JP2011223925A - ロドコッカス細菌のためのランダムゲノム挿入及び欠失ツール - Google Patents

ロドコッカス細菌のためのランダムゲノム挿入及び欠失ツール Download PDF

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Abstract

【課題】ロドコッカス属細菌において細胞内DNAにランダムな機能喪失を起こさせる方法、及び該方法により作製されたロドコッカス属細菌株を提供する。
【解決手段】ロドコッカス属に属する細菌を、任意配列(好ましくは1つ又は複数の選択マーカー遺伝子)を含む直鎖状DNA断片を用いて形質転換することにより、当該直鎖状DNAを前記細菌のゲノムに挿入する方法、当該細菌の細胞内DNAの機能をランダムに喪失させる方法、及び当該方法により作製された形質転換体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ロドコッカス属に属する細菌におけるゲノム領域に任意配列を有する直鎖状DNA断片を挿入する方法、前記細菌のゲノムDNAの機能をランダムに喪失させる方法、および該方法により作製されたロドコッカス属細菌株に関する。
トランスポゾンをはじめとする可動性遺伝子を用いて、生物のゲノム中にランダムに挿入突然変異を起こさせた後、挿入領域を同定することにより、遺伝子の機能を探索する方法は古くから行われている(微生物においては非特許文献1を参照)。この手法は、微生物による物質生産においては、代謝系の解明を経て、より高性能な微生物の創出には欠かせない技術となっている。
一般的には、プラスミド上にトランスポゼース遺伝子とトランスポゼースが認識する配列を組み込んだものを用いてターゲット微生物を形質転換するという方法が利用されている。この方法では、トランスポゼースが認識する短い配列(例えばTn903の場合には、19塩基の逆位繰り返し配列)に挟まれた領域がゲノム上に挿入される。しかし、このシステムが利用可能な微生物は、プラスミドが複製可能なものにのみ限定される。このため、より広い微生物種に対応するための汎用的なシステムとして、トランスポゾンユニットを含むDNA断片と酵素トランスポゼースとの複合体を形成させ、エレクトロポレーションによりこれを導入して形質転換体を得るという方法が提案されている(非特許文献2)。
ロドコッカス属に属する細菌(以下「ロドコッカス属細菌」という)においては、ノサシバエより見出されたトランスポゾンHimar1に含まれるトランスポゼース遺伝子と、トランスポゼースが認識する配列とを組み込んだプラスミドが作製され、ランダムな挿入突然変異を導入するシステムが構築された(非特許文献3)。さらに、Rhodococcus erythropolis NI86/21株より見出された挿入配列IS1415(非特許文献4)に含まれるトランスポゼース遺伝子と、トランスポゼースが認識する配列とを組み込んだプラスミドpTNRシリーズが作製され、より効率的なシステムが構築されている(非特許文献5、6)。
しかし、これらの技術において可能な突然変異の場所の数は、ランダムな挿入による1個所の突然変異のみであり、単一操作により複数の遺伝子に渡る欠失等の機能喪失をランダムに起こす技術が求められていた。
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本発明は、ロドコッカス属細菌のゲノム領域に、任意配列を有する直鎖状DNA断片を挿入する方法、細胞内DNAの機能を喪失させる方法、及び該方法により作製されたロドコッカス属細菌株を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ロドコッカス属細菌において、1つ又は複数の選択マーカー遺伝子を含む直鎖状DNA断片を用いて当該細菌を形質転換することにより、直鎖状DNA断片の挿入に伴って細胞内DNAにランダムな欠失を起こさせ得ることを見出した。また、大腸菌におけるプラスミド複製開始点を含む断片を用いることで、容易な挿入領域(欠失領域)の同定を可能とした。さらに、SacB遺伝子を含む断片を用いることにより、細胞内DNAからのランダムな欠失を繰り返し引き起こし得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ロドコッカス属に属する細菌を、任意配列を有する直鎖状DNA断片を用いて形質転換し、当該直鎖状DNAを前記細菌のゲノムに挿入する方法。
(2)さらに、前記細菌のゲノムDNAの機能をランダムに喪失させることができる、(1)に記載の方法。
(3)直鎖状DNA断片が、所望のタンパク質をコードする遺伝子、及び/又は1つ若しくは複数の選択マーカー遺伝子を含むものである(1)に記載の方法。
(4)直鎖状DNA断片が、大腸菌におけるプラスミド複製開始点を含むものである、(1)に記載の方法。
(5)プラスミド複製開始点がプラスミドpMB1及びその派生物由来のものである(4)に記載の方法。
(6)選択マーカー遺伝子が、薬剤耐性遺伝子、又は薬剤耐性遺伝子と条件致死遺伝子との組み合わせである(3)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)薬剤耐性遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子である(6)に記載の方法。
