JP2011254619A - 永久磁石モータのロータ加熱装置及びロータ加熱方法 - Google Patents

永久磁石モータのロータ加熱装置及びロータ加熱方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱硬化性接着剤の加熱時にロータに機械的な外力を付与してスロット内全域での接着剤量の均一化を図り、永久磁石の長期に亘る安定した固着状態を容易に得ることができると共に、加熱効率に優れて省エネ化が可能な永久磁石モータのロータ加熱装置及びロータ加熱方法を提供する。
【解決手段】ロータの軸孔を支持する支持手段と、該支持手段で支持されたロータに回転や振動等の機械的な外力を付与する外力付与手段と、ロータの外周面外側に配置された加熱コイルと、該加熱コイルに高周波電流を供給するトランジスタインバータと、ロータのスロット内に熱硬化性接着剤を注入し永久磁石を嵌挿した状態で外力付与手段を駆動させてロータに機械的な外力を付与すると共に、トランジスタインバータを駆動させてロータのスロット部分を誘導加熱する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、電磁鋼板を積層したロータのスロットに永久磁石を嵌挿固着する際に使用される、永久磁石モータのロータ加熱装置及びロータ加熱方法に関する。
従来、多数枚の電磁鋼板を積層したロータのスロットに永久磁石(マグネット)を嵌挿固着した永久磁石モータは、例えば特許文献1に開示されている。この永久磁石モータは、ロータの外周面側に、中心の軸孔と平行にロータの厚さ方向に貫通した複数のスロットが一定間隔で形成されており、このスロット内に平板状の永久磁石が嵌挿されて固着されている。
この永久磁石のロータのスロットに対する固着は、永久磁石の外形より若干大きく形成したスロットに、所定量の熱硬化性接着剤を注入し、このスロット内に永久磁石を嵌挿して、その後スロットの開口端部をエンドプレートで閉塞する。そして、この状態で、エンドプレートの上下に配置したヒータ(加熱装置)によりロータを加熱することで、熱硬化性接着剤を熱硬化させて、永久磁石をスロット内に固着している。また、このヒータによる加熱時にロータの上下を逆転させるようにしている。
特許第4453427号公報
しかしながら、このようなロータの加熱装置にあっては、加熱により熱硬化性接着剤を熱硬化させる際に、ロータの上下を逆転させることで、スロット内における接着剤量の均一化を図るようにしているが、ロータを単に上下逆転させるだけでは、例えば熱硬化性接着剤の粘度や流動性によっては、内部の気泡を外部に排出できず均一な固着状態が得られに難い等、熱硬化性接着剤の特性に係わらずスロット内の全域において接着剤の量を均一化して、永久磁石をスロット内に長期に亘り安定固着することが難しい。
また、熱硬化性接着剤の加熱がロータのエンドプレートの上下に配置したヒータによる加熱であるため、熱硬化性接着剤の加熱効率が劣ると共に、スロットの全域を均等に加熱することが困難で、熱硬化性接着剤に均一な加熱(熱硬化)状態を得ることが難しい。さらに、ヒータとして電熱ヒータを使用した場合には、その消費電力が大きくなって、省エネの面でも好ましくない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、熱硬化性接着剤の加熱時にロータに機械的な外力を付与してスロット内全域での接着剤量の均一化を図り、永久磁石の長期に亘る安定した固着状態を容易に得ることができると共に、加熱効率に優れて省エネ化が可能な永久磁石モータのロータ加熱装置及びロータ加熱方法を提供することにある。
