JP2012031082A - タンパク質を検出するための分析試薬 - Google Patents

タンパク質を検出するための分析試薬 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便、迅速かつ高感度なタンパク質の分析手段の提供。
【解決手段】タンパク質の分析に用いるための、一般式(I):
Figure 2012031082

[式中、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、水素原子;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲンまたはニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;スルホン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;チオール基;水酸基もしくはその塩;ケトン;ハロゲン;または糖であり、Rは酸素原子、硫黄原子、または、2級もしくは3級アミノ基である。]により表わされる化合物あるいはその塩。
【選択図】なし

Description

本発明は、タンパク質を検出するための化合物およびそれを用いた試料中のタンパク質を分析するための方法に関する。
体内のタンパク質を網羅的に調べて病気の状態や原因を探るプロテオーム研究の進展に伴って、癌マーカータンパク質のように疾患の目印となるタンパク質を決定しようとする研究が急速に加速している。とりわけ、タンパク質表面、タンパク質表面間の分子認識は、生命現象における共通の言語と考えられ、細胞外からの情報の多くは、細胞膜や細胞内部でのタンパク質表面を介した相互作用によって、増幅し伝達される。
近年、DNAチップ技術の向上により、RNAの発現を網羅的に解析するトランスクリプトーム解析が盛んに行われている。しかしながら、このRNA発現プロファイルとタンパク質の発現プロファイルは必ずしも一致するわけでなく、その相関は50%以下であると言われている(非特許文献1)。そこで、RNAの網羅的解析に加え、タンパク質の網羅的解析が重要視されている。近年、著しく発展している二次元電気泳動法や質量分析計、さらにはプロテインチップのようなゲノム解析に匹敵するハイスループット分析を駆使して、タンパク質の機能を明らかにする試みが盛んに行われている。今後は、その成果を医療や健康管理の現場で役立てるために、疾患のマーカーとなるタンパク質を、簡便かつ迅速に分析する技術の確立が必要とされている。
試料中のタンパク質を定量するための代表的な方法としては、(1)吸光光度法、(2)Biuret試薬を用いるBiuret法、(3)フェノール試薬とBiuret法を組み合わせたLowry法、(4)Bradford法などが挙げられる。また、特定のタンパク質を特異的に測定する方法として、(5)ELISA法が用いられている。これらの手法の特徴は以下に示すとおりである。
(1)吸光光度法:タンパク質中に含まれるチロシンおよびトリプトファンに起因する280nm付近での吸収を利用して、タンパク質濃度を算出する方法である。タンパク質の種類によって、チロシンおよびトリプトファンの含有量が異なるため、同じ濃度であっても280nmでの吸光度(A280nm)は変動しうるので、通常、対照濃度(1mg/mLなど)でのA280nmを1.0として、試料中のタンパク質濃度を算出する。操作が簡便であり、かつ測定後に試料の回収が可能である。タンパク質の種類によりA280nmが変動する。280nm付近の光を吸収しないタンパク質(例えば、コラーゲン、ゼラチン)については測定を行うことができない。紫外光を吸収する物質の混入により定量が妨害される。
(2)Biuret法:アルカリ性条件下でタンパク質をCu2+溶液と反応させ、Cu2+がポリペプチド鎖中の窒素原子と配位結合することにより呈する赤色を、540nmにおける吸光度から測定することで、タンパク質濃度を算出する方法である。タンパク質の種類による発色率の違いが少ない。操作が簡単である。感度が低い。したがって低濃度試料の測定には使用することができない。
(3)Lowry法:タンパク質をフェノール試薬(リンモリブデン酸とリンタングステン酸を酸性溶液に溶解させたもの)と反応させ、フェノール試薬がタンパク質中のチロシン、トリプトファンおよびシステインと反応することにより呈する青色を検出することで、タンパク質濃度を測定する方法である。ペプチド結合に由来する発色が強いため、Biuret法よりもはるかに感度が高く、最も一般的に使用されている方法である。還元反応により呈色が起こるため、他の還元物質による干渉を受ける。操作が煩雑で測定までに時間がかかる。タンパク質の種類によって発色率が異なる。
