JP2012015428A - トンネル磁気抵抗素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】検出精度が低下することを抑制するトンネル磁気抵抗素子の製造方法を提供する。
【解決手段】平面形状が所定方向に延設された細長形状とされたピン層40およびトンネル層50と、トンネル層50の表面を露出させた状態で、ピン層40およびトンネル層50を囲んで配置された第1保護膜81と、を有する積層体90を基板10上に形成する工程と、平面形状がトンネル層50における延設方向と垂直方向の長さより長い直径を有する円形状であって、トンネル層50が内部を通過すると共に、トンネル層50における延設方向と垂直方向にトンネル層50から突出した部分を有する形状のフリー層60を積層体90上に形成する工程と、フリー層60を覆う第2保護膜82を配置する工程と、を含む工程を行う。
【選択図】図2
【解決手段】平面形状が所定方向に延設された細長形状とされたピン層40およびトンネル層50と、トンネル層50の表面を露出させた状態で、ピン層40およびトンネル層50を囲んで配置された第1保護膜81と、を有する積層体90を基板10上に形成する工程と、平面形状がトンネル層50における延設方向と垂直方向の長さより長い直径を有する円形状であって、トンネル層50が内部を通過すると共に、トンネル層50における延設方向と垂直方向にトンネル層50から突出した部分を有する形状のフリー層60を積層体90上に形成する工程と、フリー層60を覆う第2保護膜82を配置する工程と、を含む工程を行う。
【選択図】図2
Description
本発明は、磁化方向が固定されたピン層、絶縁体で構成されるトンネル層、外部磁化に応じて磁化方向が変化するフリー層が順に積層されると共に、これらピン層、トンネル層、フリー層が保護膜に覆われてなるトンネル磁気抵抗素子の製造方法に関するものである。
従来より、強磁性体で構成されたピン層とフリー層との間に、絶縁体で構成されたトンネル層が挟まれて構成されるトンネル磁気抵抗素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、このようなトンネル磁気抵抗素子は、基板上に、下部電極層、ピン層、トンネル層、フリー層、上部電極層が順に積層されると共に、これら各層が保護膜に覆われて構成されている。そして、ピン層は、形状異方性によって磁化方向を制御しやすくするために平面形状が長方形状とされており、長手方向に磁化方向が固定されている。また、下部電極層およびトンネル層もピン層と同様に平面形状が長方形状とされている。フリー層は、外部磁化に応じて磁化方向が変化するものであるため、形状異方性が小さいことが好ましく、平面形状が円形状とされている。
このようなトンネル磁気抵抗素子は、例えば、次のように製造される。すなわち、まず、基板上に、スパッタ等により、下部電極層、ピン層、トンネル層、フリー層、上部電極層を構成する薄膜を順に形成する。その後、各層を構成する薄膜を平面形状が長方形状となるようにエッチングする。続いて、フリー層および上部電極層を構成する薄膜に対して、トンネル層をエッチングストッパとして、平面形状が円形状となるようにエッチングする。次に、下部電極層、ピン層、トンネル層、フリー層、上部電極層を覆う保護膜を配置することにより、トンネル磁気抵抗素子が製造される。
上記トンネル磁気抵抗素子では、フリー層の磁化方向が外部の磁化方向に応じて変化すると、フリー層とピン層との間に位置するトンネル層の抵抗値が変化する。このため、トンネル層の抵抗値の変化を検出することにより、外部の磁化方向が検出される。
しかしながら、このような製造方法では、次のような問題がある。すなわち、フリー層を形成する際、トンネル層をエッチングストッパとしているため、フリー層がトンネル層内に配置されることになる。言い換えると、フリー層を上方から視たとき、フリー層はトンネル層の内側に位置する構成となる。そして、フリー層とトンネル層との間の部分では、段差が形成されることになる。
