JP2012012725A - パラ型全芳香族コポリアミド繊維およびそれを含む防弾衣 - Google Patents

パラ型全芳香族コポリアミド繊維およびそれを含む防弾衣 Download PDF

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Abstract

【課題】防弾性能の高いパラ型芳香族コポリアミド繊維およびそれを含む防弾衣を提供する。
【解決手段】特定の分子構造を有するパラ型全芳香族コポリアミドを用いて、得られる繊維の結晶サイズを特定範囲内とし、同時に、特定範囲の引張強度を有する繊維とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、パラ型全芳香族コポリアミド繊維に関する。さらに詳しくは、特定の分子構造を有するパラ型全芳香族コポリアミドからなり、特定の結晶サイズおよび引張強度を有し、その結果、防弾性能に優れた布帛を得ることのできるパラ型全芳香族コポリアミド繊維およびそれを含む防弾衣に関する。
従来、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを主成分としてなるパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、その強度、高弾性率、高耐熱性等の特徴を有することから、様々な産業資材用途として幅広く用いられている。特に、防弾・防刃材といった防護衣料用途においては、その高い性能から大変有益に用いられており、さらなる安全性を求めて性能の向上が求められている。
代表的なパラ型全芳香族ポリアミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(以下PPTAと記す)繊維が知られており、PPTA繊維は前述の特徴を持つことから、幅広い用途で使用されている。しかし、PPTAポリマーは、固有粘度(以下IVと記す)が一定値以上になると汎用の有機溶剤に不溶となるため、製糸する場合においては、汎用の有機溶剤中で重合したポリマーを一度単離し、その後、単離したポリマーを濃硫酸に溶解してドープを作成せねばならず、このため、安全面や環境面等において問題があった。さらに、繊維物性に関しても、引張強度や耐薬品性、耐光性等が十分高いものではなく、さらに、擦過等により容易に繊維がフィブリル化する等、幾つかの問題があった。
そこで、濃硫酸を用いることなく紡糸でき、かつ、製糸工程における延伸や熱処理等により、高い引張強度や耐薬品性、耐光性、耐フィブリル性を有するパラ型全芳香族コポリアミド繊維を提供できる製造方法の開発がなされている。
このようなポリマー溶液をそのまま用いてパラ型全芳香族コポリアミド繊維を製造する方法においては、一般に等方性のポリマー溶液を紡糸口金から吐出し、延伸工程や熱処理工程等の工程を経ることで分子の配向や結晶の成長等を促進し、最終的に機械的物性に優れた繊維を得ることができる。
例えば、特許文献1および2には、汎用のアミド系溶媒を用いて重合し、当該アミド系溶媒をそのまま用いて、様々な分子構造を有するパラ型全芳香族コポリアミド繊維を製造する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1および2に記載されたパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、いまだ引張強度や圧縮特性等の高い機械的物性を満足できるものではなかった。また、防弾性能の向上については、全く記載がなされていない。
また特許文献3には、凝固工程を制御することにより、結晶サイズのバラつき等、繊維の微細構造の不均一性を抑制し、その結果、結節強度等の機械的物性に優れたポリベンザゾール繊維を得る方法が記載されている。しかしながら、ポリベンザゾール以外の繊維については検討がなされておらず、分子構造や製造工程が異なるパラ型全芳香族コポリアミド繊維への当該方法の適用は、困難なものである。
さらに特許文献4には、繊維の種類や撚りの有無、さらには織布や当該織布の構造について、弾丸を被弾した際の弾丸速度に対するエネルギー損失に着目し、その好適な組合せによる高い防弾性能を有する耐弾構造体やその形成方法が記載されている。しかしながら、繊維そのものの微細構造や物性等と防弾性能との関係については、まったく言及されていない。
特開平07−300534号公報 特開2006−207064号公報 特開2006−057214号公報 特開2007−040653号公報
本発明は、かかる従来技術を背景になされたものであり、その目的とするところは、防弾性能の高いパラ型全芳香族コポリアミド繊維およびそれを含む防弾衣を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、特定の分子構造を有するパラ型全芳香族コポリアミドを用いて、得られる繊維の結晶サイズを特定範囲内とし、同時に、特定の引張強度を有する繊維とすることにより、従来に比べて結節強度に優れたパラ型全芳香族コポリアミド繊維となり、さらにこれを用いて防弾衣とした場合には、高い耐弾性能を有することを見出し、本発明を完成するに到達した。
すなわち本発明は、下記化学構造式(1)、および下記化学構造式(2)の構造反復単位を含むパラ型全芳香族コポリアミドを含む繊維であって、
その赤道方向プロファイルにおける2θ=20.1°の結晶サイズが30〜70Åであり、引張強度が30cN/dtex以上であるパラ型全芳香族コポリアミド繊維である。

