JP2012000560A - 酸化用触媒 - Google Patents

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【課題】内燃機関から排出される排ガス中に含まれる炭素(C)を主成分とするパティキュレート(PM)等を酸化して排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒において、より低温で炭素成分を完全燃焼させることができる酸化用触媒を提供する。
【解決手段】一般式RTlα(但し、RはTl(I)及びTl(III)以外の1種類又は2種類以上の元素を示し、Tlは3価である。)で示されるタリウム酸化物を含む酸化用触媒存在下、炭素含有物質又は有機成分を熱処理することによって炭素含有物質又は有機成分を完全燃焼させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規な酸化用触媒に関する。より具体的には、例えば内燃機関から排出される排ガス中に含まれる炭素(C)を主成分とするパティキュレート(PM)等を酸化して排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒に関する。
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて熱効率が良く、地球温暖化ガスであるCOの排出量が少ないという利点を備える一方、健康に害を与える粒子状物質(Particulate Matter : PM)を多く排出するという問題を抱えている。これに関し、ディーゼルエンジンから生成するPMをフィルターで捕集し、PM排出量を大幅に低減する手法も提案されている。ところが、フィルター上に捕集されたPMは、高温の排気ガスにさらされることにより、一部は燃焼して堆積量は低減するものの、通常600℃以上の排気ガスにさらされないと速やかに燃焼しない。このため、排ガス温度上昇の頻度の少ない市街地走行では、フィルター上に堆積するPMは走行距離とともに増加し、PM堆積に伴う圧力損失の上昇が燃費の悪化を引き起こすことになる。このため、上記のような燃費悪化を改善することが必要とされている。
これに対し、PMの燃焼温度低下を目的としたPM酸化触媒の研究が多数報告されている。PM酸化触媒をフィルター上にコーティングすることにより、フィルター上に堆積したPMの燃焼温度が大幅に低下すれば、通常走行中でのPMの燃焼が促進され、PM堆積に伴う燃費の悪化が大幅に改善できることになる。
このため、前記排ガス中に含まれる PM等を酸化するために、より強い酸化反応雰囲気を得ることのできる酸化触媒として、2種類の金属元素を含む複合酸化物を用いることが考えられる。このような複合酸化物として、例えばセリウム−ジルコニウム−ビスマス複合酸化物(特許文献1)、希土類−マンガン複合酸化物(特許文献2)等が提案されている。これらの酸化物によれば、PMの主成分である通常の炭素(C)の燃焼温度(約650℃)を400℃付近まで引き下げることができることから、現時点では高い酸化触媒特性を有する触媒とされている。
特開2003−238159 特開2007−216099
しかしながら、最近では、これらの酸化物における燃焼温度よりもさらに50〜100℃程度低い温度でのC燃焼が求められており、この点において前記セリウム−ジルコニウム−ビスマス複合酸化物又は希土類−マンガン複合酸化物でも十分なものとは言えない。このため、排ガス中に含まれるPM等をより低温で浄化(酸化)できる触媒の開発が切望されている。
従って、本発明の主な目的は、PM等を完全燃焼させることができる酸化用触媒を提供することにある。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の酸化物をPM等の酸化用触媒として採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の酸化用触媒に係る。
1. 一般式RTlα(但し、Tlは3価であり、RはTl(III)以外の少なくとも1種の元素を示す。xは0以上の整数を示し、yは1以上の整数を示し、αは1以上の整数を示す。)で示されるタリウム酸化物を含む酸化用触媒。
2. 炭素含有物質又は有機成分を完全燃焼させるために用いる、前記項1に記載の酸化用触媒。
3. 前記完全燃焼を450℃以下で行う、前記項2に記載の酸化用触媒。