(4)Bradford法:酸性溶液中でCoomassie Brilliant Blue G−250(トリフェニルメタン系青色色素)がタンパク質に結合することにより起こる色調変化(赤紫色から青色へ、極大吸収波長:465nmから595nmにシフト)を利用して、タンパク質を定量する。混入物質による影響を受けにくい。操作が簡単である。タンパク質の種類によって発色率が異なる。界面活性剤の混入により発色が阻害される。
(5)ELISA法:特定のタンパク質に特異的に結合する抗体を利用して、対象となるタンパク質の定量を行う免疫学的方法である。特定のタンパク質の濃度を測定することができる。測定に時間がかかる。
また、種々の化学物質の測定には、蛍光測定法が用いられている。蛍光測定法は、高感度であること、必要とされる試料が少量であること、大掛かりな装置や熟練した技術を必要としないこと、などの利点を有する。
蛍光測定法を利用したタンパク質定量については、これまでも報告されている。蛍光色素とタンパク質との直接的な結合を用いる方法としては、例えば、フルオレサミンを利用した方法(フルオレサミンが第1級アミンと結合すると、495nmの強い蛍光を発する蛍光物質となることを利用する)、シアニン色素を用いる方法、アゾール誘導体を用いる方法などがある(特許文献1)。しかしながら、これらの方法では、タンパク質の種類によって検出率が異なること、検量線が直線とならないこと、色素同士の会合により測定誤差が生じること、ストークスシフトが小さいことなどの問題点がある。
また、タンパク質の分子量を測定することや、タンパク質を同定するための試料を調製するために用いられている電気泳動法に目を向けてみると、通常、電気泳動で分離されたタンパク質は、電気泳動前もしくは電気泳動後にタンパク質と相互作用を示す化合物を含んだ試薬を作用させ、目視もしくは専用の検出器にて検出できるようにする必要がある。
試料中のタンパク質を検出するために、タンパク質を染色する方法が従来的に用いられている。タンパク質を染色する方法としては、CBB(クマシーブリリアントブルー)染色法、銀染色法、Sypro Ruby染色法などが挙げられる。
これらの慣用の手法のうち、CBB法は、簡便かつ迅速に行うことができるが、検出感度が低く(検出限界:50〜100ng)、タンパク質の種類によって検出感度が大きく異なるという問題を有する。銀染色法は、検出限界が1〜10ngであり高感度な方法であるが、定量性がなく、また銀を含む廃液の特別な処理が必要であるという欠点を有する。Sypro Ruby(インビトロジェン社)などの蛍光色素を用いる方法は、銀染色を上回る検出感度を示す場合があるが、SDS−PAGEに適用する場合、担体に残存するSDSの影響を受け易く、目的タンパク質が検出できない場合がある。また、バックグラウンドが比較的高いため、蛍光色素を用いてタンパク質を染色する前に固定処理を行い、且つ染色後に十分な時間の洗浄・脱色が必要である。このことから、迅速性がなく、同時に作業者に負担が大きいという問題がある。
上記の様々な手法に存在する様々な欠点を勘案すると、タンパク質を検出および/または測定するための新たな手法が必要であることが理解されよう。すなわち、当該分野においては、依然としてタンパク質を簡便、迅速かつ高感度に検出および/または測定することができる新規手段が求められている。
特開2006−234772号公報
礒辺俊明、高橋信弘/編 「プロテオーム解析法」羊土社(2000)
本発明は、簡便、迅速かつ高感度なタンパク質の分析を行うための新規手段を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、タンパク質の不存在下では顕著な蛍光を生じないが、これをタンパク質に作用させると、当該タンパク質との相互作用により複合体を形成して、それによって蛍光を生じる化合物を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
[1] 下記一般式(I)で表わされる化合物あるいはその塩。
Figure 2012031082
[式中、
