本発明は、電磁調理器本体の天板下に配置した励磁コイルへの通電を制御するようスイッチング素子が設けられ、前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、前記調理容器(または鍋)の底温度を検出する温度検出用センサの温度検出を行いつつ前記駆動回路に与えられる制御信号によって前記励磁コイルに供給される高周波電力を目標電力値に近づけるよう制御する制御部を備え、前記天板上に載置した調理容器(または鍋)内の油を所定の保温温度に維持するよう構成された電磁調理器において、前記温度検出センサが所定の温度に到達したときから、所定の加熱停止時間にて生じる温度低下の割合によって油の量を判定する油量判定手段を備えたものである。
以下、本発明の実施例として、一つの誘導加熱コイル4と一つのラジエントヒータ5を備えた電磁調理器1の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁調理器1が台所設備台7に取り付けられた状態を示す斜視図である。電磁調理器1は、システムキッチンや、調理台や流し台のような台所設備台7の上面板7Aの挿入孔に、ドロップイン方式によって組み込まれる形態であり、略矩形状ケースを形成した本体部2と、本体部2の上面部に取り付けた天板枠6によって支持された耐熱ガラス製の天板3を備え、本体部2の内部には、天板3に対応してその下方空間に前後に間隔を保って設置された熱源となる誘導加熱コイル4(以下、励磁コイル4という)及びラジエントヒータ5を備えている。本体部2は、底壁2Aと周囲四方を囲むよう底壁2Aに取り付けた側壁2Bによって上面開口の略矩形状ケースを形成している。また、耐熱ガラス製の天板3は、本体部2の上面開口を覆うように側壁2Bにネジにて取り付けた天板枠6によって周縁部が支持された状態である。
励磁コイル4及びラジエントヒータ5にそれぞれ対応する天板3の上面には、鍋等の調理容器10(以下、鍋10という)を載置する場所を明示するために、円形状の調理容器載置部8及び9が印刷などによって表示されている。実施例では、励磁コイル4は、定格電圧200V(ボルト)、最大入力(または最大入力)1500W(ワット)での発熱量のものであり、ラジエントヒータ5は、定格電圧200V、最大入力(または定格入力)1200wでの発熱量のものであるが、これに限定されない。
台所設備台7(流し台7)の上面板7Aの下方は物品収納空間12Aとし、その物品収納空間12Aの前面は開閉扉で開閉可能である。上記のように、台所設備台7の挿入孔にドロップインされた電磁調理器1は、本体部2の底壁2Aが物品収納空間12Aの上部に露出状態である。
本体部2内には励磁コイル4及びラジエントヒータ5が配置されている。励磁コイル4は、合成樹脂製の支持枠4Aの上面に取り付けられ、支持枠4Aは、本体部2の底壁2Aに取り付けた合成樹脂製ベース部材20にコイルバネによって支持され、支持枠4Aの周縁フランジが耐熱ガラス製の天板3の下面へ当接するように、上方へ付勢されている。これによって、励磁コイル4は、天板3の下面へ近接状態に略水平状態に保持される。また、ラジエントヒータ5は、上面開口の耐熱性の支持枠5A内に取り付けられ、底壁2Aから立ち上がるように取り付けた支持台18の上面に、支持枠5Aを複数個所でコイルバネ19によって支持され、支持枠5Aが耐熱ガラス製の天板3の下面へ当接するように、上方へ付勢されている。これによって、ラジエントヒータ5は、天板3の下面へ近接状態に略水平状態に保持される。
電磁調理器1は、天板枠6の前部に、励磁コイル4及びラジエントヒータ5の通電制御や発熱制御等を行うための操作スイッチ部13と、それに対応したLED表示部14等を備えた操作部15を備えている。また、本体部2の内部には、励磁コイル4及びラジエントヒータ5の通電制御や発熱制御等を行うための制御回路部を構成する制御装置30、及びこの制御装置30の放熱用フィン27を取り付けたプリント配線基板25が、合成樹脂製ベース部材20の上面に取り付けられている。本体部2の内部には、放熱用フィン27の冷却や、励磁コイル4及びラジエントヒータ5の冷却のための冷却用ファン(図示せず)が設けられ、冷却用ファンからの排気が、後ろ側壁2Bに形成した排気スリット28を通って、天板枠6の後部に形成した排気部16から上方へ排出される。排気部16には多数の排気孔17Aを形成した排気カバー17が取り付けられている。励磁コイル4及びラジエントヒータ5の通電制御や発熱制御等を行うための制御回路部、及びこの制御回路部の放熱用フィン27を取り付けたプリント配線基板25が、合成樹脂製ベース部材20の上面に取り付けられている。
支持枠4Aの上面に取り付けられた励磁コイル4は、天板3の上に載置される鍋10の底面の大きさの小さいものと大きいものの両方の加熱に適するように、励磁コイル4は、直列接続された内側コイル部分4Pと外側コイル部分4Qとが同心円状に分離配置されている。
主として鍋10の加熱状態を検知するために、励磁コイル4の中心部に位置するように内側コイル部分4Pの中心部には、主として鍋10の鍋底温度を検出する温度検出用センサ(以下、鍋底THという)が配置されている。また、内側コイル部分4Pと外側コイル部分4Qの間には、主として励磁コイル4の温度及び鍋10の底周辺部温度を検出する温度検出用センサ(以下、コイルTHという)が配置されている。
電磁調理器1を電気的に制御する制御装置30を図3に示す。制御装置30は、主として、励磁コイル4とこれに並列接続された共振コンデンサ31を有する共振回路32と、商用電源33から供給される交流電力を直流電力に変換する整流回路34と、整流回路34から入力される直流電力を高周波電力に変換して励磁コイル4に供給するために、共振回路32に接続されるスイッチング素子35A、35Bを有するインバータ回路36と、スイッチング素子35A、35Bのそれぞれのスイッチング動作を制御する駆動回路37A、37Bと、駆動回路37A、37Bに与えられる制御信号の駆動周波数を変化させて、励磁コイル4に供給される高周波電力を目標電力値に近づけるよう制御する制御部38を備えている。実施例では、商用電源33から供給される交流電力は、定格電圧が200ボルト(以下、200Vと表示する)の交流電力である。制御装置30は、この他にラジエントヒータ5の通電制御を行う制御回路部も備えている。
