JP2012015212A - 記憶装置及び記憶装置の製造方法 - Google Patents

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Hiroyuki Uchida
裕行 内田
Masakatsu Hosomi
政功 細見
Hiroyuki Omori
広之 大森
Kazuhiro Bessho
和宏 別所
Yutaka Higo
豊 肥後
Ichiyo Yamane
一陽 山根
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Abstract

【課題】上部の反強磁性層の加工の際に生じる堆積物の量を低減することができる記憶装置を提供する。
【解決手段】記憶層15に対して、トンネル絶縁層14を介して下層に設けられた第1の磁化固定層13と、トンネル絶縁層16を介して上層に設けられた第2の磁化固定層17と、第1の磁化固定層13の磁化の向きを固定する第1の反強磁性層12とを含む。そして、第2の磁化固定層17の磁化の向きを固定し、第1の反強磁性層12よりも厚さが薄い第2の反強磁性層18を含み、各層の積層方向に電流を流すことにより情報の記録が行われる記憶素子10と、記憶素子10の各層の積層方向に流す電流を記憶素子10に供給する配線を含む、記憶装置を構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、記憶装置(メモリ)及び記憶装置の製造方法に係わる。
大容量サーバからモバイル端末に至るまで、各種情報機器の飛躍的な発展に伴い、これを構成するメモリやロジックなどの素子においても高集積化、高速化、低消費電力化等、さらなる高性能化が追求されている。
特に、半導体不揮発性メモリの進歩は著しく、集中大容量ファイルメモリとしてのフラッシュメモリはハードディスクドライブを駆逐する勢いで普及が進んでいる。
一方、コードストレージ用、さらにはワーキングメモリへの展開を睨み、現在一般に用いられているNORフラッシュメモリ、DRAM等を置き換えるべく、半導体不揮発性メモリの開発が進められている。例えば、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、MRAM(Magnetic Random Access Memory)、PCRAM(相変化RAM)等が挙げられる。これらのうち、一部はすでに実用化されている。
これらの不揮発性メモリの中でも、MRAMは、磁性体の磁化方向によりデータ記憶を行うために、高速の書き換え、かつ、ほぼ無限(1015回以上)の書き換えが可能であり、既に産業オートメーションや航空機等の分野で使用されている。
MRAMはその高速動作と信頼性から、今後、コードストレージやワーキングメモリへの展開が期待されている。
しかしながら、MRAMは、低消費電力化や大容量化に課題を有している。
これは、MRAMの記録原理、即ち、配線から発生する電流磁界によって磁化を反転させる、という方式に起因する本質的な課題である。
この問題を解決するための一つの方法として、電流磁界によらない記録(即ち、磁化反転)方式が検討されており、中でもスピントルク磁化反転に関する研究は活発である。
スピントルク磁化反転の記憶素子は、MRAMと同じく、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)により構成されている。
そして、ある方向に固定された磁性層を通過するスピン偏極電子が、他の自由な(方向を固定されない)磁性層に進入する際に、その磁性層にトルクを与えることを利用したもので、ある閾値以上の電流を流せば、自由磁性層の磁化の向きが反転する。
0/1の書き換えは、記憶素子に流す電流の極性を変えることにより行う。
自由磁性層の磁化の向きの反転のための電流の絶対値は、0.1μm程度のスケールの記憶素子で1mA以下である。しかも、この電流値は、記憶素子の体積に比例して減少するため、スケーリングが可能である。
さらにまた、MRAMで必要であった記録用電流磁界を発生させるためのワード線が不要であるため、セル構造が単純になるという利点もある。
以下、スピントルク磁化反転を利用したMRAMを、ST−MRAM(Spin Torque − Magnetic Random Access Memory)と呼ぶことにする。
高速かつ書き換え回数がほぼ無限大である、というMRAMの利点を保ったまま、低消費電力化や大容量化を可能とする不揮発メモリとして、ST−MRAMに大きな期待が寄せられている。
ST−MRAMに用いるMTJとして、様々なMTJ構造が検討されている。
通常のST−MRAMでは、MTJ構造内の酸化金属バリア(MgO等)が一つである、Single−MTJ構造となっている。
これに対して、スピン注入効率の改善や、スイッチング電流の均一化のために、磁化自由層に対して、二つの酸化金属バリアと二つの磁化固定層を用いた、Dual−MTJ構造が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
なお、Dual−MTJ構造の特徴は、磁化自由層の上下にそれぞれ酸化金属バリア及び磁化固定層が存在し、かつ、2つの磁化固定層の磁化の向きが反平行になっていることである。
Dual−MTJ構造のST−MRAMにおいても、Single−MTJ構造のST−MRAMと同様に、情報の記録は、一軸異方性を有する磁化自由層(記憶層)の磁化の向きによって行われる。
書き込み時には、素子の各層の膜面に垂直な方向に電流を流して、記憶層にスピントルク磁化反転を発生させる。
APPLIED PHYSICS LETTERS 90, 132508 (2007)
Dual−MTJ構造の磁化固定層の磁化の固定方法には、保磁力差や反強磁性体による交換結合を利用したもの等、いくつか種類があるが、磁化の固着強度や素子の漏れ磁界の観点より、反強磁性体と積層フェリ構造とを用いた方式が有利である。
以下、磁化自由層(記憶層)の上側に形成された、磁化固定層及び反強磁性層を、上部磁化固定層及び上部反強磁性層と呼ぶこととする。
