以下、いくつかの実施の形態を図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るカプラ装置1の斜視図である。図2はカプラ装置1の分解斜視図である。図3はカプラ装置1の平面図である。図4は図3中のA−A矢視断面図である。図5は図3中のB−B矢視断面図である。
これら図1乃至図5に示すようにカプラ装置1は、結合素子11、無給電素子12、短絡素子13,14、地板15および誘電体16を含む。また図4および図5に示すように、カプラ装置1は給電線17およびコネクタ18をさらに含む。なお、図1乃至図4においては給電線17およびコネクタ18の図示を省略している。また図2は、結合素子11、無給電素子12、地板15および誘電体16の概略構造と位置関係とを示し、構造の細部の図示は省略している。
結合素子11、地板15および誘電体16は、いずれも平板状をなし、それぞれの厚み方向をほぼ一致させた状態で、その厚み方向に沿って結合素子11、誘電体16および地板15の順番で配列されている。なお、以下の説明においては、これら結合素子11、誘電体16および地板15の配列方向(厚み方向/高さ方向)をカプラ装置1の表裏方向と定め、かつ結合素子11の側を表側と定める。つまり、結合素子11は誘電体16の表側に位置し、かつ地板15は誘電体16の裏側に位置することになる。
結合素子11は、導電材料を薄い円板状に形成してなる。
無給電素子12は、導電材料を薄いリング状に形成してなる。無給電素子12の内径は、結合素子11の径よりも若干大きくなっている。無給電素子12は、その内側に結合素子11が互いに接触しない状態で位置するように、誘電体16の表側に配置されている。無給電素子12の厚みは、結合素子11の厚みにほぼ等しい。ただし、結合素子11の厚みと無給電素子12の厚みとが互いに異なっていても良い。
短絡素子13,14は、導電材料により形成されている。短絡素子13,14は、それぞれ異なる位置にて無給電素子12の裏側面に接合されている。短絡素子13,14は、無給電素子12に一体的であっても良いし、別体であっても良い。短絡素子13,14は、誘電体16の内部を通過する状態で配置されている。短絡素子13,14は、スルーホールや半田付けなどによって地板15に対して電気的に接続されている。
地板15は、誘電体16の一面のほぼ全面に導電材料よりなる薄い層を形成してなる。この地板15は、カプラ装置1が搭載される通信機器の金属筐体などに電気的に接続される場合もある。この場合には、地板15は、接地電極として機能する。地板15は、結合素子11との間で直接的な導通が生じることがない程度に結合素子11に対して離間される。地板15には、切欠部15a,15bが形成されている。切欠部15a,15bは、互いに平行した矩形状をなし、表裏方向に貫通している。この切欠部15a,15bによって地板15には、その中央を通る状態で桟15cが形成されている。
誘電体16は、誘電材料を板状に形成してなる。誘電体16は、結合素子11と地板15との間隙に配置される。第1の実施形態において誘電体16は、結合素子11と地板15との間隔にほぼ等しい厚みを有し、結合素子11と地板15との間隙をほぼ埋める。このため短絡素子13,14は、その大半が誘電体16の内部に位置している。ただし誘電体16の厚みは、結合素子11と地板15との間隔よりも小さくても良い。誘電体16は、その厚みが結合素子11と地板15との間隔よりも小さい場合には、典型的には地板15に接し、かつ結合素子11から離間する状態で誘電体16を配置する。しかしながら、結合素子11に接し、かつ地板15から離間する状態で誘電体16を配置しても良い。あるいは、結合素子11および地板15のいずれからも離間した状態で誘電体16を配置しても良い。さらには、結合素子11に接する第1の誘電体と地板15に接する第2の誘電体とをそれぞれ設けて、これら第1および第2の誘電体を互いに離間して配置しても良い。誘電体16には、切欠部16a,16bが形成されている。この切欠部16a,16bによって誘電体16には、その中央に位置する円形の支持部16cと、支持部16cの両端に延びる桟16d,16eが形成されている。支持部16cは、その表側に位置する結合素子11および無給電素子12を支持する。桟16d,16eは、支持部16cの中心を通る直線上に位置する。桟16d,16eはさらに、桟15cに平行している。
給電線17は、地板15および誘電体16を通過する状態で配置されている。給電線17は、一端が結合素子11の中心点の近傍の点P1に、他端がコネクタ18にそれぞれ接続されている。給電線17は、地板15に対しては絶縁されている。
コネクタ18は、地板15に面して配置され、誘電体16に固定される。このコネクタ18には、カプラ装置1が通信機器に搭載された状態においては、コネクタ2が結合される。コネクタ2は、上記の通信機器に搭載された送受信回路3とケーブルを介して接続されている。そしてコネクタ18は、コネクタ2とともに、給電線17とケーブルとを電気的に接続する。かくして、点P1が給電点となる。
なお、この第1の実施形態においては、カプラ装置1は、地板15側に設けられたコネクタ18を介して給電点P1へ給電する構成としているが、給電方法および実装方法はこれに限られるものではない。例えば、送受信回路3と一体的な基板としてカプラ装置1を実装し、当該基板のパターンとして、結合素子11側の給電点P1へ給電するように実装することも可能である。また、送受信回路3に接続された給電線を直接的に結合素子に接合する構成とすることも可能である。
