JP2011514963A - 細胞応答のデュアル検出システム及び方法 - Google Patents

細胞応答のデュアル検出システム及び方法 Download PDF

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Abstract

本発明のシステム及び方法は、光学バイオセンサにおけるエバネッセント波無標識光及びエバネッセント波励起蛍光標識発光のデュアル検出のためのものである。

Description

本発明は生細胞の刺激誘発応答を検出するための光学バイオセンサに係り、特に、共振(共鳴)導波路グレーティング(RWG:resonant waveguide grating)バイオセンサに関する。
本発明は、例えば、刺激に応答して生成される生細胞のエバネッセント波(EW:evanescent wave)励起蛍光発光及びエバネッセント波ベース(に基づいた)ダイナミックマスリディストリビューション(DMR:dynamic mass redistribution)シグナルを検出することができるデュアルモードもしくはマルチモードのシステム及び方法を提供する。実施例で本発明は、選択されたターゲットについての細胞シグナリング(cell-signaling)、コンパウンドスクリーニング等の研究を可能にする方法を教示する(高スループットフォーマットの場合もある)。このシステム及び方法はシグナリングの特殊性(特異性)と高度な情報内容を提供する。実施例で本発明はデュアルモードもしくはマルチモードのイオンチャネルバイオセンサ細胞アッセイのためのシステム及び方法を教示する。さらに、本発明は、長励起波長(例えば、約650nmより長い波長)のエバネッセント波励起蛍光発光を使用して細胞反応の検出を可能にする技術を開示する。ここに開示されたシステム及び方法は色々な用途で使用することができる。例えば、本発明のシステム及び方法は、創薬、治療効果評価(例えば、ADME−Tox(absorption(吸収)、distribution(分布)、metabolism(代謝)、excretion(排泄)及びtoxicity(毒性))の研究)、診断、環境痕跡分析(environmental trace analysis:環境トレース分析)、バイオテロリズム検出、基礎研究及び応用研究その他に使用することができる。
図1は、本発明の実施例において、固定化生細胞のセンシングボリューム内における細胞物質のダイナミック再配置(リディストリビューション)の結果として、エバネッセント波励起蛍光及びエバネッセント波光信号(即ち、DMR信号)の双方を同時に検出することができる共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサの概略を示す図である。 図2A−2Cは本発明の実施例において、刺激(物質)に応じて生細胞の標識非依存(ラベル非依存)光信号と標識依存光信号とを生成するバイオセンサシステムの概略を示す図である。 図3A−3Bは本発明の実施例において、TMモード(transverse magnetic mode:横磁場モード)を使用した場合の共鳴波長と入射角の相関関係を示す図である。 図4A−4Bは本発明の実施例において、TEモード(transverse electric mode:横電場(磁界)モード)を使用した場合の共鳴波長と入射角の相関関係を示す図である。 図5は本発明の実施例において、入射角が右から左に1度から57度へ1度ずつ増加した場合のTMモード(横磁場モード)のグレーティング反射スペクトラを示す図である。 図6A−6Bは本発明の実施例において、(比較的)短い波長の光が2次回折を介してグレーティング(格子)に共鳴結合され得ることを示す図である。 図7A−7Bは本発明の実施例におけるマイクロプレートアレイフォーマットのRWGバイオセンサの概略を示すと共に、共鳴周波数785nmでフォワード(forward)伝播TMモードを使用した場合の2つの別々の領域(基準領域とサンプル領域)を有するバイオセンサウエル(well)の蛍光発光イメージを示す図である。 図8は本発明の実施例において、図7Bのセンサのスキャンされた行(scanned row:走査行)の蛍光発光強度分布を示す図である。 図9A−9Bは本発明の実施例において、共鳴周波数785nmのフォワード伝播TEモードを使用した場合の2つの別々の領域を有するバイオセンサウエルの蛍光発光イメージを示し、図9Aの選択(selected)画素範囲におけるバイオセンサのスキャンされた蛍光発光強度を示す図である。 図10A−10Bは本発明の実施例において、共鳴周波数790nmのフォワード伝播TMモードを使用した場合の2つの別々の領域を有するバイオセンサウエルの蛍光発光イメージを示し、選択画素範囲におけるバイオセンサのスキャンされた蛍光発光強度分布を示す図である。 図11A−11Bは本発明の実施例において、共鳴周波数790nmのフォワード伝播TMモードを使用した場合の2つの別々の領域を有するバイオセンサウエルの蛍光発光イメージを示し、選択画素範囲におけるバイオセンサの蛍光発光強度分布を示す図である。 図12A−12Dは本発明の実施例において、IRDye(米国登録商標)標識化EGFによる刺激(物質)に応答して、バイオセンサマイクロプレート表面に培養されたA431細胞の蛍光発光強度がどのように径時変化するかを比較するための図である。 図13A−13Cは本発明の実施例において、基底細胞膜表面において可視領域内で膜(メンブラン)電位感応色素を励起するバイオセンサシステムの概略を示す図である。 図14A−14Cは本発明の実施例において、1つの色素が膜電位感応色素であり且つ基底細胞膜表面にある場合、可視領域内で2つの蛍光発光色素を励起するバイオセンサシステムの概略を示す図である。 図15A−15Cは本発明の実施例において、基底細胞膜表面に蛍光発光クエンチャ(消光剤)が存在する場合、可視領域内で膜電位感応色素を励起するバイオセンサシステムの概略を示す図である。
以下において本発明の色々な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。複数の実施例について説明をするが、当該実施例によって本発明の範囲が限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。また、本明細書に記載された実施例・(事)例は制限的な意味を持たず、単にクレーム発明の多くの実施可能な実施形態の幾つかを示しているだけである。
用語の定義
「アッセイ(試験、測定、検定、分析)」及び「アッセイ法(試験法、測定法、検定法、分析法)」等は、例えば、刺激物(質)との接触もしくは刺激物(質)による刺激に応答して生ずる細胞の標識(ラベル)依存反応及び標識非依存反応についての存在、不存在、量、範囲、程度、広がり、限度、動態(速度、運動量、反応速度等)、タイプ、種類その他の測定値を判定・決定するための解析・分析を意味する。当該刺激物は、例えば、外因性もしくは内因性の刺激物(例えば、坑体、坑体ミミック、リガンド候補物質、ウイルス粒子、病原体、病原菌等)である。
「付着・接着」、「付着(接着)物」、「付着(接着)する」、「付着した」、「付けられた」、「付着(吸着)性の」、「付着(吸着、接着)力がある」、「固定(化)」等の用語は、概して、例えば下記の物を所定の表面に固定することもしくは不動にすることを意味する。下記の物は例えば、表面改質物質、コンパティビライザ(compatibilizer:適合化物質)、細胞、リガンド候補物質等の物質であり、付着は例えば、物理的な吸着、化学的な結合その他のプロセスまたはこれらの組み合わせにより行われる。特に「細胞付着」、「細胞接着」等の表現は表面に対する細胞の相互作用、結合、接合を意味する。当該相互作用、結合等は例えば、培養または細胞アンカリング物質(例えば、細胞外マトリックス、アドヒージョンコンプレックス(adhesion complexes:接着複合体))、コンパティビライザ(例えば、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミン、ゼラチン、ポリリジン)等の物質もしくはこれらの組み合わせとの相互作用によって生ずる。
「付着細胞」、「接着細胞」は、基質の外面に付随し続けるか固定化されているか何からの形で接触している細胞、株(化)細胞もしくは細胞系(例えば、原核細胞、真核細胞)を意味する。培養後のこのタイプの細胞は洗浄及び培地・培養液交換プロセスに抵抗する(耐える)ことができる。上記プロセスは多くの細胞ベースのアッセイに必要なものである。「弱付着細胞」は、細胞培養の間、基質の表面に弱く相互作用するか付随するか接触している細胞、株(化)細胞もしくは細胞系(例えば、原核細胞、真核細胞)を意味する。しかしながら、このタイプの細胞(例えば、HEK(human embryonic kidney)細胞、ヒト胎児由来腎臓細胞)は物理的に妨害(邪魔)する手法(例えば、洗浄や培地・培養液交換)によって基質表面から容易に分離・解離する傾向を有している。「浮遊細胞」は、適切に所定の培地・培養液(この中で細胞が培養中に基質表面に付着・接着しない)で培養された細胞もしくは株(化)細胞を意味する。「細胞培養」は原核細胞もしくは真核細胞を管理された(コントロールされた・制御された)条件下で成長させるプロセスを意味する。「細胞培養」は多細胞真核生物から得られる(由来する)細胞(特に動物細胞)の培養だけでなく、例えば、複合組織及び器官・臓器の培養も意味する。
「細胞」等は半透膜によって外部境界が形成された原形質の小さな通常は顕微鏡的な(鏡検によって見出される)マス(mass:量、かたまり、もの)を意味し、1つもしくは複数の核及び種々の他のオルガネラ(小器官)を含む場合もあり、単体でもしくは他の細胞と相互作用することにより、生命の全ての基本的機能を行うことができると共に独立して機能することができる生物体の構造上の最小単位(例えば、合成細胞コンストラクト、細胞モデル系その他の人工的細胞系)を形成するものである。
「細胞系」等は2タイプ以上の細胞の集合(体)・群または1つのタイプの細胞の分化型・形・形態の集合(体)・群を意味する。この集合(体)・群の細胞は互いに相互作用し合い、その結果、生物学的、生理学的もしくは病態生理学的な機能を行う(発揮する)。このような細胞系は例えば、器官、組織、幹細胞、分化肝細胞その他の系またはこれらの組み合わせを含む。
「抗体」もしくは「Ab」等はタンパク質生体分子または生体分子ミミック(典型的にはY形状のものであり脊椎動物の血液もしくは他の体液の中に見つけることができる(例えば、可溶性の膜結合しているか膜遊離している形態及び、単クローンの、多クローン性の、自然の、合成の、操作された形態で))を意味する。坑体は免疫系(システム)によって使用され、表面抗原との反応により異物や病原体・菌(例えば、バクテリアやウイルス)を識別(確認、検知)して中和する。
「マーカー、標識(marker)」等は、少なくとも1つの細胞ターゲット・標的(例えば、Gq共役受容体、Gs共役受容体、Gi共役受容体、G12/13共役受容体、イオンチャネル、受容体チロシンキナーゼ、トランスポータ(輸送体)、ナトリウムプロトン交換輸送体、核内受容体、細胞キナーゼ、細胞タンパク質等)の活性・活動を調節することができる分子、生体分子、生物学的物質を意味し、バイオセンサにより測定できる信頼度の高い検出可能な出力もしくはシグナルを生成することができる。目的とする細胞ターゲット(標的)のクラス及びその後の細胞事象に依存するが、標識(マーカー)は例えば、アクティベータ(activator:活性化因子、活性化剤)(例えば、アゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト)であり、Gタンパク質共役受容体(GPCR:G protein-coupled receptor)、受容体チロシンキナーゼ(RTK:receptor tyrosine kinase)、イオンチャネル、核内受容体、細胞酵素アデニレートシクラーゼその他の細胞ターゲットに使用される。標識は例えば、特定のターゲットに結合して活性化するリガンドであるか、別のターゲットに結合して活性化する分子(その後上記特定のターゲットをトランス活性化する)である。
「検出」、「検出する」等は、バイオセンサを用いて細胞ターゲットに対する刺激(物質)の相互作用を発見もしくは検知する(センシングする)本発明のシステム、装置及び方法の能力を意味する。
「刺激物質」、「治療候補物質・化合物」、「治療候補(物質)」、「予防候補(物質)」、「予防剤・薬」、「リガンド候補(物質)」等は、自然のもしくは人工的な分子もしくは物質・材料であって、バイオセンサに付着する細胞と相互作用する可能性(能力)について注目すべきものを意味する。刺激(物質)は他の化学剤・薬品・物質(または光化学なもの、メカニカルな(人口的な、機械的な)もの、電気的なもの、またはこれらの組み合わせ)をさらに含むこともあるし、上記した分子、物質、材料に代わる化学剤・薬品・物質(または光化学なもの、メカニカルな(人口的な、機械的な)もの、電気的なもの、またはこれらの組み合わせ)を含むこともある。治療候補物質もしくは予防候補物質は例えば、化学物質、バイオロジカルモレキュラ(biological molecule:生体分子、生物学的分子)、ペプチド、タンパク質、生体(生物学的)サンプル、薬候補(薬品候補、薬剤候補)の小分子、薬(品)候補の生体分子、薬(品)候補の小分子生物学的コンジュゲート(drug candidate small molecule-biologic conjugate)等の材料、物質、モレキュラエンティティ(分子実体)またはこれらの組み合わせを含む。この治療候補物質もしくは予防候補物質は、細胞ターゲットまたは病原体(菌)ターゲット(例えば、生細胞のタンパク質、DNA、RNA、イオン、リピド(脂質)その他の構造物もしくは成分)の少なくとも一方に(と)特異的に結合するか相互作用することができるものである。
「バイオセンサ」等は分析物もしくは相互作用の検出のためのセンサ装置(デバイス)を意味する。バイオセンサは生物学的(生体)コンポーネント(成分、要素)を物理化学的な検出(器)コンポーネント(成分)に結合することができる。典型的なバイオセンサは3つの部分からなる。3つの部分とは、生物学的(生体)成分・要素(例えば、組織、微生物、病原体(菌)、細胞、もしくはこれらの組み合わせ)と、検出(器)成分・要素(例えば、物理化学的な形態(例えば、光学的、圧電式、電気化学的、サーモメトリック(thermometric)的、磁気的な形態)で動作する)と、上記2つの成分・要素に付随する(関連付けられた)トランスデューサである。生物学的(生体)成分・要素は例えば、生細胞、病原体(菌)もしくはこれらの組み合わせを含む。実施例では、光学バイオセンサは、例えば、生細胞、病原体(菌)もしくはこれらの組み合わせにおける分子認識(識別)もしくは分子刺激事象を検出可能で数量化(定量化)できるシグナル(信号)に変換する光学トランスデューサを有することもある。
「上皮(細胞)増殖・成長因子」すなわち「EGF(epidermal growth factor)」は細胞の成長、増殖及び分化の制御(調整、レギュレーション)に重要な役割を果たす成長因子を意味する。ヒトEGFは53のアミノ酸残基と3つの分子内ジスルフィド結合からなる6045Daタンパク質である。EGFは高い親和性(親和力)で細胞表面のEGFRに結合し、受容体の内在タンパク質チロシンキナーゼ活性を刺激することにより作用する。その後、チロシンキナーゼ活性により、シグナル伝達カスケードが開始され、細胞内で種々の生化学的変化(例えば、細胞内カルシウムレベルの上昇、糖分解の増加、タンパク質合成の増加、所定遺伝子(EGFRの遺伝子を含む)の発現の増加)が生ずる。最終的に、これはDNA合成及び細胞増殖に至る場合がある。
「上皮(細胞)増殖・成長因子受容体」すなわちは「EGFR(epidermal growth factor receptor)、EGF受容体」は細胞表面の特定の受容体であり、その特定のリガンド(EGF及びトランスフォーミング増殖因子α(TGFα)を含む)の結合により活性化されるものを意味する。EGF受容体はErbBファミリの受容体に属し(ErbBファミリのメンバであり)、これは4つの関連性の深い受容体チロシンキナーゼ(EGFR(ErbB−1)、HER2/c−neu(ErbB−2)、Her3(ErbB−3)及びHer4(ErbB−4))のサブファミリーである。関連するErbB−3及びErbB−4受容体はニューレグリン(NRGs)により活性化される。ErbB−2を直接活性化するリガンドは知られていないが、構成的(恒常的)に活性化状態にあると考えられる。その成長因子リガンドにより活性化されると、EGFRは不活性な単量体状態からアクティブな(活性性の、能動的な)ホモダイマーに遷移する。但し、予め生成された不活性な二量体も、リガンド結合の前に存在するだろうという証拠がある。リガンド結合の後にホモ二量体を形成することに加え、EGFRはErbB受容体ファミリの別のメンバ(例えば、RrbB2/Her2/neu)と対をなして活性化されたヘテロ二量体を生成することもある。また、活性化されたEGFRのクラスタが形成されることを示唆する証拠もある。但し、このクラスタ化が活性化自体に重要なのか、あるいは、個々の二量体の活性化に続いて発生するのかは不明である。
「トランス活性化」等は、別の細胞受容体(例えば、GPCR)に結合してこれを活性化するリガンドにより引き起こされる受容体(例えば、EGFR)の活性化を意味する。細胞調整メカニズム(機構)の作用の結果、当該受容体がトランス活性化される。このようなトランス活性化は異なる細胞シグナリングシステムの間における通信では一般的な原理である。これにより、細胞はその環境からの多くのシグナル(信号)を統合することができる。例えば、EGFRのトランス活性化はGPCRとRTKの間のクロストークのパラダイム・規範を示している(例えば、文献「Gschwind, A., et al. “Cell Communication Networks: Epidermal Growth Factor Receptor Transactivation as the Paradigm for Interreceptor Signal Transmission” Oncogene, (2001), 20 (13), 1594-1600」を参照されたい)。別の例としては、カルバコール(GPCRムスカリン受容体リガンド(刺激薬))を用いたHEK293細胞のKv1.2カリウムイオンチャネルのトランス活性化がある。トランス活性化リガンド、トランス活性化マーカーもしくはトランス活性化分子は、対象としているターゲット受容体を間接的に活性化することができるリガンド、マーカー(標識)もしくは分子を意味する。この活性化は、直接ターゲット受容体に結合して活性化するのではなく、細胞内調整もしくはシグナリングメカニズムにより行われると考えられる。
