JP2012025698A - 抗ウイルス剤、その製造方法及びそれを含む抗ウイルス繊維製品、並びに抗ウイルスレーヨン繊維製品 - Google Patents

抗ウイルス剤、その製造方法及びそれを含む抗ウイルス繊維製品、並びに抗ウイルスレーヨン繊維製品 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた抗ウイルス活性を有する抗ウイルス剤、その製造方法及びそれを含む抗ウイルス繊維製品、並びに抗ウイルスレーヨン繊維製品を提供する。
【解決手段】本発明の抗ウイルス剤は、クルミ科ペカン属に属する植物の種子殻を、60℃以上の温度で熱水処理して得られる。本発明の抗ウイルス剤の製造方法は、クルミ科ペカン属に属する植物の種子殻を粉砕して粉砕物を得る工程、上記粉砕物を60℃以上の温度の熱水で抽出して抽出物を得る工程、上記抽出物を濾過し、減圧濃縮する工程とを含む。本発明の抗ウイルスレーヨン繊維製品は、抗ウイルス性機能剤として植物由来の抗ウイルス性機能剤を含み、炭練り込みレーヨン繊維を含むことを特徴とする。また、上記植物由来の抗ウイルス性機能剤が、クルミ科ペカン属に属する植物の種子又は種子殻の抽出物であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗ウイルス剤、その製造方法及びそれを含む抗ウイルス繊維製品、並びに抗ウイルスレーヨン繊維製品に関し、具体的には、植物由来の抗ウイルス剤、その製造方法及びそれを含む抗ウイルス繊維製品、並びに抗ウイルスレーヨン繊維製品に関する。
従来から、植物の抽出物が抗ウイルス活性(ウイルス不活化作用)を有することが知られている。例えば、特許文献1には、茶抽出物がインフルエンザウイルスに対して感染予防作用を有することが開示されている。また、特許文献2には、ペカンナッツ、松の実等のアルカリ抽出物がエイズウイルスに対して抗ウイルス作用を有することが開示されている。また、特許文献3には、クルミ科ペカン属に属する植物であるペカンナッツを用いた、ペカンナッツ種子又は種子殻抽出物を含有する活性酸素消去剤が開示されている。また、特許文献4には、アズキから抽出されたアズキプロアントシアニジンを含むアズキ抽出成分と、ビタミンC、トコフェロール、システイン、グルタチオン、トリス・トリメチル・サイレーンの中から選ばれる還元剤とを有効成分として含有し、ウイルス増殖抑制作用を有する抗ウイルス剤が開示されている。
一方、抗ウイルス活性(ウイルス不活化作用)を有する植物の抽出物をフィルタ等に担持させてウイルスの空気感染を予防する試みが行われている。例えば、特許文献5には、茶抽出物を担持させた抗ウイルスフィルタが開示されている。また、特許文献6には、フィルタや不織布等に茶抽出成分を担持させてSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスの感染を防ぐことが開示されている。
特開平3−101623号公報 特開平10−67669号公報 特開2000−72686号公報 特開2008−143840号公報 特許第279088号公報 特開2006−21095号公報
しかしながら、上記特許では以下のような問題点がある。特許文献1〜3に記載の従来の抗ウイルス剤(ウイルス不活化剤)では、それぞれその抽出方法により特性が異なることがある。例えば、植物原料の種類、抽出溶媒、抽出温度、抽出時間により抽出される有効成分が異なり、特許文献1〜3に記載の抗ウイルス剤では抗ウイルス性能が十分とはいえない。また、特許文献4のアズキ抽出成分は、ウイルス増殖阻害を主体に記載されており、抗ウイルス(ウイルス不活化作用)能についての記載はない。また、特許文献5及び6においては、植物の抽出物に含まれているポリフェノール等の抗ウイルス成分が酸化により劣化するという問題がある。
本発明は、上記従来の問題を解決するため、優れた抗ウイルス活性を有する抗ウイルス剤、その製造方法及びそれを含む抗ウイルス繊維製品、並びに抗ウイルスレーヨン繊維製品を提供する。
本発明の抗ウイルス剤は、クルミ科ペカン属に属する植物の種子殻を、60℃以上の温度の熱水で抽出して得られることを特徴とする。
本発明の抗ウイルス剤の製造方法は、クルミ科ペカン属に属する植物の種子殻を粉砕して粉砕物を得る工程、上記粉砕物を60℃以上の温度の熱水で抽出して抽出物を得る工程、上記抽出物を濾過し、減圧濃縮する工程とを含むことを特徴とする。
本発明の抗ウイルス繊維製品は、上記抗ウイルス剤が繊維製品に対して0.1〜10質量%含有されていることを特徴とする。
本発明の抗ウイルスレーヨン繊維製品は、抗ウイルス性機能剤を含有する繊維製品であり、上記繊維製品は炭練り込みレーヨン繊維を含み、上記抗ウイルス性機能剤は植物由来の抗ウイルス剤であることを特徴とする。
本発明の抗ウイルス剤は、抗ウイルス活性が高く、抗ウイルス性能が要求される分野において抗ウイルス剤として添加、付与して用いることができ、例えば、抗ウイルス繊維、繊維製品等の原材料として使用できる。さらに本発明は、炭練り込みレーヨン繊維を含む繊維製品に植物由来の抗ウイルス性機能剤を含有させることにより、ウイルス、好ましくは空気感染するウイルス、より好ましくはSARSウイルスに対して、優れた抗ウイルス活性を発揮する抗ウイルスレーヨン繊維製品を提供できる。また、安全性が高く、日常の生活空間でも安心して扱える、人に優しい抗ウイルス繊維製品や抗ウイルスレーヨン繊維製品を提供できる。
