JP2011518217A - 腫瘍の治療におけるヒアルロン酸に結合した抗腫瘍薬を含む新規医薬製剤の治療的使用 - Google Patents
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Abstract
【選択図】なし
Description
本発明は、ヒアルロン酸(HA)と化学療法薬品(その中で特に、原発腫瘍及び転移を治療するためのイリノテカン、ドキソルビシン、パクリタキセル、シスプラチン及び5-フルオロウラシル(5-FU))との間の結合によって得られる分化薬としてのバイオ結合体(bioconjugate)(以後、商標名ONCOFID(登録商標)と同一視する)の腫瘍学分野における新しい使用について述べる。特に、水に溶けるONCOFID(登録商標)の誘導体の医薬製剤の作用機序、効力及び耐容性の面からその生物学的挙動について述べる。
さらに詳細には、本発明は、腫瘍細胞の非形質転換表現型への分化を促進する際に、参照薬イリノテカン(又はCPT11、その活性形はSN38によって表される)及びドキソルビシンに比べて、ONCOFID-S(HA-SN38結合体)及びONCOFID-D(HA-ドキソルビシン結合体)に基づいた製剤によって実証された驚くべき生物学的及び薬理学的効果に関する。
近年、腫瘍及びその転移の開始、発達、分散及び着床を決定する生命プロセスの漸進的知識は、研究者が新しい化学分子を新しい抗腫瘍薬として研究、合成及び/又は試験する可能性を提供するのみならず、抗腫瘍薬が克服すべき毒性に伴う問題を許容する新しい治療法の研究及び完成を容易にもしている。実際に、抗腫瘍活性のある多くの薬物は一般的に以下のような一連の負特性を有する:
−多くの分子が投与するのが困難な疎水性物質であるように、水中での低い溶解度;
−腫瘍細胞に対する低い選択性、結果として非発癌性細胞に対する毒性;
−全身レベルに及ぼす複数の望ましくない作用;
−短い血漿中半減期、結果として反復投与の必要性;
−腫瘍内における化学療法処理への耐性の誘発。
腫瘍療法においてますますさらに有効な新規活性成分を探索することに加えて、科学分野は並行して、その抗腫瘍活性が既に知られている分子を最大限に活用することを試み、それらの性能を高め、かつ上述したような負特性を減少させようとしている。
腫瘍細胞の受容体様(receptorial)部位と特異的に相互作用することによって、腫瘍組織内における該薬物の高い選択性を保証する、能動的ターゲティングを備えた基への抗腫瘍薬の化学結合によって有望なアプローチが提供される。異なるアプローチは、高分子量を与えることによって、EPR効果(Enhanced Permeation and Retention)による腫瘍内における活性成分のより多くの集積(すなわち、リンパ系によって不十分に排出される、腫瘍を供給する血管の有窓上皮の通過に関連した集積(受動的ターゲティング))を可能にする巨大分子(すなわち高分子)との結合によって表される。
ずっと以前に、腫瘍学分野で使用されていた多くの抗腫瘍薬を化学的に修飾して、治療的に不活性な誘導体であるプロドラッグを得た。このプロドラッグは、自発的な加水分解プロセス及び/又は酵素的分解のおかげでin vivo内だけで活性になり、活性成分の放出につながり、それによってその治療効力を高める。
上記理由のため、重要な物理化学的特性(例えば、より高い溶解性)を活性成分に与えることに加えて、活性成分に能動的及び/又は受動的ターゲティングを与えて、その効率を高めることができる、いわゆる「治療高分子」と、古典的薬物との間の化学結合(直接又はスペーサーを用いて間接的)によって生成される新しい化学療法薬が合成された。これらの治療高分子は、実際に薬物の担体として作用することができ、或いはそれらは固有の生物学的活性をも発揮しうる。
これらの高分子の中で、ヒアルロン酸(HA)の使用が極端に有望であることが判明した。その有利な特徴は、ヒアルロン酸を抗腫瘍薬の投与に適した担体にする。
当該最新技術(WO2004/035629、WO2007/014784)で知られる商標名ONCOFID(登録商標)と同一視される、HAと抗腫瘍薬との新規バイオ結合体は下記特徴を主張している。
−多くの腫瘍表現型はそれらの表面上のHAに特異的な受容体CD-44を過剰発現するので、薬物を腫瘍細胞に直接導くという点で、薬物の固有毒性に関する問題を克服する;
−HAのような非常に親水性の分子への脂溶性薬物の結合が、循環系内における薬物自体の溶解性を相当高めることが実証されている通り、溶解性を高める;
−古典的抗腫瘍薬によって誘発される耐性の問題を克服する;
−新しい物理化学的特徴(例えば薬物の安定性の向上、ひいては腫瘤部位におけるその耐久性の向上など)。
結腸直腸腫瘍は最も進行形の腫瘍であり、西洋諸国において新生組織形成(neoplasia)による死亡の最高頻度の原因の1つである。
結腸直腸内における癌の形成は、この臓器を裏打ちする粘膜細胞の制御されない増殖のためであり、その病因論は、疫学的研究が例えば以下:
−食習慣
−遺伝因子
−腫瘍性ポリープ
−腸管炎症性疾患
のような可能性のある危険因子を同定したにもかかわらず、未だに分からない。
結腸直腸の癌腫及び腺腫の予後の生物学的因子の1つがAPC(腺腫性結腸ポリポーシス(Adenomatous Polyposis Coli))遺伝子であることは知られている。家族性結腸ポリポーシスの原因であると考えられるので、この遺伝子の体細胞突然変異が、結腸の腺腫及び癌腫の自然経過における最初の事象に相当する。
このようにβ-カテニンは癌性タンパク質の全ての特徴を有するが、複合体APC/GSK-3βは、そのβ-カテニンの活性を制御する能力のため、オンコサプレッサーとして定義されている(Kollings F. et al, Digestion, 2002, 66:131-144)。核内に蓄積したβ-カテニンの急速な下方制御は、実際には、APC(突然変異していない場合)及びGSK-3βタンパク質の作用の結果得られる。これらのタンパク質は、核内に移動すると、オンコプロテインと結合してそれを分解し、及び/又はオンコプロテインを再び細胞質レベルまで輸送し、そこでオンコプロテインがリン酸化されてから分解する(Neufeld K. et al., EMBO reports, 2000, 1, 6:519-523)。このプロセスは、APC/GSK-3β複合体が不活性な腫瘍細胞では見られないので、β-カテニンの核内量及び活性が制御されないことが、悪性腫瘍の発生及び転移において最も重要な事象でる。
