JP2011231019A - 接触性皮膚炎抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有効成分としてサラシア属植物、特にサラシア レティキュラータ(S. reticulata)或いはサラシア オブロンガ(S. oblonga)等の葉および幹などの微粉砕物、或いはこれらの溶媒抽出物を含有することを特徴とする接触性皮膚炎抑制剤、及び接触性皮膚炎抑制剤を含有する接触性皮膚炎抑制食品および飲料、さらには皮膚外用剤であり、当該IV型アレルギー抑制剤として作用する特異的なものである。
【選択図】なし
Description
そのうちのI型からIII型のアレルギー反応は、体液性抗体が関与する免疫反応であり、アレルギー反応が速やかに現れるので即時型アレルギーともいわれる。
同じアレルギー反応でも、IV型アレルギー反応はI型からIII型のアレルギー反応とはそのメカニズムが大きく異なっており、IV型アレルギー反応は抗体が関与せず、感作リンパ球が関与する細胞性免疫反応であり、遅延型アレルギーともいわれている。
すなわち、I型アレルギー疾患の発症は、抗原(アレルゲン)の侵入により、該抗原(アレルゲン)に特異的な抗体の産生が開始される段階と、再度の抗原(アレルゲン)の進入によって抗原抗体反応が惹起され、ヒスタミンなどのケミカルメディエーター、並びにIL(インターロイキン)−4、IL−5、IL−6及びIL−13等のTh2型サイトカインが放出され、好酸球浸潤等を誘導して標的組織に炎症を引惹き起こす段階とからなる。
このように、I型アレルギーとIV型アレルギーとではその治療方法や抑制方法が大きく異なっている。
例えば、古来より飲用に供されてきた茶には多くの効能のあることが知られており、I型アレルギーに対する抑制効果としては、紅茶、ウーロン茶抽出物の主成分のI型アレルギーに対する治療薬の例が挙げられている(特許文献1)。更に、ウ−ロン茶の茎の抽出物及びその精製画分であるカテキン類が、I型アレルギー反応の動物モデルであるラットの受身皮膚アナフィラキシー反応(PCA反応)を抑制することが報告されている(非特許文献1)。
このような背景を考えると、天然で、安全な、食経験のある素材でIV型アレルギーに分類される接触性皮膚炎に対して抑制する素材は数の面でも、活性の面でもまだ充分ではない。
かかる課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、サラシア属(Salacia属)の抽出物、特に葉及び/又は幹の抽出物が、IV型アレルギーに分類される接触性皮膚炎に対する抑制効果があるとの新知見を得て、本発明を完成させるに至った。
また、本発明が提供する接触性皮膚炎抑制剤を用いることにより、安全であり且つ簡便な手段によるIV型アレルギーとしての接触性皮膚炎の抑制方法が提供される点で、本発明は極めて特異的なものである。
ところで、デチンムル科(Hippocrateaceae)のサラシア属植物は、スリランカ、インド、タイ、インドネシア、マレーシアなどの熱帯地方に分布し、世界に約120種が知られている。スリランカには、サラシア レティキュラータ(S. reticulata)とサラシア プリノイデス(S. prinoides、syn. S. chinensis)の2種が存在する。インドには10種類のサラシア属植物の存在が知られているが、とくに、サラシア プリノイデス、サラシア マクロスペルマ(S. macrosperma)、サラシア フルチコーサ(S. fruticosa)及び主にインド南西部に生育するサラシア オブロンガ(S. oblonga)に様々な薬効があることで知られている。また、タイには、S. chinensis が広く分布している。
また、サラシア属植物は、通常は根や幹部が薬用とされてきたが、インドの薬物書には葉部の煎じ液も糖尿病の治療に用いられていると記載されている。
事実S. reticulata及びS.oblongaの葉部の水及びアルコール抽出エキスには、血糖値抑制効果及びアルドース還元酵素阻害活性が認められている(非特許文献14)。
花粉症やアレルギー性鼻炎などのI型アレルギーは体液性抗体が関与しており、アレルゲンに対する反応も敏速に現れ、即時性アレルギーと呼ばれている。一方、接触性皮膚炎などのIV型アレルギーは、マクロファージなどの抗原提示細胞を介して抗原情報が伝達された感作T細胞が関与しており、遅延型アレルギーと呼ばれている。
前者の治療法としては、アレルゲンを定期的に投与する減感作療法が取られるのに対して、後者の治療法としては、主にステロイド剤などを皮膚に塗布する方法が取られる。このように、I型アレルギーとIV型アレルギーとでは、その発症メカニズム、効能成分、治療法が大きく異なっており、I型アレルギーに効果があるとしてもIV型アレルギーに効果があるということは全く蓋然性のないことであった。
また、IV型アレルギー抑制剤としてサラシア属植物の葉あるいは幹の部位を細かく微粉砕してそのまま用いることができる。
