第1の発明は、流体通路、前記流体通路に連通する弁穴を有する弁本体と、前記弁本体内に配設され開口部を有する弁体と、減速機構を有する電動駆動装置と、制御装置とを備え、前記電動駆動装置により前記弁体を回転させることで、前記開口部と前記弁穴とで形成される貫通部の面積を変化させて流出流量を変化させるとともに、前記流出流量変化開始時は、前記開口部の一端にて前記弁穴を閉塞し始める場合と、前記開口部の他端にて前記弁穴を開口し始める場合とを有することを特徴とする電動弁装置で、減速機構である歯車機構の最も駆動トルクの大きい歯車の使用部分を分散化できるので、耐久性の向上を図ることができる。
第2の発明は、前記流出流量変化の開始時の、前記開口部の一端にて前記弁穴を閉塞し始める場合と、前記開口部の他端にて前記弁穴を開口し始める場合との、回数頻度を略同一としたことを特徴とする電動弁装置で、減速機構である歯車を、異なる位置にて均等に使用することで、歯車の耐久性の向上を図ることができる。
第3の発明は、前記流出流量低下開始前は、前記流出流量が最大になる位置で弁体を待機させることを特徴とする電動弁装置で、電動弁装置が故障しても流体の流出が可能であり、利便性の向上になる。
第4の発明は、熱源部と、シャワー等の給湯端末に給湯する給湯管路とを備え、前記給
湯管路と第1〜3のいずれかの発明の電動弁装置とを接続したことを特徴とする給湯機で、シャワー装置の故障によるメンテナンスを少なくすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における電動弁装置の構成図であり、この構成は、図16の従来の技術の他の電動弁装置と同様の構成となる。なお、図16の従来の技術と同符号の部分は同一構成を有し、説明は省略する。
弁体108は開口部106と非開口部107とから成り、従来の技術で説明したように、電動駆動装置110は弁体駆動軸109を軸として、弁体108を回転させる。このときに形成される弁体108の開口部106と弁穴103とによってできる貫通面積の割合を変化させて、流体通路101から流入する流体の流量を制御し、流体通路102から流出させる。
図2は弁体108と弁体駆動軸109とを示す。同図の上段の図は弁体108の側面の展開図であり、下段の図はFF断面図である。同図では開口部106の一例として略長方形の形を示した。また、開口部106には回転方向に第一の端面118と第二の端面119とを有する構成となっている。
図3は、横軸に弁体駆動軸109を回転軸とする弁体108の回転角度を取り、縦軸に流量を取って、弁体の回転角度に対する流体の流量変化を示したものである。なお、原点とする回転角度は、同図の上の図Aで示される弁体108の位置で、流量が最大になる位置であり、流体通路101に対して開口部106が対照になる位置である。
そして、弁体108を弁体駆動軸109に向かって時計と同じ回転方向(CW)に回転していくと同図の上の図B、C、D、Eと変化し、またもとのAに戻る。同図からわかるように、電動弁装置を流れる流量は、A−B間とE−A間で最大で、C−D間で最小(閉止)となる。そして、B−C間(同図の領域1)とD−E間(同図の領域2)の回転角度領域では、流量が回転角度に対して変化している。
すなわち、弁体108を回転させることで、流量制御が可能な領域が領域1と領域2との2箇所存在する。また、領域1では、弁座104の弁穴103の内側を第一の端面118が通過するに従って、開口部106と弁穴103とでできる貫通面積が変化し、その結果、流量が変化している。領域2では、弁座104の弁穴103の内側を第二の端面119が通過するに従って、開口部106と弁穴103とでできる貫通面積が変化し、その結果、流量が変化している。