本発明者らは、クルミ科ペカン属に属する植物(以下において、単にクルミ科ペカン属とも記す。)の抽出物に着目し、クルミ科ペカン属の種子殻の抽出において、高温での熱水処理により有効成分を効率良く抽出できること、及びその抽出物が抗ウイルス活性、特にSARSウイルス及びインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性を有することを見いだし、本発明に至った。
本発明の抗ウイルス剤は、クルミ科ペカン属の種子殻を、60℃以上の温度の熱水で抽出することにより得ることができる。好ましい熱水抽出温度は、85℃以上である。85℃以上の温度の熱水で抽出すると、アルコール等の有機溶剤抽出あるいはアルカリ抽出では多量に抽出されるα−リノレン酸等の油脂成分がほとんど抽出されることがないので、酸化しやすい油脂成分が少なく、油脂の酸化による変質を抑制することができる。より好ましい熱水抽出温度は、90℃以上である。90℃以上の温度の熱水で抽出することにより、天然物であるクルミ科ペカン属の種子殻に付着している雑菌を短時間で処理することができる。
本発明で用いられる原料は、ペカンナッツ等のクルミ科ペカン属の種子殻(堅果、果皮、種皮、子葉)である。種子の部分が混入していても問題ない。種子殻は、乾燥したものを粉砕機等にかけて細かく破砕すると、熱水による抽出が容易であり、好ましい。また、殻の付いたペカンナッツを殻割りして、種子殻からウイルスを不活化する有効成分であるプロアントシアニジンを含むポリフェノールを熱水によって抽出する前に、前処理として、高温浴でのボイルを行うことが好ましい。ボイルの温度は、50〜85℃であることが好ましい。ボイルの時間は、3〜20分であることが好ましい。前処理としてボイルを行うことにより、殻割りした後に種子殻に残存する実や不純物を効率よく除去することができる。
本発明の抗ウイルス剤は、例えば、ペカンナッツの種子殻に対して、水を添加し、60℃以上の温度に加熱処理した後、可溶部を分離するとともに、濃縮することにより、ペカンナッツの種子殻の抽出物を得ることにより製造することができる。
上記抽出において、水の添加量は、ペカンナッツの種子殻に対して2〜20倍であることが好ましく、5〜10倍であることがより好ましい。水の添加量が少ないと、抽出後の分離が困難になる傾向があり、水の添加量が多いと、濃縮が困難になる傾向がある。
上記抽出において、処理温度は、60℃以上の温度であり、85〜130℃の温度であることが好ましい。最も好ましい温度は90〜100℃である。なお、121〜125℃であっても問題はない。特に、処理温度が90℃以上の温度であると、抗ウイルス活性を有する有効成分が十分量抽出でき、雑菌が残存する恐れがない。処理温度が高すぎると、重合が進みすぎて高分子量となり、ウイルスに対する不活化性能が低下することがある。
上記抽出において、処理時間は、5〜30分間であることが好ましく、5〜20分間であることがより好ましい。処理時間が短いと、抗ウイルス活性を有する有効成分を抽出できない傾向があり、処理時間が長いと、有効成分が破壊されてしまう恐れがある。
上記抽出は、1又は2回以上行うことができる。生産性を考慮すると、上記抽出は1又は2回行うことが好ましい。
上記抽出において、分離は、一般的方法で行えばよく、特に限定されない。例えば、濾紙や脱脂綿を用いた自然濾過、ブフナー漏斗を用いた減圧濾過、遠心分離等の方法により分離することができる。また、濃縮は、加温による蒸発、減圧濃縮、真空晶析等の方法により行うことができ、抽出後の抽出物の熱変性を抑制するという観点から、真空晶析(エバポレータ)による方法が好ましい。なお、沸騰した状態での濃縮は好ましくなく、抽出物の安定化の観点から、濃縮は、80℃以下の温度で行うことが好ましく、50〜75℃の温度範囲で行うことが好ましい。
また、濃縮した抽出物は、粉末化することも可能である。粉末化には、例えば、噴霧式造粒法(FD法)やスプレードライ法(SD法)が適用できる。
上記抗ウイルス剤は、様々なウイルスに対して不活化効果(抗ウイルス活性)を有する。上記抗ウイルス剤において不活化効果の対象となるウイルスは、例えば、ゲノムとしてDNAを有するウイルスとしては、ヘルペスウイルス、天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、水疱瘡ウイルス、アデノウイルス等が挙げられ、ゲノムとしてRNAを有するウイルスとしては、麻疹ウイルス、インフルエンザウイルス、コクサッキーウイルス、カリシウイルス(ノロウイルス属)、レトロウイルス(レンチウイルス属、例えばHIV(human immunodeficiency virus:ヒト免疫不全ウイルス)等)、SARSウイルス(コロナウイルス)、日本脳炎ウイルス(フラビウイルス属)、C型肝炎ウイルス(へパシウイルス)等が挙げられる。また、これらのウイルスのうち、エンベロープを有するウイルスとしては、ヘルペスウイルス、天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、水疱瘡ウイルス、麻疹ウイルス、インフルエンザウイルス等が挙げられ、エンベロープを有さないウイルスとしては、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ノロウイルス等が挙げられる。
上記抗ウイルス剤がウイルスに対して不活化効果を有する理由は、ペカンナッツの種子殻から高温熱水抽出した抽出物が、プロアントシアニジンを有効成分として含み、蛋白質を固定化する作用を有するからであると思われる。すなわち、上記抗ウイルス剤がウイルスと接触すると、蛋白質の固定化作用により、ウイルスの吸着活性部位を阻害する(ウイルス吸着阻害作用)ものと推定される。また、上記抗ウイルス剤は、ウイルス増殖阻害作用を有する場合がある。この場合は、抗ウイルス剤として、食品や調剤への添加等の服用する用途にも適用できる。
