JP2012030588A - レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版及びその製造方法、並びに、レリーフ印刷版及びその製版方法 - Google Patents

レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版及びその製造方法、並びに、レリーフ印刷版及びその製版方法 Download PDF

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Abstract

【課題】得られる膜の組成均一性及び強靭性に優れ、小サイズ網点の折れの少ないレリーフ印刷版を得ることができるレーザー彫刻用樹脂組成物、前記レーザー彫刻用樹脂組成物を用いたレリーフ印刷版原版、それを用いたレリーフ印刷版の製版方法、及び、それにより得られたレリーフ印刷版を提供すること。
【解決手段】(成分A)縮合性基を1以上有し、かつラジカル連鎖移動性基を1以上有する化合物、(成分B)ラジカル重合性化合物、(成分C)ラジカル重合開始剤、及び、(成分D)バインダーポリマー、を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版及びその製造方法、並びに、レリーフ印刷版及びその製版方法に関する。
レリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。この方式では、フレキソ原版に直接レーザーを照射し、光熱変換で熱分解及び揮発を生じさせ、凹部を形成する。直彫りCTP方式は、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができる。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻する、又は、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をする、なども可能である。この方式に用いられるレーザーは高出力の炭酸ガスレーザーが用いられることが一般的である。炭酸ガスレーザーの場合、全ての有機化合物が照射エネルギーを吸収して熱に変換できる。一方、安価で小型の半導体レーザーが開発されてきているが、これらは可視及び近赤外光であるため、該レーザー光を吸収して熱に変換することが必要となる。
レーザー彫刻型のレリーフ印刷版(フレキソ版)におけるレリーフの凸部は、レリーフ印刷版原版(フレキソ原版)と同じ物性であるため、フレキソ原版自体が印刷に必要な柔軟性や硬度、耐薬品性等を有している必要がある。フレキソ原版は熱硬化又は光硬化により、所望の物性を付与されるが、可視及び近赤外光レーザーを光熱変換できるフレキソ原版を光硬化して作製することは困難であり、解決策として熱架橋によってレーザー彫刻型フレキソ原版を製造する方法が開示されている(特許文献1)。
また、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版としては、特許文献2及び3に記載されたものが知られている。
特開2008−63553号公報 欧州特許出願公開第1936438号明細書 特開2009−262370号公報
レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の熱硬化又は光硬化には、バインダーの架橋反応や連鎖重合反応などが利用されるが、膜中で生成した高分子が相分離し、膜の強靭性など所望の膜物性が得られない問題があることが明らかとなってきた。
本発明の目的は、得られる膜の組成均一性及び強靭性に優れ、小サイズ網点の折れの少ないレリーフ印刷版を得ることができるレーザー彫刻用樹脂組成物、前記レーザー彫刻用樹脂組成物を用いたレリーフ印刷版原版、それを用いたレリーフ印刷版の製版方法、及び、それにより得られたレリーフ印刷版を提供することである。
本発明の上記課題は以下の<1>、<8>〜<11>及び<13>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<7>、<12>、<14>及び<15>と共に以下に記載する。
<1>(成分A)縮合性基を1以上有し、かつラジカル連鎖移動性基を1以上有する化合物、(成分B)ラジカル重合性化合物、(成分C)ラジカル重合開始剤、及び、(成分D)バインダーポリマー、を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物、
<2>成分Dが、前記縮合性基と反応可能な基を有する、上記<1>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<3>前記縮合性基が、加水分解性シリル基及び/又はシラノール基である、上記<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<4>前記ラジカル連鎖移動性基が、チオール基又はジスルフィド基である、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<5>(成分E)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を2以上有する化合物を更に含有する、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<6>(成分F)縮合反応触媒を更に含有する、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<7>成分Bが、2以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を含む、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<8>上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<9>上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<10>上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、及び、前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含むレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<11>上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を熱架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程、を含むレリーフ印刷版の製版方法、
<12>彫刻後のレリーフ層表面を水系リンス液によりリンスするリンス工程を更に含む、上記<11>に記載のレリーフ印刷版の製版方法、
<13>上記<11>又は<12>に記載のレリーフ印刷版の製版方法により製造されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版、
<14>前記レリーフ層の厚さが、0.05mm以上10mm以下である、上記<13>に記載のレリーフ印刷版、
<15>前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、上記<13>又は<14>に記載のレリーフ印刷版。
本発明によれば、得られる膜の組成均一性及び強靭性に優れ、小サイズ網点の折れの少ないレリーフ印刷版を得ることができるレーザー彫刻用樹脂組成物、前記レーザー彫刻用樹脂組成物を用いたレリーフ印刷版原版、それを用いたレリーフ印刷版の製版方法、及び、それにより得られたレリーフ印刷版を提供することができた。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。また、「((成分A)縮合性基を1以上有し、かつラジカル連鎖移動性基を1以上有する化合物」等を単に「成分A」等ともいう。
(レーザー彫刻用樹脂組成物)
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、(成分A)縮合性基を1以上有し、かつラジカル連鎖移動性基を1以上有する化合物、(成分B)ラジカル重合性化合物、(成分C)ラジカル重合開始剤、及び、(成分D)バインダーポリマー、を含有することを特徴とする。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レーザー彫刻が施されるレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層用途以外にも、特に限定なく、他の用途にも広範囲に適用することができる。例えば、以下に詳述する凸状のレリーフ形成をレーザー彫刻により行う印刷版原版のレリーフ形成層のみならず、表面に凹凸や開口部を形成する他の材形、例えば、凹版、孔版、スタンプ等、レーザー彫刻により画像形成される各種印刷版や各種成形体の形成に適用することができる。
中でも、適切な支持体上に設けられるレリーフ形成層の形成に適用することが好ましい態様である。
なお、本明細書では、レリーフ印刷版原版の説明に関し、(成分D)バインダーポリマー、例えば、数平均分子量が500〜50万である樹脂を含有し、レーザー彫刻に供する画像形成層としての、表面が平坦な層であり、かつ未架橋の架橋性層をレリーフ形成層と称し、前記レリーフ形成層を架橋した層を架橋レリーフ形成層と称し、これをレーザー彫刻して表面に凹凸を形成した層をレリーフ層と称する。
以下、レーザー彫刻用樹脂組成物の構成成分について説明する。
<(成分A)縮合性基を1以上有し、かつラジカル連鎖移動性基を1以上有する化合物>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分A)縮合性基を1以上有し、かつラジカル連鎖移動性基を1以上有する化合物を含有する。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Aを含有することにより、膜中で生成した高分子が相分離することを抑制し、得られる膜の組成均一性及び強靭性に優れ、小サイズ網点の折れの少ないレリーフ印刷版を得ることができる。
縮合性基とは、縮合反応によって結合を形成することが可能な官能基である。
縮合反応とは、2つの官能基からそれぞれ1部分が分離し、それが結合して小さな分子を形成して脱離する。それと同時に2つの官能基の残った部分同士でも結合が生成して新しい官能基が生成する形式の反応である。例えば、2つのカルボン酸基の脱水反応、カルボン酸とアルコールの脱水反応、2つのアルコールの脱水反応、2つのアルコキシシリル基の脱アルコール反応、加水分解性シリル基又はシラノール基とヒドロキシ基との縮合反応などが挙げられる。
成分Aにおける縮合性基としては、加水分解性シリル基、シラノール基、カルボキシル基、及び、ヒドロキシ基が例示できる。中でも、加水分解性シリル基及びシラノール基が特に好ましい。
成分Aにおける縮合性基は、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
成分Aにおける縮合性基の数は、1以上であり、1〜6であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
加水分解性シリル基とは、加水分解性を有するシリル基のことであり、ケイ素原子に結合する加水分解性基としては、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、イソプロペノキシ基等を挙げることができる。
また、シリル基は加水分解してシラノール基となり、シラノール基は脱水縮合してシロキサン結合が生成する。
このような加水分解性シリル基又はシラノール基としては、下記式(1)で表される基が好ましい。
Figure 2012030588
