JP2012015358A - 配線シート付き太陽電池セルの設計方法、配線シート付き太陽電池セル、太陽電池モジュール、配線シート付き太陽電池セルの評価方法および太陽電池モジュールの評価方法 - Google Patents

配線シート付き太陽電池セルの設計方法、配線シート付き太陽電池セル、太陽電池モジュール、配線シート付き太陽電池セルの評価方法および太陽電池モジュールの評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】イオンマイグレーション性の評価を容易にすることができる配線シート付き太陽電池セルの設計方法、配線シート付き太陽電池セル、太陽電池モジュール、配線シート付き太陽電池セルの評価方法および太陽電池モジュールの評価方法を提供する。
【解決手段】電極と配線との接続部を構成する複数種の金属材料のイオンマイグレーション指標値を算出して比較する配線シート付き太陽電池セルの設計方法、電極のイオンマイグレーション指標値が配線のイオンマイグレーション指標値よりも小さい配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュール、ならびにイオンマイグレーション指標値が最大となる金属材料を選択して選択された金属材料における電界強度の最大位置を観察する配線シート付き太陽電池セルの評価方法および太陽電池モジュールの評価方法である。
【選択図】図3

Description

本発明は、配線シート付き太陽電池セルの設計方法、配線シート付き太陽電池セル、太陽電池モジュール、配線シート付き太陽電池セルの評価方法および太陽電池モジュールの評価方法に関する。
近年、エネルギ資源の枯渇の問題や大気中のCO2の増加のような地球環境問題などからクリーンなエネルギの開発が望まれており、特に太陽電池セルを用いた太陽光発電が新しいエネルギ源として開発、実用化され、発展の道を歩んでいる。
太陽電池セルは、従来から、たとえば単結晶または多結晶のシリコン基板の受光面にシリコン基板の導電型と反対の導電型となる不純物を拡散することによってpn接合を形成し、シリコン基板の受光面と受光面の反対側の裏面にそれぞれ電極を形成して製造された両面電極型太陽電池セルが主流となっている。また、両面電極型太陽電池セルにおいては、シリコン基板の裏面にシリコン基板と同じ導電型の不純物を高濃度で拡散することによって、裏面電界効果による高出力化を図ることも一般的となっている。
また、シリコン基板の受光面に電極を形成せず、シリコン基板の裏面のみにn電極およびp電極を形成した裏面電極型太陽電池セル(たとえば特許文献1参照)についても研究開発が進められている。このような裏面電極型太陽電池セルにおいては、シリコン基板の受光面に入射光を遮る電極の形成が不要になることから、太陽電池セルの変換効率の向上が期待されている。また、上記の裏面電極型太陽電池セルの電極を配線シートの配線に接続してなる配線シート付き太陽電池セルの技術開発も進められている。
特開2006−332273号公報
裏面電極型太陽電池セルの電極や配線シートの配線には、通常、金属材料が使用されるが、金属材料は、電界によってイオン化した金属材料が電界方向に沿って析出するというイオンマイグレーションの性質を有している。このイオンマイグレーションの発生のしやすさ(イオンマイグレーション性)は、金属材料の種類と、電界の電界強度とに依存している。
また、p電極とn電極との間の電極間ピッチと、変換効率との間にも密接な関係があることがわかってきており、電極間ピッチが狭いほど変換効率が高くなる傾向にある。一方、電極間ピッチを狭くした場合には、電極間に発生する電界の電界強度が大きくなるため、イオンマイグレーションが促進される。このようにイオンマイグレーションが促進された場合には、隣り合う電極間がイオンマイグレーションによって生成した針状物質により早期に電気的に短絡されて変換効率などの特性が低下してしまう。
したがって、配線シート付き太陽電池セルや、配線シート付き太陽電池セルを含む太陽電池モジュールの技術分野においては、イオンマイグレーション性の評価を容易にする設計方法、構造および評価方法が求められていた。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、イオンマイグレーション性の評価を容易にすることができる配線シート付き太陽電池セルの設計方法、配線シート付き太陽電池セル、太陽電池モジュール、配線シート付き太陽電池セルの評価方法および太陽電池モジュールの評価方法を提供することにある。
本発明は、半導体基板と半導体基板の一方の面側に設置された電極とを備えた裏面電極型太陽電池セルの電極と、絶縁性基材と絶縁性基材の一方の面側に設置された配線とを備えた配線シートの配線と、を電気的に接続して形成される配線シート付き太陽電池セルを設計する方法であって、電極と配線との接続部を構成する複数種の金属材料のうちの一の金属材料について、一の金属材料における最大の電界強度と、一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、複数種の金属材料のうち一の金属材料とは異なる他の金属材料について、他の金属材料における最大の電界強度と、他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値とを比較する工程と、を含む、配線シート付き太陽電池セルの設計方法である。
ここで、本発明の配線シート付き太陽電池セルの設計方法においては、一の金属材料および他の金属材料のそれぞれは、裏面電極型太陽電池セルと配線シートとの間の絶縁性材料と接する金属材料であることが好ましい。
また、本発明の配線シート付き太陽電池セルの設計方法において、第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程は、裏面電極型太陽電池セルと配線シートとの間の電界強度分布を電子計算機によりシミュレーションする工程と、電界強度分布から一の金属材料における最大の電界強度を求める工程と、を含むことが好ましい。
また、本発明の配線シート付き太陽電池セルの設計方法において、第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程は、裏面電極型太陽電池セルと配線シートとの間の電界強度分布を電子計算機によりシミュレーションする工程と、電界強度分布から他の金属材料における最大の電界強度を求める工程と、を含むことが好ましい。
また、本発明は、半導体基板と半導体基板の一方の面側に設置された第1の金属材料を含む電極とを備えた裏面電極型太陽電池セルと、絶縁性基材と絶縁性基材の一方の面側に設置された第2の金属材料を含む配線とを備えた配線シートと、を含み、電極における最大の電界強度と第1の金属材料の第1のイオンマイグレーション感受性との積である第1のイオンマイグレーション指標値が、配線における最大の電界強度と第2の金属材料の第2のイオンマイグレーション感受性との積である第2のイオンマイグレーション指標値よりも大きい、配線シート付き太陽電池セルである。
また、本発明は、上記の配線シート付き太陽電池セルを含む、太陽電池モジュールである。
また、本発明は、半導体基板と半導体基板の一方の面側に設置された電極とを備えた裏面電極型太陽電池セルの電極と、絶縁性基材と絶縁性基材の一方の面側に設置された配線とを備えた配線シートの配線と、が電気的に接続されてなる配線シート付き太陽電池セルを評価する方法であって、電極と配線との接続部を構成する複数種の金属材料のうちの一の金属材料について、一の金属材料における最大の電界強度と、一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、複数種の金属材料のうち一の金属材料とは異なる他の金属材料について、他の金属材料における最大の電界強度と、他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値とを比較して、一の金属材料と他の金属材料とのうちイオンマイグレーション指標値がより大きい方の金属材料を選択する工程と、選択された金属材料における電界強度の最大位置を観察する工程と、を含む、配線シート付き太陽電池セルの評価方法である。
さらに、本発明は、半導体基板と半導体基板の一方の面側に設置された電極とを備えた裏面電極型太陽電池セルの電極と、絶縁性基材と絶縁性基材の一方の面側に設置された配線とを備えた配線シートの配線と、が電気的に接続されてなる配線シート付き太陽電池セルを含む太陽電池モジュールを評価する方法であって、電極と配線との接続部を構成する複数種の金属材料のうちの一の金属材料について、一の金属材料における最大の電界強度と、一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、複数種の金属材料のうち一の金属材料とは異なる他の金属材料について、他の金属材料における最大の電界強度と、他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値とを比較して、一の金属材料と他の金属材料とのうちイオンマイグレーション指標値がより大きい方の金属材料を選択する工程と、選択された金属材料における電界強度の最大位置を観察する工程と、を含む、太陽電池モジュールの評価方法である。
