優先権
本出願は2008年2月4日に出願された米国仮出願第61/063,639号に基づく優先権を主張する。
工業的プロセス、例えばデンプンの液化で使用される、α-アミラーゼ酵素の変異種について述べられている。このα-アミラーゼ変異種は特異的活性が高く、液化工程においてより速やかに最大粘度を低下させることができる。
出発原料としてデンプンを使用する多くの工業的プロセスでは、高圧で機能してデンプンを迅速に分解しより小分子の炭水化物を遊離し、粘度を下げることができるデンプン分解性酵素が望ましい。粘度がより低下すれば、そのような酵素はデンプンを開裂するためより利用することができ、反応混合物を撹拌するため機械的動力がより小さくて済む。バチルス・リケニフォルミス、またはジオバチルス・ステアロテルモフィルス由来のアルファ-アミラーゼ(それぞれAmyLとAmySと呼ばれ、高温でのデンプンの液化に良く適している)等の多くの酵素がデンプンの液化に有用である。
一般的に、酵素は目的を達成するために十分な量で液化プロセスに加えられなければならない。つまり、予め設定された時間枠内でデンプン基質を液化するために十分な酵素活性(または触媒活性)がなければならない。酵素活性は酵素単位量毎で測定でき、特異的活性と呼ばれる。従って、比較的低い特異的活性をもつ酵素は、所与のプロセスにおいて望む酵素活性を得るためにより多くの量で使用されなければならない。高い特異的活性の酵素剤を作り、所与の効果を得るために少量の使用で足りれば、有利であることが多い。これは、例えば、粗製の酵素製剤を精製することにより達成できる。しかし、純粋な酵素でも、特定の分析条件下で所与の基質に対して特異的活性に限度がある。
高温でのデンプンの液化に適した改良α-アミラーゼが望まれている。
本明細書ではデンプン分解の工業的プロセスで使用するためのα-アミラーゼ変異種が提供される。この変異種のアミラーゼは、バチルス・ステアロテルモフィルス由来の野生型α-アミラーゼ、特にAmyS α-アミラーゼのポリペプチド配列に基づく。
この変異種は、変異種が生じた親アミラーゼと比較して特異的活性が向上し、それによりデンプン加水分解用途において性能が向上する点で有用である。この変異アミラーゼは、デンプンの分解プロセス、例えば、エタノール製造プロセスのための液化、及び織物及び他の織った素材の脱糊で特に有用である。この酵素は比較的、熱に安定であり、デンプン分解で一般的に使用される条件下で良好な活性をもつ。この変異アミラーゼの特徴は高温における液化の際、デンプンスラリーの初期粘度を低下させる点で改善された性質を有することである。さらに、この変異アミラーゼは、他の酵素と別にして、及び他の酵素とブレンドして少量で使用することができるので、それらは、さらに最終ユーザーと製造業者の両者に経済的な利益を与える。
本発明の組成物と方法の実施態様は、単離された変異α-アミラーゼ、これらの酵素を含有する組成物、この酵素または組成物の使用法、またこの変異酵素をコードする核酸、発現ベクター、及びα-アミラーゼ変異種を発現する宿主細胞を含む。
一面では、バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼ由来の変異α-アミラーゼが提供される。この変異種は成熟タンパク質の181及び/又は182の位置で変異している。詳しくいえば、181、182又は両方の位置で天然で存在するアミノ酸が、その位置で野生型には含まれない異なるアミノ酸残基で置換されているように、野生型の配列が変異されている。好ましくは、181での野生型アミノ酸残基がAla、Cys、Asp、Glu、Leu、又はProで置き換えられ、182での野生型アミノ酸残基がAla、SerまたはProで置き換えられている。
別の面では、α-アミラーゼ活性をもつ一以上の変異α-アミラーゼを含む組成物が提供される。この組成物は、さらに一以上の追加の酵素、例えば、アミロースとアミロペクチンを含む複雑な炭水化物、例えばデンプンの液化に有用である活性を持つ酵素を更に含む。一例では、本明細書で述べられ、または例が示された一以上の変異種を含有する食品用グレードの凍結乾燥された組成物が提供される。
また、変異α-アミラーゼ、例えば、配列番号1−17のアミノ酸配列をもつものをコードするポリヌクレオチドが提供される。特定のポリヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、10、15、17または19のアミノ酸配列をもつポリペプチドをコードする。このポリヌクレオチドを含むベクター、このポリヌクレオチドまたはベクターの一つを含む細菌細胞又は宿主細胞、及びコードされたタンパク質を発現する発現システムもまた、提供される。
アミラーゼ変異種を作成し使用する方法と組成物も提供される。一面では、バチルス・ステアロテルモフィルス由来の野生型α-アミラーゼの少なくとも1個の変異種を含む組成物を製造する方法が提供される。本法は、少なくとも1個の変異α-アミラーゼが発現されている発酵プロセスのために宿主細胞を使用することを含む。上記のように、この変異種は成熟タンパク質の181または182の位置で置換を含む。この宿主細胞は、好ましくは、バチルス属の種、例えば、B・リケニフォルミス、B・スブチリス、またはB・ステアロテルモフィルスである。本法は少なくとも1個の変異α-アミラーゼを少なくとも部分的に精製する最終工程を含み、それにより、少なくとも1個の変異α-アミラーゼを含有する組成物の製造を行う。
本明細書で記載されているアミラーゼ変異種を使用する、デンプンスラリーを液化する方法が提供される。本法はデンプンを含有するスラリーを作り、このスラリーを液化に適した温度にまで加熱し、このスラリーへ本明細書で述べられた少なくとも1個の変異種を含有する組成物を加え、このデンプンスラリーを液化するに十分な時間と温度でスラリーをこの組成物とともに保持することを含む。
さらに、前もってデンプン又はデンプン誘導体を含有するコーティング剤と接触した織った素材を処理する方法を提供する。本法は、織った素材からコーティングを多く除去するに十分な時間と条件で先に述べたα-アミラーゼ変異種を含有する液体と織った素材を接触させることを含む。
本明細書では酵素ブレンドもまた提供される。この酵素ブレンドは、少なくとも第1及び第2のα-アミラーゼを含有する。第1のα-アミラーゼは液化プロセスで使用したとき第2のα-アミラーゼで与えられるものよりも低い最終粘度を与える触媒活性をもつ。各酵素が単独で適した液化プロセスで使用される場合、第1のα-アミラーゼの活性は、第2のα-アミラーゼの活性から得られるよりも高い最高粘度を与える。この酵素ブレンドは、液化プロセスで使用される場合、同様な液化プロセスで第1のα-アミラーゼのみの使用から得られるものとほぼ等しい最終粘度と、同様な液化プロセスで第2のα-アミラーゼのみでの使用により得られるも相当に低い最高粘度を与える、全体としての又は組み合わされた触媒活性を与える。
この酵素ブレンドを使用するデンプンスラリーを液化する方法もまた、与えられる。本方法はデンプンを含有するスラリーを調製し、スラリーを液化に適した温度にまで加熱し、このスラリーへ上記の酵素ブレンド(例えば、第1及び第2のα-アミラーゼを含有する)を加え、このデンプンスラリーを液化するに十分な時間と温度、この酵素ブレンドとこのスラリーを保持することを含む。好ましくは、本法は同様な液化プロセスで第1のα-アミラーゼのみを使用した場合と同等な程低い最終粘度を与え、また同様な液化プロセスで第2のα-アミラーゼのみを使用した場合よりも低い最高粘度を与える。
本明細書に開示されたアミラーゼ変異種、本組成物、及び/又は酵素ブレンドを使用するエタノール製造法もまた与えられる。
変異アミラーゼ酵素を作成する方法、液化のために、このα-アミラーゼ変異種、及びこの変異種を含有する組成物とブレンドを使用する方法、及びコーティングを除くため織った素材を処理する方法が提供される。
また、デンプンスラリーの液化を促すキットもまた提供される。このキットは少なくとも、
上記の変異α-アミラーゼ
上記のアミラーゼ変異種を含有する組成物
上記の食品グレードの凍結乾燥組成物、または
上記の酵素ブレンド;及びデンプンスラリーの液化でこのキットを使用するための指図書
からなる。
本組成物と方法の種々な面と実施態様は以下に述べられている。
ある面では、バチルス・ステアロテルモフィルス由来の親α-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼが提供され、この変異種は、親α-アミラーゼと比較して181又は182、または両位置で置換を受けており、変異種の181の位置のアミノ酸残基は、Pro、Ala、Leu、Cys、Asp及びGluから選ばれ、変異種の182の位置のアミノ酸残基はPro、Ala及びSerから選ばれる。
いくつかの実施態様では、変異α-アミラーゼは配列番号3(1181P)、配列番号2(1181A)、配列番号10(1181L)、配列番号4(1181C)、配列番号5(1181D)、配列番号6(1181E)、及び配列番号15(1181Y)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。ある実施態様では、この変異α-アミラーゼは配列番号18(G182P)、配列番号16(G182A)、と配列番号17(G182S)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの実施態様では、親α-アミラーゼは配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を有する。ある実施態様では、この親α-アミラーゼは配列番号1のアミノ酸配列をもつ。
いくつかの実施態様では、この変異α-アミラーゼは特定の分析条件下、野生型α-アミラーゼと比較して特異的活性が増大している。いくつかの実施態様では、この変異種は約50-90℃の間で特異的活性が増大している。特定の実施態様では、変異α-アミラーゼは約65-85℃の間で特異的活性が増大している。
別の面では、変異α-アミラーゼを含有する組成物が提供される。いくつかの実施態様では、この組成物は、少なくとも1個の追加の酵素を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの追加の酵素はアミロースとアミロペクチンを含有する複雑な炭水化物の液化に有用な活性を有する。特定の実施態様では、少なくとも1個の追加の酵素は追加のα-アミラーゼである。
いくつかの実施態様では、液化プロセスの本組成物は、変異α-アミラーゼが存在しない場合にこの追加の酵素により液化された同様なデンプンスラリーの最高粘度と比べてデンプンスラリーの最高粘度を低くする。
いくつかの実施態様では、本組成物は食品又は食品加工で使用するために調合される。関連する実施態様は、変異α-アミラーゼを含有する食品グレードの凍結乾燥された組成物である。
別の面では、変異α-アミラーゼをコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドのコドンの用法は、微生物または植物での変異α-アミラーゼの発現のため最適化されている。
いくつかの実施態様では、変異α-アミラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターが提供される。関連する実施態様では、この発現ベクターを含む細菌細胞が提供される。別の関連する実施態様では、変異α-アミラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。このポリヌクレオチドは発現ベクターに含まれても良い。宿主細胞はバチルス・リケニフォルミス、バチルス・スブチリス、またはバチルス・ステアロテルモフィルスでも良い。または宿主細胞は植物でも良く、この植物はエタノール製造に使用されても良い。
別の面では、デンプンスラリーを液化する方法が提供され、これは
デンプンを含有するスラリーを作り
デンプンの液化に適した温度までこのスラリーを加熱し、
このスラリーヘ請求項9の組成物を加え、そして
このデンプンスラリーを液化するために十分な時間と温度で組成物とこのスラリーを保持する
ことを含む。
本法のいくつかの実施態様では、温度は約50℃から約95℃である。本法のいくつかの実施態様では、このスラリーは乾燥重量で約15-40%のデンプンを含む。
本法のいくつかの実施態様では、液化は発酵プロセスの一部である。本法のいくつかの実施態様では、この発酵は食品、食品添加物、燃料、燃料添加剤を製造するために使用される。方法のいくつかの実施態様では、燃料または燃料添加剤はアルコールである。特定の実施態様では、このアルコールはエタノールである。
本法のいくつかの実施態様では、酵素反応工程は、親α-アミラーゼにより液化された匹敵するスラリーの最高粘度と比較して少なくとも25%低下した最高粘度を生じる。
別の面では、デンプン又はデンプン誘導体を含有するコーティングと先に接触した織った素材を処理する方法が提供され、この方法は、織った素材からコーティングを多く除去するに十分な時間と条件で変異α-アミラーゼを含有する溶液と織った素材を接触させることを含む。いくつかの実施態様では、織った素材は布地である。いくつかの実施態様では接触工程は周囲の気圧より高い圧力で行われる。