(8)条件致死遺伝子がsacB遺伝子である、(6)に記載の方法。
(9)前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の方法により作製された形質転換体。
(10)前記(6)〜(9)のいずれか1項に記載の方法により作製された形質転換体を、致死条件下で培養することにより、形質転換により挿入された断片の一部又は全部が脱落した株を作製する方法。
(11)前記(10)に記載の方法により作製された株。
本発明の方法を用いることにより、ロドコッカス属細菌において、任意配列を有する直鎖状DNA断片を、当該細菌のゲノムに挿入する方法が提供することができる。また、DNA断片の挿入に付随して、細胞内DNAの機能をランダムに喪失させることができる。すなわち、DNA断片の挿入に伴って細胞内DNAのランダムな欠失を起こさせ、挿入領域の塩基配列を解析することにより容易に挿入領域及び欠失長を同定し、さらには欠失を繰り返し行うことが可能となる。
また、本発明により数kb以上のゲノム領域の欠失も可能であり、オペロンを形成する遺伝子など、隣接する複数の遺伝子を同時に破壊することができる。このことにより、遺伝子の機能解析や微生物の改良のための技術の幅が大きく広がった。
MK07及びMK09の作製を示す図である。pK19Bを鋳型としてPCRによりMK07及びMK09を取得した。 DNA断片MK07のゲノム挿入部位の塩基配列を示す図である。 DNA断片MK07のゲノム挿入部位と挿入様式を示す図である。 DNA断片MK09のゲノム挿入部位の塩基配列を示す図である。 DNA断片MK09のゲノム挿入部位と挿入様式を示す図である。 MK10の作製を示す図である。pK19sacB1を鋳型としてPCRによりMK10を取得した。 DNA断片MK07複合体のゲノム挿入部位の塩基配列を示す図である。 DNA断片MK07複合体のゲノム挿入部位と挿入様式を示す図である。欠失がなく、挿入個所には9bpの重複配列が生成する(トランスポゾン型の挿入)。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
本発明は、ロドコッカス属に属する細菌を、任意配列を有する直鎖状DNA断片を用いて形質転換することにより、当該直鎖状DNAを前記細菌のゲノムに挿入する方法に関するものである。蛍光タンパク質遺伝子や各種酵素遺伝子などの様々な所望の遺伝子を直鎖状DNAに連結しておき、これを用いて細菌を形質転換するだけで当該直鎖状DNAをそのまま細菌ゲノム上に導入することができる。従って、本発明は、上記形質転換後に、直鎖状DNA又はその周辺領域の塩基配列を解析することにより、直鎖状DNA断片の前記細菌内DNAへの挿入状況を解析することが可能となる。さらに、本発明は、前記形質転換を行うことにより、直鎖状DNAのゲノムへの挿入に伴い、当該細菌の細胞内DNA(ゲノムDNA)の機能をランダムに喪失させる方法に関するものである。
(1)形質転換用DNA断片の調製
本発明において、ロドコッカス属に属する細菌に挿入する任意配列を有する直鎖状DNA断片としては、例えばランダム配列を有する核酸、有用タンパク質をコードする遺伝子、薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子、遺伝子発現調節遺伝子、プロモーター配列、プラスミドDNA、バクテリオファージDNAなど、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。そして、これらのDNA断片により形質転換された株であるかどうかを確認し、取得するためには、上記DNA断片に1つ又は複数の選択マーカー遺伝子を含むものであること(例えば連結させておくこと)が好ましい。任意配列の長さは特に限定されるものではなく、100〜20,000塩基、好ましくは500〜10,000塩基、さらに好ましくは800〜3,000塩基長のものである。
また、本発明において、機能を喪失させる態様は特に限定されるものではなく、直鎖状DNA断片のゲノム上への挿入により、その挿入部位周辺におけるDNAの機能を喪失させる態様、あるいは直鎖状DNA断片のゲノム上への挿入により、挿入部位付近のDNAの全部又は一部を欠失させる態様などがある。
形質転換用DNA断片は、化学合成により得ることも可能であり、あるいはベクターから制限酵素等により切り出して得ることができる。また、ベクター内において、形質転換用DNA断片の領域に該当する領域をPCR法により増幅して調製することができる。
ベクターとしてはプラスミドベクター、バクテリオファージベクター、レトロトランスポゾンベクターなどを用いることができる。目的に応じて種々の改変を加えること、例えば既存のベクターに、選択マーカー、レポーター遺伝子やプロモーター配列などの各種遺伝子、あるいは複製起点を導入することにより、形質転換用DNA断片調製用のベクターにすることができる。