このように、開口部の異なる端面(第一の端面118と第二の端面119)を使用して前記貫通面積を制御すれば、従来の技術で示した図17のように1箇所の領域を使用する場合に比べて、最も駆動トルクの大きい歯車(この場合は第六の歯車117)の同じ歯を使用する頻度を1/2にすることが可能である。回転方向を時計の回転とは逆方向(CCW)にすると、A、E、D、C、B、Aと変化する。流量最大、最小、変化する領域は時計方向に回転させた場合と同様である。
図4は、第五の歯車116と第六の歯車117の組み合わせにおける第六の歯車117の歯の使用領域の概略を示したものである。図3の領域1、領域2がそれぞれ図4の領域1、領域2に相当する。なお、図1の場合は3段歯車機構としているので、ステッピング
モータなどの駆動部111の回転方向を、必要とする弁体108の回転方向とは逆方向に回転させればよい。すなわち、弁体を時計と同じ回転方向(CW)に回転させるときは、駆動部111の回転方向を時計の回転とは逆方向(CCW)にし、弁体を時計の回転とは逆方向(CCW)に回転させるときは、駆動部111の回転方向を時計と同じ回転方向(CW)にする。
第六の歯車117の同じ歯を使用する頻度を1/2にするには次のようにすればよい。流量制御の要求がない状態のとき、制御装置94は、弁体108の待機位置を図3で示すAになるように、駆動部111を駆動する。そして、流量制御の要求があれば、制御装置94は、弁体108を時計方向に回転させ、領域1において、第一の端面118の位置を変化させることによって前記貫通面積を変化させ流量制御を行う。
流量制御の要求が終了すると、制御装置94は、弁体108をAの位置に戻し、次の流量制御の要求を待つ。そして、次に流量制御の要求があれば、弁体108を反時計方向に回転させ、領域2において、第二の端面119の位置を変化させることによって前記貫通面積を変化させ流量制御を行う。流量制御の要求が終了すると、弁体108をAの位置に戻し、次の流量制御の要求を待つ。
この動作を繰り返せば、従来の場合に比べ、同じ歯を使用する頻度を1/2にすることが可能である。なお、Aの位置検出については、従来から用いられている磁石とホール素子(図示せず)を使用すれば容易に行うことができる。上記のように、1回の給湯開始から終了まで使用する端面を交互に使用すれば、異なる位置の歯車を確実に均等に使用することができ、歯車の耐久性の向上を図ることができる。
1回の給湯開始から終了までで使用する端面を変えなくても、日が変われば使用する端面を変えるようにしても異なる位置の歯車を均等に使用することができ、歯車の耐久性の向上を図ることができる。このように適当に規則性を持った制御をすれば、異なる位置の歯車を均等に使用することができ、歯車の耐久性の向上を図ることができる。
また、流量制御が終了したら、前記貫通面積が最大になり、万が一、電動弁装置が故障しても、給湯が可能であり、利便性が向上する。図3の上の図Aで示される弁体108の位置で、流量が最大になる位置であり、流体通路101に対して開口部106が対照になる位置であれば、回転方向がCWでもCCWでもどちらの方向にも弁体108をすぐに移動させることができるので、すばやい制御が可能である。
また、図2に示した弁体108では、開口部106として、1つの略長方形を用いたが、長方形である必要はない。流量制御の内容や流路の形状などで最適な形状を設定すればよい。 さらに開口部106は複数あっても良い。1つよりもより使用領域を分散化でき、更なる耐久性向上が図れる可能性がある。
このようにすれば、最も駆動トルクの大きい負荷側の歯車(図1では第六の歯車117)の同一歯の使用頻度を半減することが可能であるため、歯の磨耗を少なくすることができ、また、曲げ応力が歯にかかる頻度も半減するので、歯車の歯が欠けることが少なくなり、耐久性が向上する。また、耐久性を向上させるために、ステッピングモータや歯車機構など電動駆動装置110を新規に開発する必要もない。
(実施の形態2)