(ArおよびArは独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)

(Arは非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
また別の本発明は、前述のパラ型全芳香族コポリアミド繊維を含む防弾衣である。
本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維によれば、防弾性能に優れた布帛を得ることができる。このため、本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、防弾材として大変有用である。
また、本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、引張強度や結節強度に優れた繊維であるため、防弾材用途以外に、防刃材等といった防護衣料用途や、その他様々な産業資材用途において、非常に有用である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<パラ型全芳香族コポリアミド>
本発明に用いられるパラ型全芳香族コポリアミドとは、下記化学構造式(1)、および下記化学構造式(2)で示される構造反復単位からなり、1種類または2種類以上の2価の芳香族基が直接アミド結合により連結されているポリマーであって、一般に公知の方法に従って、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸ジクロライドと芳香族ジアミンの重縮合反応により得られる。このとき、該芳香族基は2個の芳香族環が酸素、硫黄、アルキル基で結合されたものであっても特に差し支えない。また、これらの2価の芳香環は、非置換またはメチル基やメチル基等の低級アルキル基や、メトキシ基、または塩素基等のハロゲン基で置換されたものであっても、複素環等が結合されたものであっても特に差し支えはなく、その置換基の種類や置換基の数は特に限定されるものではない。

(ArおよびArは独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)

