実施の形態1.
先ず、比較のために、一般的なリラクタンスモータ500について、図1乃至図11を参照しながら説明する。
図1乃至図14は比較のために示す図で、図1は一般的なリラクタンスモータ500の横断面図、図2は一般的なリラクタンスモータ500の固定子510の横断面図、図3は一般的なリラクタンスモータ500の回転子520の横断面図、図4は図3のA−A断面図、図5は一般的なリラクタンスモータ500の回転子520の横断面図、図6は図5のB−B断面図、図7は一般的なリラクタンスモータ500の磁束線図(d軸磁束)、図8は図7の部分拡大図、図9は一般的なリラクタンスモータ500の磁束線図(q軸磁束)、図10は図9の部分拡大図、図11はq軸における磁束の漏れを示す図、図12は別の一般的なリラクタンスモータ600の横断面図、図13は別の一般的なリラクタンスモータ600の回転子620の横断面図、図14は図13のC部拡大図、図15は別の一般的なリラクタンスモータ600の回転子620の高速回転時の応力による変形を示す図((a)は原形、(b)は高速回転時)である。
図1に示す一般的なリラクタンスモータ500は、円筒状の固定子510と、この円筒状の固定子510の内周部に所定の径方向寸法の空隙を介して設けられる回転子520と、を備える。
固定子510は、回転子に永久磁石を用いる永久磁石型モータもしくは誘導電動機の固定子と同様の構成である。図2に示すように、固定子510は、円筒状の固定子鉄心511と、この固定子鉄心511の内周縁に沿って複数個周方向に略等間隔に形成されるスロット515に絶縁部材(図示せず)を介して挿入される巻線513と、を備える。
固定子鉄心511は、外周部が円筒状のコアバック512で、このコアバック512から内側にティース514(歯部)が複数径方向に放射状に形成されている。図2の例は、スロット515の数が24であり、ティース514の数も、スロット515の数と同じ24である。
巻線513は、例えば、分布巻もしくは集中巻の三相の巻線(例えば、Y結線)である。
固定子510の内周部に所定の空隙(径方向の寸法が略一定の空間)を介して、回転子520が配置される。
図3乃至図11を参照しながら、回転子520について説明する。回転子520の極数は、4極である。回転磁界を発生する固定子510の内周部に所定の空隙を介して配置される回転子520は、所定の形状に打ち抜かれた電磁鋼板を所定枚数積層して構成される回転子鉄心521と、この回転子鉄心521の軸方向両端部に設けられる端板526(例えば、図4、図6参照)と、回転子鉄心521及び端板526に嵌合する回転軸524と、を備える。
回転子鉄心521を構成する電磁鋼板には、第1のスリット部522a、第2のスリット部522bが設けられる。この第1のスリット部522a、第2のスリット部522bは、回転軸524が嵌合する軸孔に頂点を向け、一方のd軸から他方のd軸へ向かう円弧形状(逆円弧形状)である。かつ、この第1のスリット部522a、第2のスリット部522bは、当該極数分(図3では4極)だけ回転子鉄心521の外周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
回転子鉄心521を構成する電磁鋼板は、例えば、カシメ523により積層される。さらに、カシメ523により積層された回転子鉄心521の軸方向両端部に、端板526が固定される。但し、回転子鉄心521の電磁鋼板の固定は、カシメ523に限定されるものではない。例えば、リベットでの固定、溶接等でもよい。
複数の第1のスリット部522a、第2のスリット部522bは、フラックスバリアとして機能する。そのため、固定子鉄心511からのq(quadrature)軸磁束(一方のq軸から他方のq軸への磁束)を通りにくくし(q軸磁路が小さい)、一方、第1のスリット部522a、第2のスリット部522bの間の磁路(鉄心部)は固定子鉄心511からのd(direct)軸磁束(一方のd軸から他方のd軸への磁束)を通す(d軸磁路が大きい)。
上記のように構成されたリラクタンスモータ500は、固定子510の複数の界磁部より、固定子鉄心511に回転磁界が与えられる。これにより、リラクタンストルクTが発生する。このリラクタンストルクTは次式で表される。
T=Pn(Ld−Lq)id×iq (1)
ここで、Pnは極対数、Ldはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンス、idはd軸の電流、iqはq軸の電流である。
上記(1)式より、このモータ(リラクタンスモータ500)の性能を左右するのは、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスの差(Ld−Lq)の大きさであることが分かる。そこで、この差(Ld−Lq)を大きくするために、第1のスリット部522a、第2のスリット部522b(フラックスバリア)を設けることにより、第1のスリット部522a、第2のスリット部522bを横切るq軸方向の磁路に抵抗を与える一方、第1のスリット部522a、第2のスリット部522b間に挟まれたd軸方向の磁路を確保している。
即ち、図7、図8に示すように、d軸磁束(図7の実線矢印)は、円弧状のスリット(図8の拡大図に示すように、ここでは、1極に6本のスリットが設けられる)の間の磁路(鉄心部)を通る。
また、図9、図10に示すように、q軸磁束(図9の実線矢印)は、円弧状のスリット(図10の拡大図に示すように、ここでは、1極に6本のスリットが設けられる)がフラックスバリアとして存在するため、通りにくい。q軸磁束は、d軸磁束よりも小さいため、図9の実線矢印は、図7の実線矢印よりも細い線で示している。
従って、d軸インダクタンスLdは、q軸インダクタンスLqよりも大きくなり、リラクタンスモータ500は、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差に比例したリラクタンストルクを発生する。
しかしながら、一般的なリラクタンスモータ500では、円弧状のスリットによりフラックスバリアを設けても、回転子鉄心521外周部とスリットとの間の鉄心部から磁束の漏れが発生するという課題がある。
図11に示すように、q軸において、主たるq軸磁束q1の他に、回転子鉄心521外周部と第1のスリット部522a、第2のスリット部522bとの間の鉄心部から漏れる漏れ磁束q2が存在する。この漏れ磁束q2があるため、q軸インダクタンスを小さくするのには限界があった。
そこで、第2のスリット部522bとの間の鉄心部から漏れる漏れ磁束q2を抑制するとともに、主たるq軸磁束q1も低減するために、図12乃至図14に示す別の一般的なリラクタンスモータ600が提案されている。
図12に示すように、リラクタンスモータ600は、円筒状の固定子610と、この円筒状の固定子610の内周部に所定の径方向寸法の空隙を介して設けられる回転子620と、を備える。
固定子610は、リラクタンスモータ500の固定子510と同様の構成であるので、説明は省略する。
固定子610の内周部に所定の空隙(径方向の寸法が略一定の空間)を介して、回転子620が配置される。
図13、図14を参照しながら、回転子620について説明する。回転子620の極数も、4極である。回転子鉄心621を構成する電磁鋼板には、第1のスリット部622a、第2のスリット部622bが設けられる。この第1のスリット部622a、第2のスリット部622bは、回転軸624が嵌合する軸孔に頂点を向け、一方のd軸から他方のd軸へ向かう円弧形状(逆円弧形状)である。かつ、この第1のスリット部622a、第2のスリット部622bは、当該極数分(図13では4極)だけ回転子鉄心621の外周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
回転子鉄心621は、さらにd軸上(極中心)に第3のスリット部622cを備える。回転子620は4極であるから、4個の第3のスリット部622cが、周方向に略等間隔に形成されている。
第3のスリット部622cは、図14にも示すように、d軸上(極中心)に形成されるとともに、回転子鉄心621の外周部において、開口部622c−1にて開口している。そのため、この第3のスリット部622cにより、第2のスリット部622bとの間の鉄心部から漏れる漏れ磁束q2を抑制(小さくする)することができる。また、主たるq軸磁束q1も抑制(小さくする)することができる。q軸磁束q1並びに漏れ磁束q2については、図11を参照。
図13に示す回転子620は、d軸上(極中心)に回転子鉄心621の外周部において開口する第3のスリット部622cを設けることにより、第2のスリット部622bとの間の鉄心部から漏れる漏れ磁束q2並びに主たるq軸磁束q1を抑制できるが、以下に示す課題がある。
即ち、図15に示すように、回転子620が高速で回転するときの遠心力による応力により、回転子620が変形しやすい。図15(a)は回転子620の原形であり、図15(b)は回転子620が高速で回転したときの応力により変形した状態を示している。
本実施の形態は、d軸上(極中心)にスリット部を設けることにより、主にq軸磁束q1(図11参照)を低減することができるとともに、回転子が高速で回転しても、応力による変形を抑制できる構成の回転子について説明する。
図16乃至図25は実施の形態1を示す図で、図16はリラクタンスモータ100の横断面図、図17は図16のD−D断面図、図18は図17のE部付近の拡大図、図19はリラクタンスモータ100の固定子110の横断面図、図20はリラクタンスモータ100の固定子鉄心111の横断面図、図21は図20のスロット115付近の拡大図、図22はリラクタンスモータ100の回転子120の横断面図、図23は図22の部分拡大図、図24は図22のF−F断面図、図25は回転子鉄心121の平面図、図26は図25の部分拡大図、図27はリラクタンスモータ100の回転子120の高速回転時の応力による変形を示す図((a)は原形、(b)は高速回転時)である。
