JP2011236953A - 真空断熱材、これを用いた断熱箱体及び冷蔵庫 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に関わる真空断熱材は、無機系或いは有機系の繊維積層体の繊維径が平均3μm以上8μm以下であるとともに繊維長が平均2mm以上10mm以下に形成される芯材51と、芯材51を覆うガスバリヤ性フィルム53とを有する真空断熱材50であって、真空断熱材50は、その広がる方向である延在方向断面の空隙率が80%以上85%以下であり、かつ、その断熱方向である厚さ方向断面の空隙率が85%以上100%未満である。
【選択図】図4
Description
このような状況のなかで、真空断熱材の断熱性能である熱伝導率の低下は頭打ちになっている状況にあるが、冷蔵庫等の省エネ競争は厳しく、真空断熱材の高性能化は必要不可欠の技術となっている。
第3の本発明に関わる断熱箱体は、貯蔵物を収容する内箱における冷凍室と冷蔵室との間の第1仕切り部材または冷凍室と野菜室との間の第2仕切り部材に、第1の本発明の真空断熱材を設置している。
第5の本発明に関わる冷蔵庫は、第2〜第4の本発明の何れかの断熱箱体を備えている。
図1は実施形態に係る冷蔵庫1を示す正面図である。図2(a)は図1のA−A線断面図であり、図2(b)は図2(a)のB部拡大図である。
実施形態の冷蔵庫1は、上から冷蔵温度で冷却する冷蔵室2、製氷した氷を貯蔵する製氷(貯氷)室3a、冷凍温度で冷却する上段冷凍室(切替え室)3bおよび下段冷凍室4、野菜を入れる野菜室5を有している。
図1に示す冷蔵室扉6a、6bは、ヒンジ10等を中心に回動する扉であり、これ以外の製氷室扉7a、上段冷凍室扉7b、下段冷凍室扉8、野菜室扉9は、全て引き出し式の扉である。
各冷蔵室扉6a、6b、製氷室扉7a、上段冷凍室扉7b、下段冷凍室扉8、野菜室扉9には、冷蔵庫本体1H(図2(a)参照)との間を密閉するためのパッキン(図示せず)が、冷蔵庫本体1H側の外周縁部に取り付けられている。
冷蔵温度の冷蔵室2と冷凍温度の製氷(貯氷)室3a及び上段冷凍室3bとの間には、それぞれを区画して断熱するための仕切断熱壁12を配置している。仕切断熱壁12は厚さ30〜50mm程度の断熱壁で、スチロフォーム、発泡断熱材(硬質ウレタンフォーム)、真空断熱材等、それぞれを単独使用したり、或いは、これらの複数の断熱材を組み合わせて形成されている。
冷凍温度の下段冷凍室4と野菜保存温度の野菜室5の間には、それぞれを区画して断熱するための仕切断熱壁14を設けている。仕切断熱壁14は、仕切断熱壁12と同様に30〜50mm程度の断熱壁であり、同様に、スチロフォーム、或いは発泡断熱材(硬質ウレタンフォーム)、真空断熱材等で作られている。このように、基本的に冷蔵温度と冷凍温度との貯蔵温度帯が異なる室の仕切りには断熱性がある仕切断熱壁12、14を設置している。
仕切断熱壁12、14は、図2(a)に示すように、発泡ポリスチレン33と真空断熱材50bとを用いて構成してもよく、特に限定されない。
外箱21と内箱22との間に形成される空間は、断熱空間1sとして断熱部を設け、冷蔵庫本体1H内の各貯蔵室と外部空間とを断熱している。
この外箱21と内箱22との間の断熱空間1sに、真空断熱材50を配置し、真空断熱材50以外の断熱空間1sには硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填している。真空断熱材50については後記するが、図示しない固定部材、支持部材等で外箱21または内箱22に固定支持されるか、接着剤で外箱21または内箱22に固定されている。
この冷却器28と、圧縮機30と、凝縮機31と、図示しないキャピラリーチューブとを接続し、冷凍サイクルを構成している。
冷却器28の上方には、冷却器28にて冷却された冷気を冷蔵庫1の内部を循環させて所定の低温温度に保持する送風機27が配設されている。
次に、真空断熱材50(50a、50b、50c)の構成について、図3を用いて説明する。図3(a)は、真空断熱材50の斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のC−C線断面図である。なお、図3(b)において吸着剤54を強調して示している。
真空断熱材50は、真空のスペースを形成するための芯材51と、該芯材51を圧縮状態に保持するための内包材52と、水分やガス等を吸着する吸着剤54と、内包材52で圧縮状態に保持した芯材51を被覆するガスバリヤ層を有する外被材53とを有し構成している。
