以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係るインバータ制御装置を含む電気自動車用の駆動電源装置を示すブロック図である。詳細な図示は省略するが、本例の電気自動車は、三相交流電力の永久磁石モータ4を走行駆動源として走行する車両であり、モータ4は電気自動車の車軸に結合されている。以下、電気自動車を例に説明するが、ハイブリッド自動車(HEV)にも本発明を適用可能である。
本例の電気自動車は、上述した三相交流モータ4と、モータ4の電源である、バッテリ1と、当該バッテリ1の直流電力を交流電力に変換するインバータ3と、リレー2と、充電器8と、電子制御ユニット(ECU)11を備える。
バッテリ1は、リレー2を介してインバータ3に接続されている。バッテリ1には、例えばリチウムイオン電池などの二次電池が搭載されている。リレー2は、車両のキースイッチ(図示しない)のON/OFF操作に連動して、ECU11より開閉駆動する。
インバータ3は、複数のスイッチング素子(絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT)Q1〜Q6と、各スイッチング素子Q1〜Q6に並列に接続され、スイッチング素子Q1〜Q6の電流方向とは逆方向に電流が流れる整流素子(ダイオード)D1〜D6を有し、バッテリ1の直流電力を交流電力に変換して、モータ4に供給する。本例では、2つのスイッチング素子を直列に接続した3対の回路がバッテリ1に並列に接続され、各対のスイッチング素子間とモータ4の三相入力部とがそれぞれ電気的に接続されている。各スイッチング素子Q1〜Q6には、同一のスイッチング素子が用いられ、例えば、絶縁ゲートパイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられる。
図1に示す例でいえば、スイッチング素子Q1とQ2、スイッチング素子Q3とQ4、スイッチング素子Q5とQ6がそれぞれ直列に接続され、スイッチング素子Q1とQ2の間とモータ4のU相、スイッチング素子Q3とQ4の間とモータ4のV相、スイッチング素子Q5とQ6の間とモータ4のW相がそれぞれ接続されている。各スイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフの切り換えは、コントローラ10により制御される。なお、コントローラ10による、各スイッチング素子Q1〜Q6の動作の詳細については後述する。
インバータ3は、コンデンサ5、抵抗6及び電圧センサ7を備え、コンデンサ5、抵抗6及び電圧センサ7は、リレー2と各スイッチング素子Q1〜Q6との間に接続されている。コンデンサ5は、バッテリ1から供給される直流電力を平滑化するために設けられる。電圧センサ7は、コンデンサ5の電圧を検出するセンサである。
充電器8は、リレー2とインバータ3との間に接続されている。リレー2が閉じられると、充電器8とバッテリ1との間が電気的に導通し、充電器8はバッテリ1を充電する。
ECU11は、本例の電気自動車を全体的に制御する部分であり、例えばモータ4の回転トルクや、変速機(図示しない)の変速比などを制御する。またECU11は、リレー2のオン及びオフの制御に加えて、コントローラ10からの信号に基づきインバータ3の故障状態を表示部(図示しない)等に表示し、ユーザにインバータ3の故障を知らせる。
次に、図2a〜図2cを用いて、コンデンサ5の蓄電される電荷が、スイッチング素子Q1〜Q6の寄生容量で消費される原理を説明する。図2a〜図2cは、インバータ3の回路の一部であって、コンデンサ5と、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2の直列回路との並列接続部分を示す。図2aはスイッチング素子Q1をオンにスイッチング素子Q2をオフにした状態を示し、図2bはスイッチング素子Q1をオフにスイッチング素子Q2をオンにした状態を示し、図2cはスイッチング素子Q1をオンにスイッチング素子Q2をオフにした状態を示す。また、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2にそれぞれ接続されているコンデンサC1及びコンデンサC2は、それぞれスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2の寄生容量を示している。
まず、リレー2がオンである状態で、バッテリ1からの電力がインバータ3に供給されると、コンデンサ5に電荷が蓄電され、コンデンサ5の電圧は、規定容量に応じた電圧まで上昇する。
次に、コンデンサ5に電荷が蓄積されている状態でリレー2をオフにし、図2aに示すようにスイッチング素子Q1をオン状態にし、スイッチング素子Q2をオフ状態にする。コンデンサ5に蓄積された電荷がリカバリ電流(Ir)として移動し、当該電荷はスイッチング素子Q1を流れ、寄生容量C2に蓄電される。
そして、リレー2のオフ状態を維持させつつ、図2bに示すように、スイッチング素子Q1をオフにし、スイッチング素子Q2をオンにする。スイッチング素子Q2を閉じることで、寄生容量C2とスイッチング素子Q2による閉回路が形成されるため、寄生容量C2に帯電されていた電荷は、スイッチング素子Q2の抵抗成分により放電される。また、スイッチング素子Q1はオフ状態であるため、リカバリ電流(Ir)が寄生容量C1に流れ、電荷が寄生容量C1に帯電される分、コンデンサ5の電荷は、減少する。
その後、リレー2のオフ状態を維持させつつ、図2cに示すように、スイッチング素子Q1をオンにし、スイッチング素子Q2をオフにする。スイッチング素子Q1を閉じることで、寄生容量C1とスイッチング素子Q1による閉回路が形成されるため、寄生容量C1に帯電されていた電荷は、スイッチング素子Q1の抵抗成分により放電される。またスイッチング素子Q2はオフ状態であるため、リカバリ電流(Ir)が寄生容量C2に流れ、電荷が寄生容量C2に帯電される分、コンデンサ5の電荷は、さらに減少する。
そして、図2a〜図2cに示すように、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2のオン及びオフの動作を繰り返すことにより、コンデンサ5に蓄電されていた電荷は放電される。スイッチング素子Q3〜Q6についても、同様に、一対のスイッチング素子Q3〜Q6を、それぞれオン及びオフの動作を互いに行うことで、コンデンサ5に蓄電されていた電荷は放電される。
上記のように、コンデンサ5の蓄電された電荷はスイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御することにより放電される。しかし、例えばスイッチング素子Q1に異常が生じ、U相において欠相故障が生じている場合を仮定する。かかる場合には、少なくともスイッチング素子Q1を含む一対のスイッチング素子Q1〜Q6をオン及びオフ制御させたとしても、コンデンサ5の電荷は放電されない。そのため、U相が異常な場合における、コンデンサ5の電荷消費量は、全ての相が正常な場合における、コンデンサ5の電荷消費量に比べて減少する。そのため、放電前のコンデンサ5の電圧に対する放電後のコンデンサ5の電圧について、U相で欠相故障が生じている場合の放電後の電圧の方が、全ての相で正常な場合の電圧より高い電圧となる。また、U相で欠相故障が生じている場合の電荷の放電速度、言い換えると、単位時間あたりのコンデンサ5の電圧降下度は、全ての相で正常な場合の放電速度に比べて遅くなる。
本例は、上記のように、コンデンサ5に蓄電された電荷をスイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御することにより放電させて、電圧センサ7の検出電圧に基づき、放電状態を検出し、当該放電状態に応じて、インバータ3の欠損故障の有無を検出する。
以下、本例において、インバータ3の欠損故障を検出するための制御内容を説明する。
リレー2がオフの状態で、コントローラ10はスイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御しつつ、電圧センサ7からコンデンサ5の電圧を検出する。各スイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフは、コントローラ10から送信されるパルス信号により動作されるため、パルス信号の周期及び送信時間により、コンデンサ5の放電の時間が調整される。コントローラ10は、スイッチング信号であるパルス信号及び電圧センサ7の検出電圧から、時間に対するコンデンサ5の降下電圧を算出する。
コントローラ10には、三相の全ての相が異常であることを判定するための判定電圧(Vc)が予め設定されている。判定電圧(Vc)は、三相の全ての相が欠相故障である場合の単位時間あたりのコンデンサ5の降下電圧(Vco)に対して、約30%の電圧を上乗せした電圧値である。三相が欠相故障である場合のコンデンサ5の降下電圧は、抵抗6の抵抗値による消費量に影響し、抵抗値は予め設定される値であるため、判定電圧(Vc)は回路設計の段階で決まる。なお、上乗せするパーセンテージは、必ずしも30パーセントとする必要はなく、例えば10%又は20%であってもよい。なお、三相が欠損故障である場合のコンデンサ5の降下電圧は、全てのスイッチング素子Q1〜Q6がオフの状態における、コンデンサ5の降下電圧に相当する。