図16に示すように、リラクタンスモータ100(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子110と、この円筒状の固定子110の内周に、所定の径方向寸法の空隙116(図18参照)を介して配置される回転子120と、を備える。リラクタンスモータ100は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ100の極数は、任意の極数でよい。
空隙116の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ100の固定子110は、図17、図19に示すように、固定子鉄心111と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心111のスロット115(図20参照)に挿入される巻線113と、を備える。巻線113は、固定子鉄心111の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線113の固定子鉄心111の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド113a(図17参照)と呼ぶ。
リラクタンスモータ100の固定子鉄心111は、図20に示すように、外周部が円筒状のコアバック112であり、このコアバック112の内側に複数のティース114が放射状に形成されている。そして、隣接するティース114の間の空間をスロット115と呼ぶ。図20に示す例では、24個のスロット115が、コアバック112の内側に周方向に略等間隔に形成される。スロット115の数は、24個に限定されるものではなく、任意でよい。ティース114は、周方向の長さ(幅)が略一定である。そのため、スロット115の周方向の長さ(幅)は、コアバック112側が回転子120側よりも長くなる形状である。
図21の拡大図に示すように、ティース114は、コアバック112から径方向に平行に回転子120側に伸びて形成される。ティース114の先端114aは、周方向の両端が、例えば傘状に周方向に突出している。スロット115は、コアバック112側から回転子120側に向かって、周方向の長さ(幅)が短くなるが、ティース114の先端114aが傘状に周方向に突出しているために、回転子120側の終端において、スロット115内部よりも狭くなっている。スロット115は内周部に開口しているが、この開口部を、例えば、スロット開口部117(スロットオープニング)と呼ぶ。このスロット開口部117から、巻線113が挿入される。
巻線113には、銅線に絶縁が施されたマグネットワイヤが用いられる。巻線113は、例えば、三相(U相、V相及びW相)の分布巻であるが、集中巻でもよい。
スロット115に設けられる絶縁部材(図示せず)には、スロットセルやウエッジが用いられる。
次に、本実施の形態の特徴部分である回転子120について説明する。図22乃至図24に示すように、回転子120は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心121と、回転子鉄心121の軸方向両端面に固定される端板126と、回転子鉄心121及び端板126の略中心部に嵌合する回転軸124と、を備える。
回転子鉄心121を構成する電磁鋼板には、第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122cが設けられる。第1のスリット部122a、第2のスリット部122bをスリットと呼ぶ。第3のスリット部122cをd軸スリットと呼ぶ。
第1のスリット部122a、第2のスリット部122bは、回転軸124が嵌合する軸孔125に頂点を向け、一方のd軸から他方のd軸へ向かう円弧形状(逆円弧形状)である。且つ、この第1のスリット部122a、第2のスリット部122bは、当該極数分(図22では4極)だけ回転子鉄心121の外周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
第1のスリット部122a、第2のスリット部122bと回転子鉄心121の外周との間には、夫々外周薄肉部127a(ブリッジともいう)、外周薄肉部127bが存在する。
第3のスリット部122cは、d軸上(極中心)に径方向に形成される。図13の一般的な回転子620の第3のスリット部622cとの違いは、一般的な回転子620の第3のスリット部622cが回転子鉄心621の外周に開口しているのに対して、本実施の形態の回転子120における第3のスリット部122cは、回転子鉄心121の内周(軸孔125)に開口している点である(図26参照)。第3のスリット部122cと回転子鉄心121の外周との間には、外周薄肉部127c(ブリッジともいう)が存在する。
図22に示す回転子120は4極であるから、第3のスリット部122cは、周方向に90°間隔で4本形成されている。
回転子鉄心121を構成する電磁鋼板は、高透磁率を有する厚さt=0.5mm(0.1〜1mm)程度の電磁鋼板を所定の形状にプレスで打ち抜き、積層してカシメで固定している。加工はレーザーカットでもよい。さらに、カシメにより積層された回転子鉄心121の軸方向両端部に、端板126が固定される。但し、回転子鉄心121の電磁鋼板の固定は、カシメに限定されるものではない。例えば、リベットでの固定、溶接等でもよい。
第1のスリット部122a、第2のスリット部122bは、フラックスバリアとして機能する。そのため、固定子鉄心111からのq軸磁束(一方のq軸から他方のq軸への磁束)を通りにくくし(q軸磁路が小さい)、一方、第1のスリット部122a、第2のスリット部122bの間の磁路(鉄心部)は固定子鉄心111からのd軸磁束(一方のd軸から他方のd軸への磁束)を通す(d軸磁路が大きい)。
それに加えて、本実施の形態の回転子120は、夫々のd軸上(極中心)に第3のスリット部122cを備えるので、固定子鉄心111からのq軸磁束がさらに通りにくくなる。第3のスリット部122cより、主に主たるq軸磁束q1(図11参照)が通りにくくなり、q軸インダクタンスLqが小さくなる。q軸インダクタンスLqが小さくなるため、リラクタンストルクTを大きくすることができる。
また、第3のスリット部122cは、回転子鉄心121の内周(軸孔125)に開口し、回転子鉄心121の外周側は、外周薄肉部127cが存在するので、高速回転時における応力による変形が抑制される特徴を有する。
図27に示すように、一般的なリラクタンスモータ600の回転子620の高速回転時の変形(図15)に比べて、本実施の形態の回転子120の高速回転時の変形は、明らかに小さい。
次に、図図28乃至図35を参照しながら変形例1のリラクタンスモータ200について説明する。
図28乃至図35は実施の形態1を示す図で、図28は変形例1のリラクタンスモータ200の横断面図、図29は図28のG−G断面図、図30は図29のH部付近の拡大図、図31は変形例1のリラクタンスモータ200の回転子220の横断面図、図32は図31のJ−J断面図、図33は変形例1の回転子鉄心221の平面図、図34は図33の部分拡大図、図35は図34の部分拡大図である。
リラクタンスモータ100の回転子120の第3のスリット部122cは、例えば、図26に示すように、周方向の幅が径方向に同一である。q軸磁束は、第3のスリット部122cの周方向の幅が大きくなるほど通りにくくなる。そこで、変形例1のリラクタンスモータ200では、d軸上(極中心)に形成する第3のスリット部222c(後述する)を内周に向かうにつれ周方向の幅が大きくなり、且つ内周(軸孔225(後述する))へ開口するように構成する。
図28に示すように、リラクタンスモータ200(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子210と、この円筒状の固定子210の内周に、所定の径方向寸法の空隙216(図30参照)を介して配置される回転子220と、を備える。リラクタンスモータ200は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ200の極数は、任意の極数でよい。
空隙216の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ200の固定子210は、リラクタンスモータ100の固定子110と同様の構成である。即ち、図29に示すように、固定子鉄心211と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心211のスロット(図示せず、但し図20のスロット115と同じ)に挿入される巻線213と、を備える。巻線213は、固定子鉄心211の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線213の固定子鉄心211の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド213aと呼ぶ。
次に、変形例1のリラクタンスモータ200の特徴部分である回転子220について説明する。図31、図32に示すように、回転子220は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心221と、回転子鉄心221の軸方向両端面に固定される端板226と、回転子鉄心221及び端板226の略中心部に嵌合する回転軸224と、を備える。
回転子鉄心221を構成する電磁鋼板には、第1のスリット部222a、第2のスリット部222b、第3のスリット部222cが設けられる。第1のスリット部222a、第2のスリット部222bをスリットと呼ぶ。第3のスリット部222cをd軸スリットと呼ぶ。