上記抗ウイルス剤は、SARSウイルスやインフルエンザウイルス等の空気感染するウイルス、特にはSARSウイルスに対して、優れた抗ウイルス活性を有する。また、上記抗ウイルス剤は、長期間使用しても、安定した抗ウイルス活性を発揮し得る。
上記抗ウイルス剤は、SARSウイルス(コロナウイルス)に対する抗ウイルス活性を有する。本発明では、SARSコロナウイルスとしてFFM−1株(Dr.HW. Doerr,Frankfrut University of Medicine, Germanyより分与)について抗ウイルス効果を証明しているが、同種のコロナウイルスにも効果があると考えられる。
上記抗ウイルス剤は、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性を有する。本発明では、インフルエンザウイルスとしてA型インフルエンザウイルスPR8株(H1N1)について抗ウイルス効果を証明しているが、同種のインフルエンザウイルスにも効果があると考えられる。
上記抗ウイルス剤は、繊維製品に担持させることにより、抗ウイルス活性を効率よく発揮することができる。上記担持は、例えば、含浸処理、付着処理、表面付着処理、固着処理、繊維基質への練り込み処理等により行うことができる。例えば、抗ウイルス剤が繊維基質に含まれるアミド基やイミド基等の官能基に結合すると、固着性が高くなり、好ましい。
上記繊維製品中の抗ウイルス剤の含有量は、繊維製品に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。抗ウイルス活性を発揮しつつ、製造コストを抑えることができる。
上記抗ウイルス剤は、さらに抗酸化剤と併用してもよい。例えば、抗酸化剤を抗ウイルス剤と混合した後、上記繊維製品に担持させることにより、抗ウイルス繊維製品に抗酸化剤と抗ウイルス剤を含ませることができる。抗酸化剤を含ませることにより、抗ウイルス剤の活性低下をさらに抑制でき、より優れた抗ウイルス活性を発揮し得る。
上記抗酸化剤としては、水溶性抗酸化剤及び/又は油溶性抗酸化剤を用いることができ、上記抗ウイルス剤との相性から、油溶性抗酸化剤を用いることが好ましく、ビタミンEを用いることがより好ましい。抗酸化剤の添加量は、抗ウイルス剤に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。抗酸化剤の添加量が0.1質量%未満であると、抗酸化作用が発揮されにくい傾向があり、50質量%を超えると、抗ウイルス剤が少なくなりすぎることがある。
また、本発明では、植物由来の抗ウイルス性機能剤(以下、「植物由来抗ウイルス剤」とも記す。)を、炭練り込みレーヨン繊維を含む繊維製品(以下、「炭レーヨン繊維製品」とも記す。)に含有させることにより、優れた抗ウイルス活性を発揮することを見出し、本発明の抗ウイルスレーヨン繊維製品に至った。本発明の抗ウイルスレーヨン繊維製品が優れた抗ウイルス活性を発揮することは、炭練り込みレーヨン繊維の紡糸工程において、炭が酸、アルカリ等により処理されつつレーヨン繊維に練り込まれることにより、炭レーヨン繊維製品において炭が有する還元性が良好に発揮され、熱、光及び酸素等によるポリフェノール等の植物由来抗ウイルス剤の有効成分の活性(機能)低下を抑制することができるためであると推測される。
上記炭レーヨン繊維製品は、炭練り込みレーヨン繊維を含む。上記炭レーヨン繊維製品における炭練り込みレーヨン繊維以外の他の繊維としては、例えば、動物系天然繊維、植物系天然繊維、再生セルロース系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維等を用いることができる。なかでも、親水性繊維を用いることが好ましい。上記親水性繊維としては、動物系天然繊維、植物系天然繊維、再生セルロース系繊維等を用いることができる。上記動物系天然繊維としては、例えば羊毛、絹、カシミヤ等を用いることができ、上記植物系天然繊維としては、例えばコットン、麻、リネン等を用いることができる。
上記炭レーヨン繊維製品において、炭練り込みレーヨン繊維等の繊維素材の繊度及び繊維長は特に限定されず、本発明の抗ウイルスレーヨン繊維製品の形態や使用目的等により適宜選択すればよい。汎用的には、繊度が1〜22dtexであることが好ましく、1.4〜8dtexであることがより好ましい。
上記炭練り込みレーヨン繊維は、上記炭レーヨン繊維製品中に10〜100質量%含まれていることが好ましく、30〜60質量%含まれていることがより好ましい。上記炭練り込みレーヨン繊維の含有量が低いと、抗ウイルス活性が低下する恐れがある。例えば、上記炭レーヨン繊維製品をフィルタに用いる場合、ポリエステル等の合成繊維と併用して用いることができる。このとき、炭練り込みレーヨン繊維と合成繊維の含有比は、20:80〜80:20であることが好ましい。さらにポリビニルアルコール等のバインダーを用いて不織布強力を高くして、プリーツフィルタに用いることもできる。
また、上記炭レーヨン繊維製品中における、炭練り込みレーヨン繊維と親水性繊維の合計含有量は、15〜100質量%であることが好ましく、40〜100質量%であることがより好ましい。炭練り込みレーヨン繊維と親水性繊維の合計含有量が15質量%以上であることにより、水分を充分に吸湿でき、より優れた抗ウイルス活性を有する本発明の抗ウイルスレーヨン繊維製品を提供し得る。