図5は、本実施の形態1における電動弁装置を備えた給湯機の構成図である。図5おいて、本実施の形態2の給湯機は、給水管路31から送られてくる水を加熱する熱源部29と流量制御部22と給湯管路40とから構成されている。
前記流量制御部22は、前記給湯管路40に備えられ水の流量を検出する流量検出手段43と水の流量を調整する流量調整手段44と、シャワー利用者の好みの流量や使用上限流量を設定する基準流量設定手段46と、実際に使用する流量を設定する節水流量設定手段47と、流量検出手段43と基準流量設定手段46と節水流量設定手段47とからの信号で流量調整手段44の動作を制御する制御装置23とから構成されている。
また、給湯管路40にはカランなどの給湯端末42やシャワーヘッド45などが配管接続されている。なお、流量調整手段44としては、請求項1記載の電動弁装置により形成される。この電動弁装置はステッピングモータなどのモータで弁体を駆動し水流路断面積を変化させることによって所定の流量に制御することができる。
以上のように構成された給湯機について、以下にその動作、作用を説明する。図5において、シャワーの使用者がシャワーを浴びる前に、基準流量設定手段46でシャワー流量の使用上限流量または、通常シャワーで使用している好みの流量(基準流量)を設定し、さらに、節水流量設定手段47で実際に使用する節水流量を設定する。
このとき、節水流量は前述基準流量より少ない流量に設定するものとする。たとえば、前述の基準流量を最大流量として、節水流量Rsを基準流量Rkに対する給湯比率Y(Y=Rs/Rk[%])で設定するようにすれば良い。そして、シャワーの給湯回路を開くと、制御装置23は流量検出手段43からの信号でそのときの流量を計測する。
さらに、節水流量設定手段47で設定した節水流量になるように、流量調整手段44を調整する。そして、流量が節水流量になると、制御装置23は節水流量を中心として周期的に流量を変化させるために流量調整手段44を制御する。すなわち、流量調整手段44である電動弁装置の弁体を節水流量の位置を中心に開閉を繰り返すように制御する。
図6は、図1の流量調整手段44である電動弁装置を用いた場合の弁体108の上述動作を示したものである。同図は、図3と同様、横軸に弁体駆動軸109を回転軸とする弁体108の回転角度を取り、縦軸に流量を取って、弁体の回転角度に対する流量変化を示したものである。
なお、原点とする回転角度は、図3の上の図Aで示される弁体108の位置で、流量が最大になる位置であり、流体通路101に対して開口部106が対照になる位置である。また、点a、bはそれぞれ節水流量、基準流量になる回転角度の状態を示す。
先ず、給湯がない場合には、制御装置23は、駆動部111を駆動させて、弁体108を図6に示す点o(原点)の位置になるように回転させ、この位置で待機する。そして、シャワー利用者がシャワー給湯を開始すると、制御装置23は流量検出手段43からの信号でそのときの流量を計測する。
そして、流量がほぼ安定したら、制御装置23は、節水流量になる位置を検出するために、流量検出手段43からの信号で流量を計測しながら駆動部111を駆動させて弁体108を同図に示す点aの位置になるようにCW方向に回転させる。そして、この回転位置[a]を記憶する。さらに、基準流量になる位置を検出するために、流量検出手段43からの信号で流量を計測しながら駆動部111を駆動させて弁体108を同図に示す回転位置[b]の位置になるように回転させる。
そして、この回転位置[b]を記憶する。2つの回転位置[a]、[b]から、同図に示す振幅ΔSに相当する弁体108の回転角度を用いて、流量変化の最小流量の回転位置
[c]を求める。すなわち、回転位置[a]から[b]への変化分の2倍の角度を逆方向に回転させる。
制御装置23は、駆動部111を駆動させて、弁体108を回転位置[c]の位置になるように回転させる。その後、所定の周期で前記2倍の角度分をCW,CCW交互に回転方向を変化させて回転させる。この場合は図6に示す領域1に相当するので、図4における第六の歯車117の領域1の部分の歯を使用することになる。