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、水素原子;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲンまたはニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;スルホン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;チオール基;水酸基もしくはその塩;ケトン;ハロゲン;または糖であり、
は酸素原子、硫黄原子、または、2級もしくは3級アミノ基であり、ここでRが3級アミノ基である場合、窒素原子は炭素数1から10の直鎖型または分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲンまたはニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;スルホン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;チオール基、水酸基もしくはその塩;ケトン;ハロゲン;または糖などを有する。]
[2] 下記一般式(II)で表わされる化合物である、[1]の化合物。
Figure 2012031082
[3] [1]または[2]の化合物を含む、タンパク質分析用試薬。
[4] [3]のタンパク質分析用試薬と試料中のタンパク質と接触させ、該タンパク質分析用試薬から生じる蛍光を検出し、それによってタンパク質を定性的または定量的に分析することを含む、タンパク質の分析方法。
[5] 蛍光光度法および吸光光度法を用いて、試料中のタンパク質を定性的または定量的に分析する、[4]の方法。
[6] 電気泳動により、試料中のタンパク質を分離することを含む、[4]の方法。
[7] [1]または[2]の化合物の、タンパク質分析用試薬としての使用。
本発明を用いることにより、簡便、迅速かつ高感度なタンパク質の分析が可能となる。また、本発明における化合物は安価かつ容易に合成できることから、タンパク質の分析に要するコストを低減することも可能となる。
図1は、本発明の化合物とタンパク質との複合体形成による蛍光発生の概略を表す模式図である。 図2は、本発明の化合物の合成スキームを表す模式図である。 図3は、本発明の化合物の、BSAの存在下および不存在下における吸収スペクトルを示す特性図である。 図4は、本発明の化合物の、BSAの存在下における励起スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す特性図である。 図5は、本発明の化合物の種々の濃度のBSAの存在下における蛍光スペクトルを示す特性図である。 図6は、本発明の化合物の660nmにおける蛍光強度とBSA濃度との関係を示す特性図である。 図7は、SDS−PAGEによって分離された各種タンパク質の、本発明の化合物を用いた蛍光像である。励起波長:532nm、検出波長:670nm。オボトランスフェリン(78kDa)、BSA(66kDa)、オボアルブミン(43kDa)、カルボアンヒドラーゼ(30kDa)、ミオグロビン(17kDa)、シトクロムc(12kDa)。 図8は、二次元電気泳動によって分離されたタンパク質混合物(Mouse Liver Lysate)の、本発明の化合物を用いた蛍光像である。励起波長:532nm、検出波長:670nm。
本発明の化合物は、下記一般式(I)で表わされる構造を有する。
Figure 2012031082
[式中、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、水素原子;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲンまたはニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;スルホン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;チオール基;水酸基もしくはその塩;ケトン;ハロゲン;または糖であり、
は酸素原子、硫黄原子、または、2級もしくは3級アミノ基であり、ここでRが3級アミノ基である場合、窒素原子は炭素数1から10の直鎖型または分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲンまたはニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;スルホン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;チオール基、水酸基もしくはその塩;ケトン;ハロゲン;または糖などを有する]。各R、R、R、R、R、RおよびRは、上記一般式(I)で表わされる化合物がタンパク質と結合し、呈色変化または蛍光強度の向上を観察し得る限り、特に上記のものに限定されない。
