JP2011255889A - ハイブリッド駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速走行時の動力伝達効率が良好で、しかも小型化の容易なハイブリッド駆動装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1が出力する動力によって駆動されて発電機能を備えた第1電動機2と、その第1電動機2から供給される電力によって動作して出力部材に動力を付与する第2電動機3とが同一軸線上に配置され、第1電動機2と第2電動機3との間に内燃機関1の出力した動力を第1電動機2と出力部材5側とに分配する動力分配機構4が配置され、内燃機関1の出力した動力を変速して動力分配機構4に伝達する変速機20を備えているハイブリッド駆動装置において、変速機2は遊星歯車機構を含み、その少なくとも一部が動力分配機構4と共に各電動機2,3の間に配置されており、かつ、変速機2は低速側の変速比を設定する状態と高速側の変速比を設定する状態とに切り替える一つの切替機構21を備えている。
【選択図】図1

Description

この発明は、車両の走行のための動力源として複数種類の動力装置を備えているハイブリッド駆動装置に関し、特に内燃機関が出力した動力を変速して動力分配機構に伝達するとともに第1の電動機と出力要素とに分配し、その動力分配機構から出力部材に伝達される動力に、第2の電動機の動力を付加するように構成されたハイブリッド駆動装置に関するものである。
車両用のハイブリッド駆動装置は、内燃機関と電動機もしくは発電機(以下、これらを合わせて電動発電機と記す)とを組み合わせ、これらを動力源とした駆動装置であるが、従来、電動発電機を単に駆動力の発生装置とせずに、内燃機関の回転数もしくは運転点の制御に使用することも行われている。その場合、内燃機関の回転数の制御に伴って電力が発生するので、これを他の電動発電機に供給し、これをモータとして動作させることにより、駆動力を発生させるようにしている。
その一例が特許文献1に記載されている。その基本的な構成を簡単に説明すると、特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置は、エンジンが出力した動力をそのまま出力する直結段と増速して出力する高速段とに切り換えられる遊星歯車機構からなる変速機構、およびその変速機構から出力された動力を第1電動機と出力側の部材とに分配する遊星歯車機構を主体とする動力分配機構を備えている。その変速機構は、第1電動機よりもエンジン側に配置され、また動力分配機構は第1電動機を挟んで変速機構とは反対側に配置されている。また一方、その動力分配機構と出力軸との間に、モータとして機能する第2電動機が設けられている。そして、その第1電動機で発電した電力が第2電動機に供給されてその出力が出力軸に付加されるように構成されている。したがって、特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置では、高速走行時に変速機構を高速段に設定することにより、エンジンの回転数を相対的に低下させることができ、それに伴って高速走行時の動力損失を低減できる、とされている。
なお、主としてエンジンの回転数制御に使用される第1電動機と、主としていわゆるトルクアシストに使用される第2電動機と、その第2電動機の出力した動力を変速する変速機とを備えたハイブリッド駆動装置が、特許文献2あるいは3に記載されている。そして、これらの特許文献2,3に記載されたハイブリッド駆動装置は、動力分配機構と上記の変速機とを各電動機の間に配置した構成となっている。
特開2000−346187号公報 国際公開第2005/000618号パンフレット 国際公開第2005/000619号パンフレット
上述した特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置は、エンジンの回転中心軸線の延長線上に出力軸が延びている構造であり、したがってエンジンと共にを車両の前後方向に向けて搭載するように構成されている。しかしながら、第1電動機は必要トルクが大きいことにより外径の大きいものが使用されるが、この第1電動機とエンジンとの間に変速機構や変速比を設定するためのブレーキおよびクラッチが配置されているので、第1電動機が車室に、より接近して配置されることになる。これに対して、車室を形成しているフロアーに繋がるパネルは、車両の後方に向けて低くなっているので、車室側での設置スペースが狭くなっている。
このように従来の構造では、車両における許容スペースとハイブリッド駆動装置の外形とが適合しておらず、一部で相反する構造になっているので、車載性が必ずしも良好でなく、改善の余地があった。なお、特許文献2あるいは3に記載されている装置は、動力分配機構に対する入力を変速する機構を備えていない。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、動力分配機構に対する入力を変速でき、しかも車載性に優れたハイブリッド駆動装置を提供することを目的とするものである。
