JP2011501176A - 疾患の進展をモニターするための、および治療法の有効性を評価するための新規なバイオマーカー - Google Patents

疾患の進展をモニターするための、および治療法の有効性を評価するための新規なバイオマーカー Download PDF

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Abstract

本発明は、患者において疾患の進展をモニターする方法、または患者におけるサイトカイン療法またはスタチン療法の有効性を評価する方法であって、該患者から得られた組織液中のCD73をバイオマーカーとして用いる方法に関する。本発明はまた、個体の組織液から得られた試料中のCD73タンパク質の測定方法に関する。

Description

本発明は、疾患の進展をモニターするための、または治療法の有効性を評価するための、組織液におけるバイオマーカーとしてのCD73の使用に関する。また、本発明は、組織液中のCD73タンパク質の測定方法に関する。
本明細書において本発明の背景を説明するために用いられる刊行物および他の資料、特に、実施に関する詳細を提供する事例は、参照することにより組み込まれる。
CD73は、5’−エクトヌクレオチダーゼ活性を有する細胞表面酵素である。したがって、CD73は、一リン酸化プリンヌクレオチドから対応するヌクレオシドへの変換を媒介する。例えば、AMPからアデノシンへの脱リン酸化は、CD73が触媒する。CD73は、血漿中で可溶型としても存在し、可溶性酵素は、膜結合型と同じ酵素活性を有する。
アデノシンは、内皮細胞透過性の生理的調節因子の1つであり[1、2]、したがって、急性肺損傷、全身性炎症反応症候群、呼吸促迫症候群、高山病のような、多くの障害の病因に関与できる。内皮透過性の変化は、炎症、損傷および癌においても起こる。CD73は、正常な状態、低酸素および人工呼吸器により引き起こされる肺損傷において、アデノシン介在機序を介して内皮透過性を制御する[3〜7]。
CD73は、特定のサイトカインにより誘導される。最も重要なことに、インターフェロンアルファおよびベータは、ヒトにおいてCD73の発現および活性を増加させることが報告されている(8、国際公開第2004/084933号パンフレット、11)。これらのサイトカインは、種々の疾患の治療にも臨床的に使用されている。例えば、インターフェロンアルファは、ある種の感染や、肝炎や有毛細胞白血病のような悪性疾患の治療に使用されている。一方、インターフェロンベータは、多発性硬化症における炎症の抑制に広く用いられている。しかし、多くの場合、インターフェロン治療に対する有益な反応は、患者の亜集団で見られるのみであり、初期に反応した患者も、その後治療に反応を示さなくなることがある。したがって、治療に対する体の生物学的反応性を反映する、容易に測定可能なバイオマーカーの開発が必要とされている。
国際公開第2004/084933号パンフレットには、内皮CD73発現を誘導し、続いてアデノシン濃度を上昇させるためのサイトカインの個体における使用が開示されている。ラットでの多臓器不全の治療における、アデノシン一リン酸(AMP)と組み合わせたインターフェロンベータの使用が記載されている。
国際公開第2007/042602号パンフレットには、虚血再灌流障害または多臓器不全の治療または予防のためのそのままの(plain)インターフェロンベータの使用が記載されている。
スタチンは、コレステロール濃度を低下させるために用いられる抗高脂血症剤であり、患者においてCD73発現を誘導することが知られている。
しかし、先行技術には、疾患の進展をモニターするための、または治療法の有効性を評価するためのバイオマーカーとして使用するための、血清や他のいかなる組織液中でもCD73タンパク質を測定することに関する記載はない。