第1のスリット部222a、第2のスリット部222bは、回転軸224が嵌合する軸孔225に頂点を向け、一方のd軸から他方のd軸へ向かう円弧形状(逆円弧形状)である。且つ、この第1のスリット部222a、第2のスリット部222bは、当該極数分(図31では4極)だけ回転子鉄心221の外周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
第1のスリット部222a、第2のスリット部222bと回転子鉄心221の外周との間には、夫々外周薄肉部227a(ブリッジともいう)、外周薄肉部227bが存在する。
第3のスリット部222cは、d軸上(極中心)に径方向に形成される。第3のスリット部122c(図26参照)との違いは、d軸上(極中心)に形成される第3のスリット部122cは径方向に周方向の幅が均一であるが、d軸上(極中心)に形成される第3のスリット部222cは、内周に向かうにつれ周方向の幅が大きくなっている。第3のスリット部122cは内周(軸孔125)へ開口しているが、第3のスリット部222cも同様に内周(軸孔225)へ開口している。
図34に示すD1〜D4を、以下のように定義する。
(1)D1:第1のスリット部222aと第3のスリット部222cとの間の鉄心部の回転子鉄心221外周側端部における幅;
(2)D2:第1のスリット部222aと第3のスリット部222cとの間の鉄心部の回転子鉄心221内部での幅(d軸磁束の一部が通る磁路幅);
(3)D3:外周薄肉部227cの径方向の幅;
(4)D4:外周薄肉部227a,227bの径方向の幅。
先ず第1に、第1のスリット部222aと第3のスリット部222cとの間の鉄心部の回転子鉄心221内部での幅D2は、第1のスリット部222aもしくは第3のスリット部222cに沿って略一定である。
D2は、第1のスリット部222aと第3のスリット部222cとの間の鉄心部の回転子鉄心221外周側端部における幅D1と略等しい。
即ち、第1のスリット部222aと第3のスリット部222cとの間の鉄心部の回転子鉄心221の幅は、第1のスリット部222aの一方の端部から他方の端部まで、略一定である。
d軸上(極中心)に設けた第3のスリット部222cの幅(周方向)が大きいほどq軸方向の磁束を低減できるので、回転子鉄心221の内周(軸孔225)へ向かうにつれ、第3のスリット部222cのスリット幅(周方向)を大きくしている。これにより、q軸磁束が低減できる。
ただし、第3のスリット部222cの幅(周方向)を大きくすると、d軸磁束の一部が通る磁路幅D2が狭くなってしまう。D2が小さくなりすぎると磁気飽和が起こり、結果としてモータ効率が悪化する。よって、D2=D1(第1のスリット部222aと第3のスリット部222cとの間の鉄心部の回転子鉄心221の幅は、第1のスリット部222aの一方の端部から他方の端部まで、略一定と同義)となるようにD2を設定することが好ましい。
q軸磁束が通過するとき、d軸上(極中心)に第3のスリット部222cが存在すると、その両端(回転子鉄心221の外周側端部並びに内周側端部)の磁路(例えば、回転子鉄心221の外周側端部の外周薄肉部227c)を通過しようとする。そこで、磁路からの漏れを低減させるために、d軸上(極中心)に第3のスリット部222cは、回転子鉄心221の内周(軸孔225)へ開口した形状にすることが好ましい。
また、図33からわかるように、d軸上(極中心)の第3のスリット部222cを回転子鉄心221の内周(軸孔225)へ開口した形状とすると、回転子鉄心221の内周(軸孔225)とd軸上(極中心)の第3のスリット部222cのスリット4本を一度で打ち抜くことができるため、生産性が向上する。
外周薄肉部227cの径方向の幅D3、外周薄肉部227a,227bの径方向の幅D4は、電磁鋼板の板厚(0.1〜1.0mm)程度とする。D3、D4がこれよりも大きいとq軸磁束の漏れが増大する。また、D3、D4がこれよりも小さいと強度の確保が困難になる。
また、図35に示すように、d軸上(極中心)の第3のスリット部222cの回転子鉄心221の外周側端部の丸取りRを、他のスリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b)の回転子鉄心221の外周端部の丸取りrよりも大きくしている。
d軸上(極中心)の第3のスリット部222cの回転子鉄心221の外周側端部は、回転子220が回転したときに、最も応力が発生する部分である。よって、この部分の応力緩和のために、丸取りRは大きく設定することが好ましい。
他のスリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b)端部の丸取りrも大きくしたほうが、夫々の他のスリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b)の端部における応力緩和には有効である。しかし、q軸磁束は、回転子鉄心221の外周薄肉部227a,227b,227cを主に通る関係上、丸取りrを大きくすると、外周薄肉部227a,227bを通るq軸磁束が増加するためq軸インダクタンスLqも大きくなる。よって、r<Rとなるように設定することが好ましい。
図示はしないが、変形例1のリラクタンスモータ200も、リラクタンスモータ100と同様、d軸上(極中心)の第3のスリット部222cが、回転子鉄心221の内周(軸孔225)へ開口し、回転子鉄心221の外周側には、外周薄肉部227cが存在するので、高速回転時の応力による回転子220の変形は、比較例のリラクタンスモータ600(図12参照)よりも小さい。
以上のように、変形例1のリラクタンスモータ200は、d軸上(極中心)に第3のスリット部222cを設け、この第3のスリット部222cは、回転子鉄心221の内周(軸孔225)へ開口し、回転子鉄心221の外周側には外周薄肉部227cが存在し、内周に向かうにつれ周方向の幅が大きくなる。また、第3のスリット部222cは、第1のスリット部222aと第3のスリット部222cとの間の鉄心部の回転子鉄心221内部での幅D2が、第1のスリット部222aもしくは第3のスリット部222cに沿って略一定である。このように構成することにより、以下に示す効果を奏する。
(1)d軸上(極中心)に設けた第3のスリット部222cの幅(周方向)が大きいほどq軸方向の磁束を低減できるので、回転子鉄心221の内周(軸孔225)へ向かうにつれ、第3のスリット部222cのスリット幅(周方向)を大きくすることにより、q軸磁束が低減できる。
(2)第1のスリット部222aと第3のスリット部222cとの間の鉄心部の回転子鉄心221の幅D2(d軸磁束の一部が通る磁路幅)は、第1のスリット部222aの一方の端部から他方の端部まで略一定とすることにより、d軸磁束の磁路の磁気飽和を抑制できる。
(3)d軸上(極中心)に第3のスリット部222cは、回転子鉄心221の内周(軸孔225)へ開口した形状にすることにより、q軸磁束の漏れを抑制できる。
(4)d軸上(極中心)の第3のスリット部222cを回転子鉄心221の内周(軸孔225)へ開口した形状とすることにより、回転子鉄心221の内周(軸孔225)とd軸上(極中心)の第3のスリット部222cのスリット4本を一度で打ち抜くことができるため、生産性が向上する。
(5)外周薄肉部227cの径方向の幅D3、外周薄肉部227a,227bの径方向の幅D4を、電磁鋼板の板厚(0.1〜1.0mm)程度とすることにより、q軸磁束の漏れを抑制するとともに、強度を確保することができる。
(6)d軸上(極中心)の第3のスリット部222cの回転子鉄心221の外周側端部の丸取りRを、他のスリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b)の回転子鉄心221の外周端部の丸取りrよりも大きくしているので、回転子220が回転したときの応力を緩和することができる。
(7)第1のスリット部222a並びに第2のスリット部222b端部の丸取りrを、第3のスリット部222cの丸取りRより小さくすることにより、外周薄肉部227a,227bを通るq軸磁束を抑制し、q軸インダクタンスLqを所定の大きさにすることができる。
次に、変形例2のリラクタンスモータ300について図36乃至図41を参照しながら説明する。
図36乃至図42は実施の形態1を示す図で、図36は変形例2のリラクタンスモータ300の横断面図、図37は図36のK−K断面図、図38は図37のL部付近の拡大図、図39は変形例2のリラクタンスモータ300の回転子320の横断面図、図40は図39のM−M断面図、図41は変形例2の回転子鉄心321の平面図、図42は図41の部分拡大図である。
変形例1のリラクタンスモータ200では、第3のスリット部222cが回転子鉄心221の内周(軸孔225)に開口していたが、その構成では、高速回転時の遠心力に対する強度を確保できない場合がある。
変形例2のリラクタンスモータ300は、そのような場合に適するもので、このモータでは、第3のスリット部322cが回転子鉄心321の内周(軸孔325)に開口していない。
図36に示すように、リラクタンスモータ300(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子310と、この円筒状の固定子310の内周に、所定の径方向寸法の空隙316(図38参照)を介して配置される回転子320と、を備える。リラクタンスモータ300は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ300の極数は、任意の極数でよい。