前記式(1)中、R1〜R3の少なくともいずれか1つは、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基よりなる群から選択される加水分解性基、又は、ヒドロキシル基を表す。残りのR1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機置換基(例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基を挙げることができる。)を表す。
前記式(1)中、ケイ素原子に結合する加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
アルコキシ基としては、リンス性及び耐刷性の観点から、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基が更に好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基が特に好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が最も好ましい。
また、ハロゲン原子としては、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、Cl原子及びBr原子であることが好ましく、Cl原子であることがより好ましい。
前記加水分解性基は1個のケイ素原子に1〜4個の範囲で結合することができ、式(1)中における加水分解性基の総個数は2又は3の範囲であることが好ましい。特に3つの加水分解性基がケイ素原子に結合していることが好ましい。加水分解性基がケイ素原子に2個以上結合するときは、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
好ましい前記アルコキシ基として、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。これらの各アルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよいし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基などのジアルコキシモノアルキルシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシジアルキルシリル基を挙げることができる。
前記連鎖移動性基とは、連鎖重合反応で成長中のポリマー鎖からラジカルを受け取り、ポリマーの伸長を止めるが、ラジカルを受け取った連鎖移動剤はモノマーを攻撃して再び重合を開始させることができる官能基である。例えば、チオール基、ジスルフィド基、フェノール基、及び、アリル基などが挙げられる。
成分Aにおける連鎖移動性基としては、チオール基、ジスルフィド基、及び、アリル基が好ましく、チオール基、及び、ジスルフィド基がより好ましく、チオール基が特に好ましい。
成分Aにおける連鎖移動性基は、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
成分Aにおける連鎖移動性基の数は、1以上であり、1〜6であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
成分Aとしては、下記式(A1)〜(A4)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2012030588
(式(A1)〜式(A4)中、L1〜L5はそれぞれ独立に、二価の連結基を表し、X1〜X5はそれぞれ独立に、縮合性基を表し、mは0〜4の整数を表し、nは1〜5の整数を表し、Rは一価の置換基を表す。)
1〜L5における二価の連結基としては、炭素原子及び水素原子より構成された二価の基、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子より構成された二価の基であることが好ましく、炭素原子及び水素原子より構成された二価の基であることがより好ましい。
前記炭素原子及び水素原子より構成された二価の基としては、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、及び、これらを組み合わせた基が好ましく例示でき、直鎖又は分岐アルキレン基がより好ましく例示でき、直鎖アルキレン基が更に好ましく例示できる。
また、L1〜L5の炭素原子数としては、1〜20であることが好ましく、3〜8であることがより好ましく、3〜5であることが更に好ましく、3であることが特に好ましい。
1〜X5における縮合性基としては、加水分解性シリル基、シラノール基、カルボキシル基又はヒドロキシ基が好ましく、加水分解性シリル基又はシラノール基がより好ましい。上記加水分解性シリル基又はシラノール基としては、前記式(1)でで表される基が好ましい。
nは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
mは、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
Rにおける一価の置換基としては、アルキル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10)、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
また、式(A3)におけるベンゼン環上の水酸基の置換位置としては、特に制限はないが、L4に対してパラの位置であることが好ましい。
成分Aの具体例としては、以下に示すA−1〜A−6が好ましく例示できるが、成分Aがこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。なお、下記化学式において、Etはエチル基を表し、Meはメチル基を表す。
Figure 2012030588
本発明の樹脂組成物における成分Aは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物中に含まれる成分Aの含有量は、全固形分量に対して、0.2〜25重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましく、1.5〜5重量%であることが特に好ましい。
<(成分B)ラジカル重合性化合物>
本発明においては、レリーフ形成層中に架橋構造を形成する観点から、これを形成するために、レリーフ形成層用塗布液(本発明の樹脂組成物)には、(成分B)ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。
本発明に用いることができるラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。
また、本発明に用いることができるラジカル重合性化合物は、2以上の(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましく、2以上の(メタ)アクリロキシ基を有する化合物であることがより好ましい。
以下、ラジカル重合性化合物として用いられる、エチレン性不飽和結合を分子内に1つ有する単官能モノマー、及び、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する多官能モノマーについて説明する。
本発明の樹脂組成物は、膜中に架橋構造を形成するため、多官能モノマーが好ましく使用される。多官能モノマーの分子量としては、200〜2,000であることが好ましい。
単官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と一価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と一価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及び、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
多官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルが例示できる。
その具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が例示できる。
メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等が例示できる。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が例示できる。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等が例示できる。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が例示できる。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が例示できる。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系の多官能エチレン性不飽和化合物の例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加多官能モノマーも多官能エチレン性不飽和化合物として好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、下記式(A)で示される水酸基を含有するエチレン性不飽和化合物を付加させた1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を含有するウレタン系の多官能エチレン性不飽和化合物等が挙げられる。
CH2=C(R)COOCH2CH(R’)OH (A)
(ただし、R及びR’は、H又はCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号の各公報記載のエチレンオキサイド鎖を有するウレタン系の多官能エチレン性不飽和化合物も好適である。
更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する多官能エチレン性不飽和化合物類を用いることにより、短時間で架橋した樹脂組成物を得ることができる。
その他の多官能エチレン性不飽和化合物の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号の各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
本発明に用いることができるラジカル重合性化合物としては、飽和橋かけ環式多官能モノマーも例示できる。
飽和橋かけ環式多官能モノマーとしては、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を2つ有するビシクロ環、トリシクロ環構造を有する化合物等の縮環構造を有する脂環式多官能モノマーを用いることが物性を制御する観点から好ましい。
ビシクロ環、トリシクロ環構造としては、ノルボルネン骨格(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)、ジシクロペンタジエン骨格(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン)、アダマンタン骨格(トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)等の縮環構造の脂環式炭化水素構造が挙げられる。
飽和橋かけ環式多官能モノマーとしては、ビシクロ環、トリシクロ環部分にアミノ基が直接結合していてもよく、また、メチレン、エチレン等のアルキレン等の脂肪族部分を介して結合していてもよい。更に、これら縮環構造の脂環族炭化水素基の水素原子が、アルキル基等で置換されていてもよい。