コントローラ10は、電圧センサ7の検出電圧に基づいて算出された、単位時間のあたりの降下電圧(Vx)と判定電圧(Vc)とを比較する。そして、降下電圧が判定電圧より小さい場合には、スイッチング素子Q1〜Q6により放電が行われていないため、コントローラ10は全ての相で欠損故障が生じていると、判断する。
コントローラ10は、三相の全ての相で欠相故障が生じているか否かを判断した後に、一相で欠相故障が生じているか否かを判断する。コントローラ10には、欠相故障を同条件で判断するための閾値電圧(Vs)が設定されている。コントローラ10は、電圧センサ7の検出電圧が閾値電圧(Vs)になる時点までの検出電圧を用いて、三相の欠損故障を判断し、電圧センサ7の検出電圧が閾値電圧(Vs)になる時点から所定時間(ta)経過するまでの検出電圧を用いて、一相の欠相故障を判断する。放電開始する時のコンデンサ5の電圧は、蓄電された電荷量によって異なり、固定化されておらず、任意の電圧値となる。そのため、本例では、一相の欠相故障を検出する際に、閾値電圧(Vs)を基準とした放電電圧を用いて、欠相故障を検出することによって、同条件で一相の欠相故障を検出することができる。
またコントローラ10には、二相が正常であり一相が欠相している場合の判定電圧(Va)が予め設定されている。ここで、ある基準電圧に対する、所定の時間あたりの降下電圧について、三相が正常である場合の降下電圧の方が、一相が欠相している場合の降下電圧より大きくなる。また、三相が正常である場合の降下電圧と一相が欠相している場合の降下電圧との差は、時間の経過と共に大きくなる。そのため、電圧センサ7の検出電圧が閾値電圧(Vs)に達した時点(時間t1)から所定時間(ta)が経過した時点(時間t2)を基準として、三相が正常である場合のコンデンサの予測電圧(Vt)との電圧差として判定電圧(Va)を設定する。電圧(Vt)は、各スイッチング素子Q1〜Q6と抵抗6により設定される値であって、コンデンサ5の電圧がVsである時点から、正常な各スイッチング素子Q1〜Q6をオン及びオフ動作をさせて、所定時間(ta)経過後のコンデンサ5の予測電圧である。判定電圧(Va)は、予想電圧(Vt)に対する基準電位差であり、判定電圧(Va)の大きさに応じて、欠相故障が生じている相の数が設定される。例えば、一相の欠相故障が生じている場合には、時間t2の検出電圧は、予想電圧(Vt)より高い電圧をとり、二相の欠相故障が生じている場合には、時間t2の検出電圧は、予想電圧(Vt)よりさらに高い電圧をとる。本例では、判定電圧(Va)は一相の欠相故障を検出するための判定電圧とする。
そして、時間(t2)において、予測電圧(Vt)とコンデンサ5の検出電圧との電位差(Vy)が、判定電圧(Va)より小さい場合は、放電が正常にされていることになる。一方、時間(t2)において、予測電圧(Vt)と検出電圧との電位差(Vy)が、判定電圧(Va)より大きい場合には、放電が正常にされておらず、コンデンサ5の電圧の降下が不充分であって、少なくとも一相において欠損故障が生じていることになる。
次に図3を用いて、放電時間に対するコンデンサ5の電圧の特性を示しつつ、本例の欠相故障の検出方法について説明する。図3は電荷の放電時間に対するコンデンサ5の電圧特性を示す。ここでは、スイッチング素子Q1で異常が生じており、U相で欠相故障が生じている状態であることを仮定して、説明する。
まずコンデンサ5には電荷が蓄電されており、コンデンサ5の電圧がV1である状態から、放電を開始する。コンデンサ5の電圧は、V1から徐々に降下し、時間t1の時点でVsに達する(グラフaを参照)。コントローラ10は、放電開始時の電圧(V1)と閾値電圧(Vs)との電圧差及び時間(t1)から、単位時間あたりの降下電圧(Vx)を算出する。そして、コントローラ10は、降下電圧(Vx)と判定電圧(Vc)とを比較し、全ての相で欠相故障が生じているか否かを検出する。全ての相で欠損故障が生じている時の放電電圧は、少なくとも一相が正常である時の放電電圧より小さくなる。そのため、全ての相で欠損故障が生じている場合には、グラフaと比較して傾きが小さくなり、電圧V1の時点から放電を開始するとグラフbのように推移する。なお、グラブbの傾きは、降下電圧(Vco)に相当する。同様に、判定電圧(Vc)を傾きとし、電圧V1を基準とする電圧特性を示すと、グラフcで示される。
すなわち、単位時間あたりの放電電圧(Vx)が判定電圧(Vc)より小さい場合には、降下電圧が小さく、コントローラ10により、全ての相で欠損故障が生じていると判断される。ここでは、単位時間あたりの放電電圧(Vx)が判定電圧(Vc)より大きいため、コントローラ10は、全ての相で欠損故障が生じていないと判断される。
次に、コントローラ10は、時間(t2)に達するまで、コンデンサ5の放電を行う。時間(t2)は時間(t1)から所定時間(ta)が経過した時点の時間である。コントローラ10は、時間(t2)の時点の検出電圧(V2)と予測電圧(Vt)との電圧差(Vy)を算出し、当該電圧差(Vy)と判定電圧(Va)とを比較し、少なくとも一相で欠相故障が生じているか否かを検出する。図3のグラフdに示すように、三相で正常な場合には、時間(t2)の時点で、コンデンサ5の検出電圧は予測電圧(Vt)になる。ここでは、一相で欠相故障が生じているためには、放電が十分にされず、グラフaに示すように、時刻t2の時点で検出電圧(V2)は予測電圧(Vt)より高くなり、検出電圧(V2)と予測電圧(Vt)との電圧差は判定電圧(Va)より大きくなる。そして、時間(t2)の電圧差が判定電圧(Va)より大きいため、コントローラ10は、少なくとも一相で欠相故障が生じている、と判断する。
次に、図4を用いて、本例の制御手順を説明する。図4は、本例の制御手順を示すフローチャートである。
まずステップS1にて、ECU11は、バッテリ1の充電が完了したか否かを判定し、充電が完了した場合には、ステップS2へ遷る。ステップS2にて、ECU11は,リレー2をオフにし、リレーをオフにしたことを示す制御信号をコントローラ10に送信する。ステップS3にて、コントローラ10は、各スイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御し、コンデンサ5に蓄積された電荷を放電する。ステップS4にて、電荷の放電中に、コントローラ10は電圧センサ7によりコンデンサ5の電圧を検出する。
ステップS5にて、コントローラ10は、ステップS4による検出電圧に基づいて、単位時間あたりの降下電圧(Vx)を検出する。ステップS6にて、コントローラ10は、降下電圧(Vx)と判定電圧(Vc)とを比較する。
降下電圧(Vx)が判定電圧(Vc)以下の場合には、コントローラ10は、三相の全ての相で欠相故障が生じている、と判断する(S61)。ステップS62にて、コントローラ10は、インバータ3に異常が発生している時の制御処理として、例えば、ECU11に異常信号を送信し、ECU11が、警告灯(図示しない)を表示させることによりユーザに対して異常を報知する。また、ECU11は、コントローラ10より異常信号を受信した場合に、ユーザに対してメールを送信することで、インバータ3に異常が生じていることを知らせてもよい。これによりユーザは車両に搭乗する前に、異常を知ることができるため、ユーザに対し使い勝手のよいシステムを提供することができる。
一方、降下電圧(Vx)が判定電圧(Vc)より大きい場合には、ステップS7に遷る。ステップS7にて、コントローラ10は、ステップS4の検出電圧に基づいて、検出電圧が閾値電圧(Vs)に達したか否かを判断する。検出電圧が閾値電圧(Vs)に達していない場合には、ステップS4に戻り、コントローラ10は、上記のステップS4〜ステップS6の制御を行う。そして、検出電圧が閾値電圧(Vs)以下になった場合に、一相の欠相故障が生じているか否かの判断を行うために、ステップS8に遷る。ステップS8にて、コントローラ10は、電圧センサ7により、コンデンサ5を検出する。ステップS9にて、コントローラ10は、放電時間が時間(t2)を経過したか否かを判断する。ここで、放電時間とは、ステップS3による放電が開始されてからの経過時間を指す。そして、ステップS7により検出電圧が電圧(Vs)になった時間が時間(t1)に相当し、ステップS9の時間(t2)が当該時間(t1)に所定時間(ta)を加えた時間となる。ステップS9により、放電時間が時間(t2)を経過していない場合には、ステップS8に戻り、放電時間が時間(t2)を経過した場合には、ステップS10に遷る。
ステップS10にて、コントローラ10は、ステップS8の検出電圧に基づいて、電圧差(Vy)を算出する。具体的には、コントローラ10は、時間(t1)に対する検出電圧(V1(=Vs))に基づき、三相で正常な場合における、時間(t2)に対する予測電圧(Vt)を算出する。そして、ステップS8の検出電圧のうち、放電時間(t2)に対応する検出電圧(V2)と予測電圧(Vt)と差をとることで、電位差(Vy)が算出される。