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載のロータ加熱装置は、積層された電磁鋼板の中心に軸孔が形成されると共に、外周面側に形成されたスロットに永久磁石が嵌挿固着されたロータを有する永久磁石モータのロータ加熱装置であって、前記ロータの軸孔を支持する支持手段と、該支持手段で支持されたロータに機械的な外力を付与する外力付与手段と、前記ロータの外周面外側に配置された加熱コイルと、該加熱コイルに高周波電流を供給するトランジスタインバータと、前記ロータのスロット内に熱硬化性接着剤を注入し永久磁石を嵌挿した状態で前記外力付与手段を駆動させてロータに機械的な外力を付与すると共に、前記トランジスタインバータを駆動させてロータのスロット部分を誘導加熱する制御手段と、を備えることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記外力付与手段が、前記ロータに振動もしくは衝撃を付与する振動手段か前記軸孔を中心にロータを回転させる回転手段の少なくとも一方であることを特徴とする。また、請求項3に記載の発明は、前記外力付与手段が、前記ロータへの外力付与時に、ロータのスロット内にその軸方向に遠心力を作用させ得る構成であることを特徴とする。さらに、請求項4に記載の発明は、前記振動手段の振動状態と前記回転手段の回転状態の少なくとも一方が、制御手段により熱硬化性接着剤の特性に応じて調整可能に構成されていることを特徴とする。
また、請求項5に記載のロータ加熱方法は、積層された電磁鋼板の中心部分に軸孔が形成されると共に、外周面側に形成されたスロットに永久磁石が嵌挿固着されたロータを有する永久磁石モータのロータ加熱方法であって、前記ロータの軸孔を支持手段で支持する工程と、該支持手段で支持したロータのスロット内に熱硬化性樹脂を注入して該スロット内に永久磁石を嵌挿する工程と、該永久磁石の嵌挿後にロータに機械的な外力を付与する工程と、前記永久磁石が嵌挿されたロータの外周面の外側に配置された加熱コイルにトランジスタインバータから高周波電流を供給して前記ロータのスロット部分を誘導加熱する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明のうち請求項1に記載のロータ加熱装置によれば、ロータのスロット内に熱硬化性接着剤を注入し永久磁石を嵌挿した状態で外力付与手段を駆動させてロータに機械的な外力を付与すると共に、トランジスタインバータを駆動させて加熱コイルに高周波電流を供給してロータのスロット部分を誘導加熱するため、熱硬化性接着剤の加熱時にロータに機械的な外力を付与し、スロット内の接着剤内部の気泡を外部に排出したり接着剤量をスロット内の全域で均一化することができて、永久磁石の長期に亘る安定した固着状態を容易に得ることができる。また、加熱方法として誘導加熱が使用されるため、瞬時な加熱が可能になり加熱効率や加熱の均一性を高めることができると共に、消費電力を低減化できる等、加熱装置の省エネ化を図ることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、外力付与手段が振動手段か回転手段の少なくとも一方であるため、ロータに振動・衝撃や回転等の機械的外力を簡単に付与できて、外力付与手段の構成の簡略化が図れると共に、スロット内の接着剤量の注入状態の均一化を図ることができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、外力付与手段によるロータへの外力付与時に、ロータのスロット内にその軸方向に遠心力が作用する構成であるため、スロット内にその一方の開口から注入された熱硬化性接着剤を、遠心力を利用してスロット内の他方側に移動させることができる等、スロット内における接着剤の注入状態の一層の均一化を図ることができる。
さらに、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、振動手段の振動状態と回転手段の回転状態の少なくとも一方が、制御手段により熱硬化性接着剤の特性に応じて調整可能に構成されているため、熱硬化性接着剤の粘度等の特性に応じて、振動レベル等の振動状態や、回転数、回転方向等の回転状態を最適に設定できて、各種接着剤に容易に対応できると共に、永久磁石のスロットに対する固着状態の一層の均一化を図ることができる。