4. 前記項1〜3のいずれかに記載の酸化用触媒の存在下において、炭素含有物質又は有機成分を熱処理することによって炭素含有物質又は有機成分を完全燃焼させることを特徴とする酸化方法。
本発明の酸化用触媒によれば、3価のTlの酸化物であるTlを基本組成とするタリウム酸化物から構成されているので、従来の酸化用触媒の反応温度よりも低い温度で有機成分を完全燃焼させることができる。より具体的には、PM等を比較的低温で完全燃焼させて二酸化炭素(又は二酸化炭素と水)に分解することができる。
このため、例えば本発明触媒を排ガスフィルター上にコーティングすることにより、フィルター上に堆積したPMは比較的低温で燃焼できるため、通常走行中でのPMの燃焼が促進される。これにより、従来のようにフィルター上でのPM堆積に伴う燃費の悪化を効果的に回避することもできる。
Tlに5重量%の炭素(C)を混合した後にDSC測定を実施した結果を示す。 試験例1において爆発的なC燃焼を観察した結果を示す。 図3(a)には、Tlに2重量%のCを混合した後にTG−DTA測定を行った結果を示す。図3(b)には、CのみのTG−DTA測定結果を示す。 Tlの30℃と600℃でのX線回折結果を示す。 Tlの結晶構造図を示す。 Tlの格子定数(a)と測定温度との関係を示す図である。 Tlの走査型電子顕微鏡写真と比表面積を示す 200〜600℃で熱処理したTlに2重量%の炭素(C)を混合した後のDSC測定結果を示す。 Tlの格子内酸素の放出挙動を、縦軸に酸素分圧(酸素分子量:34)、横軸に温度で示した図である。 (Tl35(SiO75ガラス粉末にCを重量比20対1で混合した後、DSC測定を行った結果を示す。 LaTlOセラミックス粉末にCを重量比20対1で混合した後、DSC測定を行った結果を示す。
1.酸化用触媒
本発明の酸化用触媒(本発明触媒)は、一般式RTlα(但し、Tlは3価であり、RはTl(III)以外の少なくとも1種の元素を示す。xは0以上の整数を示し、yは1以上の整数を示し、αは1以上の整数を示す。)で示されるタリウム酸化物を含むことを特徴とする。
本発明触媒は、Tlを基本組成とし、そのTlサイトが他の1種又は2種以上の元素で置換されていても良いものである。3価のTlの酸化物であるTlを基本組成とすることにより、優れた炭素燃焼特性を発揮することができる。すなわち、従来の触媒よりも低い温度で炭素を完全燃焼させることにより、二酸化炭素及び水を生成させることができる。特に、従来の触媒よりも低い温度で炭化水素を完全燃焼させて二酸化炭素と水に変換することができる。
本発明触媒は、Rを含まない組成(x=0、すなわちTl(III))であっても良いが、前記の通りRを含む組成も包含する。前記Rとしては、特に限定されず、例えばLa、Nd、Fe、Nb、Ru、Sb、Tl(I)等の1種又は2種以上が挙げられる。この中でも、特にLa、Nd、Fe等の少なくとも1種の金属元素が好ましい。これらの金属元素で置換された酸化物としては、LaTl(III)O、NdTl(III)O、FeTl(III)O、NbTl(III)21、RuTl(III)、SbTl(I)Tl(III)O等が例示される。従って、本発明では、Tl(III)、LaTl(III)O、NdTl(III)O、FeTl(III)O、NbTl(III)21、RuTl(III)、SbTl(I)Tl(III)O等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
本発明触媒の形態は特に制限されず、粉末状(顆粒状)、成形体等のいずれであっても良いが、通常は粉末状の形態で用いることが好ましい。粉末状で用いる場合、平均粒径は0.1〜100μm、特に1〜10μmとすることが好ましい。
また、本発明触媒の比表面積(BET比表面積)は特に限定されないが、0.001〜100m・g−1、特に0.01〜10m・g−1とすることが好ましい。
2.酸化用触媒の製造
本発明の酸化物触媒の製造方法は、上記のような組成が得られる限り特に限定されず、固相反応、液相反応又は気相反応のいずれの方法も採用することができる。また、公知又は市販のTl等も用いることができる。
例えば、酸化タンタル(Tl)は、タンタル塩の水溶液にアルカリを添加して沈殿物を生成させることにより製造することができる。
また、Rを含むタリウム酸化物は、公知の方法で合成することもできる。例えば、Rの酸化物(例えば、RがLaである場合はLa)とTlとを混合した後、得られた混合物を熱処理することによって製造することができる。この場合の混合方法は、乾式又は湿式のいずれであっても良い。また、熱処理に先立って、混合物を乾燥させても良い。乾燥は通常100℃以下とすれば良い。熱処理温度は、Rの種類等によるが、一般的には500〜1000℃程度とすれば良い。熱処理雰囲気は、通常は酸化性雰囲気(例えば大気中)とすれば良い。
非晶質のTl系触媒を製造する場合は、Tl及びガラス成分を溶融し、得られた固形物を粉砕することにより、非晶質の酸化用触媒を得ることができる。前記ガラス成分としては、公知のガラス成分を使用することができ、例えばSiO、B、GeO、P、PbO等が挙げられる。Tlとガラス成分との割合は特に限定されないが、通常は両者の合計重量を100重量%として、Tlが10〜90重量%の範囲内となるように適宜設定することができる。
このようにして得られたTl又はRを含むタリウム酸化物は、必要に応じて、公知の方法に従って、前記の本発明触媒の好ましい平均粒径となるように、粒度粉砕、分級等を適宜実施することができる。
3.酸化用触媒による酸化(燃焼)
本発明触媒の使用方法は、公知の酸化用触媒(酸化触媒)と同様の方法で使用することができる。例えば、本発明触媒の存在下において炭素含有物質又は有機成分を熱処理することにより、完全燃焼させれば良い。
炭素含有物質としては、炭素又はそれを含む混合物が挙げられる。すなわち、炭素(カーボン、グラファイト等)のほか、これらを含む混合物が挙げられる。有機成分としては、例えば炭化水素類等の有機化合物が挙げられる。本発明触媒は、炭素含有物質を完全燃焼させるのに好適である。従って、排ガス中の炭素(C)を含むパティキュレート(PM)の完全燃焼にも好適に使用することができる。
この場合、炭素含有物質又は有機成分(以下、両者をまとめて「炭素質成分」ともいう。)は、気相、液相又は固相のいずれでも反応させることができるが、特に気相又は固相とすることが好ましい。気相としては、炭素含有物質又は有機成分を含むガスを本発明触媒に接触させることにより反応させることができる。前記ガスとしては、例えば内燃機関(自動車等)の排気ガスを適用することができる。この場合は、排気ガス中のPMを完全燃焼させることができるので、本発明触媒を排ガス浄化用触媒として好適に用いることができる。また、固相である場合は、気体中に炭素質成分を浮遊させてなる混合物として熱処理することが好ましい。
また、上記熱処理における熱処理温度(反応温度)は、対象となる炭素質成分の種類等によって適宜設定すれば良いが、一般的には450℃以下とし、400℃以下とすることが好ましく、特に380℃以下とすることがより好ましい。この場合の熱処理温度の下限値は限定的ではないが、通常300℃程度とすれば良い。また、熱処理の雰囲気は、燃焼できる雰囲気であれば制限されず、大気中のほか、酸素含有雰囲気も採用することができる。
完全燃焼させるための反応形態としては特に制限されず、例えば回分式、連続式、半回分式等のいずれであっても良い。また、連続式である場合は、反応系に予め本発明触媒を充填しておくことができる。その他にも、反応系に炭素質成分とともに触媒を連続的に仕込むこともできる。本発明触媒の配置形態としては、例えば固定床、流動床等のいずれの形態であっても良い。
本発明触媒の使用量としては特に制限されず、例えば用いる触媒の種類、炭素質成分の種類等に応じて適宜設定することができる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
実施例1(Tl 触媒の調製)
純度99.9重量%のTl粉末((株)高純度化学研究所製品、平均粒径0.3μm)を用いた。このTl粉末をPt坩堝中にて、200〜600℃の各温度で2時間熱処理を行った。
実施例2((Tl 35 (SiO 75 ガラスの調製)
出発原料として、実施例1で用いたものと同様のTl粉末と試薬級のSiO粉末((株)和光純薬製)とを用い、バッチ総量を10gとして前記原料を秤量・混合した。蓋付きアルミナ坩堝(ニッカトー(株)製、SSA−S)を用い、電気炉中にて大気雰囲気下1250℃で1時間溶融を行い、得られた融液を鉄板上に流し出し、プレス成形を行うことで試料を作製した。溶融中に一部のTlは蒸発する。得られたガラスの組成分析結果(Tl、Si、Oを分析)したところ、実際の組成はTl(I)0.297Tl(III)0.008Si0.2930.895と計算された。その後、ジルコニア乳鉢を用いて粉砕して、平均粒径約10μmの粉末とした。
実施例3(LaTlO セラミックスの調製)
