JP2011251294A - 温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材及びその製造方法 - Google Patents

温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特殊な潤滑剤ではなく汎用の潤滑油を使用して、接合のまま、プレス成形をすることができる、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を提供する。
【解決手段】板厚ti1の薄板と、板厚ti2の厚板とを接合したi個の接合継手Jについて、接合金属部の、中心部高さhと幅Wが、{(ti1+ti2)/2}≦h≦ti2、1.5×ti1<W<2.5×ti2、薄板の熱影響部の硬さViHAZ1と接合金属部の硬さViWとの差をΔViW1、厚板の熱影響部の硬さViHAZ2と接合金属部の硬さViWとの差をΔViW2、としたとき、0<ΔViW1<20、0<ΔViW2<20、の関係を満足する。
【選択図】図5

Description

本発明は、温間プレス成形性に優れた、アルミニウム合金テーラードブランク材、及び、その製造方法に関するものである。詳しくは、2以上の熱処理型アルミニウム合金板材を接合して構成され、1又は2以上の接合継手を有する、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材、及び、その製造方法に関するものである。
自動車をはじめとする輸送機械の車体部材等は、軽量化のため、アルミニウム合金化が進んでいる。
これらの部材、特に、自動車等の車体部材は、強度、耐久性、耐食性、衝突エネルギー吸収性などの諸性能が要求される。このため、車体部材の各部位で板厚、材質が細かく設定され、異なる板厚、異なる材質のアルミニウム合金板材を接合したテーラードブランク材の適用が検討されている。
特許文献1には、板厚が互いに異なる、複数枚の6000系アルミニウム合金板材を、それぞれの端部で、互いに突き合わされた状態で、摩擦攪拌接合法を用いて接合された、アルミニウム合金テーラードブランク材が開示されている。
特許文献2には、過剰Si型6000系アルミニウム合金板材を、溶接接合したテーラードブランク材であって、溶接接合後に180℃以下の温度で時効処理して、溶接接合部の継手強度を、母材比効率で70%以上回復させ、継手伸びを母材比強度で50%以上回復させた、アルミニウム合金テーラードブランク材が提案されている。
しかしながら、特許文献1、及び、特許文献2に開示される、アルミニウム合金テーラードブランク材は、アルミニウム合金板材を接合した後に、熱処理を行うことが必要である。接合後に熱処理を行わない場合、接合部、熱影響部、及び、母材との間で、強度や伸びなどの材料特性が著しく不均一になっているため、アルミニウム合金テーラードブランク材を破損させることなく、プレス成形を行うことができないという問題があった。
接合後のアルミニウム合金テーラードブランク材は、多くの場合、特に、自動車の車体部材の場合には、大型の部材であることから、接合後に熱処理を行うことは、製造工数の大幅な増大を招き好ましくない。
そして、大型な部材であるが故に、アルミニウム合金テーラードブランク材は、熱処理によって変形し易く、プレス成形後における、成形部材の寸法精度が、低下するという問題がある。
したがって、接合後に熱処理することなく、接合のままでプレス成形することができる、アルミニウム合金テーラードブランク材が望まれている。
一方、アルミニウム合金板材の成形方法を改善する検討も進んでおり、例えば、本発明者らの一部は、特許文献3で、アルミニウム合金板材の温間プレス成形法を、提案している。
特許文献3で提案した温間プレス成形法は、特殊な潤滑剤を使用せず、汎用の潤滑油を使用して、アルミニウム合金板材をプレス成形する方法である。
特許文献3の温間プレス成形法は、ダイス及びしわ押さえ金型の温度と、ポンチの温度とを、所定の温度範囲とすることで、プレス成形時の流動抵抗を低減することができる。
したがって、温間プレス成形法によれば、鋼板材と比べて延性の劣る、アルミニウム合金板材でも、プレス成形することができる。
本発明者らは、温間プレス成形法の良好な流動抵抗低減性を活用して、アルミニウム合金板材の母材よりも延性の劣る接合部を有する、アルミニウム合金テーラードブランク材を、温間プレス成形法で、プレス成形することを着想した。
しかしながら、特許文献3のアルミニウム合金板材の温間プレス成形法に好適な、アルミニウム合金テーラードブランク材についての検討は、充分に行われていなかった。
特開2007−289984号公報 特開2002−294381号公報 特開2007−125601号公報
本発明は、熱処理型アルミニウム合金板材の接合後に熱処理を行わず、かつ、特殊な潤滑剤を使用せず、汎用の潤滑油を使用してプレス成形をすることができる、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を提供することを目的とする。
本発明者らは、2以上の熱処理型アルミニウム合金板材を接合して構成される、アルミニウム合金テーラードブランク材について検討するにあたり、接合部を有する引張試験片を多数製作して、引張試験を行い、鋭意研究を重ねた。
その結果、引張試験片の接合部が有する、接合金属部、熱影響部、及び母材部のビッカース硬さが、所定の関係を有し、かつ、接合金属部及び熱影響部の形状と大きさが、所定の範囲となったときに、引張試験の破断位置が、母材又は熱影響部となり、かような接合部を有する、アルミニウム合金テーラードブランク材は、接合後に熱処理を施さず(以下、「接合のまま」ということもある)、汎用の潤滑油を使用しての温間プレス成形に耐え得るものであることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに改良を加えて完成されたもので、その要旨は次の通りである。
(1)加熱手段を設けたダイス及びしわ押さえ金型の温度を100℃超200℃以下とし、冷却手段を設けたポンチの温度を10℃以下とし、ポンチとダイスの温度差を90℃以上とし、引火点が100℃超である潤滑剤を塗布して温間プレス成形する、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材が、2以上の熱処理型アルニウム合金板材を接合して構成され、1又は2以上の接合継手を有し、