次にシャワー使用者がシャワーを止めるためにシャワー給湯を停止した場合は次のように動作する。制御装置23が流量検出手段43からの信号で計測した流量が所定の流量(例えば流量5L/分)以下になったらシャワーが終了したと判断し、制御装置23は駆動部111を駆動させて弁体108を図6に示す点o(原点)の位置になるように回転させる。そして、次のシャワー給湯があるまで待機する。
そして、シャワー利用者がシャワー給湯を開始すると、制御装置23は流量検出手段43からの信号でそのときの流量を計測する。そして、流量がほぼ安定したら、制御装置23は、節水流量になる位置を検出するために、流量検出手段43からの信号で流量を計測しながら駆動部111を駆動させて弁体108を同図に示す点a’の位置になるようにCCW方向に回転させる。
そして、この回転位置[a’]を記憶する。さらに、基準流量になる位置を検出するために、流量検出手段43からの信号で流量を計測しながら駆動部111を駆動させて弁体108を同図に示す回転位置[b’]になるように回転させる。そして、この回転位置[b’]を記憶する。2つの回転位置[a’]、[b’]から、同図に示す振幅ΔSに相当する弁体108の回転角度を用いて、流量変化の最小流量の回転位置[c’]を求める。
すなわち、回転位置[a’]から[b’]への変化分の2倍の角度を逆方向に回転させるように、制御装置23は、駆動部111を駆動させて、弁体108を回転位置[c’]になるように回転させる。その後、所定の周期で前記2倍の角度分をCW,CCW交互に回転方向を変化させて回転させる。この場合は図6に示す領域2に相当するので、図4における第六の歯車117の領域2の部分の歯を使用することになる。
このように一回のシャワーが終了する度に異なる歯を使用するので、歯の磨耗が少なくなり、曲げ応力が歯にかかる頻度も少なくなるので、歯車の耐久性つまり給湯機の耐久性が向上する。1回のシャワー開始から終了までで使用する端面を変えなくても、日が変われば使用する端面を変えるようにしても異なる位置の歯車を均等に使用することができ、歯車の耐久性の向上を図ることができる。このように適当に規則性を持った制御をすれば、異なる位置の歯車を均等に使用することができ、歯車の耐久性の向上を図ることができる。
また、流量制御が終了したら、前記貫通面積が最大になり、万が一、電動弁装置が故障しても、給湯が可能であり、利便性が向上する。図3の上の図Aで示される弁体108の位置で、流量が最大になる位置であり、流体通路101に対して開口部106が対照になる位置であれば、回転方向がCWでもCCWでもどちらの方向にも弁体108をすぐに移動させることができるので、すばやい制御が可能である。
なお、基準流量設定手段46としては、流量入力部(図示せず)とこの流量入力部で設定された値を表示する表示部(図示せず)を備えたものがある。このときシャワー利用者は基準流量を、表示部に表示される数値を見ながら、前記流量入力部(例えば、テンキー入力や増加減できるキー)を操作して設定する。あるいは、周囲に数値(流量)表示があ
るダイヤルまたはスライド入力部(図示せず)を用いて基準流量を設定してもよい。
さらに、節水流量設定手段47としても上記で説明した入力部(図示せず)と表示部(図示せず)とを備えたものでもよいし、ダイヤルまたはスライド入力部を備えたものでも良い。このとき節水流量設定手段47で設定する対象としては、実際にシャワーで使用する節水流量(変化する流量の平均流量)であっても良いし、前述したように基準流量に対する比率(給湯比率)であっても良いし、基準流量より減少させたい流量の基準流量に対する比率(節水率)であっても良い。
