変化による近赤外線領域の透過率分光チャートである。 ZnO:Al膜厚変化による近赤外線領域の反射率分光チャートである。 ZnO:AL膜厚変化による近赤外線領域の吸収率分光チャートである。 ZnO:Al膜厚変化による中乃至遠赤外線領域の反射率分光チャートである。 図15の部分拡大分光チャートである。 ZnO:Alの薄膜の膜厚と日射透過率及び修正放射率の関係を示すグラフである。 ZnO:Gaの薄膜の膜厚と日射透過率及び修正放射率の関係を示すグラフである。 札幌市におけるZnO:Al薄膜の複層ガラスとトリプル構造の既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 札幌市におけるZnO:Al薄膜の複層ガラスとアルゴンガス充填のペアガラスの既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 札幌市におけるZnO:Al薄膜の複層ガラスとアルゴンガス充填のペアガラスの既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 札幌市におけるZnO:Ga薄膜の複層ガラスとトリプル構造の既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 札幌市におけるZnO:Ga薄膜の複層ガラスとアルゴンガス充填のペアガラスの既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 札幌市におけるZnO:Ga薄膜の複層ガラスとアルゴンガス充填のペアガラスの既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 東京都におけるZnO:Al薄膜の複層ガラスとトリプル構造の既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 東京都におけるZnO:Al薄膜の複層ガラスとアルゴンガス充填のペアガラスの既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 東京都におけるZnO:Al薄膜の複層ガラスとアルゴンガス充填のペアガラスの既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 東京都におけるZnO:Ga薄膜の複層ガラスとトリプル構造の既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 札幌市におけるZnO:Ga薄膜の複層ガラスとアルゴンガス充填のペアガラスの既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。 札幌市におけるZnO:Ga薄膜の複層ガラスとアルゴンガス充填のペアガラスの既存サッシとの暖冷房負荷と減少率を示すグラフである。
以下本発明を更に具体的に説明すれば、図中1は成膜フィルム、2は該成膜フィルム1を用いて形成した複層ガラスであり、上記成膜フィルム1は、透明フィルム11に酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、例えば両面に成膜することによって近赤外線を透過し且つ中乃至遠赤外線を反射する選択透過反射膜12を成膜したものとしてあり、該成膜フィルム1を用いた複層ガラス2は、室内外一対の透明ガラス21間の室内外中間位置、本例にあっては中央位置に成膜フィルム1を配置してある。
本例にあって該複層ガラス2は、室内外一対の透明ガラス21を、該透明ガラス21間に、内部に乾燥剤を収容した一対のスペーサー22を介設し、該一対のスペーサー22間に成膜フィルム1の外周端部を挟持して該成膜フィルム1を透明ガラス21間の中央位置に配置したものとしてあり、このとき該複層ガラス2の内部空間には、該空間を断熱空間とするように、例えばアルゴンガスを充填してある。
透明フィルム11は、上記成膜フィルム1の成膜ベースをなすことによって日射透過を可及的に確保し且つ耐候性を可及的に確保するように、例えばポリエステル系、ナイロン系の薄肉透明フィルムを用いてあり、本例の該透明フィルム1は、これを、PET(ポリエチレンテレフタレート)によるものとしてある。
該透明フィルム11の肉厚は、これを、例えば10μm乃至250μm程度とすることができるが、肉厚を薄くすれば選択透過反射膜12としてのフィルム強度が降下してその耐久性の確保が不充分になり、上記複層ガラスに設置するに際して破損等のトラブルを生じる傾向を招き易く、また、肉厚を厚くすれば可視光線の透過率を降下する傾向を招き易いから、該フィルム強度及び可視光線の透過率を考慮すると、該肉厚は、これを50μm乃至100μm程度とするのが好ましく、本例にあって該透明フィルム11、即ち、PETの肉厚は、これをフィルム強度と可視光線の透過率を維持するに適した、例えば50μmのものとしてある。
該透明フィルム11の選択透過反射膜12は、その酸化亜鉛系の透明金属を、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレイティング等の物理的蒸着(PVD)や化学蒸着(CVD)の適宜な薄膜形成手段を用いることによって、透明フィルム11の表面に透明金属薄膜をなすようにその成膜を行ってあり、このとき本例の選択透過反射膜12における透明金属薄膜の成膜は、これを、透明フィルム1の両面に行なったものとしてある。