化学療法は、この群の患者に役立つ可能性のある療法の支点に相当する。化学療法で得られる客観的反応割合(奏効率)は、短応答持続期間では20%に等しく、完全応答では低率(たった5%)であり;病気の安定化は約30〜40%を示す。
40年以上の間、5-FUが進行期の結腸直腸の癌腫で利用可能な唯一の治療武器だった。
近年、結腸直腸の転移性腺腫及び癌腫に冒された患者の生存期間を向上させる試みにおいて5-FUと関係するか又は5-FUとは無関係に新薬が研究されている。これら新薬のうち、イリノテカン及びオキサリプラチン(Oxaliplatinum)が基礎的役割を果たす。5-FUと関連するイリノテカンは、最近、約17カ月という全生存時間の5-FUのみで治療した患者に対して、より高い奏効率及び進行時間を示した。
CPT-11としても知られるイリノテカンは、塩酸塩の形で利用でき、それは、三元の薬物-DNA-トポイソメラーゼI複合体、すなわちスーパーエンベロープ型DNA分子をDNAの転写又は複製動作においてねじれ張力のない分子に転換する酵素を形成することによって作用する。上記カンプトセシン(camptothecin)との三元複合体の形成が、DNAの剪断期における系の安定化をもたらし、確実にもはやそれ自体複製できないようにしてアポトーシスによる死を引き起こす。
イリノテカンは、それ自体不活性であるが、カルバミン酸結合のin vivo加水分解が活性代謝物SN38の放出をもたらす(図2)。このSN38は細胞毒性作用の原因である真の薬物であるが、水に溶けないので、その投与のために特有の方策を必要とする。図2は、それぞれイリノテカン(登録商標)及びSN38の化学構造を示す。
以前に特定したように、ONCOFID(登録商標)の誘導体は、抗腫瘍薬に有利な特性、例えば、水中の溶解性、安定性、腫瘍組織に対する選択性、化学療法に対する耐性の低減及び薬理学的効力の増強などを与えることが知られている。
最も広く行き渡っている致死腫瘍の1つが結腸直腸の癌腫又は腺腫によって代表され、かつこの腫瘍の治療で最も有効な療法の1つが腹腔内によるCPT-11に基づいた療法であることが知られている。上述したように、このタイプの腫瘍では、APC遺伝子の突然変異/不活性化が、β-カテニンの核内蓄積、ひいては細胞浸潤及び転移を促進する転写因子の活性化につながる一連の事象をもたらすことが知られている。
一定濃度の上記バイオ結合体を含有する、ONCOFID-S及びONCOFID-Dに基づいた製剤は実際に、結腸直腸腫瘍及びメラノーマの治療においてin vitroとin vivoの両方で驚くべきかつ完全に予想外の結果を与えた。該製剤は、非結合薬とは完全に異なる作用機序を有するので、特に、現在考えられる治療的に活性な投与量とは異なる投与量で有効であるように、バイオ結合体の異なる使用を可能にする。
実施例10で示す、細胞増殖に及ぼす効果の評価は、驚くべきことに、ONCOFID(登録商標)が、以下の手段1〜3を用いてどのように、腫瘍細胞の分化作用に寄与する細胞増殖の遮断機序をもたらし、ひいては悪性腫瘍細胞の表現型の非形質転換表現型、すなわち非腫瘍表現型への復帰変異プロセスを起こすかを明らかにした:
1. APC/GSK-3βタンパク質複合体の活性化(2.のため)
2. β-カテニンの核内蓄積の減少(3.のため);及び
3. β-カテニン及びE-カドヘリンの作用に関連するプロセスの制御、ひいては非形質転換分化細胞の細胞接着能力及び接触抑制を特異的に再建し、結果としてアポトーシスによる腫瘍細胞の死を誘発しない(SN38で知られているのとは逆に)。上記細胞は、それらの細胞周期の最後に、新しい転移をもたらすことなく、かつ原発腫瘍の成長に寄与することなく死ぬ。
実験的試験の最後に、実施例13は、同一投与量を用いたに非結合薬に対して、ONCOFID-S結合体のin vivoにおける最大の抗腫瘍効力を明白に示す。
これらの結果で示すように、HA-SN38結合体はSN38の全身毒性の相当な低減をもたらし、ひいては薬物自体の治療指数を高めるので(それは水に溶け、臨床プロトコルで一般的に使用されている投与量よりずっと少ない投与量でさらに効力が高いので)、問題の薬物を腫瘍の新しい薬理学的療法として使用することができる。
・腫瘍性病態の治療のための腫瘍細胞の非形質転換非腫瘍表現型への分化薬の調製のため;
・β-カテニンの核内蓄積と関係がある腫瘍性病態を治療するための薬物の調製のため;
・APC-GSK-3β複合体の不活性化と関係がある腫瘍性病態を治療するための薬物の調製のため;
・腫瘍細胞生命のS期の増加と関係がある腫瘍性病態を治療するための薬物の調製のため;
・原発腫瘍又はその転移を治療するための薬物の調製のための、
抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体の使用を開示及び主張する。
下記実施例において、出願人は、SN38(ONCOFID-S)及びドキソルビシン(ONCOFID-D)等の抗腫瘍薬とのHA結合体の調製方法を示した。1〜20%質量/質量の誘導体化度によって、水溶液に溶け、かつ2〜15mg/mlの濃度の水溶液で有効であるONCOFID誘導体を生成する。
特に、出願人は、結腸の腺腫及びヒトメラノーマの腫瘍細胞系(作用機序を理解するために必要)を用いて達成されたin vitro実験的研究によって、上記バイオ結合体の完全に予想外の生物学的及び薬理学的挙動を実証した。これらのデータから、参照薬のアポトーシス作用とは異なる機序で細胞増殖の遮断が起こるので、例えば、乳房、皮膚(特にメラノーマ)、骨、脳、甲状腺及び頭頚部の腫瘍、リンパ系、肺及び中皮内の腫瘍、食道、胃、結腸、結腸直腸、膵臓、肝臓、腎臓、尿管及び膀胱、前立腺、子宮内膜及び卵巣(他の全ての腹部器官を含む)の腫瘍のような新生組織形成の治療に対して、ONCOFID(登録商標)の誘導体は、異なる投与量を用いて得られる新規の治療的に活性でかつずっと高い効力を有する薬物となるものと推測することができる。これを実証するため、出願人は、この結合体のin vivo投与後の体外移植組織から得られたex-vivo研究の結果、及びONCOFID(登録商標)の驚くべき腫瘍抑制能力を明らかにしたin vivo研究の結果を提供する。