既存のプラスミドベクターとしては、例えばpK18、pK19、pK18mob、pK19mob、pHSG298、pHSG299、pHSG398、pHSG399、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において使用されるDNA断片には、好ましくは1つ又は複数の選択マーカー遺伝子が含まれる。選択マーカーはポジティブセレクションに使用される薬剤耐性遺伝子、あるいは、ポジティブセレクションに使用される薬剤耐性遺伝子とネガティブセレクションに用いる条件致死遺伝子とを組み合わせて使用される。本発明においては、第1及び第2の2種類の選択マーカーを用いることが好ましい。
第1の選択マーカーとしては、例えばカナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、トリメトプリム耐性ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、チオストレプトン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等が挙げられ、カナマイシン耐性遺伝子であることが好ましい。
第1の選択マーカー遺伝子は同時に複数の遺伝子を組み合わせて用いてもよい。複数の遺伝子を組み合わせる場合は、(i) 複数個の同一の遺伝子をタンデムに連結する態様、(ii) 複数個の同一の遺伝子を任意の場所に連結する態様、(iii) 複数個の異なる種類の遺伝子をタンデムに連結する態様、(iv) 複数個の異なる種類の遺伝子を任意の場所に連結する態様、あるいは(v) 上記(i)〜(iv)の態様の組み合わせが挙げられる。
第2の選択マーカーとしては、条件致死遺伝子であれば特に限定されるものではないが、例えばレバンスクラーゼ(levansucrase)活性を有する酵素をコードする遺伝子が挙げられる。このような遺伝子としては、例えばSacB遺伝子が挙げられる。
SacB遺伝子は、レバンスクラーゼ活性を有する酵素の1つであるSacBタンパク質をコードする遺伝子である。SacBタンパク質は、スクロースを分解し、レバン(levan)を生成する。グラム陽性菌の一部やグラム陰性菌では、スクロース存在下においてSacB遺伝子が導入された細胞株を排除(ネガティブ選択)することにより、目的とする遺伝子改変細胞株を効率よく選択することが可能である(Jagar W et al., Journal of bacteriology 1992; 5462-5465、Pelicic V et al., Journal of bacteriology 1996; 1197-1199)。なお、SacB遺伝子の発現が、スクロース存在下において細胞に致死性を付与する理由は、明らかになっていない。
SacB遺伝子と同様にレバンスクラーゼをコードする遺伝子としては、下記のものが挙げられるが、レバンスクラーゼをコードする遺伝子であれば、これらに限定されることなく用いることができる。
fefA遺伝子(accession number: AJ508391,Lactobacillus sanfranciscensis由来のレバンスクラーゼ)、lev遺伝子(accession number: Q8GGV4, Lactobacillus reuteri由来のレバンスクラーゼ)、mlft遺伝子(accession number: AAT81165, Leuconostoc mesenteroides由来のレバンスクラーゼ)、lsc遺伝子(accession number:O68609, Pseudomonas syringae由来のレバンスクラーゼ)、lsxA遺伝子(accession number:BAA93720, Gluconacetobacter xylinus由来のレバンスクラーゼ)。
複数の遺伝子を組み合わせる場合は、第1のマーカー遺伝子と同様に、(i) 複数個の同一の遺伝子をタンデムに連結する態様、(ii) 複数個の同一の遺伝子を任意の場所に連結する態様、(iii) 複数個の異なる種類の遺伝子をタンデムに連結する態様、(iv) 複数個の異なる種類の遺伝子を任意の場所に連結する態様、あるいは(v) 上記(i)〜(iv)の態様の組み合わせが挙げられる。
本発明において、直鎖状DNA断片には大腸菌におけるプラスミド複製開始点を含めることができる。これにより、形質転換体ゲノム上に挿入された直鎖状DNA断片を、挿入個所の周辺ゲノム配列を含む形で、大腸菌プラスミドとして回収できるようになる。
プラスミド複製開始点としては、例えばプラスミドpMB1由来のもの、広域宿主プラスミドRK2由来のもの、及びその派生物などが挙げられる。
(2)形質転換用DNA断片によるロドコッカス属細菌の形質転換
ロドコッカス属菌としては、例えばロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)PR4株(NBRC)、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC12674、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC17895、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC19140等が挙げられる。PR4株は、NBRC(独立行政法人製品評価技術基盤機構、生物遺伝資源部門)から、またATCC株は、アメリカンタイプカルチャーコレクションから入手できる。
