本発明の一実施形態について図1〜図16(c)に基づいて説明すれば、以下の通りである。以下の特定の項目で説明すること以外の構成は、必要に応じて説明を省略する場合があるが、他の項目で説明する構成と同じである。また、説明の便宜上、各項目に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
なお、以下で説明する発光装置(照明装置,車両用前照灯)110、発光装置(照明装置,車両用前照灯)120A、発光装置(照明装置,車両用前照灯)120B及び照明装置(発光装置,車両用前照灯)140などの各形態は、いずれも車両等用のヘッドランプの使用に適する照明装置又は車両用前照灯の発光装置部として説明するが、本発明を具現化した形態はこれらの形態に限られず、照明装置又は車両用前照灯以外の灯具及び照明器具などにも適用することができる。
〔1.発光装置の概要構成について〕
まず、図1に基づき、本発明の一実施形態である発光装置110の概要構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である発光装置110の概要構成を示す模式図である。
図1に示すように、発光装置110は、インコヒーレント光(光)L3を発生するものであり、レーザダイオード群(レーザ光源群)10、第1導光部(第1光学系)20、鞍形凹レンズ(第2光学系,凹レンズ,凸レンズ)30及び直方体状発光体(発光部)40を備える。
レーザダイオード群10は、複数のレーザ光源が集まったレーザ光源群の一例であり、本実施形態では、合計5つの単一の光出射端を持つLDチップ(レーザ光源)11を備える。それぞれのLDチップ11からは、レーザ光L0が発生する。
なお、図1に示すLDチップ11は、径5.6mmのパッケージに封入されている様子を示している。
また、LDチップ11は、1チップ1ストライプの半導体レーザであり、発振波長は、405nmである。LDチップ11の光出力は、1.0W、動作電圧は、5V、電流は0.6Aである。
なお、LDチップ11の発振波長は、青紫色領域又は青色領域(380nm以上490nm以下)の発振波長を有するものであれば良い。
また、現在の技術では波長380nm以下の良質な短波長レーザを作るのは困難であるが、将来的には380nm以下で発振するように設計されたLDチップ11も光源として採用しても良い。
これにより、単純計算で合計5つのLDチップ11の合計の光束が、光源全体の光束となるので、単一のLDチップ11のみを用いる場合と比較して光源全体の光束を約5倍程度大きくすることができる。但し、LDチップ11の性能は均等であるものとする。
なお、本実施形態では、レーザダイオード群10を構成するLDチップ11の数は5つとしているが、LDチップ11の数はこれに限られず、2〜4つ又は6つ以上のいずれであっても良い。
なお、レーザ光源群の例としては、レーザダイオード群10のように単一の光出射端を有する、複数のLDチップ11(1チップ1ストライプ)が空間的に分離して存在しているものであっても良いし、後述するLDチップ101(1チップ複数ストライプ)のように、複数のレーザ光源[発光点(レーザ光源)102]を一体化して単一(1チップ)の半導体レーザとし、このLDチップ101から複数のレーザ光L0が発生する構成としても良い。
次に、第1導光部20は、光入射部(第1光学系の一端)201から入射したそれぞれのレーザ光L0を、光出射部(第1光学系の他端)202に導光し、導光した各レーザ光L0由来の出射光(レーザ光)L1を光出射部202から出射する。
これにより、第1導光部20の光入射部201から光出射部202までの距離を調整することで、レーザダイオード群10と、直方体状発光体40とを任意の間隔で空間的に分離することができるので、レーザダイオード群10で発生する熱の影響により、直方体状発光体40が劣化してしまうことを防止することができる。
また、LDチップ11から発振されるレーザ光L0は、コヒーレントな光であるため、指向性が強く、発光装置110は、レーザ光L0をレーザ光として無駄なく集光し、利用することができる。
そのため、非常に小さな直方体状発光体40を形成することができ、その結果、小型で超高輝度の発光装置110を実現できる。
よって、このようなLDチップ11をレーザ光源として用いた発光装置110を車両用ヘッドランプに適用することにより、車両用等のヘッドランプを小型化できるなど、種々のメリットが生まれる。
なお、図1に示す第1導光部20は、レーザ光L0をどの様に光入射部201から光出射部202に導光するかについては、具体的に記載していない。
しかしながら、第1導光部20の具体例としては、大きく分けて、3つの形態が例示できる。
第1の形態は、光入射部201の断面積よりも光出射部202の断面積が小さくなるように第1導光部20を公知の集光素子(第1光学系)などで構成する場合である。
例えば、以下で説明する角錐台状集光部(第1光学系,集光部材)21Aや、フレネルレンズ(第1光学系)、透過型回折格子(第1光学系)などが例示できる。
第2の形態は、光入射部201の断面積と光出射部202の断面積とがほぼ同一で、各レーザ光L0を導光する複数の導光部材の束で第1導光部20を構成する場合である。
例えば、以下で説明する光ファイバー束(第1光学系,複数の光ファイバー)22や、導波管の束(第1光学系)などが例示できる。
第3の形態は、第1導光部20を上述した複数の導光部材と集光素子などとの組合せで構成する場合である。
例えば、光ファイバー束22及び集光素子(集光部材)の組合せ(第1光学系)が例示できる。
第1導光部20のより具体的な形態については後ほど説明する。
なお、後ほど説明する具体的な形態の他、第1導光部20(集光素子)を公知のフレネルレンズ(第1光学系)などで構成してレーザ光L0を光入射部201から光出射部202に集光(導光)しても良いし、第1導光部20を公知の透過型回折格子(第1光学系)などで構成してレーザ光L0を光入射部201から光出射部202に集光しても良い。
フレネルレンズの凹凸パターン及び透過型回折格子の格子パターンは、レーザ光L0を光入射部201から光出射部202に集光できるような適切なパターンとすれば良い。
光入射部201をフレネルレンズ又は透過型回折格子とした場合、例えば、以下で説明する1チップに複数の発光点102を有するLDチップ(レーザ光源群)101と組合せることで、これらの光学系のサイズを小さくできると共に、その量産性を高め、製造コストを低減させることができる。
すなわち、第1導光部20をはじめとする「第1光学系」としては、例えば、一端から入射した各レーザ光L0を他端に導光する単体の光学部品で構成しても良く、また、一端から入射した各レーザ光L0を他端に導光し、導光された各レーザ光L0をその他端から出射光L1として出射する第1光学部品と、一端から入射した第1光学部品の他端から出射した出射光L1を他端に導光する第2光学部品との組合せのように、複数の光学部品で構成しても良い。また、「第1光学系」は、後述する光ファイバー束22の例のように複数の光学部品を束ねて構成しても良い。
また、本実施形態では、「第2光学系」の例として単体の光学部品である鞍形凹レンズ30を用いた場合について説明するが、「第2光学系」は、第1導光部20によって導光された各レーザ光L0由来の出射光L1を、照射光L2として直方体状発光体40の光照射領域に分散して照射できるものであれば良く、この他、例えば、第1導光部20によって導光された出射光L1を2つのレンズを用いて光照射領域に分散して照射する場合のように複数の光学部品で構成しても良い。
また、上述した例のように「第1光学系」及び「第2光学系」は、独立した2以上の光学部品で構成しても良いし、後述する角錐台状光学部材(導光部材,第1光学系,第2光学系,集光部材)21Bのように一体化された1つの光学部品で構成しても良い。
ところで、例えば、LDチップ11を水平に設置した時(図2(a)及び図4(a)参照)、通常、LDから放射されるレーザ光L0は、縦(鉛直方向)に長く、横(水平方向)に短い楕円錐状となる光出射傾向を示す。
すなわち、LDから放射されるレーザ光L0は、縦横比(アスペクト比)が非常に大きい(例えば、水平方向で5度、垂直方向で30度)。
このため、通常、光出射部202から出射される各出射光L1は、このLDチップ11から放射されるレーザ光L0のアスペクト比が非常に大きいという特性の影響を受けたものとなる。
そうすると、LDチップ11の設置方向や「発光部」の形状などにも依存するが、光出射部202から出射されるレーザ光L0の拡がりが、「発光部」の光照射領域のサイズより小さくなる場合が生じ得る。
また、発光装置110を車両用ヘッドランプ(ハイビーム)として用いることを想定した場合、非特許文献1にも記載されているが、発光装置110の配光パターンは、鉛直方向に狭く、左右に広く、発光部の形状は、水平方向に対して横長であることが望ましいので、直方体状発光体40は、略直方体形状となっている。
このため、直方体状発光体40の光照射領域の形状は、水平方向に長く、鉛直方向に短い形状となっている。
よって、光出射部202の出射光L1の水平方向の拡がりが光照射領域の水平方向の幅よりも小さくなると共に、出射光L1の鉛直方向の拡がりが光照射領域の鉛直方向の幅よりも大きくなる場合が生じ得る。
このような場合、光照射領域に照射されないレーザ光L0の一部や、光照射領域にレーザ光L0が照射されない部分が生じ得るため、「発光部」の発光効率が低下してしまうという副次的な課題がある。
そこで、本実施形態の発光装置110は、このような副次的な課題を解決するために、鞍形凹レンズ30は、鉛直方向に軸を持つ凹面と水平方向に軸を持つ凸面とが一体化された鞍状の凹面が形成されており、この鞍状の凹面は、鞍部点を有する曲面で構成されている。
なお、鞍形凹レンズ30の材質は、合成石英またはBK(ボロシリケート・クラウン)7などが好適に用いられる。合成石英で製作したレンズはBK7製と比較して紫外域の透過率が高く、熱膨張係数が低いため熱的特性に優れている。LDチップ11の近傍は素子が発熱することにより高温になる可能性があり、その点では合成石英製のレンズの方がより好ましい。
一方、発熱の影響が無視できる場合は、光学用シリコーンやアクリルなどの透明樹脂を用いることもできる。樹脂を用いた場合、鞍形凹レンズ形状を金型を用いて容易に成型・製造することができる。これは、LDチップ11と鞍形凹レンズの間には第1導光部20が存在するため、発熱の影響をほとんど無視できる場合があり得るからである。
鞍形凹レンズ30は、凹部の凹面形状が鉛直方向の軸を有する曲面で構成されているので、出射光L1の直方体状発光体40に対する水平方向の拡がりを大きくする機能を有する。
よって、「第2光学系」が鞍形凹レンズ30で構成されていれば、出射光L1の拡がりが、直方体状発光体40の光照射領域のサイズより小さくなる場合でも、鞍形凹レンズ30を用いて、出射光L1の水平方向の拡がりを、直方体状発光体40の光照射領域のサイズ程度の大きさに拡げることが可能となる。
また、鞍形凹レンズ30は、鉛直方向に軸を持つ凹面と水平方向に軸を持つ凸面とが一体化された鞍状の凹面が形成されており、この鞍状の凹面は、鞍部点を有する曲面で構成されている。
これにより、鞍部点の光照射領域側には、凹面による焦点が存在し、鞍部点の光出射部202側には、凸面による焦点が存在し得る。
よって、鞍形凹レンズ30の鞍状の凹面からの出射光の拡がりは、凹面に対して助長され、凸面に対して抑制される。