また、基準流量設定手段46で設定する基準流量と節水流量設定手段47で設定する節水流量とは、シャワーを使用するたびに設置する必要はなく、最初に一度設定をし、その後、必要に応じて再設定すればよい。また、シャワー流量の好みは、人によって大きく異なる可能性がある。家族など使用する人が複数の場合は、例えば、基準流量設定手段46で設定する基準流量を、複数の人の中で好み流量が最大の人の流量に合わすようにすれば、家族全員がシャワーの使用感を落とさずに使用することができる。
図7は横軸に経過時間をとり、縦軸にそのときのシャワー流量をとって、時間に対するシャワー流量の変化を示したものである。同図で、経過時間T1でシャワー給湯が開始され、経過時間T2で節水流量(同図のRs)になったことが確定し、経過時間T3で基準流量(同図のRk)が確定し、その後、シャワー流量を周期Tsで変化させている。
この時の周波数(Fs=1/Ts)は後述するように約1〜3Hzである。また、基準流量をRk、給湯比率をYとした場合、振幅を、Rk×(100−Y)/100とすれば、流量変化の最大値が基準流量と同等になるので、使用者のシャワー感を損なうことが少ない。
図8はシャワー流量を変化させた場合のシャワーヘッド45からの湯の出方を示したものである。同図の左図はシャワーヘッド1を穴が見える側から見た図である。湯が出る穴(たとえば45a、45bなど)が開けられている。同図の右図はシャワーヘッドから出た湯が体などに当たるまでの軌跡の一部と当たる場所を示したものである。
前述したように、流量調整手段44である電動弁装置の弁体を節水流量の位置を中心に開閉を繰り返すとそれに対応してシャワーヘッド45の内部の圧力が変化する。すなわち、前記弁体を流路面積が小さくなる方向に移動すると、シャワーヘッド45の内部の圧力は低下する。逆に、前記弁体を流路面積が大きくなる方向に移動すると、シャワーヘッド45の内部の圧力は増加する。
ただし、前記弁体と圧力の変化とは時間遅れがある。この圧力変動に応じてシャワーヘッドから出た湯の軌跡も変化する。図8の点線は、シャワーヘッド45の穴45aからで出た湯の軌跡を示したものであり、中央の点線を中心に上下の点線で示される範囲で変化する。
そして、体に当たる部分は、同図のAで示す略長方形になる。同様に、穴5bから出た湯の体に当たる部分は同図のBで示す略長方形になる。その他の穴から出た湯についても同様になる。結局、流量を変化させずに一定の軌跡を描く場合に比べて、シャワーヘッドから出た湯が体に当たる面積が増加することになる。
このように、シャワー流量を変化させると、体に当たる面積が大きくので、通常使用している一定流のシャワーの場合と比較して、シャワー感をほぼ同等に維持し、さらに石鹸やシャンプーのすすぎ落としの性能も維持して、節水の効果が得られる。さらに、使用湯
量が少なくなる分、沸き上げる湯量が減少するので省エネルギーの効果もある。
なお、経過時間に対するシャワー流量の変化を説明した図7では、流量の変化の最大値と基準流量とをほぼ同等の流量にしていたが、流量の変化の最大値を基準流量よりも大きくしても良い。この場合、最大流量付近のときにシャワーの強さが大きく感じられ、シャワー感も維持されるので、快適性が維持される。
図5ではシャワー利用者が基準流量設定手段46によって基準流量を設定する構成としていたが、以下に述べるようにシャワー使用者自身が設定せずに自動的に設定することもできる。図9において、図5と異なる点は、基準流量設定手段46は流量検出手段43からの信号で流量を検出し、それを基に基準流量を決定する。また、給湯機にリモコン9を設け、このリモコンの機能の一つとして、節水流量設定手段47の機能を具備する構成としていることである。
以上のように構成された給湯機について、以下にその動作、作用を説明する。図9において、シャワーの使用者がシャワーを浴びる前に、節水流量設定手段47の機能を具備するリモコン9を操作して節水流量を設定する。節水流量としては直接流量を設定してもよいが、後述する基準流量に対して減少させる率(節水率)を設定しても良い。ここでは節水率を設定するものとする。