−代謝拮抗薬、例えば、葉酸の類似体(その中のメトトレキサート)、ピリミジンの類似体(その中の5-フルオロウラシル及び1-β-D-アラビノ-フラノシル-シトシン、(Ara-C))など;
−アルカロイド/天然物、例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン(ビンカアルカロイド)、イリノテカンの活性代謝物:SN38、パクリタキセル及びドセタキセル等のタキサン;
−抗生物質及び類似製品、例えば、ドキソルビシン及びエピルビシン等;
−生体応答修飾物質;
−ジテルペノイド;
−アルキル化剤、例えば、ニトロソウレア;
−白金の配位錯体、例えば、カルボプラチン(carboplutinum)及びシスプラチン(cisplutinum);
−合成ホルモン及び抗ホルモン剤、例えば、エストラジオール等。
本発明の目的では、特にドキソルビシン、パクリタキセル及びイリノテカンの代謝物、SN38が適している。
特に、ONCOFID-Pは、HAとパクリタキセルとの間の結合体であり、ONCOFID-Sは、HAとSN38との間の結合体であり、ONCOFID-Dは、HAとドキソルビシンとの間の結合体であり、ONCOFID-Ptは、HAとシスプラチンとの間の結合体である。
ONCOFID-Sの合成は、特許出願PCT公開番号WO2007/014784の詳細な説明及び実施例1〜2に広く記載されている。
ONCOFID-Dは、ヒアルロン酸とブロモブタノール又はブロモプロパノール等のスペーサー(これは、カルバミン酸結合によってドキソルビシンに結合している)とのエステルである。
ONCOFID-Dの合成は、特許出願PCT公開番号WO2007/014784の詳細な説明及び実施例10にも広く記載されている。
ONCOFID-Pは、以前に特許出願PCT公開番号WO2004/035629に広く記載されている。
以下、純粋に説明のためかつ非限定目的のため、ONCOFID製剤の調製のいくつかの例と共に、上記結合体の特有の生物学的挙動を示すin vitro、ex vivo及びin vivo研究のいくつかの例を提供する。
<MWが200kDaのヒアルロン酸とSN-38の約8%の置換度のエステル誘導体の調製>
第1期:500mgのSN-38をDMFに溶かす。引き続き0.8866gのEDC、0.7011の4-ブロモ酪酸及び最後に0.1163gのDMAPを加える。
CHCl3/CH3CNの60/40混合物を用いてTLC(シリカゲル60F254)で反応をモニターする。
約1時間後、反応が終わったとみなし、10mlのメタノールを加え、混合物を約30分間撹拌する。次に生成物を水中で沈澱させ、ろ過し、CHCl3に加え、分液ロートを用いてH2Oで洗浄し、HCl(pH≒4)でわずかに酸性にする。
乾燥有機相が黄色がかった生成物をもたらし、それを重力クロマトグラフィーカラム及びCHCl3(100%)からCHCl3/CH3OH(95:5)への勾配溶出で精製する。
回収されたBrC4SN38をロータリーエバポレーター(rotavapor)で乾燥させ、一晩放置して乾燥させる。
第2期:1.4347gのHATBA(200kDa)(ヒアルロン酸のテトラアルキルアンモニウム又はテトラブチルアンモニウム塩)を三口ガラス被覆反応器に充填し、磁気撹拌しながら100mlのDMSOに溶かし;反応器を38℃でサーモスタット制御しながら、完全に溶解するまで混合物を撹拌する。
DMSOに溶かした380mgの中間体BrC4SN38をHATBAの溶液に加え、混合物を約48時間38℃で撹拌しながら放置する。
反応の最後に、NaBrの飽和溶液14mlを加えて混合物を約60分間撹拌してTBA-Naカチオン交換を完了させ、ナトリウムHAを得る。次にエタノールを用いて沈殿を生じさせ、得られた固体をGooch4上のろ過で回収してビーカーに移した後エタノールで洗浄し、最後に真空下40℃で乾燥させる。
<MWが200kDaのヒアルロン酸とSN-38の約3.5%の置換度のエステル誘導体の調製>
第1期:199mgのSN-38を100mlのACNに溶かし、この溶液に383mgの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、258mgの4-ブロモ酪酸及び60mgのDMAPを加える。TLCクロマトグラフィー(蛍光指示薬を有するシリカ固定相及びクロロホルム-アセトニトリル溶出液60:40)を用いて溶液の動向をモニターする。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去して生成物を回収し、シリカカラム上クロマトグラフィーで精製する。このようにして得られた中間体を高真空下で室温にて乾燥させ、最後に秤量する。
第2期:160mgのBrC4SN38中間体を20mlのNMPに溶かした後、前もって38℃でサーモスタット制御した120mlのNMP中の1.2gのHATBAの溶液に加える。混合物を72時間38℃で放置してから5mlの水及び8mlの臭化ナトリウム飽和溶液で希釈する。混合物全体を撹拌しながら1時間放置してナトリウムをTBAイオンと交換させる。次にエタノールを滴下して生成物を沈殿させ、最後にエタノール中の洗浄によって精製し、真空下で40℃にて乾燥させる。
<MWが200kDaのヒアルロン酸とドキソルビシンの約10%の置換度のエステル誘導体の調製>
第1期:770mgの塩酸ドキソルビシンを秤量し、120mlの無水DMFに770μlのトリエチルアミンの存在下で溶かした後、前もってN-ヒドロキシスクシンイミドで活性化した560mgの3-ブロモブタノールを加える。TLCクロマトグラフィー(蛍光指示薬を有するシリカ固定相及びクロロホルム-エタノール溶出液80:20)を用いて反応をモニターし、15分後に完了したとみなす。生成物を脱塩水で沈殿させ、Gooch5上でろ過して回収する。CHCl3に加えた固体残留物を分液ロートを用いてH2Oで洗浄し、HClでわずかに酸性にする(pH≒4)。
乾燥有機相が暗赤色生成物をもたらし、これを重力クロマトグラフィーカラムに装填し、CHCl3(100%)からCHCl3/CH3CH2OH(95:5)の勾配で溶出して精製する。
回収された中間体BrC3ODoxをロータリーエバポレーターで乾燥させ、一晩放置して乾燥させる。
第2期:964mgのHATBA(200kDa)を三口ガラス被覆反応器に充填し、磁気撹拌しながら100mlのDMSOに溶かし;反応器を38℃でサーモスタット制御しながら、完全に溶解するまで混合物を撹拌する。