ステップS11にて、コントローラ10は、ステップS10の電位差(Vy)と判定電圧(Vc)とを比較する。電位差(Vy)が判定電圧(Vc)より小さい場合には、コントローラ10は、三相の全てで正常である判断し(S12)、制御を終了する。一方、電位差(Vy)が判定電圧(Vc)以上である場合には、コントローラ10は少なくとも一相で欠相故障が生じていると判断する(ステップS111)。そして、ステップS112にて、コントローラ10は、ステップS62と同様に、インバータ3に異常が発生している時の制御処理を行う。
上記のように、本例は、スイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御しコンデンサ5の電荷を放電させる。そして、電圧センサ7の検出電圧に応じて、降下電圧(Vx)又は電位差(Vy)を算出することで、コンデンサ5の放電電圧を算出し、当該放電電圧に基づいてインバータ3の欠相故障を判断する。これにより、本例は、バッテリ1から各相に流れる電流を用いることなく欠相故障を検出することができ、充電後等、モータ4が通電されていない状態であっても、欠相故障を検出することができる。またユーザが車両を使用するまでに、欠相故障を行うことができるため、ユーザは車両を使用する前に欠相故障を知ることもできる。またモータ4に通電せずに欠相故障を検出することができるため、故障箇所の特定の際に、モータ4を除外することができ、故障判断のための判断時間を短縮することができる。
また本例は、スイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御することにより変化する、コンデンサの電圧から、各スイッチング素子Q1〜Q6の放電状態を検出し、当該放電状態に応じて、欠相故障を検出する。これにより、本例は、バッテリ1から各相に流れる電流を用いることなく欠相故障を検出することができ、充電後等、モータ4が通電されていない状態であっても、欠相故障を検出することができる。
また本例は、リレー2をオフにし、バッテリ1による電力がモータに供給されない状態で、スイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御し、欠相故障を検出する。これにより、バッテリ1とインバータ3が導電されていない状態であっても欠相故障を検出することができる。
また本例は、コンデンサ5の電圧が閾値電圧(Vs)まで降下した後に、電圧センサ7により検出される検出電圧に基づいて欠相故障を検出する。コンデンサ5の電圧は、スイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御する際のコンデンサ5の電荷量に応じて、任意の電圧となる。そのためスイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフの制御開示を放電開始電圧とし、当該放電開始電圧に対する降下電圧を放電電圧として算出した場合には、常時同条件を担保できない可能性がある。本例では、放電電圧を算出する際の基準電圧が、閾値電圧(Vs)により定まるため、同条件を担保させることができる。
また本例は、降下電圧(Vx)と判定電圧(Vc)とを比較し、比較した結果に応じて、全ての相で欠相故障が発生しているか否かを検出する。これにより、バッテリ1から各相に流れる電流を用いることなく、全ての相の欠相故障を検出することができる。
また本例は、予測電圧(Vt)とコンデンサ5の電圧との電位差(Vy)と、判定電圧(Va)をと比較し、比較した結果に応じて、少なくとも一相で欠相故障が発生しているか否かを検出する。これにより、バッテリ1から各相に流れる電流を用いることなく、少なくとも一相の欠相故障を検出することができる。
なお、本例は、時間(t2)の時点の検出電圧(V2)と予測電圧(Vt)との電圧差(Vy)を算出し、当該電圧差(Vy)と判定電圧(Va)とを比較したが、単位時間あたりの降下電圧を算出し、所定の判定電圧と比較することで欠相故障を検出してもよい。また電位差を算出する際の基準電圧は、必ずしも閾値電圧(Vs)にする必要はなく、他の電圧値を閾値にしてもよい。
本発明にかかる放電電圧は、時間当たりのコンデンサ5の降下電圧と、ある基準電圧に対する電圧センサ7の検出電圧を含み、上記の降下電圧(Vx)、検出電圧(V2)と予測電圧(Vt)との電圧差(Vy)に相当する。
すなわち、ある基準となる電圧に対して変化した電圧が、コンデンサ5の蓄電電荷の放電量に相当するため、本発明における放電電圧は、時間を基準とした大きさであってもよく、また、ある電圧値を基準とした大きさであってもよい。
なお、本例は制御部分をコントローラ10及びECU11に分けているが、コントローラ10及びECU11を含む1つの制御部としてもよい。
なお、本例のバッテリ1は本発明の「直流電源」に相当し、コンデンサ5は「蓄電手段」と、電圧センサ7は「電圧検出手段」に、スイッチング素子Q1〜Q6は「複数対のスイッチング素子」に、コントローラ10は「制御手段」に相当する。
《第2実施形態》
図5は、発明の他の実施形態に係るインバータ制御装置を含む電気自動車の駆動電源装置を示すブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、バッテリ1の温度を検出する温度センサ9を設ける点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであるため、その記載を援用する。
本例の電気自動車は、スイッチング素子Q1〜Q6の温度を検出する温度センサ9をさらに備える。温度センサ9は、スイッチング素子Q1〜Q6毎にそれぞれ設けられ、コントローラ10により制御される。
コントローラ10には、図6に示すテーブルが予め格納されている。当該テーブルは、各スイッチング素子Q1〜Q6の温度の平均温度に対する予測電圧(Vt)及び判定電圧(Va)の対応関係を示している。図6はコントローラ10に格納されているテーブルを示す。
ここで、本例の電気自動車に、スイッチング素子Q1〜Q6を搭載した場合に、当該スイッチング素子Q1〜Q6が取り得る温度範囲を、Tmin以上でありTmax以下とする。図5のテーブルに格納される検出温度は、Tmin以上でありTmax以下を範囲として、所定の温度間隔毎の離散的な検出値である。検出温度(Tn)は、温度(Tmin)より高く、温度(Tmax)より低い温度である。ただし、nは任意の自然数である。
コントローラ10は、各スイッチング素子Q1〜Q6に設けられた温度センサ9から複数の検出温度を抽出し、当該複数の検出温度から平均温度を算出する。コントローラ10は、図5のテーブルを参照し、当該平均温度に対応する予測電圧(Vt)及び判定電圧(Va)を抽出する。例えば、各スイッチング素子Q1〜Q6の平均温度がTnである場合には、コントローラ10は、Vtnを予想電圧(Vt)として、Vanを判定電圧(Va)として、抽出する。すなわちコントローラ10は、テーブルに基づき、予測電圧(Vtn)及び判定電圧(Van)を抽出することにより、予測電圧(Vt)及び判定電圧(Va)を補正する。
そして、コントローラ10は、第1実施形態の制御と同様に、放電時間(t2)に対応する検出電圧と補正された予想電圧(Vtn)との差をとり電位差(Vyn)を算出し、当該電位差(Vyn)と補正された判定電圧(Van)とを比較し、比較結果に応じて、少なくとも一相が欠相故障であるか否かを判定する。
ところで、スイッチング素子Q1〜Q6に対するコンデンサ5の放電特性は、図7に示すように、温度依存性を有している。図7は、電荷の放電時間に対するコンデンサ5の電圧特性を示す。
コンデンサ5の放電特性は、スイッチング素子Q1〜Q6の温度特性に寄与し、スイッチング素子Q1〜Q6の温度が高い場合には、コンデンサ5の蓄積電荷の放電量が多くなり、スイッチング素子Q1〜Q6の温度が低い場合には、コンデンサ5の蓄積電荷の放電量が少なくなる。
ここで、スイッチング素子Q1〜Q6が取り得る温度範囲を、Tmin以上でありTmax以下とし、各スイッチング素子Q1〜Q6は正常であって、三相の全ての相で欠損故障が生じていないとする。かかる条件下で、コントローラ10によりスイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御し、コンデンサ5の蓄積電荷を放電させた場合に、放電時間に対するコンデンサ5の電圧の特性は、図7に示すような特性になる。ただし、図7において、グラフe1は各スイッチング素子Q1〜Q6の温度(Tmax)の時の放電特性を、グラフe2は各スイッチング素子Q1〜Q6の温度(Tn)の時の放電特性を、グラフe3は各スイッチング素子Q1〜Q6の温度(Tmin)の時の放電特性を示す。
図7に示すように、各スイッチング素子Q1〜Q6の温度がTmaxである場合には、電荷の放電量が多いため、単位時間当たりのコンデンサ5の降下電圧は大きくなり、最も傾きの大きいグラフとなる。そして、各スイッチング素子Q1〜Q6の温度がTnである場合には、単位時間当たりのコンデンサ5の降下電圧は2番目に高くなり、2番目に傾きの大きいグラフとなる。そして、各スイッチング素子Q1〜Q6の温度がTminである場合には、電荷の放電量が少ないため、単位時間あたりのコンデンサ5の降下電圧は最も小さくなり、最も傾きの小さいグラフとなる。