本明細書においては当業者に周知の略語(例えば、hもしくはhrは時間の略語として、gもしくはgmはグラムの略語として、mLはミリリットルの略語として、rtは室温(room temperature)の略語として、nmはナノメートルの略語として)が使用されることがある。
名詞の前に「1つ」もしくは「複数の」または特定の量・数を示す表現が無い限り、当該名詞の量・数は「少なくとも1つの」または単数もしくは複数であることを意味する。
「含む」等の表現は、目的語となっているものを有するが、それに限定されないことを意味する。
実施例の説明において使用される「約」、「略」、「およそ」、「ほぼ」等の修飾語(例えば、組成中の成分の量、濃度、体積・容積、プロセス(処理)温度、プロセス(処理)時間、歩留り、収率・収量、流量、圧力その他の値及びこれらの範囲に使用される)は、例えば、化合物、組成物、濃縮物、使用製剤を作る際の通常の計測・測定や取扱・処理で生じ得る数値の変動を意味する。また、「約」等の修飾語は上記計測等における不可避的誤差や、その方法を実施するために使用される原料もしくは成分の製造者(社)、供給源もしくは純度の違いその他の要因により生じ得る数値の変動を意味する。「約」等は特定の初期濃度や混合量(混合比)を有する組成物もしくは製剤の径時変化(濃度や混合比の変化・相違)も含み、特定の初期濃度や混合量(混合比)を有する組成物もしくは製剤を混合したり処理することにより生ずる変化・相違も含む。「約」等の表現で修飾されているかどうかに拘わらず、本出願の特許請求の範囲(本発明)は当該量・数値の均等物を含む。
実施例で使用される「実質的に…から成る・構成される」という表現は、例えば、本明細書のエバネッセント波無標識光及びエバネッセント波励起蛍光発光検出のためのシステム、生細胞を特徴づける装置(本明細書の上記システムを含む)、本明細書の生細胞を特徴づける方法、1つのセンサからのエバネッセント波無標識シグナル及びエバネッセント波励起蛍光シグナルの1つの共鳴波長の検出を強化(機能強化、機能向上)・改善・補助する方法、並びに、本明細書で説明されている物、デバイスもしくは装置に用いられる。また、「実質的に…から成る」という表現は特許請求の範囲に記載された構成要素もしくはステップを含むと共に、当該組成物、物、装置及び本明細書に記載されたもの(例えば、特定の反応物、特定の添加物、特定の成分、特定の薬剤、特定の細胞、特定の株化細胞、特定の表面モディファイア(変更因子)、特定の表面状態(条件)、特定のリガンド候補その他の構造体、材料、物質もしくは選択されたプロセス変数)の製造・使用方法の基本的且つ新規な特徴に大きな影響を与えない他の構成要素もしくはステップも含むという意で用いられることもある。
よって、請求項に記載された発明は、適宜、下記のもののいずれかを含むか、下記のものいずれかから成るか、下記のもののいずれかによって実質的に構成される。
エバネッセント波無標識光及びエバネッセント波励起蛍光発光を検出するシステム、
前記システムを含む生細胞を特徴付ける装置、
生細胞を特徴付ける方法、
1つのセンサからのEW無標識シグナル及びEW励起蛍光発光シグナルの1つの共鳴波長の検出を強化・改善する方法、及び
生細胞内のイオンチャネル活性を検出する方法。
本願の幾つかの態様・特徴は下記の米国特許出願に関連している(本願の出願人とこれら米国特許出願の出願人は同じである)。
米国特許出願第11/027,547号(出願日2004年12月29日、発明の名称「Spatially Scanned Optical Reader System and Method for Using Same」、出願公開番号20060141611A1、公開日2006年6月29日)。
米国特許出願第11/027,509号(出願日2004年12月29日、発明の名称「Method for Creating a Reference Region and a Sample Region on a Boisensor and the Resulting Biosensor」、出願公開番号20040141527A1、公開日2006年6月29日)。例えば図1には、1つのバイオセンサ上に参照(基準)領域とサンプル領域を生成する3つの異なる方法が示されている。
米国特許出願第11/210,920号(出願日2005年8月23日、発明の名称「Optical Reader System and Method for Monitoring and Correcting Lateral and Angular Misalignments of Label Independent Boisensors」、出願公開番号20060139641A1、公開日2006年6月29日)。この米国特許出願には、光学リーダー(reader)システムが記載されている。この光学リーダーシステムは走査された光ビームを使用してバイオセンサに応答指令信号を送り(バイオセンサをインターロゲートし)、生体分子結合事象がバイオセンサの表面で起きたかを判定している。実施例では、光学リーダーシステムは例えば、光源と、検出器と、プロセッサ(例えば、コンピュータ、デジタル信号プロセッサ(DSP))を含む。光源は光ビームを発し、当該光ビームは移動するバイオセンサに照射・走査され、この間、検出器がバイオセンサから共鳴反射された光ビームを集光する。あるいは、光源からの光ビームはセンサ全体を照らし、その間、検出器がセンサ全体からの光ビーム(バイオセンサから共鳴反射された光ビーム)を画像化する。プロセッサは集光された光ビームを処理して、生成される生のスペクトルデータもしくは角度データを記録する。これらデータはバイオセンサ上の位置(及び時間)の関数である。その後、プロセッサは生データを分析し、共鳴波長(ピーク位置)もしくは共鳴角度の空間マップを生成する。この空間マップは、生体分子結合事象もしくは細胞事象がバイオセンサ上で起きたか否かを示す。生データの上記以外の用途も説明されている。
米国特許出願第60/781,397号(出願日2006年3月10日、発明の名称「Optimized Method for LID Boisensor Resonance Detection」、出願番号11/716425、出願日2007年3月9日)。
米国特許出願第60/844,736号(出願日2006年9月9日、発明の名称「Active Microplate Position Correction for Boisensors」)。
米国特許出願第11/711,207号(出願日2007年2月27日、発明の名称「Swept Wavelength Imaging Optical Interrogation System and Method for Using Same」)。
構成要素、コンポーネント、成分、添加物、細胞タイプ、坑体その他、及びこれらの範囲について記載されている特定の(好ましいとされる)値は例示に過ぎない。記載されていない(明示されていない)値を排除する意図はないし、記載された範囲内の明示されていない値を排除する意図もない。本発明の組成(物)、成分、構成、装置及び方法は、本明細書に記載された値(一般的な値、特定の値、好ましい値)及びそれらの組み合わせを含む。
本発明は、固定化細胞もしくは生細胞における標識とは無関係な(独立している、依存していない)刺激誘発光学シグナルと標識に依存する蛍光発光シグナルを同時に検出するバイオセンサシステムを提供する。標識依存検出及び標識非依存検出の両方とも、バイオセンサから得られるエバネッセント波を利用する。本発明は細胞反応の高処理量システム(HTS:high throughput system)分析に適した方法を提供する。また、本発明は典型的には光学シグナル(信号)もしくは蛍光発光シグナルまたはこれらシグナルの双方と干渉することができる薬、剤もしくは化合物をスクリーニングするのに適した方法も提供する。さらに本発明は、広いスペクトル・範囲でエバネッセント波励起蛍光発光の適用を可能にする方法を開示する。
本発明は無標識で且つ非観血(非侵襲性)で高いシグナル特異性を有する光学(的な)バイオセンサベースの(バイオセンサを使用した)細胞分析(アッセイ)方法を提供する。このようなバイオセンサは標識を用いず(有さず)、統合された(完全な)細胞応答(これは、プロービング細胞生物学のダイナミックマス再分布(DMR:dynamic mass redistribution)と称される)を提供することができる。DMRシグナルは受容体の活性化の後の細胞プロセスからの(から得られる)多くの寄与物によって構成され得る。従って、これらバイオセンサベースの細胞分析は1つの細胞プロセス(通常、従来の細胞分析技術を使用して計測される)だけに適用されるものではない(特異的でない)と考えることができる。特定の(特異的な)細胞プロセスに付随するエバネッセント波励起蛍光発光を計測することにより、バイオセンサベースの細胞分析は伝統的な細胞分析に統合することができる。統合した計測により、補完的で補強的な情報を提供することができ、後述する細胞生物学に新しい見識・考えを与えることができる。
当初、細胞シグナリング(シグナル伝達)は直線的な経路を通って行われると考えられていた。この場合、1つの細胞外シグナルが直線的な反応連鎖の引き金(トリガ)となり、1つの明確な反応を生成していた。しかしながら、継続的な研究により、外的な刺激(物質)に対する細胞反応はかなり複雑であることが判明し、多くの共通の分子を含む複数の相互作用経路が関与していることが分かった。これら経路は単にシグナル伝達をしているだけでなく、例えば、内部シグナル及び外部シグナルを処理したり、符号化したり、統合したりすることもある。細胞は、外部シグナルからの刺激に対する応答をする場合、高度にダイナミックなネットワークの様な相互作用に依存している(相互作用を起こしている)。刺激に対する特定の(特異的な)分子を介するシグナル伝達経路の組み合わせ統合は、細胞応答及び細胞機能の特異性(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)のシグナル伝達)に重要な役割を果たしている。リガンド結合が行われると、EGFRは二量体化し、細胞質領域(ドメイン)内のチロシン残基上の受容体の自動(自己)リン酸化によって活性化する。その結果、多くの細胞内シグナルが別のシグナリングタンパク質と相互作用することによって惹起される(生成される)。しかしながら、細胞反応の特異性の大部分はシグナリングネットワーク相互作用の統合(組み込み、完成)によって決まり、細胞状況(コンテクスト、前後関係)に依存する。予想通り、RWGバイオセンサ標識非依存型アッセイ(測定、分析)は次のことを示している。即ち、静止状態(無活動状態)において、0.1%ウシ胎児血清を使用してEGFでA431細胞を刺激すると用量依存DMRシグナルが生成され、当該シグナルは、0%ウシ胎児血清を使用した完全に静止状態のA431細胞で得られるもの(Fang, Y., Biophys. J. 2006, 91, 1925-1940)比べて遅い動態(運動量、速度)と小さな振幅(広さ)を示す(Fang, Y., et al., Anal. Chem. 2005, 77, 5720-5725)。対称的に、化学化合物を使用してEGFRシグナル伝達経路における細胞内ターゲットの活性(化)を選択的に変更・調整するケミカルバイオロジー(化学生物学)の研究によって、特定のシグナル伝達経路下流EGFRとEGF誘発DMRシグナルとの間にリンク(関連)が見つかった。EGF誘発DMRシグナルはEGFRチロシンキナーゼ活性、アクチン重合及びダイナミンを必要とし、主にMEKを介して進む。さらに、ポジティブDMRフェーズ(P−DMR:時間が経過すると増大するシグナル)は主に細胞内ターゲットが活性化受容体に転位することが原因であり、ネガティブDMRフェーズ(N−DMR:時間が経過すると減少するシグナル)は受容体内部移行と細胞脱離の組み合わせが原因である。このようなケミカルバイオロジー分析は、EGF誘発DMRシグナルが1つの特異的な細胞シグナリング(シグナル伝達)事象に関連していないことを示している。つまり、EGF誘発DMRシグナルがEGFR活性の下流(後)の多くの細胞事象の組み合わせ・統合によるものであることを示している。その結果、各DMRフェーズの動態パラメータを特定の細胞事象にリンクさせることは難しい。また、DMRシグナル全体は非特異的にシグナル伝達経路もしくは1つのシグナリング事象に関連しているとも見ることができるが、それはEGFRターゲットに特異的である(Fang, Y., et al., Anal. Chem., 2005, 77, 5720-5725)。逆に、エバネッセント波励起蛍光発光の測定結果(本願のNIR色素標識化EGF(図12)を使用した例において示されている)によれば、NIR色素標識化EGFを追加した後の時間経過に伴う蛍光発光強度の変化は主に2つの主要な事象に関連していると考えられる。理論・学説に限定されて(定められて)いないが、蛍光発光強度の最初の増加は蛍光発光により標識化されたEGFが培養細胞の基底細胞膜にある受容体へ結合したために生じたと考えられ、その後の蛍光発光強度の減少は受容体が結合蛍光発光EGFと共に内部移行したために生じたと考えられる。このような結果は、EGF分子が拡散・分散し、センサ検出ゾーン内にある基底(細胞)膜表面に位置するEGFRに結合できることを示している(上部(上層)膜表面はセンサ表面から遠いので、色素標識化EFGの結合は現在のセンサでは容易に検出することができない)。この結合により蛍光発光強度が増大し、この動態は標識非依存型DMR測定法を用いたP−DMRフェーズの場合に似ている。さらに、内部移行が生ずるための時間は、完全に静止状態の細胞(0%ウシ胎児血清)についてP−DMRからN−DMRへ変化する時間と一致する(矛盾しない)。受容体内部移行は結合標識化EGFを細胞内へ移動することであると考えられる。この移動により、蛍光発光強度が減少する。このような結果から、標識非依存型及び標識依存型アッセイはお互いを確認することが出来るし、下流EGFRが標識非依存型測定(部)にシグナル伝達するという特定の細胞事象に特異性を与えることが出来る、ということが分かる。さらに、2つの測定を組み合わせると、どのようにEGFが細胞表面で受容体に結合するかについて、及び、いつどのようにEGFRシグナリング(シグナリル伝達)が進行するのかについて完全な・統合的なイメージが得られる。
本発明の実施例では、エバネッセント波無標識光検出とエバネッセント波励起蛍光発光検出のためのデュアル検出システムが提供される。
このシステムは、
光センサと、
前記センサを照射する光源と、
前記センサから(の)エバネッセント波無標識光及びエバネッセント波励起蛍光発光を収集する光検出システムもしくは光検出器と、
収集した光を分析するプロセッサとを含む。
本発明の他の実施例では、エバネッセント波無標識光検出とエバネッセント波励起蛍光発光検出のための他のデュアル検出システムが提供される。
このシステムは、
光センサと、
前記センサを照射する光源と、
前記センサからのエバネッセント波無標識光を収集する光検出システムもしくは光検出器と、
前記センサからのエバネッセント波励起蛍光発光を収集する第2光検出システムもしくは第2光検出器と、
収集した光を分析するプロセッサとを含む。
前記光センサは例えば、1つの光センサであってもよいし、マイクロプレートに設けられ導波路グレーティングに接続された複数のセンサのアレイ(複数のセンサが所定配置で設けられたもの)であってもよいし、その他の同様な構成のものであってもよい。前記光源は例えば、ファイバに接続された調整可能なレーザシステム(例えば、約400ナノメートルから約900ナノメートルの波長を有する複数の調整可能レーザまたはこのような複数のレーザの組み合わせ。尚、前記波長以外の波長であってもよし、前記波長範囲内の波長範囲であってもよいし、前記波長範囲以外の範囲であってもよい。)である。前記センサの光源照射は次のように選択される(決定される)。即ち、当該照射によって所定の蛍光発光標識が励起されるように選択される。所定の標識とは、直接的にもしくは間接的にセンサ表面との関連性を有する標識である。また、この照射によって、センサ表面に付随している細胞のDMR(dynamic mass redistribution)事象に関連したエバネッセント波無標識光が得られる。光検出システムもしくは光検出器は例えば、自己参照(基準)型の干渉計を含む。自己参照型の(即ち、波長参照型の)干渉計はレーザ光源波長をダイナミックに(状況に応じて)測定するのに使用することができる。これについては例えば、米国特許第5,305,074号を参照されたい。光検出システムによって収集された光は例えば、エバネッセント波無標識光、エバネッセント波蛍光標識発光もしくはこれらの組み合わせである。
蛍光(発光)検出及び画像化(イメージング)システムの典型的な構成要素・コンポーネントは例えば、光源(例えば、キセノンもしくは水銀アーク放電ランプ)、励起フィルタ、ダイクロイックミラー(もしくはダイクロマティックビームスプリッタ)及びエミッションフィルタである。このようなフィルタ及び二色性の部品は、刺激(物)にラベル付け(標識付け)するために使用されるフルオロフォア(fluorophore)の発光特性及びスペクトル励起にマッチする(合う)ように選択することができる。本発明の実施例ではデュアル検出システムは例えば、第1ビームスプリッタと第2ビームスプリッタを有する。第1ビームスプリッタは光源の励起ビームの入射角を調整し、第2ビームスプリッタはEW無標識反射光とEW励起蛍光発光標識発光を選択する。
デュアル検出システムの実施例において、EW無標識光を収集するための検出システムもしくは検出器はEW励起蛍光発光標識光を収集するための光検出システムもしくは光検出器と別のシステム(検出器)であってもよいし、両者が一体化されていてもよい。本発明の実施例では光検出システムもしくは光検出器は例えば、EW無標識光を収集するための第1デジタルカメラとEW励起蛍光発光標識光を収集するための第2デジタルカメラとを有する(例えば、図2C参照)。
光センサは1つもしくは複数のセンサ(例えば、複数のセンサのアレイ)からなる。複数のセンサは例えば、マイクロプレート部品に用いられる。マイクロプレート部品は複数の取り付けられたもしくは埋設されたバイオセンサを含む。本発明の光センサは他の部品や用途にも使用することができる。