(Arは非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
本発明のパラ型前芳香族コポリアミド繊維中に含まれる上記構造反復単位を含むパラ型全芳香族ポリアミドは、繊維質量全体に対して、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
[構造反復単位の割合]
本発明に用いられるパラ型全芳香族コポリアミドは、前記化学構造式(1)と前記化学構造式(2)の構造反復単位の合計に対し、前記化学構造式(2)の構造反復単位が30〜90モル%であることが好ましく、さらに好ましくは35〜85モル%、最も好ましくは40〜80モル%である。
前記化学構造式(1)と前記化学構造式(2)の構造反復単位の合計に対して、前記化学構造式(2)の構造反復単位が30モル%未満の場合には、曳糸性や製糸工程通過性が著しく悪化するばかりでなく、得られる繊維の機械的物性が低くなる。また、前記化学構造式(2)の構造反復単位が90モル%を超える場合についても、曳糸性や製糸工程通過性の悪化、得られる繊維の物性が低くなる。
前記化学構造式(1)と前記化学構造式(2)の構造反復単位の合計に対して、前記化学構造式(2)の構造反復単位を30〜90モル%とするためには、例えば、後述するパラ型全芳香族コポリアミドの重合において、用いる芳香族ジアミンの内、前記化学構造式(2)を含む芳香族ジアミン、例えば5−アミノ−2−(4−アミノフェニレン)ベンズイミダゾールを、重合に用いる芳香族ジアミン全量に対して、30〜90モル%用いる方法等が挙げられる。
<パラ型全芳香族コポリアミド繊維>
以下、本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維の物性について説明する。
[結晶サイズ]
本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、その赤道方向プロファイルにおける2θ=20.1°の結晶サイズを30〜70Åの範囲とすることが必須であり、さらに好ましくは30〜60Å、最も好ましくは30〜50Åの範囲である。
繊維の赤道方向プロファイルにおける2θ=20.1°の結晶サイズが30Å未満の場合には、目標の引張強度が達成できても、高い結節強度が得られず、ひいては、布帛とした場合の防弾性能も向上しない。一方、本発明のポリマーや方法では、繊維の赤道方向プロファイルにおける2θ=20.1°の結晶サイズが70Åを超える場合は、実現することが困難である。
繊維の赤道方向プロファイルにおける2θ=20.1°の結晶サイズを30〜70Åとするためには、例えば下記のような方法が挙げられ、これらを組み合わせることにより実現することができる。
(1)後述する繊維束の延伸工程において、延伸倍率を1.3〜2.0倍とし、その際の単糸あたりの延伸張力を10〜25mN/filとする。
(2)後述する繊維束の熱処理工程において、単糸あたりの張力を4〜10mN/filとする。
[引張強度]
本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、引張強度を30cN/dtex以上とすることが必須であり、さらに好ましくは31cN/dtex以上、最も好ましくは32cN/dtex以上である。
繊維の引張強度が30cN/dtex未満の場合には、目標とする繊維中の結晶サイズが達成できたとしても、高い結節強度が得られず、ひいては、布帛とした場合に高い耐弾性能を得ることが困難となる。
繊維の引張強度を30cN/dtex以上にするためには、例えば下記のような方法が挙げられ、これらを組み合わせることにより実現することができる。
(1)後述する重合工程において、得られるパラ型全芳香族コポリアミドポリマーの固有粘度を4.5〜7とする。
(2)後述する繊維束の延伸工程において、その延伸倍率を1.3〜2.0倍とし、その際の単糸あたりの延伸張力を10〜25mN/filとする。
[単糸繊度]
本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維の単糸繊度は、1〜3dtexの範囲とすることが好ましい。単糸繊度が1dtex未満の繊維は、高い延伸倍率が必要となり達成することが困難である。一方、単糸繊度が3dtexを超える場合、単糸繊度が太く水洗工程において繊維中からの脱溶媒が困難となる等の問題がある。
[単糸数]
本発明のパラ型全芳香族コポリアミドの単糸数は、50〜1000本の範囲とすることが好ましい。単糸数が50未満の場合には、繊維の繊度が小さいため、繊維を使用するにあたっては合糸等の別の工程が必要となる。一方で、1000を超える場合には、単糸数が増えることに起因して、凝固不良等の問題が発生する他、走行する繊維束のハンドリング性も悪化するため、得られる繊維の品質および生産性の両者において好ましくない。
<パラ型全芳香族コポリアミドの製造方法>
本発明に用いられる、上記化学構造式(1)、および上記化学構造式(2)の構造反復単位を含むパラ型全芳香族コポリアミドは、公知の方法により重縮合反応を行うことにより得られる。具体的には、アミド系極性溶媒を重合溶媒として、これに芳香族ジアミンを溶解させた後、この溶液に芳香族ジカルボン酸ジクロライドを添加して重縮合反応を行う。
[パラ型全芳香族コポリアミドの原料]
〔芳香族ジカルボン酸ジクロライド〕
本発明に用いられるパラ型全芳香族コポリアミドの原料となる芳香族ジカルボン酸ジクロライドとしては、例えば、テレフタル酸ジクロライド、2−クロロテレフタル酸ジクロライド、3−メチルテレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド等が挙げられる。これらの中では、汎用性や繊維の機械的物性等の面から、テレフタル酸ジクロライドが最も好ましい。またこれら芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、1種類のみを用いても、あるいは、2種類以上を併用してもよく、その場合の組成比は特に限定されるものではない。
