JP2011512809A - 短鎖脂肪に対して特異性の高いリパーゼおよびその使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、新しい脂肪分解酵素をコードする遺伝子を含んでなる新しいポリヌクレオチド配列、ならびにそれと高い相同性がある遺伝子またはアミノ酸配列の機能的同等物に関する。本発明はまた、例えば乳製品またはベーキング産業などの産業工程において、これらの脂肪分解酵素を使用する方法にも関する。
Description
本発明は、新しい脂肪分解酵素をコードする遺伝子を含んでなる、新たに同定されたポリヌクレオチド配列に関する。本発明は新しい遺伝子の全長コード配列、ならびに全長機能的タンパク質のアミノ酸配列、および遺伝子またはアミノ酸配列の機能的同等物を特徴とする。本発明はまた、産業工程において、例えば乳業などの食品産業において、これらのタンパク質を使用する方法に関する。本発明にはまた、これらのタンパク質および細胞を生成するのに適した、本発明に従ったポリヌクレオチドで形質転換された細胞も含まれる。
リパーゼは脂質基質中のエステル結合の加水分解を触媒する酵素であり、脂肪酸の放出をもたらす。リパーゼは乳業用途で風味生成のために、最も重要なことにはチーズで使用される。伝統的にヤギ、仔ヤギ、仔ウシまたは仔羊に由来する反芻動物リパーゼ製剤が使用される。これらはこれらの反芻動物からの前胃組織に由来し、これらのリパーゼ製剤はまた、前胃エステラーゼとも称される。オランダ国(The Netherlands)のDSM Food SpecialtiesからのPiccantase(登録商標)C、L、KG、およびKなどの市販製剤が販売されている。これらのリパーゼは、多様なイタリア、スペイン、ギリシア、およびフランスチーズの調製において使用される。これらのタイプのチーズにおける熟成中の特定の風味プロフィールの生成は、乳脂肪に対するリパーゼの作用が主因である。リパーゼは、遊離脂肪酸の発生と共に乳脂肪の加水分解を触媒する。前記脂肪酸は、短鎖(4または6個の炭素原子を含有するC4〜C6脂肪酸、すなわち酪酸、カプロン酸)および中鎖から長鎖(C12〜C18脂肪酸)を有してもよい。引き続いて遊離脂肪酸は、例えばアセトアセテート、β−ケト酸、メチルケトン、エステル、およびラクトンなどの風味化合物の形成などの化学反応に関与することができる。風味構成要素中の脂肪酸の転換は、チーズ中の微生物個体群起源の酵素によって触媒できる。
チーズ中においてリパーゼによって放出される遊離脂肪酸のタイプは、使用されるリパーゼタイプの影響を受けることが知られている。例えば主として短鎖脂肪酸(例えばC4およびC6を含有する脂肪酸)を放出するリパーゼが、ぴりっと辛くシャープでスパイシーなツーンとする風味の発生をもたらす一方、中鎖から長鎖脂肪酸の放出は石鹸のような味をもたらし得る。リパーゼの使用は、酵素処理チーズ(EMC;Wilkinsonら,「Encyclopedia of Dairy Sciences」より(2003年;Foxら編,Academic Press)434〜438頁)またはバター脂肪およびクリームの加水分解、およびそれらの応用(Kilara,「Enzyclopedia of Dairy Sciences」より(2003年;Foxら編,Academic Press)914〜918頁)などのチーズ以外の乳業用途において増大している。
反芻動物リパーゼは、乳脂肪から短鎖脂肪酸(C4、C6含有脂肪酸)を放出するそれらの特異性のために、微生物リパーゼよりも好ましい。これらの化合物は、それ自体が風味化合物であり、あるいは特有の風味効果がある揮発性エステルに転換する((Liuら,Int.Dairy J.2004年,14,923〜945頁)。興味深い課題は反芻動物リパーゼの組成物であり、それはいくつかの論文の主題である(例えばAddisら,Int.dairy J.(2005年)15,1271〜1278頁;Richardsonら,J.Dairy Sci.(1967年)50,1061〜1065頁;Addidら,Int.Dairy J.(2005年)15,563〜569頁;Hamosh,Nutrition(1990年)6,421〜428頁;Calvoら(2004年)J.Dairy Sci.87,1132〜1142頁)。提示されたデータからは、ほとんどの反芻動物酵素が恐らくは2つ以上リパーゼの混合物であり、生じる組成の多様性がチーズ風味形成における性能の変化につながるという結論がもたらされる。この多様性が、均一性の改善された代替え酵素源を産業界が探し求める推進力になっている。スクレピーおよび狂牛病などの動物疾患の発生は、産業界が代替え物を探し求める別の推進力である。さらなる支持は、コーシャおよびハラール品質の製品への容易なアクセスに対する要求に由来する。したがって動物由来リパーゼの代替え物に対する強い産業的要求がある。
米国特許出願公開第2004/0001819号明細書は、酵母ピチア・パストリス(Pichia pastoris)中での仔ヤギ前胃エステラーゼのクローニングおよび発現について記載している。潜在的に興味深いものではありながら、酵素の生成は不良であり、さらに遊離脂肪酸放出プロフィールは、元の仔ヤギエステラーゼと比較してより長い鎖長の脂肪酸にシフトした。これらの2つの側面は、経済性の不良と用途における性能欠如のために、この酵素を魅力的でなくする。好ましい代替え物は、微生物リパーゼ、または微小生物によって組み換え的に産生される(微生物)リパーゼであろう。いくつかの微生物リパーゼが販売されている(例えばBjurlinら,JAOCS(2001年)78,153〜160頁を参照されたい)。チーズ用途のための微生物リパーゼの最も重要な特徴は、それらの乳脂肪からの脂肪酸放出プロフィールであり、それは動物由来リパーゼを可能な限り近く模倣しなくてはならない。しかし微生物リパーゼは、短鎖脂肪酸(C4、C6)と比較して、長鎖(C12〜C18)脂肪酸の放出に対する選択性を有することから、この点において機能が劣る。これは所望されるぴりっと辛い風味でなく、石鹸のような味の生成をもたらすことが多い。したがって相当数の市販微生物リパーゼ製剤が販売されているという事実にもかかわらず、反芻動物前胃リパーゼなどの動物由来リパーゼに取って代ることができる、非動物由来リパーゼに対する工業的必要が依然としてある。
[発明の目的]
本発明の目的は、乳業において、より詳しくはチーズまたはチーズ様製品の製造において、バター脂肪またはクリームの脂肪分解において、または酵素処理チーズの製造において使用するのに適した、新しい脂肪分解酵素を提供することである。さらに新しい脂肪分解酵素をコードする新しいポリヌクレオチドを提供することが、本発明の目的である。さらなる目的は、組み換え的に生成された脂肪分解酵素、ならびにこれらを産生する組み換え株を提供することである。また融合ポリペプチドも本発明の一部であり、ならびに本発明に従ったポリヌクレオチドおよびポリペプチドを生成して使用する方法も本発明の一部である。
本発明の目的は、乳業において、より詳しくはチーズまたはチーズ様製品の製造において、バター脂肪またはクリームの脂肪分解において、または酵素処理チーズの製造において使用するのに適した、新しい脂肪分解酵素を提供することである。さらに新しい脂肪分解酵素をコードする新しいポリヌクレオチドを提供することが、本発明の目的である。さらなる目的は、組み換え的に生成された脂肪分解酵素、ならびにこれらを産生する組み換え株を提供することである。また融合ポリペプチドも本発明の一部であり、ならびに本発明に従ったポリヌクレオチドおよびポリペプチドを生成して使用する方法も本発明の一部である。
[発明の概要]
本発明は、乳業で使用するのに適した新しい脂肪分解酵素を提供する。意外にも新しい脂肪分解酵素は、脂質含有食品成分、好ましくはチーズの酵素修飾による風味生成で使用するのに極めて適する。新しい脂肪分解酵素はまた、有利にはチーズ熟成において、チーズ様製品の製造において、クリームまたはバター脂肪改質においても使用できる。さらに酵素は、適切にはベーカリー製品の製造などのその他の食品用途においても使用できる。
本発明は、乳業で使用するのに適した新しい脂肪分解酵素を提供する。意外にも新しい脂肪分解酵素は、脂質含有食品成分、好ましくはチーズの酵素修飾による風味生成で使用するのに極めて適する。新しい脂肪分解酵素はまた、有利にはチーズ熟成において、チーズ様製品の製造において、クリームまたはバター脂肪改質においても使用できる。さらに酵素は、適切にはベーカリー製品の製造などのその他の食品用途においても使用できる。
本発明は、新しい脂肪分解酵素をコードする新しいポリヌクレオチドをさらに提供する。
本発明に従ったポリヌクレオチドは、
(a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物、
(b)配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%相同的である、ヌクレオチド配列、
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列中の成熟ポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列、
(d)配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(e)(a)、(b)、(c)、(d)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コードの縮重の結果として縮重する配列、
(f)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
から選択されるヌクレオチド配列を含んでなる。
(a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物、
(b)配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%相同的である、ヌクレオチド配列、
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列中の成熟ポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列、
(d)配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(e)(a)、(b)、(c)、(d)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コードの縮重の結果として縮重する配列、
(f)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
から選択されるヌクレオチド配列を含んでなる。
特に本発明は、好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%相同的である、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを提供する。したがって本発明は、配列番号1に記載の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、93%、94%、95%、なおもより好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%相同的なポリヌクレオチドを提供する。
一実施態様ではこのような単離されたポリヌクレオチドは、例えば固相合成によって、または当業者に既知のその他の方法によって合成的に得ることができる。
別の実施態様では本発明は、配列番号1に記載の脂肪分解酵素遺伝子、または依然として活性酵素をコードする機能的同等物を提供する。
好ましくは本発明に従ったポリヌクレオチドは、DNA配列である。
本発明はまた、本発明に従ったポリヌクレオチド配列を含んでなるベクターに関し、本発明に従ったDNAを増幅または検出するのに使用されてもよいプライマー、プローブ、および断片に関する。
さらなる好ましい実施態様では、本発明に従ったポリヌクレオチド配列が少なくとも1つの制御配列と作動的に連結して、適切な宿主細胞中でのポリヌクレオチド配列の発現を可能にする、ベクターが提供される。好ましくは前記適切な宿主細胞は糸状菌であり、より好ましくはアスペルギルス(Aspergillus)種である。適切な株は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)またはニデュランス(Aspergillus nidulans)に属する。好ましくは、宿主細胞はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である。
本発明はまた、本発明に従ったポリヌクレオチドを含有する、組換え的に生成された宿主細胞に関する。
本発明はまた、本発明に従ったポリヌクレオチドおよびベクターを調製する方法も提供する。
別の実施態様では、本発明は、本発明に従ったポリヌクレオチドの発現が顕著に増大され、または脂肪分解活性の生成レベルが顕著に改善される、組み換え宿主細胞を提供する。
別の実施態様では、本発明は、本発明に従った異種または相同DNAを含有する組み換え的に生成される宿主細胞を提供し、細胞は本発明に従った機能性脂肪分解酵素を産生でき、すなわちそれは例えば本発明に従った遺伝子のコピー数が増大しているアスペルギルス(Aspergillus)株のように、本発明に従った脂肪分解酵素をコードするポリヌクレオチドを発現、または好ましくは過剰発現できる。
本発明のさらに別の態様では、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドが提供される。本発明に従ったポリペプチドは、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%相同的なアミノ酸配列を有するその機能的同等物、
(b)前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であるポリペプチド、
(c)本発明に従ったポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含んでなる。好ましくは本発明に従ったポリペプチドは、少なくとも0.7、好ましくは、少なくとも0.8、0.9、1.0、1.1、1.5、1.7、2、2.5、3である、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecを有する。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%相同的なアミノ酸配列を有するその機能的同等物、
(b)前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であるポリペプチド、
(c)本発明に従ったポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含んでなる。好ましくは本発明に従ったポリペプチドは、少なくとも0.7、好ましくは、少なくとも0.8、0.9、1.0、1.1、1.5、1.7、2、2.5、3である、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecを有する。
一実施態様では本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7、好ましくは少なくとも0.8、0.9、1.0、1.1、1.5、1.7、2、2.5、3である、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドに関する。本発明はまた、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドに関する。Rspecについては、本明細書中で後からさらに詳しく定義する。
本発明に従ったポリペプチドを含んでなる融合タンパク質もまた、本発明の範囲内である。本発明はまた、本発明に従ったポリペプチドを作成する方法も提供する。
本発明はまた、本明細書で記載されているようなあらゆる産業工程における、より具体的には食品産業における、例えば乳業またはベーカリー産業における、本発明に従った脂肪分解酵素の使用に関する。
[発明の詳細な説明]
[ポリヌクレオチド]
本発明は第1の態様において、
(a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物、
(b)配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%相同的である、ヌクレオチド配列、
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列中の成熟ポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列、
(d)配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(e)(a)、(b)、(c)、(d)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コードの縮重の結果として縮重する配列、
(f)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
から選択されるヌクレオチド配列を含んでなる、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
[ポリヌクレオチド]
本発明は第1の態様において、
(a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物、
(b)配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%相同的である、ヌクレオチド配列、
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列中の成熟ポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列、
(d)配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(e)(a)、(b)、(c)、(d)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コードの縮重の結果として縮重する配列、
(f)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
から選択されるヌクレオチド配列を含んでなる、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
一実施態様では、本発明は、配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに対応するアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに対応するアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有する機能的同等物を有する脂肪分解酵素をコードする、ポリヌクレオチドを提供する。
本発明の文脈で「成熟ポリペプチド」とは、本明細書で翻訳、およびN末端プロセシング、C末端トランケーション、グリコシル化、ホスホリル化などのあらゆる翻訳後修飾に続いて、最終形態にある脂肪分解活性を有するポリペプチドと定義される。成熟過程は、特定の使用発現ベクター、発現宿主、および製造工程に左右されるかもしれない。好ましくは、成熟ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列中のアミノ酸34〜304である。「成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列」とは、本明細書で成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と定義される。好ましくは成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号1中のヌクレオチド100〜912である。
別の実施態様では本発明は、配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7、好ましくは少なくとも0.8、0.9、1.0、1.1、1.5、1.7、2、2.5、3である、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドに関する。Rspecについては、明細書中で後からさらに詳しく定義する。
本発明は、脂肪分解酵素をコードする遺伝子を含んでなるポリヌクレオチド配列、ならびにそのコード配列を提供する。したがって本発明は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、または配列番号1と少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物などの変異型を含んでなる、単離されたポリヌクレオチドに関する。
特に本発明は、好ましくはストリンジェントな条件下で、より好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの補体とハイブリダイズする、ヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチドに関し、好ましくは前記配列は、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%相同的である。
より具体的には本発明は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含んでなり、または本質的にそれからなる単離されたポリヌクレオチドに関する。
このような単離されたポリヌクレオチドは、当業者に既知の方法を用いた合成によって得られてもよい。
本明細書での用法では、「遺伝子」および「組み換え遺伝子」という用語は、例えば脂肪分解酵素などのタンパク質をコードする読み取り枠を含む、染色体DNAから単離されてもよい核酸分子を指す。遺伝子は、コード配列、非コード配列、イントロン、および制御配列を含んでもよい。さらに遺伝子は、本明細書で定義されるような単離された核酸分子またはポリヌクレオチドを指す。
配列番号1のヌクレオチド配列またはその機能的同等物を有する核酸分子などの本発明の核酸分子は、標準分子生物学技術および本明細書で提供される配列情報を使用して単離できる。例えばハイブリダイゼーションプローブとして配列番号1の核酸配列の全部または一部を使用して、本発明に従った核酸分子を標準ハイブリダイゼーションおよびクローニング技術を使用して単離できる(例えばSambrook,J.,Fritsh,E.F.,およびManiatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989年に記載されるように)。
さらに配列番号1の全部または一部を包含する核酸分子は、配列番号1に含有される配列情報に基づいてデザインされた合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離できる。
本発明の核酸は、標準PCR増幅技術に従って、cDNA、mRNAまたは代案としてはゲノムDNAをテンプレートとして、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅できる。このように増幅された核酸を適切なベクターにクローンし、DNA配列分析によって特性決定できる。
さらに本発明に従ったヌクレオチド配列の補体に対応するまたはハイブリッド形成できるオリゴヌクレオチドが、例えば自動化DNA合成機を使用して、標準合成技術によって調製できる。
好ましい実施態様では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含んでなる。配列番号1の配列は、配列番号2に記載のポリペプチド、および配列番号2中の成熟ポリペプチドに一致する脂肪分解酵素をコードする。配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに一致する一致する脂肪分解酵素は、L01で示される。配列番号1に記載のヌクレオチド配列は、DNA L01で示される。
別の好ましい実施態様では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1で示されるヌクレオチド配列またはこれらのヌクレオチド配列の機能的同等物の補体である、核酸分子を含んでなる。
もう1つのヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、その他のヌクレオチド配列と十分に相補的なものであるので、それはもう1つのヌクレオチド配列とハイブリダイズし、それによって安定した二本鎖を形成できる。
本発明の一態様は、本発明のポリペプチド、または例えば生物学的に活性な断片またはドメインなどのその機能的同等物などの変異型をコードする単離された核酸分子、ならびに本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用するのに十分な核酸分子、および核酸分子の増幅または変異のためのPCRプライマーとして使用するのに適したこのような核酸分子の断片に関する。
「単離されたポリヌクレオチド」または「単離された核酸」とは、それが由来する生物の天然ゲノム中で、(5’末端に1つおよび3’末端に1つある)それが隣接するコード配列のどちらにも隣接しないDNAまたはRNAである。したがって一実施態様では、単離された核酸は、コード配列に隣接する5’非コード(例えばプロモーター)配列のいくつかまたは全てを含む。したがって用語は、例えばベクター、自己複製プラスミドまたはウィルス、または原核生物または真核生物のゲノムDNAに組み込まれ、またはその他の配列から独立した離隔分子として存在する組み換えDNA(例えばPCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって生成されるcDNAまたはゲノムDNA断片)を含む。それはまた、追加的ポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子の一部である組み換えDNAを含み、細胞物質、ウィルス性物質、または培地(組み換えDNA技術によって生成される場合)、または化学前駆物質またはその他の化学物質(化学的に合成される場合)を実質的に含まない。さらに「単離された核酸断片」は、断片として自然発生せず自然状態では見られない核酸断片である。
本明細書での用法では、「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えばmRNA)、およびヌクレオチド類似体を使用して作り出されたDNAまたはRNAの類似体を含むことが意図される。核酸分子は一本鎖または二本鎖であることができるが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸はオリゴヌクレオチド類似体または誘導体(例えばイノシンまたはホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドは、例えば改変された塩基対合能力またはヌクレアーゼに対する増大した抵抗性を有する核酸を調製するのに使用できる。
本発明の別の実施態様は、例えば本発明に従った核酸分子のコード鎖などの本発明に従った核酸分子のアンチセンスである、単離された核酸分子を提供する。
本発明に従ったポリヌクレオチドの補体ストランドもまた、本発明の範囲内に含まれる。
[核酸断片、プローブ、およびプライマー]
本発明に従った核酸分子は、例えばプローブまたはプライマーとして使用できる断片、または本発明に従ったタンパク質の一部をコードする断片などの、配列番号1に記載の核酸配列の一部または断片のみを含んでなってもよい。本発明に従ったヌクレオチド配列は、配列番号2に記載のタンパク質と少なくとも90%の相同性を有する、本発明に従ったタンパク質の機能的同等物の同定および/またはクローニングで使用するためにデザインされた、プローブおよびプライマーの生成を可能にする。プローブ/プライマーは、好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、少なくとも約12または15、好ましくは約18または20、好ましくは約22または25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65、または75個以上の本発明に従ったヌクレオチド配列の連続的ヌクレオチドとハイブリダイズする、ヌクレオチド配列の領域を典型的に含んでなる、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを典型的に含んでなる。
本発明に従った核酸分子は、例えばプローブまたはプライマーとして使用できる断片、または本発明に従ったタンパク質の一部をコードする断片などの、配列番号1に記載の核酸配列の一部または断片のみを含んでなってもよい。本発明に従ったヌクレオチド配列は、配列番号2に記載のタンパク質と少なくとも90%の相同性を有する、本発明に従ったタンパク質の機能的同等物の同定および/またはクローニングで使用するためにデザインされた、プローブおよびプライマーの生成を可能にする。プローブ/プライマーは、好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、少なくとも約12または15、好ましくは約18または20、好ましくは約22または25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65、または75個以上の本発明に従ったヌクレオチド配列の連続的ヌクレオチドとハイブリダイズする、ヌクレオチド配列の領域を典型的に含んでなる、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを典型的に含んでなる。
