JP2012011762A - 高撥水構造の形成方法 - Google Patents

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洋彦 鷲家
Koji Honda
幸司 本田
Teizo Isono
禎三 礒野
Yasuhiro Iwata
康弘 岩田
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Abstract

【課題】撥水剤の塗布や混練することなく、かつ特殊な加工設備・金型を必要とせず、簡単な工程で加硫ゴムの表面に高撥水構造を形成する方法を提供する。
【解決手段】ゴムの加硫成形工程において、メッシュシート2の構造をゴム組成物3の表面へ転写し、加硫ゴム表面に高撥水構造を形成する。メッシュシートのメッシュ数が150〜508メッシュである。メッシュシートのオープニングが20〜120μmである。メッシュシートのオープニングエリアが20〜50%である。
【選択図】図1

Description

本発明は、加硫成形工程において、メッシュシートの構造をゴム組成物の表面に転写することによって、撥水性に優れる加硫ゴム表面の形成方法に関する。
加硫ゴムは、自動者用部品等の工業的用途、履物・玄関マットの日用品用途等、幅広く使用されている。これらの加硫ゴム表面に雨水その他の水滴が付着すると、水滴が流れた跡などに汚れや埃を含み、乾燥後は汚れがひどくなる。そのため、加硫ゴムの表面に汚れ等を付着しにくくし、加硫ゴム自体の耐久性を向上させるため、加硫ゴム表面を撥水化する技術が求められている。
通常、スチレンブタジエンゴム(SBR)やニトリルゴム(NBR)などで構成されるゴム組成物は、その疎水基のため撥水性を有する。さらに、撥水性を高めようとする場合、従来からゴム組成物の表面にフッ素系撥水剤やシリコーン系撥水剤などを塗布し、後発的に撥水性を付与することが行われている。また、ゴム混練の段階で未加硫ゴムにフッ素化合物やシリコーン化合物などを内部添加、加硫させることにより 撥水性を付与することもできる。
さらに、汎用ゴム・樹脂などに撥水性樹脂の微粒子を混合・分散させた複合材料について、ゴム・樹脂を選択的に溶解する溶剤により溶解し、撥水性を発現させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、樹脂の分野では、数十nm〜数百nmの凹凸を刻みこんだ金型を樹脂材料に押し付けて構造を転写する技術、いわゆるナノインプリント技術を用いると、樹脂の表面を撥水性にすることができる。ナノインプリント技術においては専用の金型が必要であるが、熱可塑性樹脂の表面に市販の金網を押し付け、金網の凹凸を転写することにより、その表面を高撥水性・超撥水性にする技術が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
特開2007−77201号公報 特開2010−6024号公報 特開2010−12600号公報
しかしながら、ゴム組成物に撥水剤を塗布すると経時的に撥水剤が剥がれ落ちる。撥水性の化合物を混練する場合、その効果を向上させるために撥水剤を増量する必要があるため、ゴム組成物の特長であるゴム弾性が低下する。また、撥水性樹脂の微粒子を混合・分散させる方法は溶媒を使用する必要がある。そして、ナノインプリント技術はリソグラフィとエッチングを使う従来のパターン形成技術に比べて低コストではあるが、大面積で凹凸を形成するには高コストである。さらに、金網を用いて熱可塑性樹脂の基材表面に凹凸を転写する技術は、基材がそのガラス転移温度や融点以上になると軟化するため、耐久性に問題があった。
そこで、前記の諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。本発明は、加硫成形時に三次元網目構造を形成するゴム組成物に、撥水剤の塗布や混練することなく、かつ特殊な加工設備・金型を必要とせず、簡単な工程でゴム組成物の表面に高撥水構造を形成する方法を提供することを目的とする。
本発明は、前述の課題解決のために、ゴムの加硫成形工程において、メッシュシートの構造をゴム組成物の表面へ転写することを特徴とする高撥水構造の形成方法である(請求項1)。
