以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。同一機能を有する構成及び同一の処理内容の手順には同一符号を付し、その説明の繰り返しを省略する。
本実施形態に係る治療支援システムは、被検体の病変部位、例えば腫瘍に対し、操作者が超音波診断治療装置を用いて集束超音波を照射することにより、病変部位(例えば腫瘍など)に対する加熱治療を行う術式において、加熱治療に伴い腫瘍が腫れることにより、治療前の3次元ボリュームデータを用いたナビゲーション画像に描出された病変部位及びその周辺部位の形状と、実際の被検体の病変部位及びその周辺部位の形状と、の不整合を抑止しする治療支援システムである。
本実施形態では、加熱治療装置として集束超音波を照射可能な超音波診断治療装置を用いるが、加熱治療装置は、超音波診断支援装置に限らず、例えば、被検体内の病変部位に穿刺を行い、その穿刺針に一対の電極を用いるモノポーラ方式や展開針方式を用いた温熱治療装置を接続し、穿刺針による加熱治療を行う術式でもよい。また、一般に、温熱治療による病変部位の物理量(例えば形状、面積、体積等)の変化は、加熱治療において顕著であるが、凍結治療による病変部位の変化に対しても本実施形態は適用できる。また、加熱治療によりる病変部位の変化は、組織の膨張(拡張)が顕著であるので、本明細書では組織の変形量を拡張量(膨張量)と記載するが、拡張量(膨張量)には、組織の収縮量(マイナスの拡張量)を含んでもよい。
本実施形態の説明に先立ち、本実施形態の基礎技術について説明する。被検体画像の撮像装置の一例としてMRI装置が知られている。このMRI装置とは、連続的に被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴信号(以下、MR信号と称する)を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を映像化するものである。現在、臨床で普及しているMRI装置の撮像対象は、被検体の主たる構成物質、プロトンである。MRIは、プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
このMRI装置を用い、術中にリアルタイム画像を生成することがある。このような術中の撮像、例えば心臓イメージングや、手術時の穿刺モニタリング、経皮的治療などに使用されるI−MRI装置(interventional−MRI装置、または、Intraoperative−MRI装置の略称)では、リアルタイムで撮像する断層面を任意に設定したいという要望がある。撮像する断層面を任意に選択する手法として、グラフィカルユーザインタフェースにMRI画像を表示して、画面上のボタンをクリックして、次に撮像する断層面を決定する方法や、3次元マウスなどを使う方法などがある。
これらの方法では、撮像する断層面の位置や向きをマウスなどの入力手段で調整、設定しなければならず煩雑なので、MRI装置としては、より簡便に撮像する断層面の位置や向きを調整、設定できることが望ましい。そこで、術具に先端部にポインタを設け、三次元位置検出装置にてポインタの位置を検出し、これに基づいて、断層面の位置や向きを調整、設定することが行われている。
一方、近年、診断画像を得る超音波診断装置と、集束超音波を照射して加熱治療を行う超音波治療装置と、が一体として構成された、超音波診断治療装置がある。本実施形態では、この超音波診断治療装置を用いて、病変部である腫瘍領域に対して加熱治療を行う場合を例に説明する。
超音波診断装置は、被検体内に超音波を送受信し得られた反射エコー信号を用いて診断部位について2次元超音波画像或いは3次元超音波画像を形成して表示するもので、被検体24に超音波を照射し受信する振動子素子を備えた超音波探触子と、超音波信号を送受信する超音波送受信部と、受信信号に基づいて2次元超音波画像(Bモード画像)或いは3次元超音波画像を構成する超音波画像構成部と、超音波画像構成部構成された超音波画像を表示する表示部素を制御する制御部と、制御部に指示を与えるコントロールパネルとを有している。
超音波画像処理の一例として、探触子に向かう方向の血流を赤色で、遠ざかる方向の血流を青色で表示するカラードップラー法がある。この利点としては、早い血流と遅い血流とを同時に表示できるだけでなく、カラーゲインを調節して速度が早いほど明るく表示することで血流を評価できる点である。
従来の一般的な超音波診断装置は、被検体内部の生体組織の構造を例えばBモード像として表示するだけでなく、最近、被検体の体表面から圧迫装置もしくは探触子で人為的に生体内部組織を圧迫し、時系列的に隣接する2フレーム(連続2フレーム)の超音波受信信号の相関演算を利用して、各点における変位を求め、さらにその変位を空間微分することによって歪みを計測し、この歪みデータを画像化する手法、更には、外力による応力分布と歪みデータから、生体組織のヤング率等に代表される弾性率データを画像化する手法が現実的になってきている。このような歪み及び弾性率データ(以下、弾性フレームデータ)を基にした弾性画像によれば、生体組織の硬さや柔らかさを計測して表示することができる。このような機能は一般的にはエラストグラフィと呼ばれる。
一方、超音波は、体外あるいは体腔内から集束させることにより侵襲性の低い治療を行うことが原理的に可能である。本実施形態にかかる超音波診断治療装置は、上述の診断画像を得るためのプローブと、集束超音波を照射するプローブとを一体に構成したものである。
上記技術を前提として、以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態に係る治療支援システムは、画像処理機能を有する医療用診断装置(X線装置、X線CT装置、MRI装置、超音波装置等)と、3次元位置検出装置による術具位置検出による画像誘導機能と、生体患部を治療する治療機器と、撮像視野(FOV:Field Of View)内部の歪みを検出して補正する機能において、手術前に登録した特定領域(セグメンテーション)を画像情報としてモニタ表示して術具を治療領域に誘導するものである。また、事前に登録した治療パラメータを用いて、治療前後の形状・体積(または面積)を検出し、元の形状・体積と異なっている場合には、パラメータに沿って画像情報を伸縮・更新させるだけでなく、残治療領域を表示して再治療を促す警告と術具誘導により治療精度を向上させる治療画補償機能を有するものである。
<概略構成>
以下、図1に基づいて、本実施形態に係る治療支援システムの構成について説明する。図1は、本実施形態に係る治療支援システムの概略構成図である。
本実施形態に係る治療システムは、主に、核磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置と称する)1と、治療装置と一体化した超音波診断治療装置40とが、パーソナルコンピュータ19と連結され、MRI装置1及び超音波診断治療装置40間の連結情報はモニタ20、13上に表示される。そして、治療プローブ36に取り付けられたポインタ27を位置検出デバイス9が連続的に追随し、ポインタ27の位置情報を転送することで、超音波画像とMRI(またはCT)装置と治療装置とが連結される。
