JP2012030642A - 操舵力制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】μスプリット路面上での車両発進時あるいは車両加速時において、左前輪または右前輪が空転したときの車両姿勢が不安定になる状況に対し、車両発進時あるいは車両加速時の車輪速センサにより検出した左前輪の車輪速と、車輪速センサにより検出した右前輪の車輪速と、左前輪と右前輪との車輪速差の変化率とをもとに、適切な操舵補助力を付加し、簡素な構成でコストの増加を招くことなく、μスプリット路面上での車両の発進時あるいは加速時におけるハンドル取られなどを回避して車両の安定性向上を図る。
【選択図】図2
Description
この電動パワーステアリングは、油圧パワーステアリング等に比べ電動モータの抵抗等によりフリクションが大きく、ステアリングが中立位置に戻りにくいことから、ステアリング操作時に操舵車輪の左右車輪速差を用いて、ステアリングを中立位置に戻す方向に操舵補助力を付加するように電動パワーステアリングを制御する技術が提案されている。これによれば、車両旋回時、内輪側の車輪速が小さく外輪側の車輪速が大きくなることから、車輪速の大きい外輪側方向へ操舵補助力を付加するように制御される。
つまり左方向へステアリングを操作している左旋回時においては、右方向への操舵補助力が付加されるため、例えば車両の左右の車輪で路面摩擦係数(μ)の異なる路面(以下、μスプリット路面という)を走行中に制動を行なった場合、低摩擦係数路面と接地している車輪の車輪速が高摩擦係数路面と接地している車輪より先に低くなることから、操舵補助力は高摩擦係数路面側へ付加されることになる。
しかし、高摩擦係数路面側の車輪には制動力が強く働くため、車両は高摩擦係数路面側へと偏向し、その上操舵補助力が高摩擦係数路面側へと付加されれば、高摩擦係数路面側への車両の偏向が助長され、運転者のハンドル操作に対し、いわゆるハンドルが取られる状態が発生する。
このような問題を解決するため制動時の一輪ロックを検出して車輪速が遅い方向(低μ路側)に付加トルクを付加することで車両偏向を抑制し安定性を向上させた操舵力制御装置がある(特許文献1参照)。
図1は、本発明の実施の形態の操舵力制御装置を備えた車両1の構成を示す概略構成図である。車両1は、左前輪11、右前輪12、左後輪13および右後輪14を備えている。
ステアリングギアボックス31には、ステアリングシャフト32を介してステアリングホイール33が連結されている。
そして、運転者によるステアリングホイール33の操作は、ステアリングシャフト32を介してステアリングギアボックス31に伝達される。
さらに、ステアリングギアボックス31を介してタイロッド21が作動して左前輪11および右前輪12の向きを変化させる。
言い換えると、操舵車輪(左前輪11、右前輪12)を操舵する操舵系は、ステアリングギアボックス31、ステアリングシャフト32、ステアリングホイール33を含んで構成されている。
すなわち、電動モータ34によって操舵補助力が操舵系に付加される。
ブレーキ41は左前輪11に制動力を付与し、ブレーキ42は左前輪12に制動力を付与し、ブレーキ43は左後輪13に制動力を付与し、ブレーキ44は左後輪14に制動力を付与する。
各ブレーキ41、42、43、44は、車両に搭載されているブレーキ油圧ユニット51から供給される油圧により左前輪11、右前輪12、左後輪13および右後輪14への制動力が制御される。
車輪速センサ61は左前輪11の車輪速(回転数)を検出するためのセンサである。車輪速センサ62は右前輪12の車輪速(回転数)を検出するためのセンサである。車輪速センサ63は左後輪13の車輪速(回転数)を検出するためのセンサである。車輪速センサ64は右後輪14の車輪速(回転数)を検出するためのセンサである。
ステアリングECU71は、操舵力制御機能として、運転者の操舵トルクを軽減するための操舵補助力を電動モータ34により前記の操舵系に付加する一般的な基本機能を有している。
ステアリングECU71は、さらに車輪速センサ61、62、63、64により検出された各車輪速、制動系ECU72による制御状況などに基づいて操舵補助力を電動モータ34により前記の操舵系に付加し、μスプリット路面上での車両発進時あるいは車両加速時において、車両1の安定性を向上させる機能を備えている。
