JP2011255440A - ワイヤ放電加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】極間の高周波電圧が極間から検出部へ伝送される際における高周波電圧の波形の歪みを低減できるワイヤ放電加工装置を得ること。
【解決手段】ワイヤ放電加工装置は、ワイヤ電極と定盤に載置された被加工物との極間に高周波電圧を印加して放電を発生させ、前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置であって、前記極間の高周波電圧の波形を検出する検出部と、前記ワイヤ電極と前記検出部とを電気的に接続する第1の線と、前記被加工物と前記検出部とを電気的に接続する第2の線とを備え、前記第1の線及び前記第2の線との少なくとも一方は、前記検出部へ伝送されるべき高周波電圧の共振を抑える抵抗値を有する抵抗線を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、ワイヤ放電加工装置に関する。
ワイヤ放電加工では、微細な加工面を得るために、ワイヤ電極と被加工物との間(以下「極間」または「加工間隙」という)に高周波電圧を印加し、短い時間幅の放電を高い繰り返し頻度で発生させる。
特許文献1には、放電加工用電源において、1.0MHzから5.0MHzの高周波電圧を極間に印加することが記載されている。これによって、特許文献1によれば、面粗度が1μmRmax以下の加工面を得ることができるとされている。
特許文献2には、交流高周波加工用電源において、7.0MHzから30MHzの高周波電圧を加工間隙に印加することが記載されている。これによって、特許文献2によれば、0.5μmRmax以下の鏡面を得ることができるとされている。
一方、ワイヤ放電加工装置では、加工中の極間電圧を整流回路により整流して一方の極性の電圧に変換し、その極間電圧の高低によって、極間の状態が、放電開始前の開放状態(オープン状態)と、短絡状態と、放電が開始して短絡状態に至るまでの放電中状態とのいずれであるかをモニターし、極間電圧に基づきワイヤ電極と被加工物の相対的な位置移動である軸送りの速度調整(いわゆる極間間隙サーボ)を行い、安定な加工が持続できるようにする。
しかし、特許文献3によれば、周波数が数MHz以上の高周波電圧を用いたワイヤ放電加工装置では、整流回路の動作限界を超えているので、加工中における極間の状態の判別が困難であり、極間間隙サーボを行うことができないとされている。
それに対して、特許文献3には、ワイヤ放電加工機において、高周波電圧だけでなく高周波電圧よりも十分に低い直流電圧を極間に印加して、極間に現れた電圧から、ローパスフィルタを通して、放電状態に応じて変化する極間インピーダンスに依存する直流電圧成分を取り出すことが記載されている。これにより、特許文献3によれば、高周波電圧を用いたワイヤ放電加工機において、加工中における極間の状態が、開放状態か、短絡状態か、放電中状態かをモニターできるので、極間間隙サーボを実施することができるとされている。
特開昭61−260915号公報 特開平7−9258号公報 国際公開第2004/022275号
特許文献3に記載の技術は、低周波電圧(直流電圧)成分の変化により極間情報を検出している。すなわち、加工のための周波数帯域(高周波電圧)と極間の状態を検出するための周波数帯域(低周波電圧)とを分離することで、安定して極間の状態をモニターするものであると考えられる。
しかし、特許文献3のように、高周波電圧と低周波電圧とを分離して極間に印加する場合には、高周波電圧発生のための高周波電圧発生回路と低周波電圧発生のための低周波電圧発生回路とが相互に影響しないことが前提となる。換言すれば、相互に影響しあわない回路構成とするため、高周波電圧発生手法や低周波電圧発生手法には制約事項が生じることになる。例えば、高周波電圧発生回路の出力インピーダンスが低い場合、低周波電圧発生回路から出力される低周波電圧の電圧値は低くなるとともに、高周波電圧発生回路や低周波電圧発生回路が不要に発熱(損失)することになる。この逆もまた同じであり、高周波電圧発生回路から低周波電圧発生回路に電力が流入してしまう場合も、電力損失が生じる。