真空断熱材50の芯材51については、バインダ等で接着や結着していない無機繊維の積層体として平均繊維径4μmのグラスウールを用いている。
芯材51については、無機系繊維材料の積層体を使用することによりアウトガス(ガスの発生)が少なくなるため、断熱性能的に有利であるが、特にこれに限定するものではなく、例えばセラミック繊維やロックウール、グラスウール以外のガラス繊維等の無機繊維等でもよい。芯材51の種類によっては内包材52が不要の場合もある。
外被材53のラミネート構成についてはガスバリヤ性を有し、熱溶着可能であれば特に限定するものではないが、本実施形態においては、表面(保護)層、ガスバリヤ層1、ガスバリヤ層2、熱溶着層の4層構成からなるラミネートフィルムとする。
具体的には、外被材53は、表面層を二軸延伸タイプのポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の各フィルム、ガスバリヤ層1をアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ガスバリヤ層2をアルミニウム蒸着付きの二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム又はアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリビニルアルコール樹脂フィルム、或いはアルミ箔とし、熱溶着層を未延伸タイプのポリエチレン、ポリプロピレン等の各フィルムとした。
なお、各フィルムのラミネート(貼り合せ)は、二液の反応熱で硬化させる二液硬化型ウレタン接着剤を介してドライラミネート法によって貼り合わせるのが一般的であるが、接着剤の種類や貼り合わせ方法は特にこれに限定するものではなく、ウェットラミネート法、サーマルラミネート法等の他の方法によるものでも良い。
吸着剤54については、水分やガスを吸着するものであり、物理吸着、化学反応型吸着のどちらでも良い。
前記のように作製された真空断熱材50において、真空断熱材50の断面における内包材52の内部の芯材51と芯材51以外の真空状態となるスペースのうち当該スペースが占める割合である空隙率の測定方法を以下に示す。
まず、所定の繊維径、繊維長に調製したグラスウール繊維を作製し、それらをコア材(芯材51)として用いた空隙率測定用の真空断熱材50(コア材サイズ 20×20×10t(mm))を作製する。次に、内部を観察する際に真空断熱材50の形状変形を防止するため、エポキシ樹脂中に真空断熱材を埋め、その後切断して、研磨を行い空隙率測定用試料を作製する。
真空断熱材50の切断位置については、図4に示す。図4は、真空断熱材50の空隙率を測定する際に裁断する位置を示した図である。なお、図4において吸着剤54を強調して示している。
図4において、真空断熱材50のD−D断面、すなわち真空断熱材50が広がる方向である延在方向の断面を“水平方向”と称し、真空断熱材50の熱を遮断する断熱方向である厚さ方向の断面のE−E断面を“断面方向”として以下表記する。
また、それぞれの真空断熱材の熱伝導率を測定した。測定に使用したのは英弘精機製オートラムダHC-074-630であり、中央部のセンサによる測定値において比較することとした。
真空断熱材50の芯材51の諸物性について、前記の方法で測定したところ、真空断熱材50の水平方向(延在方向断面)の空隙率が85%、断面方向(厚さ方向断面)の空隙率が86%であった。また、芯材51の強度、反発力を示すヤング率は77MPa(メガパスカル)であった。
この真空断熱材50について、500×1500×10mmのサイズについて中央部の熱伝導率を測定したところ,1.1m(ミリ)W/m・Kと熱伝導率が低い良好な値となった。
真空断熱材50の芯材51の諸物性について、前記の方法で測定したところ、表1に示すように、真空断熱材50の水平方向(延在方向断面)の空隙率が83%、断面方向(厚さ方向断面)の空隙率が91%であった。また、芯材51のヤング率は78MPaであった。この真空断熱材50について、500×1500×10mmのサイズについて中央部の熱伝導率を測定したところ、1.0mW/m・Kと熱伝導率が低い良好な値となった。
真空断熱材50の芯材51の諸物性について、前記の方法で測定したところ、表1に示すように、真空断熱材50の水平方向の空隙率が80%、断面方向の空隙率が85%であった。また、芯材51のヤング率は75MPaであった。この真空断熱材50について、500×1500×10mmのサイズについて中央部の熱伝導率を測定したところ、1.0mW/m・Kと熱伝導率が低い良好な値となった。
