JP2011500093A6 - マイコプラズマ・ボビス ワクチン - Google Patents

マイコプラズマ・ボビス ワクチン Download PDF

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Abstract

本発明は、新規の弱毒化されたM.ボビス細菌株に関する。また、本発明は、弱毒化M.ボビス細菌株の生細菌を有する免疫原性組成物、その製造、並びに、そのM.ボビス感染の治療及び予防のための使用をも提供する。

Description

本出願は、2007年10月29日に米国に出願された米国仮出願番号60/983,492及び2008年6月25日に米国に出願された米国仮出願番号61/075,552に基づき優先権を主張し、その教示内容は参照することによりここに援用される。
[配列リスト]
本出願は紙形式及びコンピュータ可読形式の配列リストを有しており、その教示内容は参照することによりここに援用される。
マイコプラズマ・ボビス(M. bovis)は、マイコプラズマの中で病原性の高い種の1つであると考えられ、世界中で著しい経済的損失を引き起こす。マイコプラズマは全年齢の牛において重度の臨床兆候を引き起こす。M.ボリスは、牛における肺炎、乳腺炎及び関節炎を引き起こすことが判明している最もよく見られるマイコプラズマ病原体であり、その病因的役割は雌牛及び雄牛における耳炎、角結膜炎(keratoconjuctivitis)、滑膜炎並びに生殖障害にも関係してきた。一般的に、マイコプラズマは細胞壁又は細胞膜がなく、一般的に用いられる広域抗生物質治療のいくつかに対して耐性になる傾向があるため、治療することが難しい。マイコプラズマは大半のウイルスよりも大きく、細胞に侵入するよりもむしろ細胞表面に付着し破壊することにより組織細胞にダメージを与えるという点で、マイコプラズマはウイルスと異なる。M.ボビスに感染した動物では免疫応答が低下しており、発熱、鬱病(depression)、食欲不振、呼吸困難(labored breathing)、鼻汁及び眼漏、咳、くしゃみ、あえぎ(gasping)、うめき(grunting)、跛行及び関節腫脹(lameness and swollen joints)、乳腺炎、中耳炎、流産、横臥(recumbence)、並びに死亡などのM.ボビス感染の兆候を示し得る。この微生物は、不衛生で暖かく湿った環境で存続する。マイコプラズマはミルク中で生存でき、感染に応答して産生される多数の白血球の存在下でも増殖するように思われる。
M.ボビスワクチンを開示している当技術分野で入手可能な参考文献がいくつか存在する。米国特許番号6,548,069は、少なくとも2つの死滅したM.ボビス株を有する全細胞不活性化細菌ワクチン(バクテリン)を包含するワクチン組成物を開示している。他の入手可能な参考文献には、不活性化ワクチンを製造するために10回よりも少なくM.ボビス株を継代することが開示されているが、連続継代を介して感染性又は病原性のM.ボビス株を弱毒化することや、そのような弱毒化生M.ボビス株を非病原性の生培養ワクチンの本質とすることは述べられていない。
先行技術は、死滅したM.ボビスがマイコプラズマ・ボビス感染と関連する臨床症状の重症度を軽減するのに効果的又は効率的ではないという点で不十分である。低レベルでの継代を行っても、臨床症状が大きく軽減されるほど高い有効性を有するマイコプラズマワクチンは産生されない。低代継代で不活性化された入手可能なM.ボビスワクチンは、臨床症状の重症度において大きな軽減を示さない。また、前記米国特許番号6,548,069は、高代継代したM.ボビスの弱毒化株を免疫原性又はワクチン組成物に用いるという思想を以下の教示により意識的に強く排除している。
「マイコプラズマ分離株は培養中でその抗原を急速に変えるため、約50回を超える高代継代株を本発明の細菌ワクチン中に用いると、その高代継代株は感染性を失い、より乏しい免疫応答を引き起こし得る。従って、新しい分離株や未だ病原性を有する培養株、すなわち、宿主動物に感染する能力を保持している株を用いることが好ましい。世代の臨界数が存在することは知られていないが、本発明は、大量生産前に約10回以下、好ましくは約5回以下継代したマイコプラズマ株から開始することが好ましい。培養中の低世代(fewer generations)の株を用いることにより、抗原がその自然状態を保ち、これにより感染性微生物に対する防御免疫応答を引き起こすと考えられる。」
従って、当該技術において必要なものは、M.ボビスに対する免疫応答を引き起こすのに効果的な免疫原性組成物である。さらに必要なものは、M.ボビス感染の兆候の重症度を軽減したり、その兆候の発生を低減するのに効果的な免疫原性組成物である。さらに必要なものは、M.ボビス感染の兆候の発生を低減又は排除するのに効果的なワクチンである。さらに必要なものは、M.ボビス感染の兆候の重症度を軽減したり、その兆候の発生を低減するのに効果的で、それを必要とする動物に安全に投与できる免疫学的組成物である。さらに必要なものは、交差防御(cross−protection)をもたらし、免疫学的組成物中で用いられるM.ボビス株又は分離株とは異なるM.ボビス株及び分離株に対する免疫応答を引き起こす前記免疫学的組成物である。さらに必要なものは、1回投与、2回投与又は複数回投与(初回投与後に追加投与)の免疫療法として適した安全且つ効果的な免疫学的組成物、複数の投与法による投与に好適且つ便利な免疫学的組成物、並びに、混合ワクチンの製造に用いる他の免疫原及び免疫学的組成物と混合可能な免疫学的組成物である。最後に、必要なものは、必要とする動物に対して迅速な防御開始と長期持続防御を与える前記免疫学的組成物である。
本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、非病原性で弱毒化されたM.ボビス株、好ましくは高代継代のM.ボビス株を提供することにより、先行技術において存在する問題を解消する。前記組成物又はワクチンは、製薬学的に又は獣医学的に許容できる担体と組み合わせることができ、野生型のM.ボビス株による感染と比較すると、好ましくは現在入手可能なワクチンと比較しても、M.ボビス感染の兆候及び/又はM.ボビス感染それ自体及び/又は発症又は重症度が減少するほど有効性が向上した免疫原性組成物として用いることが出来る。すなわち、本発明によるワクチンを接種された子牛は、M.ボビス感染の兆候を起こすリスクが低く、臨床兆候が生じたとしてもその臨床兆候は、ワクチンを受けずにM.ボビスに感染した動物や、本発明によらないワクチンを受けた動物よりも重症度が低く、又は、まん延しないであろう。また、非ワクチン接種で感染した動物、好ましくは従来入手可能なワクチンでワクチン接種された動物と比較すると、本発明によるワクチンを動物に投与する場合には、群れ中で感染した動物がいてもその感染動物の数は少ないであろう。有利なことに、本発明のワクチンは、迅速な発現と長期持続防御の両方を提供する有効性の高い安定ワクチン組成である。先行技術の教示を背景として、M.ボビスの株、好ましくはM.ボビスの高代継代株が弱毒化され、生存しており、免疫原性組成物の成分として従来よりも非常に効果的であるという点で、本発明の組成物は驚くべき結果を提供した。
本明細書に開示された発明は、動物に投与すると免疫応答を引き起こす又は誘発するM.ボビスの非病原性で弱毒化した株又は分離株、好ましくは高代継代されたM.ボビスの弱毒化株を提供する。有利なことに、前記免疫応答は、本発明の組成物の投与を受けている動物を防御し、その結果個々の動物はM.ボビス感染の兆候を引き起こすリスクが低くなる。また、そのような兆候が起きてもその兆候は、当該組成物を接種されていない動物や、本発明により製造されたものではないワクチンや組成物を接種されている動物に比べて、重症度が低く、まん延しない。
本発明において、「分離株」及び「株」という用語は互換性を持って用いられ、個々の株又は分離株間の相違点はDNAフィンガープリンティング法を用いて検出され得る(すなわち、異種の株又は分離株は異なるフィンガープリントを有する。)ことを述べる。