これにより、直方体状発光体40の光照射領域の形状が、水平方向に長く、鉛直方向に短い形状であっても、鞍状の凹面を有する単体の鞍形凹レンズ30で、その形状に合せて光照射領域の水平方向のサイズ及び鉛直方向のサイズに合せて光照射領域に各レーザ光L0由来の照射光L2が分散して照射されるようにすることができる。
よって、直方体状発光体40の光照射領域の形状が、水平方向に長く、鉛直方向に短い形状であっても、第2光学系を鞍形凹レンズ30で構成することができるので、鉛直方向に軸を持つ凹面を有する凹レンズ[以下で説明する凹シリンドリカルレンズ(第2光学系,凹レンズ)32]及び水平方向に軸を持つ凸面を有する凸レンズ[以下で説明する凸シリンドリカルレンズ(第2光学系,凸レンズ)31]の組合せのように別々のレンズで構成した場合と比較して、発光装置110全体の光学系の部品点数を少なくできると共に、発光装置110全体のサイズを小さく抑えることができる。
なお、「鞍部点」とは、凹レンズの凹面の極小点、凸レンズの凸面の極大点とが一致する点のことである。例えば、「双曲放物面」は、鞍部点を有する曲面の代表例である。「鞍部点」及び「双曲放物面」については後述する。
なお、本実施形態では、「第2光学系」の例として鞍形凹レンズ30を採用したが、これに限られず、「光照射領域」の形状に合せて、鉛直方向に軸を持つ単体の凹レンズを採用しても良いし、独立した2つの、鉛直方向に軸を持つ凹レンズと、水平方向に軸を持つ凸レンズとの組合せを採用しても良い。
すなわち、発光装置110は、前記構成に加えて、鞍形凹レンズ30の他、後述する鉛直方向に軸を持つ凹面を有する凹シリンドリカルレンズ(凹レンズ)32で構成しても良い。
これにより、「第2光学系」を、鉛直方向に軸を持つ凹面を有する凹シリンドリカルレンズ32で構成すれば、出射光L1の水平方向の拡がりが光照射領域の水平方向の幅よりも小さくなる場合であっても、光照射領域の水平方向の幅に合せて、出射光L1を水平方向に分散させて、照射光L2として光照射領域に照射させることができる。
よって、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向に長い形状に合せて光照射領域に各出射光L1が分散して照射されるようにすることができる。
なお、鉛直方向に軸を持つ凹面を有する凹シリンドリカルレンズ32の例としては、鉛直方向に軸を持つ両凹レンズ(第2光学系)、平凹レンズ(第2光学系)、凹メニスカスレンズ(第2光学系)等が例示できる。
また、「第2光学系」は、後述する水平方向に軸を持つ凸面を有する凸シリンドリカルレンズ31と凹シリンドリカルレンズ32との組合せであっても良い。
直方体状発光体40の光照射領域の形状は、水平方向に長く、鉛直方向に短い形状である。
よって、光出射部202の出射光L1の水平方向の拡がりが光照射領域の水平方向の幅よりも小さくなると共に、出射光L1の鉛直方向の拡がりが光照射領域の鉛直方向の幅よりも大きくなる場合が生じ得る。
そこで、「第2光学系」を、凸シリンドリカルレンズ31と凹シリンドリカルレンズ32との組合せで構成することにより、光照射領域の形状が、水平方向に長く、鉛直方向に短い形状であっても、その形状に合せて光照射領域の水平方向のサイズ及び鉛直方向のサイズに合せて光照射領域に各照射光L2が分散して照射されるようにすることができる。
なお、凸シリンドリカルレンズ31及び凹シリンドリカルレンズ32の光軸は揃えることが好ましい。
以上より、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向に長く、鉛直方向に短い形状に合せて光照射領域に各出射光L1が分散して、照射光L2として照射されるようにすることができる。
なお、各出射光L1を直方体状発光体40の光照射領域の形状に合せて分散させるのは、光照射領域の特定の1点に集中させることなく、水平方向に長く、鉛直方向に短い直方体状発光体40の全体に亘って照射光L2を照射するためである。
言い換えれば、出射光L1を分散させるのは、直方体状発光体40の一部をピンポイントで励起しないように照射光L2を、直方体状発光体40が劣化しない程度の強度で光照射領域の全体に亘って照射するためである。なお、直方体状発光体40が劣化しない程度の強度であれば、照射光L2が照射される際の光強度分布の強弱はある程度はあっても良い。
次に、直方体状発光体40は、照射光L2が照射されると、インコヒーレント光L3を発生する。すなわち、直方体状発光体40は、少なくとも照射光L2が照射されることによりインコヒーレント光L3を発生する蛍光体を含んでいる。
直方体状発光体40の大きさは、例えば、車両用ヘッドランプに用いる場合は、横×縦×高さ=3mm×1mm×1mm程度の大きさである。
また、直方体状発光体40は、上述したように、少なくとも蛍光体を含んでいるが、単一種の蛍光体のみで構成されていても良いし、複数種の蛍光体で構成されていても良い。
また、直方体状発光体40は、単一種又は複数種の蛍光体を適当な分散媒に分散させて構成しても良い。分散媒は固体が好ましいが、光透過性のある直方体状の容器に蛍光体を封じ込めるような場合には、分散媒を液体としても良い。
分散媒としては、透光性の樹脂材料が好ましく、シリコーン樹脂が例示できる。シリコーン樹脂と蛍光体との割合は、重量比で10:1程度とする。なお、分散媒は、シリコーン樹脂に限定されず、無機ガラス材料をはじめとするガラス材料であってもよいし、有機・無機ハイブリッド材料であっても良い。
以上より、発光装置110は、直方体状発光体40の光照射領域に、各レーザ光L0由来の出射光L1が水平方向に分散して照射光L2として照射されるため、直方体状発光体40に含まれる蛍光体の全体に亘って低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に効率良く励起する。
よって、直方体状発光体40からムラなくインコヒーレント光L3が発生するので、単一のLDチップ(レーザ光源)11を用いる場合と比較して発光装置110の高光束・高輝度化を実現することができる。
また、各レーザ光L0由来の出射光L1を直方体状発光体40の光照射領域上の一点に集中して照射させず、第1導光部20及び鞍形凹レンズ30を介して光照射領域に分散して照射させるので、各レーザ光L0が同一点に集中して照射されることによって直方体状発光体40が劣化してしまうことを防止することができる。
以上によれば、高光束・高輝度かつ長寿命を実現できる発光装置110を提供することができる。
なお、「蛍光体」とは、照射光L2を照射することにより低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に励起し、この電子が、高エネルギー状態から低エネルギー状態に遷移することにより、インコヒーレント光L3を発生する物質のことである。
また、蛍光体としては、サイアロン蛍光体(酸窒化物系蛍光体)若しくはIII−V族化合物半導体ナノ粒子蛍光体が好ましいが、セリウム(Ce)で賦活したイットリウム(Y)−アルミニウム(Al)−ガーネット(YAG:Ce)蛍光体などを用いても良い。
サイアロンは、窒化ケイ素と同様に、結晶構造によりα型とβ型とがある。特に、α−サイアロンは,一般式Si12−(m+n)Al(m+n)OnN16−n(m+n<12,0<m ,n<11;m ,nは整数)であらわされる28原子からなる単位構造の中に2箇所の空隙があり,ここに各種金属を侵入型固溶させることが可能である.希土類元素を固溶させることで,蛍光体になる。カルシウム(Ca)とユーロピウム(Eu)とを固溶させると,YAG:Ceよりも長波長の黄色から橙色の範囲で発光する特性の良い蛍光体が得られる。
また、サイアロン蛍光体は、青紫領域若しくは青色領域(380nm以上490nm以下)の光で励起可能であり,白色LED用の蛍光体などに適している。
次に、サイアロン蛍光体の合成手順を示す。組成は、一般式CapSi12−(m+n)Al(m+n)OnN16−n:Euq(p ,qは、それぞれCa,Euの固溶量、m+n<12,0<m ,n<11;m,nは整数)で表される。あらかじめ実験によりCaの固溶量pとEuの固溶量qの最適値を求め,mおよびnは電荷の中性を保つ条件などから決定する。
また、出発原料として窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ユーロピウム(Eu2O3)の各粉末を用い、秤量・混合した後に焼結温度1700℃で窒素ガス加圧焼結を行う。その後、これを粉末に崩せば、サイアロン蛍光体を得ることができる。
サイアロン蛍光体は、レーザ光L0に対する劣化耐性が強い蛍光体である。よって、理論的には、直方体状発光体40をサイアロン蛍光体のみで構成すれば、劣化をより効果的に防止することができる。
また、蛍光体の別の好適な例としては、III−V族化合物半導体のナノメータサイズの粒子を用いた半導体ナノ粒子蛍光体を例示することができる。
半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つは、同一の化合物半導体(例えばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径をナノメータサイズに変更することにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができる点である。例えば、InPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する(ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した)。
また、この半導体ナノ粒子蛍光体は、半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、この半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。
さらに、上述したように、発光寿命が短いため、レーザ光の吸収と蛍光体の発光を素早く繰り返すことができる。その結果、強いレーザ光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱を低減させることができる。
よって、直方体状発光体40が熱により劣化(変色や変形)するのをより抑制することができる。これにより、光の出力が高い発光素子を光源として用いる場合に、本実施形態の発光装置110や、後述する発光装置120A、発光装置120B及び照明装置140などの寿命が短くなるのをより抑制することができる。
ところで、上述した直方体状発光体40の劣化は、直方体状発光体40に含まれる蛍光体の分散媒(例えば、シリコーン樹脂)の劣化が原因であると考えられる。すなわち、上述のサイアロン蛍光体は、レーザ光が照射されると60〜80%の効率で光を発生させるが、残りは熱となって放出される。この熱によって分散媒が劣化すると考えられる。
従って、分散媒としては、熱耐性の高い分散媒が好ましい。熱耐性の高い分散媒としては、例えば、ガラスなどが例示できる。
次に、白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成できることが知られているが、この等色または補色の原理に基づきLDチップ11から発振されたレーザ光L0の色と蛍光体が発する光の色とを適切に選択することにより白色光を発生させることができる。
例えば、発光装置110のインコヒーレント光L3を白色とするには、1つの方法は、レーザ光として青紫色領域の発振波長(380nm以上420nm未満)のレーザ光を用い、蛍光体として青色蛍光体、緑色蛍光体、及び赤色蛍光体の組合せを採用すれば良い。