空隙316の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ300の固定子310は、リラクタンスモータ100の固定子110と同様の構成である。即ち、図37に示すように、固定子鉄心311と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心311のスロット(図示せず、但し図20のスロット115と同じ)に挿入される巻線313と、を備える。巻線313は、固定子鉄心311の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線313の固定子鉄心311の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド313aと呼ぶ。
次に、変形例2のリラクタンスモータ300の特徴部分である回転子320について説明する。図39、図40に示すように、回転子320は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心321と、回転子鉄心321の軸方向両端面に固定される端板326と、回転子鉄心321及び端板326の略中心部に嵌合する回転軸324と、を備える。
回転子鉄心321を構成する電磁鋼板には、第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322cが設けられる。第1のスリット部322a、第2のスリット部322bをスリットと呼ぶ。第3のスリット部322cをd軸スリットと呼ぶ。
第1のスリット部322a、第2のスリット部322bは、回転軸324が嵌合する軸孔325に頂点を向け、一方のd軸から他方のd軸へ向かう円弧形状(逆円弧形状)である。且つ、この第1のスリット部322a、第2のスリット部322bは、当該極数分(図39では4極)だけ回転子鉄心321の外周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
第1のスリット部322a、第2のスリット部322bと回転子鉄心321の外周との間には、夫々外周薄肉部327a(ブリッジともいう)、外周薄肉部327bが存在する(図42参照)。
第3のスリット部322cは、d軸上(極中心)に径方向に形成される。第3のスリット部222c(図33参照)との違いは、第3のスリット部222cは回転子鉄心221の内周(軸孔225)に開口しているが、第3のスリット部322cは、図41、図42に示すように、回転子鉄心321の内周(軸孔325)に開口していない点である。周方向に略等間隔に形成される4個の第3のスリット部322cと、軸孔325との間に、内周薄肉部328(図42参照)が形成されている。内周薄肉部328の径方向の幅は、外周薄肉部327a,327b,327cと同様、電磁鋼板の板厚(0.1〜1.0mm)程度である。
変形例2のリラクタンスモータ300は、変形例1のリラクタンスモータ200と比較した場合、変形例1のリラクタンスモータ200にはない内周薄肉部328からのq軸磁束の漏れが若干あるが、遠心力に対する強度は変形例1のリラクタンスモータ200よりも大きい。
次に図43乃至図53を参照しながら変形例3のリラクタンスモータ400について説明する。
図43乃至図55は実施の形態1を示す図で、図43は変形例3のリラクタンスモータ400の横断面図(図45のP−P断面図)、図44は変形例3のリラクタンスモータ400の横断面図(図45のQ−Q断面図)、図45は図43及び図44のN−N断面図、図46は図45のR部拡大図、図47は変形例3のリラクタンスモータ400の回転子420の横断面図(図49のV−V断面図)、図48は変形例3のリラクタンスモータ400の回転子420の横断面図(図49のW−W断面図)、図49は図47及び図48のU−U断面図、図50は第1のコアシート221aの平面図、図51は第2のコアシート321aの平面図、図52は図49相当図で、第1のコアシート221aと第2のコアシート321aの組合せの他の例を示す図、図53は図49相当図で、第1のコアシート221aと第2のコアシート321aの組合せの他の例を示す図、図54は図49相当図で、第1のコアシート221aと第2のコアシート321aの組合せの他の例を示す図、図55は図49相当図で、第1のコアシート221aと第2のコアシート321aの組合せの他の例を示す図である。
変形例2のリラクタンスモータ300は、第3のスリット部322cが回転子鉄心321の内周(軸孔325)に開口していないものであり、遠心力に対する強度は確保されるが、内周薄肉部328(図42参照)からのq軸磁束の漏れが多少ある。
そこで、変形例3のリラクタンスモータ400では、d軸上(極中心)のスリットが回転子鉄心の内周(軸孔)に開口しているコアシート(例えば、変形例1のリラクタンスモータ200)と、d軸上(極中心)のスリットが回転子鉄心の内周(軸孔)に開口していないコアシート(例えば、変形例2のリラクタンスモータ300)とを組み合せて、遠心力に対する強度は確保するとともに、内周薄肉部からのq軸磁束の漏れを抑制する。
図43、図44に示すように、変形例3のリラクタンスモータ400(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子410と、この円筒状の固定子410の内周に、所定の径方向寸法の空隙416(図46参照)を介して配置される回転子420と、を備える。リラクタンスモータ400は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ400の極数は、任意の極数でよい。
空隙416の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ400の固定子410は、リラクタンスモータ100の固定子110と同様の構成である。即ち、図45に示すように、固定子鉄心411と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心411のスロット(図示せず、但し図20のスロット115と同じ)に挿入される巻線413と、を備える。巻線413は、固定子鉄心411の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線413の固定子鉄心411の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド413aと呼ぶ。
次に、変形例3のリラクタンスモータ400の特徴部分である回転子420について説明する。図47乃至図49に示すように、回転子420は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心421と、回転子鉄心421の軸方向両端面に固定される端板426と、回転子鉄心421及び端板426の略中心部に嵌合する回転軸424と、を備える。
変形例3の回転子鉄心421は、図49に示すように、変形例1のリラクタンスモータ200の回転子鉄心221を構成する第1のコアシート221a(図50参照、第一のコアシート)と、変形例2のリラクタンスモータ300の回転子鉄心321を構成する第2のコアシート321a(図51参照、第二のコアシート)との二種類のコアシートを積層して構成される。
図49に示す例は、第1のコアシート221aと第2のコアシート321aとを交互に積層している。この場合、夫々の第1のコアシート221aと第2のコアシート321aは、一枚もしくは複数枚を一組とする。但し、これは一例であって、第1のコアシート221aと第2のコアシート321aとを適宜組み合せて積層することでよい。
例えば、図52に示すように、軸方向の一方の端部側に第1のコアシート221a、軸方向の他方の端部側に第2のコアシート321aを設ける構成でもよい。
また、図53に示すように、軸方向に複数枚の第1のコアシート221aの組と、複数枚の第2のコアシート321aの組とを交互に設ける構成でもよい。
また、図54に示すように、軸方向の両端部に複数枚の第2のコアシート321aの組、その間に複数枚の第1のコアシート221aの組を設ける構成でもよい。
さらに、図55に示すように、軸方向の両端部に複数枚の第1のコアシート221aの組、その間に複数枚の第2のコアシート321aの組を設ける構成でもよい。
変形例3の回転子鉄心421には、第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422cが形成されるが、回転子鉄心421は、第1のコアシート221a(図50参照)と第2のコアシート321a(図51参照)との二種類のコアシートを積層して構成されるので、第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422cは、夫々以下に示す組合せになる。
(1)第1のスリット部422a:第1のスリット部222aと第1のスリット部322aとで構成される;
(2)第2のスリット部422b:第2のスリット部222bと第2のスリット部322bとで構成される;
(3)第3のスリット部422c:第3のスリット部222cと第3のスリット部322cとで構成される。
変形例3のリラクタンスモータ400は、d軸上(極中心)の第3のスリット部222cが回転子鉄心221の内周(軸孔225)に開口している第1のコアシート221a(変形例1のリラクタンスモータ200)と、d軸上(極中心)の第3のスリット部322cが回転子鉄心321の内周(軸孔325)に開口していない第2のコアシート321a(変形例2のリラクタンスモータ300)とを適宜組み合せることにより、第3のスリット部422cは、回転子鉄心421の内周(軸孔425)に開口している部分と、開口していない部分とが混在する。そのため、遠心力に対する強度を確保するとともに、内周薄肉部328(図42参照)からのq軸磁束の漏れを抑制することができる。
次に図56乃至図62を参照しながら変形例4のリラクタンスモータ700について説明する。
