本発明の実施の形態を図1〜図4を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、中間転写体として中間転写ベルトを使用した電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。尚、本図はフルカラー画像形成装置の場合を示している。
図中、1はフルカラー画像形成装置を示す。フルカラー画像形成装置1は、複数組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体形成ユニット7と、記録媒体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としてのベルト式定着装置24とを有する。フルカラー画像形成装置1の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
各感光体1Y、1M、1C、1Kに形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Y、感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。
又、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。
又、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。
又、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成ユニット10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラ5K、クリーニング手段6Kを有する。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体として無端の中間転写ベルト70を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端の中間転写ベルト70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体として用紙等の記録媒体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5Aに搬送され、記録媒体P上にカラー画像が一括転写される。
カラー画像が転写された記録媒体Pは、熱ローラ定着器270が装着された定着装置24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
一方、二次転写ローラ5Aにより記録媒体Pにカラー画像を転写した後、記録媒体Pを曲率分離した無端の中間転写ベルト70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、一次転写ローラ5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
二次転写ローラ5Aは、ここを記録媒体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
又、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とを有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端の中間転写ベルト70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとを有している。
筐体8の引き出し操作により、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
この様に感光体1Y、1M、1C、1Kの外周面上を帯電、露光し外周面上に潜像を形成した後、現像によりトナー像(顕像)を形成し、無端ベルト状の中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録媒体Pに転写し、ベルト式定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。尚、本発明で像形成時とは潜像形成、トナー像(顕像)を記録媒体Pに転写し最終画像を形成することを含む。
トナー像を記録媒体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、各感光体1Y、1M、1C、1Kに配設されたクリーニング手段6Y、6M、6C、6Kで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
上記カラー画像形成装置では、中間転写体をクリーニングするクリーニング手段6Aのクリーニング部材として、弾性ブレードを用いる。又、各感光体に脂肪酸金属塩を塗布する手段(11Y、11M、11C、11K)を設けている。尚、脂肪酸金属塩としては、トナーで用いたと同じものを用いることが出来る。
図2は中間転写体として中間転写ロールを使用した電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。
1′はフルカラー画像形成装置を示す。フルカラー画像形成装置1′は、現像ユニット2′と、感光体3′と、転写ユニット4′と、定着器5′と、給紙カセット6′とを有している。現像ユニット2′はマゼンタトナーMを有するマゼンタ現像ユニット2′Mと、シアントナーCを有するシアン現像ユニット2′Cと、イエロートナーYを有するイエロー現像ユニット2′Yと、ブラックトナーKを有するブラック現像ユニット黒2′Kとを有し、感光体3′の周囲に配設されている。
感光体3′は矢示の方向に所定の周速度で回転駆動される様に配設されている。感光体3′は回転過程で、感光体3′の周囲に配設された一次帯電器(コロナ放電器)7′により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで画像露光手段(不図示)による画像露光8′を受けることにより目的のカラー画像の第1の色成分像、例えばマゼンタ成分像に対応した静電潜像が形成される。次いでその静電潜像がマゼンタ現像ユニット2′Mにより第1色であるマゼンタトナーMにより現像される。
転写ユニット4′は中間転写ローラ401′と、中間転写ローラクリーナ402と、転写ローラ403とを有している。中間転写ローラ401′は感光体3′と逆方向(図中の矢印方向)に感光体3′と同じ周速度をもって回転駆動される様になっている。
感光体3′の上に形成担持された上記第1色のマゼンタトナー画像は、感光体3′と中間転写ローラ401′とのニップ部N1(一次転写部)を通過する過程で、電源(不図示)から中間転写ローラ401′に印加される一次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写ローラ401′の外周面に順次中間転写されていく。
中間転写ローラ401′に対する第1色のマゼンタトナー画像の転写を終えた感光体3′表面は、感光体3′の周囲に配設されたクリーニング装置(不図示)により清掃される。以下同様に、第2色目のシアントナー画像、第3色目のイエロートナー画像、第4色目のブラックトナー画像が感光体3′に順次に形成され、それらのナトー画像が順次に中間転写ローラ401′の上に重畳転写され、中間転写ローラ401′の上に第1〜第4色のトナー画像が重ね合わせられ、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。
中間転写ローラ401′の上に重畳転写された合成カラートナー画像の、転写材9′への転写(二次転写)は、それまで離間していた転写ローラ402′がシフト手段(不図示)により中間転写ローラ401′に当接されると共に、給紙カセット6′から転写材9′が給紙ローラ601′により1枚分離給送され、レジストローラ602′により中間転写ローラ401′と転写ローラ403′との当接ニップ部N2(二次転写部)に所定のタイミングで給送され、同時に二次転写バイアスがバイアス電源(不図示)から転写ローラ403′に印加される。この二次転写バイアスにより中間転写ローラ401′から転写材9′へ合成カラートナー画像が転写される。
合成カラートナー画像が転写された転写材9′は中間転写ローラ401′から分離されてガイドで定着器5′へ導入され熱ローラ501′と加圧ローラ502′により加熱定着される。
転写材9′への合成カラートナー画像が転写終了後、中間転写ローラ401′の上の転写残トナーは中間転写ローラ401′に対して中間転写ローラクリーナ402′がシフト手段(不図示)により当接(図中の矢印方向)されることで除去される。
本発明において中間転写体とは図1に示す無端の中間転写ベルト70及び図2に示す中間転写ロール401′を言い、本発明は図1に示す無端の中間転写ベルト70及び図2に示す中間転写ロール401′に関するものである。
図3は本発明の中間転写体の中間転写ベルトの拡大概略断面図である。
図中、70は中間転写体を示す。中間転写体は、基体70aの上に順次弾性層70bと、3次元架橋性樹脂層70cと、無機化合物層70dとを積層した構成を有しており、更に本発明では3次元架橋性樹脂層70cと、無機化合物層70dとの境界に応力調整手段70eを設けたことを特徴としている。
基体70aの厚さは、機械的強度、画質、製造コスト等を考慮し、50μm〜1000μmが好ましい。弾性層の厚さは、50μm〜500μmが、また100〜300μが更に好ましい。3次元架橋性樹脂層の膜厚は、1μm〜100μmが好ましく、更に2μm〜30μmが好ましい。樹脂層の弾性率は弾性層よりも高く、0.1GPa〜5GPaであることが好ましい。無機化合物層の厚さは、耐久性、表面強度、樹脂層との密着性、屈曲耐性、成膜時間等を考慮し、10nm〜1000nmが好ましい。より好ましくは200nm〜500nmである。