制御装置30は、この他に、鍋底TH及びコイルTHの温度検知に基づく温度検出回路39、電流検出回路40、電圧検出回路41、電流検出回路40及び電圧検出回路41のアナログ電流値及び電圧値をディジタル値に変換するA/D変換回路42を備える。制御部38は、操作部15のスイッチ操作信号、温度検出回路39からの信号及びA/D変換回路42からの信号等を受けて、励磁コイル4の電力制御を行う中心的役割を果たすように、中央処理ユニットとしてのCPU43と、CPU43が実行する動作プログラム等を記憶するメモリであるROM44と、CPU43が制御動作するための情報を記憶するメモリであるRAM45等を備えている。なお、コンデンサ31Sは、スナバコンデンサである。
励磁コイル4に供給される高周波電力は、電流検出回路40で検出される電流値、及び電圧検出回路41で検出される電圧値から演算された入力電力であり、これが電磁調理器1の出力電力(例えば、最大出力1500W)として表現される。この入力の制御は、駆動回路37A、37Bによりスイッチング素子35A、35BのON−OFFによるスイッチング時間を制御して行うことができる。
駆動回路37A、37Bによりスイッチング素子35A、35BのON−OFFによるスイッチング時間を制御して入力制御を行う場合、図10(A)のように、駆動周波数を低くして励磁コイル4への通電時間を長くすれば入力が上昇し、図10の(B)のように、駆動周波数を高くして励磁コイル4への通電時間を短くすれば入力が低下する。このため、励磁コイル5に供給される高周波電力を高入力1500Wとするためには、図10(A)のようにそれに見合った低い周波数で、スイッチング素子35A、35BをON−OFF制御するようにすればよい。また、励磁コイル5に供給される高周波電力を低入力500Wとするためには、図10(B)のようにそれに見合った高い周波数で、スイッチング素子35A、35BをON−OFF制御するようにすればよい。
所定の目標電力値になるように駆動周波数を可変制御する制御方式について説明する。図11は、所定の目標電力値まで加熱する場合に、駆動周波数を徐々に低くして行く場合の説明図である。図11において、目標電力値を1500Wとすれば、例えば、或る値の駆動周波数((1)KHzで示す)で励磁コイル4を駆動しているとき、入力が1500W出ているか否かをチェックし、1500Wが出ていなければ、それよりも低い所定の駆動周波数((2)KHzで示す)で励磁コイル4を駆動し、入力が1500W出ているか否かをチェックする。ここで、まだ1500Wが出ていなければ、それよりも低い所定の駆動周波数((3)KHzで示す)で励磁コイル4を駆動し、入力が1500W出ているか否かをチェックする。このようにして、入力が1500Wとなるように駆動周波数を変更する。なお、Ta1:Tb1=Ta2:Tb2=Ta3:Tb3=1の関係である。尚、(1)KHz、(2)KHz等の記載は、夫々1KHz、2KHzという意味ではなく、(1)、(2)には夫々周波数の数値が入り、例えば、(1)には200、(2)には100といった数値が入る。
更に具体的に説明すれば、電磁調理器1において、目標電力値が1500Wに設定されている状態で、揚げ物スイッチ13Bを操作して揚げ物調理をスタートする場合、制御部38によって先ず1500Wで加熱がスタートし、所定時間間隔でもって、電圧検出回路41で検出される電圧値で1500Wを割算してそのときの電流値I1を求め、このI1を設定値I0で除算してそのときの計算値x1を算出し、このx1に対応した駆動周波数f1で励磁コイル4を駆動する。以下同様にして、所定時間間隔で、電圧検出回路41で検出される電圧値で1500Wを割算してそのときの電流値I2を求め、このI2を設定値I0で割算してそのときの計算値x2を算出し、このx2に対応した駆動周波数f2で励磁コイル4を駆動する。このような関係でもって計算値x1、x2、x3・・・にそれぞれ対応する駆動周波数f1、f2、f3・・・でもって励磁コイル4を駆動し、目標電力値である1500Wになるまで制御される。この制御において、計算値x1、x2、x3・・・と駆動周波数f1、f2、f3・・・との対応関係を示すテーブルデータは、ROM44またはRAM45に設定されている。
なお、例えば、1500Wで加熱しているとき入力を500Wに下げる制御では、上記同様に、所定時間間隔でもって、計算値x1、x2、x3・・・にそれぞれ対応する駆動周波数f1、f2、f3・・・の関係によって、徐々に駆動周波数を上げつつ励磁コイル4を駆動し、500W出ているか否かをチェックし、まだ500Wが出ていなければ、それよりも高い所定の駆動周波数で励磁コイル4を駆動し、再度入力が500W出ているか否かをチェックする関係によって、目標電力値である500Wになるまで制御する。
図11に示すように、スイッチング素子35A、35BをON−OFF制御する駆動周波数の波形は、互いにON−OFFのタイミングが逆である。そして、このON−OFFの切り替わり時点で大きな電流が流れて、スイッチング素子35A、35Bが破壊されることを防止するために、dのように一定の切り替わり時差を設けた動作となるようにしている。
目標電力値は、通常、電磁調理器1の入力と称されるものであり、実施例では、商用電源43から供給される交流電力の定格電圧が200Vであるとき、電磁調理器1の最大の目標電力値である最大入力は1500ワット(以下、1500Wという形で表示する)である。
電磁調理器1に油を入れた鍋10を載せ一定の入力で励磁コイル4によって加熱を開始したとき、その鍋10が鉄製であるときの鍋底THが検出する温度と、他の材質の鍋が使用されたときの鍋底THが検出する温度は異なる。それは、加熱によって鍋10の温度上昇が異なるため、鍋10の材質によって鍋底THが検出する温度が異なり、鍋10に入れた油の温度が所定の保温温度から外れることとなる。このため、鍋10がどのような材質であるかによって、油を所定の保温温度に維持するための適正な加熱制御をする必要がある。この点に関し、複数種類の鍋10が使用されても、鍋10の材質を見極めて所定の定格入力を出すように励磁コイル4の通電制御を行って、油を所定の保温温度に維持することができるようにするために、電磁調理器1に載せられた鍋10の材質を判定する技術を提供する。以下にこの技術を記載する。
本発明では、励磁コイル4に対応する天板3の上面に、油を入れた鍋10が載置された状態で、加熱開始を行うために操作部15に設けられた操作スイッチ部13の一つである電源スイッチ13AがON状態に操作される。この状態で、揚げ物スイッチ13Bが操作され、そのオン信号に基づき制御部38が動作し、ROM44に記憶した動作プログラムにしたがってCPU43が処理動作を実行する。