本発明において、飽和橋かけ環式多官能モノマーとしては、下記より選択される脂環式多官能モノマーであることが好ましい。
Figure 2012030588
また、ラジカル重合性化合物としては、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類又はチオール類との付加反応物、更にハロゲノ基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類又はチオール類との置換反応物も好適である。
また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
重合性化合物としては、特に制限はなく、前記例示した化合物の他、公知の種々の化合物を用いることができ、例えば、特開2009−204962号公報の段落0098〜0124に記載の化合物などを使用してもよい。
本発明においては、ラジカル重合性化合物として、彫刻感度向上の観点から、分子内に硫黄原子を有する化合物を用いることが好ましい。
このように分子内に硫黄原子を有するラジカル重合性化合物としては、彫刻感度向上の観点から、特に、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有し、そのうち2つのエチレン性不飽和結合間を連結する部位に炭素−硫黄結合を有するラジカル重合性化合物(以下、適宜、「含硫黄多官能モノマー」と称する。)を用いることが好ましい。
本発明における含硫黄多官能モノマー中の炭素−硫黄結合を含んだ官能基としては、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホニル、スルホンアミド、チオカルボニル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、スルファミン酸、チオアミド、チオカルバメート、ジチオカルバメート、又は、チオ尿素を含む官能基が挙げられる。
また、含硫黄多官能モノマーにおける2つのエチレン性不飽和結合間を連結する炭素−硫黄結合を含有する連結基としては、−C−S−、−C−SS−、−NH(C=S)O−、−NH(C=O)S−、−NH(C=S)S−、及び、−C−SO2−から選択される少なくとも1つのユニットを含む連結基であることが好ましい。
また、含硫黄多官能モノマーの分子内に含まれる硫黄原子の数は1つ以上であれば特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、彫刻感度と塗布溶剤に対する溶解性のバランスの観点から、1〜10個が好ましく、1〜5個がより好ましく、1又は2個が更に好ましい。
一方、分子内に含まれるエチレン性不飽和部位の数は2つ以上であれば特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、架橋膜の柔軟性の観点で、2〜10個が好ましく、2〜6個がより好ましく、2〜4個が更に好ましい。
本発明における含硫黄多官能モノマーの分子量としては、形成される膜の柔軟性の観点から、120〜3,000であることが好ましく、120〜1,500であることがより好ましい。
また、本発明における含硫黄多官能モノマーは単独で用いてもよいが、分子内に硫黄原子を持たない多官能重合性化合物や単官能重合性化合物との混合物として用いてもよい。
分子内に硫黄原子を有する重合性化合物の具体例としては、例えば、特開2009−255510号公報の段落0032〜0037に記載のものを例示でき、ここに記載の化合物を本発明に使用してもよい。
本発明の樹脂組成物における成分Bは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物中に含まれる成分Bの含有量は、全固形分量に対して、2〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、10〜20重量%が特に好ましい。
<(成分C)ラジカル重合開始剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分C)ラジカル重合開始剤を含有する。
重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。以下、好ましい重合開始剤であるラジカル重合開始剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
また、ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤であっても、熱ラジカル重合開始剤であってもよいが、熱ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
本発明において、好ましいラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(l)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明においては、彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった観点から、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物がより好ましく、(c)有機過酸化物が特に好ましい。
前記(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、及び(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、特開2008−63554号公報の段落0074〜0118に挙げられている化合物を好ましく用いることができる。
また、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。
(c)有機過酸化物
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーアミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーオクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−ターシャリーブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
(l)アゾ系化合物
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
なお、本発明においては、前記(c)有機過酸化物が本発明における重合開始剤として、膜(レリーフ形成層)の架橋性及び彫刻感度向上の観点で特に好ましい。
彫刻感度の観点からは、この(c)有機過酸化物と、(成分D)バインダーポリマーとしてガラス転移温度が常温(20℃)以上のポリマーとを組み合わせた態様が特に好ましい。
これは、有機過酸化物を用いてレリーフ形成層を熱架橋により硬化させる際、ラジカル発生に関与しない未反応の有機過酸化物が残存するが、残存した有機過酸化物は、自己反応性の添加剤として働き、レーザー彫刻時に発熱的に分解する。その結果、照射されたレーザーエネルギーに発熱分が加算されるので彫刻感度が高くなったと推定される。
特にバインダーポリマーのガラス転移温度が常温(20℃)以上の場合、有機過酸化物の分解に由来して発生した熱が、バインダーポリマーに効率よく伝達され、かつバインダーポリマー自体の熱分解に有効に利用されるためより高感度化されるものと推定している。
なお、光熱変換剤の説明において詳述するが、この効果は、光熱変換剤としてカーボンブラックを用いる場合に著しい。これは、カーボンブラックから発生した熱が(c)有機過酸化物にも伝達される結果、カーボンブラックだけでなく有機過酸化物からも発熱するため、バインダーポリマー等の分解に使用されるべき熱エネルギーの発生が相乗的に生じるためと考えている。
また、好ましい併用成分として、有機過酸化物と後述する光熱変換剤とを組み合わせて用いることで、彫刻感度が極めて高くなるのでより好ましく、有機過酸化物と光熱変換剤であるカーボンブラックとを組み合わせて用いた態様が最も好ましい。
これは、有機過酸化物を用いてレリーフ形成層を熱架橋により硬化させる際、ラジカル発生に関与しない未反応の有機過酸化物が残存するが、残存した有機過酸化物は、自己反応性の添加剤として働き、レーザー彫刻時に発熱的に分解する。その結果、照射されたレーザーエネルギーに発熱分が加算されるので彫刻感度が高くなると推定される。
なお、光熱変換剤の説明において記述したが、この効果は、光熱変換剤としてカーボンブラックを用いる場合に著しい。これは、カーボンブラックから発生した熱が有機過酸化物にも伝達される結果、カーボンブラックだけでなく有機過酸化物からも発熱し、成分B等の分解に使用されるべき熱エネルギーの発生が相乗的に生じるためと考えている。
本発明の樹脂組成物における成分Cは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物中に含まれる成分Cの含有量は、全固形分量に対して、0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜3重量%がより好ましく、0.5〜1.5重量%が特に好ましい。
<(成分D)バインダーポリマー>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分D)バインダーポリマー(以下、単に「バインダー」ともいう。)を含有する。
バインダーポリマーは、レーザー彫刻用樹脂組成物に含有される高分子成分である。
バインダーポリマーの数平均分子量(Mn)としては、500〜50万であることが好ましい。
また、バインダーポリマーの重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算)は、1,000以上が好ましく、0.5万〜50万がより好ましく、1万〜40万が更に好ましく、1.5万〜30万が特に好ましい。
バインダーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、アクリル樹脂、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
本発明に用いることができるバインダーポリマーとしては、前記縮合性基と反応可能な基を有するバインダーポリマーであることが好ましい。
前記縮合性基と反応可能な基としては、特に限定されず、ヒドロキシル基、アルコキシ基、加水分解性シリル基及びシラノール基が好ましく用いられる。
これらの官能基は、ポリマー分子中のいずれかに存在すればよいが、特にポリマー鎖の側鎖に存在することが好ましい。このようなポリマーとしては、ビニル共重合体(ポリビニルアルコールやポリビニルアセタールなどのビニルモノマーの共重合体及びその誘導体)やアクリル樹脂(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系モノマーの共重合体及びその誘導体)が好ましく用いられる。ここで、ビニルモノマーの共重合体の誘導体とは、具体的には、ビニルアルコール単位の水酸基あるいは水酸基のα位を化学修飾して側鎖を延長した形態とし、その末端に水酸基やカルボキシル基といった成分Aの縮合性基と反応しうる官能基を導入したバインダーポリマーのことを指す。また、アクリル系モノマーの共重合体の誘導体としては、水酸基やカルボキシル基といった成分Aの縮合性基と反応する官能基を導入した樹脂が挙げられる。
本発明に用いることができるバインダーポリマーの製造方法は、特に限定されないが、成分Aの縮合性基と反応可能な基を有する重合性モノマーを重合又は共重合して製造する方法などが挙げられる。
本発明に用いることができるバインダーポリマーとしては、ヒドロキシル基を有するバインダーポリマーが特に好ましく用いられる。
〔ヒドロキシル基を有するバインダーポリマー〕
