JP2012003452A - スライディングモード制御装置及び車両の自動操舵制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の自動操舵制御に適用した場合に、道路の変化に応じた最適な追従性能を得ることが可能なスライディングモード制御装置の提供。
【解決手段】スライディングモード制御装置は、制御対象の状態量yと状態量の時間変化率y’との間に非線形の関係が成立するように切り換え超平面σnを設定し、設定した切り換え超平面σnに制御対象の状態量y及び状態量の時間変化率y’を収束させる。
【選択図】図5

Description

本発明は、スライディングモード制御装置及び車両の自動操舵制御装置に関する。
近年、自動操舵制御に関する様々な技術が提案され実用化されており、その設計の主流は、PID制御やLQI制御である。また、他のフィードバック制御として、PID制御やLQI制御に比べて外乱に対する影響が小さくロバスト性の高いスライディングモード制御が注目されている。
特開2010−23682号公報 特許第3616734号公報
スライディングモード制御では、切り換え超平面(切換関数)を設定し、制御対象の状態量及び状態量の時間変化率を切り換え超平面に収束させる。一般的な切り換え超平面σは、σ=x’+hx(x:状態量、x’:状態量の時間変化率、h:切り換え超平面の傾き)と設計され、状態量xは、初期状態から切り換え超平面σに到達する。このように設計された切り換え超平面σでは、状態量xと状態量の時間変化率x’との間に線形の関係が成立し、切り換え超平面σの傾きhの値は、スライディングモードの性能に大きな影響を与える。
しかし、切り換え超平面σの傾きhは固定値として設定されるため、車両の自動操舵制御に上記切り換え超平面σをそのまま適用すると、スライディングモード制御のロバスト性が低下する可能性が生じる。すなわち、車両の位置と目標車線との距離yを状態量とし、その時間変化率y’を状態量の時間変化率として切り換え超平面σ(σ=y’+hy)を設定すると、距離yと時間変化率y’とが一定の線形関係に拘束されるため、道路の曲率の増大に伴って追従性能が悪化する。例えば、傾きh=2と設定した場合、短縮したい距離の変化率(速度)がその距離の大きさの2倍となるように制御され、直進走行時(目標車線が直線状の場合)であれば良好な制御が実行されるが、急カーブの走行時(目標車線の曲率半径が小さい場合)には追従不能となる可能性が生じる。
そこで、本発明は、車両の自動操舵制御に適用した場合に、道路の変化に応じた最適な追従性能を得ることが可能なスライディングモード制御装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のスライディングモード制御装置は、超平面設定手段と制御手段とを備える。超平面設定手段は、制御対象の状態量と状態量の時間変化率との間に非線形の関係が成立するように切り換え超平面を設定する。制御手段は、超平面設定手段が設定した切り換え超平面に制御対象の状態量及び状態量の時間変化率を収束させる。
上記切り換え超平面は、前記状態量の三乗項と前記状態量の時間変化率の三乗項とを含む関数によって規定されてもよい。
また、本発明の車両の自動操舵制御装置は、上記スライディングモード制御装置を有するとともに、車両位置検知手段と進路設定手段とを備える。車両位置検知手段は、車両の現在位置を検知する。進路設定手段は、車両の目標進路を設定する。上記制御対象の状態量は、車両の位置と目標進路との距離である。制御手段は、車両の位置と目標進路との距離及びその距離の時間変化率を切り換え超平面に収束させるための目標操舵角を算出し、算出した目標操舵角に対応する目標操舵電流をステアリングアクチュエータへ出力する。
上記構成では、超平面設定手段によって設定される切り換え超平面では、制御対象の状態量と状態量の時間変化率との間に非線形の関係が成立し、制御対象の状態量と状態量の時間変化率とが一定の線形関係に拘束されないので、高いロバスト性を得ることが可能な切り換え超平面の設計が可能となる。従って、上記スライディングモード制御装置を車両の自動操舵制御装置に適用し、車両の位置と目標車線との距離を状態量とし、その時間変化率を状態量の時間変化率として切り換え超平面を設定した場合、距離と時間変化率とが一定の線形関係に拘束されず、道路の曲率の増大に伴って最適な追従性能を発揮する切り換え超平面を設計することができる。
