JP2012025795A - ポリカーボネート樹脂及びそれを用いた積層成形部材 - Google Patents
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Abstract
Description
これらの方法では、ビスフェノールA由来のポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂を主原料とする基体の表面に、ポリカーボネート樹脂と異なる材料からなる層を積層する必要があり、密着不良が生じ易く、また、吸水率の違い及び線膨張係数の違いにより反りの発生が生じ易いという問題があった。また、使用後のリサイクルの観点では、分別回収が困難であるという欠点もある。
より具体的には、本発明は、耐摩耗性、高い表面硬度及び良好な外観性が要求される成形体の原料として有用な、ポリカーボネートを提供することを課題とする。
また、本発明は、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート樹脂とともに、加熱溶融共押出しすることによって、耐摩耗性、高い表面硬度及び良好な外観性を有する積層成形部材を作製可能なポリカーボネートを提供することを課題とする。
また、本発明は熱劣化し難く、加熱溶融成形法による成形体の原料として適するポリカーボネート樹脂を提供することを課題とする。
また、本発明は、耐摩耗性、表面硬度に優れるとともに外観が良好な、ポリカーボネート樹脂組成物からなる積層成形部材を提供することを課題とする。
[1] 1種以上の一般式(A)で表される化合物と、1種以上の一般式(B)で表わされる化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるポリカーボネートであって、且つガラス転移温度(Tg)が130〜160℃であるポリカーボネート。
[3] 前記1種以上の一般式(A)で表される化合物が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタンからなる群から選ばれる化合物である[1]又は[2]のポリカーボネート。
[4] 前記1種以上の一般式(B)で表される化合物が、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール及び1,1’−ビフェニル−3,3’−ジフェニル−4,4’−ジオールからなる群から選ばれる化合物である[1]〜[3]のいずれかのポリカーボネート。
[5] 前記炭酸エステル形成化合物が、ホスゲンである[1]〜[4]のいずれかのポリカーボネート。
[6] [1]〜[5]のいずれかのポリカーボネートを主成分とする第1の組成物からなる層と、該第1の層と隣接する、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネートを主成分とする第2の組成物からなる層と、を少なくとも有する積層成形部材。
[7] 第1及び第2の組成物を溶融共押出法によって成形してなる[6]の積層成形部材。
[8] シート状又はフィルム状である[6]又は[7]の積層成形部材。
1.ポリカーボネート
本発明は、1種類以上の一般式(A)で表される化合物を、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるポリカーボネートであって、且つガラス転移温度(Tg)が130〜160℃であるポリカーボネートに関する。本発明では、下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物をそれぞれ、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。但し、本発明のポリカーボネートは、下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物以外のビスフェノール類から誘導される単位を実質的に含まない。
また、一般式(A)の化合物の種類によっても、好ましい割合が変動する。例えば、一般式(A)の化合物が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンである場合には、その割合が65〜80mol%の範囲であると、上記不都合が生じないので好ましい。また、一般式(A)の化合物が、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタンである場合には、65〜99mol%の範囲であると、上記不都合は生じないので好ましい。
一方、本発明に利用可能な前記炭酸エステル形成化合物の例には、ホスゲン、並びにジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、及びジナフチルカーボネートなどのビスアリールカーボネートが含まれる。
本発明のポリカーボネートの製造には、前記炭酸エステル形成化合物を1種のみ用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明のポリカーボネートは、ビスフェノールAと炭酸エステル形成化合物とからポリカーボネートを製造する際に利用される種々の方法、例えば、ビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、及びビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法のいずれの方法を採用しても製造することができる。
本発明のポリカーボネートは、シートフィルム状に成形するために溶融押出成形、射出成形、圧縮成形、湿式成形など公知の成形法で成形可能である。特に、熱劣化し難いので、溶融押出成形法等、加熱溶融成形法の原料として適する。特に、後述する通り、他のポリカーボネートとともに、加熱溶融共押出法により、積層成形部材として成形することができる。
本発明は、本発明のポリカーボネートを主成分とする第1の組成物からなる層と、該第1の層と隣接する、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から誘導されるポリカーボネートを主成分とする第2の組成物からなる層と、を少なくとも有する積層成形部材にも関する。
本発明では、前記第1及び第2の組成物はそれぞれ、主成分として含むポリカーボネート樹脂類以外のポリカーボネート樹脂類を含まないのが好ましい。