ある態様において、M.ボビスの高代継代株と製薬学的に許容できる担体とを有する免疫原性組成物が開示される。前記M.ボビス株は弱毒化され非病原性であることが好ましい。本発明の免疫原性組成物は、牛におけるM.ボビスに対する免疫原性応答を生み出す。当該免疫原性組成物の投与により生じる又は引き起こされるM.ボビス感染に対する免疫原性応答は、M.ボビス感染の兆候の重症度やその発症を大幅に減少させる。他の態様において、高代継代のM.ボビス株、好ましくは高代継代の弱毒化された非病原性のM.ボビス株を有する免疫原性組成物の製造方法が開示される。他の態様において、子牛における免疫原性組成物を用いた迅速かつ長期持続性の血清学的体液性免疫応答を刺激し、その結果して疾病を予防する方法が開示される。また、他の態様において、本発明の免疫原性組成物を有効量で投与することにより、子牛にM.ボビス感染に対する免疫を与える方法が開示される。本発明の免疫原性又はワクチン組成物を子牛に投与した後にM.ボビスの野生型株でチャレンジすると、M.ボビス感染と通常関連する臨床症状、肺病変、跛行、及び関節病変の減少を含むM.ボビス感染の兆候の減少を示した。特に、ワクチン接種されたグループにおいて、肺病変の減少及び関節臨床症状及び関連する跛行のかなりの減少が観察された。本発明の他の態様において、好ましくは本発明による及び/又は本明細書に開示された弱毒化された非病原性M.ボビス細菌のいずれかを投与することにより、M.ボビス感染の兆候を減少させる方法が開示される。M.ボビス感染兆候の減少は、本発明の免疫原性組成物の投与によって達成される。
本発明の好ましい態様においては、それぞれM.ボビスの高代継代の弱毒化株及び製薬学的に許容できる担体を含む3種の生ワクチン又は免疫原性組成物を子牛に投与する。当該M.ボビスの高代継代株は、好ましくはin vitro細胞培養中で、好ましくは10回より多く継代され、好ましくは20回以上、より好ましくは30回以上、さらにより好ましくは40回以上、さらにより好ましくは50回以上、さらにより好ましくは55回以上、さらにより好ましくは60回以上、さらにより好ましくは70回以上、さらにより好ましくは80回以上、さらにより好ましくは90回以上、さらにより好ましくは95回以上、さらにより好ましくは100回以上、さらにより好ましくは102回以上、最も好ましくは106回以上継代される。ワクチン又は免疫原性組成物中で有益なM.ボビス株は、どのような株又は分離株であってもよい。3つの代表的な株として、ブダペスト条約の条項により2007年10月16日にバージニア州マナッサスにあるATCCに寄託されPTA−8694と指定された052823A106、同じくブダペスト条約の条項により2007年10月16日にバージニア州マナッサスにあるATCCに寄託されPTA8696と指定された05249A102、及び、同じくブダペスト条約の条項により2007年10月16日にバージニア州マナッサスにあるATCCに寄託されPTA8695と指定された0519021B106が挙げられる。継代前のこれらの株はいずれも病原性であるが、上記のようにこれらの株を各々継代した後、特に100回より多く継代した後には、得られる継代株は弱毒化され非病原性であり、当該株の免疫原性組成物が投与された動物において免疫応答をもたらした。その後、前記子牛は、自然に起こる病気の発生から得られたM.ボビス分離株でチャレンジされた。本明細書中の全ての例において、チャレンジ分離株は、ワクチン接種に用いられた分離株とは異なる「フィンガープリント」(下記で決定される)を有していた(すなわち、異種のチャレンジであった)。有利なことに、継代された株を投与すると、M.ボビスの病原株又は野生型株でチャレンジした後にM.ボビス感染の臨床症状の重症度及び/又は発症を低減する免疫応答が引き起こされた。
従って他の態様によれば、本発明は、野生型のM.ボビス株による感染に比べて、好ましくは現在入手可能なワクチンに比べてもM.ボビス感染の兆候及び/又はM.ボビス感染それ自体及び/又は発症又は重症度が減少するという向上した効果を奏し、迅速な発現と長期持続防御が得られるという高い効果を奏する免疫原性組成物中で用いることの出来る、受入番号PTA−8694、PTA8695又はPTA8696でATCCに寄託された弱毒化M.ボビス細菌株のいずれかに関し、好ましくは、前述の寄託された弱毒化M.ボビス細菌株のいずれかの弱毒化された子孫M.ボビス細菌株のいずれかにも関する。
他の態様によれば、本発明は、受入番号PTA−8694、PTA8695若しくはPTA8696でATCCに寄託された弱毒化M.ボビス細菌株のいずれか、又は前述の寄託されたM.ボビス細菌株のいずれかの弱毒化された子孫M.ボビス細菌株のいずれかを有する、本明細書記載の免疫原性組成物をも提供する。好ましくは、これらの免疫原性組成物は、受入番号PTA−8694、PTA8695又はPTA8696でATCCに寄託された弱毒化M.ボビス細菌株のいずれかを有する。特定の前述のM.ボビス細菌株のいずれも用いることが出来る。また、本発明は、例えばM.ボビスの病原株又は野生型株でチャレンジした後にM.ボビス感染の臨床症状の重症度及び/又は発症を低減することを目的とした、本明細書記載のこれらの特定の弱毒化M.ボビス株のいずれかの獣医学的使用にも関する。
他の態様によれば、本発明は、受入番号PTA−8694、PTA8695又はPTA8696でATCCに寄託されたM.ボビス細菌株と同じ性質を有する弱毒化M.ボビス細菌にも関する。「受入番号PTA−8694、PTA8695又はPTA8696でATCCに寄託されたM.ボビス細菌株と同じ性質を有する」とは、そのような細菌株が弱毒化されており、皮下投与若しくは経鼻投与により子牛に2.1E9CFUの単回投与した後14日以内に子牛体内での体液性免疫応答を引き出すことができ、病原性M.ボビス野生型株に感染することによって通常生ずる臨床兆候を引き起こさないことを意味する。参照方法として、体液性免疫応答は、検査キット付きのプロトコルを用いてBIOVET M.ボビス ELISA−Kitにより求められる。これらの株の各々は、皮下投与又は経鼻投与により子牛に2E9CFUの単回投与を行った後14日以内に、検査キット付きのプロトコルを用いてBIOVET M.ボビス ELISA−Kitにおいて、光学濃度(O.D.)測定値で表すと1.5以上の相対的ELISAスコアを有する体液性免疫応答を引き起こすことが好ましい。
本発明の組成物は、どのような従来方法でも投与することが出来る。投与方法の例としては、免疫系細胞による当該免疫原性組成物への接触を可能とするあらゆる方法:経口、経皮/皮内、静脈内、皮下、筋肉内、眼内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻腔内、胃内、気管内、肺内又はこれらのあらゆる組み合わせの投与方法が挙げられる。好ましい投与方法は、筋肉内、皮下及び鼻腔内投与であって、皮下及び鼻腔内投与が特に好ましい。希望又は必要に応じて、ある程度の期間をおいて1回又は複数回、追加予防接種をしてもよい。そのようなワクチンの投与後、動物内で免疫応答が引き起こされ、病原型のM.ボビスでチャレンジした後に野生型の細菌又は分離株にさらすと、M.ボビス感染の兆候の発症及び/又は重症度が減少する。また、本発明のワクチン又は免疫原性組成物は、継代により弱毒化された後に抗原成分として用いられる株以外のM.ボビス株に対して、効果的な交差防御(cross−protection)を示した。
好ましい形態において、当該ワクチンの投与量は5mL以下であり、より好ましくは3mL以下であり、さらにより好ましくは2mL以下である。最も好ましい実施態様において、該投与量は2mLであり、鼻腔内投与で1mLがそれぞれの鼻孔内に投与されることが好ましく、皮下投与がより好ましく、単回投与として一度に鼻腔内及び皮下の両方に投与されることが最も好ましい。いくつかの好ましい形態において、免疫原性組成物の2回目又はそれ以降の投与が、1回目の投与の後に行われる。そのような後続投与は、初回投与から10日後以降に行われることが好ましく、10日後以降から32日の間がより好ましく、12日後以降から30日の間がさらにより好ましく、14日後以降がさらにより好ましく、14日後以降から28日の間が最も好ましい。最も好ましい形態において、該ワクチンは、単回投与として0日目に投与され、又は、代替的な形態において、0日目とその後14〜28日目に投与され、免疫投与計画の終了後に初めて病原型のM.ボビスにさらす。最も好ましい1形態において、追加免疫は必要ではなく、該ワクチンは1回のみ投与される。該ワクチンは、生後1日から成獣期までの動物に、好ましくは生後1日から生後2年の若年成牛までの子牛に、より好ましくは1日齢から16週齢の子牛に、最も好ましくは生後6週から生後12週の子牛に投与される。そのような投与により、下記のようにM.ボビス感染の兆候が減少する。実際、本明細書中の調査では、上記のようにワクチン接種されたグループにおけるM.ボビス感染の兆候が、非ワクチン接種グループと比較すると50%以上、より好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより好ましくは75%以上減少したことが示されている。肺病変の評価、具体的には様々な種について習慣的に採点されるM.ボビスが原因の病変に起因する肺硬化の割合が、死体解剖後になされ、非ワクチン接種グループと比較すると、33%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上減少していた。