ここで、反強磁性層により強磁性層に一方向の異方性を作用させるための条件を、下記の式(1)に示す。
Ku×t(AF)> Jint (1)
ただし、Ku:反強磁性層の異方性定数、t(AF):反強磁性層AFの膜厚、Jint:強磁性層との界面結合定数、である。
反強磁性体による交換結合を利用するためには、式(1)に示した、反強磁性層の膜厚を増加させることによる一方向異方性の増大が必要であり、例えば、PtMnでは10〜30nm程度の膜厚が必要である。
しかしながら、Dual−MTJ構造の上部反強磁性層を厚くすることは、ST−MRAM素子をメモリセル毎にサブミクロンサイズに加工する際には好ましくない。
これは、反強磁性層の膜厚の増大により、加工の際のエッチング・ミリング時に削った物質が、素子の側面やレジストへ堆積する量も増大して、素子の加工サイズが設定値から変化したり、金属を含む堆積物によってショート等が発生したりするからである。
このような加工サイズの変化やショートが生じると、素子の動作に支障をきたす。
上述した問題を回避するには、上部反強磁性層を薄くすることが考えられる。
しかしながら、下層側の下部反強磁性層と異なり、上部反強磁性層は、膜厚を薄くすると、充分な交換結合が機能しなくなり、磁化固定層の磁化の向きの固定が不十分となる。
反強磁性層による交換結合が強い場合には、磁化曲線における上部磁化固定層の磁化方向は、ある程度の磁界までは保持される。
しかし、反強磁性層による交換結合が弱い場合には、すぐさま磁化方向が変化してしまう。また、磁化自由層(記憶層)に対応する磁化曲線も角型性を失ってしまうので、好ましくない。
上述した問題の解決のために、本発明においては、上部の反強磁性層の加工の際に生じる堆積物の量を低減することができると共に、記憶素子の磁化固定層の磁化の向きの固定を充分に行うことを可能にする記憶装置を提供するものである。また、この記憶装置を製造する方法を提供するものである。
本発明の記憶装置は、情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層と、この記憶層に対してトンネル絶縁層を介して下層に設けられ、磁化の向きが固定された第1の磁化固定層とを含む。また、記憶層に対して、トンネル絶縁層を介して上層に設けられ、磁化の向きが固定された第2の磁化固定層と、第1の磁化固定層の下に設けられ、第1の磁化固定層の磁化の向きを固定する第1の反強磁性層とを含む。
そして、第2の磁化固定層の上に設けられ、第2の磁化固定層の磁化の向きを固定し、第1の反強磁性層よりも厚さが薄い第2の反強磁性層とを含み、各層の積層方向に電流を流すことにより情報の記録が行われる記憶素子を含む。さらに、記憶素子の各層の積層方向に流す電流を記憶素子に供給する配線を含むものである。
本発明の記憶装置の製造方法は、記憶素子と、前記記憶素子の各層の積層方向に流す電流を前記記憶素子に供給する配線とを含む記憶装置を製造する方法である。
この製造方法によって製造する記憶素子は、情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層と、記憶層に対してトンネル絶縁層を介して設けられ、磁化の向きが固定された第1の磁化固定層及び第2の磁化固定層とを含む構成とする。さらに、第1の磁化固定層及び前記第2の磁化固定層のそれぞれの磁化の向きを固定する第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を含む構成とする。
そして、下層側から、第1の反強磁性層、第1の磁化固定層、トンネル絶縁層、記憶層、トンネル絶縁層、第2の磁化固定層を、順次積層形成する工程と、第2の磁化固定層を形成した後に、真空中で加熱して、第2の磁化固定層の表面を平坦化する工程とを含む。
さらに、第2の磁化固定層の表面を平坦化する工程の後に、第2の磁化固定層の上に、第1の反強磁性層よりも厚さが薄い、第2の反強磁性層を形成する工程とを含んで、記憶素子を構成する各層を形成し、この各層をパターニングする加工を行う。
上述の本発明の記憶装置の構成によれば、記憶層に対して、それぞれトンネル絶縁層を介して、下層に第1の磁化固定層を、上層に第2の磁化固定層を設けている。これにより、記憶素子がDual−MTJ構造となっているので、前述したように、スピン注入効率の改善やスイッチング電流の均一化を図ることができる。
また、記憶素子の各層の積層方向に流す電流を記憶素子に供給する配線を含むので、この配線から電流を供給して記憶素子の各層の積層方向に電流を流すことにより、スピン注入によって記憶層の磁化の向きを反転させて情報の記録を行うことができる。
さらに、上層側の第2の反強磁性層が、第1の反強磁性層よりも薄く形成されているので、この記憶装置を製造する際に、記憶素子の第2の反強磁性層をパターニングする加工で生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。
上述の本発明の記憶装置の製造方法によれば、第2の磁化固定層を形成した後に、真空中で加熱して、第2の磁化固定層の表面を平坦化する工程を行うことにより、第2の磁化固定層の表面を充分に平坦化することができる。
そして、この工程の後に、第2の磁化固定層の上に、第1の反強磁性層よりも厚さが薄い、第2の反強磁性層を形成する工程を行うので、充分に平坦化された第2の磁化固定層の表面上に第2の反強磁性層を形成することができる。これにより、第2の反強磁性層と第2の磁化固定層とが充分に交換結合するので、第2の磁化固定層の磁化の向きを安定して固着させることが可能になる。
また、第2の反強磁性層を第1の反強磁性層よりも薄く形成して、記憶素子を構成する各層を形成し、この各層をパターニングする加工を行うので、第2の反強磁性層をパターニングする加工の際に生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。
上述の本発明の記憶装置の構成により、記憶装置を製造する際の、第2の反強磁性層をパターニングする加工で生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。