本発明に従ったヌクレオチドに基づく、より好ましくは配列番号1に基づく配列プローブは、例えば生物中で同一または相同的タンパク質をコードする転写物またはゲノム配列を検出するのに使用できる。好ましい実施態様では、プローブはそれに付着する標識群をさらに含んでなり、例えば標識群は放射性同位体、蛍光性化合物、酵素、または酵素補助因子であることができる。このようなプローブはまた、本発明に従ったタンパク質を発現する細胞を同定するための診断用試験キットの一部として使用できる。
[同一性および相同性]
「相同性」または「%同一性」という用語は、本明細書で同義的に使用される。本発明の目的では、それは本明細書で2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の%相同性を判定するために、配列を最適比較目的でアラインすることと定義される。2つの配列間のアラインメントを最適化するために、比較される2つの配列のいずれかにギャップを導入してもよい。このようなアラインメントは、比較される配列の全長にわたり実施できる。代案としては、アラインメントは、例えば約20、約50、約100個以上の核酸/塩基またはアミノ酸にわたるより短い長さにわたって実施されてもよい。同一性は、報告された整列領域にわたる2配列間の完全一致の百分率である。
「相同性」または「%同一性」という用語は、本明細書で同義的に使用される。本発明の目的では、それは本明細書で2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の%相同性を判定するために、配列を最適比較目的でアラインすることと定義される。2つの配列間のアラインメントを最適化するために、比較される2つの配列のいずれかにギャップを導入してもよい。このようなアラインメントは、比較される配列の全長にわたり実施できる。代案としては、アラインメントは、例えば約20、約50、約100個以上の核酸/塩基またはアミノ酸にわたるより短い長さにわたって実施されてもよい。同一性は、報告された整列領域にわたる2配列間の完全一致の百分率である。
2配列間の配列比較および%同一性判定は、数学的アルゴリズムを使用して達成できる。当業者には、2つの配列をアラインして2配列間の相同性を判定するために、いくつかの異なるコンピュータプログラムが利用できるという事実は既知である(Kruskal,J.B.(1983年)「An overview of squence comparison」,D.SankoffおよびJ.B.Kruskal(編),「Time warps,string edits and macromolecules:the theory and practice of sequence comparison」より,1〜44頁,Addison Wesley)。2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の%同一性は、2つの配列のアラインメントのためのNeedlemanおよびWunschアルゴリズム(Needleman,S.B.およびWunsch,C.D.(1970年)J.Mol.Biol.48,443〜453頁)を使用して判定されてもよい。アミノ酸配列およびヌクレオチド配列のどちらもアルゴリズムによってアラインできる。Needleman−Wunschアルゴリズムは、コンピュータプログラムNEEDLEに実装されている。本発明の目的では、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムを使用した(バージョン2.8.0またはそれ以降、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite(2000年)Rice,P.Longden,I.およびBleasby,A.Trends in Genetics 16,(6)276〜277頁,http://emboss.bioinformatics.nl/)。タンパク質配列のためには、置換マトリックスのためのEBLOSUM62を使用する。ヌクレオチド配列のためには、EDNAFULLを使用する。使用する任意のパラメーターはギャップ・オープン・ペナルティ(gap−open penalty)10、およびギャップ・エクステンション・ペナルティ(gap extension penalty)0.5である。当業者は、これらの全ての異なるパラメーターがわずかに異なる結果を生じるが、異なるアルゴリズムを使用した場合、2つの配列の総体的百分率同一性は顕著に変わらないことを理解するであろう。
上述のようなプログラムNEEDLEによるアラインメントの後に、クエリー配列と本発明の配列間の同一性百分率が次のように計算される。双方の配列中の同一アミノ酸または同一ヌクレオチドを示すアラインメント中の対応位置数からアラインメント中のgap総数を差し引いて、アラインメントの全長で割る。同一性は、本明細書でNOBRIEFオプションを使用してNEEDLEから得ることができると定義され、プログラムの結果中に「最長同一性」として標識される。
本発明の核酸およびタンパク質配列を「クエリー配列」としてさらに使用して公共データベースに対する検索を実施し、例えばその他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定できる。このような検索は、Altschulら(1990年)J.Mol.Biol.215:403〜10頁のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施できる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、score=100、word length=12により実施して、本発明の核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、score=50、word length=3により実施して、本発明のタンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップドアラインメントを得るため、Altschulら,(1997年)Nucleic Acids Res.25(17):3389〜3402頁で記載されているように、ギャップドBLASTを使用できる。BLASTおよびギャップドBLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用できる。国立バイオテクノロジー情報センターのホームページhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/を参照されたい。
[ハイブリダイゼーション]
本明細書での用法では、「ハイブリッド形成」という用語は、その下で互いに少なくとも約60%、65%、80%、85%、90%、好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも98%相同的なヌクレオチド配列が、典型的に互いの補体にハイブリダイズしたままである、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件について記述することが意図される。
本明細書での用法では、「ハイブリッド形成」という用語は、その下で互いに少なくとも約60%、65%、80%、85%、90%、好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも98%相同的なヌクレオチド配列が、典型的に互いの補体にハイブリダイズしたままである、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件について記述することが意図される。
このようなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的例は、約45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション後、50℃、好ましくは55℃、好ましくは60℃、なおもより好ましくは65℃で1×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄である。
高度にストリンジェントな条件としては、例えば68℃で5×SSC/5×デンハルト液/1.0%SDS中でのハイブリッド形成、そして室温で0.2×SSC/0.1%SDS中での洗浄が挙げられる。代案としては、洗浄を42℃で実施してもよい。
当業者は、ストリンジェントなおよび高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に、いずれの条件を適用するかを理解するであろう。このような条件に関する追加的ガイダンスは、例えばSambrookら,1989年,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.;およびAusubelら(編),1995年,Current Protocols in Molecular Biology,(John Wiley & Sons,N.Y.)など、当該技術分野で容易に入手できる。
ポリA配列(mRNAの3’末端ポリ(A)トラクトなど)、またはT(またはU)残基の相補的ストレッチのみとハイブリダイズするポリヌクレオチドは、あらゆるポリ(A)ストレッチまたはその補体(例えば事実上あらゆる二本鎖cDNAクローン)を含有する核酸分子とハイブリダイズすることから、もちろん本発明の核酸の一部と特異的にハイブリダイズするのに使用される本発明のポリヌクレオチドには含まれない。
[その他の生物から全長DNAを得る]
典型的なアプローチでは、例えば糸状菌などのその他の生物から、特にフザリウム(Fusarium)種から構築されるcDNAライブラリーをスクリーンできる。
典型的なアプローチでは、例えば糸状菌などのその他の生物から、特にフザリウム(Fusarium)種から構築されるcDNAライブラリーをスクリーンできる。
例えばフザリウム(Fusarium)株をノーザンブロット法分析によって、配列番号1と相同的なポリヌクレオチドについてスクリーンできる。本発明に従ったポリヌクレオチドと相同的な転写物を検出したら、当業者に良く知られている標準技術を使用して、適切な株から単離されたRNAからcDNAライブラリーを構築できる。代案としては、本発明に従ったポリヌクレオチドとハイブリッド形成できるプローブを使用して、全ゲノムDNAライブラリーをスクリーンできる。
相同的な遺伝子配列は、例えば本明細書で教示されるヌクレオチド配列に基づいてデザインされた2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマープールを使用して、PCRを実施することで単離できる。
反応のためのテンプレートは、本発明に従ったポリヌクレオチドを発現することが知られている、または疑われる株から調製されるmRNAの逆転写によって得られるcDNAであることができる。PCR産物はサブクローンおよび配列決定して、増幅された配列が本発明に従った新しい核酸配列、またはその機能的同等物の配列に相当することを保証できる。
次にPCR断片を使用して、多様な既知の方法によって全長cDNAクローンを単離できる。例えば増幅された断片を標識して使用し、バクテリオファージまたはコスミドcDNAライブラリーをスクリーンできる。代案としては標識断片を使用して、ゲノムライブラリーをスクリーンできる。
PCR技術はまた、その他の生物から全長cDNA配列を単離するのに使用できる。例えば標準操作手順に従って、適切な細胞原料または組織原料からRNAを単離できる。逆転写反応は、第一鎖合成のプライミングのために増幅された断片のほとんどの5’末端に対して特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、RNA上で実施できる。
次に標準末端基転移酵素反応を使用して、得られたRNA/DNAハイブリッドを(例えばグアニンで)「テール形成(tailed)」でき、ハイブリッドをRNase Hで消化でき、次に(例えばポリ−Cプライマーで)第二鎖合成をプライムできる。したがって増幅された断片上流のcDNA配列を容易に単離できる。有用なクローニング戦略のレビューについては、例えばSambrookら、前出;およびAusubelら、前出を参照されたい。
[ベクター]
本発明の別の態様は、脂肪分解活性を有するポリペプチドをコードする本発明に従ったポリヌクレオチド配列または本発明に従ったその機能的同等物を含んでなる、クローニングおよび発現ベクターをはじめとするベクターに関する。本発明はまた、このようなベクターを生育させ、例えば本発明のポリペプチド発現が起きる条件下で、適切な宿主細胞に形質転換または形質移入する方法に関する。本明細書での用法では「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送できる核酸分子を指す。
本発明の別の態様は、脂肪分解活性を有するポリペプチドをコードする本発明に従ったポリヌクレオチド配列または本発明に従ったその機能的同等物を含んでなる、クローニングおよび発現ベクターをはじめとするベクターに関する。本発明はまた、このようなベクターを生育させ、例えば本発明のポリペプチド発現が起きる条件下で、適切な宿主細胞に形質転換または形質移入する方法に関する。本明細書での用法では「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送できる核酸分子を指す。
本発明のポリヌクレオチドは、組み換え複製可能なベクター、例えばクローニングまたは発現ベクターに組み込むことができる。ベクターは、適合性宿主細胞中で核酸を複製するのに使用してもよい。したがってさらなる実施態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入して、ベクターを適合性宿主細胞に導入し、ベクターの複製をもたらす条件下で宿主細胞を生育させることで、本発明のポリヌクレオチドを作成する方法を提供する。ベクターを宿主細胞から回収してもよい。適切な宿主細胞については下で述べる。
その中に発現カセットまたは本発明のポリヌクレオチドが挿入されるベクターは、好都合には組み換えDNA手順が施されてもよいあらゆるベクターであってもよく、ベクターの選択は、その中にそれが導入される宿主細胞に左右されることが多い。
本発明に従ったベクターは、例えばプラスミドのような自己複製ベクター、すなわち染色体外の実体として存在し、その複製が染色体の複製と無関係であるベクターであってもよい。代案としてはベクターは、宿主細胞に導入されると宿主細胞ゲノムに一体化されて、それが一体化された染色体と共に複製されるものであってもよい。
1つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、それは追加的DNAセグメントをその中にライゲートできる環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターは、ウィルス性ゲノム中に追加的DNAセグメントをライゲートできるウィルスベクターである。特定のベクターは、それらを導入した宿主細胞中で自律複製できる(例えば細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞ゲノムに一体化され、したがって宿主ゲノムと共に複製される。さらに特定のベクターは、それらが作動可能なように結合する遺伝子の発現を誘導できる。このようなベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。一般に組み換えDNA技術中で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドが通常使用されるベクターの形態であるので、「プラスミド」および「ベクター」という用語は、本明細書で同義的に使用できる。しかし本発明は、同等機能を果たすコスミド、ウィルスベクター(例えば複製欠損レトロウィルス、アデノウィルス、およびアデノ随伴ウィルス)およびファージベクターなどのその他の形態の発現ベクターを含むことが意図される。
本発明に従ったベクターは、例えばRNAの生成のために生体外で使用してもよく、または宿主細胞を形質移入または形質転換するために使用してもよい。
本発明のベクターは、例えば過剰発現のために、例えば3、4または5個など、2個以上の本発明のポリヌクレオチドを含んでなってもよい。
本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞中での核酸の発現に適した形態で本発明の核酸を含んでなり、それは組み換え発現ベクターが、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択され、発現される核酸配列と作動的に連結する、1つ以上の制御配列を含むことを意味する。
組み換え発現ベクターにおいて、「作動的に連結する」とは、(例えば生体外転写/翻訳系中でまたは宿主細胞中で、ベクターが宿主細胞に導入される際に)ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で、関心のあるヌクレオチド配列が制御配列に結合していることを意味することが意図され、すなわち「作動的に連結する」と言う用語は、記載されている構成要素が、それらの意図される様式でそれらが機能できるようにする関係にある並置を指す。コード配列に「作動的に連結する」プロモーター、エンハンサー、またはその他の発現調節シグナルなどの制御配列は、制御配列と適合する条件下でコード配列の発現が達成されるような様式で配置され、または配列は、それらの意図される目的のためにそれらが協力して機能するように配置され、例えば転写はプロモーターで開始され、ポリペプチドをコードするDNA配列を通じて進行する。
「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、およびその他の発現制御要素(例えばポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような制御配列については、例えばGoeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990年)で記載されている。
制御配列という用語は、多くのタイプの宿主細胞中でヌクレオチド配列の構成的な発現を誘導する配列、および特定の宿主細胞中のみでヌクレオチド配列の発現を誘導する配列(例えば組織特異的制御配列)を含む。
したがって所定の宿主細胞のベクターまたは発現コンストラクトは、第1の発明のポリペプチドをコードする配列のコード鎖に対して、5’末端から3’末端に連続した順序で互いに作動的に連結する次の要素を含んでなってもよい。(1)所定の宿主細胞中でポリペプチドをコードするヌクレオチド配列転写を誘導できるプロモーター配列、(2)任意に、所定の宿主細胞から培地へのポリペプチドの分泌を誘導できるシグナル配列、(3)本発明に従った脂肪分解活性を有するポリペプチドの成熟および好ましくは活性形態をコードする本発明のDNA配列、および好ましくはまた、(4)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の下流の転写を終結できる転写終結領域(ターミネーター)。
本発明に従ったヌクレオチド配列の下流には、1つ以上の転写終結部位(例えばターミネーター)を含有する3’非翻訳領域があってもよい。ターミネーターの起源は、それほど重要でない。ターミネーターは、例えばポリペプチドをコードするDNA配列に天然であることができる。しかし好ましくは酵母宿主細胞中では酵母ターミネーターが使用され、糸状菌宿主細胞中では糸状菌ターミネーターが使用される。より好ましくは、ターミネーターは、(ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が発現される)宿主細胞に内在性である。転写された領域中では、翻訳のためのリボソーム結合部位が存在してもよい。コンストラクトによって発現される成熟転写物のコーディング部分は、先頭に翻訳開始AUG、および翻訳されるポリペプチドの終端に適切に配置された終止コドンを含む。
本発明のポリヌクレオチドの増強された発現はまた、例えば発現、そして所望ならば発現宿主からの関心のあるタンパク質分泌レベルを増大させ、および/または本発明のポリペプチドの発現の誘導性制御を提供する役割を果たしてもよい、プロモーター、分泌リーダーおよび/またはターミネーター領域などの異種の調節領域の選択によって達成されてもよい。
当業者によって発現ベクターのデザインが、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどの要因に左右されてもよいことが理解されるであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入し、それによって本明細書で記載されているように核酸によってコードされるタンパク質またはペプチド(例えば脂肪分解活性を有する本発明に従ったポリペプチド、ポリペプチドの変異形態、その断片、変異型または機能的同等物、融合タンパク質など)を生成できる。
本発明の組み換え発現ベクターは、原核生物または真核細胞中での本発明に従ったポリペプチドの発現のためにデザインできる。例えば本発明に従ったポリペプチドは、大腸菌(E.coli)および桿菌などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウィルス発現ベクターを使用して)、真菌細胞、酵母細胞または哺乳類細胞中で生成できる。適切な宿主細胞については、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990年)でさらに論じられている。代案としては、例えばT7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼを使用して、組み換え発現ベクターを生体外で転写および翻訳できる。
ほとんどの糸状菌および酵母では、ベクターまたは発現コンストラクトは、安定した形質転換体を得るために好ましくは宿主細胞のゲノムに一体化される。しかし特定の酵母ではまた、安定した高レベル発現のために、その中に発現コンストラクトを組み込める適切なエピソームのベクターが利用でき、その例としては、サッカロミセス(Saccharomyces)およびクリヴェロミセス(Kluyveromyces)の2μおよびpKD1プラスミドにそれぞれ由来するベクター、またはAMA配列を含有するベクター(例えばアスペルギルス(Aspergillus)からのAMA1)が挙げられる。発現コンストラクトが宿主細胞ゲノムに一体化される場合、コンストラクトは相同的組換えを使用して、ゲノム中のランダム遺伝子座、または所定の標的遺伝子座のどちらかで一体化され、その場合標的遺伝子座は好ましくは高度に発現される遺伝子を含んでなる。
したがって本発明で有用な発現ベクターとしては、例えば細菌プラスミド;バクテリオファージ;酵母エピソーム;酵母染色体要素;バキュロウィルス、パポバウィルス、ワクシニアウィルス、アデノウィルス、鶏痘ウィルス、仮性狂犬病ウィルス、およびレトロウィルスなどのウィルスに由来するベクターなどの染色体由来、エピソーム由来、およびウィルス由来ベクター、およびコスミドおよびファージミドなどのプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝的要素に由来するものなどのそれらの組み合わせに由来するベクターが挙げられる。
ヌクレオチド挿入断片は、適切なプロモーターに作動可能なように結合すべきである。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子に天然であるプロモーター以外に、その他のプロモーターを使用して、本発明のポリペプチドの発現を誘導してもよい。プロモーターは、所望の発現宿主中で本発明のポリペプチドの発現を誘導するその効率について選択されてもよい。本発明で有用かもしれないプロモーターの2、3の例としては、ファージλ PLプロモーター、大腸菌(E.coli)lac、trp、およびtacプロモーター、SV40 earlyおよびlateプロモーター、およびレトロウィルスLTRのプロモーターが挙げられる。その他の適切なプロモーターが当業者に知られている。特定の実施態様では、真菌または酵母中において、本発明に従ったポリペプチドの高度な発現レベルを誘導できるプロモーターが好ましい。このようなプロモーターは、当該技術分野で知られている。
本発明宿主細胞中において、転写を誘導できる多様なプロモーターを使用できる。好ましくはプロモーター配列は、高度に発現される遺伝子から誘導される。それからプロモーターが好ましくは誘導され、および/またはそれが発現コンストラクト組み込みに好ましい所定の標的遺伝子座に含まれる、好ましい高度に発現される遺伝子の例としては、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ(PYKまたはPKI)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)などの解糖酵素をコードする遺伝子、ならびにアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ、キシラナーゼ、セロビオ加水分解酵素、β−ガラクトシダーゼ、アルコール(メタノール)オキシダーゼ、延長因子、およびリボソームタンパク質をコードする遺伝子が挙げられるが、これに限定されるものではない。適切な高度に発現される遺伝子特定例としては、例えばクリヴェロミセス(Kluyveromyces)種からのLAC4遺伝子、それぞれハンゼヌラ(Hansenula)およびピチア(Pichia)からのメタノールオキシダーゼ遺伝子(AOXおよびMOX)、A.ニガー(niger)およびA.アワモリ(awamori)からのグルコアミラーゼ(glaA)遺伝子、コウジカビ(A.oryzae)TAKA−アミラーゼ遺伝子、A.ニデュランス(nidulans)gpdA遺伝子、およびT.リーセイ(reesei)セロビオ加水分解酵素遺伝子が挙げられる。
真菌発現宿主中で使用するのに好ましい強力な構成的および/または誘導性プロモーターの例としては、キシラナーゼ(xlnA)、フィターゼ、ATP−シンセターゼ、サブユニット9(oliC)、トリオースリン酸イソメラーゼ(tpi)、アルコールデヒドロゲナーゼ(AdhA)、a−アミラーゼ(amy)、アミログルコシダーゼ(glaA遺伝子からのAG−)、アセトアミダーゼ(amdS)、およびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gpd)プロモーターの真菌遺伝子から得られるものが挙げられる。
強力な酵母プロモーターの例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ、ラクターゼ、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、およびトリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。
強力な細菌プロモーターの例は、α−アミラーゼおよびSPo2プロモーター、ならびに細胞外プロテアーゼ遺伝子からのプロモーターである。
植物細胞に適したプロモーターとしては、ノパリンシンターゼ(nos)、オクトピンシンターゼ(ocs)、マンノピンシンターゼ(mas)、リブロース小サブユニット(rubisco ssu)、ヒストン、イネアクチン、ファゼオリン、カリフラワーモザイクウィルス(CMV)35Sおよび19S、およびサーコウィルスプロモーターが挙げられる。
上述の全てのプロモーターは、当該技術分野で容易に入手できる。
ベクターはポリヌクレオチドの隣接配列をさらに含んで、真核生物ゲノム配列またはウィルスゲノム配列に相同的な配列を含んでなるRNAを生成してもよい。これは宿主細胞ゲノムへの本発明のポリヌクレオチドの導入を可能にする。
ベクターはアンチセンス方向を向いた本発明のポリヌクレオチドを含有して、アンチセンスRNAの生成を提供してもよい。
ベクターDNAは、従来の形質転換または形質移入技術を通じて原核生物または真核細胞に導入できる。本明細書での用法では、「形質転換」および「形質移入」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈澱、DEAE−デキストラン媒介形質移入、形質導入、感染、リポフェクション、カチオン性脂質媒介形質移入または電気穿孔をはじめとする、外来性核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入するための多様な当業者に認識された技術を指すことが意図される。宿主細胞を形質転換または形質移入する適切な方法は、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989年)、Davisら,Basic Methods in Molecular Biology(1986年)、およびその他の実験マニュアルに見られる。
