オキシクロザニド(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’,6−ペンタクロロベンズアニリド)は下記の式(6)で示される化合物であり、動物の寄生虫駆除剤として、ウシの成体肝臓吸虫類(ファスシオラ属;Fasciola sp.)の駆除等に用いられる。今回、抗微生物活性を有することが初めて見いだされ、後述するように、枯草菌(Bacillus subtilis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)等の細菌類、クラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)、オウレオバシディウム プルランス(Aureobasidium pullulans)等のカビ類に対し、抗菌活性を有する。
本発明の工業用防腐・防汚組成物において、オキシクロザニドは市販品を用いてもよく、あるいは公知技術に従って製造したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。なお、環境中の細菌類、真菌類等微生物に対し、良好な防腐・防汚効果を付与するためには、本発明の工業用防腐・防汚組成物には、組成物全量に対し0.1重量%〜40重量%含有させることが好ましく、1重量%〜40重量%含有させることがより好ましい。
本発明の工業用防腐・防汚組成物では、上記のオキシクロザニドに加えて、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物、およびこれらの塩、ならびにピリチオンおよびその金属塩よりなる群から選択される1種または2種以上の抗菌性化合物を併用してもよい。該抗菌性化合物を併用することにより、抗菌スペクトルが拡大し、かつ抗菌活性が相乗的に向上する。
イソチアゾリン系化合物は、次の式(1)で示される。
[式中、R1は水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、R2およびR3は同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
式(1)中、R1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」の炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜14の炭化水素基がより好ましく、たとえば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基等が挙げられる。
アルキル基としては、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1−エチル−1−メチルプロピル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、2,2−ジメチルペンチル、n−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等の炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、たとえば、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−へキセニル、2−へキセニル、3−へキセニル、4−へキセニル、5−へキセニル等の炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、たとえば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−へキシニル、2−へキシニル、3−へキシニル、4−へキシニル、5−へキシニル等の炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等の炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
アラルキル基としては、たとえば、ベンジル、フェニルエチル、ナフチルメチル等の炭素数7〜14のアラルキル基が挙げられる。
上記の「置換されていてもよい炭化水素基」の置換基としては、水酸基;塩素、フッ素、臭素およびヨウ素のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ヘキサノイル等の炭素数1〜6のアシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基;ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ等の炭素数7〜14のアラルキルオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基;フェニルチオ等の炭素数6〜20のアリールチオ基等が挙げられる。上記炭化水素基の前記置換基は同一または異なっていてもよく、1〜5個、好ましくは1〜3個が置換していてもよい。
R1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、無置換の炭化水素基が好ましく、その中でもアルキル基またはシクロアルキル基が好ましい。当該アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基およびn−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル等の炭素数8のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチルがさらに好ましい。シクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシルがより好ましい。
本発明において、上記式(1)中、R1で示される基としては、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基、およびn−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル等の炭素数8のアルキル基がさらに好ましく、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチルが特に好ましい。
式(1)中、R2またはR3で示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、これらの中でも塩素原子が好ましい。
また、R2またはR3で示される「置換されていてもよい炭化水素基」は、R1で示される基について上記した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様であるが、無置換の炭化水素基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
本発明において、上記式(1)中、R2およびR3で示される基としては、同一または異なって、それぞれ水素原子またはハロゲン原子が好ましく、水素原子または塩素原子がより好ましい。
