JP2011236451A - 高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材 - Google Patents

高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材 Download PDF

Info

Publication number
JP2011236451A
JP2011236451A JP2010106900A JP2010106900A JP2011236451A JP 2011236451 A JP2011236451 A JP 2011236451A JP 2010106900 A JP2010106900 A JP 2010106900A JP 2010106900 A JP2010106900 A JP 2010106900A JP 2011236451 A JP2011236451 A JP 2011236451A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel
aln
hot
content
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2010106900A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5423571B2 (ja
Inventor
Yoshihiro Ofuji
善弘 大藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2010106900A priority Critical patent/JP5423571B2/ja
Publication of JP2011236451A publication Critical patent/JP2011236451A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5423571B2 publication Critical patent/JP5423571B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

【課題】オーステナイト粒粗大化防止特性に優れた高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材の提供。
【解決手段】C:0.85〜1.10%、Si:0.1〜1.2%、Mn:0.3〜1.5%、S≦0.05%、Cr:0.1〜1.0%、Al:0.015〜0.05%及びN:0.006〜0.020%を含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP≦0.025%、Ti≦0.003%及びO≦0.002%の化学組成を有し、AlNとして析出しているAl≦0.005%、直径≧100nmのAlNの個数密度≦5個/100μm2で、組織がフェライトと初析セメンタイトで構成され、極値統計法によって求められる初析セメンタイトの最大長径が100mm2中で60μm以下である高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材。Feの一部に代えて、特定量のNi、Mo、Nb、Vのうちの1種以上の元素を含んでもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材、詳しくは、球状化焼鈍後に少なくとも一部分を高周波焼入れして製造される部品の素材として用いるのに好適な熱間加工された高炭素鋼材に関し、特に軸受要素部品の素材として用いるのに好適である。
自動車や産業機械に用いられる部品のうち、高炭素鋼を用いるものは、鋼線材・棒鋼を球状化焼鈍した後、あるいは、鋼線材・棒鋼を熱間鍛造してから球状化焼鈍した後、冷間鍛造、または/および、切削加工を施し、その後、炉加熱した後に油焼入れすることによって硬化処理することが多い。しかし、炉加熱の場合、部品全体が高温の状態から焼入れられるため、焼入れ時の変形が大きくなるし、焼割れが発生しやすい。また炉加熱の場合、多量のエネルギーを必要とする。
そのため、近年、部品の表層部のみを高周波焼入れされることが多くなっている。しかし、高周波焼入れの場合、粗大なセメンタイトが残存しやすい、あるいは過熱された際、オーステナイト粒が粗大化しやすい場合があり、その場合、面疲労試験での疲労寿命が低下してしまう。
そこで、高周波焼入れしても、粗大なセメンタイトの生成、および過熱された際のオーステナイト粒の粗大化を安定して防止できる鋼材が求められており、例えば、特許文献1〜3に高周波焼入れ用軸受鋼材に関する技術が開示されている。
特許文献1には、Ti炭化物、Ti炭窒化物の粒子を分散させるとともに高周波焼入れを行うことにより、冷間引抜き加工性に優れ、かつ長寿命で耐摩耗性の高い転動部材が開示されている。
特許文献2には、高周波加熱前の組織、およびMn、Siなどの元素の含有量を調整することを特徴とする「高寿命高周波焼入れ軸受用鋼材」に関する技術が開示されている。また、特許文献2では、Al含有量、およびN含有量を限定することにより、AlNの析出挙動を通じて、オーステナイト粒の微細化に寄与することが開示されている。
特許文献3には、特定量のSiとNiを同時に含有させた場合に、優れた転動疲労寿命の得られることが開示されている。
特開2000−80446号公報 特開平8−311615号公報 特開平9−291337号公報
面疲労試験で優れた耐摩耗性を得るためには、高周波焼入れ後にセメンタイト粒子を分散させることが有効なため、鋼材のC含有量を増加させる必要があるが、そのために過共析鋼を用いると、熱間圧延、あるいは熱間鍛造後に初析セメンタイトが生成しやすい。初析セメンタイトはオーステナイト粒界に沿って生成するため、粗大になりやすく、その後の特性に影響を与えると考えられるが、特許文献1では、それに対する配慮がなされていない。