このように、揚げ物スイッチ13Bが操作され、そのオン信号に基づき制御部38が動作する。これによって鍋10の加熱が開始され、その中の油が加熱される。この開始から所定時間内(実施例では40秒以内)に、材質判定に適する一定入力状態によって鍋10の材質判定が行われる。この材質判定を図4及び図5のフローチャートと、鍋10の材質と駆動周波数の関係を示す図6乃至図9に基づき説明する。図4及び図5に示すフローチャートは、ROM44に記憶した動作プログラムにしたがってCPU43が実行する処理動作のステップを示しており、それぞれの温度判定手段による温度判定や、鍋10の材質を判定する材質判定手段等の各判定手段は、CPU23の処理動作として図4及び図5に示すステップごとに実行される動作部を意味するものである。
本発明では、揚げ物開始時に油を入れた鍋10の温度がある程度高い場合、高入力で鍋10を加熱すれば発火の虞があるため、それを防止する安全手段を備えた構成となっている。このため、調理容器載置部8に載置した鍋10が、既に加熱されているものか否かの判定を温度判定手段によって行う判定ステップを設けている。以下に、この温度判定手段を設けた場合の判定動作を説明する。
具体的には、油を入れた鍋10を調理容器載置部8に載置した状態で、電源スイッチ13AがON(オン)状態に操作され、制御装置30が動作可能状態となり、ROM44に記憶した動作プログラムにしたがってCPU43が処理動作を実行可能する状態となる。そして、揚げ物開始として揚げ物スイッチ13BがON(オン)操作される(図4のステップS1)ことにより、CPU23が処理動作を実行する。
本発明では、先ず、調理容器載置部8に載置した鍋10が、既に加熱されているものか否かの判定を行う判定ステップ(図4のステップS2)を設けている。このため、鍋底THにより調理容器載置部8に載置した鍋10の温度検出が行われ、それに基づく温度データが温度検出回路39から入力され、CPU43の動作に伴って鍋10が所定温度に加熱されているか否かが温度判定手段により判定される(図4のステップS2)。実施例では、ステップS2で鍋底THの検出温度が60℃以下か未満かが判定され、検出温度が60℃以下か未満であれば(YES)、鍋10が冷えている場合であり、図4に示すように、コールドスタート制御となる。このため、揚げ物に適した温度となるように、油を所定の保温温度である180℃へ加熱する場合、高入力で鍋10を加熱しても発火の虞がないため、一定の高入力1500Wで鍋10を加熱する工程(図4のステップS3)へ移行する。
そして、制御部38の動作により、電流検出回路40で検出される電流値及び電圧検出回路41で検出される電圧値に基づき演算された一定入力電力が、励磁コイル4へ供給されて加熱がスタートする(図4のステップS3)。ステップS3では、励磁コイル4に供給される高周波電力が目標電力値である入力1500Wとなるように、駆動回路17A、17Bに与えられる駆動周波数の可変によって、インバータ回路16を制御する。この駆動周波数の可変制御は、図11に基づいて上述したように、計算値x1、x2、x3・・・にそれぞれ対応する駆動周波数f1、f2、f3・・・でもって励磁コイル4を駆動して、所定の目標電力値になるように制御が行なわれる。この状態で、そのときの駆動周波数をチェックすれば、いま使用されている鍋10の材質が判別できる。
本発明は、この技術思想を適用して3種類の鍋10が使用可能鍋となるようにするものである。以下、その判定手段について説明する。
本発明では、鍋10の材質判定を安定して行える状態とするために、1500Wでの加熱開始(ステップS3)から第1所定時間(例えば20秒)経過したか否かを判定し(図4のステップS4)、20秒経過した(YES)とき第1周波数判定手段によって駆動周波数のチェック(測定)を開始する(図4のステップS5)。CPU43が処理動作を実行する回路構成には、駆動回路37に与える制御信号(PWM信号)の駆動周波数を検出する第1周波数検出手段を備えており、これによって駆動周波数のチェックが行われる。
そして1500Wでの加熱開始から第1所定時間よりも長い第2所定時間(例えば40秒)経過したか否かを判定し(図4のステップS6)、40秒経過した(YES)とき材質判定手段により鍋10の材質を判定する図4のステップS7以降のステップへ移行する。このため、第1所定時間(例えば20秒)から第2所定時間(例えば40秒)の間にチェックした駆動周波数によって、図4のステップS7〜ステップ11までの材質判定手段により、鍋10の材質を判定することを意味する。
このように、本発明では、図4のステップS7及びステップS8において、前記制御信号の駆動周波数が、所定の上限値A以上または所定の上限値Aを超えたとき第1種類の材質の鍋10(ここではSUS18−8製の鍋10)と判定し(図4のステップS9)、所定の下限値B以下または所定の下限値B未満のときは第2種類の材質の鍋10(ここではSUS18−0製の鍋10)と判定し(図4のステップS10)、前記上限値Aと前記下限値Bの範囲内にあれば第3種類の材質の鍋10(ここでは鉄製の鍋10)と判定する(図4のステップS11)材質判定手段を備えている。この判定は、制御部30により構成される材質判定手段により行なわれるものである。
この材質判定手段による判定を詳細に説明すれば、図4のステップS7及びステップS8において、前記制御信号の駆動周波数について、所定の上限値Aに対して高いか低いかにより鍋10の材質を判定する第1の判定手段(図4のステップS7)と、所定の下限値Bに対して高いか低いかにより鍋10の材質を判定する第2の判定手段(図4のステップS8)を備え、制御部30により一定入力状態で制御開始から所定時間内での前記第1及び第2の判定手段による判定に基づき、後述のように、所定の保温温度(実施例では180℃)に維持する制御が行われる。
更に詳細に説明すれば、図4のステップS7及びステップS8において、前記制御信号の駆動周波数が、所定の上限値A以上または所定の上限値Aを超えたか否かが判定され、所定の上限値A以上または所定の上限値Aを超えたとき第1種類の材質の鍋10(ここではSUS18−8製の鍋10)と判定する第1の判定手段(図4のステップS7及びS9)と、所定の下限値B以下または所定の下限値B未満のときは第2種類の材質の鍋10(ここではSUS18−0製の鍋10)と判定する第2の判定手段(図4のステップS8及びS10)と、前記上限値Aと前記下限値Bの範囲内にあれば第3種類の材質の鍋10(ここでは鉄製の鍋10)と判定する第3の判定手段(図4のステップS7、S8及びS11)とを備え、制御部30により一定入力状態で制御開始から所定時間内での前記第1乃至第3手段の判定に基づき、後述のように、所定の保温温度(実施例では180℃)に維持する制御が行われる。
