JP2011250720A - 4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドの製造方法 - Google Patents

4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドの製造方法 Download PDF

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彩 飯塚
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康裕 二宮
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Abstract

【課題】 効率良く4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドを製造する方法を提供すること。
【解決手段】 下記工程を含む、4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドの製造方法。
(イ)4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に気体を供給する工程、
(ロ)前記ニトリルを、金属の塩の存在下にニトリルヒドラターゼと接触させることによりアミド化する工程
【選択図】なし

Description

本発明は、4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドの製造方法に関する。
4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドは、カルニチンの原料(カルニチン製造の際の中間体)として重要である。
4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドを製造する方法としては、例えば、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを水和する方法が挙げられる。当該水和反応は、(I)塩酸などの鉱酸やアルカリを使用する方法、(II)アルカリと過酸化水素を併用する方法などにより行われている。しかしながら、これらの方法では工程が煩雑であり、また、対応する酸が副生し収率が低下してしまうなどの問題がある(特許文献1参照)。
また、生物学的反応としては、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルにニトリルヒドラターゼを作用させて、4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドを製造する方法が知られている(特許文献2参照)。
一方、4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドの前駆体である4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを製造する方法としては、(i)エピハロヒドリンと青酸のアルカリ金属塩を反応させる方法(特許文献3参照)、(ii)エピハロヒドリンと青酸を反応させる方法(特許文献4参照)、(iii)1,3−ジハロ−2−プロパノールに青酸又は青酸のアルカリ金属塩を反応させる方法(特許文献5参照)、(iv)エピハロヒドリンと青酸のアルカリ金属塩とを酵素触媒下で反応させる方法(特許文献6参照)、(v)1,3−ジハロ−2−プロパノールと青酸又は青酸のアルカリ金属塩とを酵素触媒下で反応させる方法(特許文献7〜10参照)が知られている。酵素反応で使用する酵素としては、ハロヒドリンエポキシダーゼが使用されている。当該酵素反応によれば、生成する4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルが光学活性体であり、特に有用である。
このようにして製造された4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む反応液中には、未反応の青酸及びその他の原料が残存する。引き続いてニトリルヒドラターゼによりアミド化反応を実施しようとする場合、残存している青酸及びその他の原料によりニトリルヒドラターゼが失活するため、反応効率が非常に低くなる。
従って、通常、上述の製造方法によって生成した4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルは、反応液から有機溶媒で抽出し、減圧下に溶媒を青酸と共に除去し、必要によりさらに蒸留するという公知の方法により精製した後、ニトリルヒドラターゼによる4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミド製造工程に供される。
しかし、上述の方法では有機溶媒の使用並びに抽出及び蒸留精製にかかるコスト面・環境面の負担が大きく、工業的に好適であるとはいえなかった。また、蒸留などの方法により青酸及びその他の原料を除去しても、アミド化反応の反応速度が非常に遅く、反応速度を上昇させるためには大量のニトリルヒドラターゼを必要とする場合があった。
そこで、本発明者は、ニトリル化合物中に極微量に含まれる青酸を金属やアルカリ処理による化学的方法により低減させる方法(特許文献11参照)や加熱処理を行うことによりアミド化反応を効率的に進行させる方法(特許文献12参照)を提案しているが、未だ反応効率は不十分であり、更に効率を高くすることが望まれていた。
特開平01−287065号公報 特開平04−365491号公報 特開昭63−316758号公報 特開2002−241357号公報 特開平05−219965号公報 特開平03−053890号公報 特開平03−053889号公報 特開2001−025397号公報 特開2008−017838号公報 特開2008−131861号公報 特開平11−123098号公報 特開2008−67626号公報
