JP2011225736A - ポリオレフィン微多孔膜、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】安全性と高出力特性とを両立したリチウムイオン二次電池を実現し得る、ポリオレフィン微多孔膜を提供する。
【解決手段】膜厚方向に連通孔を有し、膜厚21μm以上、気孔率42%以上のポリオレフィン微多孔膜であって、120℃での幅方向の熱収縮率が4%以下、ポリオレフィン全体に対するポリプロピレンの含有率が5〜20質量%であるポリオレフィン微多孔膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン微多孔膜、及びリチウムイオン二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ、非水系リチウム蓄電素子などと呼ばれるものも含む)の開発が活発に行われている。蓄電デバイスには通常、微多孔膜(セパレータ)が正負極間に設けられている。このようなセパレータは、正負極間の接触を防ぎ、イオンを透過させる機能を有する。
ここで、セパレータには、蓄電デバイスの良好な安全性確保の観点から、一定以上の物理的強度を備えることが求められる。そして、このような事情のもと、特許文献1、2において、高密度ポリエチレンと高分子量ポリプロピレンの混合物からなる微多孔膜が提案されている。
特開2002−194132号公報 特開2002−105235号公報
一方、セパレータには、蓄電デバイスの高出力特性を達成することが求められる場合がある。例えば、車載用途のリチウムイオン二次電池においては、高い安全性を確保する観点から比較的膜厚みの大きい(20μmを超えるような膜厚み)ポリオレフィン微多孔膜が用いられる。しかし、高出力特性を達成する観点から、なお改善の余地があった。
本発明は、安全性(高温保存試験、及び釘刺し試験にて評価)と高出力特性(ハイレート特性で評価)とを両立したリチウムイオン二次電池を実現し得る、ポリオレフィン微多孔膜を提供することを目的とする。
本発明者らは上述の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の膜組成及び膜物性を有するポリオレフィン製微多孔膜が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
膜厚方向に連通孔を有し、膜厚21μm以上、気孔率42%以上のポリオレフィン微多孔膜であって、120℃での幅方向の熱収縮率が4%以下、ポリオレフィン全体に対するポリプロピレンの含有率が5〜20質量%であるポリオレフィン微多孔膜。
[2]
透気度が12sec/100cc/μm以下である[1]に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[3]
粘度平均分子量が35万以下である[1]又は[2]に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[4]
105℃での幅方向の熱収縮率が0.5%以下である[1]〜[3]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜と、正極と、負極と、電解液とを用いて形成されたリチウムイオン二次電池。
本発明によれば、安全性(高温保存試験、及び釘刺し試験にて評価)と高出力特性(ハイレート特性で評価)とを両立したリチウムイオン二次電池を実現し得る、ポリオレフィン微多孔膜が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜は、膜厚方向に連通孔を有し、膜厚21μm以上、気孔率42%以上のポリオレフィン微多孔膜であって、120℃での幅方向の熱収縮率が4%以下、ポリオレフィン全体に対するポリプロピレンの含有率が5〜20質量%であることを特徴とする。
なお、本実施の形態において、ポリオレフィン微多孔膜の長さ方向(製膜時の樹脂吐出方向)を以下、「MD」と略記することがある。また、MDと直交する方向を幅方向と呼び、以下、「TD」と略記することがある。
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜は、上記のような構成上の特徴を有することにより、ハイレート特性に優れ、高温保存試験において高い容量維持率を保ち、更には釘刺し試験において高安全性を有するリチウムイオン二次電池を実現し得る。その理由は詳らかではないが、120℃でTD熱収縮が一定値以下であることで、高温環境下での変形が規制され、外部短絡が発生した際、セパレータの孔の広がりを抑制し、発熱の速度を遅らせることで釘刺し試験時の安全性が高まったものと推定される。加えて、熱収縮を抑制した状態で高気孔率を有することで、大電流を流した場合でも孔収縮を抑制し、セルの内部抵抗による電圧ドロップを抑制し、高出力を維持するものと考えられる。更には、適度なプロピレン含有量を規定することで、透過性を損なうことなく、高温時の自己放電を抑制し、高い容量維持率を有するものと考えられる。
そして、前記ポリオレフィン微多孔膜は上述のような特徴を有するため、高出力密度リチウムイオン二次電池用のセパレータとして特に好適である。
なお、出力密度は、SOC(State Of Charge)50%での電池電圧と放電電流との関係を示す線図において、電池の放電終止電圧(3.0V)と電流電圧特性の直線を放電終止電圧まで外挿したときの電流値(I)及び電池質量(Wt)より、次式によって求められる。
出力密度(P)=(V×I)/Wt
また、「高出力密度」とは、1000W/kg以上の出力密度であることを意味する。