また、請求項5に記載のロータ加熱方法によれば、スロット内に熱硬化性接着剤を注入し永久磁石を嵌挿した後にロータに機械的な外力を付与する工程と、該ロータの外周面外側に配置された加熱コイルにトランジスタインバータから高周波電流を供給してロータのスロット部分を誘導加熱する工程を備えるため、請求項1に記載の発明と同様に、スロット内の接着剤内部の気泡を外部に排出できたり接着剤量をスロット内の全域で均一化することができて、永久磁石の長期に亘る安定した固着状態を容易に得ることができると共に、誘導加熱により瞬時な加熱が可能になり、加熱効率や加熱の均一性を向上させることができたり、加熱装置の省エネ化を図ることができる。
本発明に係わる永久磁石モータのロータの一例を示す斜視図 同その平面図 同ロータ加熱装置の一例を示す概略構成図 同その振動部材の構成図 同加熱装置を使用したロータ加熱方法の一例を示す工程図 同加熱方法の説明図 同加熱方法の他の説明図
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明に係わる永久磁石モータのロータの一例を示している。図に示すように、永久磁石モータのロータ1は、円形の多数枚の電磁鋼板を積層したロータコア1aを有し、このロータコア1aの中心には軸孔2が形成されている。また、ロータコア1aの外周側には、複数個(図では4個)のスロット3が、前記軸孔2と平行にロータコア1aの厚さ(図1の上下)方向に貫通状態で形成されている。
そして、このスロット3内には、平板状の永久磁石4が嵌挿状態とされて熱硬化性接着剤5によって固着されている。このスロット3の大きさは、永久磁石4の外形形状より若干大きく形成されて、永久磁石4の周囲とスロット3の内面間に所定の隙間が形成されるようになっており、この隙間に、熱硬化性接着剤5が熱硬化状態とされることにより、スロット3内に永久磁石4が所定の強度で固着されている。なお、ロータ1は、永久磁石モータとして組み立てられる場合に、その上下面に図示しないエンドプレートが配置されて、スロット3の開口端が閉塞されるようになっている。
図3〜図6は、前記ロータ1のスロット3に永久磁石4を固着可能な本発明に係わるロータ加熱装置の一実施形態を示している。図3に示すように、ロータ加熱装置10は、前記ロータコア1aの軸孔2の下開口部を支持する一方の支持手段としての振動部材11(振動手段)と、ロータコア1aの軸孔2の上開口部を支持する他方の支持手段としての回転テーブル12(回転手段)と、ロータコア1aの外周面の外側に所定間隔を有して配置された加熱コイル13を有している。
前記振動部材11は、ロータコア1aの軸孔2に嵌合可能な嵌合部11aと、内部に埋設状態で配設された振動モータ11bを有している。振動モータ11bは、図4(a)に示すように、その回転軸に固定された回転板11cの先端が、振動部材11に形成された取付孔11dの内面に所定圧で当接可能に構成されている。そして、振動モータ11bが回転することで回転板11cが回転して、その回転力が取付孔11dの内面に伝達されて、振動部材11が所定周波数及び所定のタイミングで例えば上下方向に微振動するようになっている。なお、振動モータ11の構成は、この例に限定されず、例えば携帯電話等に使用される各種形態の振動モータを採用することができる。
また、この例では、振動手段として振動モータ11bを使用したが、例えば図4(b)に示すように、振動手段として振動子14を使用することもできる。すなわち、振動部材11の例えば嵌合部11aに円盤状の圧電振動子もしくは超音波振動子等からなる振動子14を埋設状態で固着し、そのリード線を所定方向に引き出す。そして、振動子14に後述する振動部材駆動部17から所定の電圧が印加することにより、振動子14の例えば上下方向の振動(微振動等)が振動部材11を介してロータコア1aに伝達されるようになっている。
また、前記回転テーブル12は、図3に示すように、ロータコア1aの軸孔2に嵌合可能な嵌合部12aと、回転テーブル12を回転させる回転モータ12bを有し、回転テーブル12には、該テーブル12を上下動させるテーブル上下駆動部15が接続され、前記回転モータ12bには、テーブル回転駆動部16が接続されている。そして、回転テーブル12は、テーブル上下駆動部15により矢印イの如く上下動可能に構成されると共に、テーブル回転駆動部16により矢印ロに示す如く右回転(もしくは左回転)するようになっている。