従って、本発明の目的は、効率良く4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドを製造する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に気体を供給し、金属の塩の存在下にニトリルヒドラターゼによるアミド化反応を行うことにより効率良く4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、(イ)4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に気体を供給する工程、及び(ロ)前記ニトリルを、金属の塩の存在下にニトリルヒドラターゼと接触させることによりアミド化する工程を含む、4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドの製造方法に関する。
本発明によれば、効率良く4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドを得ることができる。
(イ)4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に気体を供給する工程
(1)4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリル
本発明で使用する4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルは、市販されているものを使用することもできるし、公知又は新規な方法で製造したものを使用することもできる。
公知の方法としては、例えば、(イ)特開昭63−316758号公報に示されるような、エピハロヒドリンと青酸のアルカリ金属塩を反応させる方法;(ロ)特開2002−241357号公報に示されるような、エピハロヒドリンと青酸を反応させる方法;(ハ)特開平5−219965号公報に示されるような、1,3−ジハロ−2−プロパノールに青酸または青酸のアルカリ金属塩を反応させる方法;(ニ)特開平03−053890号公報に示されるような、エピハロヒドリンと青酸のアルカリ金属塩とを酵素触媒下で反応させる方法;(ホ)特開平03−053889号公報、特開2001−025397号公報、特開2008−017838号公報に示されるような、1,3−ジハロ−2−プロパノールと青酸または青酸のアルカリ金属塩とを酵素触媒下で反応させる方法を挙げることができる。
これらの中でも、(ハ)で得られる4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを好適に使用することができる。当該方法によれば、収率が高く、また、不純物も抑制された4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを使用することができるからである。
上記4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの光学活性の種類は限定されない。例えば、光学的に純粋なL体又はR体の4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、ラセミ体の4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、光学活性に偏りがある(L体又はR体のどちらかがもう一方よりも多く含まれる)4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを使用することができる。好ましくは、R−4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルである。
ここで、本明細書において、エピハロヒドリン、1,3−ジハロ−2−プロパノール、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリル及び4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドの「ハロ」とは、ハロゲン元素を示す。より詳細にはフッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)を示す。好ましくは塩素、臭素であり、より好ましくは塩素である。
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルとしては、(R)−4−フルオロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、(S)−4−フルオロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、(R)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、(R)−4−ブロモ−3−ヒドロキシブチロニトリル、(S)−4−ブロモ−3−ヒドロキシブチロニトリル、(R)−4−ヨード−3−ヒドロキシブチロニトリル、(S)−4−ヨード−3−ヒドロキシブチロニトリルが挙げられる。好ましくは、(R)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、(R)−4−ブロモ−3−ヒドロキシブチロニトリル、(S)−4−ブロモ−3−ヒドロキシブチロニトリルであり、より好ましくは(R)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルである。
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルが酵素反応により製造されたものである場合、溶媒(溶液)中には使用した酵素由来の固形物が存在する。この場合は、当該固形物が残存したまま使用しても良いし、除去してから使用してもよい。当該固形物を除去する場合には、常法によって行えば良く、ろ過や遠心分離といった方法が例示される。
上記方法により得られた4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルは、反応終了後の溶液(反応液)をそのまま使用することができる。また、上記反応液を濃縮した濃縮液、反応終了後の溶液からニトリルを抽出した抽出液、更にカラムクロマトグラフィー等の常法により精製された精製物等、いずれも使用することができる。どの状態のものを選択するかは、アミド化反応の際に使用するニトリルヒドラターゼの反応速度及び酵素の使用量等を考慮し、適宜選択することができる。
(2)4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリル溶液