さらに、メッシュシートのメッシュ径は150〜580メッシュであることがより好ましい(請求項2)。
メッシュシートのオープニングは20〜120μmであることがより好ましい(請求項3)。
メッシュシートのオープニングエリアが20〜50%であることがより好ましい(請求項4)。
ゴム組成物の原料がフッ素ゴムであることがより好ましい(請求項5)。
本発明により、前記の従来における諸問題を解決することができ、ゴム組成物の表面に、撥水剤の塗布や混練することなく、かつ特殊な加工設備・金型を必要とせず、簡単な工程で高撥水性の構造を形成する方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るゴムの加硫成形工程における金型の断面図である。 本発明の一実施形態に係る表面に高撥水構造を形成した加硫ゴムである。 実施例1のSEM観察像を示している。
以下に、本発明にかかる実施形態を添付の図を用いて説明する。なお、これらの添付図は、本発明の特徴を容易に理解するため、特徴部分を強調している。したがって、添付図中の各要素の相対的な大きさは、実際の大きさとは異なる場合があることに留意すべきである。
本明細書で用いる「加硫」とは、ゴムの分子間に三次元架橋構造を形成する工程を意味する。一般的に、硫黄による架橋を加硫、その他過酸化物などによるものを架橋と区別するが、本明細書では特に区別しない。
図1は本発明に係る加硫成形工程において、高撥水構造の形成方法の例を説明するための図である。図1は、金型(上型)1と金型(下型)4の間の中空部分にメッシュシート2を装填し、さらにゴム組成物3を充填した様子である。ゴム組成物3を金型の中空部分に流入するように配置し、金型に圧力を加えていくと、メッシュシート2のオープニング部分にゴム組成物3が流入する。
そのままの圧力を保持しながら、所定の加硫時間の経過後、金型(上型)1と金型(下型)4を開け、図2に示すメッシュシートの構造を転写することにより表面に高撥水構造を形成した加硫ゴム5を得る。メッシュシート2が加硫ゴム5の表面に付着する場合には、加硫ゴムからメッシュシート2を剥離し、加硫ゴム表面の高撥水構造を露出させる。
加硫成形の方法は、金型による成形方法が好ましく、例えば圧縮成形、トランスファー成形、インジェクション成形がある。また、フッ素ゴム、シリコーンゴム等、加硫成形後のオーブン加硫が必要なゴムは成形後、オーブン中で所定の時間加熱処理する。
加硫成形の温度は、ゴムが加硫する温度であれば何℃でも良く、通常120〜180℃の温度である。また、加硫成形時の圧力は、1MPa〜50MPa程度であり、成形時間は1〜60分程度である。
金型1と金型4はゴムの加硫成形工程における成形温度と成形圧力に耐える材料で構成されていればどのようなものでもよい。金型として好ましい材料は、例えば冷間ダイス鋼、熱間ダイス鋼、超硬合金がある。
メッシュシート2は、ゴムの加硫成形工程における成形温度と成形圧力に耐える素材であればどのようなものでもよく、透明、不透明はいずれでもよく、何色であってもよい。メッシュシート2として好ましい素材は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン製がある。その中でも、耐熱性の点からPET製がさらに好ましい。これ以外に、鉄、ステンレス等の金属製のメッシュシートも使用することができる。
メッシュシート2の網目模様の織り方には特に制限はなく、平織、綾織などを使用することができる。メッシュシートのメッシュ数は通常1インチあたりの糸の本数で表され、70〜508メッシュのメッシュシートを使用することができる。メッシュシートの糸と糸の間の距離はオープニングで表され、オープニング20〜300μmのメッシュシートを使用することができる。メッシュクロスの空間率はオープニングエリアで表され、オープニングエリア20〜70%のメッシュシートを使用することができる。とりわけ、高撥水構造の形成の観点から、メッシュ数150〜508メッシュ、オープニング20〜120μm、オープニングエリア20〜50%のメッシュシートを使用することが好ましい。