図56はd軸上にd軸スリットを設けたリラクタンスモータのq軸磁束の流れを示す図である。図57乃至図65は実施の形態1を示す図で、図57は変形例4のリラクタンスモータ700の横断面図、図58は図57のX−X断面図、図59は図58のY部付近の拡大図、図60は変形例4のリラクタンスモータ700の回転子720の横断面図、図61は図60の部分拡大図、図62は図60のZ−Z断面図、図63は変形例4の回転子鉄心721の平面図、図64は図63の部分拡大図、図65は変形例4の回転子720におけるq軸磁束の回転軸724への漏れる様子を示す図である。
例えば、本実施の形態のリラクタンスモータ100のように、回転子鉄心121のd軸上(極中心)に内周(軸孔125)に開口するd軸スリット(第3のスリット部122c)を形成すると(図25参照)、q軸磁束は該d軸スリット(第3のスリット部122c)を避けるように回転軸(回転軸124)へ漏れる傾向がある(図56参照)。
変形例4のリラクタンスモータ700は、d軸上(極中心)に回転子鉄心721の内周(軸孔725)に開口する第3のスリット部722cを設ける場合に、第3のスリット部722cを避けて回転軸724に漏れるq軸磁束を低減するものである。隣接する第3のスリット部722cの間で、且つ第1のスリット部722aと軸孔725との間に、回転子鉄心721の外側に凸の円弧形状の第4のスリット部722d(q軸磁束漏れ抑制スリット)を設けることで、第3のスリット部722cを避けて回転軸724に漏れるq軸磁束を低減する。
図57、図58に示すように、変形例4のリラクタンスモータ700(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子710と、この円筒状の固定子710の内周に、所定の径方向寸法の空隙716(図59参照)を介して配置される回転子720と、を備える。リラクタンスモータ700は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ700の極数は、任意の極数でよい。
空隙716の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ700の固定子710は、リラクタンスモータ100の固定子110と同様の構成である。即ち、図58に示すように、固定子鉄心711と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心711のスロット(図示せず、但し図20のスロット115と同じ)に挿入される巻線713と、を備える。巻線713は、固定子鉄心711の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線713の固定子鉄心711の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド713aと呼ぶ。
次に、変形例4のリラクタンスモータ700の特徴部分である回転子720について説明する。図60乃至図62に示すように、回転子720は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心721と、回転子鉄心721の軸方向両端面に固定される端板726と、回転子鉄心721及び端板726の略中心部に嵌合する回転軸724と、を備える。
回転子鉄心721を構成する電磁鋼板には、第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c、第4のスリット部722dが設けられる。即ち、リラクタンスモータ100の回転子鉄心121(図25)に、第4のスリット部722dが追加された構成である。第1のスリット部722a、第2のスリット部722bをスリットと呼ぶ。第3のスリット部722cをd軸スリットと呼ぶ。第4のスリット部722dを
第1のスリット部722a、第2のスリット部722bは、回転軸724が嵌合する軸孔725に頂点を向け、一方のd軸から他方のd軸へ向かう円弧形状(逆円弧形状)である。且つ、この第1のスリット部722a、第2のスリット部722bは、当該極数分(図60では4極)だけ回転子鉄心721の外周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
第1のスリット部722a、第2のスリット部722bと回転子鉄心721の外周との間には、夫々外周薄肉部727a(ブリッジともいう)、外周薄肉部727bが存在する。
第3のスリット部722cは、d軸上(極中心)に径方向に形成される。第3のスリット部722cは、回転子鉄心721の内周(軸孔725)に開口している(図64参照)。第3のスリット部722cと回転子鉄心721の外周との間には、外周薄肉部727c(ブリッジともいう)が存在する。
図60に示す回転子720は4極であるから、第3のスリット部722cは、周方向に90°間隔で4本形成されている。
第4のスリット部722dは、隣接する第3のスリット部722cの間で、且つ第1のスリット部722aと軸孔725との間に、回転子鉄心721の外側に凸の円弧形状に形成されている。
図64に示すD1、D5、D6、L1を、以下のように定義する。
(1)D1:第1のスリット部722aと第3のスリット部722cとの間の鉄心部の回転子鉄心721外周側端部における幅;
(2)D5:第1のスリット部722aと軸孔725との間の径方向の幅;
(3)D6:第4のスリット部722dの径方向の幅;
(4)L1:第4のスリット部722dの周方向の長さ。
第4のスリット部722dを設けることにより、第1のスリット部722aと軸孔725との間の磁路が狭くなる。そこで、該磁路が磁気飽和しないように、
D5−D6>D1
の関係を満たすことが好ましい。
しかし、q軸磁束の回転軸724への漏れを抑制するためには、第4のスリット部722dの径方向の幅D6は大きい方がよい。従って、第4のスリット部722dは、
D5−D6≒D1
の関係を満たすような形状にすることが好ましい。
第4のスリット部722dの周方向長さL1は、q軸磁束の回転軸724への漏れを抑制するためにできるだけ長いほうがよい。L1が短いと、図65に示すように、q軸磁束が回転軸724へ漏れる。
好ましい第4のスリット部722dの周方向長さL1の目安は、第4のスリット部722dと第3のスリット部722cとの間の周方向の距離が、電磁鋼板の板厚(0.1〜1.0mm)程度である。
このように、第4のスリット部722dを、隣接する第3のスリット部722cの間で、且つ第1のスリット部722aと軸孔725との間に、回転子鉄心721の外側に凸の円弧形状に形成することにより、q軸磁束の回転軸724への漏れを抑制してq軸インダクタンスが低減し、モータの高効率化が図れる。
次に図66乃至図79を参照しながら変形例5のリラクタンスモータ800について説明する。
図66乃至図79は実施の形態1を示す図で、図66は変形例5のリラクタンスモータ800の横断面図(図68のAB−AB断面図)、図67は変形例5のリラクタンスモータ800の横断面図(図68のAC−AC断面図)、図68は図66及び図67のAA−AA断面図、図69は図68のAD部拡大図、図70は変形例5のリラクタンスモータ800の回転子820の横断面図(図72のAF−AF断面図)、図71は変形例5のリラクタンスモータ800の回転子820の横断面図(図72のAG−AG断面図)、図72は図70及び図71のAE−AE断面図、図73は第3のコアシート721aの平面図、図74は第4のコアシート821aの平面図、図75は図74の部分拡大図、図76は図72相当図で、第3のコアシート721aと第4のコアシート821aの組合せの他の例を示す図、図77は図72相当図で、第3のコアシート721aと第4のコアシート821aの組合せの他の例を示す図、図78は図72相当図で、第3のコアシート721aと第4のコアシート821aの組合せの他の例を示す図、図79は図72相当図で、第3のコアシート721aと第4のコアシート821aの組合せの他の例を示す図である。
変形例4のリラクタンスモータ700は、第3のスリット部722cが回転子鉄心721の内周(軸孔725)に開口しているので(図64参照)、遠心力に対する強度が十分とは言えない場合がある。
そこで、変形例5のリラクタンスモータ800では、d軸上(極中心)のスリットが回転子鉄心の内周(軸孔)に開口しているコアシート(例えば、変形例4のリラクタンスモータ700)と、d軸上(極中心)のスリットが回転子鉄心の内周(軸孔)に開口していないコアシートとを組み合せて、遠心力に対する強度は確保するとともに、内周薄肉部からのq軸磁束の漏れを抑制する。
図66、図67に示すように、変形例5のリラクタンスモータ800(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子810と、この円筒状の固定子810の内周に、所定の径方向寸法の空隙816(図69参照)を介して配置される回転子820と、を備える。リラクタンスモータ800は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ800の極数は、任意の極数でよい。
空隙816の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ800の固定子810は、リラクタンスモータ100の固定子110と同様の構成である。即ち、図68に示すように、固定子鉄心811と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心811のスロット(図示せず、但し図20のスロット115と同じ)に挿入される巻線813と、を備える。巻線813は、固定子鉄心811の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線813の固定子鉄心811の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド813aと呼ぶ。