ロドコッカス属細菌の形質転換法は、当該細菌にDNA断片を導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばエレクトロポレーション法等が挙げられる。これらの形質転換手法は当分野において周知である。また、形質転換法の詳細については、「Hashimoto Y, Nishiyama M, Yu F, Watanabe I, Horinouchi S, Beppu T. (1992 ) Development of a host-vector system in a Rhodococcus strain and its use for expression of the cloned nitrile hydratase gene cluster. J Gen Microbiol. 138:1003-1010.」等を参照することができる。
(3)DNA断片が挿入されたゲノム領域の確認
上記の通り得られた形質転換体(「本発明の形質転換体」という)において、DNA断片が挿入されたゲノム領域を確認するためには、その確認目的の配列を含む断片をゲノムDNAから調製する必要がある。そこで本発明においては、例えば以下のように行うことができる。
本発明の形質転換体よりゲノムDNAを調製し、適当な制限酵素により切断後、大腸菌用ベクターにライゲーション反応により結合させる。これを用いて大腸菌を形質転換し(配列の確認用の形質転換)、挿入DNA断片上の選択マーカーを用いてDNA断片が結合したベクターを含む形質転換体を得る(「確認用形質転換体」という)。
DNA断片上にプラスミド複製開始点及びマーカー遺伝子を含む場合には、ゲノムDNAを制限酵素により切断後、セルフライゲーション反応を行うことにより環化したDNAを形成させる。DNA断片が挿入されたゲノム領域を含むものは、大腸菌プラスミドベクターの構成要素(複製開始点、マーカー遺伝子)を持っていることから、ライゲーション溶液により大腸菌を形質転換することにより、DNA断片を含む確認用形質転換体を得る。
本発明においては、直鎖状DNAの周辺領域の塩基配列を解析することにより、直鎖状DNA断片の前記細菌内DNAへの挿入状況(挿入箇所、挿入形態、挿入された箇所の遺伝子情報等)を解析することができる。
例えば、上記のとおり作製した確認用形質転換体からは、挿入DNA断片と周辺ゲノム配列をプラスミドの形で回収する。挿入DNA断片末端領域の配列を利用して、シーケンシングプライマーを設計し、シーケンシングを行うことにより、DNA断片が挿入された個所のゲノム配列を解読する。この配列と、公開されているロドコッカス属細菌のゲノム配列情報とを比較することにより、挿入領域や欠失の長さなどを調べることができる。本発明においては、DNA断片の挿入時にゲノム上に数bpから数十kb以上の欠失が起こることが塩基配列の解析により確認できる。
(4)SacB遺伝子を含むDNA断片が挿入された形質転換体からのDNA断片の欠落
本発明においては、上記の通り作製された形質転換体を、致死条件下で培養することにより、形質転換により挿入された断片の一部又は全部が脱落した株を作製することができる。
本発明においては、任意配列をゲノム内にランダムに挿入する点に特徴があるが、上記致死条件の培養下では、sacB遺伝子を含む領域が欠失し、これに伴って挿入DNA断片の全部又は一部が欠失する。この際、挿入DNA断片の全部が欠失した場合は薬剤耐性遺伝子等の選択マーカー遺伝子の欠失も起こっており、同じ薬剤耐性遺伝子を選択マーカー遺伝子として、原理的には制限無く繰り返し形質転換を行うことができる。DNA断片の挿入時にゲノム領域の欠失が起こり、脱落時にも欠失が起こることになる。この操作を繰り返すことにより、特定の目的には不要のゲノム領域をすべて欠失させた微生物の作製が可能となる。また、挿入DNA断片の全部が欠失していなくても、薬剤耐性遺伝子等の選択マーカー遺伝子の機能が喪失していれば、上記の繰り返し操作は可能である。
ここで、「致死条件下」とは、形質転換体が死滅するまたは生育できない条件であることを意味する。
致死条件は、例えば条件致死マーカーとしてsacB遺伝子を用いた場合には、スクロースを含んだ培地で生育させる条件である。
このようにして得られた形質転換体は、挿入されたDNA断片の一部または全部が欠失している。挿入されたDNA断片の欠落の態様、すなわち、どのように欠落しているかは、挿入個所周辺の配列をもとに設計されたプライマーを用いたPCR法などにより調べることができる。そして、PCR等により増幅された断片の塩基配列を調べ、この配列と、公開されているロドコッカス属細菌のゲノム配列情報とを比較することにより、欠失形態を調べることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
形質転換用DNA断片MK07及びMK09の調製
(1)鋳型プラスミドの作製
プラスミドpK19mobよりmob領域を除くため、pK19mobを制限酵素NspV(タカラバイオ株式会社)及びPagI(フェルメンタス社)を用いて切断した。以下の組成で制限酵素処理を行った。
制限酵素処理条件
pK19mob 20μl
10x M buffer(タカラバイオ) 5μl
BSA 5μl
NspV 2μl
