JP2011258294A - 磁気ヘッドスライダ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ素系潤滑剤のピックアップ抑制を目的とし、磁気ヘッドスライダ表面に、磁気的距離に影響せず、化学的、機械的負荷に耐性のある撥液層を形成する。
【解決手段】磁気ヘッドスライダ4の浮上面は、端子領域2と基板領域3で構成されている。端子領域2は、再生素子6、記録素子7及びヒータ8が設置された素子領域1と、素子領域1を囲むようにアルミナが形成された保護部材の領域9で構成されている。領域9とスライダの流出側端面11に、複素環構造を含む窒素含有フッ素化合物からなる撥液層12を設ける。これによって、磁気記録媒体20との磁気的距離に影響せず、フッ素系潤滑剤22のピックアップ量低減を実現する。
【選択図】図1
【解決手段】磁気ヘッドスライダ4の浮上面は、端子領域2と基板領域3で構成されている。端子領域2は、再生素子6、記録素子7及びヒータ8が設置された素子領域1と、素子領域1を囲むようにアルミナが形成された保護部材の領域9で構成されている。領域9とスライダの流出側端面11に、複素環構造を含む窒素含有フッ素化合物からなる撥液層12を設ける。これによって、磁気記録媒体20との磁気的距離に影響せず、フッ素系潤滑剤22のピックアップ量低減を実現する。
【選択図】図1
Description
本発明は、磁気ヘッドスライダ(以下、スライダと表記)及びその製造方法に係わり、特に低浮上量の磁気ディスク装置において浮上安定性に優れたスライダ及びその製造方法に関する。
近年、磁気ディスク装置(HDD)はコンピュータの記録装置だけでなくビデオレコーダやデジタルビデオカメラなどAV機器への用途が拡大し、HDDメーカはさらなる高記録密度化が要求されている。なかでも、HDDの記録密度向上のためには、記録・再生素子と磁気記録媒体間距離の低減が重要な課題の一つである。現状の磁気的距離は10nm以下まで低減している。記録再生素子・磁気記録媒体間距離が低下すると、磁気記録媒体にコーティングされているフッ素系潤滑剤を磁気ヘッドがピックアップする。フッ素系潤滑剤のピックアップが生じた場合、一時的にスライダの浮上量が安定せず、記録・再生の障害となる。将来、高密度化により、記録・再生素子と磁気記録媒体間距離がさらに低下すると、磁気ヘッドのピックアップ確率が上昇する。記録・再生素子と磁気記録媒体間距離の低減に伴い、浮上安定性を確保するため、HDDメーカ各社様々な工夫がなされている。例えば、スライダ浮上面を表面エネルギの低いフッ素系有機材料でコーティングする手法である。
特許文献1には、スライダ浮上面にフッ化炭素、フッ化シラン化合物をディップ、もしくはスプレ法でコーティングし、熱や紫外線でスライダ表面に固定化する方法が開示されている。特許文献2には、両末端に非極性の嵩高い官能基、例えばオルガノシリル基が結合したフッ素含有ポリエーテルのフッ素系潤滑剤をスライダ浮上面にコーティングする方法が開示されている。
また、スライダ浮上面を物理的に粗面化することで表面エネルギを低下させる報告がある。特許文献3には、反応性イオンエッチング、Arイオンを用いたスパッタエッチングで粗面化することで、摩擦係数が低下し磁気ディスクとの吸着力が低減されること、この粗化面に、フッ素含有ポリエーテルを主鎖とし、末端が無極性のフッ素系潤滑剤をコーティングする手法が提案されている。
選択的に浮上面の表面エネルギを低下させる手法として、末端が水酸基である鎖状のフルオロポリエーテルをスプレ、もしくはスピンコートし、その表面に赤外レーザを照射し、スライダ浮上面の一部に潤滑膜を形成する手法が提案されている。特許文献4には、極性基として炭素原子に結合した水酸基を含むフッ素含有ポリエーテルのフッ素系潤滑剤を浮上面にコーティングし、OH基を励起させる赤外レーザを選択的に照射することで、スライダ浮上面の一部に潤滑膜を形成する技術が開示されている。
スライダ浮上面を表面エネルギの低いフッ素化合物でコーティングする手法は、スライダ浮上面と結合するための官能基が無いため、化学的に結合させることはできない。薬液処理や物理的に異物を除去する工程で剥離するという問題がある。
撥液層を強固に結合させるためには、スライダ浮上面を構成する材質が重要である。スライダ浮上面の材料は、アルチックとカーボン保護膜、及びアルミナで構成されている。スライダ浮上面の流出端部は、アルチック基板上に記録・再生素子が設置され、アルミナが積層している。アルミナは、他の浮上面を構成する材料のなかでも薬液耐性が低く、洗浄等、薬液処理や超音波処理、レジストや異物除去のため物理的に擦る洗浄等のウェット工程に対する耐性向上のためには、アルミナ表面に被覆性の高いコーティングが必要である。このため、アルミナ表面に強固に化学結合する撥液層を設けることが第1の課題である。
また、現状の磁気的距離は10nm以下である。このため、磁気的距離を考慮すると、記録・再生素子と磁気記録媒体間距離は1nm程度でもロスできない。スライダ浮上面全面に撥液層を設けると、記録・再生素子領域にも撥液層が形成され、磁気的距離が増加し記録・再生に影響を与える。
スライダ浮上面を粗面化する手法は、浮上量が粗さの増加分だけ増加し、磁気的距離に影響する。また、表面粗さの増加により、浮上面を形成する材質の信頼性に関わる。例えば、薬液処理で凹凸の山頂と谷底ではエッチング量が異なり、腐食の原因に繋がる。