適切な光源は例えば、調節可能なレーザ等の光源(例えば、1つもしくは複数のセンサを波長スイープ光で照射することができる調整可能なレーザ)である。この光源を使用して、バイオセンサアレイ内の各バイオセンサがシステマティックに(例えば、同時に、あるいは、所定規則・順序従って連続的に、あるいは所定グループ毎に)照射される。共鳴波長はアレイ内のセンサ毎に異なっているかもしれないが、レーザビームは本明細書で説明される照射光学系(常に設けられるわけではない)を通過させることができ、その結果、レーザビームを拡張させてセンサエリアのかなりの部分もしくはセンサエリアの全体を照射することができる。よって、前記調節可能な照射源(光源)は照射用光学系を含む。
センサからの光を集める光検出システムの一例は、エリア走査(スキャン)イメージセンサを有するデジタルカメラである。このデジタルカメラはデジタル化出力部を備えるエリア走査イメージセンサを有しており、例えば、前記調整可能なレーザが前記センサを走査すると、前記デジタルカメラはスペクトルイメージ(分光画像、スペクトル画像)を記録することができる。実施例では、このデジタルカメラは画像化光学系を有してもよい。この光学系は、デジタルカメラによって受信及び記録できるように、センサ生成光(学)画像の条件設定をする。
実施例では上記システムはさらに、次のものを少なくとも1つ有してもよいし、これらの組み合わせを有してもよい。即ち、上記システムは、コリメータレンズ、プラスマイナス()1nmの帯域を有する励起フィルタ、光(学)シャッター、偏光制御器、イメージング(画像化)レンズ、ノッチフィルタ及び蛍光発光フィルタの少なくとも1つもしくはこれらの組み合わせをさらに有してもよい。
本発明の実施例では生細胞を特徴づけるための装置が提供される。この装置は、前記システムと前記任意のコンポーネント・部品のいずれを含んでもよいし全てを含んでもよい。前記システムはセンサの表面(例えば、照射される表面の反対側の表面)に付随する生細胞を有する。
本発明の実施例では、生細胞を特徴づける方法が提供される。この方法は、
センサの表面に固定化された生細胞を有する前記システムに基づいて(基づいた)別のシステムを準備するステップと、
前記センサの表面に固定化された生細胞に付随している選択されたターゲットに対して、第1の蛍光発光標識化刺激を与える(準備する)ステップと、
前記固定化された細胞を前記第1の蛍光発光標識化刺激に接触させるステップと、
前記センサのEW無標識光及びEW蛍光発光を調べる(インターロゲートする)ことによって、前記第1の蛍光発光標識化刺激が前記ターゲットに接触したことにより生ずる効果(作用、影響)を検出するステップと、
前記センサのEW無標識光及びEW励起蛍光発光を第2の刺激がある場合と無い場合とで比較するステップを含む。
実施例では、前記第2の刺激は追加のプローブ・探索子(標識化刺激(標識付けされた刺激)あるいは標識化されていない刺激)として使用することができる。但し、この第2の刺激は少なくとも前記第1の蛍光発光標識化刺激とは異なる刺激である。前記第1の刺激と第2の刺激は例えば、別々にもしくは同時に加えることができる。2つの追加ステップがある場合、刺激追加順序はバイオセンサの用途等によって決められる。実施例では、標識化刺激は例えばまず、第2の刺激に対する標識化刺激の効果(作用、影響)を判断するためのアッセイ(分析)において加えられる。反対に、第2の刺激を先に加えてもよい。即ち、最初に第2の刺激が、蛍光標識化刺激誘発光学出力シグナルに対する第2の刺激の効果(作用、影響)を判断するためのアッセイに加えられてもよい。
本発明の実施例では、生細胞を特徴づける別の方法が提供される。この方法は、
センサの表面に固定化された生細胞を有する前記システムに基づいて(基づいた)「生発現(live-expression)」システムを準備するステップを含む。生細胞は例えば、蛍光発光ターゲットを能動的に・活発にもしくは断続的に発現するか、すでに発現している。
前記方法はさらに、
前記固定化された細胞を刺激に接触させるステップと、
前記センサのEW蛍光発光をインターロゲートすることによって、前記蛍光ターゲットに対する前記刺激の効果(作用、影響)を検出するステップと、
EW無標識光における刺激誘発変化を検出するステップを含む。
実施例では、刺激は異なる細胞ターゲット(つまり、蛍光ターゲットではないターゲット)に結合して当該ターゲットを活性化することができる。刺激結合ターゲットの活性化によって、蛍光ターゲットは基底細胞膜表面に向かって移行・転位(置)するか、基底細胞膜表面から離れるか、バイオセンサのセンシングボリューム(検出容積・範囲)の外に出る(いずれの移動が起きるかは、例えば、蛍光ターゲットの細胞局在性に依存する)。生細胞内の蛍光ターゲットの発現は例えば、遺伝子発現ベクター(媒介物)を使用することによって達成される(生じさせることができる)。遺伝子発現ベクターは例えば蛍光たんぱく質(例えば、緑色蛍光たんぱく質(GFP)、黄色蛍光たんぱく質(YFP)、赤色蛍光たんぱく質(RFP)、長波長蛍光たんぱく質(例えば、近赤外蛍光たんぱく質)その他の蛍光たんぱく質)を含む。あるいは、生細胞内の蛍光ターゲットの発現は例えば、トランスフェクション(transfection:導入、移入)法を使用して直接蛍光プローブもしくは蛍光たんぱく質を細胞内へ移送することによって達成される(生じさせることができる)し、インコーポレーション(incorporation:取り込み、組み入れ)法を使用して選択的に蛍光脂質分子を細胞表面膜に組み入れることによって達成される(生じさせることができる)。インコーポレーション法は蛍光脂質分子(例えば、膜電位感応色素分子もしくは蛍光タグ化脂質分子(例えば、Cy5標識化1,2ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(Cy5-DMPE)、クマリン結合リン脂質(CC2‐DMPE)もしくはナノゴールドタグ化脂質))を利用することができる。蛍光脂質分子は強い脂質と脂質の相互作用によって細胞表面膜に直接入ることができる。
本発明の実施例では1つのセンサからのEW無標識シグナルとEW励起蛍光発光シグナルの1つの共鳴波長の検出を強化する方法が提供される。この方法は、
蛍光発光標識を有する特異的ターゲットのEW励起蛍光発光シグナルを測定し、刺激に対する無標識DMR(dynamic mass redistribution)シグナルを測定するステップと、
ターゲットから発っせられ前記ステップで計測された蛍光発光シグナルと無標識光シグナル(DMRシグナル)とを相関させるステップを含む。
本発明の実施例では、1つのセンサからのエバネッセント波無標識シグナルとエバネッセント波励起蛍光発光シグナルの1つの共鳴波長の検出を強化・改善する別の方法が提供される。この方法は、
蛍光発光標識を有する特異的ターゲットのエバネッセント波励起蛍光発光シグナルを測定し、刺激に対する無標識DMRシグナルを測定するステップと、
前記蛍光発光シグナルと無標識DMRシグナルとを相関させるステップを含む。
蛍光発光シグナルと無標識DMRシグナルとを相関させるステップは、例えば、2つのシグナルの動態プロフィール・特性を比較すること、シグナル伝達カスケードを変えることにより2つのシグナルの調節(モジュレーション)プロフィールを比較すること、細胞反応に対する遺伝子変更の影響を比較すること、の少なくとも1つもしくは全てを含むことができる。
本発明の実施例では、生細胞を特徴づけるための他の方法が提供される。この方法は、
バイオセンサの表面に固定化された生細胞(この生細胞は蛍光ターゲットを有している)を有する前記バイオセンサシステムを用意するステップと、
前記固定化細胞を刺激に接触させるステップと、
前記センサのエバネッセント波蛍光発光をインターロゲートすることにより、前記蛍光ターゲットにおける刺激誘発変化を検出するステップと、
前記エバネッセント波無標識光における刺激誘発変化を検出するステップを含む。
実施例では、蛍光発光ターゲットを有する生細胞は例えば蛍光たんぱく質を発現する遺伝子発現ベクターによって得られる。実施例では蛍光発光ターゲットを有する生細胞は、例えば、ターゲットを生細胞へ移送するトランスフェクション法によって得られるか、脂質ターゲットを細胞表面膜に入れることによって得られるか、これら2つの手法の組み合わせによって得られる。
本発明の実施例では、エバネッセント波無標識光検出及びエバネッセント波励起蛍光発光検出のためのデュアル検出システムが提供される。このシステムは、
光センサと、
前記光センサを照射する光源と、
前記センサからのエバネッセント波無標識光を収集する第1光検出器と、
前記センサからのエバネッセント波励起蛍光発光を収集する第2光検出器と、
前記収集した光を分析するプロセッサとを含む。
光センサは例えば、所定パターンの基準領域、生細胞もしくは生体分子を有する(が設けられた・位置する)サンプル領域、またはこれら領域の組み合わせを備える。
本発明の実施例では、生細胞内のイオンチャネル活性のデュアル検出システムが提供される。
本発明の実施例では、生細胞内のイオンチャネル活性のデュアル検出方法が提供される。この方法は例えば、
バイオセンサ表面上に固定化された少なくとも1つの生細胞を有するバイオセンサを準備するステップと、
膜電位感応色素を前記固定化された細胞に与える(例えば、固定化細胞を色素に浸す)ステップと、
前記浸されて付いた膜電位感応色素を有する前記固定化細胞を刺激に接触させるステップと、
刺激誘発光学無標識シグナルとエバネッセント波励起蛍光発光シグナルを検出するステップを含む。
本発明の実施例では、生細胞内のイオンチャネル活性のデュアル検出の他の方法が提供される。この方法は、
バイオセンサ表面上に固定化された少なくとも1つの生細胞を有するバイオセンサを準備するステップと、
膜電位感応色素及び蛍光脂質を前記固定化された生細胞に与えるか、前記固定化された生細胞を膜感応色素及び蛍光脂質に浸すステップと、
浸された前記固定化細胞を刺激に接触させるステップと、
刺激誘発光学無標識シグナル及びエバネッセント波励起蛍光発光シグナルを検出するステップを含み、蛍光発光シグナルは色素と脂質の間の蛍光共鳴エネルギ伝達における変化に基づいて変化する。
本発明の実施例では、生細胞内のイオンチャネル活性のデュアル検出の他の方法が提供される。この方法は、
バイオセンサ表面上に固定化された少なくとも1つの生細胞を有するバイオセンサを準備するステップと、
膜電位感応色素及びクエンチャ(消光剤)脂質を前記固定化生細胞に与えるか、前記固定化生細胞を膜感応色素及びクレームエンチャ脂質に浸すステップと、
浸された前記固定化細胞を刺激に接触させるステップと、
刺激誘発光学無標識シグナル及びエバネッセント波励起蛍光発光シグナルを検出するステップを含み、前記検出された蛍光発光シグナルは前記クエンチャと膜電位感応色素の間の距離の変化に基づいて変化する。
本発明の実施例では、可視光源を備えるRWGバイオセンサが提供される。この可視光源はバイオセンサに対しほぼ(公称上)垂直な入射角を有し、エバネッセント波光学DMRシグナル及びエバネッセント波励起蛍光発光シグナルの検出に使用される。蛍光発光シグナルは少なくとも1つの可視励起波長を有して膜電位感応色素から生成され得る。膜電位感応色素は例えば、基底細胞膜の中にある。実施例では、一対の蛍光脂質(例えば、膜電位感応色素と蛍光脂質)は近接しているときは蛍光発光共鳴エネルギ伝達を行うことができ、アッセイ許容範囲もしくは検出感度をさらに増大するのに使用することができる。実施例では、一対の膜取り込み分子(例えば、膜電位感応色素と蛍光発光クエンチャ脂質)を選択することができる。このクエンチャは近接しているときは膜電位感応色素の蛍光発光を抑制する(失くす)ことができ、例えば、アッセイ許容範囲や検出感度を増大するために使用することができる。
本発明の実施例では、エバネッセント波バイオセンサを使用して生細胞内のイオンチャネル活性のデュアル検出もしくはマルチモード検出をするためのシステム及び方法が提供される。本発明では、基底細胞膜表面に付随する蛍光発光分子の局所的励起のために、従来の蛍光発光イオンチャネル細胞アッセイよりもアッセイ感度が高いシステム及び方法が提供される。さらに、イオンチャネルDMRと膜電位媒介(調整)蛍光発光シグナルを同時に検出することができるので、本発明の方法は例えば、偽(擬)陽性検出及び偽(擬)陰性検出を減ずることができる場合がある。偽陽性及び偽陰性の検出は従来の蛍光発光細胞アッセイ技術を使用するとしばしば生じてしまう。
本発明の実施例では、イオンチャネル活性に特異的且つ直接的に結び付いている生細胞のエバネッセント波励起蛍光発光シグナル及びエバネッセント波ベースDMRシグナルを検出することができるシステム及び方法が提供される。このシステム及び方法は、公称垂直角度でバイオセンサに入射する可視波長光に使用することができる特異的RWGバイオセンサを使用すると共に1つの膜電位感応色素(または互いの距離が近接しているとき蛍光発光共鳴エネルギ伝達をすることができる一対のドナー(提供)色素及びアクセプタ(受容)色素)を使用する。このシステム及び方法は無標識光応答と膜電位関連蛍光発光シグナル(例えば、イオンチャネルオープナ(例えば、リガンド、電位、機械的な力その他の手段、またはこれらの組み合わせ)により誘発されたもの)の検出を可能にする。
イオンチャネルは大きな・主なクリニカルインジケータ(臨床評価指標)を有するターゲットグループを提示するが、適切で迅速で且つ生物学的に優れたアッセイ手法が無かったために、これに対応することは難しかった。イオンチャネルは生体膜を通過する(生体膜全体の)イオンの動きを制御・調整し、細胞機能を維持したり調節・変更する際に重要な(決定的な)役割を果たす。イオンチャネルは薬(剤)ターゲットとしての重要度は高いが、イオンチャネルモジュレータの高スループット(処理量)スクリーニングは難しく長時間を要する(特に電位開口型(電位作動型)イオンチャネルの場合、難しく且つ長時間を要する)。従来、パッチクランピング法が主流であった。このような電気生理学的手法では、一日当たりに比較的少数のサンプルをスクリニーングすることしかできなかった。放射性リガンド結合アッセイは、結合サイト(部位)を前もって知る必要があるので、不便である。また、他のサイト(部位)もアロステリックに結合する可能性があるという点からも、放射性リガンド結合アッセイは不都合なものである。よって、価値ある結果が得られない可能性がある。
機能(的)アッセイは理想的にはイオンチャネル機能のモジュレータを発見するのに理想的に適したものである。しかし、現在利用可能な放射性(放射活性のある)エフラックス(efflux:流出、外向き電流、外向き流束)アッセイは細胞をロードするのに大量の放射性トレーサを必要とする。86ルビジウム(86Rubidium)エフラックスアッセイ(カリウムチャネルを研究するために通常適用される)を原子吸光分析を用いて無放射性フォーマットへ転換・変更することにより放射性トレーサが不要となったが、この方法でもスループットが制限される(高くない)。イオンチャネル機能を測定する1つの手法はマイクロフィジオメトリ(microphysiometry)を使用した測定である。この測定では、細胞内の全ての(任意の)変化に応じて細胞外pHがどのように変化するかをモニターすることができる。読み取り装置(リーダー)は市場入手できるものであり、アッセイは広い範囲(多くの種類)のターゲットに適用可能であるが、スループット(処理量、処理能力)は制限されたままである。なぜなら、測定時間(期間)が長いし、必要とされる細胞の数が多いからである。蛍光発光アッセイの進歩によって、適切なアッセイ技術のポートフォリオが大きく強化・改善された。
カルシウムチャネルの活性は蛍光イメージ(ング)プレートリーダ(FLIPR:Fluorescent Imaging Plate Reader)等のシステムでカルシウム感応色素(例えば、Fluo-3蛍光色素)を使用して測定することができる。膜電位の間接測定は、例えば、DiBac色素(ビスバルビツール酸オキソノール)のシリーズから選択されたオキソノール色素を用いてFLIPRにより行うことができる。この測定により、膜電位の変化に伴う分布の変化を知ることができ、全細胞画像をその後に付けることができる。電圧感応蛍光発光プローブを使用して、チャネルの活性をモニターすることができる(例えば、オーロラ社の電圧/イオンプローブリーダ(Aurora社、Voltage/Ion Probe Reader:VIPR)を使用する)。しかし、このような蛍光測定はホールセル(細胞全体)レベルで行われるので、そのシステムはしっかりとしたアッセイを行うためには蛍光発光共鳴エネルギ伝達を伴う電圧感応蛍光発光色素の使用を必要とする。
システムと方法
本発明の実施例では、エバネッセント波光放射(発光)(例えば、屈折率変化)とエバネッセント波蛍光発光とを、バイオセンサ表面領域のインターロゲーション(調査・観察・検出)もしくは画像化(発光の検出及び分析を含む)に基づいて測定するためのシステム及び方法が提供される。表面領域のインターロゲーションは例えば、2つの別個の相補的な方法によって行うことができる。実施例において、インターロゲーションはバイオセンサ表面を走査(スキャン)してセンサ表面の画像を構築(生成)することによって行われる。実施例では、インターロゲーションは、バイオセンサ表面からの蛍光発光とバイオセンサ表面(から)の屈折率変化の画像を同時に得ることにより行われる。本発明のシステム及び方法は例えば、診断検査(アッセイ)もしくは治療検査(アッセイ)を行うために用いることができる(例えば、エバネッセント波標識非依存検出のスキャンとエバネッセント波蛍光発光検出のスキャンのために用いることができる)。実施例では、1つもしくは複数のバイオセンサをマイクロプレートのウエルに設けてもよい。そして、本発明のシステム及び方法を用いて1つもしくは複数のバイオセンサをインターロゲーションして、バイオセンサ表面上もしくはその近傍に存在するターゲットと予期される結合分析物との間の結合情報(とを繋げる情報)を提供することができる。本発明の実施例のシステム及び方法を使用して、バイオセンサ表面に付着した生細胞と刺激との間の相互作用もしくはシグナリング情報を提供することができる。
本発明の実施例では、バイオセンサを分析して、例えば、生細胞内に細胞物質(の再分布)が存在するのか及び生細胞内における細胞物質の再分布の範囲がどれくらいなのかを判断する方法が提供される。この方法は、