DMSO中の550.5mgの中間体BrC3ODoxo scioltiをHATBA溶液に加え;38℃で約48時間撹拌しながら反応を維持する。
反応の最後に、8mlのNaBr飽和溶液を滴下し、混合物を約30分間撹拌してTBA-Naカチオンの交換を完了させてナトリウムHAを得る。次にエタノールで沈殿を生じさせ;得られた固体をGooch4上でろ過してビーカーに移した後、エタノールで洗浄し、最後に真空下で40℃にて乾燥させる。
<MWが200kDaのヒアルロン酸と白金化合物の約12%の置換度のエステル誘導体の調製>
200mgのcis-ジアミノ(ジクロロ)白金(II)(0.666mmol)を20mlの脱塩水に溶かし、2当量のAgNO3と60℃で6時間反応させてジアミン(ジニトラート)白金(II)に変換する。次に140mgのブロモコハク酸(0.7mmol)を加えてリガンドの交換反応を60℃で24時間行なう。図3は、中間体ブロモスクシナートジアミノ白金の合成スキームを示す。合成中間体を沈殿させ、次のヒアルロン酸との反応のため精製する。
240mgのブロモスクシナートジアミノ白金(II)を20mlのDMSOに溶かし、DMSO中のヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩(HATBA)の溶液(150ml中1.750g)にゆっくり加える。反応を38℃で48時間行なった後、約60分間撹拌しながら14mlのNaBr飽和溶液を加えてTBA-Naカチオン交換を完了させ、ナトリウムHAを得る。次にエタノールで沈殿を生じさせ;得られた固体をGooch4上でろ過して回収し、エタノールで洗浄し、最後に真空下で40℃にて乾燥させる。ICP(誘導結合プラズマ)法によって結合体の白金含量を決定する。
<5%w/vのグルコサート(glucosate)溶液中のONCOFID-Ptに基づいた溶液の調製>
カルボン酸残基について3〜15%w/wの置換度で、実施例4の記載どおりに得られた60mgのONCOFID-Ptを、5%w/vのグルコースを含む水溶液29mlに溶かす。この溶液を結合体の溶解が完了するまで磁気撹拌下で放置し;それを次に滅菌フィルターで0.22μm注射器を用いて再生セルロース(RC)上でろ過する。ろ過の前後に分光光度法によって溶液の力価(ONCOFIDに関して3mg/ml)を決定して、ろ過後の結合体の全回収を検証する。
<1.5%w/vのβ-シクロデキストリン溶液中のONCOFID-Sに基づいた医薬製剤>
カルボン酸残基について3〜15%w/wの置換度で、前述したとおりに得られた62mgのONCOFID-Sを、1.5%w/vのβ-シクロデキストリンを含む水溶液22mlに溶かす。この溶液を結合体の溶解が完了するまでマグネチックスターラーで撹拌しながら放置し;それを次に滅菌フィルターで0.22μm注射器を用いて再生セルロース(RC)上でろ過する。ろ過の前後に分光光度法によって溶液の力価(ONCOFID-Sに関して2.8mg/ml)を決定して、ろ過後の結合体の全回収を検証する。
<5%w/vのグルコース溶液中のONCOFID-Sに基づいた医薬製剤>
カルボン酸残基について3〜15%w/wの置換度で、前述したとおりに得られた56mgのONCOFID-Sを、5%w/vのグルコースを含む水溶液20mlに溶かす。この溶液を結合体の溶解が完了するまでマグネチックスターラーで撹拌しながら放置し;それを次に滅菌フィルターで0.22μm注射器を用いて再生セルロース(RC)上でろ過する。ろ過の前後に分光光度法によって溶液の力価(ONCOFID-Sに関して2.8mg/ml)を決定して、ろ過後の結合体の全回収を検証する。
<5%w/vのグルコース溶液中のONCOFID-Pに基づいた医薬製剤>
特許WO2004035629の実施例5、6、7、9及び10の記載どおりに得られた100mgのONCOFID-Pを、5%w/vのグルコースを含む水溶液20mlに溶かす。この溶液を結合体の溶解が完了するまでマグネチックスターラーで撹拌しながら放置し;それを次に滅菌フィルターで0.22μm注射器を用いて再生セルロース(RC)上でろ過する。ろ過の前後に分光光度法によって溶液の力価(ONCOFID-Pに関して5mg/ml)を決定して、ろ過後の結合体の全回収を検証する。
<5%w/vのグルコサート溶液中のONCOFID-Dに基づいた医薬製剤>
カルボン酸残基について3〜15%w/wの置換度で、前述したとおりに得られた60mgのONCOFID-Dを、5%w/vのグルコースを含む水溶液20mlに溶かす。この溶液を結合体の溶解が完了するまでマグネチックスターラーで撹拌しながら放置し;それを次に滅菌フィルターで0.22μm注射器を用いて再生セルロース(RC)上でろ過する。ろ過の前後に分光光度法によって溶液の力価(ONCOFID-Dに関して3mg/ml)を決定して、ろ過後の結合体の全回収を検証する。
<結腸腺癌の前臨床モデルにおけるバイオ結合体ONCOFID-Sのin vitro実験>
このin vitro実験の目的は主に、水溶液中で調合した実施例2で調製したSN38に結合したHAから成るバイオ結合体の活性プロファイルを明らかにして、参照薬物に対するONCOFID誘導体の抗腫瘍活性を評価/比較し、それによって比較抗腫瘍薬に関するそれらの薬理学的能力及び作用機序を決定することである。
(試験した製品及び試験した活性成分)
−SN38:コントロール参照製品;
−ONCOFID-S:3.5%のカルボキシル(w/w)でのエステル化率(%)によってSN38と共有結合したHAのエステル誘導体
(試験した医薬製剤)
−DMSO/CH3CN/EtOH(10:45:45)から成る混合物に室温でSN28を溶解させた。
−β-シクロデキストリン中のONCOFID-Sの溶液:実施例6で記載した通りに調製した。
(使用した細胞系)
HA CD44の受容体を発現しているラットDHD/K12/Trbの結腸腺癌細胞
(実験プロトコル)
1) 平底の24ウェルを有するプレートに、6×104個の細胞/cm2の濃度で、調べる細胞系を蒔き;
2) 24時間後、試験すべき溶液を培養液で適宜希釈し、細胞に加え;
3) 処理後24又は48時間に、細胞生存能をトリパンブルー色素排除(Tripan blue exclusion)法で評価する。この色素は、元気な細胞及び代謝的に活性な細胞からは押し出されるが、死んだ細胞によって引き留められ、細胞が青色になる。
