JP2011250731A - アミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化させた微生物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、アミダーゼ活性及び/又はニトリラーゼ活性を有する微生物におけるアミダーゼ遺伝子及び/又はニトリラーゼ遺伝子が、欠失若しくは不活性化された微生物である。当該欠失若しくは不活性化は、ドナー微生物からアミダーゼ活性及び/又はニトリラーゼ活性を有するレシピエント微生物への接合伝達を利用した形質転換方法を用いることを含む、アミダーゼ遺伝子及び/又はニトリラーゼ遺伝子の欠失若しくは不活性化方法であって、所定の工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする前記方法により行われ得る。
【選択図】なし
Description
ニトリルヒドラターゼを生産する微生物としては、例えば、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレビシエラ(Klebsiella)属、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属、ノカルディア(Nocardia)属等に属する細菌(微生物)を挙げることができる。中でも、ロドコッカス属細菌の一種であるロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株(以下、J1株と称する)は、アクリルアミドの工業的生産に使用されており、有用性が実証されている。また、その菌株が産生するニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子も明らかとなっている(特許文献1参照)。
また、相同組換えを用いた遺伝子欠損も有効な手法であり、アミダーゼ欠失に関しては、ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)TH3についての報告がある。この報告の例では、宿主微生物がアミダーゼを複数有しているため、1つのアミダーゼを欠失させただけでは副反応は完全に抑えられていない(非特許文献1)。また、当該報告の方法ではゲノム上にマーカーが残るため、複数の遺伝子欠失は複数のマーカー遺伝子が必要となる。
ところで、ゲノム上に存在する遺伝子を欠失又は不活性化等する手法としては、相同組換え(Homologous recombination)を利用する方法が挙げられる。これは、標的遺伝子の塩基配列中に薬剤耐性マーカー遺伝子等を相同組換えにより挿入し、当該遺伝子が機能発現しない状態にする、又は(標的遺伝子を当該遺伝子の一部若しくは全部を含まない配列に置換することにより)標的遺伝子自体を欠失させて、その発現そのものを阻害する方法である。大腸菌や酵母等のいくつかの微生物では、効率的な相同組換え技術が確立しているため(例えば、SOE-PCR法(例えば、SOE-PCR(Gene, vol. 77, p. 61-68(1989))、比較的容易に標的遺伝子の欠失又は不活性化を行うことができる。
従って、ロドコッカス属細菌等の、もともとアミダーゼ活性やニトリラーゼ活性を有する微生物について、アミダーゼ遺伝子やニトリラーゼ遺伝子が欠失又は不活性化等されたもの(特に、より効率的且つ汎用的に当該耐性遺伝子が欠失又は不活性化等されたもの)は、十分に得られていないのが現状である。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(a)レシピエント微生物として、前記接合伝達に供するドナー微生物が感受性を示す薬剤への耐性が強化された微生物を作製する工程;
(b)ドナー微生物として、(i)レシピエント微生物中のアミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子とその周辺の塩基配列とを含む塩基配列において当該アミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化させた塩基配列領域、(ii)当該ドナー微生物において機能する接合伝達開始領域、(iii)当該ドナー微生物において機能する複製開始領域、(iv)レシピエント微生物が感受性を示す薬剤に対する耐性遺伝子、及び(v)レシピエント微生物に対する条件致死遺伝子を含む、遺伝子改変用プラスミドを用いて形質転換された微生物を作製する工程;
(c)前記(b)で作製されたドナー微生物から前記(a)で作製されたレシピエント微生物への接合伝達を行うことにより、当該レシピエント微生物の形質転換体を作製する工程;並びに
(d)前記(c)で作製された形質転換体を、前記条件致死遺伝子が機能し得る培養条件で培養する工程。
上記(1)の微生物において、ドナー微生物としては、例えば大腸菌が挙げられる。また、ドナー微生物が感受性を示す薬剤としては、例えば、クロラムフェニコール、アンピシリン、ゲンタマイシン、テトラシクリン、カルベニシン及びナルジクス酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、レシピエント微生物が感受性を示す薬剤としては、例えば、カナマイシンが挙げられる。
(3)上記(1)の微生物を培養して得られる培養物又は当該培養物の処理物をニトリル化合物に接触させ、当該接触により生成されるアミド化合物を採取することを特徴とする、アミド化合物の製造方法。
また、本発明によれば、ロドコッカス属細菌等の微生物における相同組換え技術を確立し、上記のような遺伝的に改変した微生物を効率的かつ汎用的に得ることができる。さらには、当該改変微生物を用いてニトリルヒドラターゼを効率的に産生し得る微生物を作製し、当該微生物を微生物触媒として用いて様々なニトリル化合物から低コストかつ高効率でアミド化合物を製造することもできる。