本発明者らは、可溶性CD73活性の測定が、疾患の重症度および治療に対する反応性をモニターするために使用できることを示している。したがって、本発明者らは、任意の技術によりCD73の発現レベルまたは活性を解析することで、疾患の経過または治療反応について重要な情報を提供できるものと確信する。
したがって、ある態様において、本発明は、患者における疾患の進展をモニターする方法であって、該疾患が、
a)組織損傷、
b)心筋梗塞もしくは脳卒中に起因する再灌流障害、臓器移植または他の外科手術、
c)癌または癌転移、および
d)炎症性症状
からなる群より選択され、
かつ、該患者から得られた組織液中のCD73を、バイオマーカーとして用いる方法に関する。
別の態様において、本発明は、疾患を患っている患者におけるサイトカイン療法またはスタチン療法の有効性を評価する方法であって、該患者から得られた組織液中のCD73をバイオマーカーとして用いる方法に関する。
別の態様において、本発明は、以下のi)またはii)による、個体の組織液から得られた試料中のCD73タンパク質の測定方法に関する:
i)CD73タンパク質を認識する結合剤に該試料を晒し、該結合剤を定量することにより、該試料中のCD73タンパク質のレベルを定量する、または
ii)薄層クロマトグラフィーを用いることにより、もしくは該試料をCD73基質に晒し、該基質の変化をモニターすることにより、該試料中のCD73タンパク質の活性を検出する。
腸の虚血−再灌流障害は、一次的および二次的組織損傷を誘発する。腸間膜動脈を30分間閉塞したのち、4時間再灌流した。偽手術(開腹術のみ)後および虚血再灌流(IR)障害の誘発後の野生型マウスにおける(A)腸および(B)肺の代表的な顕微鏡写真。 肺CD73/5’NT活性は、疾患の活動性と逆相関する。CD73/5’NT-/-マウスおよびこの野生型(WT)同腹子に、偽手術(偽)または30分間の腸管虚血とそれに続く240分間の再灌流(ALI)を施した。別の群では、ALIに曝した動物を、IFN−βで前処置した。(A)肺CD73/5’NT活性(平均値±SEM、1時間に1mgのタンパク質で加水分解されたAMP(nmol))は、TLCにより組織ライセートから測定した。(B)画像解析を用いて組織切片から測定した、肺における血管漏出(FITC結合デキストランの滲出)の半定量的解析(任意に選択したバックグランド値を超える蛍光値を示す切片領域(%)、平均値±SEM)。表示した群の代表的な顕微鏡写真も示す。棒線は、50μm。*はp<0.05、**はp<0.01。 膵炎を患っているSIRS患者におけるCD73/5’NT活性。図は、膵炎の重症度に対するCD73/5’NT活性を示す:0=軽症膵炎;1=臓器不全を伴わない重症膵炎;2=臓器不全を伴う重症膵炎;3=健常対照群。 あらゆる重症度の膵炎を有する患者の、集中治療室(ITU)総滞在時間に対するCD73/5’NT活性。
定義と好ましい実施形態:
「患者」または「個体」との用語は、ヒトまたは動物の対象を示す。
「疾患の進展をモニターする」との用語は、疾患の進行(例えば、疾患の悪化)または疾患のリグレッション(例えば、患者の回復)が、バイオマーカーの測定レベルを対照または同一の患者におけるバイオマーカーレベルの(異なる時点で行なわれた)1以上の先の測定値と比較することでなされることを意味する。例えば、先の測定結果または対照と比較したバイオマーカーレベルの減少は、疾患の進行を示すのに使用してもよく、一方、先の測定結果または対照と比較したバイオマーカーレベルの増加は、疾患のリグレッションを示すのに使用される。しかし、反対の方向でバイオマーカーレベルに影響を与える特定の疾患があり得る。
「組織液」との用語は、細胞を浸して取り囲んでいるあらゆる液体を含むものと理解されるべきである。この用語には、例えば、血液血漿、血清、リンパ、尿、滲出液(胸膜、腹膜)および脳脊髄液が含まれる。
「炎症性症状」との用語は、個体組織におけるあらゆる有害で望ましくない炎症反応を含むことを意味し、該炎症性症状は、組織損傷、心筋梗塞もしくは脳卒中に起因する再灌流障害、臓器移植または他の外科手術のような急性症状、あるいはアレルギー症状、自己免疫疾患、および炎症性疾患を含む慢性症状に起因してもよい。