別の面では、デンプンスラリーを液化するための酵素ブレンドが提供され、このブレンドは、
少なくとも第1と第2のα-アミラーゼを含み、各触媒が同様な液化プロセスで、単独で使用された場合、第1のα-アミラーゼは、液化プロセスで使用される場合、第2のα-アミラーゼの対応する触媒活性より低い最終粘度と、高い最高粘度を生じる触媒活性を持つ。ここで、同様な液化プロセスで使用される場合、この酵素ブレンドは第1のα-アミラーゼ単独で使用したときとほぼ等しい最終粘度になり、第2のα-アミラーゼ単独の使用よりも相当に低い最高粘度を与える、触媒活性をもつ。
ここで同様な液化プロセスとは、温度、pH、カルシウムイオン濃度及び基質濃度についての特定の条件を含む。
関連する面では、デンプンを含有するスラリーを作り、このスラリーを液化に適した温度にまで加熱し、前記第1及び第2のα-アミラーゼを含有する酵素ブレンドをこのスラリーに加え、このデンプンスラリーを液化するのに十分な時間と温度でこの酵素ブレンドとスラリーを保持することを含む、デンプンスラリーを液化する方法が提供される。いくつかの実施態様では、最終粘度は、同様な液化プロセスで第1のα-アミラーゼのみの使用から得られるものとほぼ等しいほどに低く、最高粘度は、同様な液化プロセスで第2のα-アミラーゼのみを使用した場合よりも低い。いくつかの実施態様では、酵素ブレンドの添加量は、各酵素が同様な液化プロセスで単独で使用されたときに加えられる、第1と第2のα-アミラーゼそれぞれの相当する量よりも少量で第1及び第2のα-アミラーゼのそれぞれを加えることになる。いくつかの実施態様では、第1と第2のα-アミラーゼのそれぞれの量は、それぞれが単独で使用されるときに加えられる量の約半分である。
別の実施態様では、エタノールを製造する方法が提供され、これは、以下のうち1以上によりデンプンスラリーを液化し、
(a) バチルス・ステアロテルモフィルス由来の親α-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼであり、この変異種は、親α-アミラーゼと比較して181または182又は両位置のアミノ酸の位置での置換を含み、変異種の181でのアミノ酸残基は、Pro、Ala、Leu、Cys、Asp及びGluから選ばれ、変異種の182でのアミノ酸残基は、Pro、Ala、及びSerから選ばれる変異α-アミラーゼ
(b) (a)の変異α-アミラーゼを含有する組成物
(c) (a)の変異α-アミラーゼを含有する食品グレードの凍結乾燥された組成物、
または
(d) (a)の変異α-アミラーゼと第2のアミラーゼを含有する酵素ブレンド(変異α-アミラーゼと第2のアミラーゼのそれぞれが同様な液化プロセスで単独で使用される場合に、この変異α-アミラーゼは、液化プロセスで使用されるとき、第2のα-アミラーゼの対応する触媒活性よりも低い最終粘度を生じ、またそれより高い最高粘度を生じる触媒活性を有する)、スラリー中の少なくとも糖の一部を発酵させ、エタノールを生成し、得られたエタノールを少なくとも部分的に精製することを含む。
いくつかの実施態様では、さらに発酵工程の間にさらにエタノールを製造するため液化されたデンプンスラリーに1以上の追加の酵素を加える任意の工程を有する。
さらに別の実施態様では、デンプンスラリーの液化を促進するキットが提供され、このキットは、以下のうち少なくとも1つと、デンプンスラリーの液化においてこのキットを使用するための指図を含んでいる。
(a) バチルス・ステアロテルモフィルス由来の親α-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ(この変異種は、親α-アミラーゼと比較して181または182または両位置のアミノ酸に置換を受け、この変異種の181のアミノ酸残基がPro、Ala、Leu、Cys、Asp、及びGluから選ばれ、この変異種の182のアミノ酸残基は、Pro、Ala及びSerから選ばれる)
(b) (a)の変異α-アミラーゼを含有する組成物
(c) (a)の変異α-アミラーゼを含有する食品グレードの凍結乾燥された組成物、又は
(d) (a)の変異α-アミラーゼと第2のアミラーゼを含む酵素ブレンド(この変異α-アミラーゼと第2のアミラーゼのそれぞれが、同様な液化プロセスで単独で使用されるとき、この変異α-アミラーゼは、液化プロセスで使用されるとき、第2のα-アミラーゼの対応する触媒活性よりも低い最終粘度とそれよりも高い最高粘度を生じる触媒活性を有する。)
本組成物と方法のこれらの、及び他の面は以下の説明と図面から明らかになるであろう。
図1は、181でのAmySα-アミラーゼの変異種について熱安定性によるスクリーニングの結果を示す。
図2は、アミラーゼSPEZYME(登録商標)ETHYLを用いたデンプン加水分解反応(液化)の結果を示す。図A :65℃で5分間保持させた後、採取されたサンプルのHPLCクロマトグラム 図B、C、D:65℃から85℃へ温度を上昇させた後、5分、15分及び30分それぞれで採取したサンプルのHPLCクロマトグラム
図3はアミラーゼ、SPEZYME(登録商標)XTRAを使用したデンプン加水分解反応の結果を示す。図A:65℃で5分間保持した後に採取したサンプルのHPLCクロマトグラム 図B、C、D:65℃から85℃まで温度を上昇させた後、5分、15分及び30分各時点で採取されたサンプルのHPLCクロマトグラム。
図4は、変異α-アミラーゼAmyS 1181P(配列番号3)を用いたデンプン加水分解反応の結果を示す。図A:65℃で5分間保持した後採取されたサンプルのHPLCクロマトグラム。図B、C、D:温度を65℃から85℃へ上昇させた後、それぞれ、5分、15分及び30分で採取されたサンプルのHPLCクロマトグラム。
図5は図2、3、4の図Bを並べて比較したものを示す。
図6は粘度計で、液化している間、変異α-アミラーゼをSPEZYME(登録商標)XTRAと比較したものである。
図7A-Bは粘度測定により市販の酵素、変異種または両者のブレンドによるデンプンの液化を比較したものである。
図8は本出願で使用されている配列表を示す。
配列の簡単な説明
配列番号1は親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号2は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Aの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号3は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Pの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号4は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Cの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号5は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Dの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号6は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Eの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号7は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Fの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号8は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Gの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号9は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Hの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号10は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Lの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号11は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Rの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号12は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Sの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号13は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Tの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号14は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Vの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号15は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、I181Yの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号16は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、G182Aの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号17は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、G182Sの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
配列番号18は、親/野生型バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼに基づく変異α-アミラーゼ、G182Pの置換をもつ変異種のアミノ酸配列である。
詳細な説明
現在入手できるα-アミラーゼを上回るある利益と優位性を与えるアルファ-アミラーゼ(α-アミラーゼ)変異種が述べられている。変異α-アミラーゼは比較的良好な熱安定性と広い最適温度を示し、高温でのデンプン液化で使用できる。例えば、アルコール、特にエタノールのような発酵生産物の製造に使用できる。加えて、変異α-アミラーゼは特異的活性(つまり、酵素単位あたりの活性)が改善し、そのため親/野生型アミラーゼにより達成される同一の結果を得るためにより少量の変異アミラーゼが使用できる。
アミラーゼ変異種は液化プロセスと他のデンプン分解プロセス、例えば、織った素材の脱糊に有用である。またこの変異アミラーゼは、互いに連携させて、及びまたは、1以上の他の酵素と連携して、例えば、ブレンド中で使用できる。好ましくは、他の酵素は、変異α-アミラーゼに使用される条件と同一又は類似の反応条件で活性である。酵素ブレンドの使用は最終ユーザーにより多くの対応性を与え、また最終ユーザーと製造業者にとり、ある経済的な利点やプロセスにおける利点を提供する。
液化のような用途で特異的活性が増大し、変わった性能を与える変異酵素の発見は製造業者や最終ユーザーにアミラーゼの製造と使用について選択肢を与える。プロセスの条件、例えば、pH、温度、イオン強度及び補助因子の存在は、ブレンドに含まれる変異α-アミラーゼと一以上の他の酵素の活性を支えるために選ぶことができる。そのようなプロセスの条件は、費用が高く、時間がかかるバッチプロセスではなく、連続的又は半連続的プロセスの使用を容易にすることができる。
A. 定義と略号
詳細な説明に従い、以下の略号と定義が使用される。単数形表記は、文脈から明らかに異なる場合を除き複数も含む。従って、例えば、「酵素」という場合、複数のそのような酵素を含み、「調合物」という場合、1以上の調合物と本技術分野で当業者にそれと同等であると知られている物等をさす。
数値や数値幅について用語「約」は、数値が、記載されている値より10%大きく又は小さくあり得ることを示す。他の実施態様では、「約」は、記載されている値より5%大きく又は小さくあり得ることを示す。
別に定義されているのではない場合、本明細書で使用される全ての技術的、科学的用語は、本技術分野の通常の技術者により普通に理解されているのと同一の意味をもつ。以下の用語は明確にするために定義されている。
1. 定義