上記の目標を達成するために、請求項1の発明は、内燃機関が出力する動力によって駆動されて発電する機能を備えた第1電動機と、その第1電動機から供給される電力によって動作して出力部材に動力を付与する第2電動機とが同一軸線上に配置されるとともに、これら第1電動機と第2電動機との間に、前記内燃機関の出力した動力を前記第1電動機と前記出力部材側とに分配する動力分配機構が配置され、さらに前記内燃機関の出力した動力を変速して前記動力分配機構に伝達する変速機を備えているハイブリッド駆動装置において、前記変速機の少なくとも一部が、前記動力分配機構と共に、前記各電動機の間に配置されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記変速機は、遊星歯車機構を含み、前記各電動機の間に配置される前記変速機の一部は、前記遊星歯車機構であることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記遊星歯車機構は、前記第1電動機が連結された第1サンギヤと、前記出力部材が連結された第1リングギヤと、これら第1サンギヤと第1リングギヤとに噛み合っているピニオンギヤを保持している第1キャリヤとを回転要素として差動作用を行うシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、前記変速機は、固定された第2サンギヤと、該第2サンギヤと同心円上に配置された第2リングギヤと、前記第2サンギヤに噛み合っているピニオンギヤおよび該ピニオンギヤと前記第2リングギヤとに噛み合っている他のピニオンギヤを保持しかつ前記第1キャリヤに連結されている第2キャリヤとを回転要素として差動作用を行うダブルピニオン型遊星歯車機構を含み、かつ前記内燃機関を前記第2キャリヤと前記第2リングギヤとに選択的に連結する切替機構を更に含み、前記切替機構が前記各電動機の間に配置されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記変速機は、低速側の変速比を設定する状態と高速側の変速比を設定する状態とに切り替える一つの切替機構を備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記遊星歯車機構は、前記第1電動機が連結された第1サンギヤと、前記出力部材が連結された第1リングギヤと、これら第1サンギヤと第1リングギヤとに噛み合っているピニオンギヤを保持している第1キャリヤとを回転要素として差動作用を行うシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、前記変速機は、第3サンギヤと、該第3サンギヤと同心円上に配置されかつ前記内燃機関に連結された第3リングギヤと、前記第2サンギヤに噛み合っているピニオンギヤおよび該ピニオンギヤと前記第2リングギヤとに噛み合っている他のピニオンギヤを保持しかつ前記第1キャリヤに連結されている第3キャリヤとを回転要素として差動作用を行うダブルピニオン型遊星歯車機構を含み、前記切替機構は、前記内燃機関と前記第1電動機との間に配置され、かつ前記第3サンギヤを前記第3リングギヤと所定の固定部とに選択的に連結するドグクラッチ機構によって構成されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
この発明によれば、外径が大きい第1電動機が、内燃機関の出力した動力を変速する変速機の少なくとも一部や動力分配機構よりも内燃機関側に配置される。そのため、スペースに余裕のある箇所に外径の大きい部分を配置することになるので、車両に対する搭載性が向上する。また、変速機の変速比を変更する機構として一つの切替機構を設けた構成とすれば、構成部品が少なくなり、この点でも装置の全体としての構成を小型化して車両搭載性を向上させることができる。
この発明に係るハイブリッド駆動装置の一例を模式的に示すスケルトン図である。 低速時の動作状態を説明するための入力側変速機および動力分配機構についての共線図である。 高速走行時の動作状態を説明するための入力側変速機および動力分配機構についての共線図である。 この発明に係るハイブリッド駆動装置の他の例を模式的に示すスケルトン図である。 この直結段とOD段とを設定するための各クラッチの係合・解放の状態をまとめて示す図表である。