哺乳類細胞の安定した形質移入のためには、使用される発現ベクターおよび形質移入技術次第で、ほんの一部の細胞のみがそれらのゲノムに外来性DNAを取り込むかもしれないことが知られている。これらの組み込み体を同定および選択するために、選択可能なマーカー(例えば抗生物質への抵抗性)をコードする遺伝子が、関心のある遺伝子と共に宿主細胞に一般に導入される。好ましい選択可能なマーカーとしては、薬剤抵抗性を与え、または宿主細胞中の欠損を補完するものが挙げられるが、これに限定されるものではない。それらとしては、例えばアセトアミダーゼ遺伝子またはcDNA(A.ニデュランス(nidulans)、コウジカビ(A.oryzae)またはA.ニガー(niger)からのamdS、niaD、facA遺伝子またはcDNA)、またはG418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、メトトレキサート、フレオマイシンまたはベノミル抵抗性(benA)のような抗生物質に対する抵抗性を提供する遺伝子など、ほとんどの糸状菌および酵母の形質転換に使用できる用途の広いマーカー遺伝子が挙げられる。代案としては、例えばURA3(S.セレヴィシエ(cerevisiae)からのまたはその他の酵母からの類似遺伝子)、pyrGまたはpyrA(A.ニデュランス(nidulans)またはA.ニガー(niger)からの)、argB(A.ニデュランス(nidulans)またはA.ニガー(niger)からの)またはtrpCなど、対応する変異宿主株を必要とする栄養要求性マーカーなどの特異的選択マーカーが使用できる。好ましい実施態様では、選択マーカー遺伝子を含まないリポペプチドを産生できる形質転換宿主細胞が得られるように、選択マーカーは発現コンストラクト導入後に形質転換宿主細胞から消去される。
その他のマーカーとしては、ATPシンセターゼ、サブユニット9(oliC)、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(pvrA)、細菌G418抵抗性遺伝子(これは酵母中で使用してもよいが、真菌中では使用できない)、アンピシリン抵抗性遺伝子(大腸菌(E.coli))、ネオマイシン抵抗性遺伝子(バシラス(Bacillus))、およびβ−グルクロニダーゼ(GUS)をコードする大腸菌(E.coli)uidA遺伝子が挙げられる。ベクターは例えばRNA生成のために生体外で使用されてもよく、または宿主細胞を形質転換または形質移入するのに使用されてもよい。
原核生物中のタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質どちらかの発現を誘導する構成的または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて、大腸菌(E.coli)中で実施されることが多い。融合ベクターは、コードされるタンパク質に、例えば組み換えタンパク質のアミノ末端にいくつかのアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、典型的に3つの目的を果たす。1)組み換えタンパク質の発現を増大させる、2)組み換えタンパク質の溶解度を増大させる、および3)アフィニティ精製においてリガンドとして作用することで組み換えタンパク質の精製を助ける。頻繁に融合発現ベクター中では、融合部分および組み換えタンパク質の接合部にタンパク質分解的切断部位が導入されて、融合タンパク質の精製に引き続いて、融合部分から組み換えタンパク質を分離できるようにする。
前述のように、発現ベクターは好ましくは選択可能なマーカーを含有する。このようなマーカーとしては、真核細胞培養ではジヒドロ葉酸還元酵素またはネオマイシン抵抗性、および大腸菌(E.coli)およびその他の細菌培養ではテトラサイクリンまたはアンピシリン抵抗性が挙げられる。適切な宿主の代表例としては、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、および特定のバシラス(Bacillus)種などの細菌細胞と、例えばA.ニガー(niger)、コウジカビ(A.oryzae)およびA.ニデュランス(nidulans)などのアスペルギルス(Aspergillus)種の真菌細胞と、例えばK.ラクチス(lactis)などのクリヴェロミセス(Kluyveromyces)、および/または例えばP.パストリス(pastoris)などのピチア(Pichia)などの酵母と、ショウジョウバエ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9などの昆虫細胞と、CHO、COS、およびBowesメラノーマなどの動物細胞と、植物細胞が挙げられる。上述の宿主細胞のための適切な培地および条件については、当該技術分野で知られている。
細菌中で使用するのに好ましいベクターは、例えば本明細書に参照として引用する、国際公開第2004/074468−A1号パンフレットで開示される。その他の適切なベクターは、当業者にはすぐに分かるであろう。
本発明で使用するのに適した既知の細菌プロモーターとしては、本明細書に参照として引用する、国際公開第2004/074468−A1号パンフレットで開示されるプロモーターが挙げられる。
高等真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することで増大させてもよい。エンハンサーは、所定の宿主細胞タイプ中においてプロモーターの転写活性を増大させる働きをする、通常約10〜300bpであるDNAのシス作用エレメントである。エンハンサーの例としては、bp100〜270で複製起点の後期側に位置するSV40エンハンサー、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウィルスエンハンサーが挙げられる。
小胞体内腔、細胞膜周辺腔、または細胞外環境内への翻訳タンパク質の分泌のために、発現される遺伝子に適切な分泌シグナルが組み込まれてもよい。シグナルはポリペプチドに内在性であってもよく、またはそれらは異種性シグナルであってもよい。
本発明に従ったポリペプチドは、融合タンパク質などの修飾形態で生成されてもよく、分泌シグナルだけでなく追加的な異種の機能的領域もまた含んでもよい。したがって例えば追加的アミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域をポリペプチドのN末端に付加して、精製中にまたは引き続く取り扱いおよび保存中に、宿主細胞中における安定性および持続性を改善してもよい。またペプチド部分をポリペプチドに付加して、精製を容易にしてもよい。
[発明に従ったポリペプチド]
本発明は、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%相同的なアミノ酸配列を有するその機能的同等物、
(b)前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であるポリペプチド、
(c)本発明に従ったポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
を含んでなる、脂肪分解脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドを提供する。
本発明は、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%相同的なアミノ酸配列を有するその機能的同等物、
(b)前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であるポリペプチド、
(c)本発明に従ったポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
を含んでなる、脂肪分解脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドを提供する。
したがって本発明は、配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドを含んでなる、好ましくは配列番号2のアミノ酸34〜304を含んでなる、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチド、および適切な宿主中で配列番号1のポリヌクレオチドを発現させて得られるアミノ酸配列を提供する。配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、少なくとも90%相同的であるペプチドまたはポリペプチドもまた、本発明に含まれる。
別の実施態様では本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7、好ましくは、少なくとも0.8、0.9、1.0、1.1、1.5、1.7、2、2.5、3である、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドに関する。Rspecについては、明細書の後段で定義する。
上のポリペプチドは、「本発明に従ったポリペプチド」という用語に集合的に含まれる。
「ペプチド」および「オリゴペプチド」という用語は、(一般に認識されるように)同義と見なされ、各用語は文脈の必要に応じて同義的に使用でき、ペプチジル結合によって連結した少なくとも2個のアミノ酸の鎖を示唆する。「ポリペプチド」(またはタンパク質)と言う語は、本明細書で7個を超えるアミノ酸残基を含有する鎖に対して使用される。本明細書で全てのオリゴペプチドおよびポリペプチドの化学式または配列は、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて左から右に記述される。本明細書で使用するアミノ酸の一文字コードは一般に当該技術分野で知られており、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,NY,1989年)で見ることができる。
「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質とは、その天然環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質を表す。例えば宿主細胞中で生成された組み換え的に生成されたポリペプチドおよびタンパク質は、本発明の目的では単離されたと見なされ、例えばSmithおよびJohnson,Gene 67:31〜40頁(1988年)で開示される一段階精製法などのあらゆる適切な技術によって実質的に精製された、天然または組み換えポリペプチドについても同様である。
当業者には知られているように、成熟中のプロセッシングエラーのために、配列番号2の、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドのN末端、ならびに配列番号2の、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドのC末端は不均一になり得る。特にこのようなプロセッシングエラーは、ポリペプチドの過剰発現に際して起きるかもしれない。さらにエキソプロテアーゼ活性が、不均一性を引き起こすかもしれない。不均一性が起きる度合いは、使用される宿主および発酵プロトコルにもまた左右される。このようなC末端プロセッシング人工産物は、配列番号2で、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドで示されるよりも、より短いポリペプチドまたはより長いポリペプチドをもたらすかもしれない。このようなエラーの結果として、N末端もまた不均一になるかもしれない。
さらなる実施態様では、本発明は配列番号2に記載のポリペプチドの、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの少なくとも1つの機能ドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供し、それは追加的残基を含有して位置1、または2、または3などで開始する。代案としてはそれはまた特定の残基を欠くかもしれず、結果として位置2、または3、または4などで開始するかもしれない。また追加的残基は、例えば位置347、348などでC末端に存在してもよい。代案としては、C末端は特定の残基を欠くかもしれず、結果として位置345、または344などで終結するかもしれない。
本発明に従った脂肪分解酵素は、当該技術分野で知られている方法によって組み換え細胞培養物から回収して精製できる(Protein Purification Protocols,Methods in Molecular Biology series by Paul Cutler,Humana Press,2004年)。
本発明のポリペプチドとしては、天然精製産物、化学合成手順の産物、および例えば細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳類細胞をはじめとする、原核生物または真核生物宿主から組み換え技術によって生成される産物が挙げられる。組み換え生産手順に採用される宿主次第で、本発明のポリペプチドは、グリコシル化されていてもまたはグリコシル化されていなくてもよい。さらに本発明のポリペプチドはまた、場合によっては宿主媒介プロセスの結果として、修飾された開始メチオニン残基を含んでもよい。
[ポリペプチド断片]
本発明は、また本発明に従ったポリペプチドの生物学的活性断片を特徴とする。
本発明は、また本発明に従ったポリペプチドの生物学的活性断片を特徴とする。
本発明のポリペプチドの生物学的活性断片は、本発明に従ったタンパク質のアミノ酸配列と十分に同一であり、またはそれから誘導されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド(例えば配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチド)を含み、それは全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含むが、対応する全長タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を示し、それは好ましくは脂肪分解活性を示す。典型的に生物学的活性断片は、本発明に従ったタンパク質の少なくとも1つの活性があるドメインまたはモチーフを含んでなる。本発明のタンパク質の生物学的活性断片は、例えば配列番号2中の成熟ポリペプチドよりもアミノ酸長が5、10、15、20、25個以上より短く、配列番号2中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%の相同性を有するポリペプチドであることができる。さらにタンパク質のその他の領域が欠失している別の生物学的活性部分を組み換え技術によって調製し、本発明のポリペプチドの天然形態の生物学的活性の1つ以上について評価できる。
本発明はまた、上の本発明に従ったタンパク質の生物学的活性断片をコードする核酸断片も特徴とする。
[融合タンパク質]
本発明に従ったポリペプチドまたはその機能的同等物、例えばその生物学的活性部分は、本発明に従っていないポリペプチド(例えば異種のアミノ酸配列)と作動的に連結して融合タンパク質を形成できる。「本発明に従っていないポリペプチド」とは、本発明に従ったタンパク質と実質的に相同的でないタンパク質に対応するアミノ酸配列を有する、ポリペプチドを指す。このような「本発明に従っていないポリペプチド」は、同一または異なる生物に由来することができる。融合タンパク質中で、本発明に従ったポリペプチドは、本発明に従った脂肪分解酵素の全体または生物学的活性断片に相当できる。好ましい実施態様では、融合タンパク質は、本発明に従ったタンパク質の少なくとも2つの生物学的活性部分を含んでなる。融合タンパク質で「作動的に連結する」という用語は、本発明に従ったポリペプチドと本発明に従っていないポリペプチドとが、互いにフレーム内融合することを示すことが意図される。本発明に従っていないポリペプチドは、ポリペプチドのN末端またはC末端に融合できる。
本発明に従ったポリペプチドまたはその機能的同等物、例えばその生物学的活性部分は、本発明に従っていないポリペプチド(例えば異種のアミノ酸配列)と作動的に連結して融合タンパク質を形成できる。「本発明に従っていないポリペプチド」とは、本発明に従ったタンパク質と実質的に相同的でないタンパク質に対応するアミノ酸配列を有する、ポリペプチドを指す。このような「本発明に従っていないポリペプチド」は、同一または異なる生物に由来することができる。融合タンパク質中で、本発明に従ったポリペプチドは、本発明に従った脂肪分解酵素の全体または生物学的活性断片に相当できる。好ましい実施態様では、融合タンパク質は、本発明に従ったタンパク質の少なくとも2つの生物学的活性部分を含んでなる。融合タンパク質で「作動的に連結する」という用語は、本発明に従ったポリペプチドと本発明に従っていないポリペプチドとが、互いにフレーム内融合することを示すことが意図される。本発明に従っていないポリペプチドは、ポリペプチドのN末端またはC末端に融合できる。
例えば一実施態様では、融合タンパク質は、アミノ酸配列がGST配列のC末端に融合する融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、本発明に従った組み換えタンパク質の精製を容易にできる。別の実施態様では、本発明に従った融合タンパク質は、そのN末端に異種性シグナル配列を含有するタンパク質である。特定の宿主細胞(例えば哺乳類および酵母宿主細胞)では、本発明に従ったタンパク質の発現および/または分泌は、異種性シグナル配列の使用を通じて増大できる。
別の実施例では、バキュロウィルスenvelopeタンパク質のgp67分泌配列を異種性シグナル配列として使用できる(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編,John Wiley & Sons,1992年)。真核生物の異種性シグナル配列のその他の例としては、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスファターゼの分泌配列(カリフォルニア州ラホヤのストラタジーン(Stratagene(La Jolla,California))が挙げられる。さらに別の例では、有用な真核生物異種性シグナル配列として、phoA分泌シグナル(Sambrookら、前出)およびタンパク質A分泌シグナル(ニュージャージー州ピスカタウェイのファルマシアバイオテク(Pharmacia Biotech(Piscataway,New Jersey))が挙げられる。
シグナル配列は、本発明のタンパク質またはポリペプチドの分泌および単離を容易にするのに使用できる。シグナル配列は典型的に、分泌中に1つ以上の切断事象において一般に成熟タンパク質から切断される、疎水性アミノ酸コアによって特徴付けられる。このようなシグナルペプチドは、成熟タンパク質が分泌経路を通過する際に、それらからのシグナル配列の切断を可能にするプロセッシング部位を含有する。シグナル配列は、発現ベクターが形質転換された真核生物宿主などからのタンパク質の分泌を誘導し、シグナル配列は引き続いてまたは同時に切断される。次にタンパク質は、既知の方法によって細胞外の培地から容易に精製できる。代案としては、シグナル配列は、GSTドメインなどの精製を容易にする配列を使用して、関心のあるタンパク質に結合させることができる。したがって例えばポリペプチドをコードする配列は、ペプチドをコードする配列などのマーカー配列に融合されてもよく、それは融合ポリペプチドの精製を容易にする。本発明のこの態様の特定の好ましい実施態様では、マーカー配列は、特にpQEベクター(キアジェン(Qiagen,Inc.))中で提供されるtagなどのヘキサヒスチジンペプチドであり、その多くは市販されている。Gentzら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821〜824頁(1989年)で記載されているように、例えばヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の都合よい精製を提供する。HA tagは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに相当する、精製に有用な別のペプチドであり、例えばWilsonら,Cell 37:767(1984年)で記載されている。
好ましくは本発明に従った融合タンパク質は、標準組み換えDNA技術によって生成される。例えば異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片は、例えばライゲーションのための平滑末端化または付着末端化された末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じて付着末端の充填、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを採用することにより、従来の技術に従って共にフレーム内でライゲートされる。別の実施態様では、融合遺伝子は、自動化されたDNA合成機をはじめとする従来の技術によって合成できる。代案としては、2つの連続的遺伝子断片の間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して、遺伝子断片のPCR増幅を実施でき、それを引き続いてアニールおよび再増幅して、キメラ遺伝子配列を作り出せる(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,John Wiley & Sons:1992年を参照されたい)。さらに元から融合部分(例えばGSTポリペプチド)をコードする、多数の発現ベクターが市販されている。本発明に従ったポリペプチドをコードする核酸は、本発明に従ったタンパク質に融合部分がフレーム内で連結されるように、このような発現ベクターにクローンできる。
[機能的同等物]
「機能的同等物」および「機能的変異型」という用語は、本明細書で同義的に使用される。
「機能的同等物」および「機能的変異型」という用語は、本明細書で同義的に使用される。
本発明に従ったポリヌクレオチドの機能的同等物は、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、好ましくは少なくとも90%の相同性を有し、本発明に従った脂肪分解酵素の少なくとも特定の機能を示すポリペプチド、好ましくは脂肪分解活性を有するポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドである。本発明に従ったポリペプチドの機能的同等物は、配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、好ましくは少なくとも90%の相同性を有し、本発明に従った脂肪分解酵素の少なくとも1つの機能を示すポリペプチドであり、好ましくはそれは脂肪分解活性を示す。これと共に言及される機能的同等物はまた、上述のような脂肪分解活性を有する生物学的活性断片も包含する。
本発明に従ったポリペプチドの機能的同等物は、配列番号2に記載のアミノ酸配列の成熟ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸の置換、または酵素の特定の機能性に効果を与えないアミノ酸の置換、挿入または欠失を含有してもよい。したがって機能的中立アミノ酸置換は、その特定の機能性を実質的に変更しない、配列番号2に記載のアミノ酸配列の成熟ポリペプチド中の置換である。例えば本発明のタンパク質中で保存されているアミノ酸残基は、特に変更を受け入れにくいことが予測される。さらに本発明に従ったタンパク質で保存されているアミノ酸、およびその他の脂肪分解酵素は、変更を受け入れにくい可能性が高い。
本発明に従ったポリヌクレオチドの機能的同等物は、典型的に、コードされるポリペプチドの生物学的機能を変更しないサイレント変異または変異群を含有してもよい。したがって本発明は、特定の生物学的活性に必須でないアミノ酸残基の変更を含有する、本発明に従ったポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。このようなタンパク質は配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドとアミノ酸配列が異なるが、なおもその少なくとも1つの生物学的活性を保ち、好ましくはそれらは脂肪分解活性を保つ。一実施態様では本発明に従ったポリヌクレオチドの機能的同等物は、本発明に従ったポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなり、ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上相同的である、実質的に相同的なアミノ酸配列を含んでなる。一実施態様では配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物は、アミノ酸配列配列番号4に記載の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列を有するポリペプチドである(以下L02と称する)。別の実施態様では、それはアミノ酸配列配列番号6に記載の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列を有するポリペプチドであり(以下L03と称する)、なおもさらに別の実施態様では、それはアミノ酸配列配列番号8に記載の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列を有するポリペプチドである(以下L04と称する)。好ましい実施態様では、それぞれ配列番号4、配列番号6または配列番号8に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドは、それぞれ配列番号4、配列番号6または配列番号8に記載のアミノ酸配列中のアミノ酸配列34〜304である。
本発明に従ったポリペプチドをコードする本発明に従ったポリヌクレオチドの機能的同等物は、配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上相同的なポリヌクレオチド配列を含んでなる。
一実施態様では、配列番号1に記載のポリヌクレオチドと少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物は、配列番号3に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであり(DNA L02と称する)、別の実施態様ではそれは配列番号5に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであり(DNA L03と称する)、さらに別の実施態様ではそれは配列番号7に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドである(DNA L04と称する)。配列番号3に記載のポリヌクレオチド配列は配列番号4に記載のポリペプチドをコードし、配列番号5に記載のポリヌクレオチド配列は配列番号6に記載のポリペプチドをコードし、配列番号7に記載のポリヌクレオチド配列は配列番号8に記載のポリペプチドをコードする。好ましい実施態様では、配列番号3、5、7中のポリヌクレオチド100〜912は、それぞれ配列番号4、6、8中の成熟ポリペプチドをコードする。
配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに相同的なタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドは、コードされるタンパク質に1つ以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入が導入されるように、配列番号1に記載のコードヌクレオチド配列に1つ以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失を導入することで作り出せる。このような変異は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などの標準技術によって導入されてもよい。
配列番号1、3、5、7とは異なるヌクレオチド配列を有して上述の条件を満たす、脂肪分解活性を有するその他のファミリーメンバーをコードする核酸は、本発明の範囲内である。さらに配列番号2、4、6、8のアミノ酸配列の成熟ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有して上述の条件を満たす、脂肪分解活性を有するタンパク質をコードする核酸は、本発明の範囲内である。
本発明に従ったポリヌクレオチドは、好ましくは国際公開第2006/077258号パンフレットおよび/または国際公開第2008/000632号パンフレットで記載されている方法に従って、それらのコドン使用が最適化されてもよい。国際公開第2008/000632号パンフレットは、コドンペア最適化に対処する。コドンペア最適化は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をそれらのコドン使用頻度、特に使用されるコドンペアに関して変更して、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の改善された発現および/またはコードされるポリペプチドの改善された生成を得る方法である。コドンペアは、コード配列中の2つの引き続く三つ組(コドン)の組と定義される。