実施例では、鉄製鍋10と、SUS18−0製鍋10と、SUS18−8製鍋10が、適用可能鍋10とするものであり、その場合は、上限値Aと下限値Bの範囲内を鉄製の鍋10になるように上限値Aと下限値Bを設定すれば、その上方領域にあればSUS18−8製の鍋10となり、その下方領域にあればSUS18−0製の鍋10となる判定が容易にできるものとなる。即ち、上限値Aと下限値Bの範囲である鉄製鍋10の周波数判定範囲(図4では周波数鉄製判定範囲と記載)に対して、駆動周波数が高いものがSUS18−8製鍋10であり、鉄製鍋10に対して駆動周波数が低いものがSUS18−0製鍋10であるため、図4のステップS7及びステップS8では、鉄製鍋10を基準とした判定によって、鉄製鍋10か、SUS18−0製鍋10か、SUS18−8製鍋10かを判定する構成となっている。これは、上記のように、上限値A(基準値上限A)と下限値B(基準値下限B)との比較によって判定する場合と実質同じである。
上記のように、加熱開始から第2所定時間(例えば40秒)の間、コールドスタートの場合は一定入力1500Wで加熱し、ホットスタートの場合は一定入力500Wで加熱し、この間に第1所定時間(例えば20秒)から第2所定時間(例えば40秒)の間にチェックした駆動周波数によって、図4のステップS7〜ステップS11までの材質判定手段により、鍋10の材質を判定する。このように、油を所定温度である180℃まで加熱し始めた初期に、鍋10の材質判定を行うということは、まだ油が所定温度である180℃まで加熱されておらず、一定入力に維持するための駆動周波数の値が、鍋10の材質によって異なる現象を的確に捉えることができるためである。
図6及び図7には、1500Wで加熱を開始した場合において、電圧検出回路41が検出する電源電圧(整流回路34で整流した電圧)に対する駆動周波数の関係が、鍋10の種類ごとに示されている。図6に示すように、電源電圧は、基準電源電圧を200Vとした場合、電源電圧が±20Vの範囲で変動した場合でも正規の材質判定が実行できるようにするために、2種類の鉄製鍋10と、SUS18−0製鍋10と、SUS18−8製鍋10が、適用可能鍋10とするための上限値A及び下限値Bが、ROM44またはRAM45に設定されている。
図6に示すように、電源電圧が200Vのとき、上記の材質判定における駆動周波数の上限値A(図6には基準値上限Aと記載)は26.3KHzであり、駆動周波数の下限値B(図7には基準値下限Bと記載)は23.4KHzである。そして、電源電圧が180Vから220Vの範囲では、駆動周波数の上限値AはグラフG1で示した値であり、駆動周波数の下限値BはグラフG2で示した値である。この図6からも明らかなように、グラフG1とグラフG2の範囲が、第3種類の鍋10である鉄製の鍋10であり、グラフG1以上またはこれを超えたものが、第1種類の鍋10であるSUS18−8製の鍋10であり、グラフG2以下または未満のものが、第2種類の鍋10であるSUS18−0製の鍋10であることを示している。
このため、図6に示すグラフG3は、底面の直径が10cmの市販の鉄製揚げ物鍋10の一種類である。グラフG4は、実施例の電磁調理器1の専用として準備した鉄製の付属揚げ物鍋10の一つであり、底面の直径が22cmの鉄製の付属揚げ物鍋10である。また、図6に示すグラフG5は、底面の直径が18cmの一層のSUS18−8製の鍋10の一つであり、グラフG6はSUS18−0製の鍋10の一つである。
図7には、図6に示すグラフ値のうち、電源電圧が180V、200V、220Vの場合の上限値A(基準値上限A)、下限値B(基準値下限B)、G3:市販の鉄製揚げ物鍋10の駆動周波数、G4:鉄製の付属揚げ物鍋10の駆動周波数、G5:SUS18−8製の鍋10の駆動周波数、G6:SUS18−0製の鍋10の駆動周波数を示している。
このように、上限値A及び下限値Bの設定は、この範囲内にあれば、通常使用に適する鉄製鍋の大きさや材質等を考慮すれば、多くの鉄製鍋が使用できるように定めた値である。このため、この上限値Aと下限値Bの間の周波数範囲が、図4のステップS7に記載のように、鉄製判定範囲と称することができ、この範囲内のものが鉄製揚げ物鍋10であり、この範囲以上または超えたものがSUS18−8製の鍋10であり、また、この範囲以下または未満のものがSUS18−0製の鍋10であるといえる。
上記では、図4のステップS2で鍋底THの検出温度が60℃以下か未満かが判定され、検出温度が60℃以下か未満である場合(YES)であるが、検出温度が60℃以下か未満でない場合(NO)について、以下に説明する。この場合は鍋10が温められている場合であり、図4に示すように、ホットスタート制御となる。
実施例では、図4のステップS2において鍋底THの検出温度が60℃以下か未満かが判定され、検出温度が60℃以下か未満でなければ(NO)、一定の低入力(実施例では500W)で鍋10を加熱する(図4のステップS31)。これは、鍋10が温められている状態であるため、揚げ物に適した温度である所定の保温温度(実施例では180℃)へ高入力で加熱すれば、鍋10の油の温度上昇が急激となり、発火の虞があるため、一定の低入力(実施例では500W)で鍋10を加熱する工程(図4のステップS31)へ移行する。
制御部38の動作により、電流検出回路40で検出される電流値及び電圧検出回路41で検出される電圧値に基づき演算された一定入力電力が、励磁コイル4へ供給されて加熱がスタートする(図4のステップS31)。ステップS31では、励磁コイル4に供給される高周波電力が目標電力値である入力500Wとなるように、駆動回路17A、17Bに与えられる駆動周波数の可変によって、インバータ回路16を制御する。この駆動周波数の可変制御は、図11に基づいて上述したように、計算値x11、x22、x33・・・にそれぞれ対応する駆動周波数f11、f22、f33・・・でもって励磁コイル4を駆動して、所定の目標電力値になるように制御が行なわれる。この状態で、そのときの駆動周波数をチェックすれば、いま使用されている鍋10の材質が判別できる。
本発明は、この技術思想を適用して3種類の鍋10が使用可能鍋となるようにするものである。以下、その判定手段について説明する。
本発明では、鍋10の材質判定を安定して行える状態とするために、500Wでの加熱開始(ステップS31)から第1所定時間(例えば20秒)経過したか否かを判定し(図4のステップS41)、20秒経過した(YES)とき第1周波数判定手段によって駆動周波数のチェック(測定)を開始する(図4のステップS51)。CPU43が処理動作を実行する回路構成には、駆動回路37に与える制御信号(PWM信号)の駆動周波数を検出する第1周波数検出手段を備えており、これによって駆動周波数のチェックが行われる。