図1のMRI装置1は、垂直磁場方式0.3Tの永久磁石MRI装置であり、患者の周囲に垂直な静磁場を発生する上部磁石3と下部磁石5とが支柱7により垂直方向に並べて配置される。上部磁石3と下部磁石5との間に構成された開口部32内に、被検体24がベッド21に載置されて搬送される。また、MRI装置1は、図示を省略するものの、この静磁場空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生部を備える。この斜磁場発生部は、領斜磁場をパルス的に発生させ、最大傾磁場強度15mT/mで、スルーレート20mT/m/msである。更に、MRI装置1は、静磁場中の被検体24に核磁気共鳴を生じさせるための図示しないRF送信器、被検体24からの核磁気共鳴信号を受信する図示しないRF受信器を備え、これらは12.8MHzの共振型の傾斜磁場コイルにより構成される。傾斜磁場コイルは、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイルは、RF送信部の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFコイルの信号は、信号検出部で検出され、信号処理部で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像信号は、表示部で断層像として表示される。傾斜磁場電源、RF送信部、信号検出部などは、制御部で制御され、制御のタイムチャートは一般にパルスシーケンスと呼ばれている。被検体24は、ベッド21に横たわってRF受信コイル、RFコイル、傾斜磁場コイルなどで囲まれたMRI装置1内の空間に搬送され、断層面の撮像が行われる。
モニタ13は、操作者29が把持する治療プローブ36に備えられたポインタ27により指示された被検体24の断層面の画像を表示するもので、モニタ支持部15により、赤外線カメラ25同様、上部磁石3に連結されている。
本実施形態のMRI装置1は、I−MRI装置として用いるための位置検出デバイス9を備える。位置検出デバイス9は、間隔をおいて(視差を持たせて)設けられた複数の赤外線カメラ25、25と、赤外線を発光する図示しない発光ダイオードを含んで構成され、断層面指示デバイスであるポインタ27の位置及び姿勢を検出するものである。この位置検出デバイス9は、アーム11により移動可能に上部磁石3に連結され、MRI装置1に対する配置を適宜変更することができる。また、ポインタ27の位置検出の方式には、上記に限らず。機械式、光学式、磁気式、超音波式などの方式を用いてもよい。
基準ツール17は、ポインタ27とMRI装置1との相対的な位置関係を検出するためのものであって、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置1の座標系をリンクさせるもので、3つの反射球からなるマーカ35を備え、上部磁石3の側面に設けられている。マーカは、反射球に代えて、発光ダイオードなどの光源でもよい。位置検出の手法については後述の<レジストレーション>欄にて記載する。
パーソナルコンピュータ19には、赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の情報が、術具位置データとして、例えば、RS232Cケーブル33を介して送信される。
制御部23は、ワークステーションで構成され、本体とMRI装置1と電気的に接続される。そして、図示しないRF送信器、RF受信器などを制御する。更に制御部23は、パーソナルコンピュータ19と接続されている。パーソナルコンピュータ19では赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の位置から治療プローブ36の位置データを取得し、その位置データをMRI装置1で利用可能な位置データに変換し、制御部23へ送信する。位置データは、撮像シーケンスの撮像断面へ反映される。新たな撮像断面で取得された画像は液晶モニタからなるモニタ13及びモニタ20に表示される。例えば断層面指示デバイスであるポインタ27を治療プローブ36にとりつけ、治療プローブ36のある位置を常に撮像断面とする様に構成した場合、モニタ13、20には治療プローブ36から照射される集束超音波の焦点を含む断面が表示されることになる。また、治療プローブ36に代わり、穿刺針を用いた手技において、穿刺針のある位置を常に撮像断面とするように構成した場合、モニタ13、20には、穿刺針の先端部を常に含む断面が表示されることとなる。その他、生体情報に同期した計測をすることも可能であり、被検体24に取り付けられた同期(時相)計測装置41にて各種情報(脈波、心電、呼吸)を取得することができる。
MRI装置1及び超音波診断治療装置30は、手術室100内に設置され、パーソナルコンピュータ19及びこれに接続されたモニタ20、制御部23、映像記録装置24は、手術室に隣接する操作室101内に備えられる。そして、モニタ13は、術者29が視認し、モニタ20は、操作室101内の操作者(図示を省略)が視認する。更に、パーソナルコンピュータ19には、映像記録装置34が接続され、術中の動画像(映像信号)は映像記録装置34に同時記録される。
次に、超音波診断治療装置40について説明する。以下、図2、3に基づいて、超音波診断治療装置40の構成について説明する。図2は、超音波診断治療装置の構成を示すブロック図、図3は、治療プローブ36の構成を示す説明図である。
超音波診断治療装置40は、術者29が集束超音波の出力条件などを入力するためのGUIからなるコントロールパネル41と、コントロールパネル41に接続され、超音波診断治療装置40の動作を制御する制御部42と、制御部42に接続され、放射状の超音波45及び集束超音波46(図3参照)を送信したり、反射波を検出したりする超音波送受信部43と、超音波送受信部43及び制御部42に接続され、受信した反射波に基づいて超音波画像を構成する超音波画像構成部44とを備える。超音波画像構成部44にはモニタ38が接続され、モニタ38に生成した超音波画像が表示される。
治療プローブ36は、振動子素子が超音波探触子の長軸方向に1〜mチャンネル分配列される。ここで、短軸方向にもk個に切断されて1〜kチャンネル分配列されている場合、短軸方向の各振動子素子(1〜kチャンネル)に与える遅延時間を変えることにより、短軸方向にも送波や受波のフォーカスがかけられるように構成される。また、短軸方向の各振動子素子に与える超音波送信信号の振幅を変えることにより送波重み付けがかけられ、短軸方向の各振動子素子からの超音波受信信号の増幅度又は減衰度を変えることにより受波重み付けがかけられる。さらに、短軸方向のそれぞれの振動子素子をオン、オフすることにより、口径制御ができるようになっている。