シャワーの使用者がリモコン9を操作して節水率を設定すると、制御装置23は、流量調整手段44である電動弁装置の弁体を所定の位置に移動させる。所定の位置とは、後述するように、節水流量を中心に弁体を移動(回転)するために必要な回転代を設けるためであり、例えば、前記電動弁装置の弁体が全開のときの流量に対して約80〜90%程度になる位置に設定する。
そして、シャワーの給湯回路を開くと、制御装置23は流量検出手段43が検出した信号を用いてそのときの流量を計測する。そして、流量検出手段43の検出した流量が安定してから所定の時間ΔTが経過した時点の流量を基準流量として決定する。この基準流量はすなわちシャワー使用者の好みの流量である。
制御装置23は、この決定された基準流量と先に設定された節水率とから節水流量を求める。節水率をZ、基準流量をRkとすると、節水流量Rsは、Rs=Rk×(1−Z/100)のようになる。
そして、制御装置23は、節水流量Rsを中心として周期的に流量を変化させるために流量調整手段44を制御する。すなわち、流量調整手段44である電動弁装置の弁体を節水流量の位置を中心に開閉を繰り返すように制御する。
図10は、図1の流量調整手段44である電動弁装置を用いた場合の弁体108の上記動作を示したものである。同図は、図3と同様、横軸に弁体駆動軸109を回転軸とする弁体108の回転角度を取り、縦軸に流量を取って、弁体の回転角度に対する流量変化を示したものである。
なお、原点とする回転角度は、図3の上の図Aで示される弁体108の位置で、流量が最大になる位置であり、流体通路101に対して開口部106が対照になる位置である。また、点a、bはそれぞれ基準流量、節水流量になる回転角度の状態を示す。
先ず、給湯がない場合には、制御装置23は、駆動部111を駆動させて、弁体108を図10に示す点o(原点)の位置になるように回転させ、この位置で待機する。そして
、シャワー使用者がリモコン9に設けた節水流量設定手段47で節水率を設定すると、制御装置23は、駆動部111を駆動させて、弁体108を図10に示す回転位置[a]の位置になるように回転させ、この位置で待機する。
その後、シャワー利用者がシャワー給湯を開始すると、制御装置23は流量検出手段43からの信号でそのときの流量を計測する。そして、流量がほぼ安定したらシャワー流量を確定し、この確定流量を基準流量(Rk)とする。さらに、この基準流量とリモコン9で設定した節水率(Z%)から節水流量Rsを算出する。
そして、制御装置23は、節水流量になる位置を決定するために、流量検出手段43からの信号で流量を計測しながら駆動部111を駆動させて弁体108を同図に示す点bの位置になるようにCW方向に回転させる。そして、この回転位置[b]を記憶する。2つの回転位置[a]、[b]から、同図に示す振幅ΔSに相当する弁体108の回転角度を用いて、流量変化させた時の最小流量の回転位置[c]を求める。
すなわち制御装置23は、駆動部111を駆動させて、回転位置[a]から[b]への変化分の角度を同じCW方向に回転させ、弁体108を回転位置[c]になるようにする。その後、所定の周期で、回転位置[a]から[b]への変化分の2倍の角度分をCCW,CW交互に回転方向を変化させて回転させる。この場合は図10に示す領域1に相当するので、図4における第六の歯車117の領域1の部分の歯を使用することになる。
次にシャワー使用者がシャワーを止めるためにシャワー給湯を停止した場合は次のように動作する。制御装置23が流量検出手段43からの信号で計測した流量が所定の流量(例えば流量5L/分)以下になったらシャワーが終了したと判断し、制御装置23は駆動部111によって弁体108をCCW方向に回転させ、点oを通り越して点a’の位置になるように回転させる。このときの回転位置は[a’]である。