処理24時間後の非結合SN38のIC50値と比較した新規結合体ONCOFID-SのIC50値に加えて、その用量に関連する細胞DHD/K12/Trbの生存能について得られた結果は、SN38比べてONCOFID-Sの大きい効力を示した。SN38自体及びONCOFID-SのIC50値はそれぞれ1.4μg/ml及び0.4μg/mlであることが分かった。問題の結合体ONCOFID-Sは、SN38が3.5質量%で誘導体化されていることを考慮すると、SN38等価物(HAに結合している)のIC50値はさらに低い(0.014μg/ml)。すなわち、参照薬物より活性が100倍高く、参照薬物をヒアルロン酸と結合した場合のその薬理学的効力の増強を確証する。
図4は、0.5μg/mlの濃度のHA、SN38又はONCOFID-Sで処理した後の時間に関連する細胞の生存能グラフを示す。
前述したように、結腸直腸癌腫の形成及び進行におけるβ-カテニンを制御するという役割の重要性のため、Oncofid-Sによる処理がβ-カテニンの制御プロセスに関与する分子の細胞内発現及び分布を変更できるかどうかを検証した。そのため、DHD/Trb細胞内におけるE-カドヘリン、β-カテニン、APC、GSK-3βの細胞内分布に及ぼすONCOFID-Sによる処理の効果を蛍光顕微鏡を用いて分析した。上記タンパク質に特異的な抗体を利用して、ローダミン及びフルオレッセイン等の蛍光色素に結合した二次抗体を用いてそれらを可視化した。
得られた結果は、図4に示すバイオ結合体Oncofid-Sによる処理の抗増殖ひいては抗腫瘍効果の前に以下のことが起きることを示した:
−APCタンパク質とGSK-3βキナーゼの両方の核内への転位置(図4a)、そこでそれらはリン酸化によってβ-カテニンの蓄積を制御することができ(前述したように)、結果として細胞増殖を停止し;
−β-カテニンの、核(ここで、前述したように、腫瘍細胞の増殖に関与するオンコジーンを蓄積及び活性化することが知られている)から細胞質への転位置(図4b)、そこで、細胞膜のレベルでE-カドヘリンと結合することによって、β-カテニンはE-カドヘリン-β-カテニン細胞内複合体を再形成し、これが細胞接着を制御し、かつ細胞分化の明白な徴候を示し;
−その後、細胞間の接着プロセス及び細胞-細胞連結の形成に関与する(周知のように、接触抑制及び細胞分化を決定する際に基本的役割を有する)膜タンパク質であるE-カドヘリンの発現が増加し(図4b);このE-カドヘリンの発現の増加は、実際に、健康な結腸粘膜の非腫瘍上皮細胞の分化のマーカーとみなされ;
−健康な結腸粘膜の非腫瘍上皮細胞の分化の第2マーカーであるサイトケラチン20(CK20)の発現の増加(図5)。細胞分化に関する上記すべての変化は、非結合SN38で処理したサンプルでは明らかにされない。
図5は、実験後に解析した腫瘍細胞上の、in vitro処理によって誘発された形態変化の走査型電子顕微鏡解析(SEM)を示し、これらの変化は、腫瘍細胞について非形質転換表現型、すなわち腫瘍でない表現型へのバイオ結合体の分化作用、それゆえに接触抑制の原因である細胞間の接着能力を修復し、ひいては腫瘍の増殖の遮断をもたらすことを確証する。図5は、ラット結腸腺癌細胞DHD/K12/TrbのCK20発現及び形態に及ぼすONCOFID-Sの処理48時間後の効果を示し;処理後、CK20を発現する細胞数は、未処理コントロール及びヒアルロン酸で処理した細胞培養に比べて増加した。バイオ結合体で処理した細胞の細胞形態は、分化した上皮細胞の典型的特徴、例えば、より大きい基質接着力、より大きい平板化及び密接な細胞間接合部の存在などを示す。
(結論)
CD44受容体の発現にポジティブな結腸腺癌の細胞系に関して、低用量のONCOFID-S誘導体は、SN38で観察されかつ知られているようなアポトーシスの誘発ではなくむしろ、非形質転換、すなわち非腫瘍、ゆえに増殖細胞でない上皮細胞における腺癌細胞の分化/復帰変異に起因する驚くべき抗増殖作用を示す。上記細胞は、それらの細胞周期を終えると、新しい転移を引き起すことなく、かつ腫瘍の成長に寄与することなく死ぬ。
<結腸腺癌の前臨床モデルにおけるバイオ結合体ONCOFID-Sのin vitro実験>
このin vitro実験の目的は主に、より高い誘導体化度を有し、かつグルコサート水溶液中で調合したONCOFID誘導体の活性プロファイルを明らかにして、抗腫瘍活性を評価し/参照薬物の抗腫瘍活性と比較し、ひいては比較抗腫瘍薬に関する薬理学的能力を決定することである。
実験スキーム:
(試験した製品及び試験した活性成分)
−SN38:コントロール参照製品;
−ONCOFID-S:実施例1に従って調製した8%のカルボキシル(w/w)でのエステル化率(%)によってSN38と共有結合したHAのエステル誘導体。
(試験した医薬製剤)
−DMSO/CH3CN/EtOH(10:45:45)から成る混合物に室温でSN28を溶解させた。
−実施例7で記載した通りにグルコサート中のONCOFID-Sの溶液を調製した。
(使用した細胞系)
ラットDHD/K12/Trbの結腸腺癌細胞。
(実験プロトコル)
1) 平底の24ウェルを有するプレートに、6×104個の細胞/cm2の濃度で、調べる細胞系を蒔き;
2) 24時間後、試験すべき溶液を培養液で適宜希釈し、細胞に加え;
3) 処理後24又は48時間に、細胞生存能をトリパンブルー色素排除法で評価する。この色素は、元気な細胞及び代謝的に活性な細胞からは押し出され、死んだ細胞によって引き留められ、細胞が青色になる。
試験したONCOFID-Sの用量(0.125、0.25、0.5、1μg/mlの濃度)に関する細胞生存能について得られた結果を以下にグラフ形式で示す(図6)。
用量250ng/mlがIC50に相当し、実施例1に従って調製した場合(実施例5の結果で示したように、IC50は0.4μg/mlに等しい)に比べて実施例2に従って調製したONCOFID-Sの効率がずっと高いことを確証し;結果として効力は非結合SN38よりずっと高い。
この結果は、SN38に関するより高い誘導体化率(すなわち、3.5%で誘導体化したONCOFID-S(OF-S)に対して、8質量%)に起因すると考えられる。
置換度が異なる(3.5及び8%)2つの結合体及び結合化SN38におけるそれぞれの等価物のIC50を、非結合参照薬物SN38と比較して下表に示す。