その進展を、組織液中のCD73タンパク質を用いてモニターすることができる疾患は、典型的には
a)組織損傷、
b)心筋梗塞もしくは脳卒中に起因する再灌流障害、臓器移植または他の外科手術、
c)癌または癌転移、および
d)炎症性症状
からなる群より選択される。
患者の組織液中、特に血清中のCD73レベルに変化をもたらす典型的な疾患には、組織損傷;心筋梗塞もしくは脳卒中に起因する再灌流傷害、臓器移植もしくは他の外科手術;癌もしくは癌転移;あるいは前述の損傷もしくは再灌流傷害に起因する炎症性症状、またはアレルギー症状、自己免疫疾患および炎症性疾患を含む慢性症状に起因する炎症性症状が含まれる。このような慢性症状の例には、関節炎、喘息などのアレルギー症状、炎症性腸疾患もしくは皮膚の炎症性症状などの炎症性症状、乾癬、パーキンソン病、アルツハイマー病、自己免疫疾患、I型もしくはII型の糖尿病、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、クローン病、または臓器移植による拒絶反応が挙げられる。特に、炎症性疾である患全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性肺損傷(ALI)、多臓器不全(MOF)、虚血再灌流障害(IRI)および薬物有害反応(ADRS)は、組織液CD73タンパク質の変化を誘導するはずである。
「サイトカイン」との用語には、生物においてシグナル伝達化合物として用いられるあらゆるタンパク質またはペプチドが含まれる。特に、この用語は、インターフェロンまたはインターロイキンを示すが、これらに限定されるものではない。サイトカインがインターフェロンの場合には、インターフェロンは、アルファ、ベータ、ガンマ、オメガまたはその他の任意のインターフェロンであってよく、前述のインターフェロンのいずれのサブタイプであってもよい。インターフェロンは、前述の疾患の治療に用いられる。インターロイキンの例としては、IL−4、IL−10、IL−13およびIL−20が挙げられる。
「スタチン」は、個体においてコレステロールレベルを低下させるため、とりわけ心血管疾患のリスクを低下させるために用いられる抗高脂血症剤の1分類を形成する。また、炎症性症状、痴呆、癌、核白内障および肺高血圧症も、スタチンによる治療に対して反応することができる。
個体の組織液から得られた試料中のCD73タンパク質の測定は、該試料をCD73タンパク質を認識する結合剤にさらして、該結合剤を定量することによる該試料中のCD73タンパク質のレベルを定量する免疫検出により行うことができる。
あるいは、検出は、薄層クロマトグラフィーを用いて該試料中のCD73タンパク質の活性を検出することにより、または該試料をCD73の基質にさらして、該基質の変化をモニターすることにより行うことができる。
「結合剤」との用語には、抗体が含まれるものと理解され、これは、モノクローナルまたはポリクローナルまたは遺伝子工学的に合成されたもの;あらゆる抗体フラグメント;アプタマーおよびアフィボディ(affibodies)、およびCD73タンパク質上のエピトープと結合することができるあらゆる他の結合剤であってもよい。CD73抗体は、当該分野では公知であり、例えば、http://www.biocompare.eom/matrixsc/3194/6/67151/CD73.htmlを参照。アフィボディとは、アフィボディAb社により開発された、新しい種類の結合剤、小さく、そして特に安定なタンパク質を示す。
結合アッセイは、競合的または非競合的であってよい。好ましいアッセイの1つは、サンドイッチアッセイであり、この方法では、固体支持体に固定された捕捉抗体(または他の種類の結合剤)が、第1のエピトープでその捕捉に結合する抗原を含む試料にさらされ、そして抗原の別のエピトープに対する標識抗体(または他の種類の結合剤)が添加される。標識抗体は、直接(ホモジニアスアッセイ)または非固定化標識抗体の分離後に定量される。標識は、放射性同位元素、蛍光色素、酵素または他のあらゆる検出可能な標識であってよい。