また、前記ロータ加熱装置1は、前記振動部材11を駆動させる振動部材駆動部17と、前記加熱コイル13に高周波電流を供給するトランジスタインバータ18と、該インバータ18、振動部材駆動部17、テーブル上下駆動部15及びテーブル回転駆動部16等を制御する制御手段としての制御部19を有している。制御部19は、CPU19a、ROM19b、RAM19c等を有し、その入力側に、図示しない各種センサや入力装置が接続され、その出力側に、前記トランジスタインバータ18等が接続されている。そして、後述する如く、各種センサの検知信号や入力装置による入力データに基づいて、トランジスタインバータ18や各部の駆動を制御するようになっている。
前記トランジスタインバータ18は、トランジスタ、MOSFET、IGBT等の半導体スイッチング素子を、例えばフルブリッジ接続したインバータ回路を有し、その入力側が前記制御部19に接続され、その出力側が前記加熱コイル13に接続されている。また、前記加熱コイル13は、銅パイプを所定回数巻回することにより平面視形状が円環形状もしくは馬蹄形状に形成されて、その両端部が前記トランジスタインバータ18の出力端子に接続されている。
次に、前記ロータ加熱装置1によるロータ1の加熱方法の一例を、図5及び図6に基づいて説明する。先ず、円形の多数枚の電磁鋼板が積層されたロータコア1aの軸孔2の下端開口部を、振動部材11の嵌合部11aに嵌合させてロータコア1aを振動部材11上にセット(K01)し、この状態で、ロータコア1aのスロット3に熱硬化性接着剤5を所定量注入し、該注入後にスロット3内に永久磁石4を嵌挿(K02)する。なお、熱硬化性接着剤5の注入は、回転テーブル12が上方に退避している状態で、スロット3の上端開口部を利用して自動的もしくは手動で行われ、その注入量は、スロット3の大きさと永久磁石4の外形形状に応じて、前記隙間の全域に熱硬化性接着剤5が介装(充填)される量に予め設定されている。
そして、スロット3内に永久磁石4を嵌挿したら、制御部19の制御信号により、テーブル上下駆動部15を駆動させて回転テーブル12を下降(K03)させ、その嵌合部12aをロータコア1aの軸孔2の上端開口部に嵌合させる。この回転テーブル12の下降により回転テーブル12でスロット3の上端開口部が閉塞された状態となる。この状態で制御部19の制御信号により、テーブル回転駆動部16を駆動させて回転テーブル12を所定方向に回転開始(K04)させると共に、振動部材駆動部17を駆動させて振動部材11を振動開始(K05)させ、また、回転テーブル12の回転開始や振動部材11の振動開始に関連してトランジスタインバータ18をオン(K06)させる。
この回転テーブル12の回転動作と振動部材11の振動動作及びトランジスタインバータ18のオン動作は、例えば図6(a)に示すように実行される。すなわち、回転テーブル12が(イ)に示すように回転開始してから、(ロ)に示すように所定時間T1後に振動部材11が振動を開始し、この振動部材11の振動開始から(ハ)に示すように所定時間T2後にトランジスタインバータ18がオンする。これにより、ロータコア1aに先ず機械的外力である回転力が付与されてから振動部材11が上下方向に微振動し、この回転と微振動がロータコア1aのスロット3内に注入されている所定粘度の液状の熱硬化性接着剤5に作用して、該接着剤5が非流動状態ではなく流動可能状態に維持される。
その結果、熱硬化性接着剤5がスロット3内の全域において均一に分散(収容)された状態となり、特に、回転テーブル12の回転により外側方向に遠心力が作用すると共に振動部材11により上下方向の力が作用することから、熱硬化性接着剤5がスロット3内の全域に良好に分散されると共に、熱硬化性接着剤5内部のガス(気泡)をスロット3の開口端側に移動させて外部に排出することができる。また、熱硬化性接着剤5の加熱が、加熱コイル13に高周波電流を供給することによりロータコア1aに誘起される渦電流を使用した誘導加熱であるため、予め高周波電流の周波数と出力を所定に設定することで、ロータコア1aのスロット3部分を瞬時でかつスロット3部分の全域を均等に加熱でき、これらのことから、熱硬化性接着剤5に良好な熱硬化状態が得られることになる。