バイオセンサの表面に付随している(例えば、固定化されている)生細胞を有するバイオセンサに照射して走査するステップと、
エバネッセント波無標識シグナルの検出とエバネッセント波蛍光発光シグナルの検出を同時に行うステップと、
無標識シグナル及び蛍光発光シグナルを細胞物質の再分布に相関させる(両者の相互関係を明らかにする)ステップを含む。
実施例では、シグナルを細胞再分布に相関させるステップは幾つかの異なる手法によって行うことができる相関分析によって実施される。例えば、当該相関させるステップは2つのシグナルの動態パラメータを比較することによって実施することができる。なぜなら、2つのシグナルは細胞反応の径時変化を示しているからである。あるいは、前記相関させるステップは、モジュレータ(例えば、細胞ターゲットを通るグナル伝達経路の細胞ターゲットに対するインヒビタ(抑制剤)もしくはアクティベータ(活性化剤))による細胞反応のモジュレーションプロフィールを比較することによって実施される。この細胞ターゲットは、刺激が相互作用しているターゲット(刺激相互作用ターゲット)である。あるいは、前記相関させるステップは、細胞反応に対する遺伝子変化の影響(インパクト)を比較することによって実施される。遺伝子変化(の影響)は例えば、遺伝子ノックアウトや干渉RNAを利用して知ることができる遺伝子サイレンシング(発現抑制)、または、遺伝子トランスフェクション法を利用して知ることができる遺伝子過発現である。この場合、例えば、遺伝子は、刺激相互作用ターゲットを介するシグナル伝達カスケードにある細胞タンパク質をコード化する。あるいは、前記相関させるステップは、上記した以外の手法により実行されてもよいし、上記した手法の組み合わせによって実行されてもよい。
無標識光(学)シグナルは統合された細胞反応を表している。統合された細胞反応は多くの下流シグナリング事象(特に細胞物質(質量)の大きな移動を含む事象)から構成される。下流シグナリング事象は特異的細胞ターゲット(例えば、GPCRもしくは受容体チロシンキナーゼ)の刺激誘発活性を介して起きる。対称的に、蛍光発光シグナルは特異的細胞プロセス(例えば、蛍光分子がそのターゲットに結合すること、刺激に応じて蛍光分子が移動すること、またはこれら2つの事象)に直接関連している。しかしながら、細胞シグナリング(シグナル伝達)は一連の空間的及び時間的事象によってコード化され得るし、細胞制御メカニズム(機構、仕組み)は細胞反応の統合に非常に重要な役割を果たすことがある。従って、2つのシグナルは共通の動態プロフィールを共有する場合がある。例えば、EGF誘発光信号における当初のP−DMR事象から次のN−DMR事象への移行時間(静止状態のA431細胞でRWGバイオセンサを使用して測定する)は、受容体脱感作プロセス(シグナル伝達カスケードのリン酸化(ホスホリレーション)により制御されるプロセス)に関連していることが分かった。このホスホリレーションはまた、受容体内部移行プロセスにも必要である。図12Aに示されるように、標識化EGF誘発反応についてのエバネッセント波励起蛍光測定でも、蛍光発光強度の最初の増加から次の減少までほぼ同じ移行時間を要している。後者の変化(発光強度減少)は受容体内部移行による。よって、動態分析をすると、EWにより生じた光シグナルをEWにより励起された蛍光シグナルに相関させることができる。さらに、A431細胞をダイナミン(dynamin)インヒビタ(ダイナミン抑制性ペプチド)で前処理することにより、P−DMRシグナルとN−DMRシグナルの双方における減少フェーズをかなり弱めることができる(Fang, Y. et al. Anal. Chem., 2005, 77, 5720-5725及び図12B参照)。このようなダイナミンインヒビタによるモジュレーションプロフィールは次の事の証拠・根拠となる。即ち、当該モジュレーションプロフィールはEGF(標識化されているか標識化されていない)誘発EW生成光シグナルにおけるN−DMR事象を標識化EGF誘発EW励起蛍光シグナルの蛍光発光の減少に相関させる根拠となる。
実施例においてバイオセンサ接触面は例えば、現像しなくてもよいし、改良(改質)しなくても良い場合もある。従って、本発明の方法は例えば、きれいな、未現像もしくは未使用のマイクロプレートその他の加工(人工)表面におけるバイオセンサの質に関係する基準データもしくはベースライン(データ)を判断(決定)するのに使用できるツールを提供することができる。これに加え(あるいはこれに代えて)、バイオセンサ接触面は現像もしくは改質してもよい(例えば、予め、あるいは生体内原位置で、あるいは両方で)。よって、例えば、本発明の方法は化学的アッセイ、薬理学的アッセイ、生物学的アッセイその他のアッセイにおいてマイクロプレート内のバイオセンサから得られるデータの質を判断する適切なツールとなることができる。バイオセンサ表面パターン(パターニング)は、化学物質もしくは対象ターゲットの固定化を防止する(その結果、分析物が固定化ターゲットに結合するのを防止する)物質によってバイオセンサの特異的な(特定の)表面を選択的にブロックすることにより作ることができる。これに加え(あるいはこれに代えて)、パターン形成(パターニング)を利用して生細胞の付着を防止することができ、その結果、生細胞の反応を刺激に与えることを防止することができる。例えば、バイオセンサにEMA(poly(ethylene-alt-maleic anhydride:エチレン−無水マレイン酸共重合体))等のポリマ(一級アミンに対して反応性を有する)をコーティングし、従来のコンタクトプリント法もしくはスタンピング法によってバイオセンサの全体のうちの小さなエリアを小分子(例えば、アミノエタノール)によりブロックする。他の例では、バイオセンサはSMA(styrene-maleic anhydride copolymer:スチレン−無水マレイン酸共重合体)等のポリマでコーティングされる。このポリマは一級アミンに対して反応性を有する。そして、例えば、コンタクトプリント法もしくはスタンピング法により、バイオセンサの表面の小さな部分をポリエチレングリコール(アミン終端を有する)でブロックする。その後、当該表面の残りの部分のコーティングを細胞外基質(ECM:extracellular matrix)により行う。細胞外基質は例えば、フィブロネクチン、コラーゲンもしくはゼラチンである。上記の結果として得られるプリブロックされた(予めブロックされた)エリアは細胞付着に対して抗力を有し、培養された細胞は選択的にECM物質存在(提示)エリアに結合する。
実施例ではバイオセンサ装置は例えば、マイクロプレート内に設けられた複数のバイオセンサを含む。マイクプレートは例えば、96個のウエルもしくは384個のウエルを有するか、同程度の数のウエルを有する(シングルウエル、マルチウエル、コンパウンドウエルを含む)。これに加え(あるいはこれに代えて)、バイオセンサは他の適切な形態を有してもよい。
本発明の実施例では、生細胞応答を判定するシステムが提供される。このシステムは、
複数のウエルが形成されたフレームを有するマイクロプレート(各ウエルには基準領域とサンプル領域を有する面を備えたバイオセンサが組み込まれている)と、
前記バイオセンサに設けられ、前記サンプル領域にのみ付着した1つもしくは複数の細胞を有する生細胞培養物(液)と、
前記バイオセンサの一部を照射する光ビーム光学系と、前記照射されたバイオセンサからの反射共鳴光及びEW励起蛍光発光を受光する画像光学系と、前記照射されたバイオセンサを走査して、当該バイオセンサからの一連の画像を捕捉(キャプチャ)する画像化装置とからなる光学リーダ・インターロゲータ(optical reader-interrogator)と、
前記獲得した走査データを本明細書に開示された複数の方法のいずれかにより処理するプロセッサと、を含む。
本発明の実施例では、バイオセンサ等のセンサのための光学インターロゲーションシステムが提供される。このシステムは、
前記バイオセンサに光ビームを発する照射装置と、
前記バイオセンサからの光ビーム及びEW励起蛍光発光を別々にもしくはまとめて集光して、当該集光された光ビーム及び蛍光発光に対応するシグナルを出力するレシーバと、
本明細書に開示された複数の方法のいずれかに基づいて、前記シグナルを処理して生細胞反応を判定(判断)するプロセッサと、を含む。
実施例において、前記プロセッサは例えば、プログラマブルコンピュータ、デジタル信号プロセッサ(DSP)その他の装置(本発明のシステム及び方法の計算処理、コンピューティング処理、比較処理、選択処理その他の処理ができる装置)である。
本発明の実施例では、米国コーニング社の装置であるEpic(米国登録商標)標識非依存検出システムが標識非依存生化学的結合検出システムとして使用できる。このシステムは384ウエルのマイクロプレートと光学リーダとから構成される。マイクロプレートの各ウエルには光学バイオセンサが設けられている。光学リーダによりマイクロプレートをインターロゲートする。各ウエルは小さな(例えば、約2mmx2mm)光学グレーティング(共鳴導波路グレーティング(RWG)として知られているもの)を含んでもよい。このグレーティングにより反射される光の波長は、ウエル内のセンサの表面における光学屈折率の高感度(敏感な)関数である。従って、物質(例えば、タンパク質、抗体、薬剤、細胞等)がウエル底部もしくはセンサ表面に結合すると、共鳴反射された波長は変化することになる。あるいは、刺激物(例えば、コンパウンド(化合物)、薬剤、生物、薬剤候補、治療剤等)がバイオセンサ表面に付着した生細胞に付随するターゲットもしくは生細胞と反応(もしくは相互作用)すると、共鳴反射された波長は変化することもある。
光学リーダ(走査された標識非依存検出に使用され、SLID(scanned label-independent detection)と称される)は、1つもしくは複数の集束(focused)光ビームを使用する。この光ビームはマイクロプレートの底部(即ち、固定化細胞もしくはサンプルから見て反対側)を横切って(あるいは底部全体を)走査するように照射され、各光学センサからの反射波長を測定する。リーダ(読取装置)を使用して、各センサからの反射波長の変化を時間の関数としてモニタ(監視)してもよい。また、リーダを使用して、各センサ内の位置(即ち、空間的に解像された情報もしくは画像(化)情報)の関数として波長及び波長変化を評価してもよい。
生化学物質がセンサの表面に結合すると、ローカル(局所)屈折率が変化し、光学センサにより反射された波長も変化する。リーダは各ウエル内の生化学的事象を計測するために、この波長変化を検出して定量化する(数値で表現する)。センサに衝突する光は、当該光の波長と入射角(当該光波のベクトル(wave vector:ウエーブベクトル))の組み合わせが適切であれば、導波路に共鳴結合される。
反射波長(もしくは反射角度)を時間の関数としてモニタすることにより、その物質がセンサの表面に結合されているかセンサの表面から離れているかを判断することができる。典型的なアッセイでは、まず例えば、タンパク質もしくは細胞をマイクロプレートのバイオセンサの表面に固定化する。次に、ベースラインの読み取りもしくは測定を行う。即ち、マイクロプレート内の各センサによって反射された波長が測定されて記録される。次に、結合化合物(例えば、薬剤化合物もしくは薬剤候補)または刺激物がウエルに加えられ、第2の波長読み取りが行われる。2つの読み取りの間で生ずる波長シフトは、どれくらの薬剤もしくは刺激物がマイクロプレートのバイオセンサの表面に結合したかを示す測定値となる。同じ様に(しかし基本的には異なるが)、細胞シグナリングの研究において、生細胞がセンサ表面に接触させられる。培養後、ベースラインの読み取りが行われる。即ち、プレート内の各バイオセンサによって反射された波長が測定され記録される。その後、刺激物が生細胞を有するウエルへ導入され、第2の波長読み取りが行われる。第2の波長読み取りは連続的に行ってもよいし(時間変化を見る測定)、不連続で行ってもよい(例えば、エンドポイント測定)。刺激を加える前と後の波長シフトもしくは波長差は、センサ表面に付着した生細胞の反応の測定値である。
実施例では、もし必要であるならば、各センサの一部を化学的もしくは物理的にブロックして、例えば、対象ターゲットの結合や生細胞の付着を防止することができる。ブロックされたエリア(部分)は環境変化により生ずる誤った(偽)波長シフトを除去する基準シグナルとして作用することができる。環境変化とは例えば、大きな屈折率変化、物質漂流(ドリフト)、非特異的な化合物結合、熱的事象(発熱、吸熱、加熱、冷却等)である。インターロゲーションシステムはサンプル領域からのシグナルと基準領域からのシグナルを区別することができなければならない。これらシグナルはセンサの帯域内のほとんどの波長で生じ得るし、同じ偏光を有している可能性もある。実施例では、ウエル内基準部(例えば、各ウエルの小さな部分を化学的にブロックすることができる所)は空間的にローカルな(局所的な)基準(部)として作用することができる。
過去数十年に亘って、色々な無標識光学バイオセンサが開発されてきた。これらバイオセンサは、例えば、生体分子相互作用の動態及び結合親和性に関する詳細な情報を提供してくれる。このようなバイオセンサはしばしば親和性ベースのバイオセンサと称される。バイオセンサ機器及び実験装置・設備の継続的改良により、広い範囲の(色々な)相互作用をより詳細に分析することが可能になった。その一例は、小さな分子が固定化受容体に結合することを直接検出することができるようになったことである。これは特に、ドラッグ(薬剤)スクリーニングにおいて用いられる。
薬(剤)発見のパラダイムはターゲット指向の手法からシステムバイオロジ中心の手法へと変化し始めているので、細胞ベースのアッセイにおける光バイオセンサの使用が増えてきている(例えば、Fang, Y., (2006) Assays and Drug Development Technologies, 4:583-595参照)。生細胞の刺激誘発応答を検査する無標識光バイオセンサの能力は、浸透・侵入(ペネトレーション)深さもしくはセンシングボリューム内での生細胞の分布もしくは局所的質量密度の変化を検出するバイオセンサのエバネッセント波に対する感度に依存している。共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサは例えば、多くのクラスの細胞ターゲットの活性化及びシグナリングの研究に使用されており、細胞もしくは細胞系の動き(行動、振る舞い)の研究にも使用されている。このような非観血的(非浸襲的)で無標識の細胞アッセイは他の無標識エバネッセント波ベースのバイオセンサ(例えば、表面プラズモン共鳴(SPR:surface plasmon resonance)装置もしくは共鳴ミラー)を用いて行うこともできる。フォトニッククリスタル(photonic crystal)バイオセンサも、共鳴導波路グレーティングバイオセンサの一例である。このような非観血的バイオセンサベースの細胞アッセイは、無標識で統合(integrated)細胞反応を計測することができる。得られる光シグナルはDMR(dynamic mass redistribution)シグナルと称され、刺激により誘発され、その性質上、特異的な細胞ターゲットもしくは経路に対して非特異的である。刺激誘発光シグナルもしくはDMRシグナルを特異的なターゲットに結びつける(リンクさせる)ためには、例えば、DMRシグナルに関与している細胞ターゲット、細胞事象もしくは経路に関する知識が必要である(Fang, Y., et al., (2005) Anal. Chem., 77: 5720-5725及びFang, Y., et al., (2005) FEBS Lett., 579: 6365-6374参照)。
バイオセンサ技術
バイオセンサは分子認識(識別)事象を定量化可能なシグナルに変換するための特定のトランスデューサを複数備えている。複数のトランスデューサそれぞれの性質に基づいて、トランスデューサを異なるタイプのバイオセンサにカテゴライズ(分類分け)することができる。例えば、熱量測定バイオセンサ、アコースティック(acoustic)バイオセンサ、電気化学的バイオセンサ、マグネティックバイオセンサ、光学バイオセンサその他に分類することができる。バイオセンサは無標識で分子認識もしくは相互作用を調べる場合に広く使用されている。典型的には、生体物質(例えば、リガンド、機能タンパク質、坑体)をバイオセンサの表面に接触させ、生体層を形成することができる。ターゲット分析物と生体物質の層との間の相互作用によって、トランスデューサの物理的性質に変化(例えば、共鳴反射光の内容・量の変化)が生ずる。このような変化は検出器によって検出することができ、サンプル中のターゲット分子の結合を直接定量化(数値化)する際に用いることができる。あるいは、細胞の層をセンサ表面に接触させてもよい。その後、刺激(物)を与えて細胞と反応させ、トランスデューサの物理的性質に変化を生じさせる。このような変化は検出器によって検出することができ、生細胞の反応を定量化する際に用いることができる。そして、それは生細胞内のターゲットもしくは刺激(物)の機能のインジケータとして使用することができる。上記ターゲットは当該刺激(物)が反応もしくは相互作用するターゲットである。最近は幾つかのタイプのバイオセンサ技術(主に、インピーダンスベースの電気バイオセンサ及びエバネッセント波ベースの光バイオセンサ)が、生理(学)的条件下における細胞活性(活動、動作)を調べるために使用されるようになってきた。
エバネッセント波ベースの細胞アッセイ
多くの光バイオセンサが開発されてきた。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサ、共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサ及び共鳴ミラーバイオセンサなどが開発されてきた。これらのうち、SPRバイオセンサ及びRWGバイオセンサが最も一般的である。この2つのバイオセンサはエバネッセント波を利用して、センサ表面における(もしくはその近傍における)生体層の変化もしくは分子相互作用を特徴付けることができる。エバネッセント波は溶液と表面とのインターフェースにおける光の全内部反射により生成される電磁場であり、通常、バイオセンサ表面から短い距離・深さ(例えば約数百ナノメートル)だけ溶液内に存在する。この深さをペネトレーション(侵入)深さもしくはセンシング(検出)ボリュームと称する。