以下、ヒドロキシル基を有するバインダーポリマー(以下、適宜、「特定ポリマー」ともいう。)について説明する。このバインダーポリマーは水不溶、かつ、炭素数1〜4のアルコールに可溶のバインダーポリマーであることが好ましい。
特定ポリマーとして、水性インキ適性とUVインキ適性を両立しつつ、かつ彫刻感度が高く皮膜性も良好であるという観点で、ポリビニルブチラール(PVB)及びその誘導体、側鎖にヒドロキシル基を有するアクリル樹脂、及び側鎖にヒドロキシル基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明に用いることができる特定ポリマーは、本発明においてレリーフ形成層を構成するレーザー彫刻用樹脂組成物の好ましい併用成分である、後述する光熱変換剤と組み合わせた場合に、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上のものとすることで、彫刻感度が向上するため、特に好ましい。このようなガラス転移温度を有するバインダーポリマーを以下、非エラストマーと称する。即ち、エラストマーとは、一般的に、ガラス転移温度が常温以下のポリマーであるとして学術的に定義されている(科学大辞典 第2版、編者 国際科学振興財団、発行 丸善株式会社、P154参照)。従って、非エラストマーとはガラス転移温度が常温を超える温度であるポリマーを指す。バインダーポリマーのガラス転移温度の上限には制限はないが、200℃以下であることが取り扱い性の観点から好ましく、25℃以上120℃以下であることがより好ましい。
ガラス転移温度が常温(20℃)以上のポリマーを用いる場合、特定ポリマーは常温(20℃)未満ではガラス状態をとるが、このためゴム状態をとる場合に比較して、熱的な分子運動はかなり抑制された状態にある。レーザー彫刻においては、レーザー照射時に、赤外線レーザーが付与する熱に加え、所望により併用される光熱変換剤の機能により発生した熱が、周囲に存在する特定ポリマーに伝達され、これが熱分解、消散して、結果的に彫刻されて凹部が形成される。
本発明の好ましい態様では、特定ポリマーの熱的な分子運動が抑制された状態の中に光熱変換剤が存在すると特定ポリマーへの熱伝達と熱分解が効果的に起こるものと考えられ、このような効果によって彫刻感度が更に増大したものと推定される。
特定ポリマーの特に好ましい態様である非エラストマーの具体例を以下に挙げる。
(1)ポリビニルアセタール誘導体
本明細書においては、以下、ポリビニルアセタール及びその誘導体を単にポリビニルアセタール誘導体ともいう。すなわち、本明細書においてポリビニルアセタール誘導体は、ポリビニルアセタール及びその誘導体を包含する概念で使用され、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られる)を環状アセタール化することにより得られる化合物の総称を示す。
ポリビニルアセタール誘導体中のアセタール含量(原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数を100%とし、アセタール化されるビニルアルコール単位のモル%)は、30〜90%が好ましく、50〜85%がより好ましく、55〜78%が特に好ましい。
ポリビニルアセタール誘導体中のビニルアルコール単位としては、原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数に対して、10〜70モル%が好ましく、15〜50モル%がより好ましく、22〜45モル%が特に好ましい。
また、ポリビニルアセタール誘導体は、その他の成分として、酢酸ビニル単位を有していてもよく、その含量としては0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜10モル%が更に好ましい。ポリビニルアセタール誘導体は、更に、その他の共重合単位を有していてもよい。
ポリビニルアセタール誘導体としては、ポリビニルブチラール誘導体、ポリビニルプロピラール誘導体、ポリビニルエチラール誘導体、ポリビニルメチラール誘導体などが挙げられ、なかでもポリビニルブチラール誘導体(以下、「PVB誘導体」ともいう。)が好ましい。なお、これらの記載においても、例えば、ポリビニルブチラール誘導体とは、本明細書においては、ポリビニルブチラール及びその誘導体を包含する意味で用いられ、他のポリビニルアセタール誘導体類についても同様である。
ポリビニルアセタール誘導体の重量平均分子量としては、彫刻感度と皮膜性のバランスを保つ観点で、5,000〜800,000であることが好ましく、8,000〜500,000であることがより好ましい。更に、彫刻カスのリンス性向上の観点からは、50,000〜300,000であることが特に好ましい。
以下、ポリビニルアセタールの特に好ましい例として、ポリビニルブチラールを挙げて説明するが、これに限定されない。
ポリビニルブチラール誘導体の構造の一例は、以下に示す通りであり、これらの各構成単位を任意の割合で含んで構成されるが、lは50モル%以上であることが好ましい。
Figure 2012030588
PVBの誘導体としては、市販品としても入手可能であり、その好ましい具体例としては、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で、積水化学工業(株)製の「エスレックB」シリーズ、「エスレックK(KS)」シリーズ、電気化学工業(株)製の「デンカブチラール」が好ましく、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で、積水化学工業(株)製の「エスレックB」シリーズ、電気化学工業(株)製の「デンカブチラール」がより好ましい。
これらのうち、特に好ましい市販品を、上記式中の、l、m、及びnの値と、分子量とともに以下に示す。積水化学工業(株)製の「エスレックB」シリーズでは、「BL−1」(l=61、m=3、n=36、重量平均分子量1.9万)、「BL−1H」(l=67、m=3、n=30、重量平均分子量2.0万)、「BL−2」(l=61、m=3、n=36、重量平均分子量約2.7万)、「BL−5」(l=75、m=4、n=21、重量平均分子量3.2万)、「BL−S」(l=74、m=4、n=22、重量平均分子量2.3万)、「BM−S」(l=73、m=5、n=22、重量平均分子量5.3万)、「BH−S」(l=73、m=5、n=22、重量平均分子量6.6万)が、また、電気化学工業(株)製の「デンカブチラール」シリーズでは「#3000−1」(l=71、m=1、n=28、重量平均分子量7.4万)、「#3000−2」(l=71、m=1、n=28、重量平均分子量9.0万)、「#3000−4」(l=71、m=1、n=28、重量平均分子量11.7万)、「#4000−2」(l=71、m=1、n=28、重量平均分子量15.2万)、「#6000−C」(l=64、m=1、n=35、重量平均分子量30.8万)、「#6000−EP」(l=56、m=15、n=29、重量平均分子量38.1万)、「#6000−CS」(l=74、m=1、n=25、重量平均分子量32.2万)、「#6000−AS」(l=73、m=1、n=26、重量平均分子量24.2万)が、それぞれ挙げられる。
PVB誘導体を特定ポリマーとして用いてレリーフ形成層を製膜する際には、溶媒に溶かした溶液をキャストし乾燥させる方法が、膜の表面の平滑性の観点で好ましい。
(2)アクリル樹脂
バインダーポリマーとしては、アクリル樹脂を用いることができる。
アクリル樹脂としては、ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂が好ましく挙げられる。
ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂の合成に用いられるアクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類(メタ)アクリルアミド類であって分子内にヒドロキシル基を有するものが好ましい。この様な単量体の具体例としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、アクリル樹脂としては、上記ヒドロキシル基を有するアクリル単量体以外のアクリル単量体を共重合成分として含むこともできる。このようなアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体のモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
更に、ウレタン基やウレア基を有するアクリル単量体を含んで構成される変性アクリル樹脂も好ましく使用することができる。
これらの中でも、水性インキ耐性の観点で、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレートなど脂肪族環状構造を有する(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
また、特定ポリマーとして、フェノール類とアルデヒド類とを酸性条件下で縮合させた樹脂であるノボラック樹脂を用いることができる。
好ましいノボラック樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−またはm−/p−、m−/o−、o−/p−混合のいずれでもよい。)の混合物とホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂などが挙げられる。
これらのノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
特定ポリマーとして、ヒドロキシル基を側鎖に有するエポキシ樹脂を用いることも可能である。好ましい具体例としては、ビスフェノールAとエピクロヒドリンとの付加物を原料モノマーとして重合して得られるエポキシ樹脂が好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
特定ポリマーの中でも、レリーフ形成層としたときのリンス性及び耐刷性の観点から、ポリビニルブチラール誘導体が特に好ましい。
特定ポリマーに含まれるヒドロキシル基の含有量は、前記いずれの態様のポリマーにおいても、0.1〜15mmol/gであることが好ましく、0.5〜7mmol/gであることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物における成分Dは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物中に含まれる成分Dの含有量は、全固形分量に対して、10〜50重量%が好ましく、15〜45重量%がより好ましく、20〜40重量%が特に好ましい。
<(成分E)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を2以上有する化合物>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分E)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を2以上有する化合物を含有することが好ましい。
また、成分Eは、連鎖移動性基を有しない。
成分Eにおける加水分解性シリル基又はシラノール基は、前記式(1)で表される基が好ましい。
成分Eにおける加水分解性シリル基及びシラノール基の総数は、2以上であり、2〜6であることが好ましく、2又は3がより好ましい。
また、前記Aにおける式(1)の好ましい態様は、成分Eにおける式(1)においても同様である。
本発明における成分Eは、前記式(1)で表される基を1つ以上有する化合物であることが好ましく、2つ以上有する化合物であることがより好ましい。特に加水分解性シリル基を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。すなわち、分子内に加水分解性基が結合したケイ素原子を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。