これまでの弾性層/樹脂層/無機化合物層の層構成にては、長期間の運転あるいは高温高湿環境下での保存により無機化合物層に通常目視で観察されるクラックよりも微細な欠陥が発生することにより、フィルミングが発生すること、また無機化合物層と樹脂層の密着性が不十分なために耐久性が劣化することがわかった。
上記課題を鋭意検討した結果、弾性層と無機化合物層間の応力調整手段、すなわち樹脂層に加えて樹脂層と無機化合物層間の応力バランスを弾性バランスにより調整する手段を設けることで、これが微細な欠陥発生に影響すること、および樹脂層として3次元架橋性樹脂を使用すると、高温高湿下でも無機表層の膜剥がれなどが発生せず、密着性が良好であることを見出し、本発明にいたった。本発明は、耐摩耗性、転写性に優れる表層無機化合物層を有するとともに、弾性層、3次元架橋性樹脂層、無機化合物層の弾性バランスにより無機化合物層の微細な欠陥を抑止できる。更に無機化合物層上に低摩擦性の保護層を設けることで無機化合物層の耐久性向上及びクリーニング性の向上に大きな効果があることがわかった。
以下各構成要件について説明する。
〔3次元架橋性樹脂層(ハードコート(HC)層)の構成材料〕
本発明に係る3次元架橋性樹脂として活性光線硬化樹脂を用いることが好ましい。
(活性光線硬化樹脂)
本発明に適用可能な活性光線硬化樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよいが、特には紫外線硬化樹脂であることが好ましい。
本発明に係る3次元架橋性樹脂の例としては、1分子中に3個以上(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレートを挙げることができ、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。なお、前記の多官能(メタ)アクリレートは単独、または2種以上を混合して用いることができる。
また紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等も挙げることが出来る。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートと記載した場合、メタクリレートを包含するものとする)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151110号等を参照)。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号を参照)。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることができる(例えば、特開平1−105738号)。
具体的には、
(1)分子中に含有する(メタ)アクリロイル基の数が少ない、すなわち、硬化収縮の小さい樹脂を用いる。具体的には、イソブチル(メタ)アクリレートやヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレートや、1、6−ヘキサンジオール−ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール−ジ(メタ)アクリレートなどの二官能(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。
(2)1分子中に3個以上(メタ)アクリロイル基を含有し、かつ硬化後の収縮率が10%未満であるウレタン(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは工業的に入手可能であり、例えば、日本合成化学工業社製UV−7600B、UV−7640B、大日本インキ化学工業社製ユニディック17−806、ユニディック17−813、V−4030、V−4000BA、ダイセルUCB社製EB−1290Kなどが挙げられる。
(3)開環重合性環状エーテル化合物しては、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、オキサゾリン誘導体などの環状イミノエーテル類などが挙げられ、特にエポキシ誘導体、オキセタン誘導体、オキサゾリン誘導体が好ましい。
これらの開環重合性環状エーテル化合物は、上記のような環状構造を2個以上好ましくは3個以上同一分子内に有する化合物が好ましい。例えば3官能グリシジルエーテルとしてはトリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートなど、4官能以上のグリシジルエーテルとしてはソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルなど、3官能以上のエポキシ類としてはエポリードGT−301、エポリードGT−401、EHPE(以上、ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテルなど、3官能以上のオキセタン類としてはOX−SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。
(4)単官能のモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの極性基含有のアクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、スチレン、ビニルアセテート、無水マレイン酸などの既存のモノマーが挙げられる。
(5)同一分子内に1個もしくは2個の開環重合性基を有する化合物も必要に応じて併用することができ、好ましい化合物としては単官能または2官能のグリシジルエーテル類、単官能または2官能の脂環式エポキシ類、単官能または2官能のオキセタン類が挙げられ、種々の市販もしくは公知の化合物を使用することができる。
(光重合開始剤)
本発明に係る3次元架橋性樹脂層には、上記光重合性樹脂を光照射により硬化するため、重合開始剤、光酸発生剤等を用いる。
硬化樹脂がラジカル重合型硬化樹脂である場合には、光ラジカル重合開始剤を用い、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、およびチオキサントンなどが含まれる。光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントンなどが含まれる。
また、硬化樹脂がカチオン重合型硬化樹脂である場合には、カチオンを発生させる光酸発生剤として、トリアリールスルホニウム塩やジアリールヨードニウム塩やスルホン酸のニトロベンジルエステルなど化合物が挙げられ、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」ぶんしん出版社刊(1997)などに記載されている化合物など種々の公知の光酸発生剤が使用できる。この中で特に好ましくはジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのスルホニウム塩もしくはジフェニルヨードニウム塩であり、対イオンとしてはPF6 −、SbF6 −、AsF6 −、B(C6F5)4 −などが挙げられる。
(基材上への3次元架橋性樹脂層付与方法)
本発明において、3次元架橋性樹脂層を樹脂基材上に形成する方法としては、薄膜を形成する公知の方法を適用することができるが、特に、湿式塗布法により形成することが好ましい。
湿式塗布法とは、硬化樹脂、光重合開始剤等を溶媒、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒に溶解して、3次元架橋性樹脂層塗布液を調製し、この塗布液を用いて、ウェット状態の薄膜を基材上に形成する方法である。
この様な湿式塗布法に用いられる塗布方式としては、例えば、スピンコート塗布、ディップ塗布、エクストルージョン塗布、ロールコート塗布スプレー塗布、グラビア塗布、ワイヤーバー塗布、エアナイフ塗布、スライドポッパー塗布、カーテン塗布等の公知の溶液を用いた塗布方法(塗布装置)を適用することができる。
上記の塗布方式により基材上に形成した3次元架橋性樹脂層は、膜を硬化する目的で、活性光線が照射される。
3次元架橋性樹脂層を硬化するのに使用する活性エネルギー線としては、放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線などが挙げられるが、紫外線が好ましく、紫外線によりラジカルもしくはカチオンを発生させる上記重合開始剤を添加し、紫外線により硬化させる方法が特に好ましい。
3次元架橋性樹脂層を光硬化反応により硬化して硬化皮膜層を形成するための紫外線を発生する光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を挙げることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用出来る。
硬化樹脂を含む塗布液は塗布、乾燥された後、紫外線光源による紫外線照射により硬化するが、照射時間は0.5秒〜5分がよく、硬化樹脂の硬化効率、作業効率とから3秒〜2分がより好ましい。
無端ベルト状の基体の上に形成された弾性体層の上に3次元硬化樹脂層を形成する方法としては、例えば樹脂層用の塗布液が収容されている槽中に、円筒の芯材に弾性層までが形成された環状の無端ベルト状の樹脂基体をセットし、垂直に立てた状態で入れて浸漬させる。この時、浸漬を数回繰り返して所定の厚さの塗膜を形成させた後、塗布液中から引上げる。次に、乾燥し溶剤を除去した後、加熱処理(例えば60℃×60分間〜150℃×60分間)及び硬化処理を行い、3次元架橋性樹脂層を作製する。