地板15の表側面に対して表裏方向に結合素子11および無給電素子12を投影した場合の投影領域(結合素子11および無給電素子12に対向する領域)は図2に二点鎖線で示す領域A1,A2となる。この図2において、領域A1の一部が切欠部15a,15bに重なることから、結合素子11の一部に対向して切欠部15a,15bが設けられていること、すなわち結合素子11に対向する領域の近傍(隣接する領域)に切欠部15a,15bが設けられていることわかる。また領域A1のうちの中心部近傍には桟15cが位置していて、切欠部15a,15bが給電点P1の近傍には対向していないことがわかる。
誘電体16の表面側に対して表裏方向に結合素子11および無給電素子12を投影した場合の投影領域(結合素子11および無給電素子12に対向する領域)は図2に二点鎖線で示す領域A3,A4となる。この図2において、領域A3,A4の周囲に切欠部16a,16bが位置していることから、結合素子11および無給電素子12に対向する領域の周辺に切欠部16a,16bが設けられていることがわかる。
図6はカプラ装置1が搭載される機器の一例としての情報処理装置30の外観を示す斜視図である。この情報処理装置30は、例えば、バッテリ駆動可能なノートブック型の携帯型パーソナルコンピュータとして実現されている。
情報処理装置30は、本体300およびディスプレイユニット350を備えている。ディスプレイユニット350は、回動自在な状態で本体300に支持されている。ディスプレイユニット350は、本体300の上面を露出させる開放状態と、本体300の上面を覆う閉塞状態とを形成し得る。ディスプレイユニット350には、LCD(liquid crystal display)351が設けられている。
本体300は薄い箱状の筐体を有している。本体300には、その筐体の上面より筐体の外部に露出する状態で、キーボード301、タッチパッド302および電源スイッチ303等が配置されている。また本体300には、その筐体の内部にカプラ装置1が設けられている。本体300内におけるカプラ装置1の向きは任意であって良い。ただし典型的には、図1におけるZ方向を本体300の筐体の上面に直交する方向と一致させる。また典型的には、地板15よりも結合素子11を本体300の筐体の上面の近くに位置させる。
カプラ装置1は、情報処理装置30と図示しない他の装置との間で近接無線通信を行うために利用される。近接無線通信は、ピアツーピア形式で実行される。通信可能距離は、例えば3cm程度である。通信端末どうしの無線接続は、両通信端末にそれぞれ搭載されたカプラ装置1どうしの間の距離が通信可能距離以内に接近した場合にのみ可能となる。そして、2つのカプラ装置1が通信可能距離以内に接近した時に、当該2つの通信端末の間の無線接続が確立される。そして、ユーザによって指定されたデータファイル、または予め決められた同期対象データファイル等のデータが、2つの通信端末の間で送受信される。
図6に示す例では、カプラ装置1は本体300の上面におけるパームレストとして機能する領域(以下、パームレスト領域と称する)の下に配置されている。かくしてパームレスト領域の一部は、通信面として機能する。すなわち、情報処理装置30との間での近接無線通信を行おうとする他の通信端末をパームレスト領域に近接させることで、当該通信端末と情報処理装置30との無線接続を確立できる。
図7は情報処理装置30のブロック図である。なお、図6と同一部分には同一符号を付している。
情報処理装置30は、カプラ装置1、キーボード301、タッチパッド302、電源スイッチ303およびLCD351の他に、ハードディスクドライブ(HDD)304、CPU305、主メモリ306、BIOS(basic input/output system)−ROM307、ノースブリッジ308、グラフィクスコントローラ309、ビデオメモリ(VRAM)310、サウスブリッジ311、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)312、電源コントローラ313および近接無線通信デバイス314を含む。
ハードディスクドライブ304は、オペレーティングシステム(OS)やBIOS更新プログラム等の各種プログラムを実行するためのコードを格納する。
CPU305は、情報処理装置30の動作を制御するために、ハードディスクドライブ304から主メモリ306にロードされた各種プログラムを実行する。CPU305が実行するプログラムには、オペレーティングシステム401、近接無線通信ガジェットアプリケーションプログラム402、認証アプリケーションプログラム403、あるいは送信トレイアプリケーションプログラム404を含む。
またCPU305は、ハードウェア制御のために、BIOS−ROM307に格納されたBIOSプログラムを実行する。
ノースブリッジ308は、CPU305のローカルバスとサウスブリッジ311との間を接続する。ノースブリッジ308は、主メモリ306をアクセス制御するメモリコントローラを内蔵する。また、ノースブリッジ308は、AGPバスなどを介してグラフィクスコントローラ309との通信を実行する機能を有する。
グラフィクスコントローラ309は、LCD351を制御する。グラフィクスコントローラ309は、ビデオメモリ310に記憶された表示データから、LCD351で表示させる表示イメージを表す映像信号を生成する。なお表示データは、CPU305の制御の下にビデオメモリ310に書き込まれる。
サウスブリッジ311は、LPCバス上のデバイスを制御する。サウスブリッジ311は、ハードディスクドライブ304を制御するためのATAコントローラを内蔵している。さらに、サウスブリッジ311は、BIOS−ROM307をアクセス制御するための機能を有している。
エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)312は、エンベデッドコントローラと、キーボードコントローラとが集積された1チップマイクロコンピュータである。エンベデッドコントローラは、ユーザによる電源スイッチ303の操作に応じて情報処理装置30をパワーオン/パワーオフするように電源コントローラを制御する。キーボードコントローラは、キーボード301およびタッチパッド302を制御する。
電源コントローラ313は、図示しない電源装置の動作を制御する。なお当該電源装置は、情報処理装置30の各部の動作電力を生成する。
近接無線通信デバイス314は、PHY/MAC部316aを備える。PHY/MAC部316aは、CPU305による制御の下に動作する。PHY/MAC部316aは、カプラ装置1を介して、他の通信端末と通信する。この近接無線通信デバイス314は、図3における送受信回路3に相当する。近接無線通信デバイス314は、本体300の筐体内に収容される。
なお、近接無線通信デバイス314とサウスブリッジ311との間のデータの転送は、PCI(peripheral component interconnect)バスによって行われる。なお、PCIの代わりにPCI Expressを用いても良い。
次に以上のように構成されたカプラ装置1の動作について説明する。
カプラ装置1は、別のカプラ装置1または別種のカプラ装置と対向された状態で使用される。
図4および図5に示すようにカプラ装置1が接続された送受信回路3から高周波信号が送出されると、この高周波信号がケーブル、コネクタ2、コネクタ18および給電線17を介して結合素子11の給電点P1へと供給される。そうすると結合素子11には、給電点P1から辺縁部に向かう電流経路で高周波信号に応じた電流が生じる。すなわち結合素子11は、モノポールタイプの空中線素子と同様に振る舞う。
一方、無給電素子12は結合素子11とは離間しており、高周波信号の給電はなされず、さらに短絡素子13,14を介して地板15に導通されている。そして地板15は接地されているから、結合素子11に上記のように電流が生じた結果、結合素子11と無給電素子12および地板15との間に電位差が生じ、対向しているカプラ装置に高周波信号が誘起される。つまり、高周波信号がカプラ装置1から別のカプラ装置に無線伝送される。
なお、以上のように結合素子11はモノポールタイプであるから、給電点P1から結合素子の辺縁までの電気長が、高周波信号の中心周波数の波長λの1/4の整数倍にほぼ相当することが望ましい。
さて、上記のような使用状態においては、地板15は接地されており、かつ結合素子11と地板15とが近接しているので、結合素子11に生じた電流のエネルギの一部が地板15に漏れる。しかしながら、カプラ装置1においては、切欠部15a,15bが形成されているから、結合素子11の一部に対しては、地板15は表裏方向に並んではいない。このため、切欠部15a,15bが形成されていない場合に比べて、結合素子11における電流経路と地板15との距離が大きくなっており、結合素子11から地板15へと漏れるエネルギの量が低減されることになる。
また誘電体16を地板15と結合素子11との間に配置すると、当該誘電体16が挟まっている部分に地板15と結合素子11との間の電界が集中し、誘電体16から放射されるエネルギーが地板15側へと引き寄せられる。そこで、誘電体16に切欠部16a,16bを設けることで、地板15と結合素子11との間の電界の集中を避けることができる。そしてこれらの結果として、通信相手のカプラ装置との電磁的結合に利用されるエネルギ量が増加し、透過係数(S21)が向上する。
特に、結合素子11の周囲に関しては、切欠部15a,15b,16a,16bの面積を広くすると、通信相手のカプラ装置との透過係数(S21)を向上させることができる。
ところで、地板の全体としての面積が広い方が接地特性が向上し、結果として、通信相手のカプラ装置との電磁的結合に利用されるエネルギー量を増加させることができる。地板15は、切欠部15a,15bが形成されているものの、全体としての大きさは切欠部15a,15bを形成しない場合と変わらない。従って、切欠部15a,15bを設けない場合と同程度の接地特性を維持でき、電磁的結合に利用されるエネルギー量を低下させてしまうことがない。更に、地板15の下部(結合素子11とは反対側)で結合素子11に対向する位置に、金属筐体や電気基板、金属塗装を施した部材等を配置すると、更に接地特性を向上させることが可能である。
このような結合素子11近傍の切欠部の面積が広い方が特性が向上する点、および地板の面積が広い方が特性が向上する点については、後述する第2の実施形態以降でも同様である。
図9は2つのカプラ装置1を図8に示す状態で対向させる条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す図である。
図10は比較例としてのカプラ装置4の分解斜視図である。なお、図10において図1乃至図5と同一部分には同一符号を付している。
このカプラ装置4は、結合素子11、無給電素子12、地板41および誘電体42を含む。また、図2では図示を省略しているが、カプラ装置4は短絡素子13,14を含む。すなわちカプラ装置4は、カプラ装置1における地板15および誘電体16に代えて地板41および誘電体42を含んでいる。
地板41および誘電体42は、切欠部15a,15b,16a,16bが形成されておらず、単純な平板状となっている点のみが地板15および誘電体16との相違点である。
図11は2つのカプラ装置4を図8に示すのと同様な状態で対向させる条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す図である。
図9と図11とを比較して明らかなように、カプラ装置1は切欠部15a,15b,16a,16bの存在により、広い周波数範囲において透過係数が向上することが明らかである。