また、もう1つの方法は、レーザ光として青色領域の発振波長(440nm以上490nm以下)のレーザ光、黄色蛍光体又は緑色蛍光体+赤色蛍光体のいずれかの組合せを採用すれば良い。
さらに、レーザ光源として青色領域の発振波長(440nm以上490nm以下)のLED光、蛍光体として黄色蛍光体又は緑色蛍光体+赤色蛍光体のいずれかの組合せを採用すれば良い。
なお、黄色の蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長を有する光を発する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長を有する光を発する蛍光体である。赤色の蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長を有する光を発する蛍光体である。
〔2.レーザ光源の概要構成について〕
次に、図2(a)及び(b)に基づき、レーザ光源群を構成するレーザ光源の具体例について説明する。
図2(a)は、レーザ光源の一例であるLDチップ11の回路図であり、図2(b)は、LDチップ11の概観を示す模式図である。
図2(a)及び(b)に示すように、LDチップ11は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板としては、その他には、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、CrO2およびCeO2等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、レーザ光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114よりレーザ光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることが出来る。
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
〔3.第2光学系の選定方法〕
次に、図4(a)〜(f)及び図8に基づき、第1光学系からの出射光の照射範囲と第2光学系の選定方法との関係について説明する。
まず、図4(a)に示すようにLDチップ11(パッケージの先端部の大きな直方体の上にある小さな直方体)を水平に設置した時、LDチップ11から放射されるレーザ光L0は、縦(鉛直方向)に長く、横(水平方向)に短い楕円錐状となる光出射傾向を示す。
すなわち、LDチップ11から放射されるレーザ光L0は、縦横比(アスペクト比)が非常に大きい(例えば、水平方向で5度、垂直方向で30度)。
一方、図4(b)に示すように直方体状発光体40は、鉛直方向に短く、水平方向に長い直方体形状である。
そうすると、直方体状発光体40の発光効率を高くするためには、縦に長い楕円錐状に広がるレーザ光L0を、鉛直方向に短く水平方向に長い照射光L2に変換する光学部品(第2光学系)が必要となる。
例えば、図8に示す例では、レーザ光源群Sから発生するレーザ光の照射面が鉛直方向に長く、水平方向に短い楕円状となる場合、第2光学系は、水平方向に軸を持つ凸面を有する凸シリンドリカルレンズ31と、鉛直方向に軸を持つ凹面を有する凹シリンドリカルレンズ32とを組合せを採用すれば良い。
なお、図8は、第2光学系を凸レンズと凹レンズとで構成した場合の様子を示す模式図である。
水平方向に軸を持つ凸面を有する凸シリンドリカルレンズ31は、レーザ光源群Sから発生するレーザ光の照射面を鉛直方向に縮小し、凹シリンドリカルレンズ32は、レーザ光源群Sから発生するレーザ光の照射面を水平方向に拡大する。
なお、図8に示す例では、レーザ光源群S側のレンズを凸シリンドリカルレンズ31とし、直方体状発光体40側のレンズを凹シリンドリカルレンズ32としているが、逆にレーザ光源群S側のレンズを凹シリンドリカルレンズ32とし、直方体状発光体40側のレンズを凸シリンドリカルレンズ31としても良い。
また、図8に示す例では、凸シリンドリカルレンズ31及び凹シリンドリカルレンズ32のそれぞれの光軸は一致させている。
次に、第1光学系として後述する角錐台状集光部(第1光学系)21Aを採用したときの光出射傾向につい説明する。
まず、図4(c)に示す状態は、第2光学系が存在しない場合の角錐台状集光部21Aの出射光の光出射傾向のパターンとして、光出射面212Aの水平方向の幅が比較的大きく出射光L1の水平方向の拡がりが、直方体状発光体40の光照射領域(不図示)の水平方向の幅より大きい場合を示している。このような場合としては、光照射領域の水平方向の幅よりも光出射面212Aの水平方向の幅が大きい場合などが好例である。
また、光出射面212Aの水平方向の幅が光照射領域の水平方向の幅よりも小さい場合でも、角錐台状集光部21Aの形状によっては、出射光L1の水平方向の拡がりが、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅より大きくなる場合が生じうる。
例えば、光出射面212Aが平坦な面で構成されている場合、光出射面212Aから出射される出射光L1は、通常平行光であることはあり得ず、若干なりとも拡がって出射される。また、後述する第1光学系として光ファイバー束22を用いる場合でも、光ファイバー223は全反射を利用していることから、やはり若干なりとも拡がって出射される。
よって、光出射面212Aの水平方向の幅と直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅の大小関係のみならず、光出射面212Aから直方体状発光体40までの距離が離れていれば(離して直方体状発光体40を設置すれば)、出射光L1の水平方向の拡がりが、光照射領域の水平方向の幅より大きくなり得る。
次に、図4(e)に示す状態は、第2光学系が存在しない場合の角錐台状集光部21Aの出射光の光出射傾向のパターンとして、光出射面212Aの水平方向の幅が比較的小さく出射光L1の水平方向の拡がりが、直方体状発光体40の光照射領域(不図示)の幅より小さい場合を示している。
このような場合としては、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅よりも光出射面212Aの水平方向の幅が極端に小さい場合などが好例である。
また、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅よりも光出射面212Aの水平方向の幅が極端に小さくなくても、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅が光出射面212Aの水平方向の幅と同程度の大きさである場合に角錐台状集光部21Aの光学設計を工夫することによって光出射面212Aから出射される出射光L1がほぼ平行光となった場合などにも、出射光L1の水平方向の拡がりが、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅より小さくなり得る。
ここで、図4(d)に示す凸シリンドリカルレンズ(第2光学系、凸レンズ)31は、鉛直方向(紙面の表裏方向)に軸を持ち、凸部を光照射領域側に向けた平凸シリンドリカルレンズであり、出射光L1の直方体状発光体40に対する水平方向の拡がりを小さくする機能を有する光学部品である。
よって、図4(c)に示すように出射光L1の水平方向の拡がりが、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅より大きい場合は、角錐台状集光部21Aと、直方体状発光体40の間に、凸シリンドリカルレンズ31を設ければ良い。
一方、図4(f)に示す凹シリンドリカルレンズ(第2光学系,凹レンズ)32は、鉛直方向に軸を持ち、凹部を光照射領域側に向けた平凹シリンドリカルレンズであり、出射光L1の直方体状発光体40に対する水平方向の拡がりを大きくする機能を有する光学部品である。
よって、図4(e)に示すように出射光L1の水平方向の拡がりが、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅より小さい場合は、角錐台状集光部21Aと、直方体状発光体40の間に、凹シリンドリカルレンズ32を設ければ良い。
なお、上述した例の他、発光部の光照射領域の形状に応じて、任意の軸を持つ凹面及び凸面を有する独立したレンズの組合せ、任意の軸を持つ凸面及び凸面を有する独立したレンズの組合せ、任意の軸を持つ凹面及び凹面を有する独立したレンズの組合せなどを採用しても良い。
これにより、発光部の光照射領域の形状に応じて適切なレンズの組合せを採用することで、発光部の発光効率を高めることができる。
また、発光部の照射領域の形状に応じて、任意の軸を持つ凹面及び凸面を有するレンズを一体化した複合レンズ、任意の軸を持つ凸面及び凸面を有する複合レンズを一体化したレンズ、任意の軸を持つ凹面及び凹面を有するレンズを一体化した複合レンズなどを採用しても良い。
これにより、光学系全体の部品点数を少なくし、光学系全体のサイズを小さくしつつ、発光部の光照射領域の形状に応じて適切な複合レンズを採用することで、発光部の発光効率を高めることができる。
その他のレンズとしては、GRINレンズ(Gradient Index lens:屈折率勾配変化型レンズ)なども例示できる。
なお、GRINレンズは、レンズが凸又は凹の形状をしていなくても、レンズ内部の屈折率勾配によってレンズ作用が生じるレンズである。
よって、GRINレンズを用いれば、例えば、GRINレンズの端面を平面としたままでレンズ作用を生じさせることができるので、GRINレンズの端面に直方体状発光体40を隙間無く接合させることができる。
これにより、光照射領域に照射されないレーザ光L0を低減できるので、直方体状発光体40の発光効率をより向上させることができる。
〔4.集光部材の他端での光出射傾向と第2光学系の構成との関係〕
次に、図1、図4(a)、図5(a)〜(e)、図6の(a)部分〜(f)部分に基づき、後述する角錐台状集光部21Aの光出射面(第1光学系の他端)212Aでの光出射傾向と第2光学系の構成との関係について説明する。
まず、図5(a)〜(e)に基づき、レーザダイオード群10を構成する各LDチップ11の向きと、角錐台状集光部21Aの光出射面212Aから出射する各出射光L1の光出射傾向について説明する。
ところで、レーザ光L0を角錐台状集光部21Aの角錐台側面213Aで全反射させる観点からは、レーザダイオード群10を構成する各LDチップ11の向きは、図5(c)に示すように、各LDチップ11の向きを水平にした状態(図4(a)の状態)とすることが好ましいが、ここでまず、その理由について説明する。
これは、図5(a)に示す角錐台状集光部21Aの上面におけるレーザダイオード群10側の対頂角θよりも、図5(b)に示す角錐台状集光部21Aの側面における上面側の対頂角φの方が大きいからである。
すなわち、レーザ光L0を角錐台状集光部21Aの角錐台側面213Aで全反射させる観点からは、レーザ光L0が角錐台状集光部21Aの角錐台側面213Aに入射する角度はなるべく小さい方が良い(角錐台側面213Aに対する入射角は大きいほうが良い)。
例えば、図5(a)に示すレーザ光L0は、角錐台側面213Aに対する入射角θ1が小さくなりすぎた結果、全反射せずに角錐台状集光部21Aの外に抜けてしまった様子を示している。