3次元架橋性樹脂層の膜厚は、1μm〜100μmが好ましく、更に2μm〜30μmが好ましい。
(応力調整手段)
本発明では3次元架橋性樹脂層の形成中または形成後に表面に応力調整手段を設けることを特徴とする。これについて説明する。
(1)無機微粒子含有層を設ける方法
応力調整手段として3次元架橋性樹脂層の表面近傍に無機微粒子含有層を設けることができる。
表面近傍とは全3次元架橋性樹脂層の表面から厚みで30%以内の層が無機微粒子含有層であることをいう。
具体的には無機微粒子を含有する3次元架橋性樹脂を下層である3次元架橋性樹脂層の形成後に重層または同時に重層することで得られる。
本発明に係る3次元架橋性樹脂層に適用できる無機微粒子としては、例えば、Si、Ti、Mg、Ca、Zr、Sn、Sb、As、Zn、Nb、In、Alから選択される金属の酸化物微粒子が好ましく、具体的には、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、本発明においては、無機粒子として、酸化珪素を用いることが好ましい。
本発明に好ましく適用することができる酸化珪素微粒子は、富士シリシア化学(株)製のサイリシア、日本シリカ(株)製のNipsil E、日本アエロジル(株)製のアエロジルシリーズ、日産化学工業(株)製のコロイダルシリカ、オルガノシリカゾル等を適用することができる。
本発明に係る3次元架橋性樹脂層に適用できる無機微粒子の平均粒子径としては、5nm以上、1.0μm以下であることが好ましく、更に好ましくは5nm以上、500nm以下である。無機微粒子の平均粒子径は、無機微粒子を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の一次粒子の粒径を求め、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
本発明に係る3次元架橋性樹脂層において、無機微粒子含有層における無機微粒子の含有量は、3次元架橋性樹脂(紫外線硬化樹脂)に対して0.1〜50質量%とすることが好ましく、更には10〜30質量%が予路好ましい。微粒子含有3次元架橋性樹脂層は下層の3次元架橋性樹脂層の膜厚の1〜30%以下、より好ましくは5〜10%で設けることが好ましい。
また微粒子含有層は多層構造としても良く、微粒子含有率の異なる層を複数層設けることが好ましい。また微粒子含有率を連続的に変化させても良い。微粒子含有率は表層ほど高くなることが好ましい。
(2)酸化チタン層を設ける方法
本発明の別の形態として、酸化チタン系薄膜層を応力調整手段とすることができる。
酸化チタン層は気相法、液相法いずれの方法でも形成することができる。気相法の場合、特に好ましくはプラズマCVD法が好ましい。
チタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。
また塗布により形成する場合は金属成分がTiであるアルコキシドを使用して公知のゾルゲル法により形成しても良い。チタニウムアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシチタニウムTi(O−CH3)4、テトラエトキシチタニウムTi(O−C2H5)4、テトライソプロポキシチタニウムTi(O−iso−C3H7)4、テトラnブトキシチタニウムTi(O−C4H9)4等を適宜使用できる。
ここで酸化チタン層には原料由来の有機成分が残っていても構わない。
(3)シランカップリング剤含有層を設ける方法
本発明の別の実施態様として、応力調整手段として3次元架橋性樹脂層の表面近傍にシランカップリング剤含有層を設けることができる。
ここでも表面近傍とは全3次元架橋性樹脂層の表面から厚みで30%以内の層がシランカップリング剤含有層であることをいう。
具体的にはシランカップリング剤を含有する3次元架橋性樹脂を下層である3次元架橋性樹脂層形成後に重層または同時に重層することで得られる。
シランカップリング剤としては特に限定はなく反応基として、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基などを有するシランカップリング剤を適宜選定することができるが、本発明においては特にアミノ系シランカップリング剤が好ましい。
アミノ系シランカップリング剤の具体例としては、
N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩などが挙げられる。
また、本発明に係るアミノ系シランカップリング剤はエポキシシランカップリング剤と混合して使用することができる。エポキシシランカップリング剤の具体例としてはβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
本発明において、シランカップリング剤含有層における3次元架橋性樹脂に対するシランカップリング剤の添加量は、層総量の0.1〜10質量%とされる。これは、シランカップリング剤添加量が0.1質量%未満では接着力に乏しいし、10質量%を越えると、均一に塗膜が形成しにくくなるためである。
シランカップリング剤含有3次元架橋性樹脂層は下層の3次元架橋性樹脂層の膜厚の1〜30%以下、より好ましくは5〜10%で設けることが好ましい。
またシランカップリング剤含有層は多層構造としても良く、微粒子含有率の異なる層を複数層設けることが好ましい。微粒子含有率は表層ほど高くなることが好ましい。
(4)3次元架橋性樹脂層の硬化前に無機化合物層のコーティングを行う方法
本発明の別の実施態様として、応力調整手段として3次元架橋性樹脂層形成後、硬化処理前または硬化処理途中の段階で無機化合物含有層をコーティングし、その後2次的な硬化処理を行うことにより応力調整手段とすることができる。
更に好ましくは3次元架橋性樹脂層形成後(硬化後)に応力調整用として3次元架橋性樹脂層を積層し、硬化前に後述する表層(無機化合物層)の一部を形成することができる。界面において硬化処理時に相互作用が起こるため、3次元架橋性樹脂層と無機化合物層との接着性が強固となり、上下層間の応力緩和作用をもたらす。
具体的な態様としては、3次元架橋性樹脂層塗布液を塗布・乾燥後、硬化前に、例えば無機化合物層を、大気圧プラズマ法、スパッタ法等によって形成する。これにより3次元架橋性樹脂塗布層も一部硬化するが、界面における両層の相互作用が同時に起こり、界面近傍においての相互の混合が起こると考えられ、3次元架橋性樹脂層富む基化合物層との接着性が向上する。
無機化合物層の形成は後述する無機化合物層と同様に作製すればよく、スパッタ法、またプラズマCVD法等でよいが、これに限らず、例えば、テトラアルコキシシラン等の金属化合物を用いたゾルゲル法によって形成しても良い。その後、光照射により架橋処理を行って、3次元架橋性樹脂層を形成する。
(無機化合物層)
無機化合物層はIn、Sn、Cd、Zn、Al、Sb、Ge、W、Mo、Si、Zr、Ce、Mg、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物から形成されていることが好ましく、特にAl、Si、Tiが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化チタン、酸化窒化チタン、窒化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。更に酸化珪素または炭素を含有する酸化珪素が最も好ましい。
無機化合物層の厚さは、耐久性、表面強度、樹脂層との密着性、屈曲耐性、成膜時間等を考慮し、50nm〜1000nmが好ましい。より好ましくは200nm〜500nmである。
無機化合物層の膜厚は、「MXP21」(マックサイエンス社製)を用いて測定して得られた値である。具体的な膜厚の測定は、以下の方法で行うことができる。X線源のターゲットには銅を用い、42kV、500mAで作動させる。インシデントモノクロメータには多層膜パラボラミラーを用いる。入射スリットは0.05mm×5mm、受光スリットは0.03mm×20mmを用いる。2θ/θスキャン方式で0から5°をステップ幅0.005°、1ステップ10秒のFT法にて測定を行う。得られた反射率曲線に対し、マックサイエンス社製Reflectivity Analysis Program Ver.1を用いてカーブフィッティングを行い、実測値とフィッティングカーブの残差平方和が最小になるように各パラメータを求める。各パラメータから積層膜の膜厚を求める。
無機化合物層の形成方法は特に限定はなく、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法(物理蒸着法)、CVD法(化学蒸着法)、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法等が挙げられる。これらの形成方法の中で樹脂層との密着性を考慮し大気圧プラズマCVD法が特に好ましい。
(1)大気圧プラズマCVD法による無機化合物層の形成
ベルト状の本発明の中間転写体に係る無機化合物層を大気圧プラズマCVD法により形成する装置について次に説明する。本発明でいう大気圧もしくはその近傍の圧力というのは、20kPa〜200kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには90kPa〜110kPa程度であり、特に93kPa〜104kPaが好ましい。
図4は、ベルト状の中間転写体である中間転写ベルトの無機化合物層を大気圧プラズマCVD法により形成する製造装置の模式図である。