そして500Wでの加熱開始から前記第1所定時間よりも長い第2所定時間(例えば40秒)経過したか否かを判定し(図4のステップS61)、40秒経過した(YES)とき材質判定手段により鍋10の材質を判定する図4のステップS71以降のステップへ移行する。このため、第1所定時間(例えば20秒)から第2所定時間(例えば40秒)の間にチェックした駆動周波数によって、図4のステップS71〜ステップS111までの材質判定手段により、鍋10の材質を判定することを意味する。
このように、本発明では、図4のステップS71及びステップS81において、前記制御信号の駆動周波数が、所定の上限値A以上または所定の上限値Aを超えたとき第1種類の材質の鍋10(ここではSUS18−8製の鍋10)と判定し(図4のステップS91)、所定の下限値B以下または所定の下限値B未満のときは第2種類の材質の鍋10(ここではSUS18−0製の鍋10)と判定し(図4のステップS101)、前記上限値Aと前記下限値Bの範囲内にあれば第3種類の材質の鍋10(ここでは鉄製の鍋10)と判定(図4のステップS111)する材質判定手段を備えている。この判定は、制御部30により構成される材質判定手段により行なわれるものである。
この材質判定手段による判定を詳細に説明すれば、図4のステップS71及びステップS81において、前記制御信号の駆動周波数について、所定の上限値Cに対して高いか低いかにより鍋10の材質を判定する第1の判定手段(図4のステップS71)と、所定の下限値Dに対して高いか低いかにより鍋10の材質を判定する第2の判定手段(図4のステップS81)を備え、制御部30により一定入力状態で制御開始から所定時間内での前記第1及び第2の判定手段の判定に基づき、後述のように、制御部30は油を所定の保温温度(実施例では180℃)に維持するよう鍋10の材質に適応した加熱制御動作を行う。
更に詳細に説明すれば、図4のステップS71及びステップS81において、前記制御信号の駆動周波数が、所定の上限値C以上または所定の上限値Cを超えたか否かが判定され、所定の上限値C以上または所定の上限値Cを超えたとき第1種類の材質の鍋10(ここではSUS18−8製の鍋10)と判定する第1の判定手段(図4のステップS71及びS91)と、所定の下限値D以下または所定の下限値D未満のときは第2種類の材質の鍋10(ここではSUS18−0製の鍋10)と判定する第2の判定手段(図4のステップS81及びS101)と、前記上限値Cと前記下限値Dの範囲内にあれば第3種類の材質の鍋10(ここでは鉄製の鍋10)と判定する第3の判定手段(図4のステップS71、S81及びS111)とを備え、制御部30により一定入力状態で制御開始から所定時間内での前記第1乃至第3手段の判定に基づき、後述のように、所定の保温温度(実施例では180℃)に維持する制御が行われる。
実施例では、鉄製鍋10と、SUS18−0製鍋10と、SUS18−8製鍋10が、適用可能鍋10とするものであり、その場合は、上限値Cと下限値Dの範囲内を鉄製の鍋10になるように上限値Cと下限値Dを設定すれば、その上方領域にあればSUS18−8製の鍋10となり、その下方領域にあればSUS18−0製の鍋10となる判定が容易にできるものとなる。即ち、上限値Cと下限値Dの範囲である鉄製鍋10の周波数判定範囲(図4では周波数鉄製判定範囲と記載)に対して駆動周波数が高いものがSUS18−8製鍋10であり、鉄製鍋10に対して駆動周波数が低いものがSUS18−0製鍋10であるため、図4のステップS71及びステップS81では、鉄製鍋10を基準とした判定によって、鉄製鍋10か、SUS18−0製鍋10か、SUS18−8製鍋10かを判定する構成となっている。これは、上記のように、上限値C(基準値上限C)と下限値D(基準値下限D)との比較によって判定する場合と実質同じである。
上記のように、加熱開始から第2所定時間(例えば40秒)の間、コールドスタートの場合は一定入力1500Wで加熱し、この間に第1所定時間(例えば20秒)から第2所定時間(例えば40秒)の間にチェックした駆動周波数によって、図4のステップS7〜ステップ11までの材質判定手段により、鍋10の材質を判定する。ホットスタートの場合は一定入力500Wで加熱し、この間に第1所定時間(例えば20秒)から第2所定時間(例えば40秒)の間にチェックした駆動周波数によって、図4のステップS71〜ステップ111までの材質判定手段により、鍋10の材質を判定する。このように、油を所定温度である180℃まで加熱し始めた初期に、鍋10の材質判定を行うということは、まだ油が所定温度である180℃まで加熱されておらず、一定入力に維持するための駆動周波数の値が、鍋10の材質によって異なる現象を的確に捉えることができるためである。
図8及び図9には、500Wで加熱を開始した場合において、電圧検出回路41が検出する電源電圧(整流回路34で整流した電圧)に対する駆動周波数の関係が、鍋10の種類ごとに示されている。図8に示すように、電源電圧は、基準電源電圧を200Vとした場合、電源電圧が±20Vの範囲で変動した場合でも正規の材質判定が実行できるようにするために、2種類の鉄製鍋10と、SUS18−0製鍋10と、SUS18−8製鍋10が、適用可能鍋10とするための上限値C及び下限値Dが、ROM44またはRAM45に設定されている。
図8に示すように、電源電圧が200Vのとき、上記の材質判定における駆動周波数の上限値C(図9には基準値上限Cと記載)は34.58KHzであり、駆動周波数の下限値D(図9には基準値下限Dと記載)は30.71KHzである。そして、電源電圧が180Vから220Vの範囲では、駆動周波数の上限値CはグラフG11で示した値であり、駆動周波数の下限値DはグラフG21で示した値である。この図8からも明らかなように、グラフG11とグラフG21の範囲が、第3種類の鍋10である鉄製の鍋10であり、グラフG11以上またはこれを超えたものが、第1種類の鍋10であるSUS18−8製の鍋10であり、グラフG21以下または未満のものが、第2種類の鍋10であるSUS18−0製の鍋10であることを示している。
このため、図8に示すグラフG31は、底面の直径が10cmの市販の鉄製揚げ物鍋10の一種類である。グラフG41は、実施例の電磁調理器1の専用として準備した鉄製の付属揚げ物鍋10の一つであり、底面の直径が22cmの鉄製の付属揚げ物鍋10である。また、図8に示すグラフG51は、底面の直径が18cmの一層のSUS18−8製の鍋10の一つであり、グラフG61はSUS18−0製の鍋10の一つである。