上記一般式(I)で表わされる化合物としては、例えば下記一般式(II)で表わされる化合物が挙げられる。
Figure 2012031082
本発明の化合物には、上記一般式(I)および(II)で表わされる化合物の塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、アンモニウム塩など)を含む。
本発明の化合物は、図1に示すようにタンパク質の不存在下(遊離状態)では顕著な蛍光を生じない。しかしこれをタンパク質に作用させると、相互作用によりタンパク質と複合体を形成し、当該化合物がタンパク質の疎水場に入ることによって、当該化合物の蛍光量子収率が増加し得、それによって蛍光を生じる。
本明細書において、「タンパク質」には、ペプチド、タンパク質複合体(例えば、糖タンパク質、タンパク質−核酸複合体、標識されたタンパク質など)を含み、また天然および非天然(組換えタンパク質など)のものも含む。
また、本明細書において、「蛍光」とは、ある分子に特定の波長の光(励起光)を照射した際に該分子から発せられる照射光とは異なる波長の光を意味する。
さらに、本明細書において、「相互作用」とは、本発明の化合物とタンパク質との間に何らかの物理的および/または化学的作用が生じている状態を意味し、例えば、タンパク質が、疎水性相互作用、電荷移動相互作用などにより互いに結合している状態がこれに含まれる。
本発明の化合物はまた、タンパク質の不存在下(遊離状態)における呈色とタンパク質と複合体を形成している状態における呈色とに変化を生じ得る。これは当該化合物がタンパク質の疎水場に入ることによって、光の吸収波長が長波長側に移動することによって、例えば薄い青色から濃い青色に色調が変化し得る。
上記特徴により、本発明の化合物は特に、タンパク質の分析用試薬として用いることができる。
本明細書において、タンパク質の「分析」とは、タンパク質を定性的に検出すること、すなわちタンパク質の存在の有無を確認すること、タンパク質の分子量を測定すること、タンパク質の分布を決定すること、定量的に測定することなどを含む。
本発明の化合物をタンパク質分析用試薬として用いるには、試料中のタンパク質と本発明の化合物とを接触させ、タンパク質との相互作用により当該化合物から生じる蛍光を検出および/または測定することによって行う。あるいはタンパク質との相互作用により当該化合物の呈色変化を検出することによって行う。
分析対象となるタンパク質は、特に限定されない。本発明の化合物は、様々なタンパク質の疎水場に入ることによって、疎水性相互作用による非共有結合的な複合体を形成し、それによって、当該化合物は蛍光を生じたり、または当該化合物の呈色変化を生じたりすることができる。
分析対象となるタンパク質を含む試料は、分析対象となるタンパク質を含む限り、液体または固体のいずれの形状を有していても良い。このような試料としては、体液(血液、リンパ液、汗、涙、母乳、唾液、胃液、腸液、精液、羊水、膣液、鼻水、糞尿など)、細胞、組織およびこれらの破砕物、タンパク質を電気泳動したゲル(ポリアクリルアミド、アガロースゲルなど)、タンパク質を移した膜(セルロールアセテート膜、ニトロセルロース膜、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜など)が挙げられるが、これらに限定されない。
タンパク質分析用試薬として使用される本発明の化合物は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス−グリシン緩衝液、トリス緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液、アルコール(炭素数1〜3)、DMSOなど適当な溶媒中に溶解または懸濁して用いることができる。また、本発明の化合物は、固相に固定化されていても良い。本発明の化合物を固定化するための固相は、その上でタンパク質との相互作用により生じる蛍光または呈色変化の検出および/または測定が行えるものであれば特に限定されることなく、任意のものを選択することができる。このような固相の材料としては、例えば、セルロース、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体、セファロース、アガロース、金属、ガラス、セラミック、樹脂など(これらに限定されない)が挙げられる。固相の形状および材質は特に限定されるものではない。