1.アミダーゼ遺伝子及び/又はニトリラーゼ遺伝子が改変された微生物
本発明に係るアミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子が改変(欠失又は不活性化(以下、「欠失等」と称することがある))された微生物(以下、「本発明の微生物」と称することがある)は、前述した通り、ニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物におけるアミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子が欠失又は不活性化された微生物である。
ここで、ロドコッカス属細菌としては、例えば、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)及びロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス・ピリジノボランス(Rhodococcus pyridinivorans)等が好ましく挙げられる。
また、バチルス属細菌としては、例えば、バチルス・スミシ(Bacillus smithii)(特開平09-248188号)等が好ましく挙げられる。シュードノカルディア属細菌としては、例えば、シュードノカルディア・サーモフィラJCM3095(特開平09-275978号)、等が好ましく挙げられる。ジオバチルス属細菌としては、例えば、ジオバチルス・サーモグルコシダシアス(国際公開第04/108942号)、ジオバチルス・カルドキシロシチリカスM16(特開2006-158323号)等が好ましく挙げられる。シュードモナス属細菌としては、例えば、シュードモナス・クロロラフィスB23(特開昭58- 86093)シュードモナス プチダ DSM16276(国際公開第05/2689号)、シュードモナス マルギナリス DSM16275(国際公開第05/2689号)、ノカルディア属細菌としては、例えばノカルディア・YS-2002株(CN1584024)、ノカルディア・sp.JBRs(GenBank:AY141130)が好ましく挙げられる。
R-CONH2+ H2O → R-COOH + NH3
(式中、Rは、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアリール基、あるいは置換又は無置換の飽和又は不飽和複素環基を表す。)
ここで、「アミダーゼ活性」とは、アミド化合物のアミド基に作用して対応するカルボン酸化合物に変換させる活性を意味する。本発明の微生物のアミダーゼ活性の測定方法としては、例えば、アミド化合物の1種であるアクリルアミドを用いる方法が挙げられる。この方法では、アミダーゼ活性の結果としてアクリルアミドに対応するカルボン酸化合物、すなわちアクリル酸が得られる。従って、本発明の微生物をアクリルアミドに接触させ、生成するアクリル酸の量の増加を定量することで、アミダーゼ活性を測定することができる。あるいは、アクリルアミドの消費量を定量することによってもアミダーゼ活性を測定することができる。
R-CN + 2H2O → R-COOH + NH3
(式中、Rは、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアリール基、あるいは置換若しくは無置換の飽和又は不飽和複素環基を表す。)
ここで、「ニトリラーゼ活性」とは、ニトリル化合物のニトリル基に作用して対応するカルボン酸化合物に変換する活性を意味する。本発明の微生物のニトリラーゼ活性の測定方法としては、例えば、二トリル化合物の1種であるアクリロニトリルを用いる方法が挙げられる。この方法では、ニトリラーゼ活性の結果としてアクリロニトリルに対応するカルボン酸化合物、すなわちアクリル酸が得られる。従って、本発明の微生物をアクリロニトリルに接触させ、生成するアクリル酸の量の増加を定量することで、ニトリラーゼ活性を測定することができる。あるいは、アクリロニトリルの消費量を定量することによってもニトリラーゼ活性を測定することができる。
R-CN + H2O → R-CONH2
(式中、Rは、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアリール基、あるいは置換若しくは無置換の飽和又は不飽和複素環基を表す。)
ここで、「ニトリルヒドラターゼ活性」とは、ニトリル化合物のニトリル基に作用して対応するアミド化合物に変換させる活性を意味する。本発明の微生物のニトリルヒドラターゼ活性の測定方法としては、例えば、ニトリル化合物の1種であるアクリロニトリルを用いる方法が挙げられる。この方法では、ニトリルヒドラターゼ活性の結果としてアクリロニトリルに対応するアミド化合物、すなわちアクリルアミドが得られる。従って、本発明の微生物をアクリロニトリルに接触させ、生成するアクリルアミドの量の増加を定量することで、ニトリルヒドラターゼ活性を測定することができる。あるいは、アクリロニトリルの消費量を定量することによってもニトリルヒドラターゼ活性を測定することができる。
なお、本発明においては、例えば、上記対象微生物がロドコッカス・ロドクロウスJ1株の場合は、アミダーゼ遺伝子(配列番号1;アミノ酸配列は配列番号2)とニトリラーゼ遺伝子(配列番号3;アミノ酸配列は配列番号4)を有しているため、標的遺伝子としては、これらのいずれか一方でもよいし、両方でもよく、限定はされない。
2.アミダーゼ遺伝子及び/又はニトリラーゼ遺伝子が改変された微生物の製造
本発明の微生物を製造するための、アミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化する方法は、以下の通りである。