(第2の実施形態)
図12は第2の実施形態に係るカプラ装置5の分解斜視図である。なお、図1乃至図5と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図12に示すようにカプラ装置5は、結合素子11、無給電素子12、地板51および誘電体52を含む。またカプラ装置5は、図1乃至図5に示すような短絡素子13,14、給電線17およびコネクタ18をさらに含むが、これらは図12においては図示を省略している。また図12は、結合素子11、無給電素子12、地板51および誘電体52の概略構造と位置関係とを示し、構造の細部の図示は省略している。
つまりカプラ装置5は、カプラ装置1における地板15および誘電体16に代えて地板51および誘電体52を備える。
地板51は、地板15と同様に導電材料を板状に形成してなるが、切欠部51a,51bの形状が切欠部15a,15bとは異なっている。切欠部51a,51bは、それらの配列方向に沿った向きで地板51の端部まで及び、地板51の外側へと開放される状態で形成されている。この結果として地板51は、その厚み方向に直交する平面において次のような形状をなす。すなわち地板51は、いずれも矩形状をなした7つの導電部51c,51d,51e,51f,51g,51h,51iを有する。導電部51c,51dは、互いにほぼ平行する。導電部51eは、導電部51c,51dのそれぞれの中間部に両端が接する。導電部51f,51gは、導電部51cの両端から導電部51dに向かって延出する。導電部51h,51iは、導電部51dの両端から導電部51cに向かって延出する。導電部51f,51gの導電部51cからの突出量および導電部51h,51iの導電部51dからの突出量は、導電部51fおよび導電部51hと、導電部51gおよび導電部51hとが互いに接することがないように設定される。
誘電体52は、誘電体16と同様に誘電材料を板状に形成してなるが、切欠部16a,16bを形成していない点が誘電体16とは異なる。誘電体52は、誘電体16と同様に配置されている。
このようなカプラ装置5においても、切欠部51a,51bが形成されているから、結合素子11における電流経路と地板51との距離が大きくなっており、結合素子11から地板51へと漏れるエネルギの量が低減されることになる。そしてこの結果として、電磁的結合に利用されるエネルギ量が増加し、結合度が向上する。
図13は2つのカプラ装置5を図8に示すのと同様な状態で対向させる条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す図である。
図11と図13とを比較して明らかなように、カプラ装置1は切欠部15a,15b,16a,16bの存在により、広い周波数範囲において透過係数が向上することが明らかである。
(第3の実施形態)
図14は第3の実施形態に係るカプラ装置6の分解斜視図である。なお、図1乃至図5および図12と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図14に示すようにカプラ装置6は、結合素子11、無給電素子12、地板51および誘電体61を含む。またカプラ装置5は、図1乃至図5に示すような短絡素子13,14、給電線17およびコネクタ18をさらに含むが、これらは図14においては図示を省略している。また図14は、結合素子11、無給電素子12、地板51および誘電体61の概略構造と位置関係とを示し、構造の細部の図示は省略している。
つまりカプラ装置5は、カプラ装置1における地板15および誘電体16に代えて地板51および誘電体61を備える。
誘電体61は、誘電体16と同様に誘電材料を板状に形成してなるが、切欠部61a,61bの形状が切欠部16a,16bとは異なっている。切欠部61a,61bは、それらの配列方向に沿った向きで誘電体61の端部まで及び、誘電体61の外側へと開放される状態で形成されている。この結果として誘電体61は、その厚み方向に直交する平面において次のような形状をなす。すなわち誘電体61は、支持部16cおよび桟16d,16eの他に、いずれも矩形状をなした6つの矩形部61d,61e,61f,61g,61h,61iを有する。矩形部61d,61eは、互いにほぼ平行する。矩形部61dは、その中間部に桟16dの端部がほぼ直角に接する。矩形部61eは、その中間部に桟16eの端部がほぼ直角に接する。矩形部61f,61gは、矩形部61dの両端から矩形部61eに向かって延出する。矩形部61h,61iは、矩形部61eの両端から矩形部61dに向かって延出する。矩形部61f,61gの矩形部61dからの突出量および矩形部61h,61iの矩形部61eからの突出量は、矩形部61fおよび矩形部61hと、矩形部61gおよび矩形部61hとが互いに接することがないように設定される。
このようなカプラ装置6においても、切欠部51a,51b,61a,61bが形成されているから、結合素子11における電流経路と地板51との距離が大きくなっており、結合素子11から地板51へと漏れるエネルギの量が低減されることになる。そしてこの結果として、電磁的結合に利用されるエネルギ量が増加し、結合度が向上する。
図15はカプラ装置6の回転性能を示す図である。
図15における曲線C1は、2つのカプラ装置6を図8に示すのと同様な状態で、すなわち桟16d,16eが2つのカプラ装置6で互いに直交する状態で対向させた条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す。また図15における曲線C2は、2つのカプラ装置6の位置関係は図8に示す通りであるが、桟16d,16eが2つのカプラ装置6で互いに平行する状態で対向させた条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す。