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリル溶液中の4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの濃度は、後の工程で十分なアミド化が行われれば限定されない。例えば、0.1〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
溶液中のシアンイオンは、極力低減することが好ましい。例えば、その濃度は1000ppm以下とすることが好ましい。100ppm以下とすることがより好ましく、10ppm以下とすることが更に好ましい。1000ppm以下とすることにより、後の工程のアミド化反応において酵素活性の阻害を防ぐことができる。溶液中のシアンイオン濃度が1000ppm以上である場合には、蒸留することにより濃縮し、シアンイオンを除去することができる。
濃縮を行う際、シアンイオンの除去効率を上げ、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの分解を防ぐために、蒸留ボトムを中性ないし酸性に維持することが好ましい。蒸留ボトムのpHは7以下が好ましく、5以下がより好ましい。pHの下限については特に限定されないが、pHは0以上とすることが好ましく、2以上とすることがより好ましい。
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリル溶液の溶媒の種類は、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルが十分に溶解し、且つ、後の工程のアミド化反応において十分な効率が得られれば限定されない。水、有機溶媒又はこれらの混合物を使用することができる。後の工程で酵素反応を行うことから、水が好ましい。例えば、上述したように得られた4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む水溶液を、そのまま使用することができる。また、必要に応じて、濃縮等により濃度を調整したり、精製したりしてから使用することも可能である。
有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、メタクリル酸メチルなどのエステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどの塩素系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、テロラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド等の有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒は単一のものを単独で用いることもできるし、複数のものを混合して用いることもできる。複数の溶媒を混合して用いる場合、その種類や混合比は限定されず、適宜選択することができる。水と有機溶媒の混合物を溶媒として使用する場合も、その混合比等は限定されない。
(3)気体の供給
本発明では、アミド化反応を行う前に、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に気体を供給する。後の工程において効率良くアミド化反応を進行させることができるからである。
(3−1)気体の種類
供給する気体の種類は、後の工程において効率良くアミド化反応を進行させることができれば限定されない。例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガス、水蒸気、空気を使用することができる。これらの気体は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。また、気体中に酸素を含んでも良いが、その濃度は40vol%以下とすることが好ましく、30vol%以下がより好ましく、25%以下が更に好ましい。4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルが酸化される可能性をより小さくするためである。
(3−2)供給方法
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に気体を供給する方法は、後の工程において効率良くアミド化反応を進行させることができれば特に限定されない。
例えば、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に、散気装置を用いて気体をバブリングすることができる。散気装置は、気体を供給することによって4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液中で気泡を発生させるものであれば、その形態は特に限定されない。また、空気透過膜を通して気体を供給することもできる。このとき使用する空気透過膜の形態や種類も限定されない。
気体の供給速度と供給時間は、後の工程において効率良くアミド化反応を進行させることができれば特に限定されず、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの濃度やその後のアミド化反応の条件等に応じて適宜選択することができる。例えば、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液100mLに対して、20〜5000mL/minとするのが好ましい。100〜4000mL/minがより好ましく、300〜3000mL/minが更に好ましい。20mL/min以上とするのは、後の工程において効率良くアミド化反応を進行させることができるからである。5000mL/min以下とするのは、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの分解や副生成物の生成を防ぐことができるからである。
供給時間についても限定されず、例えば、0.5〜48時間とすることができる。1〜24時間がより好ましく、2〜10時間が更に好ましい。0.5時間以上とするのは、後の工程において効率良くアミド化反応を進行させることができるからである。48時間以下とするのは、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの分解や副生成物の生成を防ぐことができるからである。