従って、記憶装置を構成する各記憶素子の特性のばらつきを抑制することや、記憶装置の製造歩留まりを向上することが可能になる。
また、堆積物による問題の発生を抑制することができるので、記憶素子の各層をパターニングして得られるメモリセルのサイズを縮小化して、記憶装置の記憶容量を増大させることや、情報の記録に必要な電流量を低減して消費電力を低減することが可能になる。
上述の本発明の記憶装置の製造方法によれば、第2の反強磁性層をパターニングする加工の際に生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。これにより、記憶装置を構成する各記憶素子の特性のばらつきを抑制することや、記憶装置の製造歩留まりを向上することが可能になる。
また、堆積物による問題の発生を抑制することができるので、記憶素子の各層をパターニングして得られるメモリセルのサイズを縮小化して、記憶装置の記憶容量を増大させることや、情報の記録に必要な電流量を低減して消費電力を低減することが可能になる。
さらに、第2の磁化固定層の磁化の向きを安定して固着させることが可能になることから、安定して動作する記憶装置を製造することができる。
本発明の第1の実施の形態の記憶装置を構成する記憶素子の概略構成図(断面図)である。 本発明の第1の実施の形態の記憶装置(メモリ)の概略構成図(平面図)である。 本発明の第2の実施の形態の記憶装置を構成する記憶素子の概略構成図(断面図)である。 本発明の第2の実施の形態の記憶装置(メモリ)の概略構成図(平面図)である。 A〜C 真空加熱を行った試料の磁化曲線である。 A〜C 真空加熱を行っていない試料の磁化曲線である。 試料3及び試料6における、外部磁場の大きさと第2の磁化固定層の磁化の大きさとの関係を示す図である。 真空加熱の温度と第2の磁化固定層の磁化の向きが変化する磁界強度との関係を示す図である。 A、B 上部反強磁性層が厚い場合と薄い場合の磁化曲線を比較した図である。 スピン注入効率のTMR依存性を示す図である。 A Single−MTJ構造の場合である。 B Dual−MTJ構造の場合である。
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.本発明の概要
2.第1の実施の形態
3.第2の実施の形態
4.実験例
<1.本発明の概要>
まず、本発明の具体的な実施の形態の説明に先立ち、本発明の概要について説明する。
Dual−MTJ構造のST−MRAMにおいて、上部反強磁性層の厚さを変えて、それぞれの厚さで、印加する外部磁界の大きさを変えていったときの磁化曲線を測定した。
具体的には、上部反強磁性層のPtMn層の厚さを20nm以上とした場合と、上部反強磁性層のPtMn層の厚さを20nm未満とした場合とで、それぞれ磁化曲線を測定した。
測定結果として、それぞれの磁化曲線を重ねて、図9A及び図9Bに示す。図9Aは、外部磁界の大きさが−1000[Oe]〜+60[Oe]の範囲の磁化曲線を示しており、図9Bは、−100[Oe]〜+60[Oe]の範囲の磁化曲線を拡大して示している。また、図9Aでは、磁化曲線の脇に、上部磁化固定層の磁化Mpと磁化自由層(記憶層)の磁化Mfのそれぞれの向きを示している。
図9Aからわかるように、上部反強磁性層の厚さが20nm以上の場合には、上部磁化固定層の磁化Mpの向きは−500[Oe]程度では、まだ元の右向きに保持されている。そして、外部磁界をさらに大きくすると、上部磁化固定層の磁化Mpの向きは左向きに変化する。これに対して、上部反強磁性層の厚さが20nm未満の場合には、−400[Oe]の外部磁界でも、上部磁化固定層の磁化Mpの向きが左向きに変化してしまう。
また、図9Bからわかるように、上部反強磁性層の厚さが20nm未満の場合には、0に近い比較的小さい外部磁界で、磁化が変化して、磁化曲線の角型性が低下することがわかる。
Single−MTJ構造のST−MRAM及びDual−MTJ構造のST−MRAMにおいて、磁化自由層(記憶層)の磁化の向きを反転させるために必要となる、素子に流す電流(所謂、反転電流)Icは、下記の式(2)で表される。
Ic=(A・α・Ms・V/η/P)(Hk+2πMs) (2)
ただし、Aは定数、αはダンピング定数、Msは飽和磁化、Vは素子の体積、ηはスピントルクの注入効率、Pは磁性体のスピン分極率、Hkは磁気異方性である。
スピントルクの注入効率を示すηは、Single−MTJ構造の場合、
平行→反平行:η=(P/2)/(1+P^2cos[0])
反平行→平行:η=(P/2)/(1+P^2cos[π])
となる。
なお、この場合の「平行」は下部磁化固定層と記憶層の磁化方向がそろっていることを指し、「反平行」は記憶層の磁化方向が180°回転して並ぶことを指す。
一方、Dual−MTJ構造の場合のスピンの注入効率ηは、
平行→反平行:η=P/(1−P^4cos[0]^2)
反平行→平行:η=P/(1−P^4cos[π]^2)
となる。
ここで、スピン注入効率ηのトンネル磁気抵抗変化率(TMR)への依存性を、計算により求めた。計算結果を、図10A及び図10Bに示す。図10Aは、Single−MTJ構造のST−MRAMの結果を示し、図10Bは、Dual−MTJ構造のST−MRAMの結果を示す。
図10Aより、Single−MTJ構造のST−MRAMでは、記憶層の磁化の向きによって、スピントルクの注入効率ηが異なり、非対称となっている。
これに対して、図10Bより、Dual−MTJ構造のST−MRAMでは、平行及び反平行の各場合のスピントルクの注入効率ηが一致する。
即ち、Dual−MTJ構造を用いることにより、スピン注入効率ηの磁化方向による非対称を解消し、効率の値を増大させることが可能である。
Dual−MTJ構造では、磁化自由層に対する磁化参照層として使用される下部磁化固定層の磁化及び上部磁化固定層の磁化が、両方とも十分に固定されていなければならない。