次に、変形例5のリラクタンスモータ800の特徴部分である回転子820について説明する。図70乃至図72に示すように、回転子820は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心821と、回転子鉄心821の軸方向両端面に固定される端板826と、回転子鉄心821及び端板826の略中心部に嵌合する回転軸824と、を備える。
変形例5の回転子鉄心821は、図72に示すように、変形例4のリラクタンスモータ700の回転子鉄心721を構成する第3のコアシート721a(図73参照、第一のコアシート)と、第4のコアシート821a(図74参照、第二のコアシート)との二種類のコアシートを積層して構成される。
変形例4のリラクタンスモータ700の回転子鉄心721を構成する第3のコアシート721a(図73参照)は、第3のスリット部722cが回転子鉄心721の内周(軸孔725)に開口している。
第4のコアシート821a(図74、図75参照)は、第3のスリット部822cが回転子鉄心821の内周(軸孔825)との間に内周薄肉部828があり、内周(軸孔825)に開口していない。従って、q軸磁束は内周薄肉部828から若干漏れる傾向はあるが、遠心力に対する強度は第3のコアシート721aよりも大きい。
図72に示す例は、第3のコアシート721aと第4のコアシート821aとを交互に積層している。この場合、夫々の第3のコアシート721aと第4のコアシート821aは、一枚もしくは複数枚を一組とする。但し、これは一例であって、第3のコアシート721aと第4のコアシート821aとを適宜組み合せて積層することでよい。
例えば、図76に示すように、軸方向の一方の端部側に第3のコアシート721a、軸方向の他方の端部側に第4のコアシート821aを設ける構成でもよい。
また、図77に示すように、軸方向に複数枚の第3のコアシート721aの組と、複数枚の第4のコアシート821aの組とを交互に設ける構成でもよい。
また、図78に示すように、軸方向の両端部に複数枚の第4のコアシート821aの組、その間に複数枚の第3のコアシート721aの組を設ける構成でもよい。
さらに、図79に示すように、軸方向の両端部に複数枚の第3のコアシート721aの組、その間に複数枚の第4のコアシート821aの組を設ける構成でもよい。
変形例5の回転子鉄心821には、第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822cが形成されるが、回転子鉄心821は、第3のコアシート721a(図73参照)と第4のコアシート821a(図74参照)との二種類のコアシートを積層して構成されるので、第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822cは、夫々以下に示す組合せになる。
(1)第1のスリット部822a:第1のスリット部822aと第1のスリット部722aとで構成される;
(2)第2のスリット部822b:第2のスリット部822bと第2のスリット部722bとで構成される;
(3)第3のスリット部822c:第3のスリット部822cと第3のスリット部822cとで構成される。
変形例5のリラクタンスモータ800は、d軸上(極中心)の第3のスリット部722cが内周(軸孔725)に開口している第3のコアシート721a(変形例4のリラクタンスモータ700)と、d軸上(極中心)の第3のスリット部822cが回転子鉄心821の内周(軸孔825)に開口していない第4のコアシート821aとを適宜組み合せることにより、第3のスリット部822cは、回転子鉄心821の内周(軸孔825)に開口している部分と、開口していない部分とが混在する。そのため、遠心力に対する強度を確保するとともに、内周薄肉部828(図75参照)からのq軸磁束の漏れを抑制することができる。
次に、図80乃至図86を参照しながら変形例6のリラクタンスモータ900について説明する。
図80乃至図87は実施の形態1を示す図で、図80は変形例6のリラクタンスモータ900の横断面図、図81は図80のAH−AH断面図、図82は図81のAJ部付近の拡大図、図83は変形例6のリラクタンスモータ900の回転子920の横断面図、図84は図83のAK−AK断面図、図85は変形例6の回転子鉄心921の平面図、図86は図85の部分拡大図、図87は変形例6の回転子920におけるq軸磁束の回転軸924への漏れる様子を示す図である。
変形例6のリラクタンスモータ900は、変形例5のリラクタンスモータ800の第4のスリット部822dを、軸孔825に連通するように径方向内側にオフセットしたものである。そのように構成することにより、変形例5のリラクタンスモータ800と同様、q軸磁束の回転軸924への漏れを抑制するとともに、第4のスリット部922dと軸孔925とを同時に打ち抜くことができるので、生産性が向上するものである。
図80、図81に示すように、変形例6のリラクタンスモータ900(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子910と、この円筒状の固定子910の内周に、所定の径方向寸法の空隙916(図82参照)を介して配置される回転子920と、を備える。リラクタンスモータ900は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ900の極数は、任意の極数でよい。
空隙916の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ900の固定子910は、リラクタンスモータ100の固定子110と同様の構成である。即ち、図81に示すように、固定子鉄心911と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心911のスロット(図示せず、但し図20のスロット115と同じ)に挿入される巻線913と、を備える。巻線913は、固定子鉄心911の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線913の固定子鉄心911の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド913aと呼ぶ。
次に、変形例6のリラクタンスモータ900の特徴部分である回転子920について説明する。図83乃至図84に示すように、回転子920は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心921と、回転子鉄心921の軸方向両端面に固定される端板926と、回転子鉄心921及び端板926の略中心部に嵌合する回転軸924と、を備える。
回転子鉄心921を構成する電磁鋼板には、第1のスリット部922a、第2のスリット部922b、第3のスリット部922c、第4のスリット部922dが設けられる。即ち、リラクタンスモータ100の回転子鉄心121(図25)に、第4のスリット部722dが追加され、第4のスリット部922dが軸孔925に連通している構成である(図85、図86参照)。
第1のスリット部922a、第2のスリット部922bは、回転軸924が嵌合する軸孔925に頂点を向け、一方のd軸から他方のd軸へ向かう円弧形状(逆円弧形状)である。且つ、この第1のスリット部922a、第2のスリット部922bは、当該極数分(図83では4極)だけ回転子鉄心921の外周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
第1のスリット部922a、第2のスリット部922bと回転子鉄心921の外周との間には、夫々外周薄肉部927a(ブリッジともいう)、外周薄肉部927bが存在する(図86参照)。
第3のスリット部922cは、d軸上(極中心)に径方向に形成される。第3のスリット部922cは、回転子鉄心921の内周(軸孔925)に開口している(図85、86参照)。第3のスリット部922cと回転子鉄心921の外周との間には、外周薄肉部927c(ブリッジともいう)が存在する。
図80に示す回転子920は4極であるから、第3のスリット部922cは、周方向に90°間隔で4本形成されている。
第4のスリット部922dは、隣接する第3のスリット部922cの間で、且つ第1のスリット部922aと軸孔925との間に、回転子鉄心921の外側に凸の円弧形状に形成され、且つ第4のスリット部922dは軸孔925に連通している。
図86に示すD1、D6、D7、L1を、以下のように定義する。
(1)D1:第1のスリット部922aと第3のスリット部922cとの間の鉄心部の回転子鉄心921外周側端部における幅;
(2)D6:第4のスリット部922dの径方向の幅;
(3)D7:第1のスリット部922aと第4のスリット部922dとの最短磁路幅(径方向);
(4)L1:第4のスリット部922dの周方向の長さ。
第4のスリット部922dの径方向の幅D6は、D7≒D1となるように設定する。D7がD1よりも小さくなると、回転子外部のd軸方向から入ってくるd軸磁束が、他方のd軸へ通過する前に磁気飽和が起き、効率が低下する。しかし、D6は大きいほうがq軸方向の磁束低減には有効であるので、D7≒D1となるようにD6を設定するのが好ましい。
第4のスリット部922dの周方向長さL1は、q軸磁束の回転軸924への漏れを抑制するためにできるだけ長いほうがよい。L1が短いと、図87に示すように、q軸磁束が回転軸924へ漏れる。
好ましい第4のスリット部922dの周方向長さL1の目安は、第4のスリット部922dと第3のスリット部922cとの間の周方向の距離が、電磁鋼板の板厚(0.1〜1.0mm)程度である。
このように、第4のスリット部922dを、隣接する第3のスリット部922cの間で、且つ第1のスリット部922aと軸孔925との間に、回転子鉄心921の外側に凸の円弧形状に形成するとともに、第4のスリット部922dを軸孔925に連通させることにより、q軸磁束の回転軸924への漏れを抑制してq軸インダクタンスが低減し、モータの高効率化が図れる。また、第4のスリット部922dと軸孔925とを同時に打ち抜くことができるので、生産性が向上するものである。