次に、図3を参照して、実施の形態1の制御における、スイッチング素子Q1〜Q6の温度の影響について、説明する。各スイッチング素子Q1〜Q6が正常であって、コンデンサ5の電圧が閾値電圧(Vs)に達した時点(時間t1)から、所定時間(ta)が経過した時点(時間t2)の予測電圧(Vt)は、上記の通り、各スイッチング素子Q1〜Q6の温度に応じて変動する。そして、電位差(Vy)も各スイッチング素子Q1〜Q6に応じて変動する。
そのため、本例は、温度センサ9の検出温度に応じて、予測電圧(Vt)及び判定電圧(Va)を補正することで、各スイッチング素子Q1〜Q6の温度変化に対して、欠相故障の判断精度を高めている。
上記のように、本例は、温度センサ9の検出温度に応じて、予測電圧(Vt)及び判定電圧(Va)を補正する。これにより、本例は、インバータ3の温度条件の違いによる、欠相故障の誤検知を防ぐことができ、検出精度を高めることができる。
なお、本例は各スイッチング素子Q1〜Q6に設けられた温度センサ9の検出温度の平均温度に応じて、予想電圧(Vt)及び判定電圧(Va)を補正するが、必ずしも検出温度の平均温度である必要はない。例えば、コントローラ10は、各スイッチング素子Q1〜Q6のそれぞれに対応する複数の検出温度の中で、最も低い温度又は最も高い温度に基づいて、補正を行ってもよい。
また、本例は、各スイッチング素子Q1〜Q6に設けられた温度センサ9の検出温度の平均温度に応じて、判定電圧(Vc)を補正してもよく、また、以下の第3の実施形態及び第4の実施形態の判定電圧をほせいしてもよい。
なお本例の温度センサ9は本発明の「温度検出手段」に相当する。
《第3実施形態》
発明の他の実施例に係るインバータ制御装置を含む電気自動車について説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、コントローラ10の制御内容の一部が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであるため、その記載を援用する。図8〜図11は、スイッチング素子Q1〜Q6に入力されるゲート信号の波形を示す。
コントローラ10は、図8〜図11に示すように、4通りのゲート信号を各スイッチング信号Q1〜Q6にそれぞれ入力する。図8〜図11におけるDはスイッチング素子の周期を示し、DTはハイサイドのスイッチング素子Q1、Q3、Q5をオフにする期間、及び、ローサイドのスイッチング素子Q2、Q4、Q6をオフにする期間であり、デッドタイムを示す。
コントローラ10は、コンデンサ5に蓄電されている状態で、まず図8に示すゲート信号でスイッチング素子Q1〜Q6を制御し、順に、図9、図10及び図11のゲート信号でスイッチング素子Q1〜Q6を制御する。図9、図10及び図11のゲート信号を入力する時間は、所定時間(tp)であり、それぞれ同じ時間とする。
また、コントローラ10は、図8〜図11の各ゲート信号で、スイッチング素子Q1〜Q6を制御しつつ、電圧センサ7の検出電圧から、時間あたりのコンデンサ5の降下電圧を算出する。そして、コントローラ10は、算出された降下電圧から、各相の欠相故障を検出する。
図8に示すゲート信号がスイッチング素子Q1〜Q6に入力される場合には、コンデンサ5の電荷は抵抗6及びスイッチング素子Q1〜Q6により放電される。この際、コントローラ10は、コンデンサ5の時間あたりの降下電圧(Vx)を算出し、第1の実施形態と同様に、判定電圧(Vc)と比較する。そして、降下電圧(vx)が判定電圧(Vc)より大きい場合には、コントローラ10は、全ての相で欠相故障が生じていないと判断する。一方、降下電圧(Vx)が判定電圧(Vc)より小さい場合には、コントローラ10は、全ての相で欠相故障が生じていると判断する。
図9に示すゲート信号がスイッチング素子Q1〜Q6に入力される場合には、コンデンサ5の電荷は抵抗6及びスイッチング素子Q1〜Q4により放電される。コントローラ10は、図8のゲート信号を、所定時間(tp)の間入力し、コンデンサ5の降下電圧(Vuv)を算出する。降下電圧(Vuv)は、図9のゲート信号の入力した時点(時間t1)の検出電圧と、時間(t1)から所定時間(tp)を経過した時点(時間t2)の検出電圧の差分から算出される。
図10に示すゲート信号がスイッチング素子Q1〜Q6に入力される場合には、コンデンサ5の電荷は抵抗6及びスイッチング素子Q1、Q2、Q5及びQ6により放電される。コントローラ10は、図10のゲート信号を、所定時間(tp)の間、入力し、コンデンサの降下電圧(Vuw)を算出する。降下電圧(Vuw)は、図10のゲート信号の入力した時点(時間t2)の検出電圧と、時間(t2)から所定時間(tp)を経過した時点(時間t3)の検出電圧の差分から算出される。
図11に示すゲート信号がスイッチング素子Q1〜Q6に入力される場合には、コンデンサ5の電荷は抵抗6及びスイッチング素子Q3〜Q6により放電される。コントローラ10は、図11のゲート信号を、所定時間(tp)の間、入力し、コンデンサの降下電圧(Vvw)を算出する。降下電圧(Vvw)は、図11のゲート信号の入力した時点(時間t3)の検出電圧と、時間(t3)から所定時間(tp)を経過した時点(時間t4)の検出電圧の差分から算出される。
図9〜図11のゲート信号を入力する場合には、三相のうち二相に対応するスイッチング素子でそれぞれ放電され、全ての相で欠相故障が生じていなければ、コンデンサ5の降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)は、それぞれ等しくなる。一方、少なくとも1つのスイッチング素子Q1〜Q6で故障が生じている場合には、当該するスイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを制御しても、放電が行われない。そのため故障したスイッチング素子Q1〜Q6を含む相のスイッチング素子Q1〜Q6に対してゲート信号を入力する時の降下電圧は、故障したスイッチング素子Q1〜Q6を含まない相のスイッチング素子Q1〜Q6に対してゲート信号を入力する時の降下電圧より小さくなる。そのため、ある相において、放電させる場合、当該相に故障したスイッチング素子Q1〜Q6を含むか否かに応じて、降下電圧が異なる。
図12を用いて、U相及びV相で欠相故障が生じている場合を例として、各降下電圧の特性について説明する。図12は、U相及びV相で欠相故障が生じている場合における、放電時間に対するコンデンサ5電圧の特性を示すグラフである。
U相及びV相で欠相故障が生じている場合には、降下電圧(Vvw)と降下電圧(Vuw)とが等しく、降下電圧(Vuv)は、降下電圧(Vvw)及び降下電圧(Vuw)より小さくなり、(式1)の関係が成り立つ。
Vuv<<Vuw≒Vvw (式1)
また図12に示すように、各降下電圧は傾きに相当するため、降下電圧(Vuv)を示す傾きは、降下電圧(Vuv)を示す傾き及び降下電圧(Vuw)を示す傾きより小さくなる。
図13を用いて、U相で欠相故障が生じている場合を例として、各降下電圧の特性について説明する。図13は、U相で欠相故障が生じている場合における、放電時間に対するコンデンサ5電圧の特性を示すグラフである。
例えばU相で欠相故障が生じている場合には、降下電圧(Vuv)と降下電圧(Vuw)とが等しく、降下電圧(Vvw)は、降下電圧(Vuv)及び降下電圧(Vuw)より大きくなり、(式2)の関係が成り立つ。
Vuv≒Vuw≒(1/2)×Vvw (式2)
本例において、コントローラ10には、三相の全ての相が異常であることを判定するための判定電圧(Vd)が予め設定されている。判定電圧(Vd)は、三相の全ての相が欠相故障である場合の所定時間(ta)あたりのコンデンサ5の降下電圧に対して、約30%の電圧を上乗せした電圧値である。なお、上乗せするパーセンテージは、必ずしも30パーセントとする必要はなく、例えば10%又は20%であってもよい。なお、三相が欠損故障である場合のコンデンサ5の降下電圧は、全てのスイッチング素子Q1〜Q6がオフの状態における、コンデンサ5の降下電圧に相当する。
そして、コントローラ10は、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)と判定電圧(Vd)とを比較し、最小降下電圧(Vmin)をいくつ含むか把握する。ここで最小降下電圧(Vmin)とは、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)の中で最も降下電圧の小さい電圧を示す。また、最も小さい電圧の範囲をある程度広げるために、最小降下電圧(Vmin)は、最も降下電圧の小さい電圧に対して所定の電圧差である降下電圧を含んでもよい。
降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)の中で、最小降下電圧(Vmin)が1つ抽出される場合には、コントローラ10は、抽出された1つの降下電圧と判定電圧(Vd)をと比較する。抽出された1つの降下電圧が、判定電圧(Vd)より小さい場合には、コントローラ10は、判定電圧(Vd)より低い降下電圧を算出した際に、オン/オフ周期のゲート信号が入力されたスイッチング素子で欠相故障が生じている、と判断する。