ONCOFID-S誘導体は、非結合SN38薬物で観察されるより5倍高い効力を示すが、等価なSN38の濃度を考慮すると、効力は参照薬物の効力より約70倍高いことが分かる。さらに、より小さい誘導体化率の結合体の研究との比較は、ヒアルロン酸がSN38に関して多く誘導体化されるほど、ONCOFID-Sの効率が高いことを示す。
<結腸腺癌の前臨床モデルにおけるバイオ結合体ONCOFID-Sのin vitro実験>
上記実験の目的は、種々の細胞生命期に及ぼすONCOFID-S誘導体の影響を研究して、参照薬物SN38の活性に対するその活性を評価することである。
実験スキーム:
(試験した製品及び試験した活性成分)
−SN38:コントロール参照製品;
−ONCOFID-S:実施例2に従って調製した3.5%のカルボキシル(w/w)でのエステル化率(%)によってSN38と共有結合したHAのエステル誘導体。
(試験した医薬製剤)
−DMSO/CH3CN/EtOH(10:45:45)から成る混合物に室温でSN28を溶解させた。
−実施例7で記載した通りにグルコサート中のONCOFID-Sの溶液を調製した。
(使用した細胞系)
ラットDHD/K12/Trbの結腸腺癌細胞。
(実験プロトコル)
実施例8及び9について述べた通り。
細胞蛍光測定タイプの分析を利用してONCOFID-S結合体の効果(0.5μg/mlの濃度で)を決定した;薬理学的処理の24時間後に、FACS-Scan(Becton Dickinson)を用いて、ヨウ化プロピジウムによる細胞の着色後のDNA含量の細胞蛍光測定分析によって細胞期を同定した。
図7は、得られた結果を示す。問題の結合体による処理はgap1及びS期の急激な崩壊をもたらし、gap2期は増加しており、逆に第1期及びS期を両方とも増やす参照薬物からONCOFIDは区別される。
得られた結果が経時的に持続するかどうかを評価するため、休薬(Wash out)試験を行なった。この試験では、処理48時間後に、培養液を、処理していない新鮮な培養液と交換し;その時点で再び細胞期を明らかにしてTOと定義し、培養の24時間後の細胞期をT24と定義する。
得られた結果は図8で見ることができる。結果は明白に、薬理学的中止の24時間後でさえ、gap1及びS期の遮断は持続すること示しており、従って薬物の効果が不可逆的であることを示唆している。
あらゆる増殖性哺乳類細胞において、そのゲノムの複製及び細胞自体の分割は、gap1、S、gap2と定義される特有の細胞生命期内で起こる。gap1では、新しいDNAが合成されるS期のために調製しなければならない当該すべての生物学的修飾に細胞は遭遇し;S期では、実際に、細胞の遺伝物質の正確なコピーが生成され、それが次の有糸分裂プロセスMによって2つの娘細胞に分割される。S期に続き、かつM期に先行する期はgap2と定義され、有糸分裂準備期である。得られた結果は、バイオ結合体ONCOFIDが、腫瘍細胞の最も重要な生命期、すなわち腫瘍のその後の増殖及び成長のための新DNAの活発な合成のS期(腫瘍細胞では、非腫瘍細胞に比べて有意に増加する)の実質的な減少にいかに有効であるかを示している。従って、低用量で、新規薬物は、参照薬物SN38とは実質的に異なるやり方で腫瘍の増殖を遮断することによって細胞成長期を調節できることが判明した。
<ヒトメラノーマの前臨床モデルにおけるバイオ結合体ONCOFID-Dのin vitro実験>
このin vitro実験の目的は主に、グルコサート水溶液中で調合した誘導体ONCOFID-Dの活性プロファイルを明らかにして、抗腫瘍活性を評価し/参照薬物の抗腫瘍活性と比較し、ひいては比較抗腫瘍薬(ドキソルビシン)に関連する薬理学的能力を決定することである。
実験スキーム:
(試験した製品及び試験した活性成分)
−ドキソルビシン:コントロール参照製品;
−ONCOFID-D:実施例3に従って調製した10%のカルボキシル(w/w)でのエステル化率(%)によってドキソルビシンと共有結合したHAのエステル誘導体。
(試験した医薬製剤)
−ドキソルビシンを5%w/vのグルコース溶液に室温で溶解させた。
−実施例9で記載した通りにグルコサート中のONCOFID-Dの溶液を調製した。
(使用した細胞系)
HA CD44の受容体を発現しているヒトメラノーマ細胞M14。
(実験プロトコル)
−平底の24ウェルを有するプレートに、6×104個の細胞/cm2の濃度で、調べる細胞系を蒔き;
−24時間後、試験すべき溶液を培養液で適宜希釈し、細胞に加え;
−処理してから24時間後に、「Live Dead」Cell Vitality Assay test(Molecular Probes, Eugene, OR)で着色することによって、共焦点顕微鏡法で細胞毒性を評価する。観察は、LEICA TCS SP5共焦点顕微鏡を用いて行なった。
用量(0.25、0.5、20μg/mlの濃度)に関する、メラノーマM14の細胞系の処理24時間後のONCOFID-D(OF-D)及び非結合ドキソルビシンによって誘発された細胞毒性効果を、の以下にグラフ形式で示す(図9)。
(結論)
メラノーマ細胞系は、CD44受容体の発現に非常にポジティブであることが分かった。共焦点顕微鏡での細胞毒性の評価は、ONCOFID-Dが、対応する非結合ドキソルビシンより高い細胞毒性効果をこの系のメラノーマに発揮できることを示す。さらに、バイオ結合体ONCOFID-Dでは、結合したドキソルビシンの比率が10質量%に等しいことを考慮すると、この薬物の活性は10倍高い。
<同系結腸の癌腫系によってラット内で誘発された実験用腫瘍モデルにおけるバイオ結合体ONCOFID-Sのin vivo抗腫瘍効果の評価>
ONCOFID誘導体によって示される高い効力をin vivo実験によっても確認するため、in vitroでの細胞毒性作用において、腹部腫瘍の誘発のためBDIXラットを使用した。腹腔内投与した細胞系DHD/K12/Trbの接種は、実際に、腹膜癌腫症及び腫瘍性腹水症の形成を引き起こした。
次に、40mg/kgの濃度のCPT-11に対して、この場合もやはり40mg/kgの濃度のONCOFID-S(該バイオ結合体は8%で誘導体化されているので、3.2mg/kgの活性成分SN38に相当する)のin vivo抗腫瘍能力の比較を、両者とも腹腔内投与して行なった。
このin vivo研究の目的は以下の通りだった。
1. コントロール群に対する腫瘍成長を評価すること並びに/或いは腹膜の腫瘍性病変の退行又は消失及び腹水症の観察;