図16はカプラ装置1の回転性能を示す図である。
図16における曲線C3は、2つのカプラ装置1を図8に状態で、すなわち桟16d,16eが2つのカプラ装置1で互いに直交する状態で対向させた条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す。また図15における曲線C4は、2つのカプラ装置1の位置関係は図8に示す通りであるが、桟16d,16eが2つのカプラ装置1で互いに平行する状態で対向させた条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す。
図15と図16とを比較して明らかなように、対向する2つのカプラ装置の相対的な向きが変化した場合の透過係数の変化は、カプラ装置1に比べてカプラ装置6において小さい。このことから、カプラ装置6は、カプラ装置1よりも回転性能が向上していることが分かる。ただし、最大の透過係数はカプラ装置6よりもカプラ装置1のほうが大きいのであり、結合度に関してはカプラ装置1のほうがカプラ装置6よりも優れる。
(第4の実施形態)
図17は第4の実施形態に係るカプラ装置7の斜視図である。図18は図17に示すカプラ装置7の分解斜視図である。
図17および乃至図18に示すようにカプラ装置7は、結合素子71、短絡素子72,73、地板74および誘電体75を含む。またカプラ装置7は、図1乃至図5に示すような給電線17およびコネクタ18をさらに含むが、これらは図17および図18においては図示を省略している。また図18は、結合素子71、地板74および誘電体74の概略構造と位置関係とを示し、構造の細部の図示は省略している。
結合素子71、地板74および誘電体75は、いずれも平板状をなし、それぞれの厚み方向をほぼ一致させた状態で、その厚み方向(表裏方向)に沿って結合素子71、誘電体75および地板74の順番で配列されている。つまり、結合素子71は誘電体75の表側に位置し、かつ地板74は誘電体75の裏側に位置する。
結合素子71は、その厚み方向に直交する平面において次のような形状をなす。すなわち結合素子71は、ループ部71a,71bおよび凸部71c,71dを有する。ループ部71a,71bは、一部を互いに共用する。凸部71c,71dは、ループ部71a,71bのそれぞれの中間部から互いに逆方向に延出している。
図示されない給電線17は、一端が結合素子71のループ部71a,71bの共用部分の中間部の点P2に接続されていて、当該点P2が給電点となる。
短絡素子72,73は、導電材料により形成されている。短絡素子72,73は、凸部71c,71dの先端部の近傍にて凸部71c,71dの裏側面にそれぞれ接合されている。短絡素子72,73は、結合素子71に一体的であっても良いし、別体であっても良い。短絡素子72,73は、誘電体75の内部を通過する状態で配置されている。短絡素子72,73は、スルーホールや半田付けなどによって地板74に対して電気的に接続されている。
地板74は、誘電体75の一面のほぼ全面に導電材料よりなる薄い層を形成してなる。この地板74は、カプラ装置7が搭載される通信機器の金属筐体などに電気的に接続される。このため地板74は、接地電極として機能する。地板74は、結合素子71との間で短絡素子72,73を介さない直接的な導通が生じることがない程度に結合素子71に対して離間される。地板74には、切欠部74a,74bが形成されている。切欠部74a,74bは、互いに平行した矩形状をなし表裏方向に貫通している孔を、切欠部74a,74bの配列方向に沿った向きで地板74の端部まで及び、地板74の外側へとそれぞれ開放した状態で形成されている。この結果として地板74は、その厚み方向に直交する平面において次のような形状をなす。すなわち地板74は、いずれも矩形状をなした7つの導電部74c,74d,74e,74f,74g,74h,74iを有する。導電部74c,74dは、互いにほぼ平行する。導電部74cは、その中間部に導電部74eの端部がほぼ直角に接する。導電部74dは、その中間部に導電部74eの端部がほぼ直角に接する。導電部74f,74gは、導電部74cの両端から導電部74dに向かって延出する。導電部74h,74iは、導電部74dの両端から導電部74cに向かって延出する。導電部74f,74gの導電部74cからの突出量および導電部74h,74iの導電部74dからの突出量は、導電部74fおよび導電部74hと、導電部74gおよび導電部74hとが互いに接することがないように設定される。
誘電体75は、誘電材料を板状に形成してなる。誘電体75は、結合素子71と地板74との間隙に配置される。誘電体75は、結合素子71と地板74との間隔にほぼ等しい厚みを有し、結合素子71と地板74との間隙をほぼ埋める。このため短絡素子72,73は、その大半が誘電体75の内部に位置している。ただし誘電体75の厚みは、結合素子71と地板74との間隔よりも小さくても良い。誘電体75は、その厚みが結合素子71と地板74との間隔よりも小さい場合には、典型的には地板74に接し、かつ結合素子71から離間する状態で誘電体75を配置する。しかしながら、結合素子71に接し、かつ地板74から離間する状態で誘電体75を配置しても良い。あるいは、結合素子71および地板74のいずれからも離間した状態で誘電体75を配置しても良い。さらには、結合素子71に接する第1の誘電体と地板74に接する第2の誘電体とをそれぞれ設けて、これら第1および第2の誘電体を互いに離間して配置しても良い。誘電体75には、切欠部75a,75bが形成されている。切欠部75a,75bは、互表裏方向に貫通している孔を、切欠部75a,75bの配列方向に沿った向きで誘電体75の端部まで及び、誘電体75の外側へとそれぞれ開放した状態で形成されている。