本発明のスライディングモード制御装置によれば、車両の自動操舵制御に適用した場合に、道路の変化に応じた最適な追従性能を得ることができる。
本実施形態の自動操舵制御装置を備えた車両の模式図である。 図1の自動操舵制御装置のブロック構成図である。 車両と目標走行ラインとを示す模式図である。 自動操舵制御処理のフローチャートである。 切り換え超平面を示す模式図である。 目標走行ラインの曲率と係数Gとの関係の一例を示す図である。
以下、車両の自動操舵制御装置に本発明のスライディングモード制御装置を適用した本発明の一実施形態について、図1〜図6に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、車両1は、ステアリングホイール2と、センサ部3と、コントローラ(ECU:Electric Control Unit)4と、駆動電流出力部5と、ステアリングアクチュエータ6とを備える。センサ部3とコントローラ4と駆動電流出力部5とは、走行制御装置を構成する。ステアリングホイール2は、車両1の運転室内に設けられ、運転者からの操舵入力を受ける。
センサ部3は、カメラ31と、ヨーレートセンサ33と、ハンドル角度センサ34と、車速センサ35と、自動操舵スイッチ36とを備える。
カメラ31は、CCDカメラであり、車両1の進行方向前方の路面を撮像し、その撮像信号をコントローラ4へ出力する。本実施形態では、車両1の走行路の左右両側の白線LL,LRの間に所定の目標走行ライン(目標進路)LTを設定し、設定した目標走行ラインLTに沿って自動操舵による走行を行うため、カメラ31は、進行方向前方の左右の白線LL,LRを撮像する。
ヨーレートセンサ33は、旋回走行時に車両1に発生するヨーレートφ’(回転角速度:rad/s)を、左回転を正方向として検出し、検出したヨーレートφ’をコントローラ4へ出力する。ハンドル角度センサ34は、ステアリングホイール2に入力する操舵角δ(rad)を検出し、検出した操舵角δをコントローラ4へ出力する。車速センサ35は、車両1の車速V(m/s)を検出し、検出した車速Vをコントローラ4へ出力する。
自動操舵スイッチ36は、車両1の運転室内に設けられ、運転者からのオン/オフ操作に応じた切換信号をコントローラ4へ出力する。自動操舵スイッチ36は、電源投入による初期時にはオフに設定され、運転者からの操作に応じてオンに設定される。自動操舵スイッチ36がオンに設定されると、コントローラ4は自動操舵制御処理を実行する。以下、自動操舵スイッチ36がオンに設定されている状態を説明する。
コントローラ4は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備える。コントローラ4には、センサ部3から各種信号が逐次入力する。ROM又はRAMには、自動操舵制御プログラムが予め記憶され、CPUは、自動操舵制御プログラムを読み出して実行することにより、目標走行ライン設定部41、目標偏差演算部42、目標操舵角演算部43及び指令電流値演算部44として機能する。
目標走行ライン設定部41は、路面上の目標走行ラインLTを設定する。目標走行ラインLTとは、車両1が自動操舵によって走行する際に目標とする進路である。本実施形態の目標走行ライン設定部41は、カメラ31が撮像した撮像信号を解析して路面上の左右の白線LL,LR間の幅Wの範囲を車両1の走行レーンとして検出し、走行レーンにおいて片側の白線(例えば左側の白線LL)からの距離が走行レーンの幅Wの50%(W/2)となる位置(線)を目標走行ラインLTとして設定する。
目標偏差演算部42は、目標走行ライン設定部41が設定した目標走行ラインLTに対する現在の車両1の相対位置(目標偏差y)を演算する。具体的には、カメラ31が撮像した撮像信号を解析して左側の白線LLから車両1までの距離Dを検出し、距離Dから目標走行ラインLTの設定距離W/2を減算することにより、目標偏差y(y=D−W/2)を算出する。
なお、本実施形態では、目標走行ラインLTの設定及び目標偏差yの演算のために、カメラ31が撮像した撮像信号を使用するが、カメラ31の撮像信号以外の他の情報を使用してもよい。例えば、GPSによって検知された情報を受信して、受信した情報に基づいて目標走行ラインLTを設定し、目標偏差を演算してもよい。また、路面に目標走行ラインLTに沿った情報発生装置を予め設け、この情報発生装置から目標走行ラインLTの位置情報を取得して、目標走行ラインLTと目標偏差yとを検知してもよい。