そこで、低周波電圧発生回路を設けずに、高周波電圧発生回路から出力され極間に印加された高周波電圧の波形をそのままに近い形で検出して極間の状態をモニターする方法が望まれる。極間に印加された高周波電圧の波形をそのままに近い形で検出するためには、極間の高周波電圧が極間から検出部へ伝送される際における高周波電圧の波形の歪みを低減する必要がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、極間の高周波電圧が極間から検出部へ伝送される際における高周波電圧の波形の歪みを低減できるワイヤ放電加工装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかるワイヤ放電加工装置は、ワイヤ電極と定盤に載置された被加工物との極間に高周波電圧を印加して放電を発生させ、前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置であって、前記極間の高周波電圧の波形を検出する検出部と、前記ワイヤ電極と前記検出部とを電気的に接続する第1の線と、前記被加工物と前記検出部とを電気的に接続する第2の線とを備え、前記第1の線及び前記第2の線との少なくとも一方は、前記検出部へ伝送されるべき高周波電圧の共振を抑える抵抗値を有する抵抗線を含むことを特徴とする。
本発明によれば、高周波電圧の波形が第1の線内及び第2の線内を伝送される過程における高周波電圧の共振を抑制できる。この結果、極間の高周波電圧が極間から検出部へ伝送される際における高周波電圧の波形の歪みを低減できる。
図1は、実施の形態1にかかるワイヤ放電加工装置の構成を示す図である。 図2は、実施の形態1における検出部の構成を示す図である。 図3は、実施の形態2にかかるワイヤ放電加工装置の構成を示す図である。 図4は、実施の形態3にかかるワイヤ放電加工装置の構成を示す図である。
以下に、本発明にかかるワイヤ放電加工装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
実施の形態1にかかるワイヤ放電加工装置200について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1にかかるワイヤ放電加工装置200の構成を示す図である。
ワイヤ放電加工装置200は、定盤3、ワイヤ電極1、上部給電ブロック4、下部給電ブロック6、高周波電源21、及び極間情報検出回路100を備える。加工する際には定盤は水などの液体に浸漬されており、これら液体が入る容器(加工が行われる環境)として加工槽Tを備えている。
定盤3の上には、被加工物2が載置され固定されている。
ワイヤ電極1は、上部給電ブロック4から下部給電ブロック6まで延びるとともに、パイプを介して加工槽Tの外へと搬送される。また、ワイヤ電極1は、上部給電ブロック4と下部給電ブロック6との間で被加工物2と対向している。ワイヤ電極1と被加工物2とは、数ミクロン〜数十ミクロンの間隙を隔てた状態で電圧パルスを印加し、放電を発生させる。ワイヤ電極1と被加工物2との間を極間と呼ぶ。
ワイヤ電極1は、被接続部1a、対向部1b、及び給電部1cを有する。被接続部1aは、ワイヤ電極1における後述の抵抗線(第1の線)102が電気的に接続された部分である。対向部1bは、ワイヤ電極1における、極間を形成するように被加工物2と対向した部分である。給電部1cは、ワイヤ電極1における、極間に印加すべき高周波電圧が給電される部分である。
上部給電ブロック4は、被加工物2の上方に配され、その内部をワイヤ電極1が貫通している。上部給電ブロック4は、その内部に、ワイヤ電極1の被接続部1aに接続された上部給電子5を有する。
下部給電ブロック6は、被加工物2の下方に配され、その内部をワイヤ電極1が貫通している。下部給電ブロック6は、その内部に、ワイヤ電極1の給電部1cに接続された下部給電子7を有する。
高周波電源21は、極間に印加するための高周波電圧を発生させ同軸線22へ供給する。同軸線22は、芯線23が外皮線24で被覆されたシールド構造を有している。芯線23は、高周波電圧を伝送し、外皮線24は、基準電圧(例えば、接地電圧)を伝送する。同軸線22のうち、芯線23は下部給電ブロック6の下部給電子7に電気的に接続され、外皮線24は定盤3に電気的に接続されている。これにより、下部給電ブロック6の下部給電子7を介してワイヤ電極1の給電部1cに高周波電圧が給電されるとともに、定盤3を介して被加工物2に基準電圧が供給される。
