JP2011223906A - ビールの製造方法および本方法によって得られるビール - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のビールはビール専用の酵母菌株でエタノール発酵を行って製造するため、画一的な品質になりやすく、味や香りに個性を出すのに限界がある。自然界に生息する野生酵母を使用する方法も考えられるが、これらの酵母は麦汁の主成分であるマルトースを発酵せず、発酵したとしても微弱であることが多く、ビール醸造には不適である。
【解決手段】北海道十勝地方に自生するエゾヤマザクラのサクランボから分離した酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487を利用することにより、消費者の多様なニーズに応える特徴的で良好な風味を備えたビールを製造可能となる。
【選択図】なし
【解決手段】北海道十勝地方に自生するエゾヤマザクラのサクランボから分離した酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487を利用することにより、消費者の多様なニーズに応える特徴的で良好な風味を備えたビールを製造可能となる。
【選択図】なし
Description
本発明は、高品質で消費者の多様なニーズに応える特徴的なビールの製造方法とそれによって得られるビールに関するものである。
ビールとは、一般的に大麦や小麦を発芽させて糖化した麦汁にホップで苦味をつけ、酵母で発酵させてつくられるアルコール飲料である。世界各国には様々な種類があり、使用する酵母によって上面発酵ビールと下面発酵ビールの二つに大別することができる。上面発酵ビールは、下面発酵ビールよりも高温で発酵させて香気が強いという特徴を有しており、清酒、焼酎、ワインなどの醸造と同様にSaccharomyces cerevisiaeに分類される菌株が使用される。一方、下面発酵ビールは低温で発酵させてから長期間の熟成という方法で製造されるもので、日本やアメリカをはじめとする多くの国々で主流となっている。このビールの製造に使用される酵母はSaccharomyces cerevisiaeではなく、近縁のSaccharomyces pastorianusに分類される菌株である。
わが国のビールは長年に渡って選抜された酵母菌株によって大規模醸造を行うため、品質が画一化されている。一方、地域密着型で小規模醸造されたビール、いわゆる地ビールには個性的な製品があるが、ビール専用の酵母菌株でエタノール発酵を行って製造するため、味や香りに個性を出すのに限界がある。Saccharomyces cerevisiaeは自然界にも生息していることから、このような野生酵母をビール醸造に使用する方法も考えられる。しかし、分離される菌株の多くはブドウ果汁の主成分であるグルコースは発酵しても、麦汁の主成分であるマルトースを発酵せず、発酵したとしても微弱であることが多く、ビール醸造には不適である。
関連する特許の中で、ビール酵母以外の醸造用酵母をビール製造に使用する技術としては「麦芽発泡酒醸造用酵母及びその取得方法並び麦芽発泡酒の製造方法」(特許文献1)、自然界から分離した酵母を清酒製造に使用する技術としては「海藻から分離した酵母を用いる清酒の製造法」(特許文献2)、「海水から分離した酵母を用いる清酒の製造法」(特許文献3)、「桜の花から分離した酵母及びその取得方法並びに該酵母を用いた清酒その他の飲食品の製造方法」(特許文献4)、「酵母の分離方法並びにその方法により得られた醸造用酵母及び清酒」(特許文献5)、「天然酵母の取得と有色米による酒類の製造方法」(特許文献6)がある。しかし、エゾヤマザクラのサクランボから分離され、ビール製造に適用可能な酵母に関する従来技術はない。
本発明は、北海道十勝地方に自生するエゾヤマザクラのサクランボから分離した酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487によって特徴的で良好な風味を備えたビールを製造する方法に関するものである。
上記の目的を達成するためには、北海道十勝地方に自生するエゾヤマザクラのサクランボから分離した酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487を利用すれば良い。本発明者は鋭意研究した結果、酵母菌株によって特徴的で良好な風味を備えたビールを製造可能であることを発見し、本発明を完成させた。
本発明の北海道十勝地方に自生するエゾヤマザクラのサクランボから分離した酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487によって、消費者の多様なニーズに応える特徴的で良好な風味を備えたビールを製造可能となる。