また、スライダ表面の一部に、フッ素化合物を赤外レーザで結合させる技術において、記録・再生素子、ヒータが設けられた素子領域を囲むように形成されたアルミナの保護領域に、赤外レーザを照射するためには、位置精度が要求され、厳密な管理が必要となる。記録・再生素子近傍でフッ素化合物がスライダ表面と反応すると、磁気的距離に影響する。この様に、現状の技術で磁気的距離に影響せず撥液層を設けることは難しい。このため、第2の課題は、磁気的距離に影響しないよう、前記記載の素子領域を囲むようにアルミナ保護膜に撥液層を設けることである。
本発明の目的は、第1の課題と第2の課題を解決すべく検討し、フッ素系潤滑剤のピックアップ抑制のため、スライダ浮上面に、磁気的距離に影響せず、化学的、機械的負荷に耐性のある撥液層を施したスライダとその製造方法を提供するものである。
上記目的を達成するために、本発明の磁気ヘッドスライダにおいては、浮上面を形成する基板領域と端子領域とを有し、該端子領域は再生素子と記録素子と加熱素子が設置された素子領域と、該素子領域を囲む保護領域と、流出側端面とを有する磁気ヘッドスライダであって、前記保護領域の浮上面側と前記流出側端面に撥液層が形成されていることを特徴とする。
前記撥液層は窒素を含む複素環構造のフッ素化合物である。
前記フッ素化合物の窒素を含む複素環は、窒素と隣接する原子がリンもしくは炭素である。
前記保護領域はアルミナである。
前記撥液層はホスファゼン骨格のフッ素化合物である。
前記撥液層はトリアジン骨格のフッ素化合物である。
前記撥液層は窒素を含む複素環とフルオロアルキル鎖を含む化合物からなり、該複素環を構成する原子に1乃至6個のフルオロアルキル鎖が結合した構造である。
前記フルオロアルキル鎖のCF2結合数は、8以上、20以下である。
前記フッ素化合物の窒素を含む複素環は、窒素と隣接する原子がリンもしくは炭素である。
前記保護領域はアルミナである。
前記撥液層はホスファゼン骨格のフッ素化合物である。
前記撥液層はトリアジン骨格のフッ素化合物である。
前記撥液層は窒素を含む複素環とフルオロアルキル鎖を含む化合物からなり、該複素環を構成する原子に1乃至6個のフルオロアルキル鎖が結合した構造である。
前記フルオロアルキル鎖のCF2結合数は、8以上、20以下である。
上記目的を達成するために、本発明の磁気ヘッドスライダにおいては、浮上面を形成する基板領域と端子領域とを有し、該端子領域は再生素子と記録素子と加熱素子が設置された素子領域と、該素子領域を囲む保護領域とを有する磁気ヘッドスライダであって、前記保護領域の浮上面側と前記基板領域の浮上面側と前記浮上面に直交する4面に撥液層が形成されていることを特徴とする。
前記保護領域はアルミナであり、前記撥液層は窒素を含む複素環構造のフッ素化合物である。
前記保護領域はアルミナであり、前記撥液層は窒素を含む複素環構造のフッ素化合物である。
上記目的を達成するために、本発明の磁気ヘッドスライダの製造方法においては、ウェハ工程と、スライダ工程を経て、浮上面を形成する基板領域と端子領域とを有し、該端子領域は再生素子と記録素子と加熱素子が設置された素子領域と、該素子領域を囲む保護領域と、流出側端面とを有する磁気ヘッドスライダの製造方法であって、前記スライダ工程の後、前記保護領域の浮上面側と前記流出側端面に撥液層を形成する工程を含むことを特徴とする。
前記撥液層の形成工程は、前記磁気ヘッドスライダにレジストを塗布し、露光、現像により、前記素子領域と、前記流出側端面を除く端面とをマスキングする工程と、
前記磁気ヘッドスライダを窒素含有フッ素化合物の溶液に浸漬して、引き上げるコーティング工程と、
コーティング後に加熱する工程と、
前記素子領域と前記端面のマスキングしたレジストを除去する工程と、を含む。
撥液層を設けた後、薬液処理、ブラシもしくは超音波を使用するウェット工程通過後には、熱処理する。
前記加熱処理温度は、100〜180度の範囲であり、加熱処理時間は、1〜120分の範囲である。
前記撥液層の形成工程において、前記保護領域の浮上面側と前記基板領域の浮上面側と前記浮上面に直交する4面に撥液層を形成する。
前記撥液層の形成工程は、前記磁気ヘッドスライダにレジストを塗布し、露光、現像により、前記素子領域と、前記流出側端面を除く端面とをマスキングする工程と、
前記磁気ヘッドスライダを窒素含有フッ素化合物の溶液に浸漬して、引き上げるコーティング工程と、
コーティング後に加熱する工程と、
前記素子領域と前記端面のマスキングしたレジストを除去する工程と、を含む。
撥液層を設けた後、薬液処理、ブラシもしくは超音波を使用するウェット工程通過後には、熱処理する。
前記加熱処理温度は、100〜180度の範囲であり、加熱処理時間は、1〜120分の範囲である。
前記撥液層の形成工程において、前記保護領域の浮上面側と前記基板領域の浮上面側と前記浮上面に直交する4面に撥液層を形成する。
スライダの浮上面に、記録・再生素子、ヒータが設置されている素子領域を含む非撥液部と、化学的、機械的負荷に耐性のある撥液部を設けることで、磁気的距離に影響を与えることなくスライダによる潤滑剤のピックアップを抑制することができる。