PagI 2μl
D.W. 16μl
Total 50μl
37℃にて2時間反応を行い、反応終了後に5μl の3M 酢酸ナトリウムと125μlのエタノールを加え、4℃ 15000 rpm で15分間遠心して沈殿を得た。200μlの70% エタノールを加え、4℃ 15000 rpmで1分間遠心して上清を除き、沈澱を乾燥し、50μlの滅菌水に溶解した。
NspV及びPagIで切断された pK19mob をDNA Blunting Kit(タカラバイオ株式会社)を用い、以下のようにして平滑末端化を行った。
4μl のpK19mobに10x bufferを1μl、滅菌水を4μl加え9μlとし、70℃にて5分間処理したのち、37℃で反応させた。この溶液にT4 polymerase 1μlを加え、37℃にて5分間反応させた。5分後にボルテックスミキサーを用いて撹拌し、この溶液1μlに5μlのLigation solution A、1.5μlのLigation solution B(Ligation Kit:タカラバイオ株式会社)及び0. 5μlの滅菌水を加え4℃にて1時間のライゲーション反応を行った。 この工程において、目的の断片のセルフライゲーションが起こり、mob領域が除かれたプラスミドが形成された。
次に、上記ライゲーションにより得られたDNAを用いて大腸菌XL10-Goldを形質転換した。
まず、約140μlのXL10-Goldコンピテントセル(アジレント・テクノロジー株式会社)を氷上解凍し、4μlの2-メルカプトエタノールを加え、氷上にて10分間静置した。次に、滅菌した試験管にXL10-Goldを30μlずつ分注し、ライゲーション後の溶液を4μl加え、氷上にて30分間静置したのち、42℃ 30秒間加温し、再び氷上にて2分間静置した。その後、各試験管にSOC培地を0.5ml加え、37℃にて1時間培養を行った後、カナマイシン硫酸塩(Km)(50μg/ml)を含むLB寒天培地(以下、LB Km50寒天培地)に全量を塗布した。37℃にて一晩培養した後、コロニーを確認し、同寒天培地にストリークした。
得られたコロニーを、カナマイシン(50μg/ml)を含むLB液体培地2mlに植菌し、37℃で一晩振とう培養した。 翌日、培養液をマイクロチューブに移し、4℃にて 15000rpm、5分間の遠心により菌体を回収し、QIAprep miniprep Kit(キアゲン株式会社)を用いてプラスミドを調製した。得られたプラスミドはmob領域が除かれていることを、DNAシーケンサー(ベックマン・コールター株式会社)にて確認した。
得られたプラスミドをpK19Bと命名した。
(2)DNA断片MK07及びMK09の調製
pK19Bを鋳型として、カナマイシン耐性遺伝子とプラスミド複製開始領域を含むDNA断片を増幅した。
PCR条件
反応液組成
Prime star max pre-mix(タカラバイオ) 25μl
Primer 1 1μl
Primer 2 1μl
鋳型DNA(pK19B) 1μl
D.W. 22μl
Total 50μl
反応温度
98℃ 10sec
98℃ 5sec
以下30サイクル
55℃ 10sec
72℃ 1min
72℃ 4min
30cycles
プライマー配列は、以下の通りである。
<MK07断片用プライマー>
Primer 1:TN-1
GGCTGTCTCTTATACACATCTCAACCTGCCGCAAGCACTCAGGGCGC(配列番号1)
Primer 2:TN-2
GGCTGTCTCTTATACACATCTCAACCTGTCGTGCCAGCTGCATTAATG(配列番号2)
※ 下線部はトランスポゼース認識配列(文献:Nature Biotechnology 18:97 (2000))
<MK09断片用プライマー>
Primer 1:TN-3 CTGCCGCAAGCACTCAGGGCGC(配列番号3)
Primer 2:TN-4 CCTGTCGTGCCAGCTGCATTAATG(配列番号4)

反応終了後、予想されるサイズのDNAの増幅を0.7%アガロースゲル電気泳動により確認した。
Wizard SV Gel and PCR Clean-up system(プロメガ株式会社)を用い、PCR増幅断片を精製した。断片溶液50μlに450μlのTE 緩衝液、250μlの5M NaCl、250μlの30%PEG8000/1.5M NaClを加え全量を1mlとし、混合した後、4℃にて1時間静置した。その後4℃ 15000rpmで10分間の遠心分離により沈澱を得、再度4℃ 15000rpmで1分間遠心を行い、壁に付着した上清を取り除いた。得られた沈殿物を10μl のTE緩衝液に溶解させ、DNA断片MK07(配列番号5)及びMK09(配列番号6)を得た(図1)。DNA濃度を測定後、150μg/mlの濃度に調製した。
DNA断片MK07によるRhodococcus erythropolis NBRC100887(Rhodococcus erythropolis PR4)の形質転換
(1)コンピテントセルの作製
ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)NBRC100887(Rhodococcus erythropolis PR4)株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁し、コンピテントセルを作製した。