真空断熱材50の芯材51の諸物性について、前記の方法で測定したところ、表1に示すように、真空断熱材50の水平方向の空隙率が82%、断面方向の空隙率が92%であった。また、芯材51のヤング率は80MPaであった。この真空断熱材50について、500×1500×10mmのサイズについて中央部の熱伝導率を測定したところ、1.0mW/m・Kと熱伝導率が低い良好な値となった。
実施形態4によれば、真空断熱材50の水平方向(延在方向断面)の空隙率が82%、断面方向(厚さ方向断面)の空隙率が92%、芯材51のヤング率が80MPaの条件で、高い断熱性能の真空断熱材50が得られた。
真空断熱材50の芯材51の諸物性について、前記の方法で測定したところ、表1に示すように、真空断熱材50の水平方向の空隙率が84%、断面方向の空隙率が90%であった。また、芯材51のヤング率は79MPaであった。この真空断熱材50について、500×1500×10mmのサイズについて中央部の熱伝導率を測定したところ、1.0mW/m・Kと熱伝導率が低い良好な値となった。
真空断熱材50の芯材51の諸物性について、前記の方法で測定したところ、表1に示すように、真空断熱材50の水平方向の空隙率が81%、断面方向の空隙率が88%であった。また、芯材51のヤング率は77MPaであった。この真空断熱材50について、500×1500×10mmのサイズについて中央部の熱伝導率を測定したところ、1.0mW/m・Kと熱伝導率が低い良好な値となった。
実施形態6によれば、真空断熱材50の水平方向(延在方向断面)の空隙率が81%、断面方向(厚さ方向断面)の空隙率が88%、芯材51のヤング率が77MPaの条件で、高い断熱性能の真空断熱材50が得られた。
繊維長分布の測定については、ガラス繊維を400〜500℃程度の温度で熱し、不純物を焼き飛ばす。その後、液体中に均一分散させ一部を取り出し、ガラス繊維の全数について繊維長を測定することとした。
実施形態1〜6によれば、繊維長が2mm以上10mm以下の最適範囲のため、繊維の配向性が向上する。例えば、説明した実施形態1〜6と異なり、繊維長が短いと繊維が立ち易くなり、真空断熱材50の厚み方向(図4の真空断熱材50の上下方向)に対して平行な繊維の割合が大きくなる。その場合、真空断熱材50の表面50oからの熱を裏面50uに伝える経路または真空断熱材50の裏面50uからの熱を表面50oに伝える経路、すなわち厚み方向に対して平行な繊維が増えることから、断熱性能が悪くなる。
また、通常、廃ガラスのカレット(粉砕物)を使用する際は、ホウ酸等の添加剤を加えて調製し、紡糸時の繊維の延伸性等を確保し、繊維の細径化や配向性を向上する。これに対し、本実施形態1〜6のような繊維長や空隙率を確保することにより、リサイクルガラス等の廃ガラス95〜100%での繊維化が可能となり、材料費用の低減の効果も併せて得ることが出来る。また、少資源化が可能である。
また、内箱22または外箱21に真空断熱材50を接着剤、固定部材を用いて設置することにより、冷蔵庫8の断熱性能が向上し、省電力化が図れる。
以上より、真空断熱材50を用いた冷蔵庫8の断熱性能が改善され、断熱性能に優れた消費電力量の少ない低コストの真空断熱材50、これを用いた冷蔵庫本体(断熱箱体)1H及び冷蔵庫1を提供できる。
また、真空断熱材50の芯材51として用いられている無機系或いは有機系の繊維積層体を形成する繊維の原材料にホウ素を含まないことにより、アウトガス(ガスの発生)や水分の発生が抑制できる。そのため、真空断熱材50の真空状態の維持が可能で、真空断熱材50の断熱性能の劣化を抑制できる。
なお、前記実施形態1〜6においては、断熱材として発砲断熱材23を例示して説明したが、発砲断熱材以外の適宜選択した断熱材を用いてもよい。
(比較例1)
比較例1の真空断熱材の芯材の諸物性について、前記の方法で測定したところ、表1に示すように、真空断熱材の水平方向(真空断熱材の延在方向断面)の空隙率が75%、断面方向(真空断熱材の厚さ方向断面)の空隙率が80%であった。また、芯材のヤング率は90MPaであった。この真空断熱材について、500×1500×10mmのサイズについて中央部の熱伝導率を測定したところ、1.7mW/m・Kであり、実施形態1〜6の真空断熱材50の熱伝導率1.0〜1.1mW/m・Kに比較し、悪い値となった。すなわち、比較例1の真空断熱材は、実施形態1〜6の真空断熱材50より熱伝導率が高いため、真空断熱材の断熱性能が劣る。