実施例の説明の前に、スライダによる潤滑剤のピックアップ発生のメカニズムと、第1の課題を解決するための手段と、第2の課題を解決するための手段について説明する。図5にピックアップ発生メカニズムを示す。図5の(a)〜(c)は、潤滑膜22を形成した磁気記録媒体20上を浮上する磁気ヘッドスライダ40の概略図である。図5(a)に示すように、磁気ヘッドスライダ40は潤滑剤22と接触してピックアップし、ピックアップされた潤滑剤23はスライダの流出側端面に蓄積される。図5(b)に示すように、蓄積された潤滑剤23が多くなると潤滑剤23は磁気記録媒体20の潤滑膜22へ落下する。図5(c)に示すように、落下した潤滑剤24に磁気ヘッドスライダ40が接触することで、磁気ヘッドスライダ40の浮上量が変動し、記録・再生に支障をきたすことになる。
〈第1の課題を解決するための手段〉
前記ピックアップの発生は、スライダ浮上面、特にアルミナ表面と化学結合する表面エネルギの低い撥液層を設けることで、スライダ浮上面のフッ素系潤滑剤の蓄積量が抑制される。撥液層は、ウェハからHGA(Head Gimbals Assembly)に至るまでの工程において、浮上面形成後に形成される。HGAに組み立てた後、1個ずつ撥液層を形成することになるとコスト高となるため、スライダ工程を流用し、ローバ工程の浮上面形成後に撥液層形成工程を導入することでコスト高を防止する。
前記ピックアップの発生は、スライダ浮上面、特にアルミナ表面と化学結合する表面エネルギの低い撥液層を設けることで、スライダ浮上面のフッ素系潤滑剤の蓄積量が抑制される。撥液層は、ウェハからHGA(Head Gimbals Assembly)に至るまでの工程において、浮上面形成後に形成される。HGAに組み立てた後、1個ずつ撥液層を形成することになるとコスト高となるため、スライダ工程を流用し、ローバ工程の浮上面形成後に撥液層形成工程を導入することでコスト高を防止する。
一方、スライダ工程には、前述のごとく、超音波やブラシを併用し、洗浄、リンス等薬液を用いる工程があり、ウェット工程を通過しても、撥液性を維持できることが重要である。撥液性を維持するためには、スライダ浮上面の構成材質で、薬液耐性の低いアルミナと強固に結合する撥液材料で撥液層を形成しなければならない。そこで、両性酸化物に類似した特性を示すアルミナに着目し検討した結果、アルミナ表面の被覆力を向上し、化学的、機械的負荷に耐性のある撥液層を見いだした。
アルミナのアルミニウム原子は、ルイス酸の性質を示し、図6に示すルイス塩基である窒素含有フッ素化合物の窒素原子の非共有電子対と結合する。これによって、アルミナと撥液層を化学結合で接着することで第1の課題が解決される。
窒素含有フッ素化合物は、アルミナ表面と反応するアミド、アミン、イミン、ヒドラジン、イミド、及び窒素を含む複素環と、フッ素系潤滑剤に対し撥液性のある直鎖状のフルオロアルキル鎖(以下、Rf鎖と称する)を含む構造が好ましい。特に、窒素を含む複素環は、スライダを形成する基板面に平行に配列することにより、緻密な被膜を形成し、被覆性に優れる。例えば、窒素3個とリン3個で構成されるホスファゼン骨格、窒素3個を含む6員環構造のトリアジン骨格を有する窒素含有フッ素化合物は、より緻密な被膜を形成することができる。
次に、複素環を含む窒素含有フッ素化合物について説明する。撥液層形成材料のホスファゼン骨格のフッ素化合物を図7に示す。ホスファゼン骨格には3個のリン原子を有する。リン原子1個に1乃至2のRf鎖が結合している。リン原子1個に対し、2つの結合手をもつため、3個のリンにRf鎖がすべて結合すると最大6個のRf鎖をもつことになる。Rf鎖の結合数と撥液性は相関がある。Rf鎖の結合数が多いほど撥液性が高く、最大結合数6個であることが好ましいが、3〜6の範囲であればフッ素系潤滑剤に対する撥液性は達成される。
撥液性を示す接触角は、Rf鎖の数、Rf鎖の(CF2)結合数に影響する。以下に、Rf鎖の数、Rf鎖の(CF2)結合数の範囲を示す。Rf鎖は、(CF2)の結合数が多いほど、フッ素系潤滑剤に対する撥液性が高い。8未満になると撥液性が著しく低下し、フッ素系潤滑剤に対する撥液性がなくなる。また、16以上になると溶媒への溶解性が低下し、浸漬(以下、ディップと称す)で撥液層を形成するには困難である。8以上15以下の範囲であれば、フッ素系潤滑剤に対し容易に撥液性を維持することができる。このため、結合数は、8以上15以下であることが好ましい。(CF2)の結合数は、フッ素系潤滑剤の種類により適宜選択される。
ホスファゼン骨格のフッ素化合物を用いて形成した撥液層の接触角は、フルオロポリエーテル骨格のフッ素系潤滑剤に対し15〜20度の範囲である。この範囲であれば、フッ素系潤滑剤に対し撥液性がありピックアップ抑制効果を示す。接触角が高いほど、撥液性は高くなる。フッ素化合物のアルミナに対する接触角最大値は、20度である。また、15度未満では、撥液性が低下しピックアップ抑制効果がなくなる。ホスファゼン骨格のフッ素化合物は、Rf鎖の数、Rf鎖の(CF2)結合数に応じて範囲が選択される。
将来、記録・再生素子と磁気記録媒体間距離の狭小化に伴い、磁気的距離は低下する傾向がある。撥液層の厚さは、磁気的距離から判断すると2nm以下が好ましく、被覆性に問題がなければ、撥液層厚は、単分子層であることがより好ましい。層厚は、磁気的距離から判断され、単分子膜0.05nmから、2nmの範囲で適宜選択される。