一方、図5(b)に示すレーザ光L0は、角錐台側面213Aに入射角φ1が大きいので、全反射している。
言い換えれば、レーザ光L0は、水平方向に長く、鉛直方向に短い断面形状の角錐台状集光部21Aの水平方向に対して逃げる確率が高く、鉛直方向に対して逃げる確率が小さい。
そうすると、各LDチップ11から発生するレーザ光L0の入射面211A上の光照射範囲は、図5(c)に示すように、鉛直方向に長く、水平方向に短くなるようにすることが好ましいと考えられる。
ところで、このように(図5(c)に示すように)、レーザダイオード群10を構成する各LDチップ11の向きを水平にした状態(図4(a)の状態)では、以下で説明する各LDチップ11の向きを水平にした状態から90度回転させた場合(図5(d)の場合)と比較して角錐台状集光部21Aの光出射面212Aから出射する各出射光L1は、水平方向の拡がりが小さく、鉛直方向の拡がりが大きくなる傾向を示す。
従って、以下で説明する発光装置120Aなどでは、光出射面212Aから出射する各出射光L1の水平方向の拡がりは、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅よりも小さく、光出射面212Aから出射する各出射光L1の鉛直方向の拡がりは、直方体状発光体40の光照射領域の鉛直方向の幅よりも大きくなるものとして、鞍形凹レンズ30を採用している。
すなわち、鞍形凹レンズ30は、鉛直方向の軸を持つ凹レンズと水平方向に軸を持つ凸レンズとを一体化した鞍形の凹面を有するレンズとした。
例えば、図6の(a)部分〜(f)部分に示す鞍形凹レンズ30は、鉛直方向に軸を持つ凹面と水平方向に軸を持つ凸面とが一体化された鞍状の凹面を形成し、この鞍状の凹面は、鞍部点Hを有する曲面となっている。
なお、図6は、鞍形凹レンズ30の構造を説明するための模式図であり、図6の(a)部分は、鞍形凹レンズ30の裏面図(凹面側を表とする)であり、図6の(b)部分は、その短手方向の一側面図であり、図6の(c)部分は、その長手方向の一側面図であり、図6の(d)部分は、その短手方向の他の側面図であり、図6の(e)部分は、その表面図である。また、図6の(f)は、鞍形凹レンズ30の凹面の形状の一例を概念的に示す概念図である。
また、鞍部点Hの鞍形凹レンズ30の表側(図(c)の紙面に対して下側)には、凹面による焦点が存在し、鞍部点Hの鞍形凹レンズ30の裏側には、凸面による焦点が存在し得る。
よって、鞍形凹レンズ30の鞍状の凹面からの出射光の拡がりは、凹面に対して助長され、凸面に対して抑制される。
これにより、光出射面212Aから出射される各出射光L1の拡がりが水平方向に小さく、鉛直方向に大きくなる場合でも、鞍状の凹面を有する単体の鞍形凹レンズ30で、その形状に合せて直方体状発光体40の光照射領域の水平方向のサイズ及び鉛直方向のサイズに合せて光照射領域に各レーザ光L0由来の照射光L2が分散して照射されるようにすることができる。
よって、第2光学系を鞍形凹レンズ30のみで構成することができるので、上述した凸シリンドリカルレンズ31及び凹シリンドリカルレンズ(第2光学系,凹レンズ)32の組合せのように別々のレンズで構成した場合と比較して、全体の光学系の部品点数を少なくできると共に、全体の光学系のサイズを小さく抑えることができる。
なお、図6(f)に示す点Hは、「鞍部点」であり、凹レンズの凹面の極小点、凸レンズの凸面の極大点とが一致する点である。例えば、図6(f)に示す「双曲放物面」は、鞍部点Hを有する曲面の代表例である。
また、x軸に沿う曲線は、点Hで極大となり、かつ、y軸に沿う曲線は、点Hで極小となり、x軸とy軸とが交差する点Hは、極大点と極小点とが一致する鞍部点となっている。
次に、図5(d)に基づき、光出射面212Aから出射する各出射光L1の水平方向の拡がりと鉛直方向の拡がりとの関係が、上述した図5(c)の場合と、逆になる場合について説明する。
なお、図5(d)は、角錐台状集光部21Aの光出射面212Aにおける光出射傾向の他の例を示す模式図である。
図5(d)は、レーザダイオード群10を構成する各LDチップ11の向きを、水平にした状態(図4(a)の状態)から90度回転させた状態で発生する各レーザ光L0を角錐台状集光部21Aの光入射面(第1光学系の一端)211Aに入射させた様子を示している。
このとき、各LDチップ11から光入射面211Aに入射する各レーザ光L0は、縦横比(アスペクト比)が、鉛直方向に5度、垂直方向に30度と、水平に長く、縦に短い楕円状の照射面を有する光となる。
このため、角錐台状集光部21Aの光出射面212Aから出射する各出射光L1は、水平方向の拡がりが比較的大きく、鉛直方向の拡がりが比較的小さくなる傾向を示す。
そうすると、例えば、図5(d)のような場合、角錐台状集光部21Aの光出射面212Aから出射されるレーザ光L0の水平方向の拡がりが、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅よりも大きくなり、レーザ光L0の鉛直方向の拡がりが、鉛直方向の幅よりも小さくなってしまう場合が生じ得る。
このような場合、光照射領域に照射されないレーザ光L0の一部や、光照射領域にレーザ光L0が照射されない部分が生じ得るため、直方体状発光体40の発光効率が低下してしまうという問題点が生じる。
よって、このような場合は、図6に示すような鞍形凹レンズ30とは逆に、水平方向に軸を持つ凹面を有する凹レンズと、鉛直方向に軸を持つ凸面を有する凸レンズを一体化した鞍形の凹レンズを採用する必要がある。
すなわち、図6の(c)部分では、水平方向に軸を持つ凹レンズを、水平方向に軸を持つ凸レンズに替え、図6の(b)部分及び(d)部分では、鉛直方向に軸を持つ凸レンズを、鉛直方向に軸を持つ凹レンズに替えた鞍形の凹レンズを採用すれば良い。
上述したように、鞍状の凹面からの出射光の拡がりは、凹面に対して助長され、凸面に対して抑制される。
よって、光出射面212Aから出射される各出射光L1の拡がりが水平方向に大きく、鉛直方向に小さくなる場合でも、鞍状の凹面を有する単体の鞍形凹レンズで、その形状に合せて直方体状発光体40の光照射領域の水平方向のサイズ及び鉛直方向のサイズに合せて光照射領域に各レーザ光L0由来の照射光L2が分散して照射されるようにすることができる。
なお、この鞍形凹レンズの構造は、図1の鞍形凹レンズ30を長手方向と短手方向とのサイズを逆にして、鞍形凹レンズ30を、水平方向を軸として90度回転させたような構造と考えれば良いので、ここでは、特に図示しない。
次に、図5(e)に基づき、レーザダイオード群10を構成する各LDチップ11の向きと、角錐台状集光部21Aの光出射面212Aから出射する各出射光L1の光出射傾向のさらに他の例について説明する。
なお、図5(e)は、角錐台状集光部21Aの光出射面212Aにおける光出射傾向のさらに他の例を示す模式図である。
図5(e)は、レーザダイオード群10を構成する各LDチップ11の向きを水平にした状態(図4(a)の状態)と、水平にした状態から90度回転させた状態とを交互に配列した場合に、発生する各レーザ光L0を角錐台状集光部21Aの光入射面211Aに入射させた様子を示している。
このとき、角錐台状集光部21Aの光出射面212Aから出射する各出射光L1は、水平方向の拡がりが比較的大きく、鉛直方向の拡がりも比較的大きくなる傾向を示す。
そうすると、例えば、図5(e)のような場合、角錐台状集光部21Aの光出射面212Aから出射されるレーザ光L0の水平方向の拡がりが、直方体状発光体40の光照射領域の水平方向の幅よりも大きくなり、また、レーザ光L0の鉛直方向の拡がりも、直方体状発光体40の鉛直方向の幅よりも大きくなってしまう場合が生じ得る。
このような場合、光照射領域に照射されないレーザ光L0が生じ得るため、直方体状発光体40の発光効率が低下してしまうという問題点が生じる。
よって、このような場合は、例えば、水平方向に軸を持つ凸面を有する凸レンズと、鉛直方向に軸を持つ凸面を有する凸レンズを一体化した複合凸レンズ(なお、この複合凸レンズについては、ここでは、特に図示しない)を採用する必要がある。
上述したように、光出射面212Aからの出射光の拡がりは、凸レンズを採用すれば、抑制される。
よって、光出射面212Aから出射される各出射光L1の拡がりが水平方向に大きく、鉛直方向にも大きくなる場合でも、水平方向に軸を持つ凸面を有する凸レンズと、鉛直方向に軸を持つ凸面を有する凸レンズを一体化した複合凸レンズ単体で、その形状に合せて直方体状発光体40の光照射領域の水平方向のサイズ及び鉛直方向のサイズに合せて光照射領域に各レーザ光L0由来の照射光L2が分散して照射されるようにすることができる。
なお、以上では、レーザダイオード群10を構成する各LDチップ11からのレーザ光L0の照射範囲が、すべて同一の向きで鉛直方向に長い場合(図5(c))、すべて同一の向きで水平方向に長い場合(図5(d))、鉛直方向に長い照射範囲のものと、水平方向に長い照射範囲のものとを交互に並べた場合(図5(e))の3つの形態について説明した。
しかしながら、レーザダイオード群10を構成する各LDチップ11の向きや配列方法はここで説明した3つの形態に限られず、例えば、各LDチップ11の向きがばらばらな場合など様々な形態が本発明の範疇に含まれることは言うまでも無い。
すなわち、各LDチップ11の向きは、任意の向きで合って良く、また、各LDチップ11の全部又は一部の向きが揃っていても良いし、各LDチップ11の向きが全くばらばらであっても良い。
〔5.発光装置の具体例について(その1)〕
次に、図3(a)及び(b)に基づき、本発明の他の実施形態である発光装置120A・発光装置120B(発光装置110の第1導光部20より具体化したもの)の各構成について説明する。
図3(a)は、発光装置110の第1導光部20を集光素子とした一例として、角錐台状集光部(第1光学系)21Aを採用した発光装置120Aの構成を示している。
なお、本実施形態では、角錐台状集光部21Aを例にとって説明するが、集光部の形状はこれに限られず、円錐台状、楕円錐台など様々な形状を採用することができる。
レーザダイオード群10及びLDチップ11については、上述したとおりである。
角錐台状集光部21Aは、光入射面(第1光学系の一端)211Aから入射した各レーザ光L0を反射する角錐台側面(光反射側面,囲繞構造)213Aで囲まれた囲繞構造を有していると共に、光出射面(第1光学系の他端)212Aの断面積は、光入射面211Aの断面積よりも小さくなっており、光入射面211Aから入射した各レーザ光L0を、角錐台側面213Aにより光出射面212Aに導光する。
これにより、角錐台側面213Aにより、光入射面211Aから入射した各レーザ光L0を、光入射面211Aの断面積よりも小さい断面積を有する光出射面212Aに導光する、すなわち、各レーザ光L0を、光出射面212Aに集光することができる。
なお、角錐台状集光部21Aは、石英ガラス、BK7、アクリル樹脂その他の透明素材で構成する。
以上の構成によれば、光出射面212Aの面積及び直方体状発光体40(光照射領域)のサイズを共に小さくすることにより、レーザダイオード群10を構成するLDチップ11の数に応じた高輝度・高光束の光を発生する直方体状発光体40の小型化が可能となる。
ここで、角錐台側面213Aは、レーザダイオード群10から発生する各レーザ光L0のすべての光路の周囲を取り囲むように構成する。
また、各レーザ光L0は、角錐台側面213Aに1回だけ反射して光出射面212Aに導光される場合、角錐台側面213Aに複数回反射して光出射面212Aに導光される場合、角錐台側面213Aに1回も反射することなく光出射面212Aに導光される場合のいずれかの光路で導光される。