図9には、図8に示すグラフ値のうち、電源電圧が180V、200V、220Vの場合の上限値C(基準値上限C)、下限値D(基準値下限D)、G31:市販の鉄製揚げ物鍋10の駆動周波数、G41:鉄製の付属揚げ物鍋10の駆動周波数、G51:SUS18−8製の鍋10の駆動周波数、G61:SUS18−0製の鍋10の駆動周波数を示している。
このように、上限値C及び下限値Dの設定は、この範囲内にあれば、通常使用に適する鉄製鍋の大きさや材質等を考慮すれば、多くの鉄製鍋が使用できるように定めた値である。このため、この上限値Cと下限値Dの間の周波数範囲が、図4のステップ71に記載のように、鉄製判定範囲と称することができ、この範囲内のものが鉄製揚げ物鍋10であり、この範囲以上または超えたものがSUS18−8製の鍋10であり、また、この範囲以下または未満のものがSUS18−0製の鍋10であるといえる。
上記のように、本発明では、第1種類の材質の調理容器10がSUS18−8製の調理容器であり、第2種類の材質の調理容器10がSUS18−0製の調理容器であり、第3種類の材質の調理容器10が鉄製の調理容器である場合を実施例としている。
上記のように、本発明では、スイッチング素子35A、35Bにより励磁コイル4への通電が制御される電圧は、商用交流電源33の電圧が整流回路34を通した直流電圧であり、この直流電圧の種々の値に対する制御信号の駆動周波数によって、上限値AまたはC及び下限値BまたはDを設定している。そして、図4には、この上限値及び下限値が、鉄製の調理容器10の範囲である状態で示している。
上記のように、コールドスタート制御において、図4のステップS1からステップ11までの動作によって、鍋10の材質判定が行なわれた後、図4のステップS12へ移行し、鍋10の大きさ判定へ移行する。以下、鍋10の大きさ判定について説明する。
鍋10の大きさ判定が開始される図4のステップS12では、鍋10の大きさ判定に適した入力状態とするために、材質判定での入力1500Wよりもかなり低い大きさ判定のための一定入力(実施例で1100W)で加熱するように制御する。実施例では、励磁コイル4に供給される高周波電力が目標電力値である入力1100Wとなるように、駆動回路17A、17Bに与えられる駆動周波数の可変によって、インバータ回路16を制御する。この駆動周波数の可変制御は、図11に基づいて上述したように、計算値x1、x2、x3・・・にそれぞれ対応する駆動周波数f1、f2、f3・・・でもって励磁コイル4を駆動して、所定の目標電力値になるように制御が行なわれる。
そして、図4のステップS13において、鍋底THの検出温度が120℃以上かまたは超えているかかが判定手段により判定され、120℃以上かまたは超えておれば、図4のステップS14において、鍋10の材質が、鉄製鍋10か否かが判定手段により判定される。この判定により鉄製鍋10でない場合は図4のステップS16へ移行する。一方、ステップS14での判定が鉄製鍋10である場合は、図4のステップS15へ移行する。
本発明では、コイルTHの検出温度と鍋底THの検出温度とによって、鉄製揚げ物鍋10の大きさ、即ち、底面の直径が小径の鍋10であるか、底面の直径が大径の鍋10であるかの判定をするため、励磁コイル4の中心部に配置した鍋底THに対して、半径方向に離れた位置にコイルTHの配置を設定する構成である。
図4のステップS15では、コイルTHの検出温度と鍋底THの検出温度とによって、底面の直径が大径の鉄製揚げ物鍋10か、底面の直径が小径の鉄製揚げ物鍋10かが判定手段により判定される。この判定は、鉄製鍋10の大小の判定であり、判定基準は鉄製鍋10の底面の直径が所定の直径(実施例では、14cmを基準)以上または超えているか否かが判定される。ここでコイルTHの検出温度が鍋底THの検出温度以上または超えている場合は、底面の直径が小径の鉄製揚げ物鍋10と判定し(図4のステップS17)、コイルTHの検出温度が鍋底THの検出温度未満または以下の場合は、底面の直径が大径の鉄製揚げ物鍋10と判定する(図4のステップS18)。
このような鍋10の大きさ判定に関して、実施例で採用した鍋10について、以下に説明する。
実施例では、励磁コイル4によって、通常使用される小径の鍋10と大径の鍋10の両方が加熱されるようにするために、励磁コイル4の直径、即ち、外側コイル部分4Qの外径を略15cmとし、小径の鍋10と大径の鍋10の両方の加熱に適するように、内側コイル部分4Pと外側コイル部分4Qが形成されている。
本発明では、鉄製揚げ物鍋10において、鍋底の直径が所定の直径を基準として(実施例では14cmを基準とする)、鍋底の直径が14cmよりも大きい鍋を大径の鍋10と判定し、鍋底の直径が14cmよりも小さい鍋を大径の鍋10と判定する方式としている。これは一例であり、本発明は、この数字には拘束されない。
鍋底THは、励磁コイル4の中心部に位置しているため、小径の鍋10と大径の鍋10の両方において、主として鍋10の鍋底温度を検知する。一方、内側コイル部分4Pと外側コイル部分4Qとの間の部分は、内側コイル部分4Pと外側コイル部分4Qの両方による加熱の影響を受けることとなり、この部分は励磁コイル4の部分では温度が一番高くなり易い部分である。コイルTHはここに配置されており、この温度の状態によって、鍋10の大きさ、即ち、底面の直径が小径の鍋10であるか、底面の直径が大径の鍋10であるかの判定ができる。
鍋底の直径が22cmの鉄製鍋10は、調理容器載置部8に正規位置に載置した状態では、内側コイル部分4Pと外側コイル部分4Qの両方による加熱となるが、略15cmの直径の励磁コイル4の外側に位置する鍋底部分が多く、コイルTHの検知温度が低くなる。このため、鍋底THの検出温度が所定の判定温度である120℃に到達したとき、即ち、鍋底THの検出温度が120℃以上かまたは超えたとき、コイルTHの検知温度よりも鍋底THの検知温度が高く(図12乃至図15に示す状態とは逆)なり、この場合は、底面の直径が大径の鉄製揚げ物鍋10と判定される(図4のステップS18)。
一方、鍋底の直径が10cmの鍋10は、調理容器載置部8に正規位置に載置した状態では、略15cmの直径の励磁コイル4の範囲内においてコイルTHに被さる状態であり、励磁コイル4の外側に位置する鍋底部分が殆んどなく、鍋底全体が内側コイル部分4Pと外側コイル部分4Qの両方による加熱となり、鍋底THの検出温度が120℃到達したとき、即ち、鍋底THの検出温度が120℃以上かまたは超えたとき、図12乃至図15に示すように、鍋底THの検知温度よりもコイルTHの検知温度が高くなる。このため、底面の直径が小径の鉄製揚げ物鍋10と判定される(図4のステップS17)。