即ち、該選択透過反射膜12を透明フィルム11の片面に成膜したものとすると、両面に成膜したものと比して、その熱貫流率が2割程度降下する傾向を招くから、該選択透過反射膜12は、これを両面に成膜することによって修正放射率を低下し、可及的高度な熱貫流率を確保することが好ましい。
酸化亜鉛系の透明金属薄膜は、これを、ZnO:Alの薄膜とし、また、ZnO:Gaの薄膜とすることによって、上記選択透過反射膜12として、日射の可視光線と近赤外線を透過し且つ中乃至遠赤外線を反射する選択的な透過反射機能を可及的高度に発揮するものとすることができる。このとき、後述のように、ZnO:Alの薄膜とZnO:Gaの薄膜では、日射透過率において前者が相対的に高く、修正放射率において後者が相対的に低い傾向を示すところ、複層ガラス2として用いる選択透過反射膜12としては、日射透過率の高い方のZnO:Alの薄膜とすることが好ましい。即ち、修正放射率をより低くする手段がなくても、コスト上の問題は保留した中で、ガラス総厚を厚くしてガラス内部の空気層の厚みを厚くする事によって、結果的に断熱性(熱貫流率)が改善されるので、このような代替手段がある一方、日射透過率は、これを高くするための代替手段はなく、従って該透過率がそのまま固定化し、冬場における暖房負荷の増加を防止することができない結果となるため、選択透過反射膜として日射透過率の高いZnO:Alの薄膜を用いるのが好ましいからである。
酸化亜鉛系の透明金属薄膜は、以下に示すように、これを、200nm乃至1,000nmの膜厚とするのが、可視光透過率を降下することなく、上記日射の選択透過反射機能を可及的高度に発揮するものとする上で有効であり、このとき、300nm乃至700nmとするのが好ましく、更には300nm乃至500nmとするのが、特に好ましい。即ち、後述のように透明金属薄膜としてZnO:Al及びZnO:Ga薄膜は該300nm乃至500nmの膜厚で可及的有効な暖冷房負荷の減少効果を発揮することができる上、実用的な選択透過反射膜として上記薄膜形成手段による生産性を確保しつつ且つ耐久性を確保したものとすることができるからである。
酸化亜鉛系の透明金属薄膜としてZnO:Al薄膜及びZnO:Ga薄膜の選択的な透過反射機能を、ITO薄膜との対比で見ると、図2乃至図6の分光チャートに示すとおりである。図2乃至図4は、波長0.3μm乃至2.1μmの近赤外線領域におけるこれら各薄膜の透過率、反射率、吸収率をそれぞれ示したチャート、図5は、図2の波長5乃至50μmの中乃至遠赤外線領域の拡大チャート、図6は、更にその波長5乃至25nmの領域部分の拡大チャートである。
ZnO:Al及びZnO:Gaの薄膜は、厚さ50μmのPETの片面に亜鉛とガリウムの薄膜(膜厚500nm)及び亜鉛とアルミニウムの酸化物の薄膜(膜厚500nm)を肉厚0.7mmのガラスの片面に成膜したガラス、ITOは、同じく厚さ50μmのPETの片面に酸化インジウムとスズの酸化物の薄膜(膜厚150nm)を同様に成膜したガラスを示す。
図2によれば、日射の透過率は、ITO薄膜において波長0.5μm付近から波長が長くなるにつれて緩やかに降下するが、ZnO:Al薄膜においては波長1.0μm付近から波長が長くなるにつれて急激に降下し、ZnO:Ga薄膜においては波長0.7μm付近から同じく急激に降下する。図3によれば、反射率は、ITO薄膜において波長0.7μm付近から波長が長くなるにつれて上昇するが、ZnO:Al薄膜においては波長1.5μm付近から同じく急激に上昇し、ZnO:Ga薄膜においては波長1.2μm付近から同じく急激に上昇する。
図4によれば、ITO薄膜において波長0.5μm付近から波長が長くなっても変化は見られないが、ZnO:Al薄膜においては波長0.9μm付近から波長1.6μm付近を0.5強のピークとするように急上昇し、その後急降下し、ZnO:Ga薄膜においては波長0.7μm付近から波長1.2μm付近を0.7のピークとするように急上昇し、その後急降下する。
図5及び図6によれば、波長2.5μm以上の中乃至遠赤外線領域の反射率は、ITO薄膜が概ね0.6程度であるが、ZnO:Al薄膜、ZnO:Ga薄膜はいずれも0.8を超え、0.85乃至0.9を示す。
以上の分光チャートの結果を、日射透過率及び修正放射率として示すと、ITO薄膜(150nm)の日射透過率は79.1%、修正放射率は0.410であるのに対して、ZnO:Al薄膜(500nm)の日射透過率は73.6%、修正放射率は0.200、ZnO:Ga薄膜(500nm)の日射透過率は66.2%、修正放射率は0.146である。
即ち、ZnO:Al薄膜、ZnO:Ga薄膜を、ITO薄膜との対比で見ると、ZnO:Al薄膜、ZnO:Ga薄膜は、近赤外線領域の日射透過率においてITO薄膜に多少及ばない傾向を示すことがあるも、近赤外線領域の日射を有効に透過するとともに中乃至遠赤外線領域の日射を有効に反射することによって、ITO薄膜に対して好ましい選択透過機能を呈する事実が判明する。
更に上記それぞれ膜厚500nmとしたZnO:Al薄膜、ZnO:Ga薄膜の膜厚を500nm乃至3,000nmに変化したときのそれぞれ透過率、反射率、吸収率を見るに、図7乃至図11はZnO:Al薄膜変化の、図12乃至図16はZnO:Ga薄膜の膜厚変化の分光チャートである。