例えばU相及びV相で欠相故障が生じており、図9のゲート信号で各スイッチング素子Q1〜Q6を制御する場合には、U相及びV相に対応するスイッチング素子Q1〜Q4にオン/オフ周期のゲート信号が入力されても、スイッチング素子Q1〜Q4で放電が行われない。そして、W相に相当するスイッチング素子Q5及びQ6には、オン期間を含むゲート信号が入力されないため、スイッチング素子Q5及びQ6で放電が行われない。そのため、図9のゲート信号が入力される場合には、全てのスイッチング素子Q1〜Q6で放電が行われないため、降下電圧(Vuv)は、抵抗6による放電に相当する降下電圧となり、判定電圧(Vd)より小さい電圧になる。すなわち、図11において、降下電圧(Vuv)はグラフf1で示され、判定電圧(Vd)はグラフf2で示される。グラフf1の傾きは、グラフf2の傾きより小さくなる。
降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)の中で、最小降下電圧(Vmin)が2つ抽出される場合には、コントローラ10は、抽出した降下電圧を規定の倍数(例えば1.5倍)で乗じて、判定電圧(Ve)を算出し、設定する。コントローラ10は、抽出されなかった、最小降下電圧(Vmin)ではない降下電圧(Vr)と判定電圧(Ve)をと比較する。当該抽出されなかった降下電圧(Vr)が判定電圧(Ve)より大きい場合には、コントローラ10は、抽出された降下電圧を算出する際に、共通してゲート信号が入力されているスイッチング素子で欠相故障が生じている、と判断する。
例えば、U相で欠相故障が生じている場合には、U相に対応するスイッチング素子Q1、Q2にオン/オフ周期のゲート信号が入力されても、スイッチング素子Q1、Q2で放電が行われない。そのため、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)の中で、降下電圧(Vuv)及び降下電圧(Vuw)が電圧の小さい二つの降下電圧となる。そして判定電圧(Ve)は、降下電圧(Vuv)又は降下電圧(Vuw)に規定の倍数を乗じた値となる。降下電圧(Vvw)は、正常なスイッチング素子にオン/オフ周期のゲート信号が入力された時の放電電圧となり、降下電圧(Vuv)又は降下電圧(Vuw)に約2.0倍を乗じた値となるため、判定電圧(Ve)より高い値となる。
すなわち、図13において、降下電圧(Vvw)はグラフg2で示され、判定電圧(Ve)はグラフg1で示される。グラフg2の傾きは、グラフg1の傾きより大きくなる。
一方、例えば、各相のスイッチング素子Q1〜Q6のバラツキにより、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)が異なる電圧値となる場合には、降下電圧(Vr)と最小降下電圧(Vmin)との差は、スイッチング素子のバラツキによる差であるため、降下電圧(Vr)は判定電圧(Ve)より小さくなる。そのため、降下電圧(Vr)が判定電圧(Ve)より小さい場合には、コントローラ10は、欠相故障が生じていないと判断する。
次に、図14a及び図14bを用いて本例の制御手順を説明する。図14a及び図14bは本例の制御手順を示すフローチャートである。
ステップS21〜ステップS27は、図4のステップS1〜ステップS7と同様であり、ステップS261及びステップS262は、図4のステップS61及びステップS62と同様であるため、説明を省略する。なお、ステップS23において、コントローラ10は、図8に示すゲート信号(ゲート信号A)を各スイッチング素子Q1〜Q6に入力し、コンデンサ5を放電させる。
ステップS27により、検出電圧が放電時間(t1)で電圧(Vs)となると、ステップS28にて、図9に示すゲート信号(ゲート信号B)を各スイッチング素子Q1〜Q6に入力し、コンデンサ5を放電させる。ステップS29にて、コントローラ10は、電圧センサ7からコンデンサ5の電圧を検出する。ステップS30にて、放電時間が時間t2になっていない場合には、ステップS29に戻り、コンデンサ5の電圧を検出し、放電時間が時間t2になった場合には、ステップS31に遷る。これにより、時間t1から時間t2の間、コントローラ10は、図9のゲート信号によりコンデンサ5を放電させつつ、コンデンサ5の電圧を検出する。
ステップS31にて、図10に示すゲート信号(ゲート信号C)を各スイッチング素子Q1〜Q6に入力し、コンデンサ5を放電させる。ステップS32にて、コントローラ10は、電圧センサ7からコンデンサ5の電圧を検出する。ステップS33にて、放電時間が時間t3になっていない場合には、ステップS32に戻り、コンデンサ5の電圧を検出し、放電時間が時間t3になった場合には、ステップS34に遷る。時間t3は、時間t2から所定時間(ta)経過した時間である。これにより、時間t2から時間t3の間、コントローラ10は、図10のゲート信号によりコンデンサ5を放電させつつ、コンデンサ5の電圧を検出する。
ステップS34にて、図11に示すゲート信号(ゲート信号D)を各スイッチング素子Q1〜Q6に入力し、コンデンサ5を放電させる。ステップS35にて、コントローラ10は、電圧センサ7からコンデンサ5の電圧を検出する。ステップS36にて、放電時間が時間t4になっていない場合には、ステップS35に戻り、コンデンサ5の電圧を検出し、放電時間が時間t4になった場合には、ステップS37に遷る。時間t4は、時間t3から所定時間(ta)経過した時間である。これにより、時間t3から時間t4の間、コントローラ10は、図11のゲート信号によりコンデンサ5を放電させつつ、コンデンサ5の電圧を検出する。
ステップS37にて、コントローラ10は、コンデンサ5の検出電圧に基づいて、所定時間(tp)の間の降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)を算出する(図12及び図13を参照)。すなわち、コントローラ10は、時間t1の検出電圧と時間t2の検出電圧の差から降下電圧(Vuv)を算出し、時間t2の検出電圧と時間t3の検出電圧の差から降下電圧(Vuw)を算出し、時間t3の検出電圧と時間t4の検出電圧の差から降下電圧(Vvw)を算出する。
ステップS38にて、コントローラ10は、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)の中から、最小降下電圧(Vmin)を抽出する。すなわち、コントローラ10は、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)をそれぞれ比較し、最も値の小さい降下電圧を抽出する。最も値の小さい降下電圧が1つある場合には、最小降下電圧(Vmin)が1つ存在することになる。最も値の小さい降下電圧が2つある場合には、最小降下電圧(Vmin)が2つ存在することになる。この際、最も値の小さい降下電圧が2つある、とは、当該2つの降下電圧の値が等しい場合、又は、それぞれの値が所定の範囲内にある場合を含む。全ての降下電圧が同じ値である場合には、最小降下電圧(Vmin)が存在しないとなる。
ステップS39にて、最小降下電圧(Vmin)が1つある場合には、ステップS391に遷り、最小降下電圧(Vmin)の個数が1つではない場合には、ステップS40に遷る。ステップS391にて、コントローラ10は、最小降下電圧(Vmin)と判定電圧(Vd)とを比較する。最小降下電圧(Vmin)が判定電圧(Vd)以上の場合には、コントローラ10は正常であると判断し(S394)、本例の制御を終了する。一方、最小降下電圧(Vmin)が判定電圧(Vd)より小さい場合には、最小降下電圧(Vmin)を算出する際にゲート信号が入力された、二相に相当するスイッチング素子Q1〜Q6において、欠相故障が生じており、コントローラ10は、当該二相に相当するスイッチング素子Q1〜Q6で欠相故障が生じている、と判断する(ステップS392)。ステップS393にて、コントローラ10は、ステップS262と同様に、インバータ3に異常が発生している時の制御処理を行い、本例の制御処理を終了する。
ステップS40にて、最小降下電圧(Vmin)が2つある場合には、ステップS401に遷り、最小降下電圧(Vmin)の個数が2つではない場合には、ステップS41に遷る。ステップS401にて、コントローラ10は、3つの降下電圧(Vuv、Vuw、Vvw)の中で最小降下電圧(Vmin)ではない降下電圧(Vr)、言い換えると、3つの降下電圧(Vuv、Vuw、Vvw)の中でステップS38にて抽出されず残った降下電圧(Vr)と、判定電圧(Ve)とを比較する。ここで、判定電圧(Ve)は、コントローラ10により、最小降下電圧(Vmin)に規定の倍数を乗じた電圧である。そして、降下電圧(Vr)が判定電圧(Ve)以下である場合には、コントローラ10は正常であると判断し(S404)、本例の制御を終了する。一方、降下電圧(Vr)が判定電圧(Ve)より大きい場合には、2つの最小降下電圧(Vmin)を算出する際にゲート信号が入力された、それぞれの二相のうち、共通する一相に相当するスイッチング素子Q1〜Q6において、欠相故障が生じており、コントローラ10は、当該一相に相当するスイッチング素子Q1〜Q6で欠相故障が生じている、と判断する(S402)。ステップS403にて、コントローラ10は、ステップS262と同様に、インバータ3に異常が発生している時の制御処理を行い、本例の制御処理を終了する。