また、保護膜は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により配置されるため、フリー層とトンネル層との間に形成された段差部分には堆積されにくく、保護膜を配置したとき、当該段差部分に空間が形成されることがある。つまり、保護膜を配置したとき、フリー層、トンネル層、保護膜にて囲まれる空間が形成されることがある。そして、この空間は、フリー層に起因して磁場が形成されることでフリー層と同じ機能を果たしてしまうことになる。すなわち、外部磁化に応じて磁化方向が変化する部分がフリー層および空間となり、フリー層の実質体積が増加することになる。この場合、フリー層の実質体積がトンネル層の長手方向と垂直方向、つまりトンネル層の短手方向に増加すると、フリー層の実質体積がトンネル層の長手方向に増加する場合と比較して、理由は明らかではないが、ピン層の磁化方向が不安定となり、トンネル磁気抵抗素子の検出精度が低下してしまうという問題がある。なお、フリー層の実質体積とは、フリー層の体積と空間の体積との和の体積のうち、トンネル層の直上にあってトンネル層の抵抗値の変化に寄与する体積のことである。
本発明は上記点に鑑みて、検出精度が低下することを抑制することができるトンネル磁気抵抗素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、平面形状が所定方向に延設された細長形状とされたピン層(40)およびトンネル層(50)と、トンネル層(50)のうちピン層(40)と反対側の部分を露出させた状態で、ピン層(40)およびトンネル層(50)を囲んで配置された第1保護膜(81)と、を有する積層体(90)を基板(10)上に形成する工程と、平面形状がトンネル層(50)における延設方向と垂直方向の長さより長い直径を有する円形状であって、積層体(90)の上方から視たとき、トンネル層(50)が内部を通過すると共に、トンネル層(50)における延設方向と垂直方向にトンネル層(50)から突出した部分を有する形状のフリー層(60)を積層体(90)上に形成する工程と、フリー層(60)を覆う第2保護膜(82)を配置する工程と、を含むことを特徴としている。
このような製造方法では、ピン層(40)およびトンネル層(50)を囲む第1保護膜(81)を有する積層体(90)を基板(10)に形成した後、平面形状がトンネル層(50)における延設方向と垂直方向の長さより長い直径を有する円形状であり、積層体(90)の上方から視たとき、トンネル層(50)が内部を通過すると共に、トンネル層(50)における延設方向と垂直方向にトンネル層(50)から突出した部分を有するフリー層(60)を積層体(90)上に形成している。言い換えると、積層体(90)の上方から視たとき、フリー層(60)のうちトンネル層(50)が通過しない部分を第1保護膜(81)上に形成している。そして、フリー層(60)のうち第1保護膜(81)上に位置する部分では、第1保護膜(81)との間に段差が形成されることになる。
したがって、フリー層(60)を覆う第2保護膜(82)を配置したとき、フリー層(60)における第1保護膜(81)上に位置する部分では、フリー層(60)、第1保護膜(81)、第2保護膜(82)にて囲まれる空間が形成されることになる。この場合、フリー層(60)のうち第1保護膜(81)上に位置する部分では、トンネル層(50)と接していないため、フリー層(60)、第1保護膜(81)、第2保護膜(82)にて囲まれる空間もトンネル層(50)と接しない。すなわち、当該空間は、磁場が形成されたとしてもトンネル層(50)の抵抗値の変化に寄与するものではない。このため、フリー層(60)の実質体積がトンネル層(50)の短手方向に増加することを抑制でき、検出精度が低下することを抑制することができる。
例えば、請求項2に記載の発明のように、積層体(90)を基板(10)上に形成する工程では、トンネル層(50)の表面と第1保護膜(81)の表面とを一致させる工程を行うことができる。このような製造方法では、トンネル層(50)の表面と第1保護膜(81)の表面とを一致させるため、トンネル層(50)の表面と第1保護膜(81)の表面とを一致させない場合と比較して、積層体(90)上にフリー層(60)を形成しやすくすることができる。
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1および2に記載の発明において、積層体(90)を形成する工程を、基板(10)上にピン層(40)を構成する薄膜およびトンネル層(50)を構成する金属膜を順に形成する工程と、薄膜および金属膜を加工してピン層(40)および金属層(50a)を形成する工程と、ピン層(40)および金属層(50a)を覆う第1保護膜(81)を配置する工程と、第1保護膜(81)のうち基板(10)側と反対側の部分を研磨して金属層(50a)のうちピン層(40)と反対側の部分を露出させる工程と、金属層(50a)を酸化してトンネル層(50)を形成する工程と、トンネル層(50)のうち基板(10)側と反対側の部分を除去し、トンネル層(50)の表面と第1保護膜(81)の表面とを一致させる工程と、を含む工程とすることができる。