図7乃至図11のZnO:Al薄膜について、図7は近赤外線領域における0.3μmから2.1μmの透過率、図8はその反射率、図9はその吸収率の各分光チャート、図10は5乃至50μmの中乃至遠赤外線領域の反射率、図11は、更にこのうち波長5乃至25μmの領域の反射率の各分光チャートである。サンプルは、同じく肉厚0.7mmのガラスの片面にZnO:Al薄膜を500nm、1,000nm、2,000nm、3,000nmに成膜したものを用いた。
図7によれば、ZnO:Al薄膜の日射の透過率は、いずれも短波長側でピークを示した後にそれぞれ降下するが、膜厚500nmの場合、波長0.5μmから0.9μm付近のピーク0.8を超えた後に波長2.1μm付近にかけて緩やかに降下し、膜厚1,000nmの場合、波長0.5μmから0.8付近のピーク0.8強から波長1.7μm付近にかけて比較的緩やかに降下する。一方、膜厚2,000nmの場合、波長0.5μmから0.6μm付近のピーク0.8弱から波長1.5μm付近にかけて比較的急激に降下し、膜厚3,000nmの場合、同じく波長0.5μmから0.6μm付近のピーク0.8μm弱から波長1.3μm付近にかけて急激に降下する。
図8によれば、該ZnO:Al薄膜の日射の反射率は、いずれの膜厚のものも、波長0.3μm付近の0.2強乃至0.2弱から波長1.5μm付近の略0にかけて極めて緩やかに降下するが、波長1.5μmを越えると急激に上昇する。
図9によれば、該ZnO:Al薄膜の吸収率は、いずれも短波長側で最低を示した後にそれぞれ上昇するが、膜厚500nmの場合、波長0.5μmから0.6μm付近の0.1弱から波長1.7μm付近の0.6強にかけて上昇した後降下し、膜厚1,000nmの場合、同じく波長0.5μmから0.7付近の0.1弱から波長1.7μmの0.9強にかけて上昇した後降下する。一方、膜厚2,000nm及び3,000nmの場合、波長0.5μm付近の0.1乃至0.1弱から波長1.4乃至1.5μm付近にかけて上昇した後降下する。
図10及び図11によれば、ZnO:Al薄膜の中乃至遠赤外線における反射率は、膜厚500nmが波長0.7μm近辺の0.8弱からやや上昇し、25μm以降は0.9弱で略水平となり、また膜厚1,000nm、2,000nm、3,000nmは波長0.7μm近辺の0.8乃至0.8弱から重なるようにやや上昇し、同様に25μm以降は0.9強乃至0.9弱で略水平となる。
これを、日射透過率及び修正放射率で示すと、膜厚500nmの日射透過率は72.2%、修正放射率は0.20、膜厚1,000nmで日射透過率は63.6%、修正放射率は0.186、膜厚2,000nmの日射透過率は53.7%、修正放射率は0.174、膜厚3,000nmで日射透過率は46.9%、修正放射率は0.183である。
一方、図12乃至図14は、ZnO:Ga薄膜の膜厚を変化したときの、波長0.3μm乃至2.1μmの近赤外線領域におけるそれぞれ透過率、反射率及び吸収率の分光チャート、図15は波長5乃至50μmの中乃至遠赤外線領域の反射率の分光チャート、図16は、このうち5乃至25nmの領域を拡大した反射率の各分光チャートである。同じく肉厚0.7mmのガラスの片面にZnO:Al薄膜を500nm、1,000nm、2,000nm、3,000nmに成膜したものをサンプルとして用いた。
図12によれば、ZnO:Ga薄膜の日射の透過率は、いずれも短波長側でピークを示した後にそれぞれ降下するが、膜厚50nmの場合、波長0.9μm付近のピーク0.8乃至0.9を超えた後に波長2.1μm付近にかけて緩やかに降下し、膜厚100nm、150nm及び200nmの場合も傾斜の角度がやや急になるが略同様の傾向を示す一方、500nm及び1,000nmの場合、上記ピークから波長1.9、1.5μm付近に向けた傾斜が急激になる傾向を示す。
図13によれば、該ZnO:Ga薄膜の日射の反射率は、いずれの膜厚のものも、波長0.3μm付近の0.2強乃至0.2弱から波長1.1乃至1.3μm付近の略0にかけて極めて緩やかに降下するが、波長1.1乃至1.3μmを超えると、膜厚50nm、100nmのものは僅かに上昇傾向を示すが、膜厚150nm、200nmのものは緩やかに上昇する一方、膜厚500nm、1,000nmのものは略同様に急激に上昇する傾向を示す。
図14によれば、該ZnO:Ga薄膜の吸収率は、いずれも短波長側で最低を示した後にそれぞれ上昇して波長1.3乃至1.5付近でピークを示し、その後降下するが、膜厚50nm、100nm、200nmはその上昇が緩やかである一方、膜厚500nmのものは波長1.4μm付近で0.7弱、膜厚1,000nmのものは0.9強のピークを示した後に降下する。
図15及び図16によれば、ZnO:Ga薄膜の中乃至遠赤外線における反射率は、膜厚50nm、100nm、150nm、200nm、500nm、1,000nmの順に高くなり、500nm及び1,000nmのものは0.9弱から0.9程度である。
これを、日射透過率及び修正放射率で示すと、膜厚50nmの日射透過率は85.7%、修正放射率は0.66、膜厚100nmで日射透過率は82.7%、修正放射率は0.50、膜厚150nmの日射透過率は80.2%、修正放射率は0.31、膜厚200nmで日射透過率は77.3%、修正放射率は0.263、膜厚500nmで日射透過率は66.2%、修正放射率は0.146、膜厚1,000nmで日射透過率は56.5%、修正放射率は0.15である。