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜(以下、単に「微多孔膜」と略記することがある)は、膜厚方向に連通孔を有し、例えば三次元網状骨格構造を有する。また、前記微多孔膜の膜厚は、21μm以上であり、好ましくは23μm以上である。上限としては特に限定されるものではないが、透過性の観点より200μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下である。膜厚を上記範囲に設定することは、発熱量が比較的高い高出力密度電池への適用、或いは、大型の電池捲回機での捲回性の観点からも好ましい。
前記微多孔膜の120℃でのTD熱収縮率は4%以下であり、好ましくは2.5%以下である。下限としては、好ましくは−0.5%以上であり、より好ましくは−0.1%以上である。
また、前記微多孔膜の105℃でのTD熱収縮率は、1%以下が好ましく、さらには0.5%以下であることが好ましい。下限としては、好ましくは−0.5%以上であり、より好ましくは−0.1%以上である。

更に、MD熱収縮率は、電池作製時の巻き締りによるシワ発生防止の観点から、100℃で10%以下であることが望ましい。下限としては、好ましくは−0.5%以上であり、より好ましくは−0.1%以上である。
前記微多孔膜の気孔率は、42%以上である。また、90%以下が好ましく、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。気孔率を42%以上とすることは、ハイレート時のリチウムイオンの急速な移動に追従する観点からも好ましい。一方、90%以下とすることは、膜強度向上及び自己放電抑制の観点からも好ましい。
また、前記微多孔膜の透気度は、膜厚、気孔率とのバランスから0.1sec/100cc/μm以上が好ましく、1sec/100cc/μm以上がより好ましく、3sec/100cc/μm以上が更に好ましい。また、透過性の観点から20sec/100cc/μm以下が好ましく、12sec/100cc/μm以下がより好ましい。
前記微多孔膜の突刺強度(絶対強度)は、3N以上であることが好ましく、4N以上がより好ましい。突刺強度を3N以上とすることは、電池セパレータとして使用する場合において、電極材等の鋭利部が微多孔膜に突き刺さった場合にも、ピンホールや亀裂の発生を低減し得る観点から好ましい。上限として特に制限はないが、10N以下であることが好ましい。
また、前記微多孔膜の耐電圧は蓄電デバイスの安全性確保の観点から0.5kV以上であることが好ましく、より好ましくは1kV以上、さらに好ましくは1.2kV以上である。透過性の観点より10kV以下であることが好ましく、より好ましくは5kV以下である。
なお、上記のような各種特性を備える微多孔膜を形成する手段としては、例えば、押出時のポリマー濃度や延伸倍率、抽出後の延伸および緩和操作を最適化する方法が挙げられる。
また、前記微多孔膜の態様としては、単層体の態様であっても積層体の態様であっても構わない。
次に、前記微多孔膜の製造方法について説明するが、得られる微多孔膜が本実施の形態の要件を満たしていれば、ポリマー種、溶媒種、押出方法、延伸方法、抽出方法、開孔方法、熱固定・熱処理方法などにおいて、何ら限定されることはない。
前記微多孔膜の製造方法としては、ポリマー材料と可塑剤、或いはポリマー材料と可塑剤と無機材とを溶融混練し押出す工程と、延伸工程と、可塑剤(及び必要に応じて無機材)抽出工程と、更には熱固定工程とを含むことが、透過性と熱収縮の物性バランスを適度にコントロールする観点から好ましい。
より具体的には、例えば、下記(1)〜(4)の各工程を含む製造方法を用いることができる。
(1)ポリオレフィンと、可塑剤と、必要に応じて無機材とを含むポリオレフィン組成物を混練して、混練物を形成する混練工程。
(2)混練工程の後に混練物を押出し、シート状(単層、積層であることは問わない)に成型して冷却固化させるシート成形工程。
(3)シート成形工程の後、必要に応じて可塑剤や無機材を抽出し、更にシートを一軸以上の方向へ延伸する延伸工程。
(4)延伸工程の後、必要に応じて可塑剤や無機材を抽出し、更に熱処理を行う後加工工程。
前記(1)の工程において用いられるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレンのホモ重合体、またはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及びノルボルネンよりなる群から選ばれる少なくとも2つ以上のモノマーにて形成される共重合体、が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることが可能である。混合物を用いると、ヒューズ温度やショート温度のコントロールが容易となるため好ましい。なお、以下、ポリエチレンを「PE」、ポリプロピレンを「PP」と略記することがある。
前記ポリオレフィンとしては、孔の閉塞を抑制しつつ、より高温で熱固定が行えるという点から、高密度ポリエチレン用いることが好ましい。
このような高密度ポリエチレンが前記ポリオレフィン中に占める割合としては、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、上限として好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
また、前記ポリオレフィンとしては、シャットダウン特性を向上させ、又は釘刺し試験の安全性を向上させる観点から、粘度平均分子量(Mv)10万〜30万の低分子量ポリエチレンを用いることが好ましい。