2. in vitro研究で得られた抗腫瘍効果の結果を確証すること;
3. この処置によってもたらされた血液学的及び組織的毒性を評価すること。
(使用した薬物:試験した活性成分)
−イリノテカン(登録商標)(又はCPT-11):コントロール参照製品;
−ONCOFID-S:実施例1に従って調製した8%のカルボキシル(w/w)でのエステル化率(%)を有するSN38と共有結合したHAのエステル誘導体。
(試験した医薬製剤)
−イリノテカンを5%w/vの加熱(70℃)グルコサート溶液に約1時間溶解させた。
−実施例7で記載した通りにグルコサート中のONCOFID-Sの溶液を調製した。
処置した動物:36匹の7週齢オスラットBDIX(約200g)を実験基準に従って下記群に分割した(各群は12匹の動物から成る)。
1. コントロール群:接種材料DHD/K12/trb。
2. CPT-11群:接種材料DHD/K12/trb+CTP-11を40mg/Kg腹腔内処置。
3. ONCOFID-S群:接種材料DHD/K12/trb+ONCOFID-Sを40mg/Kg腹腔内処置。
ステイブリング(stabling)の14日後、ラット1匹当たり1×106個のDHD/K12/trb細胞を腹腔内接種した。7日後、4つの治療サイクルから成る想定される治療処理を開始した。最後の薬理学的処置後7日で動物を犠牲にした。体重を測定することによって、毒性の徴候と考えらる外観について、及び腹水症と考えられる外観について1週間に1回動物を評価した。犠牲にする時に全ての動物で心臓内サンプリングを行なって薬理学的処理に起因する血液学的毒性を評価した。腫瘍及び腹水を除去して測定した。除去した組織を組織学的及び免疫組織化学的評価のためにホルマリンで固定した。
腹膜癌腫の体積の評価
処置の最後に腫瘍結節の成長を評価した。図10は、試験の最後(T28)に、腫瘍の平均体積が、未処置コントロール群に対して(15.5cm3)、いかにCPT-11群での処置に良い反応をもたらし(5.9cm3)、かつONCOFID-S群での処置に優れた反応をもたらした(1.8cm3)かを示す。
(血性腹水症の存在の評価)
血性腹水症は、腹膜腔内における腫瘍の播種に起因し;臨床的には、主に胃腸管及び卵巣起源の腫瘍に付随する。悪性腹水症の形成の原因である機序は、リンパ排液の上記全ての遮断であるが、腹水中の腫瘍細胞の濃度が高い(>4.000/mm3)場合、腫瘍細胞の存在だけで、刺激作用を有する化学的媒介物質(サイトカイン、ヒスタミン、乳酸)の産生のために腹水症を引き起こしうることが実証された。
図11は、腫瘍体積の結果と完全に一致して、試験の最後(T28)に採取した血性腹水症(腫瘍)の平均体積が、コントロールでは46.7mlであり、CPT-11で処置した群では21.5mlであり、ONCOFID-Sで処置した群ではたった1.9mlであることを示している。
コントロール群及びCPT-11で処置した群の動物の100%及び83%が血性腹水症を有したが、ONCOFID-Sで処置した群の動物では16%だけが少量の腹水症を有したにすぎないことに留意すべきである。
図12は、処置した動物のヒーマトサイトメトリック(haematocytometric)プロファイルの分析(T28で)を示す。化学療法処理で主に影響を受ける白血球の集団、顆粒球の値を示してある。
腹水症のないONCOFID-S処置群では、薬理学的毒性由来の白血球減少が示されないが、少量の腹水症が発生した動物はいくつかの顆粒球を有するが基準内に含まれるので、本発明のバイオ結合体対象物の無毒性を確証する。
(結論)
in vitro研究から得られた結果と一致して、in vivo実験は、フリーの薬物と比較したHAに結合した薬物の効力の驚くべき差異を示す。誘導体ONCOFID-Sは88%という腫瘍量の平均減少をもたらすのみならず(CPT-11処置群の62%に対して)、血液学的毒性データ及び腫瘍進行の指標である腹水症の体積の測定から、問題の処置によって誘発される薬理学的毒性の減少が観察される。
<バイオ結合体ONCOFID-Sの作用機序を評価するためのex vivo研究>
ONCOFID誘導体の驚くべき生物学的/薬理学的挙動(アポトーシス型ではなく分化型の抗腫瘍効果を示したこと)を確証するため、上述したように誘発した腫瘍を体外移植して免疫組織化学的研究を行なった。
(実験プロトコル)
抽出直後に体外移植した腫瘍を生理溶液で慎重に洗浄し、緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに封入するために加工して4μm厚の切片にカットした。ヘマトキシリン/エオシンで着色した切片について組織学的分析を行ない、一方、研究タンパク質に特異的な抗体を用いて免疫学的分析を行ない、光学顕微鏡で実現できる分析用ペルオキシダーゼに結合した二次抗体の助けを借りて明らかにした。
腹腔内腫瘍のex-vivo免疫組織化学的分析から、分化作用、従ってアポトーシス型というよりはむしろ非増殖型作用の誘導のための、E-カドヘリン-β-カテニン複合体の制御に関連するバイオ結合体の作用機序についてin vitroで得られたデータの確証がもたらされた。
要するに、ex-vivo分析から得られた結果は以下の通りである。
1) ONCOFID-Sで処置した動物から体外移植された腫瘍では、in vitroで使用した細胞モデルで観察されたのと完全に同様のオンコプロテイン/オンコサプレッサー複合体の発現パターンを観察することができ、腫瘍表現型の正常表現型への復帰変異を示唆している。ONCOFID-Sで処置した動物から体外移植された腫瘍では、実際に、β-カテニンが核から細胞間接合部へシフトするが、APCタンパク質及びGSK3βタンパク質が核内に移動する(図10)。
2) ONCOFID-Sで処置した動物から体外移植された腫瘍では、コントロール動物に比べて、まさにin vitroで処理された細胞モデルで観察された通りに、結腸粘膜の上皮細胞の分化のマーカーであるE-カドヘリン及びCK20の発現が増加する。この発現増加は、未分化腫瘍表現型の、分化され、もはや増殖表現型でない、実はもはや腫瘍でない表現型への復帰変異の指標でもある(図13)。
(結論)
結果として、ONCOFID誘導体の特有の生物学的/薬理学的挙動がin vivoにおいても確認され、細胞増殖の遮断において、腫瘍細胞の非形質転換非腫瘍表現型への分化を促進する。