「アミラーゼ」とは、とりわけ、デンプン、アミロース、アミロペクチン等の分解を触媒できる酵素をいう。一般的に、α-アミラーゼ(EC3.2.1.1;α-D-(1→4)-グルカングルカノヒドロラーゼ)は、3個以上のα-D-(1-4)結合したグルコース単位を含む多糖中のα-D-(1→4)O-グルコースの結合を開裂するエンド活性の酵素として定義される。このα-アミラーゼは、α-配置にある還元性のある基を遊離する。これらは、無作為にデンプン、グリコーゲン及び関連する多糖及びオリゴ糖に作用する。対照的に、エキソ活性デンプン分解性酵素は、非還元性末端から基質分子を連続的に開裂する。グルカン1-4-α-マルトヒドロラーゼ(マルトース産生性α-アミラーゼ;EC3.2.1.133)は最終製品としてα-マルトースを産生する。一方、β-アミラーゼ(EC3.2.1.2)は、β-マルトースを産生する。β-アミラーゼ、α-グルコシダーゼ(EC3.2.1.20;α-D-グルコシド グルコヒドロラーゼ)、グルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3; α-D-(1→4)-グルカングルコヒドロラーゼ)、及び産生物特異的アミラーゼはそれらのそれぞれの基質から特定の長さのマルト-オリゴ糖を産生できる。グルコアミラーゼはアミロースとアミロペクチン分子の非還元性末端からグリコシル残基を遊離する。グルコアミラーゼは、また、1,4結合よりも非常に遅いが、α-1,6及びα-1,3結合の加水分解も触媒する。
「α-アミラーゼ変異種」、「α-アミラーゼ変異ポリペプチド」及び「変異アミラーゼ」または「変異酵素」は野生型α-アミラーゼのアミノ酸配列から修飾されたアミノ酸配列を持つα-アミラーゼタンパク質をいう。本明細書で使用する場合、「親酵素」「親配列」「親ポリペプチド」「野生型α-アミラーゼタンパク質」及び「親ポリペプチド」は、α-アミラーゼ変異ポリペプチドが作られる基になった酵素とポリペプチドをいい、例えば、バチルス又はジオバチルス属の種のα-アミラーゼである。野生型または親酵素として本明細書において好ましいものはバチルス・ステアロテルモフィルス由来のものである。親ポリペプチドをコードする核酸配列は、本明細書では「親核酸」といわれても良い。野生型α-アミラーゼは天然に生じる。「α-アミラーゼ変異種」は、成熟タンパク質(つまり、天然物か合成物かに拘らず、シグナル配列又は移動後に除去される他の配列を含まない活性分子)のアミノ酸残基において野生型α-アミラーゼと異なる。α-アミラーゼ変異種は「キメラ」又は「キメラ性の分子」であっても良く、例えば、一以上のポリペプチド由来の配列を含む融合タンパク質である。例えば、α-アミラーゼタンパク質は別のα-アミラーゼのシグナルペプチドに連結された成熟α-アミラーゼタンパク質を含むことができる。α-アミラーゼ変異種は、α-アミラーゼの触媒活性がその分子に存在するのであれば、1以上の分子に由来する1以上の部分、領域、またはドメインに融合している他の1分子に由来する1部分、領域またはドメインを含むという意味でキメラであっても良い。キメラ分子は、本明細書で使用する場合、天然に生じない。本明細書では、1又は2個のアミノ酸残基(181または182又は両方の位置)がその位置で天然では存在しないアミノ酸残基により置換されている酵素変異種が好ましい。
酵素に関し「活性」は触媒活性をいい、例えば活性の速度、活性の量、または特異的活性のような何れの認めうる酵素活性の尺度も含む。「特異的活性」は酵素単位当りの酵素の活性の尺度である。従って、特異的活性は、酵素の単位重量又は単位容量により表される。さらに、特異的活性は酵素の純度の尺度を含んでも良い。他の場合、例えば、標準活性が既知の場合又は比較のため知ることができる場合、特異的活性は、それ自体、純度の指標を与える。
「変異種」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチド又は核酸をいう。用語「変異種」は用語「突然変異種」と同義語として使用されても良い。変異ポリペプチドまたは核酸は、親ポリペプチドまたは核酸と比較して、アミノ酸または核酸配列において、1箇所以上で挿入、置換、欠失、トランスバージョン、トランケーション及び/または逆位を含む。変異核酸は、本明細書に示されている核酸配列にハイブリッド形成できる配列に相補的である配列を含み得る。例えば、変異配列は、厳格な条件下、例えば、50℃で0.2X SSC(1X SSC = 0.15M NaCl 、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)で本明細書に表された核酸配列にハイブリッド形成できる配列と相補的である。とりわけ、用語、変異種は高度に厳格な条件下、例えば、65℃、0.1X SSCで、本明細書に表された核酸配列にハイブリッド形成できる配列に相補的である配列を含む。種々の実施態様では、変異種は、少なくとも、本明細書で明示的に与えられた配列と、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98またはさらに99%も同一である。
本明細書では、用語「発現」はポリペプチドが遺伝子の核酸配列又は合成された配列に基づいて生成される過程を言う。この過程は転写と翻訳の両者を含む。「発現生成物」は、生体内又は生体外であっても一般的に翻訳により合成されたタンパク質をいう。同様に、遺伝子が発現される場合、遺伝子産生物(普通、タンパク質、しかしある場合はRNA)が細胞内、例えば遺伝子を含む宿主細胞、に産生される。
「微生物」は、本明細書で使用される場合、細菌、酵母又は菌類の種を含む。
タンパク質、又は核酸配列に関し、「単離された」は、その配列が天然に組み合わされかつ、自然に見出される少なくとも1つの他の成分から、少なくとも実質的に分離しているこという。核酸配列の例では、単離とは遺伝子配列から分離されていることをいう。
「精製された」とは、物質が比較的純粋な状態、例えば、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、または少なくとも約98%純粋であることをいう。「部分的に純粋」とは、この用語が本明細書で使用されるときは、タンパク質又は核酸は「単離されて」はいるが、低い程度の純度を含む。
「熱的に安定な」とは、高い温度に晒された後に酵素が測定可能な活性を保持することをいう。例えば、α-アミラーゼのような酵素の熱安定性の一つの尺度は、半減期(t1/2)により測定される(酵素活性の半分は、半減期により失われる)。半減期は、一定の条件下で残存するアミラーゼ活性を測定することにより計算される。いくつかの実施態様では、熱安定性の他の尺度がより有用で実用的かも知れない。これは、例えば特定時間、関連する温度に暴露された後、残存するパーセント活性として測定され、表されてもよい。一般的に、所望の時間、関連する温度に酵素を晒した後に、酵素は、温度等の標準的分析条件下で定量される。熱的に安定な酵素は、また熱的に活性な酵素でも良い。つまり、それらは高温で定量されるときに活性を示すことができる。本明細書で使用する場合、熱的に安定な酵素は、熱による変性に抵抗性があり、かつ高温で活性であることができる。
「pH範囲」は、酸性から塩基性条件で、酵素が触媒活性を示すことができることをいう。α-アミラーゼが使用される普通のプロセスは、5またはそれ以上のpH単位の幅のpH条件を含むことができる。本明細書で使用される場合、「pH安定性」は、酵素の、広い範囲のpH、例えば1,2,3,4,5またはそれ以上のpH単位にわたり測定しうる活性を保持する性能に関する。pH安定性に加えて、本明細書で述べられた変異α-アミラーゼは、また最適pH(一定に保たれた温度、時間、基質濃度、及びカルシウムイオン濃度の条件下で、あるpHまたはpH範囲で活性が最大である)を与えることができる。
本明細書で使用する場合、「アミノ酸配列」は、用語「ポリペプチド」及び/又は用語「タンパク質」と同義語として、本明細書で使用されることがある。いくつかの例では、用語「アミノ酸配列」は用語「ペプチド」と同義語である。いくつかの例では、用語「アミノ酸配列」は、用語「酵素」と同義語である。文脈から明瞭な他の場合、「アミノ酸配列」は、ポリペプチドの骨格中のアミノ酸側鎖又は「残基」の実際の配列(「一次配列」)をいう。例えば、本明細書に与えられている配列表は、いくつかのポリペプチド又はポリペプチドのドメインのアミノ酸配列を与える。
本明細書で使用する場合、「ヌクレオチド配列」または「核酸配列」はオリゴヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列(「ポリヌクレポチド」)及び変異種、相同体、断片及びそれらの誘導体をいう。このヌクレオチド配列は遺伝子のもの、合成又は組換えによるものでも良く、センス鎖、アンチセンス鎖のいずれを表すかに係りなく二重鎖または一本鎖でも良い。本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド配列」は遺伝子のDNA、cDNA、合成DNA、RNAを含む。ポリペプチドと同様に、用語「ヌクレオチド配列」も、ヌクレオチドの実際の配列又はポリヌクレオチド骨格に沿った塩基の実際の配列、つまり一次配列について述べる場合に使用される。
「相同体」は、目的のアミノ酸配列又は目的のヌクレオチド配列とある程度の同一性又は「相同性」を有するものをいう。典型的には、相同体は目的アミノ酸配列と同一の活性部位残基を含む。相同体は、目的タンパク質と異なる酵素の性質を持つかもしれないが、またα-アミラーゼ活性も保持する。「相同配列」は、別の配列とあるパーセントの同一性、例えば、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%をもつポリヌクレオチド又はポリペプチドを含む。
「パーセント同一性」は、例えば、位置合わせで2個のポリペプチド配列を比較するとき、目的配列又はタンパク質の所与のパーセンテージの塩基又はアミノ酸残基が、対照配列又はタンパク質と正確に同一であることをいう。目的配列において参照配列と比較してアミノ酸が置換され、欠失され又は挿入されているときアミノ酸配列は類似しているかもしれないが「同一」ではない。タンパク質について、パーセント配列同一性は、好ましくは、翻訳後の修飾に関して類似の状態にある配列の間で評価される。典型的には、目的タンパク質の「成熟配列」、つまり、シグナル配列を除去するための処理の後に保持されている配列が参照タンパク質の成熟配列と比較される。他の例では、目的ポリペプチド配列の前駆体配列が、参照配列の前駆体と比較されても良い。
本明細書で使用する場合、変異ポリペプチドが、特定された、置換、欠失、挿入、化学的修飾等を除き、親ポリペプチドと同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を含む場合、変異ポリペプチドは親(又は野生型)参照ポリペプチドに「基づく」または「由来する」。「実質的に同一」とは、特定された置換、欠失、挿入、化学的修飾等以外に、変異種のアミノ酸配列が、さらに、親ポリペプチドの性質を大きく変えるような置換、欠失、挿入、化学的修飾等を含んでいないことをいう。
本明細書で使用する場合、「ハイブリッド形成」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術で行われているような増幅のプロセスのほか、核酸の分子鎖が塩基対を通じて相補鎖と結合するプロセスを含む。変異α-アミラーゼをコードする核酸は、一本鎖-または二重鎖DNA又はRNA、RNA/DNAへテロ二重鎖、又はRNA/DNAコポリマーとして存在しても良い。本明細書で使用される場合、「コポリマー」とはリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの両者を含む一本鎖の核酸分子鎖をいう。α-アミラーゼをコードする核酸は、固有のタンパク質を翻訳するときに優先して利用されるコドンを含むように核酸を組み立てることにより特定の生物内での発現を増大させるように「最適化」される。
本明細書で使用される場合、「合成」化合物は化学的又は酵素的合成により産生される。合成化合物はα-アミラーゼ変異種をコードする核酸を非限定的に含み、発現のために選ばれた宿主にとり最適のコドンの使用によって合成されることが好ましい。合成ポリペプチド又は核酸は、また、生体外での転写又は翻訳、又はPCR等の生体外での技術を使って合成できる。
本明細書で使用する場合、「形質転換された細胞」は、組換えDNA技術の使用により形質転換された細菌及び菌類等の細胞を含む。形質転換は典型的には、細胞に一以上の核酸配列を挿入することにより生じる。挿入されたヌクレオチド配列は異種の核酸配列、つまり、形質転換を受ける細胞に自然に含まれていない配列であり、例えば、変異種、融合タンパク質、又はキメラのポリペプチドをコードする核酸である。
本明細書で使用する場合、「機能的に連結された」とは、問題の構成要素群が意図されたとおりに機能するように関係付けられていることをいう。例えば、調節配列は、調節配列に適した条件下でコード配列の発現が達成されるように、コード配列に「機能的に連結」され得る。
本明細書で使用される場合、「生物学的に活性である」とは、必ずしも同一の程度ではないが、天然に存在する配列と類似の構造的、調整的または生化学的機能をもつ配列をいう。例えば、生物学的に活性なα-アミラーゼは、測定しうるα-アミラーゼ活性をもつポリペプチドである。