該1又は2以上の接合継手のうち、i番目の接合継手Jは、板厚がti1である一方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部と、板厚がti2(ただし、ti1≦ti2)である他方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部との突き合わせ面で接合した接合継手であり、
前記接合継手Jは、
前記突き合せ面に対して直角方向の長さがW、前記突き合せ面に対して直角方向の中心部で、前記熱処理型アルミニウム合金板材に対して板厚方向の長さがhである、凸断面形状を有する接合金属部を有し、
前記h及び前記Wは、{(ti1+ti2)/2}≦h≦ti2及び1.5×ti1<W<2.5×ti2を満足し、
前記一方の熱影響部のビッカース硬さ:ViHAZ1と前記接合金属部のビッカース硬さ:ViWとの差をΔViW1、前記他方の熱影響部のビッカース硬さ:ViHAZ2と前記接合金属部のビッカース硬さ:ViWとの差をΔViW2としたとき、0<ΔViW1<20及び0<ΔViW2<20を、すべての接合の終了後に満足することを特徴とする、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
(2)前記接合継手Jが、YAGレーザ溶接継手であることを特徴とする、上記(1)に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
(3)前記熱処理型アルミニウム合金板材が、AA乃至JIS規格に規定される6000系アルミニウム合金板材であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
(4)前記接合金属部の成分組成が、接合フィラーワイヤの成分組成を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
(5)前記接合フィラーワイヤの成分組成が、マグネシウムを含有することを特徴とする、上記(4)に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
(6)加熱手段を設けたダイス及びしわ押さえ金型の温度を100℃超200℃以下とし、冷却手段を設けたポンチの温度を10℃以下とし、ポンチとダイスの温度差を90℃以上とし、引火点が100℃超である潤滑剤を塗布して温間プレス成形する、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を製造するに際し、
2以上の熱処理型アルミニウム合金板材を、1箇所又は2箇所以上で接合し、該接合のi箇所目は、板厚がti1である一方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部と、板厚がti2(ただし、ti1≦ti2)である他方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部とを互いに突き合わせ、
前記一方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部と、前記他方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部との突き合わせ面から、前記他方の熱処理型アルミニウム合金板材の方向へ、距離D離れた位置を入熱中心として入熱し、該入熱中、前記距離Dが、0≦D≦ti2/4の関係を満足し、かつ、前記一方の熱処理型アルミニウム合金板材が溶け落ちない入熱量で前記突き合わせ面を接合して形成する接合継手Jが、前記突き合せ面に対して直角方向の長さがW、前記突き合せ面に対して直角方向の中心部で、前記熱処理型アルミニウム合金板材に対して板厚方向の長さがhである、凸断面形状を有する接合金属部を有し、
前記h及び前記Wは、{(ti1+ti2)/2}≦h≦ti2及び1.5×ti1<W<2.5×ti2を満足し、
前記一方の熱影響部のビッカース硬さ:ViHAZ1と前記接合金属部のビッカース硬さ:ViWとの差をΔViW1、前記他方の熱影響部のビッカース硬さ:ViHAZ2と前記接合金属部のビッカース硬さ:ViWとの差をΔViW2としたとき、0<ΔViW1<20、0<ΔViW2<20を、すべての接合継手Jの形成後に満足することを特徴とする、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
(7)前記入熱が、YAGレーザによることを特徴とする、上記(6)に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
(8)前記熱処理型アルミニウム合金板材が、AA乃至JIS規格に規定される6000系アルミニウム合金であることを特徴とする、上記(6)又は(7)に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
(9)前記接合をするに際し、
直径Fの溶接フィラーワイヤの先端が、前記入熱中心から距離Gxi離れた位置、及び、前記他方の熱処理型アルミニウム合金板材の表面から距離Gyi離れた位置を維持して供給され、
前記接合中、0≦Gxi≦F、かつ、0≦Gyi≦F/4の関係を満たすことを特徴とする、上記(6)〜(8)のいずれかに記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
(10)前記接合フィラーワイヤの成分組成が、マグネシウムを含有することを特徴とする、上記(9)に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材によれば、温間プレス成形を行う前に、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材に熱処理を施すことを必須とすることなく、特別な潤滑剤を使用せずに、汎用の潤滑油を使用して、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を、成形時に破損させることなく、温間プレス成形することができる。
