図1及び図2は、本発明の実施形態による釣り糸ガイド10を示す
本実施形態の釣り糸ガイド10は、釣り竿の竿管8の外面に釣り糸が付着するのを防止する外ガイドとして形成してあり、僅かな勾配を形成された竿管8の外周上の所要位置に取付け、例えば糸巻、糸止め、あるいは接着剤等の適宜の固定手段を用いて固定することができる。必要な場合には、適宜の摩擦保持手段により、所要位置に保持し、必要に応じて、前方の穂先側から後方の元側に沿って、竿管8の軸線Cと平行な軸方向に沿って前後に移動し、所要位置に摩擦力で保持するようにしてもよい。
竿管8は通常と同様に、炭素繊維等の強化繊維にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグシートを周方向、軸長方向あるいは軸長方向に対して適宜角度に傾斜した偏向方向に引き揃えて巻回し、これらの複数の繊維層を積層した中空竿管から形成したものでよい。
この竿管8に取付ける釣り糸ガイド10は、ガイドリング12と、このガイドリングを保持するフレーム14とを備える。フレーム14は、ガイドリング12を嵌合する保持孔16を貫通させた保持部18と、この保持部18を一端側で支える支脚部20とを有する板状構造に形成してある。このフレーム14は、支脚部20の他端側に固定部22を一体に形成してあり、この固定部22が糸巻や、接着等の固定手段により竿管8の外面上に固定される。釣り糸ガイド10を竿管8上で移動させる場合には、固定部22をリング状に形成してもよい。
図4に示すように、保持部18の保持孔16に嵌合して保持されるガイドリング12は、滑らかな湾曲面で形成した内面を釣り糸案内面12aとして有し、この釣り糸案内面12aで囲まれた釣り糸導通孔を通して釣糸を案内する。本実施形態のガイドリング12は、釣り糸案内面12aの軸方向の両端部を円環状に丸めた湾曲面で形成し、その中間部位を円筒状に形成してある。また、外周面12bも、軸方向の両端部を円環状に丸めた湾曲面で形成し、中間部位を軸方向に沿ってほぼ同一の外径を有する円筒状に形成してある。外周面12bの両端部に形成した円環状の湾曲面は、図4の断面で見たときに内周側が外周側よりも大きな半径の曲面で形成してあるが、釣り糸に損傷を与えないものであれば、これらの曲面は互いに同じ半径を有してもよく、逆に、外周側が内周側よりも大きく形成したものでもよい。
図1及び図2に示すように、このガイドリング12は、釣り糸導通孔の中心軸Oを竿管8の軸線Cとほぼ平行に配向させた状態で、フレーム14で保持される。このガイドリング12は、例えばシリコンカーバイト(SiC)、アルミナオキサイト、タングステンカーバイト、セラミックあるいは金属(例えばチタン)等、フレーム14よりも耐磨耗性に優れた硬質材料で形成するのが好ましい。いずれの場合も、ガイドリング12は、後述するように板状構造のフレーム14の保持部18の肉厚Tよりも、軸方向寸法を長く形成し、釣り糸がフレーム14に直接接触するのを防止することが好ましい。
このガイドリング12の中心軸O方向の端面を含む外側面の適宜部位に、装飾、その他の目的で、金属、セラミックス、剛性樹脂塗料等の皮膜を形成してもよい。
このガイドリング12を保持する保持部18は、外周縁部18aがガイドリング12よりも大径のリング状に形成してあり、貫通孔として形成した保持孔16はこれに嵌合されたガイドリング12の釣り糸動通孔の中心軸Oと同軸状に形成することが好ましい。
支脚部20は、保持部18の外周縁部18aの最大径部よりも固定部22側の部位から、滑らかな曲線状に延びる外縁部20aを中心軸Oの両側に有し、これらの外縁部が固定部22の両縁部に滑らかに移行する。これにより、保持部18を所要位置に保持するための十分な強度を確保し、更に、釣り糸が引っ掛かり易い角部の形成を防止してある。
この支脚部20の両外縁部20a間の幅が、所要強度を維持するために必要とする以上に大きい場合には、図1に示すような凹部20bを板厚方向に貫通させて形成してもよい。このような凹部20bは、1つに限らず、複数設けてもよく、また、貫通形成することなく、釣り糸導通孔の中心軸Oの軸方向に沿う一方又は双方に凹設させたものでもよい。いずれの場合も、釣り糸が引掛かり易い角部又は凸部の無い滑らかな外面を形成することが好ましい。
この支脚部20は、保持部18から離隔した端部に固定部22を一体に形成してあり、この固定部22を介してこのフレーム14を竿管8に固定することができる。本実施形態では、支脚部20から離隔する自由端側を元側すなわち魚釣用リール側に配置した状態で竿管8に固定してある。この固定部22は、取付けられる竿管8の外径よりも狭い幅寸法を有する板状形状を有し、支脚部20に対して反対側の裏面24が竿管8に載置される載置面を形成する。
支脚部20側の表面26は、支脚部20から離隔する自由端側で裏面24側に傾斜する傾斜面に形成してあるが、この固定部22の長手方向に沿って次第に竿管8側に湾曲する曲面状に形成してもよい。また、表面26は、固定部22の幅方向に沿って、側縁部に向けて次第に竿管8側に湾曲する曲面状形状を有してもよい。固定部22の表面26をこのような曲面状に形成することにより、竿管8に固定したときに、釣り糸が引掛かり易い角部又は凸部の無い滑らかな外面を形成することができ、また、糸巻き、糸止めが容易となる。
なお、固定部22の裏面24は、平坦面に形成することも可能であるが、図1に示すように竿管8の外面に沿う湾曲面で形成することで、載置面が竿管8の外面形状に好適に適合し、竿管8に対する固定力を向上することができる。