他の好ましい実施態様において、本発明のワクチンは適切なアジュバントと組み合わされる。本明細書で用いられる「アジュバント」(補助薬)として、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、Quil A,QS−21(Cambridge Biotech Inc.,Cambridge MA),GPI−0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.,Birmingham,AL)などのサポニン、W/O(water−in−oil)エマルジョン、O/W(oil−in−water)エマルジョン、W/O/W(water−in−oil−in−water)エマルジョンが挙げられる。該エマルジョンは特に、軽質液体パラフィンオイル(European Pharmacopea type);スクアラン若しくはスクアレンなどのイソプレノイドオイル;アルケン、特にイソブテン若しくはデケンのオリゴマー形成から得られるオイル;直鎖アルキル基を有する酸若しくはアルコールのエステル、特には植物オイル、エチルオレアート、プロピレングリコールジ−(カプリラート/カプラート)、グリセリルトリ−(カプリラート/カプラート)若しくはプロピレングリコールジオレアート;分岐鎖状の脂肪酸若しくはアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステルをベースにすることが出来る。当該オイルは乳化剤と組み合わせて用いてエマルジョンを形成する。前記乳化剤は、非イオン性界面活性剤、特に、エトキシ化されていてもよい、ソルビタンのエステル、マンニド(mannide)のエステル(例えば、無水マンニトールオレアート)、グリコールのエステル、ポリグリセロールのエステル、プロピレングリコールのエステル、及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸若しくはヒドロキシステアリン酸のエステル、並びに、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン共重合体ブロック、特に、プルロニック(Pluronic)製品、特にはL121が好ましい。Hunter et al.,The Theory and Practical Application of Adjuvants(Ed.Stewart−Tull,D.E.S.)を参照することが出来る。 JohnWiley and Sons,NY,pp51−94(1995)及びTodd et al.,Vaccine 15:564−570(1997)を参照することができる。
例えば、M.Powell及びM.Newman,Plenum Press,1995による「Vaccine Design,The Subunit and Adjuvant Approach」の第147ページに記載されているSPTエマルジョンや、同じくこの本の第183ページに記載されているエマルジョンMF59を用いることが出来る。
アジュバントの別例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー、及び無水マレイン酸とアルケニル誘導体との共重合体から選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に糖類のポリアルケニルエーテル若しくはポリアルコールで架橋されたアクリル酸又はメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は、カルボマーという用語で知られている(Phameuropa Vol.8,No.2,June 1996)。当業者であれば、少なくとも3個のヒドロキシ基、好ましくは8個以下のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化された化合物と架橋し、これにより該少なくとも3個のヒドロキシル基の水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族基に取って換えられたアクリル系ポリマーについて述べたU.S.Patent No.2,909,462にも言及することが出来る。好ましい基(不飽和脂肪族基)は炭素数2〜4のものであり、例えば、ビニル基、アリル基、及び他のエチレン性不飽和基である。該不飽和基は、それ自体メチル基などの他の置換基を有していてもよい。カルボポル(Carbopol(BF Goodrich,Ohio,USA))という名称で売られている製品が特に適当である。この製品はアリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールと架橋している。これらの中で、カルボポル974P、934P及び971Pが挙げられる。カルボポル971Pを用いることが最も好ましい。無水マレイン酸とアルケニル誘導体の共重合体の中には、無水マレイン酸とエチレンの共重合体である共重合体EMA(Monsanto)がある。これらのポリマーを水に溶解させると酸溶液になり、その後、免疫原性、免疫学的又はワクチン組成物それ自体を包含するアジュバント溶液を得るために、該溶液は好ましくは生理的pHに中和される。
さらに適したアジュバントとしては、数ある中でも、RIBIアジュバントシステム(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx,Atlanta GA)、SAF−M(Chiron,Emeryville CA)、モノホスホリルリピドA、Avridine脂質−アミンアジュバント、E.coli由来の熱−不安定エンテロトキシン(組み換え若しくはその他)、コレラトキシン、IMS1314、又はムラミルジペプチド、又は自然発生若しくは組み換えのサイトカイン若しくはそのアナログ、又は内在性サイトカイン放出刺激剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
当該アジュバントは、1投与当たり約100μg〜約1gの量で添加されることが好ましい。当該アジュバントは、1投与当たり約100μg〜約500mgの量で添加されることがより好ましい。当該アジュバントは、1投与当たり約500μg〜約250mgの量で添加されることがさらにより好ましい。当該アジュバントは、1投与当たり約750μg〜約100mgの量で添加されることがさらにより好ましい。当該アジュバントは、1投与当たり約1mg〜約50mgの量で添加されることがさらにより好ましい。当該アジュバントは、1投与当たり約1mg〜約10mgの量で添加されることがさらにより好ましい。当該アジュバントは、1投与当たり約1mgの量で添加されることが最も好ましい。
また、本発明の免疫原性及びワクチン組成物は、1又は複数の獣医学的に許容できる担体を含み得る。本明細書で用いられるように、「獣医学的に許容できる担体」には、あらゆる全ての溶媒、分散媒、被覆剤、アジュバント(補助剤)、安定剤、希釈剤、防腐剤、抗細菌及び抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤(adsorption delaying agents)などが含まれる。いくつかの好ましい実施態様、特に凍結乾燥された免疫原性組成物を含む実施態様においては、本発明中で使用される安定剤には凍結乾燥(lyophilization)用又はフリーズドライ(freeze drying)用の安定剤が含まれる。
「希釈剤」には、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが含まれ得る。等張剤には、特に、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール及びラクトースが含まれ得る。安定剤には、特に、アルブミン及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が含まれる。
「免疫原性又は免疫学的組成物」とは、目的とする組成物又はワクチンに対する細胞性及び/又は抗体介在性の免疫応答という宿主中の免疫応答を引き起こす、少なくとも1つの抗原を有する物の組成物を意味する。通常、「免疫応答」は以下の効果を1又は複数含むが、これらに限定されるものではない:抗原又は目的の組成物若しくはワクチン中に含まれる抗原に特異的な抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、及び/又は細胞障害性T細胞及び/又はガンマ−デルタT細胞の産生又は活性化。宿主は、治療免疫応答か防御免疫応答のいずれかを示し、その結果新たな感染に対する抵抗性が高まる及び/又は病気の臨床的重症度が減少することが好ましい。そのような防御は、感染した宿主が通常示す臨床兆候の減少若しくは欠如、回復期間の短縮、及び/又は感染した宿主の組織、体液若しくは排せつ物中での存続期間の低下や細菌力価(タイター)の低下により実証される。