また、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法によれば、接合後に熱処理を施すことを必須とすることなく、汎用の潤滑油を使用して温間プレス成形をすることができる、2以上のアルミニウム合金板材を接合した、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を得ることができる。
本発明が対象とする温間プレス成形を行うための、温間プレス成形装置の説明図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。 本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を、自動車の自動車用車体部品に適用した一実施形態を示す説明図であり、図2(a)は、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を構成する熱処理型アルミニウム合金板材、図2(b)は、図2(a)の熱処理型アルミニウム合金板材のそれぞれを接合した後の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材、図2(c)は、図2(b)の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を、温間プレス成形した後の、自動車用車体部品を示す。 2枚の熱処理型アルミニウム合金板材を突き合わせて接合した引張試験片の形状を示し、図3(a)は正面図、図3(b)は図3(a)のI−I線に沿う断面図である。 図3(b)の断面図のC−C線からの位置によるビッカース硬さの分布を説明する説明図である。 図5は、一方の熱処理型アルミニウム合金板材と、他方の熱処理型アルミニウム合金板材とを突き合せて、YAGレーザ溶接している状態を示す説明図であり、図5(a)は、突き合わせ面の延長方向からみた図、図5(b)は、突き合わせ面に対して垂直な方向からみた図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明が対象とする温間プレス成形を行うための、温間プレス成形装置の模式図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は平面図である。図1中の符号100は、温間プレス成形装置を示す。
温間プレス成形装置100は、ダイス1、しわ押さえ金型2、ヒータ3、熱電対4、ポンチ5を有する。ダイス1及びしわ押さえ金型2にはヒータ3が埋め込まれており、熱電対と温度制御装置(図示しない)により、ダイス1及びしわ押さえ金型2の温度を制御する。ポンチ5は、冷却装置(図示しない)に接続されて冷媒を循環させる配管7によって冷却し、温度を一定に保持する。
温間プレス成形対象材6の温度は室温とし、表面には、アルミニウム合金板材のプレス成形に汎用的に用いられる潤滑油を塗布する。
潤滑油を塗布された温間プレス成形対象材6は、図1(a)に示されるようにセットされ、ポンチ5を押し下げることで温間プレス成形される。
温間プレス成形対象材6が、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材である場合、以下の条件で温間プレス成形することが必要である。
ダイス及びしわ押さえ金型の加熱温度は、200℃以下とする。これにより、アルミニウム合金板材のプレス成形に汎用的に用いられる潤滑油の使用が可能になる。一方、ダイス及びしわ押さえ金型の加熱温度が100℃以下では、フランジ部の変形抵抗の低下が不十分であるため、100℃超とする。なお、ダイス及びしわ押さえ金型の加熱温度の下限は、150℃以上とすることが好ましい。
ポンチの温度は、100℃以下とすることが必要である。また、ポンチの温度は低いほど好ましいが、冷媒の冷却装置及び配管等を考慮すると、−50℃以上が実用的な範囲であり、−30〜0℃の範囲が最適である。ポンチを冷却するため、冷却手段としてポンチ内に配管を設け、冷却装置に接続し、温度管理された冷媒を循環させればよい。ポンチを効率良く冷却するには、冷媒をエチレングリコール水溶液とすることが好ましい。また冷媒には、メタノール、エタノール等のアルコール類又は塩化メチレン等の有機ハロゲン化合物を使用してもよい。冷媒を冷却する水冷装置は特に制限されるものではなく、汎用のものを用いればよい。ポンチ肩部の冷却を促進するためには、ポンチと対向するカウンターポンチを設けてもよく、カウンターポンチにも水冷手段を設け、ポンチと同じ温度に冷却することが好ましい。
ダイス及びしわ押さえ金型とポンチとの温度差は、90℃以上とすることが必要である。これにより、アルミニウム合金板のフランジ部とポンチ肩部に相当する部分の強度差を適正な範囲とすることが可能になり、良好なプレス成形性を得ることができる。なお、ダイス及びしわ押さえ金型とポンチとの温度差の上限は、250℃とすることが好ましい。これは、ダイス及びしわ押さえ金型の加熱温度の上限である200℃と、ポンチ温度の好ましい下限である−50℃の差である。
潤滑油には、鋼板材、アルミニウム合金板材のプレス加工に用いられる汎用の金属加工油及び防錆油を使用することができる。これらの潤滑油は、鉱油又は合成油を基油とし、これに油性剤、極圧剤、防錆剤などの添加剤を加えたものである。潤滑油は引火点が100℃超であることが必要であり、引火点が200℃超であることが好ましい。なお、アルミニウム合金を温間成形する際に、ダイス及びしわ押さえ金型の加熱温度よりも高い引火点の潤滑油を使用することが好ましい。
次に、上述の条件で温間プレス成形することができる、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材について説明する。
本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材は、2以上の熱処理型アルミニウム合金板材を接合して構成したものである。したがって、1又は2以上の接合継手を有している。