そして、前記工程K06でトランジスタインバータ18がオンすると、制御部19の制御信号により、所定時間後に該インバータ18がオフ(K07)し、また、振動部材11の振動が停止(K08)すると共に、回転テーブル12が停止(K09)する。このトランジスタインバータ18のオフと振動部材11及び回転テーブル12の停止は、図6(a)に示すように、振動部材11は回転テーブル12が停止してから所定時間T3後に停止し、また、トランジスタインバータ18は、振動部材11が停止してから所定時間T4後に停止するようになっている。
これにより、所定時間の回転力と振動力が付与されて、スロット3内で熱硬化性接着剤5が均一分散されつつ、所定状態まで熱硬化され、この状態でさらに所定時間誘導加熱されることで、熱硬化性接着剤5がスロット3内の全域において均等に完全に熱硬化されることになる。なお、回転テーブル12の回転停止と振動部材11の振動停止は、図6(b)に示すように、同一としても良いが、熱硬化性接着剤5の熱硬化の観点から、共にトランジスタインバータ18がオフする所定時間前に停止するのが好ましい。
そして前記工程K09で回転テーブル12が停止すると、制御部19の制御信号によりテーブル上下駆動部15を駆動させて回転テーブル12を上昇(K10)させて、ロータコア1a上に退避させ、この状態でロータコア1aを振動部材11上から取り出す(K11)ことでロータ1の加熱工程が終了する。これにより、ロータコア1aの各スロット3内に永久磁石4がそれぞれ熱硬化性接着剤5で固着されたロータ1が製造されることになる。つまり、この加熱方法の場合、ロータコア1aに機械的外力である回転力と振動力を付与した状態で、誘導加熱によりロータコア1aを加熱することで、スロット3内の熱硬化性接着剤5をスロット3内の全域において均一分散状態として熱硬化でき、スロット3に永久磁石4が良好に固着されることになる。
なお、前記回転テーブル12の回転形態や振動部材11の振動形態は、図6に示すように、所定時間一定状態を維持する形態に限らず、例えば図6(a)の二点鎖線で示すように、回転力や振動力のレベルあるいはトランジスタインバータ18の出力を、時間と共に変化させることもできる。このとき、トランジスタインバータ18の出力を、熱硬化性接着剤5の特性に応じて連続的もしくは段階的に低下させるようにすれば、該接着剤5に良好な熱硬化状態を得ることが可能となる。
また、回転テーブル12の回転形態や振動部材11の振動形態として、例えば図7に示すような形態を採用することもできる。すなわち、図7(a)は、回転テーブル12を例えば右回り等の一定方向への回転ではなく、正逆転可能な回転モータ12bの使用により、右回り(正転)と左回り(逆転)に回転可能としたものである。この場合、正転及び逆転時の回転数Rと回転時間T5等は同一としても良いが、これらを異ならせることもできる。
また、図7(b)は、振動部材11の振動をパルス状としたもので、この場合も、上段に示すように各パルスの幅T6と振動レベルSを同一としても良いし、下段に示すように異ならせることもできる。さらに、図7(c)は、回転テーブル12を所定時間一定状態で回転させると共に、この回転テーブル12の回転中に、振動部材11をパルス状に振動させるようにしたものである。このとき、振動部材11の振動のパルス幅を小さくすれば、振動が衝撃(打撃)となってロータコア1aに付与されるため、回転による遠心力とスロット3の軸方向の衝撃が重なり合ってスロット3内の熱硬化性接着剤5に付与される状態となり、該接着剤5の均一分散がより一層促進されることになる。