粉砕粒度は粒子径として1μmから10mm程度でよいが、特に10μmから1mm程度が粉砕に要するエネルギーと摂取しやすさの面から望ましい。また、葉や幹を荒粉砕して、お湯で濾して飲む飲茶形式でもよい。その際に、他の茶葉とブレンドして用いることもできる。さらには、パック剤、シップ剤、乳液などとして皮膚に外用して用いることができる。
さらには、皮膚に適用する外用して用いることもできる。剤型としては、軟膏剤、ジェル剤、ゲル剤、クリーム、パック剤、シップ剤、乳液などの半固形物や、ローション剤、化粧水などの液体、パウダーなどの固形物があげられる。また、石鹸、シャンプーなどの洗剤に混合せしめて用いることもできる。
抽出は、サラシア属植物の試料を1に対して水あるいは熱水、あるいはエタノールなどの抽出溶剤を1〜100の範囲で混合することができるが、5〜20の割合で溶剤を混合することが特に望ましい。保持する際の温度は、10℃〜110℃が好ましいが、50℃〜100℃の範囲がより好ましい。保持時間は、10分以上が好ましいが、30分〜24時間がより好ましい。
サラシア属植物試料は、例えば前記サラシア属植物の葉あるいは幹の切断物、粉砕物、乾燥物、及び乾燥粉砕物でよい。
得られた抽出液の濃縮液、あるいは希釈液、あるいは該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、これらの粗精製物、および精製物などを接触性皮膚炎抑制剤として用いることができる。
前記固形剤としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、コーティング法により腸溶性コーティング剤などが挙げられる。前記固形剤としては、経口固形製剤の製造時に用いられる添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。前記添加剤としては、例えば、カリウム塩、酢酸、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、増量剤、被覆剤、酸味料、pH調整剤、品質改良剤、増粘安定剤、及び保存料などが挙げられる。
そのような他の成分としては、例えば、ポリフェノール、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタン酸)、プロポリス、アガリクス抽出物、クロレラ原末、スピルリナ原末、ビフィズス菌、乳酸菌、アミノ酸、ビタミン類、ミネラル類(亜鉛、カルシウム、マグネシウム等)などが挙げられる。
また、必要に応じて他の成分を配合してなる後述の接触性皮膚炎抑制剤として使用することができる。
本発明の接触性皮膚炎抑制方法は、前記本発明の接触性皮膚炎抑制剤を経口投与することにより、接触性皮膚炎を抑制する方法である。
本発明の接触性皮膚炎抑制剤は、本剤に必要に応じて適宜選択したその他成分を混合した抗炎症剤としても使用することができる。その他の成分としては、抗炎症効果を高める目的で、公知の抗炎症剤を添加してもよい。
本発明の接触性皮膚炎抑制用飲食物は、日常的に経口摂取や皮膚外用することが可能であり、摂取することにより、添加した前記接触性皮膚炎抑制剤の作用により、金属などの種々のアレルゲンによる皮膚炎症等を改善することができる。
[評価試料]
サラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)の幹及び葉の微粉砕物に9倍量の水を加えて50℃/2時間振とう抽出して得た抽出液。
[実験方法]
マウスIV型アレルギー(接触性皮膚炎)モデルとしてオキサゾロン誘発接触過敏症モデルマウスを用いて評価した。
まず、初期感作として、初期感作溶液(オキサゾロン溶液)を腹部塗布した。初期感作から5日後、オキサゾロン溶液を耳介に塗布した(チャレンジ)。耳介塗布後、24時間経過した後の耳介は肥厚しており、その肥厚率を測定したところ75%であり、IV型アレルギーによる接触性皮膚炎のモデルマウスとして有効であることを確認した。このモデルマウスに、チャレンジ1時間前に100、200及び400mg/kg体重の用量で評価試料を投与して、24時間後の耳介の肥厚率を測定した。
なお、データは、平均値±標準偏差で表した。コントロール群の平均値に対する他の群の平均値の差の検定には、パラメトリック法であるステューデントのt−検定を用い、p<0.05を統計学的に有意差ありとした。
その結果を、下記表1に示した。
表1:サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の幹及び葉の抽出液の接触性皮膚炎抑制活性評価
[評価試料]
実施例1と同じ。
[実験方法]
Mouse IL-12+40 ELISAキット(バイオソース社、USA)により常法に従って測定した。
[結果]
その結果を、下記表2に示した。
表2:サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の幹及び葉の抽出液の血清IL−12の低下効果