上記では、揚げ物に適する材質としての鉄製揚げ物鍋10における大きさ判定であるが、ステンレス製鍋10であるSUS18−8製またはSUS18−0製の鍋10の場合も、コイルTHの検出温度と鍋底THの検出温度の関係によって、鍋10の大きさ判定を行なうように基準値の設定ができれば、ステンレス製鍋10の大きさ判定を行なえるようになる。
このように、コールドスタート制御において、図4のステップS12からステップ18までの動作によって、鍋10の大きさ判定が行なわれた後、図5のステップS19へ移行し、ステップS19以降の油量の判定へ移行する。どのような種類の鍋10に、どの程度の量の油が入っているかは、電磁調理器の周囲温度が略一定ならば、一旦所定温度まで加熱した鍋10の温度が、所定時間内にどの程度の温度まで低下するかを測定すれば、それが判明する。
鍋10内の油の温度を所定の保温温度(実施例では180℃)に向けて加熱する場合、鍋底THの検出温度に基づいた制御を行うが、鍋底THが保温温度(実施例では180℃)相当を検出しても、油の温度はまだそれに達していない状態が生じる。これは、保温温度(実施例では180℃)に向けて加熱する場合、油の温度は保温温度(実施例では180℃)に達していないにも拘らず、鍋10の温度が保温温度(実施例では180℃)相当に上昇したとき、それを鍋底THが検出することに起因する。このため、加熱を開始してから油を保温温度(実施例では180℃)まで加熱する場合は、鍋底THが保温温度(実施例では180℃)を超える温度を検出するまで加熱(これをオーバーシュート加熱という)しなければ、油の温度を速やかに保温温度(実施例では180℃)まで上昇させることができない。
このため、本発明では、それぞれの鍋の種類とその中の油の量に応じて、このオーバーシュート加熱の割合をあらかじめ定めておき、どのような種類の鍋10に、どの程度の量の油が入っているかを判定して、この判定に基づき、所定の割合のオーバーシュート加熱を実行することにより、油の温度を速やかに保温温度(実施例では180℃)まで上昇させることができるようにするものである。
上記のように、鍋10の種類(材質及び大きさ)の判定を行った後、鍋10に入っている油量の判定を行う。以下、鍋10に入っている油量の判定について説明する。
上記のように、揚げ物スイッチ13BがON(オン)操作されて加熱開始から第1所定時間である40秒まで、一定の第1入力(1500W)の状態における駆動周波数によって材質判定を行う。そして、この第1所定時間である40秒から目標保温温度である180℃よりも低い第1温度(120℃)到達まで、第1入力(1500W)よりも低い一定の第2入力(1100W)の状態で加熱し、第1温度(120℃)に到達したとき、コイルTHの検出温度と鍋底THの検出温度の関係によって、鍋10の大きさ判定を行なう。
そして、上記のように、大きさ判定において鍋底THの検出温度が所定の第1温度(120℃)に到達したときから、所定の加熱停止時間を設けている。この加熱停止時間の形成は、図5のステップS19で加熱停止となり、この加熱停止によって鍋10及びその中の油の温度が低下するため、その場合の温度低下の割合によって、油の量を判定するものであり、実施例では加熱停止時間を3分としている。
鍋10の種類ごとに、鍋10内の油量の判定が開始され(図5のステップS19)、図5のステップS20では、揚げ物スイッチ13Bが操作されて鍋10の加熱が開始されてから、3分経過したか否かが判定される(図5のステップS20)。3分経過した判定により、鍋底THの検出により、第1温度(120℃)との温度差tx(図15のtx℃)を測定し、この温度差txにより油量を判定する(図5のステップS21)。即ち、鍋底THの検出温度が第1温度(120℃)を検出したときから、加熱を3分間停止し、この停止によって生じた温度低下(温度差tx)を測定し、この温度差txにより油量を判定する。この油量の判定は、上記のように判定された各鍋10の大きさと材質、即ち鍋10の種類(実施例では、SUS18−0、SUS18−8、直径22cm鉄製、及び直径10cm鉄製の4種類)ごとに持たせた「温度差tx対油量」のテーブルデータから、CPU43の動作に基づき油量を判定する。この「温度差対油量」のデータは、テーブルデータとしてROM44またはRAM45に設定されている。
これを図16に基づいて説明すれば、例えば、鉄製10cm鍋の場合、温度差txが9℃のとき(図12参照)の油量は200gであり、また、鉄製10cm鍋の場合、温度差txが−13℃のとき(図13参照)の油量は500gであり、また、鉄製10cm鍋の場合、温度差txが−17℃のとき(図14参照)の油量は700gでありまた、鉄製10cm鍋の場合、温度差txが−19℃のとき(図15参照)の油量は900gである。
次に図5のステップS22では、上記のように鍋底THの検出により、第1温度(120℃)との温度差tx(図16のtx℃)を測定し、この温度差txにより前記オーバーシュート加熱を実行するためのオーバーシュート値tp(℃)を鍋10の種類ごとに判定する。即ち、鍋底THの検出温度が第1温度(120℃)を検出したときから、加熱を3分間停止し、この停止によって生じた温度低下(温度差tx)を測定し、この温度差txによりオーバーシュート値tp(℃)を判定する。
オーバーシュート値tp(℃)は、図16に示すように所定の目標の保温温度(実施例の180℃)を超える温度tyから保温温度(実施例の180℃)を差し引いた値である。これを図16に基づいて説明すれば、例えば、鉄製10cm鍋の場合、温度差txが9℃のとき(図12参照)のオーバーシュート値tpは5(℃)であり、また、鉄製10cm鍋の場合、温度差txが−13℃のとき(図13参照)のオーバーシュート値tpは32(℃)であり、また、鉄製10cm鍋の場合、温度差txが−17℃のとき(図14参照)のオーバーシュート値tpは47(℃)であり、また、鉄製10cm鍋の場合、温度差txが−19℃のとき(図15参照)のオーバーシュート値tpは54(℃)である。
このオーバーシュート値tp(℃)の判定は、鍋10の種類(実施例では、SUS18−0、SUS18−8、直径22cm鉄製、及び直径10cm鉄製の4種類)ごとに持たせた「温度差tx対オーバーシュート値tp(℃」のテーブルデータから、CPU43の動作に基づきオーバーシュート値tp(℃)を判定する。この「温度差tx対オーバーシュート値tp(℃)」のデータは、テーブルデータとしてROM44またはRAM45に設定されている。なお、オーバーシュート値tp(℃)は、図16に示すように目標補正値と称し、または図5に示すように、温度上昇幅または常温状態の油を所定の保温温度まで加熱する最初の加熱であるため、初期温度上昇値ともいう。