気体を供給する際の環境は、密閉下であっても開放下であってもよい。また、常圧、減圧、加圧、いずれの状態で行ってもよい。また、気体を供給する場合に、攪拌下に行うことが好ましい。気体を供給する効果(効率の良いアミド化反応)がより良く得られるからである。
更に、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液を噴射する(噴射して次の工程を行う容器に添加する)ことや、激しく撹拌することにより気体と接触させることも、上記の気体を供給するのと同様の効果が得られれば、本発明における気体を供給することに含まれる。
(3−3)pH
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に気体を供給する際の当該溶液のpHは、中性ないし酸性とすることが好ましい。0〜7が好ましく、0.5〜6がより好ましく、1〜5が更に好ましい。溶液のpHを7以下とすることにより、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの分解を防ぐことができるからである。
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含むのpHが7を超えている場合、酸を添加することや反応液を30℃以上、沸点以下に加熱することで、pHを7以下に下げることできるが、酸を添加することが好ましい。これは、加熱を行った場合、pHが下がるまでに、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの分解と不純物である4−ヒドロキシクロトノニトリルが生成するからである。
使用できる酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸、安息香酸、トルイル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸や、塩酸、亜硝酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、次亜燐酸、亜燐酸、燐酸等の無機酸が例示され、特に塩酸、硫酸、硝酸、リン酸が好ましい。使用方法は特に制限されないが、取り扱いの容易さから水溶液が好ましい。
最適な酸の添加量は、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの製造条件、保存する際の濃度、温度、時間、雰囲気により異なるが、製品純度の許容範囲に応じて適宜選択することができる。
pHの調整を容易にするために、添加物として緩衝液を使用することもできる。緩衝液としては、例えば、リン酸、ホウ酸、クエン酸、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、o−フタル酸、コハク酸又は酢酸等の塩等によって構成される緩衝液、トリス緩衝液あるいはグッド緩衝液等が例示される。
(3−3)温度その他
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリル溶液に気体を供給する際の当該溶液の温度は、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルが分解されなければ、水溶液の凝固点から沸点までの温度範囲で特に限定されない。例えば、0〜100℃が好ましく、1〜90℃がより好ましく、5〜30℃が更に好ましい。
また、以下に述べるように、本発明におけるニトリルヒドラターゼを用いたアミド化反応は、金属の塩の存在下に行うが、上記の気体の供給は金属の塩の存在下に行っても良い。即ち、金属の添加と気体の供給の順序は限定されない。
(ロ)前記ニトリルを、金属の塩の存在下にニトリルヒドラターゼと接触させることによりアミド化する工程
(4)金属の塩(金属塩)の添加
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に、金属の塩を添加することにより、すなわち、金属の塩の存在下にアミド化反応を行うことにより、ニトリルヒドラターゼを用いたアミド化酵素反応を効率よく進行させることができる。
金属としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、鉛、銅及び銀からなる群から選ばれる金属の塩の1種類以上が好ましい。コバルトがより好ましい。塩の形態は特に限定されず、例えば、硝酸塩、ハロゲン化物塩、硫酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、塩化物塩等のハロゲン化塩が好ましい。
添加する金属塩の濃度は、後の工程のアミド化が効率良く進行させることができれば限定されないが、例えば、1〜1000ppmとすることが好ましく、5〜500ppmがより好ましく、10〜200ppmが更に好ましい。1ppm以上とするのは、効率良くアミド化反応を進行させることができるからである。1000ppmとするのは、金属の塩による酵素活性の阻害が生じるのを回避することができるからである。
また、金属塩を添加した後、アミド化反応を行うまでの時間(金属塩の処理時間)についても特に限定されない。例えば、金属塩を添加してから1秒〜1年間、好ましくは10秒〜1ヶ月間、より好ましくは5分〜24時間とすることができる。1秒以上とするのは、金属塩を添加することによる効率の良いアミド化という効果が十分に得られるからである。また、1年間以下とするのは、金属塩の効果が消失するのを防ぐことができるからである。
金属塩の添加の際、及び/又は金属塩を添加した後は、必要に応じて撹拌することができる。金属塩添加の効果をより高くするためである。
その他、金属の塩を添加する際の溶液の条件(pH、温度、シアンイオンの濃度等)は限定されず、後の工程のニトリルヒドラターゼを用いたアミド化反応を行う際の条件と同様の条件で行えばよい。すなわち、当該条件に設定した後に金属塩での処理を行い、次いでアミド化反応を行っても良いし、また、金属塩を添加した後に、溶液を当該条件に設定し、アミド化反応を行っても良い。溶液の条件を設定する方法は、上述した方法でも公知の方法でもどちらでもよい。金属の塩を添加した後にpHを調整する場合は、アミド化反応を行う際の所定のpHに調整した後、1秒以上、好ましくは5分以上経ってからアミド化反応に供することが好ましい。
(5)ニトリル化合物のアミド化
(5−1)ニトリルヒドラターゼ