出発原料として、La粉末(信越化学(株)製、99.9重量%品)と実施例1で用いたものと同じTl粉末を用い、ボールミル中にて湿式混練し、100℃にて乾燥し、アルミナ坩堝(ニッカトー(株)製、SSA−S)を用い、電気炉中にて大気雰囲気下700℃で2時間熱処理を行うことにより、平均粒径1μmのLaTlOセラミックス粉末を得た。
試験例1
(1)炭素燃焼特性等の測定
実施例で得られた試料を用いて炭素燃焼特性等を調べた。測定項目及び測定方法は、次に示す通りである。
(1−1)炭素燃焼特性は、各試料に2〜5重量%の炭素(C、東海カーボン製)を添加し、炭素が燃焼する温度を示差走査熱量分析(DSC)((株)リガク製、DSC8230)にて測定した。測定条件としては、供試量10mg、200mL/分のAir気流中にて室温〜600℃の温度範囲(昇温速度10℃/分)とした。その結果を図1に示す。
(1−2)2重量%のCを添加した未熱処理の試料については、示差熱天秤(TG−DTA)による測定も行った。この測定では、装置として「TG8120」((株)リガク社製)を用いた。Tlの高温X線回折(XRD)測定は、装置として「UltimaIV」((株)リガク製)を用い、CuKα線を用いて2θ=20°〜70°、室温〜600℃で行った。また、各熱処理Tl試料の比表面積は、装置として「NOVA3200」(Quantachrome社製)を用い、Nガス吸着によるBETの3点法で測定した。Tlの酸素放出特性の評価を以下のように行った。Tlの格子内酸素の挙動を明らかにするため、重酸素(18)によりTl格子内の酸素に予め印を付け、昇温時における格子内酸素の放出挙動をモニターした。まず、Tl粉末を18中に800℃で1時間熱処理を行い、格子内の酸素(16)を18に置換した。次に、質量分析計(日本真空(株)製)を用い、Tlの昇温に伴う格子内酸素の放出挙動を質量数34でモニターした。測定雰囲気はAr80%−O20%とし、昇温速度は15℃/分とした。
(2)測定結果
(2−1)熱分析(C燃焼特性)
図1に、Tlに5重量%の炭素(C)を混合した後にDSC測定を実施した結果を示す。図1によれば、280℃付近で爆発的なC燃焼に伴う非常にシャープなDSC発熱ピークが観測された。なお、Cのみの場合(点線)は660℃付近でC燃焼によるDSC発熱ピークが観測された。これらの結果から、TlにはC燃焼温度を380℃程度下げる能力があることがわかる。また、この爆発的なC燃焼時の映像を図2に示す。この条件下での熱分析測定を行った場合、熱分析装置にダメージを与えるおそれがあるため、C添加量を2重量%とし、TG−DTA測定を行った。図3(a)には、Tlに2重量%のCを混合した後にTG−DTA測定を行った結果を示す。350℃付近で混合したCの燃焼に伴う重量減少と発熱がDTA結果に観測される。また、TG結果から、C燃焼に伴う重量減少が200℃付近から始まり、2重量%の重量減少が400℃付近で終了したことが確認される。580℃付近からの重量減少はTlの蒸発に伴うものと推測される。図3(b)には、CのみのTG−DTA測定結果を示すが、DSC測定結果と同様に660℃付近にC燃焼に伴うDTA発熱ピークが観測された、さらにC燃焼に伴う重量減少が500℃付近から始まり、100重量%の重量減少が660℃付近で終了した。
(2−2)高温X線回折
図4には、Tlの30℃と600℃でのX線回折結果を示す。どちらもTl構造(立方晶系(Ia3)、ICDD No.33−1404)を維持していることがわかる。また、図5には、Tlの結晶構造図を示す。Tl原子は2つの異なるサイトを占有し、O原子が1つのサイトを占有している。図4に示すX線回折結果からは、Tlとは異なるもう1つタリウム酸化物Tl(I)O(六方晶系、ICDD No.43−1049)の生成は認められなかった。
Tl原料粉末について、室温から600℃までと、600℃から室温までの高温X線回折測定を行った。この高温X線回折結果から、各測定温度ではTlOの生成は認められず、Tl単一相であった。その測定結果から格子定数(a)変化を計算して、図6にまとめた。格子定数(a)は、測定温度を上げるに従って大きくなり、測定温度を下げるに従い小さくなっていった。測定温度と格子定数(a)との関係をみると、300℃前後付近でその傾きの変化が認められる。300℃付近では、熱分析結果からTlよるC燃焼が促進される温度付近であり、測定温度と格子定数(a)との関係の傾きの変化はTlから一部のOの脱離に起因するものでないかと考えられる。