すなわち、ドナー微生物からニトリルヒドラターゼ活性を有するレシピエント微生物への接合伝達を利用した形質転換方法を用いることを含む、アミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子の欠失又は不活性化方法であって、以下の工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする方法である。
(b)ドナー微生物として、下記(i)〜(v):
(i) レシピエント微生物中のアミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子(標的遺伝子)とその周辺の塩基配列とを含む塩基配列において当該アミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化させた塩基配列領域、
(ii) 当該ドナー微生物において機能する接合伝達開始領域、
(iii) 当該ドナー微生物において機能する複製開始領域、
(iv) レシピエント微生物が感受性を示す薬剤に対する耐性遺伝子、及び
(v) レシピエント微生物に対する条件致死遺伝子
を含む、遺伝子改変用プラスミドを用いて形質転換された微生物を作製する工程;
(c)工程(b)で作製されたドナー微生物から工程(a)で作製されたレシピエント微生物への接合伝達を行うことにより、当該レシピエント微生物の形質転換体を作製する工程;並びに
(d)工程(c)で作製された形質転換体を、前記条件致死遺伝子が機能し得る培養条件で培養する工程。
一方、ドナー微生物としては、上記レシピエント微生物と接合伝達可能な微生物であれば限定はされない。例えば、大腸菌が好ましい。
工程(a)では、接合伝達に供するレシピエント微生物として、接合伝達に供するドナー微生物が感受性を示す薬剤への耐性を強化した微生物を作製する。「薬剤への耐性を強化する」とは、レシピエント微生物が薬剤耐性を有していない場合には、薬剤耐性を付与することをいい、レシピエント微生物が薬剤耐性の乏しい場合には、当該耐性をより強くすることをいう。
接合伝達法を使用する場合、レシピエントとなる微生物には薬剤耐性マーカーが必要である。よって、薬剤耐性を有していない微生物、又は薬剤耐性の乏しい微生物を使用する場合、薬剤選択可能な程度の十分な薬剤耐性を有する株(レシピエント)の作製が必要となる。ここで、薬剤としては、接合伝達法を使用することを考慮し、接合伝達に供するドナー微生物(接合伝達時のドナー微生物)が感受性を示す薬剤が好ましい。当該薬剤としては、クロラムフェニコール、アンピシリン、カナマイシン、トリメトプリム、ゲンタマイシン、ナルジクス酸、カルベニシン、チオストレプトン、テトラサイクリン及びストレプトマイシン等が好ましく、クロラムフェニコール及びアンピシリンがより好ましい。
工程(b)では、接合伝達に供するドナー微生物として、所定の遺伝子改変用プラスミドを用いて形質転換された微生物を作製する。遺伝子改変用プラスミド、すなわちレシピエント微生物中のアミダーゼ遺伝子及び/又はニトリラーゼ遺伝子を改変するためのプラスミドDNAとしては、前述の(i)〜(v)の構成(遺伝子・塩基配列)を含むものを用いる。
ここで、前記(i)の塩基配列領域は、改変の対象とするレシピエント微生物中のアミダーゼ遺伝子及び/又はニトリラーゼーゼ遺伝子と当該遺伝子の周辺の塩基配列とを含む塩基配列において、当該アミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼーゼ遺伝子を欠失又はさせた塩基配列領域である。当該塩基配列領域の作製は、レシピエント微生物のゲノムから、アミダーゼ遺伝子及び/又はニトリラーゼ遺伝子と当該遺伝子の周辺の塩基配列とを含む塩基配列の単離(クローニング)及び遺伝子ライブラリー作製やPCR等の公知技術を用いて行うことができる。
単離したアミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化する方法としては、限定はされず、如何なる方法を適用してもよい。例えば、SOE-PCR法や、ゲノムDNAの相同領域を有するプラスミドを形質転換する方法を用いることができる。さらに、形質転換の方法としては、エレクトロポレーション法や接合伝達法が使用できる。
前記(ii)の接合伝達開始領域は、使用するドナー微生物中において接合伝達の開始点となる塩基配列を含む領域であれば、限定はされない。例えば、プラスミドRP4由来のoriTが好ましい。
前記(iii)の複製開始領域は、使用するドナー微生物中において前記遺伝子改変用プラスミドの自己複製起点として機能し得る塩基配列を含む領域であれば、限定はされない。例えば、oriVが好ましい。
前記(v)の条件致死遺伝子は、レシピエント微生物のゲノム上に導入された場合に、当該微生物を死に至らしめる作用を有し得る遺伝子であれば、限定はされない。例えば、sacB遺伝子が好ましい。sacB遺伝子は、当該遺伝子を保有し発現する微生物(例えばロドコッカス属細菌等)をスクロース含有培地で培養した場合に、スクロースを基質とし当該微生物に対して致死作用を有する有害物質を産生する酵素をコードする遺伝子である。
前記遺伝子改変用プラスミドにおける(i)〜(v)の構成は、例えば、上流から順に、前記(i)の塩基配列領域、前記(iv)の耐性遺伝子、前記(v)の条件致死遺伝子、前記(ii)の接合伝達開始領域、前記(iii)の複製開始領域の順で配されていることが好ましい。前記(i)〜(v)の構成を含む遺伝子改変用プラスミドの構築は、公知の遺伝子組換え技術を用いて実施することができる。