4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルのアミド化反応において使用される酵素としては、ニトリルヒドラターゼが挙げられる。ニトリルヒドラターゼとは、ニトリル化合物の水和反応によるアミド化合物の生成を触媒する酵素をいい、国際的な酵素分類ではリアーゼに属する酵素である。
本発明において使用するニトリルヒドラターゼは、4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルのニトリルをアミドへ変換する反応を触媒することができればその期限や種類については限定されない。
例えば、アクロモバクター(Achromobacter)属、アシドボラックス(Acidovorax)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アースロバクター(Arthrobacter)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、キャンディダ(Candida)属、カセオバクター(Caseobacter) 属、コマモナス(Comamonas)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ディーツィア(Dietzia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルビニア(Erwinia)属、ジオバチルス(Geobacillus)属、ゴルドナ(Gordona)属、クレブシエラ(Klebsiela)属、ミクロアスカス(Microascus)モルガネラ(Morganella)属、パントエア(Pantoea)属、プロテウス(Proteus)属、シュードモナス(Pseudomonas) 属、シュードノカルディナ(Pseudonocardia)属、ロドコッカス(Rhodococcus) 属、リゾビウム(Rhizobium)属、セラチア(Serratia)属、シクタリジウム(Syctalidium)属、ツカムレラ(Tukamurella)属、に属する微生物が産生するニトリルヒドラターゼである。
より詳細には、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)IFO 12138、ブレビバクテリウム ヘルボラム(Brevibacterium helvolum)ATCC11822 、コリネバクテリウム フラベシエンス(Corynebacterium flavescens)IAM 1642 、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)IFO 12540 およびIFO 12539 、ストレプトマイセスアルボグリセルス(Streptomyces aLBogriseolus)HUT 6045、ストレプトマイセス クリゾマルス(Streptomyces chrysomallus)HUT 6141、ストレプトマイセス シネレオルバー(Streptomyces cinereouruber)HUT6142、ストレプトマイセス ヂアスタチカス(Streptomyces diastaticus)HUT 6116、ストレプトマイセス オリバセウス(Streptomyces olivaceus)HUT 6061、ストレプトマイセス ルブロシアノヂアスタチカス(Streptomyces rubrocyanodiastaticus)HUT 6117、クレブシエラ ニュウモニアエ(Klebsiella pneumoniae)IFO 12019、IFO 3319、IFO12059、IAM 1063、クレブシエラ ニュウモニアエ サブスピーシズニュウモニアエ(Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae) NH-36T2株、セラチア ピリムシカ(Serratia plymuthica)IFO 3055、セラチア マルセッセンス(Serratia marcescens)IAM 1105、エルビニア キャロトボラ(Erwinia carotovora)IFO 3057、ツカムレラ ポーロメタボラム(Tukamurella paurometabolum)JCM 3226、ゴルドナ ルブロペルチンクタス(Gordona rubropertinctus)JCM 3227、モルガネラ モルガニ(Morganella morganii)IFO 3848、プロテウス ブルガリス(Proteus vulgaris)IFO 3167、エンテロバクター エアロジェネス(Enterobacter aerogenes)IFO 12010、ミクロアスカス デスモスポラス(Microascus desmosporus)IFO6761、キャンディダ グイリエモンディー(Candida guilliermondii)NH-2株(FERM P-11350 号)、パントエアアグロメランス(Pantoea agglomerans)NH-3株(FERM P-11349 号)などが産生するニトリルヒドラターゼである。
なお、ATCC番号が付与された微生物菌株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から容易に入手することができる。IFO番号の付された微生物は、(財)醗酵研究所(IFO)発行の「List of Cultures、第8版、第1巻(1988)」に記載されており、現在は独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門遺伝資源保存課から入手できる。IAM番号の付された微生物は東京大学応用微生物学研究所から入手できる。JCM番号の付された微生物は、理化学研究所系統微生物保存機関発行の「Catalogue of strains 第4版(1989)」に記載されており、理化学研究所 系統微生物保存機関より入手できる。HUT番号の付された微生物は、日本微生物保存連盟(JFCC)発行の「Catalogue of Cultures、第4版(1987)」に記載されており、広島大学工学部から入手できる。FERM番号の付された微生物は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターから入手できる。