また、図7(d)は、回転テーブル12の回転をパルス状にすると共に、振動部材11の振動もパルス状としたもので、この場合の各パルスの幅や回転数、レベル等は、同一でも良いし異ならせることもできる。このように、回転テーブル12の回転数や回転時期(タイミング)等の回転状態、振動部材11の振動数や振動時期(タイミング)等の振動状態は、ロータコア1aの形態(全体の大きさ、スロット3の形状等)や使用する熱硬化性接着剤5の種類、すなわち粘度や熱硬化時間等の特性に応じて、適宜に設定することができる。
このように、前記ロータ加熱装置1によれば、ロータコア1aのスロット3内に熱硬化性接着剤5を注入し永久磁石4を嵌挿した状態で、回転テーブル12や振動部材11を駆動させてロータコア1aに機械的な外力を付与すると共に、トランジスタインバータ18をオンさせて加熱コイル13に高周波電流を供給してロータコア1aのスロット3部分を誘導加熱するため、熱硬化性接着剤5の加熱時にロータコア1aに機械的な外力を付与して、スロット3内の接着剤5内部の気泡を外部に排出したり接着剤量をスロット3内の全域で均一化することができ、永久磁石4の長期に亘る安定した固着状態を容易に得ることができる。
また、加熱方法として誘導加熱が使用されるため、瞬時な加熱が可能となって、ロータコア1aのスロット3部分を効率的に加熱できたり、スロット3の全域の均一加熱が可能となり、熱硬化性接着剤5に良好な熱硬化状態を容易に得ることができると共に、トランジスタインバータ18の使用により、消費電力を低減することができて、ロータ加熱装置1の省エネ化を図ることができる。
また、回転テーブル12と振動部材11により振動・衝撃力や回転力等の機械的外力をロータコア1aに簡単に付与できて、その構成の簡略化が図れると共に、スロット3内の接着剤5の注入状態の均一分散化を一層図ることができる。特に、ロータコア1aへの回転力や振動力の付与時に、ロータコア1aのスロット3内にその軸方向に遠心力が作用するようにすれば、スロット3内にその一方の開口から注入した熱硬化性接着剤5を遠心力を利用してスロット3内の他方側に移動させることができる等、スロット3内における熱硬化性接着剤5の注入状態のより一層の均一分散化を図ることができる。
また、振動部材11の振動状態と回転テーブル12の回転状態を、制御部19により熱硬化性接着剤5の特性に応じて調整可能に構成すれば、熱硬化性接着剤5の粘度等の特性に応じて、振動レベル等の振動状態や、回転数、回転方向等の回転状態を最適に設定できて、各種熱硬化性接着剤5に容易に対応することができると共に、永久磁石4のスロット3に対する固着状態の一層の均一化を図ることができる。これらにより、前記ロータ加熱装置1で得られたロータ1を電気自動車やハイブリット自動車の永久磁石モータに使用することにより、信頼性の高い自動車の提供が可能となる。
またさらに、ロータコア1aを支持する支持手段としての振動部材11や回転テーブル12が、その嵌合部11a、12aをロータコア1aの軸孔2の開口部に嵌合させることにより、振動部材11や回転テーブル12によりロータコア1aのスロット3の上端開口端部が閉塞されるため、振動部材11と回転テーブル12にロータコア1aの支持機能とスロット3の閉塞機能の両機能を持たせることができて、スロット3を閉塞するためのエンドプレート等を不要として、ロータ加熱装置1の構成を簡略化することができると共に、加熱作業を能率的に行って、安価なロータ1を得ることができる。
なお、前記実施形態のロータ加熱装置1において、図4(a)に示すように、振動部材11(もしくは回転テーブル12)のロータコア1aのスロット3部分が当接するスロット当接面11eに、該スロット3に連通する状態で、外部に開放されたガス抜き孔21を設けても良い。このときのガス抜き孔21の内径は、熱硬化性接着剤5が漏出しない比較的小径に設定することが好ましく、このように構成すれば、スロット3内に注入される熱硬化性接着剤5自体に存在する気泡(ガス)や、該接着剤5をスロット3内に注入する際に混入する気泡を回転力や振動力により外部に確実に排出できて、熱硬化性接着剤5に一層良好な熱硬化状態を得ること等が可能となる。