以上の分光チャートの結果から、ZnO:Al薄膜及びZnO:Ga薄膜は、いずれも近赤外線領域の日射透過に優れるとともに中乃至遠赤外線領域の日射反射に優れて、日射透過率及び修正放射率の双方を並存して有効な選択的な選択透過機能を呈する事実が判明する。このとき、これら薄膜は、その膜厚を可及的に薄くした200nm乃至1,000nmの範囲とすることによって、その選択的な透過反射機能を有意に発揮するものとするものと認められる。即ち、200nmを下回ると、日射透過率を確保することができるが、修正放射率が高くなり、熱貫流率が不足する傾向を示し、また、1,000nmを上回ると、修正放射率を確保することができるが、日射透過率が不足する傾向を示し、選択的透過反射膜としてその機能を充分に確保し得ない結果となるからである。
更に、上記200nm乃至1,000nmの範囲における選択的な透過反射機能を、更に有効に発揮し得る膜厚範囲を把握するために、ZnO:Al薄膜を用いて100nmから700nmの100nm毎の膜厚の日射透過率と修正放射率を求めた。膜厚を変化した以外、上記と同じサンプルを用いて同様に測定した。その結果を表1に示し、また、図17にグラフを示す。
Figure 2012036076
表1に示すとおり、日射透過率及び修正放射率は100nmから膜厚を厚くするにつれて漸減するように次第に低下する傾向を示すところ、該日射透過率及び修正放射率は、100nmのとき83.6%、0.599の高い値を示すのに対して、200nmのとき82.6%、0.361,300nmのとき78.8%、0.249、400nmのとき75.8%、0.204、500nmのとき73.6%、0.200、600nmのとき71.3%、0.186、700nmのとき70.1%、0.167、1,000nmのとき63.6%、0.186、2,000nmのとき53.7%、0.174、3,000nmのとき46.9%、0.183のように低下するに至る。
選択透過反射膜としては、日射透過率を可及的に高く、修正放射率を可及的に低くするようにして、日射の可視光線と近赤外線を透過し且つ中乃至遠赤外線を反射する選択的な透過反射機能を発揮するようにすることが必要であるところ、100nm、200nmのとき日射透過率は高く確保できるが、修正放射率が0.599、0.361と大きく変化するところ、200nm乃至300nmから変化幅が縮小し、300nm乃至700nmの間では該変化幅は更に縮小する傾向を示す。即ち、200nm乃至300nmから700nmの間では、日射透過率は80%近傍から70%程度を示す一方、修正放射率は200nmの0.36乃至300nmの0.249から0.17程度を示し、選択透過反射膜としてその日射透過率、修正放射率の双方において比較的安定したものとなる。日射透過率は、例えば65%以上であれば、冬場の近赤外線の透過を有効になし得るとともに修正反射率は、例えば0.4、好ましくは0.3、特に好ましくは0.2以下であれば、熱貫流率を低く抑制し得るところ、ZnO:Al薄膜にあって、日射透過率を65%以上、修正放射率を0.4、0.4、好ましくは0.3、特に好ましくは0.25以下とすることによって、選択的な透過反射機能を可及的に発揮するものとすることができる。因みに、これを膜厚との関係でいえば、膜厚が1,000nmを超えると日射放射率が65%を下回る可能性があり、従って膜厚は、これを200nm乃至1,000nm、好ましくは300nm乃至700nmとするのがよいが、日射透過率によって暖冷房負荷を低下する立場から見ると、300nm又は400nm乃至500nmとすることによって、可及的に薄膜の選択透過反射膜としつつ、日射透過率を可及的に高く確保するとともに、修正放射率を0.25乃至0.20程度として相当程度有効に確保する上で、特に好ましいものとすることができる。
また、ZnO:Ga薄膜について同様に50nmから50nm毎の200nmまで、300nm、500nm、1,000nmの上記分光チャートの結果を表2に示し、図18にグラフを示す。
Figure 2012036076
表2によると、日射透過率及び修正放射率は同様に100nmから膜厚を厚くするにつれて漸減するように次第に低下する傾向を示すところ、該日射透過率及び修正放射率は、50nmのとき85.7%、0.659であるのに対して、100nmのとき82.7%、0.498、200nmのとき77.3%、0.263、300nmのとき72.9%、0.221、500nmのとき66.2%、0.146、1,000nmのとき56.5%、0.154である。同様にZnO:Ga薄膜にあって、日射透過率を65%以上、修正放射率を0.4、好ましくは0.3、特に好ましくは0.25以下とすることで、選択的な透過反射機能を可及的に発揮するものとすることができるが、これを膜厚との関係でいえば、日射透過率によって暖冷房負荷を低下する立場から見ると、膜厚が500nmを超えると日射放射率が65%を下回る可能性があるから、膜厚は、これを150nm乃至500nm、好ましくは200nm乃至500nm、特に好ましくは300nm乃至500nmとすることによって、可及的に薄膜の選択透過反射膜としつつ、日射透過率を可及的に高く確保するとともに、修正放射率を0.22乃至0.15程度として相当程度有効に確保する上で、特に好ましいものとすることができる。