なお、この治療プローブ36は、超音波送受信部43から供給される駆動信号に重畳して印加されるバイアス電圧の大きさに応じて超音波送受信感度つまり電気機械結合係数が変化する、例えばCMUT(Capacitive Micro machined Ultrasonic Transducer)を適用できる。CMUTは、半導体微細加工プロセス(例えば、LPCVD:Low Pressure Chemical Vapor Deposition)により製造される超微細容量型超音波振動子である。
超音波送受信部43は、治療プローブ36に送信信号を供給すると共に受信した反射エコー信号を処理するもので、その内部には、治療プローブ36を制御し超音波ビームの打ち出しをさせる送波回路と、この打ち出された超音波ビームの被検体内からの反射エコー信号を受信し生体情報を収集する受波回路と、これらを制御する制御回路とを有している。
超音波画像構成部44は、超音波送受信部43で処理した反射エコー信号を超音波断層像に変換するもので、順次入力される反射エコー信号に基づいて超音波画像を形成するデジタルスキャンコンバータと、超音波画像を記憶する磁気ディスク装置及びRAMとからなる記憶装置とから成り、超音波送受信部43で受信した反射エコー信号を信号処理し、2次元超音波画像や3次元超音波画像、各種ドプラ画像に画像化して出力する。
モニタ38は、超音波画像構成部44で作成された超音波画像を表示するもので、例えばCRTモニタ、液晶モニタから成る。
そして、制御部42は、前記各構成要素の動作を制御するもので、ユーザインターフェース回路とのインターフェース(コントロールパネル41に相当)を有する制御用コンピュータシステムより構成されている。この制御部42は、それに含まれるユーザインターフェース及び該ユーザインターフェースからの情報等に基づいて超音波送受信部43を制御する。また、超音波送受信部43で受信した生体情報を超音波画像構成部44に転送したり、超音波画像構成部44で画像化した超音波画像をモニタ38に伝送するなどの制御を行う。
治療プローブ36は、図3に示すように、集束超音波を発生する治療プローブ44の中に診断用コンベックス型超音波プローブ(以下「診断プローブ」という)43を内蔵した治療プローブである。診断プローブ43が放射状の超音波45を発する一方、治療プローブ44は、焦点47に向かって集束する集束超音波46を発する。治療プローブ36は、集束超音波46の焦点47と、放射状の超音波45の中心軸とをほぼ一致させて、診断プローブ43を治療用プローブ44と一体化して構成される。
治療プローブ36から集束超音波を治療予定領域に照射するときの一回の超音波照射は通常数秒間であり、複数の部位を治療する場合には、通常十数秒間の間隔を設ける。治療効果は、超音波照射により組織が熱凝固する温度以上に加熱されることにより得られると考えられている。
次に、図4に基づいて、治療支援システム10に用いられる治療支援プログラムについて説明する。図4は、治療支援システム10に用いられる治療支援プログラムの構成を示すブロック図である。治療支援プログラムは、パーソナルコンピュータ19の図示しない記憶装置に格納される。
治療支援プログラムは、被検体24の3Dボリュームデータを取得する画像データ取得部19aと、3Dボリュームデータに基づいて被検体の再構成画像、(例えば、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像からなる3軸断層画像や、ボリュームレンダリング画像)を生成する画像再構成部19bと、被検体の再構成画像から病変部位が撮影された領域(以下病変部位を「特定部位」、病変部位が撮影された領域を「特定領域」という)を抽出する特定領域抽出部19cと、温熱治療に用いる治療器具(以下「術具」という)を登録する治療器具登録部19dと、被検体の再構成画像に特定領域の位置や治療プローブ36の位置を重畳表示したナビゲーション画像を生成するナビゲーション画像生成部19eと、温熱治療による特定部位の拡張量を算出する拡張量算出部19gと、特定部位の拡張量を算出するための治療パラメータを記憶するパラメータ記憶部19fと、術前の被検体の3次元ボリュームデータを格納するボリュームデータ記憶部19hと、位置検出デバイス9からの位置情報に基づいて、治療プローブ36及び被検体24の実空間上の位置を求め、これをMRI装置1が使用可能な検出空間の座標系に変換し、更に検出空間の座標系を被検体の再構成画像上の座標系に変換して、被検体画像と治療プローブ36及び被検体24の実空間上の座標とを一致させる位置検出処理部19iと、被検体の再構成画像内の特定領域にマーカを付与するマーキング部19jと、術具の経路、特に本実施形態では、集束超音波の焦点位置や経路(集束超音波の中心軸の進行方向:図7以下におけるz軸に相当)を、位置検出デバイス9が求めたポインタ27の傾きや集束超音波の周波数、深度などのパラメータに基づいて算出したり、特定領域のうち治療がされていない領域(以下「残治療領域」という)へのアプローチ方向を算出する経路算出部19kと、ナビゲーション画像や超音波画像をモニタ20、13へ表示制御する表示制御部19lと、特定部位の形状や物理量を測定し、術前の形状、物理量と、温熱治療中の形状、物理量とを比較して、特定部位が拡張したか否かを判断する組織拡張判定部19mと、集束超音波の照射時間を計測する計時部19nと、治療器具の位置や経路及び投与されたエネルギー量に基づいて算出されたエネルギー投与領域を治療済領域として表示する治療済領域表示部19oと、治療済領域を時系列に沿って記録したログ情報を生成するログ生成部19pと、ログ情報を記録するログ記憶部19qと、特定領域から治療済領域を除いた残治療領域を求める残治療領域算出部19rと、を備える。画像再構成部19bは、画像データ取得部19aが、再構成画像を取得する場合には必須ではない。
上記プログラムは、パーソナルコンピュータ19に備えられた図示しないメモリにロードされてCPUにより実行されることにより、各プログラムとパーソナルコンピュータ19を構成するハードウェアとが協働し、プログラムが備える機能が実現される。
<治療支援システムの処理の流れ>
以下、図5〜13に基づいて、本実施形態に係る温度計測併用治療補助機能について説明する。図5は、本実施形態に係る治療支援システムの処理の流れを示すフローチャートである。図6は、治療パラメータ時のGUIの一例を示す模式図である。図7は、治療器具毎のエネルギー分布を示す説明図である。図8は、エネルギー投与量と拡張(膨張)係数との関係を示すグラフである。図9は、図8の拡張係数を用いた治療領域周辺の拡張シミュレーションを示す説明図である。図10は、エネルギー投与量と画像伸縮半径との関係を示すグラフである。図11は、パラメータに応じたナビゲーション画像伸縮処理を説明する説明図である。図12は、術具ナビゲーション時のGUIの一例を示す模式図である。図13は、治療時のGUIの一例を示す模式図である。
以下、図5のフローチャートのステップ順に沿って説明する。治療支援システム10の処理を開始する前の初期状態において、モニタ20には、図6に示す治療パラメータ時の画面60が表示される。画面60は、被検体24の画像が表示される画像表示領域61と、選択・登録された治療器具の情報が表示される選択治療器具情報表示領域62と、操作ボタンが表示されるボタン領域63と、を含む。