本発明の酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487は、次のような方法で分離した。北海道十勝支庁管内に自生するエゾヤマザクラのサクランボ5gを、小麦粉50gおよび水25mLと混捏してパン生地を調製した。これを室温で数日間放置してパン生地が膨張した後、そのうちの一部(約0.1g)を集積用培地(スクロース20%、酵母エキス.3%、ポリペプトン0.5%、クロラムフェニコール50μg/mL)10mLに入れて30℃、4日間静置培養した。滅菌したパスツールピペットで培地の底部の沈殿を抜き取り、別の新しい集積培地に接種してさらに30℃で静置培養した。4日目に104希釈して固体化した集積用培地(2%寒天を添加して固化したもの)上に塗布した。出現したコロニーのひとつを分離し、NITE P-487とした。
このようにして分離した本菌株の酵母NITE P-487は次のような性質を示したことから、Saccharomyces cerevisiaeと同定した。
(1)形態学的性質
YM寒天培地で25℃、3日間培養したときの細胞は球形または楕円形で、大きさは3〜6 μm × 4〜7μmで、多極出芽する。コロニーは淡褐色で、光沢がある。SPO培地(酢酸カリウム1.0%、酵母エキス0.1%、グルコース0.05%、寒天2.0%)上で25℃、3〜5日培養すると1〜4個の球形の胞子を形成する。
YM寒天培地で25℃、3日間培養したときの細胞は球形または楕円形で、大きさは3〜6 μm × 4〜7μmで、多極出芽する。コロニーは淡褐色で、光沢がある。SPO培地(酢酸カリウム1.0%、酵母エキス0.1%、グルコース0.05%、寒天2.0%)上で25℃、3〜5日培養すると1〜4個の球形の胞子を形成する。
(2)生理的性質
温度22〜37℃で生育する。
温度22〜37℃で生育する。
(3)糖の発酵性
グルコース + ラクトース -
ガラクトース + ラフィノース +
スクロース + トレハロース +
マルトース + イヌリン -
グルコース + ラクトース -
ガラクトース + ラフィノース +
スクロース + トレハロース +
マルトース + イヌリン -
(4)炭素源の資化性
グルコース + D-アラビノース -
ガラクトース + D-リボース -
L-ソルボース - L-ラムノース -
スクロース + エリスリトール -
マルトース + アドニトール -
セロビオース - ズルシトール -
トレハロース + D-マンニトール -
ラクトース - D-ソルビトール -
メリビオース - α-メチルグルコシド -
ラフィノース + サリシン -
メレジトース - グルコン酸 -
イヌリン - 乳酸 -
可溶性デンプン - コハク酸 -
D-キシロース - クエン酸 -
L-アラビノース - イノシトール -
グルコース + D-アラビノース -
ガラクトース + D-リボース -
L-ソルボース - L-ラムノース -
スクロース + エリスリトール -
マルトース + アドニトール -
セロビオース - ズルシトール -
トレハロース + D-マンニトール -
ラクトース - D-ソルビトール -
メリビオース - α-メチルグルコシド -
ラフィノース + サリシン -
メレジトース - グルコン酸 -
イヌリン - 乳酸 -
可溶性デンプン - コハク酸 -
D-キシロース - クエン酸 -
L-アラビノース - イノシトール -
(5)その他の資化性および生育の特徴
硝酸カリウム - ゼラチンの液化 -
カダベリン - アルブチンの分解 -
L-リジン - 尿素の分解 -
エチルアミン塩酸塩 - 有機酸生成 -
50%グルコース - シクロヘキシイミド耐性 100mg/L -
硝酸カリウム - ゼラチンの液化 -
カダベリン - アルブチンの分解 -
L-リジン - 尿素の分解 -
エチルアミン塩酸塩 - 有機酸生成 -
50%グルコース - シクロヘキシイミド耐性 100mg/L -
(6)リボソームRNAスペーサー領域の塩基配列
培養菌体から常法によりDNAを抽出し、pITS1 (5’-TCCGTAGGTGAACCTGCGG-3’)とpITS4
(5’-TCCTCCGCTTATTGATATG -3’)のプライマーによって約760塩基対のリボソームRNAスペーサー領域を増幅させる。この領域はリボソームRNA内部の塩基配列よりも塩基置換頻度が高いために、近縁種の解析に効果的とされている。増幅断片はpITS1, pITS2 (5’-GATCTCTTGGTTCTCGCATC-3’), pITS3 (5’-ATACCAAAGGGCGCAATGTG-3’)およびpITS4の各プライマーでサイクルシーケンシングを行い、ABI PRISM 310 Genetic Analyzer (アプライドバイオシステムズ ジャパン株式会社)にて塩基配列を決定する。この配列情報をインターネット上のBLASTプログラムに入力してホモロジー検索を行うと、Saccharomyces cerevisiae NBRC 2106の配列(日本DNAデータバンク アクセッション番号AY130343)と完全に一致する。