制動系ECU72により実現されるABS機能では、車輪速センサ61、62、63、64により検出された各車輪速にもとづき、車両1の急制動時、低μ路面上での各車輪のロック状態を検出し、このようなロック状態を回避しつつ最適な制動力をブレーキ41、42、43、44により車輪に付与するようにブレーキ油圧ユニット51を制御する。
また、ステアリングECU71と制動系ECU72との間で各種データの送受信を行うための通信機能を備えている。
また、車両1の姿勢が不安定になるような特定の運転状況にある場合、電動パワーステアリング22により車両1の姿勢を安定させる方向へ操舵補助力を付加する姿勢安定化制御を行う。
制動系ECU72におけるABS機能では、各車輪速センサ61、62、63、64により検出された各車輪の車輪速から、左前輪11、右前輪12、左後輪13および右後輪14のスリップ率を算出し、算出したスリップ率が最適な値となるようにブレーキ油圧ユニット51から各ブレーキ41、42、43、44へ供給される油圧を制御する。
図に示すようにステアリングECU71は、一輪空転検出手段101、付加トルク制御手段102、付加トルク制御時間規制手段103を備えている。
また、一輪空転検出手段101は、演算手段111、車輪速状態判定手段112、車輪速差第1閾値判定手段113、アクセル操作判定手段114および空転判定手段115を備えている。
また、付加トルク制御手段102は、付加トルク方向決定手段121および付加トルク制御実行手段122を備えている。
図2は、この実施の形態の操舵力制御装置の動作を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って動作を説明する。
先ず、ステアリングECU71の演算手段111は、車輪速センサ61と車輪速センサ62との検出出力をもとに左前輪11と右前輪12との車輪速差と、その車輪速差の変化率を演算する(ステップS1)。
続いて、ステアリングECU71のCPUは、制御フラグFwをもとに、姿勢安定化制御を実行している状態であるか否かについて判定する(ステップS2)。
制御フラグFwは、ステアリングECU71のCPUが姿勢安定化制御を実行している状態で設定されるフラグである。車両1のステアリングECU71の初期状態としては姿勢安定化制御を実行していない状態に設定されるため、最初は、制御フラグFwは設定された状態にはなっていない。したがって、ステップS2からステップS3へ進む。
この結果、左前輪11と右前輪12との車輪速が共に加速していないと判定すると、つまり左前輪11と右前輪12との車輪速が共に一定の車輪速であれば、車両1は安定した状態で走行していると判定され、ステップS11へ進む。
この左右車輪速差変化率オン閾値αは、左前輪11あるいは右前輪12の空転状態を判定するための基準値である。そして、左前輪11と右前輪12の車輪速差の変化率の絶対値がこの左右車輪速差変化率オン閾値αを超えると、左前輪11あるいは右前輪12に空転が発生していると判定する。
左前輪11と右前輪12との車輪速差の変化率の絶対値が左右車輪速差変化率オン閾値αを超えていないと判定すると、ステップS11へ進む。
そして、右前輪12が空転していれば“左前輪11の車輪速VL<右前輪12の車輪速VR”、左前輪11が空転していれば“左前輪11の車輪速VL>右前輪12の車輪速VR”の関係になる。
したがって、右前輪12が空転していれば左前輪11と右前輪12との車輪速差の符号は“負”、左前輪11が空転していれば左前輪11と右前輪12との車輪速差の符号は“正”となる。
また、左前輪11の空転している状態がさらに進めば“正”、左前輪11の空転している状態が抑制され、左前輪11と右前輪12との車輪速差が小さくなる方向に収束する状態では“負”となる。
また、左前輪11と右前輪12との車輪速差の符号と、左前輪11と右前輪12との車輪速差の変化率の符号とが一致しない場合とは、左前輪11あるいは右前輪12が空転していても、左前輪11あるいは右前輪12の空転している状態が抑制され、左前輪11と右前輪12との車輪速差が小さくなる方向に収束する状態である。
ステップS5において左前輪11と右前輪12との車輪速差の符号と、左前輪11と右前輪12との車輪速差の変化率の符号とが一致しないと判定すると、ステップS11へ進む。一方、左前輪11と右前輪12との車輪速差の符号と、左前輪11と右前輪12との車輪速差の変化率の符号とが一致すると判定すると、続いてステップS6へ進む。