さらに、請求項4に記載の発明のように、請求項1および2に記載の発明において、積層体(90)を形成する工程を、基板(10)上にピン層(40)を構成する薄膜およびトンネル層(50)を形成する金属膜を順に形成する工程と、薄膜および金属膜を加工して、ピン層(40)および金属層(50a)を形成する工程と、ピン層(40)および金属層(50a)を覆う金属で構成された第1保護膜構成部材(81a)を配置する工程と、第1保護膜構成部材(81a)および金属層(50a)を酸化して第1保護膜(81)およびトンネル層(50)を形成する工程と、第1保護膜(81)のうち基板(10)側と反対側の部分を研磨してトンネル層(50)のうちピン層(40)と反対側の部分を露出させると共にトンネル層(50)の表面と第1保護膜(81)の表面とを一致させる工程と、を含む工程とすることができる。
そして、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発明において、積層体(90)を形成する工程では、金属層(50a)を陽極酸化してトンネル層(50)を形成することができる。また、請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発明において、積層体(90)を形成する工程では、金属層(50a)を陽極酸化してトンネル層(50)を形成すると共に、第1保護膜構成部材(81a)を陽極酸化して第1保護膜(81)を形成することができる。
これら請求項5または6に記載の発明のように、陽極酸化を行うことにより、加熱炉等により酸化を行う場合と比較して、選択的に金属層(50a)、または金属層(50a)および第1保護膜構成部材(81a)を酸化することができ、ピン層(40)の特性が変化することを抑制することができる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1(a)は、本実施形態の製造方法により製造されたトンネル磁気抵抗素子の断面構成を示す図、図1(b)は、図1(a)に示すトンネル磁気抵抗素子の上面模式図である。なお、図1(a)は図1(b)のA−A断面に相当している。また、本実施形態のトンネル磁気抵抗素子は、例えば、角度検出センサに適用されると好適である。
本発明の第1実施形態について説明する。図1(a)は、本実施形態の製造方法により製造されたトンネル磁気抵抗素子の断面構成を示す図、図1(b)は、図1(a)に示すトンネル磁気抵抗素子の上面模式図である。なお、図1(a)は図1(b)のA−A断面に相当している。また、本実施形態のトンネル磁気抵抗素子は、例えば、角度検出センサに適用されると好適である。
図1に示されるように、本実施形態のトンネル磁気抵抗素子は、基板10上に、下部電極層20、磁石層30、ピン層40、トンネル層50、フリー層60、上部電極層70が順に積層されると共に、これら各層20〜70を覆う保護膜80が配置されて構成されている。
基板10は、特に限定されるものではないが、例えば、シリコン基板等を用いて構成される。そして、基板10には、導電性材料からなる下部電極層20が形成されている。この下部電極層20は、例えば、厚さ5nmのTa膜で構成される。
下部電極層20の上部には、反強磁性体の磁石層30が形成されている。この磁石層30は、例えば、厚さ10nmのRu膜、厚さ10nmのIrMn膜が積層されて構成される。
そして、磁石層30の上部には、強磁性体であり、磁化方向が固定されたピン層40が形成されている。本実施形態のピン層40は、磁石層30の上部に形成されており、磁石層30との間の交換結合による効果を利用して保磁力を向上させたものである。ピン層40は、例えば、厚さ2nmのCoFe膜、厚さ0.85nmのRu膜、厚さ3nmのCoFeB膜が順に積層されて構成される。
なお、磁石層30およびピン層40のそれぞれの構成や組み合わせは特に限定されるものではないが、交換結合を利用してピン層40の保磁力を高くすることができる構成や組み合わせであることが好ましい。
そして、ピン層40の上部には、トンネル層50が形成されている。本実施形態では、このトンネル層50は、絶縁体である金属酸化物を用いて構成され、例えば、厚さが2nmであるMgO膜、Al2O3膜、Ta2O5膜等で構成される。