さらに山田らが土壌より分離したロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous) J-1〔FERM BP-1478号〕、及び本出願人らの一部が土壌より分離したアースロバクター(Arthrobacter)sp. SK103〔FERM P-11300号〕、カセオバクター(Caseobacter)sp. BC23〔FERM P-11261号〕、シュードモナス(Pseudomonas)sp. BC15-2 〔FERM BP-3320号〕、シュードモナス(Pseudomonas)sp. SK31〔FERM P-11310号〕、シュードモナス(Pseudomonas)sp. SK87〔FERM P-11311号〕、シュードモナス(Pseudomonas)sp. SK13 〔FERM BP-3325号〕、ロドコッカス(Rhodococcus)sp. SK70 〔FERM P-11304号〕、ロドコッカス(Rhodococcus)sp. HR11〔FERM P-11306号〕およびロドコッカス(Rhodococcus)sp. SK49〔FERM P-11303号〕などが産生するニトリルヒドラターゼも挙げられる。これらの微生物は、それぞれ上記寄託番号にて独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。
また、上記微生物のニトリルヒドラターゼ遺伝子をクローニングし、形質転換(導入)した微生物も、上記のニトリルヒドラターゼを産生する微生物として含まれる。例えば、米国特許第5807730号に記載のシュードノカルディア(Pseudonocardia)属のニトリルヒドラターゼ遺伝子で形質転換した大腸菌 MT-10822株(FERM BP-5785)、特許3531997号公報記載のアクロモバクター(Achromobacter)属のニトリルヒドラターゼで形質転換した大腸菌 MT-10770株(FERM P-14756)、特許3162091号公報記載のロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)種のニトリルヒドラターゼで形質転換した微生物などが挙げられる。
中でも、ロドコッカス(Rhodococcus) 属に属する微生物に由来するニトリルヒドラターゼが好ましく、より好ましくはロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)種由来のものであり、特に好ましくはロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J-1株由来のものである。
ニトリルヒドラターゼを産生する微生物を培養するための培地組成としては、微生物が生育でき、所望の酵素を産生するのであれば特に限定はない。例えば、炭素源としてグルコース、フラクトース、シュークロース、マルトースなどの糖類、酢酸、クエン酸などの有機酸類、エタノール、グリセロールなどのアルコール類など、窒素源としてペプトン、肉エキス、酵母エキス、タンパク質加水分解物、アミノ酸類などの天然窒素源の他に各種無機、有機酸アンモニウム塩などが使用でき、このほか、無機塩、微量金属、ビタミンなどが必要に応じて適宜使用される。また場合により、酵素活性を誘導させるために、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、ベンジルシアニドなどの各種ニトリル化合物、4−クロロ−3−ヒドロキシブチルアミド、プロピオンアミド、イソブチルアミドなどの各種アミド化合物などを培地に添加しても良い。上記微生物の培養は常法によればよく、例えばpHを4〜10、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8とし、温度を10〜45℃、好ましくは15〜40℃、より好ましくは20〜35℃とし、好気的条件で10〜180時間、好ましくは15〜150時間、より好ましくは20〜120時間培養することができる。培養は液体培養、固体培養のいずれでも行うことができる。
(5−2)アミド化反応
上記のようにして得た微生物菌体は、培養液そのまま、遠心分離などにより得た菌体の懸濁液、菌体処理物(例えば菌体破砕物、菌体抽出物など)、常法により固定化した菌体または菌体処理物、粗精製した酵素、精製酵素として、ニトリルヒドラターゼとしてアミド化反応に使用することができる。
本工程においては、pHの調整を容易にするために緩衝液を使用することもできる。緩衝液としては、例えば、リン酸、ホウ酸、クエン酸、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、o−フタル酸、コハク酸又は酢酸等の塩等によって構成される緩衝液、トリス緩衝液あるいはグッド緩衝液等が例示される。ただし、青酸とその塩によってのみ構成される緩衝液は、ニトリルヒドラターゼの活性を著しく阻害するため、本工程においては使用できない。
アミド化反応を行う際、菌体懸濁液に4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液を添加しても良いし、当該溶液に菌体懸濁液を添加することもできる。
反応液中の基質濃度は特に限定されないが、例えば、0.1 〜50質量%程度、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%とすればよい。0.1質量%以上とすることにより、効率良くアミド化反応が進行するからである。また、30質量%以下とするのは、それ以上基質の濃度を高くしても更なる効果が得られにくいからである。
反応温度もアミド化反応が進行すれば特に限定されないが、例えば、0〜50℃程度、好ましくは0.1〜40℃程度、より好ましくは1〜30℃程度である。0℃以上とすることにより、効率よくアミド化反応が進行するからである。また、50℃以下とすることにより、酵素活性の低下を回避することができるからである。
反応液のpHもアミド化反応が効率良く進行すれば特に限定されないが、例えば、pH6〜9の範囲、好ましくはpH6.5〜8.8、より好ましくは7〜8.5である。当該範囲内において、効率良くアミド化反応を進行させることができるからである。
反応時間は基質濃度、菌体(酵素)濃度、その他の反応条件によって適宜選択することができる。例えば、0.1〜120 時間とすることができ、0.2〜100時間が好ましく、0.5〜24時間程度がより好ましい。0.1時間以上とするのは十分な量のアミド化合物を得るためである。120時間以下とするのは、副反応等を防ぐことができるからである。