SPRバイオセンサはプリズムを使用して、偏光された光のウエッジ(wedge)(入射角の所定範囲をカバーする)を平面ガラス基板に向け(導き)、表面プラズモンを励起する。このガラス基板は電導性金属フィルム(例えば、金膜、金層)を有している。その結果として得られるエバネッセント波は金層の自由電子雲と相互作用して自由電子雲に吸収され、電子電荷密度波(表面プラズモ)を生成し、反射光の強度を低下させる。この強度が最低になる共鳴角度は、センサ表面の反対側の金層に近い溶液の屈折率の関数である。これに対し、RWGバイオセンサは回折格子によって光を導波路へ共鳴結合させている。所定範囲の入射波長を有する偏光された光を用いて、導波路を直接照射する。このとき、特定の(特異的な)波長の光が導波路に結合され、導波路に沿って伝播する。結合効率が最大となる共鳴波長はバイオセンサの表面もしくはその近傍における局所的屈折率の関数である。サンプル中のターゲット分子が固定化受容体に結合すると、共鳴波長がシフトする。
細胞ベースのアッセイの場合、分離(単離)受容体ではなく生細胞がバイオセンサの表面に(と)接触させられるか相互作用させられる(通常、培養によって)。細胞付着は幾つかのタイプの接触(例えば、接着点(フォーカルコンタクト)、クロースコンタクト(close contact)、細胞外基質(ECM)接触)によって為される。各接触・コンタクトはそれぞれセンサ表面から特徴的な分離距離を有する。ほとんどの細胞内生体高分子は微細繊維網のマトリックスによって規律正しく構成・配置されていることが知られている。また、その位置はかなり規則正しいので細胞は例えば特異的で郊率的なタンパク質相互作用を行うことができ、空間的にタンパク質活性化メカニズムと非活性化メカニズムを分離し、特異的細胞機能及び反応を判断することができる。刺激を受けると、細胞タンパク質の大きな移動が起こることがしばしばあり、その結果、ダイナミックで(動的で、大きな)所定方向に進む質量再分布(DMR(dynamic mass redistribution)と称される)が生ずる。DMRは、センシングボリューム内で生ずるならば、光バイオセンサによって検出することができる。得られたDMRは生細胞の一意的な(唯一の、独特な、特有な)生理(学的)シグナルとなり得る。このシグナルは例えば、受容体の活性をモニタしたり、受容体のシステム−細胞生物学の研究をしたり、薬剤候補のシステム細胞薬理学を調べたりする際に使用できる。本発明のバイオセンサベースの細胞アッセイ方法は広い範囲の細胞及び細胞ターゲット(例えば、GPCR、受容体チロシンキナーゼ、イオンチャネル、キナーゼ等)に適用することができる。
1.光バイオセンサ
無標識バイオセンサには多くのタイプがある。これらバイオセンサのほとんどは、分子相互作用の分析用に構成されている。共通の特徴は、ある種のトランスデューサを使用して、表面と溶液のインターフェース(境界)における分子相互作用を検出することである。他のタイプのバイオセンサ(例えば、熱量測定トランスデューサ、音響トランスデューサ、電気化学トランスデューサもしくは磁気トランスデューサ等を使用するバイオセンサ)と同様に、光バイオセンサは分子認識事象を定量化可能なシグナルに変換する光学トランスデューサを含む。
多くの光バイオセンサ機器が市場において入手可能である。例えば、生体分子相互作用の動態判断用のSPRベースのシステム(例えば、バイオコア社のBIACORE3000)、パラレル結合検出用のプラズモンイメージャ(Plasmon Imager)(グラフィニティファーマシューティカル社)、標準SBSマイクロプレートフォーマット(ほとんどが384ウエルマイクロプレート)を使用した高スループットスクリーニング用のEpicシステム(コーニング社)が市場入手可能である。
本発明の実施例においては、マルチモード検出能力を有する光バイオセンサシステムが提供される。これは例えば、エバネッセント波ベースのバイオセンサ(例えば、プラズモン共鳴バイオセンサ、共鳴ミラーバイオセンサ、フォトニック結晶バイオセンサ、もしくは共鳴導波路グレーティングバイオセンサ)に適している。このようなバイオセンサはエバネッセント波を利用して、例えばセンサ表面における(もしくはその近傍における)分子的相互作用、構造的相互作用、生細胞の化学機械電気誘導反応(chemo-mechano-electrical induced response)、細胞と細胞の相互作用を特徴付けることができる。エバネッセント波は電磁場であり、溶液と表面のインターフェースにおける光の全内部反射により生成され、通常は短い距離(約数百ナノメートル)だけ溶液内に延びる(特有の深さをもって)。この特有の深さはペネトレーション深さもしくはセンシングボリューム(sensing volume)と称される。市販されているシステムはそれぞれかなり異なった動作原理、スループット、サンプル供給プロセス及び用途で作動するが、全ての光バイオセンサに共通な特徴はセンサ表面(もしくはそのごく近傍)における局所的な屈折率の変化を計測できることである。
表面プラズモン共鳴(SPR)
SPRはプリズムを使用して、偏光された光(所定範囲の入射角をカバーする)のウエッジ(wedge)を平なガラス基板に向ける。ガラス基板は金の薄いフィルムを有しており、表面プラズモンを励起する。共鳴角度(反射光の強度が最小になる角度)は、センサ表面の反対側の金層に近い溶液の屈折率の関数である。
共鳴導波路グレーティング(RWG)システム
RWGバイオセンサは、回折格子を介した光の導波路への共鳴結合を利用する。偏光された光(所定範囲の入射波長をカバーする)を使用して導波路を照射する。特定の波長の光を導波路に結合させ、導波路に沿って伝播させる。共鳴波長(結合効率が最大になるところ)はセンサ表面における(もしくはその近傍)の局所的屈折率の関数である。高スループットスクリーニング(HTS:high throughput screening)及び細胞ベースのアッセイに関して、RWGバイオセンサは多くの利点を提供する。適切な構成を有するこのタイプのバイオセンサを用いると、公称垂直の入射角の光でバイオセンサを照射することができる。垂直な入射角で照射できることは、多数のバイオセンサを同時に照射するための重要な構造上のパラメータである。同時照射(できること)はHTSの望ましい特徴である。HTSはSBS(Society for Biomolecular Sciences:http://www.sbsonline.org)標準マイクロタイタープレート(例えば、384ウエルマイクロプレート)内のサンプルを直接アッセイ(分析)するものである。
インターフェロメトリー(干渉法)システム
干渉法ベースのバイオセンサは分光器を使用し、バイオセンサインターフェースからの反射光における干渉パターンを捕捉する。生体分子がバイオセンサ表面に結合すると、その厚さは例えば増大し、当該結合は例えば分光計の干渉パターンの変化を分析することによってモニター(観測)することができる。
2.光バイオセンサベースのイメージングシステム
通常、光バイオセンサ装置はバイオセンサを使って、サンプル中のターゲット分子がバイオセンサ表面に固定化された受容体に結合したかをモニターする。得られた結合シグナルは通常、決められたエリア(照射ビームのサイズ(例えば、200ミクロン)及びバイオセンサ内で移動する結合光の伝搬距離(例えば、RWGバイオセンサの場合、約200ミクロン)によって決まるエリア)における結合による平均的な反応を示している。サンプル中のターゲット分子が固定化受容体に結合するのを高解像度で画像化することができる市販の光バイオセンサシステムには色々なクラスのものがある。これらシステムは、SPR画像化(イメージング、画像処理)システム、エリプソメトリ画像化システム及びRWG画像化システムを含む。
例えば、SPRイメージャ(Imager)II(GWCテクノロジー社)はプリズム結合されたSPRを使用し、固定入射角におけるSPR計測値を取り、CCDカメラにより反射光を集める。表面における変化は、反射率変化として記録される。よって、SPRイメージングでは、アレイの全ての要素に関する計測値を同時に集めることになる。
エリプソメトリ(ellipsometry)も、検出器としてCCDカメラを使用することによって、イメージングエリプソメトリとして実施することができる。この手法は、サンプルのリアルタイムのコントラストイメージ(画像)を提供する。それによって、フィルム(膜)厚及び屈折率に関する情報を得ることができる。高度・高性能なイメージングエリプソメータ技術は伝統的なヌル(null)エリプソメトリ及びリアルタイムエリプソメトリコントラストイメージングの原理に基づいて動作する。この場合、1波長エリプソメータ設定で、光源としてレーザを使用する。レーザビームは、リニア偏光子と1/4波長板を通過した後、楕円形に偏光される。楕円偏光された光はサンプル以外のところに(で)反射され、分析器を通過し、長い作動距離の対物レンズによってCCDカメラに結像する。計測されたデータをコンピュータ化された光学モデルで分析すると、空間的に解像された膜厚と複素屈折率の値を演算(推測)することができる。
コーニング社はイメージングベースの使用(用途)のためのRWGバイオセンサに基づいたスイープ波長光学インターロゲーションシステムも開示している。このシステムでは、高速調整可能レーザ光源を使用してマイクロプレートフォーマットのRWGバイオセンサのアレイもしくはセンサを照射する。センサスペクトルは、レーザ波長で走査すると、時間の関数としてセンサから反射された光パワーを検出することによって構成することができる。計測データをコンピュータ化された共鳴波長インターロゲーションモデリング法で分析すると、細胞層もしくは固定化受容体を有するバイオセンサの空間解像イメージが得られる。画像センサを使用すると、当然、イメージングベースのインターロゲーションスキームになる。2次元無標識画像を、可動部無しで得ることができる。
3.エバネッセント波(EW)励起蛍光発光
エバネッセント波励起蛍光発光は、バイオインターフェースをプロービングするのに用いることができる。これは通常、全内部反射蛍光発光(TIRF:total internal reflection fluorescence)を使用して行うことができる。エピ(epi)蛍光発光の場合とは異なり、エバネッセント波はフィールド(場)のペネトレーション深さ内の標識化分子だけを励起する。これによりバルク(bulk)シグナルから干渉を排除・除去することができる。TIRFの場合、光はプリズムもしくは高開口数の液浸対物レンズを介して、基質(基板)のインターフェースに結合される。ここで、全内部反射により、光は基質(基板)の全長にわたり導かれる。
エバネッセント波が高度に閉じられた(拘束された、制限された)導波路モードもしくは表面プラズモを介して生成されると、強い局所場(local field)が長い相互作用部分に結合し、その結果、従来のTIRFに比べ蛍光発光が著しく強化される(例えば、約10−約100倍の表面強化になる)。SPRの場合、エバネッセント波の強化はフルオロフォアの金属表面までの距離に大きく依存するので、検出はばらつく傾向にあり、クエンチング(quenching:消光)を起こす場合もある。金属表面(例えば、金)によるフルオロフォアのクエンチングは距離に依存しており、通常それは短い距離(例えば、数ナノメートル未満)で生ずる。このようなクエンチングは、RWGバイオセンサが使用される場合には起きない。従って、シングルモードの導波路から生成されたエバネッセント波(EW)は非常に感度が高く且つ定量化可能な表面結合標識(もしくは付随・関連する標識)計測値を表す。
エバネッセント波(EW)強化蛍光発光は1985年には提案されていた(リファレンス1)。従来の平面導波路は高屈折率物質(例えば、Nb25、Ti25、TiO2、SiN等、もしくはこれらの組み合わせ)から作ることができる。光はプリズムもしくは表面グレーティングを介して導波路に結合することができる。導波路グレーティングカプラ(coupler)ベースのEW蛍光発光技術はゼプトセン社及びマイクロバキューム社により商品化された(リファレンス2)。ゼプトセン社の装置は、平面導波路検出領域からのグレーティング結合領域の分離に基づく手法を採用している。マイクロバキューム社の技術はOWLS(optical waveguide lightmode spectroscopy:光導波路ライトモード分光器)として知られている(リファレンス3)。センサは導波路グレーティングカプラに似ているが、光検出器が平面導波路の遠い端に設けられる。光は共鳴入射角で導波路に結合される。同じようなスキームが報告されている(リファレンス4及び5)。
平面導波路は無標識検出における重要な技術でもある(リファレンス2及び6)。導波路表面の屈折率の小さな変化はグレーティングカプラの共鳴条件のシフトとなって現れる。よって、エバネッセント波(EW)は、表面限定(surface confined、表面に閉じ込められた)蛍光発光励起と屈折率のセンシングの両方に使用することができる。このような機能・能力については報告書が存在している(リファレンス7及び8)(OWLSチップ及びリーダを使用)。OWLSはその検出スキームの故に、シングルチャネルに限定されるか、最も良い場合でも一次元アレイの検出に限定される。
ゼプトセン社及びノヴァーティス社(リファレンス9−12)の装置は、光を導波路フィルムに結合させる際に別の領域を使用し、結合された光が導波路フィルム内で伝搬するようになっており、導波路フィルムは別の領域(グレーティングが無い領域)に延びており、そこで平面導波路励起を生じさせている。この構成はエバネッセント波(EW)蛍光発光励起のために最適化されている。なぜなら蛍光発光は導かれた平面導波路モードにより励起されるからである(導波路グレーティングカプラのリーキー(leaky:漏れ易い)モードで励起されるのではない)。上記導かれたモード(ガイドモード)は、リーキーモードよりも長い距離伝搬することができる。さらにバルク蛍光発光は平面導波路部分で最小になる。一方、導波路グレーティングカプラでは、少量の光がリークしてしまい、バルク蛍光発光励起が生じてしまう。尚、ゼプトセン社製チップの導波路部分は、屈折率測定に使用することができない。しかし、上記したようなエバネッセント波励起蛍光発光検出スキームもしくはシステムは、少数のバイオセンサもしくは比較的小さなエリアを有するバイオセンサ基質(基板)に適したものになっている。
本発明の実施例では、エバネッセント波励起蛍光発光エリアとエバネッセント波標識非依存(エリア)の双方のセンシングエリア(即ち、検出エリア)は好ましくは導波路グレーティングカプラ領域内に位置している。
4.無標識エバネッセント波バイオセンサベースの細胞アッセイ
コーニング社の研究者は、刺激に応じた(刺激によって発生する)細胞活性(活動)及び細胞行動(挙動、ビヘイビア)をプロービングするための無標識光バイオセンサ(特にRWGバイオセンサ)を使用したアッセイ(分析法)を開発してきた。このような無標識細胞アッセイはマスリディストリビューション細胞アッセイ技術(MRCAT:Mass Redistribution Cell Assay Technologies)と称され、シグナリングGタンパク質結合受容体、受容体チロシンキナーゼ及び多くの他の細胞ターゲットを研究する際に使用されたり、上記のようなターゲットに対して化合物をスクリーニングする際に使用されている。MRCATは主としてRWGバイオセンサを対象としている。しかし、このようなアッセイは全てのタイプのエバネッセント波ベースのバイオセンサ(SPRもしくはフォトニック結晶バイオセンサを含む)を用いて実施することができる。
RWGバイオセンサが細胞ベースのアッセイに使用できるかは、刺激に対する表面培養細胞の局所的質量密度(mass density)もしくは分布(distribution)の変化に対するエバネッセント波の感度・感応性による(上記アッセイに使用できるのは、上記感度・感応性があるからである)。このエバネッセント波は導波路フィルム内の結合光により生成される。RWGバイオセンサを使用するホールセル(細胞全体)センシングの場合、センサの構成は3層システムであると考えてよい。3層とは、基質と、グレーティング構造が埋設された導波路フィルムと、細胞層である。なぜなら、生細胞は大きな寸法(典型的には数十ミクロン)を有し、細胞がRWGバイオセンサの表面に直接培養されるからである(通常、培養密度が高くなるまで培養される)。細胞と表面との相互作用は主に3つのタイプの接触を介して起きる。3つのタイプとは、フォーカルコンタクト(focal contact)、クロース(close)コンタクト及び細胞外基質(ECM)コンタクトである。このようなコンタクトにおいて、細胞膜は例えば、数nm(ナノメートル)から100nm(あるいは101nm以上)基質から分離することができる。バイオセンサはエバネッセント波を利用してセンサ表面の(もしくはその近傍の)細胞層のリガンド誘発変化を検出する。実効屈折率におけるリガンド誘発変化(即ち、検出されたシグナル)は、次の式(1)のように、細胞層の底部の屈折率変化に正比例する(一次関数で)。
(式1)
Figure 2011514963
ここで、S(C)は細胞層に対する感度、Δncはバイオセンサにより検出された細胞層の局所屈折率のリガンド誘発変化である。後者はセンシングボリューム内の細胞ターゲットもしくは分子アッセンブリ(集合・集合体)の局所的濃度の変化に正比例する。これは細胞の周知の物理的性質(細胞内の所定ボリュームの屈折率は生体分子(主にタンパク質)の濃度によりほぼ決まる)による。これはまた、細胞の光学顕微鏡イメージのコントラストの基礎となる。
従って、検出されたシグナルはセンサ表面から所定距離離れた複数個所で起きている質量再分布(マスリディストリビューション)の合計である。全体の応答に対する各質量分布の寄与度は異なる。これはエバネッセント波が指数関数的に減衰するためである。重み付けされたファクタexp(-zi/ΔZc)を考慮に入れると、センサ表面に垂直に発生する検出シグナルは式(2)により規定される。
(式2)
Figure 2011514963
ここで、ΔZcは細胞層内へのペネトレーション深さ、αは比屈折増加(タンパク質の場合、100mL/g毎に約0.0018)、ziはマスリディストリビューションが生ずる距離、dは細胞層内のスライスの仮想厚さである。また、細胞層は垂直方向等間隔のスライスに分けられる。