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。図1はこの発明の一具体例を示す図であって、ここに示す具体例では、原動機(エンジン:ENG)1と、発電機あるいは電動機として二つのモータ・ジェネレータ(MG1、MG2)2,3とが動力装置として設けられ、これら三者が同一軸線上に配列されている。その原動機1は、要は内燃機関であって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、あるいは天然ガスエンジンなどの燃料を燃焼して動力を出力する動力装置である。好ましくはスロットル開度などの負荷を電気的に制御でき、また所定の負荷に対して回転数を制御することにより燃費が最も良好な最適運転点に設定できる内燃機関である。以下の説明では、原動機1をエンジン1と記す。
このエンジン1が入力側変速機20に連結されている。なお、エンジン1と入力側変速機20との間に、発進用のクラッチやトルクコンバータ(ロックアップクラッチ付のトルクコンバータ)などの動力伝達機構を適宜に設けてもよいことは勿論である。この入力側変速機20は、エンジン1の出力した動力を変速するためのものであって、少なくとも高低の二段に変速できるように構成されている。より具体的には、遊星歯車機構を主体として構成されており、図1にはダブルピニオン型遊星歯車機構を主体にして構成した例を示してある。すなわち、その入力側変速機20は、外歯歯車であるサンギヤS20と、そのサンギヤS20に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤR20と、サンギヤS20に噛み合っているピニオンギヤおよびこのピニオンギヤとリングギヤR20とに噛み合っている他のピニオンギヤを自転自在かつ公転自在に保持しているキャリヤC20とを回転要素として差動作用を行うように構成されている。そして、この入力側変速機20は、第1モータ・ジェネレータ2を挟んでエンジン1とは反対側に配置されている。
この入力側変速機20における変速比を変更するため、すなわち変速を実行するための切替機構21が設けられている。この切替機構21は、入力側変速機20における所定の回転要素に対して連結される相手部材を変更して入力側変速機20における動力の伝達経路を切り替えることにより変速を実行するように構成されている。図1に示す例では、サンギヤS20をリングギヤR20と固定部とに切り替えて連結するように構成されている。
具体的には、切替機構21は、ドグクラッチ機構などの歯の噛み合いにより係合状態となってトルクを伝達するように構成されており、前記サンギヤS20に中空軸などの中間部材を介して一体化されているハブ22を備え、このハブ22にスリーブ23がスプライン嵌合している。なお、このハブ22およびスリーブ23は、第1モータ・ジェネレータ2よりエンジン1側に配置されている。そのハブ22を挟んだ両側に、可動ハブ24と固定ハブ25とが配置されている。この可動ハブ24はリングギヤR20に一体化されている。すなわち、可動ハブ24は、エンジン1とリングギヤR20とを連結している中間軸27に取り付けられている。また固定ハブ25はケーシングなどの固定部26に一体化されて固定されている。そして、これらの可動ハブ24と固定ハブ25との外周面にスプラインが形成されていて、前記スリーブ23が選択的に係合するように構成されている。
上記のスリーブ23の設定位置が、可動ハブ24と固定ハブ25とのいずれにも係合しない中立位置(ニュートラル位置)と、可動ハブ24に係合して前記サンギヤS20とキャリヤC20とを連結する直結位置と、これとは反対側で固定ハブ25に係合してサンギヤS20を固定する増速位置(OD位置)の三位置となるように構成されている。上記のスリーブ23をこれらの位置に移動させるための機構は、手動で操作するように構成することができるが、好ましくは油圧アクチュエータや電動アクチュエータなどの適宜のアクチュエータ(図示せず)によって動作させるように構成する。
上記の入力側変速機20におけるリングギヤR20には中間軸27を介してエンジン1が連結され、したがってリングギヤR20が入力要素になっている。また、キャリヤC20が出力要素となっており、入力側変速機20に入力された動力がキャリヤC20から出力されるようになっている。したがって、前記スリーブ23を可動ハブ24側に移動させてこれに係合させることにより、サンギヤS20とリングギヤR20とが連結されるので、入力側変速機20を構成している遊星歯車機構の全体が一体化される。そのため、このいわゆる直結状態では、エンジン1から入力されたトルクがそのままキャリヤC20から出力される。これに対して、スリーブ23を固定ハブ25側に移動させてこれに係合させると、サンギヤS20が固定される。この状態では出力要素であるキャリヤC20が入力要素であるリングギヤR20より高速回転し、いわゆるオーバードライブ状態となる。