工程(b)では、上述したような各構成を有する遺伝子改変用プラスミドをドナー微生物内に導入して形質転換された微生物、すなわち接合伝達に供するドナー微生物を作製する。その際、形質転換の方法としては、エレクトロポレーション法やカルシウム法(アルカリSDS法)等の、微生物の形質転換方法として公知の方法を用いることができる。
工程(c)では、工程(b)で作製されたドナー微生物から工程(a)で作製されたレシピエント微生物への接合伝達を行う。通常は、ドナー微生物及びレシピエント微生物のそれぞれの細胞懸濁液を混合し、適当なプレート培地(LB培地等)上に均一に広げて、両微生物の接合を行わせる。
当該接合においては、ドナー微生物中の遺伝子改変用プラスミドがレシピエント微生物内に移動し、レシピエント微生物のゲノムと上記プラスミドとの相同配列で2重交叉が起こり当該ゲノム中のアミダーゼ遺伝子及び/又はニトリラーゼ遺伝子が欠失される。この接合により、レシピエント微生物の形質転換体が作製される。すなわち、当該形質転換体は、ドナー微生物中の遺伝子改変用プラスミドの一部が相同組換えによりレシピエント微生物のゲノム上に導入されたものである。
所望の形質転換体であるかどうかの確認は、レシピエント微生物自体の薬剤耐性、及び前記遺伝子改変用プラスミド由来の薬剤耐性を利用して行うことができる。具体的には、両薬剤を含む培地(例えば、カナマイシン及びクロラムフェニコール含有培地等)において上記接合後の微生物を培養することにより、所望の形質転換体を選択することができる。
工程(d)では、工程(c)で作製されたレシピエント微生物の形質転換体(形質転換微生物)を、前記遺伝子改変用プラスミド由来の条件致死遺伝子が機能し得る培養条件で培養(継代培養)する。条件致死遺伝子が機能し得る培養条件としては、限定はされないが、例えば条件致死遺伝子がsacB遺伝子の場合は、スクロース含有培地を用いた培養が好ましく挙げられる。
当該培養においては、上記条件致死遺伝子を有する形質転換微生物は生育困難であるため、継代培養により、自然誘発的に、当該微生物のゲノム上から相同組換えにより上記致死遺伝子を含む塩基配列領域が除かれた(脱落した)形質転換微生物を得ることができる。
よって、通常は、さらに別の培養条件でも培養したり、培養物を用いてアミダーゼ活性及び/又はニトリラーゼ活性測定や各種タンパク質分析法を適用して分析することにより、所望の形質転換微生物を選択することがより好ましい。
3.ニトリルヒドラターゼの製造方法
本発明のニトリルヒドラターゼの製造方法は、前述した本発明の微生物を培養し、得られる培養物から当該ニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする方法である。
ここで、当該製造方法に用いる本発明の微生物としては、上記アミダーゼ遺伝子及び/又はニトリラーゼ遺伝子が改変された微生物に、ニトリルヒドラターゼ遺伝子を当該微生物の遺伝子に挿入(付加)させたものであってもよいし、ニトリルヒドラターゼ遺伝子を含む組換えベクターを導入することによりなされたものであってもよいし、その両方を兼ね備えてあるものであってもよい。
組換えベクターを用いる場合は、ニトリルヒドラターゼ遺伝子が、形質転換される本発明の微生物において発現可能なように、ベクターに組み込まれることが必要である。例えば、ニトリルヒドラターゼを産生し得る微生物のゲノム等からニトリルヒドラターゼ遺伝子を含むPCR断片を得て、得られた断片を発現ベクターに連結することで、ニトリルヒドラターゼ遺伝子を含む発現ベクターを得ることができる。
当該発現ベクターには、ニトリルヒドラターゼ遺伝子のほか、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)等を連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
本発明において、「培養物」とは、培養上清、培養菌体、又は菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。形質転換微生物を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。目的のニトリルヒドラターゼは、上記培養物中に蓄積される。
形質転換微生物を培養する培地は、宿主菌となる本発明の微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、微生物の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が挙げられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅若しくは炭酸カルシウム等が挙げられる。また、必要に応じ、培養中の発泡を防ぐために消泡剤を添加してもよい。さらに、培地にはニトリルヒドラターゼの補欠分子であるコバルトイオンや鉄イオンを添加し、酵素の誘導剤となるニトリル類やアミド類を添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)で誘導可能なプロモーターを有する発現ベクターで形質転換した形質転換微生物を培養するときには、IPTG等を培地に添加することができる。また、インドール酢酸(IAA)で誘導可能なtrpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換微生物を培養するときには、IAA等を培地に添加することができる。
培養方法としては、固体培養、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養などが挙げられるが、振盪培養又は通気攪拌培養(ジャーファーメンター)により好気的条件下で培養することが好ましい。