ステップS40にて、最小降下電圧(Vmin)が2つある場合には、コントローラ10は、各相が正常であると判断し(S41)、本例の制御処理を終了する。
上記のように、本例は、W相に対応するスイッチング素子Q5、Q6をオフにした状態で、U相及びV相に対応するスイッチング素子Q1〜Q4のオン及びオフを制御して降下電圧(Vuv)を算出し、V相に対応するスイッチング素子Q3、Q4をオフにした状態で、V相及びW相に対応するスイッチング素子Q1、Q2、Q5、Q6のオン及びオフを制御して降下電圧(Vuw)を算出し、U相に対応するスイッチング素子Q1、Q2をオフにした状態で、V相及びW相に対応するスイッチング素子Q3〜Q6のオン及びオフを制御して降下電圧(Vvw)を、算出する。そして、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)をそれぞれ比較し、U、V、W相における欠相故障を検出する。これにより、複数の放電電圧を比較することで、バラツキの要因である温度等が同じ条件で比較されるため、欠相故障の検出精度を高めることができる。
また本例は、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)の中から抽出された1つの降下電圧が、判定電圧(Vd)より小さい場合には、当該抽出された1つの降下電圧に対応する二つの相で欠相故障が生じていると判断する。これにより、本例は、三相のうち、どの二相で欠相が生じているかを検出することができる。
また本例は、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)の中から、2つの降下電圧が残りの1つの降下電圧より小さい場合には、当該2つの降下電圧の一方の降下電圧に規定倍数を乗じた電圧を判定電圧(Ve)として設定する。そして、当該残りの1つの降下電圧が判定電圧(Ve)より大きい場合には、当該2つの降下電圧に対応する相のうち共通する一相で欠相故障が生じている、と判断する。これにより、本例は、三相のうち、どの一相で欠相が生じているかを検出することができる。
また、本例は、降下電圧に規定倍数を乗じた値を判定電圧(Ve)とするため、各スイッチング素子Q1〜Q6のバラツキによる降下電圧の差を欠相故障であると誤判定する可能性を抑制することができる。
なお、本例は、ステップS38〜ステップS40、ステップS391〜ステップS393及びステップS401〜ステップS403にて、最小降下電圧(Vmin)を抽出し、降下電圧と判定電圧(Vd)又は判定電圧(Ve)とを比較することで、どの相で欠相故障が生じているか検出するが、ステップS38の降下電圧が(式1)又は(式2)の関係を満たすか否かにより、どの相で欠相故障が生じているかを検出してもよい。例えば、降下電圧(Vuw)と降下電圧(Vvw)が等しく、降下電圧(Vuv)が降下電圧(Vvw)又は降下電圧(Vuw)より小さい場合には、(式1)の条件を満たすため、コントローラ10は、U相及びV相で欠相故障が生じている、と判断する。また、例えば、降下電圧(Vuv)と降下電圧(Vuw)が等しく、降下電圧(Vvw)が降下電圧(Vuv)の半分の電圧と等しい場合には、(式2)の条件を満たすため、コントローラ10は、U相で欠相故障が生じていると判断する。
これにより本例は、三相のうち、どの二相又はどの一相で欠相故障が生じているか、検出することができる。
また本例は、三相に形成されたインバータ3における、欠相故障を検出するが、必ずしも三相である必要はなく、二相であってもよく、四相以上であってもよい。
例えば二相に形成されたインバータ3において、本例は、二相のうち一方の相に対応するスイッチング素子をオフにした状態で、他方の相に対応するスイッチング素子のオン及びオフを制御して、コンデンサ5の蓄電かを放電させて、時間あたりの第1の降下電圧(第1の放電電圧)を算出する。また、本例は、他方の相に対応するスイッチング素子をオフにした状態で、一方の相に対応するスイッチング素子のオン及びオフを制御して、コンデンサ5の蓄電かを放電させて、時間あたりの第2の降下電圧(第2の放電電圧)を算出する。そして本例は、コントローラ10において、第1の降下電圧と第2の降下電圧とを比較する。第1の放電電圧が第2の放電電圧より小さい場合には、一方の相における放電が十分でないため、本例は、一方の相で欠相故障が生じていると判断する。
なお、本例は、所定時間(ta)あたりの降下電圧として、降下電圧(Vuv)、降下電圧(Vuw)及び降下電圧(Vvw)を算出するが、必ずしも、所定時間(ta)あたり、にする必要はなく、例えば、電圧センサ7のサンプリング周期あたりの降下電圧として算出し、本例の制御を行ってもよい。
また本例は、ステップS30、ステップS33及びステップS36にて、放電時間(t2、t3、t4)が経過した場合に次のステップに遷るが、例えば、放電時間が閾値となる所定の時間より長い場合には、ステップS393と同様に、インバータ異常時の制御処理を行い、本例の制御処理を終了してもよい。インバータ3において、欠相故障が生じている場合には、放電時間が正常な場合と比べて長くなる。そのため、放電時間が当該所定の時間より長い場合には、コントローラ10は、欠損が生じると判断し、インバータ異常時の制御処理を行う。これにより、本例は、欠相故障を早く検出することができる。
《第4実施形態》
発明の他の実施例に係るインバータ制御装置を含む電気自動車について説明する。本例では上述した第1実施形態及び第3実施形態に対して、コントローラ10の制御内容の一部が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態及び第3実施形態と同じであるため、その記載を援用する。
コントローラ10は、コンデンサ5に蓄電されている状態で、図8に示すゲート信号でスイッチング素子Q1〜Q6を制御する。コントローラ10は、図8のゲート信号による制御の後に、U相のスイッチング素子Q1及びQ2のみをオン及びオフ制御するために、スイッチング素子Q1及びQ2に周期的にオン及びオフさせるゲート信号を入力し、スイッチング素子Q3〜Q6をオフの状態にする。次に、コントローラ10は、V相のスイッチング素子Q3及びQ4のみをオン及びオフ制御するために、スイッチング素子Q3及びQ4に周期的にオン及びオフさせるゲート信号を入力し、スイッチング素子Q1、Q2、Q5及びQ6をオフの状態にする。次に、コントローラ10は、W相のスイッチング素子Q5及びQ6のみをオン及びオフ制御するために、スイッチング素子Q5及びQ6に周期的にオン及びオフさせるゲート信号を入力し、スイッチング素子Q1〜Q4をオフの状態にする。
図8に示すゲート信号がスイッチング素子Q1〜Q6に入力される場合には、第1の実施形態又は第3の実施形態と同様に、時間あたりの降下電圧(Vx)を算出し、当該降下電圧(Vx)と判定電圧(Vc)とを比較する。そして、コントローラ10は、比較結果に応じて、全ての相で欠相故障が生じているか否か判断する。
オン及びオフのゲート信号がU相のスイッチング素子Q1及びQ2に入力される場合には、コンデンサ5の蓄電電荷は、抵抗6及びスイッチング素子Q1及びQ2により放電される。コントローラ10は、当該ゲート信号を、所定時間(tp)の間入力し、コンデンサ5の降下電圧(Vu)を算出する。降下電圧(Vu)は、ゲート信号の入力した時点(時間t1)の検出電圧と、時間(t1)から所定時間(tp)を経過した時点(時間t2)の検出電圧の差分から算出される(図15及び図16を参照)。
オン及びオフのゲート信号がV相のスイッチング素子Q3及びQ4に入力される場合には、コンデンサ5の蓄電電荷は、抵抗6及びスイッチング素子Q3及びQ4により放電される。コントローラ10は、当該ゲート信号を、所定時間(tp)の間入力し、コンデンサ5の降下電圧(Vv)を算出する。降下電圧(Vv)は、ゲート信号の入力した時点(時間t2)の検出電圧と、時間(t2)から所定時間(tp)を経過した時点(時間t3)の検出電圧の差分から算出される(図15及び図16を参照)。
オン及びオフのゲート信号がW相のスイッチング素子Q5及びQ6に入力される場合には、コンデンサ5の蓄電電荷は、抵抗6及びスイッチング素子Q5及びQ6により放電される。コントローラ10は、当該ゲート信号を、所定時間(tp)の間入力し、コンデンサ5の降下電圧(Vw)を算出する。降下電圧(Vw)は、ゲート信号の入力した時点(時間t3)の検出電圧と、時間(t3)から所定時間(tp)を経過した時点(時間t4)の検出電圧の差分から算出される(図15及び図16を参照)。