なお、同軸線22は、芯線23を覆う外皮線24をさらにGND線層で被覆(シールド)した2重シールド構造を有していてもよい。
極間情報検出回路100は、極間情報(すなわち、極間の高周波電圧の波形)を検出する。極間情報検出回路100は、ヘッド部101、抵抗線(第1の線)102、複数の単線(第2の線)104a、104b、同軸部(被覆部)103、検出部106、フェライトコア105を有する。
ヘッド部101では、第1の抵抗体(図示せず)と第1のコンデンサ(図示せず)とが並列接続されている。すなわち、第1の抵抗体は、抵抗線102とワイヤ電極1とを電気的に接続している。第1のコンデンサは、高周波帯域において、抵抗線102とワイヤ電極1とを電気的に接続している。第1の抵抗体は、抵抗線102の全体抵抗値よりも高い抵抗値を有する。第1の抵抗体の抵抗値は、例えば1MΩ〜9MΩ程度が望ましい。第1のコンデンサの容量値は、例えば2pF〜10pF程度が望ましい。ヘッド部101は上部給電ブロック4の本体に接続されており、その本体を介して上部給電子5と電気的に接続されている。上部給電ブロック4にヘッド部101を接続することによって、ヘッド部101と検出部106との間の抵抗同軸の長さを任意に変えることができる。
抵抗線102は、ヘッド部101及び上部給電子5を介して、ワイヤ電極1の被接続部1aに電気的に接続されており、検出部106と電気的に接続されている。すなわち、抵抗線102は、ワイヤ電極1と検出部106とを電気的に接続する。抵抗線102は、極間の高周波電圧のうち高圧側の電圧信号を伝送する。
各単線104a、104bは、定盤3を介して被加工物2と電気的に接続されており、同軸部103を介して検出部106と電気的に接続されている。すなわち、単線104a、104bは、被加工物2と検出部106とを電気的に接続する。各単線104a、104bは、極間の高周波電圧のうち基準側の電圧信号を伝送する。
同軸部103は、単線104a、104bと検出部106とを電気的に接続する。すなわち、同軸部103は、単線104a、104bと略同電位であり、極間の高周波電圧のうち基準側の電圧信号を伝送する。また、同軸部103は、抵抗線102における検出部106側の部分102aを被覆する。すなわち、部分102aと同軸部103とは、部分102aを芯線とし同軸部103をその外皮ケーブルとしたシールド構造を有している。
なお、部分102aと同軸部103とは、部分102aを覆う同軸部103をさらにGND線層で被覆(シールド)した2重シールド構造を有していてもよい。
同軸部103は、加工槽Tの上方から検出部106まで延びており、極間情報(すなわち、極間の高周波電圧の波形)を伝送するのに適した長さを有しており、例えば、2〜3mの長さを有している。
検出部106は、抵抗線102と単線104a、104b及び同軸部103とを介して伝送された極間情報(すなわち、極間の高周波電圧の波形)が制御部(図示せず)で利用できるように信号を変換し、調整して制御部へ供給するための回路部である。すなわち、検出部106は、抵抗線102と単線104a、104b及び同軸部103とを介して伝送された、極間の高周波電圧の波形を検出する。
また、同軸部103、単線104a、104b、抵抗線102を総称して検出線と呼ぶ。抵抗線102は、例えば、マンガニン線や銅・ニッケル線、ニクロム線など抵抗値を持つ線材で構成する。単線104a、104bは、極力、抵抗線102の近くを這わされている。単線104a、104bは、2本以上の複数本とするとともに、互いに均等な長さを有し、所定の中心に対して対称になるように延びている。
フェライトコア105は、複数本の単線104a、104bを束ねた状態で介在させる。これにより、単線104a、104bを介して伝送される基準側の電圧信号に混入する高周波ノイズを低減する。
次に、検出部106の構成について図2を用いて説明する。図2は、検出部106の構成を示す図である。
検出部106は、終端部1061、整流回路1062、抵抗1063、及びコンデンサ1064を有する。