(2)形質転換体の作製
実施例1で調製したDNA断片をTE緩衝液(10 mM Tris-HCl, 1mM EDTA, pH 8.0)を用いて6倍に希釈後、1μlを取り、(1)で作製したコンピテントセルの菌体懸濁液各10μlを混合し、氷冷した。遺伝子導入装置 Gene Pulser(BIO RAD)用のキュベットに各混合液を入れ、Gene Pulserを用いて20 KV/cm、200 OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショックを行った。その後、キュベットにLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、1%NaCl)500μlを加え、30 ℃、5時間静置した後、LB Km50寒天培地に塗布し、30 ℃、3日間培養した。
その結果、形質転換体を得ることができ、形質転換効率は2.2×104コロニー/μgDNAであった(表1)。
DNA断片MK07挿入部位の解析
(1)ゲノムDNAの調製
DNA断片MK07を用いて得られた形質転換体6株を、10ml のLB Km10液体培地にて、30℃ 2日間振とう培養を行った。培養液を4℃ 8000rpmで10分間の遠心分離により集菌し、50mM EDTA 4.8mlに懸濁後、20mg/mlのリゾチームを含むTENS溶液(50mM-Tris, 10mM-EDTA, 50mM NaCl, 20% sucrose)を1.2ml加え37℃で一晩振とうした。リゾチーム処理後の菌体懸濁液より、1mlをマイクロチューブに分注し、4℃ 15000rpmで5分間遠心し、沈殿を得た。沈殿より、Wizard Genomic DNA Purification Kit(プロメガ株式会社)を用いてゲノムDNAを得た。
(2)ゲノムDNAの制限酵素処理
こうして得られたゲノムDNA10μlに、2μlの10x K Buffer(タカラバイオ株式会社)、7.5μ lの滅菌水、0.5μ lの制限酵素BamHI(タカラバイオ株式会社)を加え、37℃ にて4時間反応させた。0.7%アガロースゲル電気泳動により、ゲノムDNAが切断されていることを確認した後、フェノール/クロロホルム処理を行った。エタノール沈殿後、風乾し、10μlの滅菌水に溶解させた。
(3)DNA断片のセルフライゲーション(環状化)及び大腸菌の形質転換
ゲノムDNA断片 2μlにDNA Ligation Kit <Mighty Mix>(タカラバイオ株式会社)のLigation Mixを2μl加え、4℃にて一晩反応させることにより、DNA断片のセルフライゲーションを行った。ライゲーション後の溶液を用いて大腸菌XL10-Goldの形質転換を以下のようにして行った。
約140μlのXL10-Goldコンピテントセルを氷上解凍し、4μlの2-メルカプトエタノールを加え、氷上にて10分間静置した。滅菌した試験管にXL10-Goldコンピテントセルを30μlずつ分注し、ライゲーション後の溶液を3μl加え、氷上にて30分間静置した。次に、溶液を42℃ 30秒間処理し、再び氷上にて2分間静置した。その後、各試験管にNZY+培地(シグマアルドリッチジャパン株式会社)を0.5ml加え、37℃にて1時間培養を行った後、LB Km50寒天培地に全量を蒔いた。形質転換に用いられたDNA断片MK07中にはカナマイシン耐性遺伝子と大腸菌内でのプラスミドの複製に関与するoriが含まれており、MK07が挿入された領域を含むゲノムDNA断片の環状化物により形質転換された大腸菌のみが、LB Km50寒天培地上で生育可能となる。
(4)プラスミドの調製と塩基配列の決定
上記形質転換された大腸菌を37℃にて一晩培養後、現れたコロニーを複数同寒天培地にストリークした。2個のコロニーをそれぞれ2mlの LB Km50液体培地に植菌し、37℃で一晩振とう培養した。培養液をマイクロチューブに移し、4℃ 15000rpmで5分間遠心し、QIAprep miniprep Kit(株式会社キアゲン)を用いプラスミドを調製した。
得られたプラスミドの塩基配列を、プライマーとしてオリゴヌクレオチドTN-5(配列番号7)及びTN-6(配列番号8)を用いて決定することにより、形質転換体ゲノムにおけるMK07の挿入領域及び挿入様式を調べた。Rhodococcus erythropolis NBRC10088は全ゲノム配列が公開されており、その配列情報と比較することにより挿入領域や挿入形態を調べることができる。その結果、図2及び図3に示されるように、MK07の端が部分的に欠ける場合があるが、MK07ほぼ全体がゲノムへのランダムな挿入を起こしており、またゲノムの欠失(数bp〜数十kb、図3では数百bp〜数kb)を伴っていることが明らかとなった。トランスポゾンの挿入時にみられるShort direct repeatの生成も認められなかったことも合わせると、トランスポゾンとは異なる機構によるゲノムDNAの挿入と考えられる。
図2に表示した塩基配列において、下線部はMK07の末端部の配列を表し、他の配列はゲノム領域の配列を表す。また、EndAはカナマイシン耐性遺伝子の上流側の末端部を示し、EndBは下流側の末端部を示す。