次に、図88乃至図101を参照しながら変形例7のリラクタンスモータ1000について説明する。
図88乃至図101は実施の形態1を示す図で、図88は変形例7のリラクタンスモータ1000の横断面図(図90のAM−AM断面図)、図89は変形例7のリラクタンスモータ1000の横断面図(図90のAN−AN断面図)、図90は図88及び図89のAL−AL断面図、図91は図90のAP部拡大図、図92は変形例7のリラクタンスモータ1000の回転子1020の横断面図(図94のAR−AR断面図)、図93は変形例7のリラクタンスモータ1000の回転子1020の横断面図(図94のAS−AS断面図)、図94は図92及び図93のAQ−AQ断面図、図95は第5のコアシート921aの平面図、図96は第6のコアシート1021aの平面図、図97は図96の部分拡大図、図98は図94相当図で、第5のコアシート921aと第6のコアシート1021aの組合せの他の例を示す図、図99は図94相当図で、第5のコアシート921aと第6のコアシート1021aの組合せの他の例を示す図、図100は図94相当図で、第5のコアシート921aと第6のコアシート1021aの組合せの他の例を示す図、図101は図94相当図で、第5のコアシート921aと第6のコアシート1021aの組合せの他の例を示す図である。
変形例6のリラクタンスモータ900は、第3のスリット部922cが回転子鉄心921の内周(軸孔925)に開口しているので(図86参照)、遠心力に対する強度が十分とは言えない場合がある。
そこで、変形例7のリラクタンスモータ1000では、d軸上(極中心)のスリットが回転子鉄心の内周(軸孔)に開口しているコアシート(例えば、変形例6のリラクタンスモータ900)と、d軸上(極中心)のスリットが回転子鉄心の内周(軸孔)に開口していないコアシートとを組み合せて、遠心力に対する強度は確保するとともに、内周薄肉部からのq軸磁束の漏れを抑制する。
図88、図89に示すように、変形例7のリラクタンスモータ1000(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子1010と、この円筒状の固定子1010の内周に、所定の径方向寸法の空隙1016(図91参照)を介して配置される回転子1020と、を備える。リラクタンスモータ1000は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ1000の極数は、任意の極数でよい。
空隙1016の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ1000の固定子1010は、リラクタンスモータ100の固定子110と同様の構成である。即ち、図90に示すように、固定子鉄心1011と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心1011のスロット(図示せず、但し図20のスロット115と同じ)に挿入される巻線1013と、を備える。巻線1013は、固定子鉄心1011の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線1013の固定子鉄心1011の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド1013aと呼ぶ。
次に、変形例7のリラクタンスモータ1000の特徴部分である回転子1020について説明する。図92乃至図94に示すように、回転子1020は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心1021と、回転子鉄心1021の軸方向両端面に固定される端板1026と、回転子鉄心1021及び端板1026の略中心部に嵌合する回転軸1024と、を備える。
変形例7の回転子鉄心1021は、図94に示すように、変形例6のリラクタンスモータ900の回転子鉄心921を構成する第5のコアシート921a(図95参照、第一のコアシート)と、第6のコアシート1021a(図96、図97参照、第二のコアシート)との二種類のコアシートを積層して構成される。
変形例6のリラクタンスモータ900の回転子鉄心921を構成する第5のコアシート921a(図95参照)は、第3のスリット部922cが回転子鉄心921の内周(軸孔925)に開口している。
第5のコアシート921a(図95参照)は、第3のスリット部922c以外に、第1のスリット部922a、第2のスリット部922b、第4のスリット部922dが形成されている。
第6のコアシート1021a(図96、図97参照)は、第3のスリット部1022cが回転子鉄心1021の内周(軸孔1025)との間に内周薄肉部1028があり、内周(軸孔1025)に開口していない。従って、q軸磁束は内周薄肉部1028から若干漏れる傾向はあるが、遠心力に対する強度は第5のコアシート921aよりも大きい。
図94に示す例は、第5のコアシート921aと第6のコアシート1021aとを交互に積層している。この場合、夫々の第5のコアシート921aと第6のコアシート1021aは、一枚もしくは複数枚を一組とする。但し、これは一例であって、第5のコアシート921aと第6のコアシート1021aとを適宜組み合せて積層することでよい。
例えば、図98に示すように、軸方向の一方の端部側に第5のコアシート921a、軸方向の他方の端部側に第6のコアシート1021aを設ける構成でもよい。
また、図99に示すように、軸方向に複数枚の第5のコアシート921aの組と、複数枚の第6のコアシート1021aの組とを交互に設ける構成でもよい。
また、図100に示すように、軸方向の両端部に複数枚の第6のコアシート1021aの組、その間に複数枚の第5のコアシート921aの組を設ける構成でもよい。
さらに、図101に示すように、軸方向の両端部に複数枚の第5のコアシート921aの組、その間に複数枚の第6のコアシート1021aの組を設ける構成でもよい。
変形例7の回転子鉄心1021には、第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cが形成されるが、回転子鉄心1021は、第5のコアシート921a(図95参照)と第6のコアシート1021a(図96、図97参照)との二種類のコアシートを積層して構成されるので、第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cは、夫々以下に示す組合せになる。
(1)第1のスリット部1022a:第1のスリット部1022aと第1のスリット部922aとで構成される;
(2)第2のスリット部1022b:第2のスリット部1022bと第2のスリット部922bとで構成される;
(3)第3のスリット部1022c:第3のスリット部1022cと第3のスリット部922cとで構成される。
変形例7のリラクタンスモータ1000は、d軸上(極中心)の第3のスリット部922cが内周(軸孔925)に開口している第5のコアシート921a(変形例6のリラクタンスモータ900)と、d軸上(極中心)の第3のスリット部1022cが回転子鉄心1021の内周(軸孔1025)に開口していない第6のコアシート1021aとを適宜組み合せることにより、第3のスリット部1022cは、回転子鉄心1021の内周(軸孔1025)に開口している部分と、開口していない部分とが混在する。そのため、遠心力に対する強度を確保するとともに、内周薄肉部1028(図97参照)からのq軸磁束の漏れを抑制することができる。
次に、図102乃至図109を参照しながら変形例8のリラクタンスモータ1100について説明する。
図102乃至図109は実施の形態1を示す図で、図102は変形例8のリラクタンスモータ1100の横断面図、図103は図102のAQ−AQ断面図、図104は図103のAS部付近の拡大図、図105は変形例8のリラクタンスモータ1100の回転子1120の横断面図、図106は図105のAT−AT断面図、図107は変形例8の回転子鉄心1121の平面図、図108は図107の部分拡大図、図109は図107の第5のスリット部1121eの合成概念図である。
例えば、変形例6のリラクタンスモータ900は、図87に示すように、第4のスリット部922dの周方向の両端と第3のスリット部922cとの間に鉄心部が存在するため、q軸磁束が回転軸924を通る漏れ磁束が避けられない。
変形例8のリラクタンスモータ1100は、このような場合に好適な形態であり、図109に示すように、4極のモータの場合、対向するd軸磁極において、第5のスリット部1122e(合成スリット)を、変形例4のリラクタンスモータ700の回転子鉄心721(図63参照)に形成された第1のスリット部722a、第3のスリット部722c、第4のスリット部722dを略合成した一つの大きなスリットとする。尚、第5のスリット部1122eが形成されたd軸磁極に隣接するd軸磁極には、d軸上(極中心)に、回転子鉄心1121の内周(軸孔1125)に開口する細長い第3のスリット部722cを設ける。このように構成することにより、d軸磁束の磁路を確保しつつ、q軸磁束の回転軸1124への漏れを抑制することができる。
図102、図103に示すように、変形例8のリラクタンスモータ1100(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子1110と、この円筒状の固定子1110の内周に、所定の径方向寸法の空隙1116(図104参照)を介して配置される回転子1120と、を備える。リラクタンスモータ1100は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ1100の極数は、任意の極数でよい。