受容体バイオロジを研究するために従来の薬理学的アプローチを使用したところ、リガンドが細胞系に発現した受容体に特異的であるとき、リガンド誘発DMRシグナルもまた受容体に特異的であり、投与量に依存し、サチュレート(飽和)可能であることが分かった(Fang, Y., et atl, in Anal. Chem., 2005, 77, 5720-5725、Biophys. J., 2006, 91. 1925-1940、FEBS Lett., 2005, 579, 6365-6374、J. Pharmacol. Tox. Methods, 2007, 55, 314-322、BMC Cell Biol., 2007, e24 (1-12)参照)。多数のGタンパク質結合受容体(GPCR)リガンドを調べてみたところ、効率(有効性)(EC50値により測定)は文献に出ている従来の方法を用いて計測した値とほとんど同じであることが分かった。DMRシグナルは新規で生理学的に関連のある細胞反応であり、統合された細胞反応は受容体活性の下流の多くの細胞事象から構成される(により形成される)。リアルタイムの動態と同じようなものであるので、DMRシグナルは刺激に対する細胞の振舞い及び活性に関する高度な情報を提供してくれる(特に天然の細胞内において)。
5.複数のRWGバイオセンサからなるアレイの場合のエバネッセント波(EW)励起蛍光発光
本発明は光バイオセンサ(特にRWGバイオセンサ)のアレイのためにエバネッセント波励起蛍光発光を可能とする方法を提供する。RWGバイオセンサのアレイは好ましくはマイクロタイタープレート(もしくはマイクロプレート)フォーマットで設けられる。その一例はコーニング社のEpicバイオセンサマイクロプレートである。このようなマイクロプレートフォーマットにより、EW(エバネッセント波)蛍光発光が購入し易いツールとなり、高いスループットによりパラレルな検出及びスクリーニング(検出とスクリーイングをパラレルで行うこと)が可能となる。
本発明の実施例では、EW蛍光発光とEW無標識検出を同じバイオセンサの同じリーダに統合するシステムと方法が提供される。パラレルで標識依存及び標識非依存計測を行うと、無標識検出にさらなる特殊性(特異性)を与えることができる。
Epicシステムは先端的な(改良された、高度な)高スループット無標識プラットフォームである。導波路グレーティングセンサを直接各ウエルの下に統合すれば、センサを例えば、約830nm波長で且つほぼ垂直な入射角度で動作するような構成にすることができる。このような長波長入射光を使用すると、EW励起蛍光発光と無標識検出を同時に行うのに適した蛍光発光タグを選択することが困難になる。なぜならこの励起範囲に入る蛍光分子は市場にはほとんど存在しないからである。低い励起波長を有する近赤外線(NIR)色素分子は市場入手可能である。その一例は、790nmで励起することができるLI−COR社製の近赤外線色素である。しかしながら、これらの励起波長は所望入射角度(例えば、RWGバイオセンサのアレイを使用する大規模なアッセイの場合(特に細胞ベースで用いる場合)はほぼ垂直な入射角度)における共鳴波長(例えば、約830nM)よりかなり低いので、上記したようなデュアル検出のためには(特に低励起波長の色素を使用するためには)現在のバイオセンサ検出システムを大幅に改良することが望まれる(必要であろう)。
市場入手可能なEpicバイオセンサプラットフォーム(コーニング社製)は公称垂直な角度で光を結合するための(ために)長波長(約830nm)をサポートすることができる。しかしながら、多くの市場入手可能な膜電位感応色素は可視波長(例えば、約400nm−約650nm)で励起する。よって、本発明の実施例では好ましくは、公称垂直な角度で入射する可視光の結合と共鳴が可能なRWGバイオセンサを使用する。このようなバイオセンサは容易に製造することができる。例えば、センサの構成(ピッチ、グレーティング深さ、導波路厚さ及び導波路材料)を適宜変更・調整することによって製造することができる。
添付図面を参照すると図1には、生細胞(140)内のセンサのセンシングボリューム(142)内の細胞物質(145)のダイナミックな移動の結果として現れるエバネッセント波(135)励起蛍光発光(150)とエバネッセント波(135)生成光シグナル(DMRシグナル)の両方を同時に検出する共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサの概略が示されている。RWGバイオセンサ(118)は、基質(120)と、グレーティング構造を有する導波路薄フィルム(膜)(125)と、接触表面(130)とを含む。バイオセンサは広範囲の波長からなる入射光(110)を使用してバイオセンサを照射する。その結果、特異(特定)波長もしくは角度の光を導波路に結合することができる。この光は上記薄フィルム(薄膜)内を伝搬し、その後、反射される。反射光(115)は収集され、記録され、刺激に対する細胞の光シグナルもしくはDMRシグナルについて分析される。エバネッセント波励起蛍光発光は例えば、CCDカメラを使用して記録することができ、細胞内における時間経過に伴う蛍光分子のリディストリビューションが分析される。デュアル検出スイープ波長光インターロゲーションシステムを使用して、上記した2つのタイプのシグナルを集めることができる。
6.センサ構造及び検出スキームがRWGバイオセンサのアレイを用いたデュアル検出を可能にする
本発明の実施例ではセンサ、検出スキームもしくは両者を強化すると共にRWGバイオセンサのアレイでデュアル検出を可能にする方法が提供される。本発明では、このようなデュアル検出システムのためにCCDカメラベースのスイープ波長インターロゲーションシステムが提供される。このシステムは分光イメージングツールを使用して、一連の異なる波長におけるバイオセンサアレイの共鳴画像を得る。分光画像の各画素はセンサスペクトルを含むので、仮想チャネルとなる(を形成する)。
通常、センサインターロゲーションシステムは4つの主なコンポーネントを含む。即ち、(1)スイープ波長方式でバイオセンサを照射して、アレイ内の各バイオセンサが同時に照射されるようにする調整可能レーザ(但し、共鳴波長はアレイ内のセンサ毎に異なってもよい。レーザは照射光学系を通り、レーザビーム光が拡長されて全センサエリアの一部を照射する)と、(2)レーザ波長を動的に計測するために使用される波長基準(wavelength referencing)インターフェロメータと、(3)デジタル出力を出力できると共に調整可能レーザが波長を走査すると分光イメージを記録することができるエリア走査イメージセンサを有するデジタルカメラと、(4)マルチエレメントレンズによって、前記照射されたセンサエリアをデジタルカメラに結像するイメージング光学系とを含む。
図2A−図2Cは、刺激に対して発生する生細胞の標識非依存光シグナルと標識依存蛍光発光シグナルの両方を検出することができるバイオセンサシステムの典型的な構成の概略を示している。図2Aは、導波路グレーティング結合センサのアレイ(118)と、レーザ光源(211)と、レーザビームを整形して検出エリアをカバーするように(照射)するコリメータレンズ(212)と、プラスマイナス1(1)nmの帯域幅を有する励起フィルタ(213)と、露光時間を制御してフォトブリーチング(光退色)を最小にする光学シャッタ(214)と、励起ビームの偏光をセンサ(118)のTMもしくはTE方向に整列させる偏光コントローラ(215)と、を含む典型的な装置を示している。上記フィルタの入射角を調整することによって、レーザ波長をトラッキングすることができる。この装置はさらに、ビームスプリッタ(216)と、結像(投影)レンズ(217、218)と、ノッチフィルタ及び蛍光発光フィルタ(219)と、CCDカメラ(220)とを含むことができる。励起ビームの入射角はビームスプリッタ(216)を介して調節できる。
図2Bは、導波路グレーティングカプラセンサのアレイ(118)と、レーザ光源(211)と、レーザビームを整形して検出エリアをカバーするように(照射)するコリメータレンズ(212)と、プラスマイナス1(1)nmの帯域幅を有する励起フィルタ(213)と、露光時間を制御してフォトブリーチング(光退色)を最小にする光学シャッタ(214)と、励起ビームの偏光をセンサ(118)のTMもしくはTE方向に整列させる偏光コントローラ(215)と、を含む典型的な装置を示している。上記フィルタの入射角を調整することによって、レーザ波長をトラッキングすることができる。この装置はさらに、ビームスプリッタ(216)と、結像(投影)レンズ(217、218)と、ノッチフィルタ及び蛍光発光フィルタ(219)と、CCDカメラ(220)とを含むことができる。励起ビームの入射角はビームスプリッタ(216)を介して調節できる。さらに、この装置は、ファイバ接続調整可能レーザ(232)と、コリメータレンズ(231)と、ビームスプリッタ(230)を含むことができる。調整可能なレーザは、スイープ波長イメージング光インターロゲーションシステムに使用する。ここで使用される検出光学系(217、218、219)及びカメラ(220)は無標識イメージング及びEW蛍光発光イメージングに共用される。2つの検出モードは例えば約1秒以内でスイッチ可能である(あるいは交代可能である)。この実施例では蛍光発光シグナルを使用してセンサをインターロゲートすることができる。蛍光発光強度の角度スペクトラムもしくは波長スペクトラムを使用して、ピーク蛍光発光及び屈折率を同時に得ることができる。
図2Cは本発明の他のシステム及び装置を示している。このシステム及び装置は、導波路グレーティング結合センサのアレイ(118)と、レーザ光源(211)と、レーザビームを整形して検出エリアをカバーするように(照射)するコリメータレンズ(212)と、プラスマイナス1(1)nmの帯域幅を有する励起フィルタ(213)と、露光時間を制御してフォトブリーチング(光退色)を最小にする光学シャッタ(214)と、励起ビームの偏光をセンサ(118)のTMもしくはTE方向に整列させる偏光コントローラ(215)とを含む。上記フィルタの入射角を調整することによって、レーザ波長をトラッキングすることができる。この装置はさらに、ビームスプリッタ(216)と、結像(投影)レンズ(217、218)と、ノッチフィルタ及び蛍光発光フィルタ(219)と、CCDカメラ(220)とを含むことができる。励起ビームの入射角はビームスプリッタ(216)を介して調節できる。さらに、この装置は、ファイバ接続調整可能レーザ(232)と、コリメータレンズ(231)と、ビームスプリッタ(230)と、ダイクロイックミラーもしくはダイクロマティックビームスプリッタ(235)と、後端レンズ(241)と、CCD/CMOSカメラ(242)とを含むことができる。調整可能なレーザは、スイープ波長イメージング光学インターロゲーションシステムに使用することができる。ここで使用される検出光学系及びカメラはEW蛍光発光イメージングから分離することができる。2つの検出モードは同時に且つパラレルに動作可能である。
6.1 センサモデリング
グレーティングカプラのフェーズマッチング条件は式(3)のように表わすことができる。
(式3)
Figure 2011514963
ここで、nは導波路の有効(実効)屈折率、θは入射角、mは回折次数、λは波長、Λはグレーティングピッチである。プラス(+)はフォワード伝搬モードへの結合に対応し、マイナス(−)はリバース伝搬モードに対応する。Epicセンサは約827nmの垂直入射共鳴波長を有することができる。スイープ波長インターロゲーションシステムで使用される調整可能レーザの中心波長は、例えば米国特許出願11/711207号(出願日2007年2月27日、発明の名称「Swept Wavelength Imaging Optical Interrogation System and Method for Using Same」)に記載されているように、842nmである。レーザは約3度の入射角においてリバース伝搬導波路モードに結合される。
式(3)に基づけば、センサの共鳴波長は、適切な入射角でフォワード伝搬導波路モードに結合されたときは短い波長の方にシフトすることができる。フォワード伝搬モードで短い波長の方へ動くと、導波路はシングルモードではなくなる。このことにより、グレーティング回折効率が減少する可能性がある。結合波分析(RCWA)方法を使用すると(リファレンス14及び15)、現在のコーニング社のEpicバイオセンサの構成についての数値シミュレーションの結果として、入射角と共鳴波長の間には相関関係があることが示唆される(使用されるモードに依存する)。コーニング社のEpicバイオセンサは、厚さ約150nmでグレーティングピッチ約500nmでグレーティング深さ約50nmのNb25導波路薄膜を有することができる。
トランスバースマグネティック(TM:transverse magnetic)モードの場合、リバース伝搬TMモードで入射角が3.23度であるならば、共鳴波長は840nmにシフトされる。共鳴の幅は導波路グレーティングカプラのリーク係数に関連している。共鳴が狭くなればなるほど、結合距離は長くなる。これは通常、Epicセンサの場合、約200ミクロンである。対称的に、フォワード伝搬TMモードが使用される場合、入射角が増加すると共鳴波長は左にシフトする。しかしながら、グレーティング共鳴反射率は約788nmで急に落ち始める。即ち、波長を数ナノメートル調整すると、グレーティング結合効率に大きな違いが現れる。さらに、フォワード伝搬モードの共鳴幅はリバース伝搬モードの共鳴幅の約1/3である。この効果は必要であればさらなるEW蛍光発光強化に利用することができる。
TEモード励起の場合、TE共鳴は、波長が580nmに減少するまで(入射角が53度のところ)ほぼ100%回折率で維持することができる。TE共鳴はかなり低い波長まで効率的な結合を維持することができるが、共鳴幅はTMモードの場合と比べ約20倍広くなる。
図3は共鳴波長と入射角の相関関係を示している(トランスバースマグネティック(TM)モード使用)。図3Aはコーニング社のEpicバイオセンサアレイもしくはマイクロプレートの場合の結果を示しており、入射角が3.23度のときリバース伝搬TMモードの共鳴波長は840nmである。図3Bは、フォワード伝搬モードが励起されたときの共鳴波長と入射角の逆の関係(逆相関)を示している。入射角が大きくなると(例えば、約3.4度から約0.1度ずつ増加すると(右からスタート))、共鳴波長は小さくなる。
図4は共鳴波長と入射角の相関関係を示している(トランスバースエレクトリック(TE)モード使用)。図4Aはコーニング社のEpicバイオセンサアレイもしくはマイクロプレートの場合の結果を示しており、入射角が16度から17度へさらに18度へと大きくなるとフォワード伝搬TEモードの共鳴波長が小さくなっている。これは、適切な入射角を使用するTEフォワード伝搬モードは、785nmの蛍光発光を励起するのに使用出来ることを示している。図4Bは、入射角が右側から35度から1度ずつ増加すると、TEモード共鳴が、100%回折効率でかなり広い波長ウインドウをカバーしていることを示している。
6.2 近赤外線EW励起蛍光発光の場合のセンサ最適化
導波路グレーティング結合(カップリング)の共鳴強化は式(4)で得られるQファクタ(因子)を用いて理解することができる。
(式4)
Figure 2011514963
ここで、λ0は共鳴波長、Δλは共鳴スペクトラムの最大半量における全幅である。光共鳴器の場合と同様に、Qファクタが大きいほど、光子寿命が長くなり、キャビティ内電場(電界)が強くなる。蛍光発光強化はQファクタとエバネッセント場の強度に比例する。よって、TEモード励起の強化は、漏れ係数が大きいために、TMモードの場合よりも少なくとも20ファクタ小さい。
本発明は、最適なデュアル検出のために導波路グレーティングバイオセンサの構成を強化(機能強化)・改善する方法を提供する。実施例ではグレーティングピッチを減ずることによって、共鳴波長を効率的に短い波長へシフトすることができる。実施例では、同じグレーティングを維持し且つ導波路厚さを減ずることによって、共鳴を低い方へ(但し、その量は少なく)シフトすることができる。導波路厚さが146nmから100nmへ減じられると、リバース電波TMモードの共鳴波長は785nmになる。導波路厚さを更に減ずると、ガイディング(guiding)が弱くなりエバネッセント場も小さくなる。フォワード伝搬モードはリバース伝搬モードより狭い共鳴を有する。センサの構成は最大エバネッセント場感度を得るようにすることができ、その結果、フォワード伝搬TMモードを使用し且つセンサを変えないで最大の蛍光発光強化を達成することができる。
6.3 可視波長EW励起蛍光発光の場合のセンサ最適化
本発明の実施例では、可視励起波長で色素分子(もしくはそのコンジュゲート(conjugate:抱合体、接合体、複合物))のEW励起蛍光発光を可能にする方法が提供される。この方法は入射角依存共鳴波長を利用して共鳴波長を強化し、そのことによりデュアル検出システム及び方法が実施可能になる。実施例ではTEモードを使用して、短い波長の色素を励起する(但し、20倍低い強化で)。実施例ではTMモードをフォワード伝搬導波路モードで使用し、短い波長の色素を励起する(この場合、大きな入射角で)。大きな入射角においてTMモードのモデリングをしたところ、共鳴波長が840nmから可視波長へ減少すると、回折グレーティング効率はまず低下し、その後、増加することがわかった。低い共鳴波長における回折効率は約40%と約70%の間であるが、共鳴幅が狭い。このことは表面蛍光発光強化がTEモード励起の場合よりも1桁大きい強度であることを示唆している。実施例では2次回折を使用して、さらに短い波長の光を結合することができる。理論によって限定・特定されてはいないが、かなり大きな強化が400nm領域において予想される。
図5は、入射角が1度から57度へ増加したときの(右から左へ1度ずつ増加)TMモードのグレーティング反射率スペクトラを示している。より大きい入射角でTMモードのモデリングをしたところ、波長が約750nmより短くなると回折グレーティング効率が増加し始めることが分かった。回折効率は例えば約40%から約70%であるが、共鳴幅が狭いということは、表面蛍光発光強化がTMモード励起よりも約1桁強いことを示唆している。
図6A及び図6Bは短い波長の光が2次回折を介してグレーティングに共鳴結合され得ることを示している。図6Aは2次回折TEモードが使用された場合の予想される共鳴周波数を示している(入射角は33度で右から2度ずつ増加)。図6Bは2次回折TMモードが使用された場合の予想される共鳴周波数を示している(入射角は41度で右から2度ずつ増加)。
7.生細胞内の細胞シグナリングのデュアル検出