撥液層に、薬液処理、ブラシや超音波による化学的、機械的負荷をかけた場合は、熱処理を行うことが好ましい。薬液処理、ブラシや超音波で低下した撥液性を回復させるためである。熱処理温度は、100度未満の場合、撥液性回復の効果が得られない。一方、180度以上に加熱した場合、撥液層の変質等構造変化が起こる可能性がある。このため、100〜180度の範囲であることが好ましい。この範囲で撥液層となる化合物により適宜選択される。
熱処理時間は、1分未満では、基板の表面温度が一定にならず、撥液性は回復しない。これに対し、120分以上熱処理した場合、すでに撥液性は一定となり、これ以上延長しても効果はない。このため、1〜120分の範囲であることが好ましい。この範囲で撥液層となる化合物により適宜選択される。
図8に、撥液層形成材料のトリアジン骨格のフッ素化合物を示す。トリアジン骨格には3個の炭素原子が結合している。炭素原子1個には、Rf鎖が最大1個結合している。3つの炭素に、Rf鎖がすべて結合すると最大3個のRf鎖をもつ。Rf鎖の結合数が多いほど撥液性が高くなる。最大結合数3個のRf鎖と結合することが好ましいが、1〜3の範囲であればフッ素系潤滑剤に対する撥液性は達成される。
撥液性を示す接触角は、Rf鎖の数、Rf鎖の(CF2)結合数に影響する。以下に、Rf鎖の数、Rf鎖の(CF2)結合数の範囲を示す。Rf鎖は、(CF2)の結合数と撥液性は相関がある。(CF2)の結合数が多いほど、フルオロポリエーテル骨格のフッ素系潤滑剤に対する撥液性が高い。このため、結合数は、8以上15以下であることが好ましい。8未満になると撥液性が著しく低下し、フッ素系潤滑剤に対する撥液性がなくなる。また、16以上になると溶媒への溶解性が低下するので、浸漬(以下、ディップと称す)で撥液層を形成するには困難である。8以上15以下の範囲であれば、フッ素系潤滑剤に対し容易に撥液性を維持することができる。(CF2)の結合数は、フッ素系潤滑剤の種類により適宜選択される。
トリアジン骨格のフッ素化合物を用いて形成した撥液層の接触角は、接触角が高いほど、撥液性は高くなる。フルオロアルキルエーテル骨格のフッ素化合物の最大接触角は、20度である。また、15度未満では、撥液性が低下しピックアップ抑制効果がなくなる。フッ素系潤滑剤に対し15〜20度の範囲である。この範囲であれば、フッ素系潤滑剤に対し撥液性がありピックアップ抑制効果を示す。トリアジン骨格のフッ素化合物は、Rf鎖の数、Rf鎖の(CF2)結合数に応じて範囲が選択される。
撥液層の厚さは、磁気的距離から判断すると2nm以下である。磁気的距離は低下する傾向がある。このため、被覆性に問題がなければ、撥液層厚は、単分子層がより好ましい。層厚は、磁気的距離から判断され、0.05から、2nmの範囲で適宜選択される。
撥液層に、薬液処理、ブラシや超音波による化学的、機械的負荷をかけた場合は、必ず熱処理を行う。薬液処理、ブラシや超音波で低下した撥液性を回復させるためである。熱処理温度は、100度未満の場合、撥液性回復の効果が得られない。一方、180度以上に加熱した場合、撥液層の変質等構造変化が起こる可能性がある。100〜180度の範囲であることが好ましい。この範囲で撥液層となる化合物により適宜選択される。
熱処理時間は、1分未満では、基板の表面温度が一定にならず、撥液性は回復しない。これに対し、120分以上熱処理した場合、すでに撥液性は一定となり、これ以上延長しても効果はない。1〜120分の範囲であることが好ましい。この範囲で撥液層となる化合物により適宜選択される。
図7及び図8に示す複素環構造を含む窒素含有フッ素化合物を用いた撥液層を形成することにより、アルミナ表面に形成した撥液層の化学的、機械的負荷に対する耐性が得られた。本発明により、特に、アルミナ表面において、スライダ工程の薬液やブラシ、超音波等を用いたウェット工程を通過しても撥液性を維持することができた。本発明の撥液層を浮上面に設けることにより、ピックアップの抑制に繋がるスライダを提供することができる。
〈第2の課題を解決するための手段〉
スライダの浮上面全面に撥液層を設けた場合、撥液層の膜厚分だけ磁気的距離が増加してしまう。このため、撥液層を磁気ヘッドスライダ浮上面の素子領域を囲むように設置することで、磁気ヘッドスライダ本体は、撥液層分の浮上量が増加するが、ヒータで素子領域を膨張させるため、磁気的距離は増加しない。
スライダの浮上面全面に撥液層を設けた場合、撥液層の膜厚分だけ磁気的距離が増加してしまう。このため、撥液層を磁気ヘッドスライダ浮上面の素子領域を囲むように設置することで、磁気ヘッドスライダ本体は、撥液層分の浮上量が増加するが、ヒータで素子領域を膨張させるため、磁気的距離は増加しない。
撥液層の設置方法は、以下のプロセスからなる。
(a)スライダの浮上面に、記録・再生素子とヒータが設置された領域をマスキングするためのレジストを形成する。
(b)露光、現像により記録・再生素子とヒータが設置された素子領域を含む非撥液部となる領域をレジストでマスキングする。
(c)前記複素環構造の窒素含有化合物をディップでコーティングし、加熱によりスライダ表面と反応させ撥液層を形成する。
(d)ブラシ等を用い薬液でレジストを除去する。
(a)スライダの浮上面に、記録・再生素子とヒータが設置された領域をマスキングするためのレジストを形成する。
(b)露光、現像により記録・再生素子とヒータが設置された素子領域を含む非撥液部となる領域をレジストでマスキングする。
(c)前記複素環構造の窒素含有化合物をディップでコーティングし、加熱によりスライダ表面と反応させ撥液層を形成する。