このように、固定部22と保持部18とを連結し、保持部18を所要の向き及び位置に配置する支脚部20には、固定側屈曲部28および保持側屈曲部30を設けてある。これらの屈曲部28,30の屈曲角度を調整することで、固定部22に対する保持部18およびガイドリング12の姿勢を変更することができる。図1に示すガイドリング12は、中心軸Oを竿管8の軸線Cに平行に配置したものであり、これらの屈曲角度を調整することにより、これに限らず種々の向きに配向させることができることは明らかである。
支脚部20と固定部22との間に形成される固定側屈曲部26の傾斜角度α1は、30〜90度の範囲とし、保持側屈曲部30は、支脚部20の中間部21と保持部18との間の傾斜角度α2は、0〜45度の範囲とし、両傾斜角度を合計した角度すなわち固定部22に対する保持部18の角度を30度以上、100度以下とすることが好ましい。
このような構造を有するフレーム14は、固定部22を含む少なくとも一部が強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを積層して板状形状に形成した繊維強化樹脂材である積層成形材32で形成される。フレーム14の全体を積層成形材32で形成する場合には、その製造工程が簡略化され、軽量構造に形成することができる。
図3は、強化繊維の引き揃え方向を種々の方向に配向させる積層成形材32の積層構造例を示す。このような積層成形材32は、炭素繊維、ガラス繊維等の強化繊維にマトリックス樹脂として、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸した複数枚の繊維強化プリプレグを積層することで形成することができ、熱硬化性樹脂に代えて熱可塑性樹脂を用いることもできる。
この積層成形材32は、厚さ方向の中央に、強化繊維が固定部22の長手方向に沿う長手方向の繊維強化樹脂層34を配置し、この上下に、強化繊維を固定部22の長手方向に対して交差する方向に指向する交差方向の繊維強化樹脂層36,38を配置し、これらの交差方向の繊維強化樹脂層の外側に、強化繊維を織成した織布層40,40を配置してある。符号Mは積層成形体32又は保持部18の厚さ方向の中立面を示す。
なお、固定部22は、図1および図2に示すように、竿管8の軸線Cに沿って細長い板状形状に形成するだけでなく、例えば竿管8の周方向寸法の方が竿管8の軸長方向よりも長くなるように形成することも可能であり、または、屈曲部28を滑らかな湾曲状に形成することも可能である。
厚さ方向の中央に配置する長手方向の繊維強化樹脂層34は、竿管8の撓みバランスを向上し、竿管8と釣り用ガイド10の強度の向上および安定化を図るため、竿管8の軸長方向の強化繊維の弾性率(引張り弾性率)よりも小さな弾性率(引張り弾性率)を有する強化繊維で形成することが好ましい。更に、固定部に配置した強化繊維の大部分(例えば50%以上又は70%以上)を、竿管8の軸長方向の強化繊維の弾性率(引張り弾性率)よりも小さな弾性率(引張り弾性率)を有する強化繊維で形成することが好ましい。
この繊維強化樹脂層34は、竿管8の軸長方向に対して強化繊維を0°±5°の範囲(又は0°±10°の範囲)の角度で一方向に引き揃えた繊維強化プリプレグを複数層重ねて形成することが好ましい。
交差方向の繊維強化樹脂層36は、固定部22の長手方向に対してそれぞれ25〜80度の範囲で交差する方向に指向し、かつ、互いに逆方向に配向された内側斜向繊維層36aと外側斜向繊維層36bとで形成してある。同様に、長手方向の繊維強化樹脂層34を挟んで反対側に配置される交差方向の繊維強化樹脂層38も、固定部22の長手方向に対してそれぞれ25〜80度の範囲で交差し、かつ、互いに逆方向に配向された内側斜向繊維層38aと外側斜向繊維層38bとを有する。
この繊維強化樹脂層36,38の斜向繊維層36a,36b,38a,38bは、それぞれ竿管8の軸長方向に対して強化繊維を25°〜80°の角度で一方向に引き揃えた繊維強化プリプレグを中央の繊維強化樹脂層34に重ねて形成することが好ましい。
このような交差方向の繊維強化樹脂層36,38を長手方向の繊維強化樹脂層34の厚さ方向両側に配置することにより、釣り糸ガイド10の特に固定部22の軽量化、強度の向上および安定化を図ることができる。
交差方向の繊維強化樹脂層36,38及び後述する織布層40が形成する強化繊維の繊維量は、固定部22を形成する強化繊維量の全体の半分以上(1/2以上)とすることにより、竿管8に取付けたときに、竿管8の撓みバランスを向上し、応力集中を緩和し、強度の向上を図ることができる。
交差方向の繊維強化樹脂層36,38の外側に配置する織布層40は、その強化繊維として、例えば複数の強化繊維からなる繊維束を互いに交差状に織り込んで形成することができる。この織布層40の織り込み構造として、例えば、2つの方向に延びる繊維束を組合せた二軸織物、または、3つの方向に延びる繊維束を組合せた三軸織物等、種々の織物構造に形成することが可能である。いずれの場合も、織物層40の主たる繊維又は繊維束の方向が固定部22の長手方向に対して互いに傾斜し(45°±15°又は45°±30°の範囲)、長手方向に対して対称的に配置することが好ましい。