本発明において用い得るイソチアゾリン系化合物の具体例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。これらのうち、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましく、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが特に好ましい。
本発明において、イソチアゾリン系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
ベンゾイソチアゾリン系化合物は、次の式(2)で示される。
[式中、A1環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Yは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
式(2)中、A1環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」の置換基としては、水酸基;塩素、フッ素、臭素およびヨウ素のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;ブタノイル、オクタノイル、デカノイル等の炭素数1〜10のアシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基;ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ等の炭素数7〜14のアラルキルオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基;フェニルチオ等の炭素数6〜20のアリールチオ基等を挙げることができるが、ハロゲン原子およびメチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。これらの置換基は同一または異なっていてもよく、ベンゼン環に1〜4個、好ましくは1個または2個置換されていてもよい。なお、A1環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」としては、無置換のベンゼン環が好ましい。
式(2)中、Yで示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられるが、無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)が特に好ましい。
本発明において、式(2)中、Yで示される基としては、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)が特に好ましい。
ベンゾイソチアゾリン系化合物の好適な具体例としては、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。
本発明において、ベンゾイソチアゾリン系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
ベンゾイミダゾール系化合物は、次の式(3)で示される。
[式中、A2環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Zは−NHCOOR4(式中、R4は水素原子またはアルキル基を示す。)で示される基または置換されていてもよい5員または6員の含窒素複素環基を示す。]
上記式(3)中、A2環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」に含まれ得る置換基としては、上記したA1環の置換基と同様のものを挙げることができるが、ハロゲン原子、およびメチル、エチル、プロピル、ブチル等炭素数1〜4のアルキル基が好ましいものとして挙げられる。これらの置換基は同一または異なって、A2環で示されるベンゼン環に1〜4個、好ましくは1個または2個含まれ得る。なお、A2環で示される置換されていてもよいベンゼン環としては、置換されていないベンゼン環が好ましい。
上記式(3)中、Zが示す−NHCOOR4で示される基において、R4で示されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−へキシル、n−ヘプチルおよびn−オクチル等の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられ、それらのうち、メチル、エチル、n−プロピル等の炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
また式(3)中、Zで示される置換されていてもよい5員または6員の含窒素複素環基としては、1〜4個の窒素原子を環構成原子として含有するか、あるいは1〜2個の窒素原子に加えて酸素原子および硫黄原子から選ばれた1個のヘテロ原子を環構成原子として含有する5員または6員の単環式複素環基や、この5員または6員の含窒素複素環にベンゼン環または5員環が縮合した縮合複素環基が挙げられる。5員または6員の含窒素単環式複素環基としては、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル等のピリジル基;2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル等のチアゾリル基;3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル等のイソチアゾリル基;1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル等のイミダゾリル基;1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル等のピロリル基;2−ピロリニル、3−ピロリニル等のピロリニル基;フラザニル基;1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル等のピロリジニル基;2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル等のイミダゾリジニル基;1−ピラゾリジニル等のピラゾリジニル基;5−ピラゾリル等のピラゾリル基;2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル等のオキサゾリル基;3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル等のイソオキサゾリル基;1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリル等のテトラゾリル基;2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル等のピリミジニル基;3−ピリダジニル、4−ピリダジニル等のピリダジニル基;2−ピラジニル、3−ピラジニル等のピラジニル基;1,2−チアジン−3−イル、1,2−チアジン−4−イル、1,3−チアジン−2−イル、1,3−チアジン−4−イル、1,4−チアジン−2−イル、1,4−チアジン−3−イル等のチアジニル基;1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、3−ピペラジニル等のピペラジニル基;1,2,3−チアジアジン−4−イル、1,2,3−チアジアジン−5−イル、1,2,3−チアジアジン−6−イル、1,2,4−チアジアジン−3−イル、1,3,4−チアジアジン−2−イル等のチアジアジニル基;1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,2,3−オキサジアゾール−4−イル、1,2,3−オキサジアゾール−5−イル等のオキサジアゾリル基;1,2,3−チアジアゾール−4−イル、1,2,3−チアジアゾール−5−イル等のチアジアゾリル基;1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル等のトリアゾリル基;2−チオモルホリニル、3−チオモルホリニル、4−チオモルホリニル、5−チオモルホリニル、6−チオモルホリニル等のチオモルホリニル基;2−モルホリニル、3−モルホリニル、4−モルホリニル、5−モルホリニル、6−モルホリニル等のモルホリニル基;2−オキソイミダジニル等のオキソイミダジニル基;1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン−1−イル、1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン−4−イル等のジオキソトリアジニル基;1−ピペリジル、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル等のピペリジル基などが挙げられる。上記縮合複素環基としては、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル等のキノリル基;3−イソキノリル、4−イソキノリル等のイソキノリル基;2−インドリル、3−インドリル等のインドリル基;1H−イソインドール−3−イル等のイソインドリル基;8−キノリジニル等のキノリジニル基;1H−プリン−6−イル、3H−プリン−6−イル等のプリニル基;3−シンノリニル、5−シンノリニル等のシンノリニル基;3−インダゾリル等のインダゾリル基;2−プテリジニル等のプテリジニル基;4−フタラジニル等のフタラジニル基;2−キナゾリニル、4−キナゾリニル等のキナゾリニル基;2−キノキサリニル、3−キノキサリニル等のキノキサリニル基;2−インドリジニル等のインドリジニル基;2H−1,3−ベンゾオキサジン−2−イル等のベンゾオキサジニル基;2−フェノチアジニル、3−フェノチアジニル等のフェノチアジニル基;2−フェナジニル、3−フェナジニル等のフェナジニル基;2−フェノキサジニル、3−フェノキサジニル、4−フェノキサジニル等のフェノキサジニル基などが挙げられる。上記複素環基のうち、5員含窒素複素環基が好ましく、特にチアゾリル基が好ましい。
上記複素環の置換基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;水酸基;アミノ基;ニトロ基;メルカプト基などが挙げられる。
Zで示される置換されていてもよい5員または6員の含窒素複素環基としては、無置換の5員または6員の含窒素複素環基が好ましく、無置換の5員の含窒素複素環基がより好ましく、チアゾリル基が特に好ましい。
本発明において、式(3)中、Zで示される基としては、−NHCOOR4(式中、R4は炭素数1〜8のアルキル基である。)で示される基または無置換の5員または6員の含窒素複素環基が好ましく、−NHCOOR4(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基である)で示される基または無置換の5員の含窒素複素環基がより好ましく、−NHCOOR4(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基である)で示される基またはチアゾリル基が特に好ましい。
ベンゾイミダゾール系化合物の好適な具体例としては、メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート、エチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
本発明において、ベンゾイミダゾール系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
ハロアセチレン系化合物は、次の式(4)で示される。
[式中、Xはハロゲン原子を示し、R5およびR6は同一または異なって、それぞれ水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、mは0または1の整数を示す。]
式(4)中、Xで示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、特にヨウ素原子が好ましい。
式(4)中、R5またはR6で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられる。中でも無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数3〜8のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらにより好ましく、n−ブチルが特に好ましい。
また、R5およびR6の一方が置換されていてもよい炭化水素基であり、他方が水素原子であることが好ましく、R5およびR6の一方が炭素数1〜10のアルキル基であり、他方が水素原子であることがより好ましく、R5およびR6の一方が炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)であり、他方が水素原子であることが特に好ましい。
式(4)中、mは0または1の整数を示し、mが0のとき、ハロアセチレン系化合物は酸アミド誘導体となり、mが1のときは、ハロアセチレン系化合物はカルバメート誘導体となる。これらのうち、mが1であるハロアセチレン系化合物のカルバメート誘導体が好ましい。
ハロアセチレン系化合物の具体例としては、mが0である場合のハロアセチレン系化合物の酸アミド誘導体として、3−クロロプロピオール酸アミド、N−メチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−エチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−クロロプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−クロロプロピオール酸アミド;3−ブロモプロピオール酸アミド、N−メチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−エチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−ブロモプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−ブロモプロピオール酸アミド;3−ヨードプロピオール酸アミド、N−メチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−エチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−ヨードプロピオール酸アミドなどが挙げられる。これらのうち、(N−置換−)3−ヨードプロピオール酸アミドが好ましく、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミドがより好ましい。