左右車輪速差オン閾値βは、左前輪11あるいは右前輪12に空転が発生している状況を、左前輪11と右前輪12との車輪速差から判定するための、たとえばヒステリシス特性の高い方のオン閾値である。
左前輪11と右前輪12との前左右車輪速の車輪速差の絶対値が左右車輪速差オン閾値βを超えていないと判定すると、左前輪11あるいは右前輪12に空転が発生している状況にはないことから、ステップS11へ進む。
このアクセル開度がアクセル開度オン閾値ηを超えているか否かの判定は、ステアリングECU71が制御系ECU72と通信を行うことで、制御系ECU72から取得したアクセル開度についての情報をもとに行う。また、このアクセル開度オン閾値ηは、運転者による車両1のアクセル操作を検出するための、例えばヒステリシス特性の高い方のオン閾値である。
ステップS11以降の処理は姿勢安定化制御を実行しない処理であり、ステアリングECU71のCPUは、付加トルクの方向を規定する付加トルク方向変数γに“0”を設定し、さらに続くステップS12では、姿勢安定化制御の制御周期を規定するタイマ値Timerに“0”を設定し、さらに次のステップS13では制御フラグFwを設定することなくステップS14へ進む。
ステップS14では、制御フラグFwに“1”が立っているか否か、つまり制御フラグFwが設定されているか否かを判定するが、このとき制御フラグFwは設定されてない。
このため、ステップS17へ進んで付加トルク制御により付加される付加トルクである付加トルクTwの設定値として“0”を設定し、付加トルク制御は行わず(ステップS16)、リターンからこの処理ルーチンを抜ける。
矢印Pの示す方向が付加トルク制御により付加される付加トルクの方向である。
この左右車輪速差オフ閾値β1は、左前輪11あるいは右前輪12に空転が発生しているときの、左前輪11と右前輪12との車輪速差を検出するための、たとえばヒステリシス特性を構成する低い方のオフ閾値である。
左前輪11と右前輪12との車輪速差の絶対値が左右車輪速差オフ閾値β1を超えている場合とは、左前輪11あるいは右前輪12に空転が生じており、車両1は不安定な状態で走行していることを示している。
また、左前輪11と右前輪12との車輪速差の絶対値が左右車輪速差オフ閾値β1を超えていない場合とは、左前輪11あるいは右前輪12に空転が生じておらず、車両1は安定した状態で走行していることを示している。
このアクセル開度オフ閾値η1は、アクセル開度、アクセルの操作を判定するための、たとえばヒステリシス特性を構成する低い方のオフ閾値であり、アクセル開度がアクセル開度オフ閾値η1よりも大きい場合、運転者によるアクセル操作が行われている状態、つまり車両1が加速状態であると判定する。
ステップS23では、タイマにフラグオン最大時間μ以下のタイマ値が設定されているか否かを判定する。このフラグオン最大時間μはフラグFwが設定される期間、つまり付加トルク制御が実行される最大時間を規定するものである。
従って、ステップS23においてタイマにフラグオン最大時間μを超えるタイマ値が設定されている場合、つまり付加トルク制御が実行されている期間が最大時間μを超える場合には、ステップS27へ進む。
ステップS24では、付加トルクの方向を規定する変数に、付加トルク方向変数γを設定する。
続くステップS25では、前記タイマにタイマ値として現在のタイマ値に制御周期Tsを加算する。
そして、制御フラグFwを設定し、つまり制御フラグFwに“1”を立てて(ステップS26)、次のステップS14へ進む。
続くステップS28では、タイマにタイマ値として“0”を設定する。そして、次のステップS29では“1”が立っていた制御フラグFwに“0”を設定し、ステップS14へ進む。
このため、ステップS17へ進んで付加トルクTwの設定値として“0”を設定し、付加トルク制御は行わず(ステップS16)、リターンからこの処理ルーチンを抜ける。
左前輪11と右前輪12との車輪速差と、その車輪速差の変化率とから左前輪11あるいは右前輪12の空転を検出し、左前輪11と右前輪12との駆動力の差により生じる車両の偏向を抑制する方向、つまり車輪速が小さい方向、高摩擦係数路面の方向へステアリングを操作するように、μスプリット路面上を発進する車両の電動パワーステアリング22において一定の付加トルクを一定時間付加する。