ボタン領域63には、温熱治療に用いる治療器具の登録/選択を行うボタン「治療器具登録/選択」631と、「特定領域指定」ボタン632と、被検体の3Dボリューム撮像を行う撮像ボタン「3DScan(T1W)」633及び「3DScan(T2W)」634と、3次元再構成画像のうち病変部位が撮影された領域(以下「特定領域」という)を検出する「特定領域描出」ボタン635と、術具(本実施形態における治療プローブ36に相当)とその初期位置を登録するための「レジストレーション」ボタン636と、が備えられる。
(ステップS1)
操作者は、手術直前に「治療器具登録/選択」ボタン631を押下し、手術に使用する術具の選択・登録を行う(S1)。これは、術具によって、その術具から発生する外部エネルギーの分布が異なるため、後述するステップS5において、術具に応じた治療パラメータを読み出すためである。
治療器具登録部19dは、「治療器具登録/選択」ボタン631が押されると、予め治療パラメータ記憶部19fに記憶された治療パラメータに対応する術具を、画面60に例えばリスト表示し、操作者がマウス等のポインティングデバイスで指定することにより、治療器具の選択と登録が行われる。治療器具登録部19dは、選択治療器具情報表示領域62内に選択された治療器具の詳細情報、例えば術具の種類を文字情報で、x、y、z方向の治療半径、伸縮範囲A,Bの各半径、を数値631と模式図633とにより表示する。模式図633には、プローブ632、特定領域634、伸縮範囲A635、伸縮範囲B636が図示される。
(ステップS2)
操作者は、「3DScan(T1W)」633又は「3DScan(T2W)」634を押下げ、被検体24の治療対象部位を含む3次元ボリューム画像を撮像する(S2)。これらの3次元ボリューム画像は、術具ナビゲーションに用いられるが、事前に取得した3次元ボリュームデータを用いて術具ナビゲーション画像を生成する場合には、本ステップを省略することができる。
「3DScan(T1W)」633又は「3DScan(T2W)」633が押し下げられると、MRI装置1が被検体24の3次元ボリューム撮像を行い、画像データ取得部19aが、MRI装置1から3次元ボリュームデータを取得し、ボリュームデータ記憶部19hに格納される。画像再構成部19bは、ボリュームデータ記憶部19hから3次元ボリュームデータを読出して画像再構成演算を行い、3軸断層像(アキシャル像、サジタル像、コロナル像)、及びボリュームレンダリング像を再構成する。再構成された被検体画像は、画像表示領域61内に、それぞれアキシャル像620、サジタル像621、コロナル像622、ボリュームレンダリング像623として表示される。
なお、本実施形態では、術前の3次元ボリューム画像を、治療支援システム10に含まれるMRI装置1を用いて撮像するが、被検体24に対する被検体マーカの位置が同じ状態であれば、他の撮像装置、例えばMRI装置1とは異なる撮像装置、例えば他のMRI装置やX線CT装置により撮像し、被検体マーカが写り込んでいる3次元ボリューム画像を用いて再構成された被検体画像をモニタ20に表示し、これに基づいて治療対象となる特定領域を抽出してもよい。
例えば、被検体24の治療対象部位が腹部にある場合、被検体の剣状突起に被検体マーカを添付して3D撮像することにより、術前の3次元ボリューム画像に写り込んだ剣状突起部分の被検体マーカと、ベッド21に載置された被検体24の剣状突起部分の実座標と、を一致させることにより、呼吸による体動による位置ずれを抑止しつつ、術前、術中の3次元ボリューム画像の位置合わせを行うことができる。
(ステップS3)
操作者が、「特定領域描出」ボタン635を押下げると、3次元ボリュームデータから病変部位が撮像された領域である特定領域が抽出される。更に、抽出された特定領域のうち、所望する特定領域を選択して「特定領域指定」ボタン632を押し下げることにより、拡張量の算出を行う対象となる特定領域を設定する(S3)。
特定領域抽出部19cは、画像再構成部19dが生成した3次元被検体画像から、濃度値(CT値)や形状を基に特定領域を抽出する。特定領域の抽出は、特定領域抽出部19cによる自動抽出に代えて、モニタ20に表示されたアキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像、ボリュームレンダリング画像のいずれか上において、操作者が図示しない制御部23に備えられたマウスを用いて入力してもよい。組織拡張判定部19mは、抽出された特定領域の形状、体積(又は面積)を測定する。測定値は、温熱治療により特定領域が拡張(膨張)したか否かの判定に用いられる。
また、操作者が、3次元画像上において抽出された特定領域を指定し、「拡散(膨張)領域指定」ボタン632を押下げると、拡張量算出部19gは、指定された特定領域を拡張量の算出対象となる特定領域として設定する。これにより、ナビゲーション画像に複数の特定領域が含まれる場合にも、これから治療を行う予定の特定領域のうち、拡張量の算出を行う特定領域を指定することができる。
マーキング部19jは、抽出された特定領域624にマーカを付す。また、必要に応じて特定領域624を含む領域であって、過度の温熱治療を抑止するために、想定値以上の組織の変性(膨張や温度上昇)がされると警告を発するための警告領域(図13における警告領域1026)を設定し、警告領域に対してもマーキングを行ってもよい。
(ステップS4)
操作者が、「レジストレーション」ボタン636を押下げると、位置検出処理部19iが、術具(本実施形態における治療プローブ36)とその初期位置の登録処理(レジストレーションという)を開始する(S4)。
位置検出処理部19iは、まず、ポインタ27の実空間上のMRI装置1に対する相対的な座標を、基準ツール17を基準に算出する。
位置検出処理部19iは、位置検出デバイス9の各カメラ25、25の撮影した各画像中の基準ツール17のマーカ35の位置の変位より各マーカ35の、位置検出デバイス9に対して初期的に定義された検出空間上の座標を求める。そして、この各マーカ35の座標を基準に、検出空間の定義を、MRI装置1において定義されている検出空間に一致するよう修正する。すなわち、同じ実空間の座標に対応する、位置検出処理部19iの検出する検出空間上の座標と、MRI装置1が用いる検出空間上の座標とが一致するようにする。
次に、位置検出処理部19iは、位置検出デバイス9の各カメラ25、25の撮影した各画像中のポインタ27の位置の変位より各ポインタ27の検出空間上の座標や、ポインタ27先端の座標を算出する。また、本実施形態では、位置検出処理部19iにおいて、各マーカ27の検出空間上の座標よりポインタ27の指示方向、すなわちポインタ27の向きをも算出する。経路算出部19kは、ポインタ27の向きから術具の進行方向(本実施形態の場合には、集束超音波の中心軸(z軸)方向)を算出し、点線625により再構成画像620、621、622、623上に重畳表示する。