図16に示すデータは、電磁調理器1によって実際に鍋10を加熱して、鍋底THの検出によって得た温度に基づいた、温度差tx、保温温度(実施例の180℃)を超える温度ty、及びオーバーシュート値tpである。
このように、実際に鍋10を加熱してデータを取る場合は、一旦加熱した後、これが周囲温度にまで冷めなければ、次のデータが採れないので、油の量を細かく判定するためには、多数のデータが必要となり、長期間を要することとなり、好ましくない。この点に鑑み、本発明では、4種類の鍋10について、図16のようにして得た複数のデータを基にして計算式を作り、この計算式によって、4種類の鍋10について油の量ごとの温度差txを計算し、この温度差txの計算値から設定txを定める(これを図17に示す)。そして、この設定txに対応するオーバーシュート値tpを計算式により算出する(これを図18に示す)ことにより、実測値と略同じ条件での制御ができるようにしている。このようにして設定したデータは、油の量が100gから900gまで50gごとのデータをテーブルデータとして、ROM44またはRAM45に設定されている。これによって、鍋10の種類ごとに、温度差txが何℃のとき、油量が何gで、オーバーシュート値tpが何℃となるかが判明するので、このデータを用いて、油量の判定、及びオーバーシュート値tpによる温度制御を行えばよい。
次に、図5のステップS23では、上記のように図5のステップS21において判定された油量が、通常使用における最低油量と定めた200g以下か否かが判定される。油量が200g以下ならば図5のステップS24にて500W入力(出力)にて加熱されるように、鍋底THの検出温度データを取り込み、且つ電流検出回路40で検出される電流値及び電圧検出回路41で検出される電圧値に基づき演算された一定入力電力が、500W入力(出力)となるように、制御部38、駆動回路37A、37B、及びインバータ回路36によって励磁コイル4の通電が制御される。
また、図5のステップS23において、油量が200g以下でない場合は、図5のステップS25にて、油量が、通常使用における標準的な油量の500g以下か否かが判定される。油量が500g以下ならば図5のステップS26にて800W入力(出力)にて加熱されるように、鍋底THの検出温度データを取り込み、且つ電流検出回路40で検出される電流値及び電圧検出回路41で検出される電圧値に基づき演算された一定入力電力が、800W入力(出力)となるように、制御部38、駆動回路37A、37B、及びインバータ回路36によって励磁コイル4の通電が制御される。また、図5のステップS25にて、油量が、500g以下でない場合は、図5のステップS27にて1100W入力(出力)にて加熱されるように、鍋底THの検出温度データを取り込み、且つ電流検出回路40で検出される電流値及び電圧検出回路41で検出される電圧値に基づき演算された一定入力電力が、1100W入力(出力)となるように、制御部38、駆動回路37A、37B、及びインバータ回路36によって励磁コイル4の通電が制御される。
次に、図5のステップS28では、上記のように図5のステップS23〜ステップS27において判定された500W入力(出力)、800W入力(出力)、または1100W入力(出力)にて加熱されつつ、図5のステップS22において判定されたオーバーシュート値tpに到達したか否かが判定される。そして、オーバーシュート値tpに到達したとき、図5のステップS29において、鍋10の種類(実施例では、SUS18−0、SUS18−8、直径22cm鉄製、及び直径10cm鉄製の4種類)ごとに持たせた「油の所定の保温温度(実施例の180℃)安定用の鍋底THの検出温度データ」に基づき、油が所定の保温温度(実施例の180℃)になるように制御される。この制御は、上記鍋底THの検出温度データに基づき、電流検出回路40で検出される電流値及び電圧検出回路41で検出される電圧値に基づき演算された入力電力を可変するように、制御部38、駆動回路37A、37B、及びインバータ回路36によって励磁コイル4の通電が制御されるように、CPU43の動作に基づき制御される。この「油の所定の保温温度(実施例の180℃)安定用の鍋底THの検出温度データ」は、テーブルデータとしてROM44またはRAM45に設定されている。
図12乃至図15には、小径の鉄鍋(実施例の直径10cm鉄製鍋)について、上記のようにして、油が加熱開始から所定の保温温度(実施例の180℃)になるように制御される場合の温度変化を示している。その他のSUS18−0、SUS18−8、及び大径の鉄鍋である直径22cm鉄製鍋についても、その材質、大きさ、油量に応じたオーバーシュート値tpによって、油が加熱開始から所定の保温温度(実施例の180℃)になるように制御される。
このように、油が加熱開始から所定の保温温度(実施例の180℃)になるように制御され、初期の揚げ物を終了したとき(図5のステップS30)、操作部15に設けられた操作スイッチ部13の一つである加熱停止スイッチにて加熱を停止するか、または電源スイッチ13AをOFF状態に操作する(図5のステップS0)。
なお、ホットスタート制御の場合は、材質判定では鍋10を加熱する一定入力が500Wのように低入力であるため、鍋10の大きさ判定に適した1100Wの入力状態とすれば、油の温度が急激に上昇する危険があるため、大きさ判定は行わない。このため、図4のステップS111において鉄製鍋10と判定された場合は、大径の鉄製鍋10(実施例の直径22cm鉄製鍋)として取り扱う。このため、上記のような材質判定を経た後、図4のステップS121において、鍋10の種類(実施例では、SUS18−0、SUS18−8、直径22cm鉄製、及び直径10cm鉄製の4種類)ごとに持たせた「油の所定の保温温度(実施例の180℃)安定用の鍋底THの検出温度データ+20℃のデータ」を設定し、図4のステップS121において、油量を500gとし、図5のステップS23へ続く動作を行なう。図5のステップS23以降の動作は、上記コールドスタート制御の場合と同様である。
上記では、温度判定手段によってコールドスタート制御かホットスタート制御かを判定する行う鍋の温度判定ステップを設けているが、これを設けずに、揚げ物スイッチ13BがON(オン)操作される(図4のステップS1)ことにより、コールドスタート制御のフローのみを経て、油量判定を行うようにする場合でも、本発明の技術範疇である。