変異型に対応する核酸分子(例えば天然の対立遺伝子変異体)および本発明に従ったポリヌクレオチドの相同体は、好ましくは高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標準ハイブリダイゼーション技術に従って、ハイブリダイゼーションプローブとして本明細書で開示されるcDNAまたはその適切な断片を使用して、本明細書で開示される核酸とそれらの相同性に基づいて単離できる。
本発明の他の態様では、改善されたタンパク質が提供される。改善されたタンパク質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性と比べると、少なくとも1つの生物学的活性が改善されているタンパク質である。このようなタンパク質は、飽和変異誘発などによって、配列番号1のコード配列の全部または一部に沿って変異を無作為に導入して得られてもよく、得られた変異体は組み換え的に発現され、生物学的活性についてスクリーンできる。例えば脂肪分解酵素の酵素活性、ひいては改善されたタンパク質を測定する標準アッセイを提供する技術が容易に選択される。
好ましい実施態様では、本発明に従ったポリペプチドは、配列番号2中のアミノ酸34〜304に一致するアミノ酸配列を有する。別の実施態様では、ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%相同的であり、配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を保ち、好ましくはそれは脂肪分解活性を保つが、上述のような自然変動または変異誘発のためにアミノ酸配列はなおも異なる。
さらなる好ましい実施態様では、本発明に従ったタンパク質は、配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズする、単離された核酸断片によってコードされるアミノ酸配列を有し、前記ヌクレオチド配列は、好ましくは高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%相同的である。
したがって本発明に従ったタンパク質は、好ましくは配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上相同的なアミノ酸配列を含んでなり、配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの少なくとも1つの機能活性を保つタンパク質である。
本発明に従ったタンパク質の機能的同等物はまた、例えば本発明のタンパク質の変異体、例えばトランケーション変異体のコンビナトリアルライブラリーを脂肪分解酵素活性についてスクリーニングすることで同定できる。一実施態様では、変異型の多様化ライブラリーが、核酸レベルのコンビナトリアル変異誘発によって作り出される。変異型の多様化ライブラリーは、可能なタンパク質配列の縮重の組が個々のポリペプチドとして、または代案としては(例えばファージディスプレイのために)より大きな融合タンパク質の組として発現できるように、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートすることで生成できる。縮重オリゴヌクレオチド配列から、本発明のポリペプチドの可能な変異型のライブラリーを作成するのに使用できる多様な方法がある。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当該技術分野で知られている(例えばNarang(1983年)Tetrahedron 39:3頁;Itakuraら(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323頁;Itakuraら(1984年)Science 198:1056頁;Ikeら(1983年)Nucleic Acid Res.11:477頁を参照されたい)。
さらに本発明のポリペプチドコード配列の断片のライブラリーは、引き続く変異型選択スクリーニングのためのポリペプチドの多様化集団を作り出すのに使用できる。例えば分子あたり約1個のみにニッキングが起きる条件下で、関心のあるコード配列の二本鎖PCR断片をヌクレアーゼで処理して二本鎖DNAを変性し、DNAを再生して異なるニック生成物からのセンス/アンチセンスペアを含むことができる二本鎖DNAを形成し、S1ヌクレアーゼでの処理によって再編成された二本鎖から一本鎖部分を除去して、得られる断片ライブラリーを発現ベクターにライゲートすることで、コード配列断片のライブラリーを作り出すことができる。この方法によって、関心のあるタンパク質のN末端および様々なサイズの内部断片をコードする、発現ライブラリーを得ることができる。
トランケーションの点突然変異によって作られたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、そして選択された特質を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術が当該技術分野で知られている。大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニングのために、ハイスループット分析を受け入れやすい最も広く使用されている技術は、典型的に遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングするステップと、得られたベクターライブラリーで適切な細胞を形質転換するステップと、所望の活性の検出が、その生成物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現するステップを含む。ライブラリー中の機能的変異体の発生頻度を増強する技術である再帰アンサンブル変異誘発(REM)が、本発明のタンパク質の変異型を同定するスクリーニングアッセイとの併用で使用できる(ArkinおよびYourvan(1992年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811〜7815頁;Delgraveら(1993年)Protein Engineering 6(3):327〜331頁)。
本発明に従ったポリヌクレオチドの断片はまた、機能的ポリペプチドをコードしないポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなポリヌクレオチドは、PCR反応のためのプローブまたはプライマーとして機能してもよい。
本発明に従った核酸は、それらが機能的または非機能的ポリペプチドをコードするかどうかに関わりなく、ハイブリダイゼーションプローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして使用できる。本発明に従った脂肪分解活性を有するポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の用途としては、とりわけ以下が挙げられる。(1)タンパク質をコードする遺伝子、またはその対立遺伝子変異体のcDNAライブラリーからの単離、(2)Vermaら,Human Chromosomes:a Manual of Basic Techniques,Pergamon Press,New York(1988年)で記載されているような遺伝子の正確な染色体位置を提供する、分裂中期染色体スプレッドへの原位置ハイブリダイゼーション(例えばFISH)、(3)特定の組織および/または細胞中のmRNA発現を検出するためのノーザンブロット法分析、および4)所定の生物学的(例えば組織)サンプル中でプローブとハイブリッド形成できる、核酸の存在を分析する診断ツールとして使用できる、プローブおよびプライマー。
本発明に従った遺伝子の機能的同等物を得る方法もまた、本発明に包含される。このような方法は、配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと一致するタンパク質配列の全部または一部、またはそれらのいずれかの変異型をコードする単離された核酸を含む標識プローブを得るステップと、ライブラリー中の核酸断片へのプローブのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、核酸断片ライブラリーを標識プローブでスクリーニングするステップと、それによって核酸二本鎖を形成するステップと、あらゆる標識二本鎖中の核酸断片から全長遺伝子配列を調製して、本発明に従った遺伝子と関係がある遺伝子を得るステップを伴う。
[宿主細胞]
別の実施態様では、本発明は、例えば本発明に従ったポリヌクレオチドを含んでなる、または本発明に従ったベクターを含んでなる、形質転換宿主細胞または組み換え宿主細胞である細胞を特徴とする。
別の実施態様では、本発明は、例えば本発明に従ったポリヌクレオチドを含んでなる、または本発明に従ったベクターを含んでなる、形質転換宿主細胞または組み換え宿主細胞である細胞を特徴とする。
「形質転換細胞」または「組み換え細胞」は、組み換えDNA技術の手段によって、その中に(またはその原細胞中に)本発明に従った核酸が導入されている細胞である。例えば細菌、真菌、酵母などの原核および真核細胞の双方が含まれる。宿主細胞としてはまた、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38、および脈絡叢細胞系などの哺乳類細胞系も挙げられるが、これに限定されるものではない。哺乳類細胞の安定した形質移入に適したいくつかのベクターが一般に入手でき、このような細胞系を構築する方法もまた例えばAusubelら(前出)などで公に知られている。特に好ましいのは、糸状菌、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはコウジカビウ(Aspergillus oryzae)またはアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)などのアスペルギルス(Aspergillus)種からの細胞である。
特定の所望の様式で、挿入配列の発現を調節し、または遺伝子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞が選択できる。タンパク質産物のこのような修飾(例えばグリコシル化)およびプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の最適な機能を促進するかもしれない。
様々な宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾のための特徴的な特定の機序を有する。分子生物学および/または微生物学の当業者に良く知られている適切な細胞系または宿主系を選択して、外来性タンパク質産物の所望される正確な修飾およびプロセッシングを確実にできる。この目的を達成するために、一次転写産物の適切なプロセッシング、遺伝子産物のグリコシル化およびホスホリル化ための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用できる。このような宿主細胞については、当該技術分野で良く知られている。
所望ならば、上述のような細胞を本発明に従ったポリペプチドの調製において使用してもよい。このような方法は、典型的にポリペプチドをコードするコード配列の(ベクターによる)発現を提供する条件下で、(例えば上述のように発現ベクターで形質転換または形質移入された)組み換え宿主細胞を培養するステップと、細胞または培地から生成ポリペプチドを任意に回収し、より好ましくは回収して精製するステップを含んでなる。本発明のポリヌクレオチドは、例えば発現ベクターなどの組み換え複製可能なベクターに組み込むことができる。適合性宿主細胞中でベクターを使用して、核酸を複製してもよい。したがってさらなる実施態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入し、ベクターを適合性宿主細胞に導入し、ベクターの複製をもたらす条件下で宿主細胞を生育させることにより、本発明のポリヌクレオチドを作成する方法を提供する。ベクターを宿主細胞から回収してもよい。
好ましくはポリペプチドは分泌タンパク質として生成され、その場合、発現コンストラクト中のポリペプチドの成熟形態をコードするヌクレオチド配列は、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列と作動的に連結する。好ましくはシグナル配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にとって天然(相同的)である。代案としてはシグナル配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にとって外来性(異種性)であり、その場合、シグナル配列は好ましくは、本発明に従ったヌクレオチド配列が発現される宿主細胞に内在性である。酵母宿主細胞に適切なシグナル配列の例は、酵母α因子遺伝子に由来するシグナル配列である。同様に糸状菌宿主細胞のための適切なシグナル配列は、例えばA.ニガー(niger)glaA遺伝子などの糸状菌アミログルコシダーゼ(AG)遺伝子に由来するシグナル配列である。これはアミログルコシダーゼ((グルコ)アミラーゼとも称される)プロモーターそれ自体との併用で、ならびにその他のプロモーターとの併用で使用してもよい。ハイブリッドシグナル配列はまた、本発明の文脈で使用してもよい。
好ましい異種の分泌物リーダー配列は、真菌アミログルコシダーゼ(AG)遺伝子(glaA、例えばアスペルギルス(Aspergillus)からの18および24アミノ酸バージョンの双方)、α因子遺伝子(例えばサッカロミセス(Saccharomyces)およびクリヴェロミセス(Kluyveromyces)などの酵母)またはα−アミラーゼ遺伝子(バシラス(Bacillus))を起源とするものである。
ベクターを上述のような適切な宿主細胞に形質転換または形質移入して、本発明のポリペプチドの発現を提供してもよい。この過程は、ポリペプチドをコードするコード配列のベクターによる発現を提供する条件下で、前述のような発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップを含んでなってもよい。
したがって本発明は、ポリヌクレオチドまたは本発明のベクターで形質転換または形質移入された、またはそれを含んでなる宿主細胞を提供する。好ましくはポリヌクレオチドの複製および発現のために、ポリヌクレオチドはベクター内で運ばれる。細胞は前記ベクターに適合するように選択され、例えば原核生物(例えば細菌)、真菌、酵母または植物細胞であってもよい。
本発明のポリペプチドが、利用を妨げるかもしれない酵素活性を実質的に含まない形態で、例えばデンプン分解、セルロース分解またはヘミセルロース分解酵素を含まない形態で生成される、異種の宿主もまた選択されてもよい。これは常態ではこのような酵素を産生しない宿主を選択することで、達成されてもよい。
本発明は、ポリペプチドをコードするDNA配列の組み換え発現の手段によって、本発明のポリペプチドを生成する方法を包含する。この目的のために、本発明のDNA配列は、適切な相同的なまたは異種の宿主細胞中でのポリペプチドの経済的生産を可能にするために、遺伝子増幅および/またはプロモーター、分泌シグナル配列などの発現シグナル交換のために使用できる。相同的な宿主細胞とは、それにDNA配列が由来する種と同一種であり、または同一種内の変異型である宿主細胞である。
適切な宿主細胞は、好ましくは細菌などの原核微生物、またはより好ましくは例えば酵母または糸状菌などの真菌、または植物細胞などの真核生物である。操作がより容易であることことから、一般に酵母細胞が真菌細胞よりも好ましい。しかしいくつかのタンパク質は酵母からの分泌が不良であり、または場合によっては適切にプロセッシングされない(例えば酵母中での過グリコシル化)。これらの場合、真菌宿主生物を選択すべきである。
宿主細胞はポリペプチドを過剰発現してもよく、過剰発現を画策する技術については良く知られている。したがって宿主は、ポリヌクレオチドをコードする2つ以上のコピーを有してもよい(したがってベクターはそれに応じて2つ以上のコピーを有してもよい)。
したがって本発明の一実施態様では、本発明に従った組み換え宿主細胞は、本発明に従ったポリヌクレオチドまたはベクターを発現または過剰発現できる。
本発明に従って、従来の栄養素発酵培地中における、1つ以上の本発明のポリヌクレオチドで形質転換されている本発明に従った宿主細胞の培養によって、本発明のポリペプチドの生成をもたらすことができる。
本発明に従った組み換え宿主細胞は、当該技術分野で知られている手順を使用して培養されてもよい。プロモーターと宿主細胞の各組み合わせのためには、ポリペプチドをコードするDNA配列の発現に貢献する培養条件が利用できる。所望の細胞密度またはポリペプチド力価に達した後、培養を停止し、ポリペプチドを既知の手順を使用して回収する。
発酵培地は、炭素源(例えばグルコース、マルトース、糖蜜など)、窒素源(例えば硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウムなど)、有機窒素源(例えば酵母抽出物、麦芽エキス、ペプトンなど)、および無機栄養源(例えばリン酸塩、マグネシウム、カリウム、亜鉛、鉄など)を含有する、既知の培地を含んでなることができる。
適切な培地の選択は、発現宿主の選択に基づいてもよく、および/または発現コンストラクトの調節要件に基づいてもよい。このような培地は当業者に知られている。培地は所望ならば、その他の潜在的汚染微生物よりも形質転換された発現宿主にとって有利な、追加的構成要素を含有してもよい。
発酵は、0.5〜30日間にわたって実施できる。それは適切には、例えば約0〜45℃の範囲の温度および/または例えば約2〜約10のpHにおけるバッチ、連続、または流加工程であってもよい。好ましい発酵条件は、約20〜約37℃の範囲の温度および/または約3〜約9のpHである。適切な条件は、通常、発現宿主および生成されるタンパク質の選択に基づいて選択される。
発酵後、必要ならば、遠心分離または濾過の手段によって細胞を発酵ブロスから除去できる。次に発酵停止後、または細胞除去後、本発明のポリペプチドを回収してもよく、所望ならば、従来の手段によって精製および単離してもよい。
[産業工程における脂肪分解酵素の使用]
本発明はまた、いくつかの産業工程における本発明に従った脂肪分解酵素の使用に関する。これらの工程で得られた長期的経験にもかかわらず、本発明に従った脂肪分解酵素は目下使用されている酵素に優るいくつかの顕著な利点を特徴とする。特定の応用次第で、これらの利点としては、より低い製造コスト、基質に対するより高い特異性、より少ない抗原性、より少ない望ましくない副活性、適切な微生物中で生成した際のより高い収率、より適切なpHおよび温度範囲、最終製品のより良い味ならびに食品等級およびコーシャの側面などの側面が挙げられる。
本発明はまた、いくつかの産業工程における本発明に従った脂肪分解酵素の使用に関する。これらの工程で得られた長期的経験にもかかわらず、本発明に従った脂肪分解酵素は目下使用されている酵素に優るいくつかの顕著な利点を特徴とする。特定の応用次第で、これらの利点としては、より低い製造コスト、基質に対するより高い特異性、より少ない抗原性、より少ない望ましくない副活性、適切な微生物中で生成した際のより高い収率、より適切なpHおよび温度範囲、最終製品のより良い味ならびに食品等級およびコーシャの側面などの側面が挙げられる。
好ましくは脂肪分解活性を有する単離された本発明に従ったポリペプチドは、食品産業において、より好ましくは食品製造において使用できる。
[乳製品応用]
好ましい一実施態様では、本発明に従ったポリペプチドは乳業で使用できる。
好ましい一実施態様では、本発明に従ったポリペプチドは乳業で使用できる。
一実施態様では、本発明に従ったポリペプチドは、乳製品、好ましくはチーズ、チーズ様製品、EMC、または乳脂肪由来遊離脂肪酸混合物の製造で使用され、好ましくは乳製品の風味を生成しおよび/または増強させる。
本発明の文脈で「乳製品」とは、チーズ、バター、EMC、クリーム、乳製品類似体などをはじめとするがこれに限定されるものではない、あらゆる種類のミルクベースの製品を指す。本文脈で特に興味深いのは、普通のチーズ、アナログチーズ、プロセスチーズ、バター、スプレッド、マーガリン、EMCなどをはじめとする、乳脂肪含有製品およびそれらの同等物である。
好ましい実施態様では、乳製品はチーズである。チーズは、例えばチェスター、ダンボ、マンチェゴ、サン・ポーラン、チェダー、モントレー、コルビー、エダム、ゴーダ、ムンスター、スイスタイプ、グリュイエール、エメンタール、パルメザン、ペコリーノ、プロヴォローネ、およびロマーノなどの硬質チーズと、フェタなどのカードチーズと、モツァレラなどのパスタフィラータチーズと、プロセスチーズと、ブリーおよびカマンベールなどの白カビチーズ、またはゴルゴンゾラおよびデンマークブルーチーズなどの青カビチーズと、または例えばリコッタ、クリームチーズ、ヌシャテルまたはカテージチーズなどのフレッシュチーズなどのあらゆる種類であってもよい。この文脈で好ましいタイプのチーズは、パルメザン、ペコリーノ、プロヴォローネ、ロマーノ、フェタである。
「乳製品類似体」という用語は、組成物の一部として脂肪(例えばクリームなどの乳脂肪)を含有する乳製品様製品を指し、それは組成物の一部として例えば植物油などの非乳構成物をさらに含有する。
本発明はまた、本発明に従った単離されたポリペプチドが、乳製品の製造において使用される乳製品組成物に添加される、乳製品を調製する方法に関する。
本発明の文脈で乳製品組成物とは、乳および/または1つ以上の乳構成要素および/または本発明に従った乳製品の生産における出発組成物である乳画分を含んでなる組成物であってもよく、またはそれは乳製品(例えばカードまたは乳清)の生産における中間生成物であってもよい。乳製品組成物は脂肪分解酵素の適切な基質であり、したがって乳製品組成物は、少なくとも乳脂肪および/または例えば植物由来脂肪などのその他の脂肪を含んでなる。本発明に従った脂肪分解酵素は、乳製品組成物中に存在するグリセリド中のエステル結合の加水分解を触媒でき、したがってそれらはリパーゼ活性を有する。グリセリドは、グリセロールおよび脂肪酸のエステルである。トリグリセリド(トリアシルグリセロールまたはトリアシルグリセリドとしてもまた知られている)は、主に植物油および動物脂肪中に存在する。リパーゼ(EC 3.1.1.3)は、本明細書で脂質から脂肪酸の1つ以上を加水分解する酵素と定義され、より具体的にはそれらはグリセロールの脂肪酸および水酸基の間のエステル結合を加水分解する。
乳構成要素は、乳脂肪、乳タンパク質、カゼイン、乳清タンパク質、乳糖などの乳のあらゆる構成物であってもよい。乳画分は、例えば脱脂乳、バターミルク、乳清、クリーム、バター、限外濾過処理乳、粉乳、全脂粉乳、粉末バターミルク、または脱脂粉乳などの乳のあらゆる画分であってもよい。本文脈中では、乳は、あらゆる哺乳類の乳糜管分泌物であってもよい。したがって乳は、雌牛、ヒツジ、ヤギ、バッファロー、またはラクダを搾乳して得られてもよい。
本発明のこの態様の方法によって製造される乳製品は、当該技術分野で知られているあらゆる適切な方法によって製造されてもよく、脂肪分解酵素は、乳製品の製造におけるあらゆる適切な工程で、例えば酵素がその脂肪分解活性を発揮するのに十分な酵素濃度、温度、および時間などの適切な条件下で、乳製品組成物に添加される。
一実施態様では、本発明に従った方法は、チーズを製造する方法である。この場合、方法はレンネットを用いた乳製品組成物の酵素的凝固によって、または食品等級酸または乳酸細菌成長によって生成される酸を用いた酸性凝固によってカードが形成さるステップと、それが引き続いて乳清から分離されるステップを含んでなる。製造されるチーズのタイプ次第で、チーズの製造は、カードを加工して得られたチーズを熟成させるステップをさらに含んでなってもよい本発明のこの態様に従ってチーズを製造する方法は、好ましくは得られたチーズを熟成させるステップを含む。脂肪分解酵素は、チーズ調製の様々な段階で、乳製品組成物に添加できる。好ましくは酵素は、凝固剤(例えばキモシン)の添加に先だって、またはそれと共に乳に添加される。この時点での添加は、チーズ全体にわたる酵素の均質な分布を確実にする。代案としては酵素は後の段階で、例えばカードに添加できるが、これはチーズ中の不均質な酵素分布のリスクをもたらす。その理由から乳への酵素の添加が好ましい。
別の実施態様では、本発明に従った乳製品を製造する方法は、遊離脂肪酸混合物を生じる乳脂肪(例えばバター脂肪またはクリーム)の脂肪分解によって得られる、乳脂肪由来遊離脂肪酸混合物の製造であり、これは例えばブルーチーズ風味など例えば風味付けに使用できる。これらの遊離脂肪酸混合物は、例えばスプレッド、スープ、ドレッシング、スナック、チップ、ナッチョ)などのその他の製品の製造において、風味成分として使用できる。その他のリパーゼ用途としては、調製粉乳中での使用が挙げられる(Kilara,「Encyclopedia of Dairy Sciences」より,(2003年;Foxら編,Academic Press)914〜918頁)。
さらに別の実施態様では、本発明に従った乳製品を製造する方法は、EMCを製造する方法である。この場合、方法は典型的に、当業者に知られているを条件使用して実施できる(例えば「Industrial Enzymology」,第2版,Godfrey,West編,MacMillan Press,London,1996年の第2.12章;Wilkinsonら,「Encyclopedia of Dairy Sciences」より,(2003年;Foxら編,Academic Press)434〜438頁を参照されたい)。
上述の方法のいずれか1つで、添加する酵素の量は酵素活性および最終製品中の所望の風味効果に左右される。当業者は用量反応曲線を使用して、用途で使用される量を測定できる。このアプローチでは、増大する量の酵素が乳製品組成物に添加され、引き続いて訓練された味覚パネルにより最終製品中の風味プロフィールの強度が分析される。
本発明に従った使用の、または本発明に従った乳製品を製造する方法の好ましい実施態様では、風味の生成および/または増強のために本発明に従った脂肪分解酵素が使用される。乳製品の製造中の風味生成は、特に、乳製品の製造中に使用される微生物によって産生されるか、または製造中に特に添加されるかに関わらず、酵素の作用に起因し、より具体的には脂肪分解およびタンパク質分解酵素の作用に起因する。
脂肪分解酵素は、乳製品中に存在する乳脂肪の脂肪分解、および結果的な遊離脂肪酸混合物(以下FFAと表す)の製品中への放出の原因である。遊離脂肪酸混合物の組成物は、部分的に乳製品の最終風味の原因である。乳脂肪を含有する基質に始まって、脂肪分解酵素はC4〜C18含有遊離脂肪酸の特定のFFA混合物を生じ、混合物中の各構成要素の相対量は、トリグリセリド中に存在するC4〜C18含有脂肪酸を伴う特定のトリグリセリドエステル結合の加水分解に対する酵素の特異性に左右される。例えばC4含有脂肪酸に対する高特異性を有する脂肪分解酵素は、C6〜C18含有脂肪酸よりもC4含有脂肪酸があるトリグリセリド部分のトリグリセリドエステル結合を優先的に加水分解し、C6〜C18含有遊離脂肪酸の相対含量と比べると、混合物中のC4含有遊離脂肪酸の相対含量がより高くなるであろう。さらに混合物中の各構成要素の相対量はまた、出発基質、およびその中に存在するトリグリセリドの組成にも左右されるであろう。あらゆる脂肪酸は、製品に特定の風味特性を与える原因であるので、酵素が反応するのに十分な酵素濃度、温度、および時間の条件下において、特定の乳脂肪を含有する基質が脂肪分解酵素作用を受けると、特定の風味プロフィールを生じる特定のFFA混合物が基質中に生成する。遊離脂肪酸の放出に対するいくつかの脂肪分解酵素の特異性、ひいては生成される風味プロフィールは、同一基質を使用した各酵素のFFAプロフィールの判定によって互いに比較できる。FFAプロフィールは、基質に対する脂肪分解酵素の作用によって放出される遊離脂肪酸総量に対する、各C4〜C18含有遊離脂肪酸の相対量を与える。FFAプロフィールは、一般に出発基質、脂質組成物中の脂肪酸置換基に対する脂肪分解酵素の特異性に依存するであろう。
脂肪転換の程度(D)は、次のように計算される(%で表される):
D=[(脂肪分解酵素処理組成物中の総FFA量)−(未処理組成物中の総FFA量)]/(組成物中に存在する総脂肪酸)。総FFA量および総脂肪酸量は、mol/kg基質で表される。
D=[(脂肪分解酵素処理組成物中の総FFA量)−(未処理組成物中の総FFA量)]/(組成物中に存在する総脂肪酸)。総FFA量および総脂肪酸量は、mol/kg基質で表される。
基質から開始してFFAプロフィールを判定する適切な方法については、実施例で述べる。
本発明に従った脂肪分解酵素は好ましくは、より長鎖の遊離脂肪酸、すなわちC12〜C18含有遊離脂肪酸の放出と比べると、短鎖遊離脂肪酸、すなわちC4〜C10含有遊離脂肪酸、好ましくはC4含有遊離脂肪酸の放出に対するより高い特異性を有する。好ましい実施態様では、本発明に従った脂肪分解酵素は、C12〜C18含有遊離脂肪酸と比べると、特異性比(Rspec)で表されるC4〜C10含有遊離脂肪酸に対する特異性の程度が、少なくとも0.7、好ましくは少なくとも0.8、0.9、1、1.1、1.5、1.7、2、2.5、3である。一般にRspecは到達可能な限りに高い。
Rspecは次のように計算できる:
Rspec=ΣC4〜C10相対含量/ΣC12〜C18相対含量
式中、「ΣC4〜C10相対含量」とは、脂肪分解酵素で処理された組成物中に存在するC4含有、C6含有、C8含有、およびC10含有遊離脂肪酸の相対含量の和であり、「ΣC12〜C18相対含量」とは、脂肪分解酵素で処理された組成物中に存在するC12含有、C14含有、C16含有、およびC18含有遊離脂肪酸の相対含量の和である。
Rspec=ΣC4〜C10相対含量/ΣC12〜C18相対含量
式中、「ΣC4〜C10相対含量」とは、脂肪分解酵素で処理された組成物中に存在するC4含有、C6含有、C8含有、およびC10含有遊離脂肪酸の相対含量の和であり、「ΣC12〜C18相対含量」とは、脂肪分解酵素で処理された組成物中に存在するC12含有、C14含有、C16含有、およびC18含有遊離脂肪酸の相対含量の和である。
Xが4、6、8、10、12、14、16、18のいずれかであることができる「Cx相対含量」は、脂肪分解酵素で処理された組成物中に存在する遊離脂肪酸総量に対する、脂肪分解酵素で処理された組成物中のCx含有遊離脂肪酸量の百分率(%)に相当する。前述の式中のFFA(または遊離脂肪酸)の量はmol/kgで表される。
Rspecは、短期熟成チーズ(好ましくはチェダーまたはゴーダチーズ、好ましくは熟成期間が2週間未満の短期熟成チーズ)を使用して、製造された乳製品組成物中で測定され、脂肪分解酵素は、インキュベートされたサンプル中に5%〜25%の脂肪転換の程度をもたらす(用量、インキュベーション期間、およびインキュベーション温度などの)条件下でインキュベートされ、脂肪転換の程度は上述の通りに計算される。
本発明はまた、本発明に従った方法によって得られる乳製品に関する。
本発明に従ったあらゆる単離されたペプチドの使用、または本発明に従った乳製品の製造方法の好ましい実施態様では、ΣC4〜C10相対含量/ΣC12〜C18相対含量は少なくとも0.7であり、好ましくは少なくとも0.8、0.9、1、1.1、1.5、1.7、2、2.5、3である。例えば反芻動物前胃エステラーゼで処理されたパルメザンチーズでは、この比率はおよそ1.7である(D.T.Lai,A.D.Mackenzie,C.J.O’Connor,K.W.Turner J.Dairy Sci.80:2249〜2257頁(1997年),2255頁のデータから計算される)。「C4〜C10相対含量」および「Σ相対C12〜C18」は、上と同じ意味を有する。
当該技術分野では、脂肪分解酵素が乳脂肪を含有する基質に作用すると、主として短鎖脂肪酸(例えばC4およびC6を含有する脂肪酸)を放出し、これはぴりっと辛くシャープでスパイシーなツーンとする風味の発生をもたらす一方で、例えば中鎖脂肪酸の放出は石鹸のような味をもたらすことが知られている。
したがって本発明の使用、または本発明に従った乳製品の製造方法の好ましい実施態様では、乳製品の風味プロフィールにおいてシャープでツーンとする匂いのスパイシーな香気が増大し、好ましくは乳製品の風味プロフィール中の石鹸のような香気は減少する。
本発明のさらなる態様は、本発明に従った乳製品を調製する方法によって得られる乳製品に関する。適切な乳製品の例は、本発明の先行する態様で言及されたものである。
[製パン用途]
食品中における本発明に従った脂肪分解酵素の産業上の利用の別の例は、生地および/またはベークド製品の質を改善するための製パン用途におけるその使用である。
食品中における本発明に従った脂肪分解酵素の産業上の利用の別の例は、生地および/またはベークド製品の質を改善するための製パン用途におけるその使用である。
意外にも、本発明に従った脂肪分解酵素は、製パン用途においてグリセリド(例えばトリグリセリド)、リン脂質、またはガラクト脂質などの糖脂質に及ぶ、いくつかのタイプの脂質に作用できることが分かった。
より具体的には、本発明に従った脂肪分解酵素は、生地で使用すると原位置で次の特性の少なくとも1つを示す。
●無極性脂質に対する比較的低い活性。
●極性ジアシル脂質に対する、少なくともジアシルガラクト脂質に対する比較的高い活性。
●リゾガラクト脂質およびリゾリン脂質などの極性モノアシル化合物に対する比較的低い活性。
●無極性脂質に対する比較的低い活性。
●極性ジアシル脂質に対する、少なくともジアシルガラクト脂質に対する比較的高い活性。
●リゾガラクト脂質およびリゾリン脂質などの極性モノアシル化合物に対する比較的低い活性。
生地中で化学乳化剤の代替物として使用した場合、これらの意外な特性は全て極めて有利であることが分かった。
グリセリドおよびリパーゼについては、上で定義した。
糖脂質(例えばガラクト脂質)は、外側(sn−1)および中央(sn−2)の位置に2つのエステル化脂肪酸があるグリセロール主鎖からなる一方、第3の水酸基は、例えばモノガラクトシルジグリセリドまたはジガラクトシルジグリセリドなどのガラクト脂質の場合はガラクトースなどの糖残基に結合する。ガラクトリパーゼ(EC3.1.1.26)は、ガラクトシルジグリセリドから、それぞれsn−1およびsn−2位の1つまたは双方の脂肪酸アシル基の加水分解を触媒する。
リン脂質は、外側(sn−1)および中央(sn−2)の位置に2つのエステル化脂肪酸があるグリセロール主鎖からなる一方、グリセロールの第3の水酸基はリン酸でエステル化される。リン酸は、次に例えばアミノアルコール様エタノールアミン(ホスファチジルエタノールアミン)、コリン(ホスファチジルコリン)にエステル化されてもよい。ホスホリパーゼは本明細書で、リン脂質中の1つ以上の結合の加水分解に関与する酵素と定義される。
グリセロール主鎖脂肪酸アシル部分に連結するエステル結合を加水分解する、いくつかのタイプのホスホリパーゼ活性を区別できる。
●ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)およびA2(EC3.1.1.4)は、ジアシルグリセロリン脂質からそれぞれsn−1およびsn−2位置において1つの脂肪酸アシル基の脱アシル化を触媒して、リゾリン脂質を生成する。これは乳化剤代替物質にとって望ましい活性である。
●リゾホスホリパーゼ(EC3.1.1.5−Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology (Enzyme Nomenclature,Academic Press,New York,1992年))によってホスホリパーゼBとも称される)は、リゾリン脂質中の残る脂肪酸アシル基の加水分解を触媒する。ジアシルグリセロリン脂質からの双方の脂肪酸の脱アシル化を触媒して、リゾホスホリパーゼ活性を内在性に有するアオカビ(Penicillium notatum)からのホスホリパーゼBが報告されている(Saitoら,1991年,Methods in Enzymology 197:446〜456頁)。極性頭部および無極性尾部の組み合わせの欠失をもたらし、得られた生成物は表面特性に影響できなくなことから、乳化剤代替物質にとってリゾホスホリパーゼ活性は望ましくない。意外にも本発明に従った脂肪分解酵素は、生地中で比較的低いリゾホスホリパーゼ活性を示すことが示された。
●ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)およびA2(EC3.1.1.4)は、ジアシルグリセロリン脂質からそれぞれsn−1およびsn−2位置において1つの脂肪酸アシル基の脱アシル化を触媒して、リゾリン脂質を生成する。これは乳化剤代替物質にとって望ましい活性である。
●リゾホスホリパーゼ(EC3.1.1.5−Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology (Enzyme Nomenclature,Academic Press,New York,1992年))によってホスホリパーゼBとも称される)は、リゾリン脂質中の残る脂肪酸アシル基の加水分解を触媒する。ジアシルグリセロリン脂質からの双方の脂肪酸の脱アシル化を触媒して、リゾホスホリパーゼ活性を内在性に有するアオカビ(Penicillium notatum)からのホスホリパーゼBが報告されている(Saitoら,1991年,Methods in Enzymology 197:446〜456頁)。極性頭部および無極性尾部の組み合わせの欠失をもたらし、得られた生成物は表面特性に影響できなくなことから、乳化剤代替物質にとってリゾホスホリパーゼ活性は望ましくない。意外にも本発明に従った脂肪分解酵素は、生地中で比較的低いリゾホスホリパーゼ活性を示すことが示された。
小麦粉はおよそ2.2〜2.9%の脂質を含有する。小麦粉脂質は、デンプン脂質(0.8〜0.9%)および非デンプン脂質(1.4〜2.0%)に分割できる。デンプン脂質が主に極性リゾリン脂質からなるのに対し、非デンプン脂質は約40%の中性トリグリセリドおよび40%の極性リン脂質および糖脂質からなる。小麦粉画分の最適化のために本発明に従ったリパーゼを添加することで、本発明に従ったリパーゼは生地中の原位置で、リン脂質および糖脂質、より具体的にはガラクト脂質である極性脂質を加水分解できる。
ベーキング酵素は、多様なベークド製品で使用してもよい。「ベークド製品」という用語は、本明細書で型焼きパン、ローフパン、フランスパンならびにロールなどのパン製品、デニッシュペーストリー、クロワッサンまたはパフペーストリー製品などの積層生地製品、ケーキ、パイ、マフィン、イーストドーナツおよびケーキドーナツなどを含んでなると定義される。
本発明に従った脂肪分解酵素は、例えばベークド製品中で使用できる。パンなどのベークド製品は生地から調製される。したがって本発明の一実施態様は、生地の調製における単離された本発明に従ったポリペプチドの使用を提供し、本発明に従ったポリペプチドを含んでなる生地を提供する。本発明はまた、本発明に従ったポリペプチドを生地成分の少なくとも1つに添加するステップを含んでなる、生地の調製を提供する。生地は、通常、基本成分である(小麦)粉、水、および任意に塩からできている。ベークド製品次第で、添加されるその他の成分は、砂糖、香味料などであってもよい。膨張製品では、酸(酸発生化合物)および炭酸水素塩の組み合わせなどの化学的膨張システムに次いで、主にパン用酵母が使用される。
酵母、酵素、および化学添加剤は、一般に生地に別々に添加される。
酵素は、例えば顆粒形態などの乾燥状態で、または液体形態で添加されてもよい。化学添加剤はほとんどの場合、粉末形態で添加される。また特定のベーキング用途の目的に合わせた加工助剤組成物は、化学添加剤および酵素の専用混合物から構成されてもよい。
上述の成分および加工助剤からの生地の調製については当該技術分野で良く知られており、前記成分と加工助剤の混合、および1つ以上の型込めおよび発酵工程を含んでなる。
このような生地からのベークド製品調製についてもまた、当該技術分野で良く知られており、生地の型込めおよび成形およびさらなる発酵と、それに続く必要とされる温度および焼成時間での焼成を含んでなってもよい。一実施態様では本発明は、本発明に従った生地を焼成するステップを含んでなる、ベークド製品を調製する方法を提供する。本発明はまた、この方法に従って得られるベークド製品を提供する。好ましくは本発明に従ったベークド製品は、パンである。
本発明はまた、ポリペプチドが組み込まれていない生地またはベークド製品と比較して、生地または生地から得られるベークド製品の1つ以上の特性を改善する、有効量の本発明の脂肪分解酵素を生地に組み込むステップを含んでなる、生地またはベークド製品を調製する方法に関する。
「生地への組み込み」という語句は、本明細書で本発明に従った脂肪分解酵素を生地に、それから生地が作られるあらゆる成分に、および/またはそれから生地が作られる生地成分のあらゆる混合物に添加することと定義される。換言すれば、本発明に従った脂肪分解酵素は、生地調製のあらゆる工程で添加されてもよく、1つ、2つまたはそれ以上の工程で添加されてもよい。本発明に従った脂肪分解酵素は、当該技術分野で良く知られている方法を使用して、混捏および焼成してベークド製品を作る生地成分に添加される。例えば米国特許第4,567,046号明細書、欧州特許出願公開第A−426,211号明細書、特開昭60−78529号公報、特開昭62−111629号公報、および特開昭63−258528号公報を参照されたい。
「有効量」とという用語は、本明細書で生地および/またはベークド製品の関心のある少なくとも1つの特質に対する測定可能効果を提供するのに十分な、本発明に従った脂肪分解酵素の量と定義される。
「特質改善」という用語は、本明細書で、本発明に従った脂肪分解酵素が組み込まれていない生地または製品と比較して、本発明に従った脂肪分解酵素の作用によって改善される、生地および/または生地から得られる製品の、特にベークド製品のあらゆる特質と定義される。特質改善としては、生地強度増大、生地弾性増大、生地安定性増大、生地粘性低下、生地伸展性改善、生地機械加工適性改善、ベークド製品体積増大、ベークド製品風味改善、ベークド製品クラム構造改善、ベークド製品クラム柔らかさ改善、ベークド製品気泡形成低下および/またはベークド製品老化防止改善が挙げられるが、これに限定されるものではない。
特質改善は、実施例で後述する本発明の方法に従って、本発明のポリペプチドの添加ありまたはなしで調製された生地および/またはベークド製品の比較によって判定されてもよい。官能特性は製パン工業において確立された手順を使用して評価されてもよく、例えば訓練された味覚テスターのパネルの使用を含んでもよい。
「生地強度増大」という用語は、本明細書で、一般により弾性がある特性を有し、および/または型込めおよび成形のためにより多くの作業入力を必要とする生地の特質と定義される。
「生地弾性増大」という用語は、本明細書で、物理的歪みを受けた後に、その元の形状を取り戻す傾向がより高い生地の特質と定義される。
「生地安定性増大」という用語は、本明細書で、機械的損傷を被りにくく、したがってその形状および体積を保つ生地の特質と定義され、通常および/または延長発酵後のローフ断面の高さ:幅の比率によって評価される。
「生地粘性低下」という用語は、本明細書で、例えば生地生産機械内の表面に付着する傾向がより低い生地の特質と定義され、熟練した試験パン職人によって経験的に評価され、あるいは当該技術分野で知られているようなテクスチャー分析器(例えばTAXT2)の使用によって測定される。
「生地伸展性改善」という用語は、本明細書で、裂け目なしに増大した歪みまたは伸張を受けることができる生地の特質と定義される。
「生地機械加工適性改善」という用語は、本明細書で、一般により低粘着性でおよび/またはより堅くおよび/またはより弾性である生地の特質と定義される。
「ベークド製品体積増大」という用語は、当該技術分野で知られているような超音波またはレーザー検出を使用して、自動化パン体積分析器(例えばスウェーデン国(Sweden)VikenのTexVol Instruments ABからのBVM−3)によって判定される、所定のパンローフの体積として測定される。
「ベークド製品気泡形成低下」という用語は、本明細書で、視覚的に判定される焼成パン外皮の水泡の減少と定義される。
「ベークド製品クラム構造改善」という用語は、本明細書でクラム中により細かいセルおよび/またはより薄いセル壁があり、および/またはクラム中により均一/均質のセル分布があるベークド製品の特質と定義され、通常、パン職人によって、または当該技術分野で知られているようなデジタル画像分析によって(例えば英国ウォリントンのアップルトン(Appleton,Warrington,UK)のCalibre Control International LtdからのC−cell)視覚的に評される。
「ベークド製品柔らかさ改善」という用語は、「堅さ」の反対であり、本明細書で、より容易に圧縮されるベークド製品の特質と定義され、熟練した試験パン職人によって経験的に評価され、または当該技術分野で知られているようなテクスチャー分析器(例えばTAXT2)の使用によって測定される。
「ベークド製品風味改善」という用語は、訓練された試験パネルによって評価される。
「ベークド製品老化防止改善」という用語は、本明細書で、保存中に例えば柔らかさおよび/または弾性などの品質パラメーターの劣化速度が低下しているベークド製品の特性と定義される。
「サクサク感改善」という用語は、本明細書で、当該技術分野で知られているような参考製品よりもさらにサクサクした感覚を与え、ならびにこのよりサクサクした感覚を参考製品よりもさらに長期間保つ、ベークド製品の特質と定義される。この特質は、例えばテクスチャー分析器TA−XT Plus(英国サリーのStable Micro Systems Ltd)を使用して、圧縮実験中に固定速度で力対距離曲線を測定し、この圧縮曲線から物理的パラメーター、すなわち(i)第1のピーク力、(ii)第1のピーク距離、(iii)初期傾斜、(iv)最大ピーク力、(v)グラフ下面積、および(vi)断裂事象の総計(特定の事前設定値よりも大きい力の低下)を得ることで定量化できる。サクサク感改善の徴候は、第1のピークのより大きい力、第1のピークのより短い距離、より高い初期傾斜、最大ピークのより大きい力、より大きなグラフ下面積、およびより多数の断裂事象である。よりサクサクした製品は、参考製品と比較して、これらのパラメーターの少なくとも2つにおいて統計的に有意に得点がより良くあるべきである。当該技術分野で、「サクサク感」はまた、パリパリ感、カリカリ感またはクラスト感とも称され、サクサクして、カリカリし、またはクラスト破砕挙動がある物質を意味する。
本発明は、生地の強度増大、弾性増大、安定性増大、粘性低下、および/または伸展性改善からなる群から選択される特性改善の少なくとも1つを有する、本発明に従った生地を提供する。
本発明はまた、ローフ体積が増大した本発明に従ったベークド製品を提供する。本発明は、体積増大、風味改善、クラム構造改善、クラム柔らかさ改善、サクサク感改善、気泡形成低下および/または老化防止改善からなる群から選択される少なくとも1つの特質改善を有する、本発明に従ったベークド製品もまた提供する。
「生地」という用語は、本明細書で混捏または圧延するのに十分堅い穀粉およびその他の成分の混合物と定義される。生地は、新鮮、冷凍、調整済み、または予備焼成済みであってもよい。冷凍生地の調製については、KulpおよびLorenzによって「Frozen and Refrigerated Doughs and Batters」で記載されている。
「ベークド製品」という用語は、本明細書で柔らかいまたは砕けやすい性質のどちらかの生地から調製されるあらゆる製品と定義される。精白、軽質または全粒タイプに関わらず、有利には本発明によって生成されてもよいベークド製品の例は、典型的にローフまたはロール形態のパン(特に精白、全粒またはライ小麦パン)、フレンチバゲットタイプパン、ペーストリー、クロワッサン、パスタ、麺類(茹でたまたは炒めた、揚げた)、ピタパン、トルティーヤ、タコス、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クッキー、ドーナツ、ぺーグル、パイ皮、蒸しパン、およびクリスプブレッドなどである。
本発明の脂肪分解酵素および/または本発明の方法で使用される追加的酵素は、例えば乾燥粉末、凝集粉、または顆粒、特に非粉塵性顆粒、液体、特に安定化液体、または国際公開第01/11974号パンフレットおよび国際公開第02/26044号パンフレットで記載されているような保護される酵素の形態など、件の使用に適したあらゆる形態であってもよい。顆粒および凝集粉は、従来の方法によって、例えば流動床造粒機内で本発明に従った脂肪分解酵素をキャリア上に噴霧することで調製されてもよい。キャリアは、適切な粒度を有する微粒子コアからなってもよい。キャリアは可溶性または不溶性であってもよく、例えば塩(NaClまたは硫酸ナトリウムなど)、糖(スクロースまたは乳糖など)、糖アルコール(ソルビトールなど)、デンプン、米粉、小麦粉、挽き割りトウモロコシ、マルトデキストリン、ダイズなどであってもよい。本発明に従った脂肪分解酵素および/または追加的酵素は、徐放製剤中に含有されてもよい。徐放製剤を調製する方法は、当該技術分野で良く知られている。確立された方法に従って、糖、糖アルコールまたは別のポリオール、および/または乳酸または別の有機酸などの栄養的に許容可能な安定剤を添加することで、例えば液体酵素調製品が安定化されるかもしれない。
本発明に従った脂肪分解酵素はまた、欧州特許出願公開第A−0619947号明細書、欧州特許出願公開第A−0659344号明細書、および国際公開第02/49441号パンフレットで開示されるような組成物を含んでなる酵母に組み込むことができる。
穀物粉のプレミックス中への包含のためには、本発明に従ったポリペプチドが例えば非粉塵性顆粒などの乾燥製品の形態であることが有利である一方、液体と共に包含するためには、それは有利には液体形態である。
1つ以上の追加的酵素もまた、生地に組み込んでよい。したがって本発明は、本発明に従った脂肪分解酵素と1つ以上の追加的酵素とを含んでなるベーキング酵素組成物を提供する。追加的酵素は哺乳類および植物をはじめとするいかなる起源であってもよく、好ましくは微生物(細菌、酵母または真菌)起源であり、当該技術分野において従来法で使用される技術によって得られてもよい。
好ましい実施態様では、追加的酵素は、アルファ−アミラーゼ(酵母により発酵可能な糖を得て、老化を遅延させるのに有用)、ベータ−アミラーゼ、マルトース生成アミラーゼまたは非マルトース生成アミラーゼのようなアミラーゼ;シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ;プロテアーゼ;ペプチダーゼ、とりわけエクソペプチダーゼ(風味増強において有用);トランスグルタミナーゼ;リパ−ゼ(生地または生地成分中に存在する脂質を改変して生地を軟質化させるのに有用);ガラクトリパーゼ;ホスホリパ−ゼ;セルラーゼ;ヘミセルラーゼ;特にキシラナーゼのようなペントサナーゼ(ペントサン、より具体的にはアラビノキシランの部分加水分解において有用であり、これは生地の延伸性を増大させる);プロテアーゼ(とりわけ硬質小麦粉を使用する場合のグルテン弱化において有用);プロテインジスルフィドイソメラーゼ、例えば国際公開第95/00636号パンフレットに開示されているようなプロテインジスルフィドイソメラーゼ;グリコシルトランスフェラーゼ;ペルオキシターダーゼ(生地粘稠度を改良するのに有用);ラッカーゼ;またはオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、アルドースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、リポキシゲナーゼもしくはL−アミノ酸オキシダーゼ(生地コンシステンシーを改良するのに有用)であってもよい。
本発明の方法に従って1種以上の追加の酵素活性を加える場合、これらの活性は、本発明のポリペプチドと別々にあるいは一緒に、任意にパン改良および/または生地改良組成物の構成物として加えることができる。他の酵素活性は、上述の酵素のいずれであってもよく、確立されたベーキング慣習に従って添加してもよい。
本発明はまた、本発明の方法によって得られる生地を焼成して、ベークド製品を製造するステップを含んでなるベークド製品を調製する方法に関する。ベークド製品を製造する生地の焼成は、当該技術分野で良く知られている方法を使用して実施してもよい。本発明の一実施態様では、本発明の脂肪分解酵素を使用して、改善されたサクサク感があるベークド製品のための積層生地を調製する。
本発明はまた、それぞれ本発明の方法によって生成される生地およびベークド製品に関する。
本発明は、例えば生地および/または生地からできたベークド製品のための穀物粉組成物の形態のプレミックスにさらに関し、プレミックスは本発明のポリペプチドを含んでなる。用語「プレミックス」は、本明細書でその通常の意味において、すなわち工業的製パン工場/施設だけでなく小売ベーカリーでも使用してよい、一般に穀物粉を含むベーキング材料の混合物として理解されるものと定義する。プレミックスは、本発明のポリペプチドまたは本ポリペプチドを含む本発明のパン改良および/または生地改良組成物と、穀物粉、澱粉、砂糖または塩のような適切な担体とを混合することにより調製してもよい。本プレミックスは、例えば上述した酵素を含む任意の添加剤などの他のパン改良および/または生地改良添加剤を含有してもよい。
本発明は、発明のポリペプチドを含んでなる顆粒または凝集粉の形態のベーキング添加剤にさらに関する。ベーキング添加剤は、好ましくは狭い粒径分布を有して、95%(重量基準)を超える粒子は25〜500μmの範囲内にある。
生地およびパンの製造において、本発明は、酸化剤(例えばアスコルビン酸)、還元剤(例えばL−システイン)、および/または乳化剤(例えばDATEM、SSLおよび/またはCSL)、および/または本発明の脂肪分解酵素の基質であることができるあらゆる乳化剤前駆物質のような化学処理助剤、および/またはオキシド還元酵素(例えばグルコースオキシダーゼ)、多糖類変性酵素(例えばαアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、分枝酵素など)および/またはタンパク質変性酵素(エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ、分枝酵素など)などの酵素加工助剤などの先に定義した加工助剤と併用してもよい。
本発明の一実施態様では、本発明に従った脂肪分解酵素は、生地乳化剤DATEMを完全にまたは部分的に置き換えるのに使用できる。
別の実施態様では、本発明は、本発明に従った脂肪分解酵素とDATEMとを含んでなるベーキング組成物を提供する。DATEMは、モノおよびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステルの頭字語である。DATEM中の主要構成要素の1つは、1−ステアロイル−3−ジアセチルタートリル−グリセロールであってもよい。好ましい実施態様では、ベーキング組成物は、DATEMと、L01、L02、L03、およびL04から選択される本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなる。好ましくは脂肪分解酵素はL01またはL02である。本発明に従った脂肪分解酵素とDATEMとを含んでなるベーキング組成物は、前記組成物を使用して作られた生地および/または前記生地の焼成によって得られるベークド製品に対して、相乗効果を有することが意外にも分かった。相乗効果は、DATEMまたは本発明に従った脂肪分解酵素を別々に、および組み合わせとして添加して、生地またはベークド製品を作ることによって測定できる。一方でベーキング組成物を使用して、他方でDATEMを単独でまたは脂肪分解酵素を単独でそれぞれ2倍量で使用して、生地またはベークド製品の少なくとも1つの特質に対する効果を比較できる。2倍の使用量のDATEM単独、および2倍の使用量の脂肪分解酵素単独のどちらによって生じる効果よりも組み合わせの効果がさらに良い場合、相乗作用が見られる。相乗作用は例えば生地安定性改善、窯伸び改善、クラム構造改善、クラム色改善、ベークド製品体積改善によって示されることができる。一例として、例えば0.15%w/w(穀物粉基準)のDATEMおよび0.12ppmの脂肪分解酵素(すなわち穀物粉1kgあたり0.12mgのBradfordタンパク質脂肪分解酵素)を含んでなる組成物を使用して作られた生地の安定性が、0.3%w/wのDATEMを単独で使用して作られた生地の安定性よりも良く、0.24ppmの脂肪分解酵素を単独で使用して作られた生地の安定性よりも良い場合、相乗効果がある。
当業者は、本発明に従ったベーキング組成物中で使用する適切な脂肪分解酵素およびDATEMの量を容易に判定できる。DATEMまたは脂肪分解酵素どちらかの添加によって得られる生地またはベークド製品の特性と比較して、生地または前記生地により製造されるベーキング製品の1つ以上の特性が改善される、DATEMまたは脂肪分解酵素の最適量がそれぞれ最初に判定される。引き続いて各製品の最適量の30%〜50%w/wを組成物中で使用でき、当業者は通例の実験法によって、組成物中のどのDATEMおよび脂肪分解酵素比で相乗効果が観察されるかを確認できる。
別の好ましい本発明の実施態様では、DATEMと本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなるベーキング組成物は、本発明の生地またはベークド製品を製造する方法において使用される。
本発明に従ったベーキング組成物は、本発明に従った脂肪分解酵素およびDATEMに次いで、上述のものなどのベーキングで使用される1つ以上の加工助剤および/または上述のような1つ以上の追加的酵素を含んでなってもよい。DATEMと本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなるベーキング組成物は、固体または液体形態など、ベーキングで使用するのに適切なあらゆる形態であることができる。固形形態の組成物は、例えば粉末または顆粒であることができる。液体組成物は、例えば水または油ベースの組成物であることができ、任意に安定化されてもよい。本発明に従った脂肪分解酵素とDATEMとを含んでなるベーキング組成物はまた、上で定義されるプレミックスの一部であってもよい。本発明に従った脂肪分解酵素とDATEMとを含んでなるベーキング組成物は、生地を調製するのに使用される穀物粉にそのまま添加できる。任意にそれは、本発明に従った脂肪分解酵素およびDATEMを生地成分に適切な量で別々に添加することにより、生地中で直接に形成することができる。
別の実施態様では、本発明に従った脂肪分解酵素は、ケーキの製造、およびそれからケーキが得られるねり粉の製造において使用できる。