本明細書で使用する場合、用語「デンプン」は植物の複雑な多糖炭水化物からなる物質をいう。デンプンは一般的に化学式(C6H10O5)x(xは整数)をもつアミロースとアミロペクチンを含む。用語「顆粒デンプン」は生の、つまり熱処理を受けていない(uncooked)デンプンをいい、例えば、ゼラチン化されていないデンプンをいう。
本明細書で使用される場合、用語「糖化」はデンプンをグルコースに酵素的に転換することをいう。
用語「液化」はゼラチン化されたデンプンが加水分解されて低分子量の可溶性デキストリンを与えるデンプン転換の一工程をいう。用語「重合の程度(DP)」は所与の糖における無水グルコピラノース単位の数(n)をいう。DP1の例は単糖のグルコースとフルクトースである。DP2の例は二糖のマルトースとスクロースである。本明細書では「同様な液化プロセス」は、同様な条件下、好ましくは、温度、pH、基質濃度、カルシウムイオン濃度等について標準化された条件で行われるものをいう。好ましくは、同様な液化プロセスは等しいタンパク質又は等しい活性単位で比較される、しかしいくつかの実施態様では、タンパク質、または活性単位、または両者は同様な液化プロセスにおいて変わることがある。技術者なら、液化プロセスが「同様な」とされる根拠を理解する。
液化プロセスの際、デンプンスラリーの粘度は、デンプンが小さいDP単位の化合物へ転換する尺度として使用されることが多い。本明細書ではある場合には、「初期粘度」が使用される。技術者はこれが技術用語であって、意図しているものは、文字通り初期の粘度ではなく、例えば、基質のゼラチン化の時点で起こる最高粘度であることを理解するだろう。初期粘度は液化プロセスの終点における基質、例えばデンプンスラリー、の粘度である「最終粘度」と区別するために使用される。従って、液化プロセスの間の粘度のグラフを見て明らかであるが、初期又は最高粘度は、すぐには生じず、ある時間、例えば、全反応時間の50%未満、が経過した後、より好ましくは液化の総時間の最初の約1/3または1/4または1/5以内に生じる。例えば、本明細書に例が示されている液化反応では、最高粘度は最初の10分以内に生じ、その後酵素が加えられ、粘度が低下を始める。デンプン顆粒がゼラチン化プロセスの間に割れたとき、この顆粒の内部にアミラーゼ活性がより及ぶようになり、より開裂が進み、粘度は低下する。
本明細書で使用する場合、「乾燥固体含量」(ds)は、乾燥重量に基づくスラリー中の固体総量をいう。乾燥固体含量と乾燥重量ベースは普通、総乾燥物質の重量パーセンテージとしての目的物質の重量で表される。用語「スラリー」は液体、典型的には水又は類似の溶媒中の不溶性固体を含む混合物をいう。デンプン又は穀粉は、アミラーゼ試験用、または液化プロセス用にスラリーを形成するため、水が基礎の溶液中に懸濁されることが多い。
用語「デキストロース等量」または「DE」は総炭水化物に対する割合としての還元糖のパーセンテージとして定義される。用語「重合度」または「DP」は、デンプンのアミラーゼ分解の生成物の大きさをいう。DPが高いほど、炭水化物はより複雑である。α-アミラーゼは低いDP、例えばDP2の生成物を生成することが好ましい。
「ブレンド」または「酵素ブレンド」は2以上の酵素の混合物を含有する組成物をいい、そのため混合物中に含まれる各酵素の活性を含む組み合わされた触媒活性を与える。酵素ブレンドは2以上の酵素のそれぞれを等量含む必要はない、しかし、酵素ブレンドは、望むのであれば、等量のタンパク質、または等しい活性に基づいて調合されても良い。組み合わされた触媒活性は単に相加的、平均的なものかも知れず、又は拮抗的又は相乗的であるかもしれない。本明細書での使用に好ましいブレンドは、少なくとも相加的な触媒活性、より好ましくは相乗的な触媒効果を与える。
本明細書の目的のために、「同様な液化プロセス」は、異なる又は「比較参照」アミラーゼを用いて、制御され、特定された条件(例.温度、pH、カルシウムイオン濃度、及び基質濃度に関し)下で行われる類似のプロセスをいい、目的の液化プロセスと比較できるものである。
本明細書で使用される場合、1「アルファアミラーゼ単位(AAU)」は、特定された条件下で1分当り10mgのデンプンを加水分解するために必要な細菌のアルファアミラーゼ活性の量である。
”SPEZYME(登録商標)XTRA”は、C-末端(つまり、C-末端の29残基)が切除されたジオバチルス・ステアロテルモフィルス野生型α-アミラーゼの変異種を活性成分として含む、Genencor Internationalにより製造された市販の酵素調製物である。この特異的活性は通常、14,000 AAU/gである。
”SPEZYME(登録商標)FRED”は、M15T、H133Y、N188S、及びA209Vの置換をもつB・リケニフォルミスα-アミラーゼの、遺伝子工学的に操作された変異種を活性成分として含む、Genencor Internationalにより製造された市販の酵素調製物である。
”SPEZYME(登録商標)ETHYL”は、RGが欠失された(つまり、R179とG180)ジオバチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼの変異種を活性成分として含む、Genencor Internationalにより製造された市販の酵素調製物である。アミラーゼポリペプチドはC-末端の29残基を除去するため処理されている。特異的活性は6,700-7,300 AAU/gである。
2. 略号
別に記載がない場合、以下の略号が使用される。
AAU アルファアミラーゼ単位
ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション
cDNA 相補的DNA
CFU コロニー形成単位
DE デキストロース等量
DEAE ジエチルアミノエタノール
DNA デオキシリボ核酸
DNS 3,5-ジニトロサリチル酸
DP 又はDPn 重合度(n個のサブユニット)
ds 乾燥固体
EC 酵素分類のための酵素委員会
FDA 食品医薬品局
FAO 国連食糧農業機関
GLP 医薬品安全性試験実施基準
GMP医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
HPAEC-PAD パルスアンペロメトリック検出器付き高性能陰イオン交換クロマトグラフィー
HS 高糖(DPn、n>3)
JECFA FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会
kb キロベース
LAT B・リケニフォルミスα-アミラーゼ
LU 液化単位
MALDI-TOF マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法
mRNA メッセンジャーリボ核酸
mL ミリリットル
mt トン(1000kg)
N 規定
M モル
nC ナノクーロン
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PEG ポリエチレングリコール
ppm ピーピーエム
RO 逆浸透
RT-PCR 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
SDS-PAGE ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動
SKBU/g ds 乾燥固体1g当りのα-アミラーゼ単位 1α-アミラーゼ単位は、定量条件下1時間当り1.0gの限界デキストリン基質をデキストリン化する。
1X SSC 0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0
WHO 世界食品機構
w/v 重量/容量
w/w 重量/重量
μg マイクログラム
μL マイクロリットル
B.変異α-アミラーゼ
第一に、バチルス・ステアロテルモフィルス由来のα-アミラーゼの変異種が提供される。この変異種は成熟タンパク質の181または182の位置で野生型アミラーゼの配列に対して行った修飾(181及び182及び両位置で野生型アミノ酸が置換されている。)に基づいている。181の位置での野生型アミノ酸の置換はAla、Cys、Asp、Glu、LeuまたはProを含み、182の位置での野生型アミノ酸の置換はAla、SerまたはProを含む。一実施態様では、この変異アミラーゼは特定の定量条件下、野生型α-アミラーゼと比較して特異的活性が増大している。種々の実施態様では、この変異種は特異的活性に関し、約10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、100%またはそれ以上、増大している。他の場合、この変異アミラーゼは、野生型と比較して2倍、3倍、4倍またはそれ以上の特異的活性を有する。この特徴は有利な点を提供し、所与の用途に、より少量の酵素が使用でき、製造能力に関する問題を最小にする。好ましくは、この変異種は約50-90℃の間で特異的活性を増大させる。他の実施態様では、この変異種は約65-85℃の間で特異的活性を増大させた。
いくつかの実施態様では、この変異α-アミラーゼは配列番号:2,3,4,5,6,10または15のアミノ酸配列を有する。これらの配列は、野生型アミノ酸配列の181の位置に単一の変異を含む。いくつかの実施態様では、野生型/親配列は、AmySのそれであり、変異は、その中のI181で生じる。一般的に、”X1POSX2”の形式の指定は、変異体が”POS”の位置に変化したアミノ酸配列を含むことを示している。ここで野生型アミノ酸残基、X1が異なるアミノ酸残基、X2で置換され、X1とX2はアミノ酸の標準的単一文字コードであり、”POS”は野生型成熟配列の一次アミノ酸配列内のいずれかの位置である。従って、I181における変異は、野生型配列の181の位置にイソロイシンを有する野生型配列が、別のアミノ酸で置換されたアミラーゼ配列である。現在、I181P、I181A及びI181L変異種が好ましい。他の実施態様では、I181C、I181D、I181E及びI181Y等の変異種が有用である。I181F、I181G、I181H及びI181Vの変異種もまた考えられている。
好ましい実施態様では、変異種は、配列番号:2、3又は10の配列をもつ。野生型/親配列がAmySの配列である場合、これらの変異はそれぞれ、I181I、I181A、I181Lに対応する。一実施態様では、液化プロセスで使用される場合、アミラーゼ活性は相当する野生型α-アミラーゼにより液化された同様なデンプンスラリーの最高粘度と比較してデンプンスラリーの最高粘度を低下させる。
いくつかの実施態様では、変異α-アミラーゼは配列番号:16、17、又は18のアミノ酸配列をもつ。これらの配列は野生型アミノ酸配列の182の位置に単一の変異を含む。いくつかの実施態様では、野生型/親配列はAmySの配列であり、変異はその182の位置にある。現在G182A、G181S及びG182P変異種が好ましい。
この変異種は他の既知のα-アミラーゼの配列、例えば、Van Der Laan とAehleによる米国特許第6,939,703号、及びSvendsenらによる第6,143,708号またBisgard-Frantzenらによる第5,830,837号に開示されたα-アミラーゼの配列を有していない。同様に、他の既知の配列は本明細書に述べられた変異アミラーゼには含まれていない。例えば、具体的にはSajediらによるJ.Biochem.Mol.Biol.40:315-324(2006)に開示された配列も含まれていない。本出願の出願日より1年以上以前の欧州分子生物学研究所(EMBL)又は国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の公開データベースに提供されているα-アミラーゼ配列もまた本α-アミラーゼ変異種の配列として、明らかに含まれていない。そのような既知の配列は、それぞれこの組成物及び方法から除外することができる。
本組成物と方法に含まれる変異α-アミラーゼはα-アミラーゼの基本的な触媒活性を有し、デンプンのアミロース及び/またはアミロペクチンのような基質のα-1,4結合を攻撃(つまり加水分解)し、これをより低いDPのデキストリンに転換する。そのようなプロセスにおいて、α-アミラーゼは、粘度を低下させデキストロース等量(DE)を増大させ、通常、スラリー状のデンプンの液化とデキストリン化に有用である。α-アミラーゼは、また他のデンプン分解プロセス、例えば、不要なデンプンを除去しなければならない織られた素材の脱糊と洗浄プロセスにも使用される。
本α-アミラーゼ変異種の特徴は、基になった野生型/親アミラーゼと比較して改善された性能を示すことである。他の実施態様では、変異種はAmyLまたはAmySのような他のα-アミラーゼと比較して性能が向上している。いくつかの実施態様では、本変異アミラーゼは同一の目的に用いられる従来の市販の酵素製剤と比べて使用性能が改善している。