なお、ZnO:Al薄膜とZnO:Ga薄膜を比較すると、200nmの膜厚のとき日射透過率はZnO:Al薄膜82.6%、ZnO:Ga薄膜77.3%であり、修正放射率はZnO:Al薄膜0.361、ZnO:Ga薄膜0.263であり、500nmの膜厚のとき日射透過率はZnO:Al薄膜73.6%、ZnO:Ga薄膜66.2%であり、修正放射率はZnO:Al薄膜0.200、ZnO:Ga薄膜0.146であるところ、上記のとおり日射透過率と修正放射率の評価については、修正放射率にはその確保について代替手段がある一方、日射透過率には代替手段がないことに鑑みると、双方とも選択透過反射膜としてそれぞれ有効に使用することができるが、日射透過率の高いZnO:Al薄膜を用いることが、その選択的な透過反射機能を発揮する上で好ましいことが判明する。
以上の選択透過反射膜として有効なZnO:Al薄膜の膜厚100nmから700nmの100nm毎、1,000nm、2,000nm、3,000nmの各暖冷房負荷とZnO:Ga薄膜の膜厚50nmから200nmの50nm毎及び500nm、1,000nmの複層ガラスを用いた樹脂サッシの暖冷房負荷について、既存の樹脂サッシの暖冷房負荷との比較において札幌市の暖冷房負荷の減少率(削減率といってもよい)をシミュレーションした結果を図19乃至図21及び図22乃至図24に示す。図19は札幌市におけるZnO:Al薄膜を用いた樹脂サッシ(空気層10.5/10.5mm、総ガラス厚27mm、アルゴンガス充填の図1に示すトリプル構造のもの)と、ブロンズ系のLow−Eの樹脂サッシ(空気層9/9mm、総ガラス厚27mm、アルゴンガス充填の同じくトリプル構造のもの)との対比、図20は同じくブロンズ系のLow−Eの樹脂サッシ(空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス充填のペアガラスのもの)との対比、図21は同じくブロンズ系のLow−Eの樹脂サッシ(空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス不充填のペアガラス)との対比である。図22乃至図24はZnO:Ga薄膜を用いた樹脂サッシについてそれぞれ上記各Low−Eの樹脂サッシとの対比である。また、図25乃至図27は東京都における上記ZnO:Al薄膜を用いた樹脂サッシと、上記各Low−Eの樹脂サッシ(但しブロンズ系に代えてグリーン系のものを使用)との対比、図28乃至図30はZnO:Ga薄膜を用いた樹脂サッシについてそれぞれグリーン系の上記各Low−Eの樹脂サッシとの対比である。
暖冷房負荷算出条件は以下のとおりである。熱負荷計算プログラムと気象データ/住宅用熱負荷計算プログラム、住宅モデル/日本建築学会住宅用標準問題[1]に準じる、床面積125.9m。暖冷房期間は札幌市で暖房期間10/1乃至6/3、冷房期間7/12乃至8/31、東京都で暖房期間11/18乃至4/14、冷房期間6/8乃至9/22、設定温度(札幌市・東京都共通)/暖房温度22℃、冷房温度28℃(いずれも在室時のみ)。
シミュレーションの結果によると、札幌市の図19乃至図21のZnO:Al薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷は、上記ガラス総厚を上記27mmとすることを前提として、膜厚200nm、特に300nmから2,000nmの間、30,000乃至31,000MJ程度の範囲として、このとき暖冷房負荷の減少率はいずれも10%を数%以上、場合によって20%を大きく超えるものとすることができる。即ち、暖冷房負荷は、膜厚100nmのとき35,604MJ、膜厚200nmのとき31,111MJ、膜厚300nmのとき30,206MJ、膜厚400nmのとき30,000MJ、膜厚500nmのとき30,042MJ、膜厚600nmのとき30,100MJ、膜厚700nmのとき29,884MJ、膜厚1,000nmのとき31,024MJ、膜厚2,000nmのとき31,331MJ、膜厚3,000nmのとき31,953MJであるのに対して、ブロンズ系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層空気層9/9mm、総ガラス厚27mm、アルゴンガス充填の同じくトリプル構造のものは35,604MJであるから、ZnO:Al薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚100nmのとき6%、膜厚200nmのとき13%、膜厚300nmのとき15%、膜厚400nmのとき16%、膜厚500nmのとき16%、膜厚600nmのとき15%、膜厚700nmのとき16%、膜厚1,000nmのとき13%、膜厚2,000nmのとき12%、膜厚3,000nmのとき10%である。
図20のブロンズ系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス充填のペアガラスのものは36,809MJであるから、ZnO:Al薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚100nmのとき9%、膜厚200nmのとき15%、膜厚300nmのとき18%、膜厚400nmのとき18%、膜厚500nmのとき18%、膜厚600nmのとき18%、膜厚700nmのとき19%、膜厚1,000nmのとき16%、膜厚2,000nmのとき15%、膜厚3,000nmのとき13%である。