上記炭練り込みレーヨン繊維は、セルロースに対して、炭を1〜30質量%含有していることが好ましく、5〜20質量%含有していることがより好ましい。炭の含有量が1質量%以上であることにより、炭の効果を付与することが出来る。また、炭の含有量が30質量%以下であることにより、製品の強度を維持できる。
上記炭としては、特に限定されず、例えば木炭、竹炭、活性炭等を用いることができ、官能基を多く保持するという観点から、賦活化されていない炭が好ましい。また、還元性保持の観点から、低温処理された機能性のある炭が好ましい。本発明において、機能性のある炭とは、例えば日の丸カーボテクノ製の「CT−21」が挙げられる。上記機能性のある炭は、官能基としてOH-及びC(=O)O-を有していることが還元性の観点から好ましく、OH-及びC(=O)O-のみを有する炭であることがより好ましい。なお、上記官能基は、X線光電子分光法(XPS)を用いて、組成分析を行い、O1sのピーク分離により推定することができる。また、上記炭において、酸素元素の含有率が全元素に対して5〜15原子%(以下において、atom%と記す。)であることが好ましい。また、上記炭としては、還元性の観点から、非晶質であることが好ましい。炭が非晶質であるかどうかは、X線回折分析により確認することができる。
また、上記炭としては、還元性の観点から、下記のように製造した活性化木炭を用いることが好ましい。上記活性化木炭の製造方法は、木材チップを450〜550℃で熱処理して炭化させる低温炭化工程と、低温炭化工程に引き続いて、木材チップの炭化物を800〜900℃で、好ましくは3〜60分、より好ましくは5〜15分熱処理して、さらに炭化させる高温炭化工程と、高温炭化工程の終了時点で、炭化物に水を接触させる活性化工程とを含む。
上記木材チップとは、木材の細片すなわちチップである。木材チップの原木としては、主に、杉材、ヒマラヤ杉材、赤松材等の針葉樹材が用いられ、特に赤松材が好ましい。木材チップの形状及び寸法は特に限定されないが、木材チップの差し渡し径を測ったときに、その最大径が10〜60mmのものが好ましい。大き過ぎる木材チップは十分な炭化を行い難く、小さ過ぎる木材チップは取扱い難く、製造歩留りも悪い。
上記低温炭化工程では、基本的には、通常の木炭製造装置及び製造処理条件を採用すればよい。熱処理の温度を450〜550℃に設定する。熱処理時間は、木材チップの全体が十分に炭化される程度で良く、木材チップあるいは製造装置の条件によっても異なるが、通常は100〜120時間をかけて処理される。熱処理雰囲気は、空気の流入を遮断した状態で行う。モミ殻やオガクズで木材チップを覆った状態で処理することができる。
上記高温炭化工程では、基本的には、通常の木炭製造装置及び製造処理条件を採用し、熱処理の温度を800〜900℃、熱処理時間を好ましくは3〜60分、より好ましくは5〜15分に設定する。高温炭化工程では、前工程で低温炭化された木材チップ炭化物の表面に近い一部分のみを高温炭化し、木材チップ炭化物の中心部分には低温炭化部分を残しておく。処理時間によって、得られる活性化木炭に含まれる高温炭化部分と低温炭化部分との比率が調整される。処理時間が短すぎたり長すぎたりすると、高温炭化部分と低温炭化部分とのそれぞれの特性が十分に発揮できない。上記低温炭化工程と同じ装置で、熱処理温度を上昇させることで、低温炭化された木材チップ炭化物をそのまま高温炭化させることが好ましい。熱処理雰囲気は、酸素を供給した状態にする。
高温炭化工程で熱処理を行った炭化物に水を接触させると、炭化物は急速に冷却されて消火する。その際に、水の化学的及び物理的な作用によって、炭化物に複雑な形状の微細孔が形成される。なお、水は液体状態であってもよいが、通常は水蒸気状態で炭化物に接触することになる。
上記炭練り込みレーヨン繊維は、炭の粉を混合・分散させたビスコース原液を、紡糸することにより得られる。上記ビスコース原液は、セルロースを含む溶液であればよく、特に限定されない。例えば、セルロース8〜10質量%、水酸化ナトリウムを5〜7質量%、二硫化炭素を2.5〜4質量%含む溶液を用いることができる。
得られた炭練り込みレーヨン繊維では、レーヨン繊維に特有の多孔質構造の内部に、炭の粉が担持された状態になっている。炭の粉はレーヨン繊維内に強固に捉えられていて容易に脱落し難くなっている。しかも、レーヨン繊維は、一般的な合成繊維とは違って、ビスコースに含まれていたセルロースが本来の繊維状態に再生することによって形成されるので、炭の粉の微細な多孔質構造が高分子等で埋められてしまうこともない。また、レーヨン繊維の製造過程における種々の処理により、炭が有する還元性や吸湿性が失われることもない。特に、炭の粉を混合・分散させたビスコース原液を紡糸してレーヨン繊維に炭を練り込むため、紡糸工程において炭が酸、アルカリ等により処理されつつレーヨン繊維に練り込まれることにより、得られた炭練り込みレーヨン繊維において炭が有する還元性が良好に発揮されると推測される。それゆえ、本発明の抗ウイルスレーヨン繊維製品においては、炭練り込みレーヨン繊維中の炭の還元性により、植物由来抗ウイルス剤におけるポリフェノール等の有効成分が、熱、光及び酸素等により活性低下することが抑制され、優れた抗ウイルス活性を発揮し得る。