また、mが1である場合のハロアセチレン系化合物のカルバメート誘導体として、3−ヨード−2−プロピニル N−メチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−エチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−プロピルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−ヘキシルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−オクチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−シクロヘキシルカルバメート等の3−ヨード−2−プロピニル N−アルキルカルバメートなどが挙げられ、中でも3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートが好ましい。
本発明において、ハロアセチレン系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物は、次の式(5)で示される。
[式中、Y1、Y2、Y3およびY4は同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
式(5)中、Y1、Y2、Y3またはY4で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、特に塩素原子が好ましい。また、Y1、Y2、Y3またはY4で表される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられ、中でもメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
Y1、Y2、Y3およびY4としては、Y1、Y2、Y3およびY4のすべてがハロゲン原子であるか、Y1、Y2およびY3がハロゲン原子でかつY4が水素原子であるか、Y1およびY4がハロゲン原子でかつY2およびY3が水素原子であることが好ましく、Y1、Y2、Y3およびY4のすべてがハロゲン原子であることがより好ましく、Y1、Y2、Y3およびY4のすべてが塩素であることが特に好ましい。
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物の具体例としては、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラブロモテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,4−ジクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4−トリブロモテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド等が挙げられ、これらのうち、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドが特に好ましい。
本発明において、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
上記のイソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物およびテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物は、塩基性化合物の場合は酸との塩として用いてもよく、また、酸性化合物の場合は塩基との塩として用いてもよい。
酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
塩基との塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等の有機アミンとの塩などが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物およびこれらの塩は市販品を用いてもよく、あるいは公知技術に従って製造したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。
ピリチオン(1−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−チオン)は、下記の式(7)で示される。
本発明の防腐・防汚組成物には、ピリチオンおよびその金属塩より1種または2種以上を選択して用いることができるが、抗菌活性に優れる点で、金属塩を用いることが好ましい。ピリチオンの金属塩としては、アルカリ金属塩および2価の金属塩が好ましく用いられる。
ピリチオンのアルカリ金属塩は、たとえば下記の式(8)で表される。
[式中M1はアルカリ金属を示す。]
ピリチオンのアルカリ金属塩としては、ナトリウムピリチオン(上記式(8)においてM1=Na)が挙げられる。
また、ピリチオンの2価の金属塩は、たとえば下記の式(9)で表される。
[式中M2は2価の金属を示す。]
式(9)中M2で示される2価の金属としては、ピリチオンと錯体を形成し得る亜鉛等の第11族の金属や、遷移金属が好ましい。ピリチオンの2価の金属塩の好ましい例としては、ジンクピリチオン(M2=Zn)および銅ピリチオン(M2=Cu)が挙げられる。
上記のピリチオンおよびその金属塩は、市販品を用いてもよく、あるいは公知技術に従って製造したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。
上記抗菌性化合物より選択した1種または2種以上を併用する場合、本発明の工業用防腐・防汚組成物に、より広範な抗菌スペクトルと十分な抗菌活性を付与するためには、オキシクロザニドと上記抗菌性化合物より選択した1種または2種以上(2種以上の化合物を用いる場合は各化合物の合計量)の含有量比は、9:1〜1:9(重量比)とすることが好ましく、8:2〜2:8(重量比)とすることがより好ましい。また、剤形、適用対象や使用環境等にもよるが、オキシクロザニドの含有量としては、0.1重量%〜40重量%が好ましく、1重量%〜40重量%がより好ましい。上記抗菌性化合物より選択した1種または2種以上の含有量(2種以上を用いる場合は各化合物の合計量)としては、0.1重量%〜40重量%が好ましく、1重量%〜40重量%がより好ましい。