また、ピン層40は、形状異方性によって磁化方向を制御しやすくするために、平面形状が所定方向に延設された細長形状とされており、磁化方向が当該延設方向(図1(b)中紙面左右方向)と平行な方向に固定されている。本実施形態では、ピン層40は、平面形状が細長形状である長方形状とされている。
なお、下部電極層20、磁石層30およびトンネル層50も、平面形状がピン層40と同一形状の長方形状とされている。
トンネル層50の上部には、外部磁化に応じて磁化方向が変化するフリー層60が形成されている。フリー層60は、例えば、厚さ3nmのCoFeB膜、厚さ0.85nmのRu膜、厚さ30nmのPy膜が順に積層されて構成される。
また、フリー層60は、外部磁化に応じて磁化方向が変化するものであるため、形状異方性が小さいことが好ましく、平面形状が円形状とされている。具体的には、フリー層60は、トンネル層50における延設方向と垂直方向の長さ、つまり、長方形状における長手方向と垂直方向である短手方向の長さより長い直径を有する円形状とされている。そして、フリー層60の上方から視たとき、トンネル層50がフリー層60の内部を通過し、トンネル層50の短手方向にトンネル層50から突出した部分を有する構成とされている。本実施形態では、フリー層60の中心点は、トンネル層50の延設方向に延びる中心軸上に位置する構成とされている。なお、フリー層60の上方から視たときとは、フリー層60を基板10側と反対側から視たときのことである。
フリー層60の上部には、導電性材料からなる上部電極層70が形成されている。上部電極層70は、例えば、厚さが5nmのTaにより構成され、平面形状がフリー層60と同一形状とされている。
また、基板10上には、下部電極層20、磁石層30、ピン層40、トンネル層50、フリー層60、上部電極層70を覆うSiO2等で構成された保護膜80が配置されている。具体的には、保護膜80は、下部電極層20、磁石層30、ピン層40、トンネル層50を覆う第1保護膜81と、フリー層60、上部電極層70を覆う第2保護膜82とを有する構成とされている。そして、図示しないが、保護膜80には、例えば、表面から上部電極層70に達するコンタクトホールが形成されており、コンタクトホールには外部と電気的に接続が可能とされた電極等が配置されている。以上のようにして本実施形態のトンネル磁気抵抗素子が構成されている。
次に、このようなトンネル磁気抵抗素子の製造方法について説明する。図2は、本実施形態におけるトンネル磁気抵抗素子の製造工程を示す断面図である。
まず、図2(a)に示されるように、例えば、1×10−7〜10−8Pa程度の真空条件下に基板を入れ、スパッタ法により、基板10上に、下部電極層20、磁石層30、ピン層40を構成する薄膜を順に形成すると共に、トンネル層50を構成する金属膜を形成する。その後、下部電極層20、磁石層30、ピン層40を構成する薄膜、およびトンネル層50を構成する金属膜を、ドライエッチングやイオンミリングによって、平面形状が長方形状となるように加工する。これにより、各薄膜から下部電極層20、磁石層30、ピン層40をそれぞれ形成すると共に、金属膜から金属層50aを形成する。
続いて、図2(b)に示されるように、CVD法等により、下部電極層20、磁石層30、ピン層40、金属層50aを覆う第1保護膜81を形成する。次に、図2(c)に示されるように、第1保護膜81の表面を研磨して金属層50aの表面を露出させる。この研磨は、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等により行うことができる。なお、第1保護膜81の表面とは、第1保護膜81のうち基板10側と反対側の部分のことであり、金属層50aの表面とは、金属層50aのうちピン層40と反対側の一面のことである。
その後、図2(d)に示されるように、金属層50aを酸化して金属酸化物で構成されるトンネル層50を形成する。本実施形態では、金属層50aを陽極酸化することでトンネル層50を形成しており、トンネル層50が第1保護膜81の表面から突出した形状になる。なお、陽極酸化は、例えば、クエン酸水溶液に図2(c)の工程を行ったものを浸し、金属層50aを陽極として3Vの電圧を印加することにより行うことができる。
続いて、1×10−7〜10−8Pa程度の真空条件下にトンネル層50が形成された基板10を入れて、図2(e)に示されるように、トンネル層50のうち基板10側と反対側の部分、つまり、トンネル層50のうち第1保護膜81から突出している部分をドライエッチングにより除去し、トンネル層50の表面と第1保護膜81の表面とを一致させる。これにより、基板10上に、トンネル層50の表面が露出した状態で、ピン層40およびトンネル層50を取り囲む第1保護膜81が配置された積層体90が形成される。