この織布層40は、軸長方向に対してそれぞれ45°±15°の角度範囲で延びる強化繊維(繊維束)と軸長方向に対して0°〜70°の角度範囲で延びる強化繊維(繊維束)とを織り込んで形成した繊維強化プリプレグで形成することができる。この織布層40を形成する繊維強化プリプレグは、軸長方向の繊維層34を形成する軸長方向の繊維強化プリプレグに対し、樹脂含有量(RC:wt%)を多くしてある。
この織布層40は、互いに交差する繊維束で形成される編み目の大きさを、支脚部20の最小幅部分(例えば凹部20bの両側の部位)よりも小さく形成することが好ましい。特に屈曲部28でこの編み目の大きさを小さくし、固定部22および保持部18の部位でも同様に小さくするとよい。
このような織布層40を最外側に配置することにより、外層からの強化繊維の剥離を防止して強度を安定化することができる。
これらの交差方向の繊維強化樹脂層36,38を形成する強化繊維は、長手方向の繊維強化樹脂層34を形成する強化繊維と同様な弾性率を有するものでもよい。
なお、織布層40の繊維束が3つの方向以上の多数の方向に延びる繊維束を組合せて形成される場合には、長手方向の繊維強化樹脂層34を省略して、積層成形材32の繊維強化樹脂層を全て織布層40で形成することも可能である。
このような積層成形材32からフレーム14を製造する場合は、各繊維強化樹脂層34,36,38および織布層40を形成する繊維強化プリプレグシート(図示しない)を所定形状に切断し、その繊維方向を上述の積層成形材32の各繊維方向に沿わせて重ね合わせる。積層する繊維強化プリプレグシートの枚数又は層数は、繊維強化プリプレグシートの種類や重ねる条件に応じて任意に調整することができ、例えば一度に積層成形材32に必要な全体の分を重ね合わせることも可能であるが、複数回に分けることで、各繊維強化プリプレグシート中の強化繊維の動きを少なくした状態で金型(図示しない)に高精度でセットすることができる。
金型には、複数の繊維強化プリプレグシートを予め重ね合わせた状態でセットしてもよく、一枚ずつ順にセットしてもよい。繊維強化プリプレグを金型の一方にセットした後、他方の金型で繊維強化プリプレグを加圧し、双方の金型を一体的に固定する。このとき、未硬化状態(仮キュア後を含む)の繊維強化プリプレグシートに屈曲部28,30を形成し、フレーム14の形状に相当する形状に保持する。これにより、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上、安定化を図ることができる。この後、繊維強化プリプレグシートを加熱硬化し、所定形状に成形した積層成形材32として金型から取り出す。
金型から取り出した積層成形材32は、例えば肉厚が一定の帯状の板状体として形成されており、フレーム14に形成する部位を多数連ねた状態に形成される。各フレーム14は、例えばプレス加工、ウォータージェット等の流体の噴出による切出し、エンドミル等の刃具による切出し等の適宜の方法により、この板状体からそれぞれ切出し、加工することができる。
このように形成されるフレーム14は、肉厚の等しい板状形状に限らず、その厚さ、強化繊維の量または引張り弾性率を、部位に応じて変化させあるいは調整することができる。この厚さ、強化繊維の量又は引張り弾性率の調整は、板状体を形成する際に積層厚さ又は積層する繊維強化プリプレグを種々に変更することで調整することができる。
この板状体からそれぞれのフレーム14を加工する際に、保持部18の保持孔16および支脚部20の凹部20bを同時に加工することが好ましい。必要な場合には、フレーム14を切出し加工した後に、保持孔16および凹部20b等の加工を行ってもよい。
図4に示すように、保持孔16は、この内周面16aに、ガイドリング12の外周面12bに当接する突部42と、この外周面12bに対して、符号37で示すような一部の強化繊維を除いて非当接の凹部44,46とを前後方向すなわち保持孔16に対するガイドリング12の嵌合方向である中心軸Oに沿って形成してある。なお、非当接とは、ガイドリング12がその外周部12bを保持孔16の突部42に当接して保持されたときに、保持部18に対する支持機能が発揮されない状態をいい、間隙が形成されている状態に限らず、例えば物理的に接触した状態であっても実質的な支承機能が発揮されていない状態も含む。
本実施形態では、突部42は、保持孔16の中心軸に沿う保持部18の軸方向断面図(図4)で見たときに、それぞれ逆方向に向く円錐状面で形成した凹部44,46間の頂部として半径方向内方に突出し、この保持孔16の内周面16aの周方向に沿って連続した突条を形成する。この突部42の内径は、ガイドリング12の外径よりも僅かに小さく形成されており、ガイドリング12を保持孔16に対して所定の方向に正しく嵌合させたときに、この突部42がガイドリング12の外周面12bに摩擦係合し、ガイドリング12を確実に保持する。この所定の方向は、竿管8の軸線Cに対するガイドリング12の内周面12aの中心軸Oの配向方向であり、軸線Cに平行な方向に限らず、釣り糸を好適に案内するために、軸線Cに対して例えば45°程度まで傾斜させた状態でもよい。
この突部42は、ガイドリング12の圧入代として、ガイドリング12の外周面12bの外径に応じて、0.01〜0.06mmの範囲で内径を調整することが好ましく、このような範囲にすることで、ガイドリング12を保持孔16に圧入した場合であっても、フレーム14の全体の形状を維持しつつ内部応力の発生を防止することができる。