上記の入力側変速機20と第1モータ・ジェネレータ2との間に動力分配機構4が配置されている。この動力分配機構4は、入力側変速機20から入力された動力を第1モータ・ジェネレータ2と出力側とに分配するための機構であって、三つの回転要素で差動作用をなす遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、動力分配機構4は、シングルピニオン型遊星歯車機構やダブルピニオン型遊星歯車機構を用いて構成することができ、図1に示す例では、キャリヤC4を入力要素、サンギヤS4を反力要素、リングギヤR4を出力要素としたシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成されている。すなわち、外歯歯車であるサンギヤS4の外周側に、内歯歯車であるリングギヤR4がサンギヤS4に対して同心円上に配置され、これらのサンギヤS4とリングギヤR4とに噛み合っているピニオンギヤがキャリヤC4によって自転自在および公転自在に保持されている。そして、そのキャリヤC4に入力側変速機20における出力要素であるキャリヤC20が連結されている。
第1モータ・ジェネレータ2はこの発明における第1電動機に相当し、前記動力分配機構4のサンギヤS4に連結されている。この第1モータ・ジェネレータ2は、一例として、ロータに永久磁石を備えた同期電動機によって構成され、発電機および電動機として機能するように構成されている。そして、そのロータがサンギヤS4に連結され、ステータがケーシング(図示せず)などに固定されている。したがって、この発明の第1電動機は、電動機であってよく、あるいは発電機であってもよく、さらには両方の機能を備えたものであってもよい。
さらに、リングギヤR4が、この発明の出力部材に相当する出力軸5に連結されている。この出力軸5は、エンジン1の回転中心軸線上に配置されており、エンジン1とこの出力軸5との間には、エンジン1側から、切替機構21、第1モータ・ジェネレータ2、動力分配機構4、入力側変速機20、第2モータ・ジェネレータ3の順に、同一軸線上に配列されている。すなわち、各電動機2,3の間に動力分配機構4と、入力側変速機20の一部をなす上記のダブルピニオン型遊星歯車機構が配置されている。
第2モータ・ジェネレータ3は、この発明における第2電動機に相当し、この第2モータ・ジェネレータ3は、主として、第1モータ・ジェネレータ2で発電した電力が供給されてモータとして機能することにより、いわゆるトルクアシストを行うためのものであり、要求される特性が前記第1モータ・ジェネレータ2とは異なるので、例えば第1モータ・ジェネレータ2よりも外径の小さい高回転数型のものが用いられている。また、第2モータ・ジェネレータ3は、前述した第1モータ・ジェネレータ2と同様にロータに永久磁石を備えた同期電動機によって構成されていて、発電機および電動機として機能するようになっており、そのロータが出力側変速機6の入力用の部材に連結され、かつステータがケーシング(図示せず)などに固定されている。したがって、この発明の第2電動機は、電動機であってよく、あるいは発電機であってもよく、さらには両方の機能を備えたものであってもよい。
上記の各モータ・ジェネレータ2,3は発電機および電動機として機能するようになっており、そのためにこれらのモータ・ジェネレータ2,3は図示しないインバータなどのコントローラを介してバッテリーなどの蓄電装置に接続されている。そして、一方のモータ・ジェネレータ2,3によって発電した電力を他方のモータ・ジェネレータ3,2に供給して該他方のモータ・ジェネレータ3,2をモータとして機能させることができるように構成されている。
出力側変速機6は、第2モータ・ジェネレータ3の出力した動力を減速もしくは増速して出力軸5に伝達するための機構であって、少なくとも高低の二つの変速比に切り替えることができるように構成されている。より好ましくは、少なくとも二つの変速比とトルクを伝達しないニュートラル状態とを設定できるように構成されている。したがって、出力側変速機6は、低速用ギヤ対および高速用ギヤ対からなる機構や、一組の遊星歯車機構とクラッチおよびブレーキからなる機構、二つ組の遊星歯車機構を組み合わせた複合遊星歯車機構とブレーキなどの係合装置とからなる機構などによって構成することができる。
上述した各変速機20,6での変速や、各モータ・ジェネレータ2,3による回生・力行の制御を電気的に行うように構成されており、そのための電子制御装置(ECU)12が設けられている。この電子制御装置12は、マイクロコンピュータを主体にして構成され、図示しないセンサによって検出されたデータや予め記憶しているデータを使用して演算を行い、その結果を制御指令信号として出力するように構成されている。
つぎに上述したハイブリッド駆動装置の作用について説明する。エンジン1の動力は、入力側変速機20のリングギヤR20に伝達される。発進時を含む低速状態では、前記スリーブ23は直結位置(図1の左側の位置)に移動させられて可動ハブ24に係合している。したがって、入力側変速機20は、そのサンギヤS20とリングギヤR20とが連結されるためにその全体が一体となって回転する。この状態を図2に共線図で示してあり、リングギヤR20およびキャリヤC20ならびにサンギヤS20の三者が同速度で回転するから、入力側変速機20の動作状態は基線と平行な直線で表される。