このような低分子量ポリエチレンが前記ポリオレフィン中に占める割合としては、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、上限として好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
更に、前記ポリオレフィンとしては、ポリプロピレンが必須成分として用いられる。
ポリプロピレンが前記ポリオレフィン中に占める割合としては、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上である。一方、上限として好ましくは20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下である。
前記ポリオレフィンの全体の粘度平均分子量としては、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上であり、上限として好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下である。Mvを10万以上とすることは、溶融時の耐破膜性を発現させる観点から好ましい。一方、50万以下とすることは、押出工程を容易とする観点から好適である。
前記可塑剤としては、ポリオレフィンと混合した際にポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒であることが好ましい。また、常温において液体であることが好ましい。
前記可塑剤としては、例えば、流動パラフィンやパラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジエチルヘキシルやフタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコールやステアリルアルコール等の高級アルコール類;等が挙げられる。
特にポリオレフィン樹脂としてポリエチレンが含まれる場合、可塑剤として流動パラフィンを用いることは、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との界面剥離を抑制し、均一な延伸を実施する観点、又は高突刺強度を実現する観点から好ましい。また、フタル酸ジエチルヘキシルを用いることは、混練物を溶融押出しする際の負荷を上昇させ、後述する無機材の分散性を向上させる(品位の良い膜を実現する)観点から好ましい。
前記可塑剤が、前記ポリオレフィン組成物中に占める割合としては、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、上限としては、好ましくは80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。当該可塑剤の割合を80質量%以下とすることは、溶融成形時のメルトテンションを高く維持し、成形性を確保する観点から好ましい。一方、当該可塑剤の割合を30質量%以上とすることは、成形性を確保する観点、及び、ポリオレフィンの結晶領域におけるラメラ晶を効率よく引き伸ばす観点から好ましい。ここで、ラメラ晶が効率よく引き伸ばされることは、ポリオレフィン鎖の切断が生じずにポリオレフィン鎖が効率よく引き伸ばされることを意味し、均一かつ微細な孔構造の形成や、ポリオレフィン微多孔膜の強度及び結晶化度の向上に寄与し得る。
前記ポリオレフィン組成物は、必要に応じて、無機材を含んでもよいが、シャットダウン性能を付与する観点から、前記ポリオレフィン組成物中に占める割合としては、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
このような無機材としては、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。中でも、電気化学的安定性の観点から、シリカ、アルミナ、チタニウムがより好ましく、シリカが特に好ましい。
前記ポリオレフィン組成物には、さらに、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料などの、公知の添加剤を混合して用いることも可能である。
前記ポリオレフィン組成物を混練する方法としては、例えば、以下の(a),(b)の方法が挙げられる。
(a)ポリオレフィンと無機材とを押出機、ニーダー等の樹脂混練装置に投入し、加熱溶融混練させながら更に可塑剤を導入し混練する方法。
(b)予めポリオレフィンと無機材と可塑剤とを、ヘンシェルミキサー等を用い所定の割合で事前混練する工程を経て、該混練物を押出機に投入し、加熱溶融させながら更に可塑剤を導入し混練する方法。
なお、混練時においては、窒素雰囲気を維持した状態で溶融混練を行うことが好ましい。また、溶融混練時の温度は、160℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。また300℃未満が好ましく、240℃未満がより好ましい。
前記(2)の工程は、例えば、前記混練物を、Tダイ等を介してシート状に押し出し、熱伝導体に接触させて冷却固化させる工程である。当該熱伝導体としては、金属、水、空気、あるいは可塑剤自身等が使用できる。また、冷却固化をロール間で挟み込むことにより行なうことは、シート状成形体の膜強度を増加させる観点や、シート状成形体の表面平滑性を向上させる観点から好ましい。