向上した性能特性は、向上した安定性、pH領域、酸化安定性及び熱安定性を含む。特に、α-アミラーゼ変異種は高温(例えば、70-90℃)での安定性が改善され、及び/又は高温での特異的活性が上昇している。本明細書に記載された熱的に安定な変異アミラーゼは、高温での液化における使用に有利であり、またクッキング、ベーキング等のような高い温度を用い、又は要する他のプロセスにおいても有用である。
本変異種の別の性能特性は、デンプンスラリーの最高粘度を低下させることである。これは、混合が少ないエネルギーで済み、デンプンを低いDP製品に迅速に転換する点で液化プロセスに有利である。
C. 変異α-アミラーゼを含有する組成物
また、α-アミラーゼの触媒活性を有する一以上のα-アミラーゼ変異種を含む種々の組成物が提供される。本組成物は、例えば、酵素濃縮物、酵素ブレンド、精製酵素、部分的に精製された酵素製品、食品添加物、変異α-アミラーゼを含有する洗浄製品を含む。
ある実施態様では、本組成物は、本明細書で述べられ又は例示された変異アミラーゼを含む。そのような組成物は種々の用途がある。本組成物は、また1以上のアミラーゼ変異種、又は他のアミラーゼ、又はそれらの組み合わせも提供できる。本組成物は高度に精製でき、または部分的にのみ精製されている。ある実施態様では、本組成物は活性の単位で標準化して表される。本組成物は種々の濃度と純度の液体、ゲル、ケーキ、半固体、又は固体等の種々の物理的形状で提供できる。測定可能な活性が最終組成物にあるならば、本組成物はいずれの物理的形状も可能である。従って、組成物は適宜、凍結乾燥され、濃縮され、凍結され、噴霧乾燥され、又は種々の既知又は有用な方法で処理を受けることができる。本組成物は、ある市販用途用の標準的サイズ、または普通に包装され、または何れかの種類のバルク容器で提供される。
組成物と酵素ブレンドはさらに一以上の追加のポリペプチドを含むことができ、またはそれと組合わせて使用できる。好ましくは、一以上の追加のポリペプチドは少なくとも1個の酵素を含む。従って、いずれか既知の酵素は本組成物又は酵素ブレンドと、又は当然、本α-アミラーゼそのものと共に使用できる。種々の追加の酵素のいずれも、本明細書に開示された本組成物、酵素ブレンド、又はα-アミラーゼに加えることができ、技術者が望むような他の用途又は利点を提供する。種々の実施態様では、追加の酵素は一以上の細菌α-又はβ-アミラーゼ、例えば、BBA、菌類のα-アミラーゼ、例えば、CLARASE(登録商標)L、又はグルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、イソメラーゼ、プロテアーゼ(例えば、菌類の、及び細菌のプロテアーゼ)、セルラーゼ、リグナーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ及びクチナーゼを含むことができる。本明細書に開示された一以上のα-アミラーゼ変異種を、他の変異種とともに含む組成物、又は一以上の先に述べた酵素と組み合わされて含む組成物が本明細書における使用に予定されている。先に開示したように、菌類のプロテアーゼは、例えば、A.ニゲル, A.アワモリ, A.オリゼのようなアスペルギルス属の種、M.ミヘイのようなムコル属の種、リゾプス属の種等、から得られるいずれかのタンパク質分解酵素活性を含む。β-アミラーゼ(EC3.2.1.2)は、エキソ活性のマルトース産生アミラーゼであり、これは1,4-α-グルコース結合をアミロペクチンと関連するグルコースポリマーにする加水分解反応を触媒し、マルトースを遊離する。β-アミラーゼは種々の植物と微生物から単離されてきた。PROGRESS IN INDUSTRIAL MICROBIOLOGY, 15巻、112-115ページ(1979) Fogartyら参照。これらのβ-アミラーゼは40℃から65℃の範囲で最適温度を、約4.5から約7.0の範囲で最適pHを有する。考慮されているβ-アミラーゼは、オオムギSPEZYME(登録商標)BBA1500、SPEZYME(登録商標)DBA、OPTIMALT(商標)ME、OPTIMALT(商標)BBA(Genencor International,Inc.);及びNOVOZYME(商標)WBA(Novozymes A/S)のβ-アミラーゼを非限定的に含む。
一実施態様では、組成物又は酵素ブレンドはアミロースとアミロペクチンを含有する複雑な炭水化物の液化に有用な一以上の追加の酵素を含む。一実施態様では、この追加の酵素はα-アミラーゼである。いずれの既知のα-アミラーゼも、細菌α-アミラーゼ(例えばバチルス属由来のもの、例えば、AmyL-、AmyS-、AmyQ-又は、AmyM-型のアミラーゼ)、菌類アミラーゼ、又は植物または動物アミラーゼを含む、アミラーゼ、組成物または、酵素ブレンドと組み合わせて使用できる。そのような組成物またはブレンドは、液化プロセスで使用される場合、単一の酵素、特に野生型の酵素で液化された同様なデンプンスラリーと比較してデンプンスラリーの最高粘度を低下させることが好ましい。一実施態様では、2以上の酵素を含む組成物又はブレンドはデンプンスラリーの最高粘度を、少なくとも、これらの2以上の酵素のいずれかを単独で使用したときに、生じる粘度にまで低下させ、または少なくとも、これら2以上の酵素のいずれかを単独で使用したときに生じる最終粘度程に低いデンプンスラリーの最終粘度にする。
一実施態様の組成物は、食品添加物又は食品加工での使用に適した加工助剤として調製または調合される。本明細書に開示されたα-アミラーゼ変異種を含有する食品グレードの凍結乾燥された組成物もまた提供される。食品添加物としての使用のため、又は食品加工における使用のため調製されまたは調合される場合、組成物はある規制上の要件に適合又は上回らなければならない。これらの要件は本組成物を調製する際に技術者にとり指針書として役に立つ。従って、技術者は、規制要件は種々の国で異なるが、一般的に組成物は重金属含量、また鉛及び砒素含量が非常に低いことを認めるだろう。具体的には、総重金属含量は、約40ppmを超えないことが好ましく、約30ppm未満であることがより好ましい。組成物の鉛含量は約10ppmを超えてはならず、約5または3ppm未満であることがさらに好ましい。組成物の砒素含量は約3ppm未満である。本組成物は、また試験が標準的方法によるものであるときにはマイコトキシンと抗菌剤含量が陰性である。組成物はまた、微生物含有量に関して清浄であり、食品添加物又は食品加工助剤として使用される場合、少なくともGMP又はGLP基準に従い製造されることが好ましい。特に、総生菌数は組成物1グラム当り約5x104CFUを超えない。本組成物は組成物1グラム当り約40CFUを超えない大腸菌数であることが好ましい。大腸菌数は1グラム当り約30CFUを超えないことが更に好ましい。さらに、組成物は標準的微生物試験により試験するときサルモネラ属またはシゲラ属が検出されてはならない。変異アミラーゼが宿主細胞で産生されるとき、組成物は1グラム当り1CFU以上の宿主生物を含んではならない。
さらに、組成物は毒性等に関する安全性の基準を満たさなければならない。一実施態様では、組成物は適した生体外(in vitro)の試験において遺伝毒性の証拠があってはならない。本組成物は、また動物における急性及び/又は亜急性毒性試験において毒性の証拠を示してはならない。
食品添加物または食品加工助剤については、製品は、多くの市販用の食品酵素と同様に、標準に適していることが好ましい。つまり、GMPが製造工程全体にわたり適用され、例えば、FDA、または国際的権威により作成された食品用酵素の要件と規格、例えば、米国食品化学物質規格集(第4版、1996)、FAO/WHO合同食品添加物 専門家会議(JECFA)の食品添加物規格、第1巻、付属文書1、補遺9(2001)(及びそれ以前の関連付属文書)に適合すべきである。例えば、α-アミラーゼ変異種を含有する組成物は流加発酵のようなプロセス、例えば、一般的に安全であると認識されている、又は、例えば、食品グレードの酵素調製物の製造等の用途について長く使用されてきた生物、の液内流加発酵、を用いて製造される。
本明細書の目的について、適した宿主生物は、例えば、B・ステアロテルモフィルス、B・スブチリス、B・リケニフォルミス、B・ブレビス、及びB・アミロリケファシエンス等のバチルス属のグラム陰性菌を含む。B・コアグランス、B・サーキュランス、B・ラウツス、B・レンツス、B・スリンギエンシス及びB・アルカロフィルス等の他の細菌もまた有用である。本明細書に述べられているいくつかの組成物の製造に有用である他のグラム陽性菌はストレプトマイセス・リビダンス及びS・ムリヌスを含む。エシェリキア・コリ又はシュードモナス属の種等のグラム陰性菌も、本明細書に記載されている組成物を製造するために使用できる。
繊維、紙、ガラス、プラスチック、金属、帆布、磁器等のような種々の非デンプン(つまり、非基質)物質から酵素の基質(例.デンプン)の除去を容易にするために有用なα-アミラーゼ変異種を含有する組成物も提供される。このような物質は洗浄プロセス中に除かれることが多いので、一実施態様では、組成物は一以上の石鹸、洗剤、洗浄剤、酸化剤、またはキレート剤を含有する。一実施態様では、本組成物は、洗濯洗剤として使用され、別の実施態様では、皿洗い洗剤である。本組成物は、本明細書に記載のこれら又は他の目的のため、ゲルとして調合されても良い。種々のそのようなゲルは本技術分野で知られており、例えば、消費者又はユーザーに魅力があり、かつ便宜な形態であるほか、除去する基質に酵素が作用する接触時間と条件に関し、有利な点がある。洗剤、石鹸、酸化剤、及び/又はキレーターのほか、標準的洗浄剤を含むためには、α-アミラーゼ活性が使用時の条件だけでなく、製品自体でのより凝縮された又は極端な条件に安定であることが必要である。
D. 変異α-アミラーゼの特徴付け
本明細書に記載されているα-アミラーゼ変異種のような酵素は、本技術分野で知られている種々の方法と技術により特徴付けることができる。核酸と一次ポリペプチド配列は、本明細書に記載されているアミラーゼを比較し、分析する有用な手段である。三次元構造モデル化、及び/又は物理的結晶化もまた有用である。特異的活性の決定は酵素を特徴付けるために使用されることが多い。基質、温度、pH、カルシウム濃度及び他の因子のような種々の条件における酵素活性は、本技術分野の技術者に知られている標準的定量法を用いて、または、アミラーゼを定量する既知の技術に基づく新しい定量法を考えることにより、定量することができる。特定の条件でVmaxまたはKmのような速度定数等の酵素の速度論的性質を決定することも、また本明細書に記載されている変異種アミラーゼを特徴付けるために有用である。安定性又は定量に最適なpHを決定する方法は、最大活性のための最適なカルシウムイオン濃度と、α-アミラーゼ変異種の貯蔵中の最大の安定性を与える条件を決定する方法と同様に、本技術分野で知られている。
応用による特徴づけは、シミュレートされたプロセス条件下で得られた結果により酵素活性を特徴付けることを含む。ベンチトップ液化プロセス等は、実際の使用条件に比較的近い条件で、変異種の性能を測定又は評価するために使用できる。粘度測定法はプロセスの間に達した最高粘度、またはアミラーゼ変異種により分解又は処理されたデンプンスラリーの最終粘度によりアミラーゼの触媒活性を特徴付けることを補助できる。多くの有用な実施態様では、野生型のアミラーゼ、対照アミラーゼ又は、同様の条件で使用された市販のアミラーゼと比較される。他のアミラーゼ変異種との比較はまた、特定の酵素の値又は有用性と比較して評価するためにも有用である。
宿主細胞における変異種アミラーゼの発現の特徴付けは、例えば、アミラーゼ変異種を作成するプロセスの商業的利用の可能性を決定する際に、有用な特徴になりえる。宿主細胞における変異α-アミラーゼの発現を評価するために、発現したタンパク質、相当するmRNA、又は酵素活性を測定できる。適した定量法はノーザン及びサザンブロッティング、RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)、及び適切に標識されたハイブリッドプローブを使用した、発現場所における(in situ)ハイブリッド形成反応を含む。特定の宿主細胞で産生されたアミラーゼの発現量の測定、発現速度、最大回収量は、すべて変異アミラーゼの発現に関する有用な特徴づけ例である。
本明細書に記載されたα-アミラーゼ変異種は、AmySまたはAmyL酵素と比べて、所与の温度での半減期を伸ばすこともできる。種々の実施態様では、半減期は、特に約55℃から約95℃以上の上昇した温度、特に約75℃、80℃、85℃以上で10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、それ以上、伸ばすことができる。
いくつかの実施態様では、α-アミラーゼ変異種の特異的活性は、その変異種が生じた野生型配列と比較して向上している。約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%それ以上の特異的活性の向上が変異アミラーゼで生じ得る。