図2は、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を、自動車の自動車用車体部品に適用した一実施形態を示す説明図であり、図2(a)は、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を構成する熱処理型アルミニウム合金板材、図2(b)は、図2(a)の熱処理型アルミニウム合金板材のそれぞれを接合した後の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材、図2(c)は、図2(b)の温間プレス成形用テーラードブランク材を、温間プレス成形した後の、自動車用車体部品を示す。
図2(b)中の符号30は、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を示す。図2(c)中の符号40は、自動車用車体部品を示す。
温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材30は、3枚の熱処理型アルミニウム合金板材21〜23で構成される。
熱処理型アルミニウム合金板材21は、熱処理型アルミニウム合金板材22及び23と、それぞれ、接合継手31及び32で接合されている。
接合継手31及び32は、後述する接合継手の要件を満たせば、いずれの接合継手も適合するが、溶接による熱影響が少ないという観点から、YAGレーザ溶接継手、COレーザ溶接継手が好適であり、本実施形態の接合継手31及び32は、いずれもYAGレーザ溶接継手である。
溶接継手の種類は、一つの温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の中で混在してもよく、例えば、接合継手31がYAGレーザ溶接継手、接合継手32がCOレーザ溶接継手としてもよい。
本実施形態では、接合継手31、32の順で形成したが、接合継手を形成する順に、特に制限はない。また、接合継手の一部又は全部を同時に形成してもよい。
なお、本実施形態では、3枚の熱処理型アルミニウム合金板材、2個の接合継手としたが、熱処理型アルミニウム合金板材の枚数、接合継手の個数は、これらに限られるものではない。
また、以下の説明のでは、都合上、i番目に形成した接合継手を、接合継手Jとする。例えば、本実施形態では、接合継手31、32の順で形成するので、接合継手31は、接合継手Jとなる。
次に、接合される熱処理型アルミニウム合金板材21〜23について説明する。熱処理型アルミニウム合金板材21〜23の板厚、材質は、特に制限はなく、温間プレス成形後の製品、即ち、本実施形態の場合には、自動車用車体部品40に要求される性能に基づき決定すればよい。
接合の観点からは、接合継手Jを構成する、一方の熱処理型アルミニウム合金板材の板厚をti1、他方の熱処理型アルミニウム合金板材の板厚をti2とすると、0.5≦ti1≦3.0、0.5≦ti2≦3.0の範囲が好ましい。
i1が0.5mm未満であると、接合するときに、熱処理型アルミニウム合金板材が溶け落ちし易く、また、変形しやすいため好ましくない。一方、ti1が3.0mmを超えると、接合に要する入熱量が多くなり、接合金属部の結晶粒界が脆化し、温間プレス成形性が低下するため好ましくない。したがって、板厚:ti1は、0.5≦ti1≦3.0の範囲が好ましい。ti2についても同様である。
板厚:ti1、ti2が上記範囲を満たした上で、ti2/ti1は、3.5以下であることが好ましい。ti2/ti1が3.5を超えると、接合の際に、一方の熱処理型アルミニウム合金板材(板厚ti1)と、他方の熱処理型アルミニウム合金板材(板厚:ti2)とで、接合時の入熱バランスを保つことが難しくなるため好ましくない。なお、ti2/ti1の下限値は、ti1=ti2の場合で1である。
次に接合継手Jについて説明する。本発明者らは、個々の接合継手Jについて、種々の検討を行うために、図3に示す、接合部を有する引張試験片を多数製作して、引張試験を行った。
図3は、2枚の熱処理型アルミニウム合金板材を突き合わせて接合して製作した引張試験片の形状を示し、図3(a)は正面図、図3(b)は図3(a)のI−I線に沿う断面図である。図3中の符号50は、接合部を有する引張試験片を示す。
接合部を有する引張試験片50は、板厚がti1である一方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部と、板厚がti2である他方の熱処理型アルミニウム合金板材とを、突き合わせて接合したものである。
接合部を有する引張試験片50は、母材51a、52a、熱影響部51b、52b、接合金属部53を有する。母材51aは、板厚がti1である一方の熱処理型アルミニウム合金板材である。母材52aは、板厚がti2である他方の熱処理型アルミニウム合金板材である。なお、板厚は、ti1≦ti2とする。
熱影響部51b、52b、接合金属部53は、母材51a、52aよりも材料特性が軟化していることが一般的である。
図4は、図3(b)の断面図のC−C線からの位置によるビッカース硬さの分布を説明する説明図である。なお、図3(b)中のC−C線は、母材51aと母材52aを接合する際の突き合わせ面を示す。
図3(b)において、母材51a、52a、熱影響部51b、52b、接合金属部53それぞれの部分のビッカース硬さを、JIS Z 2244に準拠して、試験力2.94Nで測定し、Vi1、Vi2、ViHAZ11、ViHAZ12、ViWとする。
ここで、
ΔViHAZ1=Vi1−ViHAZ1
ΔViHAZ2=Vi2−ViHAZ2
ΔViW1=ViHAZ1−ViW及び
ΔViW2=ViHAZ2−ViW
を定義する。
本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材は、次の範囲を満たすことが必要である。
0<ΔViW1<20
0<ΔViW2<20
ΔViW1及びΔViW2が20以上であると、接合部を有する引張試験片50は、熱影響部51b、52bが、所望の伸びを示すことなく破断するか、熱影響部51bと接合金属部53との界面、又は、接合金属部53で脆性的に破断する。