したがってエンジン1の動力は、入力側変速機20を介してそのまま動力分配機構4のキャリヤC4に伝達される。発進時や低車速状態では、キャリヤC4の回転数に対して、出力要素であるリングギヤR4の回転数が低回転数となっているので、図2に共線図で示すように、反力要素であるサンギヤS4およびこれに連結されている第1モータ・ジェネレータ2が、エンジン1およびキャリヤC4と同方向に、これらより高速で回転する。この状態で、第1モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させると、サンギヤS4には発電に伴う反力トルクが作用する。これは、図2の共線図では下向きの力である。
入力要素であるキャリヤC4にはエンジン1の出力トルクが作用しており、これは図2の共線図で上向きの力であるから、サンギヤS4に上記の反力トルクが作用することにより、出力要素であるリングギヤR4およびこれに連結されている出力軸5には、これを正回転方向(エンジン1の回転方向)に回転させるトルクが生じる。その場合、第1モータ・ジェネレータ2の回転数がエンジン1の回転数以上であれば、リングギヤR4および出力軸5の回転数がエンジン回転数以下となり、これは、アンダードライブ状態であって、エンジントルクが増幅されて出力軸5に伝達される。
また、第1モータ・ジェネレータ2で発電した電力は、第2モータ・ジェネレータ3に供給され、これが電動機として機能する。その第2モータ・ジェネレータ3の動力は、出力側変速機6を介して出力軸5に伝達され、動力分配機構4を経て伝達された動力と合わせて駆動力として図示しない駆動輪に伝達される。すなわち、機械的な動力伝達と電力変換を伴う動力伝達とが生じる。
車速が増大すると、エンジン1の運転点を最適燃費線上の運転点に維持するように、第1モータ・ジェネレータ2の回転数が低下する。このように車速の増大に伴って第1モータ・ジェネレータ2の回転数を低下させ、状況によっては負回転方向(エンジン1とは反対の回転方向)に力行させることになる。すなわち、第1モータ・ジェネレータ2をモータとして機能させることになる。
このような傾向は、車速が増大するほど顕著になる。これは、エンジン1の回転数の増大を抑制して、その運転点を最適燃費線上に維持するためである。そこで、この発明に係る上記のハイブリッド駆動装置では、高速巡航時に、前記入力側変速機20の変速比が上述した直結段より小さい高速段に設定される。すなわち、前記スリーブ23が増速位置(図1の右側の位置)に移動させられて、サンギヤS20が固定される。この状態を図3に共線図で示してあり、入力側変速機20ではサンギヤS20を固定した状態でリングギヤR20にエンジン1の動力が入力されるから、出力要素であるキャリヤC20はエンジン1およびこれが連結されているリングギヤR20より高速で回転する。そのキャリヤC20が動力分配機構4におけるキャリヤC4に連結されているので、入力側変速機20の変速比を上記のように小さくすることにより、あるいは入力側変速機20をオーバードライブ状態とすることにより、エンジン回転数を増大させることなく動力分配機構4の入力回転数を増大させることができる。
高速巡航時に入力側変速機20をオーバードライブ状態に設定した場合の動作状態を図3に共線図で示してあり、動力分配機構4における出力要素であるリングギヤR4の回転数が車速に応じて高くなっていても、入力要素であるキャリヤC4の回転数が相対的に高回転数になっているので、第1モータ・ジェネレータ2およびこれが連結されているサンギヤS4の回転数は、ゼロに近い低回転数になる。したがって、第1モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させ、あるいはモータとして機能させるとしても、その電気的な容量すなわち発電量や出力が少なくなる。すなわち、電気的な負荷が少なくなるので、電力損失などの動力損失を少なくして、全体としての動力伝達効率を向上させることができる。
特に、第1モータ・ジェネレータ2をモータとして機能させて反転力行させる場合、第2モータ・ジェネレータ3が発電機として機能し、その電力が第1モータ・ジェネレータ2に供給されるので、動力循環が生じる。しかしながら、上記のように入力側変速機20を高速段に設定して動力分配機構4の入力回転数を増大させると、第1モータ・ジェネレータ2を反転力行させるとしてもその回転数が低回転数であるから、ここで消費もしくは必要とする電力は少なく、その結果、動力循環が僅かになるので、全体としての動力の伝達効率の低下を抑制することができる。