次に、位置検出処理部19iは、被検体24の剣状突起上に置かれた被検体マーカ24aを指示している状態に対して算出したポインタ27の先端の検出空間の座標より、ボリュームデータ記憶部19hに記憶されているボリュームデータの画像系の座標と検出空間上の座標との関係式、すなわち、検出空間上の現在の患者の剣状突起がある位置と、ボリュームデータ中において被検体24の剣状突起が写り込んだ位置(画像系の座標)と、を対応づける関係式を求め、これをレジストレーション結果として記憶する。より具体的には、たとえば、その時点でポインタ27の先端で指示している被検体マーカ24aのボリュームデータ中の座標への、算出したポインタ27の先端の検出空間の座標の変換を行う、または、その逆の変換を行う座標変換式を求め、これをレジストレーション結果として記憶する。検出空間の座標は、モニタ20に表示される画像における画像上の座標に変換される。
被検体マーカ24aの被検体24に対する位置が不変であれば、ステップS1において、MRI装置1とは異なる装置、例えばX線CT装置により被検体マーカ24aを装着した被検体24を撮像してもよい。異なる装置で得た3次元ボリューム画像にも、被検体マーカ24aが写り込んでいるため、ベッド21に載置した被検体24の被検体マーカ24aをポインタ27の先端で指して位置を検出することにより、ベッド21に載置した被検体24の実空間座標と、X線CT装置で撮像したときに被検体24の実空間座標とが異なっていても、ベッド21に載置した被検体24の被検体マーカ24aの実空間座標を検出空間上の座標に変換し、変換後の座標と3次元ボリューム画像に写り込んだ被検体マーカ24aの画像上の座標とを一致させることができ、3次元ボリューム画像上にポインタ27から得られる画像を、画像上の座標を一致させて表示することができる。X線CT装置から得た3次元ボリューム画像を用いる場合には、特定領域抽出部19cは、CT値を基に、特定領域の自動抽出を行ってもよい。
また、被検体24にポインタを取り付けられない場合は、レーザを用いたサーフェススキャン法を用いてもよい。このサーフェススキャン法では、術前にレーザによるサーフェススキャンを行って被検体形状を取得・記録し、そのデータを基にレジストレーションを行い、手術中は随時レーザにより被検体形状を取得し続けることによりポインタ装着と同じ効果が得られる。これにより、被検体24の呼吸動・体動による位置ズレが生じた場合でも、レーザによるサーフェス再スキャンの結果に基づいて撮像断面を自動追従・補正することで、常に三次元空間と画像画素の位置関係を一定に保つことができる。
レジストレーションが終了すると、モニタ20の画面は、図6の治療パラメータ設定時の画面60から図12の術具ナビゲーション時の画面120に遷移する。画面120は、リアルタイム画像を表示するリアルタイム画像領域121と、ナビゲーション画像を表示するナビ画像領域122と、各種ボタンが配列されるボタン領域123とを備える。
ボタン領域123には、「Planning」ボタン1231「生体情報」ボタン1232、「超音波画像」ボタン1233、「ナビゲーション画像」ボタン1234、「パラメータ/治療器具変更」ボタン1235、「画像情報変更(MRI、CT画像)」ボタン1236、「拡張(膨張)率シミュレーション」ボタン1237、「装置起動」ボタン1238、が備えられる。
「Planning」ボタン1231を押し下げると、経路算出部19kが手術経路(本実施形態では集束超音波の中心軸の経路)を作成し、ナビゲーション画像上に点線625を用いて重畳表示する。また、「Planning」ボタン1231により、温熱治療に用いるエネルギー投与量、集束超音波の照射時間など、温熱治療に必要な各種治療条件を設定することができる。
「生体情報」ボタン1232を押し下げると、画面1216内に被検体24の情報、例えば、脈、呼吸等の患者情報が、術具(治療装置)等の詳細情報とともに表示されるが、この表示内容及び表示位置は、リアルタイム画像領域1211に限らず、適宜変更可能である。
「超音波画像」ボタン1233を押し下げると、超音波診断治療装置40が撮像した超音波画像1211が表示される。超音波画像1211は深度や周波数等の各種パラメータも表示されている。超音波診断治療装置40が撮像した超音波画像をリアルタイム画像として用いるため、超音波画像がリアルタイム画像領域1211に表示される。
「ナビゲーション画像」1234を押し下げると、術前に撮像した3次元ボリュームデータに基づいて再構成された再構成像、すなわち3軸断面アキシャル像620、サジタル像621、コロナル像622、ボリュームレンダリング像624を用いたナビゲーション画像が表示される。ナビゲーション画像には、治療プローブ36の位置1212が重畳表示される。なお、ナビ画像領域122に表示される3軸断面画像の中心は、一般的には、登録された特定領域624に設定されているが、治療プローブ36の現在位置に応じた特定領域を再構成して表示させることも可能である。
「パラメータ/治療器具変更」ボタン1235を押し下げると、事前に設定したパラメータ群(エネルギー量、エネルギー分布及び画像拡張率、超音波画像設定、ナビゲーション設定等)を一括変更することができ、押下するごとにパラメータをリアルタイムに変更することができる。また、事前に登録した治療器具を変更することもできる。
「画像情報変更(MRI、CT画像)」ボタン1236を押し下げると、ナビゲーション画像としてMRI画像の他、CT画像など複数の3次元ボリュームデータに基づく画像を予め登録しておいた場合に、ナビゲーション画像に用いる再構成像を変更することができる。すなわち、ボリュームデータ記憶部19hに複数の3次元ボリュームデータを格納し、画像再構成部19bがこれらの各3次元ボリュームデータを用いて再構成画像を予め生成し、記憶装置(図示を省略)しておく。そして、「画像情報変更(MRI、CT画像)」ボタン1236が押し下げられると、それまでナビゲーション画像に用いられていたのとは別種の再構成像を用いてナビゲーション画像生成部19eがナビゲーション画像を作り直して表示する。
「拡張(膨張)率シミュレーション」ボタン1237を押し下げると、超音波画像1211、ナビゲーション画像620〜623を規程エネルギーで治療した場合の画像の伸縮(腫れ)の様子をシミュレーションしてGUI表示することができる。
「治療開始」ボタン1238を押し下げると、超音波診断治療装置40、画像誘導ナビゲーション、麻酔器等手術支援装置等、手術に用いられる装置が起動する。
(ステップS5)
治療のプランニングを行う(S5)。操作者が「Planning」ボタン1231を押し下げると、モニタ20上にステップS1で選択した術具から投与するエネルギー投与量、エネルギー照射時間など、温熱治療の条件設定を行うためのGUI(図示を省略)が表示される。また、選択された術具に応じた治療パラメータの読み込みを行う。上記入力設定は、モニタ20のGUIにより行ってもよいし、超音波診断装置40のコントロールパネルから入力設定を行い、そのデータをパーソナルコンピュータ19が取得してもよい。また、拡張量算出部19gは、治療パラメータ記憶部19fに記憶された治療パラメータの読み込みを行う。