一方、ΔViW1及びΔViW2が0未満である場合、接合後の接合部の冷却速度が過度に速いことを意味し、熱影響部51b、52b内の硬度ばらつきが大きくなり、軟化した部分に応力が集中して、所望の伸びが得られなくなる。また、接合部を有する引張試験片50が、熱影響部51b、52bと熱影響部53との界面、又は、接合金属部53で破断することを防止する上でも、ΔViW1及びΔViW2の下限値は0とすることが必要である。
そして、かようなΔViW1及びΔViW2の範囲を満足しない接合継Jを有する、温間プレス成形用アルミニウム合金テ−ラードブランク材は、接合のままでは、温間プレス成形時に、部位毎の変形差が大きいことにより破損してしまう。したがって、ΔViW1及びΔViW2は、0以上20未満であることが必要である。
次に、接合継手Jが有する、接合金属部53、熱影響部51b、52の形状、大きさ(範囲)について、以下に説明する。
接合継手Jが有する、接合金属部53、熱影響部51b、52bが、接合部を有する引張試験片50内で、どのような形状、どれ位の大きさ(範囲)を占めるかは、引張試験結果、及び、引張試験後における、引張試験片の破断形態に大きな影響を及ぼす。
そして、かような接合継手Jを有する、アルミニウム合金テーラードブランク材を温間プレス成形した際、破損を生じるか否かに大きな影響を及ぼす。
接合金属53の形状、大きさ(範囲)は次のように定義する。
図3中、C−C線で示す突き合わせ面に対して直角方向の長さをW、C−C線で示す突き合わせ面に対して直角方向の中心部で、母材51a、52aの板厚方向の長さをhとしたとき、
{(ti1+ti2)/2}≦h≦ti2及び
1.5×ti1<W<2.5×ti2
の関係を満足し、接合金属53の断面は、凸形状である必要がある。
接合金属53の断面が、凹形状であり(図3において、上に凸の断面形状でなく)、かつ、hが{(ti1+ti2)/2}未満であると、接合金属53内で切り欠き形状を有することとなり、引張試験時に、その切り欠き部から脆性的に破壊する。
また、hがti2を超えると、接合金属53の中心部で、厚板側の母材52aの板厚:ti2を超える突起部を有することとなり、引張試験時に、その突起部の付け根から脆性的に破壊する。
したがって、hは、{(ti1+ti2)/2}≦h≦ti2の関係を満足する必要がある。
接合金属部53の大きさ(範囲)は、Wで代表する。Wの長さの下限値は、母材51aの板厚(ti1)の影響を大きく受ける。これは、接合時の入熱量は、薄板側の母材51aが溶け落ちないように決定されるからである。
が1.5×ti1以下であると、アンダーカットと呼ばれる欠陥が出現し、接合金属部53の端部が薄くなるため、接合金属部53と熱影響部51b、52bとの接合強度が充分でない。そのため、接合金属部53と熱影響部51b、52bとの界面、又は、接合金属部53の端部(ボンド部)で破断する。
一方、Wの長さの上限値は、母材52a(板厚:ti2)の影響を大きく受ける。これは、接合時の入熱量は、厚板側の母材52aが確実に溶解するように決定されるからである。Wが、2.5×ti2以上の場合、入熱過多となり、接合金属部53の結晶粒界の脆化により、接合金属部53で破断する。なお、Wの範囲は、種々の条件で接合した、接合部を有する引張試験片50の、引張試験結果から求めたものである。
そして、かようなWの範囲を満足しない接合継手Jを有する、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材は、接合のままでは、温間プレス成形時に破損を生じる。
引張試験片50が有する接合継手Jにおいて、h、W、Li1、Li2、ΔViW1、ΔViW2が上記範囲をすべて満足するとき、所望の引張強さ、伸びが得られ、引張試験後の破断位置が、母材51a、52a、又は、熱溶接部51b、52bとなり、伸びが14%以上となる。
そして、温間プレス成形用アルミウム合金テーラードブランク材が有する接合継手Jのすべてにおいて、h、W、Li1、Li2、ΔViW1、ΔViW2が上記範囲のすべて満足するとき、接合のままであっても、温間プレス成形する際に、接合継手Jが、良く塑性変形することで、金型と温間プレス成形用テーラードブランク材との間で発生する流動抵抗、特に、幅縮抵抗を低減することができるために、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を破損することなく、温間プレス成形することができる。
なお、h、W、Li1、Li2、ΔViW1、ΔViW2の上記範囲は、接合時の入熱によって影響される。したがって、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材が有する接合継手Jの、h、W、Li1、Li2、ΔViW1、ΔViW2の上記範囲は、接合のための入熱がなくなってから、即ち、すべての接合が終了した後、満足するものとする。
次に、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を構成する、アルミニウム合金板材(母材51a、52a)の材質について説明する。
本発明が対象とするアルミニウム合金板材は、熱処理型アルミニウム合金板材であれば、特に制限ない。AA規格乃至JIS規格の6000系合金が一般的であるが、2000系合金、7000系合金でもよい。
また、対象となる熱処理型アルミニウム合金板材の組成は、展伸材用合金、又は、押出材用合金の組成に限られず、鋳造用合金や、ダイカスト用合金の組成でもよい。
例えば、JIS規格のAC1A、AC1B、AC2A、AC2B、AC4A、AC4B、AC4C、AC4CH、AC4D、AC5A、AC8A、AC8B、AC8C、AC9A、AC9B、ADC1C、ADC3、ADC8、ADC10、ADC10Z、ADC11、ADC12、ADC12Z、ADC14である。
熱処理型アルミニウム合金板材に施される熱処理は、熱処理型アルミニウム合金板材中の金属組織を均一化しておくこと、接合後の硬度変化が小さいということから、T4処理が好ましいが、これに制限されるものではない。
なお、上記の合金は、AA規格乃至JIS規格で例示したが、合金系が同一であれば、他の規格の相当合金でもよい。