(d)ブラシ等を用い薬液でレジストを除去する。
前記工程(c)のコーティング溶液において、複素環構造の窒素含有化合物の濃度は、0.01v%以下の場合、コーティングした被膜には、ピンホール等の欠陥が生じる場合があり、化学的、機械的負荷による耐性がなくなる。これに対し、1v%を越えると磁気的距離に影響を与えることになる。このため、0.01v〜1v%の範囲であることが好ましい。この範囲で撥液層となる化合物により適宜選択される。
前記工程(c)において、80度未満の場合、熱処理効果がなく、ブラシや超音波等の機械的負荷で容易に剥離する。一方、180度以上に加熱した場合、撥液層の変質等構造変化が起こる可能性がある。このため、加熱温度は、80〜180度の範囲であることが好ましい。この範囲で撥液層となる化合物により適宜選択される。
前記工程(c)おいて、加熱時間は、1分未満では、基板の表面温度が一定にならず、撥液層とスライダ表面との反応にムラが生じ接着性が劣る。これに対し、120分以上の場合、すでに反応が完了しているため、接着性は一定で効果はない。このため、1〜120分の範囲であることが好ましい。この範囲で撥液層となる化合物により適宜選択される。
前記記載の浮上面が露出した非撥液部の面積は、記録・再生素子とヒータが設置された素子領域の面積に加えて、前記工程(b)のフォトリソ工程でのパターニング精度を考慮し、50×50μm2〜200×200μm2が好ましい。50×50μm2以下の場合、パターニング時の位置ずれを含まない面積のため、素子領域に撥液層が設けられる可能性があり、磁気的距離に影響する。200×200μm2以上の場合、非撥液部の面積が増加し、目的であるピックアップ抑制効果が低減する。
スライダに前記の撥液層形成工程を実施することにより、化学的、機械的負荷に耐性のある撥液層を設けた撥液部と浮上面が露出した記録・再生素子とヒータが設置された非撥液部からなる浮上面が形成される。
以下に、本発明の実施例による磁気ヘッドスライダ構造とその形成方法を詳細に示す。図1及び図2に示すように、磁気ヘッドスライダ4の磁気記録媒体20に対向する浮上面側は、端子領域2と基板領域3からなり、端子領域2は、シールド層5に狭持された再生素子6と記録素子7、及びヒータ8(浮上面から後退している)が設置された素子領域1と、素子領域1を囲むようにアルミナが形成された保護部材の浮上面側の領域9とを備えている。素子領域1に設置されているシールド層5に狭持された再生素子6と記録素子7及びヒータ8は、アルミナに埋め込まれている。また、基板領域3では、空気の流れを整える溝10が形成されている。磁気ヘッドスライダ4の端子領域2には、素子領域1を囲むようにアルミナが形成された保護部材の浮上面側の領域(保護領域)9に化学的、機械的負荷に耐性のある窒素含有フッ素化合物の撥液層12が形成されている。また、磁気ヘッドスライダ4の流出側端面11にも化学的、機械的負荷に耐性のある窒素含有フッ素化合物の撥液層12が形成されている。以上の構成により、磁気的距離に影響せず、化学的、機械的に優れた撥液層を備えた磁気ヘッドスライダが実現できる。
上記実施例1においては、素子領域1を除く保護部材の浮上面側の領域(保護領域)9と流出側端面11に化学的、機械的負荷に耐性のある窒素含有フッ素化合物の撥液層12を形成したが、図3及び図4に示すように、素子領域1を除く浮上面と、磁気記録媒体20に直交する4面にも設けられていてもよい。この構成によれば、複素環構造の窒素含有化合物をディップでコーティングすることができるので、製造が容易である。
次に窒素含有化合物の撥液層の形成方法を説明する。代表例として、図3及び図4に示すように素子領域を除く領域にホスファゼン骨格のフッ素化合物の撥液層を形成する方法について説明する。
ウェハ工程に続くスライダ工程において、浮上面が形成された基板表面にレジスト(東京応化(株)製THMR-in200)をスピン塗布した後、100度/60秒でプリベイクし200nmの膜を形成した。次いで、KrFエキシマレーザで露光量16mJ/cm2で露光後、120度/60秒でべークし、記録・再生素子とヒータが設置されている領域1を被覆するために、パターニングした。パターニング後、2.4%TMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)で23.5度/60秒で現像し、記録・再生素子領域1をマスキングした後、基板を撥液層形成材料としてホスファゼン骨格のフッ素化合物0.2v%溶液に5分浸漬後、1mm/秒で基板を引き上げた。アルミナを含む浮上面と浮上面に直交する面に撥液層を結合させるため、120度/3時間+150度/1時間加熱した。次いで、余剰の撥液層形成材料を除去するため、フッ素系溶剤HFE7100でリンスした。最後に、N−メチルー2−ピロリドン(NMP)に40度/10分浸漬し、レジストを剥離した。