ゴム組成物3は、原料ゴムと配合剤との複合材料である。ゴム組成物3には、ゴム工業で通常使用される配合剤を必要に応じて配合することができる。配合剤としては、例えば、補強性充填材、軟化剤、滑剤、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、着色剤、発泡剤などがある。ゴム組成物3を構成する原料ゴムの含有量としては、実用的には20〜95重量部が好ましい。ゴム組成物3中の原料ゴムが20重量部未満であると、十分なゴム弾性を確保できないおそれがあるからである。
原料ゴムには従来から各種ゴム組成物に一般的に配合されている任意のゴム、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)がある。これらのゴムは単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
撥水性の評価は、加硫ゴム表面と水滴との接触角を用いる。水滴との接触角が大きいほど加硫ゴム表面の撥水性が優れるといえる。一般的に、加硫ゴム表面と水との接触角が110〜140°未満のとき、加硫ゴム表面は高撥水性であり、140°以上のときは超撥水性である。本明細書では、特にことわりのない限り、加硫ゴムと水との接触角を25℃で測定した。
次に、本発明の高撥水構造の形成方法を実施例に基づいて具体的に説明するが、実施例は具体的例示であって、本発明を拘束するものではない。
<実施例1〜5>
表1に示すメッシュシートを用いて、フッ素ゴム(FKM)組成物の表面にメッシュシートの構造を転写した。フッ素ゴム組成物には、ポリオール加硫系、加硫ゴムのデュロメータ硬度がA70のものを使用した。メッシュシートは市販のPET製のものを使用した。プレス成形は、加硫温度160℃、プレス圧力10MPa、成形時間20分の条件で行い、さらに230℃、24時間オーブン加硫を行った。また、実施例1の加硫ゴム表面のSEM像を図3に示した。
<比較例1>
一方、金型内にメッシュシートを装填せず、実施例1〜5で使用したフッ素ゴム組成物のみを加硫成形した。
その結果、加硫ゴム表面に高撥水構造を有しない比較例1では、加硫ゴムと水との接触角は102〜104°であったが、実施例1では加硫ゴムと水との接触角が138〜141°になり、ゴム表面は高撥水性を発現した。これは、メッシュシートの転写によりゴム表面に形成された構造に起因する。
Figure 2012011762
<実施例6〜10>
表2に示すメッシュシートを用いて、エチレンプロピレンゴム(EPDM)組成物の表面にメッシュシートの構造を転写した。エチレンプロピレンゴム組成物には、硫黄加硫系、加硫ゴムのデュロメータ硬度がA60のものを使用した。メッシュシートは市販のPET製のものを使用した。プレス成形は、加硫温度160℃、プレス圧力10MPa、成形時間20分の条件で行った。
<比較例2>
一方、金型内にメッシュシートを装填せず、実施例6〜10で使用したエチレンプロピレンゴム組成物のみを加硫成形した。
その結果、加硫ゴム表面に高撥水構造を有しない比較例2では、加硫ゴムと水との接触角は104〜106°であったが、実施例6では加硫ゴムと水との接触角が127〜132°になり、ゴム表面は高撥水性を発現した。これは、フッ素ゴム組成物を使用した実施例1〜5と同様に、メッシュシートの転写によりゴム表面に形成された構造に起因する。
Figure 2012011762
1 金型(上型)
2 メッシュシート
3 ゴム組成物
4 金型(下型)
5 加硫ゴム

Claims (5)

  1. 加硫成形工程において、メッシュシートの構造をゴム組成物の表面へ転写することを特徴とする高撥水構造の形成方法。
  2. メッシュシートのメッシュ数が150〜508メッシュである請求項1記載の高撥水構造の形成方法。
  3. メッシュシートのオープニングが20〜120μmである請求項1または2記載の高撥水構造の形成方法。
  4. メッシュシートのオープニングエリアが20〜50%である請求項1〜3のいずれかに記載の高撥水構造の形成方法。
  5. ゴム組成物の原料ゴムがフッ素ゴムである請求項1〜4のいずれかに記載の高撥水構造の形成方法。
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