特許文献2および3で開示された技術は、C含有量が低いので、面疲労強度や耐摩耗性に劣る。また、特許文献2に開示された技術では、Al含有量とN含有量については配慮されているものの、AlNの分散状態については配慮されておらず、高周波加熱時のオーステナイト粒粗大化を必ずしも安定して防止できるというものではない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、良好な面疲労強度、および耐摩耗性を有する高周波焼入れ部品の素材として好適な熱間加工高炭素鋼材、なかでも、高周波焼入れ後のオーステナイト粒の粗大化を安定して防止でき、高周波焼入れ部品の素材として好適な、高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材を提供することである。
なお、本発明では、加熱速度150℃/秒で1200℃に加熱し、2秒保持後に急冷したときのオーステナイト結晶粒の平均粒度番号が6番未満である場合に、オーステナイト粒が粗大化したものとする。
本発明者は、良好な面疲労強度と耐摩耗性を有する高周波焼入れ部品を得るための化学成分、組織などについて調査・研究を重ねた。その結果、下記(a)〜(e)の知見を得た。
(a)高周波焼入れ部品が、良好な面疲労強度と耐摩耗性を得るためには、C含有量が0.85%以上必要である。
(b)C含有量を0.85%以上にすると、熱間加工の一形態である熱間圧延、あるいは熱間鍛造(以下、簡単のために、熱間圧延と熱間鍛造をまとめて「熱間圧延」ということがある。)の後に初析セメンタイトの生成量が多くなる。初析セメンタイトはオーステナイト粒界に沿って生成し、その長径が大きいと、球状化焼鈍後もセメンタイトが粗大、かつ点列状に存在するため、面疲労強度を低下させる。
(c)高周波加熱では、角部や穴部で過熱されやすく、その部分でオーステナイト粒の粗大化が生じやすい。オーステナイト粒の粗大化が顕著になると面疲労強度が低下する。
(d)オーステナイト粒の粗大化を抑制するためには、球状化焼鈍中にAlNを析出させることが有効なため、熱間圧延、あるいは熱間鍛造後のAlNの析出量を抑制する必要がある。
(e)量産工程として一般的な、大断面での連続鋳造後の鋳片には、粗大なAlNが生成しており、これが熱間圧延材で残存していると、たとえAlNの析出量が少なくても、高周波加熱時にオーステナイト粒が粗大化しやすい。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示す高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材にある。
(1)高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材であって、
質量%で、C:0.85〜1.10%、Si:0.1〜1.2%、Mn:0.3〜1.5%、S:0.05%以下、Cr:0.1〜1.0%、Al:0.015〜0.05%およびN:0.006〜0.020%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のP、TiおよびO(酸素)がそれぞれ、P:0.025%以下、Ti:0.003%以下およびO:0.002%以下の化学組成を有し、
AlNとして析出しているAl量が0.005%以下で、かつ、直径100nm以上のAlNの個数密度が5個/100μm2以下であり、
さらに、組織がパーライトと初析セメンタイトで構成され、
極値統計法によって求められる初析セメンタイトの最大長径が、100mm2中で60μm以下である、
ことを特徴とする高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Ni:1.5%以下およびMo:0.8%以下のうちから選ばれる1種以上を含有する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材。
(3)Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.05%以下およびV:0.2%以下のうちから選ばれる1種以上を含有する、
ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石やスクラップあるいは環境などから混入するものを指す。
AlNの「直径」とは、一般的な方法で抽出レプリカ試料を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて観察したAlNの長径と短径の算術平均を指す。
なお、「極値統計法」による初析セメンタイトの最大長径は、次に示す手順で求めたものを指す。
〔1〕鋼材の断面を鏡面研磨した後、その研磨面を被検面として、検査基準面積S0(mm2)を決める。
〔2〕上記S0(mm2)中で最大の長径を有する初析セメンタイトを選び、その長径Lmax(μm)を測定する。
〔3〕上述した測定を、重複しない場所でn回繰り返して行う。但し、nは10以上の整数である。
〔4〕測定したn個のLmaxを小さい順に並べ直し、それぞれLmaxj(j=1〜n)とする。
〔5〕それぞれのjについて下記の基準化変数yjを計算する。
yj=−ln[−ln{j/(n+1)}]。
〔6〕極値確率用紙の座標横軸にLmaxj、縦軸に基準化変数yjをとって、j=1〜nについてプロットし、最小二乗法により近似直線を求める。
〔7〕評価面積を100mm2、T=100/S0として下記の式からyの値を求め、上記の近似直線を用いて、前記yの値におけるLmaxの値を読みとり、これを評価面積100mm2中での初析セメンタイトの最大長径とする。
y=−ln[−ln{(T−1)/T}]。
本発明の高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材は、高周波焼入れ後にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止でき、良好な面疲労強度、および耐摩耗性が要求される軸受要素部品等の高周波焼入れ部品の素材として好適に用いることができる。
2円筒型面疲労試験に用いた小ローラー試験片の形状を示す図である。なお、寸法の単位は「mm」である。 2円筒型面疲労試験に用いた大ローラー試験片の形状を示す図である。なお、寸法の単位は「mm」である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成:
C:0.85〜1.10%
Cは、高周波焼入れ後の鋼材組織中のマトリックス中のC濃度、およびセメンタイト残存量を適正化して面疲労強度と耐摩耗性を高める作用を有する。しかし、その含有量が0.85%未満ではその効果が不十分であり、所望の耐摩耗性を確保し難い。一方、Cの含有量が1.10%を超えると鋼の凝固時に非常に粗大なセメンタイトが生成しやすいために、目標とする面疲労寿命が得られない。したがって、Cの含有量を0.85〜1.10%とした。なお、Cの含有量は0.90%以上、1.00%以下とすることが好ましい。
Si:0.1〜1.2%
Siは、面疲労寿命を高めるとともに脱酸作用を有する。これらの効果を発揮させるためには、0.1%以上のSiを含有させることが必要である。一方、Siの含有量が1.2%を超えると冷間加工性の低下が顕著になる。したがって、Siの含有量を0.1〜1.2%とした。なお、Siの含有量は0.2%以上、0.8%以下とすることが好ましい。
Mn:0.3〜1.5%
Mnは、鋼の焼入れ性を高めるとともにSによる熱間脆性を防止する作用を有する。これらの効果を発揮させるためには、Mnを0.3%以上含有させる必要がある。一方、Mnの含有量が1.5%を超えると冷間加工性の低下が顕著になる。したがって、Mnの含有量を0.3〜1.5%とした。なお、Mnの含有量は0.5%以上、1.0%以下とすることが好ましい。
S:0.05%以下
Sは、鋼中に不純物として含有される元素である。また、積極的に含有させればMnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用を有するが、Sの含有量が多くなると、粗大なMnSを生成しやすくなり、面疲労強度を低下させる傾向があり、特に、その含有量が0.05%を超えると、面疲労強度の低下が顕著になる。したがって、Sの含有量0.05%以下とした。なお、Sの含有量は0.015%以下であることが好ましい。一方、被削性を高める観点からは、Sは0.001%以上を含有させることが好ましく、0.003%以上含有させればより好ましい。
Cr:0.1〜1.0%
Crは、鋼の焼入れ性を向上させる元素である。この効果を発揮させるためには、Crを0.1%以上含有させる必要がある。しかし、Crは過剰に含有するとセメンタイト中に濃化してオーステナイト中でセメンタイトを安定化させるので、高周波加熱後に粗大なセメンタイトが残存してしまう。特に、その含有量が1.0%を超えると、その傾向が顕著になる。したがって、Crの含有量を0.1〜1.0%とした。なお、Crの含有量は0.2%以上、0.7%以下とすることが好ましい。
Al:0.015〜0.05%
Alは、脱酸作用を有すると同時に、Nと結合してAlNを形成しやすく、高周波加熱時のオーステナイト粒粗大化防止に有効な元素である。しかしながら、Al含有量が0.015%未満では、他の要件を満たしていても、本発明で目標とするオーステナイト粒粗大化防止効果が得られない。また、Al含有量が0.05%を超えると、粗大な酸化物系介在物の生成が顕著になり、面疲労強度が低下する。したがって、Alの含有量を0.015〜0.05%とした。なお、Alの含有量は0.02%以上、0.04%以下であることが好ましい。
N:0.006〜0.020%
Nは、Alと結合して窒化物を、Nb、V、Tiと結合して炭化物、窒化物、炭窒化物を形成しやすい元素である。本発明においては、上記の窒化物のうちAlの窒化物、Nbの炭化物、窒化物、炭窒化物、Vの炭化物、窒化物、炭窒化物、が、高周波加熱時のオーステナイト粒粗大化防止効果を有する。しかしながら、Nの含有量が0.006%未満では、他の要件を満たしていても、本発明で目標とするオーステナイト粒粗大化防止効果が得られない。一方、Nの含有量が0.020%を超えると、特に製鋼工程において、安定して量産することが難しくなる。したがって、Nの含有量を0.006〜0.020%とした。なお、Nの含有量は0.008%以上、0.015%以下であることが好ましい。
本発明の高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材の化学組成の一つは、上記元素のほか、残部がFeと不純物からなり、不純物中のP、TiおよびO(酸素)がそれぞれ、P:0.025%以下、Ti:0.003%以下およびO:0.002%以下のものである。
以下、不純物中のP、TiおよびOについて説明する。
P:0.025%以下
Pは、粒界偏析して粒界を脆化させやすい元素で、0.025%を超えると、面疲労強度を低下させる。したがって、不純物中のPの含有量を0.025%以下とした。なお、不純物中のPの含有量は0.015%以下とすることが好ましい。
Ti:0.003%以下
Tiは、Nと結合して硬質で粗大な窒化物を形成しやすく、面疲労強度を低下させてしまう。特に、Tiの含有量が0.003%を超えると、面疲労強度の低下が著しくなる。したがって、不純物中のTi含有量を0.003%以下とした。なお、不純物元素としてのTiの含有量は0.002%以下にすることが好ましく、製鋼工程でのコスト上昇をきたさない範囲で、できる限り少なくすることがさらに望ましい。
O(酸素):0.002%以下
Oは、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、面疲労強度を低下させてしまう。特に、Oの含有量が0.002%を超えると、面疲労強度の低下が著しくなる。したがって、不純物中のO含有量を0.002%以下とした。なお、不純物元素としてのOの含有量は0.001%以下にすることが好ましく、製鋼工程でのコスト上昇をきたさない範囲で、できる限り少なくすることがさらに望ましい。
本発明の高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材の化学組成の他の一つは、Feの一部に代えて、Ni、Mo、NbおよびVのうちから選ばれる1種以上の元素を含有するものである。
以下、任意元素である上記Ni、Mo、NbおよびVの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