タンパク質を含む試料と本発明の化合物との接触は、タンパク質を含む試料の種類や量、および本発明の化合物の形態や量などに応じて、適宜決定することができる。例えば、試料に含まれるタンパク質の量が、およそ0〜1000μgである場合には、およそ5〜500μM、好ましくは5〜100μMの本発明の化合物を、20〜40℃、好ましくは室温、さらに好ましくは25℃にて、1〜30分間、好ましくは1〜10分間、接触させることによって行うことができる。
試料中に含まれるタンパク質との相互作用により本発明の化合物から生じる蛍光の検出および/または測定は、市販の通常用いられる機器を使用して行うことができる。例えば、用いることができる機器としては、マイクロプレートリーダー、蛍光分光光度計、蛍光顕微鏡、蛍光スキャナー、感光性フィルムなどが挙げられる。また、試料中に含まれるタンパク質との相互作用により生じる本発明の化合物の呈色変化は、目視観察や市販の通常用いられる機器(分光光度計、プレートリーダーなど)を使用して行うことができる。
本発明の化合物を用いることによる、試料中に含まれるタンパク質の検出感度は、タンパク質を含む試料の種類や量、および本発明の化合物の形態や量などに応じて変化し得るが、水溶液中のタンパク質であれば、20ng/mL、ゲル中のタンパク質であれば0.02ngの検出限界を有し、従来のタンパク質の検出に用いられている分析用試薬と比較して、その検出感度は非常に高い。そのため、本発明の化合物をタンパク質分析用試薬として用いることによって、微量の試料のみしか必要とせず、また蛍光または呈色変化の検出は一般的な機器により実施可能である。
また、本発明の化合物は、電気泳動により分離されたタンパク質の分析に利用することができる。タンパク質を電気泳動したゲルを、本発明の化合物を含む水溶液中に浸漬することによって、ゲル中のタンパク質と本発明の化合物とを接触させることができる。あるいは、電気泳動後に本発明の化合物を含む水溶液中にタンパク質を電気泳動したゲルを浸漬する代わりに、電気泳動用の緩衝液または電気泳動用ゲル中に本発明の化合物を電気泳動前に添加または混合することにより、電気泳動中に本発明の化合物とタンパク質との相互作用を同時に行うことによっても実施することができる。また、試料中のタンパク質を本発明の化合物に接触させ、その後、電気泳動を行うことによって実施することもできる。
さらに、本発明の化合物は、特定のタンパク質に対して一定の割合で結合するために、既知濃度のタンパク質が含まれる標準試料を用いて得られた蛍光強度を利用して検量線を作製することによって、試料中に含まれるタンパク質の量を簡便に定量することができる。
またさらに、本発明の化合物は、抗体などと異なり、様々なタンパク質と結合することができ、そのため試料中に含まれる複数種のタンパク質を網羅的に分析することができる。
上記のとおり、本発明の化合物をタンパク質分析用試薬として用いることによって、非常に効率のよいタンパク質の検出および/または測定を実現することができる。
実施例1:化合物の合成
タンパク質分析用試薬として用いるため化合物の合成を行った。当該化合物の合成は、図2に示す合成スキームに従って行った。以下に、各合成反応について詳述する。
(1) 1−エチル−2−(2−(メチル(フェニル)アミノ)ビニル)キノリニウムヨージドの合成
Figure 2012031082
Ar雰囲気下、100mL三口フラスコにキナルジンエチオジド 1.0g、N−メチルアニリン 0.7g、オルトギ酸トリメチル 1.0g、2−メトキシエタノール 20mLを加え、12時間還流した。溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチルで洗浄した。カラムクロマトグラフィー(SiO;クロロホルム:メタノール=2:1v/v)で精製し、緑色固体として表題の化合物が得られた(収率:87%)。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz, r.t., TMS, δ/ppm) 1.58 (t, 3H), 3.44 (s, 3H), 4.81 (q, 2H), 6.10 (d, 1H), 6.60 (d, 2H), 6.77 (t, 1H), 6.78 (d, 1H), 7.23 (t, 2H), 7.29 (d, 1H), 8.10 (t, 1H), 8.23 (t, 1H), 8.42 (d, 1H), 8.61 (d, 1H), 8.98 (d, 1H).