オリゴヌクレオチドTN-5: GCAGCCGATTGTCTGTTGTG(配列番号7)
オリゴヌクレオチドTN-6: GTTTCGCCACCTCTGACTTG(配列番号8)
DNA断片MK09によるRhodococcus erythropolis NBRC100887(Rhodococcus erythropolis PR4)の形質転換
実施例2と同様にして、MK09によるNBRC100887の形質転換を行った。
その結果、形質転換体を得ることができ、形質転換効率は1.5×104コロニー/μgDNAであった(表1)。
MK09においては、MK07のようにTn5 Transposaseの認識部位とされる両末端の特異的な配列は無いにも拘わらず、同レベルの形質転換効率を示したことから、DNA断片による形質転換には末端に特異的な配列は必要ないことが明らかとなった。
DNA断片MK09挿入部位の解析
実施例3と同様にして、形質転換体におけるMK09のゲノム挿入領域及び挿入形態を調べた。その結果、図4及び図5に示されるように、MK09の端が部分的に欠ける場合があるが、MK09ほぼ全体がゲノムへのランダムな挿入を起こしており、またゲノムの欠失(数bp〜数十kb、図4ではbp〜数百bp)を伴っていることが明らかとなった。
図4に表示した塩基配列において、下線部はMK09の末端部の配列を表し、他の配列はゲノム領域の配列を表す。また、EndA及びEndBの意味は前記と同様である。
致死性選択マーカーsacB遺伝子を含む形質転換用DNA断片MK10の調製
鋳型プラスミドの作製
<pK19mobsacB1の作製>
sabB遺伝子を含むプラスミドpDNR-1r(Clontech Laboratories Inc.)を鋳型にして、実施例1と同様にPCR法によりsacB遺伝子を増幅し、約1.9 kbのsacB遺伝子断片を得た。増幅用のプライマーとして、NspV切断サイトを付加したプライマーSAC-01(配列番号9)及びSAC-02(配列番号10)を用いた。
プライマー:
SAC-01:5’- GGTTCGAATACCTGCCGTTCACTATTATTTAGTG -3’(配列番号9)
SAC-02:5’- GGTTCGAATCGGCATTTTCTTTTGCGTTTTTATTTG -3’(配列番号10)
増幅されたDNA断片を制限酵素NspVにより消化し、実施例1と同様にしてWizard SV Gel and PCR Clean-up system(プロメガ株式会社)を用いて精製し、sacB遺伝子を含むDNA断片を得た。
一方、プラスミドpK19mobのDNA断片を制限酵素NspVにより切断し、Shrimp Alkaline Phosphatase(タカラバイオ株式会社)を用いて脱リン酸化処理した。処理液をエタノール沈澱し、DNA断片を精製した。このDNA断片と、sacB遺伝子を含むDNA断片とをライゲーション反応により結合させ、大腸菌XL10-Goldの形質転換を行った。カナマイシン耐性を示す形質転換体より実施例1と同様にしてプラスミドを調製した。sacB遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子の下流且つ同方向に導入されたプラスミドを得、pK19mobsacB1と命名した。
<pK19sacB1の作製>
プラスミドpK19mobsacB1よりmob領域を除くため、まずpK19mobsacB1を制限酵素NspV(タカラバイオ株式会社)により部分切断し、その後PagI(フェルメンタス社)を用いて切断した。反応条件は、実施例1と同様であるが、部分切断には反応時間を調整して適当な時間を選択した。
反応終了後0.7%アガロースゲル電気泳動を行い、NspV-PagI断片をゲルから切り出し、Wizard SV Gel and PCR Clean-up systemを用いて精製した。NspV-PagI断片を実施例1と同様にして平滑末端化及びライゲーション反応を行った。ただし、ライゲーション反応はXbaIリンカー存在下で行った。この工程において、目的の断片のセルフラーゲーションが起こり、mob領域が除かれたプラスミドが形成されるが、同時にXbaIリンカーが断片の結合部位に挿入される。
本溶液を用いて、実施例1と同様にして大腸菌XL10-Goldの形質転換を行った。実施例1と同様にしてカナマイシン耐性を有する形質転換体を得た後、プラスミドを調製しmob領域が除かれていることを確認した。また、1個のXbaIリンカーが挿入されていた。
得られたプラスミドをpK19sacB1と命名した。
実施例1と同様に、pK19sacB1を鋳型として、下記プライマーを用いてカナマイシン耐性遺伝子、sacB遺伝子、及びプラスミド複製開始領域を含むDNA断片を増幅し、DNA断片MK10(配列番号12、図6)を得た。DNA濃度を測定後、150μg/mlの濃度に調製した。
Primer 1:TN-1
GGCTGTCTCTTATACACATCTCAACCTGCCGCAAGCACTCAGGGCGC(配列番号1)
Primer 2:TN-7
GGCTGTCTCTTATACACATCTCAACCTGTCGTGCCAGCTGCATTAATG(配列番号11)
DNA断片MK10によるNBRC100887(Rhodococcus erythropolis PR4)の形質転換