一実施態様では、本明細書に記載されたα-アミラーゼ変異種は、AmyS酵素のような、親配列と同一のpH安定性を有する。別の面では、変異アミラーゼは、pHの変動に対してより広い範囲で安定性を示し、または最適のpH又は安定な範囲は、酵素の最終市販用途にとり好ましい範囲に応じて移動する。例えば、一実施態様では、変異アミラーゼは約pH4.5から約pH10.5でデンプンを分解できる。α-アミラーゼ変異種は同一の条件で、AmySと比較して半減期が長く又は活性が高い(定量法により変わる)かもしれない。α-アミラーゼ変異種は、また、同一のpH条件下約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%またはそれ以上長い半減期を有する。別の実施態様では、α-アミラーゼ変異種は、同一のpH条件において、野生型配列または親酵素、例えばAmySと比較して高い特異的活性を有する。本明細書に記載されたα-アミラーゼ変異種は、本明細書でこれまで挙げた望ましい特性のいずれの組み合わせも有する。
E. 変異α-アミラーゼをコードするポリヌクレオチド
いくつかの面の別の面においては、本明細書に記載されたB・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼの変異種をコードするポリヌクレオチドが提供される。このコードされたポリヌクレオチドは天然には見出されないので、このポリペプチドは人により作り出されなければならない。例えば、合成、または定方向突然変異とスクリーニングによる作成による。具体的には、このポリヌクレオチドは、成熟タンパク質の位置181または182で置換を受けていることを除いて野生型のアミラーゼ配列を含むポリペプチドをコードし、181と182、又は両位置での野生型アミノ酸は置換されている。181での野生型アミノ酸の置換はAla、Cys、Asp、Glu、Leu、またはProを含み、182での野生型アミノ酸の置換はAla、Ser、またはProを含む。
種々の実施態様では、本ポリヌクレオチドはI181P、I181A、及びI181L変異種であるポリペプチドをコードする。他の実施態様では、このポリペプチドはI181C、I181D、I181E及びI181Yまた、さらにI181G、I181H及びI181V等の変異種をコードする。
本ポリペプチドは、種々の実施態様において、配列番号2-18、好ましくは配列番号2-6、10、15及び17-19の、ある場合には、配列番号2、3、10、16及び18のアミノ酸配列をもつポリペプチドをコードする。特定の実施態様では、コードされた変異ポリペプチドは、配列番号2または3の配列を有する。
一実施態様では、本ポリペプチドはゲノムDNAであり、別の実施態様では、本ポリペプチドはcDNAである。遺伝子コードが縮重しているため、開示された同一のポリペプチドをコードできる複数のポリヌクレオチドが与えられる。ポリヌクレオチドは、また本明細書で与えられるアミラーゼ変異種をコードするmRNAも含む。
現在好まれる実施態様では、α-アミラーゼ変異ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、微生物又は植物由来の宿主細胞に、変異ポリペプチドを発現させるため、宿主細胞で使用されることが好ましいコドンを優先するようにポリヌクレオチドの組成を調製することにより、最適化されている。コドンの用法を最適化する技術は、本技術分野で知られており、種々の生物のコドン表は、生物工学のテキスト又は実施マニュアルのような標準的資料で入手できる。
変異アミラーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターもまた与えられる。あるポリヌクレオチドを有し、多量のポリヌクレオチドを産生し、ポリヌクレオチド配列を操作するためのベクター、または生体外又は宿主細胞でポリヌクレオチドを発現するためのベクターは本明細書で使用することが考えられている。適したベクターの例は、標準的な生物工学のマニュアル及びテキスト、例えばSambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(2001)に記載されている。
一実施態様では、好ましいベクターは宿主細胞内、特に微生物細胞、例えば細菌細胞、または植物細胞内でコードされたポリペプチドの発現に有用である。発現ベクターは変異α-アミラーゼの一時的発現、例えば、スケールアップの前に触媒的性質及び他の性質を確認するための発現に適合するように調節される。長期間及び大規模製造に使用する発現ベクターは、例えば、宿主細胞の染色体に組み入れることにより、または、自己複製するポリヌクレオチド配列を安定に組み入れることにより、安定な発現のために調節されることが好ましい。一実施態様では、ベクター、DNA構造体はα-アミラーゼ変異種のコード配列と機能的連結している調節配列を含む発現ベクターにより宿主細胞に移される。
変異α-アミラーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む、酵母、菌類、細菌細胞等の微生物細胞もまた与えられる。一実施態様では、このベクターは、宿主細胞内での、コードされたポリペプチドの発現に適した発現ベクターである。別の実施態様では、植物発現ベクターを含む植物細胞が与えられる。種々の宿主細胞で発現するベクターは本技術分野で知られており、コードされたポリペプチドの発現を促すための、プロモーター等の必要な調節配列を含む。バチルス属で使用されるプロモーターの例はAmyL、AmyQ、AmyM又はAmySのアミラーゼ遺伝子及びB・スブチリスのxylAとxylB遺伝子からのプロモーターを含む。一実施態様では、発現ベクターは、コードされたポリペプチドを発現する又は過剰発現する、恒常的な、又は誘導的な一以上の強いプロモーターを含む。別の実施態様では、本ポリヌクレオチドは、ペプチドの翻訳後の修飾のための配列を含み、例えば、発現されたポリペプチドを細胞外へ、または宿主細胞内の特定の区画へ移し、宿主細胞からのポリペプチドの製造、単離又は精製を促す。例えば、本ポリペプチドは、当初変異アミラーゼが、細菌宿主細胞から発現されたタンパク質の分泌を促すためのB・リケニフォルミス由来のシグナルペプチドのような、末端に異種のポリペプチドを付着して産生されるように一以上の配列を含む。本ポリヌクレオチドはまた、変異アミラーゼが、当初、「精製配列」(つまり、発現タンパク質の精製を促す配列、「精製配列」は精製の間に切断される)とともに産生されるように構成された配列を含む。
宿主細胞が植物である場合、一実施態様では、植物はデンプンの製造に使用される穀物用植物である。アミラーゼ変異種は植物内で過剰産生できる。このアミラーゼ変異種は、過剰産生され、デンプン貯留用の植物の一部、例えば種子に集められる。従って、その植物が収穫され、デンプンが単離され、α-アミラーゼ変異種がデンプンとともに精製される。この実施態様は、この植物がアルコール発酵、特に例えば、燃料エタノールに用いられる場合、特に有用である。
一実施態様では、宿主細胞は、食品加工助剤又は食品添加物の製造に適した生物に由来する。現在、バチルス属の宿主細胞、特にB・リケニフォルミス、B・スブチリス、又はB・ステアロテルモフィルスが好ましい。バチルス属で自己複製するベクターを含む細菌細胞で使用される、適したプラスミドは、本技術分野で知られている。
F. 変異α-アミラーゼを作成、使用する方法
本明細書で開示されている別の面では、B・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼの変異種を産生する方法が与えられている。一実施態様では、示される方法は、先に述べられたような野生型B・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼの少なくとも1つの変異種を含む組成物を産生する。この変異アミラーゼは測定可能なα-アミラーゼ活性を有している。本法は、少なくとも1つの変異種が発現される発酵プロセスのために本明細書に記載されたような宿主細胞を使用することを含む。発現の後、発現された変異アミラーゼ分子は、少なくとも部分的に精製され、それにより変異α-アミラーゼを含む組成物が調製される。一実施態様では、発現された変異種は、成熟野生型タンパク質の181と182に変異を含み、181と182、又は両方の位置の野生型アミノ酸は、置換を受け、野生型アミノ酸残基の181の位置での置換は、Ala、Cys、Asp、Glu、Leu、又はProを含み、182での野生型アミノ酸残基の置換はAla、Ser、又はProをそれぞれ含む。一実施態様では、本変異種は特定の定量条件において、相当する野生型α-アミラーゼと比較して特異的活性が向上又は増大している。
一実施態様では、宿主細胞はバチルス属の種である。液内流加発酵のような、流加発酵プロセスは、本明細書では有用であるが、発酵プロセスはどのようなものでも良い。
提供される方法は、ある実施態様では、生体外(in vitro)試験において遺伝毒性の証拠を示さない、また、動物において急性及び亜慢性毒性投与試験で毒性の証拠を示さない精製された組成物を調製するため、変異アミラーゼをさらに精製する段階を含む。そのような組成物は食品加工助剤として、またはある場合、直接の食品添加物として有用である。
本法は、標準試験により、40ppmより多い総重金属、5ppmより多いヒ素、10ppmより多い鉛、5x104個より多い総生菌数(CFU/g)、30個より多い大腸菌(CFU/g)を含まず、及びサルモネラ、マイコトキシン又は抗菌活性は検出限度未満である精製された又は部分的に精製された組成物を製造する。
種々の実施態様では、本法は、また2以上のα-アミラーゼ活性を含む部分的に精製された、または精製された組成物を調製するためにも有用である。いくつかの実施態様では、さらに少なくとも1個の他の酵素活性を含む。一実施態様では、精製または部分的に精製された組成物は、液化プロセスで有用な少なくとも1つの他の酵素活性を含む。
本組成物は、精製され又は部分的に精製された場合でも、液化プロセスで使用されるときは、単一の酵素で液化された相当するデンプンスラリーの最高粘度と比較してデンプンスラリーの最高粘度を低くする。
α-アミラーゼ変異種を含む組成物を使用する方法もまた与えられる。デンプンスラリーのような、複雑な炭水化物を液化する方法が、具体的に提供される。本法は、複雑な炭水化物を含むスラリーを調製すること、液化に適した温度までスラリーを加熱すること、本明細書に記載したような少なくとも1個のα-アミラーゼ変異種を含む組成物をスラリーに加えること、その複雑な炭水化物を液化するに十分な時間、温度で組成物とスラリーを保持することを含む。好ましい実施態様では、複雑な炭水化物はデンプンである。本明細書で使用する場合、「液化」は全ての反応できる基質の結合が開裂することをいうのではなく、複雑な炭水化物が少なくとも一部が加水分解されることをいい、これは、最終粘度の測定可能な低下、スラリーのDEの上昇、低いDP断片/生成物の遊離、又は還元性基、デキストリン、またはα-マルトース単位の増大を示す他の尺度により明らかにされる。
請求項の方法の一実施態様では、基質、つまり、複雑な炭水化物はデンプン、アミラーゼ、又はアミロペクチンである。液化方法の温度は、室温から100℃以上に及び、しかし、好ましくは約50℃から約95℃である。液化は、経時的な複雑な温度曲線を伴う。例えば、反応は低温で始まり、本技術分野で知られている方法により好ましい目標温度まで上昇される。この温度は特定の時間後、又は粘度、DE値、又は液化の他の尺度について所期の終点に達した後に、下げられても良い。技術者は、アミラーゼ活性が所与の温度と条件下で作用できるなら、本法が特定の時間、特定の温度を必要とするわけではないことを理解するだろう。活性に影響を与える他の条件は、阻害剤等が存在するか、しないかに加え、pHとカルシウムイオン濃度を含む。
一実施態様では、スラリーは乾燥重量ベースで約20-40%のデンプン、別の実施態様では、スラリーは約30から約36又は37.5%でデンプンを含む。少量のデンプンも使用できる、しかし、経済的な考慮から限られる。最大粘度と関連する因子、例えば、混合に必要な電力量はスラリーで使用できる最大のデンプン量を限定する。技術者はデンプンスラリーを調製する際、実施上考慮すべき事項を理解するだろう。
一実施態様では、液化は発酵の一部である。本発明者は、本変異種が生じた野生型酵素で処理を受けた対応するスラリーの最高粘度と比較して、本明細書に開示されているアミラーゼ変異種が実質的にデンプンスラリーの最高粘度を低くできるので、配列番号第2又は第3のアミノ酸配列を有する配列等の、本明細書に開示されているアミラーゼ変異種の性質が、デンプンの発酵のプロセスにおいて非常に有益であることを見出した。いくつかの実施態様では、本発酵は、食品製品、食品添加物、燃料、燃料添加物を製造するために使用される。好ましい実施態様では、発酵はアルコール、好ましくは、エタノール又は別の低級アルコールである燃料又は燃料添加物のために行われる。
技術者は、粘度が低くなれば、デンプンは更に液化され、デキストリンの生産が増える(得られた液化デンプンのDEが高くなる)ことを理解するだろう。つまり、一実施態様では、最高粘度は変異種が生じた野生型酵素により液化された、または現在市販されている酵素調製物で処理を受けた、同様なスラリーの最高粘度と比較して、少なくとも10、20、25、30、40%、またさらに50%以上低下する。