終端部1061は、抵抗線102が接続された入力端子IN1と同軸部103が接続された入力端子IN2との間に接続されている。終端部1061では、第2の抵抗体(図示せず)と第2のコンデンサ(図示せず)とが並列接続されている。すなわち、第2の抵抗体と第2のコンデンサとは、抵抗線102におけるワイヤ電極1と反対側の端部を終端接続する。第2の抵抗体の抵抗値は、例えば、ヘッド部101における第1の抵抗体の抵抗値の1/9程度に設定する。第2の抵抗体の抵抗値は、例えば、100kΩ〜1MΩ程度が望ましい。第2のコンデンサの容量値は、例えば2pF〜50pF程度が望ましい。
整流回路1062は、入力端子IN1及び入力端子IN2から終端部1061を介して受けた高周波電圧を整流する。整流回路1062は、例えばダイオードを用いた整流回路であり、全波整流してもよいし、半波整流してもよい。
抵抗1063は、整流回路1062と出力端子OUT1との間に接続されている。コンデンサ1064は、抵抗1063及び出力端子OUT1と出力端子OUT2との間に接続されている。抵抗1063及びコンデンサ1064は、周波数帯域を遅くする目的で挿入している。
出力端子OUT1及び出力端子OUT2は、制御部(図示せず)へと接続されている。制御部は、出力端子OUT1及び出力端子OUT2を介して受けた、コンデンサ1064の両端の電圧の高低によって、極間の状態が、放電開始前の開放状態(オープン状態)と、短絡状態と、放電が開始して短絡状態に至るまでの放電中状態とのいずれであるかを判別する。そして、制御部は、ワイヤ電極1と被加工物2との相対的な位置移動である軸送りの速度調整(いわゆる極間間隙サーボ)を行う。
具体的には、極間状態が、開放(オープン)の場合には、極間のインピーダンスが高くなるため極間電圧は上昇する。これによりコンデンサ1064の電圧値も上昇する。逆に極間状態が短絡の場合には、極間のインピーダンスが低くなるため極間電圧が低下する。このためコンデンサ1064の電圧値が低下する。放電状態においてはおよそこれらの中間のインピーダンスと考えてよく、極間電圧もまた開放と短絡の間の電圧になる。制御部は、このようなコンデンサ1064の電圧値に応じて、極間間隙サーボを行う。
なお、ヘッド部101における第1のコンデンサおよび検出部106内の終端部1061における第2のコンデンサは必ずしも設ける必要はない。第1のコンデンサ及び第2のコンデンサは小さければ小さいほど好ましく、浮遊容量による信号歪を補正する目的で適宜挿入する。ただし極間波形の忠実な再現のためには、放電したときの周波数の成分に合うようにそれぞれを調整する必要があるものの、開放状態、放電状態、短絡状態のそれぞれを判別するだけであれば、コンデンサがなくても動作は十分おこなうことができる。
ここで、高周波電源21からの出力先である芯線23が下部給電ブロック6に接続されており、極間情報検出回路100のヘッド部101は上部給電ブロック4に接続されている。このため、高周波電源21と極間情報検出回路100とはワイヤ電極1で電気的に接続されることになる。ワイヤ放電加工機のワイヤ線径は一般的にφ0.05〜φ0.3であり、ある程度の抵抗値を持つことが知られている。そのため、極間での放電現象は、詳細には、高周波電源21→同軸線22内の芯線23→芯線23→下部給電子7から極間までのワイヤ抵抗→極間→被加工物2→定盤3→外皮線24→同軸線22内の外皮線24→高周波電源21の経路で生じることになる。そして、この放電現象は、極間→被加工物2→定盤3→単線104→同軸部103→検出部106→同軸部103に被覆された部分102a→抵抗線102→ヘッド部101→上部給電子5から極間までのワイヤ抵抗→極間の経路で検出する。それぞれの経路は独立しているとともに高周波電源21と極間情報検出回路100とはワイヤ電極1及びヘッド部101の持つ抵抗成分により互いに電流が流れにくい状態で電気的に接続されている。このため、極間情報検出回路100が高周波電源21の加工に与える影響が抑制されており、高周波電源21が極間情報検出回路100に与える影響も抑制されている。