なお、第1保護膜81から突出しているトンネル層50をエッチングする方法としては、例えば、アルキルベンジルイミダゾリウム塩をガス状にしてプラズマに晒すことでエッチングしたり、基板10を回転させながらアルゴンイオンを斜めから照射してエッチングしたりする方法がある。また、トンネル層50をエッチングする際には、第1保護膜81の表面も僅かに除去されることになり、CMP時に第1保護膜81の表面に付着した異物等が除去される。
その後、図2(f)に示されるように、積層体90上に、つまりトンネル層50および第1保護膜81上に、フリー層60を構成するフリー層構成薄膜および上部電極層70を構成する薄膜をスパッタ等により順に形成する。そして、トンネル層50および第1保護膜81をストッパとしてフリー層構成膜および薄膜をドライエッチングやイオンミリングにより加工し、上記のように、平面形状がトンネル層50の短手方向の長さより長い直径を有する円形状であり、積層体90の上方から視たとき、トンネル層50が内部を通過し、トンネル層50の短手方向にトンネル層50から突出した部分を有するフリー層60および上部電極層70を形成する。これにより、フリー層60のうち、トンネル層50から突出した部分、つまり、第1保護膜81上に位置する部分では、第1保護膜81との間に段差が形成されることになる。
続いて、図2(g)に示されるように、フリー層60、上部電極層70を覆う第2保護膜82をCVD法等により配置することにより、上記トンネル磁気抵抗素子が形成される。
以上説明したように、このような製造方法では、基板10上に、積層体90を形成した後、積層体90上にフリー層60を構成するフリー層構成膜を配置している。このため、フリー層構成膜をドライエッチングやイオンミリングして加工する際に、積層体90、つまり、トンネル層50および第1保護膜81をストッパとすることができる。そして、平面形状がトンネル層50の短手方向の長さより長い直径を有する円形状であり、積層体90の上方から視たとき、トンネル層50が内部を通過し、トンネル層50の短手方向にトンネル層50から突出した部分を有するフリー層60を形成することができる。言い換えると、積層体90の上方から視たとき、フリー層60のうちトンネル層50が通過しない部分を第1保護膜81上に形成することができる。
したがって、フリー層60を覆う第2保護膜82を配置したとき、フリー層60における第1保護膜81上に位置する部分では、フリー層60、第1保護膜81、第2保護膜82にて囲まれる空間が形成される。この場合、フリー層60のうち第1保護膜81上に位置する部分はトンネル層50と接していないため、この部分の周囲に形成される空間、つまりフリー層60、第1保護膜81、第2保護膜82にて囲まれる空間もトンネル層50と接しない。すなわち、当該空間は、磁場が形成されたとしてもトンネル層50の抵抗値の変化に寄与するものではない。このため、フリー層60の実質体積がトンネル層50の短手方向に増加することを抑制することができ、トンネル磁気抵抗素子の検出精度が低下することを抑制することができる。
さらに、積層体90をストッパとしてフリー層構成膜を加工することから、トンネル層50から突出した形状を有するフリー層60を形成することができ、設計の自由度を向上させることができる。つまり、本実施形態の製造方法では、積層体90の上方から視てトンネル層50が形成されていない部分にもフリー層60を形成することができる。
また、本実施形態では、図2(e)の工程において、トンネル層50のうち第1保護膜81から突出した部分をドライエッチングしてトンネル層50の表面と第1保護膜81の表面とを一致させているため、基板10上に、下部電極層20、磁石層30、ピン層40、トンネル層50、フリー層60、上部電極層70を一度の工程で順に形成する場合と比較して、トンネル層50のうちフリー層60との界面をより平坦化することができ、検出精度を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、陽極酸化を行うことにより、選択的に金属層50aを酸化してトンネル層50を形成することができ、ピン層40の特性が変化することを抑制することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のトンネル磁気抵抗素子の製造方法は、上記第1実施形態に対して、第1保護膜81を金属酸化物を用いて構成したものであり、その他に関しては、上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図3は、本実施形態におけるトンネル磁気抵抗素子の製造工程を示す断面図である。