「M.ボビス感染の兆候」とは、M.ボビスによって引き起こされる感染や疾患の発現を意味し、野生型のM.ボビスに感染した牛が一般に経験する臨床症状及び病変の両方を含む。これらの感染若しくは疾患の発現は多くの形を取ってよく、その中には発熱、鬱病、食欲不振、呼吸困難、鼻汁及び眼漏、咳、くしゃみ、あえぎ、うめき、跛行及び関節腫脹、中耳炎、内耳炎からくる分泌、流産及び他の生殖障害、横臥、呼吸器感染、頭位傾斜、運動失調、関節炎、乳腺炎、耳炎、角結膜炎、滑膜炎、胸膜炎、肺病変、肺硬化、肺における結節形成、滑液の増加、関節包の肥厚、並びに死亡も含まれるが、これらに限定されることはない。
この開示における「高代継代株」とは、in vitro細胞培養中で10回より多く継代されたM.ボビス株を意味し、好ましくは20回以上、より好ましくは30回以上、さらにより好ましくは40回以上、さらにより好ましくは50回以上、さらにより好ましくは55回以上、さらにより好ましくは60回以上、さらにより好ましくは70回以上、さらにより好ましくは80回以上、さらにより好ましくは90回以上、さらにより好ましくは95回以上、さらにより好ましくは100回以上、さらにより好ましくは102回以上、最も好ましくは106回以上継代されたM.ボビス株を意味する。
「肺病変の評価」とは、死体解剖後の肺の観察を意味し、硬化、病変及び結節形成の評価並びに胸膜炎及び液体貯留を含む胸腔の評価を含むが、これらに限定されることはない。
「弱毒化」とは病原体の病原性(毒性)の減少を意味する。本発明において、「弱毒化」は「非病原性」と同義である。本発明において、弱毒化された細菌は、標的とする哺乳動物においてM.ボビス感染の臨床兆候を生じずに免疫応答を引き起こすことのできるほど毒性(病原性)の減少した細菌であるが、非弱毒化M.ボビスに感染し該弱毒化ウイルスを接種されていない「コントロール群」の動物と比較すると、弱毒化M.ボビスに感染した動物における臨床兆候の発症及び重症度が減少するということを意味してもよい。この文脈において、「減少/減少する」とは、上記で定義したコントロールグループと比較して、10%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは100%より多くの減少を意味する。従って、弱毒化された非病原性のM.ボビス株は、改変した生M.ボビス細菌を有する免疫原性組成物への組み込みに適したものである。
本発明において、「有効量」とは、動物におけるM.ボビス感染の発症を低減する又はその重症度を軽減する免疫応答を引き起こすことのできる免疫原性組成物の量を意味する。特に、有効量とは、1投与当たり10E3〜10E10、好ましくは10E6〜10E10のコロニー形成単位(CFU)を意味する。
「ワクチン接種された動物がM.ボビスにさらされるか野生型のM.ボビス株による感染症を患う場合に、現在入手可能なワクチンに比べてM.ボビス感染に関連する臨床症状及び/又はM.ボビス感染自体が減少するほど向上した有効性」とは、本発明により教示されるように継代された株から製造されたワクチンを本発明前に入手可能であったM.ボビスワクチンと比較すると、M.ボビス感染の臨床兆候の発症又は重症度が減少することを意味する。この文脈において、ワクチン接種を受けていない動物、又は本発明前に入手可能なM.ボビスワクチンをワクチン接種された動物は、本発明によるM.ボビス免疫原性組成物を投与された動物よりも30%以上、且つおそらく好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより好ましくは75%以上、さらにより好ましくは80%以上、さらにより好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上重症度又は流行度が増したM.ボビス感染の臨床兆候を有するであろう。
「長期持続防御」とは、少なくとも3週間持続する「向上した有効性」を意味するものとするが、肉用動物については好ましくは6ヶ月以上、より好ましくは1年以上、さらにより好ましくは2年以上、及び、乳用動物については6ヶ月以上、好ましくは1年以上、より好ましくは2年以上、さらにより好ましくは3年以上、さらにより好ましくは4年以上持続する「向上した有効性」を意味するものとする。乳用動物及び肉用動物について、肉用動物が肉の市場に出される平均年齢まで、及び、乳用動物が搾乳の生産生活を終える平均寿命まで、前記長期持続防御が持続することが最も好ましい。
本明細書において用いられる「そのような投与を必要としている」又は「そのような投与治療を必要としている」とは、前記投与/治療が、本発明による免疫原生組成物を接種される動物の健康若しくは健康に関する他の有益な医学的効果の向上又は改善に関連することを意味する。
本明細書で用いられる「DNAフィンガープリンティング」とは、WO2008−030619に記載されているように挿入配列間のDNAを増幅し、増幅産物のパターンを測定することによって、細菌株を素早く特定することを意味する。簡潔に述べると、PCRと細菌の挿入配列(転移因子)用に設計された外側対向プライマーの組み合わせとを用いて、細菌種の株に特有なパターンを作り出す。その後、疫学又は系統学などの物事に関してこれらのパターンを比較することが出来る。DNAフィンガープリンティングの好ましい方法の1つは、PCRと1又は複数の細菌挿入配列に対して設計された外側対抗プライマーとを用いる。そのような方法を用いた場合、隣接する挿入配列(IS)からの増幅産物が得られる。PCR増幅を終えると、該産物は分離され(寒天ゲル)、該増幅産物の分子量に従って、細菌種の株に特有のバンドパターンが得られる。好ましい方法は、外側対向プライマーを用いて多重(マルチプレックス)PCRを実行することである。多重PCR法はPCRの変法であって、多数のプライマー対を用いることにより1つの反応中で関心のある多くの標的を同時に増幅することができる。もちろん、分子に基づいた公知の他のフィンガープリンティング法を使用してもよい。
「挿入配列」(IS)とは、転移因子として作用する短いDNA配列である。ISは一般的に約700〜2500bpの長さであり、他種の転移因子と比べると比較的小さい。これらは転移活性にかかわるタンパク質をコードしており、該タンパク質は前記ISの移動を可能とする酵素反応を触媒する。IS因子は特定の種に固有であるか又は分類群の間で共有され得る。通常これらの挿入配列の複数のコピーが存在するが、これらは特定の転移因子に固有の位置に配置される。
従って、他の態様によると、本発明は、上記のように複数回継代又は連続的弱毒化を介して弱毒化されたM.ボビス株の、薬、好ましくは動物用薬(veterinary medicine)としての使用に関する。
本発明の他の態様によると、上記のように弱毒化されたM.ボビス株は、M.ボビスによって引き起こされる感染の予防又は治療を目的とした本明細書記載の医薬組成物を製造するために用いることが出来る。上記の通り、これらの医薬組成物/ワクチン組成物は、M.ボビスによる感染しやすい動物の治療及び/又は予防に用いることが出来る。
本発明の他の態様において、ワクチン接種を受けていないか本発明の前に入手可能であったワクチンを接種した動物と比較して、本発明による免疫原性組成物を投与した群れにおける野生型感染の発症の低下や、当該免疫原性組成物を投与した野生型M.ボビス感染動物に関連するM.ボビス感染の兆候の重症度の軽減を含む治療方法又は予防方法が提供される。また、本発明によるワクチンを投与することにより、群れ中のM.ボビスに感染する動物の数が減少する。そのような方法は、一般的に、そのような治療を必要とする対象又は対象の群れに、上記の方法を介して弱毒化されたM.ボビス株を治療的に有効な量投与することを含む。好ましくは、ワクチン接種を受けていないか本発明前に入手可能であったM.ボビス免疫原性組成物をワクチン接種された動物であってその後に野生型のM.ボビスに感染した動物と比較すると、臨床症状の発症又はその重症度が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらにより好ましくは40%以上、さらにより好ましくは50%以上、さらにより好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上減少する。
鼻、扁桃及び肺のサンプルからの培養採取の頻度(0日目、14日目、28日目、35日目及びポスト) 鼻、扁桃及び肺のサンプルからのPCR検出の頻度(0日目、14日目、28日目、35日目及びポスト) 血清サンプルからのM.ボビス特異的抗体に対する平均グループスコア(0日目、14日目、28日目、35日目及び42日目) 生ワクチンI、II、III及び非ワクチングループに関する血清学的比較(鼻腔内投与+皮下投与の場合のみ) 様々な投与方法を用いての生ワクチンに対する血清学的比較