シートの延伸方法としては、ロール延伸機によるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターやインフレーション成形による同時二軸延伸などが挙げられる。より均一な膜を得るという観点からは、同時二軸延伸であることが好ましい。トータルの面倍率は膜厚の均一性および引張伸度、気孔率と平均孔径のバランスの観点より、8倍以上が好ましく、15倍以上がさらに好ましく、30倍以上が特に好ましい。30倍以上であると、高強度ものが得られやすくなる。延伸温度は高透過性と高温低収縮性を付与する観点から、121℃以上が好ましく、膜強度の観点からは、135℃以下であることが好ましい。
抽出は、抽出溶媒に浸漬、あるいはシャワーする方法等により行なうことができる。抽出溶媒としては、ポリオレフィンに対して貧溶媒であり、且つ可塑剤や無機材に対しては良溶媒であり、沸点がポリオレフィンの融点よりも低いものが望ましい。このような抽出溶媒としては、例えば、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレンや1,1,1−トリクロロエタン、フルオロカーボン系等ハロゲン化炭化水素類、エタノールやイソプロパノール等のアルコール類、アセトンや2−ブタノン等のケトン類、アルカリ水、が挙げられる。この中から選択し、単独若しくは混合して使用する。
なお、無機材は全工程内のいずれかで全量あるいは一部を抽出してもよいし、製品中に残存させてもよい。また、抽出の順序、方法及び回数については特に制限はない。
熱処理の方法としては、テンターやロール延伸機を利用して、延伸および緩和操作などを行う熱固定方法が挙げられる。緩和操作とは、膜のMD及び/或いはTDへ、ある緩和率で行う縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜のMD寸法を操作前の膜のMD寸法で除した値、或いは緩和操作後のTD寸法を操作前の膜のTD寸法で除した値、或いはMD、TD双方を緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率を乗じた値のことである。所定の温度として、120℃での熱収縮抑制の観点より125℃以上が好ましく、127℃以上がより好ましい。一方、気孔率及び透過性の観点からは、133℃未満が好ましい。さらに、熱収縮率と透過性の観点より、熱処理工程にて1.3倍以上に延伸することが好ましく、1.4倍以上がさらに好ましい。熱収縮抑制の観点から、所定の緩和率としては、0.9以下が好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。また、しわ発生防止と気孔率及び透過性の観点より0.6以上であることが好ましい。緩和操作は、MD、TD両方向で行っても良いが、MD或いはTD片方だけの緩和操作でも、操作方向だけでなく操作と垂直方向についても、熱収縮率を低減することが可能である。
なお、前記微多孔膜の製造方法としては、(1)〜(4)の各工程に加え、積層体を得るための工程として、単層体を複数枚重ね合わせる工程を採用することができる。また、電子線照射、プラズマ照射、界面活性剤塗布、化学的改質などの表面処理工程を採用することも出来る。
また、上記熱固定後のマスターロールを所定の温度下で処理し(マスターロールのエージング操作)、その後マスターロールの巻き返し作業を行うこともできる。この工程により、マスターロール内のポリオレフィンの残存応力が開放される。マスターロールを熱処理する好ましい温度は35℃以上が好ましく、45℃以上が更に好ましく、60℃以上が特に好ましい。透過性保持の観点から120℃以下が好ましい。熱処理時間は限定されないが、24時間以上であると効果が発現しやすいため好ましい。
このようにして得られた前記微多孔膜において、ポリプロピレンが前記ポリオレフィン中に占める割合としては、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上である。一方、上限として好ましくは20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下である。
なお、ポリプロピレンがポリオレフィン中に占める割合については、原料中の割合と、得られる微多孔膜中の割合とで実質的に変わらない。
また、微多孔膜の粘度平均分子量としては、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上であり、上限として好ましくは40万以下、より好ましくは35万以下である。Mvを10万以上とすることは、溶融時の耐破膜性を発現させる観点から好ましい。一方、40万以下とすることは、収縮応力を低減させ、高温時の収縮を抑制する点から好適である。ここで、所望の微多孔膜のMvは、押出温度やスクリュー回転数等によって調整することができる。例えば、スクリュー回転数を上げることによって、原料のMvを下げることができる。
上述した微多孔膜からなるセパレータは、リチウムイオン二次電池の中でも特に、バイク、スクーター、自動車といった高出力密度特性と高安全性が必要なアプリケーションに好適であり、従来以上の電池特性を付与させることが可能となる。
なお、上述したパラメータの各測定値については特に断りの無い限り、下記実施例における測定方法に準じて測定される。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
(1)粘度平均分子量(Mv)