本発明の工業用防腐・防汚組成物は、溶剤に溶解させ、または界面活性剤もしくは溶解助剤等を用いて懸濁もしくは分散させて、液剤または懸濁剤もしくは分散剤として、あるいは界面活性剤により乳化して乳剤として提供することができる。その他、界面活性剤や固体担体を加えて、水和剤、フロアブル剤、粉剤等としても提供することができる。
本発明において用い得る溶剤としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネート等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、エチルビフェニル、ジエチルビフェニル、ソルベントナフサ等の芳香族系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等の極性有機溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら溶剤の中では、水、低級アルコール類および多価アルコール類が好ましく用いられる。
本発明において用い得る界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチエンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において用い得る溶解助剤としては、カプリン酸、アジピン酸等のカルボン酸類;アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル類;オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類などを挙げることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において用い得る固体担体としては、カオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物質;トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物;尿素等の合成有機物;炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類;合成含水酸化珪素等の合成無機物の微粉末あるいは粒状物などを挙げることができる。
本発明の工業用防腐・防汚組成物の調製は、5℃〜40℃にて行うことが好ましい。溶剤等への混合は、0.5時間〜5時間程度の処理により行うことが好ましい。界面活性剤、溶解助剤および固体担体は、組成物全量に対して、それぞれ0.1重量%〜10重量%、0.1重量%〜10重量%、および30重量%〜95重量%程度配合することができる。
本発明に係る工業用防腐・防汚組成物には、組成物の抗菌活性、安定性、安全性等に影響を与えない範囲で、他の防菌防黴剤や防藻剤等の他、pH調整剤、酸化防止剤、光安定化剤、消泡剤等の、一般的に製剤化に際して用いられる添加剤を添加することができる。
オキシクロザニドを単独で含有する工業用防腐・防汚組成物は、細菌類およびカビ類に対して良好な抗菌活性を有する。後述するように、細菌類では、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)等のグラム陽性球菌、環境中に常在する枯草菌(Bacillus subtilis)等に対して、特に良好な抗菌活性を示し、カビ類では、ムコール(Mucor)属(ケカビ)、クラドスポリウム(Cladosporium)属(クロカビ)、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属、アルテルナリア(Alternaria)属(ススカビ)等に対して、特に良好な抗菌活性を示す。
オキシクロザニドと、上記抗菌性化合物より選択した1種または2種以上を含有する工業用防腐・防汚組成物においては、さらに抗菌スペクトルの拡大が認められる。細菌類では、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、セラチア(Serratia)属、レジオネラ(Legionella)属等のグラム陰性桿菌;セレウス菌(Bacillus cereus)、クロストリジウム(Clostridium)属等のグラム陽性桿菌;ブランハメラ菌(Branhamella catarrhalis)等のグラム陰性球菌などに対しても、良好な抗菌活性が認められる。カビ類では、リゾプス(Rhizopus)属(クモノスカビ)等の接合菌類;アスペルギルス(Aspergillus)属(コウジカビ)、ペニシリウム(Penicillium)属(アオカビ)、アクレモニウム(Acremonium)属、フザリウム(Fusarium)属、グリオクラディウム(Gliocladium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属等の不完全菌類;ケトミウム(Chaetomium)属、ユーロチウム(Eurotium)属、ニューロスポラ (Neurospora)属(アカパンカビ)等の子嚢菌類などに対し、幅広く抗菌活性を有する。また、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、プロトミセス(Protomyces)属、タフリナ(Taphrina)属等の原生子嚢菌類;エンドミセス(Endomyces)属等の真正子嚢菌類;サッカロミセス(Saccharomyces)属等の半子嚢菌類;カンジダ(Candida)属等の子嚢菌酵母の不完全型;フィロバシディエラ(Filobasidiella)属等の異型担子菌類;ロドトルラ(Rhodotorula)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属等の担子菌酵母の不完全型;ロドスポリディウム(Rhodosporidium)属、スポリディオボルス(Sporidiobolus)属、キサントフィロミセス(Xanthophyllomyces)属等の担子菌酵母など、酵母類に対しても、抗菌活性が認められる。
また、本発明の防腐・防汚組成物は、藍藻類(Cyanophyceae)、緑藻類(Chlorophyceae)、緑虫類(Euglenophyceae)、車軸藻類(Charophyceae)、黄金色藻類(Chrysophyceae)、黄緑藻類(Xanthophyceae)、珪藻類(Bacillariophyceae)等の微細藻類に対しても、幅広く良好な抑制作用を示し得るため、防藻効果も期待される。
従って、本発明の工業用防腐・防汚組成物は、製紙パルプ工場、冷却水循環工程等の種々の産業用水や、塗工紙、紙用塗工液、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、印刷インキ、プラスチック製品、セメント混和剤、シーリング剤等の各種工業製品の有害微生物の防除の用途において有効に用いることができる。より具体的には、製紙パルプ工場や冷却水循環工程のスライムコントロール剤、紙製品、樹脂製品の防菌防黴剤、塗料、合成ゴムラテックス、樹脂、インキ、シリコーンシーリング剤等の防菌防黴剤などとして有用である。