このような突部42は、保持孔16の内周面16aから突出するものであれば、保持部18の前面19aと後面19bとの間で、適宜の位置に形成することが可能であるが、負荷の作用による繊維強化層の剥離等、この突部からの損傷を防止するために、フレーム14すなわち保持部18の前面19a又は後面19bと同一の面内に配置することなく、これらの前面19aと後面19bとの間の保持孔16の中心軸Oに沿う中間部に配置することが好ましい。
本実施形態では、保持部18の前面19aと後面19bとの間の軸方向に沿う中心位置に積層成形材32の中立面Mが配置され、この中立面Mよりも後方位置で、後面19b側に偏倚した斜向繊維層36a,36b内に配置してある。この場合には、ガイドリング12を保持孔16に嵌合する際に、前面19a側の凹部44の幅すなわち中心軸方向の傾斜面を利用してガイドリング12を案内することができ、ガイドリング12の装着が容易となる。更に、突部42がガイドリング12で押圧されても、最外側の織布層40が強化繊維の剥離を防止して強度を安定化することができる。
いずれの場合も、突部42は、中立面Mに平行な面内に配置されることが好ましい。これにより、突部42は、保持孔16の内周面16aの周方向に沿って、中心軸Oの軸方向に沿う同一位置に配置されることになり、ガイドリング12の外周面12bを軸方向に沿う同一位置で保持することができ、より確実にガイドリング12を保持することができる。
なお、図4には、突部42は、斜向繊維層36a,36bの境界面に沿って形成してあるが、1つの繊維層内に形成してもよいことは明らかである。また、凹部44,46は、截頭円錐状の曲面で形成してあるが、これらの凹部44,46を形成する曲面は、中心軸Oの方向に沿って凸状又は凹状に湾曲したものであってもよい。
このような内周面16aを形成した保持孔16内に、ガイドリング12を例えば圧入、接着、カーリング等、適宜の方法を用い、嵌合方向に沿って嵌合すると、突部42がガイドリング12の外周面12bを周方向から押圧して保持する。突部42が中立面Mと略平行に配置されていることにより、ガイドリング12は中心軸Oを保持孔16の中心軸線と同軸状に配置した状態に保持される。凹部44,46は外周面12bに対して原則として非当接の状態に維持される。保持部18の前面19aおよび後面19bからガイドリング12が突出する長さは、それぞれ同じであることが好ましいが、一方の突出量を多くしてもよい。
このようにガイドリング12を保持孔16内に圧入することによって、保持孔16の内周面16aの一部が、ガイドリング12との当接によって変形したり、えぐれたりする。これにより、図4の拡大部分に符号37で例示するように、フレーム14を構成する繊維強化樹脂の強化繊維の一部が内周面16aに表出するようになる。このように、ガイドリング12による表出の他にも、保持面16aを適宜の手段で荒らすことで、ガイドリング12を嵌合する前に、予め強化繊維37を内周面16aに露出させておいてもよい。
なお、露出とは、強化繊維37が、内周面16aのマトリックス樹脂と同一面内に配置されるだけでなく、これよりも突出した状態を含むものである。そして、強化繊維が露出した状態は、繊維部分を磨きだした状態を意味するものではなく、強化繊維単位で保護被膜等が存在する状態でもよい。具体的には、膜厚が強化繊維の半径以下の保護被膜を有していても、強化繊維が実質的にガイドリング12に直接接触する状態であればよい。
内周面16aに露出する強化繊維37は、ガイドフレーム14内の強化繊維であり、本実施形態のように、複数枚の繊維強化プリプレグシートを積層して形成する場合には、長手方向の繊維強化樹脂層34、交差方向の強化繊維層36,38、縦横方向の織布層40等、少なくとも3方向の繊維強化層を設けるとよい。このようにすることで、それぞれの配向方向に応じて、強化樹脂37が直交方向(90°±30°の範囲)や、傾斜方向(30°〜60°)等、角度を変えて保持孔の内周面16aに露出させることができる。
このように形成された釣り糸ガイド10は、保持孔16にガイドリング12を嵌合すると、突部42は、フレーム14の積層成形材32を形成するマトリックス樹脂がこのガイドリング12の外周面12bに当接すると共に、この突部42及び凹部44,46で内周面16aに露出した強化繊維37もガイドリング12の外周面12bに当接する。
したがって、釣り糸ガイド10は、ガイドリング12の外周面12bが、突部42のマトリックス樹脂と共に、この突部42及び凹部44,46に表出した強化繊維37にも当接する。これにより、保持部16の内周面16aとガイドリング12の外周面12bとの接触面積が実質的に増大することになり、ガイドリング12を安定して支持することができる。
強化繊維37が、ガイドリング12の外周面12bに当接した後に、屈曲し、その先端側がガイドリング12の外周面12bに沿って延びる場合には、強化繊維37と、ガイドリング12の外周面12bとが確実に接触し、ガイドリング12を安定して支持することができる。
また、ガイドリング12を圧入することによって内周面16aに露出した強化繊維37は、露出した強化繊維37の端部が突き当ることとなるが、フレーム14の積層形成材32が軸長方向や傾斜方向の複数の方向の強化繊維を有している。したがって、ガイドリング12の外周面12bに対して直交方向すなわち外周面に垂直に当り、また、傾斜方向にも当る。これにより、後述する固定剤と共に、ガイドリング12とフレーム14の保持部18との間で種々の方向の力を、これらの強化繊維37を介して伝達することができ、ガイドリング12を異なる方向で当接する強化繊維によって種々の方向から支持するため、ガイドリング12の保持力を向上させることができる。