その他、アミド化反応は、撹拌下に行っても良い。また、密閉系又は開放系のどちらの条件下でもよく、大気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のどちらでもよく、減圧下、常圧下、加圧下のどの条件下で行っても良い。
反応系内の4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリル及び4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドの、濃度及び光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の公知の方法又は装置によって測定・定量することができる。本発明により得られた4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドは、必要に応じて精製することもできるし、そのまま後に続く反応に供することもできる。
<分析方法>
本実施例における各成分の分析は、以下に示す方法によって行った。
HPLC分析(1) 化学純度分析
工程(1)〜(3)における、1,3−ジクロロ−2−プロパノール(以下、DCPという)、及び4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル(以下、CHBNという)の定量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて表1に示す分析条件で行った。
4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル(以下、「CHBN」と略す)及び4−クロロ−3−ヒドロキシブチルアミド(以下、「CHBA」と略す)の化学純度は、下記HPLC定量結果より算出した。
本発明において使用したHPLCは日本分光製LC−2000シリーズであり、詳細を以下に示す。なお、CHBNの標品は、アヅマックス株式会社製(化学純度98.9%)を用いた。CHBAの標品は、前記アヅマックス株式会社製CHBNを原料とし、ニトリルヒドラターゼを用いて合成した。合成後、酢酸エチルにより抽出後、シリカゲルカラムにより精製したCHBAを用いた。
[HPLC分析条件]
試料調製方法 :反応液を移動相に溶解
カラム :Inertsil ODS-3V(4.6mm I.D.×250 mm、粒径5μm:GLサイエンス製)
カラムオーブン温度: 40℃
移動相 :5% アセトニトリル、0.1% 燐酸水溶液、1mL/min
検出器 :示差屈折計(日本分光製RI-2031)
保持時間 :CHBN 9.5 min、CHBA 5.1 min。
HPLC分析(2) 光学純度分析
(R)−CHBNの光学純度は、以下のようにして測定した。(R)−CHBN1μlにジクロロメタン20μl、ピリジン20μlを加えた後、(R)−α−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロライド(MTPA)2μlを添加し、そのまま室温で5時間撹拌を行った。反応終了液にジイソプロピルエーテル300μlを添加し、続いて1N HCl水溶液350μlを用いて洗浄、有機層を回収した。さらに有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液350μlで洗浄し、有機層を減圧乾燥、残渣をイソプロパノールに溶解させ、これをHPLCで分析を行った。
光学純度の分析に用いたHPLCシステムは以下の通りである。
[HPLC分析条件]
カラム :Partisil−5(4.6mm×250mm:
GL Science社製)
カラムオーブン温度: 40℃
移動相 : ヘキサン:イソプロパノール=99:1
流量 : 1ml/min
検出器 : UV 254nm
保持時間 :(R)−CHBN MTPAエステル:11.9min
:(S)−CHBN MTPAエステル:13.0min。
シアンイオン分析
シアンイオンの分析は滴定によって行った。反応液中におけるシアンイオン濃度については、「毒物又は劇物を含有する物の定量方法を定める省令」(昭和四十一年一月八日厚生省令第一号)の「別表第一 シアンイオン標準溶液に係る吸光度の測定」の項に記載の、p−ジメチルアミノベンジリデンロダニンを指示薬とした硝酸銀試液による滴定の方法を参考にして、下記のように測定した。
200mL三角フラスコに、測定に係る液を正確に秤取し、必要に応じてイオン交換水又は蒸留水を加えて約100mLとした後(測定に係る液が100mLある場合は加えない)、苛性アンモニア水(4%水酸化ナトリウムを含む5%アンモニア水)を10mL加えた後(測定に係る液が強酸性の場合、pH>9となるまで増量する)、さらにp−ジメチルアミノベンジリデンロダニン0.02gにアセトンを加えて溶解した溶液(100mL)を0.5mL加え、硝酸銀水溶液(0.1N、又は必要に応じて0.01N)で、液が赤色に変わるまで滴定した。滴定に要した硝酸銀水溶液の量(mL)から下記のいずれかの式によりシアンイオン濃度を算出した。
(シアンイオン濃度)(質量%)=X×Y×52.04/Z×100
(シアンイオン濃度)(ppm)=X×Y×52.04/Z×1000000
式中、Xは滴定に要した硝酸銀水溶液の量(mL)、Yは硝酸銀水溶液の濃度(N)、Zは測定に係る液の重量(mg)を意味する。
<参考例1> ニトリルヒドラターゼの調製
ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J−1(FERM BP−1478)を、30L容ジャーファーメンター(高杉製作所社製)にてグルコース2質量%、尿素1質量%、ペプトン0.5質量%、酵母エキス0.3質量%、塩化コバルト0.05質量%を含む、20Lの培地(pH7.0)に植菌し、温度30℃で好気的に60時間培養した。培養して得た菌体を遠心分離により集菌し、50mMリン酸緩衝液(pH7.7)にて2回洗浄後、懸濁することで保存菌体液とした。
<参考例2> (R)−CHBNの合成
1,3−ジクロロ−2−プロパノールと青酸からハロヒドリンエポキシダーゼを用いて、(R)−4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル(以下(R)−CHBNと略す)を合成した。以下に詳細を示す。
(1)ハロヒドリンエポキシダーゼの調製