まず、前記第1及び第2の組成物をそれぞれ調製する。例えば、本発明のポリカーボネート樹脂の粉末と、所望により添加剤とを混合して、第1の組成物を調製する。第2の組成物についても同様に調製する。次に、主押出機に第2の組成物を、及び副押出機に第1の組成物をそれぞれ導入し、シリンダー温度を220〜320℃程度に設定しそれぞれ溶融した後、Tダイから溶融共押出する。シート状に押出された溶融物を、その後、表面温度110〜160℃程度に設定した水平2本ロール間を通過させて、シート状又はフィルム状の積層成形部材を得る。
上記方法は、一例であり、この条件等に限定されるものではない。温度条件等の製造条件は、適宜設定することができる。また、上記では、2層からなる積層成形部材の製造方法の例を示したが、共押出法におり、3層以上からなる積層成形部材を製造することも勿論可能である。
本発明の積層成形部材を構成する2つの層はいずれもポリカーボネート類を主成分として含有するので、密着性が良好であり、また吸水率の違いや線膨張係数の違いなどに起因する反りの発生なども生じ難い。また、他のポリマー類と混合した部材や、他のポリマー類からなるコート層を形成した部材と比較して、リサイクルの観点でも好ましい。
また、本発明のシロキサン共重合ポリカーボネートを主成分とする第1の組成物からなる層のさらに表層(第2の組成物からなる基体の反対側)に、公知の熱硬化、紫外線硬化ハードコートをさらに積層させて表面硬度を向上させることもできる。
1.本発明のポリカーボネートの合成
[合成例1]
9.0w/w%の水酸化ナトリウム水溶液700mlに、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール(本州化学工業株式会社製、以下「BP」と略称)18.6g(0.100mol)と2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(本州化学工業株式会社製、以下「BPC」と略称)76.8g(0.300mol)、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.5g、及びハイドロサルファイト0.2gを溶解した。
これにメチレンクロライド500mlを加えて撹拌しつつ、15℃に保ちながら、引き続き、ホスゲン55gを30分間で吹き込んだ。
ホスゲンの吹き込み終了後、p−t−ブチルフェノール(以下「PTBP」と略称)2.66gを加え、激しく撹拌して、反応液を乳化させ、乳化後、1mlのトリエチルアミンを加え、温度20〜25℃にて約1時間撹拌し、重合させた。
この重合体の塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における極限粘度は0.52dl/gであった。得られた重合体を赤外線吸収スペクトルにより分析した結果、1770cm-1付近の位置にカルボニル基による吸収、1240cm-1付近の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有するポリカーボネート樹脂(以下PC−1と略称)であることが確認された。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)を、BP 26.0g(0.140mol)とBPC 66.6g(0.260mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−2と略称)の極限粘度は0.47dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)を、BP 3.7g(0.020mol)と1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン(本州化学工業株式会社製、以下「CBPAP」と略称)120.8g(0.380mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−3と略称)の極限粘度は0.54dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)を、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジフェニル−4,4’−ジオール(三光株式会社製、以下「DPBP」と略称)33.8g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.3000mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−4と略称)の極限粘度は0.48dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)をDPBP 6.8g(0.020mol)とCBPAP 120.8g(0.380mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−5と略称)の極限粘度は0.53dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。
[合成例6]
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)をBP 3.7g(0.020mol)と BPC 97.3g(0.380mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−6と略称)の極限粘度は0.53dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)をBP 37.2g(0.200mol)とBPC 51.2g(0.200mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行ったが、重合が進まずポリマーとして得ることができなかった。