更に、ガイドリング12の外周面12bに当った後、この外周面12bに沿って屈曲した強化繊維37は、この強化繊維37の側面又は側部がガイドリング12の外周面に接触し、ガイドリング12との接触面積が増大して更に保持力を増大させる。また、強化繊維37の側部の一部のみが内周面16aに露出して、先端側の端部がフレーム14内に突出した状態であっても、ガイドリング12の外周面12aに接触することができ、このような強化繊維37とガイドリング12の外周面12aとの接触により、強化繊維37とガイドリング12との接触面積及び保持力が増大する。
本実施形態では、図4に示すように、突部42でガイドリング12を保持したときに、内周面16aの凹部44,46と外周面12bとの間に形成される空隙部Sに、フレーム14を形成する積層成形材32よりも柔軟な材料で形成される固定剤48を配置してある。
このように、固定剤48が空隙部Sを埋める状態に配置されることにより、この固定剤はガイドリング12と保持部18とに接着する。フレーム14の保持部18が、例えば外力で撓み変形したときに、固定剤48は弾性変形し、保持部の変形を吸収することができる。これにより、ガイドリング12は、突部42で保持された姿勢を変えることなく、確実に保持される。この固定剤48が露出した強化繊維37間にも入り込むことにより、固定剤のダレを防止して、固定剤48を所要位置に維持することができる。
また、凹部44,46で内周面16aに露出した強化繊維37と共に固定剤48が充填されるため、固定剤48が強化されて確実にガイドリング12を保持し、また、固定剤48自体の劣化も防止される。
この固定剤48は、保持孔16の内周面16aとガイドリング12の外周面12bとの間の空隙部Sの容積に対して50%以上で、保持部18の周方向に沿う1/2以上の範囲にわたって配置することが好ましい。これにより、ガイドリング12を緩衝的に保持しながら確実に脱落を防止することができる。
このような固定剤48は、例えばエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤等で形成することが好ましく、このような材料で形成することにより、ガイドリング12を緩衝的に保持しながら脱落を防止することが可能となる。なお、エポキシ変性シリコン、アクリル変性シリコン、変性アクリル樹脂等を固定剤48として使用することができる。
また、本実施形態の釣り糸ガイド10は、フレーム14が繊維強化樹脂で形成されているために、釣り糸ガイド10を軽量化し、フレーム14に作用する外力を撓みで緩和すると共に、フレーム14の撓み変形を固定剤48が吸収してガイドリング12を確実に保持し、その脱落を確実に防止することができる。
固定剤48が、図4に符号48aで示すように、保持孔16に隣接する前面19a及び後面19bの内周側側面部を覆う場合には、ガイドリング12と保持部16との間に間隙が形成されている場合でも、この間隙内に釣り糸が入り込むのを確実に防止することができる。
更に、突部42が、保持孔16の内周面16aの周方向に沿って、軸方向の同一位置に配置されることにより、ガイドリング12の外周面12bを軸方向に沿う同一位置で均等な力で保持することができ、より確実にガイドリングを保持することができる。
図5及び図6は、他の実施形態による釣り糸ガイド10Aを示す。以下に説明する種々の実施形態又は変形例による釣り糸ガイドは上述の釣り糸ガイド10とほぼ同様であるため、同様な部位には同様な符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図5及び6に示す釣り糸ガイド10Aは、保持孔16の内周面16aから、周方向に沿って複数の支持部50を半径方向内方に突設してあり、各支持部50に、上述の突部42と凹部44,46とを、ガイドリング12の中心軸Oの方向に沿って形成してある。これらの支持部50は、径方向に対向する6つの部位に配置してあるが、3つの部位以上であれば、適宜の数とすることができる。これらの支持部50は、ガイドリング12を均等に保持するために、周方向に沿って等間隔に配置することが好ましい。
これらの支持部50に形成した突部42は、ガイドリング12を支持する位置が、中心軸Oの方向に沿うフレーム14すなわち保持部18の前面19a又は後面19bから、強化繊維の直径の少なくとも3倍以上で、好ましくは5倍以上内側すなわち中立面M側の位置となるように形成することが好ましい。この場合には、確実にガイドリング12に接触し確実な保持ができる。
図5に示すように、各支持部50は内周面16a側から半径方向内方に向けて、周方向寸法が次第に減少する先細状に形成してあり、各支持部50の互いに周方向に対向する側面部は内周面16aから半径方向内方に滑らかに連続する曲面で形成されている。そして、これらの側面間には、軸方向溝52が形成され、この軸方向溝52内にも、上述の固定剤48を充填することができる。この場合にも、保持孔16に隣接する前面19a及び後面19bの内周側側面部を固定剤48aで覆い、釣り糸が入り込むのを防止することが好ましい。
図6に示すように、各支持部50には、突部42と凹部44,46とを中心軸Oの方向に沿って形成してある。この突部42で強化繊維37が露出している。
この突部42に露出した強化繊維37は、ガイドリング12の圧入時に、突部42の先端のマトリックス樹脂が退けられることによるものである。予め、内周面16aを荒らしておくことを要しない。