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のトンネル磁気抵抗素子の製造方法は、上記第1実施形態に対して、第1保護膜81を金属酸化物を用いて構成したものであり、その他に関しては、上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図3は、本実施形態におけるトンネル磁気抵抗素子の製造工程を示す断面図である。
まず、図3(a)に示されるように、上記図2(a)の工程と同様の工程を行った後、図3(b)に示されるように、スパッタ等により、下部電極層20、磁石層30、ピン層40、金属層50aを覆う金属で構成された第1保護膜構成部材81aを配置する。なお、本実施形態では、第1保護膜構成部材81aはトンネル層50を構成する金属層50aと同じ材料を用いて構成している。例えば、金属層50aとしてMgを用いている場合には、第1保護膜構成部材81aとしてMgを用いることができる。
次に、図3(c)に示されるように、金属層50aを酸化してトンネル層50を形成すると共に、第1保護膜構成部材81aを酸化して第1保護膜81を形成する。すなわち、本実施形態では、MgOで構成される第1保護膜81を形成する。なお、金属層50aおよび第1保護膜構成部材81aの酸化は、第1実施形態と同様に、陽極酸化により行うことができる。
続いて、図3(d)に示されるように、上記図2(c)の工程と同様に、第1保護膜81の表面をCMP等により研磨してトンネル層50の表面を露出させる。
その後、図3(e)に示されるように、トンネル層50および第1保護膜81の表面をドライエッチングする。これにより、基板10上に、トンネル層50の表面が露出した状態で、ピン層40およびトンネル層50を取り囲む第1保護膜81が配置された積層体90が形成される。なお、この図3(e)の工程は、図3(d)のCMP等の研磨工程が通常大気圧下で行われるため、トンネル層50の表面に異物等が付着することがあり、当該異物を除去するための工程である。
次に、図3(f)および(g)に示されるように、上記図2(f)および(g)と同様の工程を行うことにより、トンネル磁気抵抗素子が製造される。
本実施形態の製造方法においても、積層体90の上方から視たとき、トンネル層50が内部を通過し、トンネル層50の短手方向にトンネル層50から突出した部分を有するフリー層60を形成することができるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、金属層50aに対して陽極酸化を行ってトンネル層50を形成する例について説明したが、例えば、次のようにすることもできる。すなわち、図2(a)の工程において、ピン層40上にMgO等の金属酸化膜を形成し、当該金属酸化膜をドライエッチングすることによりトンネル層50を形成してもよい。
上記第1実施形態では、金属層50aに対して陽極酸化を行ってトンネル層50を形成する例について説明したが、例えば、次のようにすることもできる。すなわち、図2(a)の工程において、ピン層40上にMgO等の金属酸化膜を形成し、当該金属酸化膜をドライエッチングすることによりトンネル層50を形成してもよい。
また、上記第2実施形態では、第1保護膜構成部材81aがトンネル層50を構成する金属膜と同じ材料を用いて構成されている例について説明したが、もちろん第1保護膜構成部材81aとトンネル層50とを異なる材料を用いて構成することもできる。例えば、トンネル層50を構成する金属膜をMgで構成し、第1保護膜構成部材81aをAlで構成することができる。
10 基板
20 下部電極層
30 磁石層
40 ピン層
50 トンネル層
50a 金属層
60 フリー層
70 上部電極層
80 保護膜
90 積層体
20 下部電極層
30 磁石層
40 ピン層
50 トンネル層
50a 金属層
60 フリー層
70 上部電極層
80 保護膜
90 積層体
Claims (6)
- 磁化方向が固定されたピン層(40)、絶縁体で構成されるトンネル層(50)、外部磁化に応じて磁化方向が変化するフリー層(60)が順に積層されると共に、前記ピン層(40)、前記トンネル層(50)、前記フリー層(60)が保護膜(80)に覆われてなるトンネル磁気抵抗素子の製造方法であって、