図中、9は製造装置を示す。製造装置9は大気圧プラズマCVD装置9aと材料供給装置9bとを有している。大気圧プラズマCVD装置9aは、ロール電極9a1と、ロール電極9a1の外周に沿って配列された少なくとも1式の固定電極9a2と、混合ガス供給装置9a3と、放電容器9a4と、高周波電源9a5と、排気管9a6とを有している。9a7は固定電極9a2とロール電極9a1との対向領域で、且つ放電が行われる放電空間を示す。図示しないが、安定な放電を行うために固定電極9a2、ロール電極9a1のうち少なくとも一方の放電領域に対する表面には誘電体を配置することが必要であり、両方に配置することがより好ましい。誘電体は酸化アルミニウムや、酸化チタンなどのセラミックを適宜選定することができる。尚、固定電極9a2のロール電極9a1と対向する面はロール電極9a1との距離を一定にするためロール電極9a1の表面の曲率と同じにすることが好ましい。
混合ガス供給装置9a3からは、少なくとも原料ガスと放電ガスとの混合ガスGを生成して放電容器9a4に混合ガスGが供給される。放電容器9a4により放電空間9a8等に空気の流入することが軽減されている。
高周波電源9a5は固定電極9a2に接続され、排気管9a7からは使用済みの排ガスG′が排気される。
混合ガス供給装置9a3からは無機化合物層の膜を形成する原料ガスと、窒素ガス或いはアルゴンガス等の希ガスを混合した混合ガスが放電容器9a4に供給される。又、酸化還元反応による反応促進のための酸素ガス又は水素ガスを混合することがより好ましい。
高周波電源に電圧を印加することにより、固定電極9a2とロール電極9a1との電極間に混合ガスGがプラズマ化(励起)され、混合ガスGに含まれる原料ガスに応じた膜(無機化合物層70d(図3参照))が材料Fの樹脂層の上に堆積され、図3に示すベルト状の中間転写体である中間転写ベルト70が製造される。この様にして形成される無機化合物層は、炭素含有率が、最下層から最上層にかけて順次減少した複数層を形成することも可能である。
利用可能な高周波電源9a5としては特に限定はなく、例えばパール工業製CF−5000−13M等を使用することができる。
高周波電源9a5に供給する電力は、固定電極9a2に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、薄膜を形成する。固定電極9a2に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm2、より好ましくは20W/cm2である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2である。尚、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
尚、複数の固定電極9a2の内、ロール電極9a1の回転方向下流側に位置する複数の固定電極9a2と混合ガス供給装置9a3で無機化合物層を積み重ねるように堆積し、無機化合物層の厚さを調整するようにしてもよい。
又、図示しないが、混合ガス供給装置9a3からの混合ガスを直接放電空間9a8に供給するようにし、ロール電極9a1の回転方向最下流側に位置する固定電極9a2と混合ガス供給装置9a3で無機化合物層を堆積し、より上流に位置する他の固定電極9a2と混合ガス供給装置9a3で、例えば無機化合物層と樹脂層との接着性を向上させる接着層等、他の層を形成してもよい。
又、無機化合物層70d(図3参照)と樹脂層70c(図3参照)との接着性を向上させるために、無機化合物層70d(図2参照)を形成する固定電極9a2と混合ガス供給装置9a3の上流に、アルゴンや酸素などのガスを供給するガス供給装置と固定電極を設けてプラズマ処理を行い、樹脂層70c(図3参照)の表面を活性化させるようにしてもよい。
材料供給装置9bは、従動ローラ9b1と、従動ローラ9b1を牽引(図中の矢印方向)する張力付与手段9b2とを有している。無端のベルト状の材料Fはロール電極9a1と従動ローラ9b1とで保持され、張力付与手段9b2により所定の張力が掛けられ、ロール電極9a1の回動(図中の矢印方向)に伴い従動ローラ9b1を介して回転するように張架された状態になっている。張力付与手段9b2は材料Fの掛け替え時等は張力の付与を解除し、材料Fの掛け替え等を容易にしている。本図に示す材料Fは、図3に示す中間転写ベルト70の応力調整手段迄が形成(基体70a/弾性層70b/樹脂層70c/応力調整手段70e)された状態の材料を示す。
図4に示す大気圧プラズマCVD法により形成する製造装置で使用する放電ガスとは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等及びそれらの混合物などが挙げられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
又、無機層を形成するための原料ガスとしては、常温で気体又は液体の有機金属化合物、特にアルキル金属化合物や金属アルコキシド化合物、有機金属錯体化合物が用いられる。これら原料における相状態は常温常圧において必ずしも気相である必要はなく、混合ガス供給装置で加熱或いは減圧等により溶融、蒸発、昇華等を経て気化し得るものであれば、液相でも固相でも使用可能である。
原料ガスとしては、放電空間でプラズマ状態となり、薄膜を形成する成分を含有するものであり、有機金属化合物、有機化合物、無機化合物等である。
例えば、ケイ素化合物として、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51などが挙げられるがこれらに限定されない。
チタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどが挙げられるがこれらに限定されない。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムエトキシド、アルミニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、アルミニウムイソプロポキシド、4−ペンタンジオネート、ジメチルアルミニウムクロライドなどが挙げられるがこれらに限定されない。
又、これらの原料は、単独で用いてもよいが、2種以上の成分を混合して使用するようにしてもよい。
本発明においては、これらの大気圧プラズマ法により形成される酸化珪素を無機化合物層として用いることが好ましい。
無機化合物層は少なくとも2層で形成してもよい。2層の場合、上層の厚さは、10nm〜300nmであることが好ましい。下層の厚さは、10nm〜500nmであることが好ましい。この様にすることで、更なる耐久効果が得られる。
無機化合物層が2層から構成されている場合、下層の炭素含有率(炭素原子数濃度)は0.5原子数濃度%〜10原子数濃度%、最上層の炭素含有率(炭素原子数濃度)は0.1原子数濃度%以下であることが好ましい。
本発明でいう炭素含有率を示す原子数濃度とは、下記のXPS法によって算出されるもので、以下に定義される。
原子数濃度%(atomic concentration)=炭素原子の個数/全原子の個数×100
XPS表面分析装置は、本発明では、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。具体的には、X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5eV〜1.7eVとなるように設定した。
測定としては、先ず、結合エネルギー0eV〜1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。
得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピュータの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM(Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、各分析ターゲットの元素(炭素、酸素、ケイ素、チタン等)の含有率の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。
定量処理をおこなう前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションをおこない、5ポイントのスムージング処理をおこなった。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。このShirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
これら大気圧プラズマCVD法により形成する酸化珪素は、条件を選択することで、原料由来の炭素を含有する酸化珪素膜(炭素含有率(炭素原子数濃度)は0.5原子数濃度%〜10原子数濃度%)、また、炭素含有率(炭素原子数濃度)は0.1原子数濃度%以下の酸化珪素膜を形成することができる。
無機化合物層としては、酸化珪素と炭素含有酸化珪素層との2層膜のみでなくこれを複数層交互に積層した無機化合物層を用いても良い。
炭素含有酸化珪素と酸化珪素の積層からなるものはクラックなどが発生しにくく、耐久性に優れる。
(2)ポリシラザン膜からの無機化合物層の形成