大腸菌(Escherichia coli) JM109/pST111(FERM P−12065、特開平5−317066号参照)を、LB培地(1%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、0.5%NaCl、1mM IPTG、50μg/mlアンピシリン)を 100mL入れた500mL容三角フラスコに植菌し、37℃で20時間振盪培養した。前記培養菌体を遠心分離により集菌し、集菌した菌体を50mM トリス−硫酸緩衝液(pH 8.0)で洗浄し、50mM トリス−硫酸緩衝液(pH 8.0)で懸濁することで保存菌体液とした。
(2)(R)−CHBNの合成
pH電極及びpHコントローラーにより制御されたアルカリ投入配管を装着した300mLの4つ口フラスコに、水127.55g、HCN4.41g(0.1632mol)を入れ、30質量%NaOH 0.65g(0.0049mol)で、pH7.5に調整した。1,3−ジクロロ−2−プロパノール10.00g(0.0775mol)を入れ、均一に溶解するまで攪拌した。
菌体液20.0gを加え、20℃で反応を開始した。系内のpHを7.5〜7.6に維持するよう、30質量%NaOHを投入するようにpHコントローラーを設定し、投入されたNaOHとほぼ等モルの割合で1,3−ジクロロ−2−プロパノール,HCNを追加していくことで、系内の1,3−ジクロロ−2−プロパノールの濃度を0.5mol/kgを超えないよう、また、系内のシアンイオン濃度を1.1mol/kgを超えないようにした。
23時間後、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを0.753mol/kg蓄積することができ、その光学純度は94.8%e.e.の(R)−体過剰であった。反応により消費された1,3−ジクロロ−2−プロパノールからの収率は96.3%であった。この反応液を35%塩酸を用いてpH=2.0に調整した後、釜内温50℃、140torrで濃縮することで、(R)−CHBNの濃度が20%の水溶液を取得した。反応系内のシアンイオン濃度を滴定により、15ppmであることを確認した。
<実施例1及び2>
参考例2(2)で合成した(R)−CHBN水溶液200gを500mL三つ口フラスコに入れ、球径15mmの木下式ガラスボールフィルターを使用し、空気(実施例1)又は窒素(実施例2)を0.5L/minの流量で5時間バブリングさせた。バブリング中は、温度20℃とし、回転数200rpmで攪拌した。
バブリング前後の(R)−CHBN水溶液のpHはそれぞれ、2.0(実施例1)、1.9(実施例2)であった。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0とした後、水を加えて(R)−CHBNが13.5%となるように濃度調整した。
この水溶液30gを採取し、2℃に冷却した後、塩化コバルトを24ppmとなるように添加し、回転数200rpmで2時間攪拌した。4%水酸化ナトリウム水溶液を随時添加することでpH7.1から8.0に調整し、この水溶液に、参考例1で調整したJ−1菌を240μL滴下し反応を開始した。反応中は、2℃とし、4%水酸化ナトリウム水溶液を随時添加することで、pH7.8〜8.2に維持した。
分析は、0.2gずつ採取することで、HPLCにて分析し、(R)−CHBNの転化率を求め、反応の進行を追跡した。結果は表1に示す。
<比較例1>
参考例2(2)で合成した(R)−CHBN水溶液200gを500mL三つ口フラスコに入れ、バブリングを施さないまま、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0とした後、水を加えて(R)−CHBNが13.5%となるように濃度調整した。
この水溶液30gを採取し、2℃に冷却した後、塩化コバルトを24ppmとなるように添加し、200rpmで2時間攪拌した。4%水酸化ナトリウム水溶液を随時添加することでpH7.1から8.0に調整し、この水溶液に、参考例1で調整したJ−1菌を240μL滴下し反応を開始した。反応中は、2℃とし、4%水酸化ナトリウム水溶液を随時添加することで、pH7.8〜8.2に維持した。
分析は、0.2gずつ採取することで、HPLCにて分析し、(R)−CHBNの転化率を求め、反応の進行を追跡した。結果は表1に示す。
<比較例2及び3>
参考例2(2)で合成した(R)−CHBN水溶液200gを500mL三つ口フラスコに入れ、球径15mmの木下式ガラスボールフィルターを使用し、空気(比較例2)又は窒素(比較例3)を0.5L/minの流量で5時間バブリングさせた。
バブリング中は温度20℃とし、バブリング前後の(R)−CHBN水溶液のpHはそれぞれ、2.0(比較例2)、1.9(比較例3)であった。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0とした後、水を加えて(R)−CHBNが13.5%となるように濃度調整した。
この水溶液30gを採取し、2℃に冷却した後、金属の塩を添加することのないまま、参考例1で調整したJ−1菌を240μL滴下し反応を開始した。反応中は、2℃とし、4%水酸化ナトリウム水溶液を随時添加することで、pH7.8〜8.2に維持した。
分析は、0.2gずつ採取することで、HPLCにて分析し、(R)−CHBNの転化率を求め、反応の進行を追跡した。結果は表1に示す。
Figure 2011250720

Claims (3)

  1. 下記工程を含む、4−ハロ−3−ヒドロキシブチルアミドの製造方法。
    (イ)4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを含む溶液に気体を供給する工程、
    (ロ)前記ニトリルを、金属の塩の存在下にニトリルヒドラターゼと接触させることによりアミド化する工程
  2. 金属の塩がマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、鉛、銅及び銀からなる群から選ばれる金属の塩である、請求項1記載の方法。
  3. 4−ハロ−3−ヒドロキシブチロニトリルが、エピハロヒドリン又は1,3−ジハロ−2−プロパノールとシアニドドナーとから、ハロヒドリンエポキシダーゼの作用により製造されたものである請求項1又は2記載の方法。
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