これを、入力側変速機20の変速比を直結段に維持したままの場合と比較すると、図3に示すとおりである。すなわち、入力側変速機20の変速比が大きいとその出力回転数であるリングギヤR20およびこれに連結されている動力分配機構4のキャリヤC4の回転数が相対的に低回転数になるので、動力分配機構4の動作状態は、図3に破線で示すようになる。そのため、反力要素であるサンギヤS4をこれに連結されている第1モータ・ジェネレータ2で相対的に高速で負回転させることになる。すなわち、第1モータ・ジェネレータ2を高速で反転力行させることになるので、動力循環の程度が増大し、電力損失が増大したり、それに伴って動力伝達効率が低下する。
上述した切替機構21よる入力側変速機20での変速は、スリーブ23を直線的に移動させて行うことができる。すなわち、直結段および高速段を一つの切替機構21によって設定できる。ここで、「一つの切替機構」とは、アクチュエータによって移動させられて複数の回転要素あるいは固定要素の連結状態を変更する係合部材が一つである機構を意味し、したがってアクチュエータも一つでよいように構成された機構である。そのため、この発明に係る上述した構成のハイブリッド駆動装置によれば、変速を行うための切替機構21やそのアクチュエータを簡素化でき、それに伴いハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型化できる。また、上記の切替機構21は、ドグクラッチ機構によって構成され、係合状態にあるスリーブ23に対してこれを解放側に移動させる荷重が特には作用しない。すなわち、一般的な摩擦式クラッチ機構とは異なり、係合状態を維持するための動力を特には必要としないので、動力損失を低減でき、この点でも動力の伝達効率を向上させることができる。
また、この発明に係る上記のハイブリッド駆動装置は、動力分配機構4や入力側変速機20として機能する複数組の遊星歯車機構を備えているが、これらの遊星歯車機構が各モータ・ジェネレータ2,3の間に配置されている。特に、動力分配機構4に反力要素として連結されてエンジン回転数を制御するように機能する第1モータ・ジェネレータ2に対してエンジン1とは反対側に各遊星歯車機構が配置されている。その第1モータ・ジェネレータ2はいわゆる高トルク型のものが好ましく、その外径が相対的に大きくなるが、これがエンジン1側に配置され、これとは反対側(フロントエンジン後輪駆動車(FR車)に対する車載状態では後側)に各遊星歯車機構および第2モータ・ジェネレータ3が配列されるので、車載状態における車室側での外径が相対的に小さくなる。言い換えれば、スペースの制約が大きい車室側での外径を小さくできるので、車両搭載性を向上させることができる。
さらに、各モータ・ジェネレータ2,3のそれぞれには、電気的な接続を行うための端子台(図示せず)が設けられているので、その端子台を各モータ・ジェネレータ2,3の間に配置すれば、ワイヤーの配索が容易になる。しかも、各端子台の内周側に動力分配機構4および入力側変速機20を配置してスペースを有効に利用することができるので、ハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型化することができる。
つぎにこの発明の他の具体例について説明する。図4に示す例は、切替機構を含む入力側変速機20の全体を第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3との間に配置した例である。したがって、図4に示す構成のうち、前述した図1に示す構成と同様の部分には、図1と同様の符号を付してその説明を省略する。
エンジン1の回転中心軸線上に、エンジン1側から、第1モータ・ジェネレータ2、動力分配機構4、入力側変速機20、第2モータ・ジェネレータ3、出力側変速機6の順に配列されている。エンジン1に連結されている中間軸27は、第1モータ・ジェネレータ2および動力分配機構4ならびに入力側変速機20の中心部を貫通して入力側変速機20より出力軸5側にまで延びており、この中間軸27と入力側変速機20におけるキャリヤC20との間にロークラッチClowが設けられ、また中間軸27と入力側変速機20におけるリングギヤR20との間にハイクラッチChiが設けられている。これらのクラッチClow,Chiは、この発明における切替機構に相当するものであって、図4に示す例では、摩擦式のクラッチ機構によって構成されている。
また、入力側変速機20におけるサンギヤS20は、動力分配機構4および第1モータ・ジェネレータ2の中心部を貫通する所定の中間部材を介して固定部26に連結されて固定されている。したがって、入力側変速機20は、ロークラッチClowが係合することによりキャリヤC20が入力要素となり、そのキャリヤC20が動力分配機構4のキャリヤC4に連結されているので、入力された動力を増減速することなくそのまま動力分配機構4に出力するように構成されている。すなわち、ロークラッチClowが係合することにより、変速比が“1”の低速段(直結段)が設定されるように構成されている。また、ハイクラッチChiが係合することによりリングギヤR20が入力要素となり、その状態でサンギヤS20が固定されていることにより、出力要素であるキャリヤC20が増速されて回転し、ここから動力分配機構4のキャリヤC4に動力を伝達するように構成されている。すなわち、ハイクラッチChiが係合することにより、変速比が“1”より小さい高速段(OD段)が設定されるように構成されている。図5に、これらのクラッチClow,Chiの係合・解放(ON・OFF)の状態と各変速段との関係をまとめて示してある。