突部42の先端部のみ強化繊維37を露出させてもよいし、これらの強化繊維37の先端にガイドリング12の圧入方向にしたがってガイドリング12に当接した後、ガイドリング12に沿って同じ方向に屈曲している。
このように、保持孔16の内周面16aに、周方向に沿って複数の支持部50を半径方向内方に突設し、この支持部50に突部42と凹部44,46とを形成する場合には、保持孔16の径方向に沿って保持部18が撓み変形した場合でも、この撓み変形が軸方向溝52で吸収される。このため、各支持部50に形成した突部42が確実にガイドリング12を保持する。
各支持部50に形成する突部42は、保持孔16の内周面16aに沿って、中心軸Oに沿う同一位置に配置されることが好ましく、これにより、ガイドリング12の外周面12bを軸方向に沿う同一位置で均等に保持することができ、より確実にガイドリング12を保持することができる。
このように形成される釣り糸ガイド10,10Aは、魚釣用リールから離隔するにつれて、保持部18およびガイドリング12の大きさが小さくなり、竿管8の軸線Cとガイドリング12の中心軸Oとの間の距離も小さくなる。突部42の配置位置、内周面16aからの突出量、複数の支持部50に突部42を形成する場合はその支持部50の数も、ガイドリング12の大きさに応じて適宜に変更することができる。
図7から図9は、更に他の実施形態による釣り糸ガイド10Bを示す。
図7に示すように、この実施形態におけるフレーム14は、多数の強化繊維からなる繊維束54,56,58,60を保持孔16の周部に沿って湾曲させつつ延設し、これらの繊維束に合成樹脂55を含浸させた繊維強化樹脂からなる保持部18を形成してある。この繊維束は、予め合成樹脂を含浸した束状のプリプレグとして形成しておいてもよい。図7には、内周側に積層される繊維束54,56と外周側に積層される繊維束58,60とをそれぞれ径方向に重なる状態に配置してあるが、内周面16aを滑らかな曲面に形成するものであれば、全体が1つの繊維束で形成するものであってもよく、任意数の繊維束を重ねて形成することもできる。
このような繊維束は、径又は断面形状をその長さ方向に沿って一定に形成する必要はなく、例えば径又は厚さを変化させ、一部をシート状に形成する等、その中間部位で必要に応じて適宜に変動させることもできる。繊維束内の強化繊維57は、少なくとも一部が支脚部20及び固定部22(図1,2)と連続することが好ましい。
このような繊維束体を形成する強化繊維57は、繊維強化プリプレグに使用する長繊維であって、例えば小さな湾曲半径で屈曲させることができる、カーボン繊維、ガラス繊維やアラミド繊維等で形成するものが好ましい。マトリックス樹脂を形成する合成樹脂55は、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル等の熱硬化樹脂や、ポリアミド、PPS等の熱可塑製樹脂が好ましい。
本実施形態の保持部18は、内側の繊維束54,56の強化繊維57が保持孔16の内周面16に周方向に沿って露出する。そして、中立面M又はその近部に、内周面16aに開口する保持孔62を形成し、この保持孔にガイドリング12の後述する突起64(図8,9)が収容される。
ガイドリング12の外周面12bは、中高構造に形成してあり、中央部に配置した大径部12b1と、この中央面を挟む小径部12b2とを有する。大径部12b1は、最大径d1を有する円筒状面で形成され、小径部12b2は、大径部12b1からガイドリング12の端面まで延びる湾曲面で形成してあり、前後の端面との間に、外径d2の稜線部を形成する。
大径部12b1からは、半径方向外方に向けて複数の突起64が周方向に沿って間隔をおいて突出する。この突起は、図8に示すような円錐台状の形状に形成してもよく、又は、周方向に沿って延びる突条状に形成することもできる。また、小径部12b2がガイドリング12の軸方向端面との間に形成する外径d2の稜線部は、釣り糸を傷つけないように、湾曲面で形成することが好ましい。このような小径部12b2には、周方向に沿って、例えば窪み又はすり割り等で形成した凹部(図示しない)を間隔あけて複数個設けることができる。隣接する凹部間に間隔を配置するのは、連続形成することによるガイドリング12の強度低下を防止するためである。
このようなガイドリング12は、フレーム14の保持部18に適宜の方法で固着することが可能である。例えば、フレーム14を金型で成形する際、予めガイドリング12を金型内に配置した後、合成樹脂を含浸した繊維束又は合成樹脂を含浸させたプリプレグテープ等を設置し、これを加圧、加熱して成形してもよく、フレーム14を成形した後に、保持孔16にガイドリング12を接着剤等の固定剤で固着してもよい。なお、このような固定剤は、フレーム14にガイドリング12を金型で一体に成形した場合であっても、例えば小径部12b2の凹部と内周面16aとの間の空隙部Sに配置する等、適宜に使用してもよい。
このようにフレーム14の保持部に固着されたガイドリング12は、外周面12bの大径部12b1に保持孔16の内周面に露出する強化繊維57が当接する。これにより、ガイドリング12が安定して保持される。特に、強化繊維57が周方向に延びることにより、周方向に沿ってガイドリング12が安定して保持される。また、保持孔62内に収容された突起64は、これらの強化繊維57間で強固に保持され、フレーム14とガイドリング12との一体性を確保することができる。