(2) 2−(2−((1E,3E)−3−(1−エチルキノリン−2(1H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリルの合成
Figure 2012031082
100mL三口フラスコに、1−エチル−2−(2−(メチル(フェニル)アミノ)ビニル)キノリニウムヨージド 0.5g(1.2mmol)、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ジメチル4H−ピラン 0.2g(1.2mmol)、ピリジン 20mL、トリエチルアミン5mLを加え、Ar気流下、12時間還流した。溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチルに溶解し、水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(SiO;CHCl:MeOH=10:1v/v)で精製し、表題の化合物が得られた(収率:81%)。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz, r.t., TMS, δ/ppm) 1.31 (t, 3H), 2.24 (s, 3H), 4.56 (q, 2H), 5.27 (s, 1H), 5.51 (s, 1H), 5.91 (d, 1H), 6.48 〜 6.55 (m, 3H), 6.72 (t, 1H), 7.11 (t, 1H), 7.16 (d, 1H), 7.91 (d, 1H), 8.71 (d, 1H).
実施例2:合成した化合物の特性評価(吸収スペクトル測定)
実施例1で合成した化合物の吸収スペクトル測定を行った。吸収スペクトル測定に際しては、下記条件にて吸光光度計を用いて行った。
濃度:[化合物]=5μM
[BSA]=0,50μg/mL
溶媒:HEPES,20.0mM(pH7.2)
測定温度:25℃
BSAの存在下(50μg/mL)または非存在下における化合物の吸収スペクトルを図3に示す。
BSAの存在下において、吸光度が増加した。
実施例3:合成した化合物の特性評価(励起スペクトルおよび蛍光スペクトル測定)
実施例1で合成した化合物の励起スペクトルおよび蛍光スペクトル測定を行った。測定に際しては、下記条件にて蛍光光度計を用いて行った。
濃度:[化合物]=5μM
[BSA]=0〜50μg/mL
溶媒:HEPES,20.0mM(pH7.2)
測定温度:25℃
励起波長:583nm
励起スペクトルにおける検出波長:660nm
BSAの存在下(50μg/mL)における化合物の励起スペクトルと蛍光スペクトルを図4に示す。極大励起波長は583nm、極大蛍光波長は660nmとなり、77nmのストークスシフトが観察された。
次に励起波長を583nmとし、種々の濃度(0、0.7、1.5、3.1、6.2、12.5、25.0、50.0μg/mL)のBSAを添加した時の化合物の蛍光スペクトル変化を測定した。結果を図5に示す。
添加したBSA濃度の増加に伴い、蛍光強度の増加が観察された。BSAを50μg/mL添加した時の蛍光強度は、化合物単独の蛍光強度と比較して、約5000倍増加した。
化合物にBSAを添加した時の660nmにおける蛍光強度をBSA濃度に対してプロットしたところ、図6に示したように、良好な直線関係が得られた。また検出限界は20ng/mLであり、これまでに開発した分析試薬よりも約5倍感度が良いことが分かった。
実施例4:合成した化合物の特性評価(電気泳動実験)
実施例1で合成した化合物の電気泳動実験を行った。電気泳動実験は下記条件にて行った。
染色液;実施例1で合成した化合物50mgをDMSO 500μLに溶解し、これを100μLとり、メタノール:水=1:1v/vの混合溶媒を加えて50mLとし、染色液を調製した。
固定化液と洗浄液;水:メタノール:酢酸=87:10:3v/v
タンパク質サンプル:市販の分子量マーカー(Protein Standaed Mixture IV;メルク社製)を使用した。このマーカーには、オボトランスフェリン(78kDa)、BSA(66kDa)、オボアルブミン(43kDa)、カルボアンヒドラーゼ(30kDa)、ミオグロビン(17kDa)、およびシトクロムc(12kDa)が質量換算で等量ずつ含まれる。
電気泳動装置:XV PANTERA Gelキット(ディー・アール・シー株式会社)
検出装置:Typhoon(GEヘルスケア社)
電気泳動終了後、ゲルを取り出し、固定化液中で30分間洗浄した。その後、染色液中で30分間、ゲルを浸した後、洗浄液中で30分間洗浄した。