また、場合により、本培養に先立ち、少量の前培養を行うこともできる。例えば、ロドコッカス属細菌の形質転換微生物を培養する場合は、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、30〜40℃の温度下で行うことが好ましい。
上記培養条件で培養すると、高収率でニトリルヒドラターゼを上記培養物中、すなわち培養上清、培養菌体、又は菌体の破砕物の少なくともいずれかに蓄積することができる。これらニトリルヒドラターゼを含有する「培養物」は、後述するアミド化合物の製造方法に使用することができる。
破砕後、必要に応じて菌体の破砕残渣(細胞抽出液不溶性画分を含む)を除くことができる。残渣を除去する方法としては、例えば、遠心分離やろ過などが挙げられ、必要に応じて、凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除去効率を上げることもできる。残渣を除去した後に得られた上清は、細胞抽出液可溶性画分であり、粗精製したニトリルヒドラターゼ溶液とすることができる。
また、ニトリルヒドラターゼが菌体内に生産される場合、菌体そのものを遠心分離、膜分離等で回収して、未破砕のまま使用することも可能である。
形質転換微生物を培養して得られたニトリルヒドラターゼの生産収率は、例えば、培養液あたり、菌体湿重量又は乾燥重量あたり、粗酵素液タンパク質あたりなどの単位で、SDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)やニトリルヒドラターゼ活性測定などにより確認することができるが、特段限定されるものではない。SDS-PAGEは当業者であれば公知の方法を用いて行うことができる。また、ニトリルヒドラターゼ活性は、上述した活性の値を適用することができる。
4.アミド化合物の製造方法
上述のように製造されたニトリルヒドラターゼ(前述した培養物を含む)は、酵素触媒(菌体のまま利用する微生物触媒等を含む)として物質生産に利用することができる。例えば、ニトリル化合物に、ニトリルヒドラターゼを接触させることにより、当該接触によりニトリル化合物が変換されてアミド化合物を製造することができる。
酵素触媒としては、前述のように適当な宿主内でニトリルヒドラターゼ遺伝子が発現するように遺伝子導入を行い、宿主を培養した後の培養物、又は当該培養物の処理物を利用することができる。処理物としては、例えば、培養後の菌体をアクリルアミド等のゲルで包含したもの、グルタルアルデヒドで処理したもの、アルミナ、シリカ、ゼオライト及び珪藻土等の無機担体に担持したもの等が挙げられる。
反応方法、及び反応終了後のアミド化合物の採取方法は限定されず、基質及び酵素触媒の特性により適宜選択することができる。例えば、当該反応において、基質となるニトリル化合物の濃度は、0.1〜10% (W/V)が好ましく、5% (W/V)程度が特に好ましい。また、当該反応は、pH 5〜10の緩衝液又は水中で行うことが好ましく、例えば、50 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)中で行うことができる。
反応後の酵素触媒は、その活性が失活しない限り、リサイクル使用することが好ましい。失活の防止やリサイクルを容易にすることに鑑み、酵素触媒は処理物の形態で使用されることが好ましい。
上記反応により生成したアクリルアミドは、ガスクロマトグラフィーなどの公知の方法を用いて定量することができる。また、アクリルアミドの産生量から前記酵素触媒のニトリルヒドラターゼ活性を換算することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)接合伝達プラスミド(pK19mobsacB1)の作製
pDNR-1r(clontech社製)中のsacB遺伝子を、NspV切断サイトを付加したプライマーSAC-01(配列番号5)及びSAC-02(配列番号6)を使用したPCRにより増幅し、約1.9 kbのsacB遺伝子断片を得た。PCRは以下の反応条件で行った。
SAC-01: 5'-GGTTCGAATACCTGCCGTTCACTATTATTTAGTG-3'(配列番号5)
SAC-02: 5'-GGTTCGAATCGGCATTTTCTTTTGCGTTTTTATTTG-3'(配列番号6)
滅菌水 22μl
PrimeSTAR(登録商標) Max Premix(2×)
(タカラバイオ社製) 25μl
SAC-01(10μM)(配列番号5) 1μl
SAC-02(10μM)(配列番号6) 1μl
pDNR-1r(100ng)(clontech社製) 1μl
総量 50μl
98℃ 10秒、55℃ 15秒及び72℃ 20秒の反応を30サイクル
ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株を100mlのMYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、1% グルコース、0.2% K2HPO4、0.2% KH2PO4、pH 7.0)中、30℃にて72時間振盪培養した。
培養後、集菌し、集菌された菌体をSaline-EDTA溶液(0.1M EDTA、0.15M NaCl(pH 8.0))4 mlに懸濁した。懸濁液にリゾチーム40 mgを加えて、37℃で1〜2時間振盪した後、-20℃で凍結した。
次に、10mlのTris-SDS液(1%SDS、0.1M NaCl、0.1M Tris-HCl(pH 9.0))を穏やかに振盪しながら加え、さらにプロテイナーゼK(メルク社)を10μl(終濃度10mg/ml)加えて37℃で1時間振盪した。
次に、DNAを3mlのTE緩衝液に溶解させ、リボヌクレアーゼA溶液(100℃、15分間の加熱処理済)を10μg/mlになるよう加え、37℃で30分間振盪した。さらに、プロテイナーゼKを加え37℃で30分間振盪した後、等量のTE飽和フェノールを加えて遠心し、上層と下層に分離させた。