[好ましい実施形態の詳細な説明]
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様の代表例である。実施例に記載のいずれも、発明の全体的な範囲を限定するものではないと理解される。
[実施例1]
この実施例により、2つの異なるチャレンジモデルを1つの標的種に用いて、実験的生M.ボビスワクチンの有効性を評価した。
<<材料及び方法>>
4〜8週齢の初乳非給与ホルスタイン子牛35頭を用いた。全ての動物が試験対象患者基準を満たした。すなわち、全ての動物がM.ボビスに陰性反応を示し、チャレンジ時に健康であった。最初に、子牛をランダムに4グループの1つに割り当てた。グループ1〜3は各々9頭の子牛を有し、グループ4は8頭の子牛を有していた。グループ1及び2の子牛に、106回継代したM.ボビス分離株052823(05−2823−1A−3A P106+)(ATCC指定番号:PTA−8694)の未加工培養である生ワクチン1(Live Vac1)でワクチン接種した。一方、グループ3及び4の子牛には培地のみでワクチン接種した。グループ1及び2に対するワクチン分離株は、自然に生じる病気発生から得られ、その後M.ボビスに適した培地で連続的に106回継代された。調査前に決定した適切な量の種培養を植菌した後、37℃で24±2時間培養した。その分離株を希釈することなく用いた。平均的なワクチン接種前接種後濃度は2.1E9(CFU/mL)であった。そのワクチンを皮下投与で2mL、鼻腔内投与で2mL(それぞれの鼻孔に1mL)投与した。自然に起きる感染及び疾患を引き起こすために、病原性のM.ボビスで調査対象の全子牛をチャレンジした。なお、グループ1及び3には高チャレンジ用量を、グループ3及び4には低チャレンジ用量を接種した。
テスト材料の投与量と投与方法を表1にまとめる。
Figure 2011500093
鼻を綿棒でぬぐったものと血液サンプルを、0日目、14日目、28日目、35日目、42日目に採取した。死体解剖で、全ての子牛から肺のサンプルを採取して扁桃を綿棒でぬぐったものを採取し、臨床的異常を有する動物から関節を綿棒でぬぐったものを採取した。また、部位病変を示す特定の動物の他の部位からサンプルを採取した。全ての場合において、出来る限り無菌状態で、当該領域の周りで3本の滅菌綿棒を数秒間こすった後に取り除いた。その綿棒のうち2本を、培地を有する個々の輸送容器に入れ、残りの1本を培地のない輸送容器に入れた。各子牛から採取したサンプルを表2にまとめる。
Figure 2011500093

Figure 2011500093
<<検査>>
微生物の検査に関して、綿棒でぬぐったものを輸送培地に入れ、M.ボビス分離株の有無を調べるために組織サンプルを輸送した。簡潔に述べると、綿棒でぬぐったものを5mLのマイコプラズマ選択的培養液中で回転させた。肺サンプルから小さなサンプル(約5mm)を切り出し、2mLのマイコプラズマ培地中でホモジネートした。100μLのホモジネートを、当該マイコプラズマ選択的培養液に加えた。37℃/5%CO2で培養物をインキュベートした。4〜14日後、増殖の有無についてその培養液を調べ、単離するためにプレートに二次培養した。全ての陽性二次培養サンプルを−70℃で保存した。
PCRに関して、輸送培地に入れられていない各子牛から綿棒でぬぐったもの及び組織サンプルを、DNA抽出及びM.ボビスのuvrC遺伝子に特異的なプライマーとプルーブを用いたPCRによる検査のために輸送した。PCR検査の結果を、M.ボビスDNA検出に陽性又は陰性で表現した。
血清学検査に関して、検査キットを備えたプロトコルを使用し、市場で入手できるELISA(Biovet,Canada)を用いて、血清サンプルを検査した。ELISAの結果を、光学濃度(OD)測定値として表した。サンプルのODを、検査キット中に含まれる陽性コントロールが規定する陽性度レベル(平均ODp×0.3)と比較した。その後、陽性結果を以下の基準で解釈した。
Figure 2011500093
組織病変/IHC検査に関して、ヘマトキシリン/エオシン染色したスライドとM.ボビス特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学により、ホルマリンで固定した組織を検査した。
臨床的検査に関して、0日目〜28日目まで毎日の一般的観察を行い、その後28日目から安楽死及び死体解剖まで毎日の臨床的観察を行った。基準から外れた臨床的及び一般的観察に注目し、それを記した。
死体解剖で、各子牛の胸腔及び気管を調べ、肉眼観察を記録した。各子牛の肺及び約6インチの気管を、更なる調査及びサンプル採取のために無傷で取り除いた。各セットの肺について、各々適切な耳標を傍らにつけて背面及び前面の肺表面の写真を撮った。
肺病変に関し、M.ボビスが原因で各肺葉当たりどの程度の病変が(割合として)存在するかを求めるために、各肺葉を視診及び触診により調べた。その後、各肺葉の割合を測定し合計して、病変を有する肺全部の割合を求めた。
感染した関節を調査し肉眼観察を記録することにより、関節病変を検査した。
データを分析するために、データを集約した。臨床症状と肉眼で見える病変の減少率(%)を、以下の式を用いて計算した。
減少率(%)=[1−(治療/非治療)]×100
また、グループ2及び3各々の動物1頭とグループ4の動物2頭を、37日目に人道的理由で除いた。
<<結果>>
1日目〜26日目まで、チャレンジ前の臨床評価を行った。調査期間中に、緩い/水っぽい排泄物、鬱病、垂れ耳及び嗜眠が観察された。適切な獣医医療を施した。どの観察日のどのグループからも、有害な部位反応やマイコプラズマ特異的臨床症状は見られなかった。27日目〜43日目まで、チャレンジ後の臨床評価を行った。この調査期間中に見られた全ての臨床的観察は、咳、努力性呼吸、鬱病、食欲不振、関節腫脹、跛行、及び垂れ耳であった。チャレンジ後の期間中の臨床スコアの発生率を下記の表3にまとめる。グループ1では9頭中2頭の子牛が感染の少なくとも1つの臨床兆候を伴って感染しており、そのうち2頭は呼吸兆候を示し、1頭は関節感染の兆候を示していた。グループ3では、全ての子牛が少なくとも1つの臨床兆候を伴って感染しており、そのうち7頭の子牛が呼吸兆候を示し、3頭の子牛が関節感染の兆候を示していた。グループ2では、9頭中4頭の子牛が少なくとも1つの臨床兆候を伴って感染しており、呼吸兆候を示した子牛はおらず、4頭の子牛が関節感染の兆候を示していた。グループ4では、7頭の子牛が少なくとも1つの臨床兆候を伴って感染しており、そのうち1頭の子牛が呼吸兆候を示し、7頭の子牛が関節感染の兆候を示していた。
Figure 2011500093
グループ1=ワクチンあり/高用量呼吸器チャレンジ
グループ2=ワクチンあり/低用量呼吸器チャレンジ
グループ3=ワクチンなし/高用量呼吸器チャレンジ
グループ4=ワクチンなし/低用量呼吸器チャレンジ
死体解剖で肺を採取し、M.ボビス感染と関連する病変の有無を観察した。動物は、硬化や結節形成などの多様な病理学的特徴を示した。M.ボビス感染に関連する肉眼で見える病変を有する肺の合計割合(%)を反映するスコアリングシステムを用いて、肺病変の結果をパーセントとして表した。いくつかのケースでは、癒着や病変の非定型性質により肺の割合が決定できなかった。肺病変の量及びパーセント範囲/平均パーセント肺病変を示す個々の割合を表4に示す。肺病変スコアに関し、グループ3が感染した子牛の数が最も多く(9/9)、グループ2が感染した子牛の数が最も少なかった(2/9)。
Figure 2011500093
死体解剖で、過去に臨床症状(腫れ又は跛行)を示した動物の関節について、肉眼で見える病変がないか調べた。感染した部位は動物によって異なり、手根(carpus)、飛節(hock)、膝関節(stifle)、球節(fetlock)及び/又は肘を含み得た。動物は、肉眼で見える腫れ、滑液の増加、異常な体液発生及び関節包の肥厚を示した。より重篤に感染した子牛では、関節表面のびらんのようにフィブリンが存在していた。関節液のサンプル及び/又は表面を綿棒でぬぐったものにM.ボビスが存在するか否かを、培養により検査した。関節における肉眼で見える病理学的特徴の存在を、下記表5にまとめる。
Figure 2011500093
グループ1=ワクチンあり/高投与量呼吸器チャレンジ;グループ2=ワクチンあり/低投与量呼吸器チャレンジ;グループ3=ワクチンなし/高投与量呼吸器チャレンジ;グループ4=ワクチンなし/低投与量チャレンジ(NR=記録なし)。