デカヒドロナフタリンへ試料の劣化防止のため2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.1w%の濃度となるように溶解させ、これ(以下DHNと略す)を試料溶媒として用いる。試料をDHNへ0.1w%の濃度となるように150℃で溶解させる。作成した試料溶液を10ml採取し、キャノンフェンスケ粘度計(SO100)により135℃での標線間通過秒数(t)を計測する。また、DHNを150℃に加熱した後、10ml採取し、同様の方法により粘度計の標線間を通過する秒数(t)を計測する。得られた通過秒数t、tBを用いて次の換算式により極限粘度[η]を算出した。
[η]=((1.651t/tB―0.651)0.5―1)/0.0834
求められた[η]より粘度平均分子量(Mv)を算出した。
原料のポリエチレン、原料のポリオレフィン混合物、微多孔膜のMvは次式により算出した。
[η]=6.77×10−4Mv0.67
原料のポリプロピレンについては、次式によりMvを算出した。
[η]=1.10×10−4Mv0.80
(2)膜厚(μm)
東洋精機製の微小測厚器、KBM(商標)用いて室温23±2℃で測定した。
(3)気孔率(%)
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
なお、膜密度はポリエチレン=0.95、ポリプロピレン=0.91として、組成の分率から計算した。なお、種々の膜密度は、JIS K−7112の密度勾配管法によって求めた密度を用いることができる。
(4)透気度(秒)
JIS P−8117に準拠し、ガーレー式透気度計(東洋精器(株)製、G−B2(商標))により測定した。
(5)突刺強度(N)
カトーテック製、KES−G5(商標)ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで、23±2℃雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重(N)を計測し、突刺強度とした。
(6)100℃MD熱収縮率(%)、120℃TD熱収縮率(%)、105℃TD熱収縮率(%)
ポリオレフィン微多孔膜をMDに100mm、TDに100mm切り取って得たサンプルを、所定の温度(100℃、120℃、又は105℃)のオーブン中に1時間静置した。このとき、温風が直接サンプルに当たらないよう、サンプルを2枚の紙に挟んだ。オーブンからサンプルを取り出し冷却した後、そのMDの長さ(mm)、又はTDの長さ(mm)を測定し、以下の式にて算出した熱収縮率を所定の温度における熱収縮率(100℃MD熱収縮率(%)、120℃TD熱収縮率(%)、又は105℃TD熱収縮率(%))とした。なお、サンプル長が確保できないものに関しては、100mm×100mmに入る範囲で、可能な限り長いサンプルを用いた。
MD熱収縮率(%)=(100−加熱後のMDの長さ(mm))/100×100
TD熱収縮率(%)=(100−加熱後のTDの長さ(mm))/100×100
(7)耐電圧(kV)
直径3cmのアルミニウム製電極で微多孔膜を挟み15gの荷重をかけ、これを菊水電子工業製の耐電圧測定機(TOS9201)に繋いで測定を実施した。測定条件は、交流電圧(60Hz)を1.0kV/secの速度でかけていき、短絡した電圧値を微多孔膜の耐電圧測定値とする。
(8)ハイレート特性評価、高温保存試験評価、釘刺し試験評価
a.正極の作製
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoOを92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN-メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となるアルミニウム箔にダイコーターで塗布し、乾燥し、ロールプレス機で圧縮成形して正極を作製した。
b.負極の作製
負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン-ブタジエン共重合体ラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる銅箔にダイコーターで塗布し、乾燥し、ロールプレス機で圧縮成形して負極を作製した。
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/リットルとなるように溶解させて調製した。
d.ハイレート特性評価
ポリオレフィン微多孔膜を18mmφ,上記正極及び上記負極を16mmφの円形に切り出し、正極と負極の活物質面が対向するよう、正極、ポリオレフィン微多孔膜、負極の順に重ね、蓋付きステンレス金属製容器に収納した。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミ箔と接していた。この容器内に上記非水電解液を注入して密閉した。室温にて1日放置した後、25℃雰囲気下、3mA(0.5C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を3mAから絞り始めるという方法で、合計6時間電池作成後の最初の充電を行った。続いて3mA(0.5C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。
25℃雰囲気下、1.1A(1.0C)の電流値で電池電圧3.6Vまで充電し、さらに3.6Vを保持するようにして電流値を1.1Aから絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行った。次に1.1A(1.0C)、又は5.5A(5C)の電流値で電池電圧2.0Vまで放電し、1C放電容量、又は5C放電容量を得た。