例えば、免疫検出の目的には、あらゆる適当な抗CD73特異抗体を試料から可溶性CD73を捕捉するために用いることができ、次に結合したタンパク質の量が、各種技術により定量される。例えば、サンドイッチELISA法を用いることができ、この方法では、一の抗CD73抗体が多穴プレートの底に固定化され、試料が添加されて、結合したCD73が別の抗CD73抗体を用いて検出される。次に、抗CD73抗体が、標識した二次抗体などの、抗体検出に適当な多数の技術のいずれかにより検出される。反応のCD73特異性は、無関係な抗体を捕捉抗体または検出抗体として採り入れ、これらの負の対照と抗CD73抗体とのシグナルを比較することで制御された。
CD73活性の測定:
CD73活性は、公表されたプロトコールにしたがい、薄層クロマトグラフィーを用いて測定することができる。CD73活性は、AMP、またはCD73の基質として用いることができる他のプリンモノヌクレオチドから対応するヌクレオシドへの変換を測定するあらゆる酵素アッセイを用いて、測定することもできる。例えば、アッセイは、放射標識または蛍光標識した基質の変換に基づくことができる。検出方法は、基質濃度の減少、または生成物濃度もしくはリン酸基の放出の増加の定量によるものであってもよい。反応のCD73依存性は、AMPCPなどの公知のCD73阻害剤の存在下および非存在下でアッセイを行うことにより決定することができる。
CD73の適当な基質は、例えば、アデノシン−5’−一リン酸(AMP)、イノシン−5’−一リン酸塩(IMP)などを含むヌクレオシド−5’−一リン酸である。
本発明は、次の非限定的な実験の項により説明される。
実験の項
材料および方法
ALIモデルおよび血管漏出
8世代C57BL/6バックグラウンド系統に戻し交配したCD73―/―マウス、およびC57BL/6野生型(WT)マウスを用いた。これらのマウスは、CD73のmRNA、タンパク質および酵素活性を欠損する[3]。これらの動物は、体重、性別および年齢を一致させた。全てのマウスは、実験まで標準的なマウス固形飼料と水とを摂取できる状態であった。
マウスは、塩酸ケタミン(100mg/kg体重、腹腔内)およびキシラジン(10mg/kg体重、腹腔内)で麻酔した。麻酔の間、マウスは通中の空気を自発換気した。手術中の体液喪失を代償するために、動物は手術前に1mlの滅菌生理食塩水を皮下に投与された。上腸間膜動脈を正中線開腹術(midline laparotomy)により切開し、微小血管鉗子により30分間閉塞した。偽動物は、血管閉塞なしで上腸間膜動脈切開を受けた。傷を一層縫合した。動物の体温は、虚血段階の間加熱灯により維持した。虚血後、微小血管鉗子を放し、傷を縫合し、動物は、皮下にさらに1mlの生理食塩水を投与された。235分間の再灌流後、マウスはFITC結合デキストラン(0.2ml滅菌生理食塩水中25mg/kg体重;分子量70,000D、モレキュラープローブス社(Molecular Probes))を投与された。マウスを、240分間の再灌流後に犠牲死させ、組織試料を採取した。虚血30分−再灌流240分のプロトコールは、実証されかつ再現可能なALIモデルである[9]。このプロトコールは、トゥルク(Turku)大学の動物倫理委員会(Sirpa Jalkanenに対する承認番号1597/05)により承認された。
CD73活性および透過性に対するIFN−βの効果は、前処理および後処理プロトコールを用いて検討した。マウスの亜群を、組換えマウスIFN−βにより前処理した(6000IU、皮下、虚血前3日間、1日1回、)。後処理群では、動物は、虚血段階後再灌流期間の開始時に、IFN−βの単回ボーラス(20,000IU)を静脈内に投与された。