この結果として誘電体75は、その厚み方向に直交する平面において次のような形状をなす。すなわち誘電体75は、支持部75eおよびいずれも矩形状をなした8つの矩形部75c,75d,75f,75g,75h,75i,75j,75kを有する。支持部75eは、その表側に位置する結合素子71を支持する。矩形部75j,75kは、支持部75eから互いに逆方向に延出している。矩形部75c,75dは、互いにほぼ平行する。矩形部75cは、その中間部に矩形部75kの端部がほぼ直角に接する。矩形部75dは、その中間部に矩形部75jの端部がほぼ直角に接する。矩形部75f,75gは、矩形部75cの両端から矩形部75dに向かって延出する。矩形部75h,75iは、矩形部75dの両端から矩形部75cに向かって延出する。矩形部75f,75gの矩形部75cからの突出量および矩形部75h,75iの矩形部75dからの突出量は、矩形部75fおよび矩形部75gと、矩形部75hおよび矩形部75iとが互いに接することがないように設定される。
地板74の表側面に対して表裏方向に結合素子71を投影した場合の投影領域(結合素子71に対向する領域)は図18に二点鎖線で示す領域A11となる。この図18において、領域A11の一部が切欠部74a,74bに重なることから、結合素子71の一部に対向して切欠部74a,74bが設けられていること、すなわち結合素子71に対向する領域の近傍(隣接する領域)に切欠部74a,74bが設けられていることわかる。また領域A11のうちの中心部近傍には支持部75eが位置していて、切欠部74a,74bが給電点P2の近傍には対向していないことがわかる。
誘電体75の表面側に対して表裏方向に結合素子71を投影した場合の投影領域(結合素子71に対向する領域)は図18に二点鎖線で示す領域A12となる。この図18において、領域A12の周囲に切欠部75a,75bが位置していることから、結合素子71に対向する領域の周辺に切欠部75a,75bが設けられていることがわかる。
以上のように構成されたカプラ装置7は、カプラ装置1と同様に情報処理装置30などの機器に搭載される。
次に以上のように構成されたカプラ装置7の動作について説明する。
カプラ装置7は、別のカプラ装置7または別種のカプラ装置と対向された状態で使用される。
高周波信号が結合素子71の給電点P2へと供給されると、結合素子71に給電点P2から凸部71c,71dの先端に向かって高周波信号に応じた電流が生じる。すなわち結合素子71は、折り返しタイプの空中線素子と同様に振る舞い、対向しているカプラ装置に高周波信号が誘起される。つまり、高周波信号がカプラ装置7から別のカプラ装置に無線伝送される。
なお、以上のように結合素子71は折り返しタイプであるから、給電点P2から短絡素子72,73までの電気長が、高周波信号の中心周波数の波長λの1/2の整数倍にほぼ相当することが望ましい。
さて、上記のような使用状態においては、地板74は接地されており、かつ結合素子71と地板74とが近接しているので、結合素子71に生じた電流のエネルギの一部が短絡素子72,73を介することなく直接的に地板74に漏れる。しかしながら、カプラ装置7においては、切欠部74a,74bが形成されているから、結合素子71の一部に対しては、地板74は表裏方向に並んではいない。このため、切欠部74a,74bが形成されていない場合に比べて、結合素子7における電流経路と地板74との距離が大きくなっており、結合素子71から地板74へと漏れるエネルギの量が低減されることになる。
また誘電体75を地板74と結合素子71との間に配置すると、当該誘電体75が挟まっている部分に地板74と結合素子71との間の電界が集中し、誘電体75から放射されるエネルギーが地板74側へと引き寄せられる。そこで、誘電体75に切欠部75a,75bを設けることで、地板74と結合素子71との間の電界の集中を避けることができる。そしてこれらの結果として、通信相手のカプラ装置との電磁的結合に利用されるエネルギ量が増加し、透過係数(S21)が向上する。
図19は2つのカプラ装置7を図8に示すのと同様な状態で対向させる条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す図である。
図20は2つの比較例のカプラ装置を図8に示すのと同様な状態で対向させる条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す図である。なお比較例のカプラ装置は、カプラ装置7における地板74および誘電体75を切欠部が形成されない単純な平板状の地板および誘電体に代えたものである。
図19と図20とを比較して明らかなように、カプラ装置7は切欠部74a,74b,75a,75bの存在により、広い周波数範囲において透過係数が向上することが明らかである。
(第5の実施形態)
図21は第5の実施形態に係るカプラ装置8の分解斜視図である。なお、図17および図18と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図21に示すようにカプラ装置8は、結合素子71、地板74および誘電体81を含む。またカプラ装置8は、図1乃至図5に示すような給電線17およびコネクタ18と、図17に示すような短絡素子72,73をさらに含むが、これらは図21においては図示を省略している。また図21は、結合素子71、地板74および誘電体81の概略構造と位置関係とを示し、構造の細部の図示は省略している。
つまりカプラ装置8は、カプラ装置7における誘電体75に代えて誘電体81を備える。