培養菌体から常法によりDNAを抽出し、pITS1 (5’-TCCGTAGGTGAACCTGCGG-3’)とpITS4
(5’-TCCTCCGCTTATTGATATG -3’)のプライマーによって約760塩基対のリボソームRNAスペーサー領域を増幅させる。この領域はリボソームRNA内部の塩基配列よりも塩基置換頻度が高いために、近縁種の解析に効果的とされている。増幅断片はpITS1, pITS2 (5’-GATCTCTTGGTTCTCGCATC-3’), pITS3 (5’-ATACCAAAGGGCGCAATGTG-3’)およびpITS4の各プライマーでサイクルシーケンシングを行い、ABI PRISM 310 Genetic Analyzer (アプライドバイオシステムズ ジャパン株式会社)にて塩基配列を決定する。この配列情報をインターネット上のBLASTプログラムに入力してホモロジー検索を行うと、Saccharomyces cerevisiae NBRC 2106の配列(日本DNAデータバンク アクセッション番号AY130343)と完全に一致する。
本発明の酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487および市販のビール製造用酵母の乾燥菌体を使用してビールを製造し、得られたビールの品質について官能検査を行った。
小麦麦芽100kgおよび大麦麦芽85kgを36℃の水700Lに入れ、攪拌しながら加熱して62℃に達したら30分間保温、その後72℃にまで上げて40分間保持した。さらに加熱して100℃に達したら20分間放置して、一番麦汁を回収した。残渣には500Lの水を加えて同様の処理を行って二番麦汁を回収、糖濃度が11.5%になるように加水して1400Lとした。この麦汁を煮沸してホップ880gを二回に分けて入れ攪拌し、2時間後に遠心分離によって麦汁を清澄化した。乾燥酵母2kgは30℃の温水につけて復元し、20℃に設定した発酵タンク中の麦汁に接種した。5日目で発酵麦汁の温度が16℃に達したところで糖はほぼ消費された。発酵タンクの温度は徐々に低下させて10日目に2℃で一定となり、15日目に瓶詰めして冷蔵保存した。両方のビールともに開封直後に官能検査したところ、NITE P-487でつくったビールのほうが、市販のビール製造用酵母でつくったビールよりも特徴的で良好な風味を備えていた。
上述のように北海道十勝地方に自生するエゾヤマザクラのサクランボから分離した酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487を利用することにより、特徴的で良好な風味を備えたビールを製造可能となる。
Claims (2)
- 北海道十勝地方に自生するエゾヤマザクラのサクランボから分離した酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487で発酵させることを特徴とするビールの製造方法。
- 北海道十勝地方に自生するエゾヤマザクラのサクランボから分離した酵母Saccharomyces cerevisiae NITE P-487で発酵させることを特徴とするビールの製造方法によって製造されたビール。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010095349A JP2011223906A (ja) | 2010-04-16 | 2010-04-16 | ビールの製造方法および本方法によって得られるビール |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010095349A JP2011223906A (ja) | 2010-04-16 | 2010-04-16 | ビールの製造方法および本方法によって得られるビール |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2011223906A true JP2011223906A (ja) | 2011-11-10 |
Family
ID=45040088
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2010095349A Pending JP2011223906A (ja) | 2010-04-16 | 2010-04-16 | ビールの製造方法および本方法によって得られるビール |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2011223906A (ja) |
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2010
- 2010-04-16 JP JP2010095349A patent/JP2011223906A/ja active Pending
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