平面形状が所定方向に延設された細長形状とされた前記ピン層(40)および前記トンネル層(50)と、前記トンネル層(50)のうち前記ピン層(40)と反対側の部分を露出させた状態で、前記ピン層(40)および前記トンネル層(50)を囲んで配置された第1保護膜(81)と、を有する積層体(90)を基板(10)上に形成する工程と、
平面形状が前記トンネル層(50)における前記所定方向と垂直方向の長さより長い直径を有する円形状であって、前記積層体(90)の上方から視たとき、前記トンネル層(50)が内部を通過すると共に、前記トンネル層(50)における前記所定方向と垂直方向に前記トンネル層(50)から突出した部分を有する形状のフリー層(60)を前記積層体(90)上に形成する工程と、
前記フリー層(60)を覆う第2保護膜(82)を配置する工程と、を含むことを特徴とするトンネル磁気抵抗素子の製造方法。 - 前記積層体(90)を前記基板(10)上に形成する工程では、前記トンネル層(50)の表面と前記第1保護膜(81)の表面とを一致させる工程を行うことを特徴とする請求項1に記載のトンネル磁気抵抗素子の製造方法。
- 前記積層体(90)を形成する工程では、前記基板(10)上に前記ピン層(40)を構成する薄膜および前記トンネル層(50)を形成する金属膜を順に形成する工程と、前記薄膜および前記金属膜を加工して、前記ピン層(40)および金属層(50a)を形成する工程と、前記ピン層(40)および前記金属層(50a)を覆う前記第1保護膜(81)を配置する工程と、前記第1保護膜(81)のうち前記基板(10)側と反対側の部分を研磨して前記金属層(50a)のうち前記ピン層(40)と反対側の部分を露出させる工程と、前記金属層(50a)を酸化して前記トンネル層(50)を形成する工程と、前記トンネル層(50)のうち前記基板(10)側と反対側の部分を除去し、前記トンネル層(50)の表面と前記第1保護膜(81)の表面とを一致させる工程と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のトンネル磁気抵抗素子の製造方法。
- 前記積層体(90)を形成する工程では、前記基板(10)上に前記ピン層(40)を構成する薄膜および前記トンネル層(50)を形成する金属膜を順に形成する工程と、前記薄膜および前記金属膜を加工して、前記ピン層(40)および金属層(50a)を形成する工程と、前記ピン層(40)および前記金属層(50a)を覆う金属で構成された第1保護膜構成部材(81a)を配置する工程と、前記第1保護膜構成部材(81a)および前記金属層(50a)を酸化して第1保護膜(81)および前記トンネル層(50)を形成する工程と、前記第1保護膜(81)のうち前記基板(10)側と反対側の部分を研磨して前記トンネル層(50)のうち前記ピン層(40)と反対側の部分を露出させると共に前記トンネル層(50)の表面と前記第1保護膜(81)の表面とを一致させる工程と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のトンネル磁気抵抗素子の製造方法。
- 前記積層体(90)を形成する工程では、前記金属層(50a)を陽極酸化して前記トンネル層(50)を形成することを特徴とする請求項3または4に記載のトンネル磁気抵抗素子の製造方法。
- 前記積層体(90)を形成する工程では、前記金属層(50a)を陽極酸化して前記トンネル層(50)を形成すると共に、前記第1保護膜構成部材(81a)を陽極酸化して前記第1保護膜(81)を形成することを特徴とする請求項4に記載のトンネル磁気抵抗素子の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014215220A (ja) * | 2013-04-26 | 2014-11-17 | 三菱電機株式会社 | Tmr磁気センサデバイスの製造方法 |
CN109087993A (zh) * | 2017-06-13 | 2018-12-25 | 上海磁宇信息科技有限公司 | 一种制作磁性随机存储器顶电极孔的方法 |
JP2019033158A (ja) * | 2017-08-07 | 2019-02-28 | 宇部マテリアルズ株式会社 | 電子デバイス装置製造用積層体及びその製造方法、MgO膜並びに分散液 |
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2010
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