鞍形凹レンズ30及び直方体状発光体40については、上述したとおりである。
発光装置120Aは、直方体状発光体40の光照射領域に合せて、各レーザ光L0由来の出射光L1が分散して照射光L2として照射されるため、直方体状発光体40に含まれる蛍光体の全体に亘って低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に効率良く励起する。
よって、直方体状発光体40からムラなくインコヒーレント光L3が発生するので、単一のLDチップ11を用いる場合と比較して発光装置120Aの高光束・高輝度化を実現することができる。
また、各レーザ光L0由来の照射光L2を直方体状発光体40の光照射領域上の一点に集中して照射させず、角錐台状集光部21A及び鞍形凹レンズ30を介して光照射領域に分散して照射させるので、各レーザ光L0が同一点に集中して照射されることによって直方体状発光体40が劣化してしまうことを防止することができる。
以上によれば、高光束・高輝度かつ長寿命を実現できる発光装置120Aを提供することができる。
なお、以下で説明するように、照明装置140におけるフェルール70[出射端(光ファイバーの他端が配列された部分)222]と、鞍形凹レンズ30との間に角錐台状集光部21Aを設けても良い(図7(a)参照)。
これにより、レーザ光源の数を大きくしつつ照明装置140においてさらに直方体状発光体40のサイズを小さくすることが可能となる。
次に、図3(b)は、発光装置120Aの角錐台状集光部(第1光学系)21と鞍形凹レンズ(第2光学系,凹レンズ,凸レンズ)30とを(光出射面212Aで)一体化し(但し、鞍形凹レンズ30の大きさは適宜調整される)、1つの光学部材(導光部材)とした一例として、角錐台状光学部材(導光部材,第1光学系,第2光学系,集光部材)21Bを採用した発光装置120Bの構成を示している。
なお、本実施形態では、角錐台状光学部材21Bを例にとって説明するが、光学部材の形状はこれに限られず、円錐台状、楕円錐台など様々な形状を採用することができる。
レーザダイオード群10及びLDチップ11については、上述したとおりである。
角錐台状光学部材21Bは、その一端の光入射面(第1光学系側の一端)211Bから入射した各レーザ光L0を反射する角錐台側面(光反射側面,囲繞構造)213Bで囲まれた囲繞構造を有しており、この囲繞構造により、光入射面211Bから入射した各レーザ光L0を、角錐台状光学部材21Bの他端に導光するようになっている。
また、角錐台状光学部材21Bの他端には、導光した各レーザ光L0を直方体状発光体40における所定の光照射領域に分散して照射する光分散面(光分散部,第2光学系側の他端)212Bが形成されている。
さらに、光分散面212Bの断面積は、光入射面211Bの断面積よりも小さくなっており、光入射面211Bから入射した各レーザ光L0を、角錐台側面213Bにより光分散面212Bに集光できるようになっている。
なお、角錐台状光学部材21Bは、石英ガラス、アクリル樹脂その他の透明素材で構成する。
光分散面212Bは、図3(a)に示す角錐台状集光部21Aの光出射面212Aに対して鞍形凹レンズ30を一体化した構造となっている。
以上の構成によれば、光分散面212Bの面積及び直方体状発光体40(光照射領域)のサイズを共に小さくすることにより、レーザダイオード群10を構成するLDチップ11の数に応じた高輝度・高光束の光を発生する直方体状発光体40の小型化が可能となる。
ここで、角錐台状光学部材21Bは、レーザダイオード群10から発生する各レーザ光L0のすべての光路の周囲を取り囲むように構成する。
また、各レーザ光L0は、角錐台側面213Bに1回だけ反射して光分散面212Bに導光される場合、角錐台側面213Bに複数回反射して光分散面212Bに導光される場合、角錐台側面213Bに1回も反射することなく光分散面212Bに導光される場合のいずれかの光路で導光される。直方体状発光体40については、上述したとおりである。
発光装置120Bは、光分散面212Bから直方体状発光体40の光照射領域に合せて、各レーザ光L0由来の照射光L2が分散して照射されるため、直方体状発光体40に含まれる蛍光体の全体に亘って低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に効率良く励起する。
よって、直方体状発光体40からムラなくインコヒーレント光L3が発生するので、単一のLDチップ11を用いる場合と比較して発光装置120Bの高光束・高輝度化を実現することができる。
また、各レーザ光L0由来の照射光L2を直方体状発光体40の光照射領域上の一点に集中して照射させず、角錐台状光学部材21Bを介して光照射領域に分散して照射させるので、各レーザ光L0が同一点に集中して照射されることによって直方体状発光体40が劣化してしまうことを防止することができる。
以上によれば、高光束・高輝度かつ長寿命を実現できる発光装置120Bを提供することができる。
〔6.発光装置の具体例について(その2)〕
次に、図7の(a)部分及び(b)部分に基づき、本発明のさらに他の実施形態である照明装置(発光装置)140の概要構成について説明する。
図7は、発光装置110の第1導光部20を複数の導光部材で構成した一例として、光ファイバー束(第1光学系,複数の光ファイバー)22を採用した照明装置140の構成を示す模式図であり、図5の(a)部分は、その概要構成を示し、図5の(b)部分は、複数の光ファイバーを固定するフェルール70の一例を示す。
図5の(a)部分に示すように、照明装置140は、LDチップ(レーザ光源群)101、ロッド状レンズ(第1光学系)50、固定持具60、光ファイバー束22、フェルール70、角錐台状集光部21A、鞍形凹レンズ(第2光学系,凹レンズ,凸レンズ)30、直方体状発光体40、反射板80、反射鏡90及びハウジング100を備える構成である。
LDチップ101は、1チップ5ストライプ、すなわち、発光点(レーザ光源)102を5つ持った単一(1チップ)の半導体レーザである。
また、それぞれの発光点102の光出力は1W、LDチップ101の1チップから放射される光の総和は5Wである。ストライプ間隔は0.4mmである。
このように、レーザ光源群をLDチップ101で構成すれば、それぞれの発光点102が、コヒーレントなレーザ光L0を発生する。よって、コヒーレントなレーザ光L0は、インコヒーレントなレーザ光と比較して、指向性が強いので、光束の損失を最小限に抑えつつ入射端(第1光学系の一端)221に入射させることができる。
また、1チップ5ストライプのLDチップ101によれば、単一のLDチップ101が、5つの発光点102を持つように構成するので、LDチップ101のサイズを小さくすることができる。
また、5つの発光点102を持つ単一のLDチップ101を量産すれば、単一のレーザ光出射端を持つ1チップ1ストライプのLDチップ11を5つ生産するよりも、生産コストを低減させることができる。
なお、本実施形態では、レーザ光源群として発光点102を5つ持った1チップ5ストライプの半導体レーザを用いているが、発光点102の数は、これに限られず、必要に応じて2〜4つとしても良く、また、6以上設けても良い。
また、レーザ光源群の例としては、LDチップ101のように、複数のレーザ光源(発光点102)を一体化したものであっても良いし、上述したレーザダイオード群10のように複数の1チップ1ストライプのLDチップ11が空間的に分離して存在しているものであっても良い。
すなわち、レーザ光源群は、複数のLDチップ11で構成されており、各レーザ光L0は、対応するLDチップ11から発生するレーザ光L0であっても良い。
なお、レーザ光源群を複数のLDチップ11で構成した場合には、LDチップ11毎に非球面レンズ(第1光学系:例えば、アルプス電気製FLKN1 405:不図示)を設けてレーザ光L0をコリメートし、対応する光ファイバー223の一端から入射させれば良い。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズの形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
LDチップ101の5つの発光点102から発生した各レーザ光L0は、ロッド状レンズ50によってコリメートされ、入射端221(光ファイバー223の一端)に入射する。
ロッド状レンズ50の紙面に対して手前側には、0.4mmピッチで光ファイバー223が5本並べられた光ファイバー束22が設置されている。
光ファイバー223は、コア径200μm、クラッド径240μm、開口数NA=0.22の石英製の光ファイバーである。
固定持具60は、0.4mmピッチの溝が切られており、光ファイバー束22の入射端221を固定し、光ファイバー223のピッチ間隔が保持されている。
なお、本実施形態では、断面が円形の光ファイバー223を第1光学系として用いているが、断面が円形に限らず、正三角形、平行四辺形(正方形・長方形を含む)、及び正六角形のうちのいずれかであることが好ましい。
以上の構成によれば、理論上、出射端222の断面を、同一形状の光ファイバー223の他端の断面で隙間無く敷詰めることができる。すなわち、面積あたりの光ファイバー223の他端の断面の数を各断面形状において最大の数とすることができる。
ところで、上述したように、前記特許文献1及び2に開示された灯具では、レーザ光源毎に設けられた集光レンズを用いてレーザ光を導光し、さらにレーザ光毎に反射鏡に穴を開け、その穴にレーザ光を通過させて蛍光体に照射しているので、レーザ光源の数が増加する程、灯具が大型化してしまうと共に、反射鏡による光の反射効率が悪化するという副次的な問題点があった。
そこで、このような副次的な問題点を解決するために、照明装置140において、第1光学系は、複数の光ファイバー223の束である光ファイバー束22という構成を採用している。
この光ファイバー束22の一端は、光ファイバー223の一端の集まりである入射端221となっている。
また、光ファイバー束22の他端は、光ファイバー223のそれぞれが、フェルール70に形成された5つの貫通孔に嵌挿された光ファイバー223の他端の集まりである出射端(光ファイバーの他端が配列された部分)222を形成している。なお、フェルール70の材質は特に限定されず、例えばステンレス・スティールである。
また、LDチップ101の5つの発光点102から発生した各レーザ光L0は、対応する光ファイバー223の一端から入射し、その光ファイバー223の他端(出射端222)から各レーザ光L0に由来する出射光を出射するようにしている。
これにより、第1導光部20を光ファイバー束22で構成するという簡易な構成で、各レーザ光L0は、対応する光ファイバー223の一端から入射し、出射端222に導光される。
また、照明装置140におけるフェルール70[出射端(光ファイバーの他端が配列された部分)222]と、鞍形凹レンズ30との間には、角錐台状集光部21Aを設けている。
これにより、レーザ光源の数を大きくしつつ照明装置140においてさらに直方体状発光体40のサイズを小さくすることが可能となる。
また、光ファイバー223の太さと数にも拠るが、通常、複数の光ファイバー223を束ねてもその厚さはそれ程大きくならない。
よって、出射端222及び直方体状発光体40(光照射領域)のサイズを小さく保ったまま、小さな直方体状発光体40の光照射領域に5つの発光点102から発生したレーザ光L0由来の照射光L2を照射することができる。