誘電体81は、誘電体75と同様に誘電材料を板状に形成してなるが、切欠部を形成していない単純な平板状に形成されている点が誘電体75とは異なる。誘電体81は、誘電体75と同様に配置されている。
このようなカプラ装置8においても、切欠部74a,74bが形成されているから、結合素子71における電流経路と地板74との距離が大きくなっており、結合素子71から地板74へと漏れるエネルギの量が低減されることになる。そしてこの結果として、電磁的結合に利用されるエネルギ量が増加し、結合度が向上する。
図22は2つのカプラ装置8を図8に示すのと同様な状態で対向させる条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す図である。
図20と図22とを比較して明らかなように、カプラ装置8は切欠部74a,74bの存在により、広い周波数範囲において透過係数が向上することが明らかである。
(第6の実施形態)
図23は第6の実施形態に係るカプラ装置9の分解斜視図である。なお、図1乃至図5と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図23に示すようにカプラ装置9は、結合素子11、地板15および誘電体91を含む。またカプラ装置9は、図1乃至図5に示すような給電線17およびコネクタ18をさらに含むが、これらは図23においては図示を省略している。また図23は、結合素子11、地板15および誘電体91の概略構造と位置関係とを示し、構造の細部の図示は省略している。
つまりカプラ装置9は、カプラ装置1における無給電素子12および短絡素子13,14を省略するとともに、誘電体16に代えて誘電体91を備える。
誘電体91は、誘電体16と同様に誘電材料を板状に形成してなるが、切欠部91a,91bの形状が切欠部16a,16bとは異なっている。すなわち切欠部91a,91bは、結合素子11のみを支持するように支持部16cよりも小さな支持部91cと、この支持部91cから延出する桟16d、16eよりも長い桟91d,91eを形成する。誘電体52は、誘電体16と同様に配置されている。
このようなカプラ装置9においても、結合素子11から地板15へと漏れるエネルギの量が低減されることになる。そしてこの結果として、電磁的結合に利用されるエネルギ量が増加し、結合度が向上する。
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
(1) 上記のいずれの実施形態においても、誘電体16,61,75,81,91は省略可能である。
(2) カプラ装置1,9における地板15に代えて地板51を備えたカプラ装置として実施可能である。
(3) カプラ装置5における地板51に代えて地板15を備えたカプラ装置として実施可能である。
(4) カプラ装置7,8における地板74に代えて地板15を備えたカプラ装置として実施可能である。
(5) カプラ装置9における誘電体91に代えて誘電体52を備えたカプラ装置として実施可能である。
(6) カプラ装置9における地板15に代えて地板51を備え、かつ誘電体91に代えて誘電体52を備えたカプラ装置として実施可能である。
(7) カプラ装置9における地板15に代えて地板51を備え、かつ誘電体91における切欠部91a,91bを切欠部62a,62bのように誘電体91の端部まで及び、誘電体91の外側へと開放したものとしたカプラ装置として実施可能である。
(8) 結合素子11は、モノポールタイプの素子として振る舞うものであれば、その形状は任意であって良い。
(9) 無給電素子12の形状は任意であって良い。
(10) 結合素子71は、折り返しタイプの素子として振る舞うものであれば、その形状は任意であって良い。
(11) 切欠部51a,51b,61a,61b,74a,74b,75a,75b,91a,91bの形状は、例えば大きさを変更したり、直線状の辺の一部を曲線状とするなどのように任意に変更が可能である。
(12) 上記各実施形態におけるカプラ装置1,5,6,7,8,9は、いずれも給電点を含み表裏方向に沿った平面を挟んで対称となる構造を有している。しかしながら、このような対称性は必須ではなく、上記の平面を挟んで非対称となる構造であっても良い。ただし、上記各実施形態の構造であると、非対称とした構造よりも回転性能を高めるためには有利である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本体300は薄い箱状の筐体を有している。本体300には、その筐体の上面より筐体の外部に露出する状態で、キーボード301、タッチパッド302および電源スイッチ303等が配置されている。また本体300には、その筐体の内部にカプラ装置1が設けられている。本体300内におけるカプラ装置1の向きは任意であって良い。ただし典型的には、図1における表裏方向を本体300の筐体の上面に直交する方向と一致させる。また典型的には、地板15よりも結合素子11を本体300の筐体の上面の近くに位置させる。
地板51は、地板15と同様に導電材料を板状に形成してなるが、切欠部51a,51bの形状が切欠部15a,15bとは異なっている。切欠部51a,51bは、それらの配列方向に沿った向きで地板51の端部まで及び、地板51の外側へと開放される状態で形成されている。この結果として地板51は、その厚み方向に直交する平面において次のような形状をなす。すなわち地板51は、いずれも矩形状をなした7つの導電部51c,51d,51e,51f,51g,51h,51iを有する。導電部51c,51dは、互いにほぼ平行する。導電部51eは、導電部51c,51dのそれぞれの中間部に両端が接する。導電部51f,51gは、導電部51cの両端から導電部51dに向かって延出する。導電部51h,51iは、導電部51dの両端から導電部51cに向かって延出する。導電部51f,51gの導電部51cからの突出量および導電部51h,51iの導電部51dからの突出量は、導電部51fおよび導電部51hと、導電部51gおよび導電部51iとが互いに接することがないように設定される。