望ましくないデンプン残留物を除くために表面を洗浄する方法が本明細書に提供される。本法は除去されるべきデンプン残留物を有する表面を与える段階、一以上の変異α-アミラーゼを含有する組成物とその表面を、十分な時間と温度及び、デンプン残留物を除くことができる条件下で、接触させる段階を含む。本表面はどのような材料でも良い。例えば、皿、プレート、ガラス等でも良く、衣類、織物でも良い。これは、例えば、カウンターの上部、調理台、または定期的に、又は規則的に洗浄されなければならないいずれかの種類の市販の容器でも良い。
一実施態様では、本法で使用された組成物は、少なくとも1個の他の酵素、例えば、一以上のプロテアーゼ、リパーゼ、追加のアミラーゼ、又はそれらの組み合わせを含む。別の実施態様では、残留物の洗い流しや概ね除去する段階が接触段階の前に実施される。そのような段階は洗浄段階から残留物をほぼ除去し、酵素が残った、より除去の困難な基質に作用することを可能にする。本洗浄方法は何れの温度でも行うことができ、しかし、接触段階の温度は少なくとも50-90℃に達することが望ましい。ある実施態様では、本方法は、残留物を除いた後、表面を滅菌し、または表面を蒸気処理する段階を含む。本組成物は、いくつかの実施態様では、さらに少なくとも1つの洗剤、酸化剤、キレーター又はそれらの組み合わせを含む。
本明細書に述べられたα-アミラーゼ変異種を用いる、織り上げられた素材を処理する方法も与えられる。織られた素材、例えば布地をアミラーゼで処理する方法は本技術分野で知られている。提供された方法は織られた素材、例えば織物、布地の感触及び/又は外観を向上させる。本法はα-アミラーゼ変異種を含む液体又は、本明細書で記載された変異種を含む組成物と接触させることを含む。一実施態様では、織られた素材は布地又は織物である。別の実施態様では、織られた素材は加圧下、液体で処理される。この液体は一般的に水溶液である。
本法は、織り上げ、例えば、布地又は織物の織り上げの間、又は後に使用される。または、本法は脱糊段階、または織り上げた素材を更に処理する一以上の追加の段階で使用される。織り上げの段階で、素材(例、糸)が、かなりの機械的緊張に晒されるので本法は有用である。織り上げ工程の前に、特に商業用の織機では、張力に対する強度を高め、破断を防ぐために、織られる材料はデンプンまたはデンプン誘導体を含む「糊」でコートされることが多い。本明細書に記載される変異アミラーゼは、そのような糊用デンプン又はデンプン誘導体を除くために織り上げの間、又はその後に使用できる。
本明細書に記載されたα-アミラーゼ変異種は、綿と綿含有布地等の布地のような織り上げられた素材を脱糊するために、単独で又は他の脱糊化学試薬、例えば、洗剤及び/又は脱糊酵素とともに使用できる。
本明細書で開示されているα-アミラーゼ変異種は、衣類用、例えば、デニムのジーンズの製造用に開発された酵素による仕上げ法に使用されてきた。アミロース分解酵素の作用は布地に柔軟性を与え、綿が次の酵素による仕上げ(例.ストーンウォッシュ風の外観を達成するため)を受けやすくする。
G.酵素ブレンドとキット、及びそれらを使用する方法
また、少なくとも第1、及び第2のα-アミラーゼを含む酵素ブレンドもまた提供される。各アミラーゼが同様な液化プロセスで単独で使用される場合、第1のα-アミラーゼは第2のα-アミラーゼよりも低い最終粘度を与える触媒活性を有する。しかし、第1のアミラーゼの触媒活性は、第2のα-アミラーゼの相当する触媒活性よりも高い最高粘度を与える。驚くべきことに、この酵素ブレンドは、液化プロセスで使用されるとき、同様な液化プロセスで単独で使用されるときに第1のα-アミラーゼから生じるものとほぼ同一の最終粘度となる組合わされた触媒活性を与える。本ブレンドは、また、同様な液化プロセスで第2のα-アミラーゼ単独で使用した場合よりも相当に低い最高粘度を与える。本明細書では、「同様な液化プロセス」は、温度、pH、カルシウムイオン濃度、及び基質濃度という特定の条件を含む。
α-アミラーゼを含む組成物に関し上記のように、酵素ブレンドは、一以上の追加のポリペプチド、例えば少なくとも一酵素を、更に含むことができ、又はこれらと組合わせて使用できる。技術者は、いずれか既知の酵素が本明細書に開示されている酵素ブレンドとともに使用できることを理解するであろう。種々の追加の酵素のいずれも、技術者が望む場合には、有用性、利便性を向上させるため酵素ブレンドに加えることができる。追加の酵素は、分岐切断酵素、マルトース産生酵素等のデンプン-又は炭水化物修飾活性を有する酵素を含み得る。例えば、1以上の細菌のα-又はβ-アミラーゼ、例えば、BBA、菌類α-アミラーゼ、例えば、Clarase(登録商標)L、又はグルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、又はイソメラーゼが本明細書で使用される。本明細書で使用が考えられている他の酵素は、プロテアーゼ、例えば、菌類及び細菌プロテアーゼ、セルラーゼ、リグナーゼ、ヘミセルラーゼ、クチナーゼ及びリパーゼ、及び/またはホスホリパーゼを含む。本明細書に開示されている一以上の追加のα-アミラーゼ変異種、または他のアミラーゼ活性を含有する酵素ブレンドは、それらを合わせて、又は、先に述べたいずれか一以上の酵素と組み合わせて、本明細書で使用が明示的に考えられている。先に述べたように、菌類のプロテアーゼは、例えば、アスペルギルス属の種、例えば、A.niger、A.awamori、A.oryzae;ムコル属の種、例えば、M.miehei; リゾプス属の種等から得られるいずれかのタンパク質分解酵素活性を含む。β-アミラーゼ(EC 3.2.1.2)は、エキソ活性のマルトース産生アミラーゼであり、1,4-α-グルコシド結合を加水分解してアミロペクチンと関連するグルコースポリマーにする反応を触媒し、マルトースを遊離させる。β-アミラーゼは種々の植物と微生物から単離されてきた。Fogartyら、PROGRESS IN INDUSTRIAL MICROBIOLOGY、第15巻、112-115ページ(1979)参照。これらのβ-アミラーゼは40℃から65℃の範囲で最適温度を有し、約4.5から約7.0の範囲で最適のpHを有する。想定されているβ-アミラーゼは、オオムギSPEZYME(登録商標)BBA 1500、SPEZYME(登録商標)DBA、Optimalt(商標)ME、Optimalt(商標)BBA(Genencor International, Inc.); 及びNovozym(商標)WBA(Novozymes A/S)のβ-アミラーゼを非限定的に含む。種々のクラス又は活性の他の酵素の例は、市場で販売され、本技術分野で知られ、本明細書での使用に適している。一実施態様では、食品加工助剤又は食品添加物として具体的に調合された他の酵素が、本明細書に開示されている酵素ブレンド又は他の組成物とともに使用される。
ある実施態様では、酵素ブレンドはアミロース及び/又はアミロペクチンを含むデンプン又は他の複雑な炭水化物の液化に有用である一以上の追加の酵素を含む。一実施態様では、追加の酵素はα-アミラーゼである。いずれの既知のα-アミラーゼも細菌α-アミラーゼ、例えば、バチルス属の種のα-アミラーゼ、例えば、AmyL-、AmyS-、AmyQ-又はAmyM-型アミラーゼ、菌類アミラーゼ、又は植物又は動物アミラーゼ等の本明細書に記載された、アミラーゼ、組成物、又は酵素ブレンドとともに使用できる。そのようなブレンド又は組成物は、液化プロセスで使用される場合、単一の酵素、特に野生型酵素で液化された同様なデンプンスラリーと較べてデンプンスラリーの最高粘度を低くすることが好ましい。一実施態様では、2以上の酵素を含む酵素ブレンドは、デンプンスラリーの最高粘度を、少なくとも、単独で使用されたときに2以上の酵素のいずれかにより生じる粘度にまでデンプンスラリーの最高粘度を低下させ、また、単独で使用されたときに2以上の酵素いずれかにより生じる最終粘度と少なくとも同じほど低いデンプンスラリーの最終粘度となる。
また、デンプンを含むスラリーを調製し、このスラリーを液化に適した温度にまで加熱し、先に述べた第1と第2のα-アミラーゼを含有する上記の酵素ブレンドをこのスラリーに加え、このデンプンスラリーを液化するに十分な時間と温度でこの酵素ブレンドとスラリーを保持させることを含むデンプンスラリーの液化の方法も与えられる。このスラリーの最終粘度は同様な液化プロセスで第1のα-アミラーゼ単独の使用により生じると同じ程度に低く、スラリーの最高粘度は同様な液化プロセスで単独で第2のα-アミラーゼを単独で使用して得られる最高粘度よりも低い。一実施態様では、添加される酵素ブレンドの量は、同様な液化プロセスで各酵素単独で使用されたときに、それぞれ加えられる第1と第2のα-アミラーゼの対応する量よりも、第1と第2のα-アミラーゼはそれぞれ少ない量で添加される。第1と第2のα-アミラーゼそれぞれの量は、各酵素が単独で使用されたときに、加えられる相当する量の約半分である。
変異アミラーゼを含む部品のキット(つまりキット)も提供される。一実施態様では、デンプンスラリーの液化を促すキットが与えられる。このキットは少なくとも:本明細書に記載された変異α-アミラーゼ、本明細書に記載された変異アミラーゼを含有する組成物、本明細書に記載された食品グレードの凍結乾燥された組成物、又は本明細書に記載された酵素ブレンド、及びデンプンスラリーの液化でキットの使用に関する指示書を含む。
また、表面からデンプン残留物を洗浄する先に述べた方法を実施するキット、及びデンプン又はデンプン誘導体を含有するコーティングを除去するために織られた素材を処理するキットも提供される。このキットは本明細書で述べられた少なくとも1個のα-アミラーゼ変異種を、または本明細書で述べられた一組成物又は酵素ブレンドを、対応する方法を実施するための指示書とともに含む。
さらに、本明細書に開示されたα-アミラーゼ、組成物、または酵素ブレンドを使用するエタノールを製造する方法を与える。本法はデンプンスラリーを一以上の以下のもので液化することを含む。(a)バチルス・ステアロテルモフィルス由来の変異α-アミラーゼであって、バチルス・ステアロテルモフィルス由来の野生型α-アミラーゼと比べ、前記のα-アミラーゼの少なくとも181と182、又は両位置のアミノ酸が置換されており、181における野生型アミノ酸残基の置換は、Ala、Cys、Asp、Glu、Leu又はProを含み、182における野生型アミノ酸残基の置換はAla、Ser、又はProを含む。;(b) 前記α-アミラーゼを含有する組成物;(c )前記アミラーゼを含有する食品グレードの凍結乾燥された組成物;(d)前記アミラーゼと第2のアミラーゼを含有する酵素ブレンドであり、各アミラーゼが同様な液化プロセスで単独で使用された場合、前記α-アミラーゼは、液化プロセスで使用されるとき、第2のα-アミラーゼの相当する触媒活性よりも低い最終粘度を与え、しかしそれより高い最高粘度を与える触媒活性を有するもの。
酵素を加えた後、生じた液化されたデンプンスラリーは、発酵でエタノールを製造するのに適した条件と時間でエタノールを製造できる一以上の生物により発酵される。技術者は種々の生物のいずれでもその液化された炭水化物の発酵によりエタノール製造するために使用できることを理解するだろう。生じたエタノールは、例えば、蒸留と濃縮のような本技術分野で知られている種々の方法のいずれかにより、少なくとも部分的に精製されることが好ましい。
技術者は、スラリーがさらに酵素的に処理を受け、または変換された場合、例えば、もっと小さいDPのポリマー(例えばグルコースのような単糖、又はグルコースとフルクトースの組み合わせ)に転換された場合、発酵用に選択された生物は、高収率を与え、又はより効率的に炭水化物を発酵することを理解するであろう。よって、一実施態様では、本法は発酵工程においてエタノールの製造をさらに進めるため液化されたデンプンスラリーへ一以上の追加の酵素を加える任意の工程を含む。そのような酵素はアミラーゼを含み、例えば、マルトース産生アミラーゼ又は解糖性のアミラーゼ、イソメラーゼ、又はプロテアーゼまたはリパーゼすら含む。一実施態様では、エタノールは食品、飲用水、食品添加物、燃料又は燃料添加物として有用であるように十分に精製される。
これまで引用された全ての文献は引用によってその全てを、全ての目的のために本明細書に組み入れられる。下記に提示される実施例はα-アミラーゼの変異種のある面をさらに述べ、説明するため提供されている。従って発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
実施例
実施例1:バチルス・ステアロテルモフィルスα-アミラーゼ配列に基づくα-アミラーゼ変異種の熱安定性
181で置換を受けているAmyS α-アミラーゼ変異種のライブラリーが2個の対照サンプル、つまり親α-アミラーゼ、AmyS(バチルス・ステアロテルモフィルス由来)と市販の酵素調製物、SPEZYME(登録商標)ETHYL(Genencor International, Palo Alto, CA;先に記載)と比較した、熱安定性についてスクリーニングを受けた。このライブラリーは標準的技術により作成された。I181K、I181N、I181Q、及びI181W等の変異種はこのライブラリーにはなかった。このライブラリーの各変異種は、調製され、熱安定性についてスクリーニングを受けた。タンパク質の決定は精製サンプル又はプレートサンプルについて行われた。全ての試験では、等量のα-アミラーゼタンパク質が反応に加えられた。