一般に、治療器具により、その治療器具から投与されるエネルギーの分布が異なるので、本ステップにより、治療器具を選択・登録し、選択された治療具に合った治療パラメータを設定する。ここでいう、治療パラメータ設定とは、治療器具の方向に対するエネルギー分布を登録するものであり、エネルギー量と時間に応じて組織の伸縮量を設定する。
以下、図7に基づいて、治療器具毎にエネルギー分布が異なることを説明する。以下、集束超音波の進行方向をz軸、それに直交する2軸をx、y軸と定義する。
図7の術具A(穿刺針701)で特定部位702に対してエネルギーを投与した場合、穿刺針701の外部に対するエネルギー分布は、相対的に高投与となるエネルギー投与領域703と、相対的に低投与となるエネルギー投与領域704の2段構成となる。エネルギー投与領域703は、特定部位702を含み、穿刺針701の先端を中心とする円形状に分布する。エネルギー投与領域704は、穿刺針701の先端を中心とする円形のうち、エネルギー投与領域703を除外したドーナツ状に分布する。そして、エネルギー投与領域703、704は、穿刺針701の先端を中心に、同心円状に分布する。
また、術具B(治療プローブ711)から照射される集束超音波711では、穿刺針701の場合とほぼ同様に、特定部位712に対して、相対的に高投与となるエネルギー投与領域713と、相対的に低投与となるエネルギー投与領域714とが、ほぼ同心円状(長軸短軸が同一)に分布する。
これに対し、術具C(治療プローブ521)から照射される集束超音波721では、特定部位722に対して、相対的に高投与となるエネルギー投与領域712の分布と、相対的に低投与となるエネルギー投与領域724の分布とが、それぞれ長軸方向(集束超音波721の進行方向に相当)に比べて短軸方向には少ない。これは、集束超音波521の進行方向に沿ってエネルギー投与領域が分布するという、集束超音波の特性による。
つまり、術具に応じて、治療効果(エネルギー分布)が異なることから、術具を予め選択・登録し、その術具に合ったエネルギー分布を3次元的に登録することで、治療に向けたシミュレーションが可能となる。
以下、術具Cを例に、治療パラメータと拡張領域シミュレーション方法について説明する。なお、図1の治療プローブ36は術具Cに相当する。
図8(a)、(b)、(c)は、x、y、z軸の各方向に沿ったエネルギー投与量と拡張(膨張)係数との関係を示すグラフである。図8のグラフ(a)、(b)、(c)には、治療領域から比較的近い場所にある高エネルギー投与領域における拡張係数kと、高エネルギー投与領域の外側に位置する低エネルギー領域における拡張係数mと、を示す。ここでいう拡張係数とは、治療前の特定領域に対する、エネルギー投与後の膨張率を意味する。一般にエネルギー投与量が増加するほど、組織の拡張(膨張)係数も増加する。術具Cの場合、x、y方向(短軸方向)ではほぼ同心円状に膨張するため、x、yの各方向に対する拡張係数kxとky、mxとmyとは、図8(a)(b)において同じ傾きで示されるが、z方向(長軸方向)では、短軸方向に比べて組織の膨張率が高いため、kzとmzは、kxとky、mxとmyに比べてより大きな傾きで示される。
図9に基づいて、図8の拡張係数を用いて治療領域周辺の拡張シミュレーションを行う処理を説明する。図9は、特定部位903に対してx、y、zの各方向に対し、図8の拡張係数を適用した各方向の2段階のエネルギー分布を示す。拡張領域904(拡張領域904は、特定部位902を含む領域であり、図9の拡張領域904を示す点線の円内全体の領域である)は、拡張率が相対的に高く、拡張領域905(図9の特定部位903を示す点線の円内のうち、拡張領域904を除くドーナツ状の領域である)では拡張率が相対的に低くなる。
x−y平面では同一の拡張率であるため、2段階の円形のエネルギー投与領域が同心円状に分布する。一方、y−z平面、x−z平面は、z方向に沿った長軸とx、y方向に沿った短軸とからなる楕円状のエネルギー投与領域が同心円状に分布する。各領域の拡張率は、以下の式により求めることができる。
x軸方向の拡張領域902における拡張率=kx・e−x・t(−c<x<c)
x軸方向の拡張領域903における拡張率=mx・e−x・t(−c<x<−e、e<x<c)
y軸方向の拡張領域902における拡張率=ky・e−y・t(−d<y<d)
y軸方向の拡張領域903における拡張率=my・e−y・t(−f<y<−d、d<y<f)
z軸方向拡張領域902における拡張率=kz・e−z・t(−g<z<g)
z軸方向の拡張領域903における拡張率=mz・e−z・t(−h<z<−g、g<y<h)
(但し、tはエネルギーが投与された時間)
なお、上記では拡張率を用いて説明したが、拡張率を拡張量、又は画像収縮半径に置き換えても同様の作用効果を奏する。また、上式において、本実施形態では、c=d、f=eとなる。
図10に基づいて、エネルギー投与量と画像伸縮半径との関係を説明する。図10の画像収縮半径は、図8の拡張係数と図9の拡張率を基に、拡張量算出部19gが画像伸縮半径を算出した結果を示す。図10(a)(b)(c)は、それぞれ、x、y、z方向におけるエネルギー投与量と画像伸縮半径との関係を示す。エネルギー投与量が多いほど、組織の拡張量が大きくなるので、その拡張量に合わせてナビゲーション画像に撮像された特定領域の画像を伸縮する必要がある。図7の術具cは、x、y方向については、拡張係数が等しいので、図10の(a)(b)に示すように、x、y方向におけるエネルギー投与量に対する画像伸縮半径は等しくなる。また、拡張係数kx、kyは、mx、myよりも大きいので、kx、kyに対応する画像伸縮半径は、mx、myに対応する画像伸縮半径よりも大きい。また、z方向の拡張係数は、x、y方向の拡張係数よりも大きいので、画像伸縮半径も大きくなる。
治療パラメータ記憶部19fは、術具毎に、エネルギー投与量と画像伸縮半径とを算出するための治療パラメータを記憶する。拡張量算出部19gは、経路算出部19kが算出した経路(z軸)に基づいて、x、y、z軸方向を求める。続いて、拡張量算出部19gは、エネルギー投与量を示す情報を取得、またはエネルギーの出力と照射時間からエネルギー投与量を算出し、このエネルギー投与量を治療パラメータに適用することで、x、y、z軸方向の各方向における拡張量を求め、これに応じた画像伸縮半径を算出する。ナビゲーション画像生成部19eは、その画像伸縮量に応じてナビゲーション画像(アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像、ボリュームレンダリング画像)の特定領域が撮像された部位の画像が伸縮された更新ナビゲーション画像を生成、表示する。
なお、上記図10では、エネルギーの投与時間tと画像伸縮半径との関係は示していないが、エネルギーの投与時間tが長くなるとそれに応じてエネルギー投与量も増加するので、図10のエネルギー投与量をエネルギー投与時間tに置き換えてもよい。エネルギー投与時間tと画像伸縮半径との関係を示すパラメータもあらかじめ準備しておき、上記と同様、エネルギー投与時間tに応じて画像の伸縮処理を行ってもよい。また、上記では、2段階の拡張範囲を設定したが、拡張範囲は1段階でも、また3段階以上でもあってもよく、段階数に応じた拡大係数等を規定することにより、上記2段階の場合と同様、エネルギー投与量及び/又はエネルギー投与時間に応じた画像伸縮処理を行うことができる。