さらに、図4には、各モータ・ジェネレータ2,3の端子台2A,3Aを示してあり、これらの端子台2A,3Aは各モータ・ジェネレータ2,3の間に配置されている。そして、これら各モータ・ジェネレータ2,3の間で、各端子台2A,3Aおよびステータコイルの内周側に動力分配機構4および入力側変速機20が配置されている。
図4に示す他の構成は、前述した図1に示すハイブリッド駆動装置の構成と同様であり、したがって各クラッチClow,Chiを、車速や要求駆動力に応じて、図5に示すように係合・解放させることにより、前述した図2および図3に示すように動作させることができる。すなわち、低速時には入力側変速機20を低速側の直結段に設定して、必要充分な駆動力を得ることができ、また高速巡航時には、入力側変速機20を高速側のOD段に設定して動力分配機構4の入力回転数を相対的に高回転数とすることにより、動力循環を防止もしくは抑制して動力伝達効率や燃費を向上させることができる。そして、図4に示す構成では、動力分配機構4および入力側変速機20を第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3との間に配置して外径が相対的に大きい第1モータ・ジェネレータ2をエンジン1側に配置したので、車両(特にFR車)に対する搭載性を向上させることができる。さらに、動力分配機構4および入力側変速機20は、各モータ・ジェネレータ2,3の端子台2A,3Aの内周側に配置され、スペースを有効に利用した配置となっているので、ハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型化し、この点でも車載性を向上させることができる。
1…内燃機関(エンジン)、 2…第1モータ・ジェネレータ、 3…第2モータ・ジェネレータ、 4…動力分配機構、 5…出力軸、 12…電子制御装置、 20…入力側変速機、 21…切替機構、 26…固定部、 Clow…ロークラッチ、 Chi…ハイクラッチ。
上述した特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置は、エンジンの回転中心軸線の延長線上に出力軸が延びている構造であり、したがってエンジンと共に車両の前後方向に向けて搭載するように構成されている。しかしながら、第1電動機は必要トルクが大きいことにより外径の大きいものが使用されるが、この第1電動機とエンジンとの間に変速機構や変速比を設定するためのブレーキおよびクラッチが配置されているので、第1電動機が車室に、より接近して配置されることになる。これに対して、車室を形成しているフロアーに繋がるパネルは、車両の後方に向けて低くなっているので、車室側での設置スペースが狭くなっている。
上記の目標を達成するために、請求項1の発明は、内燃機関が出力する動力によって駆動されて発電する機能を備えた第1電動機と、その第1電動機から供給される電力によって動作して出力部材に動力を付与する第2電動機とが同一軸線上に配置されるとともに、これら第1電動機と第2電動機との間に、前記内燃機関の出力した動力を前記第1電動機と前記出力部材側とに分配する動力分配機構が配置され、さらに前記内燃機関の出力した動力を変速して前記動力分配機構に伝達する変速機を備えているハイブリッド駆動装置において、前記変速機は遊星歯車機構を含み、その少なくとも一部が、前記動力分配機構と共に、前記各電動機の間に配置されており、かつ、前記変速機は、低速側の変速比を設定する状態と高速側の変速比を設定する状態とに切り替える一つの切替機構を備えていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記動力分配機構は、前記第1電動機が連結された第1サンギヤと、前記出力部材が連結された第1リングギヤと、これら第1サンギヤと第1リングギヤとに噛み合っているピニオンギヤを保持している第1キャリヤとを回転要素として差動作用を行うシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、前記変速機は、第3サンギヤと、該第3サンギヤと同心円上に配置されかつ前記内燃機関に連結された第3リングギヤと、前記第2サンギヤに噛み合っているピニオンギヤおよび該ピニオンギヤと前記第2リングギヤとに噛み合っている他のピニオンギヤを保持しかつ前記第1キャリヤに連結されている第3キャリヤとを回転要素として差動作用を行うダブルピニオン型遊星歯車機構を含み、前記切替機構は、前記内燃機関と前記第1電動機との間に配置され、かつ前記第3サンギヤを前記第3リングギヤと所定の固定部とに選択的に連結するドグクラッチ機構によって構成されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