成分Eは、硫黄原子、エステル結合、ウレタン結合、エーテル結合、ウレア結合、又は、イミノ基を少なくとも有することが好ましい。
中でも、成分Eは、架橋性の観点から、硫黄原子を含有することが好ましく、また、彫刻カスの除去性(リンス性)の観点から、アルカリ水で分解しやすいエステル結合、ウレタン結合、又は、エーテル結合(特にオキシアルキレン基に含まれるエーテル結合)を含有することが好ましい。
また、本発明における成分Eは、エチレン性不飽和結合を有していない化合物であることが好ましい。
本発明における成分Eは、複数の前記式(1)で表される基が二価の連結基を介して結合している化合物が挙げられ、このような二価の連結基としては、効果の観点からスルフィド基(−S−)、イミノ基(−N(R)−)、又は、ウレタン結合(−OCON(R)−又は−N(R)COO−)を有する連結基が好ましい。なお、Rは水素原子又は置換基を表す。Rにおける置換基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、又は、アラルキル基が例示できる。
成分Eの合成方法としては、特に制限はなく、公知の方法により合成することができる。一例として、上記特定構造を有する連結基を含む成分Eの代表的な合成方法を以下に示す。
<連結基としてスルフィド基を有し、かつ加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物の合成法>
連結基としてスルフィド基を有する成分E(以下、適宜、「スルフィド連結基含有成分E」と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、ハロゲン化炭化水素基を有する成分Eと硫化アルカリの反応、メルカプト基を有する成分Eとハロゲン化炭化水素の反応、メルカプト基を有する成分Eとハロゲン化炭化水素基を有する成分Eの反応、ハロゲン化炭化水素基を有する成分Eとメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Eとメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Eとメルカプト基を有する成分Eの反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とメルカプト基を有する成分Eの反応、ケトン類とメルカプト基を有する成分Eの反応、ジアゾニウム塩とメルカプト基を有する成分Eの反応、メルカプト基を有する成分Eとオキシラン類との反応、メルカプト基を有する成分Eとオキシラン基を有する成分Eの反応、及び、メルカプタン類とオキシラン基を有する成分Eの反応、メルカプト基を有する成分Eとアジリジン類との反応等の合成方法が例示できる。
<連結基としてイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物の合成法>
連結基としてイミノ基を有する成分E(以下、適宜、「イミノ連結基含有成分E」と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する成分Eとハロゲン化炭化水素の反応、アミノ基を有する成分Eとハロゲン化炭化水素基を有する成分Eの反応、ハロゲン化炭化水素基を有する成分Eとアミン類の反応、アミノ基を有する成分Eとオキシラン類との反応、アミノ基を有する成分Eとオキシラン基を有する成分Eの反応、アミン類とオキシラン基を有する成分Eの反応、アミノ基を有する成分Eとアジリジン類との反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Eとアミン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Eとアミノ基を有する成分Eの反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とアミノ基を有する成分Eの反応、アセチレン性不飽和三重結合を有する化合物とアミノ基を有する成分Eの反応、イミン性不飽和二重結合を有する成分Eと有機アルカリ金属化合物の反応、イミン性不飽和二重結合を有する成分Eと有機アルカリ土類金属化合物の反応、及び、カルボニル化合物とアミノ基を有する成分Eの反応等の合成方法が例示できる。
<連結基としてウレタン結合(ウレイレン基)を有し、かつ加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物の合成法>
連結基としてウレイレン基を有する成分E(以下、適宜、「ウレイレン連結基含有成分E」と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する成分Eとイソシアン酸エステル類の反応、アミノ基を有する成分Eとイソシアン酸エステルを有する成分Eの反応、及び、アミン類とイソシアン酸エステルを有する成分Eの反応等の合成方法が例示できる。
成分Eとしては、下記式(E−1)又は式(E−2)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2012030588
(式(E−1)及び式(E−2)中、RBはエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又は、イミノ基を表し、L1はn価の連結基を表し、L2は二価の連結基を表し、Ls1はm価の連結基を表し、L3は二価の連結基を表し、n及びmはそれぞれ独立に2以上の整数を表し、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は、一価の有機置換基を表す。ただし、R1〜R3の少なくともいずれか1つは、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基よりなる群から選択される加水分解性基、又は、ヒドロキシル基を表す。)
前記式(E−1)及び式(E−2)におけるR1〜R3は、前記式(1)におけるR1〜R3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記RBは、リンス性及び膜強度の観点から、エステル結合又はウレタン結合であることが好ましく、エステル結合であることがより好ましい。
前記L1〜L3における二価又はn価の連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子から構成された基であることが好ましく、炭素原子、水素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子から構成された基であることがより好ましい。前記L1〜L3の炭素数は、2〜60であることが好ましく、2〜30であることがより好ましい。
また、前記L1は、硫黄原子を含まないことが好ましい。
前記Ls1におけるm価の連結基は、硫黄原子と、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子とから構成された基であることが好ましく、アルキレン基、又は、アルキレン基、スルフィド基及びイミノ基を2以上組み合わせた基であることがより好ましい。前記Ls1の炭素数は、2〜60であることが好ましく、6〜30であることがより好ましい。
前記n及びmはそれぞれ独立に、2〜10の整数であることが好ましく、2〜6の整数であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
1のn価の連結基及び/若しくはL2の二価の連結基、又は、L3の二価の連結基は、彫刻カスの除去性(リンス性)の観点から、エーテル結合を有することが好ましく、オキシアルキレン基に含まれるエーテル結合を有することがより好ましい。
式(E−1)又は式(E−2)で表される化合物の中でも、架橋性等の観点から、式(A−1)において、L1のn価の連結基及び/又はL2の二価の連結基が硫黄原子を有する基であることが好ましい。
本発明に用いることができる成分Eの具体例を以下に示す。例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ウレア等を挙げることができる。その他にも、以下に示す化合物が好ましいものとして挙げられるが、本発明はこれらの化合物に制限されるものではない。
Figure 2012030588
Figure 2012030588
Figure 2012030588
Figure 2012030588
前記各式中、Rは以下の構造から選択される部分構造を表す。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
Figure 2012030588
Figure 2012030588
前記各式中、Rは以下に示す部分構造を表す。R1は前記したものと同義である。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
Figure 2012030588
成分Eは、適宜合成して得ることも可能であるが、市販品を用いることがコストの面から好ましい。成分Eとしては、例えば、信越化学工業(株)、東レ・ダウコーニング(株)、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ(株)、チッソ(株)等から市販されているシラン製品などの市販品がこれに相当するため、本発明の樹脂組成物に、これら市販品を、目的に応じて適宜選択して使用してもよい。
本発明における成分Eとして、加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を1種用いて得られた部分加水分解縮合物、又は、2種以上用いて得られた部分共加水分解縮合物を用いることができる。以下、これらの化合物を「部分(共)加水分解縮合物」と称することがある。
部分(共)加水分解縮合物前駆体としてのシラン化合物の中でも、汎用性、コスト面、膜の相溶性の観点から、ケイ素上の置換基としてメチル基及びフェニル基から選択される置換基を有するシラン化合物であることが好ましく、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランが好ましい前駆体として例示される。
この場合、部分(共)加水分解縮合物としては、上記したようなシラン化合物の2量体(シラン化合物2モルに水1モルを作用させてアルコール2モルを脱離させ、ジシロキサン単位としたもの)〜100量体、より好ましくは2〜50量体、更に好ましくは2〜30量体としたものが好適に使用できるし、2種以上のシラン化合物を原料とする部分共加水分解縮合物を使用することも可能である。
なお、このような部分(共)加水分解縮合物は、シリコーンアルコキシオリゴマーとして市販されているものを使用してもよく(例えば、信越化学工業(株)などから市販されている。)、また、常法に基づき、加水分解性シラン化合物に対し当量未満の加水分解水を反応させた後に、アルコール、塩酸等の副生物を除去することによって製造したものを使用してもよい。製造に際しては、前駆体となる原料の加水分解性シラン化合物として、例えば、上記したようなアルコキシシラン類やアシロキシシラン類を使用する場合は、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、トリエチルアミン等のアルカリ性有機物質等を反応触媒として部分加水分解縮合すればよく、クロロシラン類から直接製造する場合には、副生する塩酸を触媒として水及びアルコールを反応させればよい。
本発明に用いることができる成分Eとしては、下記S−1〜S−12が好ましく例示できる。なお、下記化学式において、Etはエチル基を表し、Meはメチル基を表す。
Figure 2012030588
Figure 2012030588
Figure 2012030588