図21のブロンズ系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス充填のペアガラスのものは39,343MJであるから、ZnO:Al薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚100nmのとき15%、膜厚200nmのとき21%、膜厚300nmのとき23%、膜厚400nmのとき24%、膜厚500nmのとき24%、膜厚600nmのとき23%、膜厚700nmのとき24%、膜厚1,000nmのとき21%、膜厚2,000nmのとき20%、膜厚3,000nmのとき19%である。
また、同じく札幌市の図22のZnO:Ga薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷は、同様にガラス総厚を上記27mmとすることを前提として、膜厚150nmから1,000nmの間、30,000乃至31,000MJ程度の範囲として、このとき暖冷房負荷の減少率は、同じくいずれも10%を数%以上、場合によって20%を大きく超えるものとすることができる。即ち、暖冷房負荷は、膜厚50nmのとき33,638MJ、膜厚100nmのとき32,663MJ、膜厚150nmのとき30,892MJ、膜厚200nmのとき30,639MJ、膜厚500nmのとき30,037MJ、膜厚1,000nmのとき31,024MJであるのに対して、ブロンズ系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層9/9mm、総ガラス厚27mm、アルゴンガス充填のトリプル構造のものは35,604MJであるから、ZnO:Ga薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚50nmのとき6%、膜厚100nmのとき8%、膜厚150nmのとき13%、膜厚200nmのとき14%、膜厚500nmのとき15%、膜厚1,000nmのとき13%である。
図23のブロンズ系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス充填のペアガラスのものは36,809MJであるから、ZnO:Ga薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚50nmのとき9%、膜厚100nmのとき11%、膜厚150nmのとき16%、膜厚200nmのとき17%、膜厚500nmのとき18%、膜厚1,000nmのとき16%である。
図24のブロンズ系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス不充填のダブル構造のものは39,343MJであるから、ZnO:Ga薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚50nmのとき14%、膜厚100nmのとき17%、膜厚150nmのとき21%、膜厚200nmのとき22%、膜厚500nmのとき24%、膜厚1,000nmのとき21%である。
一方、東京都の図25乃至図27のZnO:Al薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷は、同じくガラス総厚を上記27mmとすることを前提として、膜厚200nmから3,000nmの間、9,000乃至9,500MJ程度の範囲として、このとき暖冷房負荷の減少率はいずれも10%を数%程度超えるものとすることができる。即ち、暖冷房負荷は、膜厚100nmのとき9,630MJ、膜厚200nmのとき9,243MJ、膜厚300nmのとき9,097MJ、膜厚400nmのとき9,065MJ、膜厚500nmのとき9,074MJ、膜厚600nmのとき9,090MJ、膜厚700nmのとき9,053MJ、膜厚1,000nmのとき9,198MJ、膜厚2000nmのとき9,331MJ、膜厚3,000nmのとき9,457MJであるのに対して、グリーン系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層9/9mm、総ガラス厚27mm、アルゴンガス充填のトリプル構造のものは10,246MJであるから、ZnO:Al薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚100nmのとき6%、膜厚200nmのとき10%、膜厚300nmのとき11%、膜厚400nmのとき12%、膜厚500nmのとき11%、膜厚600nmのとき11%、膜厚700nmのとき12%、膜厚1,000nmのとき10%、膜厚2,000nmのとき9%、膜厚3,000nmのとき8%である。
図26のグリーン系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス充填のペアガラスのものは10,350MJであるから、ZnO:Al薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚100nmのとき7%、膜厚200nmのとき11%、膜厚300nmのとき12%、膜厚400nmのとき12%、膜厚500nmのとき12%、膜厚600nmのとき12%、膜厚700nmのとき13%、膜厚1,000nmのとき11%、膜厚2,000nmのとき10%、膜厚3,000nmのとき9%である。