NiおよびMoは、いずれも、焼入れ性を高める作用を有する。このため、より大きな焼入れ性を得たい場合には、これらの元素を含有させてもよい。以下、上記のNiおよびMoについて説明する。
Ni:1.5%以下
Niは、焼入れ性を高める効果があり、より面疲労強度を高めるために有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Niの含有量が1.5%を超えると、焼入れ性の向上による面疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、冷間加工性の低下が顕著になる。したがって、含有させる場合のNiの含有量を1.5%以下とした。なお、含有させる場合のNiの含有量は0.8%以下であることが好ましい。
一方、前記したNiの焼入れ性の向上による面疲労強度を高める効果を確実に得るためには、含有させる場合のNiの含有量は、0.1%以上であることが好ましい。
Mo:0.8%以下
Moは、焼入れ性を高める効果があり、より面疲労強度を高めるために有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Moの含有量が0.8%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、冷間加工性の低下が顕著になる。したがって、含有させる場合のMoの含有量を0.8%以下とした。なお、含有させる場合のMoの含有量は0.4%以下であることが好ましい。
一方、前記したMoの焼入れ性の向上による面疲労強度を高める効果を確実に得るためには、含有させる場合のMoの含有量は、0.05%以上であることが好ましい。
上記のNiおよびMoは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種の複合で含有させることができる。なお、これらの元素の合計含有量は2.3%以下であってもよいが、1.2%以下とすることが好ましい。
NbおよびVは、いずれも、前述したAlNによる高周波加熱時のオーステナイト粒粗大化防止を補完する作用を有するため、これらの元素を含有させてもよい。以下、上記のNbおよびVについて説明する。
Nb:0.05%以下
Nbは、C、Nと結合して炭化物、窒化物、炭窒化物を形成しやすく、前述したAlNによる高周波加熱時のオーステナイト粒粗大化防止を補完するのに有効な元素である。しかしながら、Nbの含有量が0.05%を超えると、オーステナイト粒粗大化防止の効果がむしろ低下する。このため、合金コストが嵩んで、経済性を損なうことになる。したがって、含有させる場合のNbの含有量を0.05%以下とした。なお、含有させる場合のNbの含有量は0.03%以下であることが好ましい。
一方、前記したNbのオーステナイト粒粗大化防止効果を確実に得るためには、含有させる場合のNbの含有量は、0.005%以上であることが好ましい。
V:0.2%以下
Vは、C、Nと結合して炭化物、窒化物、炭窒化物を形成しやすく、前述したAlNによる高周波加熱時のオーステナイト粒粗大化防止を補完するのに有効である。しかしながら、Vの含有量が0.2%を超えると、オーステナイト粒粗大化防止の効果がむしろ低下する。このため、合金コストが嵩んで、経済性を損なうことになる。したがって、含有させる場合のVの含有量を0.2%以下とした。なお、含有させる場合のVの含有量は0.1%以下であることが好ましい。
一方、前記したVのオーステナイト粒粗大化防止効果を確実に得るためには、含有させる場合のVの含有量は、0.02%以上であることが好ましい。
上記のNbおよびVは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種の複合で含有させることができる。なお、これらの元素の合計含有量は0.25%以下であってもよいが、0.14%以下とすることが好ましい。
(B)AlNとして析出しているAl量、および直径100nm以上のAlNの個数密度:
熱間加工鋼材において、AlNとして析出しているAl量が0.005%以下で、かつ、直径100nm以上のAlNの個数密度が5個/100μm2以下であれば、高周波加熱時のオーステナイト粒粗大化を抑制することができる。
したがって、本発明においては、AlNとして析出しているAl量が0.005%以下で、かつ、直径100nm以上のAlNの個数密度が5個/100μm2以下であることと規定した。
なお、AlNとして析出しているAl量は、例えば、適宜の試験片を採取し、一般的な条件である、10%AA系電解液を用い、電流密度250〜350A/m2で抽出(電気分解)し、抽出した溶液をメッシュサイズ0.2μmのフィルタでろ過して、ろ過物について一般的な化学分析を行うことによって求めることができる。なお、前述した10%AA系電解液とは、10体積%アセチルアセトン−1質量%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール溶液である。
また、100nm以上のAlNについては、例えば、鋼材の中心部を含むように抽出レプリカ試料を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて、倍率20000倍、1視野あたりの面積10μm2で、ランダムに各10視野観察することによって、面積100μm2当たりの個数密度として求めることができる。
なお、AlNとして析出しているAl量は0.003%以下であることが好ましく、また、直径100nm以上のAlNの個数密度は3個/100μm2以下であることが好ましい。
(C)組織
熱間圧延後、あるいは熱間鍛造後のミクロ組織は、球状化焼鈍を行った後も粗大なセメンタイトの分布状態などに傾向としては引き継がれ、それが、高周波焼入れ後の面疲労強度に影響を及ぼすと考えられる。
このため、ミクロ組織を適正なものにする必要がある。そして、組織がパーライトと初析セメンタイトで構成され、極値統計法によって求められる初析セメンタイトの最大長径が、100mm2中で60μm以下の場合に、優れた面疲労強度を得ることができる。