本発明によれば、イオンマイグレーション性の評価を容易にすることが可能な配線シート付き太陽電池セルの設計方法、配線シート付き太陽電池セル、太陽電池モジュール、配線シート付き太陽電池セルの評価方法および太陽電池モジュールの評価方法を提供することができる。
実施の形態の配線シート付き太陽電池セルの模式的な断面図である。 シミュレーションに用いられる配線シート付き太陽電池セルの1周期に相当する部分における裏面電極型太陽電池セルの銀電極と配線シートの銅配線との接続部近傍の模式的な拡大断面図である。 (a)および(b)は、実施の形態の配線シート付き太陽電池セルの電界強度分布の変化のシミュレーション結果を示す図である。 銀電極の飛び出し量を様々に変化させてシミュレーションを行なったときの銀電極の飛び出し量(μm)と最大電界強度(V/mm)との関係を示す図である。 銀(Solid Ag(foil))のイオンマイグレーション感受性を100としたときの様々な種類の金属材料のイオンマイグレーション感受性の相対値を示す図である。 イオンマイグレーション指標値の比と銀電極の飛び出し量(μm)との関係を示す図である。 (a)〜(e)は、裏面電極型太陽電池セルの製造方法の一例について図解する模式的な断面図である。 (a)〜(d)は、配線シートの製造方法の一例について図解する模式的な断面図である。 (a)〜(c)は、本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルの製造方法の一例について図解する模式的な断面図である。 本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルを含む太陽電池モジュールの模式的な断面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<配線シート付き太陽電池セルの基本構成>
図1に、本発明の配線シート付き太陽電池セルの一例である実施の形態の配線シート付き太陽電池セルの模式的な断面図を示す。本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルは、裏面電極型太陽電池セル8と、配線シート10とを備えており、配線シート10上に裏面電極型太陽電池セル8が設置された構造を有している。
裏面電極型太陽電池セル8は、n型またはp型の導電型を有する半導体基板1と、半導体基板1の裏面に交互に配列するようにして形成されたn型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3と、n型不純物拡散領域2に接するようにして形成されたn型用銀電極6(厚さT1および幅D1)と、p型不純物拡散領域3に接するようにして形成されたp型用銀電極7(厚さT1および幅D1)とを有している。
半導体基板1の受光面にはテクスチャ構造などの凹凸構造が形成されており、その凹凸構造を覆うようにして反射防止膜5が形成されている。半導体基板1の裏面には、たとえば、パッシベーション膜などが形成されていてもよい。
n型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3はそれぞれ図1の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されており、n型不純物拡散領域2とp型不純物拡散領域3とは半導体基板1の裏面において交互に所定の間隔をあけて配置されている。
n型用銀電極6およびp型用銀電極7もそれぞれ図1の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されており、n型用銀電極6およびp型用銀電極7はそれぞれn型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3に沿って形成されている。
配線シート10は、絶縁性基材11と、絶縁性基材11の表面上に形成されたn型用銅配線12(厚さT2および幅D2)とp型用銅配線13(厚さT2および幅D2)とを有している。
配線シート10の絶縁性基材11上のn型用銅配線12は、裏面電極型太陽電池セル8の裏面のn型用銀電極6に対応して形成されており、n型用銅配線12はn型用銀電極6と互いに1本ずつ向かい合う形状に形成されている。
配線シート10の絶縁性基材11上のp型用銅配線13は、裏面電極型太陽電池セル8の裏面のp型用銀電極7に対応して形成されており、p型用銅配線13はp型用銀電極7と互いに1本ずつ向かい合う形状に形成されている。
配線シート10のn型用銅配線12およびp型用銅配線13もそれぞれ図1の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されている。
裏面電極型太陽電池セル8のn型用銀電極6と配線シート10のn型用銅配線12とは電気的に接続されており、n型用銀電極6とn型用銅配線12とからなる接続部を形成している。
また、裏面電極型太陽電池セル8のp型用銀電極7と配線シート10のp型用銅配線13とも電気的に接続されており、p型用銀電極7とp型用銅配線13とからなる接続部を形成している。
裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との間におけるn型用銀電極6とn型用銅配線12との接続部およびp型用銀電極7とp型用銅配線13との接続部以外の領域には絶縁性樹脂16が配置されている。したがって、n型用銀電極6、p型用銀電極7、n型用銅配線12およびp型用銅配線13はそれぞれ絶縁性樹脂16に接している。
<配線シート付き太陽電池セルの設計>
図1に示す構成の本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルは、以下のようにして設計ことができる。
まず、電極(n型用銀電極6およびp型用銀電極7)と配線(n型用銅配線12およびp型用銅配線13)との接続部を構成する複数種の金属材料(銀および銅)のうちの一の金属材料(ここでは銀とする)について、一の金属材料における最大の電界強度と、一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程を行なう。
また、電極(n型用銀電極6およびp型用銀電極7)と配線(n型用銅配線12およびp型用銅配線13)との接続部を構成する複数種の金属材料(銀および銅)のうち一の金属材料(銀)とは異なる他の金属材料(ここでは銅とする)について、他の金属材料の金属材料における最大の電界強度と、他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程を行なう。
なお、第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程とが行なわれる順序は特に限定されない。
また、一の金属材料における最大の電界強度および他の金属材料の金属材料における最大の電界強度はたとえば以下のシミュレーションにより求めることができる。
図2に、シミュレーションに用いられる配線シート付き太陽電池セルの1周期に相当する部分における裏面電極型太陽電池セルの銀電極と配線シートの銅配線との接続部近傍の模式的な拡大断面図を示す。すなわち、シミュレーションに用いられる配線シート付き太陽電池セルにおいては図2に示す1周期に相当する部分が図2の左右方向に繰り返して出現することになる。
ここで、半導体基板1としては仮に厚さ200μmのn型シリコン基板(比誘電率:12)を用いる設定とし、絶縁性基材11としては仮に厚さT3が100μmのPET(ポリエステル)フィルム(比誘電率:3.2)を用いる設定とする。また、半導体基板1と絶縁性基材11との間の領域に設置される絶縁性樹脂16としては、仮にNCP(Non Conductive Paste)である絶縁性接着材を用いる設定とする。
n型不純物拡散領域2の厚さT4は仮に0.5μmに設定し、n型不純物拡散領域2の幅D3は仮に300μmに設定する。また、p型不純物拡散領域3の厚さT5は仮に0.8μmに設定し、p型不純物拡散領域3の幅D4は仮に600μmに設定する。
n型用銀電極6およびp型用銀電極7の厚さT1はそれぞれ仮に10μmに設定し、n型用銀電極6およびp型用銀電極7の幅D1はそれぞれ仮に200μmに設定する。
n型用銅配線12およびp型用銅配線13の厚さT2はそれぞれ仮に35μmに設定し、n型用銅配線12およびp型用銅配線13の幅D2はそれぞれ仮に350μmに設定する。