目標操舵角演算部43は、超平面設定手段及び制御手段を構成し、目標走行ライン設定部41が検知した目標走行ラインLTと目標偏差演算部42が検知した目標偏差yとに基づいて、車両1を目標走行ラインLTに従って走行させるための操舵角(目標偏差y及び目標偏差の時間微分y’を切り換え超平面σnに収束するための目標操舵角θtotal)を算出する。なお、目標操舵角θtotalの算出処理については後述する。
指令電流値変換部44は、制御手段を構成し、目標操舵角演算部43が算出した目標操舵角θtotalを指令電流値(目標操舵電流)iに変換する。指令電流値iとは、車両1を目標走行ラインLTに沿って走行させるためにステアリングアクチュエータ6に通電する電流値である。指令電流値変換部44は、ステアリングホイール2を目標操舵角θtotalに駆動するために、ステアリングアクチュエータ6に対して、左右どちらの方向にどれくらいの強さの電流を通電する必要があるかを算出する。駆動電流出力部5は、制御手段を構成し、指令電流値変換部44が算出した指令電流値iをステアリングアクチュエータ6に通電させる。
ステアリングアクチュエータ6は、駆動電流出力部5から入力した駆動電流iによって駆動する。なお、ステアリングホイール2は、ステアリングアクチュエータ6の駆動に連動して回転する。
次に、目標操舵角演算部43が実行する目標操舵角θtotalの算出処理について説明する。なお、以下の説明において使用する記号の定義は以下の通りである。
I:車両1のヨー慣性モーメント(kg・m2
M:車両1の質量(kg)
:前輪コーナリングパワー(N/rad)
:後輪コーナリングパワー(N/rad)
:車両重心点から前輪軸までの距離(m)
:車両重心点から後輪軸までの距離(m)
δ:ハンドル角度センサ34が検出するステアリングの実ハンドル角(rad)
V:車速センサが検出する35が検出する車速(m/s)
操舵系の状態方程式は、式(1)によって表される。
Figure 2012003452
ステアリングモード制御の等価制御入力は、式(2)によって計算される。
Figure 2012003452
式(2)の評価関数Jを最小化するレギュレータへの最適な等価制御入力は、式(3)によって表わされる。
Figure 2012003452
なお、K1,K2,K3,K4は、式(2)を満たす最適ゲインを示す定数である。
ここで、従来の一般的なスライディングモード制御の非線形制御入力の場合、式(4)に示す超平面σが設定され、目標操舵角θtotalは、式(5)によって計算される。なお、hは、切り換え超平面(切換線)の傾きを示す定数、Kは、ゲインを示す定数である。
Figure 2012003452
Figure 2012003452
しかし、上記従来の方法によって設定される切り換え超平面σでは、状態量yと状態量の時間変化率y’とが一定の線形関係に拘束されるため、道路(目標走行ラインLT)の曲率変化に対するロバスト性が弱く、道路の曲率の増大に伴って追従性能が悪化する。
これに対し、本実施形態では、図5に示すように、上記超平面σを垂直変換した超平面σpを求め(式(6))、2つの超平面σ,σpとによって規定される新たな座標系を設定し、この新たな座標系に式(7)に示す切り換え超平面σnを設定する。
Figure 2012003452
Figure 2012003452
切り換え超平面σnは、状態量(目標偏差y)の三乗項と状態量の時間変化率(目標偏差の時間微分y’)の三乗項とを含む関数によって規定され、状態量(目標偏差y)と状態量の時間変化率(目標偏差の時間微分y’)との間で非線形の関係が成立する。また、係数Gの値を変更することによって、非線形な切り換え超平面σnを自由に設計することができる。
係数Gの値は、目標走行ラインLTの曲率に応じて設定される。目標走行ラインLTと係数Gとの関係(係数Gの設定情報)の一例を図6に示す。なお、目標走行ラインLTと係数Gとの関係は、経験等によって予め決定され設定される。
目標操舵角θtotalは、式(8)によって計算される。
Figure 2012003452
次に、本実施形態の自動操舵制御装置が実行する自動操舵制御処理について説明する。
自動操舵制御処理は、所定時間毎に繰り返して実行される。自動操舵制御処理が開始されると、コントローラ4が必要なパラメータを読み込む(ステップS1)。本処理において、コントローラ4は、カメラ31、ヨーレートセンサ33、車速センサ35などから各種信号を読み込む。また、読み込んだパラメータに基づいて、時間微分や積分などの必要な演算や、撮像信号の解析を行う。