組織中にベイナイトやマルテンサイトを含む場合には、マルテンサイトやベイナイトが硬質で延性が低いことに起因して、熱間加工鋼材の矯正や運搬時に割れが発生しやすくなる。
上記の組織における「相」は、例えば、熱間加工鋼材の長手方向に垂直、かつ、中心部を含む断面を切り出した後、鏡面研磨してナイタールで腐食した試験片について、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で、視野の大きさを100μm×100μmとして重複しない場所でランダムに各15視野観察することによって同定することができる。
また、上記の各視野に関し、極値統計法に基づく前述の〔1〕〜〔7〕の手順において、「n=15」とすることにより、100mm2中での初析セメンタイトの最大長径を求めることができる。前記の初析セメンタイトの最大長径は40μm以下であることが好ましい。なお、工業的な規模で安定した量産を行うためには、鋼材の広い領域で初析セメンタイトの最大長径を評価する必要があるが、「極値統計法」はその評価方法として優れた方法である。
上記のAlNとして析出しているAl量、AlNの個数密度(分散状態)およびミクロ組織には、鋼の化学組成、鋳片や鋼片の製造条件、鋳片や鋼片における成分元素の偏析、熱間加工鋼材(熱間圧延棒鋼、線材、熱間鍛造粗形部品など)を製造する際の熱間加工条件、および熱間加工の後の冷却速度などが影響する。
そこで、上記のAlNとして析出しているAl量、AlN分散状態およびミクロ組織を得る方法の一例として、以下、0.95〜1.00%のC、0.4〜0.6%のSi、0.6〜1.0%のMn、0.3〜0.6%のCr、0.02〜0.04%のAlおよび0.008〜0.015%のNを含有する鋼を用いた場合について示す。なお、本発明の高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材の製造方法は、これに限るものではないことはもちろんである。
・鋳片に加熱温度1230〜1280℃、かつ、加熱時間5時間以上の加熱を施してから分塊圧延すること、
・分塊圧延後の鋼片の冷却は放冷とすること、
・鋼片の加熱温度を1230〜1250℃、かつ、加熱時間を1.5時間以上として熱間加工すること、
・熱間加工仕上げ温度を950〜1050℃とし、仕上げ加工後は、大気中での放冷(以下、単に「放冷」という。)程度の平均冷却速度で600℃以下の温度まで冷却すること、
・熱間加工鋼材が断面の形状が円形の棒鋼または線材の場合には、直径が15〜50mmであること。熱間加工鋼材が断面の形状が円形でない棒鋼または線材の場合には、長手方向に垂直な横断での断面積が180〜2000mm2であること。熱間加工鋼材が粗形部品の場合には、主たる部位の横断での断面積が180〜2000mm2であること。
なお、熱間加工における仕上げ加工後の冷却は、600℃以下の温度に至った時点で、ミスト冷却、水冷など、適宜の手段で冷却してもよい。
本明細書における加熱温度とは加熱炉の炉内温度の平均値、加熱時間とは在炉時間を意味する。また、熱間加工の仕上げ温度とは熱間加工で所定の形状に成形した際の棒鋼、線材、粗形部品の表面温度を指し、さらに、仕上げ加工後の平均冷却速度も、棒鋼、線材、粗形部品の表面平均冷却速度を指す。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
表1に示す化学組成を有する鋼Z、鋼αおよび鋼βを70トン転炉で成分調整した後、連続鋳造を行って、400mm×300mm角の鋳片(ブルーム)を作製し、600℃まで冷却した。なお、連続鋳造の凝固途中の段階で圧下を加えた。上記の鋼αおよび鋼βはいずれも、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼Zは、化学組成が本発明で規定する範囲外にある鋼である。なお、この鋼Zは、高周波焼入れ部品の素材として一般的に用いられるJIS規格のS55C鋼に相当する鋼であり、面疲労強度および耐摩耗性の評価基準とするために用いた。
このようにして作製した鋳片を、上記の600℃から1250℃に加熱した後、分塊圧延して180mm×180mm角の鋼片を作製し、室温まで冷却した。さらに、上記180mm×180mm角の鋼片を加熱した後、熱間圧延を行って直径30mmの棒鋼を得た。
表2に、製造条件〈1〉〜〈8〉として、400mm×300mmの鋳片から直径30mmの棒鋼に仕上げるに際しての、鋳片の加熱条件、分塊圧延後の冷却条件、鋼片の加熱条件、棒鋼圧延の圧延仕上げ温度と圧延後の冷却条件の詳細を示す。
Figure 2011236451
Figure 2011236451
上記のようにして得た直径30mmの各棒鋼について、横断面において中心部から半径の1/3までの領域を観察して、AlNとして析出しているAl量および直径100nm以上のAlNの個数密度を調査した。また、組織については、横断面について、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で、視野の大きさを100μm×100μmとして重複しない場所でランダムに各15視野観察して「相」の同定を行った。また、上記の各視野に関して、極値統計法に基づく前述の〔1〕〜〔7〕の手順において、「n=15」とすることにより、100mm2中での初析セメンタイトの最大長径を求めた。以下、その具体的な調査方法について説明する。
先ず、直径30mmの棒鋼から、中心部を含むように直径10mmの円柱形状の試験片を採取した。この試験片について、一般的な条件である、10%AA系電解液を用いて、電流密度250〜350A/m2で抽出(電気分解)した。抽出した溶液をメッシュサイズ0.2μmのフィルタでろ過して、ろ過物について一般的な化学分析を行って、AlNとして析出しているAl量を求めた。
また、直径30mmの棒鋼の横断面において中心部から半径の1/3までの領域から、一般的な方法で抽出レプリカ試料を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて、倍率20000倍、1視野あたりの面積10μm2で、ランダムに各10視野観察し、直径が100nm以上のAlNについて面積100μm2当たりの個数密度を求めた。