誘電体61は、誘電体16と同様に誘電材料を板状に形成してなるが、切欠部61a,61bの形状が切欠部16a,16bとは異なっている。切欠部61a,61bは、それらの配列方向に沿った向きで誘電体61の端部まで及び、誘電体61の外側へと開放される状態で形成されている。この結果として誘電体61は、その厚み方向に直交する平面において次のような形状をなす。すなわち誘電体61は、支持部16cおよび桟16d,16eの他に、いずれも矩形状をなした6つの矩形部61d,61e,61f,61g,61h,61iを有する。矩形部61d,61eは、互いにほぼ平行する。矩形部61dは、その中間部に桟16dの端部がほぼ直角に接する。矩形部61eは、その中間部に桟16eの端部がほぼ直角に接する。矩形部61f,61gは、矩形部61dの両端から矩形部61eに向かって延出する。矩形部61h,61iは、矩形部61eの両端から矩形部61dに向かって延出する。矩形部61f,61gの矩形部61dからの突出量および矩形部61h,61iの矩形部61eからの突出量は、矩形部61fおよび矩形部61hと、矩形部61gおよび矩形部61iとが互いに接することがないように設定される。
図16における曲線C3は、2つのカプラ装置1を図8に状態で、すなわち桟16d,16eが2つのカプラ装置1で互いに直交する状態で対向させた条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す。また図16における曲線C4は、2つのカプラ装置1の位置関係は図8に示す通りであるが、桟16d,16eが2つのカプラ装置1で互いに平行する状態で対向させた条件における周波数と透過係数(S21)との関係を示す。
地板74は、誘電体75の一面のほぼ全面に導電材料よりなる薄い層を形成してなる。この地板74は、カプラ装置7が搭載される通信機器の金属筐体などに電気的に接続される。このため地板74は、接地電極として機能する。地板74は、結合素子71との間で短絡素子72,73を介さない直接的な導通が生じることがない程度に結合素子71に対して離間される。地板74には、切欠部74a,74bが形成されている。切欠部74a,74bは、互いに平行した矩形状をなし表裏方向に貫通している孔を、切欠部74a,74bの配列方向に沿った向きで地板74の端部まで及び、地板74の外側へとそれぞれ開放した状態で形成されている。この結果として地板74は、その厚み方向に直交する平面において次のような形状をなす。すなわち地板74は、いずれも矩形状をなした7つの導電部74c,74d,74e,74f,74g,74h,74iを有する。導電部74c,74dは、互いにほぼ平行する。導電部74cは、その中間部に導電部74eの端部がほぼ直角に接する。導電部74dは、その中間部に導電部74eの端部がほぼ直角に接する。導電部74f,74gは、導電部74cの両端から導電部74dに向かって延出する。導電部74h,74iは、導電部74dの両端から導電部74cに向かって延出する。導電部74f,74gの導電部74cからの突出量および導電部74h,74iの導電部74dからの突出量は、導電部74fおよび導電部74hと、導電部74gおよび導電部74iとが互いに接することがないように設定される。
誘電体75は、誘電材料を板状に形成してなる。誘電体75は、結合素子71と地板74との間隙に配置される。誘電体75は、結合素子71と地板74との間隔にほぼ等しい厚みを有し、結合素子71と地板74との間隙をほぼ埋める。このため短絡素子72,73は、その大半が誘電体75の内部に位置している。ただし誘電体75の厚みは、結合素子71と地板74との間隔よりも小さくても良い。誘電体75は、その厚みが結合素子71と地板74との間隔よりも小さい場合には、典型的には地板74に接し、かつ結合素子71から離間する状態で誘電体75を配置する。しかしながら、結合素子71に接し、かつ地板74から離間する状態で誘電体75を配置しても良い。あるいは、結合素子71および地板74のいずれからも離間した状態で誘電体75を配置しても良い。さらには、結合素子71に接する第1の誘電体と地板74に接する第2の誘電体とをそれぞれ設けて、これら第1および第2の誘電体を互いに離間して配置しても良い。誘電体75には、切欠部75a,75bが形成されている。切欠部75a,75bは、表裏方向に貫通している孔を、切欠部75a,75bの配列方向に沿った向きで誘電体75の端部まで及び、誘電体75の外側へとそれぞれ開放した状態で形成されている。この結果として誘電体75は、その厚み方向に直交する平面において次のような形状をなす。すなわち誘電体75は、支持部75eおよびいずれも矩形状をなした8つの矩形部75c,75d,75f,75g,75h,75i,75j,75kを有する。支持部75eは、その表側に位置する結合素子71を支持する。矩形部75j,75kは、支持部75eから互いに逆方向に延出している。矩形部75c,75dは、互いにほぼ平行する。矩形部75cは、その中間部に矩形部75kの端部がほぼ直角に接する。矩形部75dは、その中間部に矩形部75jの端部がほぼ直角に接する。矩形部75f,75gは、矩形部75cの両端から矩形部75dに向かって延出する。矩形部75h,75iは、矩形部75dの両端から矩形部75cに向かって延出する。矩形部75f,75gの矩形部75cからの突出量および矩形部75h,75iの矩形部75dからの突出量は、矩形部75fおよび矩形部75gと、矩形部75hおよび矩形部75iとが互いに接することがないように設定される。