また、接合継手Jの一方の熱処理型アルミニウム合金板材(母材51a)と、他方の熱処理型アルミニウム合金板材(母材52a)の合金が異なってもよい。例えば、母材51aがJIS6022合金、母材52aがJIS6122合金とする場合である。
このように、異なる材質を接合した場合においても、本発明の温間プレス成形用テーラードブランク材が、接合のままでも、破損することなく、良好にプレス成形することができるのは、温間プレス成形時における、接合継手Jが有している熱影響部の塑性変形能が良好だからである。つまり、材質や板厚が変化する接合継手部においても、温間プレス成形時に、金型と、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材との間で局部的な流動抵抗、その中でも幅縮抵抗が、顕著に発生することがないためである。
次に、接合金属部53の成分組成について説明する。接合継手の種類(接合方法)によっては、フィラーワイヤ(溶加材)を使用することができ、接合金属部53の成分組成も、フィラーワイヤの成分組成を含有したものとしてよい。
フィラーワイヤの成分組成は、接合金属部53の成分組成に含有させたとき、接合金属部53の強度と延性を向上させる成分、例えば、マグネシウムを含有していることが好ましいが、接合金属部53の強度と延性を低下させなければ、いずれの成分組成でもよい。マグネシウムを含有するフィラーワイヤとしては、JIS規格の5000系合金のものが好ましい。
次に、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法について、上記実施形態、即ち、自動車用車体部品40の場合を例に説明する。
切断された熱処理型アルミニウム合金板材21〜23を、YAGレーザ溶接で、接合継手31及び32を形成し、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材30を製造する。本実施形態では、接合継手31及び32を、接合継手31、32の順で形成しているが、ここでは、接合継手31、即ち、接合継手Jの形成方法について説明する。溶接継手32、即ち、接合継手Jは同様に形成すればよい。
接合継手Jは、熱処理型アルミニウム合金板材21の端部と、熱処理型アルミニウム合金板材22の端部とを突き合せて溶接される。熱処理型アルミニウム合金板材21は、板厚がt11である一方の熱処理型アルミニウム合金板材(薄板)に、熱処理型アルミニウム合金板材22は、板厚がt12である他方の熱処理型アルミニウム合金板材(厚板)に相当する。
図5は、熱処理型アルミニウム合金板材21(薄板)と、熱処理型アルミニウム合金板材22(厚板)とを突き合せて、YAGレーザ溶接している状態を示す説明図であり、図5(a)は、突き合わせ面の延長方向からみた図、図5(b)は、突き合わせ面に対して垂直な方向からみた図である。
熱処理型アルミニウム合金板材21(薄板)の端部と、熱処理型アルミニウム合金板材22(厚板)の端部とは、突き合わされて、突き合わせ面60を形成する。
YAGレーザ発生器61で発生したレーザビーム62は、入熱中心63に収束される。入熱中心63は、熱処理型アルミニウム合金板材22(厚板)の方向へ、距離D離れた位置とする。
距離Dは、0≦D≦t12/4の範囲とする。距離Dが、t12/4を超えると、熱処理型アルミニウム合金板材22(厚板)への入熱が減少し、熱処理型アルミニウム合金板材21(薄板)と、熱処理型アルミニウム合金板材22(厚板)とを接合することができない。したがって、距離Dは、t12/4以下とする。
一方、Dが0未満、即ち、入熱中心63が熱処理型アルミニウム合金板材21(薄板)側になると、熱処理型アルミニウム合金板材22(厚板)を溶解するのに必要な熱を入熱すると、熱処理型アルミニウム合金板材21(薄板)が、接合中に溶け落ちることが多くなり好ましくない。
また、入熱中心63の板厚方向の位置は、熱処理型アルミニウム合金板材21の表面である。
板厚がt11である熱処理型アルミニウム合金板材21(一方の熱処理型アルミニウム合金板材)と、板厚がt12(ただし、t11≦t12)である熱処理型アルミニウム合金板材22(他方の熱処理型アルミニウム合金板材)を溶接する条件は、薄板側の一方の熱処理型アルミニウム合金板材、つまり、熱処理型アルミニウム合金板材21が、接合中に溶け落ちせず、かつ、厚板側の他方の熱処理型アルミニウム合金板材、つまり、熱処理型アルミニウム合金板材22が、溶解するのに十分な熱量を入熱する接合条件を適宜選択すればよい。
入熱量を決定する条件には、本実施形態のYAGレーザ溶接の場合には、レーザ出力、溶接速度、ビーム径、シールドガス量、バックシールドガス量である。
接合の際に、フィラーワイヤを供給して、接合金属部53を強化してもよい。フィラーワイヤを使用することで、接合金属部53の強度を高めるだけでなく、入熱量も変化させることができ、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材が有する接合継手Jに必要なビッカース硬さの範囲、ΔViW1、ΔViW2、ΔViHA1、ΔViHAZ2を多様に変化させることができ都合がよい。
また、入熱等を変化させることで、接合金属部53及び熱影響部51b、52bの大きさ(範囲)、即ち、W、Li1、Li2を変化させることができ、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材が有する接合継手Jとして、より好ましいものが得られる。
次に、フィラーワイヤの供給方法について説明する。図5(b)には、フィラーワイヤ64が示されている。
フィラーワイヤ64の直径をFとしたとき、Fは、0.6〜1.4mmの範囲が好ましい。Fが0.6mm未満であると、フィラーワイヤ径が細すぎて座屈し、フィラーワイヤ64の供給が不安定になる。一方、Fが1.4mmを超えると、フィラーワイヤ64を溶融するために多くの入熱が必要になり、その多くの入熱により、W、Li1、Li2が大きくなり好ましくない。したがって、Fの範囲は、0.6〜1.4mmの範囲が好ましい。
フィラーワイヤ64の供給は、図5(b)に示すように、フィラーワイヤ64の先端を、入熱中心63からの距離Gx1、他方の熱処理型アルミニウム合金板材22(厚板)の表面からの距離Gy1として、接合中に次の関係を満たしながら供給されることが好ましい。なお、溶接方向は、フィラーワイヤ64側(図5(b)における右側)とする。