裏面電極型太陽電池セルと配線シートとの間に設置された絶縁性樹脂16としては仮にエポキシ樹脂(比誘電率:4.4)を用いる設定とし、n型シリコン基板の裏面のn型用銀電極6およびp型用銀電極7の形成領域以外の領域には、仮にn型シリコン基板側から窒化シリコン膜(比誘電率:7)と酸化シリコン膜(比誘電率:3.9)との積層体からなるパッシベーション膜(図示せず)が形成されている設定とする。
さらに、電極間ピッチP(n型用銀電極6の幅方向の中心とp型用銀電極7の幅方向の中心との間の最短距離)を仮に0.5mmに設定する。
そして、上記設定の配線シート付き太陽電池セルのp型用銀電極7、p型用銅配線13およびp型不純物拡散領域3にそれぞれ+0.6Vの電圧が印加され、それ以外の部分(n型用銀電極6、n型不純物拡散領域2、およびn型不純物拡散領域2とp型不純物拡散領域3との間の半導体基板1の裏面領域)に0Vの電圧が印加されると仮定する。
このとき、配線シートの銅配線(n型用銅配線12およびp型用銅配線13)に対する裏面電極型太陽電池セルの銀電極(n型用銀電極6およびp型用銀電極7)の相対的な位置が変化することによって、隣り合う接続部間の電界の電界強度分布がどのように変化するかについてのシミュレーションを行なう。その結果の一例を図3(a)および図3(b)に示す。図3(a)および図3(b)においては電界の強度を濃淡で段階的に表現しており、濃淡が薄い(白い)ほど電界強度が大きいことを示している。なお、本明細書においては説明の都合上、電界強度の分布の段階を粗くしてあるが、実際の設計ではさらに細分化してシミュレーションを行ない、各金属材料ごとに発生する電界の最大位置と、その位置における電界強度とを高精度で求めてもよい。
図3(a)は、裏面電極型太陽電池セルの銀電極の幅方向の中心と配線シートの銅配線の幅方向の中心とが一致している状態(すなわち、配線シートの銅配線が裏面電極型太陽電池セルの銀電極よりも幅方向に75μm飛び出している状態(銀電極の飛び出し量が−75μmである状態))の電界強度分布を示している。
図3(b)は、裏面電極型太陽電池セルの銀電極の幅方向の中心が配線シートの銅配線の幅方向の中心に対して図面の右側に160μmずれている状態(すなわち、図面の左側のn型用銅配線12からn型用銀電極6が85μmだけ飛び出している状態(銀電極の飛び出し量が+85μmである状態))の電界強度分布を示している。
図3(a)に示すように、銀電極の表面が銅配線の表面の領域内に位置している場合には、銀電極の電界強度の最大位置51は銅配線の幅方向の端よりも内側にあり、銀電極の電界強度の最大位置51における銀電極の電界強度もそれほど大きくない。一方、図3(b)に示すように、銀電極の一部が銅配線の幅方向の端から飛び出している場合には、銀電極の電界強度の最大位置51における電界強度は急激に増大する。
また、図3(a)に示すように、銀電極の表面が銅配線の表面の領域内に位置している場合には、銅配線の電界強度の最大位置52は左側の銅配線の幅方向の端部であるが、図3(b)に示すように、銀電極の一部が銅配線の幅方向の端から飛び出すと、銅配線の電界強度の最大位置52は右側の銅配線の幅方向の端部となる。
図4に、配線シートの銅配線の位置を固定し、裏面電極型太陽電池セルの銀電極同士の間の間隔を一定に保ちながら、銀電極の飛び出し量を様々に変化させて、銅配線に対する銀電極の幅方向の相対的な位置をずらしながら上記のシミュレーションを行なったときの銀電極の飛び出し量(μm)と最大電界強度(V/mm)との関係を示す。図4の横軸は銀電極の飛び出し量(μm)を示し、図4の縦軸は最大電界強度(V/mm)を示している。なお、図4の縦軸の最大電界強度(V/mm)は、図4の横軸のそれぞれの銀電極の飛び出し量(μm)の状態での銀電極および銅配線における最大電界強度を示している。また、図4には、電極間ピッチPをそれぞれ0.5mmおよび0.75mmとし、銅配線の幅を550μmとし、銀電極の幅を230μmとしたときの銀電極の飛び出し量(μm)と最大電界強度(V/mm)との関係も示されている。
図4に示す結果から明らかなように、電極間ピッチPが0.5mm、0.75mmのいずれの場合にも銀電極の飛び出し量(μm)が0よりも大きくなったときの銀電極および銅配線における最大電界強度が急激に大きくなる。
このように、電極間ピッチ、ならびに電極、配線の寸法、形状などによって、配線シート付き太陽電池セルの電極および配線のそれぞれの電界強度の最大位置、さらにはその位置における電界強度が変わる。そのため、たとえば図3に示すように、裏面電極型太陽電池セルの電極と配線シートの配線との接続部間の電界強度分布を電子計算機を用いたシミュレーションによって求め、電極および配線のそれぞれの電界強度の最大位置、さらにはその位置における電界強度を求めることにより、様々な構成の接続部にも容易に対応することができる。
また、一の金属材料および他の金属材料のそれぞれのイオンマイグレーション感受性はたとえば図5に示すイオンマイグレーション感受性の相対値を用いることができる。図5は、銀(Solid Ag(foil))のイオンマイグレーション感受性を100としたときの様々な種類の金属材料のイオンマイグレーション感受性の相対値を示す図である。図5の縦軸に様々な種類の金属材料を示し、図5の横軸が縦軸のそれぞれの金属材料のイオンマイグレーション感受性の相対値を示している。なお、図5は、(社)腐食防食協会編「腐食センターニュース No.017」(1998年9月1日)の第3頁の記載に基づくものである。また、図5の横軸は対数軸である。
図5に示すように、裏面電極型太陽電池セル8の銀電極を構成する金属材料であるSolid Ag(foil)のイオンマイグレーション感受性を100とした場合には、配線シート10の銅配線を構成する金属材料であるCuのイオンマイグレーション感受性の相対値は0.3となる。
そして、図3に示すシミュレーションにより求めた銀電極の最大の電界強度と、図5に示す銀電極を構成する銀のイオンマイグレーション感受性との積を求めることによって第1のイオンマイグレーション指標値を算出する。また、図3に示すシミュレーションにより求めた銅配線の最大の電界強度と、図5に示す銅配線を構成する銅のイオンマイグレーション感受性との積を求めることによって第2のイオンマイグレーション指標値を算出する。
第1のイオンマイグレーション指標値は、以下の式(1)により算出することができる。
(第1のイオンマイグレーション指標値)=(銀電極における最大の電界強度)×(Solid Ag(foil)のイオンマイグレーション感受性) …(1)
第2のイオンマイグレーション指標値は、以下の式(2)により算出することができる。
(第2のイオンマイグレーション指標値)=(銅配線における最大の電界強度)×(Cuのイオンマイグレーション感受性) …(2)
なお、図5によれば、式(1)の(Solid Ag(foil)のイオンマイグレーション感受性)の値は100となり、式(2)の(Cuのイオンマイグレーション感受性)の値は0.3となる。
次に、第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値とを比較する工程が行なわれる。ここで、第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値とを比較する工程は、たとえば、第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値との比を算出することにより行なうことができる。
第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値との比は、以下の式(3)により算出することができる。
(イオンマイグレーション指標値の比)=(第2のイオンマイグレーション指標値)/(第1のイオンマイグレーション指標値) …(3)
図6に、上記の式(2)により算出した配線シート10の銅配線の第2のイオンマイグレーション指標値と、上記の式(1)により算出した銀電極の第1のイオンマイグレーション指標値との比((第2のイオンマイグレーション指標値)/(第1のイオンマイグレーション指標値))と、銀電極の飛び出し量(μm)との関係を示す。図6の縦軸が上記のイオンマイグレーション指標値の比を示し、横軸が銀電極の飛び出し量(μm)を示している。なお、図6の横軸の銀電極の飛び出し量(μm)は、図4の横軸の銀電極の飛び出し量(μm)と同義である。
図6に示すように、電極間ピッチPが0.5mmの場合には、銀電極の飛び出し量(μm)が約−100μmのときにイオンマイグレーション指標値の比が1となる。また、電極間ピッチPが0.75mmの場合には、銀電極の飛び出し量(μm)が約−180μmのときにイオンマイグレーション指標値の比が1となる。
第1のイオンマイグレーション指標値および第2のイオンマイグレーション指標値は、金属材料の材質自体のイオンマイグレーション性に、当該金属材料の電界強度の大きさによるイオンマイグレーション性を加味した指標の値であり、イオンマイグレーション指標値が大きいほどイオンマイグレーション性が高くなる(イオンマイグレーションしやすくなる)ことを示している。