一般に、反強磁性層を用いて強磁性層の磁化の向きを固着するためには、十分な界面平坦性が必要とされる。
そこで、検討を行った結果、上部磁化固定層を成膜した後に、真空中で加熱を行うことにより、十分な界面平坦性が得られ、上部反強磁性層が薄い場合においても、上部磁化固定層と上部反強磁性層とが十分に交換結合することを見出した。
例えば、PtMn層による反強磁性層の厚さが20nm以下であっても、上部磁化固定層と上部反強磁性層とが十分に交換結合する。
本発明の記憶装置においては、記憶素子の記憶層の上部の第2の反強磁性層を、記憶層の下部の第1の反強磁性層よりも薄く形成する。これにより、第2の反強磁性層をパターニングする加工で生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。
従って、記憶装置を構成する各記憶素子の特性のばらつきを抑制することや、記憶装置の製造歩留まりを向上することが可能になる。
また、堆積物による問題の発生を抑制することができるので、記憶素子の各層をパターニングして得られるメモリセルのサイズを縮小化して、記憶装置の記憶容量を増大させることや、情報の記録に必要な電流量を低減して消費電力を低減することが可能になる。
本発明の記憶装置において、さらに好ましくは、第2の反強磁性層の下の第2の磁化固定層の表面が、真空中の加熱によって平坦化されている構成とする。これにより、第2の反強磁性層と第2の磁化固定層とが充分に交換結合するので、第2の磁化固定層の磁化の向きを安定して固着させることが可能になる。
本発明の記憶装置の製造方法においては、第2の磁化固定層までの各層を順次積層形成した後に、真空中で加熱して第2の磁化固定層の表面を平坦化する工程を行って、この工程の後に第2の反強磁性層を、第1の反強磁性層よりも薄く形成する。そして、記憶素子の各層を形成して、この各層をパターニングする加工を行う。
これにより、充分に平坦化された第2の磁化固定層の表面上に第2の反強磁性層を形成することができ、第2の反強磁性層と第2の磁化固定層とが充分に交換結合するので、第2の磁化固定層の磁化の向きを安定して固着させることが可能になる。また、第2の反強磁性層をパターニングする加工の際に生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。
堆積物の量を低減することができるので、記憶素子の各層をパターニングして得られるメモリセルのサイズを縮小化して、記憶装置の記憶容量を増大させることや、情報の記録に必要な電流量を低減して消費電力を低減することが可能になる。
さらに、第2の磁化固定層の磁化の向きを安定して固着させることが可能になることから、安定して動作する記憶装置を製造することができる。
<2.第1の実施の形態>
続いて、本発明の具体的な実施の形態を説明する。
本発明の第1の実施の形態の記憶装置を構成する記憶素子の概略構成図(断面図)を、図1に示す。
図1に示す記憶素子10は、下地層11の上に、下層から、第1の反強磁性層12、第1の磁化固定層13、トンネル絶縁層14、記憶層15、トンネル絶縁層16、第2の磁化固定層17、第2の反強磁性層18、キャップ層19の順に積層されている。
下層の第1の磁化固定層13は、第1の反強磁性層12の作用により、磁化M13の向きが右向きに固定されている。
上層の第2の磁化固定層17は、第2の反強磁性層18の作用により、磁化M17の向きが左向きに固定されている。
記憶層15は、磁化M1の向きを反転させることが可能な構成であり、記憶層15の磁化M1の向きにより、記憶素子10の記憶層15に情報を記録することができる。
トンネル絶縁層14,16の材料としては、MgO,AlOx,TiOx等、各種の酸化物を使用することができる。
磁化固定層13,17を構成する強磁性層の材料としては、Co,CoFe,CoFeB等を用いることができる。積層フェリ構造を形成する非磁性層の材料としては、Ru,Re,Ir,Os、又はこれらの合金等を用いることができる。
反強磁性層12,18の材料としては、FeMn合金、PtMn合金、PtCrMn合金、NiMn合金、IrMn合金、NiO、Fe等の磁性体を挙げることができる。また、これらの磁性体に、Ag,Cu,Au,Al,Si,Bi,Ta,B,C,O,N,Pd,Pt,Zr,Hf,Ir,W,Mo,Nb等の非磁性元素を添加して、磁気特性を調整してもよい。また、その他の結晶構造や結晶性や物質の安定性等の各種物性を調整してもよい。反強磁性層12,18の厚さは、例えば1nm〜40nmとする。
記憶層15は、主としてCo,Fe,Ni,Gd等の強磁性材料から構成され、これら2種以上の合金を一つの層として、一層又は二層以上の積層状態で形成される。各強磁性層には、飽和磁化量等の磁気特性や、結晶構造(結晶質、微結晶構造、アモルファス構造)の制御のために合金元素が添加してもよい。例えば、CoFe合金、CoFeB合金、Fe合金或いはNiFe合金を主成分として、Gd等の磁性元素や、他の元素として、B,C,N,Si,P,Al,Ti,Ta,Mo,Cr,Nb,Cu,Zr,W,V,Hf,Gd,Mn,Pdが1種或いは複数添加された材料を用いることができる。また、例えば、CoにZr,Hf,Nb,Ta,Tiから選ばれる1種類以上の元素を添加したアモルファス材料、CoMnSi,CoMnAlやCoCrFeAl等のホイスラー材料を用いることができる。記憶層15の厚さは、2nm〜8nmの範囲であれば記憶素子の動作に支障はない。
キャップ層19は、例えば、Li,Be,Na,Mg,Nb,Ti,V,Ta及びBaのうち1つ以上の元素、若しくは、これら元素を含む酸化物、又は、Ti及びVのうち1つ以上の元素の窒化物から構成される。
また、下地層11は、例えば、Mg,Ca,V,Nb,Mn,Fe,Co及びNiのうちの少なくとも1つ以上の元素、若しくは、これら元素を含む酸化物から構成される。下地層11は、厚すぎると平滑性が低下し、薄すぎると機能しないため、厚さ3〜30nmで形成する。