図27のグリーン系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス不充填のペアガラスのものは10,786MJであるから、ZnO:Al薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚100nmのとき11%、膜厚200nmのとき14%、膜厚300nmのとき16%、膜厚400nmのとき16%、膜厚500nmのとき16%、膜厚600nmのとき16%、膜厚700nmのとき16%、膜厚1,000nmのとき15%、膜厚2,000nmのとき13%、膜厚3,000nmのとき12%である。
また、同じく東京都の図28のZnO:Ga薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷は、同じくガラス総厚を上記27mmとすることを前提として、膜厚100nmから1,000nmの間、9,000乃至9,500MJ程度の範囲として、暖冷房負荷の減少率を同じくいずれも10%程度とすることができる。即ち、暖冷房負荷は、膜厚50nmのとき9,650MJ、膜厚100nmのとき9,498MJ、膜厚150nmのとき9,210MJ、膜厚200nmのとき9,172MJ、膜厚500nmのとき9,087MJ、膜厚1,000nmのとき9,276MJであるのに対して、グリーン系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層9/9mm、総ガラス厚27mm、アルゴンガス充填のトリプル構造のものは10,246MJであるから、ZnO:Ga薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚50nmのとき6%、膜厚100nmのとき7%、膜厚150nmのとき10%、膜厚200nmのとき10%、膜厚500nmのとき11%、膜厚1,000nmのとき9%である。
図29のグリーン系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス充填のペアガラスのものは10,350MJであるから、ZnO:Ga薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚50nmのとき7%、膜厚100nmのとき8%、膜厚150nmのとき11%、膜厚200nmのとき11%、膜厚500nmのとき12%、膜厚1,000nmのとき10%である。
図30のグリーン系のLow−Eの樹脂サッシ、即ち、空気層12mm、総ガラス厚18mm、アルゴンガス不充填のペアガラスのものは10,786MJであるから、ZnO:Ga薄膜の樹脂サッシの暖冷房負荷の減少率は、折線グラフに示すとおり、膜厚50nmのとき11%、膜厚100nmのとき12%、膜厚150nmのとき15%、膜厚200nmのとき15%、膜厚500nmのとき16%、膜厚1,000nmのとき14%である。
即ち、ZnO:Al薄膜及びZnO:Ga薄膜のサッシは、その上記日本建築学会住宅用標準問題[1]の住宅モデルによる暖冷房負荷算出による年間暖冷房負荷を札幌市において30,000乃至31,000MJ程度、東京都において9,000乃至9,500MJ程度の範囲としてあり、これによって、各膜厚における他のサッシとの暖冷房負荷の減少を行うものとしてある。
Low−Eの樹脂サッシとの対比で、その構造乃至アルゴンガス充填の有無、暖房主体の札幌市、暖房及び冷房の双方を用いる東京都の地域差によって暖冷房負荷の減少率は異なるが、Low−Eの樹脂サッシのうちでも、トリプル構造にしてアルゴンガス充填のもの、即ち、札幌市のような寒冷地で主に使用される現在最高性能とされる樹脂サッシとされるものとの対比でも、同じくトリプル構造にしてアルゴンガス充填のZnO:Al薄膜の樹脂サッシは、膜厚200nm乃至700nmの場合に、札幌市の暖房主体の地域において暖冷房負荷を15%程度減少(削減といってもよい)でき、暖房及び冷房の双方を用いる主体の東京都において暖冷房負荷を11%程度減少できることになる。
Low−Eの樹脂サッシのうち、同じく寒冷地で主に使用されるアルゴンガス充填のペアガラスの樹脂サッシとの対比では、膜厚200nm乃至700nmの場合に、札幌市の暖房主体の地域において暖冷房負荷を20乃至24%程度減少でき、暖房及び冷房の双方を用いる主体の東京都において暖冷房負荷を10乃至13%程度減少できることになる。
更に、Low−Eの樹脂サッシのうち、同じく寒冷地で主に使用されるアルゴンガス不充填のペアガラスの樹脂サッシとの対比では、膜厚200nm乃至700nmの場合に、札幌市の暖房主体の地域において暖冷房負荷を20乃至24%程度減少でき、暖房及び冷房の双方を用いる主体の東京都において暖冷房負荷を14乃至16%程度減少できることになる。
即ち、ZnO:Al薄膜を用いるとき、その膜厚を、上記200nm乃至1,000nmのうちでも、特に200乃至700nmとすることが、日射透過率と修正放射率の可及的有効に確保して、その暖冷房負荷の減少率を可及的大とすることができるが、前述のとおり、その物理的蒸着、化学的蒸着の如き薄膜形成手段による成膜は、膜厚を厚くするに際して一般に加工時間を延長する必要があり、生産性が低下する可能性があるから、実用的な選択透過反射膜としては、その生産性を確保しつつ安定した暖冷房負荷を呈するとともに耐久性を確保し得る膜厚の範囲のものとすることが好ましく、この観点からみれば、上記膜厚は、これを上記200nm乃至700nmのうちでも、300nm乃至500nmとすることが更に好ましい。