そして、次のシャワー給湯があるまで待機する。そして、シャワー利用者がシャワー給湯を開始すると、制御装置23は流量検出手段43からの信号でそのときの流量を計測する。そして、流量がほぼ安定したらシャワー流量を確定し、この確定流量を基準流量(Rk)とする。さらに、この基準流量とリモコン9で設定した節水率(Z%)から節水流量Rsを算出する。
そして、制御装置23は、節水流量になる位置を検出するために、流量検出手段43からの信号で流量を計測しながら駆動部111を駆動させて弁体108を同図に示す点b’の位置になるようにCCW方向に回転させる。そして、この回転位置[b’]を記憶する。2つの回転位置[a’]、[b’]から、同図に示す振幅ΔSに相当する弁体108の回転角度を用いて、流量変化させた時の最小流量の回転位置[c’]を求める。
すなわち、制御装置23は、駆動部111を駆動させて、回転位置[a’]から[b’]への変化分の角度を同じCCW方向に回転させ、弁体108を回転位置[c’]になるようにする。その後、所定の周期で、回転位置[a’]から[b’]への変化分の2倍の角度分をCW,CCW交互に回転方向を変化させて回転させる。この場合は図10に示す領域2に相当するので、図4における第六の歯車117の領域2の部分の歯を使用することになる。
次にシャワー使用者がシャワーを止めるためにシャワー給湯を停止した場合は次のように動作する。制御装置23が流量検出手段43からの信号で計測した流量が所定の流量(例えば流量5L/分)以下になったらシャワーが終了したと判断し、制御装置23は駆動部111によって弁体108をCW方向に回転させ、点oを通り越して点aの位置になる
ように回転させる。そして、次のシャワー給湯があるまで待機する。
このように一回のシャワー毎に異なる歯を使用するので、歯の磨耗が少なくなり、曲げ応力が歯にかかる頻度も少なくなるので、歯車の耐久性が向上する。
図11は横軸に経過時間をとり、縦軸にそのときのシャワー流量をとって、経過時間に対するシャワー流量の変化を示したものである。経過時間T1でシャワー給湯が開始され、経過時間T2以降でほぼ流量が一定になる。
このほぼ一定流量になってから所定の時間ΔT経過後の経過時間T3の流量を基準流量とする。この基準流量と前述の節水流量の値を用いて、制御装置23は、シャワー流量を周期Tsで変化させる。この変化の周波数(=1/Ts)は後述するように約1〜3Hzであり、基準流量をRk、節水率をZとした場合、振幅は、Rk×Z/100となる。
このようにすれば、流量変化の最大値は基準流量とほぼ同等になるので、使用者のシャワー感を損なうことが少ない。さらに、シャワーを使用する度に、そのシャワー使用者の通常使用する流量(基準流量)を測定してから、節水流量を中心に流量を変化させるので、家族など異なる複数の人が使用しても、または、同じ人でもその時の気分で使用したい流量が変わっても、それに応じた節水流量を設定するので、快適性向上になる。
上記説明では、所定の時間として、流量がほぼ一定流量になってからの時間ΔTを所定の時間としたが、次のようにしても良い。シャワー給湯が開始されて、シャワーが出されたことを確定できる確定流量Rxになってからの時間ΔTxを所定の時間としても良い。
リモコンの機能の一つとして、節水流量設定手段47の機能を具備する構成としているが、具体的には、図1での説明と同様、節水率入力部(図示せず)とこの節水率入力部で設定された値を表示する表示部(図示せず)とを備えた構成がある。このときシャワー利用者は節水率を、表示部に表示される数値を見ながら、前記節水率入力部(例えば、テンキー入力や増加減できるキー)を操作して設定する。