0日目、14日目、28日目、及び35日目に、綿棒で鼻孔をサンプリングした後、死体解剖でもサンプリングした(43日目)。また、死体解剖の間、綿棒で扁桃のサンプルを取り、代表的な肺組織を採取した。図1,2は、マイコプラズマ選択的培養による回収の頻度又はM.ボビス特異的PCRによる検出の頻度を示す。図1に示すように、死体解剖後に扁桃をサンプリングすると、全てのグループから100%の回収があった。死体解剖後の肺において、グループ1及び3で100%の回収があった。グループ2は、肺から回収した量が最も少なく(約60%)、グループ4は約90%回収した。調査35日目に鼻でサンプルが取られるまでM.ボビス細菌の回収を示すグループはなく、35日目に回収を示した唯一のグループがグループ4であった(25%)。グループ2を除いた全てのグループが、死体解剖後の鼻のサンプルにおいて回収を示した。
Figure 2011500093
培養
0=M.ボビス増殖なし
1=M.ボビス増殖あり
M=入り混じり/又はその他
PCR
0=M.ボビス陰性
1=M.ボビス陽性
ELISA
0=陰性
1=1.75×までの陽性度
2=1.75×から2.3×まで陽性度
3=2.3×から3.0×まで陽性度
4=3.0×以上の陽性度
NS=サンプルなし
NT=検査せず
M.ボビスに対する血清学的反応をモニターするために、BiovetのM.ボビスELISAで全てのサンプルを検査した。陽性度ODをグループ化された乗数に従って、セロコンバージョンを採点した。以下の表は、0日目、14日目、28日目、35日目及び42日目に各グループから検出された平均血清学的スコアを示す。図3は、血清サンプルから得られたM.ボビス特異的抗体に対する平均グループスコアを示す。効果的な体液性免疫応答を指し示すセロコンバージョンは、ワクチンを1回投与後14日以内に検出された。また、この免疫応答がよく持続することが、1回のワクチン接種後少なくとも42日間及び2回のワクチン接種後28日間、M.ボビスに対する血清学的反応が測定可能であったことから明らかであった。28日目からのグループ1のスコアは、他の全てのグループよりも常に高かった。グループ1,2は、14日目では等しかった(1.5ELISAスコア)。グループ4は14〜35日目において最も低かったが、42日目では3番目になった(約2.2)。
<<結論>>
この調査により、子牛における皮下及び鼻腔内の両方に2回投与される生M.ボビスワクチンの有効性、並びに、標的種におけるチャレンジモデルが評価された。当該チャレンジモデルには高用量呼吸器チャレンジ及び低用量呼吸器チャレンジが含まれた。また、この調査により、1回及び2回のワクチン投与後の有効性、免疫発現、及び間接的な評価による免疫持続期間、セロコンバージョン又は体液性免疫応答も評価された。ワクチン接種後に起きる免疫発現と免疫持続は確かに証明された。
チャレンジM.ボビス分離株とワクチンM.ボビス分離株は、自然感染した異なる動物が起源であった。チャレンジとして用いられた分離株は、実験的チャレンジの間に肺疾患と関節疾患の両方を引き起こすことが過去に示され、混合分離株チャレンジ研究において主流であった。ワクチン分離株は、元々は診断用試料に由来する高代継代した分離株である(継代回数106)。また、本明細書に記載されるフィンガープリント法を用いたところ、チャレンジ分離株及びワクチン分離株の遺伝子型は非類似であることが示された。
高用量の呼吸器チャレンジされたグループ(1及び2)において、呼吸器臨床症状の減少(72%)及び肺病変の減少(33%)がワクチン接種されたグループで観察された。非ワクチン接種グループにおける呼吸器臨床症状のほとんどは、チャレンジ後2日目から3日目の間に起きた。表3に示すように、当該ワクチンはM.ボビスが原因の関節疾患の発症をも減少させた。
低用量の呼吸器チャレンジされたグループ(2及び4)において、肺病変の減少(96%)がワクチン接種されたグループで観察された。また、ワクチン接種したグループは、関節臨床症状の相当な減少(50%)を示した。
肺サンプル(IHC、PCR及び培養)及び関節サンプル(PCR及び培養)の実験室試験は、大半の場合における肉眼で見える病変と一致した。不一致は、サンプリング部位又は検査用に提出されたサンプル間の細菌分布が原因かもしれない。ワクチン分離株は、ワクチン候補を検出しチャレンジ分離株を検出しないことを目的とした実験的PCRアッセイにより検査された肺サンプルからは検出されなかった。
鼻腔内及び皮下の両経路を介して2回投与され、2回のワクチン接種の間に2週間のインターバルを有する、新規の高代継代した弱毒化生M.ボビスワクチン候補(05−2823 P106)は、様々なチャレンジ条件を用いて、初乳非給子牛におけるマイコプラズマ・ボビス感染に関連する臨床症状及び病変(呼吸器及び関節)の両方を含むM.ボビス感染の兆候の減少をもたらしたことにより、安全且つ効果的であると示された。また、M.ボビスワクチン及び免疫学的組成物は、単回投与後14日以内に免疫発現を刺激するのに効果的であり、単回投与後少なくとも42日の持続期間を有していた。
[実施例2]
この調査の目的は、3種の生ワクチン候補の安全性と有効性を求めることにある。
<<材料及び方法>>
調査に用いられた子牛は6±2週齢であり、6グループに分けられた。表7に示すように、グループ1は10頭の動物からなり、調査0日目(D0)と14日目(D14)にM.ボビス生ワクチンIでワクチン接種された。グループ1は、0日目及び14日目に、2mLを皮下投与で2mLを鼻腔内投与でワクチン接種された。グループ2は10頭の動物からなり、調査0日目及び14日目に、2mLのM.ボビス生ワクチンIを皮下投与でワクチン接種された。グループ3は、0日目及び14日目に、M.ボビス生ワクチンIでワクチン接種された9頭の子牛から構成されていた。グループ3は、2mLを鼻腔内投与でワクチン接種された。グループ4はコントロールであり、ワクチンを投与されなかった。グループ5は、M.ボビス生IIワクチンでワクチン接種された子牛2頭から構成されていた。グループ5は、0日目及び14日目に、2mLを皮下投与で2mLを鼻腔内投与でワクチン接種した。グループ6は、M.ボビス生ワクチンIIIを投与した子牛2頭から構成されていた。グループ6の子牛は、0日目及び14日目に、2mLを皮下投与で2mLを鼻腔内投与で投与された。その後、120mLのチャレンジ材料を用いて全てのグループをチャレンジした。全ての動物は28日目にチャレンジされた。
表8に記載するように、0日目、14日目、27日目、35日目及び41日目に、全ての子牛から鼻を綿棒でぬぐったものを採取した。死体解剖時に、全ての子牛から扁桃を綿棒でぬぐったものを採取した。臨床的異常を有する動物から、関節を綿棒でぬぐったものを取った。また、部位病変を示す特定の動物の他の部位からサンプルを採取した。0日目、14日目、27日目、35日目及び41日目に全ての子牛から血液を採取した。血液は、各子牛の頸静脈から無菌条件で採取された。死体解剖後、肺病変について肺を採点した。
Figure 2011500093
Figure 2011500093

Figure 2011500093
<<結果及び考察>>
<チャレンジ前の臨床兆候>
−1日目〜28日目まで、チャレンジ前の臨床的評価を行った。この調査期間中に見られた臨床的観察は、緩い/水っぽい排泄物、眼漏、鬱病及び嗜眠であり、いずれもワクチン接種の効果に起因するものではなかった。注入部位の観察をしたところ、14日目に1回目の注入部位で腫れを示した6134の子牛(グループ6)を除いて、有害な部位反応は見られなかった。
<チャレンジ後の臨床兆候>
28日目〜42日目まで、臨床的観察を行った。この調査期間中に見られた臨床的観察は、咳、努力性呼吸、鬱病、関節腫脹、跛行、及び垂れ耳であった。臨床兆候は、マイコプラズマ・ボビス感染に特有な3タイプ(呼吸器、関節及びその他)に分けられた。呼吸兆候には、咳、多呼吸/努力性呼吸、及び鼻汁が含まれた。関節兆候には、関節腫脹及び跛行が含まれた。他の兆候には、垂れ耳、頭位傾斜、鬱病及び食欲不振が含まれた。下記の表9に個々の結果を示す。
Figure 2011500093
臨床兆候の記号表
1:咳
2:多(努力性)呼吸
3:鼻汁
4:関節腫脹
5:跛行
6:垂れ耳
7:頭位傾斜
8:鬱病
9:食欲不振
A:下痢
B:眼漏
C:脚の裂傷(Leg Laceration)
黒色の枠=調査から除かれた動物
Figure 2011500093
表10は、マイコプラズマ・ボビス感染に特有の呼吸臨床群及び確認済みの(培養及び/又はPCR)関節臨床群に細分されている。また、重篤な関節病変による早期除去率を示す。
<<肺病変>>
死体解剖で肺を採取し、M.ボビス感染と関連する病変の有無を観察した。動物は、硬化や結節形成などの多様な病理学的特徴を示した。M.ボビス感染に関連する肉眼で見える病変を有する肺全部の割合を反映するスコアリングシステムを用いて、肺病変の結果をパーセントとして表した。いくつかのケースでは、癒着や病変の非定型性質により肺の割合が決定できなかった。下記は、肺病変の量及びパーセント範囲/平均パーセント肺病変を示す個々の割合を有する表である。
Figure 2011500093
<<関節病変>>