記憶層15と磁化固定層13,17との間のトンネル絶縁層14,16の材料には、酸化マグネシウム(MgO)を用いることができる。また、酸化マグネシウムの他にも、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、SiO,Bi,MgF,CaF,SrTiO,AlLaO,Al−N−O等の各種の絶縁体、誘電体、半導体を用いて構成することもできる。記憶素子10において大きな読み出し信号を与える高磁気抵抗変化率を実現するためには、トンネル絶縁層14,16として、(001)方向に結晶配向したMgO層を用いることが好ましい。
第1の磁化固定層13の磁化M13と、第2の磁化固定層17の磁化M17とは、互いに逆向きになっている。これにより、記憶層15と磁化固定層13,17との磁気抵抗効果による抵抗変化が、第1の磁化固定層13側と第2の磁化固定層17側とで打ち消し合わないようにすることができる。
そして、記憶素子10の下地層11の側と、キャップ層19の側に、それぞれ配線を電気的に接続して、配線から電流を供給することにより、記憶素子10の各層11〜19の積層方向に電流を流すことができる。この電流によってスピン注入を行い、記憶層15の磁化M1の向きを反転させることにより、記憶素子10に情報の記録を行うことができる。
本実施の形態に係る記憶素子10では、特に、上層の第2の反強磁性層18の厚さt18が、下層の第1の反強磁性層12の厚さt12よりも薄くなっている。即ち、t18<t12となっている。
これにより、上層の第2の反強磁性層18を薄くして、この第2の反強磁性層18をパターニングする際の、削った物質の再堆積による、素子のサイズの設計値からのずれやショート等を抑制することができる。
また、第2の磁化固定層17の第2の反強磁性層18側の界面(即ち、表面)17Aが、真空中での加熱(以下、「真空加熱」と呼ぶこととする)によって平坦化されて、充分に平坦性を有する構成となっている。
これにより、第2の反強磁性層18を薄くした場合の、第2の磁化固定層17の磁化M17の向きの固着が不十分となる問題を回避することができる。
第2の磁化固定層17に対する真空加熱の温度は、室温以上300℃以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、50℃〜250℃の範囲内とする。
真空加熱によって第2の磁化固定層の表面17Aを平坦化する工程は、記憶素子10の各層を順次形成していく間の、第2の磁化固定層17を形成する工程の後で、かつ、第2の反強磁性層18を形成する工程の前に、行うようにする。
第2の反強磁性層18を形成した後に、さらにキャップ層19を形成して記憶素子10の各層を形成した後に、記憶素子10の各層を、エッチング等により所定の平面パターンに加工する。
より好ましくは、第2の磁化固定層17を成膜した成膜装置内で、引き続き、真空加熱を行うようにする。
これにより、第2の磁化固定層17の表面17Aが酸化等の変化を起こすことがなく、第2の磁化固定層17の表面17Aを平坦化することができる。
次に、図1に示した記憶素子10を用いた、本発明の第1の実施の形態の記憶装置(メモリ)の概略構成図(平面図)を、図2に示す。
この記憶装置(メモリ)20は、図2に示すように、マトリクス状に直交配置させたそれぞれ多数の第1の配線(例えばビット線)21及び第2の配線(例えばワード線)22の交点に、記憶素子10を配置して構成されている。
記憶素子10は、平面形状が楕円形状とされ、図1に示した断面構造を有する。
また、記憶素子10は、図1に示したように、下層の第1の反強磁性層12よりも上層の第2の反強磁性層18が薄くなっており、第1の磁化固定層17の第1の反強磁性層18との界面17Aが真空加熱により充分に平坦化されている。
そして、各記憶素子10によって、記憶装置20のメモリセルが構成される。
第1の配線21及び第2の配線22は、図示しないが、それぞれ記憶素子10に電気的に接続され、これらの配線21,22を通じて、記憶素子10に記憶素子10の各層の積層方向(上下方向)の電流を流すことができる。
そして、この電流を記憶素子10に流すことにより、記憶層15の磁化M1の向きを反転させて、情報の記録を行うことができる。具体的には、従来のST−MRAMと同様に、記憶素子10に流す電流の極性(電流の方向)を変えることにより、記憶層15の磁化M1の向きを反転させて、情報の記録を行う。
上述の本実施の形態の記憶装置20の構成によれば、記憶素子10の記憶層15の上部の第2の反強磁性層18を、記憶層15の下部の第1の反強磁性層12よりも薄く形成している。これにより、第2の反強磁性層18をパターニングする加工で生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。
従って、記憶装置20を構成する各記憶素子10の特性のばらつきを抑制することや、記憶装置20の製造歩留まりを向上することが可能になる。
また、堆積物による問題の発生を抑制することができるので、記憶素子10の各層をパターニングして得られるメモリセルのサイズを縮小化しても、堆積物による問題の発生を抑制することが可能になる。そして、メモリセルのサイズを縮小化することにより、記憶装置20の記憶容量を増大させることや、情報の記録に必要な電流量を低減して消費電力を低減することが可能になる。
また、第2の反強磁性層18の下の第2の磁化固定層17の表面17Aが、真空中の加熱によって充分に平坦化されている構成となっている。これにより、第2の反強磁性層18と第2の磁化固定層17とが充分に交換結合するので、第2の磁化固定層17の磁化M17の向きを安定して固着させることが可能になる。
記憶装置20を製造する際には、第2の磁化固定層17までの各層を順次積層形成した後に、真空中で加熱して第2の磁化固定層17の表面17Aを平坦化する工程を行う。そして、この工程の後に第2の反強磁性層18を第1の反強磁性層12よりも薄く形成する。さらに、記憶素子10の各層11〜19を形成して、この各層11〜19をパターニングする加工を行う。