上層についてこの操作を2回繰り返した後、同量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加え、同様の抽出操作を繰り返した。その後、上層に2倍量のエタノールを加え、ガラス棒でDNAを巻きとり回収し、J1株ゲノムゲノムDNAを得た。このゲノムDNAは、配列番号1に示すアミダーゼ遺伝子を有している。
アミダーゼ遺伝子の上流域と下流域を含んだ配列を取得するため、以下に示す反応液組成及びプライマーを用いてPCRを行った。
AMD-01: 5'-ggCCTGCAGG GAATTCCTCG GCTACGCCGT-3'(配列番号7)
AMD-02: 5'-TAGGGGAGGG TGGGCATCAC TCTTTCACGG CGACCGTTCG-3'(配列番号8)
滅菌水 22μl
PrimeSTAR(登録商標) Max Premix(2×)
(タカラバイオ社製) 25μl
AMD-01(10μM)(配列番号7) 1μl
AMD-02(10μM)(配列番号8) 1μl
J1株ゲノムDNA(100ng) 1μl
総量 50μl
98℃:10秒、55℃:15秒及び72℃:20秒の反応を30サイクル
AMD-03: 5'-cgaacggtcg ccgtgaaaga gtgatgccca ccctccccta-3'(配列番号9)
AMD-04: 5'-ccTCTAGA GCATGCGGAGTCCTTCGTTCGGCA-3'(配列番号10)
滅菌水 21μl
PrimeSTAR(登録商標) Max Premix(2×)
(タカラバイオ社製) 25μl
AMD-01(10μM)(配列番号7) 1μl
AMD-04(10μM)(配列番号10) 1μl
AMD-01とAMD-02の増幅産物(50ng) 1μl
AMD-03とAMD-04の増幅産物(50ng) 1μl
総量 50μl
温度サイクル:
98℃:10秒、55℃:15秒及び72℃:40秒の反応を30サイクル
ニトリラーゼ遺伝子の上流域と下流域を含んだ配列を取得するため、以下に示す反応液組成及びプライマーを用いてPCRを行った。
NTR-01: 5'-GGCCTGCAGG GAATGCCAGG ACCCTTGTCA-3'(配列番号11)
NTR-02: 5'-TTCAGCGACA GCACATCCGG AGCGCACAGC GAACTTCGCC-3'(配列番号12)
滅菌水 22μl
PrimeSTAR(登録商標) Max Premix(2×)
(タカラバイオ社製) 25μl
NTR-01(10μM)(配列番号11) 1μl
NTR-02(10μM)(配列番号12) 1μl
J1株ゲノムDNA(100ng) 1μl
総量 50μl
98℃:10秒、55℃:15秒及び72℃:20秒の反応を30サイクル
NTR-03: 5'-ggcgaagttc gctgtgcgct gtgatgccca ccctccccta-3'(配列番号13)
NTR-04: 5'-CCTCTAGA CGATCGACGATGCGTT-3'(配列番号14)
滅菌水 21μl
PrimeSTAR(登録商標) Max Premix(2×)
(タカラバイオ社製) 25μl
NTR-01(10μM)(配列番号11) 1μl
NTR-04(10μM)(配列番号14) 1μl
NTR-01とNTR-02の増幅産物(50ng) 1μl
NTR-03とNTR-04の増幅産物(50ng) 1μl
総量 50μl
98℃:10秒、55℃:15秒及び72℃:40秒の反応を30サイクル
続いて、上記でクローニングした断片を制限酵素XbaI及びSse8387Iで切断し、約600 bpの断片を回収し、接合伝達用のプラスミド(pK19mobsacB1)のXbaI-Sse8387I部位に連結し、プラスミドを作製した。得られたプラスミドは、ニトリラーゼ遺伝子欠失プラスミド:pBKNTR01と名付けた。図3に、プラスミドpBKNTR01の構造を示す模式図を示した。
接合伝達に使用するドナーは、遺伝子欠失株のセレクションに薬剤耐性が必要である。そこで、種々の薬剤耐性株の取得を試み、アンピシリン耐性を有するJ1株の変異株を下記の方法で取得した。
2μg/mlのアンピシリンを含んだMYKプレート(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%マルツエキス、0.2% KH2PO4、0.2% K2HPO4、1.5%寒天)にJ1株をストリークし、コロニーが生育するまで30℃で保温した。約2週間後、アンピシリン耐性株が生育してきたので、再度2μg/mlのアンピシリンプレートにストリークして、30℃で保温した。
次に、2μg/mlのアンピシリンプレートから生育したコロニーを、5μg/mlのアンピシリンプレートにストリークし、耐性株が出現するまで30℃で保温した。以下、同様の操作を、アンピシリン濃度を10μg/ml→15μg/ml→50μg/ml→100μg/mlに高めながら繰り返し、100μg/mlのアンピシリン濃度で生育するアンピシリン耐性株(J1-Amp株)を得た。
(1)ドナーの調製
乾熱滅菌した試験管に大腸菌S17-1λpirのコンピテントセル20μlにプラスミドpBKAMD01 1μlを加え、氷上で30分静置した。42℃で30秒ヒートショック後、SOC培地を180μl添加し、37℃で1時間振とう培養を行った。その後、50μg/mlカナマイシンを含んだLBプレートに塗布し、37℃で一晩静置した。
翌日、プレートに生育したコロニーをLB培地1mlで回収し、遠心分離により菌体を回収し、遠心上清を除去した。同様の操作をもう一度繰り返し、最後に0.5 mlのLB培地を添加し、菌体懸濁液を調製した。この菌体懸濁液をドナー溶液とした。