本発明の工業用防腐・防汚組成物は、適用対象、防除の対象となる微生物の種類(細菌類、カビ類、酵母、藻類等)や防除期間に応じて、添加量を適宜選択すればよいが、たとえば、スライムコントロール剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し抗菌性成分の総量として0.1mg〜500mg、好ましくは、0.5mg〜100mg、防腐剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し抗菌性成分の総量として1mg〜5,000mg、好ましくは、10mg〜1,000mg、防黴・酵母剤または防藻剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し抗菌性成分の総量として10mg〜50,000mg、好ましくは、100mg〜10,000mgとなるように添加すればよい。
以下に本発明について実施例により詳細に説明する。
[実施例1]
オキシクロザニド(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’,6−ペンタクロロベンズアニリド;和光純薬株式会社製)を、10重量%となるようにメチルカルビトールに添加して、室温にて30分間撹拌混合して調製し、白色の懸濁剤である工業用防腐・防汚組成物を得た。
実施例1および後述する実施例2〜28、比較例1〜9について、以下に示す方法により、抗菌活性の評価を行った。すなわち、試験菌として、細菌類では枯草菌(Bacillus subtilis IFO3513)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO12732)、大腸菌(Escherichia coli IFO3972)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa IFO3080)、セラチア菌(Serratia marcescens IFO3735)を、カビ類ではクロコウジカビ(Aspergillus niger IFO6341)、アオカビ(Penicillium citrinum IFO6352)、クラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides IFO6348)、アウレオバシディウム プルランス(Aureobasidium pullulans IFO6353)、アルテルナリア属(Alternaria sp.)、ムコール スピネッセンス(Mucor spinescens IFO6071)、グリオクラディウム ビレンス(Gliocladium virens IFO6355)を、酵母類ではロドトルラ ルブラ(Rhodotorula rubra IFO0907)、サッカロミセス セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae IFO0209)を用い、細菌類の場合は、実施例および比較例の各工業用防腐・防汚組成物をそれぞれ添加したグルコースブイヨン寒天培地(pH6.0)に、ミクロプランタ(佐久間製作所製)を用いて接種用細菌懸濁液を接種し、33℃で18時間培養した。カビ類および酵母類の場合は、前記と同様に、実施例および比較例の工業用防腐・防汚組成物をそれぞれ添加したグルコースブイヨン寒天培地(pH6.0)に、カビ胞子懸濁液または接種用酵母懸濁液を接種し、33℃で18時間培養し、さらに、28℃で2日間培養した。培養後、各菌の生育を観察し、最小発育阻止濃度(MIC)(μg/mL)を求めた。実施例1の工業用防腐・防汚組成物についての結果を表1に示す。
表1より明らかなように、実施例1の工業用防腐・防汚組成物は、枯草菌(Bacillus subtilis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して、それぞれ2μg/mLおよび3.9μg/mLのMICを示し、優れた抗菌活性が認められた。また、クラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)、アウレオバシディウム プルランス(Aureobasidium pullulans)、アルテルナリア属(Alternaria sp.)およびムコール スピネッセンス(Mucor spinescens)に対し、125μg/mL以下のMICを示し、良好な抗菌活性が認められた。
[実施例2〜28]
本発明の実施例2〜28の工業用防腐・防汚組成物の組成を表2に、比較例1〜9の工業用防腐・防汚組成物の組成を表3に示す。なお、以下の実施例および比較例の組成物の調製に際して、オキシクロザニドは上記と同じ和光純薬株式会社製を用いた。
イソチアゾリン系化合物としては、「ZONEN−MT」(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン50重量%含有、株式会社ケミクレア製)、「ケーソンLX1400」(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物14重量%含有、ロームアンドハース社製)、「ケーソン893T」(2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン99.5重量%含有、ロームアンドハース社製)を用いた。
ベンゾイソチアゾリン系化合物としては、「BIT」(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン80重量%含有、ダウケミカル社製)を用いた。
ベンゾイミダゾール系化合物としては、「コートサイド」(メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩10重量%含有、日本エンバイロケミカルズ株式会社製)を用いた。
ハロアセチレン系化合物としては、「IPBC」(3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメート99.4重量%含有、フォーカス社製)を用いた。
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物としては、スラカーブ(3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)の20重量%ジエチレングリコールモノメチルエーテル溶液(日本エンバイロケミカルズ株式会社製)を用いた。
また、ピリチオンの金属塩として、「スラオフ28」(ナトリウムピリチオン40重量%含有、日本エンバイロケミカルズ株式会社製)、および「スラオフ95」(ジンクピリチオン50重量%含有、日本エンバイロケミカルズ株式会社製)を用いた。
実施例および比較例の工業用防腐・防汚組成物は、表2および表3に示す組成に従い、各抗菌性化合物をメチルカルビトールに添加して、室温にて30分間撹拌混合して調製し、白色の懸濁剤または溶液剤として得た。