これにより、充分に平坦化された第2の磁化固定層17の表面17A上に第2の反強磁性層18を形成することができ、第2の反強磁性層18と第2の磁化固定層17とが充分に交換結合する。このため、第2の磁化固定層17の磁化M17の向きを安定して固着させることが可能になる。
また、第2の反強磁性層18をパターニングする加工の際に生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。堆積物の量を低減することができるので、記憶素子10の各層11〜19をパターニングして得られるメモリセルのサイズを縮小化して、記憶装置20の記憶容量を増大させることや、情報の記録に必要な電流量を低減して消費電力を低減することが可能になる。
さらに、第2の磁化固定層17の磁化M17の向きを安定して固着させることが可能になることから、安定して動作する記憶装置20を製造することができる。
<3.第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態の記憶装置を構成する記憶素子の概略構成図(断面図)を、図3に示す。
図3に示す記憶素子30では、下層の第1の磁化固定層13が、非磁性層32,34を介して積層された3層の強磁性層31,33,35により構成されている。また、上層の第2の磁化固定層17が、非磁性層37を介して積層された2層の強磁性層36,38により構成されている。
即ち、第1の磁化固定層13及び第2の磁化固定層17が、非磁性層を介して複数層の強磁性層が積層された、所謂積層フェリ構造となっている。
磁化固定層13,17及び記憶層15の強磁性層31,33,35,36,38の材料としては、従来からスピン注入方式による記憶素子に使われていた、各種の強磁性材料を使用することができる。例えば、CoFe,CoFeB,NiFe等が挙げられる。
また、非磁性層32,34,37の材料としては、従来から積層フェリ構造の非磁性層に用いられている非磁性材料を使用することができる。例えば、Ru等が挙げられる。
そして、第1の磁化固定層13の最も記憶層15側の強磁性層35の磁化M35は右向きであり、第2の磁化固定層17の最も記憶層15側の強磁性層36の磁化M36は左向きである。
即ち、記憶層15に対向する強磁性層35,36の磁化M35,M36が互いに逆向きとなっている。これにより、記憶層15と磁化固定層13,17との磁気抵抗効果による抵抗変化が、第1の磁化固定層13側と第2の磁化固定層17側とで打ち消し合わないようにすることができる。
一方、第1の磁化固定層13の最も第1の反強磁性層12側の強磁性層31の磁化M31は右向きであり、第2の磁化固定層17の最も第2の反強磁性層18側の強磁性層38の磁化M38も右向きである。
即ち、第1の磁化固定層13及び第2の磁化固定層17の最も反強磁性層12,18に近い側の強磁性層31,38の磁化M31,M38が同じ向きとなっている。
これにより、記憶素子30を作製する際に、右向きの磁場中で加熱を行うことにより、第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18に対して、同時に着磁することができる、という利点がある。
そして、記憶素子30の下地層11の側と、キャップ層19の側に、それぞれ配線を電気的に接続して、配線から電流を供給することにより、記憶素子30の各層11〜19の積層方向に電流を流すことができる。この電流によってスピン注入を行い、記憶層15の磁化M1の向きを反転させることにより、記憶素子30に情報の記録を行うことができる。
本実施の形態に係る記憶素子30では、特に、第1の実施の形態の記憶素子10と同様に、上層の第2の反強磁性層18の厚さt18が、下層の第1の反強磁性層12の厚さt12よりも薄くなっている。即ち、t18<t12となっている。
これにより、上層の第2の反強磁性層18を薄くして、この第2の反強磁性層18をパターニングする際の、削った物質の再堆積による、素子のサイズの設計値からのずれやショート等を抑制することができる。
また、第2の磁化固定層17の表面17Aが、真空加熱によって平坦化されて、充分に平坦性を有する構成となっている。
これにより、第2の反強磁性層18を薄くした場合の、第2の磁化固定層17の磁化M17の向きの固着が不十分となる問題を回避することができる。
第2の磁化固定層17に対する真空加熱の温度は、室温以上300℃以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、50℃〜250℃の範囲内とする。
真空加熱によって第2の磁化固定層の表面17Aを平坦化する工程は、記憶素子30の各層を順次形成していく間の、第2の磁化固定層17を形成する工程の後で、かつ、第2の反強磁性層18を形成する工程の前に、行うようにする。
第2の反強磁性層18を形成した後に、さらにキャップ層19を形成して記憶素子30の各層を形成した後に、記憶素子30の各層を、エッチング等により所定の平面パターンに加工する。
より好ましくは、第2の磁化固定層17を成膜した成膜装置内で、引き続き、真空加熱を行うようにする。
これにより、第2の磁化固定層17の表面が酸化等の変化を起こすことがなく、第2の磁化固定層17の表面17Aを平坦化することができる。
なお、第2の実施の形態の記憶素子30のその他の構成は、第1の実施の形態の記憶素子10と同様である。
次に、図3に示した記憶素子30を用いた、本発明の第2の実施の形態の記憶装置(メモリ)の概略構成図(平面図)を、図4に示す。
この記憶装置(メモリ)40は、図4に示すように、マトリクス状に直交配置させたそれぞれ多数の第1の配線(例えばビット線)21及び第2の配線(例えばワード線)22の交点に、記憶素子30を配置して構成されている。
記憶素子30は、平面形状が楕円形状とされ、図3に示した断面構造を有する。
また、記憶素子30は、図3に示したように、下層の第1の反強磁性層12よりも上層の第2の反強磁性層18が薄くなっており、第1の磁化固定層17の第1の反強磁性層18との界面17Aが真空加熱により充分に平坦化されている。
そして、各記憶素子30によって、記憶装置40のメモリセルが構成される。