全てのマウスに、安楽死5分前にFITC結合デキストラン(70kDa)を静脈内に注射した。血管漏出は、コンピューター画像解析(イメージジェイ(Image J))を用い、凍結切片化された肺から無作為に選択したフィールドからの3色画像により測定した。
CD73活性の解析
エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性は、前述のようにTLCにより分析した[10]。簡潔には、標準的な酵素アッセイには、最終容量120μlのRPMI1640、肺ライセート、5mmol/Lのβ−グリセロリン酸、およびトレーサ[2−3H]AMPを有する表示濃度のAMP(sp.act.、18.6Ci/mmol;アマシャム社(Amersham)、リトルチャルフォント、英国)が含まれた。インキュベーション時間は、反応と時間との直線性が確保されるように選択し、変換されたAMPの量が、初期に投入した基質の7〜10%を超えないようにした。混合物のアリコートをAlugram SIL G/UV254 TLCシート(マッハライ・ノーゲル(Macherey−Nagel)、デューレン、独国)に適用し、イソブタノール/イソアミルアルコール/2−エトキシエタノール/アンモニア/H2O(9:6:18:9:15)を溶媒として用いて分離した。3H−標識AMPおよびその脱リン酸化ヌクレオシド誘導体を紫外光で可視化し、Wallac 1409β分光計を用いて定量した。CD73活性は、時間当たり1mgのタンパク質により加水分解されたAMPのnMで表した。ライセート中のタンパク質濃度は、製造業者の使用説明書に従い、BCA Protein Assay Kit(ピアス(Pierce)社、ロックフォード、イリノイ州)により測定した。
統計分析
ノンパラメトリック一元配置分散分析(ANOVA)(クラスカル・ウォーリスおよびマン・ホイットニーのU検定)を用いた。
結果
CD73活性は、疾患の活動性と相関する。
腸管虚血・再灌流(IR)は、腸と肺との両方で著しい組織損傷を引き起こした(図1)。偽手術をした野生型マウスの肺では、CD73活性は低かった(図2A)。肺におけるFITCデキストランの顕微鏡分析により、偽手術を受けたWTマウスでは、漏出は辺縁部のみであったことが示された(図2B)。
ALIがWT動物で誘導された場合、CD73活性は25%減少した。同時に、血管漏出は顕著に増加した。血管内液の肺実質への漏出、さらには肺胞への漏出は、肺機能悪化とガス交換障害との主な原因であるため、血管透過性の変化は、疾患の重症度と直接相関する。
予想どおり、CD73活性は、CD73欠損マウスでは、偽手術後と腸内IR後との両方において検出不可能、または非常に低いレベルであった。CD73欠損マウスでは、偽手術した動物での漏出は、偽手術した野生型マウスと比較して穏やかに増加した。特に、ALIを誘導した場合、CD73欠損マウスは、肺においてWT同腹子よりも漏出が約80%多いことが示された(p=0.03)。
これらのデータは、CD73活性と血管透過性すなわち疾患の重症度の度合いとの間に逆相関があることを示す。
CD73活性は治療反応と相関する。
3日間のIFN−β前処置(多発性硬化症の治療において臨床的に用いられる用量で)により、ALIの間WT肺において、230%のCD73活性の増加がもたらされた(p=0.002、図2A)。最も顕著なことに、ALI誘導後のWTマウスにおける漏出領域は、非処理の同腹子と比較した場合、IFN−β前処置後に90%を上回って減少した(p=0.0001、図2B)。実際に、偽手術のみを受けた動物との差はなかった。顕著なことに、IFN−βは、CD73欠損マウスでのALIに対しても、保護作用はなかった。これらのデータは、インターフェロンベータ治療が、厳密にCD73に依存して血管漏出を減少させることを示す。さらに、野生型マウスにおけるCD73活性の増加は、IFN−β治療に対する反応の有益な結果を予測するために使用することができる。