この発明に係るハイブリッド駆動装置の一例を模式的に示すスケルトン図である。 低速時の動作状態を説明するための入力側変速機および動力分配機構についての共線図である。 高速走行時の動作状態を説明するための入力側変速機および動力分配機構についての共線図である。 この発明に係るハイブリッド駆動装置の参考例を模式的に示すスケルトン図である。 この直結段とOD段とを設定するための各クラッチの係合・解放の状態をまとめて示す図表である。
つぎにこの発明の参考例について説明する。図4に示す例は、切替機構を含む入力側変速機20の全体を第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3との間に配置した例である。したがって、図4に示す構成のうち、前述した図1に示す構成と同様の部分には、図1と同様の符号を付してその説明を省略する。

Claims (5)

  1. 内燃機関が出力する動力によって駆動されて発電する機能を備えた第1電動機と、その第1電動機から供給される電力によって動作して出力部材に動力を付与する第2電動機とが同一軸線上に配置されるとともに、これら第1電動機と第2電動機との間に、前記内燃機関の出力した動力を前記第1電動機と前記出力部材側とに分配する動力分配機構が配置され、さらに前記内燃機関の出力した動力を変速して前記動力分配機構に伝達する変速機を備えているハイブリッド駆動装置において、
    前記変速機の少なくとも一部が、前記動力分配機構と共に、前記各電動機の間に配置されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
  2. 前記変速機は、遊星歯車機構を含み、前記各電動機の間に配置される前記変速機の一部は、前記遊星歯車機構であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
  3. 前記遊星歯車機構は、前記第1電動機が連結された第1サンギヤと、前記出力部材が連結された第1リングギヤと、これら第1サンギヤと第1リングギヤとに噛み合っているピニオンギヤを保持している第1キャリヤとを回転要素として差動作用を行うシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、
    前記変速機は、固定された第2サンギヤと、該第2サンギヤと同心円上に配置された第2リングギヤと、前記第2サンギヤに噛み合っているピニオンギヤおよび該ピニオンギヤと前記第2リングギヤとに噛み合っている他のピニオンギヤを保持しかつ前記第1キャリヤに連結されている第2キャリヤとを回転要素として差動作用を行うダブルピニオン型遊星歯車機構を含み、かつ前記内燃機関を前記第2キャリヤと前記第2リングギヤとに選択的に連結する切替機構を更に含み、
    前記切替機構が前記各電動機の間に配置されている
    ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド駆動装置。
  4. 前記変速機は、低速側の変速比を設定する状態と高速側の変速比を設定する状態とに切り替える一つの切替機構を備えていることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド駆動装置。
  5. 前記遊星歯車機構は、前記第1電動機が連結された第1サンギヤと、前記出力部材が連結された第1リングギヤと、これら第1サンギヤと第1リングギヤとに噛み合っているピニオンギヤを保持している第1キャリヤとを回転要素として差動作用を行うシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、
    前記変速機は、第3サンギヤと、該第3サンギヤと同心円上に配置されかつ前記内燃機関に連結された第3リングギヤと、前記第2サンギヤに噛み合っているピニオンギヤおよび該ピニオンギヤと前記第2リングギヤとに噛み合っている他のピニオンギヤを保持しかつ前記第1キャリヤに連結されている第3キャリヤとを回転要素として差動作用を行うダブルピニオン型遊星歯車機構を含み、
    前記切替機構は、前記内燃機関と前記第1電動機との間に配置され、かつ前記第3サンギヤを前記第3リングギヤと所定の固定部とに選択的に連結するドグクラッチ機構によって構成されている
    ことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド駆動装置。
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