実施例2と同様にして、MK10によるNBRC100887の形質転換を行った。
その結果、形質転換体を得ることができ、形質転換効率は1.8×103コロニー/μgであった。
DNA断片MK10挿入部位の解析
実施例3と同様にして、形質転換体のうちの1つについてMK10のゲノム挿入領域及び挿入形態を調べた。その結果、図2及び図3に示されるように、MK10の端が部分的に欠けていたが、MK10ほぼ全体がゲノムへのランダムな挿入を起こしており、またゲノムの欠失(6,042bp)を伴っていることが明らかとなった。
条件致死性選択マーカーsacB遺伝子を利用した挿入DNA断片MK10のゲノムからの脱落
ショ糖添加培地を用いたゲノムからのMK10の脱落
6個の形質転換体をそれぞれ、LB液体培地 200μlに懸濁し、100μlを10%Sucroseを含むLB寒天培地に蒔き、30℃ 3日間培養した。現れたコロニーをランダムに3〜6株取得し、同寒天培地及びLB Km50寒天培地にストリークし、生育の確認を行った。その結果を表2に示した。
ゲノムへの挿入個所や状態により、カナマイシン感受性に戻る頻度は異なるが、調べるコロニー数を増やすことによりほぼすべての形質転換体からカナマイシン感受性株(MK10の脱落株)を得ることができると考える。
こうして脱落させることにより、ゲノムの特定領域が欠損した形質転換体は選択マーカーであるカナマイシン耐性を失うため、再びMK10を利用した形質転換が可能となる。
[比較例1]
DNA断片MK07とTransposaseとの複合体によるNBRC100887(Rhodococcus erythropolis PR4)の形質転換
実施例1で調製した3.3μlのDNA断片MK07に75% グリセロール 6.7μlを加え、全量10μlとした。この溶液 2μlに、2μl のTransposase(EPICENTRE Biotechnologies社)を加え充分な撹拌後、室温で30分間放置することにより複合体を形成させた。1μlの複合体溶液を用い、実施例2と同様にしてRhodococcus erythropolis PR4株の形質転換を行った。その結果、表1に示すように形質転換効率は8.4×103コロニー/μgDNAであった。
MK07複合体が挿入されたゲノム領域の確認
実施例3と同様にして、6株についてゲノムDNAへの挿入領域、挿入様式を調べた。その結果、DNA断片MK07を用いたときとは異なり、大半は典型的なTransposon型の挿入様式を示した(図7及び図8)。
[比較例2]
DNA断片MK07による大腸菌XL10-Goldの形質転換
PCR法により増幅した後に鋳型プラスミドpK19Bを制限酵素DnpI処理により分解する工程を加えた他は実施例1と同様にして、DNA断片MK07及びMK09を調製した。DpnIはメチル化されたGを含むGATC配列を認識して切断するため、大腸菌XL10-GoldやJM109株を宿主とする形質転換体から調製されたプラスミドは分解するが、PCR等のin vitroで増幅されたDNA断片はメチル化されたGを含まないため分解しない。
こうして調製された1μlのDNA断片MK07及びMK09を用いて、実施例2と同様の方法によりRhodococcus erythropolis NBRC10087の形質転換を行った。その結果、形質転換効率は、それぞれ約1 x 104コロニー/μgDNAであった。
一方、1μlのDNA断片MK07及びMK09を用いて、実施例1記載の方法に従い大腸菌XL10-Goldの形質転換を行った。用いた大腸菌コンピテントセルは、プラスミドpK4を用いた場合、1 x 109/μgDNA以上の頻度で形質転換体が得られることから高い形質転換能を有しているはずであるが、DNA断片MK07及びMK09を用いた場合は形質転換体が得られなかった。
本発明の形質転換体は、遺伝子の機能解析や微生物の改良に有用である。
配列番号1〜40:合成DNA

Claims (9)

  1. ロドコッカス属に属する細菌を、任意配列を有する直鎖状DNA断片を用いて形質転換し、当該直鎖状DNAを前記細菌のゲノムに挿入する方法。
  2. さらに、前記細菌のゲノムDNAの機能をランダムに喪失させることができる、請求項1に記載の方法。
  3. 直鎖状DNA断片が、所望のタンパク質をコードする遺伝子、及び/又は1つ若しくは複数の選択マーカー遺伝子を含むものである請求項1に記載の方法。
  4. 直鎖状DNA断片が、大腸菌におけるプラスミド複製開始点を含むものである、請求項1に記載の方法。
  5. プラスミド複製開始点がプラスミドpMB1及びその派生物由来のものである請求項4に記載の方法。
  6. 選択マーカー遺伝子が、薬剤耐性遺伝子、又は薬剤耐性遺伝子と条件致死遺伝子との組み合わせである請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により作製された形質転換体。
  8. 請求項7に記載の形質転換体を、致死条件下で培養することにより、形質転換により挿入された断片の一部又は全部が脱落した株を作製する方法。
  9. 請求項8に記載の方法により作製された株。
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