本発明の樹脂組成物における成分Eは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物中に含まれる成分Eの含有量は、全固形分量に対して、2〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましく、10〜20重量%が特に好ましい。
<各成分の好ましい重量比>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物における各成分の重量比率としては、以下に示す態様であることが好ましい。
成分Aの含有量/成分Bの含有量は、0.01〜10が好ましく、0.05〜1がより好ましく、0.1〜0.5が特に好ましい。
成分Cの含有量/成分Bの含有量は、0.001〜1が好ましく、0.01〜0.5がより好ましく、0.05〜0.2が特に好ましい。
成分Dの含有量/成分Bの含有量は、0.1〜10が好ましく、0.2〜5がより好ましく、0.5〜2が特に好ましい。
成分Eの含有量/成分Bの含有量は、0.1〜10が好ましく、0.2〜5がより好ましく、0.5〜2が特に好ましい。
成分Eの含有量/成分Aの含有量は、0.1〜100が好ましく、1〜20がより好ましく、3〜10が特に好ましい。
成分Cの含有量/成分Aの含有量は、0.005〜1が好ましく、0.01〜0.5がより好ましく、0.02〜0.2が特に好ましい。
上記範囲であると、本発明の効果をより発揮できる。
<(成分F)縮合反応触媒>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、(成分F)縮合反応触媒を含有することが好ましい。
前記縮合反応触媒としては、縮合反応において一般に用いられる反応触媒であれば、限定なく適用でき、例えば、酸性触媒、塩基性触媒、及び、金属錯体触媒が好ましく例示できる。
酸性触媒、及び、塩基性触媒としては、酸、又は、塩基性化合物をそのまま用いるか、あるいは水又は有機溶剤などの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する。)を用いることが好ましい。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、又は、塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。
酸性触媒及び塩基性触媒の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸、ヘテロポリ酸、無機固体酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類酸化物、四級アンモニウム塩化合物、四級ホスホニウム塩化合物などが挙げられる。
金属錯体触媒としては、周期律表の2、3、4及び5族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素化合物が好ましく挙げられる。
これらの中でも、成分Fとしては、酸又は塩基性化合物が好ましく、塩基性化合物がより好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物における成分Fは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物における成分Fの含有量は、成分Dの全重量に対して、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましい。
<(成分G)光熱変換剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、更に、光熱変換剤を含有することが好ましい。すなわち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を用いて製造したレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を、700〜1,300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、光熱変換剤としては、700〜1,300nmに極大吸収波長を有する化合物を用いることが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、700〜1,300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が好ましく挙げられる。本発明において好ましく用いられる染料としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素及び特開2008−63554号公報の段落0124〜0137に記載の染料を挙げることができる。
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。また、顔料としては、特開2009−178869号公報の段落0122〜0125に記載の顔料が例示できる。
これらの顔料のうち、好ましいものはカーボンブラックである。
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。また、カーボンブラックとしては、特開2009−178869号公報の段落0130〜0134に記載されたものが例示できる。
本発明の樹脂組成物における成分Gは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レーザー彫刻用樹脂組成物中おける光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該樹脂組成物の固形分全重量の0.01〜30重量%の範囲が好ましく、0.05〜20重量%がより好ましく、0.1〜10重量%が特に好ましい。
<(成分H)可塑剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。
可塑剤は、レーザー彫刻用樹脂組成物により形成された膜を柔軟化する作用を有するものであり、バインダーポリマーに対して相溶性のよいものである必要がある。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、アジピン酸ビスブトキシエチル等や、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)等を好ましく用いられる。
これらの中でも、アジピン酸ビスブトキシエチルが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物における成分Hは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
柔軟な膜物性を保つ観点から、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中に可塑剤の含有量は、全固形分濃度の1〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、10〜30重量%が特に好ましい。
<(成分I)溶媒>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製する際に、溶媒を用いることが好ましい。
溶媒としては、有機溶媒を用いることが好ましい。
非プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが挙げられる。
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましく例示できる。
<その他の添加剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、公知の各種添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。例えば、充填剤、ワックス、プロセス油、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、重合禁止剤、着色剤等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、その他の成分として、ラジカル移動性基を有しておらず、かつ加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を1つのみ有する化合物を使用してもよい。
ラジカル移動性基を有しておらず、かつ加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を1つのみ有する化合物として、具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリメチルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノール、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が例示できる。
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版)
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第1の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。
また、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第2の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有する。
本発明において「レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版」とは、レーザー彫刻用樹脂組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、架橋される前の状態、並びに、光及び/若しくは熱により硬化された状態の両方又はいずれか一方のものをいう。
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、熱架橋した架橋レリーフ形成層を有するものであることが好ましい。
本発明において「レリーフ形成層」とは、架橋される前の状態の層をいい、すなわち、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、必要に応じ、乾燥が行われていてもよい。
本発明において「架橋レリーフ形成層」とは、前記レリーフ形成層を架橋した層をいう。前記架橋は、光及び/又は熱により行われることが好ましい。また、前記架橋は樹脂組成物が硬化される反応であれば特に限定されず、成分A同士の反応による架橋構造を含む概念であるが、成分Aが他の成分と反応して架橋構造を形成していてもよい。また、重合性化合物を用いる場合には、前記架橋には、重合性化合物の重合による架橋も含まれる。
架橋レリーフ形成層を有する印刷版原版をレーザー彫刻することにより「レリーフ印刷版」が作製される。
また、本発明において「レリーフ層」とは、レリーフ印刷版におけるレーザーにより彫刻された層、すなわち、レーザー彫刻後の前記架橋レリーフ形成層をいう。
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、前記のような成分を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。(架橋)レリーフ形成層は、支持体上に設けられることが好ましい。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要により更に、支持体と(架橋)レリーフ形成層との間に接着層を、また、(架橋)レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