さらに、直径30mmの棒鋼の長手方向に垂直、かつ、中心部を含む断面を切り出した後、鏡面研磨してナイタールで腐食した試験片について、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で、視野の大きさを100μm×100μmとして重複しない場所でランダムに各15視野観察して「相」の同定を行った。
また、上記の各視野について、極値統計法に基づく前述の〔1〕〜〔7〕の手順において、「n=15」とすることによって、すなわち、
〔1〕検査基準面積を0.01mm2とし、
〔2〕上記検査基準面積0.01mm2中で最大の長径を有する初析セメンタイトを選び、その長径Lmax(μm)を測定し、
〔3〕上述した測定を、重複しない場所で15回繰り返して行い、
〔4〕測定した15個のLmaxを小さい順に並べ直し、それぞれLmaxj(j=1〜15)とし、
〔5〕それぞれのjについて、
yj=−ln{−ln(j/16)}
の式から基準化変数yjを計算し、
〔6〕極値確率用紙の座標横軸にLmaxj、縦軸に基準化変数yjをとって、j=1〜15についてプロットし、最小二乗法により近似直線を求め、
〔7〕T=100/0.01=10000を、
y=−ln[−ln{(T−1)/T}]
の式に代入して、yの値9.2を求め、上記の近似直線を用いて、前記yの値におけるLmaxの値を読みとることによって、
評価面積100mm2中での初析セメンタイトの最大長径を求めた。
また、直径30mmの棒鋼を一般的な大気炉を用いて、770℃で3時間加熱した後、5℃/時間の冷却速度で680℃まで冷却し、その後放冷する条件で、球状化焼鈍を行った。次いで、上記の球状化焼鈍した直径30mmの棒鋼から、直径3.0mm、長さ10mmの試験片と、図1に示す形状の2円筒型面疲労試験用の小ローラー試験片を作製した。なお、図1における寸法の単位は「mm」である。
上記の試験片のうちで、直径3.0mm、長さ10mmの試験片は、高周波加熱での過熱を模擬するための試験に供した。
先ず、富士電波製フォーマスタ試験機を用いて、上記の試験片を平均加熱速度150℃/秒で、1200℃に加熱し、2秒保持後にヘリウムガスによって急冷した。次に、上記のようにして得た各試験片の横断面を鏡面研磨し、界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液で腐食した後、光学顕微鏡を用いてJIS G 0551(2005)に規定される方法によってオーステナイト粒度番号を測定した。
オーステナイト結晶粒の平均粒度番号が6番未満である場合に、オーステナイト粒が粗大化したと判定した。なお、オーステナイト粒粗大化防止効果の目標は、上記条件で熱処理した場合にオーステナイト粒が粗大化しないこととした。
一方、図1に示す形状の2円筒型面疲労試験用の小ローラー試験片は、その直径26mmの部分を高周波加熱により、平均加熱速度300℃/秒で表面温度が1000〜1030℃になるまで加熱した後、水冷によって冷却した。なお、170℃で1時間焼戻しを行った後のビッカース硬さが550以上である表面からの距離が1.5〜2.0mmになるように高周波焼入れ条件を調整した。上記水冷後の試験片は、一般的な大気炉を用いて、170℃で1時間焼戻しを行った後、室温まで放冷した。
2円筒型面疲労試験は、上記の2円筒型面疲労試験用小ローラーと図2に示す形状の2円筒型面疲労試験用大ローラーの組み合わせで、表3に示す条件で行った。上記大ローラーのクラウニングは100mmRとした。なお、図2における寸法の単位は「mm」である。
上記2円筒型面疲労試験用大ローラーは、JIS規格のSUJ2鋼を用い、一般的な工程、すなわち通常の「球状化焼鈍→試験片加工→焼入れ→焼戻し→研磨」の工程で作製した。
Figure 2011236451
各試験番号について、2円筒型面疲労試験における試験数は7とし、縦軸に面圧を、横軸に破壊までの繰り返し数をとったS−N線図を作成し、繰り返し数2.0×107回での面圧を面疲労強度とした。
前述のとおり、鋼Zは、高周波焼入れ部品の素材として一般的に用いられるJIS規格のS55C鋼に相当する鋼であるため、鋼Zを用いた試験番号1の面疲労強度を100として規格化し、これを20%以上上回ることを面疲労強度の目標とした。また、面圧2800MPaで試験したときに、2.0×106回で試験を中断し、その時の最大摩耗量を粗さ計を用いて測定し、鋼Zを用いた上記試験番号1の摩耗量を100として規格化し、それを40%以上下回ることを耐摩耗性の目標とした。
表4に、上記の各調査結果を、棒鋼の製造条件とともにまとめて示す。なお、表4における製造条件記号は、前記表2に記載した条件記号に対応するものである。
Figure 2011236451
表4から、化学組成が本発明で規定する範囲内にあり、しかも、AlNとして析出しているAl量、直径100nm以上のAlNの個数密度、組織および極値統計法によって求められる100mm2中での初析セメンタイトの最大長径の全てが本発明で規定する条件を満たす「本発明例」の試験番号3および11の場合には、1200℃に加熱し、2秒保持しても粗粒が発生しておらず、目標とするオーステナイト粒粗大化防止効果が得られていることがわかる。上記試験番号の場合には、2円筒型面疲労試験を行った場合の面疲労強度および耐摩耗性も良好で、目標を達成できていることが明らかである。
これに対して、化学組成が本発明で規定する範囲内にあり、組織がパーライトと初析セメンタイトで構成されていても、AlNとして析出しているAl量、直径100nm以上のAlNの個数密度および極値統計法によって求められる100mm2中での初析セメンタイトの最大長径のうちの少なくともいずれかが本発明で規定する条件から外れた「比較例」の試験番号2、4〜10および12〜17の場合には、オーステナイト粒および面疲労強度のうちのいずれか一方または双方が目標に達していない。
(実施例2)
表5に示す化学組成を有する鋼a〜lを70トン転炉で成分調整した後、連続鋳造を行って、400mm×300mm角の鋳片(ブルーム)を作製し、600℃まで冷却した。なお、連続鋳造の凝固途中の段階で圧下を加えた。