〔芳香族ジアミン〕
本発明に用いられるパラ型全芳香族コポリアミドの原料となる芳香族ジアミンとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、5−アミノ−2−(4−アミノフェニレン)ベンズイミダゾール、パラビフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ジクロロパラフェニレンジアミン等が挙げられる。本発明においては、これらに限定されるものではなく、芳香環に置換基がついていたり、その他複素環等がついていたりしても差し支えない。
本発明に用いられるパラ型全芳香族コポリアミドの原料としては、上記化学構造式(1)で示される構造反復単位と上記化学構造式(2)で示される構造反復単位とをそれぞれ構成するため、少なくとも2種類以上の芳香族ジアミン用いる。その組み合わせとしては、汎用性や繊維の機械的物性、曳糸性等の面から、パラフェニレンジアミンと5−アミノ−2−(4−アミノフェニレン)ベンズイミダゾールとの組み合わせが最も好ましい。その組成比は特に限定されるものではないが、全芳香族ジアミン量に対して、5−アミノ−2−(4−アミノフェニレン)ベンズイミダゾールを30〜90モル%とすることが好ましく、さらに好ましくは、35〜85モル%、最も好ましくは、40〜80モル%とする範囲である。
[溶媒]
パラ型全芳香族コポリアミドの重合に用いられるアミド系極性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと記す)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられるが、汎用性、有害性、取り扱い性、パラ型全芳香族コポリアミドポリマーに対する溶解性等の観点から、NMPが最も好ましい。
本発明においては、重合により得られるパラ型全芳香族コポリアミドポリマーの固有粘度は特に限定させるものではないが、得られる繊維の機械的物性等の観点から4.5〜7.0に調整することが好ましい。
なお、本発明におけるポリマーの固有粘度とは、重合後のポリマー溶液から単離し乾燥したポリマーを98%濃度の濃硫酸中に溶解して、ポリマー濃度=0.5g/dLの溶液を調製し、オストワルド粘度計にて30℃で測定した固有粘度をいう。
〔中和反応〕
反応終了後、重縮合反応により系内に塩酸が発生し系内が酸性になるため、中和する目的で、水酸化カルシウム等のアルカリを添加する。中和反応により発生する塩化カルシウムは、生成したポリマーの溶媒への溶解を高める溶解助剤として、そのまま用いることができる。このため、系内から除去する必要はない。
〔重合後処理等〕
得られたパラ型全芳香族コポリアミドポリマーは、NMP等のアミド系極性溶媒に溶解したポリマー溶液であり、単離することなくそのまま、製糸工程で用いることができる。このとき、パラ型全芳香族コポリアミドポリマーの濃度は、ポリマー溶液の粘度や安定性に著しく影響し、ひいては、後の製糸工程における曵糸性等に大きく影響する。このため、ポリマー濃度は、2〜10質量%の範囲に調整することが好ましい。ポリマー濃度や粘度調整をするために、得られたポリマー溶液にNMP等のアミド系極性溶媒を適量添加することができる。
<パラ型全芳香族コポリアミド繊維の製造方法>
次に、本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維の製造方法について説明する。繊維の製造にあたっては、先に得られたパラ型全芳香族コポリアミドのポリマー溶液をそのまま用いることも可能であり、ハンドリング性や紡糸口金からの吐出安定性を考慮し、80〜120℃に加熱したパラ型全芳香族コポリアミドの溶液を用いる。
[凝固工程]
先ず、公知の半乾半湿式法を適用し、紡糸口金からエアギャップを介してポリマー溶液を凝固液中に吐出して凝固させる凝固工程を実施する。
〔紡糸口金の孔径〕
用いる紡糸口金の孔径は特に限定されるものではないが、吐出安定性や曳糸性等の観点から、0.05〜0.3mmとすることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.25mmの範囲とする。
〔紡糸口金の孔数〕
紡糸口金の孔数は、50〜1000とすることが好ましく、さらに好ましくは100〜500の範囲とする。孔数が50未満の場合には、得られた繊維の繊度が小さく、得られた繊維を使用するにあたって合糸等の別の工程が必要になり、生産性が悪くなる。一方で、1000を超える場合には、単糸数が増えることに起因して、単糸毎の均一な凝固が困難となり、凝固不良等の問題が発生して得られる繊維の品質が低下する他、走行する繊維束のハンドリング性も悪化するため、生産面においても好ましくない。
〔紡糸ドラフト〕
紡糸ドラフトは、特に限定されるものではないが、得られる繊維の機械的物性や製糸工程における工程通過性、また得られる繊維の単糸繊度を調整する等の観点から、1.5〜8の範囲とすることが好ましい。
なおここで言う「紡糸ドラフト」とは、ポリマードープが紡糸口金から吐出される際の線速度に対する、凝固工程後に配置した引き取りローラーでの引き取り速度の割合を表す。
[延伸工程]
凝固工程を実施して凝固糸束を得た後は、得られた凝固糸束を延伸に付す延伸工程を実施する。延伸にあたっては、例えば、高濃度のNMP水溶液中で繊維束を可塑化し、可塑化状態にして行うことができる。