0≦Gx1≦F1、かつ、
0≦Gy1≦F1/4
x1が0未満であると、レーザビーム62がフィラーワイヤ64にあたって、レーザビーム62が反射し、フィラーワイヤ64の溶融不良となる。一方、Gx1がF1を超えると、フィラーワイヤ64の溶け込みが不十分なために、接合金属53の成分組成が不均一となり、所望のV1Wが得られない。
なお、本実施形態では、F=1.2mm、JIS規格の5356合金のフィラーワイヤ64を使用して、Jを形成した。
そして、接合継手31(接合継手J)を形成後、接合継手32を形成して、接合継手J及びJを有する、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材30を製造することができる。
なお、本実施形態の自動車用車体部品40に関し、熱処理型アルミニウム合金板材21〜23の板厚及び材質は次の通りである。
・熱処理型アルミニウム合金板材21 板厚:1.2mm 材質:JIS6022合金
・熱処理型アルミニウム合金板材22 板厚:2.0mm 材質:JIS6022合金
・熱処理型アルミニウム合金板材23 板厚:1.2mm 材質:JIS6162合金
次に、本発明を実施例でさらに説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
図3に示した、接合部を有する引張試験片を製作するため、合金Aと、合金Bの熱処理型アルミニウム合金板材を準備した。合金Aは、JIS6022合金相当、合金Bは、JIS6162合金相当、それぞれの成分組成を表1に示す。
Figure 2011251294
合金Aについては、板厚が1.2mm、2.0mmの熱処理型アルミニウム合金板材を、合金Bについては、板厚が1.0mm、2.0mmの熱処理型アルミニウム合金板材を準備した。
接合は、YAGレーザ溶接で行った。フィラーワイヤは、合金aと合金bのものを準備した。合金aは、JIS4043合金相当、合金bは、JIS5356合金相当で、それぞれの成分組成を表2に示す。なお、フィラーワイヤの直径は、1.2mmである。
Figure 2011251294
合金A及び合金Bの熱処理型アルミニウム合金板材を表3及び表4に示す組み合わせで接合した。YAGレーザ溶接の条件は、表3及び表4に併記した。なお、YAGレーザ溶接の共通条件は次に通りである。
・レーザビーム径:0.6mm
・シールドガス:20lpm
・バックシールドガス:30lpm
表3及び4中、一方の熱処理型アルミニウム合金板材をアルミニウム合金板材1、他方の熱処理型アルミニウム合金板材をアルミニウム合金板材2とする。
Figure 2011251294
Figure 2011251294
製作した、各引張試験片の、h、W、ΔViW1、ΔViW2、ΔViHA1、ΔViHAZ2を測定した。測定結果は、表3及び4に併記した。その後、引張試験するとともに、破断位置を記録した。結果を表11〜17に示す。なお、破断位置の記載において、ボンド部とは、接合金属部と熱影響部との界面のことをいうものとする。
表3及び表4から明らかなように、h、W、ΔViW1、ΔViW2が、本発明の範囲内である接合継手Jを有する試験片(発明例)は、すべて、アルミニウム合金板材1、2の母材又は熱影響部で破断し、伸びが14%以上であることが確認できた。
表3及び4の発明例に示した接合継手Jを有する温間プレス用テーラードブランク材は、接合のままであっても、温間プレス後に、すべての接合継手Jが優れた延性を示し、破損することなく、温間プレス成形することができた。
一方、表3及び4から明らかなように、h、W、ΔViW1、ΔViW2が、本発明の範囲外である接合継手Jを有する試験片(比較例)は、すべて、接合金属部、又は、接合金属と熱影響部との界面、あるいは、接合金属部又はボンド部で破断し、伸びも9%未満であることが確認できた。
したがって、表3及び4の比較例に示した接合継手Jを有する温間プレス用テーラードブランク材は、温間プレス中に、接合部、又はその近傍で破損を生じ、温間プレス成形をすることができなかった。
なお、上述したところは、本発明の実施形態を例示したものにすぎず、本発明は、特許請求の範囲の記載範囲内において種々変更を加えることができる。
前述したように、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材によれば、温間プレス成形を行う前に、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材に熱処理を施すことを必須とすることなく、特別な潤滑剤を使用せずに、汎用の潤滑油を使用して、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を、成形時に破損させることなく、温間プレス成形することができる。本発明は、工業上、利用価値の高いものである。
また、本発明の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法によれば、接合後に熱処理を施すことを必須とすることなく、汎用の潤滑油を使用して温間プレス成形をすることができる、2以上のアルミニウム合金板材を接合した、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を得ることができる。本発明は、工業上、顕著な効果を奏するものである。
100 温間プレス成形装置
1 ダイス
2 しわ押さえ金型
3 ヒータ
4 熱電対
5 ポンチ
6 温間プレス成形対象材
7 配管
21〜23 アルミニウム合金板材
30 温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材
31、32 接合継手
40 自動車用車体部品
50 接合部を有する引張試験片
51a 母材(一方の熱処理型アルミニウム合金板材)
51b 熱影響部
52a 母材(他方の熱処理型アルミニウム合金板材)
52b 熱影響部
53 接合金属部
60 突き合わせ面
61 YAGレーザ発生器
62 レーザビーム
63 入熱中心
64 フィラーワイヤ