上記図8、図10の各グラフは、術具の特性に応じてユーザによる変更が可能である。これら図8、図10が、本実施形態における治療パラメータとなるが、治療パラメータは、図8、図10に限らず、治療による組織の拡張領域を算出可能なデータであれば、データの種類や構造を問わない。
(ステップS6)
ステップS5で登録された拡張領域の算出を行い、シミュレーション表示を行う(S6)。
操作者が「拡張(膨張)率シミュレーション」ボタン1237を押すと、経路算出部19kは登録された術具を用いた場合の特定領域への経路を算出する。上述の図7で述べたように、エネルギー投与領域の分布は、集束超音波の進行方向(z軸方向)に沿った長軸を有する3次元領域(ラグビーボールの形状に相当する)を有するなど、集束超音波の進行方向に依存することがあるので、経路を求めてから拡張領域の算出を行う。但し、エネルギー投与領域が3次元の等方向に等量分布し、3次元の等方向に等量の拡張を生じる場合には、経路算出部19kは、経路ではなく、術具の先端位置(エネルギー投与の中心位置)を算出すればよい。
次に、拡張量算出部19gが、ステップS4で設定されたエネルギー投与量に基づいて拡張領域の算出を行う。
以下、図11に基づいて、拡張量算出部19g及びナビゲーション画像生成部19eによる、パラメータに応じたナビゲーション画像伸縮処理を説明する。図11は、パラメータに応じたナビゲーション画像伸縮処理を説明する説明図である。
図11(a)は、画像伸縮前(エネルギー未付与)状態を示す。組織1105内に特定領域(例えば腫瘍)1102があり、この中に集束超音波1101を照射する治療領域1103があるとする。集束超音波1101により加熱される治療領域1103に対する拡張量1104は、拡張量算出部19gが、図10の治療パラメータにエネルギー投与量を適用することで求まり、更にこの拡張量に対応した画像収縮半径も求まる。そこで、ナビゲーション画像生成部19eは、算出された画像収縮半径により、治療領域1103が拡大したとして画像補償を行う。
この処理を図11(b)の画像伸縮過程により図示する。ナビゲーション画像生成部19eは、治療領域1103が拡大領域1104に変化することに伴い、元の特定領域1102は領域1110に拡大する。更にそれに伴う周辺組織の押し出され1111〜1113、組織表面の形状1115が変化する。
よって、ナビゲーション画像生成部19eは、治療領域1103から拡大領域1104への変化量分、特定領域1102から組織1115表面までの画像を線形かつ全体的に画像を伸張した線形画像を生成し、ナビゲーション画像の特定領域部分の画像を、生成された線形画像に置き換えた更新ナビゲーション画像を生成する。ナビゲーション画像生成部19eによる線形の画像伸縮処理は、拡張した組織が周辺組織を押し出す量や、組織の位置に応じて、伸縮量を変更してもよい。例えば、特定領域の体表面からの深度が浅いほど、組織表面の形状変化がより大きくなるように画像伸縮処理を行ってもよい。また、周辺組織の形状変化の大小は、例えば腹部では腹圧の影響や、組織の硬度によっても影響を受けること考えられるので、ナビゲーション画像生成部19eは、組織の画像伸縮半径と、その組織の位置(体表面からの深度や部位)や、組織の硬度に応じて周辺組織の画像伸縮量を変更してもよい。そこで、ナビゲーション画像生成部19eは、画像伸縮用パラメータとして、組織の拡張(膨張)量、組織の位置(例えば体表面下の深度)、組織の硬度など、考慮すべきパラメータを反映させた治療パラメータを用意しておき、超音波診断装置40やナビゲーション画像から、各パラメータを適用するために必要なデータ、例えば、組織の深度や、組織の硬度を取得し、これらのパラメータを考慮した拡張(膨張)量による線形変換を行うように構成してもよい。
一例として、組織の画像伸縮半径が2cm、組織が体表面下2〜3cmにある場合には、ナビゲーション画像生成部19eは、体表面が1.5〜2cm盛り上がるように画像伸縮を行うが、画像伸縮半径が2cmであっても、その組織が体表面下5cmよりも深い位置にある場合には、周囲の組織が押されても、体表面への影響が少ないため、体表面は盛り上がることがなく、組織周辺部位の画像伸縮処理だけを行うようにしてもよい。
表示制御部19lは、図6のナビゲーション画像(アキシャル画像620、サジタル画像621、コロナル画像622、ボリュームレンダリング画像623)を更新ナビゲーション画像に差し替えて表示する。または、本ステップのシミュレーション時においては、ナビゲーション画像(アキシャル画像620、サジタル画像621、コロナル画像622、ボリュームレンダリング画像623)上に、別ウィンドウを立ち上げ、その中にシミュレーションによる更新ナビゲーション画像を表示してもよい。
本ステップにより、登録術具を用いたアプローチ方法(角度・距離)が可視化され、手術シミュレーションとして機能させることができる。手術シミュレーションが不要な時は、本ステップを省略してもよい。
(ステップS7)
「装置起動」ボタン908を押し下げると、治療機器及び画像誘導ナビゲーション機能が起動し、手術開始となる(S7)。モニタ20の画面は、術具ナビゲーション時の画面120から、図13の治療時の画面130へ遷移する。画面130は、リアルタイム画像を表示するリアルタイム画像領域131と、ナビゲーション画像を表示するナビ画像領域132と、各種ボタンが配列されるボタン領域133とを備える。
図13のリアルタイム画像領域131には、生体情報1320と、術前の超音波画像1311、治療中の超音波画像1313(治療時においてはリアルタイム画像となる)、治療後の超音波画像1318(治療後においてはリアルタイム画像となり、超音波画像1313が過去画像となる)がそれぞれ表示される。図13では図示を省略するものの、各超音波画像を撮像したときの深度や周波数等の各種パラメータも表示してもよい。
また、超音波画像1311に含まれる治療前の特定領域1312は、治療中の超音波画像1313において治療済領域1315と残治療領域1317とが判別できるように表示態様を変えて表示される。更に、超音波画像1313では、エネルギー投与領域の外縁部1316が重畳表示される。なお、超音波画像1311の組織1314は、未だ形状変化を生じていない。
更に、超音波画像1318では、治療によって生じた組織の膨張が表示される(組織表面が盛り上がって表示される)とともに、拡張領域1319が表示される。組織1314の形状は、拡張領域1319の発現に伴い変化する。
ナビ画像領域132には、術具ナビゲーション時の画面120と同様、被検体の3軸断面及びボリュームレンダリング画像を用いたナビゲーション画像1320、1321、1322、1323が表示される。