また、ZnO:Gaの薄膜の樹脂サッシは、150nm乃至1,000nmの上記トリプル構造にしてアルゴンガス充填の樹脂サッシの対比において、札幌市の暖房主体の地域において暖冷房負荷を13乃至15%程度減少でき、暖房及び冷房の双方を用いる主体の東京都において暖冷房負荷を10%程度減少できることになる。
Low−Eの樹脂サッシのうち、アルゴンガス充填のペアガラスの樹脂サッシとの対比では、膜厚150nm乃至1,000nmの場合に札幌市の暖房主体の地域において暖冷房負荷を16乃至18%程度減少でき、暖房及び冷房の双方を用いる主体の東京都において暖冷房負荷を10乃至12%程度減少できることになる。
更にLow−Eの樹脂サッシのうち、アルゴンガス不充填のペアガラスの樹脂サッシとの対比では、膜厚150nm乃至1,000nmの場合に、札幌市の暖房主体の地域において暖冷房負荷を21乃至24%程度減少でき、暖房及び冷房の双方を用いる主体の東京都において暖冷房負荷を15%程度減少できることになる。
同様に、ZnO:Ga薄膜を用いるとき、その膜厚は、150nm乃至1,000nmのうちでも、ZnO:Alと同様に、生産性を確保しつつ安定した暖冷房負荷を呈するとともに耐久性を確保し得る実用的な選択透過反射膜としてその膜厚の範囲は、これを同じく300nm乃至500nmとすることが更に好ましい。
以上のとおり、ZnO:Al薄膜、ZnO:Ga薄膜を選択透過反射膜として用いることによって、選択的な透過反射機能を有効且つ適切に発揮して、暖冷房負荷を可及的に小さくし、既存のものに対して有意の暖冷房負荷の減少を達成することができる。従って、これら薄膜を選択透過反射膜として備えた複層ガラス2は、これを用いて窓サッシ、例えば図示省略のサッシ枠を樹脂製とした樹脂サッシとして使用することができ、このとき該複層ガラス2は、常法に従って図示省略のサッシ戸框を施して引戸乃至開き戸として、上記サッシ枠に開閉自在に収納するようにすればよい。
このとき成膜フィルムを複層ガラスに用いるについて、該成膜フィルムは、上記のように、その両面にZnO:Ga薄膜又はZnO:Al薄膜を配置し且つその内部空間には、例えばアルゴンガスを充填して該空間を断熱空間とすることによって、該断熱空間の熱抵抗を向上することができるから、該複層ガラス2の空間を断熱空間とする場合、該成膜フィルムを用いたときの修正放射率を0.25以下にして、例えば0.1程度に低下することができる。このとき、複層ガラス2の日射熱取得率は0.60以上(JIS R3106による換算の日射透過率は66.5%)、熱貫流率(U値)は1.0w/k・m(JIS R3107による修正放射率は0.16)とすることができる。
本発明の実施に当っては、酸化亜鉛系の透明金属薄膜の成膜を、透明フィルムの片面に行うことを含めて、成膜フィルム、透明フィルム、酸化亜鉛系の透明金属薄膜、日射透過率、修正放射率、透明金属薄膜の膜厚等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
1 成膜フィルム
11 透明フィルム
12 選択透過反射膜
2 複層ガラス
21 透明ガラス
22 スペーサー

Claims (9)

  1. 透明フィルムに酸化亜鉛系の透明金属薄膜を成膜することによって近赤外線を透過し且つ中乃至遠赤外線を反射する選択透過反射膜を有する成膜フィルムを用いてなることを特徴とする複層ガラス。
  2. 上記成膜フィルムを、日射透過率65%以上、修正放射率0.4以下としてなることを特徴とする請求項1に記載の複層ガラス。
  3. 上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜の成膜を、透明フィルムの両面に行なってなることを特徴とする請求項1又は2に記載の複層ガラス。
  4. 上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、ZnO:Alの薄膜としてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の複層ガラス。
  5. 上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、ZnO:Gaの薄膜としてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の複層ガラス。
  6. 上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、200nm乃至1,000nmの膜厚としてなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の複層ガラス。
  7. 上記酸化亜鉛系の透明金属薄膜を、300nm乃至700nmの膜厚としてなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の複層ガラス。
  8. 請求項1乃至7のいずれかの複層ガラスを用いて形成してなることを特徴とする窓サッシ。
  9. 日本建築学会住宅用標準問題[1]の住宅モデルによる暖冷房負荷算出による年間暖冷房負荷を札幌市において30,000乃至31,000MJ程度、東京都において9,000乃至9,500MJ程度の範囲としてなることを特徴とする請求項8に記載の窓サッシ。
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