また、例えば、照明装置140では、反射鏡90の中央に穴を開け、その穴に光ファイバー束22を通過させて出射端222から直方体状発光体40に照射光L2を照射させれば良いので、特許文献1及び2に開示された灯具のようにレーザ光源(発光点102)の数が多くなっても、反射鏡90による光の反射効率が悪化することはない。
次に、出射端222から出射した出射光は、角錐台状集光部21Aの光入射面211Aから入射し、角錐台側面213Aによって光出射面212Aに導光される。
その後、光出射面212Aに導光された各レーザ光は、光出射面212Aから出射光L1として、鞍形凹レンズ30を透過し、照射光L2として直方体状発光体40の図示しない光照射領域に分散して照射される。直方体状発光体40については、上述したとおりである。
次に、反射板80は、投影レンズの裏面に接合された透明な樹脂板であり、直方体状発光部40は、反射板80に接合されて固定されている。この反射板80を、LDチップ11からのレーザ光L0を遮断するとともに、直方体状発光部40においてレーザ光L0を変換することにより生成された白色光(インコヒーレント光L3)を透過する材質で形成することが好ましい。なお、反射板80の素材は、樹脂に限らずガラスであってもよい。またレーザ光L0を遮断するためだけであれば、透明でない金属板も使用することができる。
直方体状発光部40によってコヒーレントなレーザ光L0は、そのほとんどがインコヒーレント光L3に変換される。しかし、何らかの原因でレーザ光L0の一部が変換されない場合も考えられる。このような場合でも、反射板80によってレーザ光L0を遮断することにより、レーザ光L0が外部に漏れることを防止できる。なお、このような効果を期待せず、かつ反射板80以外の部材によって直方体状発光部40を固定する場合には、反射板80を省略することが可能である。
また、反射板80は、レーザ光L0が外部に漏れることを防止できる大きさであれば良く、本実施形態では、直方体状発光部40よりも少し大きくした程度の大きさとなっているが、レーザ光L0反射鏡90の開口面と同程度の大きさとしても良い。
直方体状発光体40から発生したインコヒーレント光L3は、反射板80によって照射光L2の進行方向と逆向きに進む。
次に、反射鏡90は、直方体状発光体40から発生したインコヒーレント光L3を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。反射鏡90は、直方体状発光体40と対向する面が半球状であり、直方体状発光体40が設けられている位置に直方体状発光体40の位置に焦点を有する。
反射板80によって反射されたインコヒーレント光L3は、反射鏡90によって再度反射され、照明装置140の前方に進む。これにより、反射鏡90は、直方体状発光体40から発生したインコヒーレント光L3を、所定の立体角内を進む光線束を形成して、前方へ照射する。
ハウジング100は、フェルール70、鞍形凹レンズ30、直方体状発光体40等を収容する筐体である。
また、照明装置140は、直方体状発光体40の光照射領域に、各レーザ光L0由来の出射光L1が分散して照射光L2として照射されるため、直方体状発光体40に含まれる蛍光体の全体に亘って低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に効率良く励起する。
よって、直方体状発光体40からムラなくインコヒーレント光L3が発生するので、単一の発光点102を有するレーザ光源を用いる場合と比較して照明装置140の高光束・高輝度化を実現することができる。
また、各レーザ光L0由来の出射光L1を直方体状発光体40の光照射領域上の一点に集中して照射させず、光ファイバー束22、角錐台状集光部21A及び鞍形凹レンズ30を介して光照射領域に分散して照射させるので、各レーザ光L0が同一点に集中して照射されることによって直方体状発光体40が劣化してしまうことを防止することができる。
以上によれば、高光束・高輝度かつ長寿命を実現できる照明装置140を提供することができる。
〔7.レーザダウンライトについて〕
本発明のさらに他の実施形態であるレーザダウンライト(発光装置,照明装置)400について図9〜図14に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
ここでは、本発明の照明装置の一例としてのレーザダウンライト400について説明する。レーザダウンライト400は、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置であり、LDチップ11から出射したレーザ光L0を、光ファイバー223などを介して、直方体状発光部40に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いるものである。
なお、非球面レンズ4は、LDチップ11から発振されたレーザ光L0を、光ファイバー223の入射端に入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ4として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ4の形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
なお、LDチップ11及び光ファイバー223に替えて、LDチップ101及び光ファイバー束22を用いる場合には、非球面レンズ4に替えて、図5の(a)部分に示す、ロッド状レンズ50、固定治具60等を用いれば良い。
また、レーザダウンライト400と同様の構成を有する照明装置を、構造物の側壁または床に設置してもよく、上記照明装置の設置場所は特に限定されない。
図9は、発光ユニット410および従来のLEDダウンライト500の外観を示す概略図である。図10は、レーザダウンライト400が設置された天井の断面図である。図11は、レーザダウンライト400の断面図である。図9〜図11に示すように、レーザダウンライト400は、天板401に埋設され、照明光を出射する発光ユニット410と、光ファイバー223を介して発光ユニット410へレーザ光を供給するLD光源ユニット420とを含んでいる。LD光源ユニット420は、天井には設置されておらず、ユーザが容易に触れることができる位置(例えば、家屋の側壁)に設置されている。このようにLD光源ユニット420の位置を自由に決定できるのは、LD光源ユニット420と発光ユニット410とが光ファイバー223によって接続されているからである。この光ファイバー223は、天板401と断熱材402との間の隙間に配置されている。
(発光ユニット410の構成)
発光ユニット410は、図11に示すように、筐体411、光ファイバー223、直方体状発光部40、鞍形レンズ30、フェルール70及び透光板413を備えている。なお、図5の(b)部分に示すフェルール70は、光ファイバー223の数に併せて5つの貫通孔が存在しているが、本実施形態では、フェルール70の貫通孔は1つであるものとする(不図示)。
筐体411には、凹部412が形成されており、この凹部412の底面に直方体状発光部40が配置されている。凹部412の表面には、金属薄膜が形成されており、凹部412は反射鏡として機能する。
また、筐体411には、光ファイバー223を通すための通路414が形成されており、この通路414を通って光ファイバー223が直方体状発光部40まで延びている。光ファイバー223の他端と直方体状発光部40との位置関係は上述したものと同様である。
透光板413は、凹部412の開口部をふさぐように配置された透明または半透明の板である。この透光板413は、LDチップ11からのレーザ光L0を遮断するとともに、直方体状発光部40においてレーザ光L0を変換することにより生成されたインコヒーレント光L3を透過する材質で形成することが好ましい。
直方体状発光部40によってコヒーレントなレーザ光L0は、そのほとんどがインコヒーレントL3に変換される。しかし、何らかの原因でレーザ光L0の一部が変換されない場合も考えられる。このような場合でも、透光板413によってレーザ光L0を遮断することにより、レーザ光L0が外部に漏れることを防止できる。
なお、直方体状発光部40の蛍光は、透光板413を透して照明光として出射される。透光板413は、筐体411に対して取外し可能であってもよく、省略されてもよい。
図9では、発光ユニット410は、円形の外縁を有しているが、発光ユニット410の形状(より厳密には、筐体411の形状)は特に限定されない。
なお、ダウンライトでは、ヘッドランプの場合とは異なり、理想的な点光源は要求されず、発光点が1つというレベルで十分である。それゆえ、直方体状発光部40の形状、大きさおよび配置に関する制約は、ヘッドランプの場合よりも少ない。
(LD光源ユニット420の構成)
LD光源ユニット420は、LDチップ11、非球面レンズ4および光ファイバー223を備えている。
光ファイバー223の出射端は、LD光源ユニット420に接続されており、LDチップ11から発振されたレーザ光L0は、非球面レンズ4を介して光ファイバー223の入射端に入射される。
図11に示すLD光源ユニット420の内部には、LDチップ11および非球面レンズ4が一対のみ示されているが、発光ユニット410が複数存在する場合には、発光ユニット410からそれぞれ延びる光ファイバー223の束を1つのLD光源ユニット420に導いてもよい。この場合、1つのLD光源ユニット420に複数のLDチップ11と非球面レンズ4との対(または、LDチップ101と1つのロッド状レンズ50との対)が収納されることになり、LD光源ユニット420は集中電源ボックスとして機能する。
(レーザダウンライト400の設置方法の変更例)
図12は、レーザダウンライト400の設置方法の変更例を示す断面図である。同図に示すように、レーザダウンライト400の設置方法の変形例として、天板401には光ファイバー223を通す小さな穴403だけを開け、薄型・軽量の特長を活かしてレーザダウンライト本体(発光ユニット410)を天板401に貼り付けるということもできる。この場合、レーザダウンライト400の設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。
(レーザダウンライト400と従来のLEDダウンライト500との比較)
従来のLEDダウンライト500は、図9に示すように、複数の透光板501を備えており、各透光板501からそれぞれ照明光が出射される。すなわち、LEDダウンライト500において発光点は複数存在している。LEDダウンライト500において発光点が複数存在しているのは、個々の発光点から出射される光の光束が比較的小さいため、複数の発光点を設けなければ照明光として十分な光束の光が得られないためである。
これに対して、レーザダウンライト400は、高光束の照明装置であるため、発光点は1つでもよい。それゆえ、照明光による陰影がきれいに出るという効果が得られる。また、直方体状発光部40の蛍光体を高演色蛍光体(例えば、数種類の酸窒化物蛍光体の組合せ)にすることにより、照明光の演色性を高めることができる。
図13は、LEDダウンライト500が設置された天井の断面図である。同図に示すように、LEDダウンライト500では、LEDチップ、電源および冷却ユニットを収納した筐体502が天板401に埋設されている。筐体502は比較的大きなものであり、筐体502が配置されている部分の断熱材402には、筐体502の形状に沿った凹部が形成される。筐体502から電源ライン523が延びており、この電源ライン523はコンセント(不図示)につながっている。