次に、目標走行ライン設定部41は、目標走行ラインLTを設定し(ステップS2)、目標偏差演算部42は、カメラ31が撮像した撮像信号を解析して目標偏差yを算出する(ステップS3)。
次に、目標操舵角演算部43が目標操舵角θtotalを算出する(ステップS4)。すなわち、ステップS2で設定した目標走行ラインLTの曲率と予め設定された係数Gの設定情報とから係数Gの値を求め、目標偏差yと目標偏差の時間微分y’と係数Gとを式(4)、式(6)及び式(7)に代入して切り換え超平面σnを設定し、この切り換え超平面σnとヨーレートφ’とヨーレートの時間積分φと目標偏差yと目標偏差の時間微分y’とを式(8)に代入して、目標偏差y及び目標偏差の時間微分y’を切り換え超平面σnに収束するための目標操舵角θtotalを算出する。
次に、指令電流値変換部44が目標操舵角θtotalを指令電流値iに変換し(ステップS5)、駆動電流出力部5が指令電流値iの通電によってステアリングアクチュエータ6を駆動して(ステップS6)、自動操舵制御処理を終了する。
上記ステップS1〜ステップS6の処理を繰り返して実行することにより、目標偏差y(制御対象の状態量)及び目標偏差の時間微分y’(状態量の時間変化率)が切り換え超平面σnに収束される。
本実施形態によれば、切り換え超平面σnでは、目標偏差y(制御対象の状態量)と目標偏差の時間微分y’(状態量の時間変化率)との間に非線形の関係が成立し、目標偏差yと目標偏差の時間微分y’とが一定の線形関係に拘束されないので、道路の曲率の増大に伴って最適な追従性能を発揮するロバスト性の高い切り換え超平面σnの設計が可能となる。
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、上述の実施形態以外であっても種々の変更が可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、目標偏差y(制御対象の状態量)の三乗項と目標偏差の時間微分y’(状態量の時間変化率)の三乗項とを含む関数によって切り換え超平面σnを規定したが、目標偏差yと目標偏差の時間微分y’との間に非線形の関係が成立させる他の関数によって切り換え超平面を規定してもよい。また、上記実施形態では、自動操舵制御装置に適用されるスライディングモード制御装置の例を説明したが、本発明のスライディングモード制御装置は自動操舵制御装置以外の多様な装置に広く適用可能である。
本発明は、スライディングモード制御を実行する装置に適用可能である。
1:車両
2:ステアリングホイール
5:駆動電流出力部(制御手段)
6:ステアリングアクチュエータ
42:目標偏差演算部
43:目標操舵角演算部(超平面設定手段、制御手段)
44:自動操舵電流演算部(制御手段)
LT:目標走行ライン(目標進路)
y:目標偏差(車両の位置と目標進路との距離、制御対象の状態量)
y’:目標偏差の時間微分(車両の位置と目標進路との距離の時間変化率、状態量の時間変化率)
σn:切り換え超平面
θtotal:目標操舵角

Claims (3)

  1. 制御対象の状態量と該状態量の時間変化率との間に非線形の関係が成立するように切り換え超平面を設定する超平面設定手段と、
    前記超平面設定手段が設定した切り換え超平面に前記制御対象の状態量及び当該状態量の時間変化率を収束させる制御手段と、
    を備えたことを特徴とするスライディングモード制御装置。
  2. 請求項1に記載のスライディングモード制御装置であって、
    前記切り換え超平面は、前記状態量の三乗項と前記状態量の時間変化率の三乗項とを含む関数によって規定される
    ことを特徴とするスライディングモード制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のスライディングモード制御装置を有する車両の自動操舵制御装置であって、
    前記車両の現在位置を検知する車両位置検知手段と、
    前記車両の目標進路を設定する進路設定手段と、を備え、
    前記制御対象の状態量は、前記車両の位置と前記目標進路との距離であり、
    前記制御手段は、前記車両の位置と前記目標進路との距離及び当該距離の時間変化率を前記切り換え超平面に収束させるための目標操舵角を算出し、算出した目標操舵角に対応する目標操舵電流をステアリングアクチュエータへ出力する
    ことを特徴とする自動操舵制御装置。
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