上記において、炭の粉は、水に分散させて5〜25質量%の水分散液とし、これをビスコース原液に添加することが好ましい。水分散液における炭の粉の含有量が25質量%を超えると、分散液がチキソトロピーを有し、静置すると流動性を失ってしまう恐れがあるため、ビスコース原液への連続的な添加・混合が困難になる。水分散液における炭の粉の含有量が5質量%未満であると、ビスコース原液に添加・混合した際に、粘度が低くなり過ぎ、水分散液の添加・混合後のビスコースが有する曳糸性が低下し、ビスコース再生時に再生途中の糸条が切れ、繊維化が困難となる恐れがある。
上記炭の粉としては、上記炭を粉砕して得られるものであればよく、特に限定されない。繊維からの炭の脱落を防ぐという観点から、上記炭の粉は、最大粒子径が2.2μm以下、平均粒子径が1.2μm以下であることが好ましく、最大粒子径が2.0μm以下、平均粒子径が0.65μm以下であることがより好ましい。また、炭の粉の水分散液の流動性を良好にするという観点から、上記炭の粉は、平均粒子径が0.2μm以上であることが好ましい。本発明において、最大粒子径とは、粒度分布の粒子径の最大値をいい、平均粒子径とは、粒度分布のメジアン径をいう。また、最大粒子径及び平均粒子径は、例えば、堀場製作所社製粒度分布径測定器LA−920を用いて、測定する。
上記炭の粉の添加量は、ビスコース原液中のセルロースに対して15〜50質量%であることが好ましく、20〜38質量%であることがより好ましい。炭の粉の添加量が15質量%未満では、炭の特性がレーヨン繊維に埋没され発揮されにくい傾向がある。一方、炭の粉の添加量が50質量%を超えると、紡糸性が低下したり、得られたレーヨン繊維から炭の粉が脱落しやすくなったり、レーヨン繊維の強度や伸度等の性能が低下したりすることがある。
上記炭レーヨン繊維製品の形態としては、特に限定されず、例えばニット、織物、不織布等が挙げられる。本発明の抗ウイルスレーヨン繊維製品の使用目的により、適宜選択すればよい。例えば、フィルタとして用いる場合、通気性を必要とする用途では、サーマルボンド不織布やケミカルボンド不織布等の不織布の形態にすることができ、接触面積を大きくすることが必要な時には、自動車のエアフィルタのようなプリーツ加工を施した紙の形態にすることができる。また、マスクとして用いる場合は、ニードルパンチ不織布やスパンレース不織布等の不織布の形態にすることができる。また、寝装寝具として用いる場合は、ニットや織物の形態にすることができる。また、障子や壁素材として用いる場合は、抄紙の形態にすることができる。そして、上記炭レーヨン繊維製品の目付けも、本発明の抗ウイルスレーヨン繊維製品の使用目的により、適宜選択すればよい。
上記植物由来抗ウイルス剤は、原料を植物とする植物由来の抗ウイルス性を有する機能剤である。また、「植物由来」とは、植物自体又は植物の抽出物からなる抗ウイルス性機能剤をいい、抽出方法や抽出部位等については特に限定がない。本発明において、「抗ウイルス性機能剤」とは、ウイルスを不活化する性能を有する剤をいう。
上記植物由来抗ウイルス剤としては、特に限定されず、例えば、茶、クルミ科ペカン属に属する植物等の抽出物を用いることができる。有効成分の収率、原材料の価格の観点から、クルミ科ペカン属に属する植物の種子又は種子殻の抽出物を用いることが好ましく、ペカンナッツの種子殻抽出物を用いることがより好ましい。
抽出方法としては、特に限定されず、水、アルカリ溶液、有機溶剤等により抽出できるが、抽出物におけるポリフェノール等の抗ウイルス活性を有する成分の活性を有効に保持するという観点から、熱水で抽出することが好ましい。例えば、ペカンナッツの種子殻に対し、水を添加し、60℃以上の温度で加熱処理した後、可溶部を分離するとともに、濃縮することにより、ペカンナッツの種子殻の抽出物を抽出することができる。具体的には、上述した本発明の抗ウイルス剤を用いることが好ましい。
上記抽出において、水の添加量は、ペカンナッツの種子殻に対して2〜20倍であることが好ましく、5〜10倍であることがより好ましい。水の添加量が少ないと、抽出後の分離が困難になる傾向があり、水の添加量が多いと、濃縮が困難になる傾向がある。
上記抽出において、処理温度は、85〜130℃であることが好ましく、90〜125℃であることがより好ましい。また、処理時間は、5〜30分間であることが好ましく、5〜20分間であることがより好ましい。処理温度が低いと、抗ウイルス性を有する有効成分を抽出できない傾向があり、処理温度が高いと、抗ウイルス性機能剤成分が破壊されてしまう恐れがある。また、処理時間が短いと、有効成分を抽出できない傾向があり、処理時間が長いと、有効成分が破壊されてしまう恐れがある。
上記抽出において、分離は、一般的方法で行えばよく、特に限定されない。例えば、ろ紙や脱脂綿を用いた自然ろ過、ブフナー漏斗を用いた減圧ろ過、遠心分離等の方法により分離することができる。また、濃縮は、加温による蒸発、減圧濃縮、真空晶析等の方法により行うことができ、抽出後の抽出物の熱変性を抑制するという観点から、真空晶析による方法が好ましい。なお、沸騰した状態での濃縮は好ましくなく、抽出物の安定化の観点から、濃縮は、80℃以下の温度で行うことが好ましく、50〜75℃の温度範囲で行うことが好ましい。
また濃縮した抽出物は、粉末化することも可能であり、粉末化の方法は一般的方法で行えばよく、特に限定されない。スプレー噴霧による方法等により容易に粉末化することが可能である。
上記植物由来抗ウイルス剤を、上記炭レーヨン繊維製品に担持させることにより、植物由来抗ウイルス剤を含有する抗ウイルスレーヨン繊維製品が得られる。上記担持は、例えば含浸処理、付着処理、表面付着処理等により行うことができる。