J1−Amp株をMYKプレートにストリークし、30℃で2日生育させた。生育したコロニーは実施例3(1)と同様の方法で回収、洗浄し、レシピエントとなる菌体懸濁液を調製した。
実施例3(1)で調製したドナー溶液と、実施例3(2)で調製したレシピエント溶液を100μlずつ混合し、抗生物質を含まないMYKプレートに塗布し、30℃で一晩静置した。
翌日、生育したコロニーは1mlのLB培地で回収し、100μlずつカナマイシン濃度を10、30、50μg/mlとした選抜プレート(すべて100μg/mlアンピシリンを含む)に塗布した。塗布したプレートは組み換え菌コロニーが出現するまで30℃で1週間保温した。
その結果、100μg/mlアンピシリン、10μg/mlカナマイシンを含んだプレートにのみ3個のコロニーが出現した。得られたコロニーの一つを#A1と命名し、以後の実験に使用した。
接合伝達により得られた組み換え菌#A1は、ゲノムのアミダーゼ遺伝子の領域に相同組換えによりプラスミドが挿入されているが、アミダーゼ遺伝子を欠失するには2段階の相同組換えが必要である。そこで、次に、sacB遺伝子を利用した選抜を実施した。
10%ショ糖を含んだMYKプレートを作製し、#A1のコロニーを滅菌水に懸濁した液を適度に希釈して塗布し、30℃で静置した。生育したコロニーについて10個のコロニーからゲノムDNAを調製し、以下に示す反応液組成及びプライマーを用いてPCRを行って、得られた断片(PCR産物)のサイズを電気泳動で調べた。なお、プライマーAMD-01及びAMD-04は、実施例1で用いたものと同様である。
滅菌水 22μl
PrimeSTAR(登録商標) Max Premix(2×)
(タカラバイオ社製) 25μl
AMD-01(10μM)(配列番号7) 1μl
AMD-04(10μM)(配列番号10) 1μl
ゲノムDNA(100ng) 1μl
総量 50μl
98℃:10秒、55℃:15秒及び72℃:20秒の反応を30サイクル
DA1〜DA5株とJ1株を下記の培地で培養し、アミダーゼ活性を確認した。本培養の培地は、ニトリルヒドラターゼの誘導剤である尿素とコバルト、及びアミダーゼの誘導剤であるコバルトとシクロヘキサンカルボアミドを含むものを用いた。前培養は30℃で3日間、本培養は30℃で2日間、振とう培養した。
グルコース 20 g/L
味液 20 g/L
ポリペプトン 5 g/L
酵母エキス 3 g/L
MgSO4・7H2O 1 g/L
KH2PO4 1 g/L
K2HPO4 1 g/L
グルコース 15 g/L
ポリペプトン 3 g/L
酵母エキス 3 g/L
MgSO4・7H2O 1 g/L
KH2PO4 1 g/L
K2HPO4 1 g/L
エタノール 2 g/L
CoCl2・6H2O 0.025 g/L
チアミン 0.002 g/L
ビタミンK 0.002 g/L
尿素 15 g/L
シクロヘキサンカルボアミド 2 g/L
まず、本培養後に得られた培養液1 mlと50 mMリン酸緩衝液(pH 7.7)4 mlとを混合し、さらに1 Mのアクリロニトリルを含む50 mMリン酸緩衝液(pH 7.7)5 mlを混合液に加えて、10 ℃で2時間反応させた。反応液から遠心分離によって、菌体を除いた後、HPLC(カラム:Inertsil ODS-3V 4.6×250mm、GLサイエンス社製;溶離液:10 mM KH2P04・H3P04 (pH 2.8)/acetonitrile=3:2;流速:1.0 ml/分;検出:UV 254nm)にて分析し、アクリルアミドおよびアクリル酸の量からアミダーゼ活性を評価した。
反応終了後の液中の組成を評価した結果、J1株の場合は0.78 M アクリルアミドと0.22 Mアクリル酸が生成したが、アミダーゼ遺伝子を欠失させたDA1〜DA5株ではアクリルアミドのみ生成した。
(1)ドナーの調製
実施例3と同様に実施した。
DA1株をMYKプレートにストリークし、30℃で2日生育させた。生育したコロニーは実施例3(1)と同様の方法で回収、洗浄し、レシピエントとなる菌体懸濁液を調製した。
実施例5(1)で調製したドナー溶液と、実施例5(2)で調製したレシピエント溶液を100μlずつ混合し、抗生物質を含まないMYKプレートに塗布し、30℃で一晩静置した。
翌日、生育したコロニーは1 mlのLB培地で回収し、100μlずつカナマイシン濃度を10、30、50μg/mlとした選抜プレート(すべて100μg/mlアンピシリンを含む)に塗布した。塗布したプレートは組み換え菌コロニーが出現するまで30℃で1週間保温した。
その結果、100μg/mlアンピシリン、10μg/mlカナマイシンを含んだプレートにのみ2個のコロニーが出現した。得られたコロニーの一つを#AN1と命名し、以後の実験に使用した。
実施例3(4)と同様の方法で実施した。
接合伝達により得られた組み換え菌#AN1は、ゲノムのアミダーゼ遺伝子の領域に相同組換えによりプラスミドが挿入されているが、アミダーゼ遺伝子を欠失するには2段階の相同組換えが必要である。そこで次に、sacB遺伝子を利用した選抜を実施した。
10%ショ糖を含んだMYKプレートを作製し、#A1のコロニーを滅菌水に懸濁した液を適度に希釈して塗布し、30℃で静置した。生育したコロニーについて10個のコロニーからゲノムDNAを調製し、PCR断片のサイズを電気泳動で調べた。
滅菌水 22μl
PrimeSTAR(登録商標) Max Premix(2×)
(タカラバイオ社製) 25μl
NTR-01(10μM)(配列番号11) 1μl
NTR-04(10μM)(配列番号14) 1μl
ゲノムDNA(100ng) 1μl
総量 50μl
98℃:10秒、55℃:15秒及び72℃:20秒の反応を30サイクル