本発明の実施例では、刺激に応じて生細胞内で発生するEWベースの無標識シグナル(DMRシグナル)とEW励起蛍光発光シグナルのデュアル検出を可能にする方法が提供される。本発明は1つのセンサから2つの検出ができるようにするために、1つの共鳴波長を強化する(利用価値を上げる)方法を提供する。固定化細胞を有する同じ(1つの)バイオセンサからこのようなパラレル検出ができると、刺激に対する細胞シグナリングもしくは活性化を検出することができ、高度な情報内容を提供することができる。標識を有する特異(特定の)ターゲットのEW励起蛍光発光を計測することによって、当該ターゲットと無標識光シグナル(DMRシグナル)の間の相関関係を確立することができる。図12に示されているように、NIR(近赤外線)色素標識化EGFを使用すると、EW励起蛍光発光を用いて、細胞層の基底膜表面に位置するEGFRへの標識化EGFの結合を計測することができる。また、その後、結合された標識化EGFと活性化受容体の内部移行(インターナリゼーション)を計測することができる。並行して、標識化EGFにより誘発されたA431細胞のEW生成光応答(即ち、DMRシグナル)を記録することができる。その結果を見ると、標識化EGFがDMRシグナルを引き起こしていることが分かる(これは無標識化EGFによって引き起こされたシグナルと同様である)(Fang, Y., et al., Biophys. J., 2006, 91, 1925-1940(データは示されず))。またDMRシグナルは2つのフェーズからなる。1つのフェーズは最初の増加シグナル(P−DMR)で、もう1つのフェーズはその後の減少シグナル(N−DMR)である。
8.イオンチャネル活性をモニタするための標識依存及び標識非依存細胞アッセイ
本発明の実施例では、光バイオセンサ(特に複数の光バイオセンサ)と標識依存及び標識非依存計測の組み合わせに基づく方法とを使用して、生細胞中のイオンチャネル活性を計測するシステム及び方法が提供される。より詳しくは、固定化生細胞を有するバイオセンサは、イオンチャネル活性に対する細胞反応(例えば、ダイナミックマスリディストリビューション)を標識非依存形式で計測することができ、同時に、膜電位感応標識もしくは物質(例えば、膜電位感応色素分子)のリディストリビューションによるエバネッセント波励起蛍光発光の変化を計測することができる。
実施例では、株化細胞培養方法及び培養密度を使用して、生細胞をバイオセンサ表面(1330)(図13、図14及び図15)に固定化することもしくはこれの近傍に位置させることができる。バイオセンサは例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサ、共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサ、フォトニック結晶バイオセンサ、共鳴ミラー等、もしくはこれらの組み合わせである。RWGバイオセンサは例えば、埋設周期グレーティング構造(例えば、図13Aの符号1340)を有する導波路薄膜を含む。この構造は基板(例えば、ガラス、プラスチック等)(例えば、図13Aの符号1350)に溶着されている。
図13A−図13Cは、本発明のバイオセンサシステム及び方法を示している。このシステム及び方法は、基底細胞膜表面における可視領域内でび膜電位感応色素を励起する。その結果、イオンチャネル開口誘発細胞脱分極により、エバネッセント波励起蛍光発光が減少する。図13Aは可視波長蛍光発光色素(1320)を有するイオンチャネル(1300)を備える生細胞の基底膜(1310)を示している。この色素は膜電位に感応する。膜電位は負の静止電位状態にある場合がある。負の静止電位状態では帯電脂質分子の分布が非対称であるので、色素分子の多くは基底膜二重層の外側リーフレット(leaflet)に位置する。イオンチャネルが物理的もしくは化学的手段(例えば、機械的な力、電圧、リガンドその他のもの)によりオープンした後、細胞は脱分極する。図13Bに示されるように、脱分極の結果、脂質膜二重層の外側リーフレットに位置する膜電位感応色素分子は内側リーフレットに移動し、蛍光発光位置(センサ表面から例えば約3nm−約5nm離れたところ)に至る。仮想例では、細胞形態的変化と相俟って、膜電位感応色素分子のこのような移動は蛍光発光強度の低下を引き起こす場合がある。これは、超高感度エバネッセント波励起蛍光発光計測により顕在化し検出することができる。図13Cはこの脱分極のために、時間経過と共に減少する蛍光発光シグナル強度の予想を示している。
実施例ではバイオセンサ表面の固定化細胞に、一対の蛍光分子(例えば、膜電位感応色素等と、膜電位変化に感応する蛍光脂質)をプレロードすることができる。これら蛍光分子はいずれも、励起スペクトラムの少なくとも可視領域において感応する。図14A−図14Cは一対の蛍光色素を励起するバイオセンサシステム及び方法を示している。一対の蛍光色素のうちの1つは基底細胞膜表面において可視領域にある膜電位感応色素である。これは、イオンチャネル開口誘発細胞脱分極により、エバネッセント波励起蛍光発光を減少させる。イオンチャネル(1400)を有する細胞の基底膜(1410)には、一対の蛍光色素をプレロードすることができる。例えば、エネルギードナー物質(例えば、クマリンリンク(coumarin-linked)リン脂質(CC2−DMPE)(1430))は、細胞膜の外側リーフレットに挿入することができ、比較的定常な状態を維持するか比較的局所的に存在する状態を維持する。エネルギーアクセプタ物質(1420)(例えば、負帯電オキソノール色素DiSBAC2)は、膜電位に基づいて膜全体に再分布させたりその分布を変化させたりすることができる。負の静止膜電位において、アクセプタ色素はドナー色素(即ち、基底膜の外側リーフレット)の近傍に位置し、エネルギー伝達が生じ得る。イオンチャネルが物理的もしくは化学的手段(例えば、機械的力、電圧、リガンドその他)によりオープンした後、細胞膜は脱分極する。脱分極に伴う膜電位の変化によってオキソノール色素(例えば、図14Bの符号1420)が再分布され、ドナーとアクセプタの間の分離距離が大きくなったために、分子間エネルギー伝達の効率は低下する。これら変化の後にリアルタイムで共鳴光を使用したドナー色素の励起が行われ、アクセプタ色素の発光波長における蛍光発光を計測する。アクセプタ色素の脱分極誘発再分布は蛍光発光の減少を引き起こす(その理由は、ドナー色素からアクセプタへのエネルギー伝達が不足・減少するからである)。ここでセンサを可視波長光で照射することにより、ドナーの蛍光発光を選択的に励起することができる(但し、システムはアクセプタの蛍光発光を計測する)。図14Cは、上記のように当初は対になっていた膜電位感応色素を用いて達成された脱分極の結果として、時間経過と共に減少する蛍光発光シグナル強度の予想を示している。
実施例では、細胞に膜電位感応物質(例えば、色素及び蛍光発光クエンチャー)をプレロードすることができる。図15A−図15Cは蛍光発光クエンチャが存在した場合の可視領域における膜電位感応色素を励起するバイオセンサシステム及び方法を示している。色素とクエンチャの双方を基底細胞膜表面に位置させると、イオンチャネル開口誘発脱分極によってエバネッセント波励起蛍光発光が増加する。図15Aはイオンチャネル(1500)を有する細胞の基底膜(1510)を示している。これには、リン脂質変性(modified)蛍光発光クエンチャ(1530)(例えば、ナノゴールドリン脂質コンジュゲート)と膜電位感応蛍光色素(1520)(例えば、負帯電オキソノール色素DiSBAC2)がプレロードされている。膜電位感応色素(1520)は膜電位に基づいて当該膜全体における分布を変えることができる。クエンチャ(1530)は、近傍にあると、蛍光色素を消光(失活させる)することができる。負静止膜電位の場合、色素はクエンチャ(つまり、基底膜の外側リーフレット)の近傍にあり、蛍光発光クエンチング(消光)が生じ得る。イオンチャネルが物理的もしくは化学的手段(例えば、機械的な力、電圧、リガンド等)によりオープン(開口)された後、細胞は脱分極する。図15Bは電位感応色素を再分布させる脱分極の結果として得られる膜電位の変化を示している。色素とクエンチャの間の距離が大きくなるので、クエンチャは蛍光発光を消光(失活)することができない。その結果、エバネッセント波励起蛍光発光が増加する。図15Cは当初対になっていた膜電位感応色素及びクエンチャ脂質により脱分極が生じた場合の蛍光発光シグナル強度の増加予想を時間と共に示している。
膜電位感応色素は例えば、スチリル色素、不透過オキソノール、カルボシアニン、オキソノール(例えば、オキソノールVやオキソノールVI)、バイオスオキソノール色素(bios-oxonol)(例えば、DiSBAC2(3)もしくはDiSBAC4(3))(Molecular Probes; HYPERLINK "http://www.probes.com" http://www.probes.com参照)である。蛍光発光共鳴エネルギ伝達(FRET:fluorescence resonance energy transfer)ドナーは例えば、細胞膜の外側にしか結合しない膜結合クマリンリン脂質(CC2−DMPE)である。FRETアクセプタは例えば、移動可能な負帯電疎水性オキソノール(例えば、DiSBAC2(3)もしくはDiSBAC4(3))であり、これは膜電位の変化に応じてプラズマ膜の両側に結合するものである。蛍光発光クエンチャ脂質は例えば、ナノゴールド粒子コンジュゲート脂質(例えば、DMPE脂質)である。コンジュゲートは例えば、従来の共有結合化学物質(例えば、1,2ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン及びモノスルフォNHSナノゴールドを使用したコンジュゲート( HYPERLINK "http://www.nanoprobes.com" http://www.nanoprobes.com参照))を用いることによって得られる。実施例で選択されるナノゴールドは好ましくは小さなナノ粒子である(その直径は例えば、約10ナノメートル未満であるか、約5ナノメートル未満である)。
以下の例は上述の開示内容を使用する手法をより詳細に説明する共に、本発明の色々な形態・態様を実施するための最良の実施例を説明するためのものである。尚、これら例は本発明の範囲(技術的範囲、保護範囲)を制限するものではなく、単なる具体例として説明される。
例1
EW励起蛍光発光検出のためのバイオセンサシステムの構成及び特徴
材料
IRDye(米国登録商標)800CW標識化ストレプトアビジンをLI−CORバイオサイエンス社(米国ネブラスカ州リンカーン)から購入した。ビオチンエチレンジアミンをシグマケミカル社(米国ミズリー州セントルイス)から購入した。384ウエルEpicバイオケミカルアッセイマイクロプレートはコーニング社(米国ニューヨーク州コーニング)から購入した。コーニング社のEpic384ウエルバイオケミカルアッセイマイクロプレートはSBS標準の384ウエルマイクロプレートであり、光バイオセンサが各ウエルに一体化されている。またこのマイクロプレートは、高スループット無標識検出のためにEpicシステムに含まれたコンポーネントである。各センサは予め活性化された表面化学物質(例えば、無水マレイン酸重合体グループに基づく(から選ばれる)物質)によってコーティングされてもよい。これにより例えば、一級アミングループを介してタンパク質ターゲットを共有結合付着することができる。Epicマイクロプレートの各ウエルはデュアルセンサ自己リファレンシング(referencing:基準、参照)エリア(ここにはターゲットタンパク質が付着しない)も備えている。ウエル内リファレンス(基準部、参照部)があるので、Epicリーダは分析物結合の効果(影響、作用)のみを示す結果をレポートすることができる。
センサへのIRdye(米国登録商標)800CW標識化ストレプトアビジンの固定化
IRDye800CW標識化ストレプトアビジンを50μg/mLで1xリン酸緩衝食塩水に入れ、384ウエルバイオケミカルアッセイマイクロプレートでインキュベートした。マイクロプレートの各ウエル内には、2つの領域からなる予め活性化された表面化学物質がある。2つの領域のうちの第1の領域はエタノールアミン(HOCH2CH2NH2)により予め反応させてある。この領域は非結合のネガティブコントロール領域として機能する。第2の領域は第2の反応領域であり、アミンと無水物の反応を介してストレプトアビジンと共有結合的に相互作用を行うことができる。
光学システム
図2Aに示されたような光学検出システムを作成し、IR色素分子のEW励起蛍光発光とEWベースの無標識シグナルの双方を検出するデュアル検出に用いた。
結果と検討
IRDye800CMは800nmで最大励起を示す近赤外線(NIR)色素である。図2AはEW励起蛍光発光検出に使用されるシステムを示している。このシステムは、励起レーザ、レーザ光を平行ビームにする非球面レンズ、CCDカメラに同期する光学シャッタからなる。励起レーザはダイオードレーザ(レーザダイオード)であり、公称波長は785nmであり、IR色素のピーク吸収と一致する。レーザの最大出力パワーは120mWであった(但し、この実験ではほとんど、このパワーの約10%しか使用していない)。レーザはシングル空間モードで直線的に偏光された。非球面レンズを使用してレーザ光を平行ビームにコリメートした。その直径は蛍光イメージング(結像)レンズの視野(角)に一致している。この例で注目しているエリアは2×2mm2のシングルグレーティングセンサである。CCDカメラと同期するように光学シャッタを使用した。このようにはせずに、レーザパワーを駆動電流により直接ONOFFすることもできる。レーザ光照射時間を制限することは、フォトブリーチング(光退色)し易い標識にとって重要なことである。レーザダイオードは熱電温度ブロックに取り付けた。室温で、波長は785nmであった。38度Cに加熱されると、波長は790nmに変化した。蛍光発光検出のためにCCDカメラ(Basler A102f)が選択された。このカメラはソニー社のICX−285CCDチップを使用していた(画素サイズは6.45μm×6.45μmで、フル解像度フレームは1392×1040画素である)。800nmにおけるイメージセンサの量子効率は、製造会社の提示情報によれば、可視波長における量子効率より低かった。2x(倍)の拡大率のイメージングシステムを使用したところ、システムの空間解像度は約3.2ミクロン/画素であった。
785nmは市場で常時入手可能な蛍光フィルタを使用できる波長であったので、ノッチフィルタとエミッションフィルタの双方は、レーザ波長が790nmに調整されたとき、同じような性能を維持することができる。しかし、励起フィルタは2nmの帯域幅しか有していなかった。808nmレーザラインフィルタが代わりに使用された。約16度の入射角で使用されると、フィルタの伝達ピークは790nmにシフトした。システムバックグランドレベルは785nmのものと同じ位に低かった。
蛍光発光システムは、785nm波長でEpicプレートに固定化されたビオチンと標識化ストレプトアビジンの使用により特徴付けられる。このプレートはプリントブロッカ領域(printed blocker region)を有している。励起ビームの入射角は、IRビューア(viewer)でグレーティングを観察しつつ、調節された。
図7AはマイクロプレートアレイフォーマットのRWGバイオセンサの概略を示している。バイオセンサはマイクロプレート(700)のウエル内に位置されており、2つの領域からなっている。1つの領域は非結合基準領域(720)で、もう1つの領域は結合領域(710)である。結合領域はアミンを出すタンパク質もしくは分子(例えば、ストレプトアビジン)と共有結合することができる。図7Bは共鳴波長785nmのフォワード伝搬TMモードを使用したときのデュアル領域を有するバイオセンサウエルの蛍光イメージを示している。このイメージ(画像)は、色素標識化ストレプトアビジンを使用してインキュベーションした(洗浄はしない)10分後に得られた。暗い矩形の領域は、このエリアに結合した色素標識化ストレプトアビジンのエタノールアミンプレブロッキング誘発抵抗のために形成された。明るい領域は色素標識化ストレプトアビジンの固定化により形成された。
図8はリン酸緩衝食塩水(PBS;137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム、0.5mM塩化マグネシウム(六水和物)、8.1mMリン酸ナトリウム(一塩基、一水和物)、0.9mM塩化カルシウム及び1.47mMリン酸カリウム(一塩基、無水)、pH7.2)で洗浄してバルク溶液内の色素標識化ストレプトアビジンを除去した後、図7Bと同じセンサの1つの行(y軸の500番目の画素の行)における蛍光発光強度分布を示している。ウエルを洗浄すると、バルク(bulk)の影響を排除することができ、表面結合標識だけを残すことができる。励起光が共鳴結合角度になるようにまたそこから外れるようにして、蛍光発光イメージ強度を比較することによってエバネッセント波強化が測定された。その結果を見ると、EW励起蛍光発光強化は約20ファクタ(因子)であることが分かった。
図9Aは共鳴波長785nmのフォワード伝搬TE(トランスバースエレクトリック)モードを使用した場合の、デュアル領域を有するバイオセンサウエルの蛍光発光イメージを示している。このイメージ(画像)は色素標識化ストレプトアビジンでインキュベーションした(洗浄はしない)10分後に得られた。暗い領域はこのエリアに結合した色素標識化ストレプトアビジンのエタノールアミンプレブロッキング誘発抵抗によって形成された。明るい領域は色素標識化ストレプトアビジンの固定化により形成された。入射角が約17度に増加したとき(共鳴波長は785nm)、フォワード伝搬TEモードが励起された。図9Bは図9Aの画素500の行位置におけるバイオセンサ全体の蛍光発光強度を示している。ここに示されているように、グレーティング表面からの蛍光発光はバルク溶液からの蛍光発光に比べて僅かに強いだけである。溶液中の標識を洗浄した後、蛍光発光分析をすると、強化はたったの約3倍しかないことが示唆された。TEモードの強化ファクタが小さいことは、モデリングで予想した結果に一致する。