死体解剖で、肉眼で見える病変の有無について、過去に臨床症状(腫れ及び/又は跛行)を示した動物の関節を調べた。感染部位は動物によって異なり、手根関節、飛節、膝関節、球節及び/又は肘関節を含み得る。動物は、肉眼で見える腫れ、滑液の増加、異常な体液発生及び関節包の肥厚を示した。より重篤に感染した子牛では、フィブリンと関節表面のびらんが存在していた。関節液のサンプル及び/又は表面を綿棒でぬぐったものにM.ボビスが存在するか否かを、培養及びPCRにより検査した。弱毒化生ワクチンのいずれかをワクチン接種すると、感染した子牛の合計数が成功裏に減少した。
Figure 2011500093
グループ1=ワクチンI(皮下投与+鼻腔内投与);グループ2=ワクチンI(皮下投与のみ);グループ3=ワクチンI(鼻腔内投与のみ);グループ4=ワクチンなし;グループ5=ワクチンII(皮下投与+鼻腔内投与);グループ6=ワクチンIII(皮下投与+鼻腔内投与)。
注意:PCR及び/又は培養がM.ボビスに陽性を示した場合に、サンプルを実験的に確認されたものとして報告した。
<<鼻及び肺サンプルからのM.ボビスのPCRによる検出>>
0日目、14日目、27日目、35日目及び41日目若しくは死体解剖の日に、各動物から綿棒で鼻孔をサンプリングした。また、死体解剖の間、綿棒で扁桃のサンプルを取り、代表的な肺組織を採取した。一般的なM.ボビスのマーカー(uvrC)を標的とするリアルタイムPCRを用いた検出頻度を下記表に示す。また、M.ボビスチャレンジ分離株では見つからず、全てのワクチン候補で見つかるマーカーを標的とする近年開発されたエンドポイントPCRアッセイを用いて、扁桃及び肺組織を分析した。予想通り、PCTにより、鼻の綿棒サンプル中にM.ボビスワクチン及び/又はチャレンジ微生物が検出された。
Figure 2011500093
グループ1=ワクチンI(皮下投与+鼻腔内投与);グループ2=ワクチンI(皮下投与のみ);グループ3=ワクチンI(鼻腔内投与のみ);グループ4=ワクチンなし;グループ5=ワクチンII(皮下投与+鼻腔内投与);グループ6=ワクチンIII(皮下投与+鼻腔内投与)。
注意:一般的なM.ボビスマーカー(uvrC)を標的とするリアルタイムPCRによるPCR検出。
Figure 2011500093
グループ1=ワクチンI(皮下投与+鼻腔内投与);グループ2=ワクチンI(皮下投与のみ);グループ3=ワクチンI(鼻腔内投与のみ);グループ4=ワクチンなし;グループ5=ワクチンII(皮下投与+鼻腔内投与);グループ6=ワクチンIII(皮下投与+鼻腔内投与)。
注意:一般的=一般的M.ボビスマーカー(uvrC)を標的とするリアルタイムPCRによるPCR検出;非チャレンジ=M.ボビスチャレンジ分離株中には見られず全てのワクチン候補には見られるマーカーを標的とするエンドポイントPCRによるPCR検出。
再び、予想通り、PCRにより、鼻腔内ワクチン接種後、扁桃において弱毒化生ワクチンが成功裏に検出された。一方、チャレンジ微生物が肺及び扁桃のサンプルの両方で高い割合で検出された。
<<M.ボビス血清学>>
M.ボビスに対する血清学的反応をモニターするために、BiovetのM.ボビスELISAで全てのサンプルを検査した。陽性度ODのグループ化された乗数に従って、セロコンバージョンを採点した。下記の表において、0日目、14日目、27日目、35日目及びポスト(ポストとは、特定の動物が早期除去されるため、37日目から41日目までの調査日を意味する)において、各グループから検出された平均血清学的スコアを示す。ワクチン接種後に見られるセロコンバージョンは、これらの新しいワクチンが、子牛などのワクチン接種された動物において速やかな発現と長期持続を有する適切な免疫応答を引き起こすという結論を強固にする(図4参照)。
<<考察>>
この調査の目的は、標的種において、14日間間隔をあけた様々な2mL投与方法(皮下、鼻腔内、皮下+鼻腔内)と双対チャレンジモデル用いて、ワクチン(05−2823 P106)(PTA−8694)を含む3種の新規且つ実験的な生マイコプラズマ・ボビスワクチンの有効性を評価することである。当該チャレンジモデルは、気道を介した投与と非経口投与を用いた。また、2つの異なる生ワクチン候補(05−249 P102 (PTA−8696)及び05−1902−1 P106 (PTA−8695))については、皮下投与と鼻腔内投与と組み合わせてのみを用いて有効性を評価した。
チャレンジ及びワクチン候補のM.ボビス分離株は、異なる自然感染した飼育場を起源とした。合計120mLのチャレンジ分離株を用いる手法は、投与すると、実験的チャレンジ中に肺病変と関節疾患の両方を引き起こすことが過去に示されており、混合分離株チャレンジ研究において主流であった。生ワクチン候補は、元々は診断用試料に由来する高代継代した分離株である。当該ワクチン候補の高代継代は、マイコプラズマ好適培地への連続制限希釈関与により行われた。高代継代のワクチン候補05 2823 P106はいくつかのマイコプラズマ選択的寒天調合物上で増殖が制限されていたのに対し、低代継代の親分離株(parent isolate)は同様の特性を示さなかった。また、チャレンジ及びワクチン候補の遺伝子型は(フィンガープリンティング法で求められるように)異なっていることが示された。
ワクチンの利益を評価するために、この調査中に多数のパラメーターを調べた。これらのパラメーターの中で、動物除去率及び関節臨床症状を関節防御の主要な標識として用いた。肺病変(肉眼で見える肺病変の割合)を肺防御の主要な標識として用いた。ワクチン接種後のM.ボビスに対するセロコンバージョンと同様に、組織からの生物の検出、関節の分布及び血清学などの他のデータは、確認用の追加データを提供した。
肺病変、関節臨床症状、及び動物除去率の減少で示されているように、投与方法又は投与方法の組み合わせに関わらず、ワクチン候補マイコプラズマ・ボビス生ワクチンI(05−2823 P106)を接種した後、全てのグループが疾患低減性の肺及び関節防御効果を示した。皮下投与及び鼻腔内投与の組み合わせ(グループ1)は、単独投与のみを用いたグループと比較すると、肺病変が最も大きく減少した(86%)。また、肺病変、関節臨床症状、及び除去率の減少結果は、皮下投与と鼻腔内投与の組み合わせにより、2つの他のワクチン候補である生ワクチンII(5−249 P102)及び生ワクチンIII(05−1902−1 P106)を接種することにより得られる利益を確認する。ELISAの結果により、全てのワクチン候補でのワクチン接種に対する強い体液性応答反応が実証され、ワクチン単回接種の後14日ほどで免疫発現が起こり、免疫持続期間が少なくとも41日であることが確認された(図5参照)。
全てのワクチン候補で安全性が実証された。ワクチンを接種されたいずれのグループの動物もワクチン接種期間中に臨床症状を示さなかった。生ワクチンIII(05−1902−1 P106)を接種された1頭の動物のみが注入部位で反応性を示したが、この反応性はたいしたことはなかった。また、PCRの結果は、鼻腔内投与によりワクチン候補を接種されたグループのみの扁桃組織から非チャレンジM.ボビス株が検出されたことを示し、鼻腔内投与及び皮下投与の両方で生ワクチンI(05−2823 P106)を接種された1頭の動物でのみ肺組織から非チャレンジM.ボビス株が検出されたことを示した。
これらのデータは、一般的に、本発明により製造され様々な投与方法により与えられた新規の弱毒化された生M.ボビスワクチンは、野生型の病原性M.ボビスに感染することにより生じる様々な疾患兆候を予防・低減するための子牛のワクチン接種用免疫学的組成物として、安全且つ効果的であり、迅速に発現し、予防効果が長期持続するという結論を支持する。
[実施例3]
この実施例では、WO2008−030619に開示された方法とプライマーを用いてDNAを単離、増幅及び検出することによりM.ボビス株を区別するために用いられるDNAフィンガープリンティング方法について記載する。
<<材料及び方法>>
マイコプラズマ属をこの調査に用いた。分離株は、社内にあったもの(in−house sources)から得られた分離株か、感染動物から得られた野外分離株であった。分離株を、マイコプラズマ選択的寒天及びブロスの組み合わせを用いて1〜7日間培養した。DNAを単離するために、ブロス培養を回転させてペレット化した。その後、ペレットからDNAを抽出した(Qiagen DNeasy Tissue Kitを用い、分子細胞学グレードの水に再懸濁した)。ゲノムDNAをPicogreen(Invitrogen)を用いて定量化した。細菌ゲノム(マイコプラズマ・ボビス)に存在する公知の挿入配列(転移因子)を基にプライマーを設計した。このプライマーは、WO2008−030619に開示されている。55〜58℃のTmでエレメントエンド(末端反復領域を除く)から外側対向プライマーを手作業で選択した。その後、マルチプレックスPCRマスターミックス(Qiagen Multiplex PCR Kit)を用いてPCR反応を実行した。該反応には、1×のマスターミックス、300nMの各プライマー及び1ngのテンプレートDNAが含まれていた。サーマルサイクル条件は、95℃で15分加熱した後、94℃30秒、56.1℃90秒及び72℃2分のサイクルを35回繰り返し、72℃4分で最終伸張させた後、4℃に保った。増幅産物を、エチジウムブロマイド入りの4%アガロースゲル(Invitrogen E−gel)上で分離し、室温で50分泳動し、UV光下で撮影した。