したがって、図6に示すイオンマイグレーション指標値の比が1よりも大きくなる範囲に対応する銀電極の飛び出し量の範囲においては、銀電極のイオンマイグレーション性は銅配線のイオンマイグレーション性よりも低くなるため、銀電極のイオンマイグレーション性については考慮せずに、銅配線のイオンマイグレーション性のみを考慮して配線シート付き太陽電池セルを設計すればよい。
また、図6に示すイオンマイグレーション指標値の比が1よりも小さくなる範囲に対応する銀電極の飛び出し量の範囲においては、銅配線のイオンマイグレーション性は銀電極のイオンマイグレーション性よりも低くなるため、銅配線のイオンマイグレーション性については考慮せずに、銀電極のイオンマイグレーション性のみを考慮して配線シート付き太陽電池セルを設計すればよい。
このように、本実施の形態においては、配線シート付き太陽電池セルを設計する際に、イオンマイグレーション性を考慮する金属材料を絞り込むことができるため、配線シート付き太陽電池セルの設計をより容易かつ高精度に行なうことができる。また、本実施の形態の設計に基づいて、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを作製した後には、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールのイオンマイグレーション性の評価の対象となる金属材料を絞り込むことができるため、イオンマイグレーション性の評価が容易になるとともに、より精度の高い評価をすることが可能になる。
すなわち、配線シート付き太陽電池セルの設計が一旦確定した後には、その設計に基づいて量産された配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールについては、イオンマイグレーション性を考慮する金属材料を1つに絞り込むことができるため、イオンマイグレーション性の評価が容易になるとともに、より精度の高い評価をすることが可能になる。
配線シート付き太陽電池セルは、上記の式(3)で表わされるイオンマイグレーション指標値の比が1よりも大きいか小さいかのどちらかとなるように設計されることが好ましい。たとえば、上記の式(3)で表わされるイオンマイグレーション指標値の比が1よりも大きくなるように設計することができる。この設計は、たとえば図6に示すように、電極間ピッチPが0.5mmのときは銀電極の飛び出し量(μm)を約−100μmよりも小さくすることにより達成することができ、電極間ピッチPが0.75mmのときは銀電極の飛び出し量(μm)を約−180μmよりも小さくすることで達成することができる。
ここで、図2において、(電極間ピッチP)=(銅配線が銀電極から飛び出している量(銀電極の銅配線からの飛び出し量の符号を反転させた値))×2+(銀電極の幅D1)+(銅配線間の間隔)の式で表わされることから、(銅配線間の間隔)=(電極間ピッチP)−(銅配線が銀電極から飛び出している量(銀電極の銅配線からの飛び出し量の符号を反転させた値))×2−(銀電極の幅D1)となる。
したがって、たとえば図2において、電極間ピッチPが0.5mmの場合に、銀電極の飛び出し量(μm)を−100μmよりも小さくする場合には、0.5mm−(100μm×2)=300μmから銀電極の幅D1を引いた値よりも小さくなるように銅配線間の間隔を設定すればよい。
ただし、銅配線間の間隔を小さくすると、銅配線の表面にかかる電界が増大して銅配線からのイオンマイグレーションが増大してしまうことから、電極間ピッチPに対する銀電極の幅D1と銅配線間の間隔とを適切に定めることが好ましい。
一方、上記の式(3)で表わされるイオンマイグレーション指標値の比が1よりも小さくなるように設計することもできる。この設計は、図6に示すように、電極間ピッチPが0.5mmの場合には銀電極の飛び出し量(μm)を約−100μmよりも大きくすることにより達成することができ、電極間ピッチPが0.75mmの場合には銀電極の飛び出し量(μm)を約−180μmよりも大きくすることで達成することができる。
この場合には、イオンマイグレーション指標値の比が1よりも小さいことが前提となっているため、図6に示すように、銀電極の飛び出し量が0の場合を含んでおり、銀電極と銅配線のいずれか一方が他方に対して一定値以上飛び出す必要があるという条件を満たさなくてもよい。また、イオンマイグレーション指標値の比が1よりも小さいことが前提となっているため、銅配線のイオンマイグレーション性を考慮しなくてもよく、銀電極の幅D1に対する銅配線の幅D2や銅配線間の間隔の制限が少ないという利点もある。
ここで、図2において、(銅配線が銀電極から飛び出している量(銀電極の銅配線からの飛び出し量の符号を反転させた値))=1/2{(銅配線の幅D2)−(銀電極の幅D1)}となる。
したがって、たとえば図2において、電極間ピッチPが0.5mmの場合に、銀電極の飛び出し量(μm)を約−100μmよりも大きくするためには、1/2(D2−D1)<100μm、すなわち、銅配線の幅D2が銀電極の幅D1に対して、D2<D1+(100μm×2)となるように銀電極の幅D1および銅配線の幅D2を設定すればよい。
なお、上記において、銅配線が銀電極から飛び出している量(銀電極の銅配線からの飛び出し量の符号を反転させた値)は、図2において、n型用銀電極6(p型用銀電極7)の右端からn型用銅配線12(p型用銅配線13)の右端が飛び出している量、およびn型用銀電極6(p型用銀電極7)の左端からn型用銅配線12(p型用銅配線13)の左端が飛び出している量のそれぞれを指している。
また、上記の式は、n型用銀電極6(p型用銀電極7)の幅方向の中心と、n型用銅配線12(p型用銅配線13)の幅方向の中心とが一致している場合、すなわち、銀電極の右側から銅配線が飛び出している量と、銀電極の左側から銅配線が飛び出している量とが等しい場合の式であるが、この場合に限るものではなく、n型用銅配線12およびp型用銅配線13のそれぞれの右側および左側のそれぞれにおいて、銀電極から銅配線が飛び出している量のすべてが上記の式を満たしていることが好ましい。
ただし、銀電極の右端から銅配線の右端が飛び出している量と、銀電極の左端から銅配線の左端が飛び出している量との和は一定であるため、銀電極の右側から銅配線が飛び出している量と、銀電極の左側から銅配線が飛び出している量とを等しくする、すなわち、銀電極の幅方向の中心と銅配線の幅方向の中心とが一致するように配置することがより好ましい。この場合には、イオンマイグレーションをより効果的に抑制することができる。
上記のように、イオンマイグレーション指標値の比が1よりも小さくなるように設計されている場合には、銀電極のイオンマイグレーション性のみを考慮することになるが、図4に示す結果から明らかなように、電極間ピッチPが0.5mmおよび0.75mmのいずれの場合にも銀電極の飛び出し量(μm)が0よりも大きくなったとき(正の値となったとき)に銀電極の最大電界強度が急激に大きくなる傾向がある。したがって、イオンマイグレーション指標値の比が1よりも小さくなるように設計する場合には、銀電極が銅配線から飛び出さないように配置することが好ましい。すなわち、n型用銀電極6の幅方向(図1の紙面の左右方向)の端が配線シート10のn型用銅配線12の幅方向の端からはみ出さず、p型用銀電極7の幅方向(図1の紙面の左右方向)の端が配線シート10のp型用銅配線13の幅方向の端からはみ出さない構成とすることが好ましい。
また、それぞれの銅配線(n型用銅配線12、p型用銅配線13)の幅D2は、それぞれの銅配線に配置されているそれぞれの銀電極(n型用銀電極6、p型用銀電極7)の幅D1よりも40μm以上広いことが好ましい。これにより、裏面電極型太陽電池セル8の銀電極と、配線シート10の銅配線との上記位置合わせ時の精度を考慮した場合でも、銀電極が銅配線からはみ出さないようにすることができる傾向にある。
以上の検討から、イオンマイグレーション指標値の比が1よりも小さくなるように設計する場合には、たとえば図2において、電極間ピッチPが0.5mmの場合は、銅配線の幅D2と銀電極の幅D1とを、D1+40μm<D2<D1+(100μm×2)となるように設計することが好ましい。
さらに、隣り合うn型用銀電極6とp型用銀電極7との対向する面がそれぞれの銀電極に接続される銅配線からはみ出さないことがより好ましい。これらの場合には、配線シート付き太陽電池セルの銀電極のイオンマイグレーションに起因する特性の低下をさらに安定して抑制することができる傾向にある。
さらに、配線シート10の銅配線(n型用銅配線12、p型用銅配線13)を構成する金属材料である銅は、裏面電極型太陽電池セル8の銀電極(n型用銀電極6、p型用銀電極7)を構成する金属材料である銀よりもイオンマイグレーションが起こりにくい金属材料である(図5参照)。したがって、隣り合うn型用銀電極6とp型用銀電極7との対向する面がそれぞれの銀電極に接続される銅配線からはみ出さないようにするために、銅配線の幅D2を銀電極の幅D1よりも広くした結果、銅配線の表面の最大電界強度が銀電極の表面の最大電界強度よりも大きくなったとしても、銅配線のイオンマイグレーション指標値を銀電極のイオンマイグレーション指標値よりも小さくする、すなわちイオンマイグレーション指標値の比を1よりも小さくすることによって、銅配線からのイオンマイグレーションを抑えることができる。