上記の鋼のうち、鋼b、鋼dおよび鋼i〜lは、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼a、鋼cおよび鋼e〜hは、化学組成が本発明で規定する範囲から外れた比較例の鋼である。
このようにして作製した鋳片を、上記の600℃から1250℃に加熱した後、分塊圧延して180mm×180mm角の鋼片を作製し、室温まで放冷した。さらに、上記180mm×180mm角の鋼片を加熱した後、熱間圧延を行って直径30mmの棒鋼を得た。
400mm×300mmの鋳片から直径30mmの棒鋼に仕上げるための製造条件は、各鋼について、前記表2に記載の製造条件記号〈2〉と、製造条件記号〈1〉および製造条件記号〈3〉〜〈8〉のうちのいずれかの1つとの、計2条件とした。
表6に、各鋼を400mm×300mmの鋳片から直径30mmの棒鋼に仕上げた製造条件を、表2に記載の製造条件記号を用いて示す。
Figure 2011236451
Figure 2011236451
上記のようにして得た直径30mmの各棒鋼を用いて、前記の(実施例1)におけるのと同じ方法で各種の調査を実施した。
すなわち、AlNとして析出しているAl量および直径100nm以上のAlNの個数密度を調査し、また、相の同定を行うとともに、極値統計法によって100mm2中での初析セメンタイトの最大長径を求めた。
また、前記の直径30mmの棒鋼に球状化焼鈍を施し、直径3.0mm、長さ10mmの試験片および図1に示す形状の2円筒型面疲労試験用の小ローラー試験片を切り出して、(実施例1)におけるのと同様にして、オーステナイト粒度番号を測定するとともに、2円筒型面疲労試験を実施して面疲労強度と摩耗量を調査した。
なお、面疲労強度および耐摩耗性を評価するに際しては、前記の(実施例1)に示したのと同じ基準を用いた。すなわち、面疲労強度は前記(実施例1)の鋼Zを用いた試験番号1の面疲労強度を100として規格化し、これを20%以上上回ることを目標とした。また、上記試験番号1の摩耗量を100として規格化し、それを40%以上下回ることを耐摩耗性の目標とした。
表6に、上記の各調査結果を、棒鋼の製造条件記号とともにまとめて示した。なお、表6における製造条件記号も、前記表2に記載した条件記号に対応するものである。
表6から、化学組成が本発明で規定する範囲内にあり、しかも、AlNとして析出しているAl量、直径100nm以上のAlNの個数密度、組織および極値統計法によって求められる100mm2中での初析セメンタイトの最大長径の全てが本発明で規定する条件を満たす「本発明例」の試験番号20、24、34、36、38および40の場合には、1200℃に加熱し、2秒保持しても粗粒が発生しておらず、目標とするオーステナイト粒粗大化防止効果が得られていることが明らかである。さらに、上記「本発明例」の各試験番号の場合には、2円筒型面疲労試験を行った場合の面疲労強度および耐摩耗性が本発明の目標を満たしていることも明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件の全てを同時に満たしていない「比較例」の試験番号18、19、21〜23、25〜33、35、37、39および41の場合には、少なくともオーステナイト粒粗大化防止効果、面疲労強度、耐摩耗性のいずれかが目標に達していない。
本発明の高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材は、高周波焼入れ後にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止でき、良好な面疲労強度、および耐摩耗性が要求される軸受要素部品等の高周波焼入れ部品の素材として好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材であって、
    質量%で、C:0.85〜1.10%、Si:0.1〜1.2%、Mn:0.3〜1.5%、S:0.05%以下、Cr:0.1〜1.0%、Al:0.015〜0.05%およびN:0.006〜0.020%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のP、TiおよびO(酸素)がそれぞれ、P:0.025%以下、Ti:0.003%以下およびO:0.002%以下の化学組成を有し、
    AlNとして析出しているAl量が0.005%以下で、かつ、直径100nm以上のAlNの個数密度が5個/100μm2以下であり、
    さらに、組織がパーライトと初析セメンタイトで構成され、
    極値統計法によって求められる初析セメンタイトの最大長径が、100mm2中で60μm以下である、
    ことを特徴とする高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Ni:1.5%以下およびMo:0.8%以下のうちから選ばれる1種以上を含有する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.05%以下およびV:0.2%以下のうちから選ばれる1種以上を含有する、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材。
JP2010106900A 2010-05-07 2010-05-07 高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材 Active JP5423571B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010106900A JP5423571B2 (ja) 2010-05-07 2010-05-07 高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010106900A JP5423571B2 (ja) 2010-05-07 2010-05-07 高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011236451A true JP2011236451A (ja) 2011-11-24
JP5423571B2 JP5423571B2 (ja) 2014-02-19