第1の配線21及び第2の配線22は、図示しないが、それぞれ記憶素子30に電気的に接続され、これらの配線21,22を通じて、記憶素子30に記憶素子30の各層の積層方向(上下方向)の電流を流すことができる。
そして、この電流を記憶素子30に流すことにより、記憶層15の磁化M1の向きを反転させて、情報の記録を行うことができる。具体的には、従来のST−MRAMと同様に、記憶素子30に流す電流の極性(電流の方向)を変えることにより、記憶層15の磁化M1の向きを反転させて、情報の記録を行う。
上述の本実施の形態の記憶装置40の構成によれば、記憶素子30の記憶層15の上部の第2の反強磁性層18を、記憶層15の下部の第1の反強磁性層12よりも薄く形成している。これにより、第2の反強磁性層18をパターニングする加工で生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。
従って、記憶装置40を構成する各記憶素子30の特性のばらつきを抑制することや、記憶装置40の製造歩留まりを向上することが可能になる。
また、堆積物による問題の発生を抑制することができるので、記憶素子30の各層をパターニングして得られるメモリセルのサイズを縮小化しても、堆積物による問題の発生を抑制することが可能になる。そして、メモリセルのサイズを縮小化することにより、記憶装置40の記憶容量を増大させることや、情報の記録に必要な電流量を低減して消費電力を低減することが可能になる。
また、第2の反強磁性層18の下の第2の磁化固定層17の表面17Aが、真空中の加熱によって充分に平坦化されている構成となっている。これにより、第2の反強磁性層18と第2の磁化固定層17とが充分に交換結合するので、第2の磁化固定層17の強磁性層36,38の磁化M36,M38の向きを安定して固着させることが可能になる。
記憶装置40を製造する際には、第2の磁化固定層17(36,37,38)までの各層を順次積層形成した後に、真空中で加熱して第2の磁化固定層17の表面17Aを平坦化する工程を行う。そして、この工程の後に第2の反強磁性層18を第1の反強磁性層12よりも薄く形成する。さらに、記憶素子30の各層11〜19を形成して、この各層11〜19をパターニングする加工を行う。
これにより、充分に平坦化された第2の磁化固定層17の表面17A上に第2の反強磁性層18を形成することができ、第2の反強磁性層18と第2の磁化固定層17とが充分に交換結合する。このため、第2の磁化固定層17の強磁性層36,38の磁化M36,M38の向きを安定して固着させることが可能になる。
また、第2の反強磁性層18をパターニングする加工の際に生じる、堆積物の量を低減することが可能になる。堆積物の量を低減することができるので、記憶素子30の各層11〜19をパターニングして得られるメモリセルのサイズを縮小化して、記憶装置40の記憶容量を増大させることや、情報の記録に必要な電流量を低減して消費電力を低減することが可能になる。
さらに、第2の磁化固定層17の強磁性層36,38の磁化M36,M38の向きを安定して固着させることが可能になることから、安定して動作する記憶装置40を製造することができる。
上述の第2の実施の形態では、第1の磁化固定層13が非磁性層を介して積層された3層の強磁性層で構成され、第2の磁化固定層17が非磁性層を介して積層された2層の強磁性層で構成されていた。
本発明において、下部及び上部のそれぞれの磁化固定層を構成する強磁性層の層数は、第2の実施の形態の構成や、第1の実施の形態の1層ずつの構成には限定されず、その他の数としてもよい。
下部と上部の反強磁性層への磁場中熱処理による着磁を同時に行って、かつ、記憶層側の強磁性層の磁化の向きを反対向きにするには、非磁性層を介して積層された強磁性層の数を、一方の磁化固定層は奇数、他方の磁化固定層は偶数、とするのが良い。
<4.実験例>
本発明に係る記憶素子を簡易的に作製して、特性を調べた。
(記憶素子の作製方法)
以下に説明するようにして、図3に示した記憶素子30と同様の積層構造を有する記憶素子を作製した。
まず、表面に熱酸化膜が形成されたシリコン基板の上に、下地層11として、Ta膜を膜厚3nmで成膜した。
次に、第1の反強磁性層12として、PtMn膜を膜厚20nmで成膜した。
次に、第1の磁化固定層13を形成した。即ち、強磁性層31のCoFe膜を膜厚2nmで、非磁性層32のRu膜を膜厚0.8nmで、強磁性層33のCoFe膜を膜厚4nmで、非磁性層34のRu膜を膜厚0.8nmで、強磁性層35のCoFeB膜を膜厚2nmで、それぞれ成膜した。
次に、下部のトンネル絶縁層14として、MgO膜を膜厚0.7nmで成膜し、記憶層15として、CoFeB膜を膜厚3nmで成膜し、上部のトンネル絶縁層16として、MgO膜を0.6nmで成膜した。
さらに、第2の磁化固定層17を形成した。即ち、強磁性層36として、膜厚1nmのCoFeB膜とその上の膜厚2nmのCoFe膜の積層膜を形成し、非磁性層37のRu膜を膜厚0.9nmで成膜し、強磁性層38のCoFe膜を膜厚2nmで成膜した。
ここで、スパッタリング装置内にて200℃に加熱し、1分間保持の後すぐに降温した。
続いて、第2の反強磁性層18として、PtMn膜を成膜した。
次に、保護層19として、Ta膜を膜厚5nmで成膜した。
さらに、320℃で磁場中熱処理を行った。
このようにして、熱酸化膜が形成されたシリコン基板の上に、図3に示した記憶素子30と同様の積層構造を有する記憶素子を作製した。
(試料1〜試料3)
第2の反強磁性層18のPtMn膜の膜厚を、20nm、15nm、10nmとして、それぞれ記憶素子の試料を作製し、試料1(膜厚20nm)、試料2(膜厚15nm)、試料3(膜厚10nm)とした。
(試料4〜試料6;比較例)
比較対照のための比較例として、上部の第2の磁化固定層17の成膜後に真空中で加熱をしない記憶素子の試料を作製した。そして、第2の反強磁性層18のPtMn膜の膜厚を、20nm、15nm、10nmとして、それぞれ記憶素子の試料を作製し、試料4(膜厚20nm)、試料5(膜厚15nm)、試料6(膜厚10nm)とした。