また、芯材のヤング率が90MPaと実施形態1〜6のヤング率75〜80MPaに比べ、比較的大きいことから、比較例1の真空断熱材の芯材は硬い繊維状態になっていると推測される。そのため、比較例1の真空断熱材の作製時の減圧から大気圧負荷に至る過程の圧力に、芯材の繊維自体が持ち堪えられず折れてしまい、繊維の配向性が悪くなる傾向にあると推察される。
比較例2の真空断熱材の芯材の諸物性について、前記の方法で測定したところ、表1に示すように、真空断熱材の水平方向(真空断熱材の延在方向断面)の空隙率が79%、断面方向(真空断熱材の厚さ方向断面)の空隙率が83%であった。また、芯材のヤング率は73MPaであった。この真空断熱材について、500×1500×10mmのサイズについて中央部の熱伝導率を測定したところ、1.4mW/m・Kであり、後記の比較例3と同様な従来並みの値であった。
比較例2の熱伝導率が高い原因は、まず水平方向(真空断熱材の延在方向断面)の空隙率が低く繊維方向が水平でなく、厚み方向(断熱方向)に立っている繊維が多いことが推測される。よって、熱が真空断熱材の厚み方向に立つ繊維を伝わり厚み方向の熱伝導が大きくなり、断熱性能が劣っていると推測される。
比較例3の従来の真空断熱材の芯材の諸物性について、前記の方法で測定したところ、表1に示すように、真空断熱材の水平方向(真空断熱材の延在方向断面)の空隙率が90%、断面方向(真空断熱材の厚さ方向断面)の空隙率が90%であった。また、芯材のヤング率は70MPaであった。この真空断熱材について、500×1500×10mmのサイズについて中央部の熱伝導率を測定したところ、1.5mW/m・Kであった。
1H 冷蔵庫本体(断熱箱体)
2 冷蔵室
3a 製氷室(冷凍室)
3b 上段冷凍室(冷凍室)
4 下段冷凍室(冷凍室)
5 野菜室
12 仕切断熱壁(第1仕切り部材)
14 仕切断熱壁(第2仕切り部材)
21 外箱
22 内箱
23 発泡断熱材(断熱材)
50、50a、50b、50c 真空断熱材
51 芯材
53 外被材(ガスバリヤ性部材)
Claims (9)
- 無機系或いは有機系の繊維積層体の繊維径が平均3μm以上8μm以下であるとともに繊維長が平均2mm以上10mm以下に形成される芯材と、前記芯材を覆うガスバリヤ性フィルムとを有する真空断熱材であって、
前記真空断熱材は、その広がる方向である延在方向断面の空隙率が80%以上85%以下であり、かつ、その断熱方向である厚さ方向断面の空隙率が85%以上100%未満であることを特徴とする真空断熱材。 - 前記芯材として用いられている前記繊維積層体を形成する繊維のヤング率は、75MPa以上85MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材。
- 前記芯材として用いられている前記繊維積層体を形成する繊維の原材料は、廃ガラスのカレットが95%以上100%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空断熱材。
- 前記芯材として用いられている前記繊維積層体を形成する繊維の原材料にホウ素を含まないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空断熱材。
- 外装を成す外箱と貯蔵物を収容する内箱との間に形成される空間に、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の真空断熱材を少なくとも設置したことを特徴とする断熱箱体。
- 前記空間に、前記真空断熱材を設置するとともに発泡断熱材を充填することを特徴とする請求項5に記載の断熱箱体。
- 貯蔵物を収容する内箱における冷凍室と冷蔵室との間の第1仕切り部材または冷凍室と野菜室との間の第2仕切り部材に、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の真空断熱材を設置したことを特徴とする断熱箱体。
- 外装を成す外箱または貯蔵物を収容する内箱に、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の真空断熱材を設置したことを特徴とする断熱箱体。
- 請求項5から請求項8の何れか一項に記載の断熱箱体を備える冷蔵庫。
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