本発明に従った脂肪分解酵素は、例えばパウンドケーキおよびバターケーキなどのショートケーキをはじめとする、および例えばメレンゲ、スポンジケーキ、ビスケットケーキ、ルラード、ジェノワーズ、およびシフォンケーキなどのフォームケーキをはじめとする、全てのタイプのケーキで使用できる。スポンジケーキは、小麦粉、糖、ベーキングパウダー、および卵(および任意にベーキングパウダー)ベースのソフトケーキの一種である。存在する唯一の脂肪は卵黄からのものであり、それは時折卵白とは別に添加される。これはその他のタイプのケーキおよびデザートベースとして使用されることが多い。パウンドケーキは、伝統的に各1ポンドの穀物粉、バター、卵、および砂糖から調製され、任意にベーキングパウダーが補われる。シフォンケーキでは、バター/マーガリンが、油によって置き換えられている。糖および卵黄含量は、パウンドまたはスポンジケーキと比較して低減されており、卵白含量は増大されている。
本発明に従った脂肪分解酵素は、普通のケーキおよび卵および/または脂肪量が低減されたケーキの双方で使用できる。卵および/または脂肪の可能な低減量は、ケーキのタイプ毎に異なる。当業者には、ケーキレシピ中に通常存在し、ケーキのタイプに依存する卵および/または脂肪の量は既知である。一般に少なくとも5%w/wの卵量の低減が達成できる。より好ましくは、少なくとも10%w/wの卵量の低減が達成でき、なおもより好ましくは少なくとも15%w/wの低減が達成できる。使用される少なくとも20%w/wの卵量の低減が、達成できることが示されている。卵量の低減は、少なくとも30%w/w、40%w/wまたは少なくとも50%w/wでさえあることができる。
一般に少なくとも10%の脂肪量の低減が達成できる。より好ましくは少なくとも20%の脂肪量の低減が達成でき、なおもより好ましくは少なくとも30%の低減が達成できる。少なくとも50%の脂肪量の減少が達成できることが示されている。
国際特許出願番号PCT/EP2008/051147では、ケーキの製造においてホスホリパーゼAを使用して、(i)ねり粉粘度、(ii)見かけ密度、(iii)初期クラム柔らかさ、(iv)クラム孔均質性、(v)クラム孔径、(vi)貯蔵時クラム柔らかさ、(vii)貯蔵寿命および/または(viii)ケーキ体積からなる群から選択される特性の少なくとも1つを改善できることが開示されている。同特許出願では、ケーキの製造においてホスホリパーゼAを使用して、ケーキレシピ中で使用される卵および/または脂肪量の低減を可能にできることもまた開示される。ホスホリパーゼAを使用すると、少なくとも(i)ねり粉粘度、(ii)見かけ密度、(iii)初期クラム柔らかさ、(iv)クラム孔均質性、(v)クラム孔径、(vi)貯蔵時クラム柔らかさ、(vii)貯蔵寿命および/または(viii)ケーキ体積からなる群から選択される特性の少なくとも1つを保ちながら、レシピ中で使用される卵および/または脂肪量を低減することが可能であることが示された。少なくとも保たれるという用語は、本明細書で特質が保たれ、または改善されることを示すために使用される。
ケーキの製造において、少なくともホスホリパーゼAと本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなる組成物を使用して、(i)ねり粉粘度、(ii)見かけ密度、(iii)初期クラム柔らかさ、(iv)クラム孔均質性、(v)クラム孔径、(vi)貯蔵時クラム柔らかさ、(vii)貯蔵寿命および/または(viii)ケーキ体積からなる群から選択される特性の少なくとも1つを改善できることがここで分かった。ケーキの製造において少なくともホスホリパーゼAと本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなる組成物を使用して、好ましくは少なくとも(i)ねり粉粘度、(ii)見かけ密度、(iii)初期クラム柔らかさ、(iv)クラム孔均質性、(v)クラム孔径、(vi)貯蔵時クラム柔らかさ、(vii)貯蔵寿命および/または(viii)ケーキ体積からなる群から選択される特性の少なくとも1つを保ちながら、ケーキレシピ中で使用される卵および/または脂肪量の低減を可能にできることもまた分かった。特にケーキレシピ中の卵および/または脂肪量が低減されたケーキ中で、または通常量の卵および/または脂肪を含んでなるケーキ中で、少なくともホスホリパーゼAと本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなる組成物を使用すると、ホスホリパーゼA単独の使用と比べると、上述の特性の1つ以上をさらに改善できる。
この文脈では、例えばホスホリパーゼA1またはホスホリパーゼA2などの全てのタイプのホスホリパーゼAが使用できる。あらゆるタイプのホスホリパーゼA1が使用できる。ホスホリパーゼA1は、例えば微生物大腸菌(E.coli)、ヘビ毒、および哺乳類の脳、精巣、および肝臓など自然界に広く存在する。適切な市販されるホスホリパーゼA1の一例は、Lecitase Ultra(商標)(ノボザイム(Novozymes))である。あらゆるタイプのホスホリパーゼA2が使用できる。好ましくはホスホリパーゼA2が使用される。適切な市販されるホスホリパーゼA2の一例は、Cakezyme(商標)(DSM)またはLecitase 10L(ノボザイム)である。好ましいホスホリパーゼA2は、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(Cakezyme(商標)、DSM)中で発現されるブタ膵臓ホスホリパーゼA2である。
特質が保たれた、改善されたまたは劣化したかどうかの測定は、一般に、いかなるホスホリパーゼAおよび本発明に従った脂肪分解酵素も含有しないオリジナルレシピで、ねり粉および/またはケーキを調製し、ホスホリパーゼA、任意により少ない卵および/または脂肪および任意に本発明に従った脂肪分解酵素を含有するレシピで、別のねり粉および/またはケーキを調製して、特定の特質を比較することで測定される。比較される2つのねり粉またはケーキの特性が実質的に同一であれば特質は保たれ、異なれば改善または劣化のどちらかが起きている。下で言及される全ての特性について、測定方法、ならびに特質が改善されたと見なせる場合の指標が示されている。
ねり粉粘度は、International Association of Cereal Chemistry(ICC)およびAmerican Association of Cereal Chemistry(AACC 54−2,ICC 115)に従って、標準法によりファリノグラフを用いて測定できる。例えば低減量の卵および/または脂肪から作られ、ホスホリパーゼAと本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなるねり粉のねり粉粘度が、ホスホリパーゼAを単独で含んでなる、またはホスホリパーゼAまたは脂肪分解酵素のどちらも含まない同一ねり粉と比較して改善または劣化したかどうかは、例えば次のように測定できる。低減量の卵および/または脂肪を含有して、ホスホリパーゼAおよび本発明に従った脂肪分解酵素を用いて調製されたねり粉のねり粉粘度が、例えばホスホリパーゼAなしおよび脂肪分解酵素なしで調製された同一ねり粉と同一である場合、または例えばホスホリパーゼAのみを用いて調製された同一ねり粉と同一である場合、ねり粉粘度は保たれている。ねり粉粘度が増大した場合、それは改善されている。
ねり粉の見かけの密度は、所定体積のねり粉を秤量することで測定できる。それが低下していれば、見かけの密度は改善されている。
ケーキのクラム柔らかさは、熟練した試験パン職人によって経験的に評価され、または当該技術分野で知られているようなテクスチャー分析器(例えばTAXT2)の使用によって測定される。実際は、ケーキのクラムの堅さは、当業者に知られているように測定される。焼成の24時間以内に測定されたクラム柔らかさは、初期クラム柔らかさと称される。焼成後24時間を超えるクラム柔らかさは貯蔵時クラム柔らかさと称され、貯蔵寿命を判定する基準でもある。初期クラム柔らかさが増大すればそれは改善されている。貯蔵時クラム柔らかさが増大すればそれは改善されている。
ケーキのクラム孔均質性は、熟練した試験パン職人によって経験的に、または当該技術分野で知られているようなデジタル画像分析によって評価できる(例えば英国ウォリントンのアップルトンのCalibre Control International LtdからのC−cell)。孔径の偏差が小さければ、クラムはより均質であると称される。孔径の偏差がより小さくなれば、特質が改善されている。
ケーキのクラム孔径は、当該技術分野で知られているようなデジタル画像分析を使用して評価できる(例えば英国ウォリントンのアップルトンのCalibre Control International LtdからのC−cell)。平均クラム孔径が低下すれば、特質は改善されている。好ましくは、同時に同一ケーキ体積が保たれる場合にこれが該当する。
ケーキの貯蔵寿命は、ケーキの弾力を経時的に測定することで判定できる。これは当業者に知られているようにクラム柔らかさを測定する方法の一部であり、それによって当該技術分野で知られているようなテクスチャー分析器(例えばTAXT2)の使用によって、ケーキの弛緩もまた測定される。
所与のケーキ体積は、当該技術分野で知られているような超音波またはレーザー検出を使用して、自動化パン体積分析器(例えばスウェーデン国VikenのTexVol Instruments ABからのBVM−3)によって測定できる。体積が増大していれば、特質は改善されている。代案としては同一サイズ焼き型内での焼成後のケーキ高さは、ケーキ体積の指標である。ケーキ高さが増大すれば、ケーキ体積は増大している。
ねり粉のエマルジョン安定性は、ケーキ高さの判定およびケーキ構造の視覚的分析によって判定できる。ケーキ高さが低下していれば、ねり粉のエマルジョン安定性は低下している。ケーキ構造がより緻密であれば、ねり粉のエマルジョン安定性は低下している。
例えば普通のスポンジケーキに、または低減量の卵を含有するスポンジケーキに、ホスホリパーゼAと本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなる組成物を添加した場合、ホスホリパーゼAのみが使用でき、またはホスホリパーゼAまたは本発明に従った脂肪分解酵素のどちらも使用できない同一ケーキまたはねり粉と比べると、例えばエマルジョンまたはねり粉安定性改善、より効率的なねり粉乳化、ケーキ弾性改善、ケーキのクラム柔らかさ改善、ねり粉体積の特性改善の少なくとも1つ以上が観察できることが分かった。
したがって本発明は、(i)ねり粉粘度、(ii)見かけ密度、(iii)初期クラム柔らかさ、(iv)クラム孔均質性、(v)クラム孔径、(vi)貯蔵時クラム柔らかさ、(vii)貯蔵寿命および/または(viii)ケーキ体積からなる群から選択される特性の少なくとも1つ改善する、ケーキの製造における、本発明に従った脂肪分解酵素とホスホリパーゼAとを含んでなる組成物の使用を提供する。本発明はまた、好ましくは少なくとも(i)ねり粉粘度、(ii)見かけ密度、(iii)初期クラム柔らかさ、(iv)クラム孔均質性、(v)クラム孔径、(vi)貯蔵時クラム柔らかさ、(vii)貯蔵寿命および/または(viii)ケーキ体積からなる群から選択される特性の少なくとも1つを保ちながら、ケーキレシピで使用される卵および/または脂肪量の低減を可能にする、ケーキの製造における本発明に従った脂肪分解酵素とホスホリパーゼAとを含んでなる組成物の使用を提供する。
当業者は、ケーキレシピおよびタイプに応じて、組成物中で使用されるホスホリパーゼAおよび本発明に従った脂肪分解酵素の適切な量をそれぞれ容易に判定できる。
ホスホリパーゼAおよび本発明に従った脂肪分解酵素に次いで、例えば代替えタンパク質源、親水コロイド、加工デンプン、酵母抽出物、カルシウムなどの1つ以上のその他の成分が任意に組成物中に存在して、例えばケーキ中の卵および/または脂肪の低減を可能にする。好ましい成分は、酵母抽出物、加工デンプン、カルシウムである。
塩化ナトリウム非含有の乾燥物質を基準にして、少なくとも30%w/wの5’−リボヌクレオチド、好ましくは少なくとも34%w/w、38%w/w、40%w/wまたは42%w/w、より好ましくは少なくとも44%w/w、46%w/w、48%w/wまたは少なくとも50%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなる酵母抽出物を使用してもよい。このような酵母抽出物の使用は、その使用時にねり粉粘度が改善することから、ケーキの味を改善するだけでなく、意外な乳化効果もまた有することが分かった。
本発明の文脈で、「5’−リボヌクレオチド」という語句は、RNA分解中に形成される5’−モノホスファートリボヌクレオチドの総量、すなわち
5’−モノホスファートグアニン(5’−GMP)、5’−モノホスファートウラシル(5’−UMP)、5’−モノホスファートシトシン(5’−CMP)、5’−モノホスファートアデニン(5’−AMP)を指し、5’−AMPは部分的にまたは完全に5’−モノホスファートイノシン(5’−IMP)に転換されていてもよい。例えば塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして30%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなる酵母抽出物では、5’−GMP、5’−UMP、5’−CMP、5’−AMPおよび5’−IMPの総量は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして30%w/wである。好ましい実施態様では、5’−GMPと5’−IMPとの合計量が、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして少なくとも15%w/w、好ましくは少なくとも17%w/w、19%w/w、20%w/wまたは21%w/w、より好ましくは少なくとも22%w/w、23%w/w、24%w/wまたは25%w/wである酵母抽出物が使用される。5’−リボヌクレオチドが生じるRNAの構造のために、5’−GMPと5’−IMPはこの実施態様では常にほぼ等量存在する。本発明の文脈で、5’−リボヌクレオチドの重量百分率の計算は、特に断りのない限りその二ナトリウム塩七水和物を基準とする。全ての百分率は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を元に計算される。本発明では「塩化ナトリウム非含有乾燥物質」という語句は、重量百分率の計算のために、酵母抽出物中に存在するあらゆる塩化ナトリウムの重量が組成物から除外されているという事実を指す。酵母抽出物中の塩化ナトリウムの測定および上述の計算は、当業者に知られている方法によって実施できる。塩化ナトリウム非含有酵母抽出物乾燥物質を基準にした重量百分率で、その20%w/wが5’−GMPプラス5’−IMPである、40%w/w5’−リボヌクレオチドを含んでなる酵母抽出物の一例は、商標Maxarite(登録商標)Delite(オランダ国のDSM Food Specialties)の下に販売されている。
5’−モノホスファートグアニン(5’−GMP)、5’−モノホスファートウラシル(5’−UMP)、5’−モノホスファートシトシン(5’−CMP)、5’−モノホスファートアデニン(5’−AMP)を指し、5’−AMPは部分的にまたは完全に5’−モノホスファートイノシン(5’−IMP)に転換されていてもよい。例えば塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして30%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなる酵母抽出物では、5’−GMP、5’−UMP、5’−CMP、5’−AMPおよび5’−IMPの総量は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして30%w/wである。好ましい実施態様では、5’−GMPと5’−IMPとの合計量が、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして少なくとも15%w/w、好ましくは少なくとも17%w/w、19%w/w、20%w/wまたは21%w/w、より好ましくは少なくとも22%w/w、23%w/w、24%w/wまたは25%w/wである酵母抽出物が使用される。5’−リボヌクレオチドが生じるRNAの構造のために、5’−GMPと5’−IMPはこの実施態様では常にほぼ等量存在する。本発明の文脈で、5’−リボヌクレオチドの重量百分率の計算は、特に断りのない限りその二ナトリウム塩七水和物を基準とする。全ての百分率は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を元に計算される。本発明では「塩化ナトリウム非含有乾燥物質」という語句は、重量百分率の計算のために、酵母抽出物中に存在するあらゆる塩化ナトリウムの重量が組成物から除外されているという事実を指す。酵母抽出物中の塩化ナトリウムの測定および上述の計算は、当業者に知られている方法によって実施できる。塩化ナトリウム非含有酵母抽出物乾燥物質を基準にした重量百分率で、その20%w/wが5’−GMPプラス5’−IMPである、40%w/w5’−リボヌクレオチドを含んでなる酵母抽出物の一例は、商標Maxarite(登録商標)Delite(オランダ国のDSM Food Specialties)の下に販売されている。
加工デンプンは、ケーキレシピで使用される脂肪量をなおもさらに低減するのに使用できる。例えば加工ジャガイモデンプンまたは加工小麦デンプンなどの全てのタイプの加工デンプンが使用できる。好ましくは例えば米国特許第6,864,063号明細書で開示されるものなどの加工ジャガイモデンプンが使用される。最も好ましくはジャガイモデンプンをアミロマルターゼで処理して得られる、加工ジャガイモデンプンが使用される。好ましい加工ジャガイモデンプンの一例は登録商標Etenia(登録商標)(Avebe Food)の下に販売される。30%w/wより少ない脂肪を使用して、ホスホリパーゼA、脂肪分解酵素および加工ジャガイモデンプンの添加なしで製造されたケーキと比べると、ホスホリパーゼA、本発明に従った脂肪分解酵素および加工ジャガイモデンプンの組み合わせを使用して調製された、例えば30%w/w程度に低い低減量の脂肪を含んでなるケーキ中では、例えばねり粉粘度などの上述した所望のケーキ特性がが改善されることが意外にも分かった。
カルシウムが好ましくは添加されて、ホスホリパーゼAの活性が増強される。ケーキレシピに、およそ5,000 CPUのホスホリパーゼA(以下PLAと示す)あたり40〜200mgのCaCl2・H2Oを添加することが特に有利であることが分かった。好ましくはケーキレシピに、5,000 CPUのPLAあたり50〜150mgのCaCl2・H2O、最も好ましくは5,000 CPUのPLAあたり少なくとも90mgCaCl2・H2Oが添加される。CPU(色素産生ホスホリパーゼ単位=1 EYU(卵黄単位)は、40℃およびpH8.0で卵黄から1分あたり1μmolの酸を遊離させる酵素の量と定義される。この方法の基質であるrac−1,2−ジオクタノイルジチオホスファチジルコリンは、405nmで分光光度的に測定される。意外にもケーキねり粉は、ホスホリパーゼAが効率的に働くのに十分なカルシウムを提供しないことが分かった。本発明は、ホスホリパーゼAと本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなる組成物が、ケーキ成分に添加される、ねり粉を調製する方法またはケーキを調製する方法をさらに提供する。
ケーキの典型的な成分は、小麦粉、卵および糖である。任意に、ベーキングパウダー、塩、水、乳化剤(例えばPGEおよびモノグリセリドなど)、マーガリン、バターおよび/または油が添加される(例えばパウンドケーキおよびマフィン用)。
本発明に従ったねり粉を調製する方法は、好ましくは、
a.少なくとも
i.糖
ii.穀物粉、
iii.ホスホリパーゼA、本発明に従った脂肪分解酵素および卵
を添加して、ケーキのねり粉を調製するステップを含んでなる。
a.少なくとも
i.糖
ii.穀物粉、
iii.ホスホリパーゼA、本発明に従った脂肪分解酵素および卵
を添加して、ケーキのねり粉を調製するステップを含んでなる。
本発明に従ったケーキを調製する方法は、
b.ねり粉を焼成してケーキを得るステップ
をさらに含んでなる。
b.ねり粉を焼成してケーキを得るステップ
をさらに含んでなる。
上述の方法に従って、卵および/または脂肪量が低減されているケーキ、および卵および/または脂肪が低減されていないケーキの双方が調製できる。
当業者には、どのようにしてケーキ成分から出発して、ねり粉またはケーキを調製するかは既知である。任意にタンパク質源、親水コロイド、酵母抽出物、加工デンプン、カルシウムなどの1つ以上のその他の成分が組成物中に存在して、例えばケーキ中の卵および/または脂肪の低減を可能にする。好ましい成分は、上で定義されるように酵母抽出物、加工デンプン、カルシウムである。
本発明は、上述の方法によって得られるケーキまたはねり粉をさらに提供する。本発明はまた、例えばケーキまたはねり粉の製造において使用してもよい、ホスホリパーゼAと本発明に従った脂肪分解酵素とを含んでなるベーキング組成物を提供する。このベーキング組成物はまた、生地製品およびこのような生地から得られるベークド製品中でも使用できる。例えばそれは、普通のおよび卵の量が低減されたブリオッシュおよびパネットーネなどの卵をさらに含有する生地製品、およびそれから得られるベークド製品中で使用できる。
前記ベーキング組成物はまた、穀物粉および任意にその他の成分もまた含んでなるケーキプレミックスの一部であることができる。
上述の本発明に従った脂肪分解酵素の産業上の利用は少数の例のみを包含し、この一覧は制限的であることを意図しない。
脂肪分解酵素は、好都合には微生物中で生成されてもよい。上の方法では、組み換えDNA技術によって得られる脂肪分解酵素を使用することが有利である。組み換え酵素は、低原価、高収率、細菌またはウィルスのような汚染作用因子非含有、また細菌毒素または汚染その他の酵素活性非含有で生産できるかもしれない。
以下では、次の非限定的例によって本発明を例示する。
[実施例]
[実施例1]
[本発明のリパーゼの製造]
本明細書で提供されるようなヌクレオチド配列配列番号1(DNA L01)、配列番号3(DNA L02)、配列番号5(DNA L03)、配列番号7(DNA L04)によってコードされる脂肪分解酵素L01、L02、L03、L04は、DNA配列を含有する発現プラスミドを構築し、このようなプラスミドでアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株を形質転換し、A.ニガー(niger)株を次のようにして生育させることで得られた。
[実施例1]
[本発明のリパーゼの製造]
本明細書で提供されるようなヌクレオチド配列配列番号1(DNA L01)、配列番号3(DNA L02)、配列番号5(DNA L03)、配列番号7(DNA L04)によってコードされる脂肪分解酵素L01、L02、L03、L04は、DNA配列を含有する発現プラスミドを構築し、このようなプラスミドでアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株を形質転換し、A.ニガー(niger)株を次のようにして生育させることで得られた。
A.ニガー(niger)株の新鮮な胞子(106〜107)を20mlのCSL培地(100mlフラスコ、整流装置)に接種して、34℃および170rpmで20〜24時間にわたり生育させた。100mlのCSM培地(500mlフラスコ、整流装置)中に5〜10mlのCSL前培養を接種した後、株を34℃および170rpmで3〜5日間発酵させた。
4℃、5000×gで発酵ブロスを30分間遠心分離して、無細胞上清を得た。無細胞上清を使用時まで−20℃で保存した。任意に上清をGF/Aワットマン(Whatman)ガラスマイクロファイバーフィルター(150mm径)上でさらに濾過して、より大きな粒子を除去できる。必要ならば4N KOHを用いて上清のpHをpH5に調節し、0.2μm(ボトルトップ)フィルター上で無菌吸引濾液して真菌材料を除去する。
CSL培地は、次からなった(1Lあたりの量):100gのコーンスティープソリッズ(Roquette)、1gのNaH2PO4・H2O、0.5gのMgSO4・7H2O、10gのグルコース・H2O、および0.25gのBasildon(消泡剤)。成分を脱ミネラル水に溶解し、NaOHまたはH2SO4を用いてpHをpH5.8に調節し、整流装置およびフォームボールがある100mlフラスコに20mlの発酵ブロスを充填して120℃で20分間滅菌した後、室温への冷却後、5000IU/mlのペニシリンおよび5mg/mlのストレプトマイシンを含有する200μlの無菌溶液を各フラスコに添加した。
CSM培地は、次からなった(1Lあたりの量):150gのマルトース×H2O、60gのSoytone(ペプトン)、1gのNaH2PO4×H2O、15gのMgSO4×7H2O、0.08gのTween 80、0.02gのBasildon(消泡剤)、20gのMES、1gのL−アルギニン。成分を脱ミネラル水に溶解して、NaOHまたはH2SO4を用いてpHをpH6.2に調節した。整流装置およびフォームボールがある500mlフラスコに100mlの発酵ブロスを充填して120℃で20分間滅菌した後、室温への冷却後、5000IU/mlペニシリンおよび5mg/mlストレプトマイシンを含有する1mlの無菌溶液を各フラスコに添加した。
[実施例2]
[本発明の脂肪分解酵素の精製]
実施例1で得られた凍結無細胞上清の解凍後、上清を4℃で完全に遠心分離してあらゆる固形物を除去した。低分子量汚染物質を除去するために、カットオフ10kDaのフィルターを装着したミリポア(Millipore)Labscale TFFシステムを使用して上清を限外濾過した。0.5mMのCaCl2を含む体積40mlの冷100mMリン酸緩衝液pH6.0でサンプルを3〜5回洗浄した。酵素溶液の最終体積は30mlであり、以下「限外濾過液」と称する。
[本発明の脂肪分解酵素の精製]
実施例1で得られた凍結無細胞上清の解凍後、上清を4℃で完全に遠心分離してあらゆる固形物を除去した。低分子量汚染物質を除去するために、カットオフ10kDaのフィルターを装着したミリポア(Millipore)Labscale TFFシステムを使用して上清を限外濾過した。0.5mMのCaCl2を含む体積40mlの冷100mMリン酸緩衝液pH6.0でサンプルを3〜5回洗浄した。酵素溶液の最終体積は30mlであり、以下「限外濾過液」と称する。
さらなる精製のために、限外濾過液をMonoQアニオン交換カラムに注入できる。20カラム体積にわたり塩勾配を1MのNaCLに設定した。緩衝液は、70mMのBis−TRISと50mMのTRISとの混合物であった。0.1MのHClを用いてpHを固定した。35mS/cmの導電率でリパーゼを溶出する精製をpH=9で実施すると、意外にも最良の結果が得られることが観察された。
サンプルの総タンパク含量は、Bradford法(The Protein Protocols Handbook,第2版,J.M.Walker編,Humana Press Inc,Totowa 2002年,15〜21頁)を使用して測定した。
[A280およびHPSECによる脂肪分解酵素濃度定量]
代案としては、脂肪分解酵素の濃度は、脂肪分解酵素に起因する280nm(A280)における吸光、および計算された脂肪分解酵素の分子吸光係数から計算できる。A280の測定は、Uvikon XL Secomam分光光度計(オランダ国AbcoudeのBeun de Ronde)内で実施した。
代案としては、脂肪分解酵素の濃度は、脂肪分解酵素に起因する280nm(A280)における吸光、および計算された脂肪分解酵素の分子吸光係数から計算できる。A280の測定は、Uvikon XL Secomam分光光度計(オランダ国AbcoudeのBeun de Ronde)内で実施した。
酵素の分子吸光係数は、酵素分子あたりのチロシン、トリプトファンおよびシステイン残基の数から計算できるされる(S.C.GillおよびP.H.von Hippel,Anal.Biochem.182,319〜326頁(1989年))。これらのアミノ酸の分子吸光係数は、それぞれ1280、5690、および120M−1.cm−1である。本発明の脂肪分解酵素中のチロシン、トリプトファンおよびシステイン残基の数は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8からなる群から選択されるタンパク質配列から推定できる。アミノ酸34〜304を含んでなる配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8について計算を実施した。上述のポリヌクレオチド配列によってコードされる脂肪分解酵素のモル濃度吸光係数は35560M−1.cm−1であり、1mg/mlでの280nmにおける1.25cm−1のODに対応する。リパーゼL01、L04、L03、およびL02について計算される成熟ポリペプチドの分子量は、アミノ酸34〜304のみを考慮して、それぞれ28.4、28.3、28.4、28.5kDである。