(磁化曲線)
各試料の記憶素子において、記憶素子に印加する外部磁場Hの大きさを変化させて、記憶層15の磁化の大きさを測定して、磁化曲線を求めた。
各試料の磁化曲線を、図5A〜図5C及び図6A〜図6Cに示す。図5A〜図5Cは真空加熱を行った試料の結果であり、図5Aが試料1の磁化曲線を示し、図5Bが試料2の磁化曲線を示し、図5Cが試料3の磁化曲線を示している。図6A〜図6Cは真空加熱を行っていない試料の結果であり、図6Aが試料1の磁化曲線を示し、図6Bが試料2の磁化曲線を示し、図6Cが試料3の磁化曲線を示している。
図6A〜図6Cからわかるように、真空加熱を行っていない試料4〜試料6では、第2の反強磁性層18のPtMn層の厚さが20nm以下になると、記憶層(磁化自由層)15に対応する磁化曲線の形状が変化してしまう。
一方、図5A〜図5Cからわかるように、真空加熱を行った試料1〜試料3では、第2の反強磁性層18のPtMn層の厚さを10nmまで薄膜化しても、厚さ20nmと同様の形状を維持している。
(第2の磁化固定層の磁化の保持特性)
次に、PtMn層の厚さを10nmとした試料3及び試料6について、比較的大きい外部磁場Hを印加して、外部磁場Hの大きさを変化させて、上層の第2の磁化固定層17の磁化の大きさを測定した。
測定結果として、外部磁場Hの大きさと第2の磁化固定層17の磁化の大きさとの関係を、図7に示す。図7において、実線は真空加熱を行った試料3の場合を示し、破線は真空加熱を行っていない試料6の場合を示している。
図7より、真空加熱を行った試料3において、真空加熱を行っていない試料6と比較して、第2の磁化固定層17の磁化の保持特性が向上していることがわかる。
(真空加熱の温度)
試料3及び試料6と同様に、第2の反強磁性層18のPtMn層の厚さを10nmとして、真空加熱の温度を変えて記憶素子の試料を作製した。そして、図7に示したと同様に、印加する外部磁場の大きさを変えて、第2の磁化固定層17の磁化の向きが変化する磁界強度を求めた。
結果として、真空加熱の温度と、第2の磁化固定層17の磁化の向きが変化する磁界強度(任意単位)との関係を、図8に示す。図8において、真空加熱を行っていない試料(試料6)の結果を0℃の所にプロットしている。
図8より、真空加熱の加熱温度の範囲としては、室温以上かつ300℃までが適切であることがわかる。そして、真空加熱の温度が300℃を超えると、第2の磁化固定層17の磁化の向きの保持特性が急激に低下するので、加熱温度が高すぎるのは望ましくないことがわかる。
また、PtMn層の厚さが10nmの条件において、加熱を行わない場合よりも充分な効果が得られる温度領域としては、図8の破線よりも上の、50℃〜250℃の範囲内が望ましいことがわかる。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
10,30 記憶素子、11 下地層、12 第1の反強磁性層、13 第1の磁化固定層、14,16 トンネル絶縁層、15 記憶層、17 第2の磁化固定層、18 第2の反強磁性層、19 キャップ層、20,40 記憶装置(メモリ)、21 第1の配線、22 第2の配線、31,33,35,36,38 強磁性層、32,34,37 非磁性層

Claims (5)

  1. 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層と、
    前記記憶層に対して、トンネル絶縁層を介して下層に設けられ、磁化の向きが固定された第1の磁化固定層と、
    前記記憶層に対して、トンネル絶縁層を介して上層に設けられ、磁化の向きが固定された第2の磁化固定層と、
    前記第1の磁化固定層の下に設けられ、前記第1の磁化固定層の磁化の向きを固定する第1の反強磁性層と、
    前記第2の磁化固定層の上に設けられ、前記第2の磁化固定層の磁化の向きを固定し、前記第1の反強磁性層よりも厚さが薄い第2の反強磁性層とを含み、各層の積層方向に電流を流すことにより情報の記録が行われる記憶素子と、
    前記記憶素子の各層の積層方向に流す電流を、前記記憶素子に供給する配線とを含む
    記憶装置。
  2. 前記記憶素子の前記第2の磁化固定層の前記第2の反強磁性層側の界面が、真空中の加熱により平坦化されている、請求項1に記載の記憶装置。
  3. 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層と、前記記憶層に対して、トンネル絶縁層を介して設けられ、磁化の向きが固定された第1の磁化固定層及び第2の磁化固定層と、前記第1の磁化固定層及び前記第2の磁化固定層のそれぞれの磁化の向きを固定する第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層とを含む記憶素子と、前記記憶素子の各層の積層方向に流す電流を前記記憶素子に供給する配線とを含む記憶装置を製造する方法であって、
    下層側から、前記第1の反強磁性層、前記第1の磁化固定層、前記トンネル絶縁層、前記記憶層、前記トンネル絶縁層、前記第2の磁化固定層を、順次積層形成する工程と、
    前記第2の磁化固定層を形成した後に、真空中で加熱して、前記第2の磁化固定層の表面を平坦化する工程と、
    前記第2の磁化固定層の表面を平坦化する工程の後に、前記第2の磁化固定層の上に、前記第1の反強磁性層よりも厚さが薄い、前記第2の反強磁性層を形成する工程とを含んで、前記記憶素子を構成する各層を形成し、前記記憶素子を構成する各層をパターニングする加工を行う
    記憶装置の製造方法。
  4. 前記真空中で加熱して、前記第2の磁化固定層の表面を平坦化する工程を、300℃以下の温度で行う、請求項3に記載の記憶装置の製造方法。
  5. 前記真空中で加熱して、前記第2の磁化固定層の表面を平坦化する工程を、50℃〜250℃の範囲内の温度で行う、請求項3に記載の記憶装置の製造方法。
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