また、定盤3上において、被加工物2をどの場所に設置するかは作業者にゆだねられている。どこに被加工物2が置かれても極間情報検出回路100の検出能力に有意差がないように設計されている。複数の単線104a、104bが互いに均等な長さを有しており、所定の中心に対して対称になるように延びているとともに、複数の単線104a、104bを束ねた状態でフェライトコア105に巻くのはこのためである。すなわち、高周波パルスのため、グランドループには、入力容量と浮遊のリアクトルとで共振し、波形が乱れることがある。特に複数のグランドリードが介在するとそれぞれの線で信号が干渉しあう可能性がある。定盤3内のどこの位置に被加工物2を設置しても特性が同じになるように単線104a、104bを複数設けることで特性ばらつきを抑え、複数設けたために発生するこれらのノイズをフェライトコア105と組み合わせることで除去する。
抵抗線102は、経路のQ値を下げ、高周波電圧の波形が暴れるのを防ぐために使用する。抵抗線102、同軸部103をあわせた全体の抵抗値が数百Ω〜数kΩになるように設定することで、安定な加工特性を得ることができる。仮に、抵抗線102の抵抗値を数kΩより大きくすると、検出部106の感度が小さくなりすぎる可能性がある。あるいは、仮に、抵抗線102の抵抗値を数百Ωより小さくすると、高周波電圧の波形が抵抗線102内を伝送される過程で共振により歪んでしまう可能性がある。これにより、検出部106の入力端子IN1及びIN2の間に表れる電圧波形が、極間の高周波電圧の波形と別のものになってしまう傾向にある。
以上のように、実施の形態1では、ワイヤ電極1と検出部106とを電気的に接続する線が、検出部106へ伝送されるべき高周波電圧の共振を抑える抵抗値を有する抵抗線102を含む。これにより、高周波電圧の波形が抵抗線102内を伝送される過程における高周波電圧の共振を抑制できる。この結果、極間の高周波電圧が極間から検出部106へ伝送される際における高周波電圧の波形の歪みを低減できる。したがって、高周波電源21を用いて加工した場合でも、正確に極間の高周波電圧の波形を加工槽Tの外に取り出すことができ、高周波電圧の波形形状を忠実に極間情報検出回路100経由で制御部(図示せず)へ伝達することができるので、安定した加工サーボ(極間間隙サーボ)を行うことができる。
また、実施の形態1では、抵抗線102とワイヤ電極1とを電気的に接続している第1の抵抗体は、抵抗線102の全体抵抗値よりも高い抵抗値を有する。これにより、極間情報(すなわち、極間の高周波電圧の波形)の抽出は元の信号を減衰して行うことができるので、極間に印加されている高周波電圧自体の低下が抑制されており、極間情報検出回路100が加工に与える影響を少なくできる。
さらに、実施の形態1では、ヘッド部101において、第1の抵抗体と第1のコンデンサとが並列接続されている。これにより、抵抗線102と同軸部103との間の浮遊容量による高周波成分の減衰を、その浮遊容量と直列にコンデンサを接続することで抑制している。この結果、極間の高周波電圧の波形形状を正確に伝送することができる。
また、実施の形態1では、ワイヤ電極1において、被接続部1aが、極間を形成するように被加工物2と対向した対向部1bを挟んで、給電部1cの反対側に配されている。これにより、極間の状態による検出される電圧変化のレベルを大きくすることができる。
さらに、実施の形態1では、複数の単線104a、104bが、定盤3における複数の箇所(例えば、2箇所)に接続されている。これにより、極間信号(検出すべき極間の高周波電圧の信号)の反射が低減できる。
また、複数の単線104a、104bは、互いに均等な長さを有している。これにより、定盤3内のどの位置に被加工物2を設置しても極間情報(極間の高周波電圧の波形)の信号を安定して得ることができる。
なお、実施の形態1において下部給電ブロック6に高周波電源21を接続して上部給電ブロック4に極間情報検出回路100を接続する構成を例示したが、上部給電ブロック4に高周波電源21を接続して、下部給電ブロック6に極間情報検出回路100を接続する構成であっても良い。この場合、上部給電ブロック4の上部給電子5がワイヤ電極1の給電部(図1の1aで示す部分)に接続され、下部給電ブロック6の下部給電子7がワイヤ電極1の被接続部(図1の1cで示す部分)に接続される。
実施の形態2.