このような構成では、次のような問題が生じる。まず、天板401と断熱材402との間に発熱源である光源(LEDチップ)および電源が存在しているため、LEDダウンライト500を使用することにより天井の温度が上がり、部屋の冷房効率が低下するという問題が生じる。
また、LEDダウンライト500では、光源ごとに電源および冷却ユニットが必要であり、トータルのコストが増大するという問題が生じる。
また、筐体502は比較的大きなものであるため、天板401と断熱材402との間の隙間にLEDダウンライト500を配置することが困難な場合が多いという問題が生じる。
これに対して、レーザダウンライト400では、発光ユニット410には、大きな発熱源は含まれていないため、部屋の冷房効率を低下させることはない。その結果、部屋の冷房コストの増大を避けることができる。
また、発光ユニット410ごとに電源および冷却ユニットを設ける必要がないため、レーザダウンライト400を小型および薄型にすることができる。その結果、レーザダウンライト400を設置するためのスペースの制約が小さくなり、既存の住宅への設置が容易になる。
また、レーザダウンライト400は、小型および薄型であるため、上述したように、発光ユニット410を天板401の表面に設置することができ、LEDダウンライト500よりも設置に係る制約を小さくすることができるとともに工事費用を大幅に削減できる。
図14は、レーザダウンライト400およびLEDダウンライト500のスペックを比較するための図である。同図に示すように、レーザダウンライト400は、その一例では、LEDダウンライト500に比べて体積は94%減少し、質量は86%減少する。
また、LD光源ユニット420をユーザの手が容易に届く所に設置できるため、LDチップ11が故障した場合でも、手軽にLDチップ11を交換できる。また、複数の発光ユニット410から延びる光ファイバー223を1つのLD光源ユニット420に導くことにより、複数のLDチップ11を一括管理できる。そのため、複数のLDチップ11を交換する場合でも、その交換が容易にできる。
なお、LEDダウンライト500において、高演色蛍光体を用いたタイプの場合、消費電力10Wで約500lmの光束が出射できるが、同じ明るさの光をレーザダウンライト500で実現するためには、3.3Wの光出力が必要である。この光出力は、LD効率が35%であれば、消費電力10Wに相当し、LEDダウンライト500の消費電力も10Wであるため、消費電力では、両者の間に顕著な差は見られない。それゆえ、レーザダウンライト400では、LEDダウンライト500と同じ消費電力で、上述の種々のメリットが得られることになる。
以上のように、レーザダウンライト400は、レーザ光L0を出射するLDチップ11を少なくとも1つ備える光源ユニット420と、直方体状発光部40および反射鏡としての凹部412を備える少なくとも1つの発光ユニット410と、発光ユニット410のそれぞれへレーザ光L0を導く光ファイバー223と、光ファイバー223の出射端から出射した出射光L1を照射光L2として直方体状発光体40の光照射領域に分散して照射する鞍形レンズ30とを備える。
それゆえ、レーザダウンライト400において、レーザ光L0が直方体状発光部40の一箇所に集中的に照射されることによって直方体状発光部40が著しく劣化する可能性を低減できる。その結果、長寿命のレーザダウンライト400を実現できる。
〔8.発光装置の配光特性について〕
次に、1チップ1ストライプの半導体レーザ(発振波長は、405nm)であるLDチップ11を10個用いて発光装置(以下、試作例という)を試作し、実験を行った。それぞれのLDチップ11の光出力は、1.0W、動作電圧は、5V、電流は0.6Aである。
また、第1光学系として10個の光ファイバー223で構成された光ファイバー束を用い、第2光学系として鞍形凹レンズ30を用い、発光部として直方体状発光体40(横×縦×高さ=3mm×1mm×1mm)を採用した。
光ファイバー223は、コア径200μm、クラッド径240μm、開口数NA=0.22の石英製の光ファイバーである。
なお、LDチップ11毎に非球面レンズ(第1光学系:例えば、アルプス電気製FLKN1 405:不図示)を設けてレーザ光L0をコリメートし、対応する光ファイバーの一端から入射させた。なお、これらの各構成の配置は、適宜調整したが煩雑なので、説明は省略する。
この試作例にて、配光特性について調べたところ、直方体状発光体40からは1500lm(ルーメン)程度の光束が放射された。
また、このときの直方体状発光体40の輝度は、80Mcd/m2(メガカンデラ毎平方メートル)程度であった。
この実験結果より、単純計算で、LDチップ11の1個当たりの光束は、約150lmであるから、例えば、14個以上のLDチップ11を用いれば、直方体状発光体40は、約2000lmを超えることが可能であると分かる。
また、17個のLDチップ11を用いれば、現実には光の放射は等方的ではないため正確な値の算出は困難であるが、発光点から等方的に光が放射されるとして、単純計算で、光度(単位立体角当たりの光束)=150×17(lm)/4π≒2550(lm)/4/3.14≒203(cd)であり、実効口径面積を3mm2程度、光学系の透過率を0.7とすると、輝度≒203(cd)/0.7/3(mm2)=96.6(cd/mm2)≒96.6(Mcd/m2)≒100(Mcd/m2)程度となることが分かる。
なお、LDチップ11の数を調整して同様な実験を行ったところ、実際に、直方体状発光体40は、2000lmを超える高光束、100Mcd/m2を超える高輝度の実現が可能であることが分かった(このような高輝度・高光束の発光装置のことを以下、単に「レーザ照明」という)。
〔9.発光装置と従来のランプとの配光特性の比較〕
次に、図15〜図16(c)に基づき、上述したレーザ照明と従来のランプとの配光特性の比較結果について説明する。
図15は、自動車用のヘッドランプに必要なレンズ直径をランプの種類で比較した様子を示す図である。
図15に示すように市販のハロゲンランプの輝度は、25Mcd/m2(メガカンデラ毎平方メートル)程度であり、HID(High Intensity discharge)ランプの輝度は、80Mcd/m2程度である。
一方、上述したレーザ照明では、100Mcd/m2程度の高輝度の実現が可能なので、図15に示すように、ハロゲンランプの4倍程度、HIDランプを超える高輝度を実現することができることが分かる。
すなわち、直方体状発光体40が発生するインコヒーレント光L3の輝度は、80Mcd/m2以上であることが好ましい。
また、ハロゲンランプは、通常自動車のハイビーム用のヘッドランプに用いられているが、レーザ照明では、例えば、上述した直方体状発光体40を用いることによって、ハロゲンランプよりも口径サイズの小さい直方体状発光体40でもハロゲンランプの4倍程度の高輝度を実現できるので、ハイビーム用のヘッドランプの前方に設置するレンズの面積を1/4に縮小することが可能である。
なお、ハロゲンランプの発光フィラメントのサイズは、横×縦×高さ=5mm×1.5mm×1.5mm程度である。
次に、図16(a)は、ランプの種類でその性能を比較した図であり、図16(b)は、従来の自動車用ヘッドランプの外観構成の一例を示す図であり、図16(c)は、レーザ照明を用いた場合の自動車用ヘッドランプの外観構成の一例を示す図である。
まず、図16(a)に示すように、市販の高出力白色LED(以下、煩雑なので「高出力」との記載は省略する場合がある)の光束は、1モジュールあたり400〜500lm(ルーメン)程度が上限であり、車載用のハロゲンランプの光束は、700〜1500lm程度(普通乗用車用のハロゲンランプで通常1000lm程度)であり、HIDランプの光束は、3200lm程度である。ただし、HIDランプはその構造・形状から3200lm全ての光束を全て前照灯の照射光に利用することが困難である。実効的には2000lm以下の光束しか利用できていないとされる。また、光学系の設計が困難であるという問題点がある。
一方、実施例のレーザ照明では、2000lmを超える高光束の実現が可能なので、白色LEDの4〜5倍程度、ハロゲンランプを超えHIDランプに近い高光束(実効的にはHIDランプを超える高光束)を実現することができる。
すなわち、直方体状発光体40が発生するインコヒーレント光L3の光束が1500lm以上、3200lm以下であることが好ましい。
また、白色LEDは、通常自動車のロービーム用のヘッドランプに用いられているが、実施例のレーザ照明によれば、例えば、1灯で白色LEDの4〜5灯分の高光束を実現することができる。
以上の検討結果から図16(a)が、従来のヘッドランプの大きさを示しているものとすると、実施例のレーザ照明によれば、例えば、図16(b)に示すように、ハイビーム用及びロービーム用のヘッドランプのそれぞれは、1灯ずつで済み、また、ハイビーム用及びロービーム用のヘッドランプの前方に設置されるレンズの面積もかなり小さくすることが可能である。
また、図16(a)に示すように、レーザ照明では、継続使用による寿命が10000時間程度であり、白色LEDと同程度の長寿命となっている。
よって、高輝度・高光束かつ長寿命を実現できる発光装置110、発光装置120A、発光装置120B及び照明装置140(レーザ照明)などを提供することができる。
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
本発明の発光装置(高輝度光源)は、高出力のレーザ発振が可能な半導体レーザからなるレーザ光源と、水平方向に長い略矩形形状を有し、前記レーザ光源からのレーザ光により発光する発光部を有しており、略矩形形状の発光部を効率よく、ムラ無く(一部に偏らず)励起するための導光部材を有していても良い。
また、前記導光部材は、一つまたは複数のレーザ光源に光学的に結合され、他端が一つの光出射端を有する第一の導光部材と、第一の導光部材から放射されるレーザ光を発光部にムラ無く照射するための略円筒形レンズからなる第二の導光部材とから構成されていても良い。
なお、第二の導光部材は、略円筒形レンズを複数組合せた形状であっても良い。
また、一つのレーザ光源(1チップ)に一つのレーザ光出射端を持つような半導体レーザだけでなく、一つのレーザ光源(1チップ)に複数のレーザ光出射端を持つ半導体レーザであっても良い。
以上より、自動車等の車両用前照灯に適した発光装置を提供することができる。
また、本発明は、以下のようにも表現できる。
すなわち、本発明の発光装置は、複数のレーザ光を発生するレーザ光源群と、前記レーザ光源群から発生した各レーザ光が照射されることにより光を発生する発光部と、一端から入射した前記レーザ光源群から発生した各レーザ光を、他端に設けられた所定の光出射部に導光し、導光した各レーザ光を前記光出射部から出射する第1導光部材と、前記第1導光部材の前記光出射部から出射した各レーザ光を前記発光部における所定の光照射領域に分散して照射する第2導光部材とを備えていても良い。
前記構成によれば、レーザ光源群は、複数のレーザ光を発生するようになっている。これにより、レーザ光源群の光束を、単一のレーザ光源を用いる場合と比較して大きくすることができる。
また、発光部は、前記レーザ光源群から発生した各レーザ光が照射されることにより光を発生するようになっている。よって、発光部は、少なくとも各レーザ光が照射されることにより光を発生する蛍光体を含んでいる。