<レリーフ形成層>
レリーフ形成層は、前記本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、架橋性の層である。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版によるレリーフ印刷版の作製態様としては、レリーフ形成層を架橋させて架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版とした後、架橋レリーフ形成層(硬質のレリーフ形成層)をレーザー彫刻することによりレリーフ層を形成してレリーフ印刷版を作製する態様であることが好ましい。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができ、また、レーザー彫刻後にシャープな形状のレリーフ層を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
レリーフ形成層は、レリーフ形成層用の前記の如き成分を有するレーザー彫刻用樹脂組成物を、シート状又はスリーブ状に成形することで形成することができる。レリーフ形成層は、通常、後述する支持体上に設けられるが、製版、印刷用の装置に備えられたシリンダーなどの部材表面に直接形成したり、そこに配置して固定化したりすることもでき、必ずしも支持体を必要としない。
以下、主としてレリーフ形成層をシート状にした場合を例に挙げて説明する。
<支持体>
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
<接着層>
レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に用いることができる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
<保護フィルム、スリップコート層>
レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面への傷や凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、25〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。保護フィルムは、例えば、PETのようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はマット化されていてもよい。保護フィルムは、剥離可能であることが好ましい。
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法)
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の形成は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用塗布液組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいは、レーザー彫刻用樹脂組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して樹脂組成物から溶媒を除去する方法でもよい。
中でも、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることが好ましく、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を熱架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることがより好ましい。
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしてもよい。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶媒を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることによって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
<層形成工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含むことが好ましい。
レリーフ形成層の形成方法としては、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用樹脂組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法や、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶媒を除去する方法が好ましく例示できる。
レーザー彫刻用樹脂組成物は、例えば、成分A、成分B及び成分D、並びに、任意成分として、成分F〜成分H等を適当な溶媒に溶解させ、次いで、成分C及び成分Eを溶解させることによって製造することができる。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版における(架橋)レリーフ形成層の厚さは、架橋の前後において、0.05mm以上10mm以下が好ましく、0.05mm以上7mm以下がより好ましく、0.05mm以上3mm以下が更に好ましい。
<架橋工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程を含む製造方法であることが好ましい。
レリーフ形成層が光重合開始剤を含有する場合には、光重合開始剤のトリガーとなる活性光線をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層を架橋することができる。
光は、レリーフ形成層全面に行うことが好ましい。光(「活性光線」ともいう。)としては可視光、紫外光、及び電子線が挙げられるが、紫外光が最も好ましい。レリーフ形成層の支持体等、レリーフ形成層を固定化するための基材側を裏面とすれば、表面に光を照射するだけでもよいが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムであれば、更に裏面からも光を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行ってもよいし、保護フィルムを剥離した後に行ってもよい。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行ってもよい。
レリーフ形成層が熱重合開始剤を含有する場合には(上記の光重合開始剤が熱重合開始剤にもなり得る。)、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる(熱により架橋する工程)。加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
レリーフ形成層の架橋方法としは、レリーフ形成層を表面から内部まで均一に硬化(架橋)可能という観点で、熱による架橋の方が好ましい。
レリーフ形成層を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。未架橋のレリーフ形成層をレーザー彫刻すると、レーザー照射部の周辺に伝播した余熱により、本来意図していない部分が溶融、変形しやすく、シャープなレリーフ層が得られない場合がある。また、素材の一般的な性質として、低分子なものほど固形ではなく液状になり、すなわち粘着性が強くなる傾向がある。レリーフ形成層を彫刻する際に発生する彫刻カスは、低分子の材料を多く用いるほど粘着性が強くなる傾向がある。低分子である重合性化合物は架橋することで高分子になるため、発生する彫刻カスは粘着性が少なくなる傾向がある。
前記架橋工程が、光により架橋する工程である場合は、活性光線を照射する装置が比較的高価であるものの、印刷版原版が高温になることがないので、印刷版原版の原材料の制約がほとんどない。
前記架橋工程が、熱により架橋する工程である場合には、特別高価な装置を必要としない利点があるが、印刷版原版が高温になるので、高温で柔軟になる熱可塑性ポリマーは加熱中に変形する可能性がある等、使用する原材料は慎重に選択する必要がある。
熱架橋の際には、熱重合開始剤を加えることが好ましい。熱重合開始剤としては、遊離基重合(free radical polymerization)用の商業的な熱重合開始剤として使用され得る。このような熱重合開始剤としては、例えば、適当な過酸化物、ヒドロペルオキシド又はアゾ基を含む化合物が挙げられる。代表的な加硫剤も架橋用に使用できる。熱架橋性(heat−curable)の樹脂、例えばエポキシ樹脂、を架橋成分として層に加えることにより熱架橋も実施され得る。
(レリーフ印刷版及びその製版方法)
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことが好ましく、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を熱架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことがより好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層を架橋及びレーザー彫刻して得られたレリーフ層を有するレリーフ印刷版であり、本発明のレリーフ印刷版の製版方法により製版されたレリーフ印刷版であることが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、水性インキを印刷時に好適に使用することができる。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法における層形成工程及び架橋工程は、前記レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法における層形成工程及び架橋工程と同義であり、好ましい範囲も同様である。
<彫刻工程>
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程を含むことが好ましい。
彫刻工程は、前記架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
彫刻工程に用いられる赤外線レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)又は半導体レーザーが好ましい。特に、ファイバー付き半導体赤外線レーザー(FC−LD)が好ましく用いられる。一般に、半導体レーザーは、CO2レーザーに比べレーザー発振が高効率且つ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものが更に好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
また、ファイバー付き半導体レーザーは、更に光ファイバーを取り付けることで効率よくレーザー光を出力できるため、本発明における彫刻工程には有効である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。例えば、ビームプロファイルはトップハット形状とすることができ、安定に版面にエネルギーを与えることができる。半導体レーザーの詳細は、「レーザーハンドブック第2版」レーザー学会編、実用レーザー技術 電子通信学会等に記載されている。
また、本発明のレリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法に好適に用いることができるファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るレリーフ印刷版の製版に使用することができる。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法では、彫刻工程に次いで、更に、必要に応じて下記リンス工程、乾燥工程、及び/又は、後架橋工程を含んでもよい。
リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程。
乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程。
前記工程を経た後、彫刻表面に彫刻カスが付着しているため、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ形成層を更に架橋させる後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
本発明に用いることができるリンス液のpHは、9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11以上であることが更に好ましい。また、リンス液のpHは14以下であることが好ましく、13.5以下であることがより好ましく、13.1以下であることが更に好ましい。上記範囲であると、取り扱いが容易である。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶媒として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶媒を含有していてもよい。
リンス液は、界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、レリーフ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。
また、界面活性剤としては、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等も挙げられる。更に、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、リンス液の全重量に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%であることがより好ましい。
以上のようにして、支持体等の任意の基材表面にレリーフ層を有するレリーフ印刷版が得られる。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
また、レリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、25℃において、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
本発明のレリーフ印刷版は、フレキソ印刷機による水性インキでの印刷に特に好適であるが、凸版用印刷機による水性インキ、油性インキ及びUVインキ、いずれのインキを用いた場合でも、印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。本発明のレリーフ印刷版は、リンス性に優れており彫刻カスの残存がなく、かつ、得られたレリーフ層が弾性に優れるため、水性インク転移性及び耐刷性に優れ、長期間にわたりレリーフ層の塑性変形や耐刷性低下の懸念がなく、印刷が実施できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製>
(成分A)表1に記載の化合物、(成分B)ラジカル重合性化合物、(成分D)樹脂、及び、以下に示した素材を混合した。成分A、成分B及び成分Dの固形分濃度は、表1に示した。成分A、成分B及び成分D以外の他の材料は、下記比率で混合した。
・(成分A)表1に記載の化合物 表1に記載の重量部
・(成分B)ラジカル重合性化合物 表1に記載の重量部
・(成分D)樹脂 表1に記載の重量部
・アジピン酸ビスブトキシエチル 25重量部
・カーボンブラック 4重量部
・DBU(縮合反応触媒) 1重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒) 20重量部
上記各成分を撹拌羽根及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱し溶解した。この溶液の温度を40℃にした後、下記の成分E及び成分Cを添加して、更に10分間撹拌して流動性のある樹脂組成物を作製した。なお、成分Eの固形分濃度は、表1に示した。
・(成分E)アルコキシシラン化合物 表1に記載の重量部
・パーブチルZ(成分C、日油(株)製) 1重量部
PET基板上に3mm厚のスペーサー(枠)を設置し、得られた樹脂組成物を70℃に保持して、スペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延した。オーブンに塗布物を入れ90℃1時間保持したのち、更に85℃3時間加熱を行って、架橋レリーフ層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を得た。
<断面電子線マイクロアナライザー(EPMA)測定(膜内組成均一性評価)>
得られたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版をエポキシ樹脂で包埋し、ミクロトームで版断面を露出させた後、日本電子(株)製JXA−8800Mを使用し、10μmの解像度で珪素のEPMAマッピングを行った。得られた版断面内の珪素信号強度の変動係数(標準偏差/平均値)を膜内組成の均一性の尺度とした。変動係数の値が小さいほど、膜内組成の均一性に優れる。
評価結果を表1に示す。
<破断伸び評価(強靱性評価)>
得られたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版から架橋レリーフ層を剥離し、剥離した架橋レリーフ層を、幅6mm、初期試料長20mmとなるように切り出し、試料片とした。試料片を、デジタルフォースゲージ(日本電産シンポ(株)製、FGP−5)を用いて、5mm/分の速度で試料を引っ張り、試料伸び率と印加力とを測定した。厚みは別途測定した。試料が破断した時の印加応力(MPa)及び破断伸び率(%)を求め、弾性係数を印加応力/破断伸び率×100として求めた。本測定は、JIS K6251に準拠して行った。評価結果を表1に示す。
<小点折れ発生頻度評価>
レーザー彫刻用印刷版原版の架橋レリーフ形成層に対し、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)彫刻機を用い、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方の2×2ドット網点部をラスター彫刻した。
炭酸ガスレーザー彫刻機は、高品位CO2レーザーマーカML−9100シリーズ((株)キーエンス製)を用いた。
1cm四方の2×2ドット網点部を標準印圧にて100回印刷を繰り返したのち、1回目と100回目の網点画像を比較して網点ドットの消失個数を計測し、全網点ドットに対する個数比率を求め、これを小点折れ発生頻度とした。消失網点画像ドットに対応するレリーフ網点を光学顕微鏡で観察し、網点が破損していることを確認した。
小点折れ発生頻度が、0.1%未満を◎、0.1%以上0.5%未満を○、0.5%以上2.0%未満を△、2.0%以上を×と評価した。
評価結果を表1に示す。
(実施例2〜30、並びに、比較例1及び2)
成分A、成分B、成分D及び成分Eを表1に記載の成分及び添加量とした以外は、実施例1と同様な方法により、レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を、実施例2〜30、並びに、比較例1及び2について、それぞれ得た。
得られた各レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版について、実施例1と同様な方法により、膜内組成均一性評価、破断伸び評価、及び、小点折れ発生頻度評価をそれぞれ行った。
評価結果を表1に示す。
Figure 2012030588
なお、上記表1における略号が示す化合物は以下の通りである。また、上記表1におけるA−1〜A−6、及び、S−1、S−5、S−7、S−8及びS−12は、前述したものと同様である。
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製)
DCP:トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製)
TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製)
PVB:ポリビニルブチラール(デンカブチラール#3000−2、電気化学工業(株)製、Mw=9万)
SI:スチレンイソプレンブロックポリマー(Quintac 3421、日本ゼオン(株)製)

Claims (15)

  1. (成分A)縮合性基を1以上有し、かつラジカル連鎖移動性基を1以上有する化合物、
    (成分B)ラジカル重合性化合物、
    (成分C)ラジカル重合開始剤、及び、
    (成分D)バインダーポリマー、を含有することを特徴とする
    レーザー彫刻用樹脂組成物。
  2. 成分Dが、前記縮合性基と反応可能な基を有する、請求項1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
  3. 前記縮合性基が、加水分解性シリル基及び/又はシラノール基である、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
  4. 前記ラジカル連鎖移動性基が、チオール基又はジスルフィド基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
  5. (成分E)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を2以上有する化合物を更に含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
  6. (成分F)縮合反応触媒を更に含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
  7. 成分Bが、2以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を熱架橋した架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、及び、
    前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む
    レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、
    前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、
    前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程、を含む
    レリーフ印刷版の製版方法。
  12. 彫刻後のレリーフ層表面を水系リンス液によりリンスするリンス工程を更に含む、請求項11に記載のレリーフ印刷版の製版方法。
  13. 請求項11又は12に記載のレリーフ印刷版の製版方法により製造されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版。
  14. 前記レリーフ層の厚さが、0.05mm以上10mm以下である、請求項13に記載のレリーフ印刷版。
  15. 前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、請求項13又は14に記載のレリーフ印刷版。
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