上記抗ウイルスレーヨン繊維製品中の植物由来抗ウイルス剤の含有量は、上記炭レーヨン繊維製品に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。抗ウイルス活性を発揮しつつ、製造コストを抑えることもできる。
上記抗ウイルスレーヨン繊維製品は、さらに抗酸化剤を含んでよい。抗酸化剤を植物由来抗ウイルス剤と混合した後、上記レーヨン繊維製品に担持させることにより、上記炭レーヨン繊維製品に抗酸化剤と植物由来抗ウイルス剤を含ませる。抗酸化剤を含ませることにより、ペカンナッツ抽出物等の植物由来抗ウイルス剤の酸化による活性低下をさらに抑制でき、より優れた抗ウイルス活性を発揮し得る。
上記抗酸化剤としては、水溶性抗酸化剤及び/又は油溶性抗酸化剤を用いることができ、ペカンナッツ抽出物等の植物由来抗ウイルス剤との相性から、油溶性抗酸化剤を用いることが好ましく、ビタミンEを用いることがより好ましい。抗酸化剤の添加量は、植物由来抗ウイルス剤、例えば、ペカンナッツ抽出物に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。抗酸化剤の添加量が0.1質量%未満であると、抗酸化作用が発揮されにくい傾向があり、50質量%を超えると、抗ウイルス剤が少な過ぎる恐れがある。
上記抗ウイルスレーヨン繊維製品は、ウイルス、具体的にはSARSウイルスやインフルエンザウイルス等の空気感染するウイルス、特にはSARSウイルスとインフルエンザウイルスに対して、優れた抗ウイルス活性を有する。また、上記抗ウイルスレーヨン繊維製品は、長期間使用しても、安定した抗ウイルス活性を発揮し得る。
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<ペカンナッツ抽出物の作製>
ペカンナッツの種子殻の粉砕物1000gに、水を5000ml入れて、高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)で、121℃、10分間処理した後、ブフナー漏斗を使用して濾過した後、減圧濃縮して60gの抽出物を得た。得られたペカンナッツ種子殻の抽出物を本発明の抗ウイルス剤として用いた。
実施例1で得られた抗ウイルス剤の抗ウイルス活性を、SARSウイルスを用いて、下記のように評価し、その結果を下記表1に示した。
<抗ウイルス活性の測定(SARSウイルス)>
SARSコロナウイルス(以下、SARS−CoVとも記す。)は、FFM−1株(Dr.HW. Doerr,Frankfrut University of Medicine, Germanyより分与)を用いた。培養細胞はVero(E64株、アフリカミドリザル腎細胞、ATCC製)を用い、培地はダルベッコの最小必須(DMEM)に10%ウシ胎児血清を添加したものを用い、5%CO2存在下において37℃で培養した。Vero細胞にSARS−CoVを感染させてストックウイルスを作成し、得られたSARS−CoVを5×107PFU(Plaque Forming Unit)/mlになるように調製した後、50μlを採集し、任意の濃度にペカン抽出物を加え(10mg/mlの水溶液のストック液から希釈)、5分後に450μlの1%ウシ血清アルブミンを加えたPBS(−)(Mg2+、Ca2+を含まない0.05Mリン酸緩衝液、0.15MNaCl、pH7.0)を加え10-1希釈液とした。さらに、10-1希釈液を上記PBS(−)で順次10倍段階希釈し、10-2、10-3、10-4、10-5、10-6、10-7希釈液を作成した。得られた各濃度の希釈液0.2mlずつを、培養皿(6ウエルプレート)に単層培養したVero細胞に接種し、25℃で60分間感染させた後、1.0%メチルセルロースを加えたDMEM(5%ウシ胎児血清含有)で4〜6日間培養した。培養後、メチルセルロースを取り除き、細胞を2.5%クリスタルバイオレット(30%エチルアルコール、1%シュウ酸アンモニウム中)で染色し、PBS(−)で3回洗浄/脱色後、プラーク数の平均値(3個のウエル)から1ml中のウイルス量を“PFU/ml”として算出した(Tuker, P.C.ら, J.Virol.71:6106, 1997)。ペカン抽出物を含まない反応液(対照)のウイルス量に対する検体を含む反応液のウイルス量の割合を算出し、対照を100(%)とし検体を含む反応液のウイルス量の割合から不活化率を算出した。
Figure 2012025698
表1の結果から分かるように、実施例1の抗ウイルス剤は、SARSコロナウイルスに対して99%以上の不活化率を示しており、SARSウイルスに対して優れた抗ウイルス活性を発揮することが確認された。
実施例1で得られた抗ウイルス剤の抗ウイルス活性を、インフルエンザウイルスを用いて、下記のように評価し、その結果を下記表2に示した。
<抗ウイルス活性の測定(インフルエンザウイルス)>
インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス(PR8株(H1N1))を用いた。ウイルス原液(107TCID50/ml)に対して、実施例1のペカンナッツの抽出物を、0.03、0.1、0.3、1、3mg/mlになるようにそれぞれ添加し、5分間室温(22℃)で放置する。反応後、上述の1%ウシ血清アルブミンを加えたPBS(−)で10倍段階希釈を行い、MDCK細胞(ATCCより購入)に感染させ、37℃で5日間培養を行い、培養後細胞を染色し、生存細胞からウイルスの有無を調べ、ウイルス希釈度からウイルス力価を算出した。ペカン抽出物のウイルス不活化率は、ペカン抽出物非存在下(対照)のウイルス力価に対するペカン抽出液添加検体のウイルス力価の割合を求め、対照を100(%)とし不活化率を示した。