本発明に係る無機化合物層は、加水分解性珪素化合物としてポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布することによって形成することもできる。好ましくはポリシラザンを溶解した溶液を塗布した中間転写体を、大気中もしくは、酸化雰囲気中で処理することにより得ることができる。本発明では好ましくは(SiNaHb)n(a=1〜3、b=0〜1)の構造をもつペルヒドロポリシラザンが好ましい。該ポリシラザンは、ベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル、THF、塩化メチレン、四塩化炭素等の溶媒に溶解でき、該ポリシラザンを溶解した後に塗布し、加熱することにより珪素酸化物層を得ることができる。この際、アミンや遷移金属等の触媒を添加することにより低温の処理をおこなうことができる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
ポリシラザンの分子量(Mn)は100〜数万の範囲で使用することができるが、塗布用には分子量が5000以下のものが好ましい。
ポリシラザンを含む溶液から形成される無機化合物層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましく、より好ましくは、0.2〜1μmである。膜厚が、0.1μmよりもあまり薄いと、均一な珪素酸化物層を得ることができず、また、2μmよりもあまり厚い膜は、膜の内部応力のために膜に亀裂が入るために好ましくない。
塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法等が挙げられる。
(3)ゾルゲル法による形成
本発明の無機化合物層はゾルゲル法で形成しても良い。
ゾルゲル法は、金属の水酸化物の水和錯体(ゾル)を、酸触媒により加水分解及び/または加水分解及び重縮合させることにより得られるものである。まずチタン、ジルコニウム、鉛、亜鉛などの金属のメトキシド、エトキシド、プロポキシド、もしくはブトキシドなどのアルコキシドまたはアセテート化合物を酸などで加水分解して、ゾルを調製する。
次いで調製したゾルを塗布する。ゾルを塗布した後、これを一定温度下にて一定時間乾燥させ、ゾルの溶媒を蒸発させる。乾燥温度は100℃以上、200℃以下であることが好ましく、乾燥時間は5分以上、120分以下であることが好ましい。
以下、ゾルゲル反応によって得られる金属酸化物について説明する。
ゾルゲル反応では、アルコキシシラン及び/またはアルコキシシラン以外の金属アルコキシドを使用する。アルコキシシラン以外の金属アルコキシドは、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシドなどを使用することが好ましい。これらは組み合わせて使用することもでき、好ましい組合せとしては、例えば、アルコキシシラン単独の場合、アルコキシシランとアルコキシジルコニウムの場合、及びそれらにアルミニウムアルコキシド及び/またはチタンアルコキシドを配合した場合等が挙げられる。
ゾルゲル反応で用いられる酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、及び酢酸、酒石酸等の有機酸であることが好ましい。酸触媒の使用量は、金属アルコキシド(アルコキシシラン及び他の金属アルコキシドを含有する場合には、アルコキシシラン+他の金属アルコキシド)1モル当たり、0.001〜0.005モルであり、好ましくは約0.01モルである。
金属化合物の金属アルコキシドとしては、アルコキシシラン及び/またはアルコキシシラン以外の金属アルコキシドを好ましく使用することができる。アルコキシシラン以外の金属アルコキシドとしては、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等が好ましい。
また、ゾルゲル反応時に併用するポリマーとしては、水素結合形成基を有していることが好ましい。
水素結合形成基を有する樹脂の例としては、ヒドロキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フェノール樹脂、メチロールメラミン等とその誘導体);カルボキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリ(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の重合性不飽和酸の単位を含む単独または共重合体と、これらのポリマーのエステル化物(酢酸ビニル等のビニルエステル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル等の単位を含む単独または共重合体)等);エーテル結合を有するポリマー(ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、硅素樹脂等);アミド結合を有するポリマー(>N(COR)−結合(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示す)を有するポリオキサゾリンやポリアルキレンイミンのN−アシル化物);>NC(O)−結合を有するポリビニルピロリドンとその誘導体;ウレタン結合を有するポリウレタン;尿素結合を有するポリマー等を挙げることができる。また、シリル基含有ポリマーを用いてもよい。シリル基含有ポリマーは、主鎖重合体からなり、末端あるいは側鎖に加水分解性基及び/または水酸基と結合した硅素原子を有するシリル基を重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上含有するものである。シリル基含有ポリマーとして特に好ましいのは主鎖がビニルポリマーからなるシリル基含有ビニルポリマーである。
《保護層》
本発明の更なる態様として、無機化合物層上に保護層(低摩擦層)を有することができる。保護層は、アルキルシランまたはフッ素含有シラン化合物を含有することが好ましい。
先ず、保護層に用いられるアルキルシラン化合物について説明する。
(アルキルシラン化合物)
保護層に防汚性を付与する為には、特に膜の最表面にアルキル基を存在させることが好ましく、層形成(膜形成ともいう)に用いる原材料にアルキル基を有した珪素化合物(アルキルシラン化合物)を用いることが好ましい。またアルキル基については、低価であること、膜の硬度を保ち得ることが重要であり、この意味で好ましくはエチル基またはメチル基、さらにはメチル基であることが好ましい。また、上記の官能基が付与されていれば、化合物中に珪素原子が複数含まれていてもよい。
また、より好ましくは、加水分解性基とアルキル基を共に有する有機珪素化合物を用いることである。加水分解性基は特に限定されないが、好ましくはアルコキシ基が挙げられるが、エトキシ基を有することが、反応性や原料の物性調整の観点から特に好ましい。
この有機珪素化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン、トリアシルオキシシラン、トリフェノキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシレン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン、ジフェノキシシラン、ジアシルオキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシロキサン類等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、上記の化合物は、単独で使用しても異なる2種以上を同時に使用することもできる。また、上記の各化合物以外の有機珪素化合物を併用することもできる。
上記化合物の中でも、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシランなど好ましく、更には珪素に対してアルキル基を2つ有する化合物が好ましく、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が特に好ましい例として挙げられる。
(フッ素含有シラン化合物)
フッ素含有シラン化合物を含有する保護層に用いられるものとしては、フッ素原子を含有する有機基を有する有機珪素化合物がこのましい。
フッ素原子を含有する有機基を有する有機珪素化合物において、フッ素原子を含有する有機基としては、フッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基等を有する有機基が挙げられるが、これらのフッ素原子を含有する有機基は、例えば、シロキサン等複数の珪素原子を有する化合物が、これらの有機基を有する場合、少なくとも1つの珪素原子がフッ素原子を含有する有機基を有していれば良く、またその位置も問わない。
上記のフッ素原子を含有する有機基を有する有機珪素化合物を用いた保護層の形成方法によると、フッ素原子を含有する有機基を有する有機珪素化合物が、保護層下の無機化合物層との結合を形成し易く、本発明の優れた効果を奏することができると推定している。
本発明において用いられるフッ素原子を含有する有機基を有する有機珪素化合物としては、特に制限はないが、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
式中、MはSiを表す。また、R1〜R6は各々水素原子または一価の基を表し、R1〜R6で表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を含有する有機基であり、例えば、フッ素原子を含有するアルキル基、アルケニル基またはアリール基を有する有機基が好ましく、フッ素原子を含有するアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル基等の基が、フッ素原子を含有するアルケニル基としては、例えば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル基等の基が、また、フッ素原子を含有するアリール基としては、例えば、ペンタフルオロフェニル基等の基が挙げられる。また、これらフッ素原子を含有するアルキル基、アルケニル基、またアリール基から形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等なども用いることができる。