脂肪分解酵素に起因する280nm(A280)における限外濾過液の吸光度は、酵素サンプルの純度に左右される。この特定のリパーゼ含量は、TSKSW−XLカラム(300×7.8mm;MW範囲10〜300kDa)を用いて、HP−SEC(高性能サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して測定できる。溶出緩衝液は25mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0からなり、流速1ml/分で使用された。5〜100μlのサンプルを注入した。280nmでの吸光度を測定した。
本発明の脂肪分解酵素に起因するA280は、クロマトグラム中のそれぞれの脂肪分解酵素ピークのピーク面積と、280nmでの吸収ピークの総面積との比率から得た。次にサンプルのA280に上述の比率を乗じ、計算された脂肪分解酵素の吸光係数で除して、脂肪分解酵素濃度を計算した。
[実施例3]
[アッセイ]
リパーゼ活性は、色素産生基質p−ニトロフェニルパルミチン酸(pNPP、シグマ(Sigma)N−2752)を使用して測定した。このアッセイでは、pNPPを2−プロパノールに溶解し(10mlの2−プロパノール(メルク(Merck)1.09634)あたり40mgのpNPP)、1.0%のTriton X−100(メルク1.12298)を含有する100mMの酢酸緩衝液pH=5.0に懸濁する(45mlの緩衝液中に5mlの基質)。最終基質濃度は1.1mMである。リパーゼをこの基質溶液と共に37℃で10分間インキュベートする。停止緩衝液(反応混合物を基準にして1:1の比率の2%TRIS(メルク1.08387)+1% Triton X−100)を添加して反応を停止する。引き続いて形成したp−ニトロフェノール(pNP)を405nmで測定する。このアッセイはまた、リパーゼのpH依存性を判定するために異なるpH値でも応用できる。異なるpH値では異なる緩衝液が必要になるかもしれず、あるいは基質を乳化するのに異なる洗剤が必要になるかもしれないことを理解すべきである。1リパーゼ単位は、既述の反応条件で1分あたり1ミクロモルのp−ニトロフェノールを遊離させる酵素量と定義される。所定のアッセイの活性と、較正アッセイにおいて測定されるであろう単位とを相関させるために、異なるアッセイで測定された既知の活性がある標準較正酵素溶液を使用することは、通例の分析において珍しい慣例ではないことを理解すべきである。
[アッセイ]
リパーゼ活性は、色素産生基質p−ニトロフェニルパルミチン酸(pNPP、シグマ(Sigma)N−2752)を使用して測定した。このアッセイでは、pNPPを2−プロパノールに溶解し(10mlの2−プロパノール(メルク(Merck)1.09634)あたり40mgのpNPP)、1.0%のTriton X−100(メルク1.12298)を含有する100mMの酢酸緩衝液pH=5.0に懸濁する(45mlの緩衝液中に5mlの基質)。最終基質濃度は1.1mMである。リパーゼをこの基質溶液と共に37℃で10分間インキュベートする。停止緩衝液(反応混合物を基準にして1:1の比率の2%TRIS(メルク1.08387)+1% Triton X−100)を添加して反応を停止する。引き続いて形成したp−ニトロフェノール(pNP)を405nmで測定する。このアッセイはまた、リパーゼのpH依存性を判定するために異なるpH値でも応用できる。異なるpH値では異なる緩衝液が必要になるかもしれず、あるいは基質を乳化するのに異なる洗剤が必要になるかもしれないことを理解すべきである。1リパーゼ単位は、既述の反応条件で1分あたり1ミクロモルのp−ニトロフェノールを遊離させる酵素量と定義される。所定のアッセイの活性と、較正アッセイにおいて測定されるであろう単位とを相関させるために、異なるアッセイで測定された既知の活性がある標準較正酵素溶液を使用することは、通例の分析において珍しい慣例ではないことを理解すべきである。
代案としては、リパーゼ活性は、基質として2,3−メルカプト−1−プロパノール−三酪酸(TBDMP)を使用して測定できる。リパーゼはTBDMPのチオエステル結合を加水分解し、それによってブタン酸および2,3−メルカプト−1−プロパノール−二酪酸、2,3−メルカプト−1−プロパノール−一酪酸または2,3−メルカプト−1−プロパノールを遊離させる。遊離したチオール基は、4−チオピリドンを形成する4,4,−ジチオジピリジン(DTDP)との引き続く反応中で滴定する。4−チオピリドンは、334nmで吸光する4−メルカプトピリジンとの互変異性平衡にある。37℃において0.2%のTriton−X100、0.65mMのTBDMP、および0.2mMのDTDPを含有する0.1Mの酢酸緩衝液pH5.0中で反応を実施する。1リパーゼ単位は、既述の反応条件で1分あたり1ミクロモルの4−チオピリドンを遊離させる酵素量と定義される。
分光光度測定に加えて、リパーゼ活性はまた、滴定測定を使用しても測定できる。例えば脂肪分解酵素のエステラーゼ活性は、Food Chemical Codex,第4版,National Academy Press,1996年,803頁に従って、トリブチリンを基質として測定してもよい。
[活性測定]
このアッセイでは単一基質のみが存在し、活性数値はパン生地としての基質混合物中における実際の活性を予測しないことにさらに留意すべきである。
[タンパク質特性評価]
SDS−PAGE分子量推定は、NuPage 4〜12% MES Simply Blue Safe Stainを用いて、限外濾過液サンプル上で実施した。タンパク質を脱グリコシルするために、タンパク質サンプルをPNGase−F(ドイツ国マンハイムのロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics GmbH(Mannheim,Germany))で処理した。引き続いて処理および未処理サンプルの双方にSDS−PAGEゲル電気泳動法を施した。糖タンパク質の特性決定および取り扱いについては、The Protein Protocols Handbook,第2版,J.M.Walker編,Humana Press Inc,Totowa 2002年,第VI章に詳しく記述されている。
等電点(pI)は、等電点電気泳動ゲル電気泳動法によって、pI範囲が3.5〜10.7であるマーカータンパク質を含有するIEFマーカー3−10(ドイツ国ハイデルベルク(Heidelberg,Germany)のServa Electrophoresis GmbH)と比較して判定した。必要ならば、サンプルは、例えばタンパク質脱塩スピンカラム(製品番号89849、米国ロックフォード(Rockford,USA)のPierce)を使用して製造業者が述べるようにして脱塩できる。次にサンプルをNovex(登録商標)IEFサンプル緩衝液pH3〜10で1:1に希釈し、Novex(登録商標)IEFゲル用Xcell SureLock(商標)Mini−Cell電気泳動システム(米国カールスバッドのインビトロジェン(Invitrogen(Carlsbad,USA))を使用して、製造業者が述べるようにして等電点ゲル電気泳動法を実施した。電気泳動後にゲルを12.5%TCAで固定して洗浄し、SimplyBlue(商標)SafeStain(米国カールスバッドのインビトロジェン)で染色した。
[質量分光法(MS)によるL01の分子量測定]
リパーゼL01をMW分析前に脱グリコシル化した。脱グリコシル化に先だって、TCA沈殿を実施した。TCA沈殿は、サンプルを20%TCAで1:1に希釈して実施した。サンプルを4℃で4時間インキュベートした。タンパク質を4℃、13000rpmで10分間遠心分離してペレット化した。ペレットを−20℃のアセトンで洗浄し、4℃、13000rpmで10分間再度遠心分離した。この洗浄工程を3回繰り返した。ペレットを100mMのNH4HCO3に懸濁し、N−グリコシダーゼF(PNGase−F、ドイツ国マンハイムのロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics GmbH)を使用した脱グリコシル化を37℃で一晩実施した。10kDaカットオフ遠心装置(Pall)を使用して限外濾過により、放出された糖鎖を除去した。
リパーゼL01をMW分析前に脱グリコシル化した。脱グリコシル化に先だって、TCA沈殿を実施した。TCA沈殿は、サンプルを20%TCAで1:1に希釈して実施した。サンプルを4℃で4時間インキュベートした。タンパク質を4℃、13000rpmで10分間遠心分離してペレット化した。ペレットを−20℃のアセトンで洗浄し、4℃、13000rpmで10分間再度遠心分離した。この洗浄工程を3回繰り返した。ペレットを100mMのNH4HCO3に懸濁し、N−グリコシダーゼF(PNGase−F、ドイツ国マンハイムのロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics GmbH)を使用した脱グリコシル化を37℃で一晩実施した。10kDaカットオフ遠心装置(Pall)を使用して限外濾過により、放出された糖鎖を除去した。
脱グリコシル化されたリパーゼL01をMSによって分析した。サンプルをLTQ−Orbitrap MS(テルモ(Thermo))に直接注入した。6つの異なるタンパク質質量が28〜29kDaの間で計算できた。これらのタンパク質質量、対応するリパーゼL01残基、および最も豊富な形態と比較したそれらの相対存在量を表1に示す。
MWの小さな違いは、SDS PAGEを使用すると、これらの形態が28〜29kDの1本の単一バンドとして観察されるであろうことを示唆する。N末端およびC末端はどちらも不均一性を示し、これはプロセッシング特異性低下によって、または初期成熟後の製造工程中のさらなるタンパク質分解によって引き起こされるかもしれない。脱グリコシル化リパーゼL02、L03、L04は、SDS−PAGEで実質的にL01の移動度と同じ移動度を示すので、L02、L03、およびL04は、L01について観察されたのと同様の翻訳後プロセシングを受けると結論される。
[最適pH値]
脂肪分解酵素の最適pH値依存性は、異なるpH値において特定タイプの脂肪分解活性を測定するアッセイを行うことで判定できる。最大活性が観察されるpHが、特定酵素のpH最適値である。最適pH値は基質タイプおよび適用されるアッセイ条件に左右されるかもしれないので、異なる基質が使用され、またはアッセイ条件が大幅に変化した場合、それは再確立すべきである。
脂肪分解酵素の最適pH値依存性は、異なるpH値において特定タイプの脂肪分解活性を測定するアッセイを行うことで判定できる。最大活性が観察されるpHが、特定酵素のpH最適値である。最適pH値は基質タイプおよび適用されるアッセイ条件に左右されるかもしれないので、異なる基質が使用され、またはアッセイ条件が大幅に変化した場合、それは再確立すべきである。
L01は、リン酸緩衝液中で37℃において、p−ニトロフェニルパルミチン酸を基質として使用して、6.5〜9.5の幅広い最適pH値を有する。
[実施例4]
[乳製品応用−チーズ様システム中で本発明に従ったリパーゼによって生じる遊離脂肪酸プロフィール]
チェダーチーズペーストと共にインキュベーションした後に、本発明に従ったL01、L03、およびL04ポリペプチドによって生じるFFAプロフィールと、微生物リパーゼ(オランダのDSM Food Specialtiesのリゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)からの微生物リパーゼであるPiccantase(登録商標)R8000)(以下PicR8000と略す)のFFAプロフィールとを比較した。金基準としてのパルメザンチーズのFFAプロフィールは、D.T.Lai,A.D.Mackenzie,C.J.O’Connor,K.W.Turner,J.Dairy Sci.80:2249〜2257頁(1997年),2255頁(以下ParmCheesと略す)から採用した。全ての実験でリパーゼの代わりに水と共にインキュベートされたチェダーチーズペーストのFFAプロフィールを陰性対照または空試験として使用し、それは文献M.V.Arbige,P.R.Freund,S.C.Silver,J.T.Zelko,Food Technology,1986年,91〜98頁から知られているチェダーチーズのFFAプロフィールとほとんど異ならなかった。
[乳製品応用−チーズ様システム中で本発明に従ったリパーゼによって生じる遊離脂肪酸プロフィール]
チェダーチーズペーストと共にインキュベーションした後に、本発明に従ったL01、L03、およびL04ポリペプチドによって生じるFFAプロフィールと、微生物リパーゼ(オランダのDSM Food Specialtiesのリゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)からの微生物リパーゼであるPiccantase(登録商標)R8000)(以下PicR8000と略す)のFFAプロフィールとを比較した。金基準としてのパルメザンチーズのFFAプロフィールは、D.T.Lai,A.D.Mackenzie,C.J.O’Connor,K.W.Turner,J.Dairy Sci.80:2249〜2257頁(1997年),2255頁(以下ParmCheesと略す)から採用した。全ての実験でリパーゼの代わりに水と共にインキュベートされたチェダーチーズペーストのFFAプロフィールを陰性対照または空試験として使用し、それは文献M.V.Arbige,P.R.Freund,S.C.Silver,J.T.Zelko,Food Technology,1986年,91〜98頁から知られているチェダーチーズのFFAプロフィールとほとんど異ならなかった。
チェダーチーズペーストは、すりおろして水と最終水分含量46.4%w/w(乾燥物質に対する脂肪含量は49.3%w/wであった)に混合することにより、短期熟成(すなわち熟成期間が2週間よりも短い)チェダーチーズから調製した。チェダーチーズペーストを+80℃で5分間低温殺菌し、少量ずつ分割して、本実験における脂肪分解酵素基質としての使用時まで+4℃で保存した。
試験する各リパーゼ(水溶液)を+40℃の温かいチェダーチーズペーストの一回量に添加し、完全に混合して、+40℃で1および4日間インキュベートした。5〜25%のチェダーチーズペースト脂肪転換比を得るように、リパーゼ使用量を選択した。チェダーチーズペースト中の脂肪分解活性を停止するために、サンプルを−20℃で瞬間冷凍し、分析時まで保存した。
全てのサンプルをそれらのFFAプロフィールについて分析した。チェダーチーズペースト中で放出されたFFAの定量は、当該技術分野で記載されている標準法(Jong C.,deおよびBadings H.T.,J.High Resolution Chromatography,13:84〜98頁(1990年))に従って実施した。手短に言えば、サンプルからの未反応の脂肪およびFFAの抽出後に、固相抽出法によって各FFAを単離し、単離されたFFAをキャピラリーカラム上でガスクロマトグラフィーによって分析した。同一FFAを含有する標準混合物の滞留時間を比較して、クロマトグラムのピークを同定した。様々なサンプル中のFFA含有量は、サンプルに添加された内部基準を使用して、個々のFFAのピーク面積から計算した(検出器応答および抽出収率について補正)。
遊離脂肪酸含量を1kgのチェダーチーズペーストあたりの各遊離脂肪酸のmgで測定し、さらにFFAの分子量を使用して1kgのチェダーチーズペーストあたりのmmolで再計算する。
その結果、mmol/kgで示される遊離脂肪酸プロフィールを使用して各サンプル中の脂肪転換%を計算し、それが5〜25%の間に含まれることを確認した。脂肪転換の程度は、水と共にインキュベートしたチェダーチーズペーストである空試験測定値のFFAプロフィールを使用して、バックグラウンドについて補正することにより測定した。
したがって各サンプル中の脂肪転換の程度は、説明で示されるようにして、チェダーチーズペーストが1.19mol/kgの総脂肪酸量を含有すると仮定して測定された。
式[1]を使用して、各サンプルについてDを計算し、結果を表4に要約する。
式[1]を使用して、各サンプルについてDを計算し、結果を表4に要約する。
表4から分かるように、1および4日間のインキュベーション期間後にDは顕著に変化せず、酵素使用量は適切な範囲内であった。
それらの使用量と独立して、特定のFFAを放出するリパーゼの特異性を比較するためには、各FFAの総FFA(mmol/kgのチェダーチーズペースト)に対する相対Cx含量(mmol/kgのチェダーチーズペースト)を計算することが都合よく、したがってFFAプロフィールは%で表される。この比較方法は当業者に良く知られており、文献で広く使用されている。1日目から4日目の間で、調査したサンプルのFFAプロフィールが顕著に変化しないことが分かったので、4日目のデータのみを表5に提示して図1に示す。
パルメザンチーズのFFAプロフィールもまた示されており、D.T.Lai,A.D.Mackenzie,C.J.O’Connor,K.W.Turner,J.Dairy Sci.80:2249〜2257頁(1997年)の2255頁を参照されたい。
表5および図1から、パルメザンチーズのFFAプロフィールが、プロヴォローネ、パルメザン、ロマーノなどのシャープでぴりっと辛い種類のイタリアチーズの製造のために市販される微生物リパーゼPicR8000によって生じるもの(オランダ国DSMからの使用説明書)とは、非常に異なることは明らかである。微生物リパーゼは短鎖C4〜C10 FFAに特異的でないことが一般に知られており、市販製剤をはじめとするいくつかの例が当該技術分野で入手できる。これまでPicR8000は、乳脂肪から短鎖FFAを放出できる微生物リパーゼの1つとして使用されている。
意外にも本発明に従ったリパーゼL01、L03、およびL04は、PicR8000と比較して、C4含有遊離脂肪酸の放出に対する高特異性を示すことが分かった。これらのポリペプチドによって生じるFFAプロフィールは、PicR8000と比べると、パルメザンチーズのFFAプロフィールにより近い。
リパーゼの特異性は、次のよう計算できる特異性比Rspecを使用して比較できる。
式中、ΣC4〜C10およびΣC12〜C18は相対FFAの合計であり、説明で定義される。Rspecは、短期熟成チーズ(好ましくは熟成時間2週間未満のチェダーまたはゴーダチーズ)を使用して、インキュベートされたサンプル中に、上述の通りに計算される5%〜25%の十分な脂肪転換の程度をもたらす使用量、インキュベーション期間、およびインキュベーション温度の条件下で、脂肪分解酵素と共にインキュベートして作られた乳製品組成物について測定される。L01、L03、L04、およびPicR8000のRspec値は、表6に示す。
式中、ΣC4〜C10およびΣC12〜C18は相対FFAの合計であり、説明で定義される。Rspecは、短期熟成チーズ(好ましくは熟成時間2週間未満のチェダーまたはゴーダチーズ)を使用して、インキュベートされたサンプル中に、上述の通りに計算される5%〜25%の十分な脂肪転換の程度をもたらす使用量、インキュベーション期間、およびインキュベーション温度の条件下で、脂肪分解酵素と共にインキュベートして作られた乳製品組成物について測定される。L01、L03、L04、およびPicR8000のRspec値は、表6に示す。
これから分かるように、本発明に従ったリパーゼL01、L03、およびL04は、特異性がより低い微生物酵素Piccantase(登録商標)R8000と比較して、C4〜C10含有遊離脂肪酸の放出に対する高い特異性を示す。
[実施例5]
[ベーキング実験−フルサイズバタール]
脂肪分解酵素L01〜L04のベーキング性能もまた、フルサイズバタール中で試験した。2000gの小麦粉(Kolibri(商標))、47gの圧搾酵母、40gの塩、50ppmのアスコルビン酸、2ppmのBakezyme(登録商標)P500(真菌αアミラーゼ)、15ppmのBakezyme(登録商標)HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および58%のml水をDiosnaミキサー内で、速度1で2分間、速度2で71Wh混合し、最終生地温度27℃にした。生地を350gずつ6個に分割し、丸めて32℃および90%相対湿度で20分間発酵させた。その後、生地片を型込め成形して、34℃および相対湿度90%で100分間発酵させた。完全に発酵した生地片に切れ目を入れて、最初に蒸気を加えて240℃のオーブン内で30分間焼成した。
[ベーキング実験−フルサイズバタール]
脂肪分解酵素L01〜L04のベーキング性能もまた、フルサイズバタール中で試験した。2000gの小麦粉(Kolibri(商標))、47gの圧搾酵母、40gの塩、50ppmのアスコルビン酸、2ppmのBakezyme(登録商標)P500(真菌αアミラーゼ)、15ppmのBakezyme(登録商標)HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および58%のml水をDiosnaミキサー内で、速度1で2分間、速度2で71Wh混合し、最終生地温度27℃にした。生地を350gずつ6個に分割し、丸めて32℃および90%相対湿度で20分間発酵させた。その後、生地片を型込め成形して、34℃および相対湿度90%で100分間発酵させた。完全に発酵した生地片に切れ目を入れて、最初に蒸気を加えて240℃のオーブン内で30分間焼成した。
L01、L02、L03またはL04を含有する無細胞上清(少なくとも2mg/mlの総Bradfordタンパク質を含む)をそれぞれ0.1から最大で4ppmのBradfordタンパク質(1ppmのBradfordタンパク質は小麦粉1kgあたり1mgのBradfordタンパク質に等しい)の使用量で、小麦粉に添加した。追加的対照として、試験したL01〜L04の最大使用量を達成するために添加された最大体積無細胞上清に等しい体積(ml)を使用して、0.3mg/mlのBradfordタンパク質を含有してL01〜L04を欠くA.ニガー(niger)宿主株の無細胞上清を試験した。
生地および最終ベークド製品の双方に対する異なる使用量の脂肪分解酵素の様々な効果を空試験、追加物を含有しないローフ、および0.3%のDATEM(Panodan(登録商標)80CP)を含有するローフと比較した。
室温への冷却後、自動化パン体積分析器(BVM−3、TexVol Instruments)によってローフの体積を測定した。空試験パンのローフの体積を100%と定義する。さらなる効果は熟練したパン職人によって、次のように手動で視覚的に分析された。生地安定性は、パン断面の高さ/幅比を1〜5の尺度で視覚的に判断して対応した。1=非常にフラット(断面の高さ/幅比が0に近い)〜5=非常に高い(断パン面の高さ/幅比が0.8に近い)。
生地伸展性は、1〜5の尺度で、手動で判定して対応した。
1=非常に短い〜5=非常に伸張性
窯伸び:1=切れ込みが完全に閉鎖している〜5=切れ込みが完全に開いている;裂けている
クラム構造:1=セル壁がより厚い開放/不規則なクラム構造〜5=セル壁がより薄い非常に細かい/均一のクラム構造
クラム色:1=非常に濃い〜5=非常に明るい白色
結果を表7〜11に示す。
生地伸展性は、1〜5の尺度で、手動で判定して対応した。
1=非常に短い〜5=非常に伸張性
窯伸び:1=切れ込みが完全に閉鎖している〜5=切れ込みが完全に開いている;裂けている
クラム構造:1=セル壁がより厚い開放/不規則なクラム構造〜5=セル壁がより薄い非常に細かい/均一のクラム構造
クラム色:1=非常に濃い〜5=非常に明るい白色
結果を表7〜11に示す。
上述のように使用されたA.ニガー(niger)宿主株(対照)の無細胞上清は、空試験と比較して、ベーキング性能に対する好ましい効果または悪影響のどちらも示さなかった。
リパーゼL01〜L04は、空試験と比較して、明らかに生地安定性を改善し、ローフ体積を増大させ、窯伸びを改善し、クラム規則性を改善した。L01〜L04は、0.3%のDATEMを置換するのに効果的であり、効果的な使用量範囲は少なくとも、L01、L02、およびL04で0.25〜2.0ppmであり、L03では0.25〜1ppmであった。
リパーゼL01〜L04は、空試験またはDATEM対照と比較して生地粘性に効果を与えなかった。L01〜L04のより高い使用量では、生地取り扱いに顕著な効果を与えることなく、生地はわずかにより伸展性になった。
[実施例6]
[ミニバタール生地中の脂質転換測定]
[焼成実験−ミニバタール]
200gの小麦粉(Kolibri(商標))、4.6gの圧搾酵母、4gの塩、68ppmのアスコルビン酸、1ppmのBakezyme(登録商標)P500(真菌αアミラーゼ)、5ppmのBakezyme(登録商標)HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および合計57%の水(小麦粉重量を100%とする)を混合して得られる150gの生地片から、ミニバタールを焼成した。0.5、1.0、および2.5ppmのBradfordタンパク質量で、L01、L02、L03またはL04をそれぞれ含有する無細胞上清(少なくとも2mg/mLの総タンパク量)を添加した。追加的対照として、3ppmのBradfordタンパク質量で、0.3mg/mlのBradfordタンパク質を含有してL01〜L04を欠くA.ニガー(niger)宿主株の無細胞培養物上清を試験した。
[ミニバタール生地中の脂質転換測定]
[焼成実験−ミニバタール]
200gの小麦粉(Kolibri(商標))、4.6gの圧搾酵母、4gの塩、68ppmのアスコルビン酸、1ppmのBakezyme(登録商標)P500(真菌αアミラーゼ)、5ppmのBakezyme(登録商標)HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および合計57%の水(小麦粉重量を100%とする)を混合して得られる150gの生地片から、ミニバタールを焼成した。0.5、1.0、および2.5ppmのBradfordタンパク質量で、L01、L02、L03またはL04をそれぞれ含有する無細胞上清(少なくとも2mg/mLの総タンパク量)を添加した。追加的対照として、3ppmのBradfordタンパク質量で、0.3mg/mlのBradfordタンパク質を含有してL01〜L04を欠くA.ニガー(niger)宿主株の無細胞培養物上清を試験した。
ピンミキサー内での6分15秒間の混合後、生地を150gずつ2個に分割して丸め、周囲温度および相対湿度90%で25分間発酵させた。次に生地片を型込め成形し、32℃および相対湿度85%で100分間発酵させた。完全に発酵した生地片に切れ目を入れて、最初に蒸気を加えて240℃のオーブン内で20分間焼成した。
ミニバタール焼成実験の焼成結果は、実施例5で記載されているフルサイズで得られたものに匹敵する。
[極性脂質]
脂質は、凍結乾燥して粉砕した完全発酵生地(上のミニバタール焼成実験を参照されたい)を水−飽和ブタノールと共に激しく振盪して、抽出した。遠心分離後、LiChrospher 100 DIOL 5μm(250×4.0mm)上のHPLCで透明な上清を分析し、類脂質構成要素を1.5l/分の窒素流、温度80℃、衝撃子オンで、蒸発光散乱(Alltech ELSD 2000ES)によって検出した。溶出は、流速1.0ml/分の勾配プログラム中の2つの移動相を使用して実施した。
A:ヘプタン/イソプロパノール/ブタノール/テトラヒドロフラン/イソオクタン/水(64.5/17.5/7/5/5/1)
B:イソプロパノール/ブタノール/テトラヒドロフラン/イソオクタン/水(73/7/5/5/10)
脂質は、凍結乾燥して粉砕した完全発酵生地(上のミニバタール焼成実験を参照されたい)を水−飽和ブタノールと共に激しく振盪して、抽出した。遠心分離後、LiChrospher 100 DIOL 5μm(250×4.0mm)上のHPLCで透明な上清を分析し、類脂質構成要素を1.5l/分の窒素流、温度80℃、衝撃子オンで、蒸発光散乱(Alltech ELSD 2000ES)によって検出した。溶出は、流速1.0ml/分の勾配プログラム中の2つの移動相を使用して実施した。
A:ヘプタン/イソプロパノール/ブタノール/テトラヒドロフラン/イソオクタン/水(64.5/17.5/7/5/5/1)
B:イソプロパノール/ブタノール/テトラヒドロフラン/イソオクタン/水(73/7/5/5/10)
双方の溶出溶液に、1Lあたり77μlのアンモニア溶液および77μlのトリフルオロ酢酸を添加した。
勾配プログラム:注入量20μlおよびカラム温度80℃で、100%Aから100%Bへの直線を25分間、次に100%Bを5分間、次に100%Bから100%Aへの直線濃度勾配を0.5分間、最後に100%Aを5分間。
例えばモノガラクトシルジグリセリド、モノガラクトシルモノグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ジガラクトシルモノグリセリド、ホスファチジルコリン、およびリゾ−ホスファチジルコリンなどのガラクト脂質、リン脂質の参照を使用して、様々な化合物の溶出順序を示し、それらの応答係数および生地中存在量を計算した。
生地脂質組成物は、小麦粉の収穫タイプによって変動する。全ての実験では1種の小麦粉タイプ(Kolibry)を使用したが、表12に提示するデータは、表13〜16に提示するデータとは異なる収穫からの小麦粉を使用して得られた。
それぞれA.ニガー(niger)宿主株バックグラウンド対照サンプル(表12)を含有する、または様々な量のL01〜L04(表13〜16)を含有する完全発酵生地中の主要極性脂質の量を空試験生地の各脂質量と比較して提示する。
表12に示す結果は、A.ニガー(niger)宿主株(対照)の無細胞培養物上清が、試験された高使用量において、空試験と比較して極性生地脂質組成にいかなる顕著な効果も与えなかったことを明らかに示す。