Figure 2012025698
表2の結果から分かるように、実施例1の抗ウイルス剤は、A型インフルエンザウイルスに対して99%以上の不活化率を示しており、インフルエンザウイルスに対して優れた抗ウイルス活性を発揮することが確認された。
(実施例2)
<炭練り込みレーヨン繊維の製造>
赤松材をチップ化(最大差し渡し径10〜50mm、厚さ3〜5mm)して炭材を得た。得られた炭材を100m3平窯に入れ、500℃で約140時間かけて炭材を炭化させた(低温炭化工程)。上記低温炭化工程の終了後、窯全体の炭材を撹拌することで急激に酸素を与え、次いで温度を850℃に上昇させて40分間かけて十分に精錬を行った(高温炭化工程)。上記高温炭化工程の終了後、水をかけて消火させた。この処理によって活性化が行われ、活性化木炭が得られた(活性化工程)。このようにして得られた活性化木炭は、組織の結着密度が高く、固いものであった。得られた炭の組成分析を、X線光電子分光法(XPS)で測定・評価したところ、炭素の含有率は89.1原子%(以下において、atom%とも記す。)、酸素の含有率は10.9atom%であった。さらに、O1sのピーク分離により、官能基としてOH-及びC(=O)O-を有していることを確認した。また、得られた炭は、X線回折分析したところ、非晶質であった。
上記で得られた活性化木炭を、乾式粉砕機(セイシン社製)を用いて乾式粉砕することにより、最大粒子径が1.8μmであり、平均粒子径が0.40μmである活性化木炭粉を得た。得られた活性化木炭粉を、活性化木炭粉の濃度が20質量%となるように水に分散させ、この分散液を湿式粉砕機(三井鉱山社製)を用いて2時間湿式粉砕処理することにより、活性化木炭粉の水分散液を得た。
セルロースを8.7質量%、水酸化ナトリウムを6.0質量%及び二硫化炭素を3.2質量%含むビスコース原液を作製した。次に、上記で得られた活性化木炭粉の水分散液を、インジェクションポンプを用いて、セルロース分に対する活性化木炭の割合が10質量%となるように、定量的かつ連続的に添加して、ビスコース原液と活性化木炭とを均一に混合した。次に、得られたビスコース原液と活性化木炭の混合液を、2浴緊張紡糸法により、繊維化した。このとき、ノズル径0.09mm、孔数4000の紡糸口金を用い、紡糸速度50m/分で紡糸して、単繊維繊度が5.6dtexであり、炭の含有量が10質量%である炭練り込みレーヨン長繊維束を作製した。凝固・再生浴は、硫酸100g/リットル、硫酸亜鉛15g/リットル、硫酸ナトリウム350g/リットルの組成を有するミューラー浴(50℃)を用いた。得られた炭練り込みレーヨン長繊維束を、5mmに切断して、熱水処理、水流化処理、水洗処理を順次施して精練した。精練後、圧縮ローラーで余分な水分を繊維から落とした後、60℃で7時間乾燥して、炭練り込みレーヨン繊維を得た。
<炭レーヨン繊維製品の作製>
上記で得られた、単繊維繊度が5.6dtex、繊維長が5mmの炭練り込みレーヨン繊維40質量%と、パルプ60質量%とを混合して湿式抄紙し、目付70g/m2の炭練り込みレーヨン繊維を含む炭レーヨン繊維製品(不織布)を得た。
<ペカンナッツ抽出物による処理>
実施例1で得られたペカンナッツ抽出物に、水を加えて1質量%になるように希釈した。次に、希釈した1質量%のペカンナッツ抽出物に、上記で得られた不織布を30分間含浸した後、不織布の表面を水で洗浄し、乾燥させて、実施例2の不織布を得た。
(比較例1)
ペカンナッツ抽出物による処理を行っていない以外は、実施例2と同様にして、比較例1の不織布を得た。
(比較例2)
炭練り込みレーヨン繊維に代えて、レギュラーレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン社製、単繊維繊度1.7dtex、繊維長5mm)の繊維間に、実施例2と同様にして得られた活性化木炭粉を梳き込んだ炭担持レーヨン繊維を用いた以外は、実施例2と同様にして比較例2の不織布を得た。
(比較例3)
ペカンナッツ抽出物による処理を行っていない以外は、比較例2と同様にして、比較例3の不織布を得た。
(比較例4)
市販のコットン素材のハンカチを、実施例1と同様にして得られた1質量%のペカンナッツ抽出物により処理して、比較例4の不織布を得た。
実施例2及び比較例1〜4の繊維製品の抗ウイルス活性を、SARSウイルスを用いて、上述した方法(サンプルは、約1cm角の実施例又は比較例の不織布に吸着させた)で評価し、その結果を下記表3に示した。
Figure 2012025698
表3から分かるように、炭練り込みレーヨン繊維を含む繊維製品にペカンナッツ抽出物を含有させた不織布を用いた実施例2では、SARS−CoVの不活化率が99.9%以上であり、優れた抗ウイルス活性が発揮されている。一方、ペカンナッツ抽出物を含んでいない、炭練り込みレーヨン繊維を含む繊維製品を用いた比較例1では、SARS−CoVの不活化率は負の値を示しており、すなわちウイルスが増殖しており、抗ウイルス活性が発揮されていない。また、レーヨン繊維に炭を担持させた炭担持レーヨン繊維を用いた比較例2及び比較例3でも同様に、SARS−CoVの不活化率は負の値を示しており、すなわちウイルスが増殖しており、抗ウイルス活性が発揮されていない。また、コットン素材の市販のハンカチを用いた比較例4では、SARS−CoVの不活化率は低く、抗ウイルス活性が発揮されていない。
(実施例3〜8)