また、例えば図3の二点鎖線で示すように、回転テーブル12(もしくは振動部材11)に衝撃部材22を別途連結し、この衝撃部材22を制御部19で制御するようにしても良い。このときの衝撃部材22は、例えば金属製や樹脂(ゴム)製のハンマーで形成して、回転テーブル12を打撃することによりロータコア1aのスロット3内の熱硬化性接着剤5に変化が与えられる構成とすれば良い。
さらに、前記実施形態においては、振動部材11と回転テーブル12の両方を備え、機械的外力として回転力と振動力を共に付与する構成としたが、いずれか一方でも良い。また、前記実施形態における、ロータ1の全体形状、スロット3や永久磁石4の数や形状、振動部材11や回転テーブル12の形態や制御部19の構成、ワークとしてのロータコア1aのセット形態等は一例であって、例えばロータコア1aを上下方向ではなく、左右方向や傾斜状態でセット可能に構成する等、本発明の各発明に係わる要旨を逸脱しない範囲において適宜の構成を採用することができる。
本発明は、各種形状の電磁鋼板を積層することで形成されたロータのスロット内に永久磁石が嵌挿固着される全ての永久磁石モータに利用できる。
1・・・ロータ、1a・・・ロータコア、2・・・軸孔、3・・・スロット、4・・・永久磁石、5・・・熱硬化性接着剤、10・・・ロータ加熱装置、11・・・振動部材、11a・・・嵌合部、11b・・・振動モータ、11c・・・回転板、12・・・回転テーブル、12a・・・嵌合部、12b・・・回転モータ、13・・・加熱コイル、14・・・振動子、15・・・テーブル上下駆動部、16・・・テーブル回転駆動部、17・・・振動部材駆動部、18・・・トランジスタインバータ、19・・・制御部、21・・・ガス抜き孔、21・・・衝撃部材。

Claims (5)

  1. 積層された電磁鋼板の中心に軸孔が形成されると共に、外周面側に形成されたスロットに永久磁石が嵌挿固着されたロータを有する永久磁石モータのロータ加熱装置であって、
    前記ロータの軸孔を支持する支持手段と、該支持手段で支持されたロータに機械的な外力を付与する外力付与手段と、前記ロータの外周面外側に配置された加熱コイルと、該加熱コイルに高周波電流を供給するトランジスタインバータと、前記ロータのスロット内に熱硬化性接着剤を注入し永久磁石を嵌挿した状態で前記外力付与手段を駆動させてロータに機械的な外力を付与すると共に、前記トランジスタインバータを駆動させてロータのスロット部分を誘導加熱する制御手段と、を備えることを特徴とする永久磁石モータのロータ加熱装置。
  2. 前記外力付与手段は、前記ロータに振動もしくは衝撃を付与する振動手段か前記軸孔を中心にロータを回転させる回転手段の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石モータのロータ加熱装置。
  3. 前記外力付与手段は、前記ロータへの外力付与時に、ロータのスロット内にその軸方向に遠心力を作用させ得る構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の永久磁石モータのロータ加熱装置。
  4. 前記振動手段の振動状態と前記回転手段の回転状態の少なくとも一方が、制御手段により熱硬化性接着剤の特性に応じて調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の永久磁石モータのロータ加熱装置。
  5. 積層された電磁鋼板の中心部分に軸孔が形成されると共に、外周面側に形成されたスロットに永久磁石が嵌挿固着されたロータを有する永久磁石モータのロータ加熱方法であって、
    前記ロータの軸孔を支持手段で支持する工程と、該支持手段で支持したロータのスロット内に熱硬化性樹脂を注入して該スロット内に永久磁石を嵌挿する工程と、該永久磁石の嵌挿後にロータに機械的な外力を付与する工程と、前記永久磁石が嵌挿されたロータの外周面の外側に配置された加熱コイルにトランジスタインバータから高周波電流を供給して前記ロータのスロット部分を誘導加熱する工程と、を備えることを特徴とする永久磁石モータのロータ加熱方法。
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