図10Aは共鳴波長790nmのフォワード伝搬TMモードを使用した場合のデュアル領域を有するバイオセンサウエルの蛍光発光イメージを示している。このイメージ(画像)は色素標識化ストレプトアビジンでインキュベーションして洗浄した10分後に得られた。暗い領域はこのエリアに結合した色素標識化ストレプトアビジンのエタノールアミンプレブロッキング誘発抵抗によって形成された。明るい領域は色素標識化ストレプトアビジンの固定化により形成された。図10Bは画素位置500(y軸)におけるセンサ全体の蛍光発光強度分布を示している。得られた結果を見ると、たった5nmの波長差で、グレーティング反射率は著しく大きくなっていることが分かる。その結果、785nmで励起された場合エバネッセント強化は約70へ増加した(前の値は約20)。非洗浄ウエルの蛍光発光イメージ(画像)は、表面シグナルがバルクより10倍以上強いことを示している(データは示されていない)。共鳴結合波分析(RCWA:resonant coupled wave analysis)モデリングの場合と同じように、熱電温度ブロックを使用してレーザ波長を細かく調整することにより波長が785nmから790nmへシフトされるとグレーティング回折効率は約3ファクタ改善することができる(非結合領域と結合領域の間のコントラストが増大しているので)。
図11Aは共鳴波長790nmでフォワード伝搬TMモードを使用した場合の、デュアル領域を有するバイオセンサウエルの蛍光発光イメージ(画像)を示している。画像は色素標識化ストレプトアビジンによりインキュベーションした(洗浄はしない)10分後に得られた。図11Bは画素位置500(y軸)におけるセンサ全体の蛍光発光強度分布を示している。洗浄されていないウエルの蛍光発光イメージもしくは強度は、表面シグナルがバルクからのシグナルより10倍以上強いことを示している。
例2
ヒト(人間)癌の株細胞A431と相互作用するIRDye(米国登録商標)標識化上皮(細胞)増殖(成長)因子(EGF:epidermal growth factor)のEW励起蛍光発光
上皮増殖因子(EGF)受容体は受容体チロシンキナーゼ(RTK:receptor tyrosine kinase)ファミリに属しており、ほとんど全ての哺乳動物の臓器に発現されている。EGF受容体(EGFR)は細胞成長及び分化において複雑な役割を果たし、腫瘍の進行においても複雑な役割を果たしている。また、EGFRは他のシグナリングシステムの重要な下流要素であり、分裂促進的Gタンパク質結合受容体(GPCR:G protein-coupled receptor)等の他の受容体とクロストークする。
EGFはEGFRの内因(固有)タンパク質チロシンキナーゼ活性に結合してこれを刺激する。その結果、シグナル伝達カスケード(主にMAPK、Akt及びJNK経路を含む)をスタートさせる。第1の事象は細胞表面膜においてEGFが同族受容体EGFRへ結合することを含む。EGFが結合すると、受容体の二量体化が起き(二量体が形成され)、その後、細胞質ドメインのチロシン残基(残渣)において受容体の自己リン酸化が起きる。シグナリングタンパク質の多くはその後、リン酸化チロシン特有の認識モチーフ(受容体内部移行を含む)を介して活性化受容体に取られる。受容体内部移行の間、結合したEGFも内部移行する。
材料
IRDye(米国登録商標)800CWのEGF光学プローブ(IRDye−EGF)は近赤外線(NIR)標識化組換えヒト上皮増殖因子(EGF)であり、LI−CORバイオサイエンス社(米国ネブラスカ州リンカーン)(www.licor.com)から入手した。IRDye−EGFは例えば反応性NHSエステル基を介してIRDyeフルオロフォアにコンジュゲートした54アミノ酸残基(分子量は6.2kDa)を含む組換え型EGFポリペプチドである。反応性NHSエステル基は一級アミノ基及び二級アミノ基を標識化する機能・能力を与える。384ウエルEpic細胞アッセイマイクロプレートはコーニング社(米国ニューヨーク州コーニング)から入手した。各Epic細胞アッセイマイクロプレートの表面は組織培養に適しており、付着細胞(天然細胞、組換え型もしくは操作型株細胞、初代細胞等)の付着及び通常の成長を可能にする。
細胞培養
ヒト類表皮癌A431細胞(アメリカ合衆国細胞培養)を、10%ウシ胎児血清(FBS)、4.5g/リットルグルコース、2mMグルタミン及び抗菌剤を加えたDulbecco(ダルベッコ)変法イーグル接地(DMEM:Dulbecco's modified Eagle's medium)で成長させた。10%FBSを含む200マイクロリットルのDMEM内に縣濁(浮遊)した通路3−5の約1.5−約2x104の細胞が384ウエルマイクロプレートの各ウエルに配置された。細胞シーディングの後、細胞は37度Cの空気/5%CO2雰囲気で、約95%培養密度になるまで(約1−2日)培養された。集密的な細胞は無血清培地で洗浄され、同じ培地内で37度Cの空気/5%CO2雰囲気で20時間インキュベートされた。アッセイの日に、細胞はHBSS(20mMのHEPESのHanks Balanced Salt Solution:ハンクスの緩衝(平衡)塩類溶液)緩衝液により洗浄された。得られたA431細胞は修飾物質・モジュレータ(例えば、AG1478、ダイナミン抑制ペプチド(DIPC)もしくは無標識EGF)により前処理されてまたはされることなく分析された。EGFRはIRDye標識化EGFにより活性化され、得られたDMRシグナルが記録された。
光学システム
図2Cに示されているようにIR色素分子のEW励起蛍光発光とEWベースの無標識化シグナルの双方をデュアル検出できる光検出システムを準備して使用した。
結果と検討
IRDye標識化組換えヒト上皮増殖因子(IRDye−EGF)は、受容体シグナリングをトリガする能力について、MRCATアッセイ(データは示さず)を用いてテストされた。その結果を見ると、IRDye−EGFがアクティブ(活性)であり、トリガされた細胞シグナリングがA431細胞の内在EGFRを介して伝わること及びその結果、無標識EGFにより誘発されたシグナルに似たDMRシグナル(但し、見かけ上約40nMの効力を有する)が得られることが分かる。上皮増殖因子受容体(EGFR:epidermal growth factor receptor)は上皮細胞の表面(EGFが結合している)に見られる受容体チロシンキナーゼファミリの1つである。
図12A−図12DはIRDye標識化EGF(64nM)による刺激を与えた場合に、バイオセンサマイクロプレート表面に培養されたA431細胞の蛍光発光強度が時間経過とともに(時間の関数として)どのように変化するかを計測したものを示している。データは静止状態のA431細胞を異なる条件下(例えば、細胞は別々の試薬で前処理した)で使用して得られた。図12Aは前処理なしのA431細胞を示している。図12Bは25マイクロモルのダイナミン抑制ペプチド(DIPC:dynamin inhibitory peptide)で1時間前処理したA431細胞を示している。図12Cは10マイクロモルのAG1478で1時間前処理したA431細胞を示している。図12Dは32nMの無標識EGFで1時間前処理したA431細胞を示している。
図12Aは前処理を行わない場合のA431細胞の反応を示している。結果を見ると、2つの大きな事象があることが分かる。2つの事象の1つは蛍光発光の初期増加であり、もう1つは、その後の蛍光発光の緩やかな減少である。蛍光発光の増加は色素標識化EGFが基底細胞表面膜に結合したことを示唆している。基底細胞表面膜はセンシングボリューム内にあり、その蛍光発光はエバネッセント波により強化・増強されることになる。その後の蛍光発光の減少は、結合色素標識化EGFが受容体とともに内部移行したためであると考えられる。これをテストするために、A431細胞を3つの化合物で前処理した。3つの化合物の1つはAG1478であり、これはEGFRチロシンキナーゼ抑制剤である。2つ目の化合物はダイナミン抑制ペプチド制御剤(DIPC:dynamin inhibitory peptide control)であり、これは細胞透過ダイナミン抑制剤である。3つ目の化合物は無標識EGFであり、これにより受容体内部移行が生じ、標識化EGFによるその後の刺激に対して反応しなくなる(脱感作する)。AG1478及びEGFはシグマケミカル社(米国ミズリー州セントルイス)(sigmaaldrich.com)から入手し、DIPCはトクリスケミカル社(米国ミズリー州セントルイス)から入手した。
図12Bは、DIPCでA431細胞を前処理すると、蛍光発光強度の低下フェーズがほぼ完全に生じない(ブロックされる)ことを示している。これは、低下フェーズが受容体内部移行によるものであることを示唆している。ダイナミンはEGFRエンドサイトーシス(endocytosis)において重要な役割を果たすことが知られている。ダイナミン活性をブロックする(抑制する)と、受容体エンドサイトーシスが弱められることが知られている。
図12Cは、AG1478でA431細胞を前処理すると、蛍光発光強度の低下フェーズが完全に生じない(ブロックされる)ことと、その一方で、初期増加フェーズに複雑な影響が出ることを示している。これはEGFR受容体チロシンキナーゼの活性がEGFRシグナリング及び内部移行に必要であることに合致する(矛盾しない)。キナーゼ活性がブロックされると、受容体シグナリング(内部移行を含む)が阻害されるだけでなく、受容体へのEGFの結合力にも影響が出る。
図12Dは、無標識EGF(32nM)でA431細胞を前処理すると、蛍光発光強度の増加フェーズと低下フェーズがほぼ完全に生じない(ブロックされる)ことを示している。蛍光発光強度の初期増加の原因は、部分的にはバルク蛍光発光であり、部分的には受容体への色素標識化EGFの結合である。低下フェーズが完全に無くなったということは、理論により定められたのではないが、EGF処理された細胞が色素標識化EGFに反応(感応)しなくなることを示唆している。
上記した結果をまとめて考察すると、EW励起蛍光発光によって、細胞と相互作用する色素標識化EGFに関連した2つの大きな事象の検出が可能になると言える。2つの事象の1つは、培養細胞の基底細胞膜に位置された受容体に蛍光標識化EGFが結合することであり、もう1つは結合蛍光発光EGFとともに受容体が内部移行することである。興味深いことに、内部移行が起きる時間は、すでに我々がEpic細胞アッセイを使用して確かめたP−DMRからN−DMRへの事象の変移時間についての知見と一致し(Fang Y., et al., Biophys. J., 2006, 91, 1925-1940参照)、パラレル無標識DMRシグナルを同じシステムで検出することができる(データは示されていない)。このような結果によって、完全に静止状態にあるA431細胞におけるEGF経由のDMRシグナルにあっては、P−DMRは活性化受容体へ細胞内ターゲットが動員されるために生じ、N−DMRは細胞付着の減少(主な要因)及び受容体内部移行(小さな要因)のために生ずることが確認された。遷移時間は受容体の脱感作を支配するメカニズムによって決まると思われる。
本発明は色々な特定の実施例及び例並びに特定の技術・技法を参照して説明された。しかしながら、本発明の精神及び範囲内において多くの変更や変形が可能である。

Claims (24)

  1. エバネッセント波無標識光とエバネッセント励起蛍光発光を検出するためのシステムであって、
    光学センサと、
    前記センサを照射する光源と、
    前記センサから発っせられる前記エバネッセント波無標識光とエバネッセント波励起蛍光発光を集める光学検出器と、
    前記集められた光を分析するプロセッサと、
    を含むことを特徴とするシステム。
  2. 前記光学センサはマイクロプレートに設けられた導波路グレーティング結合センサのアレイからなる請求項1記載のシステム。
  3. 前記光学センサは当該センサの表面に固定化された少なくとも1つの生細胞を有する請求項1記載のシステム。
  4. 前記光源は約400ナノメートルから約900ナノメートルの波長を有するファイバ結合調整可能レーザシステムからなる請求項1記載のシステム。
  5. 前記光学検出器は自己参照型の干渉計を含む請求項1記載のシステム。
  6. 前記光学検出器は、前記光源のビームの入射角を調節する第1ビームスプリッタと、エバネッセント波無標識反射光とエバネッセント波励起蛍光標識発光を選択する第2ビームスプリッタとを含む請求項1記載のシステム。
  7. 前記光学検出器は、エバネッセント波無標識反射光を集める第1デジタルカメラと、エバネッセント波励起蛍光標識発光を集める第2デジタルカメラとを含む請求項1記載のシステム。
  8. 前記光学検出器は、コリメータレンズ、プラスマイナス1nmの帯域幅を有することができる励起フィルタ、光学シャッタ、偏光制御装置、イメージングレンズ、ノッチフィルタ、蛍光発光フィルタの少なくとも1つを含むか、これらの組み合わせを含む請求項1記載のシステム。
  9. 生細胞を特徴付ける方法であって、
    センサ表面に固定化された生細胞を有する請求項1のシステムを準備するステップと、
    前記固定化細胞を第1蛍光標識化刺激に接触させるステップと、
    エバネッセント波無標識光とエバネッセント波励起蛍光標識発光について前記センサをインターロゲートすることによって、選択された細胞ターゲットに対する前記第1蛍光標識化刺激接触の影響を検出するステップと、
    前記センサのエバネッセント波無標識光とエバネッセント波励起蛍光標識発光を第2刺激が存在する状態としない状態で比較するステップと、
    を含む方法。
  10. 前記蛍光標識化刺激は前記センサ表面に固定化された生細胞に付随する少なくとも1つのターゲットに対する結合力を有する請求項9記載の方法。
  11. 前記センサをインターロゲートするステップは、前記センサの表面の固定化生細胞の基底細胞膜表面との関連性を有する蛍光標識刺激を励起する請求項9記載の方法。
  12. 前記センサをインターロゲートするステップは、前記固定化生細胞のダイナミックマスリディストリビューション事象に付随するエバネッセント波無標識光を提供する請求項9記載の方法。
  13. 前記エバネッセント波蛍光発光及びエバネッセント波無標識光について前記センサをインターロゲートするステップは、順次に、同時に、もしくはそれらの組み合わせで行われる請求項9記載の方法。
  14. 前記センサは、共鳴導波路グレーティングバイオセンサ、表面プラズモン共鳴、フォトニック結晶バイオセンサ若しくは共鳴ミラーである請求項9記載の方法。
  15. 生細胞を特徴付ける方法であって、
    センサ表面に固定化され蛍光発光ターゲットを有する生細胞を備える請求項1のシステムを準備するステップと、
    前記固定化細胞を刺激に接触させるステップと、
    エバネッセント波蛍光発光について前記センサをインターロゲートすることによって、蛍光発光ターゲットにおける刺激誘発変化を検出するステップと、
    エバネッセント波無標識光における刺激誘発変化を検出するステップと、
    を含む方法。
  16. 蛍光発光ターゲットを有する生細胞は、蛍光タンパク質を発現する遺伝子発現ベクターにより得られる請求項15記載の方法。
  17. 蛍光発光ターゲットを有する生細胞は、形質移入(トランスフェクション)、細胞表面膜への脂質ターゲットの挿入、もしくはこれらの組み合わせにより得られる請求項16記載の方法。
  18. エバネッセント波無標識光とエバネッセント励起蛍光発光を検出するためのデュアル検出システムであって、
    光学センサと、
    前記センサを照射する光源と、
    前記センサから前記エバネッセント波無標識光を集める第1光学検出器と、
    前記センサから前記エバネッセント波励起蛍光発光を集める第2光学検出器と、
    前記集められた光を分析するプロセッサと、
    を含むことを特徴とするデュアル検出システム。
  19. 前記光学センサは、所定パターンを有する基準領域、生細胞もしくは生体分子を有するサンプル領域、またはこれらの組み合わせを備える請求項18記載のデュアル検出システム。
  20. 1つのセンサからのエバネッセント波無標識シグナルとエバネッセント励起蛍光シグナルの1つの共鳴波長の検出を強化する方法であって、
    蛍光標識を有する特定のターゲットの前記エバネッセント波励起蛍光シグナルを計測すると共に、刺激が与えられた場合の無標識ダイナミンマスリディストリビューションシグナルを計測するステップと、
    前記ターゲットからの計測された蛍光シグナルと前記無標識ダイナミックマスリディストリビューションシグナルを相関させるステップと、
    を含む方法。
  21. 前記蛍光シグナルと前記無標識ダイナミックマスリディストリビューションシグナルを相関させるステップは、
    前記2つのシグナルの動態プロファイルを比較するステップと、
    シグナリングカスケードを変えることによって得られる前記2つのシグナルの調節プロ ファイルを比較するステップと、
    細胞反応に対する遺伝子変更の影響を比較するステップと、
    の少なくとも1つのステップを含むか、上記ステップの組み合わせを含む請求項20記載の方法。
  22. 生細胞内のイオンチャネル活性をデュアル検出する方法であって、
    バイオセンサ表面に固定化された少なくとも1つの生細胞を有するバイオセンサを準備するステップと、
    前記固定化細胞に膜電位感応色素を付けるステップと、
    前記膜電位感応色素を有する前記固定化細胞を刺激に接触させるステップと、
    刺激誘発光学無標識シグナルとエバネッセント波励起蛍光シグナルを検出するステップと、
    を含むことを特徴とする方法。
  23. 生細胞内のイオンチャネル活性をデュアル検出する方法であって、
    バイオセンサ表面に固定化された少なくとも1つの生細胞を有するバイオセンサを準備するステップと、
    前記固定化細胞に膜電位感応色素及び蛍光脂質を付けるステップと、
    前記色素及び脂質を有する前記固定化細胞を刺激に接触させるステップと、
    刺激誘発光学無標識シグナルとエバネッセント波励起蛍光シグナルを検出するステップと、を含み、前記蛍光シグナルは前記色素と脂質の間の蛍光共鳴エネルギ伝達の変化に伴い変化することを特徴とする方法。
  24. 生細胞内のイオンチャネル活性をデュアル検出する方法であって、
    バイオセンサ表面に固定化された少なくとも1つの生細胞を有するバイオセンサを準備するステップと、
    前記固定化細胞に膜電位感応色素及びクエンチャ脂質を付けるステップと、
    前記色素及びクエンチャ脂質を有する前記固定化細胞を刺激に接触させるステップと、
    刺激誘発光学無標識シグナルとエバネッセント波励起蛍光シグナルを検出するステップと、を含み、前記検出された蛍光シグナルは前記クエンチャ脂質と膜電位感応色素の間の距離の変化に伴い変化することを特徴とする方法。
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