以上の構成を有する配線シート付き太陽電池セルにおいては、裏面電極型太陽電池セル8の銀電極と配線シート10の銅配線との隣り合う接続部間に発生する電界によってイオンマイグレーションが引き起こされやすい金属イオンを特定することができる。そのため、配線シート付き太陽電池セルを設計する際に、イオンマイグレーションに起因して発生する針状物質による接続部間の短絡による配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性の低下を抑制するために、イオンマイグレーション性を考慮すべき金属材料を絞り込むことができるため、配線シート付き太陽電池セルの設計をより容易かつ高精度に行なうことができる。
また、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを作製した後には、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールのイオンマイグレーション性の評価の対象となる金属材料を絞り込むことができるため、イオンマイグレーション性の評価が容易になるとともに、より精度の高い評価をすることが可能にある。
また、本発明においては、裏面電極型太陽電池セルの電極と配線シートの配線との接続部を構成する複数種の金属材料のすべてについてイオンマイグレーション指標値を算出する必要はなく、接続部を構成する金属材料のうち絶縁性材料(たとえば図1の絶縁性樹脂16)と接する金属材料のみイオンマイグレーション指標値を算出することが好ましい。この場合には、イオンマイグレーション指標値の算出をさらに容易に行なうことができる傾向にある。
一般に、表面がすべて導電性材料で覆われて、絶縁性材料に接していない金属材料はその表面に電気力線がほとんど発生せず、電界強度が非常に小さくなるため、イオンマイグレーション指標値も非常に小さくなる。そのため、絶縁性材料と接する金属材料の表面における最大電界強度のみを求め、その最大電界強度からイオンマイグレーション指標値を算出した場合には、接続部を構成するすべての金属材料のイオンマイグレーション指標値を算出する場合と比較して、イオンマイグレーション指標値の算出および比較をより短時間で行なうことができる傾向にある。
また、イオンマイグレーション感受性の高い金属材料が絶縁性材料の表面に接しないように、イオンマイグレーション感受性の高い金属材料をイオンマイグレーション感受性の低い金属材料で被覆することが好ましい。この場合には、イオンマイグレーション感受性の高い金属材料の表面には電気力線がほとんど発生せず、電界強度が非常に小さくなるため、接続部を構成する金属材料にイオンマイグレーション感受性の高い金属材料を用いた場合でもイオンマイグレーションの発生を抑制することができる傾向にある。
上記においては、裏面電極型太陽電池セル8の電極が銀電極からなり、配線シート10の配線が銅配線からなる場合について説明したが、裏面電極型太陽電池セル8の電極が銀電極に限定されないことは言うまでもなく、配線シート10の配線が銅配線に限定されないことは言うまでもない。ただし、銀および銅はそれぞれイオンマイグレーションしやすい金属材料であることから、裏面電極型太陽電池セル8の電極が銀を含む銀電極であり、かつ配線シート10の配線が銅を含む銅配線である場合に、本発明は特に有効であると考えられる。
また、上記の銅配線の幅D2と銀電極の幅D1との関係を示す数値は、図2における条件にて算出された値であり、普遍的な値ではない。これらの数値は、図2におけるパラメータ、電極、配線およびその他の部材の材質および形状、印加される電圧、周囲環境、ならびに配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの仕様および生産性などによって変わり得るものである。いずれの場合であっても、電極と配線との接続部を構成する複数種の金属材料のうちの一の金属材料について、一の金属材料における最大の電界強度と、一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出し、複数種の金属材料のうちの一の金属材料とは異なる他の金属材料について、他の金属材料における最大の電界強度と、他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出し、第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値とを比較して、いずれか一方の値がもう一方の値よりも大きくなるように設計値を決定すればよい。
また、上記において、n型用銀電極6およびp型用銀電極7の幅D1は、たとえば100μm以上300μm以下とすることができ、厚さT1は、たとえば5μm以上15μm以下とすることができる。なお、幅D1はそれぞれ必ずしも同一の値である必要はなく、厚さT1もそれぞれ必ずしも同一の値である必要はない。
また、上記において、n型用銅配線12およびp型用銅配線13の幅D2は、たとえば300μm以上600μm以下とすることができ、厚さT2は、たとえば10μm以上50μm以下とすることができる。なお、幅D2はそれぞれ必ずしも同一の値である必要はなく、厚さT2もそれぞれ必ずしも同一の値である必要はない。
また、本発明における裏面電極型太陽電池セルの概念には、上述した半導体基板の一方の表面側(裏面側)のみにn型用銀電極およびp型用銀電極の双方が形成された構成のものだけでなく、MWT(Metal Wrap Through)セル(半導体基板に設けられた貫通孔に電極の一部を配置した構成の太陽電池セル)などのいわゆるバックコンタクト型太陽電池セル(太陽電池セルの受光面側と反対側の裏面側から電流を取り出す構造の太陽電池セル)のすべてが含まれる。
<配線シート付き太陽電池セルの製造>
以下、本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルの製造方法の一例について説明する。なお、以下においては、裏面電極型太陽電池セル8、配線シート10および配線シート付き太陽電池セルの順にそれぞれの製造方法の一例について説明するが、裏面電極型太陽電池セル8の製造順序と配線シート10の製造順序とは入れ替わっていてもよく、同時であってもよい。
以下、図7(a)〜図7(e)の模式的断面図を参照して、裏面電極型太陽電池セル8の製造方法の一例について説明する。
まず、図7(a)に示すように、たとえばインゴットからスライスすることなどによって、半導体基板1の表面にスライスダメージ1aが形成された半導体基板1を用意する。
ここで、半導体基板1としては、たとえば、n型またはp型のいずれかの導電型を有する多結晶シリコンまたは単結晶シリコンなどからなるシリコン基板を用いることができる。
次に、図7(b)に示すように、半導体基板1の表面のスライスダメージ1aを除去する。
ここで、スライスダメージ1aの除去は、たとえば半導体基板1が上記のシリコン基板からなる場合には、上記のスライス後のシリコン基板の表面をフッ化水素水溶液と硝酸との混酸または水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液などでエッチングすることなどによって行なうことができる。スライスダメージ1aの除去後の半導体基板1の大きさおよび形状も特に限定されないが、たとえば厚さが100μm以上500μm以下の半導体基板1を用いることができる。
次に、図7(c)に示すように、半導体基板1の裏面に、n型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3をそれぞれ形成する。
ここで、n型不純物拡散領域2は、たとえば、n型不純物を含むガスを用いた気相拡散またはn型不純物を含むペーストを塗布した後に熱処理する塗布拡散などの方法により形成することができる。また、p型不純物拡散領域3は、たとえば、p型不純物を含むガスを用いた気相拡散またはp型不純物を含むペーストを塗布した後に熱処理する塗布拡散などの方法により形成することができる。
n型不純物を含むガスとしては、たとえばPOCl3のようなリンなどのn型不純物を含むガスを用いることができ、p型不純物を含むガスとしては、たとえばBBr3のようなボロンなどのp型不純物を含むガスを用いることができる。
n型不純物拡散領域2は、n型不純物を含み、n型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。n型不純物としては、たとえばリンなどを用いることができる。