ウェハ工程に続くスライダ工程において、浮上面が形成された基板表面にレジスト(東京応化(株)製THMR-in200)をスピン塗布した後、100度/60秒でプリベイクし200nmの膜を形成した。次いで、KrFエキシマレーザで露光量16mJ/cm2で露光後、120度/60秒でべークし、記録・再生素子とヒータが設置されている領域1を被覆するために、パターニングした。パターニング後、2.4%TMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)で23.5度/60秒で現像し、記録・再生素子領域1をマスキングした後、基板を撥液層形成材料としてホスファゼン骨格のフッ素化合物0.2v%溶液に5分浸漬後、1mm/秒で基板を引き上げた。アルミナを含む浮上面と浮上面に直交する面に撥液層を結合させるため、120度/3時間+150度/1時間加熱した。次いで、余剰の撥液層形成材料を除去するため、フッ素系溶剤HFE7100でリンスした。最後に、N−メチルー2−ピロリドン(NMP)に40度/10分浸漬し、レジストを剥離した。
上記の方法により、素子領域を除く領域にホスファゼン骨格のフッ素化合物の撥液層を形成することができる。なお、トリアジン骨格のフッ素化合物の撥液層を形成する場合も、上記の方法と同じである。また、図1及び図2に示すように、素子領域1を除く保護領域9と流出側端面11に撥液層12を形成する場合は、素子領域1を除く保護領域9と流出側端面11以外をマスキングして撥液層を前記の方法で形成することができる。
〈効果の検証1〉
非晶質のアルミナ上に、図9に示す撥液層形成材料を用いて、実施例1と同様の撥液層を形成した。この撥液層の化学的、機械的耐性について検討し、効果の検証を行った。以下にその手順を示す。
非晶質のアルミナ上に、図9に示す撥液層形成材料を用いて、実施例1と同様の撥液層を形成した。この撥液層の化学的、機械的耐性について検討し、効果の検証を行った。以下にその手順を示す。
1.評価基板の作成
2mm厚のアルチックウェハ上に、スパッタで非晶質のアルミナを成膜した後、幅1cm×長さ5cmの短冊状の試験片に切り出した。
2mm厚のアルチックウェハ上に、スパッタで非晶質のアルミナを成膜した後、幅1cm×長さ5cmの短冊状の試験片に切り出した。
2.撥液層の形成
(1)サンプル(a) ホスファゼン骨格フッ素化合物の撥液層形成(No.1)
試験片の表面に付着している有機物を除去した。ホスファゼン骨格のフッ素化合物のRf鎖は、3個のリン原子に対し6個のRf鎖が結合し、Rf鎖は、8個の(CF2)が結合している。ホスファゼン骨格のフッ素化合物をHFE7100(住友3M(株)社製)で0.2vol%に調整した。この溶液に試験片を5分間浸漬した後、1mm/秒で引き上げてコーティングした。コーティングした試験片を120度/3時間+150度/1時間加熱し、アルミナ表面と反応させた。加熱後、余剰のフッ素化合物を除去するため、HFE7100で洗浄した。
(2)サンプル(b) トリアジン骨格フッ素化合物の撥液層形成(No.2)
試験片の表面に付着している有機物を除去した。トリアジン骨格のフッ素化合物のRf鎖は、3個の炭素原子に対し、それぞれ1個のRf鎖が結合している。Rf鎖は、最大で3個の(CF2)が結合している。トリアジン骨格のフッ素化合物をHFE7100(住友3M(株)社製)にイソプロパノール20%を添加し、0.2vol%に調整した。この溶液に試験片を5分間浸漬した後、1mm/秒で引き上げてコーティングした。コーティングした試験片を120度/3時間+150度/1時間加熱し、アルミナ表面と反応させた。加熱後、余剰のフッ素化合物を除去するため、HFE7100にイソプロパノール20%を添加した溶液で洗浄した。
(1)サンプル(a) ホスファゼン骨格フッ素化合物の撥液層形成(No.1)
試験片の表面に付着している有機物を除去した。ホスファゼン骨格のフッ素化合物のRf鎖は、3個のリン原子に対し6個のRf鎖が結合し、Rf鎖は、8個の(CF2)が結合している。ホスファゼン骨格のフッ素化合物をHFE7100(住友3M(株)社製)で0.2vol%に調整した。この溶液に試験片を5分間浸漬した後、1mm/秒で引き上げてコーティングした。コーティングした試験片を120度/3時間+150度/1時間加熱し、アルミナ表面と反応させた。加熱後、余剰のフッ素化合物を除去するため、HFE7100で洗浄した。
(2)サンプル(b) トリアジン骨格フッ素化合物の撥液層形成(No.2)
試験片の表面に付着している有機物を除去した。トリアジン骨格のフッ素化合物のRf鎖は、3個の炭素原子に対し、それぞれ1個のRf鎖が結合している。Rf鎖は、最大で3個の(CF2)が結合している。トリアジン骨格のフッ素化合物をHFE7100(住友3M(株)社製)にイソプロパノール20%を添加し、0.2vol%に調整した。この溶液に試験片を5分間浸漬した後、1mm/秒で引き上げてコーティングした。コーティングした試験片を120度/3時間+150度/1時間加熱し、アルミナ表面と反応させた。加熱後、余剰のフッ素化合物を除去するため、HFE7100にイソプロパノール20%を添加した溶液で洗浄した。
3.化学的、機械的耐性評価
(1)薬液を用いたブラシ洗浄
撥液層を形成した試験片をpH13 TMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)溶液中に10分浸漬した後、TMAH溶液にブラシを浸漬しながら、往復、縦50×横50擦った。試験片を流水で1分間水洗した。
(2)熱処理
洗浄後のコーティング面において、撥液性回復のため、150度/10分熱処理した。
(3)界面活性剤による超音波洗浄
引き続き試験片を中性界面活性剤の溶液に浸漬し、40Hz、100Wの超音波をかけながら55度/50分洗浄した。
(4)熱処理
洗浄後のコーティング面において、撥液性回復のため、150度/10分熱処理した。
(5)撥液性評価