更に、小径部12b2は、繊維束のマトリックス樹脂55、又は、接着剤で覆われ、保持孔16の内周面と一体化されることにより、その弾性で、保持部の変形を吸収することができ、安定して保持することができる。
なお、外周面12bの大径部12b1と小径部12b2とは、説明のためのものであり、このような突起64を形成できるものであれば、大径部と小径部とを厳密に区画することは必要なく、外周面12bの全体を外方に膨出させて湾曲する湾曲面で形成することもできる。また、突起64は中立面Mに対して前方又は後方に偏倚した位置に配置することも可能である。
図10は、更に他の実施形態による釣り糸ガイド10Cを示す。
この実施形態では、保持孔16の内周面16aとガイドリング12の外周面12bとの間に薄肉樹脂層66を配置してある。
ガイドリング12は、図7から図9に示す実施形態と同様に形成してあり、外周面12bが大径部12b1と小径部12b2とを有し、大径部12b1に突起が形成され、小径部12b2に凹部が形成されることが好ましい。ガイドリング12の外周面12bがこのような中高構造に形成されることで、薄肉樹脂層66により、円筒状形状の内周面16aを有する保持孔16から外れないように確実に保持される。
薄肉樹脂層66は保持孔16の内周面16aに露出した強化繊維に一体的に結合している。この薄肉樹脂層66に結合した強化繊維の一部を、更にガイドリング12の外周面12bに当接させることもでき、これにより、ガイドリング12を安定して保持することができる。なお、保持部18の強化繊維が保持孔の内周面16aに露出していない場合、又は、露出が少ない場合には、内周面16aを粗面化することにより、強化繊維を露出させてもよい。
薄肉樹脂層66は、例えば中立面M内における最も薄い位置における厚さgを0.3mm以下で、具体的には、厚さgは5μm〜100μmの範囲に形成することが好ましい。
このような薄肉樹脂層66を保持部18とガイドリング12との間に配置することにより、温度変化によるガイドリング12及びフレーム14内の内部応力の影響や、ガイドリング12及び保持部18がに外部から作用する衝撃を緩和し、ガイドリング12を安定した状態で保持することができる。特に、ガイドリング12の外周面12bに保持部18の強化繊維が当接する場合には、ガイドリング12の安定した保持が確保される。
この薄肉樹脂層66は、ガイドリング12の外周面12bに樹脂をコーティングし又は樹脂フィルムを巻装した状態で、金型内に設置し、フレーム14と共に同時に成形することができる。又は、フレーム14を成形した後、保持孔16内の所要位置にガイドリング12を配置し、この後、空隙部(図示しない)に固定剤を充填することで形成してもよい。
このフレーム14は、図3に示すようなプリプレグシートを積層した積層成形材32で形成してもよく、図7に示すような繊維束54,56を保持孔16の周部に沿って巻回して形成してもよい。積層成形材32で形成する場合には、中央の繊維強化樹脂層34を2つの繊維強化樹脂層34a,34bで形成してもよく、このような隣接する2つの層間に、突起64(図9)が配置される凹部(図示しない)を形成することにより、各繊維層内の強化繊維が屈曲する等の強化繊維の乱れを防止することができる。これらの繊維強化樹脂層34a,34bは強化繊維が長手方向に延びる樹脂層で形成してもよく、又は、互いに逆方向に傾斜して延びる樹脂層で形成してもよい。
薄肉樹脂層66は、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の材料で形成してもよく、フレーム14よりも柔軟な樹脂材料で形成することが好ましい。また、このような薄肉樹脂層66内には、長繊維、短繊維、ウィスカ又は粒子等の種々の形態の強化材を混入することにより、薄肉樹脂層66の強化を図ってもよい。このような強化材の具体例として、カーボン、ガラス、硅砂等、腐食(酸化)しない材料を用いることができる。
図11は、更に他の実施形態による釣り糸ガイド10Dを示す。
この実施形態では、ガイドリング12の外周面12bに周方向に延びる溝状の凹部68を形成してあり、この凹部68内に、繊維強化樹脂を充填した内層部70を形成してある。ガイドリング12は、この内層部70と共に、フレーム14の保持孔16の内周面16aに一体化される。これにより、ガイドリング12は、凹部68内の内層部70と保持孔16の内周面16aを囲む外層部72との2つの繊維強化樹脂層で保持されることになる。
凹部68は、保持部18の中立面M内で最小の外径d2を有する円環状の凹面で形成され、ガイドリング12の外周部12bにおける小径部12b2を形成する。この凹部68の前後では、端面に隣接した円環状の凸面が2つの大径部12b1を形成する。これらの大径部12b1は、図11に示す軸方向断面内で、小径部12b2よりも小さな半径の湾曲面で形成されている。すなわち、大径部12b1の幅である軸方向寸法w1は小径部12b2の軸方向寸法w2よりも小さく形成するのが好ましく、この小径部の幅w2は、釣り糸案内面12aを大きく形成するために、ガイドリングの幅w3に対して1/4〜3/4の関係にあることが好ましい。また、ガイドリングの幅w3に対して、ガイドリング12及び外層部72の厚さである径方向寸法Tは、小型軽量化のために、0.7W≦T≦1.7Wの関係に形成することが好ましい。