結果を図7に示す。電気泳動によって泳動されたゲル中のタンパク質は、染色液中の化合物と複合体を形成することによって、図7に示したような、明瞭な蛍光のバンドを示した。検出限界は、0.02ngであった。
また、下記の構造を有する既存のタンパク質分析用試薬(J. Am. Chem. Soc., 127,17799 (2005))との比較を行った。
Figure 2012031082
結果を以下の表1および表2に示す。
Figure 2012031082
Figure 2012031082
既存のタンパク質分析用試薬の検出限界は30ngであり、実施例1で合成した化合物の検出限界は0.02ngであり、既存のタンパク質分析用試薬の検出感度の約1500倍であることが明らかとなった。
実施例5:合成した化合物の特性評価(2次元電気泳動実験)
実施例1で合成した化合物の2次元電気泳動実験を行った。電気泳動実験は下記条件にて行った。
染色液;実施例1で合成した化合物50mgをDMSO 500μLに溶解し、これを100μLとり、メタノール:水=1:1v/vの混合溶媒を加えて50mLとし、染色液を調製した。
固定化液と洗浄液;水:メタノール:酢酸=87:10:3v/v
タンパク質サンプル:マウス肝臓ライセート (20μg)
電気泳動装置:XV PANTERA Gelキット(ディー・アール・シー株式会社)
検出装置:Typhoon(GEヘルスケア社)
電気泳動終了後、ゲルを取り出し、固定化液中で30分間洗浄した。その後、染色液中で30分間、ゲルを浸した後、洗浄液中で30分間洗浄した。
結果を図8に示す。電気泳動によって泳動されたゲル中の様々なタンパク質は、染色液中の化合物と複合体を形成することによって、図8に示したような、明瞭な蛍光のスポットを示した。
以上の結果から、本発明の化合物は、様々なタンパク質と複合体を形成し、蛍光を発することが明らかとなった。
本発明により、タンパク質の分析のための簡便、迅速かつ高感度な手段を実現することができる。本発明は、生化学、医療、分析化学など様々な分野において、ペプチドまたはタンパク質の高感度、網羅的かつハイスループットな分析手段として利用されることが大いに期待される。

Claims (7)

  1. 下記一般式(I)で表わされる化合物あるいはその塩。
    Figure 2012031082

    [式中、
    、R、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、水素原子;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲンまたはニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;スルホン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;チオール基;水酸基もしくはその塩;ケトン;ハロゲン;または糖であり、
    は酸素原子、硫黄原子、または、2級もしくは3級アミノ基であり、ここでRが3級アミノ基である場合、窒素原子は炭素数1から10の直鎖型または分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型または分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲンまたはニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;スルホン酸またはその塩、エステルもしくはアミド;チオール基、水酸基もしくはその塩;ケトン;ハロゲン;または糖などを有する。]
  2. 下記一般式(II)で表わされる化合物である、請求項1に記載の化合物。
    Figure 2012031082
  3. 請求項1または2に記載の化合物を含む、タンパク質分析用試薬。
  4. 請求項3に記載のタンパク質分析用試薬と試料中のタンパク質と接触させ、該タンパク質分析用試薬から生じる蛍光を検出し、それによってタンパク質を定性的または定量的に分析することを含む、タンパク質の分析方法。
  5. 蛍光光度法および吸光光度法を用いて、試料中のタンパク質を定性的または定量的に分析する、請求項4に記載の方法。
  6. 電気泳動により、試料中のタンパク質を分離することを含む、請求項4に記載の方法。
  7. 請求項1または2に記載の化合物の、タンパク質分析用試薬としての使用。
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