上記表中の結果から判明するように、サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の幹の水抽出成分の粉末試料を予め経口投与した場合、血清IL−12の濃度は低下の傾向にあるが、葉の水抽出試料400mg/kg投与の場合のみ、有意な低下効果が認められた。
[評価試料]
実施例1と同じ。
[実験方法]
実施例2と同じ。
[結果]
その結果を、下記表3に示した。
表2:サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の幹及び葉の抽出液の耳介IL−12の低下効果
葉の水抽出試料投与の場合には、すべて有意の低下効果が認められた。
[評価試料]
実施例1と同じ。
[実験方法]
Mouse IFN-gamma インスタントELISAキット(ベンダーメドシステム社、USA)により常法に従って測定した。
[結果]
その結果を下記表4に示した。
表4:サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の幹及び葉の抽出液の血清γ−IFNの低下効果
サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の幹及び葉の水抽出試料200mg/kg及び400mg/kgを予め経口投与した場合、血清γ−IFN濃度が有意に低下した。
[評価試料]
実施例1と同じ。
[実験方法]
実施例4と同じ。
[結果]
その結果を下記表5に示した。
表5:サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の幹及び葉の抽出液の血清γ−IFNの低下効果
以下の方法で、外用剤の製造を行った。
サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の葉の微粉砕物に9倍量の水を加えて50℃/2時間振とう抽出した抽出液を調製した。
抽出液を、ロータリーエバポレーター(ヤマト科学株式会社製)を用いて減圧下、50℃で濃縮を行った。得られた濃縮液中の不揮発性分量は約40%であった。
この濃縮液を1%含有するアレルギー性接触性皮膚炎抑制用の皮膚外用剤(外用剤A)を、以下の組成で製造した。
Salacia reticulata葉の抽出濃縮液 1.0%
ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.0%
モノステアリン酸グリセリン 4.0%
パラフィン 2.5%
セタノール 3.0%
スクワラン 4.0%
シリコン油 0.8%
グリセリン 25.0%
1,3−ブチレングリコール 6.0%
メチルパラベン 0.1%
プロピルパラベン 0.05%
精製水 適量
上記で得られた濃縮液を8%含有するアレルギー性接触性皮膚炎抑制用の皮膚外用剤(外用剤B)を、以下の組成で製造した。
Salacia reticulata葉の抽出濃縮液 8.0%
水素添加大豆リン脂質 4.0%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.5%
セタノール 3.0%
メチルポリシロキサン 1.5%
スクワラン 3.0%
グリセリン 10.0%
1,3−ブチレングリコール 12.0%
水酸化ナトリウム 0.02%
カルボキシビニルポリマー 0.08%
ヒドロキシメチルセルロース 0.04%
パラオキシ安息香酸メチル 0.1%
精製水 適量
本発明が提供する接触性皮膚炎抑制剤を用いることにより、安全であり且つ簡便な手段によるIV型アレルギーとしての接触性皮膚炎の抑制方法が提供される点で、本発明の産業上の利用性は多大なものである。
Claims (6)
- サラシア属植物の葉及び/又は幹の微粉砕物を有効成分として含有することを特徴とする接触性皮膚炎抑制剤。
- サラシア属植物の葉及び/又は幹の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする接触性皮膚炎抑制剤。
- サラシア属植物が、サラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア オブロンガ(S. oblonga)、サラシア プリノイデス(S. prinoides)、サラシア チネンシス(S. chinensis)、サラシア マクロスペルマ(S. macrosperma)及びサラシア フルチコーサ(S. fruticosa)から選択される1種又は複数種である請求項又は2に記載の接触性皮膚炎抑制剤。
- 請求項1から3に記載の接触性皮膚炎抑制剤を含有する接触性皮膚炎抑制食品および飲料。
- 請求項1から3に記載の接触性皮膚炎抑制剤を含有する接触性皮膚炎抑制皮膚外用剤。
- 皮膚外用剤が軟膏剤、パック剤、ジェル剤、ゲル剤、クリーム、シップ剤、乳液、ローション剤、化粧水、パウダー、シャンプー、石鹸及び化粧品から選択されるものである請求項5に記載の接触性皮膚炎抑制皮膚外用剤。
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