ガイドリング12は、保持部18の中立面M内で、肉厚t1よりも深さt2を大きな寸法に形成し(t1<t2)、外層部72の厚さすなわち径方向寸法t4よりも、釣り糸案内面12aから大径部12b1の外縁までの高さt3を大きく形成する(t3>t4)ことが好ましい。
このような凹部68を形成することにより、強度を維持しつつガイドリング12を薄肉化することができ、釣り糸ガイド10Dをより軽量化し、小型化することができる。
このような凹部68を有するガイドリング12は、凹部68内に予め内層部70を形成する繊維強化樹脂を巻装した後、このガイドリング12を金型内に配置して、フレーム14とは別個に、ガイドリング12と内層部70とを一体化することができる。この後、内層部70を一体化したガイドリング12を、フレーム14を形成する合成樹脂材料と共に金型内に配置し、フレーム14と一体化することができる。又は、内層部70を形成する繊維強化樹脂と共に、フレーム14の保持部18の外層部72を形成する繊維強化樹脂を金型内に配置し、加圧、加熱工程を経て、ガイドリング12と内層部70とフレーム14の外層部72とを、フレーム14の成形の際に同時に一体的に形成することもできる。更に、ガイドリング12の凹部68内に内層部70を形成した後、別個に形成したフレーム14の保持部18に形成した保持孔16に固着することもできる。
内層部70を形成する強化繊維は、例えばカーボン繊維、ガラス繊維やアラミド繊維、含浸する合成樹脂は、例えばエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル等の熱硬化樹脂や、ポリアミド、PPS等の熱可塑製樹脂が好ましい。凹部68内に充填する際は、強化繊維を一方向に引き揃えたシート状、テープ状、繊維束の形態又はこれらを組合わせて巻回することができる。内層部70を形成する繊維強化樹脂と外層部72を形成する繊維強化樹脂とは、同じものでもよいが、強化繊維又は含浸する樹脂を変えたものでもよい。同じ材料で形成する場合は、内層部70を形成する合成樹脂の含浸量を外層部72よりも少なくすることにより、強化繊維を露出しやすくすることができる。
なお、内層部70及び外層部72は、ガイドリング12をフレーム14と共に同時に一体成形する場合には、保持部18の一部を形成し、フレーム14を成形した後、最終工程で、このフレーム14の保持孔16内に接着又は溶着等の適宜手段で固着する場合は、ガイドリング12の一部を形成する。内層部70は、大径部12b1と保持部18とを確実に係合させて保持させるため、両側の大径部12b1よりも半径方方向外方に突出しないように形成することが好ましい。
図12は、金型を用いてガイドリング12をフレーム14と共に同時に一体成形し、上述の釣り糸ガイド10B,10C,10Dを形成する際の工程の一部を例示する。
図示の金型は、例えば金属材料、鋳物、セラミックス等の適宜の材料で形成された上型74と下型76とからなり、その間に、ガイドリング12とフレーム14とを収容するキャビティ78を形成する。このキャビティ78は、保持部形成位置80と、支脚部形成位置82と、固定部形成位置84とを所要の形状に連ねて配置してあり、固定部形成位置84で外部に開口する開口端86が設けられている。このようなキャビティ78は、複数形成されていることが好ましい。
この金型を用いてガイドリング12とフレーム14とを一体的に形成する場合は、上型74と下型76とを分離し、一方のキャビティ78の全体を外部に開口させる。
このキャビティ78内にガイドリング12と繊維強化樹脂とを配置する。この際、保持部形成位置80内の所定位置に合わせてガイドリング12を配置し、繊維束を形成する糸条体を、ガイドリング12の外周部及びキャビティ78の溝方向に沿い、このキャビティ78内に所要の形状又はパターンで配置する。この糸条体に合成樹脂を含浸しないで配置する場合は、所定のパターンを形成した後、閉じたキャビティ78に合成樹脂を例えば圧入して充填する。合成樹脂を含浸した状態で配置する場合には、このような合成樹脂の充填は必要ない。
この後、上型74と下型76とを重ね合わせ、加圧すると共に、キャビティ78内の材料の成形温度に加熱する。成形後、金型からガイドリング12及びフレーム14を離型し、キャビティ78から突出した部分を介して互いに連結されたフレーム14を互いに分離し、各フレーム14の端部処理を行う。また、必要に応じて各フレーム14からバリを除去する。
そして、バレル研磨等の表面研磨処理を終えた後、所要部位の塗装等の表面処理を行うことにより、リングガイド12とフレーム14とが同時に一体成形された釣り糸ガイドが完成する。
なお、上述の各実施形態におけるガイドリング12は、フレーム14の材料よりも耐磨耗性に優れた硬質材料で形成したものであるが、フレーム14の保持部18をガイドリング又はガイドリングの一部として形成することも可能である。この場合には、金型内に繊維強化樹脂材料を配置し、加圧・加熱成形の段階で平滑な釣り糸案内面を形成し、又は、フレーム14を成形した後に、保持部18を研磨加工して釣り糸案内面を形成することができる。更に、このようなフレーム14の一部で形成された釣り糸案内面には、耐磨耗性のセラミック材料、金属材料、合成樹脂材料等をコーティングしてもよく、必要に応じてコーティング面を平滑に研磨してもよい。
上述の各実施形態の釣り糸ガイドは種々の組合せが可能である。例えば、図11に示すガイドリング12の外周面12bの凹部68に、図4及び6に示すような保持部18の突部42を組合わせて保持してもよい。