次に、実施の形態2にかかるワイヤ放電加工装置200iについて図3を用いて説明する。図3(a)は、実施の形態2にかかるワイヤ放電加工装置200iの構成を示す図であり、図3(b)は、図3(a)における加工液下部ノズル8iを含む領域Aを拡大した断面図である。以下では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
ワイヤ放電加工装置200iは、加工液上部ノズル9i、加工液下部ノズル8i、極間情報検出回路100i、及びワイヤ電極1iを備える。加工液上部ノズル9iは、上部給電ブロック4に装着されており、極間に加工液の噴流を注入する(加工液を噴射する)。同様に、加工液下部ノズル8iは、下部給電ブロック6に装着されているとともに、被加工物2と所定の間隙(例えば0.1mm)が隔てられるように設置されている。これにより、加工液下部ノズル8iは、被加工物2の近傍で極間に加工液の噴流を注入する(加工液を噴射する)。
ここで、極間情報検出回路100iは極間近傍の情報(電圧波形)をセンシングすることが望ましい。極間から電気的に離れれば離れるほど、極間の電圧波形は歪み、極間情報(極間の電圧波形)の正確性は失われてしまう傾向にある。特に高周波電圧であれば、浮遊容量と浮遊リアクトルとにより共振が生じやすく、極間情報(極間の高周波電圧の波形)の抽出が困難になる傾向にある。極間近傍でのセンシングに適した場所は例えば加工液下部ノズル8i内である。
図3(b)に示す加工液下部ノズル8iは、ワイヤ電極1iとの絶縁破壊を回避するために不導体で形成されており、例えばセラミックや樹脂などで形成されている。図3では、加工液下部ノズル8iが不導体であったときの等価回路を浮遊容量として記載している。つまり、加工液下部ノズル8iには極間情報検出回路100iの同軸部103から分岐した単線104ai、104biが固着されているが、等価的に、単線104ai、104biと被加工物2との間に直列にコンデンサが挿入された構成になる。すなわち、単線104ai、104biは、高周波帯域において、加工液下部ノズル8iを介して被加工物2に電気的に接続されている。
また、抵抗線102iは、ヘッド部101iを介して下部給電ブロック6の下部給電子7に接続されている。すなわち、ワイヤ電極1iは、対向部1b及び被接続部1aiを有する。被接続部1aiは、対向部1bに対して加工液下部ノズル8iの側に配され、ヘッド部101iを介して抵抗線102iが接続されている。被接続部1aiは、下部給電子7も接続されているため、実施の形態1における給電部1cも兼ねている。
ここで、仮に、ヘッド部101iと単線104ai、104biの被加工物2への接続端との電気的な距離が長い場合や、ループ面積が広い場合には、そこに浮遊のリアクトルが生じるため極間の波形形状が崩れやすい。
それに対して、実施の形態2では、単線104ai、104biが、被加工物2の近傍で極間に加工液を噴射する加工液下部ノズル8iに接続されている。これにより、ヘッド部101iと単線104ai、104biの被加工物2への接続端との電気的な距離を短くでき、ループ面積を狭くできる。この結果、極間情報(極間の高周波電圧の波形)を正しく抽出することができる。
また、実施の形態2では、ワイヤ電極1iにおける被接続部1aiが、対向部1bに対して加工液下部ノズル8iの側に配されている。この点からも、ヘッド部101iと単線104ai、104biの被加工物2への接続端との電気的な距離を短くでき、ループ面積を狭くできる。
なお、実施の形態2において、高周波電源21は極間情報検出回路100iと同じく下部給電ブロック6に接続している。同一箇所に高周波電源21と極間情報検出回路100iを接続しても、ヘッド部101iの抵抗体により影響は小さいが、高周波電源21を上部給電ブロック4に接続すれば、よりいっそう相互の干渉が低減でき、よりよく極間情報の抽出が可能となることは言うまでもない。
実施の形態3.
次に、実施の形態3にかかるワイヤ放電加工装置200jについて図4を用いて説明する。図4は、実施の形態3にかかるワイヤ放電加工装置200jにおける加工液下部ノズル8jを含む領域Aを拡大した断面図である。図4は、実施の形態2における図3(b)に対応した断面図である。以下では、実施の形態1及び実施の形態2と異なる部分を中心に説明する。
ワイヤ放電加工装置200jは、加工液下部ノズル8j及び極間情報検出回路100jを備える。
加工液下部ノズル8jは、ワイヤ電極1iとの絶縁破壊を回避するための抵抗値を有した高抵抗材質で形成されている。加工液下部ノズル8jは、例えば、数MΩ程度の抵抗値を持っていればよい。さらに被加工物2と加工液下部ノズル8jとの間の間隙は、およそ接する程度の距離に設定することが望ましいが、0.1mm程度の間隙があっても、この間隙に存在する水の抵抗は加工液下部ノズル8jと比べて小さく、実質的に被加工物2と加工液下部ノズル8jは高抵抗で電気的に接続されているとみなしてよい。