表13〜16に示す結果から、L01〜L04が、試験された最低使用量で既に、モノガラクトシルジグリセリドと比較して、またホスファチジルコリンと比較しても、ジガラクトシルジグリセリドに対する選択性をもって、ガラクトシルジグリセリドをガラクトシルモノグリセリドに効率的に転換すると、明白に結論づけることができる。
L01〜L04の使用量が0.5〜2.5ppm(Bradfordタンパク質)である生地中の高いガラクトシルモノグリセリドレベルが、実施例5で記載されているベーキング性能と相関することも明らかである。
[無極性脂質]
無極性脂質は、凍結乾燥して粉砕した完全発酵生地(上のミニバタール焼成実験を参照されたい)を1%酢酸を含有するヘプタンと共に激しく振盪して抽出する。遠心分離後、Spherisorb S3CN(Phenomenex OOD−0097−EO;100×4.6mm)上のHPLCで透明な上清を分析し、類脂質構成要素を1.5l/分の窒素流、温度40℃、衝撃子オフで、蒸発光散乱(Alltech ELSD 2000ES)によって検出する。溶出は、流速1.0ml/分、注入量20μl、および周囲カラム温度において、以下の勾配プログラム中の2つの移動相(A:ヘプタンおよびB:1%酢酸を含有するtert−ブチル−メチルエーテル)を使用して実施する。
無極性脂質は、凍結乾燥して粉砕した完全発酵生地(上のミニバタール焼成実験を参照されたい)を1%酢酸を含有するヘプタンと共に激しく振盪して抽出する。遠心分離後、Spherisorb S3CN(Phenomenex OOD−0097−EO;100×4.6mm)上のHPLCで透明な上清を分析し、類脂質構成要素を1.5l/分の窒素流、温度40℃、衝撃子オフで、蒸発光散乱(Alltech ELSD 2000ES)によって検出する。溶出は、流速1.0ml/分、注入量20μl、および周囲カラム温度において、以下の勾配プログラム中の2つの移動相(A:ヘプタンおよびB:1%酢酸を含有するtert−ブチル−メチルエーテル)を使用して実施する。
参考のトリ、ジ、モノグリセリドおよび脂肪酸の参照を使用して様々な化合物の溶出順序を示し、それらの応答係数および生地中存在量を計算する。
[実施例7]
[焼成実験−フルサイズバタール中の部分的DATEM置換]
いくつかのベーキング用途では、実施例5で記載されているようにDATEMを本発明に従った脂肪分解酵素で完全に置換するより、DATEMを部分的に置換する方が有益であることができる。この実施例では、DATEMとL01とを含んでなる組成物、およびDATEMとL02とを含んでなる組成物の生地およびベークド製品の特性に対する効果を分析した。
[焼成実験−フルサイズバタール中の部分的DATEM置換]
いくつかのベーキング用途では、実施例5で記載されているようにDATEMを本発明に従った脂肪分解酵素で完全に置換するより、DATEMを部分的に置換する方が有益であることができる。この実施例では、DATEMとL01とを含んでなる組成物、およびDATEMとL02とを含んでなる組成物の生地およびベークド製品の特性に対する効果を分析した。
0.3%のDATEMを含むレシピ中のDATEMの半分を置換するのに必要な脂肪分解酵素量を見積もるために、0.15%のDATEMと、それぞれL01またはL02を含有して少なくとも2mg/mlの総Bradfordタンパク質がある様々な量の無細胞上清との組み合わせのフルサイズバタール中におけるベーキング性能を研究した。
0.15%のDATEMと組み合わされた異なる使用量の脂肪分解酵素の生地および最終ベークド製品の双方に対する様々な効果を空試験、すなわちDATEMまたは脂肪分解酵素のどちらもを含有しないローフ、それぞれ0.15%または0.3%の総DATEM濃度を含有するローフ、または0.25ppmのL01またはL02を含有するローフと比較した。
以下のフルサイズバタールレシピおよび工程を使用して、DATEM(Lametop 501)およびL01を含んでなる組成物を試験した。
2000gの小麦粉(すなわち1800gのKolibri(商標)および200gのIbis(商標))、47gの圧搾酵母、40gの塩、88ppmのアスコルビン酸、3ppmのBakezyme(登録商標)P500(真菌αアミラーゼ)、15ppmのBakezyme(登録商標)HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および57%の水をDiosnaミキサー内で、速度1で2分間、速度2で71Wh混合し、最終生地温度27℃にした。生地を350gずつ6個に分割し、丸めて32℃および90%相対湿度で20分間発酵させた。その後、生地片を型込め成形して34℃および相対湿度90%で90分間発酵させた。完全に発酵した生地片に切れ目を入れて、最初に蒸気を加えて240℃のオーブン内で30分間焼成した。この試行で使用した小麦粉バッチは、実施例5および6で使用した小麦粉バッチとは異なる収穫に由来する。この試行では、このKolibri小麦粉バッチの供給元の指示に従って、より高いアスコルビン酸濃度を使用した。
2000gの小麦粉(すなわち1800gのKolibri(商標)および200gのIbis(商標))、47gの圧搾酵母、40gの塩、88ppmのアスコルビン酸、3ppmのBakezyme(登録商標)P500(真菌αアミラーゼ)、15ppmのBakezyme(登録商標)HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および57%の水をDiosnaミキサー内で、速度1で2分間、速度2で71Wh混合し、最終生地温度27℃にした。生地を350gずつ6個に分割し、丸めて32℃および90%相対湿度で20分間発酵させた。その後、生地片を型込め成形して34℃および相対湿度90%で90分間発酵させた。完全に発酵した生地片に切れ目を入れて、最初に蒸気を加えて240℃のオーブン内で30分間焼成した。この試行で使用した小麦粉バッチは、実施例5および6で使用した小麦粉バッチとは異なる収穫に由来する。この試行では、このKolibri小麦粉バッチの供給元の指示に従って、より高いアスコルビン酸濃度を使用した。
以下のフルサイズバタールレシピおよび工程を使用して、DATEM(Lametop)およびL02を含んでなる組成物を試験した。2000gの小麦粉(すなわち1800gのKolibri(商標)および200gのIbis(商標))、47gの圧搾酵母、40gの塩、68ppmのアスコルビン酸、2ppmのBakezyme(登録商標)P500(真菌αアミラーゼ)、15ppmのBakezyme(登録商標)HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および57%の水をDiosnaミキサー内で、速度1で2分間、速度2で71Wh混合し、最終生地温度27℃にした。生地を350gずつ6個に分割し、丸めて32℃および90%相対湿度で20分間発酵させた。その後、生地片を型込め成形して34℃および相対湿度90%で100分間発酵させた。完全に発酵した生地片に切れ目を入れて、最初に蒸気を加えて240℃のオーブン内で30分間焼成した。ここでもまた、この試行で使用した小麦粉バッチは、L01を含んでなる組成物のために使用した小麦粉バッチ、そして実施例5および6で使用した小麦粉バッチとは異なる収穫に由来する。
DATEMおよびL01を含んでなる組成物の結果を表17に示す一方、DATEMおよびL02を含んでなる組成物の結果は表18に示す。パンおよび生地の特徴は実施例5で記載されているようにして評価した。
これらの結果は、0.15%のDATEMと、それぞれ0.08ppmのL01または0.07ppmのL02とを含んでなる組成物が、0.3%のDATEMを置換するのに効果的であり、比較できる生地安定性、ローフ体積、窯伸び、クラム構造およびクラム色をもたらしたことを明らかに示す。それぞれ0.25ppmのL01またはL02の最小使用量は、実施例5で示されるように0.3%のDATEMを置換するのに十分であることができる。意外にも、それぞれおよそ半量のL01使用量(0.12ppm)または半量のL02使用量(0.10ppm)と、半量のDATEM使用量(0.15%のDATEM)の組み合わせは、0.3%のDATEM単独と比較して、そしてそれぞれ0.25ppmのL01単独または0.25ppmのL02単独と比較して、生地安定性、クラム構造、および窯伸びの改善を示した。これはDATEMと、本発明に従った脂肪分解酵素L01またはL02とを含んでなる組成物が相乗効果を示すことを示唆する。
[実施例8]
[ビクトリアケーキ中における本発明の脂肪分解酵素の効果]
脂肪分解酵素をケーキレシピ中で使用して、例えばねり粉のエマルジョン安定性を改善できる。ここではビクトリアケーキ中における効果について、L01を試験した。
[ビクトリアケーキ中における本発明の脂肪分解酵素の効果]
脂肪分解酵素をケーキレシピ中で使用して、例えばねり粉のエマルジョン安定性を改善できる。ここではビクトリアケーキ中における効果について、L01を試験した。
フラットビーターミキサーが備わっているHobartミキサーを使用して、ビクトリアケーキを次のように調製した。
1.無塩バター19%および糖21%を混合し、
2.乾燥成分:
加熱処理ケーキ用小麦粉(Albatros、Meneba)30%、ベーキングパウダー(SAPP15)0.4%、炭酸水素ナトリウム0.3%、粉乳0.4%、塩0.13%、および表19に示すL01を添加して混合し、
3.混合中に液体成分:
全卵23%(w/w)、水3.6%(w/w)、19%(w/w)、グリセリン2.1%(w/w)を添加して、
4.ボールの縁をヘラで擦り落とし最高速度で2分間混合する。
1.無塩バター19%および糖21%を混合し、
2.乾燥成分:
加熱処理ケーキ用小麦粉(Albatros、Meneba)30%、ベーキングパウダー(SAPP15)0.4%、炭酸水素ナトリウム0.3%、粉乳0.4%、塩0.13%、および表19に示すL01を添加して混合し、
3.混合中に液体成分:
全卵23%(w/w)、水3.6%(w/w)、19%(w/w)、グリセリン2.1%(w/w)を添加して、
4.ボールの縁をヘラで擦り落とし最高速度で2分間混合する。
成分百分率は、最終ねり粉重量の%(w/w)で示す。L01の使用量は、ppm、すなわち空試験レシピ中の全卵液質量(kg)に対するBradfordタンパク質(mg)で示す。
最終ねり粉重量1496gのねり粉を焼き型(直径13cm)あたり300gのねり粉重量に秤量し、165/170℃で45分間焼成した。
ねり粉および最終ケーキの双方に対するL01の様々な効果を空試験、すなわち脂肪分解酵素L01を含有しないねり粉/ケーキと比較した。
特定のねり粉体積(ここでは300ml)の重量を測定して、ねり粉の見かけ密度、すなわちねり粉体積あたりのねり粉重量(g/l)を判定した。
ケーキ体積を自動化パン体積分析器(BVM−3、TexVol Instruments)によって測定し、ケーキを秤量してケーキの比体積(ml/g)を計算した。空試験ケーキの特定ケーキ体積を100%と定義した。
ケーキを1個ずつ、室温でポリエチレンバッグ内に保存した。焼成の1、8、および18日後、4cm円柱状プローブを使用したSMS TAX2テクスチャー分析器(Stable Microsystems)を使用して、クラムの堅さと弾性を測定した。ケーキ毎に、ケーキの中心から採取した4片のスライスを測定した。プローブをケーキスライスに10mm押し込んで、直ちに、そして30秒後に抵抗性を記録した。相対値(低下百分率)は、応力に対応する製品の能力である弾性を表す。t=0における絶対値は堅さを表す。
クラム孔均質性は、熟練したパン職人によって視覚的に、1から10の相対尺度、1=不均一で不規則なクラム構造〜10=均質で均一のクラム構造で評価した。
クラム孔径は、熟練したパン職人によって視覚的に、1から10の相対尺度、1=非常に大きい(開放クラム構造)〜10=非常に小さい(非常に細かいクラム構造)で評価された。
L01の添加は、空試験ケーキと比較して、初期および貯蔵寿命中の双方で、ねり粉密度低下、ケーキ体積増大、孔径の小さいより均質なクラム、およびクラム堅さ低下をもたらした。試験されたケーキについて、クラム弾性に有意差は見られなかった。
これらの結果は、本発明の脂肪分解酵素がケーキねり粉のエマルジョン安定化を改善し、総体的に改善されたケーキ品質をもたらしたことを明らかに示す。
これらの結果は、また本発明の脂肪分解酵素が、パンレシピ中で例えばDATEMまたはSSL/CSLなどの乳化剤を置換する上で機能的であるだけでなく、乳化剤非含有ケーキレシピ中でも、本発明の脂肪分解酵素の添加が、モノステアリン酸グリセロールなどの乳化剤の添加によって得られる効果であるケーキ体積増大、そして通常はモノグリセリドなどの乳化剤の添加によって得られる効果であるケーキ柔らかさの増大をもたらすことも示す。
[実施例9]
[卵低減スポンジケーキ中におけるねり粉およびクラム特性に対する本発明の脂肪分解酵素の効果]
スポンジケーキレシピ中の卵低減は、貧弱な開放クラム構造がある堅くて砕けやすいケーキをもたらす。脂肪分解酵素は、このような卵低減ケーキレシピ中で総体的ケーキ品質を改善するのに使用できる。ここでは卵低減スポンジケーキ中における、L01単独の効果、およびホスホリパーゼAとの併用効果を試験した。
[卵低減スポンジケーキ中におけるねり粉およびクラム特性に対する本発明の脂肪分解酵素の効果]
スポンジケーキレシピ中の卵低減は、貧弱な開放クラム構造がある堅くて砕けやすいケーキをもたらす。脂肪分解酵素は、このような卵低減ケーキレシピ中で総体的ケーキ品質を改善するのに使用できる。ここでは卵低減スポンジケーキ中における、L01単独の効果、およびホスホリパーゼAとの併用効果を試験した。
ホスホリパーゼとして、5000CPU/gを含有するA.ニガー(niger)中で産生されるホスホリパーゼA2である、Cakezyme(商標)(オランダ国のDSM Food Specialties)を使用した。基質としてrac1,2−ジオクタノイルジチオホスファチジルコリンを使用して、ホスホリパーゼ活性を測定し、反応は405nmで分光光度的に追跡して、活性を色素産生ホスホリパーゼ単位で表した。1CPU(色素産生ホスホリパーゼ単位)は、40℃およびpH8.0において、卵黄から1分あたり1μmolの酸を遊離させる酵素量と定義される1EYU(卵黄単位)に正規化した。
針金製泡立てミキサーが備わっているHobartミキサーを使用して、スポンジケーキを次のように調製した。
最終ねり粉重量中の成分%(w/w):
糖25%、加熱処理ケーキ用小麦粉(Albatros、Meneba)21%、ベーキングパウダー(SAPP28)0.6%、小麦デンプン8.3%、乳化剤(BV40)3.3%、炭酸水素ナトリウム0.4%、全卵(全量卵参照ねり粉用:30%、卵低減ねり粉用:24%)、水(全量卵参照ねり粉用:11.4%、卵低減ねり粉用:17.4%)
1.表20に示す各量のL01および/またはホスホリパーゼAを含む全成分を速度1で1分間混合する
2.速度3で5分間混合する
3.速度1で1分間混合する
最終ねり粉重量中の成分%(w/w):
糖25%、加熱処理ケーキ用小麦粉(Albatros、Meneba)21%、ベーキングパウダー(SAPP28)0.6%、小麦デンプン8.3%、乳化剤(BV40)3.3%、炭酸水素ナトリウム0.4%、全卵(全量卵参照ねり粉用:30%、卵低減ねり粉用:24%)、水(全量卵参照ねり粉用:11.4%、卵低減ねり粉用:17.4%)
1.表20に示す各量のL01および/またはホスホリパーゼAを含む全成分を速度1で1分間混合する
2.速度3で5分間混合する
3.速度1で1分間混合する
最終ねり粉重量848gのねり粉を焼き型(直径28cm)あたり400gのねり粉重量に秤量し、180/180℃で25分間焼成した。
L01使用量は、ppm、すなわち参照ねり粉中の全卵液(kg)に対するBradfordタンパク質(mg)で示し、ホスホリパーゼA使用量は、全卵参照ねり粉中の全卵液に対する%Cakezyme(商標)(製品)重量で示す。
ケーキクラム構造は熟練したパン職人によって視覚的に、1から10の相対尺度、1=セル壁がより厚い開放/不規則なクラム構造〜10=セル壁がより薄い非常に細かい/均一のクラム構造で評価された。
ここでクラム柔らかさは、1:非常に堅い〜10:非常に柔らかいの相対スコアで視覚的に判定された。
クラム凝集性は、1:非常に砕けやすい〜10:凝集性の相対スコアで手動で判定された。
卵の20%低減と、対応する水によるねり粉重量の埋め合わせは、全量卵参照と比較して、ねり粉粘度低下、クラム柔らかさ低下、クラム構造不良、およびクラム凝集性低下をもたらした。
卵低減ねり粉にホスホリパーゼAを添加することで、ねり粉粘度は、全量卵ねり粉のレベルに戻り、クラム柔らかさおよび凝集性は卵低減ケーキと比較してかなり改善され、クラム構造に至っては全量卵ケーキと比較してもわずかに改善された。
L01を卵低減ねり粉に添加することは、全量卵参照と比較してねり粉粘度のわずかな改善とより細かいクラム構造をもたらし、卵低減参照と比較してクラム柔らかさ改善、特に改善されたクラム凝集性をもたらした。
意外にもL01およびホスホリパーゼAを含んでなる組成物の卵低減ケーキねり粉への添加は、L01またはホスホリパーゼAのどちらかが添加された全量卵および卵低減レシピと比較して、ねり粉粘度、クラム構造、およびクラム柔らかさをなおもさらに改善し、クラム凝集性は全量卵ケーキのレベルに戻った。
これらの結果から、本発明の脂肪分解酵素の単独でのまたはホスホリパーゼAとの併用での添加が、卵低減ケーキの総体的特性を改善することが明らかである。卵低減ケーキレシピ中では、本発明の脂肪分解酵素を単独で、そして特にホスホリパーゼAとの併用で添加すると、全量卵ケーキよりもさらにより良いクラム柔らかさと構造を達成できる。
[実施例10]
[積層生地のサクサク感に対する本発明の脂肪分解酵素の効果]
積層生地を1000gのEdelweiss小麦粉、430gの水、100gの卵、50gの酵母、20gの塩、10gの糖、15gのパン改良剤、およびL01から作成した。L01は0.23ppm、すなわち小麦粉1kgあたりのBradfordに従って測定されたタンパク質mgで使用した。参照は酵素を含まなかった。適切に休ませた後、生地を1層に圧延した。積層マーガリン(オランダ国ベルヘン・オプ・ゾーム(Bergen op Zoom)のUniproからのTrioKorst)の層を生地シートにたたみ込んだ。次にこれを標準操作手順において積層生地に圧延した。リボンを最終生地から切断して蝶形ペーストリーに折り畳み、235℃のオーブン内で20分間焼成した。半閉鎖キャビネット内での2日間の保存後に製品を試験した。
[積層生地のサクサク感に対する本発明の脂肪分解酵素の効果]
積層生地を1000gのEdelweiss小麦粉、430gの水、100gの卵、50gの酵母、20gの塩、10gの糖、15gのパン改良剤、およびL01から作成した。L01は0.23ppm、すなわち小麦粉1kgあたりのBradfordに従って測定されたタンパク質mgで使用した。参照は酵素を含まなかった。適切に休ませた後、生地を1層に圧延した。積層マーガリン(オランダ国ベルヘン・オプ・ゾーム(Bergen op Zoom)のUniproからのTrioKorst)の層を生地シートにたたみ込んだ。次にこれを標準操作手順において積層生地に圧延した。リボンを最終生地から切断して蝶形ペーストリーに折り畳み、235℃のオーブン内で20分間焼成した。半閉鎖キャビネット内での2日間の保存後に製品を試験した。
テクスチャー分析器(英国サリーのStable Micro Systems LtdからのTA−XT Plus)を使用して、機械的試験を実施した。2日間の保存後に、速度1mm/秒の25mmウェッジプローブを使用して、参照およびL01添加製品の少なくとも10個のペーストリーを特性決定した。
力−対−圧縮距離曲線を分析し、テクスチャー分析ソフトウェアからのマクロを使用して、パラメーターを圧縮曲線から得た。StatGraphics(統計学的分析およびモデル化ソフトウェア)から散布図を得て、参照ペーストリーとL01を含有するペーストリーとの間の統計的有意差を判定した。環境条件での2日間の保存後の圧縮実験結果を表21に示す。5つのテクスチャパラメーターについて、参照とL01を用いて調製された製品との間に有意差が見られた。L01を含む製品は、参照よりも成形がより容易であることがさらに分かった。
これは本発明に従った脂肪分解酵素を用いて調製された積層ベークド製品が、周囲条件での2日間の保存後に、酵素なしで調製された製品よりもさらにサクサクしていることを示す。
Claims (34)
- (a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物、
(b)配列番号1の補体であるポリヌクレオチドとハイブリダイズして、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%相同的である、ヌクレオチド配列、
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列中の成熟ポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%の相同性を有するその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列、
(d)配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(e)(a)、(b)、(c)、(d)のいずれか1つで定義される配列の遺伝コードの縮重の結果として縮重する配列、
(f)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)で定義されるヌクレオチド配列の補体であるヌクレオチド配列
からなる、単離されたポリヌクレオチド。 - 脂肪分解酵素をコードする、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
- 合成的に製造される、請求項1または2に記載の単離されたポリヌクレオチド。
- 配列番号1に記載のポリヌクレオチドの機能的同等物であり、それと少なくとも90%の相同性を有して、配列番号3に記載のまたは配列番号5に記載のまたは配列番号7に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
- 高度ストリンジェンシー条件下で配列番号1の補体であるヌクレオチド配列とハイブリッド形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列を含んでなるベクター。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列と、適切な宿主細胞中のポリヌクレオチド配列の発現を可能にする少なくとも1つの制御配列とが作動的に連結する発現ベクターである、請求項6に記載のベクター。
- 適切な宿主細胞が糸状菌である、請求項7に記載のベクター。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含んでなる、または請求項6〜8のいずれか一項に記載のベクターを含んでなる、組み換え宿主細胞。
- 前記ポリヌクレオチドまたはベクターを発現または過剰発現できる、請求項9に記載の組み換え宿主細胞。
- 前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップと、前記宿主細胞から前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターを単離するステップを含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または請求項6〜8のいずれか一項に記載のベクターを製造する方法。
- (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドと少なくとも90%相同的なアミノ酸配列を有するその機能的同等物、
(b)前記成熟ポリペプチドと少なくとも60%相同的であり、トリグリセリドに対する特異性の程度Rspecが少なくとも0.7である、配列番号2のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であるポリペプチド、
(c)請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
からなる、脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチド。 - 配列番号2に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドの機能的同等物であり、それと少なくとも90%の相同性を有して、配列番号4に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、または配列番号6に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、または配列番号8に記載のアミノ酸配列中の成熟ポリペプチドに一致するアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項12に記載の単離されたポリペプチド。
- 適切な宿主細胞中で、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または請求項6〜8のいずれか一項に記載のベクターを発現することによって得られる、請求項12または13に記載の単離されたポリペプチド。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項6〜8のいずれか一項に記載のベクターの発現を可能にする条件下で、請求項9または10に記載の組み換え宿主細胞を培養するステップと、コードされたポリペプチドを細胞または培地から任意に回収するステップを含んでなる、請求項12〜13のいずれか一項に記載のポリペプチドを製造する方法。
- 請求項12〜14のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチドの食品製造における使用。
- 乳製品の製造における、好ましくはチーズ、チーズ様製品、酵素処理チーズ(EMC)の製造における、またはバター脂肪またはクリームの脂肪分解によって得られる遊離脂肪酸混合物の製造における、請求項16に記載の使用。
- 請求項12〜14のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチドが、酵素が反応するのに十分な条件下で、乳製品の製造で使用される乳製品組成物に添加される、乳製品を調製する方法。
- ΣC4〜C10相対含量/ΣC12〜C18相対含量が少なくとも0.7であり、「ΣC4〜C10相対含量」が脂肪分解活性を有するポリペプチドで処理された組成物中に存在するC4含有、C6含有、C8含有、およびC10含有遊離脂肪酸の相対含量の和であり、「ΣC12〜C18相対含量」が脂肪分解活性を有するポリペプチドで処理された組成物中に存在するC12含有、C14含有、C16含有、およびC18含有遊離脂肪酸の相対含量の和である、請求項16または17に記載の使用または請求項18に記載の方法。
- ポリペプチドが風味の生成において使用される、請求項16、17または19に記載の使用または請求項18または19に記載の方法。
- 乳製品の風味プロフィール中において、シャープでツーンとする匂いのスパイシーな香気が石鹸のような香気よりも強い、請求項19に記載の使用または方法、または請求項20に記載の使用または方法。
- 請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法によって得られる乳製品。
- ベークド製品の製造における、請求項16に記載の使用。
- 請求項12〜14のいずれか一項に記載の脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドと、1つ以上の追加的酵素とを含んでなるベーキング酵素組成物。
- DATEMと、請求項12〜14のいずれか一項に記載の脂肪分解活性を有する単離されたポリペプチドとを含んでなるベーキング組成物。
- 請求項12〜14のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項24または25に記載の組成物を生地成分の少なくとも1つに添加するステップを含んでなる、生地を調製する方法。
- 請求項12〜14のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項24または25に記載の組成物を含んでなる生地。
- 改善された生地安定性を有する、請求項27に記載の生地。
- 生地の強度増大、安定性増大、弾性増大、粘性低下、および伸展性改善からなる群から選択される特性改善の少なくとも1つを有する、請求項27〜28のいずれか一項に記載の生地。
- 請求項27〜29のいずれか一項に記載の生地を焼くステップを含んでなる、ベークド製品を調製する方法。
- 請求項30に記載の方法によって得られるベークド製品。
- 体積増大、風味改善、クラム構造改善、クラム柔らかさ改善、サクサク感改善、気泡形成低下、および老化防止改善からなる群から選択される、少なくとも1つの特質改善を有する、請求項31に記載のベークド製品。
- 製品が、積層生地から調製されるパン、ケーキまたはベークド製品である、請求項32に記載のベークド製品。
- ケーキが、乳化剤非含有ケーキまたは卵低減ケーキである、請求項33に記載のベークド製品。
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