p型不純物拡散領域3は、p型不純物を含み、p型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。p型不純物としては、たとえばボロンおよび/またはアルミニウムなどを用いることができる。
n型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3をそれぞれ形成した後の半導体基板1の裏面にパッシベーション膜を形成してもよい。パッシベーション膜は、たとえば、熱酸化法またはプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの方法により、たとえば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、または窒化シリコン膜と酸化シリコン膜との積層体を形成することによって作製することができる。パッシベーション膜の厚みは、たとえば0.05μm以上1μm以下とすることができる。
次に、図7(d)に示すように、半導体基板1の受光面の全面にテクスチャ構造などの凹凸構造を形成した後に、その凹凸構造上に反射防止膜5を形成する。
ここで、テクスチャ構造は、たとえば、半導体基板1の受光面をエッチングすることにより形成することができる。たとえば、半導体基板1がシリコン基板である場合には、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液にイソプロピルアルコールを添加した液をたとえば70℃以上80℃以下に加熱したエッチング液を用いて半導体基板1の受光面をエッチングすることによって形成することができる。
反射防止膜5は、たとえばプラズマCVD法などにより形成することができる。反射防止膜5としては、たとえば、窒化シリコン膜などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
半導体基板1の裏面にパッシベーション膜を形成した場合には、半導体基板1の裏面のパッシベーション膜の一部を除去することによってn型不純物拡散領域2の表面の少なくとも一部およびp型不純物拡散領域3の表面の少なくとも一部をそれぞれ露出させるコンタクトホールを形成してもよい。
コンタクトホールは、たとえば、フォトリソグラフィ技術を用いてコンタクトホールの形成箇所に対応する部分に開口を有するレジストパターンをパッシベーション膜上に形成した後にレジストパターンの開口からパッシベーション膜をエッチングなどにより除去する方法、またはコンタクトホールの形成箇所に対応するパッシベーション膜の部分にエッチングペーストを塗布した後に加熱することによってパッシベーション膜をエッチングして除去する方法などにより形成することができる。
次に、図7(e)に示すように、半導体基板1の裏面のn型不純物拡散領域2に接するn型用銀電極6を形成するとともに、p型不純物拡散領域3に接するp型用銀電極7を形成する。
n型用銀電極6およびp型用銀電極7はそれぞれ、たとえば、銀ペーストをn型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3のそれぞれに接するように塗布した後に銀ペーストを焼成することによって形成することができる。これにより、n型用銀電極6およびp型用銀電極7はそれぞれ、少なくともその表面に銀を含む電極となる。
以下、図8(a)〜図8(d)の模式的断面図を参照して、配線シート10の製造方法の一例について説明する。
まず、図8(a)に示すように、絶縁性基材11の表面上に銅からなる導電層41を形成する。
ここで、絶縁性基材11としては、たとえば、ポリエステル、ポリエチレンナフタレートまたはポリイミドなどの樹脂からなる基板を用いることができるが、これに限定されるものではない。絶縁性基材11の厚さは、たとえば10μm以上200μm以下とすることができる。
次に、図8(b)に示すように、絶縁性基材11の表面の導電層41上にレジスト42を形成する。
ここで、レジスト42は、n型用銅配線12およびp型用銅配線13などの配線シート10の銅配線を残す箇所以外の箇所に開口部を有する形状に形成される。レジスト42としてはたとえば従来から公知のものを用いることができ、たとえば、スクリーン印刷、ディスペンサ塗布またはインクジェット塗布などの方法によって所定の位置に塗布された樹脂を硬化したものなどを用いることができる。
次に、図8(c)に示すように、レジスト42から露出している箇所の導電層41を矢印43の方向に除去することによって導電層41のパターンニングを行ない、導電層41の残部からn型用銅配線12およびp型用銅配線13などの配線シート10の銅配線を形成する。
ここで、導電層41の除去は、たとえば、酸やアルカリの溶液を用いたウエットエッチングなどによって行なうことができる。
次に、図8(d)に示すように、n型用銅配線12の表面およびp型用銅配線13の表面からレジスト42をすべて除去する。これにより、n型用銅配線12およびp型用銅配線13が絶縁性基材11上に形成された配線シート10が作製される。絶縁性基材11上に形成される配線としては、n型用銅配線12およびp型用銅配線13以外にも、たとえば、複数のn型用銅配線12同士を電気的に接続する配線、複数のp型用銅配線13同士を電気的に接続する配線、および複数の裏面電極型太陽電池セル8を電気的に接続するための配線などが形成されてもよい。
以下、図9(a)〜図9(c)の模式的断面図を参照して、本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルの製造方法の一例について説明する。
まず、図9(a)に示すように、上記のようにして作製した配線シート10の絶縁性基材11の表面上に絶縁性樹脂16を塗布する。
ここで、絶縁性樹脂16としては、たとえば、樹脂成分として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、またはエポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合樹脂のいずれかを含む電気的に絶縁性の熱硬化性および/または光硬化性の樹脂組成物などを用いることができる。また、絶縁性樹脂16は、樹脂成分以外の成分として、たとえば硬化剤などの従来から公知の添加剤を1種類以上含んでいてもよい。
次に、図9(b)に示すように、配線シート10上に裏面電極型太陽電池セル8を設置する。
ここで、裏面電極型太陽電池セル8は、n型用銀電極6の幅方向の端がn型用銅配線12の幅方向の端からはみ出さないようにn型用銀電極6がn型用銅配線12上に設置されるとともに、p型用銀電極7の幅方向の端がp型用銅配線13の幅方向の端からはみ出さないようにp型用銀電極7がp型用銅配線13上に設置されるようにして、配線シート10上に設置される。
次に、図9(c)に示すように、絶縁性樹脂16を加熱および/または光照射して固化することによって、本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルが作製される。
なお、裏面電極型太陽電池セル8の銀電極と配線シート10の銅配線とを接触させた状態で裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との間に設置された絶縁性樹脂16を硬化させることによって、本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルを作製することができる。
本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルにおいては、配線シート10上に複数の裏面電極型太陽電池セル8を設置することによって、これらの裏面電極型太陽電池セル8を電気的に直列に接続した構成とすることもできる。また、本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルのn型用銀電極6およびp型用銀電極7の断面形状を楕円形状としてもよい。
本発明における配線シート付き太陽電池セルの概念には、複数の裏面電極型太陽電池セル8が配線シート10上に設置されて裏面電極型太陽電池セル8間が電気的に接続されている構成のみならず、1つの裏面電極型太陽電池セル8が配線シート10上に設置されている構成も含まれる。
<配線シート付き太陽電池セルの評価>
上記のようにして作製された本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルにおいては、イオンマイグレーション性に優れた配線シート付き太陽電池セルを得るために、配線シート付き太陽電池セルの接続部を構成する金属材料のイオンマイグレーション性の評価を行なうことが好ましい。
本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルの評価は、たとえば以下のようにして行なうことができる。