また、フッ素原子は、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基等においては、骨格中の炭素原子のどの位置に任意の数だけ結合していてもよいが、少なくとも1個以上結合していることが好ましい。また、アルキル基、アルケニル基骨格中の炭素原子は、例えば、酸素、窒素、硫黄等他の原子、また、酸素、窒素、硫黄等を含む2価の基、例えば、カルボニル基、チオカルボニル基等の基で置換されていてもよい。
更に好ましくは、本発明の保護層は、少なくとも反応性シリル基を有するフルオロエーテル系高分子ケイ素化合物を含有することが好ましい。
以下、本発明に係る保護層を形成する反応性シリル基を有するフルオロエーテル系高分子ケイ素化合物(以下、単に含フッ素ポリマーともいう)について説明する。
本発明に係るフルオロエーテル高分子ケイ素化合物は、フルオロ炭化水素がエーテル結合されており、反応性シリル基を有することを特徴とする。含フッ素ポリマーの重量平均分子量は1500以上であることが好ましく、1500〜200000が好ましく、2000〜100000がより好ましい。また、分子内に好ましくは2〜50個の反応性シリル基を有する。重量平均分子量Mwは、例えば、標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜1000000迄の13サンプルによる校正曲線を使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子珪素化合物は、例えば、ヒドロキシ基を有するフロロエーテル系ポリマーにシラン変性剤を反応させて反応性シリル基を導入することによって得られる。ヒドロキシ基を有するフルオロエーテル系ポリマーは、フルオロオレフィンとヒドロキシアルキルビニルエーテルまたはアリルアルコール等のヒドロキシ基含有モノマーとをモノマー主成分として共重合させることによって得られるが、この場合、これらの成分に加えてアルキルビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、イソプロペニルエーテル等のその他のモノマー成分を配合したものを共重合させて得られたものであっても差支えない。
フルオロオレフィンとしては、特に限定されることなく、フッ素樹脂用モノマーとして通常用いられるものが使用されるが、パーフルオロオレフィンが好適であり、中でもクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロプロピルビニルエーテル及びこれらの混合物が特に好ましい。
前記反応性シリル基としては、アルコキシ基、クロル基、イソシアネート基、シラザン基、カルボキシル基、水酸基及びエポキシ基から選ばれる反応性シリル基が好ましい。中でもアルコキシ基が好ましい。
本発明に係るフッ素含有シラン化合物としては、下記一般式(2)で表される反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子珪素化合物が好ましく用いられる。
上記一般式(2)において、Rfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子または水素原子、Yは水素原子または低級アルキル基、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基、R1は加水分解可能な基、R2は水素原子または不活性な一価の有機基、a、b、c、dは0〜200の整数、eは0または1、fは0〜10の整数、mおよびnはそれぞれ0〜2の整数、及びpは1〜10の整数を表す。
本発明に好ましく用いられる前記一般式(2)で表される反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子珪素化合物としては、例えば、特許第2874715号公報等に記載の方法により製造することが可能であり、また下記のような化合物を市販品として入手することができる。
例えば、ダイキン工業株式会社製のオプツールAES−2(平均分子量約2000)、オプツールAES−4(平均分子量約4000)、オプツールAES−4E(平均分子量約4000)、オプツールAES−6(平均分子量約6000)等、東レ・ダウコーニング株式会社製のDOW CORNING 2603 COATING(平均分子量約約2000)、DOW CORNING 2604 COATING(平均分子量約4000)、DOW CORNING 2634 COATING(平均分子量約4000)、DOW CORNING 2606 COATING(平均分子量約6000)等を挙げることができる。
これらの反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子珪素化合物を用いて、無機化合物層上に保護層を形成する方法としては、これらの材料をそのまま或いは溶剤に溶解してディップ法、スプレー法やスピンコート法等の湿式法で塗布し、加熱、乾燥等を行った後、溶剤で処理することにより過剰のフルオロエーテル系高分子Si化合物を除去する方法である。
本発明に係る保護層の膜厚は、下記に示すX線反射率法により測定することができる。
具体的には、測定装置としては、マックサイエンス社製MXP21を用いて行い、X線源のターゲットには銅を用い、42kV、500mAで作動させる。インシデントモノクロメータには多層膜パラボラミラーを用いる。入射スリットは0.05mm×5mm、受光スリットは0.03mm×20mmを用い、2θ/θスキャン方式で0から5°をステップ幅0.005°、1ステップ10秒のFT法にて測定を行う。得られた反射率曲線に対し、マックサイエンス社製Reflectivity Analysis Program Ver.1を用いてカーブフィッティングを行い、実測値とフィッティングカーブの残差平方和が最小になるように各パラメータを求め、各パラメータから膜厚を求めることができる。
上記と同様の方法で、保護層の膜厚も測定することができる。本発明に係る保護層の膜厚としては、特に制限はないが、1.0nm以上、50nm以下であることが好ましい。
また、本発明に係る保護層においては、保護層の表面動摩擦係数μが、0.3以下であることが好ましい態様である。
動摩擦係数は、JIS−K−7125(1987)に準じて測定できる。
新東科学社製の往復摩耗試験機(HEIDON−14DR)を用いて、荷重100g/cm2、速度1cm/secの条件で、保護層表面を基準物質としてはポリエステル繊維を用いて、サンプル移動速度100mm/分、接触面積80mm×200mmの条件で水平引っ張り、ポリエステル繊維が移動中の平均荷重(F)を測定し、下記式より動摩擦係数(μ)を求める。
動摩擦係数=F(gf)/重りの重さ(gf)
(弾性層)
弾性層としては、特に限定されるものではなく、任意のゴム材料、熱可塑性エラストマーを用いることができる。例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム及びノルボルネンゴム等から選ぶことができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリウレタン系、スチレン−ブタジエントリブロック系、ポリオレフィン系などを用いることができる。
又、弾性層は基体に使用する樹脂材料と弾性材料とをブレンドした材料を用いて形成した層でもよい。
例えばシリコーンゴムの素材としては、ビニル基を含有したポリオルガノシロキサン組成物が用いられる。シリコーンゴムとしては、付加反応触媒により硬化可能な2液性の液状シリコーンゴムや過酸化物からなる加硫剤により加硫(硬化)可能な熱加硫型シリコーンゴムが用いられる。又、弾性体層には、シームレスベルトの使用目的、設計目的などに応じて、充填剤、増量充填剤、加硫剤、着色剤、導電性物質、耐熱剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。また、配合剤の添加量などにより合成樹脂の可塑度は変化するが、硬化前の剛性樹脂の可塑度としては、120以下のものが好適に用いられる。
弾性層は、弾性材料に導電性物質を分散させて、電気抵抗値(体積抵抗率)を105〜1011Ω・cmに調製することができる。
弾性層に添加する導電性物質としては、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ、炭化ケイ素等を使用することができる。カーボンブラックとしては、中性又は酸性カーボンブラックを使用することができる。導電性物質の使用量は、使用する導電性物質の種類によっても異なるが弾性層の体積抵抗値及び表面抵抗値が所定の範囲になるように添加すれば良く、通常、弾性材料100質量部に対して10〜20質量部、好ましくは10〜16質量部である。
弾性体層の形成方法
弾性体層は、公知の塗布方法、例えば特開2006−255615号公報に記載の浸漬塗布、特開平10−104855号公報に記載の円形量規制型塗布、特開2007−136423号公報に記載の環状塗布方法、或いは浸漬塗布と円形量規制型塗布を組み合わせて塗膜を設けて作製することが出来るが、これに限定されるものではない。