撥液性は、フッ素系潤滑剤に対する接触角を測定した。フッ素系潤滑剤は、フルオロアルキルエーテル骨格のZ-doll 2000(ソルヴェーソルキソ社製)を使用した。フッ素系潤滑剤滴下後の液的形状は経時変化するため、滴下後、30分経過時の接触角を測定することにした。接触角計は、ドロップマスタ500(協和界面科学(株))を用いた。接触角は、前記のコーティング後、(2)ブラシ洗浄後の熱処理面、及び(4)界面活性剤による超音波洗浄後の熱処理面を測定し撥液効果を確認した。
(1)薬液を用いたブラシ洗浄
撥液層を形成した試験片をpH13 TMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)溶液中に10分浸漬した後、TMAH溶液にブラシを浸漬しながら、往復、縦50×横50擦った。試験片を流水で1分間水洗した。
(2)熱処理
洗浄後のコーティング面において、撥液性回復のため、150度/10分熱処理した。
(3)界面活性剤による超音波洗浄
引き続き試験片を中性界面活性剤の溶液に浸漬し、40Hz、100Wの超音波をかけながら55度/50分洗浄した。
(4)熱処理
洗浄後のコーティング面において、撥液性回復のため、150度/10分熱処理した。
(5)撥液性評価
撥液性は、フッ素系潤滑剤に対する接触角を測定した。フッ素系潤滑剤は、フルオロアルキルエーテル骨格のZ-doll 2000(ソルヴェーソルキソ社製)を使用した。フッ素系潤滑剤滴下後の液的形状は経時変化するため、滴下後、30分経過時の接触角を測定することにした。接触角計は、ドロップマスタ500(協和界面科学(株))を用いた。接触角は、前記のコーティング後、(2)ブラシ洗浄後の熱処理面、及び(4)界面活性剤による超音波洗浄後の熱処理面を測定し撥液効果を確認した。
次に比較例について示す。比較例で使用した撥液層形成材料を図10に示す。撥液層形成材料(c)は、ベンゼン環にイミダゾリンが結合し、イミダゾリン環には、サンプル(a)、(b)のフルオロアルキル鎖に対し、フルオロアルキルエーテル鎖が結合している。また、撥液層形成材料(d)は、水素がすべてフッ素に置換されたベンゼン環が結合したヒドラジン誘導体である。(c)及び(d)は、いずれもサンプル(a)、(b)の窒素を含む6員環に対し、窒素を含まない6員環、すなわちベンゼン環を有している。さらに、撥液層形成材料(e)は、6員環を含まずフルオロアルキルエーテル鎖を有するアミド化合物である。
前記と同様の試験片を作成し、サンプル(c)、(d)、(e)の撥液層を形成し、サンプル(a)、(b)と同様の評価を行った。評価結果の実測値を図11に、実測値をグラフにした結果を図12に示す。連続して、薬液を用いたブラシ洗浄と中性界面活性剤溶液で超音波洗浄を行った結果、No.1、及び2の接触角は、15度以上である。サンプル(a)及び(b)は、コーティング後と同等の撥液性を維持している。一方、比較例であるサンプル(c)、(d)、(e)のコーティング面の接触角は、15度以下であった。また、洗浄後の熱処理効果はなく、接触角は変わらず15度以下であった。この結果、実施例1のサンプル(a)、(b)を用いた撥液層形成材料は、化学的、機械的耐性があり、洗浄後もフッ素系潤滑剤に対し十分な撥液性が認められた。
〈効果の検証2〉
図9(a)及び(b)に示す撥液層形成材料を用いて実素子に撥液層を形成し、スライダ浮上面のピックアップ効果を検証した。以下にその手順を示す。
図9(a)及び(b)に示す撥液層形成材料を用いて実素子に撥液層を形成し、スライダ浮上面のピックアップ効果を検証した。以下にその手順を示す。
1.撥液層の形成
端子部にコイル、記録・再生素子とヒータを設けたスライダの浮上面に、撥液層形成材料を用い、効果の検証1と同様に撥液層を形成した。
端子部にコイル、記録・再生素子とヒータを設けたスライダの浮上面に、撥液層形成材料を用い、効果の検証1と同様に撥液層を形成した。
2.スライダコーティング面の浮上試験方法
サンプル(a)及び(b)をコーティングしたスライダの表面のフッ素系潤滑剤に対するピックアップ効果を浮上可視化装置で評価した。
スライダに表面処理したHGAを装置本体の固定アームに取り付け、片面に保護膜と潤滑層を形成した透明ディスクを7200rpmで回転させた。
次いで、HGAを中周(半径22mmの円周)で定点浮上させ、ヘッド浮上開始直後から60分間、浮上面のフッ素系潤滑剤挙動を顕微鏡で観察した。
サンプル(a)及び(b)をコーティングしたスライダの表面のフッ素系潤滑剤に対するピックアップ効果を浮上可視化装置で評価した。
スライダに表面処理したHGAを装置本体の固定アームに取り付け、片面に保護膜と潤滑層を形成した透明ディスクを7200rpmで回転させた。
次いで、HGAを中周(半径22mmの円周)で定点浮上させ、ヘッド浮上開始直後から60分間、浮上面のフッ素系潤滑剤挙動を顕微鏡で観察した。
次に比較例であるサンプル(c)、(d)、(e)を前記と同様に磁気ヘッドスライダ表面に形成し、ピックアップ抑制効果を検証した。
浮上後60分後の浮上面において、フッ素系潤滑剤蓄積面積相対値を図13に示す。実施例1のサンプル(a)及び(b)のフッ素系潤滑剤蓄積面積は、未処理の浮上面に比べて1/4程度であり、撥液性を示す。この結果より、サンプル(a)及び(b)の撥液層を設けることによって、フッ素系潤滑剤に対するピックアップを抑制することができる。一方、比較例であるサンプル(c)、(d)、(e)の撥液層を設けた磁気ヘッドスライダ表面は、未処理の浮上面に比べフッ素系潤滑剤の蓄積量は多く、ピックアップ抑制効果が得られなかった