(2−3)熱処理温度と形態、表面積及びC燃焼特性との関係
Tlと200〜600℃で熱処理したTlの走査型電子顕微鏡写真と比表面積を図7に示す。比表面積測定時には200℃での前処理が必要なため、Tl原料粉末の比表面積は示していない。500℃までは徐々にTl粒子どうしの焼結反応が進み、600℃で大きな形態変化が認められた。図8には、200〜600℃で熱処理したTlに2重量%の炭素(C)を混合した後のDSC測定結果を示す。図6で認められた形態と比表面積変化に関係なく、C燃焼に伴うDSC発熱ピークは350℃付近に観測された。このことから、TlのC燃焼特性(酸化触媒特性)はTlの形態と比表面積に影響を受けないことがわかる。
(2−4)Tlの格子内酸素の放出挙動
Tlの格子内酸素の放出挙動を明らかにするために、重酸素(18)によりTlの格子内の酸素に予め印を付け、昇温時における格子内酸素の放出挙動をモニターした。昇温とともに大気中に存在する酸素と表面近傍に存在するTlの格子内酸素との酸素原子の交換が繰り返し頻繁に起こると考えられる。図9には、Tlの格子内酸素の放出挙動を、縦軸に酸素分圧(酸素分子量:34)、横軸に温度で示した。また、同様に重酸素により予め印を付けたTl粉末とCを重量比20対1で混合した後、同様に昇温を行い、C18O(一酸化炭素)放出挙動をモニターした。C18O分圧と温度の関係を図9に併せて示す。Tlは、270℃という低温から格子内酸素を放出していることが確認できた。同時に230℃付近から格子内酸素と炭素が結合したC18Oの生成も、重酸素により予め印を付けたTl粉末とCの混合テストから確認された。これは、予めTlと混合してあったCが、Tl格子内から放出された格子内酸素(活性酸素)のアタックを受け反応し、C18Oが生成したと判断した。最終的に、Cは二酸化炭素まで酸化されることも確認した。Tlは、230℃という低温から格子内の酸素を遊離すること、また格子内から放出された酸素(活性酸素)は230℃という低温からCを直接酸化することが明らかになった。
(2−5)タリウム(III)化合物のC燃焼特性(酸化触媒特性)
(Tl35(SiO75ガラス粉末及びLaTlOセラミックス粉末にCを重量比20対1で混合した後、DSC測定を行った結果を図10及び図11にそれぞれ示す。(Tl35(SiO75ガラス粉末では360℃付近、LaTlOセラミックス粉末では420℃付近にそれぞれC燃焼に伴うDSC発熱ピークが認められ、このようなタリウム(III)化合物においても、Tl粉末と同様に高いC燃焼特性(酸化触媒特性)を有する明らかになった。
試験例2
Tl粉末を担持したアルミナ製セラミックフォームを用いてPM連続浄化特性の評価を行った。PM混合ガスがTl粉末を担持したセラミックフォームの細孔内を通り抜けるようにフォームを設置し、セラミックフォームは350℃に維持し、PM混合ガスを40時間供給後、セラミックフォーム上に堆積したPMの状態を観察した。前記のPM混合ガスの組成は、体積比でO:7%、NO:50ppm、Nバランスであり、PM成分としてカーボン棒をアーク放電させて発生した煤を用いた。供給条件としては、前記PM混合ガスをセラミックフォーム(触媒)の体積1mL当たり100L/時間で通過させた。Tl粉末担持を施していないセラミックフォーム上には、40時間の試験で100mg程度のPMが堆積しているのに対し、Tl粉末を担持したセラミックフォーム上にはPMは認められなかった。これは、セラミックフォーム上に捕獲されたPMがTlの触媒効果により酸化が促進し、350℃で連続浄化されたことによるものと考えられる。

Claims (4)

  1. 一般式RTlα(但し、Tlは3価であり、RはTl(III)以外の少なくとも1種の元素を示す。xは0以上の整数を示し、yは1以上の整数を示し、αは1以上の整数を示す。)で示されるタリウム酸化物を含む酸化用触媒。
  2. 炭素含有物質又は有機成分を完全燃焼させるために用いる、請求項1に記載の酸化用触媒。
  3. 前記完全燃焼を450℃以下で行う、請求項2に記載の酸化用触媒。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の酸化用触媒の存在下において、炭素含有物質又は有機成分を熱処理することによって炭素含有物質又は有機成分を完全燃焼させることを特徴とする酸化方法。
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