オキシクロザニドと上記所定の抗菌性化合物を併用する場合(実施例2〜28)の抗菌活性の評価は、オキシクロザニド、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物およびピリチオンの金属塩をそれぞれ単独で用いた場合(実施例1および比較例1〜9)のMIC値から、前記各実施例の防腐・防汚組成物について次式によりMICの理論値を算出し、実際に測定したMIC値をそれらと比較することにより行った。MICの実測値がその理論値の計算値よりも小さくなる場合、すなわち「実測値/計算値」が1より小さくなる場合には、上記の各成分を単独で用いた場合の代数和より抗菌活性が増強されているといえるため、相乗効果が認められると評価した。
MICの理論値=CA×x/100+CB×y/100
CA;オキシクロザニドを単独で用いた場合(実施例1)のMIC値
CB;イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物およびピリチオンの金属塩をそれぞれ単独で用いた場合(比較例1〜9)のMIC値
x;抗菌性成分中においてオキシクロザニドの占める割合(重量%)
y;抗菌性成分中において、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物またはピリチオンの金属塩の占める割合(重量%)
抗菌活性の評価結果を表4〜表12に示した。各表中の「100/0」、「75/25」、「50/50」、「25/75」および「0/100」は、オキシクロザニドと、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物またはピリチオンの金属塩との配合重量比を示す。また、以下の各表には、オキシクロザニドおよび前記の各抗菌性化合物について、前記重量比で用いた場合に、少なくとも一以上の重量比において1000μg/mL未満のMIC値の得られた試験菌のみを示した。
表4は、オキシクロザニドと、イソチアゾリン系化合物として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1〜4および比較例1)についての評価結果を示す。
表4より明らかなように、実施例2〜4の工業用防腐・防汚組成物は、細菌類ならびにクロコウジカビ(Aspergillus niger)およびアオカビ(Penicillium citrinum)以外のカビ類に対して有効な抗菌活性を示した。そして、実施例4の組成物について、クラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)に対する場合を除き、抗菌活性の見られた前記細菌類およびカビ類に対してMICの実測値/計算値が1より小さく、オキシクロザニドおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例1)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。また、実施例4の組成物において、グリオクラディウム ビレンス(Gliocladium virens)に対し250μg/mLのMIC値が得られ、抗菌活性の相乗的な向上が見られた。
表5は、オキシクロザニドと、イソチアゾリン系化合物として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物を100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、5〜7および比較例2)についての評価結果を示す。
表5より明らかなように、実施例5〜7の組成物については、すべての試験菌に対して有効な抗菌活性が認められた。また、実施例5および6の組成物についてムコール スピネッセンス(Mucor spinescens)、実施例7の組成物について黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する場合を除き、試験した各細菌、カビおよび酵母に対してMICの実測値/計算値が1より小さく、オキシクロザニドおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン・5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン混合物をそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例2)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
表6は、オキシクロザニドと、イソチアゾリン系化合物として、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、8〜10および比較例3)についての評価結果を示す。
表6より明らかなように、実施例8〜10の組成物は、枯草菌(Bacillus subtilis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ならびに試験したカビ類および酵母類に対して、有効な抗菌活性を示した。また、ムコール スピネッセンス(Mucor spinescens)に対する場合を除き、抗菌活性の認められた前記試験菌に対してMICの実測値/計算値が1より小さく、オキシクロザニドおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例3)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
表7は、オキシクロザニドと、ベンゾイソチアゾリン系化合物として、1,2−ベンゾイソチアゾリン3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、11〜13および比較例4)についての評価結果を示す。
表7より明らかなように、実施例11〜13の組成物は、試験した細菌類、カビ類および酵母類に対して、有効な抗菌活性を示した。また、実施例11の組成物について、クロコウジカビ(Aspergillus niger)およびグリオクラディウム ビレンス(Gliocladium virens)、実施例13の組成物について枯草菌(Bacillus subtilis)およびクラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)に対する場合を除き、試験した各細菌、カビおよび酵母に対してMICの実測値/計算値が1より小さく、オキシクロザニドおよび1,2−ベンゾイソチアゾリン3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例4)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
表8は、オキシクロザニドと、ベンゾイミダゾール系化合物として、メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩を100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、14〜16および比較例5)についての評価結果を示す。