プレート(plate)又は精製された変異種はpH5.6のリンゴ酸緩衝液を用いて約20ppmのタンパク質濃度に稀釈された。基質は、同じ緩衝液に懸濁された15%のコーンスターチからなる。反応管中の400μlのデンプン懸濁液が70℃と2.5分間平衡にされた。次に7μlの稀釈酵素がこの平衡化されたデンプン懸濁液に加えられ、最終タンパク質濃度は約0.35ppmとなった。この反応混合物は、次に予熱された85℃の振とうヒーティングブロックに置かれ、300rpmで混合された。
予定した反応時間(約20分)で、反応は50μLの125mMNaOHの添加により停止された。反応管は次に回転し、上澄液が、HPAEC-PADによるDPプロファイルの分析のため10mMNaOHで10倍に稀釈された。活性が試験を受けた各酵素について計算された。各酵素について残存する活性のパーセントが85℃の熱暴露を受けていない酵素の活性に基づいて計算された。
結果
上記の試験の結果は図1に示されている。棒グラフの高さは、85℃で20分間反応をした後の残存活性のパーセント(Y-軸)を表している。各棒グラフは、181でAmyS α-アミラーゼに天然に含まれるイソロイシンを置換したアミノ酸残基の1文字の略号に相当する文字により特定されている。値がない場合(つまり、棒グラフの高さがゼロ)、この変異種は試験を受けていない置換体である。「Z」で表示された棒グラフは野生型AmySα-アミラーゼを表す。「$」で表示された棒グラフは市販の酵素調製物SPEZYME(登録商標)ETHYL(Genencor International)を用いた比較対照例を表す。
多くの変異種は、野生型AmySと比較して熱安定性が向上した。変異種のうち、I181P、I181A及びI181Lは熱暴露後、最も高い活性の残存があった。I181PとI181Aの誤差バーは違いが有意であることを示す。I181C、I181D、I181E及びI181Y等の他の変異種は、平均値において、熱暴露の後の残存活性により示される少なくとも数的に増大した熱安定性を示した。変異種I181F、I181G、I181H、及びI181Vは、全て、誤差バーが重なり合う範囲にあるので、野生型/親酵素に匹敵する熱安定性をもつように見える。
実施例2:変異種対市販の酵素調製物の活性プロファイル
2個の市販の酵素の活性プロファイルが、最初のスクリーニングで最も安定であることを示した変異種のそれと比較された。精製されたサンプルとプレートからのサンプルのタンパク質濃度は最初に決定され、全てのアミラーゼは等しいタンパク質濃度で試験された。
プレート又は精製α-アミラーゼ変異種はpH5.6のリンゴ酸緩衝液を用いて約20ppmのタンパク質濃度にまで稀釈された。基質は同一の緩衝液中の15%トウモロコシデンプンからなる。反応管の400μlのデンプン懸濁液は2.5分間、65℃で平衡化された。稀釈された酵素(10μL)がこの平衡化されたデンプン懸濁液に加えられ、約1ppmの最終タンパク質濃度とされた。この反応混合物は、5分間保持され、予熱された85℃の振とうヒーティングブロックに置かれ、300rpmで混合された。予定の時間で、反応は50μLの125mMNaOHで停止された。反応管は回転され、上澄液はHPAEC-PAD(アミロペクチンの鎖長分析に普通使用される技術)によるDPプロファイル分析用に10mMNaOHで10倍に稀釈された。
初期サンプルが、65℃で5分後に採取された。65℃から85℃まで温度を上昇させた後、さらに5、15、30分で採取された。DP2からHPLCの終わりまでの全範囲が積分され、この面積は全タンパク質と反応時間で割られた。高温での反応について、5分における反応はいかに迅速に酵素が基質を分解し始めるかについて指標となる。15分における反応は酵素の熱的活性の指標となる。30分は酵素の熱安定性の指標となる。
結果
結果は図2,3、及び4に示されている。各クロマトグラフのY-軸は、ナノクーロン(nC)で表されるパルスアンペロメトリー検出(PAD)による分析対象の定量的検出を示す。X-軸はカラムからの溶出の時間を表す。
図2は市販の酵素調製物、SPEZYME(登録商標)ETHYL(Genencor International)の結果を示す。パネルA-Dから分かるように、酵素活性は30分の時間にわたりスラリーから比較的低いDP断片の遊離を継続した。これは5、15、30分の反応の、比較的早い溶出ピークが増大していることにより示されている。30分のサンプル(パネルD)は、パネルC(15分)よりもDP2断片が16%増大し、パネルC(15分)は、パネルB(5分)よりもDP2断片が33%増大している。パネルBはパネルA(65℃で反応)よりもDP2が34%増大している。
図3は別の市販の酵素、SPEZYME(登録商標)XTRA(Genencor International;先に記載)に関する結果である。この酵素は最初、より早く作用した。しかし、比較的低いDP断片の遊離の増大の速度が連続して低下したので(例.パネルD対パネルC)、この酵素は熱安定性がより低いように見える。30-分のサンプル(パネルD)は15-分のサンプル(パネルC)と比較して遊離したDP2断片が2%の増大を示し、パネルBに示された5分のサンプルと比較して26%増加した。パネルBは65℃で、5分間反応したサンプルよりも遊離したDP2断片が40%増加したことを示した。
図4はAmyS 変異種I181Pについて結果を示す。この変異酵素の活性は、比較的低いDPの断片を初期は比較的早く遊離し、この変異種が非常に早い初期活性を有することを示している。この初期サンプル(65℃、5分)と比較して、85℃(パネルB)で5分後には、45%増加している。15分後(パネルC)、遊離されたDP2断片の量はさらに6%増大している。パネルCからD(30分)では、遊離されたDP2断片は、さらに7%増大した。パネルBからC、Dの増大の減少が、熱による不活性化又は他の因子、例えば、基質の相当数の早期の開裂(及びそれによる基質の損失)又は恐らく生成物による阻害といった、他の因子による基質の開裂の速度低下の結果であるかどうかは不明である。デンプン分解の初期速度は市販製品には非常に重要な因子であり、AmySI181P変異種は初期分解の高い速度を示している。
図5は図2,3及び4のそれぞれのパネルBに示された情報を並べて比較したものである。この時点は温度を65℃から85℃に上昇させた後、5分間の反応を表し、酵素の性能の有用な評価を与える。
図2,3及び4のように、Y-軸は、ナノクーロン(nC)で表されたパルスアンペロメトリー検出を用いた検出の定量的結果を与える。X-軸は分で表された溶出時間を表す。この変異種は異なる活性プロファイルを有し、一般的に基質を分解して低いDPの生成物、例えば、DP2断片を遊離する点で市販の酵素のいずれも上回る。
実施例3:市販の酵素調製物と比較したAmySの変異種の粘度測定
この実施例は、AmyS変異種が、市販の調製物等の他のα-アミラーゼと異なる性能をもつことを示している。そのような変化した性能は一般的に変化した熱安定性、変化した加水分解の速度、変化した特異的活性を含む。デンプンスラリーの加水分解(例.液化)において観察された他の変化した性能の特徴は、変化した最高粘度及び/又は変化した最終粘度を含んでいた。
4個のα-アミラーゼ変異種は精製され、全タンパク質及び特異的活性について特徴付けられ、そしてスラリー中のトウモロコシデンプンを加水分解/開裂する性能について、粘度測定(HAAKE 粘度計550)によりモニターされた。基質のスラリーは30%のトウモロコシ粉乾燥固体で、バッチとして、毎日調製された。pHは硫酸で5.8に調整された。スラリー50g(15g乾燥固体)が秤取され、10分間撹拌しながら予備調製され70℃に加温された。酵素はそれぞれ、他に記載がない限り別の反応に加えられた。試験された酵素と使用された量は以下のとおり。
市販の調製物
α-アミラーゼを加えた後、75rpmで撹拌しながら温度は直ぐに70℃から85℃に昇温された。スラリーと酵素混合物の温度は85℃に達したとき一定に維持された。粘度が反応中及び反応後さらに30分モニターされ、μNmで記録された。
結果
結果は図6に示されている。Y-軸はμNmでの相対的粘度を示し、X-軸は分で時間を示す。最高粘度が約10分で得られ、使用された酵素により変化した。全てのサンプルの粘度はデンプンがゼラチン化した後半の段階で上昇した。
結果
変異種I181PとI181Aは、市販の酵素SPEZYME(登録商標)XTRAと比較して非常に低い最高粘度を与えた。またI181変異種は市販の酵素調製物よりも高い最終粘度も与えた。2個の別のバッチのSPEZYME(登録商標)XTRAが使用され、1つは観察された違いが、例えば貯蔵中の活性の喪失等のようないずれかの劣化因子によるものではないことを保証するため新しく調製されたものである。両バッチは同様の結果を与えた。従って、この変異種の触媒活性は市販の酵素の触媒活性よりも低い最高粘度と高い最終粘度を与えた。
G182変異種はI181変異種又は基準αアミラーゼ、SPEZYME(登録商標)XTRA程に機能しなかった。G182AとG182P変異種の両変異種が使用されたが、G182P変異種は多くの量を使用しなければならなかった。一試験では687.5μg(約50AAU/g)が使用された(結果は示されていない)。
一般的に、I181変異種は、最高粘度を低下させる点でG182変異種またはSPEZYME(登録商標)XTRAよりも良く働いた。しかし、SPEZYME(登録商標)XTRAは何れの変異型よりも低い最終粘度を与えた。
実施例4 AmySの変異種を使用する酵素ブレンド
このα-アミラーゼ変異種を市販の酵素調製物と比較することに加え、2個の市販の酵素の組み合わせ(つまり、ブレンド)、またはα-アミラーゼ変異種と市販の酵素の組み合わせが調製され試験された。そのような組み合わせは2個の市販の酵素のブレンド等の他の酵素調製物の何れをも、機能において上回る。
サンプリングのための、デンプンスラリーと酵素反応が、実施例3の上記のように調製され、行われた。以下の酵素活性又は活性の組み合わせが試験された。
図7A
図7B
結果
結果は図7Aと図7Bに示されている。図7Aに示すように、市販の酵素調製物、SPEZYME(登録商標)XTRAとSPEZYME(登録商標)FRED(Genencor, International;上記)両方は低い最終粘度を与え、SPEZYME(登録商標)FREDの活性は、SPEZYME(登録商標)XTRAよりも低い最終粘度を与える。しかし、SPEZYME(登録商標)FREDに関する最高粘度は、SPEZYME(登録商標)XTRAに関するそれよりもかなり高いままである。加えて、SPEZYME(登録商標)FREDはSPEZYME(登録商標)XTRAの濃度の10倍より高い濃度で使用された。興味深いことに、SPEZYME(登録商標)FREDとSPEZYME(登録商標)XTRAの両方を含有する酵素ブレンド(それぞれ単独で使用されるときの濃度の半分だけで使用されている)は、SPEZYME(登録商標)FREDにより与えられる最終粘度と同じほど低い最終粘度となる。さらに、この最高粘度はSPEZYME(登録商標)XTRA活性により与えられるものまで低下する。従って、このブレンドは両酵素活性の利点を与え、いずれかの不利な点は与えない。しかし、相乗効果や、相加効果はわずかでも明らかではない。SPEZYME(登録商標)FREDとSPEZYME(登録商標)XTRAの最高粘度は、望まれるよりもすっと高く、α-アミラーゼ変異種の幾つかについて観察されるよりも相当に高い。
図7Bは、変異I181PとSPEZYME(登録商標)FREDについて比較したスラリー分解物の粘度データを示す。変異種を用いて得られた最高粘度は市販のアミラーゼ調製品のそれよりもかなり低い。しかし、最終粘度はSPEZYME(登録商標)FREDまたはSPEZYME(登録商標)XTRA(示されていない)のいずれかよりも相当に高い(図7A参照)。加えて、SPEZYME(登録商標)FREDとAmyS変異種I181Pを含有する酵素ブレンドは両方の酵素の利点、即ち、SPEZYME(登録商標)FRED より低い最高粘度及び変異アミラーゼより低い最終粘度を提供する。さらに、SPEZYME(登録商標)FREDとI181アミラーゼ変異種を組み合わせたブレンドは、いずれかの酵素のみにより与えられるものよりも低い最高粘度、とSPEZYME(登録商標)FREDにより与えられるものと同程度の低い最終粘度を与えた。従って、このブレンドは低い最終粘度と低い最高粘度を与え、組合わせて使用したときに2個の酵素の相乗効果を示した。従って、α-アミラーゼ変異種は他のアミラーゼと組み合わせたとき特に有用である。
α-アミラーゼ変異種とこれらのアミラーゼ変異種を作成し、使用する方法は本開示の範囲又は本質から逸脱せずに変更又は修飾できる。従って、そのような変更と修飾は請求項の範囲内にある。本出願は読者のためにいくつかの部分に分けられているが、ある部分の記載は他の部分にも当てはまる。従って、表題が限定をするものと解釈されてはならない。