Claims (30)
- 抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体の、腫瘍性病態を治療するための腫瘍細胞の非腫瘍非形質転換表現型への分化薬を調製するための使用。
- 抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体の、β-カテニンタンパク質の核内蓄積と関係がある腫瘍性病態を治療するための薬物の調製のための使用。
- 抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体の、APC-GSK-3βタンパク質複合体の不活性化と関係がある腫瘍性病態を治療するための薬物の調製のための使用。
- 抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体の、腫瘍細胞生命のS期の増加と関係がある腫瘍性病態を治療するための薬物の調製のための使用。
- 抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体の、原発腫瘍及びその転移を治療するための薬物の調製のための使用。
- β-カテニンタンパク質の核内蓄積及びAPC-GSK-3βタンパク質複合体の不活性化と関係がある腫瘍細胞の非腫瘍表現型への分化薬としての、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオ結合体の使用。
- 乳房、皮膚、骨、脳、甲状腺の腫瘍及び頭頚部腫瘍、リンパ系、肺の腫瘍及び中皮内の腫瘍、食道、胃、結腸、膵臓、肝臓、腎臓、尿管及び膀胱、前立腺、子宮内膜及び卵巣の腫瘍の治療用薬物の調製のための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバイオ結合体の使用。
- 結腸直腸腫瘍の治療用薬物の調製のための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバイオ結合体の使用。
- メラノーマの治療用薬物の調製のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載のバイオ結合体の使用。
- 全身投与、局所投与又は腫瘍部位への直接注射に適した薬物の調製のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のバイオ結合体の使用。
- 静脈内、動脈内、筋肉内、経皮、腹腔内、くも膜下腔内、リンパ内適用、気管内点滴注入による適用、皮下、経口又は局所領域適用によって前記投与を行なう、請求項10に記載のバイオ結合体の使用。
- ヒアルロン酸のスペーサーを介して共有結合している前記抗腫瘍薬が下記群:代謝拮抗薬、アルカロイド/天然物、抗生物質及び類似製品、生体応答修飾物質、ジテルペノイド、ニトロソウレア、アルキル化剤、白金の配位錯体、合成ホルモン及び抗ホルモン剤から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載のバイオ結合体の使用。
- 前記薬物がSN38、イリノテカンの活性代謝物である、請求項12に記載のバイオ結合体の使用。
- 前記薬物がドキソルビシン等の抗生物質である、請求項12に記載のバイオ結合体の使用。
- 前記薬物がカルボプラチン又はシスプラチンである、請求項12に記載のバイオ結合体の使用。
- 前記ヒアルロン酸のカルボキシルにおけるSN38の置換度が1〜15%質量/質量の範囲である、請求項13に記載のバイオ結合体の使用。
- 前記ヒアルロン酸のカルボキシルにおけるドキソルビシンの置換度が3〜20%質量/質量の範囲である、請求項14に記載のバイオ結合体の使用。
- 前記ヒアルロン酸が400〜3×106Daの範囲の分子量を有する、請求項1〜17に記載のバイオ結合体の使用。
- 前記ヒアルロン酸が5,000〜1×106Daの範囲の分子量を有する、請求項18に記載のバイオ結合体の使用。
- 前記ヒアルロン酸が30,000〜0.5×106Daの範囲の分子量を有する、請求項19に記載のバイオ結合体の使用。
- 抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体と共に、腫瘍細胞の非腫瘍非形質転換表現型への分化薬としての1種以上の薬理学的に許容しうるアジュバント及び/又は賦形剤を含む医薬製剤。
- 活性成分としての抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体と共に、β-カテニンタンパク質の核内蓄積と関係がある腫瘍性病態を治療するための1種以上の薬理学的に許容しうるアジュバント及び/又は賦形剤を含む医薬製剤。
- 活性成分としての抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体と共に、APC-GSK-3βタンパク質複合体の不活性化と関係がある腫瘍性病態を治療するための1種以上の薬理学的に許容しうるアジュバント及び/又は賦形剤を含む医薬製剤。
- 活性成分としての抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体と共に、腫瘍細胞生命のS期の増加と関係がある腫瘍性病態を治療するための1種以上の薬理学的に許容しうるアジュバント及び/又は賦形剤を含む医薬製剤。
- 活性成分としての抗腫瘍薬に結合したヒアルロン酸から成るバイオ結合体と共に、原発腫瘍及びその転移を治療するための1種以上の薬理学的に許容しうるアジュバント及び/又は賦形剤を含む医薬製剤。
- β-カテニンタンパク質の核内蓄積及びAPC-GSK-3βタンパク質複合体の不活性化と関係がある腫瘍細胞の非腫瘍表現型への分化薬として、請求項21〜23に記載のバイオ結合体を含む医薬製剤。
- β-シクロデキストリン又はリポソームを含む、請求項21〜26に記載のバイオ結合体の水性医薬製剤。
- β-シクロデキストリンを1.5%w/vで含む、請求項27に記載のバイオ結合体の水性医薬製剤。
- グルコースを含む、請求項21〜26に記載のバイオ結合体の水性医薬製剤。
- 5%w/vのグルコース溶液中の、請求項29に記載のバイオ結合体の水性医薬製剤。
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