あるいは、周囲に数値(節水率)表示があるダイヤルまたはスライド入力部(図示せず)を用いて節水率を設定してもよい。さらに、具体的に節水率を設定しなくても、予め設定された2つ以上の節水率の中から選択する構成にしても良い。例えば、節水率20%を「大」、節水率10%を「中」、節水率5%を「小」、節水なしを「切」として、前記リモコン9にスイッチを設ける構成である。このために4個のスイッチを設けても良いし、一つのスイッチで押すたびに上記設定内容が変わるようにしても良い。
このように、予め設定された複数の節水率の中から節水率を選択する方法は、簡単に好みの節水率を選べるので、利便性が向上する。また、「大」、「中」、「小」、「切」のどれを選択しているかがわかるように、リモコン9に表示部を設け、その選択状態を表示するとさらに利便性が向上する。
なお、LEDなどの点灯する数で選択状態を表示しても良い。さらに、リモコン9に表示部を設け、メニュー画面の中で選択できるようにしても良い。また、上記では「大」、「中」、「小」、「切」の4段階の選択であったが、これよりも多くても良いし、少なくても良い。
さらに、前記予め設定された2つ以上の節水率はシャワー装置21で固定の値であっても良いし、リモコンを操作してシャワー使用者が自分自身に応じた節水率を変更できる構成としても良い。このようにすれば、よりシャワー使用者の好みのシャワー感が得られ、
快適性の向上になる。
上述のように、節水流量を中心に流量を変化させるが、節水率の異なる条件の場合、次のように流量変化の仕様を決定する。図12は、横軸に流量変化の振幅を取り、縦軸に流量変化の周波数を取って、そのときのシャワー感をあらわしたものである。
例えば、振幅を同じにして周波数を大きくすると、シャワー感としては強く感じる。また、周波数を同じにして振幅を大きくすると、強弱の変化を感じるようになる。特にこの強弱の変化に対しての感じ方は、人によってばらつきが大きい。だから、あまり振幅を大きくしすぎると不快に感じる人の割合が大きくなってしまう。同図に点Aで示す節水率の大きい場合を基準に節水率の小さい場合の振幅と周波数とは次のように決定する。節水流量を中心に流量を変化させる場合、シャワー感を基準流量(好みの流量)と同等にするために、流量変化の最大値を基準流量と同等に設定する。
また、節水率は基準流量と節水流量との差に比例するため、節水率を小さくするためには、節水流量を大きくすることになるので、結果として流量変化の振幅は小さくなる。しかし、単に振幅を小さくしただけでは、節水率の大きい場合よりも節水流量が大きいので当然シャワー感は強くなる。図6に示すように強く感じる分だけ周波数を小さくして点Bの状態にすれば、節水率を小さくしても節水率が大きい場合と同等のシャワー感を得ることができる。
図13は、基準流量を固定して、振幅と周期(周波数の逆数)をパラメータとしてシャワー感を評価するために行った感応評価の結果である。振幅条件としては、0.5、1.0、1.5、2.0L/分の4通り、周期条件としては、0.4〜1.1秒まで0.1秒間隔で8通りである。主観評価として、「不快」、「やや不快」、「普通」、「やや快適」、「快適」で答えてもらい、それを点数に置き換えたものであり、3点が普通(基準流量と同等)であり、大きい点数ほど快適性が良いことを示している。
同図からわかるように、振幅が0.5L/分のとき、周期が1秒前後で大きな点数となっている。また、振幅が1.0L/分のとき、周期が0.5秒前後で大きな点数になっている。これを周波数に換算すると、約1〜3Hzとなる。シャワーのように流量が10L/分程度の場合、流量の変化周波数は約1〜3Hz程度が快適な周波数となる。
図14は節水率の大きい場合と小さい場合の経過時間に対する流量の変化を比較したものである。下の図が節水率の大きい場合、上の図が節水率の小さい場合である。例えば、基準流量10L/分で、節水率が10%と5%の場合、振幅はそれぞれ1L/分、0.5L/分で、周波数はそれぞれ2Hz(同図中Fa)、1Hz(同図中Fb)程度である。