Claims (10)

  1. 加熱手段を設けたダイス及びしわ押さえ金型の温度を100℃超200℃以下とし、冷却手段を設けたポンチの温度を10℃以下とし、ポンチとダイスの温度差を90℃以上とし、引火点が100℃超である潤滑剤を塗布して温間プレス成形する、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材が、2以上の熱処理型アルニウム合金板材を接合して構成され、1又は2以上の接合継手を有し、
    該1又は2以上の接合継手のうち、i番目の接合継手Jは、板厚がti1である一方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部と、板厚がti2(ただし、ti1≦ti2)である他方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部との突き合わせ面で接合した接合継手であり、
    前記接合継手Jは、
    前記突き合せ面に対して直角方向の長さがW、前記突き合せ面に対して直角方向の中心部で、前記熱処理型アルミニウム合金板材に対して板厚方向の長さがhである、凸断面形状を有する接合金属部を有し、
    前記h及び前記Wは、{(ti1+ti2)/2}≦h≦ti2及び1.5×ti1<W<2.5×ti2を満足し、
    前記一方の熱影響部のビッカース硬さ:ViHAZ1と前記接合金属部のビッカース硬さ:ViWとの差をΔViW1、前記他方の熱影響部のビッカース硬さ:ViHAZ2と前記接合金属部のビッカース硬さ:ViWとの差をΔViW2としたとき、0<ΔViW1<20及び0<ΔViW2<20を、すべての接合の終了後に満足することを特徴とする、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
  2. 前記接合継手Jが、YAGレーザ溶接継手であることを特徴とする、請求項1に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
  3. 前記熱処理型アルミニウム合金板材が、AA乃至JIS規格に規定される6000系アルミニウム合金板材であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
  4. 前記接合金属部の成分組成が、接合フィラーワイヤの成分組成を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
  5. 前記接合フィラーワイヤの成分組成が、マグネシウムを含有することを特徴とする、請求項4に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材。
  6. 加熱手段を設けたダイス及びしわ押さえ金型の温度を100℃超200℃以下とし、冷却手段を設けたポンチの温度を10℃以下とし、ポンチとダイスの温度差を90℃以上とし、引火点が100℃超である潤滑剤を塗布して温間プレス成形する、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材を製造するに際し、
    2以上の熱処理型アルミニウム合金板材を、1箇所又は2箇所以上で接合し、該接合のi箇所目は、板厚がti1である一方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部と、板厚がti2(ただし、ti1≦ti2)である他方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部とを互いに突き合わせ、
    前記一方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部と、前記他方の熱処理型アルミニウム合金板材の端部との突き合わせ面から、前記他方の熱処理型アルミニウム合金板材の方向へ、距離D離れた位置を入熱中心として入熱し、該入熱中、前記距離Dが、0≦D≦ti2/4の関係を満足し、かつ、前記一方の熱処理型アルミニウム合金板材が溶け落ちない入熱量で前記突き合わせ面を接合して形成する接合継手Jが、前記突き合せ面に対して直角方向の長さがW、前記突き合せ面に対して直角方向の中心部で、前記熱処理型アルミニウム合金板材に対して板厚方向の長さがhである、凸断面形状を有する接合金属部を有し、
    前記h及び前記Wは、{(ti1+ti2)/2}≦h≦ti2及び1.5×ti1<W<2.5×ti2を満足し、
    前記一方の熱影響部のビッカース硬さ:ViHAZ1と前記接合金属部のビッカース硬さ:ViWとの差をΔViW1、前記他方の熱影響部のビッカース硬さ:ViHAZ2と前記接合金属部のビッカース硬さ:ViWとの差をΔViW2としたとき、0<ΔViW1<20、0<ΔViW2<20を、すべての接合継手Jの形成後に満足することを特徴とする、温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
  7. 前記入熱が、YAGレーザによることを特徴とする、請求項6に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
  8. 前記熱処理型アルミニウム合金板材が、AA乃至JIS規格に規定される6000系アルミニウム合金であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
  9. 前記接合をするに際し、
    直径Fの溶接フィラーワイヤの先端が、前記入熱中心から距離Gxi離れた位置、及び、前記他方の熱処理型アルミニウム合金板材の表面から距離Gyi離れた位置を維持して供給され、
    前記接合中、0≦Gxi≦F、かつ、0≦Gyi≦F/4の関係を満たすことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
  10. 前記接合フィラーワイヤの成分組成が、マグネシウムを含有することを特徴とする、請求項9に記載の温間プレス成形用アルミニウム合金テーラードブランク材の製造方法。
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