次に、IFN−β治療が、すでに確立された毛細血管の損傷を回復させることができるかどうかを試験した。そのために、虚血期間後のみに再灌流時点で、マウスをIFN−βで処置した。とりわけ、IFN−βの単回投与により、次の4時間の再灌流期間の間、血管バリア機能が極めて有意に改善された。FITCデキストランの漏出は、後処置群において、対照群と比較した場合、90±9%減少した(n=8〜13マウス/群、p<0.001)。同時に、血清試料からのCD73活性の測定は、30%を上回って増加した(427±22(処理なしALI群)〜561±48(IFN−βで処理したALI群);p=0.04、n=4/群)。したがって、CD73活性の誘導は、治療反応と正に相関する。さらに、血液試料中でのCD73活性の測定により、IFN−βの反応性についての有益な情報がもたらされる。
当然のことながら、本発明の方法は、様々な実施態様の形で取り入れることができ、本明細書には、そのうちのいくつかのみが記載されている。当該分野における高度な技術者には、他の実施態様が存在し、本発明の精神から逸脱しないことは明らかであろう。したがって、記載された実施態様は例示である、制限的なものとして解釈されるべきではない。

Claims (11)

  1. 患者において疾患の進展をモニターする方法であって、該疾患が、
    a)組織損傷、
    b)心筋梗塞もしくは脳卒中に起因する再灌流障害、臓器移植または他の外科手術、
    c)癌または癌転移、および
    d)炎症性症状
    からなる群より選択され、
    かつ、該患者から得られた組織液中のCD73を、バイオマーカーとして用いる方法。
  2. 前記方法が2以上の時点で繰返され、かつ先の分析結果と比較した、試料中のCD73レベルの変化が、疾患の進行を示すために用いられる請求項1記載の方法。
  3. 前記疾患が炎症性疾患である請求項2記載の方法。
  4. 前記炎症性疾患が、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性肺損傷(ALI)、多臓器不全(MOF)、虚血再灌流障害(IRI)または薬物有害反応(ADRS)である請求項3記載の方法。
  5. 前記方法が2以上の時点で繰返され、かつ先の分析結果と比較した、試料中のCD73レベルの変化を、疾患のリグレッションを示すために用いる請求項1記載の方法。
  6. 疾患を患っている患者におけるサイトカイン療法またはスタチン療法の有効性を評価する方法であって、該患者から得られた組織液中のCD73をバイオマーカーとして用いる方法。
  7. 前記方法が2以上の時点で繰返され、かつ先の分析結果と比較した、試料中のCD73レベルの変化が、前記療法の有効性を評価するために用いられる請求項6記載の方法。
  8. 前記サイトカイン療法が、
    a)組織損傷、
    b)心筋梗塞もしくは脳卒中に起因する再灌流障害、臓器移植または他の外科手術、
    c)癌または癌転移、および
    d)炎症性症状
    からなる群より選択される疾患を治療するために用いられる請求項6または7記載の方法。
  9. 前記スタチン療法が、心血管疾患、炎症性症状、痴呆、癌、核白内障および肺高血圧症からなる群より選択される疾患を治療するために用いられる請求項6または7記載方法。
  10. 以下のi)またはii)による、個体の組織液から得られた試料中のCD73タンパク質の測定方法:
    i)CD73タンパク質を認識する結合剤に該試料をさらし、該結合剤を定量することにより、該試料中のCD73タンパク質のレベルを定量する、または
    ii)薄層クロマトグラフィーを用いることにより、もしくは該試料をCD73基質にさらし、該基質の変化をモニターすることにより、該試料中のCD73タンパク質の活性を検出する。
  11. 前記結合剤が、抗体または抗体フラグメントである請求項9記載の方法。
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