このため、簡素な構成でコストの増加を招くことなく、μスプリット路面上での車両の発進時あるいは加速時における“ハンドルの取られ”などを回避でき、車両の安定性向上を図れる操舵力制御装置を提供できる効果がある。
Claims (5)
- 運転者の操作に応じて左右一対の車輪の向きを変える操舵手段と、
前記操舵手段の操作に対して操舵補助力を付加する操舵補助手段と、
前記左右一対の各車輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
前記車輪速検出手段により検出した前記各車輪の車輪速から、前記左右一対の車輪の車輪速差と、その車輪速差の変化率とを演算する演算手段と、
前記演算手段により演算した車輪速差と車輪速差の変化率とをもとに、前記左右一対の車輪の加速時、前記左右一対の車輪の何れか一方に発生することのある一輪空転を検出する一輪空転検出手段と、
前記一輪空転検出手段により一輪空転を検出すると、前記操舵補助手段により前記一輪空転時に発生するステアリングの取られを抑制するに足る付加トルクを前記操舵手段の操作に対して付加するように前記操舵補助手段を制御する付加トルク制御手段と、
を備えることを特徴とする操舵力制御装置。 - 前記付加トルクは、前記車輪速差に応じた方向かつ大きさであって、予め定められた一定時間、前記操舵手段の操作に対して付加されることを特徴とする請求項1記載の操舵力制御装置。
- 前記一輪空転検出手段は、
前記車輪速検出手段により検出した前記各車輪の車輪速をもとに、前記各車輪間の車輪速差と、前記各車輪間の車輪速差の変化率とが共に増大している状態を判定する車輪速状態判定手段と、
前記車輪速状態判定手段により前記各車輪間の車輪速差と、前記車輪速差の変化率とが共に増大している状態が判定されると、前記各車輪間の車輪速差の大きさが第1閾値を超えているか否かを判定する車輪速差第1閾値判定手段と、
前記車輪速差第1閾値判定手段により前記各車輪間の車輪速差の大きさが前記第1閾値を超えていると判定されるとアクセル開度が所定の値を超えているか否かを判定するアクセル操作判定手段と、
前記車輪速状態判定手段により前記各車輪間の車輪速差と、前記車輪速差の変化率とが共に増大している状態が判定され、前記車輪速差第1閾値判定手段により前記各車輪間の車輪速差の大きさが第1閾値を超えていると判定され、かつアクセル操作判定手段によりアクセル開度が所定の値を超えていると判定されると、前記左右一対の車輪の内の何れか一方の一輪空転状態を判定する空転判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の操舵力制御装置。 - 前記付加トルク制御手段は、
前記車輪速状態判定手段により前記各車輪間の車輪速差と、前記車輪速差の変化率とが共に増大している状態が判定され、前記車輪速差第1閾値判定手段により前記各車輪間の車輪速差の大きさが第1閾値を超えていると判定され、かつアクセル操作判定手段によりアクセル開度が所定の値を超えていると判定されると、前記各車輪間の車輪速差をもとに、前記一輪空転時に発生するステアリングの取られを抑制する前記付加トルクの方向を決定する付加トルク方向決定手段と、
前記空転判定手段により一輪空転状態が判定され、前記車輪速差第1閾値判定手段により前記各車輪間の車輪速差の大きさが第1閾値を超えていると判定され、かつ前記アクセル操作判定手段によりアクセル開度が所定の値を超えていると判定されると、前記付加トルク方向決定手段により決定された方向へ、前記操舵手段の操作に対し、付加トルク設定値として大きさが設定されている一定トルクを前記決定された方向に応じた大きさにして付加するように前記操舵補助手段の制御を実行する付加トルク制御実行手段と、
を備えることを特徴とする請求項3記載の操舵力制御装置。 - 前記付加トルク制御実行手段により実行される前記操舵補助手段の制御を一定時間に規制する付加トルク制御時間規制手段をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の操舵力制御装置。
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