一相のスイッチング素子Q1〜Q6のみにオン及びオフのゲート信号を入力する場合には、2つのスイッチング素子Q1〜Q6により放電が行われ、残りのスイッチング素子Q1〜Q6では放電が行われない。そのため、各スイッチング素子Q1〜Q6が正常な場合には、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)は等しくなる。一方、少なくとも1つのスイッチング素子Q1〜Q6が故障している場合には、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)は等しい値にならない。そのため本例において、コントローラ10は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)を比較し、比較結果に応じて、欠相故障が生じている相を特定しつつ、インバータ3の欠相故障を検出する。
以下、本例における、インバータ3の欠相故障の検出方法を説明する。
まず、コントローラ10は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)と判定電圧(Vd)とを比較し、当該判定電圧(Vd)より小さい電圧(Vf)をいくつ含むか把握する。
降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で、電圧(Vf)を1つ含む場合には、コントローラ10は、電圧(Vf)に規定の倍数(例えば1.5倍)で乗じて、判定電圧(VF)を算出し、設定する。またコントローラ10は、判定電圧(Vd)より大きい降下電圧、言い換えると、3つの降下電圧の中で電圧(Vf)ではない2つの降下電圧から、小さい方の電圧(Vr1)を抽出し、当該規定の倍数を乗じて、判定電圧(VR1)を算出し、設定する。そして、コントローラ10は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で電圧(Vf)及び電圧(Vr1)に該当しない、残りの1つの電圧(Vr2)と、判定電圧(VF)及び判定電圧(VR1)とを比較する。電圧(Vr2)が判定電圧(VF)より大きく、かつ、電圧(Vr2)が判定電圧(VR1)より小さい場合には、コントローラ10は、電圧(Vf)に相当する降下電圧を算出した際に、オン/オフ周期のゲート信号が入力されたスイッチング素子で欠相故障が生じている、と判断する。すなわち、コントローラ10は、一相で欠相故障が生じていると判断する。
図15を用いて、U相のみで欠相故障が生じている場合を例に、上記の検出方法を説明する。図15は、U相で欠相故障が生じている場合における、放電時間に対するコンデンサ5電圧の特性を示すグラフである。
U相が欠相故障している場合には、ゲート信号が入力されても放電が行われないため、全てのスイッチング素子Q1〜Q6で放電が行われない。そのため、降下電圧(Vu)は、判定電圧(Vd)より小さくなる。V相及びW相は正常であるため、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)は、判定電圧(Vd)より大きくなる。コントローラ10は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で、判定電圧(Vd)より小さい電圧(Vf)は降下電圧(Vu)であると判断し、電圧(Vf)を一つ含むと判断する。
判定電圧(VF)は、降下電圧(Vu)に規定の倍数を乗じた値となる。判定電圧(VR1)について、降下電圧(Vw)が降下電圧(Vv)より小さいと仮定すると、降下電圧(Vw)が電圧(Vr1)となり、判定電圧(VR1)は当該降下電圧(Vw)に規定の倍数を乗じた値となる。降下電圧(Vu)は各スイッチング素子Q1〜Q6により放電されていない時の降下電圧であるため、降下電圧(Vu)に規定の倍数を乗じたとしても、少なくとも2つのスイッチング素子で放電された時の降下電圧より小さい電圧になる。降下電圧(Vw)は、降下電圧(Vv)と同様に、2つのスイッチング素子Q5、Q6で放電された時の降下電圧であるため、降下電圧(Vv)との差はわずかである。そのため、図13に示すように、電圧(Vf)及び電圧(Vr1)ではない電圧(Vr2)に相当する降下電圧(Vv)は、判定電圧(Vf)より大きく、判定電圧(VR1)より小さくなる。一方、降下電圧(Vv)が判定電圧(Vf)より大きくならない場合、または、降下電圧(Vv)が判定電圧(VR1)より小さくならない場合には、上述した検出ロジックと矛盾する。
コントローラ10は、検出ロジックに矛盾した場合には、検出ロジック異常と判断し、欠相故障の判断結果を出力することなく、本例の制御処理を終了し、再度、コンデンサ5の電圧を検出し直して、検出ロジックを実行する。
降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で、電圧(Vf)を2つ含む場合には、コントローラ10は、2つの電圧(Vf)に規定の倍数(例えば1.5倍)でそれぞれ乗じて、判定電圧(VF1)及び判定電圧(VF2)を算出し、設定する。コントローラ10は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で電圧(Vf)に該当しない、残りの1つの電圧(Vr)と、判定電圧(VR1)及び判定電圧(VR2)とを比較する。電圧(Vr)が判定電圧(VF1)より小さく、かつ、電圧(Vr)が判定電圧(VF2)より小さい場合には、コントローラ10は、電圧(Vf)に相当する降下電圧を算出した際に、オン/オフ周期のゲート信号が入力されたスイッチング素子で欠相故障が生じている、と判断する。すなわち、コントローラ10は、二相で欠相故障が生じていると判断する。
図16を用いて、U相及びW相で欠相故障が生じている場合を例に、上記の検出方法を説明する。図16は、U相及びW相で欠相故障が生じている場合における、放電時間に対するコンデンサ5電圧の特性を示すグラフである。
U相及びW相が欠相故障している場合には、ゲート信号が入力されても放電が行われないため、時間t1から時間t2の間及び時間t3から時間t4の間、全てのスイッチング素子Q1〜Q6で放電が行われない。そのため、降下電圧(Vu)及び降下電圧(VW)は、判定電圧(Vd)より小さくなる。コントローラ10は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で、判定電圧(Vd)より小さい電圧は降下電圧(Vu)及び降下電圧(Vw)であると判断し、電圧(Vf)を二つ含むと判断する。
判定電圧(VF1)及び判定電圧(VF2)は、降下電圧(Vu)及び降下電圧(Vw)にそれぞれ規定の倍数を乗じた値となる。降下電圧(Vu)及び降下電圧(Vw)は各スイッチング素子Q1〜Q6により放電されていない時の降下電圧であるため、降下電圧(Vu)及び降下電圧(Vw)に規定の倍数を乗じたとしても、2つのスイッチング素子Q3及びQ4で放電された時の降下電圧より小さい電圧になる。そのため、図16に示すように、2つの電圧(Vf)ではない電圧(Vr)に相当する降下電圧(Vv)は、判定電圧(VF1)及び判定電圧(VF2)より大きくなる。一方、降下電圧(Vv)が判定電圧(VF1)より小さい場合、または、降下電圧(Vv)が判定電圧(VF2)より小さい場合には、上述した検出ロジックと矛盾することなる。検出ロジックと矛盾する場合には、コントローラ10は、上記と同様に、検出ロジック異常と判断する。
次に、図17a及び図17bを用いて本例の制御手順を説明する。図17a及び図17bは本例の制御手順を示すフローチャートである。
ステップS51〜ステップS67は、基本的には、図14a及び図14bに示すステップS21〜ステップS37と同様であり、異なるステップ(S58、S61、S64及びステップS67)について、以下説明する。ステップS561及びステップS562は、図14aに示すステップS261及びステップS262と同様である。
ステップS58にて、コントローラ10は、U相に相当するスイッチング素子Q1及びQ2のみをオン及びオフ制御するゲート信号Eを、スイッチング素子Q1及びQ2に入力する。
ステップS61にて、コントローラ10は、V相に相当するスイッチング素子Q3及びQ4のみをオン及びオフ制御するゲート信号Fを、スイッチング素子Q3及びQ4に入力する。
ステップS64にて、コントローラ10は、W相に相当するスイッチング素子Q5及びQ6のみをオン及びオフ制御するゲート信号Gを、スイッチング素子Q5及びQ6に入力する。
ステップS67にて、コントローラ10は、コンデンサ5の検出電圧に基づいて、所定時間(tp)の間の降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)を算出する(図15及び図16を参照)。
ステップS68にて、コントローラ10は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中から、判定電圧(Vd)より小さい電圧を抽出する。抽出された電圧を電圧(Vf)とする。