Family

ID=45324750

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010106900A Active JP5423571B2 (ja) 2010-05-07 2010-05-07 高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5423571B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107974649A (zh) * 2017-11-22 2018-05-01 安徽恒利增材制造科技有限公司 一种增强硅铝铁基合金及其制备方法
CN112553528A (zh) * 2020-11-27 2021-03-26 中天钢铁集团有限公司 一种含氮高碳磨球用钢及其低成本冶炼工艺

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06299240A (ja) * 1993-04-12 1994-10-25 Nippon Steel Corp 球状化焼鈍特性の優れた軸受用鋼材の製造方法
JPH11140581A (ja) * 1997-11-07 1999-05-25 Kobe Steel Ltd 熱処理歪の少ない高炭素鋼
JP2002275584A (ja) * 2001-03-16 2002-09-25 Sumitomo Metal Ind Ltd 被削性に優れた軸受要素部品用鋼材
JP2009108340A (ja) * 2007-10-26 2009-05-21 Nippon Steel Corp 被削性と焼入れ性に優れた焼入れ鋼材
WO2011055651A1 (ja) * 2009-11-05 2011-05-12 住友金属工業株式会社 熱間圧延棒鋼または線材
JP2011225897A (ja) * 2010-04-15 2011-11-10 Sumitomo Metal Ind Ltd 冷間鍛造用熱間圧延棒鋼または線材

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06299240A (ja) * 1993-04-12 1994-10-25 Nippon Steel Corp 球状化焼鈍特性の優れた軸受用鋼材の製造方法
JPH11140581A (ja) * 1997-11-07 1999-05-25 Kobe Steel Ltd 熱処理歪の少ない高炭素鋼
JP2002275584A (ja) * 2001-03-16 2002-09-25 Sumitomo Metal Ind Ltd 被削性に優れた軸受要素部品用鋼材
JP2009108340A (ja) * 2007-10-26 2009-05-21 Nippon Steel Corp 被削性と焼入れ性に優れた焼入れ鋼材
WO2011055651A1 (ja) * 2009-11-05 2011-05-12 住友金属工業株式会社 熱間圧延棒鋼または線材
JP2011225897A (ja) * 2010-04-15 2011-11-10 Sumitomo Metal Ind Ltd 冷間鍛造用熱間圧延棒鋼または線材

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107974649A (zh) * 2017-11-22 2018-05-01 安徽恒利增材制造科技有限公司 一种增强硅铝铁基合金及其制备方法
CN112553528A (zh) * 2020-11-27 2021-03-26 中天钢铁集团有限公司 一种含氮高碳磨球用钢及其低成本冶炼工艺
CN112553528B (zh) * 2020-11-27 2022-03-01 中天钢铁集团有限公司 一种含氮高碳磨球用钢及其低成本冶炼工艺

Also Published As

Publication number Publication date
JP5423571B2 (ja) 2014-02-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8491732B2 (en) Hot-rolled steel bar or wire rod
JP5397247B2 (ja) 熱間圧延棒鋼または線材
JP4709944B2 (ja) 肌焼鋼、浸炭部品、及び肌焼鋼の製造方法
JP5736936B2 (ja) 熱間圧延棒鋼または線材、および冷間鍛造用鋼線の製造方法
JP5742801B2 (ja) 熱間圧延棒鋼または線材
JP4712838B2 (ja) 耐水素脆化特性および加工性に優れた高強度冷延鋼板
JP2011225897A (ja) 冷間鍛造用熱間圧延棒鋼または線材
WO2013046678A1 (ja) 軸受用造塊材および製造方法
JP5400089B2 (ja) 転動疲労寿命特性に優れた軸受鋼、軸受用造塊材並びにそれらの製造方法
JP6631640B2 (ja) 肌焼鋼、浸炭部品および肌焼鋼の製造方法
JP2002235151A (ja) 高強度ばね用熱処理鋼線
JPWO2015098528A1 (ja) 熱間鍛造用鋼材およびその製造方法ならびにその鋼材を用いた熱間鍛造素形材の製造方法
JP6131890B2 (ja) 耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用低合金高強度継目無鋼管の製造方法ならびにその選定方法
JP5871085B2 (ja) 冷間鍛造性および結晶粒粗大化抑制能に優れた肌焼鋼
JP2013139604A (ja) 熱間圧延棒鋼または線材
JP5799917B2 (ja) 熱間圧延棒鋼または線材
JP5391711B2 (ja) 高炭素パーライト系レールの熱処理方法
JP6766362B2 (ja) 浸炭時の粗大粒防止特性と疲労特性と被削性に優れた肌焼鋼およびその製造方法
JP2010163666A (ja) 浸炭時の粗大粒防止特性と疲労特性に優れた肌焼鋼とその製造方法
JPWO2018061101A1 (ja)
JP2011231375A (ja) 肌焼用熱間加工鋼材
JP5423571B2 (ja) 高周波焼入れ部品用熱間加工高炭素鋼材
JP5601861B2 (ja) ボロン鋼圧延焼鈍鋼板の製造法
WO2010109702A1 (ja) 冷延鋼板
JP6172378B2 (ja) 肌焼鋼鋼線

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120425

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121011

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20121011

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20131021

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131029

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131111

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5423571

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350