延伸工程における延伸倍率は特に限定されるものではないが、得られる繊維の機械的物性や製糸工程における工程通過性、また得られる繊維の単糸繊度を調整する等の観点から、1.3〜2.0倍の範囲とすることが好ましい。
また本延伸工程における延伸張力についても特に限定されるものではないが、繊維中の分子配向や得られる繊維の機械的物性、製糸工程における工程通過性等の観点から、単糸あたりの張力を10〜25mN/filの範囲とすることが好ましい。
[水洗工程]
延伸後の繊維束は、高濃度のNMPを含むため、繊維束からNMPを除く目的で水洗を行う。繊維束の水洗方法については、特に限定されるものではなく、公知の水洗方法をそのまま適用することができる。水洗後の繊維束中の残存溶媒量は、特に限定されるものではないが、乾燥工程や熱処理工程での工程通過性や最終的に得られる繊維の機械的物性等の観点から3000ppm以下にすることが好ましい。
[乾燥工程]
水洗後の繊維束は、多くの水分を含むため、繊維束から水分を除くために乾燥を行う。繊維束の乾燥方法については、特に限定されるものではなく、公知の乾燥方法をそのまま適用することができる。乾燥する際の温度は、水分が十分に除去できる温度であれば特に限定されるものではないが、乾燥効率や乾燥による繊維の劣化等の観点から、100〜200℃の範囲とすることが好ましい。
[熱処理工程]
最後に、高配向化、高結晶化する目的で、繊維束に熱処理を行う。繊維束の熱処理方法については特に限定されるものではなく、公知の熱処理方法をそのまま適用することができるが、最終的に得られる繊維の機械的物性等の観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、その際の酸素濃度を1000ppm以下にすることが好ましい。
また熱処理温度は、特に限定されるものではないが、最終的に得られる繊維の結晶サイズや機械的物性等の観点から、350〜500℃の範囲とすることが好ましい。また熱処理工程における熱処理張力は、特に限定されるものではないが、熱処理工程での工程通過性や最終的に得られる繊維の機械的物性等への観点から、4〜10mN/filの範囲とすることが好ましい。
本発明においては、上記工程を実施すれば、重合および製糸におけるその他の工程は特に限定されるものではない。熱処理後の繊維束は、使用する用途等に応じて油剤や加工剤等を付与しても特に差し支えない。なお、各工程における条件は特に限定されるものではなく、公知の工程条件を基に、曳糸性や工程通過性、得られる繊維の機械的物性、品位等の観点から、適宜調整することができる。
以下、本発明を実施例等によりさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これに何等限定されるものではない。
<測定・評価方法>
実施例および比較例においては、下記の項目について、下記の方法によって測定・評価を行った。
(1)ポリマー固有粘度(IV)
重合により得られたポリマーを単離し乾燥後、濃硫酸に溶解し、以下の条件で測定を実施した。
[測定条件]
温度 :30℃
ポリマー濃度 :0.5g/dL
粘度計 :オストワルド粘度計
(2)繊維の繊度
得られた繊維を、公知の検尺機を用いて100m巻き取り、その質量を測定した。得られた質量に100を乗じた値を10000mあたりの質量、即ち繊度(dtex)として算出した。
(3)繊維の引張強度、破断伸度、弾性率
引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)により、糸試験用チャックを用いて、ASTM D885の手順に基づき、以下の条件で測定を実施した。
[測定条件]
温度 :室温
試験片 :75cm
試験速度 :250mm/分
チャック間距離 :500mm
(4)繊維の結節強度
引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)により、糸試験用チャックを用いて、JIS L1013の手順に基づき、以下の条件で測定を実施した。
[測定条件]
温度 :室温
試験片 :75cm
試験速度 :250mm/分
チャック間距離 :500mm
(5)繊維の配向度、結晶化度、結晶サイズ
X線回折装置(リガク社製、商品名:RINT TTRIII)を用い、得られた繊維の配向度、さらに赤道方向プロファイルにおける2θ=20.1°の結晶化度、および結晶サイズを、それぞれ測定した。
(6)織布の耐弾性
得られた繊維を用いて平織りの織布を作製し、さらにそれを複数枚積層させたパネルを作製した。このパネルを固定し、下記条件により耐弾テストを実施し、耐弾性の指標の1つであるV50(m/s)を算出した。なおここで言うV50とは、弾丸が50%の確率で、織布を積層したパネルを貫通するときの弾丸の初速を意味する。
[測定条件]
距離 :10m
弾丸種 :9mmDM41
<実施例1>
[パラ型全芳香族コポリアミドの製造]
公知の方法により、NMPに溶解したパラフェニレンジアミン16.2質量部と5−アミノ−2−(4−アミノフェニレン)ベンズイミダゾール78.3質量部に、テレフタル酸ジクロライド100質量部を添加して重縮合反応を行い、パラ型全芳香族コポリアミドポリマー溶液を得た。このときのポリマー濃度は5質量%、ポリマーIVは5.26であった。
[パラ型全芳香族コポリアミド繊維の製造]
次に、孔径0.18mm、孔数が150の紡糸口金を105℃に加熱した後、105℃に加熱したポリマー溶液を吐出し、半乾半湿式法により10mmのエアギャップを介して、NMP濃度が40質量%、50℃の水溶液で満たした凝固浴を通過させ、凝固させた。このときの紡糸ドラフトは、4.3とした。
引き続き、得られた凝固糸束を、NMP濃度が70質量%、20℃の水溶液で満たした可塑化浴に通過させて可塑化状態にし、次いで可塑化延伸を行った。可塑化延伸倍率は1.60倍、また延伸張力は15.0mN/filとした。