実施の形態3では、極間情報検出回路100jの単線104jと抵抗線102aj、102bjの接続が、実施の形態1および実施の形態2と異なる。実施の形態1及び2ではヘッド部(抵抗体)を設けていたが、実施の形態3では、ヘッド部(抵抗体)が持つ抵抗値をおよそ加工液下部ノズル8jが持つ抵抗値と同等に設定できるため、ヘッド部(抵抗体)を加工液下部ノズル8jで代替することができる。そこで、複数の抵抗線(複数の第2の線)102aj、102bjを加工液下部ノズル8j内に接続するとともに、単線(第1の線)104jを下部給電ブロック6に接続する。複数の抵抗線(複数の第2の線)102aj、102bjは、互いに均等な長さを有し、所定の中心に対して対称になるように延びている。
ここで、極間情報検出回路100jの検出部106(図2参照)内の電位は、実施の形態1および実施の形態2と反転することになるが、極間の電位差である高周波電圧の波形を取得することが目的であるから、極間情報(極間の高周波電圧の波形)の抽出にあたって支障はない。
実施の形態3によれば、ヘッド部を設けることなく直接、抵抗線を加工液下部ノズル8jに接続することができるので、部品点数が少なく簡単な構成で正確に極間情報(極間の高周波電圧の波形)を加工槽T外に引き出すことができ、安定した加工サーボを行うことができる。
なお、上記の実施の形態1及び2において、抵抗線はワイヤ電極側の線(第1の線)に含まれるものとし、上記の実施の形態3において、抵抗線は被加工物側の線(第2の線)に含まれるものとして説明している。しかし、これらに限るものではなく、検出部106へ伝送されるべき高周波電圧の共振を抑える抵抗値を有する抵抗線は、例えば、ワイヤ電極側の線(第1の線)と被加工物側の線(第2の線)とのそれぞれに含まれていても良い。
以上のように、本発明にかかるワイヤ放電加工装置は、高周波電圧を用いたワイヤ放電加工に有用である。
1、1i ワイヤ電極
1a、1ai 被接続部
1b 対向部
1c 給電部
2 被加工物
3 定盤
4 上部給電ブロック
5 上部給電子
6 下部給電ブロック
7 下部給電子
8i、8j 加工液下部ノズル
9i 加工液上部ノズル
21 高周波電源
100、100i、100j 極間情報検出回路
101 ヘッド部
102、102aj、102bj 抵抗線
103 同軸部
104a、104b、104ai、104bi、104j 単線
105 フェライトコア
106 検出部
200、200i、200j ワイヤ放電加工装置

Claims (8)

  1. ワイヤ電極と定盤に載置された被加工物との極間に高周波電圧を印加して放電を発生させ、前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置であって、
    前記極間の高周波電圧の波形を検出する検出部と、
    前記ワイヤ電極と前記検出部とを電気的に接続する第1の線と、
    前記被加工物と前記検出部とを電気的に接続する第2の線と、
    を備え、
    前記第1の線及び前記第2の線との少なくとも一方は、前記検出部へ伝送されるべき高周波電圧の共振を抑える抵抗値を有する抵抗線を含む
    ことを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  2. 前記第2の線と前記検出部とを電気的に接続するとともに、前記第1の線における前記検出部側の部分を被覆する被覆部をさらに備えた
    ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工装置。
  3. 前記第1の線と前記ワイヤ電極とを電気的に接続し、前記抵抗線の全体抵抗値よりも高い抵抗値を有する第1の抵抗体をさらに備え、
    前記検出部は、前記第1の線における前記ワイヤ電極と反対側の端部を終端接続する第2の抵抗体を含む
    ことを特徴とする請求項2に記載のワイヤ放電加工装置。
  4. 前記第1の線と前記ワイヤ電極との間で前記第1の抵抗体に並列接続されたコンデンサをさらに備えた
    ことを特徴とする請求項3に記載のワイヤ放電加工装置。
  5. 前記ワイヤ電極は、
    前記極間に印加すべき高周波電圧が給電される給電部と、
    前記極間を形成するように前記被加工物と対向した対向部と、
    前記対向部を挟んで前記給電部の反対側に配され、前記第1の線が電気的に接続された被接続部と、
    を有する
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のワイヤ放電加工装置。
  6. 複数の前記第2の線は、前記定盤における複数の箇所に接続され、互いに均等な長さを有する
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のワイヤ放電加工装置。
  7. 前記被加工物の近傍で前記極間に加工液を噴射する加工液ノズルをさらに備え、
    前記第2の線は、前記加工液ノズルに接続された
    ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工装置。
  8. 前記ワイヤ電極は、
    前記極間を形成するように前記被加工物と対向した対向部と、
    前記対向部に対して前記加工液ノズルの側に配され、前記第1の線が接続された被接続部と、
    を有する
    ことを特徴とする請求項7に記載のワイヤ放電加工装置。
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