表8より明らかなように、実施例14〜16の組成物は、枯草菌(Bacillus subtilis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、試験した全カビ類ならびにロドトルラ ルブラ(Rhodotorula rubra)に対して有効な抗菌活性を示した。また、抗菌活性を示した前記試験菌に対しては、MICの実測値/計算値が1より小さく、オキシクロザニドおよびメチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩をそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例5)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
表9は、オキシクロザニドと、ハロアセチレン系化合物として、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートを100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、17〜19および比較例6)についての評価結果を示す。
表9より明らかなように、実施例17〜19の組成物は、枯草菌(Bacillus subtilis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ならびに試験したカビ類および酵母類のすべてに対して抗菌活性を示した。また、ムコール スピネッセンス(Mucor spinescens)に対する場合を除き、抗菌活性の認められた試験菌に対してMICの実測値/計算値が1より小さく、オキシクロザニドおよび3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例6)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
表10は、オキシクロザニドと、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物として、スラカーブ(3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)を100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、20〜22および比較例7)についての評価結果を示す。
表10より明らかなように、実施例20〜22の組成物は、試験した全菌類に対し抗菌活性を示した。また、実施例20〜22の組成物について黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、アウレオバシディウム プルランス(Aureobasidium pullulans)およびムコール スピネッセンス(Mucor spinescens)、実施例20および21の組成物についてアルテルナリア属(Alternaria sp.)、実施例20および22の組成物についてクラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)、ならびに実施例22の組成物について枯草菌(Bacillus subtilis)に対する場合を除き、試験した各細菌、カビおよび酵母に対しMICの実測値/計算値が1よりも小さく、オキシクロザニドおよびスラカーブをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例7)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
表11は、オキシクロザニドと、ピリチオンの金属塩として、ナトリウムピリチオンを100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、23〜25および比較例8)についての評価結果を示す。
表11より明らかなように、実施例23〜25の組成物は、セラチア菌(Serratia marcescens)以外の試験菌に対し、有効な抗菌活性を示した。また、実施例23〜25の組成物について黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびクラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)、実施例23の組成物について大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびアルテルナリア属(Alternaria sp.)、ならびに実施例24および25の組成物についてムコール スピネッセンス(Mucor spinescens)に対する場合を除き、抗菌活性の認められた試験菌に対しMICの実測値/計算値が1よりも小さく、オキシクロザニドおよびナトリウムピリチオンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例8)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
表12は、オキシクロザニドと、ピリチオンの金属塩として、ジンクピリチオンを100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、26〜28および比較例9)についての評価結果を示す。
表12より明らかなように、実施例26〜28の組成物は、すべての試験菌に対して有効な抗菌活性を示した。また、実施例26〜28の組成物について黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、実施例26および27の組成物についてセラチア菌(Serratia marcescens)、実施例26の組成物についてクラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)、およびアルテルナリア属(Alternaria sp.)、ならびに実施例27の組成物についてムコール スピネッセンス(Mucor spinescens)に対する場合を除き、試験したカビ、細菌および酵母に対しMICの実測値/計算値が1よりも小さく、オキシクロザニドおよびジンクピリチオンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例9)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
上述したように、本発明の実施例の防腐・防汚組成物においては、オキシクロザニドが、枯草菌(Bacillus subtilis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)等の細菌類や、クラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)、アウレオバシディウム プルランス(Aureobasidium pullulans)、アルテルナリア属(Alternaria sp.)およびムコール スピネッセンス(Mucor spinescens)等のカビ類に対して、抗菌活性を有することが認められた。また所定の抗菌性化合物を併用することにより、抗菌活性が相乗的に上昇し、細菌類並びにカビおよび酵母の真菌類に対し、幅広く抗菌活性の相乗的な向上が認められた。