まず、電極(n型用銀電極6およびp型用銀電極7)と配線(n型用銅配線12およびp型用銅配線13)との接続部を構成する複数種の金属材料(銀および銅)のうちの一の金属材料(ここでは銀とする)について、一の金属材料における最大の電界強度と、一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程を行なう。
また、電極(n型用銀電極6およびp型用銀電極7)と配線(n型用銅配線12およびp型用銅配線13)との接続部を構成する複数種の金属材料(銀および銅)のうち一の金属材料(銀)とは異なる他の金属材料(ここでは銅とする)について、他の金属材料の金属材料における最大の電界強度と、他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程を行なう。
第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程および第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程はそれぞれ上記の配線シート付き太陽電池セルの設計におけるものと同様にして行なうことができる。また、上記の配線シート付き太陽電池セルの設計において第1のイオンマイグレーション指標値および/または第2のイオンマイグレーション指標値が既に算出されている場合には、そのイオンマイグレーション指標値を用いてもよい。また、ここでも、第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程とが行なわれる順序は特に限定されない。
次に、第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値とを比較して、一の金属材料(銀)と他の金属材料(銅)とのうちイオンマイグレーション指標値がより大きい方の金属材料を選択する工程を行なう。すなわち、第1のイオンマイグレーション指標値が第2のイオンマイグレーション指標値よりも大きい場合には一の金属材料(銀)を選択し、第2のイオンマイグレーション指標値が第1のイオンマイグレーション指標値よりも大きい場合には他の金属材料(銅)を選択する。
次に、上記の工程で選択された金属材料の電界強度の最大位置を観察する工程を行なう。この工程は、たとえば、上記の工程で選択された金属材料から構成されている銀電極または銅配線における電界強度が最大となる位置を観察することにより行なうことができる。
第1のイオンマイグレーション指標値が第2のイオンマイグレーション指標値よりも大きい場合には、銅配線のイオンマイグレーション性が銀電極のイオンマイグレーション性よりも低くなるため、銀電極のイオンマイグレーション性についてのみ評価すればよい。そして、この場合に、銀電極のなかでもイオンマイグレーション性が最も高いと考えられる電界強度が最大となる位置におけるイオンマイグレーションを観察することによって、配線シート付き太陽電池セルのイオンマイグレーション性の評価を行なうことができる。これにより、イオンマイグレーション性の評価の対象を銀電極の所定部位に絞り込むことができるため、イオンマイグレーション性の評価が容易になるとともに、より精度の高い評価をすることが可能になる。なお、銀電極における電界強度の最大位置はたとえば上記と同様に電子計算機を用いたシミュレーションなどにより特定することができる。
一方、第2のイオンマイグレーション指標値が第1のイオンマイグレーション指標値よりも大きい場合には、銀電極のイオンマイグレーション性が銅配線のイオンマイグレーション性よりも低くなるため、銅配線のイオンマイグレーション性についてのみ評価すればよい。そして、この場合に、銅配線のなかでもイオンマイグレーション性が最も高いと考えられる電界強度が最大となる位置におけるイオンマイグレーションを観察することによって、配線シート付き太陽電池セルのイオンマイグレーション性の評価を行なうことができる。これにより、イオンマイグレーション性の評価の対象を銅配線の所定部位に絞り込むことができるため、イオンマイグレーション性の評価が容易になるとともに、より精度の高い評価をすることが可能になる。なお、銅配線における電界強度の最大位置はたとえば上記と同様に電子計算機を用いたシミュレーションなどにより特定することができる。
<太陽電池モジュールの製造>
上記のようにして製造および/または評価された本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルを、たとえば図10の模式的断面図に示すように、透明基板17と裏面保護材19との間の封止材18中に封止することによって、本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルを含む太陽電池モジュールを製造することができる。
透明基板17としては、たとえばガラス基板などの太陽電池モジュールに入射する光を透過させることが可能な基板を用いることができる。封止材18としては、たとえばエチレンビニルアセテートなどの太陽電池モジュールに入射する光を透過させることが可能な樹脂などを用いることができる。裏面保護材19としては、たとえばポリエステルフィルムなどの配線シート付き太陽電池セルの保護が可能な部材などを用いることができる。
<太陽電池モジュールの評価>
本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルから太陽電池モジュールを製造するまでの間および太陽電池モジュールの完成から製品としての太陽電池モジュールが出荷されるまでの間に、たとえば特性評価試験等によって、裏面電極型太陽電池セル8のp型用銀電極7と配線シート10のp型用銅配線13との接続部と、裏面電極型太陽電池セル8のn型用銀電極6と配線シート10のn型用銅配線12との接続部との間に電位差が生じて電界が生じることがある。
そのため、本実施の太陽電池モジュールにおいても、太陽電池モジュールの接続部を構成する金属材料のイオンマイグレーション性の評価を行なうことが好ましい。
本実施の形態の太陽電池モジュールの評価は、たとえば以下のようにして行なうことができる。
まず、電極(n型用銀電極6およびp型用銀電極7)と配線(n型用銅配線12およびp型用銅配線13)との接続部を構成する複数種の金属材料(銀および銅)のうちの一の金属材料(ここでは銀とする)について、一の金属材料における最大の電界強度と、一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程を行なう。
また、電極(n型用銀電極6およびp型用銀電極7)と配線(n型用銅配線12およびp型用銅配線13)との接続部を構成する複数種の金属材料(銀および銅)のうち一の金属材料(銀)とは異なる他の金属材料(ここでは銅とする)について、他の金属材料の金属材料における最大の電界強度と、他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程を行なう。
第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程および第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程はそれぞれ上記の配線シート付き太陽電池セルの設計および/または上記の配線シート付き太陽電池セルの評価におけるものと同様にして行なうことができる。また、上記の配線シート付き太陽電池セルの設計および/または上記の配線シート付き太陽電池セルの評価において第1のイオンマイグレーション指標値および/または第2のイオンマイグレーション指標値が既に算出されている場合には、そのイオンマイグレーション指標値を用いてもよい。また、ここでも、第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程とが行なわれる順序は特に限定されない。
次に、第1のイオンマイグレーション指標値と第2のイオンマイグレーション指標値とを比較して、一の金属材料(銀)と他の金属材料(銅)とのうちイオンマイグレーション指標値がより大きい方の金属材料を選択する工程を行なう。すなわち、第1のイオンマイグレーション指標値が第2のイオンマイグレーション指標値よりも大きい場合には一の金属材料(銀)を選択し、第2のイオンマイグレーション指標値が第1のイオンマイグレーション指標値よりも大きい場合には他の金属材料(銅)を選択する。
次に、上記の工程で選択された金属材料の電界強度の最大位置を観察する工程を行なう。この工程は、たとえば、上記の工程で選択された金属材料から構成されている銀電極または銅配線における電界強度が最大となる位置を観察することにより行なうことができる。
第1のイオンマイグレーション指標値が第2のイオンマイグレーション指標値よりも大きい場合には、銅配線のイオンマイグレーション性が銀電極のイオンマイグレーション性よりも低くなるため、銀電極のイオンマイグレーション性についてのみ評価すればよい。そして、この場合に、銀電極のなかでもイオンマイグレーション性が最も高いと考えられる電界強度が最大となる位置におけるイオンマイグレーションを観察することによって、太陽電池モジュールのイオンマイグレーション性の評価を行なうことができる。これにより、イオンマイグレーション性の評価の対象を銀電極の所定部位に絞り込むことができるため、イオンマイグレーション性の評価が容易になるとともに、より精度の高い評価をすることが可能になる。なお、銀電極における電界強度の最大位置はたとえば上記と同様に電子計算機を用いたシミュレーションなどにより特定することができる。