原料のペカンナッツについて、以下の抽出前の種子殻粉砕物(60g)を用意した。
(1)粉砕物A
ペカンナッツを殻割りして殻を取り出し、前処理として82℃の高温浴により5分間のボイルを行った。次いで、ボイル後の殻を乾燥し、粉砕機にかけて、1〜10mmの大きさのペカンナッツの種子殻粉砕物を得た。
(2)粉砕物B
ペカンナッツを殻割りして殻を取り出し、前処理(ボイル)を行わず乾燥し、粉砕機にかけて、5〜15mmの大きさのペカンナッツの種子殻粉砕物を得た。
(3)粉砕物C
ペカンナッツを殻割りしてナッツが少量付着した殻を取り出し、前処理(ボイル)を行わず乾燥し、粉砕機にかけて、5〜15mmの大きさのペカンナッツの種子殻粉砕物を得た。
得られた粉砕物A〜Cをそれぞれ水600ml用いて、表4に示す抽出条件で処理を行い、ブフナー漏斗を使用して濾過した後、減圧濃縮して、表4に示すように、1回目と2回目の合計で4.4〜9%の収率で抽出物を得た。ここで、収率とは、収率(%)=[抽出物の乾燥質量(g)/60(g)]×100の式により算出したものである。得られたペカンナッツ種子殻の熱水抽出物を本発明の抗ウイルス剤として用いた。得られた抽出物について、抽出物中に含まれる有効成分の指標としてポリフェノール含有率を以下の方法で測定し、その結果を下記表4に示した。
<ポリフェノール含有率>
フォーリン・チオカルト試薬による呈色により分光光度計で765nmの吸光度を測定した。詳しくは、分析試料0.1mlに蒸留水0.9mlを加え、10倍に希釈した後、蒸留水で2倍希釈したフォーリン・チオカルト試薬1mlを加えて撹拌した。3分後に0.4mol/l炭酸ナトリウム水溶液5mlを加え撹拌した後、試験管を50℃で5分間保持した試験管を1時間水冷後、分光光度計で765nmの吸光度を測定した。この時、没食子酸水溶液により検量線を作成し、ポリフェノール含有量を没食子酸相当量で算出し、抽出物の換算のポリフェノール含有率を算出した。
Figure 2012025698
表4の実施例3〜8の結果から、抽出1回の収率を見ると、実施例3(ボイル有り90℃抽出)が最も高く、実施例6〜8(125℃抽出)が総じて収率が高かった。ポリフェノール含有率は、いずれも50%以上と高い含有率を示した。また、抽出を2回行うことで、さらにポリフェノール等の有効成分を回収することができた。
実施例3〜8により得られたペカン種子殻抽出物について、以下の方法でSARSウイルスに対する抗ウイルス活性を、上述した抗ウイルス活性の測定(SARSウイルス)方法により評価した。その結果、実施例3〜8のペカン種子殻抽出物は、SARSウイルスに対して、99.99995以上の不活化率を示した。
実施例3のペカン種子殻抽出物について、以下の方法でインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性を、上述した抗ウイルス活性の測定(インフルエンザウイルス)方法により評価した。その結果、実施例3のペカン種子殻抽出物は、インフルエンザウイルスに対して、99.99995以上の不活化率を示した。
本発明の抗ウイルス剤は、抗ウイルス活性が高く、抗ウイルス性能が要求される分野において抗ウイルス剤として添加、付与して用いることができ、例えば、抗ウイルス繊維、繊維製品等の原材料として使用できる。また、本発明の抗ウイルス繊維製品及び抗ウイルスレーヨン繊維製品は、抗ウイルス剤を少なくとも一部に含む繊維製品であるので、糸、織編物、ウェブ、不織布、紙、ネット等の繊維構造物に成形して、様々な繊維産業に使用でき、医療に役立つことができる。本発明の抗ウイルス繊維製品及び抗ウイルスレーヨン繊維製品は、例えば、衣類、寝装・寝具、カーテン、障子、壁紙、カーペット、マット、シーツ、エアコン、空気清浄機等のフィルタ、マスク、ワイパー、タオル、防護衣類、防護ネット、廃鶏袋、鶏舎用品、医療用シートに形づくられて用いることができる。

Claims (8)

  1. クルミ科ペカン属に属する植物の種子殻を、60℃以上の温度の熱水で抽出して得られることを特徴とする抗ウイルス剤。
  2. クルミ科ペカン属に属する植物の種子殻を粉砕して粉砕物を得る工程、前記粉砕物を60℃以上の温度の熱水で抽出して抽出物を得る工程、前記抽出物を濾過し、減圧濃縮する工程とを含むことを特徴とする抗ウイルス剤の製造方法。
  3. 前記種子殻は、粉砕する前に50〜85℃の温度でボイル処理されている、請求項2に記載の抗ウイルス剤の製造方法。
  4. 請求項1に記載の抗ウイルス剤が、繊維製品に対して0.1〜10質量%含有されている抗ウイルス繊維製品。
  5. 抗ウイルス機能剤を含有する抗ウイルスレーヨン繊維製品であり、
    前記繊維製品は、炭練り込みレーヨン繊維を含み、
    前記抗ウイルス機能剤は、植物由来の抗ウイルス機能剤であることを特徴とする抗ウイルスレーヨン繊維製品。
  6. 前記植物由来の抗ウイルス剤が、クルミ科ペカン属に属する植物の種子殻の抽出物である請求項5に記載の抗ウイルスレーヨン繊維製品。
  7. 前記炭練り込みレーヨン繊維が、セルロースに対して炭を1〜30質量%含有している請求項5又は6に記載の抗ウイルスレーヨン繊維製品。
  8. 前記炭が、非晶質であり、酸素元素を含む官能基を有しており、全元素に対する酸素元素の割合が5〜15atom%である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の抗ウイルスレーヨン繊維製品。
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