延伸工程通過後の繊維束は十分に水洗し、200℃の乾燥ローラーにて乾燥を行うことにより、乾燥糸を得た。
その後、非接触熱処理装置を用い、炉内酸素濃度を300ppm、炉内温度を460℃、熱処理時の張力を6.3mN/filの条件で熱処理を行い、最後にワインダーで巻き取り、最終的にパラ型全芳香族コポリアミド繊維を得た。
得られたパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、繊度が273dtex、フィラメント数が150であった。得られた繊維の諸物性を表1に示す。
次に、得られた繊維を、経緯の織り密度が41本/inchとなるように製織し、目付けが87g/mの平織りの織布を得た。この織布を32枚積層して目付けが2780g/mのパネルを作製し、これを用いて耐弾性テストを行い、V50を算出した。結果を表1に示す。
<実施例2>
延伸工程における延伸倍率を1.55倍、延伸張力を13mN/dtexとし、また熱処理工程における張力を5.0mN/filとした以外は、実施例1と同じ方法でパラ型全芳香族コポリアミド繊維を得た。得られたパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、繊度が285dtex、フィラメント数が150であった。得られた繊維の諸物性を表1に示す。
次に、得られた繊維を、経緯の織り密度が40本/inchとなるように製織し、目付けが88g/mの平織りの織布を得た。この織布を32枚積層して目付けが2800g/mのパネルを作製し、これを用いて耐弾性テストを行い、V50を算出した。結果を表1に示す。
<比較例1>
延伸工程における延伸倍率を1.45倍、延伸張力を10mN/dtexとし、また熱処理工程における張力を2.0mN/filとした以外は、実施例1と同じ方法でパラ型全芳香族コポリアミド繊維を得た。得られたパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、繊度が303dtex、フィラメント数が150であった。得られた繊維の諸物性を表1に示す。
次に、得られた繊維を、経緯の織り密度が39本/inchとなるように製織し、目付けが90g/mの平織りの織布を得た。この織布を31枚積層して目付けが2790g/mのパネルを作製し、これを用いて耐弾性テストを行い、V50を算出した。結果を表1に示す。
<比較例2>
延伸工程における延伸倍率を1.50倍、延伸張力を12mN/dtexとし、また熱処理工程における張力を2.3mN/filとした以外は、実施例1と同じ方法でパラ型全芳香族コポリアミド繊維を得た。得られたパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、繊度が299dtex、フィラメント数が150であった。得られた繊維の諸物性を表1に示す。
次に、得られた繊維を、経緯の織り密度が39本/inchとなるように製織し、目付けが87g/mの平織りの織布を得た。この織布を32枚積層して目付けが2780g/mのパネルを作製し、これを用いて耐弾性テストを行い、V50を算出した。結果を表1に示す。
<比較例3>
延伸工程における延伸倍率を1.42倍、延伸張力を8mN/dtexとし、また熱処理工程における張力を6.5mN/filとした以外は、実施例1と同じ方法でパラ型全芳香族コポリアミド繊維を得た。得られたパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、繊度が310dtex、フィラメント数が150であった。得られた繊維の諸物性を表1に示す。
次に、得られた繊維を、経緯の織り密度が38本/inchとなるように製織し、目付けが92g/mの平織りの織布を得た。この織布を31枚積層して目付けが2850g/mのパネルを作製し、これを用いて耐弾性テストを行い、V50を算出した。結果を表1に示す。
本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、防弾材として大変有用な繊維となる。また、本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維は、引張強度や結節強度に優れることから、様々な産業資材としても有用であり、防弾材用途以外に、防刃材等の防護衣料用途において、特に有用である。

Claims (5)

  1. 下記化学構造式(1)、および下記化学構造式(2)の構造反復単位を含むパラ型全芳香族コポリアミドを含む繊維であって、
    その赤道方向プロファイルにおける2θ=20.1°の結晶サイズが30〜70Åであり、引張強度が30cN/dtex以上であるパラ型全芳香族コポリアミド繊維。

    (ArおよびArは独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)

    (Arは非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
  2. 単糸の繊度が1〜3dtexである請求項1記載のパラ型全芳香族コポリアミド繊維。
  3. 単糸数が50〜1000本である請求項1または2記載のパラ型全芳香族コポリアミド繊維。
  4. 前記パラ型全芳香族コポリアミドは、前記化学構造式(1)と前記化学構造式(2)の構造反復単位の合計に対して、前記化学構造式(2)の構造反復単位が30〜90モル%である請求項1〜3いずれか記載のパラ型全芳香族コポリアミド繊維。
  5. 請求項1〜4いずれか記載のパラ型全芳香族コポリアミド繊維を含む防弾衣。
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