<<結果及び考察>>
結果として、本明細書中で用いられる分離株は各々特有のフィンガープリントを有していた。しかしながら、実施例2に示すように、各分離株は効果的な弱毒化された生培養ワクチンでもあり、ワクチン候補のいずれとも異なるフィンガープリントを有するチャレンジ分離株に対する交差防御を提供するという点で効果的であった。3種の野外分離株である05−2823 P106(PTA−8694)、05−249 P102(PTA−8696)及び05−1902−1−P106(PTA−8695)を培養し、前記プロトコルに従ってDNAを単離した。WO2008−030619に開示されたシークエンスID番号1〜8として特定されたISプライマー4セットを複合的に用いて、前記プロトコルに従って各分離株から得た2〜5ngのDNAを増幅した。増幅された産物を、(製造業者に従って)エチジウムブロマイド入りのInvitrogen E−gel4%アガロースゲル上で50分間分離し、UV光下で視覚化した。全ての分離株が固有のパターンを作り出した。当該パターンは、サンプルPCR反応条件下、独立した一定分量を用いて再度作り出すことが出来た。

Claims (30)

  1. 弱毒化された非病原性のM.ボビス細菌株。
  2. 前記細菌が10回より多く継代されることを特徴とする、請求項1に記載の弱毒化された非病原性のM.ボビス細菌株。
  3. 前記細菌が50回より多く継代されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の弱毒化された非病原性のM.ボビス細菌株。
  4. 前記弱毒化された非病原性のM.ボビス株が以下からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弱毒化した非病原性M.ボビス細菌株:
    受入番号PTA−8694、PTA8695又は8696でATCCに寄託されている弱毒化M.ボビス細菌株、そのあらゆる弱毒化子孫M.ボビス細菌株、及び、受入番号PTA−8694、PTA8695又はPTA8696でATCCに寄託されているM.ボビス細菌株と同一の特徴を有する弱毒化された非病原性のM.ボビス細菌株。
  5. 以下のa〜dの工程を有することを特徴とするM.ボビスを弱毒化する方法:
    a.M.ボビス細菌を10回より多く継代する工程;
    b.培養されたM.ボビス細菌を得る工程;
    c.工程bにより得られた培養M.ボビス細菌の病原性及び免疫原性を検査する工程;
    d.非病原性であるが免疫原性を有するM.ボビス細菌を増殖させて、弱毒化されたM.ボビス細菌を得る工程。
  6. 前記M.ボビス細菌が50回より多く継代されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 前記M.ボビス細菌がin vitroで継代されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 前記病原性検査が以下のa〜bの工程を有することを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
    a.前記継代したM.ボビス細菌に牛を感染させる工程;
    b.M.ボビス感染の臨床症状を発現するか否かについて前期感染した牛を観察する工程。
  9. 前記免疫原性検査が以下のa〜bの工程を有することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法:
    a.牛を前記継代したM.ボビス細菌に感染させる工程;
    b.前記感染した牛における、M.ボビスに対する体液性抗体反応の発現を観察する工程。
  10. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の弱毒化された非病原性のM.ボビス細菌株のいずれかの生細菌を有する免疫原性組成物。
  11. さらに製薬学的に許容できる担体を有する、請求項10に記載の免疫原性組成物。
  12. 前記免疫原性組成物が1投与当たり前記弱毒化された非病原性のM.ボビス細菌の生細菌を少なくとも10E3CFU有することを特徴とする、請求項10又は11に記載の免疫原性組成物。
  13. 前記免疫原性組成物が1投与当たり前記弱毒化された非病原性のM.ボビス細菌の生細菌を10E3〜10E10CFU有することを特徴とする、請求項12に記載の免疫原性組成物。
  14. 前記免疫原性組成物が1投与当たり前記弱毒化された非病原性のM.ボビス細菌の生細菌を10E6〜10E10CFUの有することを特徴とする、請求項12に記載の免疫原性組成物。
  15. 前記免疫原性組成物の1回投与が1又は2mLに調剤されることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
  16. 前記免疫原性組成物が、単回投与後14日以内に免疫発現を刺激するのに効果的であることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
  17. 前記免疫原性組成物が、その免疫原性組成物の単回投与後少なくとも42日間の免疫持続を刺激するのに効果的であることを特徴とする、請求項10〜16のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
  18. 前記免疫原性組成物が、動物に投与されると免疫応答を引き起こす又は誘発することを特徴とする、請求項10〜17のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
  19. 前記免疫原性組成物がワクチンであることを特徴とする請求項10〜18のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
  20. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の弱毒化された非病原性のM.ボビス株の細菌を製薬学的に許容できる担体と混合する工程を有することを特徴とする、請求項10〜19のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を製造する方法。
  21. 請求項10〜19のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の有効量を動物に投与する工程を有する、M.ボビスによって引き起こされる感染の治療又は予防方法。
  22. 請求項10〜19のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の有効量を動物に投与する工程を有する、M.ボビス感染の兆候を減少させる方法。
  23. 請求項10〜19のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の有効量を動物に投与する工程を有する、M.ボビス感染の臨床兆候の重症度又はその発症を減少させる方法。
  24. 前記動物に1回だけ投与することを特徴とする、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
  25. 前記免疫原性組成物を生後1日以上の動物に投与することを特徴とする、請求項21〜24のいずれか1項に記載の方法。
  26. 前記免疫原性組成物を生後1日から生後16週までの動物に投与することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
  27. 前記動物に2回投与することを特徴とする、請求項21〜26のいずれか1項に記載の方法。
  28. 2回目の投与が1回目の投与の10日後以降に行われることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
  29. 2回目の投与が、1回目の投与の14日後から28日後の間に行われることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
  30. 前記動物が牛であることを特徴とする、請求項21〜29のいずれか1項に記載の方法。
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