空隙1116の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ1100の固定子1110は、リラクタンスモータ100の固定子110と同様の構成である。即ち、図103に示すように、固定子鉄心1111と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心1111のスロット(図示せず、但し図20のスロット115と同じ)に挿入される巻線1113と、を備える。巻線1113は、固定子鉄心1111の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線1113の固定子鉄心1111の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド1113aと呼ぶ。
次に、変形例8のリラクタンスモータ1100の特徴部分である回転子1120について説明する。図105、図106に示すように、回転子1120は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心1121と、回転子鉄心1121の軸方向両端面に固定される端板1126と、回転子鉄心1121及び端板1126の略中心部に嵌合する回転軸1124と、を備える。
回転子鉄心1121を構成する電磁鋼板には、4個の第2のスリット部1122b、2個の第3のスリット部1122c、2個の第5のスリット部1122eが設けられる。
4個の第2のスリット部1122bは、リラクタンスモータ100の回転子鉄心121と同様の構成である。即ち、回転軸1124が嵌合する軸孔1125に頂点を向け、一方のd軸から他方のd軸へ向かう円弧形状(逆円弧形状)である。且つ、この第2のスリット部1122bは、当該極数分(図105では4極)だけ回転子鉄心1121の外周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
2個の第5のスリット部1122eは、一方の対向するd軸磁極(4極の場合、対向するd軸磁極は二つある)において、既に説明したように、例えば、変形例4のリラクタンスモータ700の回転子鉄心721(図63参照)に形成された第1のスリット部722a、第3のスリット部722c、第4のスリット部722dを略合成した一つの大きなスリットとして形成されている(図109参照)。
2個の第3のスリット部1122cは、2個の第5のスリット部1122eの間で、他方の対向するd軸磁極上に、回転子鉄心1121の内周(軸孔1125)に開口するように、径方向に長く形成されている。
図108に示すD8、D9、L2を、以下のように定義する。
(1)D8:第2のスリット部1122bと第5のスリット部1122eとの間の径方向の幅;
(2)D9:第3のスリット部1122cが形成されるd軸磁極側の端部における第2のスリット部1122bと第5のスリット部1122eとの間の径方向の幅;
(3)L2:第5のスリット部1122eのd軸磁極における周方向の幅。
そして、D8≒D9を満たすようにL2を設定する。L2が大きいほどq軸方向の磁束は低減できるが、L2を大きくしすぎるとD8がD9より小さくなり、回転子外周から入ってくる磁束が回転子内で磁気飽和を起こす。その結果、モータ効率が低下する。よって、D8≒D9となるようにL2を設定することが好ましい。
次に、図110乃至図123を参照しながら変形例9のリラクタンスモータ1200について説明する。
図110乃至図123は実施の形態1を示す図で、図110は変形例9のリラクタンスモータ1200の横断面図(図112のAV−AV断面図)、図111は変形例9のリラクタンスモータ1200の横断面図(図112のAW−AW断面図)、図112は図110及び図111のAU−AU断面図、図113は図112のAX部拡大図、図114は変形例9のリラクタンスモータ1200の回転子1220の横断面図(図116のAZ−AZ断面図)、図115は変形例9のリラクタンスモータ1200の回転子1220の横断面図(図116のBA−BA断面図)、図116は図114及び図115のAY−AY断面図、図117は第7のコアシート1121aの平面図、図118は第8のコアシート1221aの平面図、図119は図118の部分拡大図、図120は図116相当図で、第7のコアシート1121aと第8のコアシート1221aの組合せの他の例を示す図、図121は図116相当図で、第7のコアシート1121aと第8のコアシート1221aの組合せの他の例を示す図、図122は図116相当図で、第7のコアシート1121aと第8のコアシート1221aの組合せの他の例を示す図、図123は図116相当図で、第7のコアシート1121aと第8のコアシート1221aの組合せの他の例を示す図である。
変形例8のリラクタンスモータ1100は、第3のスリット部922cが回転子鉄心1121の内周(軸孔1125)に開口しているので(図107参照)、遠心力に対する強度が十分とは言えない場合がある。
そこで、変形例9のリラクタンスモータ1200では、d軸上(極中心)のスリットが回転子鉄心の内周(軸孔)に開口しているコアシート(例えば、変形例8のリラクタンスモータ1100)と、d軸上(極中心)のスリットが回転子鉄心の内周(軸孔)に開口していないコアシートとを組み合せて、遠心力に対する強度は確保するとともに、内周薄肉部からのq軸磁束の漏れを抑制する。
図110、図111に示すように、変形例9のリラクタンスモータ1200(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子1210と、この円筒状の固定子1210の内周に、所定の径方向寸法の空隙1216(図112参照)を介して配置される回転子1220と、を備える。リラクタンスモータ1200は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ1200の極数は、任意の極数でよい。
空隙1216の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ1200の固定子1210は、リラクタンスモータ100の固定子110と同様の構成である。即ち、図112に示すように、固定子鉄心1211と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心1211のスロット(図示せず、但し図20のスロット115と同じ)に挿入される巻線1213と、を備える。巻線1213は、固定子鉄心1211の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線1213の固定子鉄心1211の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド1213aと呼ぶ。
次に、変形例9のリラクタンスモータ1200の特徴部分である回転子1220について説明する。図114乃至図116に示すように、回転子1220は、所定の形状の電磁鋼板を積層した回転子鉄心1221と、回転子鉄心1221の軸方向両端面に固定される端板1226と、回転子鉄心1221及び端板1226の略中心部に嵌合する回転軸1224と、を備える。
変形例9の回転子鉄心1221は、図116に示すように、変形例8のリラクタンスモータ1100の回転子鉄心1121を構成する第7のコアシート1121a(図117参照、第一のコアシート)と、第8のコアシート1221a(図118、図119参照、第二のコアシート)との二種類のコアシートを積層して構成される。
変形例8のリラクタンスモータ1100の回転子鉄心1121を構成する第7のコアシート1121a(図117参照)は、第3のスリット部1122cが回転子鉄心1121の内周(軸孔1125)に開口している。
第8のコアシート1221a(図118、図119参照)は、第3のスリット部1222cが回転子鉄心1221の内周(軸孔1225)との間に内周薄肉部1228があり、内周(軸孔1225)に開口していない。従って、q軸磁束は内周薄肉部1228から若干漏れる傾向はあるが、遠心力に対する強度は第7のコアシート1121aよりも大きい。
図116に示す例は、第7のコアシート1121aと第8のコアシート1221aとを交互に積層している。この場合、夫々の第7のコアシート1121aと第8のコアシート1221aは、一枚もしくは複数枚を一組とする。但し、これは一例であって、第7のコアシート1121aと第8のコアシート1221aとを適宜組み合せて積層することでよい。
例えば、図120に示すように、軸方向の一方の端部側に第7のコアシート1121a、軸方向の他方の端部側に第8のコアシート1221aを設ける構成でもよい。
また、図121に示すように、軸方向に複数枚の第7のコアシート1121aの組と、複数枚の第8のコアシート1221aとを交互に設ける構成でもよい。
また、図122に示すように、軸方向の両端部に複数枚の第8のコアシート1221aの組、その間に複数枚の第7のコアシート1121aの組を設ける構成でもよい。
さらに、図123に示すように、軸方向の両端部に複数枚の第7のコアシート1121aの組、その間に複数枚の第8のコアシート1221aの組を設ける構成でもよい。
変形例9のリラクタンスモータ1200は、d軸上(極中心)の第3のスリット部1122cが内周(軸孔1125)に開口している第7のコアシート1121a(変形例8のリラクタンスモータ1100)と、d軸上(極中心)の第3のスリット部1222cが回転子鉄心1221の内周(軸孔1225)に開口していない第8のコアシート1221aとを適宜組み合せることにより、第3のスリット部1222cは、回転子鉄心1221の内周(軸孔1225)に開口している部分と、開口していない部分とが混在する。そのため、遠心力に対する強度を確保するとともに、内周薄肉部1228(図119参照)からのq軸磁束の漏れを抑制することができる。