具体的には、無端ベルト状の樹脂基体の上に弾性体層を形成する方法としては、例えば弾性層用の塗布液が収容されている槽中に、円筒の芯材に環状の無端ベルト状の樹脂基体をセットし、垂直に立てた状態で入れて浸漬させる。この時、浸漬を数回繰り返して所定の厚さの塗膜を形成させた後、塗布液中から引上げる。次に、乾燥し溶剤を除去した後、加熱処理(例えば60〜150℃×60分間)を行い、弾性層を作製する。
金属円筒状の基体の上に弾性体層を形成する方法も無端ベルト状の樹脂基体の場合と同様に、ゴム、エラストマー、樹脂等を金属ロール上に溶融成形、注入成形、浸漬塗工あるいはスプレー塗工等により成形することによって設けることが可能である。
弾性層の厚さは、50μm〜500μmが好ましい。また100〜300mμが更に好ましい。
(中間転写体の基体)
本発明に用いられる基体としては、樹脂に導電剤を分散させてなるシームレスのベルトを用いることが好ましい。
〈樹脂基体〉
樹脂基体は、クリーニング部材であるクリーニングブレードから中間転写ベルトに加わる負荷で中間転写体が変形することを回避し、転写部への影響を低減させる剛性を有するものである。樹脂基体は、ナノインデンテーション法により測定したヤング率が5.0GPa〜15.0GPaの範囲内の材料を用いて形成することが好ましく、8.0GPa〜15.0GPaの範囲内の材料がより好ましい。
また、機械的強度、画質、製造コスト等を考慮し、基体の厚さは、50μm〜1000μmの範囲が好ましい。
この様な性能を発現する材料として、例えば、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテル、エーテルケトン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド及びポリフェニレンサルファイド等のいわゆるエンジニアリングプラスチック材料を用いることが出来、等の樹脂材料が挙げられ、これらの中ではポリイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドが好ましい。これらの樹脂材料のナノインデンテーション法により測定したヤング率は5.0GPaを超えるものであり、厚み50〜200μmで、樹脂基体としての機械特性を満足する。更に、前述の樹脂材料と下記の弾性材料とをブレンドした材料を使用することも可能である。前記弾性材料としては、例えば、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
この中でも、ポリフェニレンサルファイド或いはポリイミド樹脂を含有することが好ましい。ポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の加熱により形成される。又、ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物や、その誘導体とジアミンのほぼ等モル混合物を有機極性溶媒に溶解させ、溶液状態で反応させることにより得られる。
尚、本発明では、樹脂基体にポリイミド系樹脂を使用する場合、樹脂基体におけるポリイミド系樹脂の含有率が51%以上であることが好ましい。
本発明に係る樹脂基体は、樹脂材料に導電性物質を添加して、電気抵抗値(体積抵抗率)を105Ω・cm〜1011Ω・cmに調整したシームレスベルトやドラムが好ましい。
樹脂材料に添加する導電性物質としては、カーボンブラックを使用することが出来る。カーボンブラックとしては、中性又は酸性カーボンブラックを使用することが出来る。導電性物質の使用量は、使用する導電性物質の種類によっても異なるが中間転写体の体積抵抗値及び表面抵抗値が所定の範囲になるように添加すればよく、通常、樹脂材料100質量部に対して10質量部〜20質量部、好ましくは10質量部〜16質量部である。
本発明に用いられる基体は、従来公知の一般的な方法により作製することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイを使用したインフレーション法により筒状に成形した後、輪切りにすることで環状の無端ベルト状の基体を作製することが出来る。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(中間転写ベルトの作製)
(無端ベルト状基体1の準備)
厚さ100μmの導電性物質を含有するポリイミド(PI)からなるシームレスレスベルトを準備し無端ベルト状基体1とした。
(弾性層の作製)
準備した無端ベルト状基体1の外周に、クロロプレンゴムからなる厚さ150μmの弾性層をディッピング塗布法により設け弾性層を形成し無端ベルト状基体No.1−aとした。
〈中間転写ベルト1の作製〉
(樹脂表層の形成)
準備した無端ベルト状基体No.1−aに芯材をはめ込み、フッ素系コート剤(大日本インキ工業社製「TR304」をMEK/酢酸ブチル混合溶剤で希釈し、ディッピング塗工した。塗工後130℃で1時間加熱乾燥させ厚さ5μmの樹脂表層を形成し中間転写ベルト1とした。
〈中間転写ベルト2の作製〉
無端ベルト状基体No.1−aに下記のとおり無機化合物層を形成し、中間転写ベルト2とした。
(無機化合物層の形成)
準備した無端ベルト状基体No.1−aの上に、図4に示す大気圧プラズマCVDによる製造装置を使用し以下に示す条件で厚さ150nmの1層の無機化合物(酸化珪素)層を形成し中間転写ベルト2を作製した。尚、無機化合物(酸化ケイ素)層の膜厚は、「MXP21」(マックサイエンス社製)を用いて明細書本文中に記載の方法で測定して得られた値である。
無機化合物(酸化ケイ素)層の炭素含有率(炭素原子数濃度)は0.1原子数濃度%であった。
炭素含有率(炭素原子数濃度)は、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200RXPS表面分析装置を使用して測定した値を示す。
大気圧プラズマCVD条件
無機化合物層の形成材料としては、酸化ケイ素を用いた。この時のプラズマ放電処理装置の各電極を被覆する誘電体は対向する両電極共に、セラミック溶射加工によりアルミナを被覆したものを使用した。又誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。
各原料ガスは、加熱することで蒸気を生成し、予め原料が凝集しないように余熱を行った放電ガス及び反応ガスと混合・希釈した後、放電空間への供給を行った。
放電ガス:Arガス 98.6体積%
反応ガス:O2ガスを全ガスに対し1.0体積%
原料ガス:テトラエトキシシラン(TEOS)を全ガスに対し0.4体積%
高周波電源電力(パール工業製高周波電源(13.56MHz)):10W/cm2
〈中間転写ベルト3の作製〉
無端ベルト状基体No.1−aに下記のとおり3次元架橋性樹脂層、無機化合物層を形成し、中間転写ベルト3とした。
3次元架橋性樹脂層用塗布液の調製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
ジエトキシベンゾフェノン(UV光開始剤) 2質量部
メチルエチルケトン 50質量部
酢酸エチル 50質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
上記組成物を撹拌しながら溶解し3次元架橋性樹脂層用塗布液No.1とした。この塗布液No.1を乾燥膜厚が5μmとなるように押し出し塗布し、80℃にて5分間乾燥した。次に80W/cm高圧水銀灯を12cmの距離から4秒間照射して硬化させた。
引き続き、中間転写ベルト2の無機化合物層と同じ方法で3次元架橋性樹脂層上に無機化合物層を形成し、中間転写ベルト3とした。
〈中間転写ベルト4の作製〉
3次元架橋性樹脂層を形成するまでは、中間転写ベルト3と同様に行なった。
続いて
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
アエロジルR972V(平均粒径16nm 日本アエロジル(株)製) 4質量部
以上を高速攪拌機(TKホモミキサー、特殊機化工業(株)製)で攪拌し、その後衝突型分散機(マントンゴーリン、ゴーリン(株)製)で分散した後、下記の成分を添加し、塗布組成物No.2を調製した。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
ジエトキシベンゾフェノン(UV光開始剤) 4質量部
この塗布液No.2を乾燥膜厚が1μmとなるように押し出し塗布し、80℃にて5分間乾燥した。次に80W/cm高圧水銀灯を12cmの距離から2秒間照射して硬化させた。
引き続き、中間転写ベルト2の無機化合物層と同じ方法で3次元架橋性樹脂層上に無機化合物層を形成し、中間転写ベルト4とした。
〈中間転写ベルト5の作製〉
3次元架橋性樹脂層を形成するまでは、中間転写ベルト3と同様に行なった。
続いてこの層の上に、下記の応力調整層用組成物をバーコーターで塗布し、次いで80℃で5分乾燥した後、300mJ/cm2の照射強度で紫外線照射し応力調整手段(層)を設けた。応力調整手段(層)の乾燥膜厚は0.1μm、屈折率は1.85であった。
(応力調整層用組成物)
チタンテトラブトキシド 14.5g
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.25g
カチオン性硬化樹脂(KR566−39 旭電化工業社製) 0.25g
1−ブタノール 75ml
ジメチルホルムアミド 3ml
10質量%塩酸 3ml
(無機化合物層の形成)
上記応力調整層上に、下記の方法に従って、最表層(無機化合物層)としてポリシラザンコーティング層を形成し、中間転写ベルト5とした。