ボタン領域133には、画面120と同様、「Planning」ボタン1231、「生体情報」ボタン1232、「超音波画像」ボタン1233、「ナビゲーション画像」ボタン1234が表示される。更に、「拡張(膨張)表示)」ボタン1331、「ナビゲーション画像拡張(膨張)率反映」ボタン1332、「治療開始」1333、「ログ」ボタン1334、「治療経過」ボタン135を備える。
画面130の「治療開始」ボタン1333が押し下げられると、それに連動して、「ナビゲーション画像拡張(膨張)率反映」ボタン1332、「ログ」ボタン1334がONとなるが、必要に応じて手動でOFFとすることもできる。
「拡張(膨張)領域表示」ボタン1331を押下げると、治療(画像伸縮)前後の画像やパラメータ設定状況が一覧表示される。
「ナビゲーション画像拡張(膨張)率反映」ボタン1332を押下げると、術前に撮像したMRI画像やCT画像が術具パラメータに応じて伸縮し、ナビゲーション画像は治療後の画像に変更される。残治療領域が存在する場合には、その領域に対するアプローチ方向を示すマーカ1328が三次元的に表示され、次の動作を術者に提示する。アプローチ方向の算出は、経路算出部19iが行い、表示制御部19lがマーカを重畳表示する。
「ログ」ボタン1334が押し下げられると、ログ生成部19pがログ記録部19nに記録された治療完了部位と未完了部位とを時系列に沿って記録された情報に基づいて、治療の進行状況を示す画像(動画を含む)を生成し、表示制御部19lがモニタ20、13に表示する。
「治療経過」ボタン135が押し下げられると、術前の3次元画像と術中の更新3次元画像との差分画像を生成し、その差分領域を術前3次元画像に重ね合わせた治療経過画像が生成、表示される。治療経過画像の生成は、治療済領域表示部19oが行ってもよいし、別途治療経過画像を生成する手段を設けてもよい。
また、超音波画像1311、1313、1318及びナビゲーション画像1320、1321、1322、1323には、特定領域(治療領域)の周辺に位置する正常組織への過負荷(過治療)を監視し、所定値以上の負荷がかかった場合に警告を発するための警告領域が表示される。これより、術者は今後の治療領域を目視して術具の移動と追加治療を行うことができる。また、治療前後の情報は超音波画像、ナビゲーション画像の他に数値データとして表示することもできる。
(ステップS8)
位置検出部19iは、リアルタイムで、治療プローブ36の位置及び被検体24の体位(動き)の検出を行う(S8)。
(ステップS9)
ナビゲーション画像生成部19eは、ナビゲーション画像の更新・表示を行う(S9)。ステップS9において、レジストレーション(S5)を行ったときに比べて、被検体24の体位の変化があった場合には、上記機能に従って3Dナビゲーション画像の位置補正を行い、補正データを用いてナビゲーション画像を更新する。ここでいう「補正データ」とは、撮像したボリューム画像の位置合わせ(レジストレーション)後に被検体の体位を変更した場合、その移動量を画像に反映させることを意味する。例えば、レジストレーション後に被検体の体位を30°傾けた場合には、ボリューム画像も30°傾ける(回転させる)。術具(治療プローブ36)を目的位置に誘導すると、次のステップにおいて治療が開始される。
(ステップS10)
操作者は、「治療開始」ボタン1333を押下げ、治療プローブ36から特定部位に対して集束超音波を照射する。または、超音波診断治療装置40に備えられた超音波照射ボタンを押して超音波を照射する。これと共に、計時部19nは、集束超音波の照射時間の計時を開始する(S10)。
(ステップS11)
計時部19nは、ステップS5で設定された照射時間を経過したか否かを判断する(S11)。肯定ならばステップS14へ進み、否定なら照射時間が経過するまで計時を続行する。
(ステップS12)
組織拡張判定部19mは、リアルタイム画像である2次元超音波画像に基づき、特定部位(特定領域)の形状・体積(又は面積)を検出する(S12)。本実施形態では、2次元リアルタイム画像として超音波画像を用いるが、リアルタイムに撮像したMRI画像でもよい。
(ステップS13)
組織拡張判定部19mは、ステップS3で求めた特定部位(特定領域)の形状・体積(又は面積)と、ステップS12で求めた特定部位(特定領域)の形状・体積(又は面積)と、が、異なっているかを判定する(S13)。肯定ならばステップS14へ進み、否定ならばステップS8へ戻る。
(ステップS14)
治療パラメータに沿ってナビゲーション画像を伸縮する(S14)。
ナビゲーション画像生成部19eは、上記図11に基づいて説明した画像伸縮処理を行い、特定部位を中心として、部分伸縮とそれに伴う外部組織の移動を三次元的に行って更新ナビゲーション画像を生成する。図13のナビ画像領域132に表示されたナビゲーション画像1320、1321、1322、1323は、特定部位に対する拡張(膨張)領域1327が表示される。また、エネルギー投与領域の外縁部1326も重畳表示される。
(ステップS15)
治療済領域表示部19oは、画像の伸縮を加味した状態の更新ナビゲーション画像に含まれる治療済領域を算出し、マーキング部19jは、更新ナビゲーション画像の治療領域をマーキング(ロギング)する(S15)。この場合の治療領域のマーキング(ログ)はエネルギー照射部位である治療領域1325ではなく、拡張領域1327とする。
(ステップS16)
残治療領域算出部19rは、特定領域からステップS15で求めた治療済領域1327を差し引いた領域を、残治療領域1329を算出する。経路算出部19kは、残治療領域1329へのアプローチ方向を算出し、更新ナビゲーション画像上にアプローチ方向を示すマーカ1328を重畳表示する(S16)。残治療領域がある場合に警告を発する警告手段を備えてもよい。
(ステップS17)
治療終了指示があれば治療を終了し、終了指示がなければステップS8へ戻り、術具誘導・治療・画像補償を含めて、残治療領域がなくなるまで繰り返し行う治療を続行する(S17)。
本実施形態によれば、治療パラメータと、治療に用いるエネルギー投与量から、ナビゲーション画像の画像伸縮量を求め、その画像伸縮量に応じてナビゲーションの画像伸縮を行った更新ナビゲーション画像を表示する。そのため、治療に伴う組織の拡張(膨張)を反映した3次元ナビゲーション画像を生成する場合に、リアルタイムでの3次元ボリューム撮影と再構成演算をする必要がないため、タイムラグを生じることなく組織の拡張(膨張)を反映した3次元ナビゲーション画像を生成・表示することができる。
つまり、超音波治療を用いた温熱療法において治療と同時に腫れによる組織変形に連動してナビゲーション画像を変化させることで、治療領域の把握と画像誘導機能を関連づけて制御が可能となり、術前に撮像したMRI/CT画像を再撮像することなく術具の位置を正確に指し示すことができる。これより、治療効果の予測と効果を同時に行うことができ、複数の診断機器を組み合わせることによる画像支援の信頼性向上と手術成績向上が期待できる。
本実施形態は、X線装置、X線CT装置、MRI装置、超音波装置等の何れを用いた治療支援システムとしても摘要可能である。また、本実施形態は、術者自信(手技)による治療の支援の他、ロボット/マニピュレータを用いた間接的な手術の支援にも適用することができる。