本発明は、磁気ヘッドスライダを搭載する磁気ディスク装置に利用できる。
1…素子領域、2…端子領域、3…基板領域、4…磁気ヘッドスライダ、5…シールド層、
6…再生素子、7…記録素子、8…ヒータ、9…保護領域、10…溝、11…流出側端面、
12…撥液層、20…磁気記録媒体。
6…再生素子、7…記録素子、8…ヒータ、9…保護領域、10…溝、11…流出側端面、
12…撥液層、20…磁気記録媒体。
Claims (15)
- 浮上面を形成する基板領域と端子領域とを有し、該端子領域は再生素子と記録素子と加熱素子が設置された素子領域と、該素子領域を囲む保護領域と、流出側端面とを有する磁気ヘッドスライダにおいて、前記保護領域の浮上面側と前記流出側端面に撥液層が形成されていることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 請求項1記載の磁気ヘッドスライダにおいて、前記撥液層は窒素を含む複素環構造のフッ素化合物であることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 請求項2記載の磁気ヘッドスライダにおいて、前記フッ素化合物の窒素を含む複素環は、窒素と隣接する原子がリンもしくは炭素であることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 請求項2記載の磁気ヘッドスライダにおいて、前記保護領域はアルミナであることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 請求項1記載の磁気ヘッドスライダにおいて、前記撥液層はホスファゼン骨格のフッ素化合物であることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 請求項1記載の磁気ヘッドスライダにおいて、前記撥液層はトリアジン骨格のフッ素化合物であることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 請求項1記載の磁気ヘッドスライダにおいて、前記撥液層は窒素を含む複素環とフルオロアルキル鎖を含む化合物からなり、該複素環を構成する原子に1乃至6個のフルオロアルキル鎖が結合した構造であることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 請求項7記載の磁気ヘッドスライダにおいて、前記フルオロアルキル鎖のCF2結合数は、8以上、20以下であることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 浮上面を形成する基板領域と端子領域とを有し、該端子領域は再生素子と記録素子と加熱素子が設置された素子領域と、該素子領域を囲む保護領域とを有する磁気ヘッドスライダにおいて、前記保護領域の浮上面側と前記基板領域の浮上面側と前記浮上面に直交する4面に撥液層が形成されていることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 請求項9記載の磁気ヘッドスライダにおいて、前記保護領域はアルミナであり、前記撥液層は窒素を含む複素環構造のフッ素化合物であることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- ウェハ工程と、スライダ工程を経て、浮上面を形成する基板領域と端子領域とを有し、該端子領域は再生素子と記録素子と加熱素子が設置された素子領域と、該素子領域を囲む保護領域と、流出側端面とを有する磁気ヘッドスライダの製造方法において、前記スライダ工程の後、前記保護領域の浮上面側と前記流出側端面に撥液層を形成する工程を含むことを特徴とする磁気ヘッドスライダの製造方法。
- 請求項11記載の磁気ヘッドスライダの製造方法において、前記撥液層の形成工程は、
前記磁気ヘッドスライダにレジストを塗布し、露光、現像により、前記素子領域と、前記流出側端面を除く端面とをマスキングする工程と、
前記磁気ヘッドスライダを窒素含有フッ素化合物の溶液に浸漬して、引き上げるコーティング工程と、
コーティング後に加熱する工程と、
前記素子領域と前記端面のマスキングしたレジストを除去する工程と、を含むことを特徴とする磁気ヘッドスライダの製造方法。 - 請求項11記載の磁気ヘッドの製造方法において、撥液層を設けた後、薬液処理、ブラシもしくは超音波を使用するウェット工程通過後には、熱処理することを特徴とする磁気ヘッドスライダの製造方法。
- 請求項13記載の磁気ヘッドの製造方法において、前記加熱処理温度は、100〜180度の範囲であり、加熱処理時間は、1〜120分の範囲であることを特徴とする磁気ヘッドスライダの製造方法。
- 請求項11記載の磁気ヘッドの製造方法において、前記撥液層の形成工程は、前記保護領域の浮上面側と前記基板領域の浮上面側と前記浮上面に直交する4面に撥液層を形成するものであることを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
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