即ち、応力調整層上に、ポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、アクアミカ NAX−120−20)を、硬化後の膜厚が1.0μmとなるようにマイクログラビアコーターを用いて塗布した。塗布、乾燥した後、40℃の環境で7日間放置し、シロキサン結合の層として硬化させた。
〈中間転写ベルト6の作製〉
〈ポリマー層の形成〉
無端ベルト状基体No.1−a上に下記表1の組成の塗布液を塗布した。
塗布方法としては、硬化後の膜厚が5μmとなるようにマイクログラビアコーターを用いて塗布した。溶剤を蒸発乾燥後、高圧水銀灯を用いて0.4J/cm2の紫外線照射により硬化させ3次元架橋性樹脂層を形成した。
続いて応力調整層用塗布液として、JSR Z7535(JSR株式会社製)の光硬化樹脂のポリマー液に、シランカップリング剤として、KBM−903(信越シリコーン製)を0.5質量%を添加して、応力調整層塗布液を調製した。硬化後の膜厚が5μmとなるようにマイクログラビアコーターを用いて塗布した。溶剤を蒸発乾燥した後、高圧水銀灯を用いて0.4J/cm2の紫外線照射により硬化させポリマー層1(応力調整層)を形成した。
(無機化合物層の形成)
上記応力調整層上に、下記の方法に従って、最表層としてポリシラザンコーティング層を形成した。
ポリマー層1上に、中間転写ベルト5の作製時と同様の方法で無機化合物層を形成した。これを中間転写ベルト6とした。
〈中間転写ベルト7の作製〉
中間転写ベルト3の作製で用いた3次元架橋性樹脂層塗布液を、乾燥膜厚が5μmとなるように押し出し塗布し、80℃にて5分間乾燥した。続いて硬化処理前に下記塗布組成物を乾燥膜厚が1μmとなるように押し出し塗布し、更に80℃にて5分間乾燥した。
〈塗布組成物〉
合成シリカ微粒子(平均粒径16nm) 13部
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂 99部
(ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)
コロネートL 100部
(ポリイソシアネート化合物、日本ポリウレタン(株)製)
光重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製) 3部
を溶剤(メチルエチルケトン)にてホモジナイザーにより混合して揮発分60質量%の均質な分散液を調製した。
塗布組成物を塗布した後、90W/cm高圧水銀灯を12cmの距離から5秒間照射して硬化処理をおこない、応力調整手段(層)を形成した。
(無機化合物層の形成)
上記応力調整手段(層)上に、下記の方法に従って、最表層(無機化合物層)としてポリシラザンコーティング層を形成した。
上記応力調整手段(層)上に、最表層としてポリシラザンコーティング層を形成した。
ポリマー層1上に、中間転写ベルト5の作製時と同様の方法で無機化合物層を形成した。これを中間転写ベルト7とした。
〈中間転写ベルト8の作製〉
中間転写ベルト7において3次元架橋樹脂層塗布後に塗布した塗布組成物の代わりにポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、アクアミカ NAX−120−20) 100部とメチルエチルケトン 30部の混合溶液を、硬化後の膜厚が1.0μmとなるようにマイクログラビアコーターを用いて塗布した。その後90W/cm高圧水銀灯を12cmの距離から5秒間照射して硬化処理をおこない、応力調整手段とした。この後さらに中間転写ベルト7と同様にポリシラザンコーティング層を形成した。
〈中間転写ベルト9の作製〉
応力調整手段(層)の形成まで、中間転写ベルト4と同様に行った。次いで表層(無機化合物層)の形成について以下の様に行った。
(無機化合物層の形成)
応力調整層手段(層)の上に、図4に示す大気圧プラズマCVDによる製造装置を使用し、上層と下層とで炭素含有率(炭素原子数濃度)を変えた酸化ケイ素層を形成し中間転写ベルトを作製し試料とした。上層の膜厚は150nm、下層の膜厚は200nmとした。膜厚は実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
尚、無機化合物層を2層に分ける方法は下層を形成した後に、上層を積層することで形成した。又、炭素含有率(炭素原子数濃度)を変えた酸化ケイ素層は放電ガス、反応ガス、原料ガスの比を変えず、全ガスの供給速度を変えた他は中間転写ベルト4の無機化合物層の形成と同じ方法で形成した。
次いで保護層の形成(アルキルシラン保護層)を行った。
(メチルトリエトキシシラン加水分解物の調製)
メチルトリエトキシシラン250部にエタノール380部を加え、この溶液に4部の濃塩酸を235部の水で希釈した塩酸水溶液を、室温でゆっくり滴下した。滴下後、3時間室温で攪拌してメチルトリエトキシシラン加水分解物を調製した。
〈保護層組成物〉
メチルトリエトキシシラン加水分解物 180部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 5部
シクロヘキサノン 3200部
バーコーターで塗布し、80℃で30分間乾燥させ、中間転写ベルト9を作製した。
〈中間転写ベルト10の作製〉
応力調整手段(層)形成までは、中間転写ベルト6と同じに行った。
また表層(無機化合物層)の形成は、中間転写ベルト9と同じに行った。
次いで、中間転写ベルト9の保護層(アルキルシラン保護層)から以下の保護層に変更した。
(保護層の形成)
フルオロエーテル高分子Si化合物としてオプツールAES(ダイキン工業社製)の1gをノベックHFE7100(住友3M社製)100gで希釈して固形分濃度を0.2%に調整し保護層塗布液を作製した。次いで、表層にディッピング法により前記撥水層塗布液1を塗布し、乾燥させ、常温常湿環境下に1昼夜保管した後、アルコール洗浄により撥水層余剰分を取り除き、中間転写ベルト10を得た。
《評価》
〈画像形成装置〉
上記で作製した中間転写体の評価は、画像形成装置「bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)」に装着して行った。
尚、画像形成には体積基準におけるメディアン粒径(D50)が4.5μmのトナーと60μmのコートキャリアよりなる2成分現像剤を使用した。
プリント環境は、低温低湿(10℃、20%RH)と高温高湿(33℃、80%RH)で16万枚のプリントを行った。転写材は、A4版の上質紙(64g/m2)を用いた。
プリント原稿は、印字率が7%の文字画像(3ポイント文字と5ポイント文字がそれぞれ50%)、カラー人物顔画像(ハーフトーンを含むドット画像)、ベタ白画像、ベタ画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像(A4版)を用いた。
〈評価〉
(クラックの発生)
クラックの発生は、常温常湿(20℃、50%RH)環境で、中間転写体の裏側に径の異なる丸棒に中間転写体の樹脂基体側の裏面を沿わせ、中間転写体の表面層側の表面を顕微鏡で観察し、クラックの発生状況で評価した。尚、レベル1とレベル2を合格とする。
レベル1:棒の径15mmでクラック発生せず
レベル2:棒の径15mmでクラック発生、25mmでクラック発生せず
レベル3:棒の径25mmでクラック発生、45mmでクラック発生せず
レベル4:棒の径45mmでクラック発生
レベル5:平面でクラック発生。
(微小なクラックの発生)
上記画像形成装置でプリントを行った後、走査型電子顕微鏡(日立製 S−5000)を用いて中間転写ベルトの表面を観察し、直径が1〜50μ程度の甲羅状のクラックの有無を確認した。
○:微細クラックは見られない
△:微細クラックの発生領域あり
×:ほぼ全面に微細クラック有り
(クリーニング性)
クリーニング性の評価は、低温低湿(10℃、20%RH)環境でプリントを行い、クリーニングした後の中間転写体の表面を目視観察し、その表面に残存するトナーの程度と、プリントして得られたプリント画像にクリーニング不良に起因する画像汚れの発生程度で評価した。
評価基準
◎:16万枚まで、中間転写体上にクリーニング残トナーが認められず、プリント画像にもクリーニング不良に起因する画像汚れなし
○:16万枚で、中間転写体上にクリーニング残トナーが認められるが、プリント画像にクリーニング不良に起因する画像汚れなし
×:10万枚で、中間転写体上にクリーニング残トナーが認められ、プリント画像にもクリーニング不良に起因する画像汚れが有り実用上問題。
(トナーフィルミング)
トナーフィルミングの評価は、高温高湿(33℃、90%RH)の環境下で16万枚のプリントを行った後、中間転写体表面を目視観察しトナーフィルミングの状態と、16万枚プリント時のプリント画像に発生したかぶりと白すじで評価した。
評価基準
◎:トナーフィルミングによる中間転写体表面の光沢むらが全く認められず、プリント画像にトナーフィルミングによるかぶりや白すじは発生しなかった
○:トナーフィルミングによる中間転写体表面の光沢むらがかすかに認められたか、それに対応した場所にかぶりや白すじの発生が認められなかった
×:トナーフィルミングによる中間転写体表面の光沢むらが認められ、それに対応した場所にかぶりや白すじが発生した。
(耐久性)
耐久性の評価は、高温高湿(33℃、80%RH)で16万枚プリント終了時の画像濃度で評価した。
画像濃度は、べた黒画像部の濃度を反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を用いて12点測定して評価した。
評価基準
◎:画像濃度が、1.35以上で優れている
○:画像濃度が、1.20以上、1.35未満で実用上問題ないレベル
×:画像濃度が、1.20未満で実用上問題となるレベル。
本発明の応力調整手段を有するものはいずれの評価においても良好であることがわかる。