また、第1導光部材は、一端から入射した前記レーザ光源群から発生した各レーザ光を、他端に設けられた所定の光出射部に導光し、導光した各レーザ光を前記光出射部から出射するようになっている。
これにより、第1導光部材の一端から他端までのサイズを調整することで、レーザ光源群と、発光部とを任意の間隔で空間的に分離することができるので、レーザ光源群で発生する熱の影響により、発光部が劣化してしまうことを防止することができる。
また、前記構成によれば、第2導光部材は、前記第1導光部材の前記光出射部から出射した各レーザ光を前記発光部における所定の光照射領域に分散して照射するようになっている。
これにより、発光部の光照射領域に各レーザ光が分散して照射されるため、発光部に含まれる蛍光体の全体に亘って低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に効率良く励起する。
よって、発光部からムラなくインコヒーレントな光が発生するので、単一のレーザ光源を用いる場合と比較して本発明の発光装置の高輝度化を実現することができる。
また、前記構成によれば、各レーザ光を発光部の一点に集中して照射せず、第1導光部材及び第2導光部材を介して光照射領域に分散して照射するので、各レーザ光が同一点に集中して照射されることによって発光部が劣化してしまうことを防止することができる。
以上によれば、高輝度かつ長寿命を実現できる発光装置などを提供することができる。
ここで、「レーザ光源群」は、複数のレーザ光源が空間的に分離して存在しているものであっても良いし、複数のレーザ光源を一体化したものであっても良い。
また、「発光部」は、上述したように、少なくとも蛍光体を含んでいるが、単一種の蛍光体のみで構成されていても良いし、複数種の蛍光体で構成されていても良い。また、発光部は、単一種又は複数種の蛍光体を適当な分散媒に分散させて構成しても良い。
また、「蛍光体」とは、各レーザ光を照射することにより低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に励起し、この電子が、高エネルギー状態から低エネルギー状態に遷移することにより、インコヒーレントな光を発生する物質のことである。
また、「分散して照射」とは、光照射領域の特定の1点に集中させることなく、光照射領域の全体に亘ってレーザ光を照射することである。
また、言い換えれば、「分散して照射」とは、発光部の一部をピンポイントで励起しないようにレーザ光を、発光部が劣化しない程度の強度で光照射領域の全体に亘って照射することである。なお、発光部が劣化しない程度の強度であれば、レーザ光が照射される際の光強度分布の強弱はある程度はあっても良い。
なお、「光の分散」は、1つの光からプリズムなどで複数の色相を持つ複数の光に分離することを意味する場合があるが、本願明細書では、このような意味で「分散」という用語を用いないこととする。
また、「分散して照射」とは、光出射部のサイズよりも光照射領域のサイズが大きい場合のように照射面積を拡げつつ光照射領域にレーザ光を照射しても良く、光出射部のサイズよりも光照射領域のサイズが小さい場合のように照射面積を縮小しつつ光照射領域にレーザ光を照射しても良い。
また、本発明の発光装置は、前記第1導光部材は、前記一端から入射した各レーザ光を反射する光反射側面で囲まれた囲繞構造を有していると共に、前記光出射部の断面積は、前記第1導光部材の前記一端の断面積よりも小さくなっており、前記一端から入射した前記各レーザ光を、前記囲繞構造により前記光出射部に導光しても良い。
前記構成によれば、光反射側面で囲まれた囲繞構造により、一端から入射した各レーザ光を、前記一端の断面積よりも小さい断面積を有する前記光出射部に導光する、すなわち、各レーザ光を、前記一端の断面積よりも小さい断面積を有する光出射部に集光することができる。
よって、光出射部の断面積及び発光部(光照射領域)のサイズを共に小さくすることにより、レーザ光源群を構成するレーザ光源の数に応じた高輝度・高光束の光を発生する発光部の小型化が可能となる。
ここで、「囲繞」とは、レーザ光群から発生する各レーザ光のすべての光路の周囲を取り囲むことである。
また、「囲繞構造により光出射部に導光する」場合には、光反射側面に1回だけ反射して光出射部に導光する場合、光反射側面に複数回反射して光出射部に導光する場合、光反射側面に1回も反射することなく光出射部に導光する場合のいずれの場合も含まれる。
ところで、前記特許文献1及び2に開示された灯具では、複数のレーザ光源から生じたレーザ光を蛍光体に照射して高輝度を実現するという観点は考慮されているものの、レーザ光源毎に設けられた集光レンズを用いてレーザ光を導光しているので、レーザ光源の数が増加する程、灯具が大型化してしまうという副次的な問題点がある。
また、この灯具では、レーザ光毎に反射鏡に穴を開け、その穴にレーザ光を通過させて蛍光体に照射しているので、レーザ光源の数が多くなる程、反射鏡による光の反射効率が悪化するという副次的な問題点もある。
本発明の発光装置は、このような副次的な問題点を解決するために、前記構成に加えて、前記第1導光部材は、複数の光ファイバーからなり、前記各レーザ光は、対応する光ファイバーの一端から入射すると共に、その光ファイバーの他端から出射し、前記光出射部は、前記複数の光ファイバーの他端が配列された部分で構成されていても良い。
前記構成によれば、第1導光部材を複数の光ファイバーで構成するという簡易な構成で、各レーザ光は、対応する光ファイバーの一端から入射し、前記複数の光ファイバーの他端が配列された部分(光出射部)に導光される。
また、光ファイバーの太さと数にも拠るが、通常、複数の光ファイバーを束ねてもその厚さはそれ程大きくならない。
よって、光出射部及び光照射領域(又は発光部)のサイズを小さく保ったまま、小さな発光部の光照射領域に多数のレーザ光源由来のレーザ光を照射することができる。
また、例えば、本発明の発光装置をヘッドランプに用いる場合、反射鏡の中央に穴を開け、その穴に複数の光ファイバーの束を通過させて複数の光ファイバーの他端が配列された部分から発光部に各レーザ光を照射させれば良いので、レーザ光源群を構成するレーザ光源の数が多くなっても、特許文献1及び2に開示された灯具のように反射鏡による光の反射効率が悪化することはない。
また、本発明の発光装置は、複数のレーザ光を発生するレーザ光源群と、前記レーザ光源群から発生した各レーザ光が照射されることにより光を発生する発光部と、一端から入射した前記レーザ光源群から発生した各レーザ光を、他端に導光する導光部材を備えており、前記導光部材の他端には、導光した各レーザ光を前記発光部における所定の光照射領域に分散して照射する光分散部が形成されていても良い。
前記構成によれば、レーザ光源群は、複数のレーザ光を発生するようになっている。これにより、レーザ光源群の光束を、単一のレーザ光源を用いる場合と比較して大きくすることができる。
また、発光部は、前記レーザ光源群から発生した各レーザ光が照射されることにより光を発生するようになっている。よって、発光部は、少なくとも各レーザ光が照射されることにより光を発生する蛍光体を含んでいる。
また、導光部材は、一端から入射した前記レーザ光源群から発生した各レーザ光を、他端に導光するようになっている。
さらに、前記導光部材の他端には、導光した各レーザ光を前記発光部における所定の光照射領域に分散して照射する光分散部が形成されている。
これにより、導光部材の一端から他端までのサイズを調整することで、レーザ光源群と、発光部とを任意の間隔で空間的に分離することができるので、レーザ光源群で発生する熱の影響により、発光部が劣化してしまうことを防止することができる。
また、光分散部から発光部の光照射領域に各レーザ光が分散して照射されるため、発光部に含まれる蛍光体の全体に亘って低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に効率良く励起する。
よって、発光部からムラなくインコヒーレントな光が発生するので、単一のレーザ光源を用いる場合と比較して本発明の発光装置の高輝度化を実現することができる。
また、前記構成によれば、各レーザ光を発光部の一点に集中して照射せず、導光部材を介して光照射領域に分散して照射するので、各レーザ光が同一点に集中して照射されることによって発光部が劣化してしまうことを防止することができる。
また、本発明の発光装置は、前記レーザ光源群は、複数の半導体レーザで構成されており、前記各レーザ光は、対応する半導体レーザから発生するレーザ光であっても良い。
また、本発明の発光装置は、前記レーザ光源群は、複数のレーザ光出射端を持つ単一の半導体レーザで構成されており、前記各レーザ光は、対応するレーザ光出射端から出射するレーザ光であっても良い。
また、本発明の発光装置は、前記発光部は、酸窒化物系蛍光体を含んでいても良い。
また、本発明の発光装置は、前記発光部が発生する光の輝度が80Mcd/m2以上であっても良い。
また、本発明の発光装置は、前記発光部が発生する光の光束が1500lm以上、3200lm以下であっても良い。
以上によれば、高輝度かつ長寿命を実現できる発光装置などを提供することができる。
また、本発明の照明装置は、前記発光装置のいずれかを備えていても良い。
これにより、高輝度及び長寿命の照明装置を提供することができる。
以上によれば、高輝度かつ長寿命を実現できる発光装置・照明装置を提供することができる。
また、本発明は、以下のように方法としても表現できる。
本発明の光発生方法は、所定のレーザ光源群から発生した複数のレーザ光を、所定の光出射部に導光し、導光した各レーザ光を前記光出射部から出射させて、所定の発光部に照射することにより光を発生させる光発生方法であって、前記レーザ光源群から複数のレーザ光を発生させるレーザ光発生ステップと、前記レーザ光発生ステップで発生させた各レーザ光を、前記光出射部に導光するレーザ光導光ステップと、前記レーザ光導光ステップで導光した各レーザ光を前記光出射部から出射させるレーザ光出射ステップと、前記レーザ光出射ステップで前記光出射部から出射させた各レーザ光を前記発光部における所定の光照射領域に分散して照射するレーザ光分散照射ステップとを含んでいても良い。
また、本発明の光発生方法は、所定のレーザ光源群から発生した複数のレーザ光を、所定の光分散部に導光し、導光した各レーザ光を前記光分散部から所定の発光部に照射することにより光を発生させる光発生方法であって、前記レーザ光源群から複数のレーザ光を発生させるレーザ光発生ステップと、前記レーザ光発生ステップで発生させた各レーザ光を、前記光分散部に導光するレーザ光導光ステップと、前記レーザ光導光ステップで導光した各レーザ光を前記光分散部から前記発光部における所定の光照射領域に分散して照射するレーザ光分散照射ステップとを含んでいても良い。
また、本発明の光発生方法は、所定のレーザ光源群から発生した複数のレーザ光を、所定の発光部の近傍に導光し、導光された各レーザ光を前記発光部の所定の光照射領域に照射することにより光を発生させる光発生方法であって、前記レーザ光源群から複数のレーザ光を発生させるレーザ光発生ステップと、前記レーザ光発生ステップで発生させた各レーザ光を、前記発光部の近傍に導光するレーザ光導光ステップと、前記レーザ光導光ステップで導光した各レーザ光を前記光照射領域に分散して照射するレーザ光分散照射ステップとを含んでいても良い。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。