1C放電容量に対する5C放電容量の割合を容量維持率(%)と定義し、この時の維持率が85%以上の場合を◎、80%以上85%未満の場合を○、80%を下回る場合を×として、ハイレート特性の指標として用いた。
e.高温保存試験評価、釘刺し試験評価
上記負極、ポリオレフィン微多孔膜、上記正極、ポリオレフィン微多孔膜の順に重ねて渦巻状に複数回捲回することで電極板積層体を作製した。この電極板積層体を外径が18mmで高さが65mmのステンレス製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製タブを容器蓋端子部に、負極集電体から導出したニッケル製タブを容器壁に溶接した。その後、真空乾燥を行い、アルゴンボックス内にて容器内に上記非水電解液を注入し、封口することにより電池を組み立てた。
組立てた電池を1/3Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後4.2Vの定電圧充電を5時間行い、その後1/3Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。次に、1Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後4.2Vの定電圧充電を2時間行い、その後1Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。最後に1Cの電流値で4.2Vの定電圧充電をした後に4.2Vの定電圧充電を2時間行った。このようにして、前処理後の電池を得た。
前記前処理後の電池をオーブンに投入し、室温から5℃/minで昇温した後80℃で10日間放置した。その後、電池をオーブンから取り出し室温まで放冷してから1Cの電流で3.0Vまで放電を行い、オーブン投入前の充電量に対する容量維持率を算出した。この容量維持率が90%以上の場合を◎、85%以上90%未満の場合を○、85%未満の場合を×として、高温保存特性の指標として用いた。
また、前記前処理後の電池に対し、室温23±2℃環境にて、直径2.7mmの鉄釘をケースの外から、積層体の端部から3mmの所に、5mm/秒の速度で2mmの深さまで突き刺した。釘刺し位置から離れた電池の側面に付した熱電対で30秒後の到達温度を測定した。この時の温度が50℃以下の場合を◎、50℃を超え60℃以下の場合を○、60℃を超える場合を×として、耐釘刺し試験の特性の指標として用いた。
[実施例1]
Mvが25万のホモポリマー(低分子量ポリエチレン)を95質量%と、Mv40万のポリプロピレンを5質量%とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99質量%に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が50質量%となるように(即ち、ポリマー濃度(「PC」と略記することがある)が50質量%となるように)、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃であり、スクリュー回転数240rpm、吐出量12kg/hで行った。
続いて、溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、原反膜厚1750μmのゲルシートを得た。
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7.0倍、TD倍率6.4倍(即ち、7×6.4倍)、二軸延伸温度124℃である。
次に、メチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、熱固定(「HS」と略記することがある)を行なうべくTDテンターに導き、熱固定温度131℃、延伸倍率1.6倍でHSを行い、その後、0.85倍の緩和操作(即ち、HS緩和率が0.85倍)を行い、ポリオレフィン製微多孔膜を得た。得られた微多孔膜について、各種特性を評価した結果を下表1に示す。
[実施例2〜7、比較例1〜8]
下表1に示す条件以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。なお、Mv70万のPEは高密度ポリエチレンである。
得られた微多孔膜について、各種特性を評価した。結果を下表1,2に示す。
Figure 2011225736
Figure 2011225736
本発明のポリオレフィン製微多孔膜は、高出力密度リチウムイオン電池用セパレータとして好適に用いられる。

Claims (5)

  1. 膜厚方向に連通孔を有し、膜厚21μm以上、気孔率42%以上のポリオレフィン微多孔膜であって、120℃での幅方向の熱収縮率が4%以下、ポリオレフィン全体に対するポリプロピレンの含有率が5〜20質量%であるポリオレフィン微多孔膜。
  2. 透気度が12sec/100cc/μm以下である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  3. 粘度平均分子量が35万以下である請求項1又は2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  4. 105℃での幅方向の熱収縮率が0.5%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜と、正極と、負極と、電解液とを用いて形成されたリチウムイオン二次電池。
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