一方、第2のイオンマイグレーション指標値が第1のイオンマイグレーション指標値よりも大きい場合には、銀電極のイオンマイグレーション性が銅配線のイオンマイグレーション性よりも低くなるため、銅配線のイオンマイグレーション性についてのみ評価すればよい。そして、この場合に、銅配線のなかでもイオンマイグレーション性が最も高いと考えられる電界強度が最大となる位置におけるイオンマイグレーションを観察することによって、太陽電池モジュールのイオンマイグレーション性の評価を行なうことができる。これにより、イオンマイグレーション性の評価の対象を銅配線の所定部位に絞り込むことができるため、イオンマイグレーション性の評価が容易になるとともに、より精度の高い評価をすることが可能になる。なお、銅配線における電界強度の最大位置はたとえば上記と同様に電子計算機を用いたシミュレーションなどにより特定することができる。
太陽電池モジュールの製品としての出荷後または使用時においては、太陽電池モジュールに太陽光等の光が入射して上記の隣り合う接続部間に電界が形成されることがある。したがって、上記の評価方法は、太陽電池モジュールの製品としての出荷後または使用時における太陽電池モジュールの劣化性の評価にも適用することが可能である。
<作用効果>
上述の設計方法、構造および評価方法を採用した場合には、接続部を構成する金属材料のイオンマイグレーションによって生成する針状物質により隣り合う接続部間が早期に電気的に接続する可能性の高い配線シート付き太陽電池セルおよび/または太陽電池モジュールを容易に発見することができる。
したがって、上述した設計方法、構造および評価方法によれば、特性が低下する可能性の高い配線シート付き太陽電池セルおよび/または太陽電池モジュールを簡単に見分けることができ、そのような特性が低下する可能性の高い配線シート付き太陽電池セルおよび/または太陽電池モジュールについては予め取り除いておくことができる。そのため、配線シート付き太陽電池セルおよび/または太陽電池モジュールの特性の低下を安定して抑制することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、配線シート付き太陽電池セルの設計方法、配線シート付き太陽電池セル、太陽電池モジュール、配線シート付き太陽電池セルの評価方法および太陽電池モジュールの評価方法に利用することができる。
1 半導体基板、1a スライスダメージ、2 n型不純物拡散領域、3 p型不純物拡散領域、5 反射防止膜、6 n型用銀電極、7 p型用銀電極、8 裏面電極型太陽電池セル、10 配線シート、11 絶縁性基材、12 n型用銅配線、13 p型用銅配線、16 絶縁性樹脂、17 透明基板、18 封止材、19 裏面保護材、41 導電層、42 レジスト、43 矢印、51 銀電極の電界強度の最大位置、52 銅配線の電界強度の最大位置。

Claims (8)

  1. 半導体基板と前記半導体基板の一方の面側に設置された電極とを備えた裏面電極型太陽電池セルの前記電極と、絶縁性基材と前記絶縁性基材の一方の面側に設置された配線とを備えた配線シートの前記配線と、を電気的に接続して形成される配線シート付き太陽電池セルを設計する方法であって、
    前記電極と前記配線との接続部を構成する複数種の金属材料のうちの一の金属材料について、前記一の金属材料における最大の電界強度と、前記一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、
    前記複数種の金属材料のうち前記一の金属材料とは異なる他の金属材料について、前記他の金属材料における最大の電界強度と、前記他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、
    前記第1のイオンマイグレーション指標値と前記第2のイオンマイグレーション指標値とを比較する工程と、を含む、配線シート付き太陽電池セルの設計方法。
  2. 前記一の金属材料および前記他の金属材料のそれぞれは、前記裏面電極型太陽電池セルと前記配線シートとの間の絶縁性材料と接する金属材料である、請求項1に記載の配線シート付き太陽電池セルの設計方法。
  3. 前記第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程は、前記裏面電極型太陽電池セルと前記配線シートとの間の電界強度分布を電子計算機によりシミュレーションする工程と、前記電界強度分布から前記一の金属材料における最大の電界強度を求める工程と、を含む、請求項1または2に記載の配線シート付き太陽電池セルの設計方法。
  4. 前記第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程は、前記裏面電極型太陽電池セルと前記配線シートとの間の電界強度分布を電子計算機によりシミュレーションする工程と、前記電界強度分布から前記他の金属材料における最大の電界強度を求める工程と、を含む、請求項1から3のいずれかに記載の配線シート付き太陽電池セルの設計方法。
  5. 半導体基板と前記半導体基板の一方の面側に設置された第1の金属材料を含む電極とを備えた裏面電極型太陽電池セルと、
    絶縁性基材と前記絶縁性基材の一方の面側に設置された第2の金属材料を含む配線とを備えた配線シートと、を含み、
    前記電極における最大の電界強度と前記第1の金属材料の第1のイオンマイグレーション感受性との積である第1のイオンマイグレーション指標値が、前記配線における最大の電界強度と前記第2の金属材料の第2のイオンマイグレーション感受性との積である第2のイオンマイグレーション指標値よりも大きい、配線シート付き太陽電池セル。
  6. 請求項5に記載の配線シート付き太陽電池セルを含む、太陽電池モジュール。
  7. 半導体基板と前記半導体基板の一方の面側に設置された電極とを備えた裏面電極型太陽電池セルの前記電極と、絶縁性基材と前記絶縁性基材の一方の面側に設置された配線とを備えた配線シートの前記配線と、が電気的に接続されてなる配線シート付き太陽電池セルを評価する方法であって、
    前記電極と前記配線との接続部を構成する複数種の金属材料のうちの一の金属材料について、前記一の金属材料における最大の電界強度と、前記一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、
    前記複数種の金属材料のうち前記一の金属材料とは異なる他の金属材料について、前記他の金属材料における最大の電界強度と、前記他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、
    前記第1のイオンマイグレーション指標値と前記第2のイオンマイグレーション指標値とを比較して、前記一の金属材料と前記他の金属材料とのうちイオンマイグレーション指標値がより大きい方の金属材料を選択する工程と、
    前記選択された金属材料における電界強度の最大位置を観察する工程と、を含む、配線シート付き太陽電池セルの評価方法。
  8. 半導体基板と前記半導体基板の一方の面側に設置された電極とを備えた裏面電極型太陽電池セルの前記電極と、絶縁性基材と前記絶縁性基材の一方の面側に設置された配線とを備えた配線シートの前記配線と、が電気的に接続されてなる配線シート付き太陽電池セルを含む太陽電池モジュールを評価する方法であって、
    前記電極と前記配線との接続部を構成する複数種の金属材料のうちの一の金属材料について、前記一の金属材料における最大の電界強度と、前記一の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第1のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、
    前記複数種の金属材料のうち前記一の金属材料とは異なる他の金属材料について、前記他の金属材料における最大の電界強度と、前記他の金属材料のイオンマイグレーション感受性と、の積である第2のイオンマイグレーション指標値を算出する工程と、
    前記第1のイオンマイグレーション指標値と前記第2のイオンマイグレーション指標値とを比較して、前記一の金属材料と前記他の金属材料とのうちイオンマイグレーション指標値がより大きい方の金属材料を選択する工程と、
    前記選択された金属材料における電界強度の最大位置を観察する工程と、を含む、太陽電池モジュールの評価方法。
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