DAN1〜DAN4株とJ1株を下記の培地で培養し、ニトリラーゼ活性を確認した。本培養の培地は、ニトリルヒドラターゼの誘導剤である尿素とコバルト、及びニトリラーゼの誘導剤であるイソバレロニトリルを含むものを用いた。前培養は30℃で3日間、本培養は30℃で2日間、振とう培養した。
グルコース 20 g/L
味液 20 g/L
ポリペプトン 5 g/L
酵母エキス 3 g/L
MgSO4・7H2O 1 g/L
KH2PO4 1 g/L
K2HPO4 1 g/L
グルコース 15 g/L
ポリペプトン 3 g/L
酵母エキス 3 g/L
MgSO4・7H2O 1 g/L
KH2PO4 1 g/L
K2HPO4 1 g/L
エタノール 2 g/L
CoCl2・6H2O 0.025 g/L
チアミン 0.002 g/L
ビタミンK 0.002 g/L
尿素 15 g/L
イソバレロニトリル 2 g/L
まず、本培養後に得られた培養液1 mlと50 mMリン酸緩衝液(pH 7.7)4 mlとを混合し、さらに1 Mのアクリロニトリルを含む50 mMリン酸緩衝液(pH 7.7)5 mlを混合液に加えて、10 ℃で2時間反応させた。次いで、菌体を濾別して、HPLCを用いて、生成したアクリル酸の量を定量し、アクリル酸の量からニトリラーゼ活性を換算した。なお、分析条件は、実施例4と同様とした。
反応終了後の液中の組成を評価した結果、J1株の場合は0.65 Mアクリルアミドと0.35 Mアクリル酸が生成したが、ニトリラーゼ遺伝子を欠失させたDAN1〜DAN5株ではアクリルアミドのみ生成した。
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA
配列番号9:合成DNA
配列番号10:合成DNA
配列番号11:合成DNA
配列番号12:合成DNA
配列番号13:合成DNA
配列番号14:合成DNA
Claims (10)
- ニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物におけるアミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子が欠失又は不活性化された微生物であって、前記欠失又は不活性化が、下記の工程(a)〜(d)を含む、ドナー微生物からニトリルヒドラターゼ活性を有するレシピエント微生物への接合伝達を利用した形質転換方法により行われるものである、前記欠失又は不活性化された微生物。
(a)レシピエント微生物として、前記接合伝達に供するドナー微生物が感受性を示す薬剤への耐性が強化された微生物を作製する工程;
(b)ドナー微生物として、(i)レシピエント微生物中のアミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子とその周辺の塩基配列とを含む塩基配列において当該アミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化させた塩基配列領域、(ii)当該ドナー微生物において機能する接合伝達開始領域、(iii)当該ドナー微生物において機能する複製開始領域、(iv)レシピエント微生物が感受性を示す薬剤に対する耐性遺伝子、及び(v)レシピエント微生物に対する条件致死遺伝子を含む、遺伝子改変用プラスミドを用いて形質転換された微生物を作製する工程;
(c)前記(b)で作製されたドナー微生物から前記(a)で作製されたレシピエント微生物への接合伝達を行うことにより、当該レシピエント微生物の形質転換体を作製する工程;並びに
(d)前記(c)で作製された形質転換体を、前記条件致死遺伝子が機能し得る培養条件で培養する工程。 - 前記ニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物及び前記レシピエント微生物が、ロドコッカス属細菌である、請求項1記載の微生物。
- ロドコッカス属細菌が、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株又はその変異株である、請求項2記載の微生物。
- ドナー微生物が大腸菌である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微生物。
- ドナー微生物が感受性を示す薬剤が、クロラムフェニコール、アンピシリン、ゲンタマイシン、テトラシクリン、カルベニシン及びナルジクス酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物。
- レシピエント微生物が感受性を示す薬剤が、カナマイシンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物。
- 欠失又は不活性化させるアミダーゼ遺伝子が、配列番号1に示す塩基配列を含むものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の微生物。
- 欠失又は不活性化させるニトリラーゼ遺伝子が、配列番号3に示す塩基配列を含むものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の微生物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の微生物を培養し、得られる培養物からニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする、ニトリルヒドラターゼの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の微生物を培養して得られる培養物又は当該培養物の処理物をニトリル化合物に接触させ、当該接触により生成されるアミド化合物を採取することを特徴とする、アミド化合物の製造方法。
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