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)を、BP 26.0g(0.140mol)と9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(本州化学工業株式会社製、以下「BCFL」と略称)98.3g(0.260mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−8と略称)の極限粘度は0.54dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)をBP 18.6g(0.100mol)と、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三井化学株式会社製、以下「BPA」と略称)68.4g(0.300mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−9と略称)の極限粘度は0.52dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)をDPBP 6.8g(0.020mol)とBPC 97.3g(0.380mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−10と略称)の極限粘度は0.53dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)を1,1−ビス(4ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(本州化学工業株式会社製、以下「CBPZ」と略称)118.4g(0.400mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−11と略称)の極限粘度は0.35dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。なお、CBPZは、特許文献2に利用されているポリカーボネートである。
BP 18.6g(0.100mol)とBPC 76.8g(0.300mol)をBPC 102.4g(0.400mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−12と略称)の極限粘度は0.53dl/gであった。ポリカーボネート樹脂であることの確認は、合成例1と同様にして行った。
合成例1〜12で作製したポリカーボネートのそれぞれの性質を、下記の表1にまとめた。
なお、極限粘度は、温度20℃で、各ポリマーの0.5%ジクロロメタン溶液を調製し、ハギンズ定数0.45で測定した値である。
また、ガラス転移温度(Tg)は、島津製作所製:DCS−50にて、窒素気流下にて測定した値(接線法によりTg算出)である。
また、メルトボリュームレイト(MVR)は、東洋精機製:D−Aにて、300℃、1.2kg荷重にて測定した値である。
合成例1〜5のそれぞれと等しい原料仕込み比率でスケールアップ試作を行い、シート成形実施可能な重合体それぞれの粉末を30kg以上製造した。得られたPC−1〜5のそれぞれの粉末に、トリス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト0.01重量%を混合した後、混合粉末を副押出機(ベント付25mm単軸押出機、ムサシノキカイ株式会社製MK−25、シリンダー温度290℃)へ、並びに市販のポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製の「ユーピロンE−2000R」;ビスフェノールAの繰り返し単位を含むポリカーボネート;ガラス転移温度は150℃)を主押出機(ベント付30mm単軸押出機、ムサシノキカイ株式会社製MK−30、シリンダー温度290℃)にそれぞれ導入した。溶融物をフィードブロック型のTダイを経て共押出し、水平2本ロール(ロール温度:150℃)により除冷し、積層押出シート(表面に100μm厚のPC−1〜5それぞれからなる層、裏面に200μm厚のポリカーボネート樹脂からなる層)を得た。この様にして、実施例の積層押出シート試料1〜5を作製した。
得られた積層シート試料それぞれについて、その表面に関して、鉛筆引っかき試験(JIS−K5600−5−4準拠)を行って、表面硬度を評価した。
具体的には、三菱鉛筆製UNI使用して、積層成形部材の表面(PC−1〜6、8〜13からなる層の表面)について5回、JIS−K5600−5−4準拠して測定を行い、傷発生が2回以下なら合格とした。
また、目視により、シート外観評価を行った。
得られた積層シート試料それぞれについて、その表面に関して耐摩耗性評価をおこなった。
具体的には新東科学株式会社製TYPE:HHS2000を用い、その積層シート表面(PC−1〜6、8〜13からなる層の表面)に対して、荷重可変(10g〜100g)させながらポリカーボネート製ボール(直径4mm)を直線往復(移動距離20mm)させ、25回目の50g荷重時の摩耗深さ(μm)を測定した。
結果を下記表2に示す。
Claims (8)
- 1種以上の一般式(A)で表される化合物と、1種以上の一般式(B)で表わされる化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるポリカーボネートであって、且つガラス転移温度(Tg)が130〜160℃であるポリカーボネート。
- 極限粘度[η]が、0.2〜1.0〔dl/g〕である請求項1に記載のポリカーボネート。
- 前記1種以上の一般式(A)で表される化合物が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタンからなる群から選ばれる化合物である請求項1又は2に記載のポリカーボネート。
- 前記1種以上の一般式(B)で表される化合物が、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール及び1,1’−ビフェニル−3,3’−ジフェニル−4,4’−ジオールからなる群から選ばれる化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート。
- 前記炭酸エステル形成化合物が、ホスゲンである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネートを主成分とする第1の組成物からなる層と、該第1の層と隣接する、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネートを主成分とする第2の組成物からなる層と、を少なくとも有する積層成形部材。
- 第1及び第2の組成物を溶融共押出法によって成形してなる請求項6に記載の積層成形部材。
- シート状又はフィルム状である請求項6又は7に記載の積層成形部材。
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