ステップS69にて、コントローラ10は、抽出された電圧(Vf)が1つあるか否かを判断し、電圧(Vf)が1つある場合にはステップS691へ遷り、電圧(Vf)が2つある場合にはステップS70へ遷る。ステップS691にて、コントローラ10は、判定電圧(VF)及び判定電圧(VR1)を算出する。判定電圧(VF)は、電圧(Vf)に規定の倍数を乗ずることで算出される。判定電圧(VR1)は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で電圧(Vf)ではない二つの降下電圧(Vr1、Vr2)のうち、一方の降下電圧(Vr1)に規定の倍数を乗ずることで算出される。ここで、降下電圧(Vr1)は、二つの降下電圧(Vr1、Vr2)のうち小さい降下電圧である。なお二つの降下電圧(Vr1、Vr2)が等しい場合には、いずれか一方の降下電圧が降下電圧(Vr1)となる。
ステップS692にて、コントローラ10は、降下電圧(Vr2)と、判定電圧(VF)及び判定電圧(VR1)とを比較する。降下電圧(Vr2)が判定電圧(VF)より大きく、かつ、降下電圧(Vr2)が判定電圧(VR1)より小さい条件を満たす場合には、ステップS693にて、コントローラ10は、電圧(Vf)に相当する降下電圧(Vu、Vv又はVw)を算出する際にゲート信号が入力されたスイッチング素子Q1〜Q6で故障が生じており、一相で欠相故障が生じていると判断する。そして、ステップS694にて、コントローラ10は、インバータ3に異常が発生している時の制御処理を行い、本例の制御処理を終了する。
一方、降下電圧(Vr2)が判定電圧(VF)より大きく、かつ、降下電圧(Vr2)が判定電圧(VR1)より小さい条件を満たさない場合には、ステップS695にて、コントローラ10は、検出ロジック異常と判断し、本例の制御処理を終了させる。
ステップS70にて、コントローラ10は、抽出された電圧(Vf)が2つあるか否かを判断し、電圧(Vf)が2つある場合にはステップS701へ遷る。ステップS701にて、コントローラ10は、判定電圧(VF1)及び判定電圧(VF2)を算出する。判定電圧(VF1)は2つの電圧(Vf)のうち一方の電圧に規定倍数を乗ずることで算出され、判定電圧(VF1)は他方の電圧に規定倍数を乗ずることで算出される。
ステップS702にて、コントローラ10は、降下電圧(Vr)と、判定電圧(VF1)及び判定電圧(VF2)とを比較する。降下電圧(Vr)は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で電圧(Vf)でない、残りの降下電圧である。降下電圧(Vr)が判定電圧(VF1)より大きく、かつ、降下電圧(Vr)が判定電圧(VF2)より大きい条件を満たす場合には、ステップ703にて、コントローラ10は、2つの電圧(Vf)に相当する降下電圧(Vu、Vv又はVw)を算出する際にゲート信号が入力されたスイッチング素子Q1〜Q6で故障が生じており、二相で欠相故障が生じていると判断する。そして、ステップS704にて、コントローラ10は、インバータ3に異常が発生している時の制御処理を行い、本例の制御処理を終了する。
一方、降下電圧(Vr)が判定電圧(VF1)より大きく、かつ、降下電圧(Vr)が判定電圧(VF2)より大きい条件を満たさない場合には、ステップS705にて、コントローラ10は、ステップS67で算出された放電電圧を用いて欠相故障を検出せず、検出ロジック異常と判断し、本例の制御処理を終了させる。
ステップS70にて、抽出された電圧(Vf)が2つではない場合には、コントローラ10は、各相が正常であると判断し(ステップS71)、本例の制御処理を終了する。ここで、抽出された電圧(Vf)が2つではない、とは、全ての降下電圧(Vu、Vv及びVw)が判定電圧(Vd)より大きい場合を表しており、各相で正常に放電が行われることになる。
上記のように、本例は、V相及びW相に相当するスイッチング素子Q3〜Q6をオフにした状態で、U相に相当するスイッチング素子Q1及びQ2のオン及びオフを制御して降下電圧(Vu)を算出し、U相及びW相に相当するスイッチング素子Q1、Q2、Q5、Q6をオフにした状態で、V相に相当するスイッチング素子Q3及びQ4のオン及びオフを制御して降下電圧(Vv)を算出し、U相及びV相に相当するスイッチング素子Q1〜Q4をオフにした状態で、W相に相当するスイッチング素子Q5及びQ6のオン及びオフを制御して降下電圧(Vw)を算出する。そして、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)をそれぞれ比較し、U、V、W相における欠相故障を検出する。これにより、複数の放電電圧を比較することで、バラツキの要因である温度等が同じ条件で比較されるため、欠相故障の検出精度を高めることができる。
また本例は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で、1つの降下電圧(Vu、Vv又はVw)が判定電圧(Vd)より小さい場合には、当該1つの降下電圧に対応する相で欠相故障が生じていると判断する。
一相で欠相故障が生じている場合には、欠相故障が生じている相の降下電圧が判定電圧(Vd)より小さくなるため、判定電圧(Vd)より小さい降下電圧に対応する相で欠損故障が生じていると判断することができる。そして、図17bに示すフローにおいて、ステップS691からステップS695の代わりに、電圧(Vf)に相当する相で欠相故障が生じていると、判断するステップを設ければよい。これにより、本例は、三相のうち、どの一相で欠相が生じているかを検出することができる。
また本例は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)の中で、2つの降下電圧(Vu、Vv又はVw)が判定電圧(Vd)より小さい場合には、当該2つの降下電圧に対応する相で欠相故障が生じていると判断する。
二相で欠相故障が生じている場合には、欠相故障が生じている相の降下電圧が判定電圧(Vd)より小さくなるため、判定電圧(Vd)より小さい降下電圧に対応する相で欠損故障が生じていると判断することができる。そして、図17bに示すフローにおいて、ステップS701からステップS705の代わりに、電圧(Vf)に相当する相で欠相故障が生じていると、判断するステップを設ければよい。これにより、本例は、三相のうち、どの二相で欠相が生じているかを検出することができる。
また本例は、判定電圧(Vd)、判定電圧判定電圧(VF)及び判定電圧(VR1)を設定し、降下電圧(Vr2)が判定電圧(VF)より小さい場合、又は、降下電圧(Vr2)が判定電圧(VR1)より大きい場合には、欠相故障の判断結果の出力を禁止する。降下電圧(Vr2)が判定電圧(VF)より小さい場合、又は、降下電圧(Vr2)が判定電圧(VR1)より大きい場合には、本例の欠相故障のロジックに矛盾が生じており、コンデンサ5の降下電圧に基づく欠相故障の検出精度が低下する可能性がある。本例は、欠相故障のロジックに矛盾が生じた場合には、欠相故障の判断結果の出力を禁止するように制御するため、欠相故障の検出精度を高めることができる。
また本例は、判定電圧(Vd)、判定電圧(VF1)及び判定電圧(VF2)を設定し、降下電圧(Vr)が判定電圧(VF1)より小さい場合、または、降下電圧(Vr)が判定電圧(VF2)より小さい場合には、欠相故障の判断結果の出力を禁止する。降下電圧(Vr)が判定電圧(VF1)より小さい場合、または、降下電圧(Vr)が判定電圧(VF2)より小さい場合には、本例の欠相故障のロジックに矛盾が生じており、コンデンサ5の降下電圧に基づく欠相故障の判断精度が低下する可能性がある。本例は、欠相故障のロジックに矛盾が生じた場合には、欠相故障の判断結果の出力を禁止するように制御するため、欠相故障の判断精度を高めることができる。
なお、本例は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)を比較し、2つの降下電圧が等しく、残りの1つの降下電圧が当該2つの降下電圧より小さい場合には、当該1つの降下電圧に相当する相で欠相故障が生じていると判断してもよい。図15に示すように、U相で欠相故障が生じている場合には、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)は等しく、降下電圧(Vu)は降下電圧(Vv)より小さい。そのため、本例において、ステップS67による降下電圧の算出の後に、それぞれの降下電圧を比較し、2つの降下電圧が等しく、残りの1つの降下電圧が当該2つの降下電圧より小さい場合には、一相で欠相故障が生じている、と判断する。これにより、本例は、三相のうち、どの一相で欠相が生じているかを検出することができる。
また、本例は、降下電圧(Vu)、降下電圧(Vv)及び降下電圧(Vw)を比較し、2つの降下電圧が等しく、残りの1つの降下電圧が当該2つの降下電圧より大きい場合には、当該2つの降下電圧に相当する相で欠相故障が生じていると判断してもよい。図16に示すように、U相及びW相で欠相故障が生じている場合には、降下電圧(Vu)及び降下電圧(Vw)は等しく、降下電圧(Vv)は降下電圧(Vu)より小さい。そのため、本例において、ステップS67による降下電圧の算出の後に、それぞれの降下電圧を比較し、2つの降下電圧が等しく、残りの1つの降下電圧が当該2つの降下電圧より大きい場合には、二相で欠相故障が生じている、と判断する。これにより、本例は、三相のうち、どの二相で欠相が生じているかを検出することができる。